説明

全方向性の資源循環を前提とした有機物系廃棄物燃料電池発電法及び環境修復法

【課題】本発明は、プラスチックやバイオマス等の有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)に含まれる大半の元素を循環利用する事を前提とした燃料電池発電法・有用物質生産法及びそれを活用した植物環境修復法を提供する。
【解決手段】有機物系廃棄物を高温で部分酸化して得た一酸化炭素に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムのいずれかをを高温高圧で作用させて生じた蟻酸塩(蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、蟻酸カルシウム)を融雪剤、摘花剤、光酸化障害防止剤、肥料のいずれかとして用いるか、若しくはその蟻酸塩の水溶液をダイレクト蟻酸塩燃料電池発電に用いると同時に発電過程で排出された強塩基を回収した上で更に上記の蟻酸合成反応に繰り返して用いる資源循環方法及び装置を適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックやバイオマス等の有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)に含まれる大半の元素を循環利用する事を前提とした燃料電池発電法・有用物質生産法及びそれを活用した植物環境修復法に関する。
【背景技術】
【0002】
暮らしが豊かになるにつれ廃棄物の排出量が増加し、最終処分場(埋め立て)の許容量が限界に近づいている。そういった中、バイオマス、プラスチック等の有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から燃料電池を通して電力エネルギーを得ようとする試みは従来多くの研究者によってなされてきている。中でも卓抜した業績を上げているのは北里大学名誉教授である田口文章博士らのグループと財団法人地球環境産業技術研究機構の湯川英明博士らのグループの2つである。まず田口文章博士らはシロアリの腸内細菌から強力な水素生産菌(絶対嫌気性菌)をパンダの糞から強力な生ゴミ分解菌をそれぞれ分離した上で硫酸糖化した有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)糖化液を用いて水素発酵させ発生した水素を水素燃料電池に供すると同時に発酵残渣の大半をパンダ糞分離菌により消滅させるシステムの構築に成功し、新たに設立したベンチャー企業(株式会社フレイン・エナジー、http://www.hrein.jp/)で既に試作機の製作を行い販売直前になっている(特開2003−169689、特開2002−355022、特開2002−355029、特開2001−157)。一方、湯川英明博士らは蟻酸ソーダ法によって有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から調達した蟻酸を好気的環境下で大腸菌等の通性嫌気性水素生産菌に与えた上で還元環境下に移行させる事によって大量の水素を生産する事に成功しシャープ株式会社を通して産業化する事を試みている(特開2005−87035、特開2004−303601)。一方、アメリカ合衆国のイリノイ大学教授、リチャード・マゼル教授は国防総省からの開発資金を得てダイレクト蟻酸燃料電池の開発を進め、昨年テキオン社を通して当該燃料電池を搭載した携帯電話の試作機をプレスリリースしている(http://www.tekion.com/)。これらはいずれも卓抜した燃料電池技術であり各々の領域では他の追随を許さない水準に到達している。しかしながら、これらの卓抜した技術を有機的に結合させてより効率的かつ循環的な有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)燃料電池発電を行えるシステムを開発したという報告は現在ない。例えば財団法人地球環境産業技術研究機構のシステムでは有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から得た蟻酸を水素生産菌の基質として用いているが、蟻酸や蟻酸塩が燃料電池の燃料として機能するならば、何も水素生産菌の基質にしなくとも直接、ダイレクト蟻酸燃料電池の燃料に供すればよいのである。なおこのダイレクト蟻酸燃料電池は通常のダイレクトメタノール燃料電池インフラでも機能する。また有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から蟻酸ソーダ法(もしくはそれに準じた方法)で蟻酸を生産する際も、生じた蟻酸塩を融雪剤等として活用しようとした例、副産物となる硫酸塩等を有効利用しようとする方向性を示した例、有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温で部分酸化して得たガスから一酸化炭素を除去した後の水素ガスやメタンガスを更に燃料電池発電に有効活用しようとした例、蟻酸塩水溶液で燃料電池発電を行った後に排出される塩基を回収・再活用しようとした例等はない。そのため蟻酸の生産が経済的な面でもエネルギー効率の面でも必ずしも有利な形では行えておらず現時点では実用化出来ていない状況となっている。更には水素生産菌を活用した株式会社フレイン・エナジーのケースにおいても有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)の硫酸糖化ステップで発生する有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)残渣の有効活用を考えていないため糖化経費が嵩み本来の機能を十分に果たしにくい状況になっているものと推測できる。また近年、燃料電池自動車の開発が進んでいるが自動車に搭載する燃料電池の経費(特に白金及びセパレーター)が嵩むため現時点では1台1億円を越える状態で普及には程遠い状態になっている。従って自動車にヤマハの電動自転車(パス)のように燃料電池をあえて搭載せずに充電器のみを電力源として稼動させる発想は有効かと考えられるが現時点ではこういった発想の自動車開発は行われておらず、燃料電池自動車の開発は暗礁に乗り上げている感さえある。本発明は以上の背景技術を踏まえて行われたものであり、有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から蟻酸ソーダ法(若しくはそれに準ずる方法)で副産物である硫酸塩等を有効活用する形で生産した蟻酸を直接、ダイレクト蟻酸燃料電池に供する事によって従来より格段に発電効率及び資源循環効率を高めると共に、水素発酵法において発生する石膏含有有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)硫酸糖化残渣を建設資材、土壌改良剤として活用する事によって、水素発酵の経済効率及び資源循環効率、環境保全効率を格段に高めると同時に、これらの技術によって生産された電力を「充電器のみを電力源として搭載する自動車」を活用する事によって有効活用する事を試みたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、プラスチックやバイオマス等の有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)に含まれる大半の元素を循環利用する事を前提とした燃料電池発電法・有用物質生産法及びそれを活用した植物環境修復法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、(1)有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムのいずれかを高温高圧で作用させて生じた蟻酸塩(蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、蟻酸カルシウム)を融雪剤、摘花剤、光酸化障害防止剤、肥料のいずれかとして用いるか、若しくはその蟻酸塩の水溶液をダイレクト蟻酸塩燃料電池発電に用いると同時に発電過程で排出された強塩基を回収した上で更に上記の蟻酸塩合成反応に繰り返して用いる資源循環方法及び装置、(2)有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素に水酸化カルシウムを作用させて生じた蟻酸カルシウムに硫酸等の強酸を高温高圧で作用させた結果生じる硫酸カルシウム等及び蟻酸のうち、硫酸カルシウム等を建設素材、土壌改良剤、若しくは水質浄化剤等として用いると同時に蟻酸をダイレクト蟻酸燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置、(3)有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素に高温高圧で水酸化カリウムを作用させて生じた蟻酸カリウムに硫酸等の強酸を作用させた結果生じる硫酸カリウム等及び蟻酸のうち、硫酸カリウム等を肥料等として用いると同時に蟻酸をダイレクト蟻酸燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置、(4)有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素に高温高圧で水酸化ナトリウムを作用させて生じた蟻酸ナトリウムに硫酸等の強酸を作用させた結果生じる硫酸ナトリウム等及び蟻酸のうち、硫酸ナトリウム等を洗剤原料、ガラス原料、浴用剤等として用いると同時に蟻酸をダイレクト蟻酸燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置、(5)2の中間生産物として生じた蟻酸カルシウムを摘花剤、光酸化障害防止剤、肥料等の農業資材に用いる資源循環方法、(6)3の中間生産物として生じた蟻酸カリウムを防除雪氷剤、飼料添加剤、肥料、光酸化障害防止剤等に用いる資源循環方法、(7)4の中間生産物として生じた蟻酸ナトリウムを防除雪氷剤、光酸化障害防止剤等に用いる資源循環方法、(8)1〜4での一酸化炭素を消費する反応で一酸化炭素濃度を減少させた有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)部分酸化処理ガス中の水素ガス及びメタンガスを水素燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置、(9)1〜8において有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を部分酸化処理した結果、発生した炭化残渣を肥料、土壌改良剤等に用いる資源循環方法及び装置、(10)1〜9に示した方法を用いて有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から混合ガスを発生させる過程で生じた炭化物(若しくはコークス)を1000℃程度に過熱した上で水蒸気を作用させて生産した一酸化炭素に請求項1〜9の方法を更に適用する資源循環方法及び装置、(11)加圧熱水法、超臨界水法等を用いて有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から生産した蟻酸等の低分子有機物をダイレクト有機物燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置、(12)11において生じた残渣を肥料若しくは(加圧熱水法等用の)熱源等として活用する資源循環方法及び装置、(13)稲藁、刈草等の木質・草本系有機物系廃棄物、活性汚泥等の糞尿系有機物系廃棄物、食品産業廃棄物、古紙、生ゴミを含む有機物系廃棄物を必要に応じて細分化・粉砕後、硫酸糖化し生石灰、水酸化カリウム等のアルカリ物質で中和した低分子有機物含有液若しくは加圧熱水処理等で得た低分子有機物含有液に水素発酵(若しくは蟻酸発酵)させて生じた水素ガス(若しくは蟻酸)を燃料電池発電の電子供給源に用いると同時に、発電前に固液分離によって生じた残渣を、(燃焼用の)熱源、土壌改良材、濁水抑制材、微細土壌流出抑制材、堆肥化素材、建設資材等のいずれかとして活用する事を特徴とする資源循環方法及び装置、(14)13において水素・蟻酸発酵後に生じる発酵液残渣を用いて肥料、土壌改良材若しくは他の発酵産物等を製造する方法及び装置、(15)稲藁、刈草等の木質・草本系有機物系廃棄物、活性汚泥等の糞尿系有機物系廃棄物、食品産業廃棄物、古紙、生ゴミ、プラスチックを含む有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を必要に応じて細分化・粉砕後、硫酸等で酸糖化した上で酸化カルシウム、水酸化カリウム等のアルカリ物質で中和して得た低分子有機物含有液若しくは加圧熱水処理等で得た低分子有機物含有液に、ダイレクト有機物燃料電池を含む幅広い用途に利用可能なエタノール産生菌、乳酸・コハク酸等有機酸産生菌、アミノ酸発酵菌、イノシン等核酸発酵菌、微生物蛋白(SCP)関係菌、抗生物質等生理活性物質産生菌、生理活性蛋白・ペプチド生産菌、産業用酵素産生菌、植物成長促進微生物(PGPR、菌根菌、窒素固定菌)のいずれかを植菌し培養する事によって各種有機酸、エタノール、アミノ酸、イノシン等核酸、抗生物質等生理活性物質、生理活性蛋白・ペプチド、産業用酵素、微生物蛋白(SCP)、プロバイオティクス剤、生物肥料のいずれかの生産を行うと同時に、固液分離によって発生する有機物系廃棄物残渣を、(燃焼用の)熱源、土壌改良材、濁水抑制材、微細土壌流出抑制材、堆肥化素材、建築資材等のいずれかとして活用する事を特徴とする資源循環方法及び装置、(16)15において発酵後に生じる残渣を用いて肥料、土壌改良材等を製造する方法及び装置、(17)1〜16において重金属含有土壌、塩類集積土壌、有害物質汚染物質含有土壌若しくは排水等で生育した植物体や有害物質が含まれた食品廃棄物等を発電対象にする事によって問題土壌の植物環境修復や食品廃棄物処理を同時に行う方法及び装置、(18)1〜17の方法を用いた二酸化炭素排出量の抑制方法、(19)1〜17の過程で発生した電力を有効利用する事を目的とし、燃料電池を搭載せず充電器だけを電力源として搭載した自動車及びそれらに電力若しくは電池供給するガソリンスタンド様パワーステーション、の計19技術のうちの1つ以上を適用すればよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明は少なくとも日本全体の家庭消費電力が有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)のみから得られる効果を有している。これは日本国家に少なくとも数兆円の市場(電力市場、廃棄物処理市場)が新たに開拓できる事を意味するだけでなく、二酸化炭素排出量が大きい火力発電所や高レベル放射性廃棄物処理問題を抱える原子力発電所を大幅に減らせる事を意味し、環境保全の面でも大きな効果を有する。今後、ダイレクト蟻酸燃料電池を搭載した自動車、家電、ロボット、船舶等が増えれば、二酸化炭素排出量は更に大幅に削減でき、京都議定書を守れる可能性も出てこよう。また本発明により原油輸入必要量が大幅に減るので外貨ストックが国家全体で向上すると共に、今までより遙かに安定した国家エネルギー戦略がたてられる効果もある。またエネルギーだけでなく有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)からの生分解性プラスチック、石膏ボード等の素材製造も拡大すれば、バイオマス及び有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から文字通り衣食住全てを賄える割合が増大する。本技術をODAを通して世界全体に普及させる事により今までより世界が遙かに安定し地球市民全体の利益につながる効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。蟻酸ソーダ法(あるいはそれに準ずる方法)を用いて生産できる蟻酸塩そのものが燃料電池発電や融雪剤等に使える以上、有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温高圧(目安として150℃以上、0.6MPa以上)で部分酸化処理して得た一酸化炭素に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムのいずれかを高温高圧で作用させて生じた蟻酸塩(蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、蟻酸カルシウム)を融雪剤、摘花剤、光酸化障害防止剤、肥料のいずれかとして用いるか、若しくはその蟻酸塩の水溶液をダイレクト蟻酸塩燃料電池発電に用いればよい。またこの条件で燃料電池発電を行った際に空気極から排出される強塩基は回収した上で更に上記の蟻酸塩合成反応に繰り返して用いないと資源枯渇及び環境汚染につながりかねない。なお本方法で蟻酸塩を燃料電池発電に回す際は空気極で発生するアルカリで燃料電池を傷めないように耐アルカリ仕様にした方が良い。また本方法で一酸化炭素ガスを除いた有機物系廃棄物不完全燃焼ガスには水素ガスが数割含まれるので、タール等の有害物質を除いた上で固体高分子型燃料電池の発電燃料に用いるのが望ましい。
【0007】
なお蟻酸ソーダ法に関しては特開2004−303601の中でも詳細に述べられているが、有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)にガス化剤として水蒸気と空気を加え高温で部分酸化処理すると一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素等が主に発生する。ここで水素とメタンは本来、水素燃料電池の燃料になりうる貴重な資源であるが、同時に生産される一酸化炭素が燃料電池触媒に悪影響を及ぼすために利用できない状況になっている。次に有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から得た一酸化炭素に高温高圧(150℃、0.6MPa程度)で水酸化ナトリウムを作用させる(NaOH+CO→HCOONa)と、蟻酸ナトリウムを生ずる。この蟻酸ナトリウムを硫酸と反応させ(2HCOONa+HSO→2HCOOH+NaSO)、低温で処理すると蟻酸が生成する(蟻酸ソーダ法)。この反応において水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウムや水酸化カルシウムを用いても良いとされている。しかしながらこの公知の蟻酸ソーダ法において副産物として発生する硫酸塩の有効活用が従来行われていない。例えば強塩基として水酸化ナトリウムを使った場合は副産物として洗剤原料、ガラス原料、浴用剤等として活用できる硫酸ナトリウムが発生する。また水酸化カリウムを使った場合は、植物の三大栄養素(肥料成分)として知られている硫酸カリウムが発生し、水酸化カルシウムを使った場合は建設素材や土壌改良剤として活用されている石膏が発生するが、いずれも全く活用されていない。また硫酸塩だけでなく反応中間産物である各種蟻酸塩に関しても光酸化障害防止剤、肥料、防除雪氷剤等として活用する事は可能であるが、それに関しても現時点では有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)活用法としては全く利用されていないために本反応の有効利用が行えていない状況にあるものと考えられる。そのため本ステップは必要以上の経済コストがかかる事になり、システム全体が回らなくなっている原因となっている。本発明の着眼点の1つはここにあり、資源循環技術を徹底して進める事によって「有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)からの蟻酸ソーダ法」の経済性を格段に向上させる事が可能となる。
【0008】
前述したように有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温で部分酸化処理すると一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素等が主に発生する。ここで水素とメタンは本来、水素燃料電池の燃料になりうる貴重な資源であるが、同時に生産される一酸化炭素が燃料電池触媒に悪影響を及ぼすために利用できない状況になっている。しかしながら上で述べた方法でこの有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)不完全燃焼ガスから一酸化炭素を除去すると後に残る水素及びメタンは水素燃料電池の電子供給源として活用できる。ただメタンガスは燃料電池導入前に水素ガスへの改質が求められるので、システムとしてはまず水素ガスを水素燃料電池発電で消費した後に残ったメタンガスを水素ガス改質した上で燃料電池発電に使う形が望ましい。この点も従来、誰もが気づいておらず、本発明の骨子の1つになっている。
【0009】
以上のようなステップで有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)不完全燃焼ガス中の一酸化炭素、水素、メタンを全て燃料電池発電に活用した後に残るガスの大半は二酸化炭素であるが、カーボンニュートラルとして空気に放出し、植物・シアノバクテリア等の光合成素材として自然利用させるのが望ましいと考えられる。そしてその後に残るのは「すす」等の炭素分であるがこれは肥料成分として土壌に還元するのが望ましいだろう。そうすれば有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)に由来する大半の炭素が循環できる。
【0010】
また、請求項1〜9に示した方法を用いて有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から混合ガスを発生させる過程で生じた炭化物(若しくはコークス)を1000℃程度に過熱した上で水蒸気を作用させて生産した一酸化炭素に請求項1〜9の方法を更に適用する資源循環方法も考える必要がある。一般に一酸化炭素はコークスを1000℃程度に過熱した上で水蒸気を作用させて生産されているが、このコークス部分を有機系廃棄物廃棄物に置き換えるのである。そうすればここで生じた一酸化炭素から更に蟻酸を生産可能であり、其の蟻酸を用いて燃料電池発電を行う事が可能となる。なお従来、コークス由来の一酸化炭素を用いて行われてきている酢酸ソーダ法での蟻酸生産では副産物の硫酸塩等がやはり循環活用されていない。何度も述べているが、酢酸ソーダ法で強塩基に例えば水酸化カリウムを用いれば蟻酸と共に副産物として硫酸カリウムが出来るがこれはカリ肥料として利用すべきなのである。
【0011】
以上述べてきた「有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)からの蟻酸ソーダ法」によって生産された蟻酸は何も水素生産菌の基質にする必要はなく、そのままダイレクト蟻酸燃料電池発電に用いればよい。ダイレクト蟻酸燃料電池はテキオン社が行っているように蟻酸用に触媒が改良されたシステムが望ましいが、金属空気電池という面では同じである従来のダイレクトメタノール燃料電池で稼動させる事も可能である。ダイレクトメタノール燃料電池は現在最も使われている燃料電池形態の1つであり、そのインフラがそのまま(あるいは少し改良した形で)活用できる事は本発明の社会適用を格段に容易にするであろう。なお、本発明を可能とする装置は、単に(1)有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)にガス化剤として、水蒸気+酸素(空気)を加え、800〜1000℃程度で部分燃焼させる区、(2)トラップした燃焼ガスと強塩基との反応区、(3)蟻酸塩と硫酸の反応区、(4)生じた蟻酸を真空蒸留して精製する区、(5)蟻酸を水で希釈した上でダイレクト蟻酸燃料電池に直結させる区の5つのコンパートメントをこの順番に組み合わせれば良い。また、必要に応じて一酸化炭素を除去した有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)不完全燃焼ガスを直接(若しくはメタン改質装置も付けて)水素燃料電池に投入するシステムを組み合わせる事も重要である。なお請求項1の方法で行う場合は(3)、(4)の部分は必要なく、生じた蟻酸塩を直接(5)に回せばよい。
【0012】
本装置の一部は全国の自治体が所有するゴミ焼却施設に併設する形をとるのが効率的であり、所謂「燃えるゴミ」(生ゴミ類、紙類、木製品類、プラスチック類、ゴム製品類、皮革製品類等)として収集した有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)にガス化剤として、水蒸気+酸素(空気)を加え、800〜1000℃で部分燃焼させガス化し、上に述べたような形でガスを有効活用した上で最終的には生じたダイオキシンを分解するため更に高温処理するのが望ましいだろう。
【0013】
また以上示してきたように有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を不完全燃焼してガス化しなくとも加圧熱水法、超臨界水法等を用いれば蟻酸等の低分子有機物を生産する事は可能であり、そこで生産した蟻酸等の低分子有機物をダイレクト有機物燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置を活用する事も重要である。またその際、生じた有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)残渣を(加圧熱水法等で熱をとるための)燃焼源、肥料等として循環利用する方向性も忘れてはならない。従来、加圧熱水法(200〜300℃)、超臨界水法(400℃前後)等を用いれば有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から蟻酸等の有機酸が生産できる事は公知の事実として知られてきているが(参考文献:日本エネルギー学会http://www.jie.or.jp/14taikai−s3−0804−B.htm)、それをダイレクト燃料電池発電に活用する発想は存在していなかった。それは今まで蟻酸等の有機酸が金属空気燃料電池の有効な燃料になりうる事が十分には知られていなかったためであり、コロンブスの卵的な展開であるが、その産業的重要性を考えると十分な新規性、独自性を持つ請求項になるものと信ずる。また、発明者らは蟻酸だけでなく同じく有機物であるシュウ酸やL(+)−アスコルビン酸も既存のダイレクトメタノール燃料電池で稼働する事を確認できており、金属空気電池は幅広い低分子有機物で発電を可能にしている事が裏付けられた。従って、蟻酸に関わらず加圧熱水法、超臨界水法で有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から得られる低分子有機物質を同様に発電対象として考えていく必要が今後高まるものと予測される。
【0014】
次に有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)からの資源循環型の水素発酵技術・蟻酸発酵技術について説明する。背景技術の項で述べたように田口文章博士らはシロアリの腸内細菌から強力な水素生産菌(絶対嫌気性菌)をパンダの糞から強力な生ゴミ分解菌をそれぞれ分離した上で硫酸糖化した有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)糖化液を用いて水素発酵させ発生した水素を水素燃料電池に供すると同時に発酵残渣の大半をパンダ糞分離菌により消滅させるシステムの構築に成功している(特開2003−169689、特開2002−355022、特開2002−355029、特開2001−157)。基本的には水素発酵自体はこの卓抜したシステムをそのまま(もしくは若干改良した形で)使えばよい。ただ問題は本システムでは有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)硫酸糖化残渣の有効活用を行っていないという点である。そのため糖化経費が電力生産経費よりも嵩み、硫酸糖化を行うならば経済的には回らないジレンマに陥っている事が推測される。従って、少なくとも其の点は本発明を導入する必要があり、硫酸糖化を中和する過程で発生する石膏含有有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)残渣を、石膏ボード、上壌改良剤、水質浄化剤等として市場に出す必要が出てこよう。この点、蟻酸発酵に関しても本質的には同じであり、水素生産菌の代わりにハロモナス等の蟻酸生産菌を使いさえすればよい。
【0015】
なお硫酸カルシウム(石膏)は土壌改良剤として活用されている(文献:松本聰、日本農芸化学会シンポジウム「地球環境の再生へ向けて」世界の問題土壌とその再生への要素技術の開発、2000;松本聰,中野圭一,雷玉平,石川祐一.「中国河北省九連城地域のアルカリ土壌改良と植林」、日本土壌肥料学会講演要旨集.50:163、2004)と同時にカルシウム肥料にもなるので土壌還元に特に有利である。また酸糖化に燐酸を用いた場合でも生石灰中和後に発生する燐酸カルシウムは燐酸肥料として有効に機能し、土壌生態系に発電残渣を還元する上でやはり有利に働くであろう。
【0016】
またこの水素発酵システムにおいて発生する発酵残渣も生ゴミ分解菌で消滅(無機化)させるのでは資源の有効利用効果が限定されてしまい社会への大規模導入が難しくなる。水素発酵後の炭素源、窒素源を大量に含む残渣を肥料、土壌改良材若しくは他の発酵産物等を製造する方向性を確保しておく必要性がどうしてもあろう。例えば生分解性プラスチックに使われている乳酸、コハク酸発酵や飼料等に使われているアミノ酸発酵等にこの発酵残渣を用いる事も可能と考えられる。安易に消滅(無機化)させるのは資源の浪費になりかねない。
【0017】
次に有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)糖化液からの他の発酵生産物の製造方法について説明する。稲藁、刈草等の木質・草本系有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)、活性汚泥等の糞尿系有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)、食品産業廃棄物、古紙、生ゴミを含む有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を必要に応じて細分化・粉砕後、硫酸等で酸糖化した上で酸化カルシウム、水酸化カリウム等のアルカリ物質で中和して得た低分子有機物含有液若しくは加圧熱水処理して得た低分子有機物含有液に、ダイレクト有機物燃料電池を含む幅広い用途に利用可能なエタノール産生菌、乳酸・コハク酸等有機酸産生菌、アミノ酸発酵菌、イノシン等核酸発酵菌、微生物蛋白(SCP)関係菌、抗生物質等生理活性物質産生菌、生理活性蛋白・ペプチド生産菌、産業用酵素産生菌、植物成長促進微生物(PGPR、菌根菌、窒素固定菌)のいずれかを植菌し培養する事によって各種有機酸、エタノール、アミノ酸、イノシン等核酸、抗生物質等生理活性物質、生理活性蛋白・ペプチド、産業用酵素、微生物蛋白(SCP)、プロバイオティクス剤、生物肥料のいずれかの生産を行うと同時に、固液分離によって発生する有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)残渣を、(加圧熱水法等で熱をとるための)燃焼源、土壌改良材、濁水抑制材、微細土壌流出抑制材、堆肥化素材、建築資材等のいずれかとして活用すればよく、其の点、発酵後の炭素源、窒素源を大量に含む残渣を肥料、土壌改良材として活用する点も含めて、基本的には既に説明した方法と同じである。大事な点は有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)からエネルギーのみを生産するというやや近視眼的なスタンスを取らずに素材、医薬、食品等も生産するというスタンスを確保する必要があるという点で、そうしないと採算性がとれない事が多い。特に有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)やバイオマスに対し硫酸糖化を行う場合、システム導入にあたって硫酸経費が大きな律速段階となるので、硫酸糖化後の中和物を肥料、土壌改良剤、建設素材として有効活用するシステムを稼動させる事が極めて重要な意味を持ってくる。更に具体的に説明すると、硫酸糖化後に水酸化カリウムで中和した際に発生する硫酸カリウムを含んだ残渣をカリ肥料に、水酸化カルシウムで中和した際に発生する硫酸カルシウム(石膏)を含んだ残渣を石膏ボード、土壌改良剤、カルシウム肥料にして販売するか、熱源活用できないと硫酸糖化は経済的に回りにくい。
【0018】
なお、この技術体系は単に発電や発酵生産を行うだけでなく、秋田県で問題となっているカドミニウム汚染土壌やアメリカ合衆国やウクライナで問題となっている放射能汚染土壌、更にはオーストラリアや中国等で問題になっている塩類集積土壌を植物環境修復する上でも有効に機能する。様々な有害物質で汚染された土壌や排水等に有害物質を蓄積可能な植物を生育させ、そこで得られた植物体を有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)不完全燃焼法や加圧熱水法等で蟻酸化し燃料電池発電に回せば浄化経費を発電収入等で賄う事が可能となる。その際、様々な有害物質の内で焼却できない重金属等の場合は灰に残るがそれはそれで金属リサイクル等に回せばよい。また水素発酵法(若しくは蟻酸発効法)を用いた場合は有害物質は発酵残渣に残るが、それはそれで(イオン性物質の場合は)電気分解若しくはグルコース燃料電池法等で回収すればよい。なお、北海道等ではホタテのウロに大量のカドミニウムが含まれるため、その食品廃棄物を処理するために電気分解除去法を用いた上で肥料化してきた。本方法はそういったケースでも上の手法を用いれば有効に無毒化可能とうる
【0019】
また近年、燃料電池自動車の開発が進んでいるが自動車に搭載する燃料電池の経費(特に白金及びセパレーター)が嵩むため現時点では1台1億円を越える状態で普及には程遠い状態である。従ってヤマハの電動自転車(パス)のように自動車には燃料電池をあえて搭載せずに充電器のみを電力源として稼動させる発想は有効と考えられるが現時点ではこういった発想の自動車開発は行われておらず、燃料電池自動車の開発は暗礁に乗り上げているとの指摘さえある。従って本発明で示された電力生産法を有効に生かすためには、あえて燃料電池を自動車には搭載せず「充電器のみを電力源として搭載する自動車」を活用する事が1つの方向性であろう。其の上で全国のガソリンスタンドに電気充電装置若しくは、まるでカートリッジにように自動車の電池交換を行えるインフラを設置すれば持続可能な有機系廃棄物発電をより有効に生かせるようになるであろう。
【0020】
なお本燃料電池システムを全国普及させるためには、燃料電池の燃料となる蟻酸、蟻酸塩や水素あるいは水素発酵用の有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)糖化液を全国のコンビニやガソリンスタンド等で販売する販売ネットワークを構築する必要があろう。特に蟻酸は気体の水素と比べると持ち運びに便利であると同時に腐りにくく、かつメタノールと比較すると引火性がない点は安全である。ただ、蟻酸は網膜等に対する毒性を有するので、家庭利用を促進させるためには家庭内で不慮の事故が起こらぬよう警告色や刺激味を付け、更にその味、色成分の双方がダイレクト蟻酸燃料電池の燃料としても機能する形にアレンジする必要がある。そして其の点への対処を行った上で、ダイレクト蟻酸燃料電池を搭載した家電、ロボット、自動車等の普及を促進させる事が望まれる。またそういった場合、有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を不完全燃焼させたり硫酸糖化させたりするステップは農協や町民会館などの地域のセンターで行えば良く各家庭におく必要はない。各家庭に設置するのは燃料電池セルのみか、もしくは水素発酵タンクと燃料電池セルのセットで十分であろう。なお、有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)のガス化若しくは低分子化の過程で必要な熱は、有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)そのものを燃焼させてとるか、若しくは(糖化ステップ等で発生する)有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)残渣の燃焼でとればより有効にシステムを動かす事が可能となろう。また石油系プラスチック等の他の廃棄物燃焼処理時に発生する熱のコジェネを使うのも良いであろう。
【0021】
以上の技術体系を適用できれば生物系廃棄物を含む有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から多大な電力が確保できるので従来、火力発電で賄ってきた電力量の一部が低減でき、その分、二酸化炭素排出量が低減できる効果もあり、現時点で既に達成不可能と評されている京都議定書での目標値を達成する上で有利に働くであろう。其の点、国策化した感があるクールビズ効果とは比較にならない。また二酸化炭素排出量以上に原子力発電からの高レベル放射性廃棄物排出量を減らせる点の方が重要であるのは言うまでもない。原子力プラントは多目的には今後も必要であるが発電目的のものは今後は徐々に削減していく必要があろう。
【0022】
最後に本システムを稲藁等の農耕地生態系でも適用する場合は、農耕地における農業生産性が下がらないように農耕地の窒素収支、炭素収支、ケイ酸収支をモニタリングし発酵残渣などを肥料として適宜補充していく必要がある。また農耕地生態系や下水処理場等の生物系廃棄物以外の有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を活用する場合は、有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)の乱獲により生態系を破壊しないようにやはり元素循環に留意した保全プログラムを同時に働かせる必要がある。その上で本発明で示したシステムを有効に稼働させれば人類は新たな文明進化を遂げる可能性が出てくる。本システムが世界の平和と人類の福祉、そして多様性社会の実現につながる事を祈りたい。
【実施例】
【0023】
(実施例1)松葉50gおよび松の樹皮50gを鋏等で裁断しミルで粉砕後,濃硫酸10mLを予め加えた蒸留水1Lを加え,懸濁した上で120℃,3時間,加温加圧処理後,酸化カルシウムでpH7.5に調整した。吸引濾過で固液分離し,硫酸カルシウム・有機物残渣を主成分とする濁水発生抑制剤と糖化液を得た。代掻き開始後に秋田県南秋田郡大潟村内農業用幹線用水路で微細土壌粒子が懸濁した濁水を採取した。500Lビーカーに,濁水400mL,もしくは濁水400mLおよび濁水発生抑制剤5.0gを添加した。緩やかに撹拌した後,静置した。18時間後に,適宜希釈後,JIS K0102に則り,濁度を測定した。すなわち,1mg/Lカオリン懸濁液の波長660nmにおける吸光度を濁度1度とし,0〜100mg/Lのカオリン懸濁液を用いて作成した検量線から,試料の吸光度を測定し,濁度に換算した。その結果,原水の濁度が280度,18時間静置後に160度までしか低下しなかったのに対して,濁水発生抑制剤5.0gを添加することにより,濁度は18度まで顕著に低下した。この結果は,本濁水発生抑制剤が,原水に含まれる微細土壌粒子を効果的に凝集・沈降させ,排水への環境汚濁を抑制できることを示唆している。
【0024】
(実施例2)小麦ふすま100gに濃硫酸10mlを予め加えた蒸留水1Lを加え懸濁した上で、120℃、3時間、加温加圧処理後、吸引濾過で固液分離し糖化液を得た。得られた糖化液を酸化カルシウムでpH7.5に中和後、硫酸カルシウムを主とする沈殿物を吸引濾過で除いた上で1Lにフィルアップした。得られた糖化液を100ml三角フラスコに20mlずつ分注しシリコ栓を設定した上でオートクレーブ滅菌し稲藁糖化液培地とした。次にこの培地に以下の3種の微生物を各々植菌した。用いた微生物は以下の通りである。(1)クルイエロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)(2)サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)、(3)バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)NBRC12714。3日間、25℃で静置培養後、培養液を遠心分離し上清をSepPak(C18)でクリーンアップし、2種類の条件でHPLC分析した。一つめの条件は逆相ODS−HPLC(カラム:Mightysil RP−18GP Aqua、4.6×250m、移動相:0.1vol% H3P04,H20/CH3CN=97.5/2.5、流速:1.0ml/min、検出:UV215nm)で、二つめの条件はイオン交換HPLC(カラム:Waters Organic Acid Column7.8×300mm、移動相:3mM HCl04、流速:1.0ml/min、検出:UV215nm)を用い、双方の分析条件の両方が乳酸標準物質と一致する事を確認した上で各々の物質の定量を行い、稲藁1kgあたりに換算した場合、各々何gの乳酸生産性を有しているかを推定した結果、それぞれ31.3±3.3g、14.7±1.7g、32.0±6.4gという数値を示していた。このうちバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)に関してはL乳酸のみを選択的に生産しているものと考えられる。なお、HPLC/UVだけでなく、より精密性が高いLC/MS/MSを用いても同様な結果が得られた。また、ここではデータを示さないが、稲藁に関してもやや収量に劣るものの同様な結果が得られた。
【0025】
(実施例3)3%蟻酸1mlを市販のダイレクトメタノール燃料電池(出力10mW、h−tec)に投入し、ポテンショガルバノスタットを使った方法で抵抗10Ωをかませ測定した結果、閉回路電圧が0.32V、閉回路電流は32mA、出力10mWを示し、そのまま出力1mW以上の発電が少なくとも2時間以上は維持できた。3%シュウ酸、蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウムに関しても同様な発電効果が確認できた。またL(+)−アスコルビン酸に関しても1.1mWの発電効果が確認できたが、酢酸に関しては発電効果が確認できなかった。単純ではあるがこの結果は既存のダイレクトメタノール燃料電池インフラがメタノールだけでなく一定範囲の有機物に対応可能なダイレクト有機物燃料電池としても機能しうる事を示している。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明を適用すれば、日本全体の家庭消費電力が全て国内の生物系廃棄物3.2億トンの処理過程で賄える計算となる。これは5兆円を越える経済波及効果がある事を意味し、国内外のエネルギー産業事情が根底から変わって来る事が予測できる。また発電だけでなく、発電残渣を土壌改良材、肥料等として有効活用する事が可能となると同時に、従来より効率的な土壌汚染修復が可能となるので、土壌浄化市場開拓や肥料市場開拓にもつながるであろう。更には本発明で得られた水素や蟻酸を使った燃料電池車が普及すれば、二酸化炭素排出量を更に大きく低減させる効果があり、二酸化炭素排出権市場にも新たな需要を生み出すであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムのいずれかを高温高圧で作用させて生じた蟻酸塩(蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、蟻酸カルシウム)を融雪剤、摘花剤、光酸化障害防止剤、肥料のいずれかとして用いるか、若しくはその蟻酸塩の水溶液をダイレクト蟻酸塩燃料電池発電に用いると同時に発電過程で排出された強塩基を回収した上で更に上記の蟻酸塩合成反応に繰り返して用いる資源循環方法及び装置。
【請求項2】
有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素に水酸化カルシウムを作用させて生じた蟻酸カルシウムに硫酸等の強酸を高温高圧で作用させた結果生じる硫酸カルシウム等及び蟻酸のうち、硫酸カルシウム等を建設素材、土壌改良剤、若しくは水質浄化剤等として用いると同時に蟻酸をダイレクト蟻酸燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置。
【請求項3】
有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素に高温高圧で水酸化カリウムを作用させて生じた蟻酸カリウムに硫酸等の強酸を作用させた結果生じる硫酸カリウム等及び蟻酸のうち、硫酸カリウム等を肥料等として用いると同時に蟻酸をダイレクト蟻酸燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置。
【請求項4】
有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を高温で部分酸化処理して得た一酸化炭素に高温高圧で水酸化ナトリウムを作用させて生じた蟻酸ナトリウムに硫酸等の強酸を作用させた結果生じる硫酸ナトリウム等及び蟻酸のうち、硫酸ナトリウム等を洗剤原料、ガラス原料、浴用剤等として用いると同時に蟻酸をダイレクト蟻酸燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置。
【請求項5】
請求項2の中間生産物として生じた蟻酸カルシウムを摘花剤、光酸化障害防止剤、肥料等の農業資材に用いる資源循環方法。
【請求項6】
請求項3の中間生産物として生じた蟻酸カリウムを防除雪氷剤、飼料添加剤、肥料、光酸化障害防止剤等に用いる資源循環方法。
【請求項7】
請求項4の中間生産物として生じた蟻酸ナトリウムを防除雪氷剤、光酸化障害防止剤等に用いる資源循環方法。
【請求項8】
請求項1〜4での一酸化炭素を消費する反応で一酸化炭素濃度を減少させた有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)部分酸化処理ガス中の水素ガス及びメタンガスを水素燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置。
【請求項9】
請求項1〜8において有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を部分酸化処理した結果、発生した炭化残渣を肥料、土壌改良剤等に用いる資源循環方法及び装置。
【請求項10】
請求項1〜9に示した方法を用いて有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から混合ガスを発生させる過程で生じた炭化物(若しくはコークス)を1000℃程度に過熱した上で水蒸気を作用させて生産した一酸化炭素に請求項1〜9の方法を更に適用する資源循環方法及び装置。
【請求項11】
加圧熱水法、超臨界水法等を用いて有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)から生産した蟻酸等の低分子有機物をダイレクト有機物燃料電池発電に用いる資源循環方法及び装置。
【請求項12】
請求項11において生じた残渣を肥料若しくは(加圧熱水法等用の)熱源等として活用する資源循環方法及び装置。
【請求項13】
稲藁、刈草等の木質・草本系有機物系廃棄物、活性汚泥等の糞尿系有機物系廃棄物、食品産業廃棄物、古紙、生ゴミを含む有機物系廃棄物を必要に応じて細分化・粉砕後、硫酸糖化し生石灰、水酸化カリウム等のアルカリ物質で中和した低分子有機物含有液若しくは加圧熱水処理等で得た低分子有機物含有液に水素発酵(若しくは蟻酸発酵)させて生じた水素ガス(若しくは蟻酸)を燃料電池発電の電子供給源に用いると同時に、発電前に固液分離によって生じた残渣を、(燃焼用の)熱源、土壌改良材、濁水抑制材、微細土壌流出抑制材、堆肥化素材、建設資材等のいずれかとして活用する事を特徴とする資源循環方法及び装置。
【請求項14】
請求項13において水素・蟻酸発酵後に生じる発酵液残渣を用いて肥料、土壌改良材若しくは他の発酵産物等を製造する方法及び装置。
【請求項15】
稲藁、刈草等の木質・草本系有機物系廃棄物、活性汚泥等の糞尿系有機物系廃棄物、食品産業廃棄物、古紙、生ゴミ、プラスチックを含む有機物系廃棄物(可燃性廃棄物)を必要に応じて細分化・粉砕後、硫酸等で酸糖化した上で酸化カルシウム、水酸化カリウム等のアルカリ物質で中和して得た低分子有機物含有液若しくは加圧熱水処理等で得た低分子有機物含有液に、ダイレクト有機物燃料電池を含む幅広い用途に利用可能なエタノール産生菌、乳酸・コハク酸等有機酸産生菌、アミノ酸発酵菌、イノシン等核酸発酵菌、微生物蛋白(SCP)関係菌、抗生物質等生理活性物質産生菌、生理活性蛋白・ペプチド生産菌、産業用酵素産生菌、植物成長促進微生物(PGPR、菌根菌、窒素固定菌)のいずれかを植菌し培養する事によって各種有機酸、エタノール、アミノ酸、イノシン等核酸、抗生物質等生理活性物質、生理活性蛋白・ペプチド、産業用酵素、微生物蛋白(SCP)、プロバイオティクス剤、生物肥料のいずれかの生産を行うと同時に、固液分離によって発生する有機物系廃棄物残渣を、(燃焼用の)熱源、土壌改良材、濁水抑制材、微細土壌流出抑制材、堆肥化素材、建築資材等のいずれかとして活用する事を特徴とする資源循環方法及び装置。
【請求項16】
請求項15において発酵後に生じる残渣を用いて肥料、土壌改良材等を製造する方法及び装置。
【請求項17】
請求項1〜16において重金属含有土壌、塩類集積土壌、有害物質汚染物質含有土壌若しくは排水等で生育した植物体や有害物質が含まれた食品廃棄物等を発電対象にする事によって問題土壌の植物環境修復や食品廃棄物処理を同時に行う方法及び装置。
【請求項18】
請求項1〜17の方法を用いた二酸化炭素排出量の抑制方法。
【請求項19】
請求項1〜17の過程で発生した電力を有効利用する事を目的とし、燃料電池を搭載せず充電器だけを電力源として搭載した自動車及びそれらに電力若しくは電池供給するガソリンスタンド様パワーステーション。

【公開番号】特開2007−14941(P2007−14941A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228822(P2005−228822)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(500412183)
【出願人】(598170888)
【Fターム(参考)】