説明

共役リノール酸組成物

【課題】治療的および栄養的応用の両方のための、CLAの規定された商業的供給源の開発において、大量の規定された材料を調製するためのプロセスを提供すること。
【解決手段】動物の飼料添加物およびヒト栄養補助食品として効能がある、共役リノール酸を含む新規組成物が提供される。リノール酸をその共役型に変換して得られる組成物は、従来の共役リノール生成物と比較して特定の普通ではない異性体が少ないということにより、上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトおよび動物の栄養物の分野に、および特に共役リノール酸(CLA)の特定の新規組成物に関する。それらの組成物は、9,12-リノール酸の異性化を制御する新規方法に従い調製される。
【背景技術】
【0002】
1978年、Wisconsin大学において、研究者が、調理済み牛肉中に含まれる、突然変異誘発を阻害すると思われる物質の存在を発見した。その物質は、共役二重結合を有するリノール酸の構造異性体(C18:2)の混合物であることが見出された。c9,t11およびt10,c12異性体が最大多数で存在するが、しかしどちらの異性体が、観測される生物学的活性の原因であるのかは確定していない。標識化取り込み研究から、9,11異性体が、幾分優先的に動物組織のリン脂質画分内に取り込まれて組み込まれ、そして10,12異性体はより少ない量であるようであることが注記されている。(Ha.ら、Cancer Res.、50:1097(1991)を参照のこと)。
【0003】
共役リノール酸(CLAと名付ける)に伴う生物学的活性は、多様であり、そして複雑である。現在、作用の機構についてはほとんど知られていないが、いくつかの前臨床および臨床試験が次第に、生理学的および生化学的作用モードに新たな光を注いでいるようである。CLAの抗発ガン性特性は十分に記録されている。CLAの投与は、Ha.ら、Cancer Res.、52:2035s(1992)により実証されているように、ラット乳房腫瘍形成を阻害する。Ha.ら、Cancer Res.、50:1097(1991)は、マウス噴門洞新形成(forestomach neoplasia)モデルにおける類似の結果を報告した。CLAはまた、インビトロで、標的ヒト黒色腫、結腸直腸および乳ガン細胞に対する強力な細胞障害剤として確認されている。最近の主要な総説物は、個々の研究から引かれた結論を確立している(Ip、Am.J.Clin.Nutr.、66 (6つの補足):1523s (1997))。
【0004】
CLA作用の機構は依然としてはっきりしないが、免疫系のある成分(単数または複数)が、少なくともインビボで、含まれ得ることの証拠がある。米国特許第5,585,400号(Cookら、本明細書中で参考として援用される)は、CLAを含む食事を投与することにより、I型またはTgE型過敏症により媒介される動物のアレルギー反応を弱める方法を開示している。約0.1〜1.0%の濃度のCLAはまた、白血球の保存において、効果的なアジュバントであることが示された。米国特許第5,674,901号(Cookら、本明細書中で参考として援用される)は、遊離の酸または塩の形態のいずれかでCLAを経口または非経口で投与することが、細胞性免疫に伴うCD-4およびCD-8リンパ球亜集団(subpopulations)における上昇をもたらしたことを開示した。外因性腫瘍壊死因子での前処置から発生する悪影響は、CLAが投与された動物におけるCD-4およびCD-8細胞のレベルの上昇または維持により、間接的に軽減され得る。最後に、米国特許第5,430,066号(本明細書中で参考として援用される)は、免疫刺激による体重減少および食欲不振の予防におけるCLAの効果を記載している。
【0005】
上記で記載されるようなCLAの潜在的な治療的および薬理学的応用とは別に、栄養補助食品としてのCLAの栄養物的使用について、大きな盛り上がりがあった。CLAは、身体の組成に絶大で総合的な効果を及ぼし、特に脂肪および除脂肪組織の塊の分配を向け直す(redirecting)ことが見いだされている。米国特許第5,554,646号(Cookら、本明細書中で参考として援用される)は、栄養補助食品としてCLAを利用する方法を開示しており、ここでブタ、マウス、およびヒトは0.5%のCLAを含む食事を与えられた。それぞれの種において、脂肪含有量における顕著な下落が、タンパク質質量における増加と同時に観測された。これらの動物において、CLAの添加による食事の脂肪酸含有量の増加が体重の増加をもたらさないで、身体内の脂肪および除脂肪の再分配を伴ったことは興味深い。別の目的の食事的現象は、飼料の転化におけるCLA補助の効果である。米国特許第5,428,072号(Cookら、本明細書中で参考として援用される)は、CLAを動物(鳥類および哺乳動物)の飼料に組み込むことが、飼料の転化の効率を増加させ、CLAが補助された動物におけるより大きな体重増加を導くことを示すデータを提供した。食用動物飼育者に対してCLA補助の潜在的な有益な効果は明らかである。
【0006】
CLAにおける別の重要な目的の源、およびその初期の商業的可能性を強調するものは、それが、ヒトおよび動物などにより消費される食品および飼料中に天然に生じるものであることである。特に、CLAは反芻動物由来の製品中に豊富である。例えば、CLAが種々の乳製品において測量される、いくつかの研究が行われている。Anejaら、J.Dairy Sci.、43:231 (1990)は、牛乳をヨーグルトへ加工処理することが、CLAの濃縮をもたらすことを観測した。(Shantaら、Food Chem.、47:257(1993))は、加工処理温度の上昇および乳清の添加の組合せが、プロセスチーズの調製の間にCLA濃度を増加させたことを示した。別の研究において、Shantaら、J.Food Sci.、60:695 (1995)は、加工処理および貯蔵条件はCLA濃度を認め得るほどに減少させないものの、彼らはどのような増加も観測しなかったことを報告した。実際、いくつかの研究は、季節によるまたは動物間の可変性が、牛乳のCLA含有量における3倍もの違いの説明となり得ることを示唆してきた。(例えば、Parodiら、J.Dairy Sci.、60:1550 (1977)を参照のこと)。また、Chinら、J. Food Camp. Anal.、5:185 (1992)により注記されるように、食事的要因は、CLA含有量の可変性に関係している。天然の供給源におけるCLA含有量のこの可変性のために、種々の食物の規定された量の摂取は、個体または動物が、所望の栄養的効果を達成することを確実にするための最適な用量を受けることを保証しない。
【0007】
リノール酸は生体脂質の重要な成分であり、そして有意な割合のトリグリセリドおよびリン脂質を含む。リノール酸は、「必須」脂肪酸として知られ、これは、リノール酸が自家合成され得ないために、動物はそれを外来性の食事的供給源から得なければならないことを意味する。CLA形態のリノール酸を組み込むことは、非共役リノール酸が移動してきたであろう脂質部位へのCLAの直接の置換をもたらし得る。しかし、このことは立証されておらず、そして非常に有益であるがしかし説明のついていない観測された効果のいくつかは、さもなければ脂質構造内の非共役リノール酸が移動してこなかったであろう部位におけるCLAの再配置から生じることさえあり得る。動物CLAの、特に乳製品における1つの供給源は、天然のリノール酸上の、最初にリノール酸をCLAに異性化し、次いでそれを反芻胃腔中に分泌する、特定の反芻胃バクテリアの生化学的作用から来ることが、現在明らかである。Keplerら、J.Nutrition、56:1191(1966)は、リノール酸の生体水素化における中間体としての9,11-CLAの形成を触媒する反芻胃バクテリア、Butyrivibrio fibrisolvensを単離した。Chinら、J.Nutrition、124:694 (1994)はさらに、対応する細菌を持たないラットがCLAを産生しないことから、齧歯類の組織で見いだされるCLAがバクテリアと関連することを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
治療的および栄養的応用の両方のための、CLAの規定された商業的供給源の開発において、大量の規定された材料を調製するためのプロセスが必要とされる。従来のアプローチにより作られる大抵のCLA製品が持つ問題は、バッチごとのイソ型(isoform)におけるそれらの不均一性および実質的な可変性である。かなりの注意が、動物脂肪の代わりに大量の水素添加した油およびショートニングを摂取することがtrans-脂肪酸含有量が高い食事をもたらすという事実に向けられてきた。例えば、Holmanら、PNAS、88:4830(1991)は、水素添加した油で食餌したラットが、ラットの肝臓において、天然に生じるポリ不飽和脂肪酸の通常の代謝を妨げると思われる、普通でないポリ不飽和脂肪酸異性体の蓄積を起こすことを示した。これらの関係は、Am.J.Public Health. 84:722 (1974)の初期論説において要約されていた。それ故、規定された組成物の生物学的に活性なCLA製品に対する強い要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、精製された食品グレードの種子油由来の、異性化脂肪酸の新規組成物を提供する。実際問題として、少なくとも50%のリノール酸を含むように選択される種子油に含まれるリノール酸は、代表的には90%より多い9,12-オクタデカジエン酸異性体である。異性化の間に、9,12-オクタデカジエン酸は他の異性体の混合物に変換されて、少なくとも50%のCLAを有する組成物を形成する。
【0010】
共役リノール酸含有組成物は、ヒトおよび食用動物(例えば、畜牛、ブタ、ヒツジ、およびトリ)を含む動物の両方による、ならびにヒト医薬および栄養補助物としての消費が意図される。これらの応用のための安全で規定された製品を提供することは、本発明の重要な目的である。また、従来の製品はかなりの量の未知の脂肪酸種および加工処理から生じる普通でない異性体を含む。普通でないCLA異性体の中には、11,13-オクタデカジエン酸および8,10-オクタデカジエン酸異性体がある。
【0011】
従って、本発明は以下を提供する
1.少なくとも50%の共役リノール酸を含む組成物であって、該組成物は1%未満の天然に存在しないオクタデカジエン酸異性体を有することで特徴づけられる、組成物。
【0012】
2.前記組成物が、全部で1%未満の11,13-オクタデカジエン酸異性体およびトランス-トランスオクタデカジエン酸異性体を含む、項目1に記載の組成物。
【0013】
3.前記組成物が、全部で1%未満の8,10-オクタデカジエン酸異性体およびトランス-トランスオクタデカジエン酸異性体を含む、項目1に記載の組成物。
【0014】
4.前記組成物が全部で1%未満のt9,t11-オクタデカジエン酸およびt10,t12-オクタデカジエン酸レベルを有する、項目1に記載の共役リノール酸含有組成物。
【0015】
5.前記組成物が異性化した製品種子油である、項目1〜4に記載のリノール酸含有組成物。
【0016】
6.前記製品種子油がヒマワリ油およびベニバナ油からなる群より選択される、項目5に記載のリノール酸含有組成物。
【0017】
7.遊離脂肪酸共役リノール酸異性体の混合物を含む、生物学的に活性な共役リノール酸組成物であって、該混合物は少なくともほぼ30%のt10,c12オクタデカジエン酸、少なくともほぼ30%のc9,t11オクタデカジエン酸、ならびに全部で約1%未満の8,10-オクタデカジエン酸、11,13オクタデカジエン酸、およびトランス-トランスオクタデカジエン酸を含む、組成物。
【0018】
8.前記t10,c12オクタデカジエン酸を組み込む食用製品をさらに含む、項目7に記載の組成物。
【0019】
9.前記食用製品がヒトの消費用である、項目8に記載の組成物。
【0020】
10.前記食用製品が動物の消費用に処方された飼料である、項目8に記載の組成物。
【0021】
11.以下の構造の多数のアシルグリセロール分子を含む生物学的に活性なアシルグリセロール組成物:
【0022】
【化1】

ここで、R1、R2、およびR3は、ヒドロキシル基およびオクタデカジエン酸からなる群より選択され、該組成物は、少なくともほぼ30%のt10,c12オクタデカジエン酸、少なくともほぼ30%のc9,t11オクタデカジエン酸、および全部で約1%未満の8,10オクタデカジエン酸、11,13オクタデカジエン酸、およびトランス-トランスオクタデカジエン酸を位置R1、R2、およびR3において含むことに特徴付けられる。
【0023】
12.前記t10,c12オクタデカジエン酸を組み込む食用製品をさらに含む、項目11に記載の組成物。
【0024】
13.前記食用製品がヒトの消費用である、項目12に記載の組成物。
【0025】
14.前記食用製品が動物の消費用に処方された飼料である、項目12に記載の組成物。
【0026】
15.以下を含む生物学的に活性な共役リノール酸組成物:共役リノール酸異性体のエステルの混合物であって、該混合物は、少なくともほぼ30%のt10,c12オクタデカジエン酸、少なくともほぼ30%のc9,t11オクタデカジエン酸、および全部で約1%未満の8,10オクタデカジエン酸、11,13オクタデカジエン酸、およびトランス-トランスオクタデカジエン酸を含む。
【0027】
16.前記t10,c12オクタデカジエン酸を組み込む食用製品をさらに含む、項目15に記載の組成物。
【0028】
17.前記食用製品がヒトの消費用である、項目16に記載の組成物。
【0029】
18.前記食用製品が動物の消費用に処方された飼料である、項目16に記載の組成物。
【0030】
19.以下を含む共役リノール酸を生成するためのプロセス:
リノール酸含有種子油、プロピレングリコール、および非水性媒体と混和性のアルカリを提供する工程;
該種子油、該プロピレングリコール、および該非水性媒体と混和性のアルカリを用いて調合された反応混合物を形成する工程;
加熱により該種子油中に含まれる該リノール酸を異性化して、共役リノール酸を形成する工程;および
水処理(aquefying)してグリセロールを放出する工程。
【0031】
20.前記加熱が、130〜165℃で約2〜6.5時間行われる、項目19に記載のプロセス。
【0032】
21.酸性化してグリセロールを放出する工程、真空乾燥して水を除去する工程、および分子蒸留して非共役のリノール酸不純物を除去する工程、ならびに脱臭のさらなる工程を一緒に合わせる、項目19に記載のプロセス。
【0033】
22.前記加熱が、130〜165℃で約2〜6.5時間行われる、項目21に記載のプロセス。
【0034】
23.前記遊離脂肪酸共役リノール酸をリパーゼで処理してトリグリセリドを形成する工程をさらに含む、項目19に記載のプロセス。
【0035】
24.以下を含む低不純物の生物学的に活性な共役リノール酸を生成するためのプロセス:
リノール酸含有種子油、プロピレングリコール、および非水性媒体と混和性のアルカリを提供する工程;
該リノール酸含有種子油を処理して該リノール酸のアルキルエステルを形成する工程;
該アルキルエステル、該プロピレングリコール、および該非水性媒体と混和性のアルカリを用いて調合された反応混合物を形成する工程;
加熱により該アルキルエステルを異性化して、共役リノール酸を形成する工程;および
水処理(aquefying)してグリセロールを放出する工程。
【0036】
25.前記加熱が、130〜165℃で約2〜6.5時間行われる、項目24に記載のプロセス。
【0037】
26.30〜60%の加工処理した種子油、10〜40%のアルカリ、および30〜60%のプロピレングリコールを含む、異性化調合反応混合物。
【0038】
27.生物学的に活性な濃度の共役リノール酸アルキルエステルと一緒に、動物の種および年齢について代表的な割合で、従来の成分から合成された動物の飼料。
【0039】
28.前記食料中の共役リノール酸アルキルエステルの濃度が約0.05〜3.5重量%である、項目27に記載の動物の飼料。
【0040】
29.前記共役リノール酸アルキルエステルが、1%未満の11,13-オクタデカン酸アルキルエステルおよびトランス-トランスアルキルエステルとともに、c9,t11-オクタデカン酸アルキルエステル、およびt10,c12-オクタデカン酸アルキルエステルからなる群より選択される、少なくとも50重量%から約99重量%までのオクタデカン酸アルキルエステル異性体から成る、項目27に記載の動物の飼料。
【0041】
30.家畜の飼料、食品成分、またはヒト栄養補助食品に使用するための共役リノール酸アルキルエステルを生成するためのプロセスであって:
約0.1〜約0.5%の範囲でホスファチジル残基を有する未精製のリノール酸アルキルエステルを提供する工程、
一価の低分子量アルコールの存在下低温でアルカリアルコラートで処理して、少なくとも50%の該リノール酸アルキルエステルの低温での共役リノールアルキルエステルへの異性化を起こす工程、
水性酸を加えることにより酸性化する工程、および
該リノール共役リノール酸アルキルエステルを蒸留しないで該水性酸から分離する工程、を包含するプロセス。
【0042】
本組成物において、合わせて1%未満の11,13異性体、1%未満の8,10異性体、1%未満の二重トランス種(t9,t11およびt10,t12異性体)、および1%未満の全未同定リノール酸種が従来の組成物と比較して存在するように、高い割合のリノール酸が、注意深く制御された反応において最初に共役c9,t11およびt10,c12異性体に変換されて、90%より多いこれらの異性体を生じる。多くの個々の製品操業において、最終組成物は、これらの種の事実上GC分析により検出不可能なレベルを有する。11,13、および8,10、ならびにトランス-トランス異性体の濃度における1%制限は、商業的規模で製造された食品グレードの製品に対する純度の簡便な、そして実際的な品質保証の標準として役に立つ。
【0043】
本発明はまた、必要な純度および規定される組成の、新規共役リノール酸含有組成物を作るための新規プロセスを提供する。プロセスは、特定の非水性溶媒(プロピレングリコール)に、非水性媒体と混和性のアルカリ(例えば、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム)または有機アルカリ(例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)を、金属ベースの異性化触媒系の不在下で溶解する工程、種子油をアルカリ性プロピレングリコール中に調合する工程、不活性ガス雰囲気および大気圧下で、130〜165℃の範囲の、好ましくは約150℃の温度まで、還流しない条件下で加熱する工程、酸性化により脂肪酸画分を分離する工程、および必要に応じてさらに減圧分子蒸留および/または遠心分離により精製および脱水する工程を含む。必要に応じて、プロセスの流れは、加熱工程の前または後のいずれかで、反応混合物が調製された後一時中断され得る。次いで、混合物は、連続的な酸性化および蒸留の工程においてさらに加工処理するために保存され得、そして/または別の場所でさらに加工処理され得る。異性化を果たすために加熱した後、異性化した調合された反応混合物は、30〜60%の加工処理された種子油、10〜40%のアルカリ、および30〜60%のプロピレングリコールを含む。このプロセスにおいて、プロピレングリコールの加熱性能および得られる異性化のパターンのため、プロピレングリコールを利用することが重要である。溶解した脂肪酸反応混合物の成分は、以下のように存在する:
30〜60%の種子油
10〜40%のアルカリ
30〜60%のプロピレングリコール。
【0044】
従って、いくつかの実施態様において、プロセスは、リノール酸含有種子油、プロピレングリコール、および非水性媒体と混和性のアルカリを含む調合された反応混合物を形成する工程、上述の種子油に含まれる上述のリノール酸を加熱することにより異性化して共役リノール酸を形成する工程、水処理して(aquefying)グリセロールを放出する工程を含む。他の望ましくない有機溶媒(例えば、エチレングリコール)が使用される場合に提起されるような毒性は回避される。還流しない条件下、異なる脂肪酸組成の油で所望の結果を得るための範囲にわたり、加工処理温度を変えることが可能である。温度が上昇するほど、トランス,トランス種、ならびに他の望ましくない、および同定されない種の割合が増加するため、温度は重要である。加工処理時間は約2〜6.5時間を必要とし、そして90%より大きい、しばしば99.5%ぐらい高い異性化収率を与える。いくつかの実施態様において、リノール酸含有種子油は最初に、処理されてリノール酸のアルキルエステル(例えば、メチルエステルまたはエチルエステル)を生成し得る。さらに別の実施態様において、生成される共役リノール酸は、グリセロールの存在下リパーゼで処理することによりトリグリセリド中に組み込まれ得る。他の実施態様において、本発明は、上記のプロセスにより生成される低不純物のCLA調製物を提供する。
【0045】
本プロセスにおいて、ヒマワリおよびベニバナ油の高い天然の9,12リノール酸含有量のために、しかしまた低いレベルのステロール混入リン脂質、および加工処理装置を汚し、そしてより低い純度の最終生成物を生じる傾向がある他の残留物のために、ヒマワリおよびベニバナ油の使用が好ましい。他の種子油(例えば、コーン、大豆、および亜麻仁油)もまた用いられ得るが、最終生成物は組成的により定義されず、そして不純物レベルは上記で企図される品質制御のための閾値に近づくことから逸れ得、そして異性化プロセス自身がより予測可能でなくなる。加工処理ユニットあたりの収率を最適化するために、実際問題として、少なくとも50%のリノール酸を含む種子油が工業的異性化のために望ましいが、より少ない、またはより多いリノール酸含有量を有するリノール酸含有物質で出発することに、プロセスの制限はない。より少ないリノール酸含有量は、異なる供給源からの油が調合される状況においてか、または油が異性化の前に非油成分と合わせられる場合として生じ得る。同様に、異性化流体のリノール酸含有量は、精製した、または合成されたリノール酸が異性化されるべきである状況におけるように、天然の種子油に存在するレベルよりも非常に高いものであり得る。
【0046】
いくつかの実施態様において、上記で記載される低不純物のCLAは、アシルグリセロールまたはアルキルエステルとして提供され得る。従って、いくつかの実施態様において、多数の以下の構造式のアシルグリセロール分子を含むアシルグリセロール組成物が提供される:
【0047】
【化2】

ここで、R1、R2、およびR3は、ヒドロキシル基およびオクタデカジエン酸からなる群より選択され、組成物は、少なくともほぼ30%のt10,c12オクタデカジエン酸、少なくともほぼ30%のc9,t11オクタデカジエン酸、および全体で約1%未満の8,10オクタデカジエン酸、11,13オクタデカジエン酸、およびトランス-トランスオクタデカジエン酸を位置R1、R2、およびR3において含むことに特徴付けられる。同じく、他の実施態様において、共役リノール酸異性体エステルの混合物を含む共役リノール酸組成物が提供され、混合物は、少なくともほぼ30%のt10,c12オクタデカジエン酸、少なくともほぼ30%のc9,t11オクタデカジエン酸、および全体で約1%未満の8,10オクタデカジエン酸、11,13オクタデカジエン酸、およびトランス-トランスオクタデカジエン酸を含む。
【0048】
代替的な実施態様において、本発明のCLA遊離脂肪酸、アシルグリセロール、およびアルキルエステルは、動物飼料およびヒト消費のための食品を含む食用製品とともに処方され得る。他の実施態様において、本発明のCLA組成物は、生理学的に受容可能なキャリアまたは経口送達ビヒクルとともに処方され得る。他の実施態様において、低不純物のCLAの生物学的効果が利用され得る。
【0049】
本発明において、飼料または食品安全共役リノール酸アルキルエステルが、8,10;11,13;およびトランス,トランス種の形成を制限しながら、所望の10,12および9,11異性体への異性化を優先的に制御する条件下で製造される。そのような条件は、種子油が分裂してグリセロール骨格から遊離脂肪酸を放出し、次いで異性化の前にエステル化する、アルカリアルコラート触媒反応を用いることによりかなえられる。このプロセスの商業的に実行可能な製品への適応の鍵は、コストを加えるプロセスの工程の減少である。代表的には、種子油の非油成分由来の残留物(例えば、ステロールおよびホスファチド)は装置を汚し、そして飼料または食品利用のための嗜好性を減少する。代表的な種子油(例えば、大豆またはコーン)の場合、これらの残留物は、CLA-エステル生成物が消費製品において使用され得なくなるのに十分な量で存在する。
【0050】
本発明の組成物において、非油残留物は油成分から精製されて除かれるのではなく、むしろ油の供給源が、そのような残留物を受容可能なレベルに維持するように選択される。油供給源としてヒマワリまたはベニバナ油を選択することにより、決定的な残留物レベルが、大規模なゴム質除去(degumming)および蒸留加工処理工程無しに、0.1と0.5%との間のホスファチド、および5と20%未満との間のカンペステロールおよびスチグマステロールをそれぞれ含む鹸化出来ないステロール画分に制御され得る。生成するリノール酸アルキルエステルは、少なくとも50重量%から約99重量%までの、種々の可能な個々の割合のc9,t11-オクタデカン酸アルキルエステルおよびt10,c12-オクタデカン酸アルキルエステルの組合せを表すオクタデカン酸エステル異性体から成る。アルカリアルコラート触媒プロセスにおいて、おおよそ同量のこれらのエステル異性体がそれぞれ生成されるが、しかし相対的割合は、1種類の異性体が豊富である一方の、または他方の組成物を加えることにより変更され得る。次いでCLAエステルは、飼料を動物の種および年齢に対して代表的な割当で従来の成分から合成し、そしてそれらを共役リノール酸アルキルエステルと生物学的に活性な濃度で、一般に約0.05〜3.5重量%で調合することにより、動物飼料中に組み込まれ得る。
【0051】
本発明のCLA-エステル生成物は、未精製のリノール酸、例えば精製工程にかけられていないリノール酸供給源の直接の異性化により得られる。CLA-エステル組成物は、c9,t11-オクタデカン酸エステルおよびt10,c12-オクタデカン酸エステルのエステル異性体混合物のうち、少なくとも50重量%(実質的に100%まで)のエステル異性体を含む第一の部分、凝集重量で約10%未満の構造8,10-オクタデカン酸エステル、11,13-オクタデカン酸エステル、およびトランス-トランス-オクタデカン酸エステルのエステル異性体を含む第二の部分、および全組成物重量の0.1と0.5%との間であるホスファチジル残留物を含む第三の部分を有する。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルなどであり得る。c9,t11およびt10,c12異性体の濃度の調整は、一方または他方の異性体が豊富な組成物を加えることによりなされ得、第一の組成物部分に含まれるc9,t11またはt10,c12はそれぞれ、オクタデカン酸エステルの全異性体の60%より多くを構成するエステル組成物を生じる。
動物飼料、食品原料成分、またはヒト栄養補助食品に適した食品グレードの組成物をもたらす本発明のプロセス実施態様において、0.5%未満のホスファチジル残留物を有する未精製のCLA-エステルは、一価の低分子量アルコール(例えば、メチルまたはエチルアルコール)の存在下アルカリアルコラートで処理され、少なくとも50%のエステルがCLA-エステルに変換されるまで低温(約90〜145℃)での処理が続行され、水性酸を加えることにより酸性化され、次いで蒸留工程無しに、水性酸からCLA-エステルが分離される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、CLAを生成するために使用される手順のフローダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明
定義:
本明細書中で使用されるように、「共役リノール酸」または「CLA」は、任意の共役リノール酸またはオクタデカジエンの遊離脂肪酸を示す。この用語は、分子内の任意の場所に2個の共役炭素炭素二重結合を持つリノール酸の、全ての位置異性体および幾何異性体を包含し、そして示唆することが、意図される。CLAは、通常のリノール酸が炭素原子9および12に二重結合を有する点において、通常のリノール酸と異なっている。CLAの例は、以下の位置異性体のシス-およびトランス異性体(「E/Z異性体」)を含む:2,4-オクタデカジエン酸、4,6-オクタデカジエン酸、6,8-オクタデカジエン酸、7,9-オクタデカジエン酸、8,10-オクタデカジエン酸、9,11-オクタデカジエン酸、および10,12-オクタデカジエン酸、11,13-オクタデカジエン酸。本明細書中で使用されるように、「CLA」は、単一の異性体、2種以上の異性体の選択された混合物、および天然の供給源から得られる異性体の非選択性の混合物、ならびに合成および半合成CLAを包含する。
【0054】
本明細書中で使用されるように、CLAの「トリグリセリド」は、トリグリセリド骨格の任意の、または全ての3つの位置にCLAを含むことが意図される。従って、CLAを含むトリグリセリドはCLAの任意の位置異性体および幾何異性体を含み得る。
【0055】
本明細書中で使用されるように、CLAの「エステル」は、エステル結合を介してアルコールまたは任意の他の化学基(生理学的に受容可能な、天然に生じるアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)を含むが、これらに限定されない)と結合した、任意のおよび全てのCLAの位置異性体および幾何異性体を含む。それ故、CLAのエステルまたはエステル化CLAは、CLAの任意の位置異性体および幾何異性体を含み得る。
【0056】
CLAの「天然に生じない異性体」は、オクタデカジエン酸のc11,t13;t11,c13;t11,t13;c11,c13;c8,t10;t8,c10;t8,t10;c8,c10;およびトランス-トランス異性体を含むがこれらに限定されず、そしてオクタデカジエン酸のt10,c12およびc9,t11異性体を含まないことが意図される。「天然に生じない異性体」はまた、それらの異性体が、CLAがアルカリ異性化により合成される場合に、一般に少量で生成されることから、CLAの「少数異性体」として示され得る。
【0057】
本明細書中で使用されるように、「低不純物」のCLAは、全体で1%未満の8,10オクタデカジエン酸、11,13オクタデカジエン酸、およびトランス-トランスオクタデカジエン酸を含有する、遊離脂肪酸、アルキルエステル、およびトリグリセリドを含むCLA組成物を示す。
【0058】
「調製された食用製品」は、ヒトが消費することに対して認可された任意の包装前の食品を意味する。
【0059】
本明細書中で使用されるように、「c」はシス配向にある化学結合を包含し、そして「t」はトランス配向にある化学結合を示す。CLAの位置異性体が「c」または「t」なしで表されている場合、その表示は全ての4個の可能な異性体を含む。例えば、10,12オクタデカジエン酸は、c10,t12;t10,c12;t10,t12;およびc10,c12オクタデカジエン酸を包含するが、一方t10,c12オクタデカジエン酸またはCLAは、まさにその単一の異性体を示す。
【0060】
本明細書中で使用されるように、用語「油」は、長鎖脂肪酸(例えば、CLA)または他の長鎖炭化水素基を含む、自由に流れる液体を示す。長鎖脂肪酸は、CLAの種々の異性体を含むが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書中で使用されるように、用語「生理学的に受容可能なキャリア」は、油性の医薬品とともに通常使用される任意のキャリアまたは賦形剤を示す。そのようなキャリアまたは賦形剤は、油、デンプン、ショ糖、および乳糖を含むが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書中で使用されるように、用語「経口送達ビヒクル」は、医薬品を経口で送達する任意の手段を示し、カプセル、丸剤、錠剤、およびシロップ剤を含むが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書中で使用されるように、用語「食用製品」は、ヒト、非反芻動物、または反芻動物により消費されるのに適した任意の食品または飼料を示す。「食用製品」は、調製されたおよび梱包された食品(例えば、マヨネーズ、サラダドレッシング、パン、またはチーズ食品)、または動物の飼料(例えば、押し出し成形された、および小さく丸められた動物の飼料、または粗雑な混合飼料)であり得る。
【0064】
本発明の組成物は、高く制御された異性化プロセスから、および好適な出発物質であるヒマワリまたはベニバナ油を使用することから生じる。この組成物は、工業的規模への応用のためには、これまで得られなかった。なぜなら、従来のプロセスは歴史的に、いわゆる、塗料工業における乾燥油としての、完全に異なる目的のために共役リノール酸を製造しているからである。また、最終生成物の異性体含有量の掛かわり合いについての正しい評価も存在しなかった。なぜなら、脂肪酸を特徴づけるための分析方法が、広くは入手可能ではなかったからである。
【0065】
より古い異性化プロセスにおいて、そのうちのいくつかはより近代的な体裁で依然として使用されており、共役脂肪酸の生成は、200℃を越える高温で、および通常は大気超過圧(superatmospheric pressures)で、水性アルカリ(一般にNaOH)中で行われた。例えば、米国特許第2,350,583号(Bradley)は、数時間の間200〜250℃のかなり過酷な条件下、共役化および重合化の両方が生じた、処理した石鹸を利用する水性アルカリプロセスを開示している。乾燥油の画分は、亜麻仁油で出発して、蒸留により得られた(非常に似通ったプロセスに関する英国特許第558,881号もまた、参照のこと)。プロセスの改変において、米国特許第4,381,264号は、種々のポリ不飽和脂肪酸の二重結合共役化を得るための、低水含量反応ゾーン(0.5%の水)がSOの存在下、化学量論的塩基を含むプロセスを教示している。水性アルカリプロセスは、米国特許第4,164,505号において、水酸化アルカリ金属および水が、200℃と370℃との間に維持されたフローゾーンに連続的に投入される連続フロープロセスに適合された。それらの温度において、反応時間は、非常に短縮されるはずであるが、相対的に異性化の制御がほとんど出来なくなる。温度範囲の上限において、ほとんど完全に二重トランス種へ変換されることが予測される。
【0066】
種々の非水性溶媒および触媒を使用するCLAの生成方法は、文献において記載されている。Burr(米国特許第2,242,230号)は、種々の触媒との組合せで、メタノール、ブタノール、エタノール、およびグリコールのような溶媒の使用を開示している。これらの反応パラメーターは、表1に要約される。グリコールを除いて、反応は、還流条件下、または密閉された管内のいずれかで行われた。これらの反応条件は、発明者により確認された2つの重要な反応パラメーター-温度および圧の不正確な制御をもたらす。これらの反応パラメーターの不正確な制御は、より不完全な共役化および望ましくない異性体の形成を導くようである。
【0067】
【表1】

同様に、Baltesら(米国特許第3,162,658号)は、脂肪酸の共役化のための触媒として、非水性溶媒および種々の金属塩基の使用を開示している。Baltesらにより記載される方法の種々の反応パラメーターは、表2に要約される。Baltesらはまた、種々の低沸点溶媒の使用を開示している。これらの反応のほとんどが、用いられる溶媒の沸点より高い温度で行われたことから、反応は加圧下で行われ、圧はオクタデカジエン酸異性体の形成に影響する独立した要因であることが明らかである。従って、これらの反応に由来する生成物は、望ましくない異性体を含む。
【0068】
【表2】

本発明のCLAは、8,10異性体、11,13異性体、および種々のトランス-トランス異性体のような異性体を欠いている。この組成物は、図1のフローダイヤグラム様式に示される厳密に制御された非水性アルカリ異性化プロセスにより生成された。好ましくは、ヒマワリ油またはベニバナ油が、不活性ガス雰囲気下、大気圧で、高沸点溶媒、すなわちプロピレングリコール中、溶媒の沸点より低い温度で、過剰のアルカリと反応させられる。これらの反応条件は、共役化プロセスの温度(および一定の大気圧)の正確な制御を可能にする。好ましくは、アルカリは、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸セシウムのような無機アルカリ、またはテトラエチルアンモニウムヒドロキシドのような有機アルカリである。好ましくは、触媒は、油の脂肪酸含有量と比較して1モル過剰に提供される。溶媒はプロピレングリコールである。好ましくは、反応は、130〜165℃の温度範囲内で、最も好ましくは約150℃で行われる。反応の時間は変更され得るが、しかしながら、反応が長時間行われる場合、望ましくない異性体の形成の見込みも増加する。2.0〜6.5時間という比較的短い反応時間が優れた収率のために申し分ないことを証明している。
【0069】
所望の組成物を生成するために、上記の反応条件が、共役化されるべき油、アルカリの供給源、および装置に依存して変化され得ることが、当業者により理解される。特定の油の予備分析は、所望の組成物を得るために条件が変更されなければならないことを示唆し得る。それ故、温度範囲、圧、および他の反応パラメーターは、個々のプロセスの計画のための出発点を表し、そしてガイドのみとして意図される。例えば、記載される温度範囲が、使用され得る唯一の範囲であることを意味しない。基本的な局面は、正確な温度制御を提供することである。しかしながら、圧の増加が不完全な異性化および望ましくない異性体の形成を導き得るため、注意が払われなければならない。最後に、共役化反応の長さは、変更され得る。一般に、望ましくない異性体の量の増加は、反応の長さ(length or reaction)の増加とともに起こる。それ故、最適な反応時間は、反応を、ほぼまたは基本的に、完了に進ませるが、しかし望ましくない異性体の形成をもたらさない。
【0070】
共役化反応に続いて、生成するCLA含有組成物はさらに図1に従って精製され得る。脂肪酸を共役化反応混合物から分離するために、反応混合物はほぼ95℃に冷却され、50℃の過剰量の水が加えられ、そして混合物は約50℃〜60℃まで温度を下げられながらゆっくりと撹拌される。水を加える際に、脂肪酸の石鹸が形成され、そしてグリセロールが副生成物として形成される。次に、1モル過剰の濃HClが撹拌しながら加えられる。次いで、水層および非水性層が、約80〜90℃で分離される。次いで、水およびプロピレングリコールを含む下層が抜き取られる。残留するプロピレングリコールは、60〜80℃での減圧脱水により除去される。
【0071】
次いで、乾燥CLA組成物は、好ましくは、任意の残留プロピレングリコールを除去するために、冷トラップを持つ脱気ユニットで脱気され得る。次に、CLAは分子蒸留プラント中、10-1〜10-2ミリバールの真空で、190℃で蒸留される。この精製システムの利点は、CLAが上昇した温度に保たれる時間が短い(1分未満)ことである。従来のバッチ蒸留手順は、それらがほぼ180〜200℃の上昇した温度を数時間までの間含むことから、厳密に避けられるべきである。これらの上昇した温度において、望ましくないトランス-トランス異性体の形成が生じる。飼料材料のほぼ90%が、わずかに黄色い蒸留液として回収される。次いで、CLAは、匂いと味とを改善するために、約120℃〜170℃で、好ましくは約150℃で2時間加熱することにより、脱臭され得る。過度な加熱は、トランス-トランス異性体の形成をもたらし得る。これらの手順は、約5ppm未満、好ましくは約1ppm未満の溶媒レベルを有するCLA組成物を生成する。このプロセスは、得られる組成物が基本的に毒性の溶媒残留物を含まないように、毒性の微量レベルの溶媒を除去する。
【0072】
上記で記載されるプロセスは、試験的および商業的規模の両方に、直ちに適合可能である。例えば、400kgのベニバナ油が、400kgのプロピレングリコール中、触媒として加えた200kgのKOHとともに、150℃で5時間共役化され得る。次いで、生成するCLAは上記で記載されるように精製され得る。さらに、商業規模のバッチシステムは、所望のCLA組成物を生成するために、容易に改変され得る。例えば、ステンレス鋼の反応器は、好ましくは、3.0より下のPHレベルによる腐食を防ぐためにガラスで裏打ちされるべきである。しかしながら、非水性溶媒を利用する共役化プロセスは、一般に水で行われるものほどは腐食性でないことが注記されるべきである。
【0073】
共役化に好ましい油は、ヒマワリおよびベニバナ油である。大豆油と比較して、これらの油は、ホスファチドおよびステロールのような望ましくない成分をより少ない濃度で有する。これらの望ましくない成分は、共役化装置を汚すガムおよび他の望ましくないポリマーの形成に寄与し得る。これらの油の種々の性質は、表3、4、および5に要約される。
【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
【表5】

続く実施例において、最適条件に及ばない条件下または先行技術の水性アルカリ方法に従ってのいずれかで作られたCLA組成物と比較して、本CLA組成物の鍵となる性質を強調するために、いくつかの比較実験が行われた。実施例1において、CLAは、本方法に従い調製された。実施例2において、CLAは、従来の水性アルカリ方法により調製された。実施例3において、高温においてという以外、実施例1の反応が実質的に繰り返される。最後に、実施例4において、実施例2の反応と実質的に同一である水性アルカリ反応が低温で行われる。各実験の正確な条件および詳細は、実施例において記載される。CLA異性体含有量の分析の概略は、表1〜4に記載される。
【0077】
表5のデータを参照して、4つの実験のそれぞれに対して、相対的範囲割合が個々の異性体に対応する各同定されたピークに与えられる。GCプロットが、試験される各サンプルに対して多数のピークを与えた。これらのピークそれぞれの下の範囲は、全体値を得るために積分された。ピークの同定は、出版された標準溶出特性図および化学文献から、その相対的位置により決定された。頂部の列は、未共役の出発物質、9,12-リノール酸の残留値を表す。プロピレングリコール中の低温および高温での反応の両方が、全出発物質の99%を越える極度に高い変換を与えた。
【0078】
欄1を参照して、実施例1のコントロール組成物のいずれとも異なり、11,13異性体混合物に対応するピーク、特にc11,c13に対応するピーク、8,10異性体のいずれかに対するピーク、および未同定の異性体に対するピークが完全に消失していることが、著しく明らかである。C9,t11異性体の場合、GCにおける8,10および9,11異性体の両方に対するピークは、重なっており、そしてNMR研究により8,10として同定されたピークの部分を差し引くことにより、実施例1の材料に対してのみ、ここで解明された。このことは他の実験においてなされなかったので、実施例2〜4に対して列3は合わせられた8,10および9,11の値を与える。一般に、8,10、11,13、および未同定の異性体に対して、1%未満から検出不可能な値が、治療的および栄養的値のものである。なぜならそれは、潜在的に心身に有害な混入物、特に脂質生成において吸収経路に疑いがもたれることが知られているものを、微量レベルまで減少するからである。非反芻動物において、例えば、食事へ0.25〜2.5%のCLAを加えることは、反芻動物において組織中のCLAの範囲をほぼそこまで増加し得るので、他の動物が、代替的な異性体が存在しないように提供されるCLAの供給源となり得る。
【0079】
実施例2は、従来通りに製造されたCLAの代表的な水性アルカリ生成物の見本を提供する。変換は、全体で、ならびにc9,t11およびt10,c12異性体の生成においての両方でより非効率である。高い割合の11,13異性体と疑わしいもの、および明らかな割合の未同定の材料もまた、注記される。
【0080】
実施例3は、温度パラメーターの決定的重要性を例示する。プロピレングリコール媒体中の温度の上方へのシフトは、c9,t11およびt10,c12異性体を犠牲にした(expense)混入異性体の量を急激に上昇させる。また興味が持たれることに、より高い温度において、増加したエネルギーストレスレベルにおいてより安定な電子共役化を生じる二重結合再配置が望ましいために、トランス,トランス化学種の劇的な増加がおこる。
【0081】
実施例4は、水性アルカリ系における温度の低下が、実際に、いくつかの混入異性体の量を減少することを例示する。しかしながら、収率における劇的な低下があり、そして11,13異性体群のレベルが非常に高いままであることから、この電子共役化の形成は、系の全体的な力学的エネルギーにより説明されるというよりも、水性媒体中の塩基の作用に、より大きな影響を受けていることが示唆される。22.5時間という極度に長い反応時間;効率のより工業的規模のバッチプロセスのためには長すぎるということもまた、注記される。
【0082】
表6は、種々の反応における相対的な異性体の割合を、ピーク範囲の関数としてそれらの対応するピーク比に変換したに過ぎない。本プロセスは、9,12-リノール酸の、ほぼ等しい量の2個の所望のCLA異性体それぞれへの事実上完全な変換を生成した。より高温では、プロピレングリコール中でさえも、11,13-異性体の発生は、低温水性アルカリプロセスのものの1/3未満のままである。
【0083】
いくつかの実施態様において、本発明はまた、CLAのアルキルエステルを生成するための方法を提供する。脂肪分割および脱水の後、遊離脂肪酸は、メタノールまたは他の一価低分子量アルコールと合わせられ、そしてアルコールが沸騰する温度まで加熱される。エステル化は、冷却器を通して反応水を除去しながら、還流条件下で進行する。さらなる量の同じかまたは別の一価アルコールを加えた後、アルコラート触媒がエステル混合物中に調合される。代表的なアルコラート触媒は、ナトリウムもしくはカリウムエトキシド、またはそれらのメチル、ブチル、もしくはプロピル対応物である。
【0084】
エステル化において、メタノールまたはエタノールが好ましいが、他の分岐または直鎖一価アルコールが使用され得る。アルキル基の脂肪族鎖が長くなるほど、材料はより脂質融和性になる。また、粘度も増加する傾向にある。異なる型の飼料または食品に対して、それらのコンシステンシーは変化し、種々の粘度の製品が、CLA部分から生じる治療的または栄養的性質に影響することなく、所望の流れまたは合成特性を得るために使用され得る。エステル化の理論および実行は、従来通りである。最も一般的な方法の基本的な説明は、McGraw-Hill Encyclopedia of Science & Technology、McGraw-Hill Book Co.、N. Y.:1996(第5版)に記載される。動物およびヒトの身体は、種々のエステラーゼを有するので、CLA-エステルは切断されて容易に遊離脂肪酸を放出する。組織の取り込みは、含まれる組織および必要とされる利益に依存して異なる力学を有し得る。
【0085】
異性化の工程において、アルコラート触媒が水性アルカリ媒介異性化よりも非常に優れた生成物を生成することが見いだされた。後者のプロセスは、穏やかな反応条件下でさえも、望ましくない異性体をいつも生成した。より穏やかな条件は、望ましくない異性体をより少ない量で与えるが、実施例に示されるように収率として非常に不経済である。大抵の系において、c9,t11およびt10,c12異性体の出現は優位を占め、そしてそれらはおおよそ等モル量で形成される。一方の異性体の異性化を他方を排除して制御することは、これまで不可能であった。一方のまたは他方の異性体の割合を増加すること(達成されるべき生理学的効果に依存して)は望まれることであるが、現在、このことは大抵、所望の異性体の豊富な供給源を加えることにより行われなければならない。
【0086】
本発明は、CLAの純粋な調製物の誘導体の使用を企図している。例えば、CLAは、遊離でか、またはエステル結合を介して結合されてか、または実施例5および6に記載されるように、油含有CLAトリグリセリドの形態で提供され得る。これらの実施態様において、トリグリセリドは、一部または完全にグリセロール骨格に接続したCLAから成り得る。CLAはまた、好ましくは、実施例8および9に記載されるように、メチルエステルまたはエチルエステルとして提供され得る。その上さらに、CLAは、カリウムまたはナトリウム塩のような非毒性の塩の形態であり得る(例えば、化学的に同量の遊離の酸と水酸化アルカリとを約8〜9で反応させることにより形成される塩)。
【0087】
本発明の1つの実施態様において、リノール酸のヒマワリおよび/またはベニバナ油からの非水性異性化のための、本文中以下に開示される新規CLA異性体混合物を含む、新規トリアシルグリセロールが合成される。CLAが非常に豊富な(90〜96%)純粋なトリアシルグリセロールは、HNMRにより確認され得る。エステル化は、固定化Candida antarctica リパーゼを使用して進行する。好ましくは、CLAは、少なくとも40%から多くて45〜48%のc9,t11-オクタデカジエン酸およびt10,c12-オクタデカジエン酸、ならびにそれらの混合物を含む。1%未満のエステル8,10;11,13;およびトランス,トランス異性体、または総計で5%未満が存在する。得られるトリアシルグリセロールは、全てのレベルのホスファチジルおよびステロール残留物を除去するためには、さらには精製されない。しかしヒマワリおよびベニバナ油の異性化から残存するこれらのレベルは、飼料および食品における安全で食用に出来る製品を含む商業的応用のために十分である。
【0088】
固定化Candida antarcticaリパーゼは、Harraldsonらのn-3型ポリ不飽和脂肪酸のために記載される様式と類似の様式で用いられるべきである。エステル化反応は、どの溶媒も存在しないで、50℃〜75℃で、好ましくは65℃で行われ、そして形成に際して副生成してくる水またはアルコール(エステル由来)を除去するために真空が用いられる。これは、トリアシルグリセロール生成物を完了させ、そして事実上どんなモノ-およびジアシルグリセロールも含まない非常に純粋な生成物を、基本的に定量的な収率で保証する。化学両論的量の遊離の脂肪酸が用いられ得る(すなわち、グリセロールを基準にして3モル当量、またはグリセロール部分に存在するヒドロキシル基のモル当量数を基準にして1モル当量)。基質の全重量を基準にして、たった10%用量のリパーゼが必要とされ、これは何回でも使用され得る。このことは、生産性という観点から非常に重要である。これら全てが、溶媒を必要としないという事実と一緒になって、本プロセスを規模拡大および工業化の観点から実行可能性の高いものにしている。なぜならば、容積およびかさ高さにおける削減が莫大であるからである。また、わずかに過剰(<5/5)の遊離の脂肪酸が、反応の終了を早め、そして反応の完了を保証するために使用され得る。
【0089】
反応の開始において、1-または3-モノ-アシルグリセリド(acyglyeride)が最初に形成され、続いて1,3-ジアシルグリセリド(diacylglyeride)、および最後にトリグリセリドがより延長された反応時間で形成される。モノ-およびジアシルグリセリド(diacylglyerides)は、それらが生理学的活性を示すが、水性細胞質環境においてより大きな溶解性を有し、そしてリン脂質または他の官能脂質の合成のような、代替的分子合成経路において沈殿し得るという点で、有用な中間体である。対称的に、トリグリセリドは、しばしば細胞膜または貯蔵ベシクル中にそのまま蓄積される。従って、遊離脂肪酸またはエステルではなくて、モノ-、ジ-、またはトリグリセロール型でCLAを投与することは、CLA成分の取り込みの様態および分布、代謝速度、ならびに構造的または生理学的役割に影響し得る。
【0090】
1つの好適な実施態様において、投与は経口である。CLAは、デンプン、ショ糖、または乳糖のような適したキャリアとともに、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、溶液、液体、スラリー、懸濁液、およびエマルジョン中に処方され得る。CLAは、水性溶液、油性溶液、または上記で記載される他の形態のいずれかで提供され得る。本発明の錠剤またはカプセルは、約6.0〜7.0のpHで溶解する腸溶コーティングでコートされ得る。小腸で溶解するが胃では溶解しない適した腸溶コーティングは、酢酸フタル酸セルロースである。いくつかの実施態様において、CLAは750mgの80%CLAを含む軟ゼラチンカプセル(TonalinTM)として提供される。CLAはまた、以下を含む多数の他の経路のいずれかで提供され得るが、しかしこれらに制限されない:静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、硬膜下膜内、心室内、経皮、皮下、腹膜内、鼻内、経腸、局所的、舌下、または直腸法。投与のための処方および投与のための技術に対するさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co.、Easton、PA)の最新版において見いだされ得る。
【0091】
CLAの有効量はまた、種々の調製された食用製品および飲み物の補助として提供され得る。この用途の目的について、調製された食用製品は、CLAが加えられた任意の天然の加工処理された食事または非食事の食用製品を意味する。CLAは、遊離脂肪酸の形態で、またはCLAの一部もしくは完全トリグリセリドを含む油として加えられ得る。それ故、CLAは以下を含む種々の調製された食用製品中に直接組み込まれ得るが、それらに限定されない:ダイエット飲料、ダイエットバー、補助物、調製された冷凍食品、キャンディ、スナック製品(例えば、チップ)、調製された肉製品、牛乳、チーズ、ヨーグルト、および任意の他の脂肪または油含有食品。
【0092】
CLAは酸化を受けやすい。それ故、ヒトの使用のために、CLAを、レクチン、トコフェロール、アスコルベート、アスコルビルパルミテート(ascorbyl palmitate)、またはローズマリー抽出物のような香辛料抽出物のような適した抗酸化剤で包むことが望ましい。
【実施例】
【0093】
実施例1
低温でプロピレングリコールを使用するベニバナ油の異性化
プロピレングリコール中低温で、触媒としてKOHを使用して、ベニバナ油を異性化した。異性化装置は、1つの口に温度計を設置した2口フラスコから成り、過剰な圧を逃がすために小さな開口部が残されている。窒素供給部を、フラスコの他方の口に接続した。フラスコに加えられた溶液を、磁気撹拌棒および磁気攪拌機を使用して、撹拌した。フラスコの温度を、磁気攪拌機上に設置した自動調温制御の油浴中にフラスコを置くことにより制御した。
【0094】
フラスコを60.27gのプロピレングリコールおよび28.20gのKOHで満たし、そして油浴中に浸した。温度を130℃まで上昇させて、KOHを溶解した。KOHが溶解した後、60.09gのベニバナ油をフラスコ内へ導入した。大容量の窒素を5分間2口フラスコ中に循環させ、次いでより少ない容量に減少させた。混合物を150℃まで加熱し、これをほぼ40分間維持した。次いで、混合物を150℃で3.5時間反応させた。時々、3mlのサンプルを分析のために取り出した。
【0095】
サンプルを直接6mlの熱水中に置き、そして遊離脂肪酸が最上層として分離するまでクエン酸を過剰に加えた。クエン酸が加えられている間、固体化を防ぐために加熱が必要であった。ガスクロマトグラフィーによる分析のために遊離脂肪酸をメチルエステルへ変換するため、0.025gの遊離脂肪酸、5mlの4%HCl溶液、およびエタノールを試験管に加えた。窒素を管に加え、次いで管を密閉して60℃で20分間水浴中に置いた。次いで、管を冷却し、そして1mlの精製水および5mlのイソオクタンを加えた。窒素を管に加え、そして管を30秒間振とうした。得られる上層を新たな試験管中の1μlの精製水に加え、そして再び窒素下で振とうした。次いで、得られる上層をイソオクタンで洗い、そして第三の試験管にデカントした。少量の硫酸ナトリウムを水分吸収のために加えた。次いで、1μlのサンプルをガスクロマトグラフィー内へ直接注入した。
ガスクロマトグラフィー条件は以下の通りであった:
システム: Perkins-Elmer 自動システム
注入器: 240℃で分割無し
検出器: 280℃での水素炎イオン化検出器
キャリア: ヘリウム
カラム: WCOT溶融シリカ0.25mm ×100M、FAME用CP-SL88、
DF 0.2
加熱プログラム:80℃(0分)1分あたり10℃で220℃まで上昇、そして220℃
で10分間保持。
【0096】
全ての結果を、相対的なピーク面積の割合として表す。標準は一般に入手不可能であるので、溶出されたピークを他のシステムで確認した。GC-MSは、数は決定するが、シスおよびトランス結合の位置は決定しない。それ故、結合の位置を確認するためにNMR分析を使用した。主なピークはc9,t11およびt10,c12であった。CLA異性体のNMR分析のため、MarcelS.F. Lie Ken Jie およびJ. Mustafa、Lipids、32 (10) 1019〜34 (1997)を参照されたい(本明細書中で参考として援用される)。
【0097】
表6に示され、そして表10に要約されるこのデータは、溶媒としてポリプロピレングリコール、触媒としてKOH、および低温を使用するベニバナ油の異性化が、8,10および11,13異性体を欠く共役リノール酸の生成をもたらすことを実証している。この実験において利用される高極性のカラムは、c9,t11およびt10,c12異性体から8,10および11,13異性体を分離するために首尾よく使用され得る。8,10異性体はc9,t11異性体と同時に溶出するか、または直後に溶出する傾向がある。11,13異性体は、カラムの条件に依存して、t10,c11異性体の前に溶出するか、またはt10,c12異性体と同時に溶出する。
【0098】
本方法に従って生成した共役リノール酸を、種々の生成した異性体と比較することで特徴づけた。第一に、異性化反応は、本質的に完了まで進行した。反応の完了は、全ピーク面積でリノール酸異性体から残留c9,t12リノール酸を引いた全ピーク面積を割ることにより得られる。この値は0.994である。第二に、c9,t11およびt10,c12異性体の全ピーク面積に対する比が決定され得る。この値は0.953である。第三に、t9,t11およびt10,t12異性体のc9,t11およびt10,c12異性体に対する比が決定され得る。この値は0.010である。第四に、t9,t11およびt10,t12異性体の全ピーク面積に対する比が決定され得る。この値は0.009である。第五に、t10,c12異性体のc9,t11異性体に対する比が決定され得る。この値は1.018である。これらの比を表11に要約する。
【0099】
実施例2
高温および高圧下での水性異性化
50gの水および25.32gのNaOHを、高圧反応器(Parr Model 450ML Benchtop Alloy 400、圧力計および攪拌機を備える)に加えた。NaOHを溶解させ、そして94.0gのベニバナ油を反応器に加えた。反応器を閉じて、窒素で2分間フラッシュし、次いで全ての弁を閉じた。反応器を電気ガスケット中で210℃に加熱し、そしてその温度で6時間維持した。次いで、温度を60℃まで下げて、それから圧を逃がし、そして反応器を開けた。2gの得られる固体化した石鹸を反応器から取り出し、そしてほぼ40℃で水に溶解した。次いで、クエン酸を加えて溶液のpHを6未満に下げた。サンプルを脂肪酸最上層から抜き取り、そして実施例1におけるように、ガスクロマトグラフィーのために調製した。
【0100】
ガスクロマトグラフィーの結果を、表7に表し、そして表10に要約する。これらのデータは、この異性化法が相対的に大量の8,10および11,13異性体を形成することを示す。比を表11に表す。
【0101】
実施例3
高温および高圧下でのベニバナ油の非水性アルカリ異性化
100.48gのプロピレングリコールおよび46.75gのKOHを、実施例2で記載されるように高圧反応器へ加えた。次いで、反応器を130℃まで加熱してKOHを溶解した。次いで、100.12gのベニバナ油をKOH-プロピレングリコール混合物へ加えた。反応器を閉じて、窒素で1分間フラッシュし、そして全ての弁を閉じた。次いで、反応器を210℃まで加熱し、そしてその温度で1時間維持した。反応器を冷却し、そして内容物を120gの熱水中へデカントした。撹拌しながら、35.3gの37%HClおよび27.59gのクエン酸を脂肪酸へ連続して加えた。サンプルを最上層から取り出し、そして真空フラスコ中60℃で乾燥した。得られる脂肪酸のサンプルを実施例1に記載されるように、ガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0102】
結果を表8に表し、そして表10に要約する。この実験は、ベニバナ油の、KOHおよび非水性溶媒を用いる高温での異性化が、かなりの量の8,10および11,13異性体、ならびにt9,t11およびt10,t12異性体の形成を生じることを実証する。比を表11に表す。
【0103】
実施例4
低温での水性アルカリ反応
49.94gの水および39.96gのNaOHを、実施例3で記載されるように、高圧反応器へ加えた。この混合物をNaOHが溶解するまで加熱した。次に、100.54gのベニバナ油を高圧反応器へ加え、反応器を窒素でフラッシュし、そして全ての弁を閉じた。高圧反応器を179℃まで22.5時間加熱した。サンプルを、実施例3におけるように、ガスクロマトグラフィーのために調製した。データを表9に提供し、そして表10に要約する。この実験は、水性アルカリ異性化のために低温を使用する場合、共役反応が完了まで進まないことを実証している。その上さらに、かなりの量の8,10および11,13異性体が生成される。比を表11に表す。
【0104】
【表6】

【0105】
【表7】

【0106】
【表7a】

【0107】
【表8】

【0108】
【表8a】

【0109】
【表9】

【0110】
【表9a】

【0111】
【表10】

* -8,10の合計の割合は、0.5未満である
na-値はc9,t11/8,10の成分として反映される
【0112】
【表11】

*c9,t11は、8,10異性体を含む
na- 11,13は検出されず
実施例5
直接エステル化によるCLAのトリアシルグリセロールの調製
一般に、H核磁気共鳴スペクトルは、溶媒として重水素化クロロホルム中、BrukerAC 250 NMR分光器で記録された。HPLC分離は、Waters 製 PrepLC(R)System
500A 機器により、Millipore製PrepPak(R)500/Silica Cartridge カラムを使用して、石油エーテル中10%のジエチルエーテルで溶出して行った。分析GLCは、Haraldssonら、ActaChem.Scanned. 45:723 (1991)に記載されるように、先に記載される手順に従って、Perkin-Elmer 8140 ガスクロマトグラフで行った。
【0113】
固定化Candida antarctica リパーゼは、NovozymeTMとしてNovoNordisk(Denmark)より提供された。これを、エステル化実験において提供されたとおり直接使用した。Merckから購入した分析グレードのジエチルエーテルを、いかなる精製もなしに使用したが、しかし同じくMerck製の合成グレードのn-ヘキサンは、抽出およびHPLCクロマトグラフィーにおける使用の前に、新たに蒸留した。グリセロール(99%)は、SigmaおよびAldrich Chemical Company から購入し、そしてさらに精製することなしに使用した。CLA濃縮物は、TonalinTMとして遊離脂肪酸でNatural Lipids(Norway)より提供された。その純度は、分析GLCおよび高磁場NMR分光器により確認され、これはいくつかのグリセリド不純物を示した。CLA濃縮物は、科学研究所(Science Institute)においてGLCにより決定されるように、43.3%の9-シス,11-トランス-リノール酸、44.5%の10-トランス,12-シス-リノール酸、5.4%の他のCLA異性体、5.6%のオレイン酸、および0.6%のパルミチン酸およびステアリン酸の各々を含むことが見いだされた。
【0114】
実施例6
直接エステル化によるCLAのトリアシルグリセロールの調製
固定化Candida antarcticaリパーゼ(1.25g)を、グリセロール(1.22g、13.3mmol)および遊離脂肪酸としてのCLA(M.wt.280.3 g/mol;11.6g、41.5mmol)の混合物に加えた。混合物を、0.01〜0.5 Torrの連続した真空下、磁気攪拌機ホットプレート上65℃で穏やかに撹拌した。反応の進行中生成する揮発性の水を、連続して液体窒素冷却トラップ中に凝縮させた。48時間後、反応を止めて、n-ヘキサンを加え、そして濾過により酵素を分離した。有機相を炭酸ナトリウムのアルカリ水性溶液で処理して、過剰の遊離脂肪酸を除去した(必要である場合)。有機溶媒(適切な場合、無水硫酸マグネシウムで乾燥後)を、ロータリーエバポレーターで減圧除去し、続いて高真空処理により事実上純粋な生成物を、わずかに黄色がかった油状物として得た(10.9g、平均M.wt.878.6g/mol;収率93%)。化学量論的量の遊離脂肪酸が使用された場合、標準化水酸化ナトリウムによる滴定は、粗反応生成物の遊離脂肪酸含有量を決定するために適用される(少なくとも99%の組み込みに対応するエステル基のモル数を基準にして1%未満の遊離脂肪酸含有量、これは最小限97%のトリグリセリド含有量と等価である)。粗生成物は、n-ヘキサン中10%のジエチルエーテルで溶出するHPLC中に直接導入され、100%純粋なトリグリセリドを無色油状物として得た。250MHz 1H NMR (CDC13) 8 (ppm) 6.35-6.23 (3H, ddt, Jtrans=15.0 Hz, J=10.9Hz,jallyl=1.3,=CHCH=CH),5.98-5.90 (3H, dd, Icis=10.9, J=10.9, -CH=CHCH=),5.71-5.59 (3H., dtd,Jtrans=15.0 Hz, J=6.9 Hz, J=6.9 Hz, J=2.2 Hz, =CH=CHCH2-),5.35-5.26 (4H, m,=CH2CH=CH-および-CH2C -1CH2-), 4.33-4.26 (2H, dd, Jgem=11.9 Hz,J=4.3,-CH2CH2CH2-),4.18-4.10 2H, dd, Jgem=1.8 Hz, J=6.0, -CH2CHCH2-),2.37-2.31 (6H, t, J=7.4 H2,-CH2COOR), 2.19-2.05 (12H, m, -CH2CH=CH-),1.66-1.60 (6H, qu., J=Hz,-CH2CH2COOR), 1.43-1.30 (18H, m, -CH2-), 0.91-0.86(9H, t, J=6.7 Hz, -CH3).13C-NMR (CDC13): 8 (ppm) 173.2, 172.8, 134.6, 130.0, 128.6,125.5, 68.8, 62.0,34.0, 32.9, 31.6, 29.6-28.9 (6C), 27.6, 24.8, 22.5, 14.1。
【0115】
反応の進行をモニターし、反応中の個々のグリセリドの組成についてより詳細に提供するために、サンプルを反応が進行するにつれて定期的に収集した。それらをHNMR分光器により分析して、反応の進行中のモノ-、ジ-、およびトリアシルグリセロールの組成への良好な洞察を提供した。結果を以下の表12において実証する。表から指摘され得るように、1,3-ジアシルグリセロールは、反応の最初の2時間の間、反応混合物の優勢を占めた。4時間後、トリアシルグリセロールが優勢となり、そして22時間後98%の組成、および48時間後100%に達した。予想されるように、1,2-ジアシルグリセロールは1,3-ジアシルグリセロールよりも相当に低いレベルに達した。1-モノアシルグリセロールは、反応の最初の1時間の間に最大に達したが、しかし2-モノアシルグリセロールは反応全体を通して検出されなかった。
【0116】
【表12】

実施例7
CLAの収率および組成における温度および反応継続時間の変化の影響
ベニバナ油の共役化における温度および反応継続時間の効果を測定した。水およびNaOHを、表1欄1および2に示されるように、高圧反応器(Parr Model 450 ML Benchtop Alloy 400、圧力計および攪拌機を備える)に加えた。NaOHを溶解させ、そしてベニバナ油を反応器に加えた(欄3)。反応器を閉じ、そして窒素で2分間フラッシュし、次いで全ての弁を閉じた。反応器を電気ガスケット中で所望の温度まで加熱し(欄4)、そしてその温度に所望の時間維持した(欄5)。次いで、温度を60℃まで下げて、それから圧を逃がして反応器を開けた。各反応について、得られる固体化した石鹸2gを、反応器から取り出し、ほぼ40℃で水に溶解した。次いで、溶液のpHを6未満に下げるためにクエン酸を加えた。サンプルを脂肪酸最上層から抜き取り、そしてガスクロマトグラフィーのために調製した。
【0117】
ガスクロマトグラフィーの結果は、欄6(9,11および10,12異性体の全割合)、欄7(11,13異性体の全割合)、および欄8(全CLA異性体または収率の全割合)に表される。これらのデータは、反応継続時間および温度が増加するにつれて、共役化の全量および11,13異性体の割合が増加することを示している。11,13異性体の形成が低い条件下では、共役化の全量もまた低い。
【0118】
【表13】

実施例8
ベニバナ脂肪酸メチルエステル(FAME)の共役化
反応は、密閉した容器中で行った。以下の成分を一緒に混合した:100gのベニバナFAMEならびにほぼ2.8gのKOCH3および2.8gのメタノールの混合物。2つの成分の混合中メタノールの蒸発のために、おそらくはメタノールよりもKOMeが存在した。混合物は、密閉した反応容器中窒素雰囲気下で、5時間111〜115℃で撹拌した。異性体の分配はガスクロマトグラフィーにより分析した。結果は表2に要約される。GCの生データは、表3に表される。これらのデータは、共役化ベニバナFAMEは、穏やかな条件下で達成され、かなりの量の望ましくない8,10および11,13異性体を欠く生成物をもたらし得ることを示唆する。
【0119】
【表14】

実施例9
共役化ベニバナFAMEの大規模バッチ生成
ベニバナ共役化FAMEの生成は、2つの工程、メタノリシスおよび共役化に分けられ得る。メタノリシスのために、6,000kgのベニバナ油が密閉した反応器中へ投入された。反応器を大気圧で窒素でパージし、そして1150リットルのメタノールおよび160kgのNaOCH3(30%溶液)を加えた。混合物を撹拌しながら65℃まで加熱し、そして65℃で2時間反応させた。反応器を窒素ガスでパージしながら、得られる下層をデカントした。ついで、1000リットルの水(40〜50℃、その中に50kgのクエン酸一水和物が溶解されている)を撹拌しながら加えた。層を分離させ(ほぼ60分)、そして反応器を窒素ガスでパージしながら、下層をデカントした。得られるベニバナFAME生成物を減圧下1時間80℃で乾燥した。
【0120】
ベニバナFAMEを共役化するために、250kgのKOCH3をメタノールに溶解してペーストを形成し、反応器に加えた。次いで、混合物を撹拌しながら120℃まで加熱し、そして反応を3時間継続させた。混合物を100℃まで冷却し、そして1000リットルの水(40〜50℃、その中に50kgのクエン酸一水和物が溶解されている)を撹拌しながら加えた。混合物を15分間撹拌し、次いで層を20分で分離させた。下層をデカントし、そして生成物を80℃で1時間乾燥し、次いで窒素下で保管した。
【0121】
得られるCLAは、Perkin Elmer Autosystem XL GC を使用して、以下の条件下で分析した:
カラム: WCOT 溶融シリカ 100m × 0.25mm、CP SIL 88コーティング
キャリア: Heガス、30.0 PSI
温度: 220℃
実行時間:35〜90分
注入: 240℃で分割無し
検出器: 280℃でのFID
GCの結果は、表15および16に要約される。
【0122】
【表15】

【0123】
【表15a】

【0124】
【表16】

以下は、本発明のCLA遊離脂肪酸、トリグリセリド、およびエステルを含む代表的な動物の飼料の実施例である。
【0125】
実施例10
A.ブタ幼動物飼料
【0126】
【表17】

B.ブタのための育成飼料-仕上飼料
(40〜240 LBS[18〜109KGS]より)
【0127】
【表18】

C.ブタ育成飼料-仕上飼料
(121〜240 LBS[55〜109KGS]のブタに対して)
【0128】
【表19】

ブタ微量ミネラル予備混合物の組成および分析
【0129】
【表20】

ブタビタミン予備混合物の組成
【0130】
【表21】

D.ニワトリのための18%タンパク質層状飼料
【0131】
【表22】

E.ブロイラーのための幼動物飼料および仕上飼料
【0132】
【表23】

【0133】
【表23a】

F.育成/仕上七面鳥飼料
【0134】
【表24】

【0135】
【表24a】

G.乾燥ドッグフード処方物
【0136】
【表25】

H.半生ドッグフード処方物
【0137】
【表26】

【0138】
(発明の効果)
治療的および栄養的応用の両方のための、CLAの規定された商業的供給源の開発において、大量の規定された材料であって、有害なCLAが少ないものを調製するためのプロセスが提供された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2010−202662(P2010−202662A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121020(P2010−121020)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【分割の表示】特願2002−188781(P2002−188781)の分割
【原出願日】平成11年3月17日(1999.3.17)
【出願人】(503320614)
【Fターム(参考)】