説明

共焦点画像信号取得方法および装置ならびにサンプリング動作状態取得装置

【課題】共焦点画像信号取得方法においてより品質の高い画像信号を得る
【解決手段】各光ファイバF(1,1)・・・の他端Tbと共焦点関係にある試料5中の各点領域Rから発せられた試料光Lsを検出して上記試料5中の面領域5Mを表す画像信号Gを取得する際に、1つの光ファイバに走査光Leをカプリングさせている間に信号出力部210からサンプリング信号Pを複数回出力し、各光ファイバ(1,1)・・・への走査光Leの走査を複数回実行させたときの上記サンプリング信号Pに同期させた試料光Lsの検出によって各光ファイバ(1,1)・・・毎に多数の検出値Dを得る。動作状態取得部220による上記多数の検出値Dの統計処理により、各光ファイバ(1,1)・・・毎に、試料光Lsの検出値が最大となるサンプリング信号Spに対応する上記走査光Leを走査させるための動作状態を求め、その動作状態で上記検出を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイババンドルを構成する各光ファイバに走査光を通して試料中の各点領域からなる面領域を表す画像信号を取得する共焦点画像信号取得方法および装置ならびに共焦点画像信号取得方法の実施に使用するサンプリング動作状態取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、共焦点光学系を用いることにより光軸方向および光軸と直交する方向の空間分解能を高めた共焦点観察装置が知られている。
【0003】
上記共焦点観察装置には、例えば、光源から発せられたレーザ光からなる走査光を、ファイババンドルを構成する多数の光ファイバのうちの1本に導いて、すなわちカプリングさせてこの光ファイバの一端から射出させた走査光を試料中の一点に照射し、上記照射を受けて試料中の一点から発せられた試料光(例えば、上記走査光の反射光やこの走査光で励起されて発生した蛍光等)を再び上記1本の光ファイバの一端に入射させ、この光ファイバから射出された試料光を検出する方式を採用したものが知られている。
【0004】
ここで、上記光ファイバの一端から射出された走査光は対物レンズを通して試料中の点領域に結像され、上記試料中の点領域から発せられた試料光は対物レンズを通して再び上記一本の光ファイバの一端に結像される。すなわち、上記光ファイバの一端と試料中の点領域とを共焦点関係とし、上記点領域から発生した試料光を、この点領域へ照射した走査光の通った光路を逆方向に伝播させて検出する。
【0005】
ここで、上記1本の光ファイバに走査光を通した検出だけでは試料中の1点の領域しか観察できない。そこで、ファイババンドルの端面に配列された例えば100行×100列の光ファイバそれぞれに上記走査光を順次カプリングさせて試料中の100行×100列の各点領域に順次結像させ、上記試料中の各点領域から発生した試料光を上記光ファイバに通して光電子増倍管等で順次検出することにより、上記試料中の100行×100列の各点領域からなる面領域の状態を表す画像を取得することができる。
【0006】
例えば、走査光を行方向へ走査させる第1のガルバノミラーと上記走査光を列方向へ走査させる第2のガルバノミラーとを用いその走査光を上記100行×100列の個々の光ファイバに入射させる方式が知られている(特許文献1参照)。上記方式では2つのガルバノミラーの動作状態に対応させて順次出力されるサンプリング信号に同期させて上記試料光の検出を行なう。
【0007】
また、ガルバノミラーとレゾナントスキャナとを組み合わせて上記100行×100列の各光ファイバへの走査光の走査をより高速化して上記画像をリアルタイムで観察する方式も知られている(特許文献2参照)。この方式においても上記2つのガルバノミラーを組合わせた走査と同様に、ガルバノミラーおよびレゾナントスキャナの動作状態に対応させて順次出力されるサンプリング信号に同期させて上記試料光の検出を行なう。すなわち、ファイババンドルの端面に100行×100列に配列された各光ファイバに上記走査光を順次カプリングさせて上記検出が可能な状態となったときに上記サンプリング信号が出力されるように予め定めておくことにより上記検出を行なう。
【0008】
上記試料光の検出によって得られた検出値は、試料光が発せられた試料中の点領域の位置と関連付けられて記憶される。なお、上記点領域の位置はこの点領域から発せられた試料光を通する光ファイバの位置に対応している。そして、ファイババンドルを構成する各光ファイバについて得られた上記試料光の検出値とこの試料光が発せられた点領域の位置とを示す情報を合成することにより、上記走査光が照射された試料中の100行×100列の面領域を表す画像信号を取得する。
【特許文献1】特開2005−275125号公報
【特許文献2】特開平10−311949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のような走査光学系を用いた方式においては、ガルバノミラーやレゾナントスキャナの動作状態に対応させたサンプリング信号の出力のタイミングと上記動作状態での走査光のファイババンドル端面上における走査位置との関係が完全な繰り返し再現性を有しているわけではなく、ファイババンドルへの走査光の走査を繰り返す度に上記タイミングと走査位置との関係は多少変動する。
【0010】
そのため、例えば、1回目のファイババンドルへの走査光の走査においては、所定の走査光学系の動作状態に対応させたサンプリング信号が出力されたときに走査光が光ファイバの中心部に位置していたとしても、次の2回目の走査においては、上記1回目と一致する走査光学系の動作状態に対応させたサンプリング信号が出力されたときの走査光は上記光ファイバの中心部から外れた周縁部に位置することがある。
【0011】
このような場合には、サンプリング信号の出力に同期させて試料光を検出するときの光ファイバへ通す走査光の光量が各光ファイバ毎に変動し、各点領域を照射する走査光の光量に差が生じてしまう。そのため、上記各光ファイバ毎の試料光の検出によって得られた画像信号を用いて上記面領域を表す画像を表示させたときには濃度ムラが生じ、また、上記面領域を動画として観察するときには上記濃度ムラがさらに時間の経過とともに変動する。
【0012】
そのため、試料中の各点領域へ照射する走査光の光量の差を少なくして、上記試料面を表す濃度ムラのより少ない画像を得たいという要請がある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、より品質の高い画像信号を得ることができる共焦点画像信号取得方法および装置ならびに上記共焦点画像信号取得方法の実施に使用するサンプリング動作状態取得装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の共焦点画像信号取得方法は、ファイババンドルを構成する各光ファイバの一端へ走査光を順次カプリングさせつつ、光ファイバの他端から射出された走査光を前記他端と共焦点関係にある試料中の点領域に結像させ、点領域から発せられた試料光を、前記他端から光ファイバへ通し走査光を走査させるための動作状態に対応させて順次出力されるサンプリング信号に同期させて検出し、試料中の各点領域からなる面領域を表す画像信号を取得する共焦点画像信号取得方法において、前記走査光が1つの光ファイバにカプリングされている間に前記サンプリング信号を複数回出力し、各光ファイバへの走査光の走査を複数回実行させたときのサンプリング信号に同期させた試料光の検出によって各光ファイバ毎に得られた多数の検出値の統計処理により、各光ファイバ毎に、その光ファイバに走査光がカプリングされている間に複数回出力されるサンプリング信号のうち、試料光の検出値が最大となるサンプリング信号に対応する前記動作状態を求め、この求められた動作状態で検出を実行することにより画像信号を取得することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の共焦点画像信号取得方法の実施に使用するサンプリング動作状態取得装置は、ファイババンドルを構成する各光ファイバの一端へ走査光を順次カプリングさせつつ、光ファイバの他端から射出された走査光を前記他端と共焦点関係にある試料中の点領域に結像させ、点領域から発せられた試料光を、前記他端から光ファイバへ通し走査光を走査させるための動作状態に対応させて順次出力されるサンプリング信号に同期させて検出し、試料中の各点領域からなる面領域を表す画像信号を取得する共焦点画像信号取得方法の実施に使用するサンプリング動作状態取得装置であって、走査光が1つの光ファイバにカプリングされている間にサンプリング信号を複数回出力させる信号出力手段と、各光ファイバへの走査光の走査を複数回実行させたときのサンプリング信号に同期させた試料光の検出によって各光ファイバ毎に得られた多数の検出値の統計処理により、各光ファイバ毎に、その光ファイバに走査光がカプリングされている間に複数回出力されるサンプリング信号のうち、試料光の検出値が最大となるサンプリング信号に対応する動作状態を求める動作状態取得手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の共焦点画像信号取得装置は、ファイババンドルを構成する各光ファイバの一端へ走査光を順次カプリングさせつつ、前記光ファイバの他端から射出された前記走査光を前記他端と共焦点関係にある試料中の点領域に結像させ、前記点領域から発せられた試料光を、前記他端から前記光ファイバへ通し前記走査光を走査させるための動作状態に対応させて順次出力されるサンプリング信号に同期させて検出し、試料中の各点領域からなる面領域を表す画像信号を取得する共焦点画像信号取得装置において、走査光が1つの光ファイバにカプリングされている間にサンプリング信号を複数回出力させる信号出力手段と、各光ファイバへの走査光の走査を複数回実行させたときの前記サンプリング信号に同期させた試料光の検出によって各光ファイバ毎に得られた多数の検出値の統計処理により、各光ファイバ毎に、その光ファイバに走査光がカプリングされている間に複数回出力される前記サンプリング信号のうち、試料光の検出値が最大となるサンプリング信号に対応する前記動作状態を求める動作状態取得手段と、求められた動作状態で前記検出を実行させる制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0017】
前記統計処理は主成分分析とすることができる。なお、上記統計処理は、主成分分析に限らず、各光ファイバについての上記複数回それぞれの走査で得られた各検出値を互に関連付けた演算により、各光ファイバ毎に、上記試料光の検出値が最大となるサンプリング信号に対応する動作状態を求めるものであればどのような手法を用いてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の共焦点画像信号取得方法および装置ならびに共焦点画像信号取得方法の実施に使用するサンプリング動作状態取得装置は、走査光が1つの光ファイバにカプリングされている間にサンプリング信号を複数回出力し、各光ファイバへの走査光の走査を複数回実行させたときのサンプリング信号に同期させた試料光の検出によって各光ファイバ毎に得られた多数の検出値の統計処理により、各光ファイバ毎に、上記光ファイバに走査光がカプリングされている間に複数回出力されるサンプリング信号のうち、試料光の検出値が最大となるサンプリング信号に対応する動作状態を求め、その動作状態で上記検出を実行することにより画像信号を取得するようにしたので、試料光の検出時に光ファイバへ通す走査光の光量の各光ファイバ間における差を少なくすることができ、上記検出時に各点領域へ照射する走査光の光量の差を少なくすることができるので、より品質の高い画像信号を得ることができる。これにより、上記試料中の面領域を表すより品質の高い画像を表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の共焦点画像信号取得方法を適用して画像を観察する共焦点画像観察装置および上記共焦点画像信号取得方法の実施に使用するサンプリング動作状態取得装置の概略構成を示す図である。図2はファイババンドルの一端の端面を示す図、図3は各サンプリング信号出力時のファイババンドルの一端における走査光の走査位置を示す断面図、図4は各サンプリング信号出力時のファイババンドル端面における走査光の走査位置と上記サンプリング信号の出力に同期して検出された検出値との関係を示す図である。なお、上記サンプリング動作状態取得装置は共焦点画像観察装置に備えられたものである。
【0020】
図示の共焦点画像観察装置100は、ファイババンドル10を構成する各光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・の一端Ta(1,1)、Ta(1,2)・・・へ走査光Leを順次カプリングさせつつ、上記光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・の他端Tb(1,1)、Tb(1,2)・・・から射出された走査光Leを他端Tb(1,1)、Tb(1,2)・・・と共焦点関係にある試料5中の点領域R(1,1)、R(1,2)・・・に結像レンズ15を通して結像させる。そして、上記点領域R(1,1)、R(1,2)・・・から発せられた試料光Ls(1,1)、Ls(1,2)・・・を上記走査光Leの通った光路を逆方向に伝播させる。すなわち他端Tb(1,1)、Tb(1,2)・・・から入射させて光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・へ通す。さらに、上記光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・へ通した試料光Ls(1,1)、、Ls(1,2)・・・を、走査光Leを走査させるための走査光学系20の動作状態に対応させて順次出力されるサンプリング信号である後述の検出用信号Sp(1,1)、Sp(1,2)・・・に同期させて検出部30で検出し、試料5中の各点領域R(1,1)、R(1,2)・・・からなる面領域5Mを表す画像信号G(1,1)、G(1,2)・・・を取得する。その後、上記画像信号G(1,1)、G(1,2)を表示部35に入力し画像信号G(1,1)、G(1,2)・・・の示す面領域5Mの画像を上記表示部35表示させる。
【0021】
なお、上記光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・をまとめて光ファイバFとも称し、上記一端Ta(1,1)、Ta(1,2)・・・をまとめて一端Taとも称し、上記他端Tb(1,1)、Tb(1,2)・・・をまとめて他端Tbとも称する。また、上記点領域R(1,1)、R(1,2)・・・をまとめて点領域Rとも称する。さらに、試料光Ls(1,1)、、Ls(1,2)・・・をまとめて試料光Lsとも称し、上記検出用信号Sp(1,1)、Sp(1,2)・・・をまとめて検出用信号Spとも称し、上記画像信号G(1,1)、G(1,2)・・・をまとめて画像信号Gとも称する。
【0022】
また、図示の共焦点画像信号取得方法の実施に使用するサンプリング動作状態取得ユニット200は、各光ファイバ毎に、光ファイバFに走査光Leがカプリングされている間に複数回出力されるサンプリング信号のうち、上記検出部30による試料光Lsの検出値が最大となるサンプリング信号に対応する走査光学系20の動作状態を求めるものである。なお、サンプリング動作状態取得ユニット200により上記走査光学系20の動作状態を求める場合には、試料として、反射率が一定で凹凸の少ない滑らかな面からなる標準試料を用いることが望ましい。なお、上記走査光学系20の動作状態の取得は上記標準試料を用いる場合に限るものではなく、どのような試料を用いてもよい。
【0023】
上記サンプリング動作状態取得ユニット200により上記動作状態を求めた後、共焦点画像観察装置100の備える後述する制御部80の制御により、上記動作状態での観察対象物あるいは測定対象物である試料5の検出部30による検出を実行する。なお、上記動作状態の取得は、共焦点画像観察装置100で試料5を観察あるいは測定(以後、省略して観察測定ともいう)する前準備段階で行なう。上記動作状態の取得はいわゆるキャリブレーションのためのデータ取得である。
【0024】
なお、上記動作状態の取得は、共焦点画像観察装置100への電源投入時、上記共焦点画像観察装置100により観察測定を行なう前、上記観察測定を所定時間行なった後、もしくは上記観察測定を所定回数行なった後等に行なう。
【0025】
上記サンプリング動作状態取得ユニット200が動作状態を取得すると、制御部80の制御によって、上記共焦点画像観察装置100が観察測定を正確に行なうことができる状態か否か(以後、観察測定の可否という)を示す情報が表示部35に表示される。ここでは、上記サンプリング動作状態取得ユニット200が上記観察測定の可否判定を行なうが、必ずしもそのような場合に限らない。
【0026】
サンプリング動作状態取得ユニット200が、上記観察測定が可能であると判定した場合には、このとき取得した動作状態が上記サンプリング動作状態取得ユニット200、あるいは制御部80に記憶される。その後、上記標準試料が取り除かれて、共焦点画像観察装置100による上記記憶された動作状態での試料5の観察測定が行なわれる。
【0027】
サンプリング動作状態取得ユニット200が、上記観察測定が可能ではないと判定した場合には、共焦点画像観察装置100の調整等を行なった後、上記サンプリング動作状態取得ユニット200により上記動作状態の取得および観察測定の可否判定を再度行なう。
【0028】
上記共焦点画像観察装置100が例えば内視鏡装置である場合には、上記試料5は生体内部の組織であり、この生体内部の組織性状の観察測定が行なわれる。
【0029】
また、上記共焦点画像観察装置100への電源投入時、共焦点画像観察装置100による観察測定前、所定時間の観察測定を行なった後、もしくは所定回数の観察測定を行なった後に、上記動作状態の取得および観察測定の可否判定を行なうか否かを表示部35に表示させ、操作者が上記動作状態の取得および観察測定の可否判定を実行するか否かを選択できるようにしてもよい。
【0030】
上記サンプリング動作状態取得ユニット200は、走査光Leが1つの光ファイバにカプリングされている間に走査光学系20の上記走査光Leを走査させるための動作状態に対応させて順次出力されるサンプリング信号である基準信号Pを複数回出力する信号出力部210と、各光ファイバFへの走査光Leの走査を複数回実行させたときの基準信号Pに同期させた試料光Lsの検出によって各光ファイバF毎に得られた多数の検出値Dの統計処理により、各光ファイバF毎に、その光ファイバに走査光がカプリングされている間に、すなわち試料光Lsを上記光ファイバに通して検出可能な状態となっている間に複数回出力される基準信号Pのうち、試料光Lsの検出値が最大となる基準信号である検出用信号Spに対応する走査光学系20の動作状態を求める動作状態取得部220とを備えている。
【0031】
動作状態取得部220は、上記信号出力部210から入力した基準信号Pに基づいて、上記各光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・毎の、試料光Lsの検出値が最大となる基準信号に対応する検出用信号Sp(1,1)、Sp(1,2)・・・を出力する。後述するように、これらの検出用信号Sp(1,1)、Sp(1,2)・・・は走査光学系20の動作状態に対応付けられている。なお、基準信号Pも走査光学系20の動作状態に対応付けられた信号である。
【0032】
上記共焦点画像観察装置100は、上記サンプリング動作状態取得ユニット200によって各光ファイバF毎に求められた、試料光Lsの検出値が最大となる検出用信号Sp(1,1)、Sp(1,2)・・・に対応する走査光学系20の動作状態で上記検出を実行することにより画像信号Gを取得する。
【0033】
上記のように、動作状態取得部220により、走査光学系20の動作状態に対応づけられた各サンプリング信号である基準信号Pのうちから上記画像信号を取得するためのサンプリング信号である検出用信号Spを選択し、この検出用信号Spに対応する走査光学系20の動作状態を求める。
【0034】
上記走査光学系20は、レーザ光源50から射出された走査光Leを副走査方向(図中矢印Y方向)へ走査させるガルバノメータ21と走査光を主走査方向(図中矢印X方向)へ走査させるレゾナントスキャナ22と、レゾナントスキャナ22と上記ファイババンドル10との間に配されたfθレンズ29とを有している。
【0035】
上記ガルバノメータ21は、このガルバノメータ21の動作状態に対応させた副走査信号Pyを順次出力するエンコーダ21Eを有している。また、レゾナントスキャナ22は、このレゾナントスキャナ22の動作状態に対応させた主走査信号Pxを順次出力するエンコーダ22Eを有している。
【0036】
走査光Leは、ガルバノメータ21の反射ミラー面21Mの往復回動動作により副走査方向へ走査せしめられる。また、上記副走査方向へ走査せしめられる走査光Leは、レゾナントスキャナ22の反射ミラー面22Mの往復回動動作により主走査方向へ走査せしめられる。
【0037】
また、上記信号出力部210は、ガルバノメータ21の備えるエンコーダ21Eから反射ミラー面21Mの回動に応じて一定の角度毎に順次出力される副走査信号Pyと、レゾナントスキャナ22の備えるエンコーダ22Eから反射ミラー面22Mの回動に応じて一定の角度毎に順次出力される主走査信号Pxとを入力し、両者を合成した基準信号P(x、y)を出力する。
【0038】
上記走査光Leはfθレンズ29を通ってファイババンドル10の上記一端Taの側の主走査方向および副走査方向に走査せしめられる。そして、上記副走査信号Pyはガルバノメータ21により走査光Leが概略等角度で偏向される毎に出力され、主走査信号Pxはレゾナントスキャナ22により走査光Leが概略等角度で偏向される毎に出力される。したがって、上記fθレンズ29を通った走査光Leが上記ファイババンドル10上において主走査方向へ概略等距離移動する毎に上記基準信号P(x、y)が出力される。ここで、上記fθレンズ29は、走査光学系20による走査光Leの等角度の偏向を上記一端Ta上の等距離の移動に変換する。
【0039】
なお、上記共焦点画像観察装置100は、上記ファイババンドル10、結像レンズ15、走査光学系20、検出部30、レーザ光源50、表示部35、およびサンプリング動作状態取得ユニット200を備え、さらに、後述するように、試料光Lsを反射させて検出部30へ導く偏向ビームスプリッタ52、信号出力部210から出力された基準信号Pに同期させて検出部30での検出を行なうか、あるいは動作状態取得部220から出力された検出用信号Spに同期させて検出部30での検出を行なうかを切り替える同期信号切換部32と、上記共焦点画像観察装置100全体の動作および各動作のタイミング等を制御する制御部80とを備えている。
【0040】
以下、共焦点画像観察装置100の作用についてより具体的に説明する。
【0041】
レーザ光源50から射出されたレーザ光である走査光Leを、偏向ビームスプリッタ52に通してガルバノメータ21の反射ミラー面21Mに入射させる。
【0042】
上記走査光Leを、往復回動動作している反射ミラー面21Mおよび反射ミラー面22Mで反射させ、さらにfθレンズ29を通してファイババンドル10の上記一端Taの側へ走査させる。
【0043】
上記走査方向および副走査方向の走査により上記一端Taの側から各光ファイバFに入射した走査光Leは他端Tbの側から射出され、結像レンズ15を通して試料5中の各点領域Rに結像せしめられる。
【0044】
ここで、上記各点領域へ結像せしめられた走査光Leの照射を受けた試料5中の点領域Rから走査光Leの反射光、あるいは上記走査光Leの照射を受けて励起された蛍光等を含む試料光Lsが発せられる。
【0045】
次に、上記点領域Rから発せられた試料光Lsは、上記走査光Leの通った光路を逆方向に向かって伝播する。
【0046】
すなわち、上記試料光Lsを結像レンズ15に通して光ファイバFの他端Tbの側へ入射させこの光ファイバFを通して一端Taの側から射出させ、さらに、上記一端Taの側から射出させた試料光Lsをfθレンズ29へ通し、レゾナントスキャナ22の反射ミラー面22Mおよびガルバノメータ21の反射ミラー面21Mで反射させて偏向ビームスプリッタ52に入射させる。
【0047】
上記偏向ビームスプリッタ52に入射した試料光Lsは、この偏向ビームスプリッタ52で反射して検出部30に入射し、この検出部30によって検出される。
【0048】
ここで、上記試料光Lsは、検出部30の有する検出用フィルタ30Fを通ることにより所望の波長帯域の光成分のみが抽出され、上記抽出された光成分のみが検出される。
【0049】
上記検出は、動作状態取得部220から出力される検出用信号Spに同期させて実行される。
【0050】
上記検出部30によって検出された試料5中の各点領域Rからなる面領域5Mを表す画像信号Gは表示部35に入力され、この表示部35に上記面領域5Mを表す画像が表示される。
【0051】
ここで、上記サンプリング動作状態取得ユニット200の作用について説明する。
【0052】
信号出力部210は、上記のように走査光学系20の動作状態に対応する、すなわち上記ファイババンドル10の一端Taの側を走査する走査光Leの走査位置に対応する基準信号P(x、y)を順次出力する。
【0053】
ここでは、図2に示すように、ファイババンドル10の一端Taは100行×100列の光ファイバFが配置されているものとする。100行×100列の1行目は光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・F(1,100)で構成され、2行目は光ファイバF(2,1)、F(2,2)・・・F(2,100)で構成され、100行目は光ファイバF(100,1)、F(100,2)・・・F(100,100)で構成されている。
【0054】
なお、図2に示すように、ファイババンドル10は、コア部である上記各光ファイバFとクラッド部であるクラッド部Cとからなるものであり、ファイババンドル10中の上記光ファイバF以外の領域はクラッド部Cで形成されている。
【0055】
また、信号出力部210は、100行×100列の光ファイバFの1行目に対応する光ファイバF(1,1)〜F(1,100)を走査する間に、走査光学系20による上記走査光Leを走査させるための動作状態に対応させた基準信号P(1,000)〜P(1,999)を出力し、その後、100行目に対応する光ファイバF(100,1)〜F(100,100)を走査する間に基準信号P(100,000)〜P(100,999)を出力する。
【0056】
より具体的には、図3に示すように、ファイババンドル10を構成する各光ファイバFへの1回目の励起光Leの走査において、信号出力部210は、走査光Leが1つの光ファイバF(1,1)にカプリングされている間に上記走査光学系20の動作状態に対応させた複数の基準信号P1(1,001)〜P1(1,009)を順次出力する。以後、n回目の走査における基準信号Pを基準信号Pnと記述する。
【0057】
つづいて、信号出力部210は、走査光Leが光ファイバF(1,2)にカプリングされている間に複数の基準信号P2(1,011)〜P2(1,019)を順次出力する。さらに、上記と同様に光ファイバF(100,100)にカプリングされている間に複数の基準信号P1(100,991)〜P1(100,999)を順次出力する(図示は省略)。
【0058】
なお、上記1回目の走査において、走査光Leが光ファイバF(1,1)にカプリングされている期間と光ファイバF(1,2)にカプリングされている期間との間に出力された基準信号P1(1,010)は、走査光Leの照射された位置が上記2つの光ファイバF(1,1)、F(1,2)の間に位置しており上記走査光Leがいずれの光ファイバFにもカプリングされていないときに出力された信号である。すなわち、基準信号P1(1,010)は、励起光Leの照射された位置がクラッド部C上に位置しているときに出力された信号である。上記と同様に、基準信号P1(1,000)、P1(1,020)も、走査光Leがいずれの光ファイバFにもカプリングされていないとき、すなわち、励起光Leの照射された位置がクラッド部C上に位置しているときに出力された信号である。
【0059】
一方、各光ファイバFへの2回目の励起光Leの走査においては、走査光学系20の動作状態に対応させた基準信号Pの出力タイミングと上記動作状態での励起光Leの走査位置との対応関係は変動する。例えば、走査光Leが光ファイバF(1,1)にカプリングされている間に複数の基準信号P2(1,002)〜P2(1,010)が出力され、光ファイバF(1,2)にカプリングされている間に複数の基準信号P2(1,013)〜P2(1,020)が出力される。
【0060】
上記のようにして、各光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・への走査光Leの走査を複数回、例えば50回実行させたときの各基準信号Pに同期させた試料光Lsの検出によって各光ファイバF毎の多数の検出値を得る。
【0061】
上記多数の検出値の取得は、具体的には次のように行われる。上記各光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・への走査光Leの走査を50回実行させるうちの1回目に光ファイバF(1,1)〜F(100,100)を走査する間に基準信号P1(1,000)〜P1(100,999)が出力される。また、2回目に光ファイバF(1,1)〜F(100,100)を走査する間に基準信号P2(1,000)〜P2(100,999)が出力され、50回目に光ファイバF(1,1)〜F(100,100)を走査する間に基準信号P50(1,000)〜P50(100,999)が出力される。そして、上記50回実行される各光ファイバFの走査において上記基準信号P1(1,000)〜P50(100,999)に同期させた試料光Lsの検出によって得られた検出値が動作状態取得部220へ入力される。
【0062】
例えば、図4に示すように、動作状態取得部220には、1回目の光ファイバF(1,1)の走査において、上記基準信号P1(1,001)〜P1(1,009)に同期させた試料光Lsの検出で得られた検出値D1(1,001)〜D1(1,009)が入力され、光ファイバF(1,2)の走査において、上記基準信号P1(1,011)〜P1(1,019)に同期させた試料光Lsの検出で得られた検出値D1(1,011)〜D1(1,019)が入力される。以後、n回目の走査において検出された検出値を検出値Dnと記述する。
【0063】
また、2回目の光ファイバF(1,1)の走査において、動作状態取得部220には、上記基準信号P2(1,002)〜P2(1,010)に同期させた試料光Lsの検出で得た検出値D2(1,002)〜D2(1,010)が入力され、光ファイバF(1,2)の走査において、上記基準信号P2(1,013)〜P2(1,020)に同期させた試料光Lsの検出で得られた検出値はD2(1,013)〜D2(1,020)が入力される。
【0064】
上記のようにして、各光ファイバFへの走査光Leの走査を50回実行し、動作状態取得部220には、1回目の走査において、基準信号P1(1,000)〜P1(100,999)に同期させた試料光Lsの検出で得た検出値D1(1,000)〜D1(100,999)が入力され、その後、最後の50回目の走査において基準信号P50(1,000)〜P50(100,999)に同期させた試料光Lsの検出で得た検出値D50(1,000)〜D50(100,999)が入力される。
【0065】
ここで、動作状態取得部220は、上記各検出値D1(1,000)〜D50(100,999)を各基準信号P1(1,000)〜P50(100,999)とを関連付けて取得する。
【0066】
次に、動作状態取得部220は、上記基準信号P1(1,000)〜P50(100,999)に同期させた試料光Leの検出によって各光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・毎に得られた多数の検出値Dの統計処理を行う。上記統計処理により、各光ファイバF(1,1)、F(1,2)・・・毎に、試料光Lsの検出値が最大となる基準信号に対応する検出用信号Sp(1,1)、Sp(1,2)・・・に応じた走査光学系20の動作状態を求める。
【0067】
ここで、光ファイバF(1,1)については、50回の行なわれる光ファイバF(1,1)への走査のうち1回目の走査において、光ファイバF(1,1)に走査光Leがカプリングされている間に複数回出力される基準信号は基準信号P1(1,001)〜P1(1,009)であり、上記基準信号P1(1,001)〜P1(1,009)のうち、試料光Lsの検出値が最大となる検出値D1(1,005)が得られるときの基準信号は基準信号P1(1,005)である。
【0068】
また、2回目の走査において、光ファイバF(1,1)に走査光Leがカプリングされている間に複数回出力される基準信号は基準信号P2(1,002)〜P2(1,011)であり、上記基準信号P2(1,002)〜P2(1,011)のうち、試料光Lsの検出値が最大となる検出値D2(1,006)が得られるときの基準信号は基準信号P2(1,006)である。
【0069】
また、光ファイバF(1,2)については、50回の行なわれる1回目の走査においては、試料光Lsの検出値が最大となる検出値D1(2,015)が得られるときの基準信号は基準信号P1(2,015)であり、2回目の走査においては、試料光Lsの検出値が最大となる検出値D2(2,017)が得られるときの基準信号は基準信号P2(2,017)である。
【0070】
上記のように、特定の光ファイバに走査光Leがカプリングされている間に複数回出力される基準信号のうち試料光Lsの検出値が最大となる基準信号Pは、走査を行なう度に変動する。
【0071】
次に、上記統計処理の具体的な手法について説明する。図5は走査光学系の所定の動作状態に対応する各基準信号Pの出力に同期させて検出される検出値の50回の走査における合計値の一覧を示す図である。
【0072】
はじめに、光ファイバF1について、試料光Lsの検出値を最大とする基準信号に対応する検出用信号Sp(1,1)を求める場合について説明する。
【0073】
1回目の走査において光ファイバF(1,1)に走査光がカプリングされている間に複数回出力された基準信号は基準信号P1(1,001)〜P1(1,009)であり、それらの基準信号に同期させた検出によって得られた検出値はD1(1,001)〜D1(1,009)である。
【0074】
2回目の走査において光ファイバF(1,1)に走査光がカプリングされている間に複数回出力された基準信号は基準信号P2(1,002)〜P2(1,011)であり、それらの基準信号に同期させた検出によって得られた検出値はD2(1,002)〜D2(1,011)である。
【0075】
以下、光ファイバF(1,1)についての50回目までの検出値は図5に示すようになる。
【0076】
ここで、走査光学系20の動作状態に対応した基準信号P(1,001)に属する基準信号P1(1,001)、P2(1,001)・・・P50(1,001)が出力されたときに光ファイバF(1,1)を通して検出された検出値は、検出値D1(1,001)、D2(1,001)・・・D50(1,001)であり、それらの値の合計は合計値Dt(1,001)となる。ここではDt(1,001)=20となる。
【0077】
また、走査光学系20の上記とは異なる他の動作状態に対応して基準信号が出力されたときに光ファイバF(1,1)を通して検出された検出値の合計値も上記と同様に取得することができる。すなわち、例えば、基準信号P(1,000)については合計値Dt(1,000)=1となる。
【0078】
以下同様に、、合計値Dt(1,002)=50、合計値Dt(1,003)=65、合計値Dt(1,004)=70、合計値Dt(1,005)=80、合計値Dt(1,006)=140、合計値Dt(1,007)=75、合計値Dt(1,008)=40、合計値Dt(1,009)=15、合計値Dt(1,010)=5、合計値Dt(1,011)=2となる。
【0079】
上記結果より、走査光Leを光ファイバF1にカプリングさせている間に出力される基準信号のうち、試料光Lsの検出値が最大となる基準信号は、合計値Dt(1,006)=140に対応する基準信号P(1,006)である。
【0080】
この基準信号P(1,006)に対応する動作状態は、走査光学系20を構成するガルバノメータ21のエンコーダ21Eから副走査信号Py(1)が出力される状態で、かつレゾナントスキャナ22のエンコーダ22Eから主走査信号Px(006)が出力される状態である。
【0081】
上記動作状態取得部220により求められた上記動作状態において、すなわち、基準信号P(1,006)に対応して、ガルバノメータのエンコーダ21Eから副走査信号Py(1)が出力され、かつ、レゾナントスキャナ22のエンコーダ22Eから主走査信号Px(006)が出力される状態において画像信号G(1,1)を取得する。すなわち、動作状態取得部220から出力させた、上記基準信号P(1,006)に対応する検出用信号Sp(1,1)の出力に同期させて検出部30による検出を実行し画像信号G(1,1)を取得する。
【0082】
ここで、上記基準信号P(1,006)、すなわち検出用信号Sp(1,1)の出力に同期させて検出を実行することにより、上記走査光Leが光ファイバF(1,1)にカプリングされている間の検出における最大の検出値が得られる。
【0083】
他の光ファイバについても、同様の手法により試料光Lsの検出値が最大となる基準信号である検出用信号Spを基準信号Pのうちから求めることができ、上記試料光Leの検出値を最大とする各光ファイバ毎の検出用信号Sp(1,1)〜Sp(100,100)を求めることができる。
【0084】
そして、各光ファイバ(1,1)〜(100,100)について、上記と同様に求めた、試料光Lsの検出値が最大となる上記検出用信号Sp(1,1)〜Sp(100,100)に対応する走査光学系20の動作状態で、すなわち、動作状態取得部220が、信号出力部210から基準信号Pを入力しこの基準信号Pのうちから選択した基準信号である検出用信号Sp(1,1)〜Sp(100,100)の出力に同期させて試料5の検出を実行することにより画像信号G(1,1)〜G(100,100)を取得する。
【0085】
より具体的には、上記検出用信号Sp(1,1)〜Sp(100,100)に同期させた検出を実行するときには、動作状態取得部220が、信号出力部210から入力した基準信号P(1,000)〜P(100,999)のうち、上記のようにして求められた動作状態に対応する検出用信号Sp(1,1)〜Sp(100,100)を出力する。ここで、制御部80の切換部32の制御により、信号出力部210で生成された基準信号Pの検出部30への入力は遮断され、動作状態取得部220で生成された検出用信号Spが検出部30に入力される。検出部30は、上記検出用信号Spに同期させて上記試料光Lsの検出を行なう。
【0086】
なお、上記統計処理の手法は各光ファイバ毎に、個別に、試料光Lsの検出値を最大とする基準信号Pを求める方式であるが、各光ファイバについて、試料光Lsの検出値を最大とする各検出用信号Spを同時に求める統計処理として主成分分析を適用することもできる。
【0087】
図6(a)は各基準信号出力時に走査光が走査する各光ファイバを示す図、図6(b)は光ファイバに走査光がカプリングされている間に複数回出力される基準信号に同期して検出された検出値を示す図、図7は光ファイバに走査光がカプリングされている間に複数回出力される基準信号のうち試料光の検出値が最大となる基準信号である検出用信号を示す図である。なお、図6(b)の縦軸は検出値を示し横軸は走査光の走査位置を時系列順に示す。また、図7の縦軸は検出値を示し横軸は走査光の走査位置を時系列順に示す。 以下、上記主成分分析について説明する。
【0088】
図6(a)、(b)に示すように、F(1,1)からF(100,100)までの10本の光ファイバの1回目の走査において、10個の基準信号P1(1,000)〜P1(100,999)に同期して得られた10個の検出値D1(1,000)〜D1(100,999)を、10行×1列のマトリクスデータaとする。ここで、光ファイバ1本当たり10回の基準信号が出力される。
【0089】
そして、2回目の走査で得られた50×10個の検出値D2(1,000)〜D2(100,999)を、10行×1列のマトリクスデータa2、その後、50回目の走査で得られた検出値D50(1,000)〜D50(1,999)を、マトリクスデータa50とする。
【0090】
これらのマトリクスデータa1,a2・・・a50を1つのマトリクスデータAとして、以下の式で示す。
【0091】
A=(a12・・・a50
上記マトリクスデータAは、10行×50列のマトリクスデータとなる。
【0092】
このとき、共分散マトリクスCを以下の式で定義する。
【0093】
C=~AA(Cは50行×50列のマトリクスデータ)
ただし、~Aは、Aの転置行列である。
【0094】
次に、Cx−λxの式を満足する固有値と固有ベクトル(50行×1列)から求められた、最大固有値に相当する固有ベクトルである第1主成分を示すマトリクスデータをマトリクスデータxとする。
【0095】
次に、b−Axの式により、マトリクスデータb(10行×1列)を求める。図7に、上記マトリクスデータbを構成する10個の各検出値を示す。
【0096】
ここで、図7に示すように、上記10個の検出値を参照して、各光ファイバFに走査光Leがカプリングされている間に出力される10個の基準信号P(1,000)〜P(100,999)のうち、各光ファイバ毎に、上記試料光Lsの検出値を最大とする基準信号を求める。例えば、光ファイバF(1,1)については基準信号P(1,006)すなわち検出用信号Sp(1,1)に同期して検出された検出値D(1,006)が試料光Lsの検出値を最大とする。また、光ファイバF(100,100)については基準信号P(100,995)すなわち検出用信号Sp(100,100)に同期して検出された検出値D(100,995)が試料光Lsの検出値を最大とする。
【0097】
そして、上記試料光の検出値が最大となる基準信号、すなわち上記検出用信号Sp(1,1)〜Sp(100,100)に対応する走査光学系の動作状態に対応させて動作状態取得部220から出力させた合計10個の検出用信号Sp(1,1)〜Sp(100,100)に同期させた検出の実行により10個の画像信号をG取得する。これにより、試料光の検出時に光ファイバへ通す走査光の光量の各光ファイバ間における差を少なくすることができ、試料中の各点領域を照射する走査光の光量の差を少なくすることができるので、より品質の高い画像信号を得ることができる。そして、上記試料中の面領域を表す濃度ムラの少ない画像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の共焦点画像観察装置およびサンプリング動作状態取得装置の概略構成を示す図
【図2】ファイババンドルの一端の端面を示す図
【図3】ファイババンドルの一端でのサンプリング信号出力時の走査光の走査位置を示す断面図
【図4】走査光の走査位置と上記検出された検出値の値との関係を示す図
【図5】各基準信号Pの出力に同期させて検出される検出値の50回の走査での合計値を示す図
【図6】図6(a)は各サンプリング信号出力時に走査光が走査する各光ファイバを示す図、図6(b)は光ファイバに走査光がカプリングされている間に複数回出力されるサンプリング信号に同期して検出された検出値を示す図
【図7】サンプリング信号のうち試料光の検出値が最大となるサンプリング信号を示す図
【符号の説明】
【0099】
5 試料
5M 面領域
10 ファイババンドル
100 共焦点画像観察装置
210 信号出力部
220 動作状態取得部
Le 走査光
Ls 試料光
R 点領域
G 画像信号
F 光ファイバ
Ta 一端
Tb 他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイババンドルを構成する各光ファイバの一端へ走査光を順次カプリングさせつつ、前記光ファイバの他端から射出された前記走査光を前記他端と共焦点関係にある試料中の点領域に結像させ、前記点領域から発せられた試料光を、前記他端から前記光ファイバへ通し前記走査光を走査させるための動作状態に対応させて順次出力されるサンプリング信号に同期させて検出し、前記試料中の各点領域からなる面領域を表す画像信号を取得する共焦点画像信号取得方法において、
前記走査光が1つの光ファイバにカプリングされている間に前記サンプリング信号を複数回出力し、
前記各光ファイバへの前記走査光の走査を複数回実行させたときの前記サンプリング信号に同期させた試料光の検出によって各光ファイバ毎に得られた多数の検出値の統計処理により、各光ファイバ毎に、該光ファイバに走査光がカプリングされている間に複数回出力される前記サンプリング信号のうち、前記試料光の検出値が最大となるサンプリング信号に対応する前記動作状態を求め、
該求められた動作状態で前記検出を実行することにより前記画像信号を取得することを特徴とする共焦点画像信号取得方法。
【請求項2】
前記統計処理が、主成分分析であることを特徴とする請求項1記載の共焦点画像信号取得方法。
【請求項3】
ファイババンドルを構成する各光ファイバの一端へ走査光を順次カプリングさせつつ、前記光ファイバの他端から射出された前記走査光を前記他端と共焦点関係にある試料中の点領域に結像させ、前記点領域から発せられた試料光を、前記他端から前記光ファイバへ通し前記走査光を走査させるための動作状態に対応させて順次出力されるサンプリング信号に同期させて検出し、前記試料中の各点領域からなる面領域を表す画像信号を取得する共焦点画像信号取得方法の実施に使用するサンプリング動作状態取得装置であって、
前記走査光が1つの光ファイバにカプリングされている間に前記サンプリング信号を複数回出力させる信号出力手段と、
前記各光ファイバへの前記走査光の走査を複数回実行させたときの前記サンプリング信号に同期させた試料光の検出によって各光ファイバ毎に得られた多数の検出値の統計処理により、各光ファイバ毎に、該光ファイバに走査光がカプリングされている間に複数回出力される前記サンプリング信号のうち、前記試料光の検出値が最大となるサンプリング信号に対応する前記動作状態を求める動作状態取得手段とを備えたことを特徴とする共焦点画像信号取得方法の実施に使用するサンプリング動作状態取得装置。
【請求項4】
ファイババンドルを構成する各光ファイバの一端へ走査光を順次カプリングさせつつ、前記光ファイバの他端から射出された前記走査光を前記他端と共焦点関係にある試料中の点領域に結像させ、前記点領域から発せられた試料光を、前記他端から前記光ファイバへ通し前記走査光を走査させるための動作状態に対応させて順次出力されるサンプリング信号に同期させて検出し、前記試料中の各点領域からなる面領域を表す画像信号を取得する共焦点画像信号取得装置において、
前記走査光が1つの光ファイバにカプリングされている間に前記サンプリング信号を複数回出力させる信号出力手段と、
前記各光ファイバへの前記走査光の走査を複数回実行させたときの前記サンプリング信号に同期させた試料光の検出によって各光ファイバ毎に得られた多数の検出値の統計処理により、各光ファイバ毎に、該光ファイバに走査光がカプリングされている間に複数回出力される前記サンプリング信号のうち、前記試料光の検出値が最大となるサンプリング信号に対応する前記動作状態を求める動作状態取得手段と、
該求められた動作状態で前記検出を実行させる制御手段とを備えたことを特徴とする共焦点画像信号取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−304381(P2007−304381A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133516(P2006−133516)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】