説明

共鳴型非接触充電システム

【課題】1次側共鳴コイルを移動させる移動手段を設けずに、車両に搭載された2次電池に効率良く充電することができる共鳴型非接触充電システムを提供する。
【解決手段】給電側設備10は交流電源11及び抵抗RにスイッチSW1を介して選択的に接続される1次コイル12と、1次側共鳴コイル13とを備えている。車載側設備20は二つの2次側共鳴コイル21a,21bと、二つの2次コイル22a,22bと、充電器23と、充電器23に接続された2次電池24と、距離計測用交流電源27とを備え、2次コイル22a,22bはスイッチSW2,SW3を介して距離計測用交流電源27及び充電器23に選択的に接続される。2次コイル22a,22bが距離計測用交流電源27に接続され、抵抗Rが1次コイル12に接続された状態で各2次側共鳴コイル21a,21bと1次側共鳴コイル13との距離が推定され、その距離から給電側設備10と車載側設備20との位置関係が推定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴型非接触充電システムに係り、詳しくは車両に搭載された2次電池に非接触で充電を行う共鳴型非接触充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力伝送を行う技術として共鳴方式が提案されている(例えば特許文献1)。この共鳴方式による電力伝送システムでは、図9に示すように、二つの銅線コイル51,52を離れた状態で配置し、一方の銅線コイル(1次側共鳴コイル)51から他方の銅線コイル(2次側共鳴コイル)52に電磁場の共鳴によって電力を伝送する。具体的には、交流電源53に接続された1次コイル54で発生した磁場を銅線コイル51,52による磁場共鳴により増強し、増強された銅線コイル52付近の磁場から2次コイル55により電磁誘導を利用して電力を取り出し、負荷56に供給する。そして、半径30cmの銅線コイル51,52を2m離して配置した場合に、負荷56としての60Wの電灯を点灯できることが確認されている。
【0003】
また、電動車のバッテリに非接触で効率良く充電可能にした非接触給電装置が提案されている(例えば特許文献2)。特許文献2の非接触給電装置は、電動車側の2次コイルに電磁結合する1次コイルを固定側に有し、1次コイル側から2次コイル側に給電を行う非接触給電装置において、1次コイル側の給電状態と、2次コイル側の受電状態とから給電効率を最大にするように、1次コイルの位置を移動させる位置決め手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開特許WO/2007/008646 A2
【特許文献2】特開2006−345588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1には共鳴型非接触電力伝送方式を車両に搭載された2次電池の充電に用いる場合の具体的な構成については開示されていない。また、特許文献2の非接触給電装置は、固定側に設けられた1次コイルの位置を移動させる位置決め手段(移動手段)が必要になり、構成が複雑になる。
【0006】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、給電側に設けられた1次側共鳴コイルを移動させる移動手段を設けずに、車両に搭載された2次電池を効率良く充電することができる共鳴型非接触充電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、交流電源、前記交流電源から電力の供給を受ける1次側共鳴コイルを備えた給電側設備と、前記1次側共鳴コイルからの電力を磁場共鳴して受電する2次側共鳴コイル、前記2次側共鳴コイルから電力の供給を受ける充電器及び前記充電器に接続された2次電池を備えた車載側設備とを備えた共鳴型非接触充電システムである。そして、前記1次側共鳴コイル及び前記2次側共鳴コイルの少なくとも一方が複数設けられ、前記1次側共鳴コイル及び前記2次側共鳴コイル間の距離を推定する距離推定手段と、前記距離推定手段により推定された距離から前記給電側設備と前記車載側設備との位置関係を推定する位置推定手段と、を備えている。ここで、「交流電源」とは、交流電圧を出力する電源を意味し、直流電源から入力された直流を交流に変換して出力するものも含む。
【0008】
この発明では、車両が充電位置に移動して駐車(停止)する際、距離推定手段により2次側共鳴コイルと1次側共鳴コイルとの距離が推定される。そして、その推定された距離から位置推定手段により給電側設備と車載側設備との位置関係が推定される。位置推定手段は少なくとも二組の1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイル間の推定距離に基づいて給電側設備と車載側設備との位置関係を推定できる。したがって、給電側設備と車載側設備とが効率良く充電可能な位置関係にあるか否かを判断できる。そして、効率良く充電可能な位置関係になるまで車両を移動させた状態で充電を行うことにより、給電側に設けられた1次側共鳴コイルを移動させる移動手段を設けずに、車両に搭載された2次電池を効率良く充電することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記給電側設備は、前記1次側共鳴コイルに電磁誘導で結合されるとともに前記交流電源と選択的に接続される1次コイルを有し、前記距離推定手段は、前記1次コイルから検出される電圧値及び前記2次側共鳴コイルから検出される電圧値の少なくともいずれか一方に基づいて前記1次側共鳴コイル及び前記2次側共鳴コイル間の距離を推定する。
【0010】
この発明では、距離を推定する方法として、1次コイル及び2次側共鳴コイルの少なくとも一方の電圧から推定する方法が採用される。例えば、1次コイルの電圧から推定する場合は、1次コイルの電圧と1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離との関係を試験で求めておき、その関係を利用して推定する。2次側共鳴コイルの電圧から推定する場合は、2次側共鳴コイルの電圧と1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離との関係を試験で求めておき、その関係を利用して推定する。また、1次コイル及び2次側共鳴コイルの両方の電圧から推定する場合は、両電圧値から求められる電力伝送効率から推定する。したがって、2次コイルがなくても距離を推定することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記給電側設備は、前記1次側共鳴コイルに電磁誘導で結合されるとともに前記交流電源と選択的に接続される1次コイルを有し、前記車載側設備は、前記2次側共鳴コイルに電磁誘導で結合されるとともに前記充電器と選択的に接続される2次コイルを有する。前記距離推定手段は、前記1次コイルから出力される電圧値及び前記2次側共鳴コイルから検出される電圧値の少なくともいずれか一方に基づいて前記1次側共鳴コイル及び前記2次側共鳴コイル間の距離を推定する。
【0012】
この発明では、距離を推定する方法としては、「1次コイル及び2次コイルの少なくとも一方の電圧から推定する方法が採用される。例えば、1次コイルの電圧から推定する場合は、1次コイルの電圧と1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離との関係を試験で求めておき、その関係を利用して推定する。2次コイルの電圧から推定する場合は、2次コイルの電圧と1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離との関係を試験で求めておき、その関係を利用して推定する。また、1次コイル及び2次コイルの両方の電圧から推定する場合は、両電圧値から求められる電力伝送効率から推定する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記車載側設備は、第1の2次側共鳴コイル及び第2の2次側共鳴コイルを有し、前記位置推定手段は、前記距離推定手段により推定された前記第1の2次側共鳴コイルと前記1次側共鳴コイルとの距離及び前記第2の2次側共鳴コイルと前記1次側共鳴コイルとの距離から前記給電側設備と前記車載側設備との位置関係を推定する。
【0014】
この発明では、車両が充電位置に移動して駐車(停止)する際、距離推定手段により推定された第1の2次側共鳴コイルと1次側共鳴コイルとの距離及び第2の2次側共鳴コイルと前記1次側共鳴コイルとの距離が推定される。そして、距離推定手段により推定された第1の2次側共鳴コイルと1次側共鳴コイルとの距離及び第2の2次側共鳴コイルと1次側共鳴コイルとの距離から位置推定手段により給電側設備と車載側設備との位置関係が推定される。そのため、推定された給電側設備と車載側設備との位置関係に基づいて、車両を充電位置に容易に移動させることができ、給電側に設けられた1次側共鳴コイルを移動させる移動手段を設けずに、車両に搭載された2次電池を効率良く充電することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記給電側設備は、第1の1次側共鳴コイル及び第2の1次側共鳴コイルを有し、前記位置推定手段は、前記距離推定手段により推定された前記第1の1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとの距離及び前記第2の1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとの距離から前記給電側設備と前記車載側設備との位置関係を推定する。
【0016】
この発明では、車両が充電位置に移動して駐車(停止)する際、距離推定手段により推定された第1の1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの距離及び第2の1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの距離が推定される。そして、距離推定手段により推定された第1の1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの距離及び第2の1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの距離から位置推定手段により給電側設備と車載側設備との位置関係が推定される。そのため、推定された給電側設備と車載側設備との位置関係に基づいて、車両を充電位置に容易に移動させることができ、給電側に設けられた1次側共鳴コイルを移動させる移動手段を設けずに、車両に搭載された2次電池を効率良く充電することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記1次コイルと選択的に接続される抵抗と、前記2次コイルと選択的に接続される距離計測用交流電源とを有し、前記距離計測用交流電源が前記各2次コイルに接続されるとともに前記抵抗が前記1次コイルに接続された状態で前記各2次側共鳴コイルから前記1次側共鳴コイルに電力を伝送する。前記距離推定手段は、前記2次側共鳴コイルから前記1次側共鳴コイルに電力を伝送した後に前記2次コイルから検出される電圧値及び前記2次側共鳴コイルから前記1次側共鳴コイルに電力を伝送した後に前記1次コイルから検出される電圧値の少なくともいずれか一方に基づいて前記2次側共鳴コイルと前記1次側共鳴コイルとの距離を推定する。
【0018】
この発明では、車両が充電位置に移動して駐車(停止)する際、距離計測用交流電源が各2次コイルに接続されるとともに抵抗が1次コイルに接続された状態で各2次側共鳴コイルから1次側共鳴コイルに電力が伝送される。そして、2次コイルから検出される電圧値及び1次コイルから検出される電圧値の少なくともいずれか一方に基づいて、距離推定手段により2次側共鳴コイルと1次側共鳴コイルとの距離が推定される。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記車載側設備が搭載された車両は駐車支援装置を備え、前記位置推定手段により推定された前記給電側設備と前記車載側設備との位置関係を示すデータが前記駐車支援装置において使用される。ここで、「駐車支援装置」とは、車両が駐車する際に、運転者のハンドル操作を軽減させる役割を果たす装置を意味する。駐車支援装置には、例えば、カメラとコンピュータとにより、運転者がハンドルに触れることなく、カメラの撮影データに基づき目的の駐車位置に停止するように自動操舵を行う自動駐車装置や、ディスプレイに目的の駐車位置と、車両の現在位置とを表示する装置等がある。この発明では、より容易に車両を充電位置に移動、駐車させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、給電側に設けられた1次側共鳴コイルを移動させる移動手段を設けずに、車両に搭載された2次電池を効率良く充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態における共鳴型非接触充電システムの構成図。
【図2】車両が充電位置へ移動する際の1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの関係を示す模式平面図。
【図3】1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの関係を示す模式図。
【図4】第2の実施形態における共鳴型非接触充電システムの構成図。
【図5】第3の実施形態における共鳴型非接触充電システムの構成図。
【図6】作用を説明するフローチャート。
【図7】(a)は車両が後退で充電位置へ移動する際の1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの関係を示す模式平面図、(b)は前進で移動する際の模式平面図。
【図8】別の実施形態における車両の充電位置での1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの関係を示す模式側面図。
【図9】従来技術の非接触電力伝送装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
図1は共鳴型非接触充電システムの構成を模式的に示す。図1に示すように、共鳴型非接触充電システムは、地上側に設けられる給電側設備(送電側設備)10と、車両30に搭載された車載側設備20とで構成されている。給電側設備10は、交流電源11、交流電源11から電力の供給を受ける1次側共鳴コイル13を備えている。詳述すると、給電側設備10は、交流電源11と、1次コイル12と、1次側共鳴コイル13と、電源側コントローラ14とを備えている。1次コイル12と1次側共鳴コイル13とは同軸上に位置するように配設されている。1次コイル12はスイッチSW1を介して抵抗Rに接続される状態と、交流電源11に接続される状態とに切り換え可能になっている。1次コイル12は、1次側共鳴コイル13に電磁誘導で結合されるとともに交流電源11と抵抗Rとに選択的に接続される。
【0023】
抵抗Rには、抵抗Rが1次コイル12に接続された状態で抵抗Rの両端間の電圧、即ち1次コイル12の出力電圧を検出する電圧センサ15が接続されている。電圧センサ15の検出信号は電源側コントローラ14に入力される。1次側共鳴コイル13にはコンデンサCが接続されている。交流電源11は交流電圧を出力する電源である。交流電源11は電源側コントローラ14による制御によって所定周波数(共鳴周波数)の交流を出力するように構成されている。
【0024】
車載側設備20は、第1の2次側共鳴コイル21a及び第2の2次側共鳴コイル21bと、2個の2次コイル22a,22bと、2次コイル22a,22bに接続されて電力の供給を受ける充電器23と、充電器23に接続された2次電池24と、充電コントローラ25と、車両側コントローラ26とを備えている。対応する2次側共鳴コイル21a,21b及び2次コイル22a,22bは同軸上に位置するように配設されている。充電器23は、2次コイル22a,22bから入力される交流を整流する整流回路(図示せず)と、整流された直流を2次電池24に充電するのに適した電圧に昇圧する昇圧回路(図示せず)とを備えている。充電コントローラ25は、充電時に充電器23の昇圧回路のスイッチング素子を制御する。各2次コイル22a,22bは、スイッチSW2,SW3を介して充電器23に選択的に接続可能に構成されている。2次コイル22a,22bは、第1及び第2の2次側共鳴コイル21a,21bに電磁誘導で結合されるとともに充電器23と選択的に接続される。車載側設備20は距離計測用交流電源27を備え、距離計測用交流電源27は、スイッチSW2,SW3を介して2つの2次コイル22a,22bのいずれかに選択的に接続可能に構成されている。距離計測用交流電源27は、交流電源11が電力伝送時に出力するより二桁程度小さな交流電力を出力するように構成されている。
【0025】
なお、1次コイル12、1次側共鳴コイル13、2次側共鳴コイル21a,21b及び2次コイル22a,22bの巻数、巻径は伝送しようとする電力の大きさ等に対応して適宜設定される。また、図1において各スイッチSW1,SW2,SW3は、リレーの接点を示す。図1には、リレーの接点が有接点式で図示されているが、半導体素子を用いた無接点リレーでもよい。
【0026】
電源側コントローラ14と、車両側コントローラ26とは図示しない無線通信装置を介して通信可能になっている。電源側コントローラ14はCPU及びメモリを備え、メモリには、車載側設備20を備えた車両30が充電位置へ移動する際にスイッチSW1を抵抗Rと1次コイル12とを接続する状態に切り換え、充電時にはスイッチSW1を交流電源11と1次コイル12とを接続する状態に切り換える制御プログラムが記憶されている。また、メモリには、抵抗Rが1次コイル12に接続された状態で、電圧センサ15の検出電圧データを車両側コントローラ26に送信する制御プログラムが記憶されている。
【0027】
車両側コントローラ26は、CPU及びメモリを備え、メモリには、スイッチSW2,SW3を、車両30が充電位置へ移動する際に二つの2次コイル22a,22bを距離計測用交流電源27と選択的に接続する状態に、充電時には二つの2次コイル22a,22bを充電器23に選択的に接続する状態に、切り換える制御プログラムが記憶されている。メモリには2次コイル22a,22bが距離計測用交流電源27にそれぞれ接続された状態で、車両側コントローラ26から送信された電圧センサ15の検出電圧データに基づいて各2次側共鳴コイル21a,21bと1次側共鳴コイル13との距離を演算(推定)する制御プログラムが記憶されている。電圧センサ15と車両側コントローラ26とで距離推定手段が構成されている。また、メモリには、各2次側共鳴コイル21a,21bと1次側共鳴コイル13との距離から1次側共鳴コイル13と二つの2次側共鳴コイル21a,21bとの位置関係、即ち、給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定する制御プログラムが記憶されている。車両側コントローラ26は給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定する位置推定手段としても機能する。
【0028】
車両30は駐車支援装置として公知の自動駐車装置31を備えている。自動駐車装置31は車両の後部に設けられた図示しないカメラと、コンピュータとにより、運転者がハンドルに触れることなく、カメラの撮影データに基づき目的の駐車位置に駐車(停止)するように自動操舵を行う。この実施形態では、自動駐車装置31は、車両30が充電位置に停止する際は、カメラの撮影データに代えて位置推定手段により推定された給電側設備10と車載側設備20との位置関係(位置データ)に基づき自動操舵を行うようになっている。
【0029】
図2及び図3に示すように、第1及び第2の2次側共鳴コイル21a,21bは、車両30の後側底部の左右両側に、コイルの中心軸が車両30の上下方向に延びるように設けられている。1次側共鳴コイル13は、地上に形成された穴の中に、充電時の停止位置に停止した車両30の下方に位置し、コイルの中心軸が地上面に対して直交する方向に延びるように設けられている。なお、穴の開口は車両30の移動に支障がないようにカバーで覆われている。1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21a,21bは、電線が螺旋状に巻回されて、同じに形成されている。
【0030】
次に前記のように構成された共鳴型非接触充電システムの作用を説明する。
車両30に搭載された2次電池24に充電を行う場合には、車両30は給電側設備10の1次側共鳴コイル13が設けられた充電位置に駐車(停止)する必要がある。車両30が充電位置へ移動する際、給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定するための処理が、電源側コントローラ14及び車両側コントローラ26とで共同して行われる。
【0031】
電源側コントローラ14は、車両側コントローラ26から車両30が充電位置へ移動する旨の信号を受信すると、1次コイル12が抵抗Rと接続される状態にスイッチSW1を切り換える。車両側コントローラ26は、スイッチSW3を距離計測用交流電源27に接続される状態に保持し、スイッチSW2を2次コイル22aに接続される位置に切り換える。この状態で距離計測用交流電源27から共鳴周波数の交流電圧が2次コイル22aに印加されると、2次コイル22aに磁場が発生し、この磁場が1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21aとによる磁場共鳴により増強され、増強された1次側共鳴コイル13付近の磁場により電磁誘導で1次コイル12から交流が出力される。1次コイル12の出力電圧は電圧センサ15により検出され、その検出電圧データが電源側コントローラ14を介して車両側コントローラ26へ送信される。車両側コントローラ26はその検出電圧データをメモリに記憶した後、スイッチSW2を2次コイル22bに接続される位置に切り換え、前記と同様にその状態で電圧センサ15による1次コイル12の出力電圧の検出電圧データを電源側コントローラ14から受信する。そして、車両側コントローラ26は両検出電圧データに基づいて1次側共鳴コイル13と第1及び第2の2次側共鳴コイル21a,21bとの距離を推定する。
【0032】
1次コイル12から検出される出力電圧の大きさは、1次側共鳴コイル13と第1及び第2の2次側共鳴コイル21a,21bとの距離と一定の関係があり、車両側コントローラ26はメモリに記憶されたその関係に基づいて各2次側共鳴コイル21a,21bと1次側共鳴コイル13との距離を推定する。そして、車両側コントローラ26は、二つの2次側共鳴コイル21a,21bと1次側共鳴コイル13との距離から給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定する。二つの2次側共鳴コイル21a,21b間の距離は予め分かっているため、二つの2次側共鳴コイル21a,21bと1次側共鳴コイル13との距離が分かれば、給電側設備10と車載側設備20との位置関係が一義的に決まる。この位置関係から充電が効率良く行われる充電位置に車両30が到着したか否かが判断される。車両側コントローラ26は、給電側設備10と車載側設備20との位置関係が、予め設定された位置関係となるまでスイッチSW2の接続状態を切り換えて電源側コントローラ14から検出電圧データを受信し、1次側共鳴コイル13と二つ2次側共鳴コイル21a,21bとの位置関係を推定する処理を繰り返す。
【0033】
この実施形態では、給電側設備10と車載側設備20との位置関係のデータは、自動駐車装置31の駆動に用いられる。そのため、運転者は車両30を充電位置に駐車させる際は、自動駐車装置31の駆動スイッチを入れ、ハンドルから手を離す。その結果、自動駐車装置31はカメラの撮影データに代えて位置推定手段(車両側コントローラ26)により推定された給電側設備10と車載側設備20との位置関係を示すデータに基づき、車両30が充電位置に駐車するまで自動操舵を継続する。
【0034】
車両30が充電位置に駐車すると、車両側コントローラ26はスイッチSW3を充電器23と接続する状態に切り換え、スイッチSW2を1次側共鳴コイル13に近い側の2次側共鳴コイル(この実施形態では第2の2次側共鳴コイル21b)と接続する状態に保持し、電源側コントローラ14に給電要求信号を送信する。電源側コントローラ14は給電要求信号を受信すると、1次コイル12が交流電源11に接続される位置にスイッチSW1を切り換える。そして、交流電源11から共鳴周波数の交流が出力される。
【0035】
交流電源11から1次コイル12に共鳴周波数の交流電圧が印加されることにより1次コイル12に磁場が発生し、この磁場が1次側共鳴コイル13と第2の2次側共鳴コイル21bとによる磁場共鳴により増強され、増強された2次側共鳴コイル21b付近の磁場から2次コイル22bにより電磁誘導を利用して電力が取り出されて充電器23に供給される。充電器23に供給された交流は整流回路で整流された後、昇圧回路で2次電池24を充電するのに適した電圧に昇圧されて2次電池24に充電される。充電コントローラ25は、例えば、2次電池24の電圧が所定電圧になった時点からの経過時間により充電完了を判断し、充電が完了すると、電源側コントローラ14に充電完了信号を送信する。電源側コントローラ14は、充電完了信号を受信すると電力伝送を終了する。
【0036】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)共鳴型非接触充電システムは、給電側設備10と、車載側設備20とを備えている。給電側設備10は、交流電源11、交流電源11から電力の供給を受ける1次側共鳴コイル13を備えている。車載側設備20は、1次側共鳴コイル13からの電力を磁場共鳴して受電する2次側共鳴コイル21a,21b、2次側共鳴コイル21a,21bから電力の供給を受ける充電器23及び充電器23に接続された2次電池24を備えている。また、共鳴型非接触充電システムは、1次側共鳴コイル13及び第1及び第2の2次側共鳴コイル21a,21b間の距離を推定する距離推定手段(電圧センサ15及び車両側コントローラ26)と、距離推定手段により推定された距離から給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定する位置推定手段(車両側コントローラ26)とを備えている。したがって、給電側設備10と車載側設備20とが効率良く充電可能な位置関係にあるか否かを判断できる。そして、効率良く充電可能な位置関係になるまで車両30を移動させた状態で充電を行うことにより、給電側に設けられた1次側共鳴コイル13を移動させる移動手段を設けずに、車両に搭載された2次電池を効率良く充電することができる。また、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21a,21bとの距離を推定するのに非接触電力伝送に用いる1次コイル12、1次側共鳴コイル13、2次側共鳴コイル21a,21b及び2次コイル22a,22bを利用するため、距離推定用に新たに設ける構成部品を少なくすることができる。
【0037】
(2)共鳴型非接触充電システムは、推定された二つの2次側共鳴コイル21a,21bと1次側共鳴コイル13との距離に基づいて、1次側共鳴コイル13と二つの2次側共鳴コイル21a,21bとの位置関係を推定する位置推定手段(車両側コントローラ26)を備えている。したがって、推定された1次側共鳴コイル13と二つの2次側共鳴コイル21a,21bとの位置関係に基づいて、車両30を充電位置に容易に移動させることができ、給電側に設けられた1次側共鳴コイル13を移動させる移動手段を設けずに、車両30に搭載された2次電池24を効率良く充電することができる。
【0038】
(3)給電側設備10には1次コイル12に対して交流電源11と選択的に接続可能な抵抗Rが設けられ、車載側設備20には2次コイル22a,22bに選択的に接続可能な距離計測用交流電源27が設けられている。そして、距離計測用交流電源27が各2次コイル22a,22bに接続されるとともに抵抗Rが1次コイル12に接続された状態で各2次側共鳴コイル21a,21bと1次側共鳴コイル13との距離が推定される。したがって、各2次側共鳴コイル21a,21bと1次側共鳴コイル13との距離を推定する際に、2次電池24の残存容量の影響を受けない。
【0039】
(4)1次コイル12はスイッチSW1を介して抵抗Rと交流電源11とに選択的に接続可能に設けられ、給電側設備10は、抵抗Rが1次コイル12に接続された状態で抵抗Rの両端間の電圧を検出する電圧センサ15を備えている。したがって、車両側コントローラ26は、2次側共鳴コイル21a,21bが距離計測用交流電源27に接続された状態で抵抗Rの両端間の検出電圧データに基づいて、1次側共鳴コイル13と二つの2次側共鳴コイル21a,21bとの位置関係を推定することができる。
【0040】
(5)車両30は駐車支援装置を備え、給電側設備10と車載側設備20との位置関係を示すデータが駐車支援装置において使用される。したがって、容易に車両30を充電位置へ移動、駐車させることができる。
【0041】
(6)車両30は駐車支援装置として自動駐車装置31を備えており、位置推定手段(車両側コントローラ26)により推定された1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21a,21bとの位置関係を示すデータに基づき自動駐車装置31が駆動される。したがって、より容易に車両30を充電位置へ移動、駐車させることができる。
【0042】
(7)給電側設備10の1次コイル12及び1次側共鳴コイル13は地上に形成された穴の中に設けられているため、1次コイル12及び1次側共鳴コイル13の配置スペースの確保が容易になる。また、車両30が充電位置へ移動する際に給電側設備10と車両30との干渉を回避でき、移動経路の自由度が増す。
【0043】
(8)1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21a,21bにコンデンサCが接続されている。したがって、1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21a,21bのコイルの巻数を増やすことなく共鳴周波数を下げることができる。また、共鳴周波数が同じであれば、1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21a,21bを、コンデンサCを接続しない場合に比べて小型化することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を図4にしたがって説明する。この実施形態では、1次側共鳴コイルが複数(この実施形態では2個)設けられ、2次側共鳴コイルが1個設けられている点と、車載側設備20に距離計測用交流電源27が設けられていない点とが第1の実施形態と大きく異なっている。第1の実施形態と基本的に同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0045】
図4に示すように、給電側設備10は、2個の1次コイル12a,12bと、第1及び第2の1次側共鳴コイル13a,13bとを備え、2個の1次コイル12a,12bはスイッチSW1を介して交流電源11に選択的に接続可能に設けられている。電源側コントローラ14は、車両30が充電位置に移動する際にスイッチSW1を2個の1次コイル12a,12bを交流電源11と選択的に接続する状態に切り換え、交流電源11を充電のための電力伝送時に出力するより二桁程度小さな交流電流を出力するように制御する。電源側コントローラ14は、2個の1次コイル12a,12bのどちらが交流電源11に接続されているかを知らせる信号を車両側コントローラ26に送信する。また、電源側コントローラ14は、充電時には二つの1次コイル12a,12bのうち、車両側コントローラ26からの指令信号により指示された1次コイル(例えば、1次コイル12a)を交流電源11と接続する状態に切り換える。
【0046】
車載側設備20は、1個の2次側共鳴コイル21及び1個の2次コイル22を備えるとともに、2次コイル22の出力電圧を検出する電圧センサ28を備えている。車両側コントローラ26は、車両30が充電位置へ移動する際にその旨を知らせる信号を電源側コントローラ14に出力する。電源側コントローラ14は、逐次、スイッチSW1の接続状態を切り換えるとともに2個の1次コイル12a,12bのどちらが交流電源11に接続されているかを知らせる信号を車両側コントローラ26へ送信する。車両側コントローラ26は、電源側コントローラ14から送信された2個の1次コイル12a,12bのどちらが交流電源11に接続されているかを知らせる信号と、電圧センサ28の検出電圧データとに基づいて各1次側共鳴コイル13a,13bと2次側共鳴コイル21との距離を演算する。この実施形態では電圧センサ28及び車両側コントローラ26が距離推定手段を構成する。そして、車両側コントローラ26は、各1次側共鳴コイル13a,13bと2次側共鳴コイル21との距離から給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定する。
【0047】
給電側設備10と車載側設備20との位置関係が、予め設定された位置関係となるまでスイッチSW1の接続状態が切り換えられるとともに、電圧センサ28により2次コイル22の出力電圧が検出される。また、車両側コントローラ26により、各1次側共鳴コイル13a,13bと2次側共鳴コイル21との距離が演算される。そして、給電側設備10と車載側設備20との位置関係のデータが、自動駐車装置31の駆動に用いられ、車両30が充電位置まで移動される。
【0048】
車両30が充電位置に駐車すると、車両側コントローラ26から電源側コントローラ14に給電要求信号と、2次側共鳴コイル21が二つの1次側共鳴コイル13a,13bのどちらに近いかを知らせる信号とが送信される。電源側コントローラ14は両信号を受信すると、交流電源11を例えば、2次コイル22aに接続する位置にスイッチSW1を切り換える。その状態で、交流電源11から車両30の移動時において出力するより二桁程度大きな交流電力が共鳴周波数で出力されて、2次電池24の充電が行われる。
【0049】
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(5)〜(8)と同様な効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(9)給電側設備10は複数の1次コイル12a,12b及び複数の1次側共鳴コイル13a,13bを備え、1次コイル12a,12bは交流電源11に選択的に接続可能に設けられ、各1次コイル12a,12bに交流電圧が印加された状態で各1次側共鳴コイル13a,13bと2次側共鳴コイル21との距離を距離推定手段(電圧センサ28及び車両側コントローラ26)により推定する。車両側コントローラ26は二つの1次側共鳴コイル13a,13bと2次側共鳴コイル21との距離から給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定する。したがって、推定された給電側設備10と車載側設備20との位置関係に基づいて、車両30を充電位置に容易に移動させることができ、給電側に設けられた1次側共鳴コイル13a,13bを移動させる移動手段を設けずに、車両30に搭載された2次電池24を効率良く充電することができる。また、1次側共鳴コイル13a,13bと2次側共鳴コイル21との距離を推定するのに非接触電力伝送に用いる1次コイル12a,12b、1次側共鳴コイル13a,13b、2次側共鳴コイル21及び2次コイル22を利用するため、新たに設ける構成部品を少なくすることができる。
【0050】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態を図5〜図7にしたがって説明する。この実施形態では、1次側共鳴コイルが1個設けられ、2次側共鳴コイルが2個設けられている点は第1の実施形態と同じであるが、車両30の前側に2次側共鳴コイル21Fが、後側に2次側共鳴コイル21Rが1個ずつ設けられている点が第1の実施形態と大きく異なっている。第1の実施形態と基本的に同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0051】
図5に示すように、1次コイル12は交流電源11に直接接続されている。車載側設備20は、第1及び第2の2次側共鳴コイルとしての2個の2次側共鳴コイル21F,21R及び2個の2次コイル22F,22Rが設けられ、2個の2次コイル22F,22RはスイッチSWを介して充電器23に選択的に接続可能に構成されている。また、距離推定手段を構成する電圧センサ28が、スイッチSWを介して2個の2次コイル22F,22Rに選択的に接続可能に設けられている。図7(a),(b)に示すように、2次側共鳴コイル21Fは車両30の前側に設けられ、2次側共鳴コイル21Rは車両30の後側に設けられている。
【0052】
車両側コントローラ26は、車両30が充電位置へ移動する際、図7(a)に示すように、後退で移動する場合は後側の2次側共鳴コイル21Rを使用して1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21Rとの距離を演算する。また、図7(b)に示すように、前進で移動する場合は前側の2次側共鳴コイル21Fを使用して1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21Fとの距離を演算する。車両側コントローラ26は、車両30が充電位置へ移動する際にその旨を知らせる信号を電源側コントローラ14に出力する。電源側コントローラ14は、その信号を受信すると、交流電源11を充電のための電力伝送時に出力するより二桁程度小さな交流電流を出力するように制御する。
【0053】
次に図6にしたがって車両30が充電位置へ移動、駐車する際の作用を説明する。充電位置へ移動する際、運転者により充電要求スイッチが操作されると、車両側コントローラ26はステップS1で電源側コントローラ14に充電開始要求、即ち2次電池24の充電を行うため充電位置へ移動する旨の信号を送信する。電源側コントローラ14はその信号を受信すると、交流電源11を充電のための電力伝送時に出力するより二桁程度小さな交流電流を出力するように制御する。次に車両側コントローラ26はステップS2で車両30が前進か否かを判断し、前進であればステップS3に進んで前側の2次側共鳴コイル21F(受電コイルF)を用いて距離推定を開始する。詳述すると、車両側コントローラ26は、スイッチSWを2次側共鳴コイル21Fに接続する状態に保持し、電圧センサ28からの検出電圧を入力し、その検出電圧から1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21Fとの距離を演算する。次に車両側コントローラ26はステップS4に進み、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21Fとの距離が所定距離以下か否か、即ち1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21Fとの距離が、2次電池24への充電が効率良く行われる予め設定された距離以下か否かを判断する。ステップS4で所定距離以下であれば車両側コントローラ26はステップS5へ進み、所定距離以下でなければステップS3に戻る。ステップS5で車両側コントローラ26は距離推定を終了し、電源側コントローラ14に距離推定終了の旨を送信する。そして、ステップS6で駐車が完了し、2次電池24の充電のための給電(電力伝送)が開始される。
【0054】
一方、ステップS2で車両30が前進でなければ車両側コントローラ26はステップS7に進み、ステップS7で車両30が後退か否かを判断し、後退であればステップS8に進んで後側の2次側共鳴コイル21R(受電コイルR)を用いて距離推定を開始する。詳述すると、車両側コントローラ26は、スイッチSWを2次側共鳴コイル21Rに接続する状態に保持し、電圧センサ28からの検出電圧を入力し、その検出電圧から1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21Rとの距離を演算する。次に車両側コントローラ26はステップS9に進み、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21Rとの距離が所定距離以下か否か、即ち1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21Rとの距離が、2次電池24への充電が効率良く行われる予め設定された距離以下か否かを判断する。ステップS9で所定距離以下であれば車両側コントローラ26はステップS5へ進み、所定距離以下でなければステップS8に戻る。ステップS7で後退でなければ、ステップS2へ戻る。ステップS2及びステップS7において前進でも後退でもないということは車両30がまだ移動していないことを意味し、車両30が移動を開始するまでステップS2及びステップS7が繰り返される。
【0055】
この第3の実施形態によれば、第1の実施形態の(7),(8)と同様な効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(10)車両30の前側に1個の2次側共鳴コイル21Fが設けられ、後側に1個の2次側共鳴コイル21Rが設けられ、車両30が充電位置へ前進で移動する場合は前側の2次側共鳴コイル21Fを用いて距離の推定が行われ、後退で移動する場合は後側の2次側共鳴コイル21Rを用いて距離の推定が行われる。したがって、2次側共鳴コイルが車両30の前側あるいは後側の一方のみに設けられる構成に比べて、車両30が充電位置まで移動する際、前進で移動する場合あるいは後退で移動する場合に関わらず必要な移動距離を短くすることができる。
【0056】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 第1の実施形態や第2の実施形態において、2次側共鳴コイル及び2次コイルの組を車両30の前側に設けたり、車両30の前側及び後側の両方に設けたりしてもよい。2次側共鳴コイル及び2次コイルの組を車両30の前側及び後側の両方に設けた場合は、車両30が充電位置まで移動する際、前進で移動する場合あるいは後退で移動する場合に関わらず必要な移動距離を短くすることができる。
【0057】
○ 第1の実施形態のように、複数の2次側共鳴コイル21a,21b及び2次コイル22a,22bの組を車載側設備20に設けた場合、距離推定時に2次コイル22a,22bに交流を供給して1次コイル12の出力電圧を測定する構成に代えて、1次コイル12に交流を供給して2次コイル22a,22bの出力電圧を測定する構成にしてもよい。この場合、抵抗Rや距離計測用交流電源27が不要になり、構成が簡単になる。
【0058】
○ 第3の実施形態において、車両30の前側及び後側に2次側共鳴コイル21F及び2次コイル22Fの組と、2次側共鳴コイル21R及び2次コイル22Rの組とをそれぞれ2組ずつ設ける。そして、1次側共鳴コイル13と二つの2次側共鳴コイル21Fあるいは1次側共鳴コイル13と二つの2次側共鳴コイル21Rとの距離から給電側設備10と車載側設備20との位置を推定するようにしてもよい。この場合は、給電側設備10と車載側設備20との位置関係を示すデータを駐車支援装置に使用して、より容易に車両30を充電位置へ移動、駐車させることができる。
【0059】
○ 給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定する場合、いずれか一方が二つあればよい。しかし、1次側共鳴コイルを3個以上設けるとともに2次側共鳴コイルを1個設けたり、2次側共鳴コイルを3個以上設けるとともに1次側共鳴コイルを1個設けたりしてもよい。そして、1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの距離推定を開始する際、電圧センサ15,28の検出電圧の大きな組み合わせとなる2組を選択して、距離推定を行えば、充電位置までの移動距離を短くすることができる。
【0060】
○1次コイル12等及び1次側共鳴コイル13等のコイルの軸心が地上面に対して直交する方向に延びるように設け、2次側共鳴コイル21a等及び2次コイル22a等のコイルの軸心が車両30の上下方向に延びるように設ける構成に代えて、1次コイル12等および1次側共鳴コイル13等のコイルの軸心が地上面に対して水平方向に延びるように設け、2次側共鳴コイル21a等及び2次コイル22a等のコイルの軸心が車両30の上下方向と直交する方向に延びるように設ける構成にしてもよい。例えば、図8に示すように、地上に突出するように設けた給電側設備10の収容ボックス内に1次側共鳴コイル13等をコイルの軸心が地上面に対して水平方向に延びるように設け、車両30の前側に2次側共鳴コイル21a等をコイルの軸心が車両30の上下方向と直交する方向に延びるように設ける。また、2次側共鳴コイル21a等を車両30の後側に設けてもよい。
【0061】
○ 2次側共鳴コイル21a等をコイルの軸心が車両30の上下方向と直交する方向に延びるように水平方向に延びるように設ける場合、2次側共鳴コイル21a等を車両30の前側又は後側に設ける代わりに、車両30の側部に設けてもよい。つまり、1次側共鳴コイル13等は軸心が地上面に対して水辺方向に延びるように設けられ、2次側共鳴コイル21a等は軸心が車両の幅方向に延びるように設けられる。
【0062】
○ 車両30は運転者を必要とする車両に限らず無人搬送車でもよい。
○ 2次電池24への充電位置が屋内の場合、給電側設備10の1次コイル12等及び1次側共鳴コイル13等を充電時における車両30の停止位置の上方、例えば天井に設けてもよい。
【0063】
○ 距離推定手段は1次コイル12あるいは2次コイル22等の出力電圧を検出する電圧センサ15,28に限らない。例えば、距離推定時に共鳴系の入力インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段を距離推定手段として設けてもよい。ここで、「共鳴系の入力インピーダンス」とは、距離推定時に交流が供給(入力)される1次コイル又は2次コイルの両端で測定した共鳴系(1次コイル、1次側共鳴コイル、2次側共鳴コイル、2次コイル)全体のインピーダンスを指す。第1の実施形態では2次コイル22a,22bの両端で入力インピーダンスを測定し、第2の実施形態では1次コイル12の両端で入力インピーダンスを測定する。インピーダンスの測定は、例えば、1次コイル12の両端の電圧あるいは2次コイル22a,22bの両端の電圧を検出することにより行う。車載側設備20に設けられた2次コイル22a,22bの両端の電圧を検出してインピーダンスを測定する場合、電力は車載側設備20から伝送され、インピーダンスの測定のための電圧の検出も車載側設備20で行われる。そのため、車両側コントローラ26は電源側コントローラ14と無線通信で連絡する必要がなく、1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21a,21b間の距離を推定することを車載側設備20で完結できる。
【0064】
○ 給電側設備10と車載側設備20との位置関係を推定するには、1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイルの少なくとも一方が複数設けられていればよく、必ずしも1次コイルや2次コイルは必須ではない。例えば、共鳴型非接触充電システムの負荷が一定で使用される場合は、2次コイルを無くして二次側共鳴コイルの電力を充電器23に供給することができる。
【0065】
○ 2次コイルを無くした場合、距離推定手段は、1次コイルから検出される電圧値及び2次側共鳴コイルから検出される電圧値の少なくともいずれか一方に基づいて1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離を推定すればよい。例えば、車載側設備20から
電力を伝送する場合でも、1次コイルから検出される電圧値に基づいて1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離を推定する場合や、1次コイル及び2次側共鳴コイルから検出される電圧値から電力伝送効率を求めて電力伝送効率から1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離を推定してもよい。また、給電側設備10から電力を伝送する場合でも、2次側共鳴コイルから検出される電圧値に基づいて1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離を推定する場合や、1次コイル及び2次側共鳴コイルから検出される電圧値から電力伝送効率を求めて電力伝送効率から1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイル間の距離を推定してもよい。
【0066】
○ 車載側設備20から電力を伝送する場合、第1の実施形態のように距離計測用交流電源27を2次電池24と別に設けずに、充電器23として双方向の充電器を使用してもよい。即ち、充電器23として2次側共鳴コイルから供給される交流電力を直流に変換して2次電池24に充電する機能と、2次電池24から供給される電力を交流に変換して2次側共鳴コイルへ供給する機能を備えたものを使用する。この場合、距離計測用交流電源27が不要になる。
【0067】
○ 給電側設備10が、1次側共鳴コイル13に電磁誘導で結合されるとともに交流電源11と選択的に接続される1次コイル12を有し、車載側設備20が、2次側共鳴コイル21a,21bに電磁誘導で結合されるとともに充電器23と選択的に接続される2次コイル22a,22bを有する場合は、距離推定方法選択の自由度が高くなる。距離推定手段は、1次コイル12から検出される電圧値及び2次コイル22a,22bから検出される電圧値の少なくともいずれか一方に基づいて1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21a,21b間の距離を推定すればよい。例えば、1次コイル12から検出される電圧値に基づいて距離を推定する場合、電力を第1の実施形態のように車載側設備20から供給して1次コイル12の電圧を検出して距離を推定する方法と、電力を給電側設備10から供給するとともに、1次コイル12の電圧から共鳴系の入力インピーダンスを求めて距離を推定する方法とがある。2次コイル22a,22bから検出される電圧値に基づいて距離を推定する場合も、2次コイル22a,22bの電圧を検出して距離を推定する方法と、2次コイル22a,22bの電圧から共鳴系の入力インピーダンスを求めて距離を推定する方法とがある。
【0068】
○ 距離計測用交流電源27が各2次コイル22a,22bに接続されるとともに抵抗Rが1次コイル12に接続された状態で各2次側共鳴コイル21a,21bから1次側共鳴コイル13に電力を伝送して距離を推定する場合、距離推定手段は、電力伝送中に距離の推定を行う構成に限らない。例えば、距離推定手段は第1及び第2の2次側共鳴コイル21a,21bから1次側共鳴コイル13に電力を伝送した後、距離計測用交流電源27との接続を解除した後、1次コイル12の電圧及び2次コイル22a,22bの電圧の少なくとも一方を検出して、その電圧値に基づいて距離推定を行ってもよい。
【0069】
○ 駐車支援装置は自動駐車装置31に限らず、車両30が駐車する際に、運転者のハンドル操作を軽減させる役割を果たす装置であればよい。例えば、ディスプレイに目的の駐車位置と、車両30の現在位置とを表示する装置や、ハンドルの操舵位置を現在位置に保持するのか、右に操舵すべきかあるいは左に操舵すべきかを音声や表示手段で報知する装置でもよい。
【0070】
○ 充電器23に昇圧回路を設けずに、2次コイル22等から出力される交流電流を整流回路で整流しただけで2次電池24に充電するようにしてもよい。
○ 1次コイル12等及び2次コイル22等の径は、1次側共鳴コイル13等及び2次側共鳴コイル21等の径と同じに形成されている構成に限らず、小さくても大きくてもよい。
【0071】
○ 1次側共鳴コイル13等及び2次側共鳴コイル21等は、それぞれ電線が螺旋状に巻回された形状に限らず、一平面上で渦巻き状に巻回された形状としてもよい。この場合、共鳴コイルの軸方向の長さが小さくなり、地上に形成する穴の深さを浅くすることができる。
【0072】
○ 1次コイル12等、1次側共鳴コイル13等、2次側共鳴コイル21等及び2次コイル22等の外形は、円形に限らず、例えば、四角形や六角形や三角形等の多角形にしたり、あるいは楕円形にしたりしてもよい。
【0073】
○ 1次側共鳴コイル13等及び2次側共鳴コイル21等に接続されたコンデンサCを省略してもよい。しかし、コンデンサCを接続した構成の方が、コンデンサCを省略した場合に比べて、共鳴周波数を下げることができる。また、共鳴周波数が同じであれば、コンデンサCを省略した場合に比べて、1次側共鳴コイル13等及び2次側共鳴コイル21等の小型化が可能になる。
【0074】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項6に記載の発明において、前記抵抗が前記1次コイルに接続された状態で前記抵抗の両端間の電圧を検出する電圧センサが前記距離推定手段を構成する。
【0075】
(2)請求項3〜請求項7及び前記技術的思想(1)のいずれか1項に記載の発明において、前記2次側共鳴コイル及び前記2次コイルは、車両の前側及び後側にそれぞれ設けられ、車両が充電位置へ前進で移動する際は前側に設けられた2次側共鳴コイルが距離推定に用いられ、車両が充電位置へ後退で移動する際は後側に設けられた2次側共鳴コイルが距離推定に用いられる。
【0076】
(3)請求項1に記載の発明において、前記1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイルはともに複数設けられ、給電要求電力が予め設定された値以上の場合、複数組の1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイルを用いて同時に電力伝送を行う。
【0077】
(4)請求項2〜請求項7及び前記技術的思想(1)〜(3)のいずれか1項に記載の発明において、前記2次側共鳴コイルは車両の底部に設けられ、前記1次コイル及び1次側共鳴コイルは充電位置に駐車した車両の下方に位置するように設けられている。
【0078】
(5)交流電源、前記交流電源から電力の供給を受ける1次側共鳴コイルを備えた給電側設備と、前記1次側共鳴コイルからの電力を磁場共鳴して受電する2次側共鳴コイル、前記2次側共鳴コイルから電力の供給を受ける充電器及び前記充電器に接続された2次電池を備えた車載側設備とを備えた共鳴型非接触充電システムであって、
前記1次側共鳴コイル及び前記2次側共鳴コイルの少なくとも一方が複数設けられ、前記1次側共鳴コイル及び前記2次側共鳴コイル間の距離を推定する距離推定手段を備えていることを特徴とする共鳴型非接触充電システム。
【符号の説明】
【0079】
R…抵抗、10…給電側設備、11…交流電源、12,12a,12b…1次コイル、13,13a,13b…1次側共鳴コイル、20…車載側設備、21,21a,21b,21F,21R…2次側共鳴コイル、15,28…距離推定手段を構成する電圧センサ、22,22a,22b,22F,22R…2次コイル、23…充電器、24…2次電池、26…距離推定手段を構成するとともに位置推定手段としての車両側コントローラ、27…距離計測用交流電源、30…車両、31…駐車支援装置としての自動駐車装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源、前記交流電源から電力の供給を受ける1次側共鳴コイルを備えた給電側設備と、前記1次側共鳴コイルからの電力を磁場共鳴して受電する2次側共鳴コイル、前記2次側共鳴コイルから電力の供給を受ける充電器及び前記充電器に接続された2次電池を備えた車載側設備とを備えた共鳴型非接触充電システムであって、
前記1次側共鳴コイル及び前記2次側共鳴コイルの少なくとも一方が複数設けられ、
前記1次側共鳴コイル及び前記2次側共鳴コイル間の距離を推定する距離推定手段と、
前記距離推定手段により推定された距離から前記給電側設備と前記車載側設備との位置関係を推定する位置推定手段と、
を備えていることを特徴とする共鳴型非接触充電システム。
【請求項2】
前記給電側設備は、前記1次側共鳴コイルに電磁誘導で結合されるとともに前記交流電源と選択的に接続される1次コイルを有し、
前記距離推定手段は、前記1次コイルから検出される電圧値及び前記2次側共鳴コイルから検出される電圧値の少なくともいずれか一方に基づいて前記1次側共鳴コイル及び前記2次側共鳴コイル間の距離を推定する請求項1に記載の共鳴型非接触充電システム。
【請求項3】
前記給電側設備は、前記1次側共鳴コイルに電磁誘導で結合されるとともに前記交流電源と選択的に接続される1次コイルを有し、
前記車載側設備は、前記2次側共鳴コイルに電磁誘導で結合されるとともに前記充電器と選択的に接続される2次コイルを有し、
前記距離推定手段は、前記1次コイルから検出される電圧値及び前記2次コイルから検出される電圧値の少なくともいずれか一方に基づいて前記1次側共鳴コイル及び前記2次側共鳴コイル間の距離を推定する請求項1に記載の共鳴型非接触充電システム。
【請求項4】
前記車載側設備は、第1の2次側共鳴コイル及び第2の2次側共鳴コイルを有し、
前記位置推定手段は、前記距離推定手段により推定された前記第1の2次側共鳴コイルと前記1次側共鳴コイルとの距離及び前記第2の2次側共鳴コイルと前記1次側共鳴コイルとの距離から前記給電側設備と前記車載側設備との位置関係を推定する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の共鳴型非接触充電システム。
【請求項5】
前記給電側設備は、第1の1次側共鳴コイル及び第2の1次側共鳴コイルを有し、
前記位置推定手段は、前記距離推定手段により推定された前記第1の1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとの距離及び前記第2の1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとの距離から前記給電側設備と前記車載側設備との位置関係を推定する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の共鳴型非接触充電システム。
【請求項6】
前記1次コイルと選択的に接続される抵抗と、
2次コイルと選択的に接続される距離計測用交流電源とを有し、
前記距離計測用交流電源が前記各2次コイルに接続されるとともに前記抵抗が前記1次コイルに接続された状態で前記各2次側共鳴コイルから前記1次側共鳴コイルに電力を伝送し、
前記距離推定手段は、前記2次側共鳴コイルから前記1次側共鳴コイルに電力を伝送した後に前記2次コイルから検出される電圧値及び前記2次側共鳴コイルから前記1次側共鳴コイルに電力を伝送した後に前記1次コイルから検出される電圧値の少なくともいずれか一方に基づいて前記2次側共鳴コイルと前記1次側共鳴コイルとの距離を推定する請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の共鳴型非接触充電システム。
【請求項7】
前記車載側設備が搭載された車両は駐車支援装置を備え、前記位置推定手段により推定された前記給電側設備と前記車載側設備との位置関係を示すデータが前記駐車支援装置において使用される請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の共鳴型非接触充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−183813(P2010−183813A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27673(P2009−27673)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】