説明

内服用液剤製品

【課題】ビタミンを含有する水性液体組成物を収容する紙容器におけるデラミネーションの発生が抑制され、かつ前記ビタミンの安定性が向上した内服用液剤製品を提供する。
【解決手段】ビタミンおよび/またはその誘導体(A)と、グルクロン酸、乳酸、酪酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸(B)とを含有し、かつpH3.5以下である水性液体組成物が、少なくとも紙層、アルミニウム層および樹脂層を有する積層シートからなる紙容器に充填されてなることを特徴とする内服用液剤製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンおよび/またはその誘導体を含有する水性液体組成物が紙容器に充填されてなる内服用液剤製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を収容するために用いられる容器として、紙パック等の紙容器がある。該紙容器としては、主に、紙製の基材層に熱接着性樹脂層が積層された積層シートを成形したものが用いられている。このような紙容器の1種として、アルミ箔等のアルミニウム層を有するものがある。アルミニウム層を有する紙容器は、遮光性、気密性等に優れることから、種々の液体の収容に用いられている(たとえば特許文献1〜2参照。)。
しかし、アルミニウム層を有する紙容器は、内容物に含まれる成分によっては、当該内容物を収容した際に、アルミニウム層への内容物の浸透から腐食が起こり、その結果、積層シートの層間剥離(デラミネーション)が生じる問題がある。かかる問題に対して、たとえば特許文献3〜4等においては、アルミニウム層よりも容器内側に特定の樹脂層を設けることが提案されている。
【0003】
一方、内服用の水性液体組成物に種々のビタミンを配合することが一般的に行われているが、ビタミンの中にはpHが高いと不安定な成分がある。このようなビタミンの安定性を高めるために、水性液体組成物に酸を添加してそのpHを低くすることが行われている(たとえば特許文献5〜7参照。)。
【特許文献1】特開平9−234043号公報
【特許文献2】特開2006−136318号公報
【特許文献3】特開平8−66987号公報
【特許文献4】特開平9−327888号公報
【特許文献5】特開平10−67659号公報
【特許文献6】特開平10−67660号公報
【特許文献7】特開2005−104960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような低pHの水性液体組成物、特にpH3.5以下の水性液体組成物は、通常、褐色のガラス瓶に収容されており、たとえば上述したアルミニウム層を有する紙容器に収容するのは困難である。
これは、アルミニウム層を有する紙容器にpH3.5以下の液体を収容した場合、酸濃度が高くなり、当該容器の積層シートの各層間、特にアルミニウム層の部分に、上述したようなデラミネーションが生じてしまうためである。そのため、このような紙容器に収容される液体のpHは、通常、3.5以上の比較的高いpHに設定されている。したがって、これまで、アルミニウム層を有する紙容器に収容される水性液体組成物に、安定性よくビタミンを配合することは困難であった。
本発明の目的は、ビタミンを含有する水性液体組成物を収容する紙容器におけるデラミネーションの発生が抑制され、かつ前記ビタミンの安定性が向上した内服用液剤製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、水性液体組成物に特定の酸を用いることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ビタミンおよび/またはその誘導体(A)と、グルクロン酸、乳酸、酪酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸(B)とを含有し、かつpH3.5以下である水性液体組成物が、少なくとも紙層、アルミニウム層および樹脂層を有する積層シートからなる紙容器に充填されてなることを特徴とする内服用液剤製品である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ビタミンを含有する水性液体組成物を収容する紙容器におけるデラミネーションの発生が抑制され、かつ前記ビタミンの安定性が向上した内服用液剤製品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<水性液体組成物>
ビタミンおよび/またはその誘導体(A)(以下、(A)成分ということがある。)としては、特に制限はなく、内服用液剤に一般的に用いられているもののなかから目的に応じて適宜選択することができる。
(A)成分としては、例えば、ビタミンAまたはその誘導体、ビタミンBまたはその誘導体(硝酸チアミン等のビタミンB1、リン酸リボフラビンナトリウム等のビタミンB2、塩酸ピリドキシン等のビタミンB6、ビタミンB12、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム等のビタミンB5等)、ビタミンCまたはその誘導体(アスコルビン酸等)、ビタミンDまたはその誘導体、ビタミンEまたはその誘導体(トコフェロール、酢酸トコフェロール等)が挙げられる。
本発明において、(A)成分としては、特に、チアミンおよびその誘導体、ニコチン酸アミド、ならびにアスコルビン酸およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。これらのビタミンは、酸性条件下において安定性の高いビタミンである。そのため、これらのビタミンは、pHが3.5以下である本発明の水性液体組成物中において高い安定性を示す。
チアミンの誘導体としては、硝酸チアミン、塩酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル塩、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、フルスルチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミンなどが挙げられる。
アスコルビン酸の誘導体としては、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カルシウム等のアスコルビン酸塩;L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル等のアスコルビン酸エステル;L−アスコルビン酸−2−グルコシドなどが挙げられる。
【0008】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水性液体組成物中、(A)成分の配合量は、特に限定されず、使用するビタミンまたはその誘導体の種類に応じ、その有効量等を考慮して適宜決定すればよい。
たとえば(A)成分として、チアミンもしくはその誘導体、またはニコチン酸アミドを用いる場合は、それぞれ、水性液体組成物100mL中、1〜1000mgが好ましく、10〜500mgがより好ましい。1mg/100mL以上であると、当該ビタミンを配合することによる効果が充分に得られ、1000mg/100mL以下であると、成分安定性、水性液体組成物の味等が良好である。
また、(A)成分として、アスコルビン酸またはその誘導体を用いる場合は、水性液体組成物100mL中、1〜3000mgが好ましく、100〜1000mgがより好ましい。1mg/100mL以上であると、当該ビタミンを配合することによる効果が充分に得られ、1000mg/100mL以下であると、成分安定性、水性液体組成物の味等が良好である。
(A)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0009】
水性液体組成物は、前記(A)成分とともに、(B)グルクロン酸、乳酸、酪酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸(B)(以下、(B)成分ということがある。)を含有する。
水性液体組成物が(B)成分を含有することにより、当該水性液体組成物を収容する容器におけるデラミネーションの発生を抑制しつつ、前記(A)成分の安定性を向上させることができる。また、(B)成分を含有することにより、水性液体組成物の味も向上する。
(B)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(B)成分は、特に、本発明の効果に優れることから、少なくともグルクロン酸を含有することが好ましい。
このとき、(B)成分としては、グルクロン酸を単独で用いてもよく、グルクロン酸以外の(B)成分を併用してもよい。グルクロン酸と併用する(B)成分としては、酪酸が好ましい。
【0010】
水性液体組成物中、(B)成分の配合量は、(B)成分を配合することによる効果を考慮すると、水性液体組成物100mL中、50mg以上が好ましく、100mg以上がより好ましく、300mg以上がさらに好ましい。
(B)成分の配合量の上限としては、特に制限はない。水性液体組成物の味等を考慮すると、水性液体組成物100mL中、10000mg以下が好ましく、5000mg以下がより好ましく、2000mg以下がさらに好ましい。
【0011】
本発明において、水性液体組成物は、pH調整のために、前記(B)成分以外の有機酸および/または無機酸(C)(以下、(C)成分ということがある。)を含有してもよい。
(C)成分における有機酸としては、前記(B)成分に該当しないものであれば特に限定されず、たとえばこれまでpH調整剤として用いられているものを利用でき、たとえばクエン酸、クエン酸ナトリウム、グリシン、酢酸、氷酢酸等が挙げられる。
無機酸としては、塩酸、ホウ酸等が挙げられる。
(C)成分としては、酢酸および/または塩酸が好ましい。
【0012】
(C)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水性液体組成物中、(C)成分の配合量は、特に限定されず、たとえば上記(B)成分と共に、当該水性液体組成物のpHを3.5以下の所望の値とすることができる量であればよい。
本発明においては、特に、(C)成分として酢酸を用いる場合、当該酢酸の配合量を、水性液体組成物100mL中、100mg以下とすることが好ましく、60mg以下とすることがより好ましい。酢酸の配合量が100mg/100mLを越えると、当該水性液体組成物を収容する容器にデラミネーションが発生するおそれがある。
また、(C)成分として塩酸を用いる場合、当該塩酸の配合量を、水性液体組成物100mL中、500mg以下とすることが好ましく、300mg以下とすることがより好ましい。塩酸の配合量が500mg/100mLを越えると、当該水性液体組成物の香味が悪化するおそれがある。
【0013】
水性液体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の任意性分を含有してもよい。該任意成分としては、たとえば各種生理活性成分、甘味剤、pH調整剤(ただし、前記(B)成分および(C)成分を除く。)、増粘剤、溶解補助剤、保存剤(防腐剤)、安定化剤、果汁、香料、色素等が挙げられる。これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量配合することができる。
生理活性成分としては、たとえばニンジン、ガラナ、トウキ、シャクヤク等の生薬またはその抽出物、ローヤルゼリー、カフェイン、塩化カルニチン、タウリン、カプサイシン等が挙げられる。
【0014】
甘味剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ショ糖、液糖、果糖、果糖ブドウ糖液、ブドウ糖果糖液糖、還元麦芽糖水アメ、黒砂糖、高果糖液糖、ブドウ糖、粉末還元麦芽糖水アメ、水アメ、高ブドウ糖水アメ、乳糖、白糖、精製白糖、精製白糖球状顆粒、ハチミツ、精製ハチミツ、単シロップ、エリスリトール、キシリトール、D−ソルビトール、D−ソルビトール液、マルチトール、マルチトール液、マルトース、D−マンニトール、アスパルテーム 、アセスルファムカリウム、アマチャ抽出物、甘草抽出物、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出物、ネオテーム、ソーマチン、グリシン、グリセリン、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、甘草等が挙げられる。上記の甘味剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
pH調整剤としては、(B)成分および(C)成分以外のものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコノ−δ−ラクトン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸一ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0016】
増粘剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばカラギーナン、ジェランガム、プルラン、アラビアゴムなどの天然水溶性高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの合成水溶性高分子等が挙げられる。増粘剤を含有させることにより、各成分の液中での安定性が向上する。
【0017】
溶解補助剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤、多価アルコール、エタノール等の低級アルコールなどが挙げられる。
【0018】
保存剤(防腐剤)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、エタノール、エデト酸ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、カンテン、dl−カンフル、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸フェニル、ジブチルヒドロキシトルエン、D−ソルビトール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、白糖、ハチミツ、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、プロピレングリコール、l−メントール、ユーカリ油等が挙げられる。上記の保存剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
前記安定化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アジピン酸、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、DL−アラニン、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、L−アルギニン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルブミン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、イオウ、イノシトール、エタノール、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、エルソルビン酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸システイン、カカオ脂、果糖、カルボキシビニルポリマー、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥炭酸ナトリウム、キサンタンガム、キシリトール、クエン酸カルシウム、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、グリチルリチン酸二ナトリウム、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、酢酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸フェニル、β−シクロデキストリン、ジブチルヒドロキシトルエン、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化カルシウム、精製ゼラチン、精製大豆レシチン、精製白糖、セスキオレイン酸ソルビタン、セタノール、ゼラチン、ソルビタン脂肪酸エステル、D−ソルビトール、D−ソルビトール液、大豆油不けん化物、デキストラン、乳糖、濃グリセリン、白糖、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸メチル、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブドウ糖、フマル酸−ナトリウム、プロピレングリコール、ベントナイト、没食子酸プロピル、ポリアクリル酸部分中和物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・ジブチルエーテル混合物、マクロゴール、マルトース、D−マンニトール、無水ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メチルセルロース、l−メントール、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、薬用炭、ラウリル硫酸ナトリウム、卵白アルブミン等が挙げられる。上記の安定化剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明において、水性液体組成物のpH(25℃におけるpH)は3.5以下であり、3.2以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。かかる酸性領域下であることにより、当該水性液体組成物中の(A)成分の安定性が向上する。
水性液体組成物のpHの下限としては、特に限定されないが、2.0以上であると、当該水性液体組成物の味が向上するため好ましく、2.3以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。
【0021】
水性液体組成物の調製方法は、特に制限はなく、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、日本薬局法製剤総則「液剤」の項に準じて製造し、ろ過、滅菌して製造することができる。
【0022】
<紙容器>
本発明において用いられる紙容器は、少なくとも紙層、アルミニウム層および樹脂層を有する積層シートからなるものであり、容器外側から順に、紙層/アルミニウム層/樹脂層(最内層)の順に積層されるものである。当該紙容器は、少なくともアルミニウム層を有するため、遮光性に優れている。これにより、水性液体組成物中のビタミンの安定性が向上する。
本発明に用いられる紙容器は、さらに、目的に応じて、紙層の外側に樹脂コーティング層が設けられていてもよく、また、紙層/アルミニウム層の間やアルミニウム層/樹脂層の間に、接着剤層や接着性樹脂層、アンカーコート剤層、耐熱性樹脂層などの任意の層が設けられていてもよい。
【0023】
紙層を構成する材料としては、特に制限はなく、一般的に紙容器に用いられている紙基材であってよい。すなわち、紙基材は、飲料などの液体用の容器に加工して使用することを考慮すると、積層シートに、容器として使用可能な程度の賦型性、耐屈曲性、剛性等を持たせるものが好ましい。
好ましい紙基材の具体例を挙げると、たとえば、水の吸収、浸透、にじみなどへの耐性に優れた強サイズ性の晒または未晒の紙基材、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙等が挙げられる。
紙基材の坪量は、80〜600g/mが好ましく、100〜450g/mがより好ましい。
【0024】
樹脂層は、熱によって溶融し、融着し得る樹脂から構成される。該樹脂としては、たとえば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、エチレン−アクリル酸共重合体またはエチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン−不飽和カルボン酸共重合体を変性した酸変性ポリオレフィン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンがより好ましい。
本発明に用いられる紙容器の最内層は、樹脂層である。最内層の樹脂層としては、上記熱可塑性樹脂から構成されるフィルムが好ましく、ポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましく、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが、耐加工性(折り曲げ加工等に対する耐性)の点で優れるため、より好ましい。
樹脂層の1層あたりの厚さは、特に限定されないが、たとえば容器最内層の樹脂層の場合、1〜50μmが好ましく、5〜300μmがより好ましい。
【0025】
アルミニウム層としては、たとえば、アルミニウム箔、アルミニウムを真空蒸着等の通常の方法で樹脂フィルム(たとえば上述した熱可塑性樹脂層や、後述する耐熱性樹脂層を構成する樹脂として挙げる樹脂からなるもの)等に蒸着してなるアルミニウム蒸着膜等が挙げられる。
積層シートにおいては、少なくとも、アルミニウム層が、紙層よりも、容器内側になる側に設けられていることが好ましい。
アルミニウム層の厚さは、1〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。
【0026】
積層シートは、上記以外に、紙容器に一般的に用いられている任意の層を有していてもよい。
かかる任意の層としては、たとえばコーティング層、接着剤層、接着性樹脂層、アンカーコート剤層、耐熱性樹脂層が挙げられる。
たとえば積層シートの、該容器内側最内層樹脂層とアルミニウム層の間に、1種以上の接着剤層、接着性樹脂層、アンカーコート剤層を設けることにより、アルミニウム層と最内層樹脂との間の密着性が向上し、デラミネーションがより発生しにくくなるため、好ましい。例えば、最内層樹脂層がポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムの場合は、少なくともポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系接着剤層、接着性樹脂層を含むことがより好ましい。
また、耐熱性樹脂層を設けることにより、積層シート表面に熱風等を吹き付けて前記熱接着性樹脂層を溶融させ、紙容器とする際に、その熱風の熱に対する耐性が向上し、紙容器における不具合(ピンホ−ル等)の発生を防止できる。
【0027】
コーティング層としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、エチレン−アクリル酸共重合体またはエチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン−不飽和カルボン酸共重合体を変性した酸変性ポリオレフィン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂のフィルムが挙げられる。
コーティング層の厚さは、5〜300μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
【0028】
接着剤層、接着性樹脂層(以下、これらをまとめて接着性層ということがある。)としては、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系などのものを使用することができる。
アンカーコート剤層としては、ウレタン系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系などのものが挙げられる。
【0029】
耐熱性樹脂層を構成する樹脂としては、たとえば6ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、メタキシレンジアミンと2塩基酸との縮合によるポリアミド、その他等のポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、その他の耐熱性樹脂が挙げられる。
このような耐熱性樹脂層は、たとえば上記の樹脂を含む組成物を用いて他の層の表面に形成されたコーティング膜であってもよく、当該樹脂からなるフィルムないしシートを使用したものであってもよい。
耐熱性樹脂層の厚さは、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0030】
積層シートの層構成の具体例としては、たとえば、容器外側から順に、
・コーティング層/紙層/接着性層/アルミニウム層/接着性層/樹脂層;
・コーティング層/紙層/接着性層/アンカーコート剤層/アルミニウム層/アンカーコート剤層/接着性層/樹脂層;
・コーティング層/紙層/接着性層/アルミニウム層/接着性層/耐熱性樹脂層/樹脂層
等が挙げられる。かかる紙容器は、層間の密着性が高く、デラミネーションが発生しにくいため好ましい。
【0031】
積層シートは、通常のラミネート法により得ることができ、たとえば接着剤を介して各層を積層するグルーラミネーション法(ウエットラミネーション、ドライラミネーション、ホットメルトラミネーション)や、溶融樹脂を押し出して積層する押し出しラミネーション法などを適宜選択して用いることができる。
【0032】
上記のような積層シートからなる紙容器には、印刷によるインキ層が形成されていてもよい。インキ層を形成する位置は、外側から視認可能な位置であればよく、たとえば紙層の容器外側の表面に形成してもよく、また、紙層よりも外側に熱接着性樹脂層および/または耐熱性樹脂層が設けられている場合にはそれらの表面に形成してもよい。
インキ層の形成方法は、特に限定されず、たとえばフレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の、一般に紙容器への印刷に用いられている方法を利用できる。
【0033】
紙容器の形状は特に限定されず、一般的に用いられている紙容器と同様の形状であってよい。図1に、本発明において用いられる紙容器の形状の一例を示す。
図1に示す紙容器11のような直方体形の紙容器に水性液体組成物が収容された内服用液剤製品は、特に限定されないが、たとえば、所定の積層シートを折り曲げ、その両端部の熱接着性樹脂層同士を熱接着により融着させて筒状とした後、その下端の開口部を熱融着により封鎖することによって上端が開口した紙容器を得、該紙容器内に所定の水性液体組成物を充填し、紙容器の上端の開口部を、熱融着により封鎖することによって製造できる。
本発明において使用される容器としては、特開2000−309334、特開平11−70993、特開2006−256293、特開平8−66987、特開2005−53495、特開2002−200697などに記載された容器などを使用することができる。また、市販されているものとしては、例えば「テトラ・ブリック・アセプティック(TBA)」(商品名。日本テトラパック(株)製)等を使用することができる。
【実施例】
【0034】
次に、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例においては、%は質量%を示す。
(実施例1〜5,比較例1〜4)
[水性液体組成物の調製]
下記表1〜2に示す組成およびpHになるように100mLの水性液体組成物を常法により調製した。
得られた水性液体組成物を、紙パック1(商品名「TBA」、日本テトラパック(株)製、厚さ:約0.4mm、縦:約30mm、横:約40mm、高さ:約85mm、の直方体)に収容して内服用液剤製品を得た。
紙パック1の主構成は以下の通りである。
<主構成>(容器外側)紙層/アルミニウム層/ポリエチレン層(容器内側:最内層)
得られた内服用液剤製品について、以下の評価を行った。
【0035】
[デラミネーションの評価]
各内服用液剤製品を、50℃で1週間保存し、保存後、容器のアルミ箔層部分を目視にて観察し、下記評価基準に基づいて、デラミネーション(アルミ層のデラミ発生)を評価した。その結果を表1〜2に併記する。
(評価基準:「無」の評価で本発明の効果を確認できたと判断した。)
無:アルミ箔層にデラミネーションの発生は確認されなかった。
有:アルミ箔層にデラミネーションの発生が確認された。
【0036】
[ビタミン安定性の評価]
各内服用液剤製品を、50℃で1週間保存し、保存後、その水性液体組成物中の硝酸チアミン、ニコチン酸アミドおよびアスコルビン酸の含有量をそれぞれ高速液体クロマトグラフィーにより定量し、下記評価基準に基づいてそれぞれの安定性を評価した。その結果を表1〜2に併記する。
(評価基準:「○」以上の評価で本発明の効果を確認できたと判断した。)
<硝酸チアミン安定性>
◎:非常に安定(初期値に対する残存率が85%超100%以下)。
○:安定(初期値に対する残存率が75%超85%以下)。
×:不安定(初期値に対する残存率が75%以下)。
<ニコチン酸アミド安定性>
◎:非常に安定(初期値に対する残存率が90%超100%以下)。
○:安定(初期値に対する残存率が80%超90%以下)。
×:不安定(初期値に対する残存率が80%以下)。
<アスコルビン酸安定性>
◎:非常に安定(初期値に対する残存率が80%超100%以下)。
○:安定(初期値に対する残存率が65%超80%以下)。
×:不安定(初期値に対する残存率が65%以下)。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
上記結果に示すように、実施例1〜5の内服用液剤製品においては、アルミ層のデラミ発生がなく、ビタミンの安定性も良好であった。
一方、水性液体組成物のpHが4.0である比較例1、およびグルクロン酸を配合せず、かつpHが4.5であった比較例2においては、アルミ層のデラミ発生は無かったものの、ビタミン安定性が悪かった。また、グルクロン酸を配合せず、塩酸や酢酸を用いてpHを3.5とした比較例3〜4においては、アルミ層のデラミ発生が見られた。
【0040】
(実施例6〜10,比較例5〜8)
前記実施例1〜5および比較例1〜4において用いた紙パック1を、最内層の素材がポリプロピレンである以外は紙パック1と同じである紙パック2(商品名「TBA」、日本テトラパック(株)製、厚さ:約0.4mm、縦:約30mm、横:約40mm、高さ:約85mm、の直方体)に変更した以外は実施例1〜5および比較例1〜4と同様にして内服用液剤製品を得、上記と同様の評価を行った。
その結果、アルミ層のデラミ発生、ビタミン安定性ともに、実施例6〜10,比較例5〜8においては、それぞれ、実施例1〜5,比較例1〜4と同様の結果が得られた。
【0041】
(実施例11〜15)
下記表3に示す組成およびpHになるように100mLの水性液体組成物を常法により調製した。
得られた水性液体組成物を、実施例1〜5,比較例1〜4で用いたのと同じ紙パック1に収容して内服用液剤製品を得た。
得られた内服用液剤製品について、実施例1〜5,比較例1〜4と同様の評価を行った。その結果、アルミ層のデラミ発生、ビタミン安定性ともに、良好な結果が得られた。
【0042】
【表3】

【0043】
(実施例16〜20)
前記紙パック1を紙パック2に変更した以外は実施例11〜15と同様にして内服用液剤製品を得、上記と同様の評価を行った。
その結果、アルミ層のデラミ発生、ビタミン安定性ともに、実施例11〜15と同様、良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明において用いられる紙容器の一例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
11…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンおよび/またはその誘導体(A)と、グルクロン酸、乳酸、酪酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸(B)とを含有し、かつpH3.5以下である水性液体組成物が、少なくとも紙層、アルミニウム層および樹脂層を有する積層シートからなる紙容器に充填されてなることを特徴とする内服用液剤製品。
【請求項2】
前記ビタミンおよび/またはその誘導体(A)が、チアミンおよびその誘導体、ニコチン酸アミド、ならびにアスコルビン酸およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の内服用液剤製品。
【請求項3】
前記有機酸(B)が、少なくともグルクロン酸を含有する請求項1または2記載の内服用液剤製品。
【請求項4】
さらに、前記有機酸(B)以外の有機酸および/または無機酸(C)を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の内服用液剤製品。

【図1】
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【公開番号】特開2008−94786(P2008−94786A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280468(P2006−280468)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】