内燃機関の制御装置
【課題】 給油直後における燃焼状態あるいは排気特性の悪化を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】 給油後、燃料のセタン価推定が実行されていないときは、第2切換制御信号SCTL2が「1」に設定される(S17,S21)。これにより、燃料噴射制御及び排気還流制御は、燃料のセタン価が平均的なセタン価である場合に対応した制御マップを用いて実行される。セタン価推定が実行された後に、燃焼の異常が検出されたときも、第2切換制御信号SCTL2が「1」に設定される(S18〜S21)。
【解決手段】 給油後、燃料のセタン価推定が実行されていないときは、第2切換制御信号SCTL2が「1」に設定される(S17,S21)。これにより、燃料噴射制御及び排気還流制御は、燃料のセタン価が平均的なセタン価である場合に対応した制御マップを用いて実行される。セタン価推定が実行された後に、燃焼の異常が検出されたときも、第2切換制御信号SCTL2が「1」に設定される(S18〜S21)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の制御装置に関し、特に使用中の燃料の燃料性状(セタン価)を推定する機能を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、予混合燃焼を行う圧縮着火内燃機関の制御装置が示されている。この装置によれば、燃焼室内の圧力(筒内圧)を検出する筒内圧センサを用いて、予混合燃焼中に燃料の実着火時期を検出し、予め設定された標準燃料着火時期との差である着火時期誤差及び該着火時期誤差のばらつきに応じて、使用中の燃料の性状が判定される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−171818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒内圧センサによる着火時期の検出精度は、センサの精度や燃焼状態の変動による影響を受けるため、検出精度を高めるためには、機関運転状態が安定した状態で100〜400サイクル程度の期間に得られるデータを平均化することが必要である。したがって、上記従来の手法により燃料性状を判定する場合でも、給油直後においては、燃料性状を直ちに精度良く判定することが困難であり、燃料性状に適した燃料噴射制御を行うことができず、一時的に燃焼状態が不安定化したり、粒子状物質の排出量が増加する可能性があった。
【0005】
また給油直後に限らず、センサの異常などによって燃料性状の誤判定が発生した場合にも、同様の不具合が発生する可能性があるため、そのような場合には迅速な対応が望まれる。
【0006】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、給油直後における燃焼状態あるいは排気特性の悪化を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することを第1の目的とし、燃料性状の誤判定が発生した可能性がある場合を迅速に検出し、燃焼状態あるいは排気特性の悪化を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関(1)の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射手段(6)を備えた内燃機関の制御装置において、前記燃料噴射手段(6)により噴射された燃料の着火時期を検出する着火時期検出手段と、検出される着火時期(CAFM)に応じて使用中の燃料のセタン価を推定するセタン価推定手段と、前記セタン価に対応する複数の燃料噴射時期マップ(CAIMM1〜CAIMM3)を備え、前記セタン価推定手段により推定されたセタン価(CETLRN)に応じて前記複数の燃料噴射時期マップのうちの1つを選択し、該選択した燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射手段(6)による燃料噴射の制御を行う燃料噴射制御手段と、前記機関に燃料を供給する燃料タンクに給油が行われたことを検出する給油検出手段とを備え、前記複数の燃料噴射時期マップは、使用可能な燃料の平均的なセタン価(CET2)に対応する平均的燃料噴射時期マップ(CAIMM2)を含み、前記燃料噴射制御手段は、前記給油が行われた直後においては、前記平均的燃料噴射時期マップ(CAIMM2)を用いて前記燃料噴射制御を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、内燃機関(1)の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射手段(6)を備えた内燃機関の制御装置において、前記燃料噴射手段(6)により噴射された燃料の着火時期を検出する着火時期検出手段と、検出される着火時期(CAFM)に応じて使用中の燃料のセタン価を推定するセタン価推定手段と、前記セタン価に対応する複数の燃料噴射時期マップ(CAIMM1〜CAIMM3)を備え、前記セタン価推定手段により推定されたセタン価(CETLRN)に応じて前記複数の燃料噴射時期マップのうちの1つを選択し、該選択した燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射手段(6)による燃料噴射の制御を行う燃料噴射制御手段と、前記燃料噴射手段により噴射された燃料の燃焼異常を検出する燃焼異常検出手段とを備え、前記複数の燃料噴射時期マップは、使用可能な燃料の平均的なセタン価(CET2)に対応する平均的燃料噴射時期マップ(CAIMM2)を含み、前記燃料噴射制御手段は、前記燃焼異常が検出されたときは、前記平均的燃料噴射時期マップ(CAIMM2)を用いて前記燃料噴射制御を行うことを特徴とする。
【0009】
前記燃焼異常検出手段は、前記燃料噴射手段によるパイロット噴射で噴射された燃料の燃焼異常を検出することが望ましい。その場合、パイロット噴射で噴射された燃料の燃焼状態を示すパラメータ(ROPMAX,dp/dθMP)と、主噴射で噴射された燃料の燃焼状態を示すパラメータ(ROMMAX,dp/dθMM)との比に基づいて、パイロット噴射で噴射された燃料の燃焼異常を検出することが望ましい。
【0010】
前記燃焼異常検出手段は、前記推定されたセタン価(CET)が前記平均的なセタン価(CET2)より大きく、かつ前記燃料噴射手段により噴射された燃料の燃焼状態の不安定性を示すパラメータ(RS)が判定閾値(RSTH)より大きいとき、燃焼異常が発生したと判定することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、給油が行われた直後においては、使用可能な燃料の平均的なセタン価に対応した平均的燃料噴射時期マップを用いて燃料噴射制御が行われるので、燃料の実際のセタン価が、例えば平均的燃料噴射時期マップの設定基準としたセタン価より大きい場合であっても、平均的なセタン価との差は、平均的なセタン価より小さいセタン価の燃料を基準として設定されたマップを用いる場合と比べて小さくなり、燃焼状態や排気特性の悪化を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、噴射された燃料の燃焼異常が検出されたときは、平均的燃料噴射時期マップを用いて燃料噴射制御が行われるので、使用中の燃料の推定セタン価が、実際のセタン価から大きくずれていることに起因する、燃焼状態や排気特性の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2は本発明の一実施形態にかかる内燃機関と、その制御装置の構成を示す図である。以下両図を合わせて参照して説明する。内燃機関(以下「エンジン」という)1は、シリンダ内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンであり、各気筒に燃料噴射弁6が設けられている。燃料噴射弁6は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)4に電気的に接続されており、燃料噴射弁6の開弁時期及び開弁時間は、ECU4により制御される。
【0014】
エンジン1は、吸気管7,排気管8、及びターボチャージャ9を備えている。ターボチャージャ9は、排気の運動エネルギにより回転駆動されるタービンと、タービンとシャフトを介して連結されたコンプレッサとを備えている。ターボチャージャ9は、エンジン1に吸入される空気の加圧(圧縮)を行う。
【0015】
吸気管7のコンプレッサ下流側にはインタークーラ21が設けられ、さらにインタークーラ21の下流側には、スロットル弁22が設けられている。スロットル弁22は、アクチュエータ23により開閉駆動可能に構成されており、アクチュエータ23はECU4に接続されている。ECU4は、アクチュエータ23を介して、スロットル弁22の開度制御を行う。
【0016】
排気管8と吸気管7との間には、排気ガスを吸気管7に還流する排気還流通路25が設けられている。排気還流通路25には、排気還流量を制御するための排気還流弁(以下[EGR弁」という)26が設けられている。EGR弁26は、ソレノイドを有する電磁弁であり、その弁開度はECU4により制御される。EGR弁26には、その弁開度(弁リフト量)LACTを検出するリフトセンサ27が設けられており、その検出信号はECU4に供給される。排気還流通路25及びEGR弁26より、排気還流機構が構成される。
【0017】
吸気管7には、吸入空気量GAを検出する吸入空気量センサ31、コンプレッサの下流側の吸気圧(過給圧)PBを検出する過給圧センサ32、及び吸気圧PIを検出する吸気圧センサ33が設けられ、排気管8には排気温TEを検出する排気温センサ34が設けられている。これらのセンサ31〜34は、ECU4と接続されており、センサ31〜34の検出信号は、ECU4に供給される。
【0018】
排気管8の、タービンの下流側には、排気ガス中に含まれる炭化水素などの酸化を促進する触媒コンバータ28と、粒子状物質(主としてすすからなる)を捕集する粒子状物質フィルタ29とが設けられている。
【0019】
エンジン1の各気筒には、筒内圧(燃焼圧力)を検出する筒内圧センサ2が設けられている。本実施形態では、筒内圧センサ2は、各気筒に設けられるグロープラグと一体に構成されている。筒内圧センサ2の検出信号は、ECU4に供給される。なお、筒内圧センサ2の検出信号は、実際には、筒内圧PCYLのクランク角度(時間)に対する微分信号に相当するものであり、筒内圧PCYLは、筒内圧センサ出力を積分することにより得られる。
【0020】
またエンジン1には、クランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ3が設けられている。クランク角度位置センサ3は、クランク角1度毎にパルスを発生し、そのパルス信号はECU4に供給される。クランク角度位置センサ3は、さらに特定気筒の所定クランク角度位置で気筒識別パルスを生成して、ECU4に供給する。
【0021】
ECU4には、エンジン1により駆動される車両のアクセルペダルの操作量APを検出するアクセルセンサ35、エンジン1の冷却水温TWを検出する冷却水温センサ36、エンジン1の潤滑油の温度TOILを検出する油温センサ37、排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ(図示せず)、及びエンジン1の吸気温TAを検出する吸気温センサ(図示せず)などが接続されており、これらのセンサの検出信号がECU4に供給される。
【0022】
ECU4は、エンジン1の各気筒の燃焼室に設けられた燃料噴射弁6の制御信号を駆動回路5に供給する。駆動回路5は、燃料噴射弁6に接続されており、ECU4から供給される制御信号に応じた駆動信号を、燃料噴射弁6に供給する。これにより、ECU4から出力される制御信号に応じた燃料噴射時期において、前記制御信号に応じた燃料噴射量だけ燃料が、各気筒の燃焼室内に噴射される。ECU4は、通常は1つの気筒についてパイロット噴射及び主噴射を実行する。
【0023】
ECU4は、増幅器10と、A/D変換部11と、パルス生成部13と、CPU(Central Processing Unit)14と、CPU14で実行されるプログラムを格納するROM(Read Only Memory)15と、CPU14が演算結果などを格納するRAM(Random Access Memory)16と、入力回路17と、出力回路18とを備えている。筒内圧センサ2の検出信号は、増幅器10に入力される。増幅器10は、入力される信号を増幅する。増幅器10により増幅された信号は、A/D変換部11に入力される。また、クランク角度位置センサ3から出力されるパルス信号は、パルス生成部13に入力される。
【0024】
A/D変換部11は、バッファ12を備えており、増幅器10から入力される筒内圧センサ出力をディジタル値(以下「圧力変化率」という)dp/dθに変換し、バッファ12に格納する。より具体的には、A/D変換部11には、パルス生成部13から、クランク角1度周期のパルス信号(以下「1度パルス」という)PLS1が供給されており、この1度パルスPLS1の周期で筒内圧センサ出力をサンプリングし、ディジタル値に変換してバッファ12に格納する。筒内圧PCYLは、圧力変化率dp/dθを積算することにより算出される。
【0025】
一方、CPU14には、パルス生成部13から、クランク角6度周期のパルス信号PLS6が供給されており、CPU14はこの6度パルスPLS6の周期でバッファ12に格納されたディジタル値を読み出す処理を行う。すなわち、本実施形態では、A/D変換部11からCPU14に対して割り込み要求を行うのではなく、CPU14が6度パルスPLS6の周期で読出処理を行う。
【0026】
入力回路17は、各種センサの検出信号をディジタル値に変換し、CPU14に供給する。なお、エンジン回転数NEは、6度パルスPLSの周期から算出される。またエンジン1の要求トルクTRQは、アクセルペダル操作量APに応じて算出される。
【0027】
CPU14は、エンジン運転状態に応じて目標排気還流量GEGRを算出し、目標排気還流量GEGRに応じてEGR弁26の開度を制御するデューティ制御信号を、出力回路18を介してEGR弁26に供給する。さらにCPU14は、以下に説明するように使用中の燃料のセタン価を推定する処理を実行し、推定したセタン価に応じた燃料噴射制御を行う。
【0028】
図3は、燃料噴射弁6による主噴射時期CAIM及び目標排気還流量GEGRを算出するモジュールの構成を示すブロック図である。このモジュールの機能は、CPU14で実行される処理により実現される。
【0029】
図3に示すモジュールは、主噴射時期CAIMを算出する主噴射時期算出部40と、目標排気還流量GEGRを算出する目標排気還流量算出部50と、使用中の燃料のセタン価CETを推定し、推定したセタン価に応じたセタン価切換信号SWCETを出力するセタン価切換信号生成部60とからなる。本実施形態では、市場で流通している燃料のセタン価を考慮して、使用中の燃料のセタン価を、第1セタン価CET1(例えば41)、または第2セタン価CET2(例えば47)、第3セタン価CET3(例えば57)のいずれかであると判定し、判定したセタン価に応じた燃料噴射時期制御及び排気還流制御が行われる。セタン価切換信号SWCETは、第1〜第3セタン価CET1〜CET3に対応して、「1」〜「3」の値をとる。第2セタン価CET2は、市場で流通している(使用可能な)燃料の平均的なセタン価である。
【0030】
主噴射時期算出部40は、第1主噴射時期マップ値算出部41と、第2主噴射時期マップ値算出部42と、第3主噴射時期マップ値算出部43と、スイッチ部44とからなる。
第1主噴射時期マップ値算出部41は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたCAIMM1マップを検索して、第1主噴射時期マップ値CAIMM1を算出する。CAIMM1マップは、上述した第1セタン価CET1の燃料を基準として設定されている。第2主噴射時期マップ値算出部42は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたCAIMM2マップを検索して、第2主噴射時期マップ値CAIMM2を算出する。CAIMM2マップは、上述した第2セタン価CET2の燃料を基準として設定されている。第3主噴射時期マップ値算出部43は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたCAIMM3マップを検索して、第3主噴射時期マップ値CAIMM3を算出する。CAIMM3マップは、上述した第3セタン価CET3の燃料を基準として設定されている。
【0031】
スイッチ部44は、セタン価切換信号SWCETに応じて、第1〜第3主噴射時期マップ値CAIMM1〜CAIMM3の何れかを選択する。すなわち、SWCET=1であるときは、第1主噴射時期マップ値CAIMM1が選択され、SWCET=2であるときは、第2主噴射時期マップ値CAIMM2が選択され、SWCET=3であるときは、第3主噴射時期マップ値CAIMM3が選択される。燃料のセタン価が低下するほど、燃料噴射時期は進角されるので、運転状態が同一であるときは、CAIMM1>CAIMM2>CAIMM3という関係が成立する。
【0032】
目標排気還流量算出部50は、第1目標EGR量マップ値算出部51と、第2目標EGR量マップ値算出部52と、第3目標EGR量マップ値算出部53と、スイッチ部54とからなる。
第1目標EGR量マップ値算出部51は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたGEGRM1マップを検索して、第1目標EGR量GEGRM1を算出する。GEGRM1マップは、第1セタン価CET1の燃料を基準として設定されている。第2目標EGR量マップ値算出部52は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたGEGRM2マップを検索して、第2目標EGR量GEGRM2を算出する。GEGRM2マップは、第2セタン価CET2の燃料を基準として設定されている。第3目標EGR量マップ値算出部53は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたGEGRM3マップを検索して、第3目標EGR量GEGRM3を算出する。GEGRM3マップは、第3セタン価CET3の燃料を基準として設定されている。
【0033】
スイッチ部54は、セタン価切換信号SWCETに応じて、第1〜第3目標EGR量マップ値GEGRM1〜GEGRM3の何れかを選択する。すなわち、SWCET=1であるときは、第1目標EGR量マップ値GEGRM1が選択され、SWCET=2であるときは、第2目標EGR量マップ値GEGRM2が選択され、SWCET=3であるときは、第3目標EGR量マップ値GEGRM3が選択される。燃料のセタン価が低下するほど、目標EGR量は減少するので、運転状態が同一であるときは、GEGRM1<GEGRM2<GEGRM3という関係が成立する。
【0034】
セタン価切換信号生成部60は、目標主噴射着火時期算出部61と、着火時期検出部62と、減算部63と、フィルタ処理部64と、スイッチ部65と、セタン価推定部66と、判定パラメータ設定部67と、スイッチ部68とからなる。
【0035】
目標主噴射着火時期算出部61は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたCAFMMマップを検索して、目標主噴射着火時期CAFMMを算出する。CAFMMマップは、第2セタン価CET2(例えば47)の燃料を基準として設定されている。
【0036】
着火時期検出部62は、筒内圧センサ2の出力信号をディジタル値に変換した圧力変化率dp/dθに応じて主噴射着火時期CAFMを検出する。この検出手法は、図4〜6を参照して後述する。減算部63は、目標主噴射着火時期CAFMMから、主噴射着火時期CAFMを減算することにより、着火遅れ角DCAMを算出する。
【0037】
フィルタ処理部64は、比較的長い時間(10〜60秒)かけて得た着火遅れ角DCAMのデータを、最小2乗法演算または移動平均化演算によりフィルタ処理を施す。フィルタ処理後の着火遅れ角DCAMFとする。スイッチ部65は、後述する図11の処理で設定される第1切換制御信号SCTL1により切換制御され、第1切換制御信号SCTL1が「0」のときオフ状態であり、「1」のときオン状態となる。第1切換制御信号SCTL1は、セタン価推定の実行条件が成立したとき、「1」に設定される。
【0038】
セタン価推定部66は、着火遅れ角DCAMFをエンジン回転数NEを用いて、着火遅れ時間TDFMに変換し、着火遅れ時間TDFMに応じて図7に示すCETテーブルを検索し、セタン価CETを算出する。セタン価推定部66は、さらにセタン価CETを下記式(1)に適用し、セタン価学習値CETLRNを算出する。
CETLRN=α×CET+(1−α)×CETLRN (1)
ここで、αは0から1の間の値に設定されるなまし係数、右辺のCETLRNは、前回算出値である。
【0039】
上述したセタン価学習値CETLRNは、4つの気筒の筒内圧センサ出力をすべて用いて算出される。したがって、上記式(1)により、気筒毎に検出されるセタン価CET、及び検出タイミングが異なるセタン価CETの平均化が行われる。なお、セタン価推定処理が実行されないときは、記憶されている最新のセタン価学習値CETLRNが、セタン価推定部66から出力される。
【0040】
判定パラメータ設定部67は、セタン価学習値CETLRNに応じて、判定セタン価パラメータCETDの設定を行う。具体的には、図8に示すように、ヒステリシス特性を付加して、第1閾値CETH1及び第2閾値CETH2と、セタン価学習値CETLRNの比較を行う。すなわち、ヒステリシス特性を付加するためのパラメータ(以下「ヒステリシスパラメータ」という)をΔhとすると、判定セタン価パラメータCETDが「2」であるときは、セタン価学習値CETLRNが第2閾値CETH2にヒステリシスパラメータΔhを加算した値を越えると、判定セタン価パラメータCETDが「3」に変更される。逆に判定セタン価パラメータCETDが「3」であるときは、セタン価学習値CETLRNが第2閾値CETH2からヒステリシスパラメータΔhを減算した値を下回ると、判定セタン価パラメータCETDが「2」に変更される。第1閾値CETH1についても同様の判定により、判定セタン価パラメータCETDが設定される。
【0041】
スイッチ部68は、後述する図11の処理で設定される第2切換制御信号SCTL2により切換制御され、第2切換制御信号SCTL2が「1」のときは「2」を選択し、第2切換制御信号SCTL2が「0」のときは判定セタン価パラメータCETDを選択し、セタン価切換信号SWCETとして出力する。
【0042】
図4は、実着火時期CAFMを算出(検出)する着火時期算出モジュールの構成を示すブロック図である。着火時期算出モジュールの機能は、CPU14による演算処理により実現される。着火時期算出モジュールは、バンドパスフィルタ部71と、位相遅れ補正部72と、着火時期判定部73とからなる。バンドパスフィルタ部71には、筒内圧センサ2から出力される圧力変化率dp/dθが入力される。図5に示す波形W1が入力波形を示し、波形W2が出力波形を示す。バンドパスフィルタ部71では、位相遅れが発生するため、位相遅れ補正部72では、この遅れを補正する。
【0043】
着火時期判定部73は、燃料噴射に対応して、圧力変化率dp/dθがピーク値を示すクランク角度位置を実着火時期CAFMとを判定する。具体的には、図6(b)に示すように、位相遅れ補正部72から出力される圧力変化率dp/dθが検出閾値DPPを超えたクランク角を、実着火時期CAFMと判定する。
【0044】
図6(a)には、クランク角CAIMから開始される噴射パルスINJMが示されており、同図(b)には実着火時期CAFMを検出する角度範囲RDET(例えば10度)が示されている。このように、検出角度範囲RDETを比較的狭い範囲に限定することにより、CPU14の演算負荷を増大させることなく、着火時期を正確に判定することができる。
【0045】
図9は、給油された燃料のセタン価と、推定されたセタン価との関係により、エンジンの作動特性がどのように変化するかを示している。燃料のセタン価と、推定セタン価が一致している状態では、通常のエンジン性能を発揮させることができる。
【0046】
燃料のセタン価が第2セタン価CET2であり、推定セタン価が第1セタン価CET1であるとき、あるいは燃料のセタン価が第3セタン価CET3であり、推定セタン価が第2セタン価CET2であるときは、燃焼騒音が悪化(増大)し、さらに燃料のセタン価が第3セタン価CET3であるのに、推定セタン価が第1セタン価CET1であるとき(以下「第1の誤判定状態」という)は、燃焼騒音が増大するだけでなくスモーク(粒子状物質)の排出量も増加する。
【0047】
一方、燃料のセタン価が第1セタン価CET1であり、推定セタン価が第2セタン価CET2であるとき、あるいは燃料のセタン価が第2セタン価CET2であり、推定セタン価が第3セタン価CET3であるときは、燃焼状態が悪化(不安定化)し、さらに燃料のセタン価が第1セタン価CET1であるのに、推定セタン価が第3セタン価CET3であるとき(以下「第2の誤判定状態」という)は、失火が発生する可能性が高くなる。
【0048】
図10は、膨張行程開始上死点近傍における熱発生率ROHRの推移を示す図である。同図(a)の実線が通常の燃焼状態に対応し、破線が第1の誤判定状態に対応する。すなわち、第1の誤判定状態では、燃料のパイロット噴射に対応する燃焼による熱発生率が異常に大きくなる状態(以下「パイロット異常燃焼」という)が発生する。
【0049】
また図10(b)の実線は通常の燃焼状態に対応し、破線は第2の誤判定状態に対応する。すなわち、第2の誤判定状態では燃焼状態が不安定化し、熱発生率ROHRの低下、あるいは失火が発生する。
そこで本実施形態では、エンジン作動特性が極端に悪化する第1及び第2の誤判定状態を回避するように、上述した第2切換制御信号SCTL2が設定される。
【0050】
以下図11を参照して、第1切換制御信号SCTL1及び第2切換制御信号SCTL2の設定について説明する。図11に示す切換制御信号設定処理は、CPU14において所定時間毎に実行される。
ステップS11では、エンジン1がアイドル状態にあるか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときは、セタン価推定を安定して実行するための所定実行条件が成立するか否かを判別する。この所定実行条件は、例えば排気温TEが所定温度TE0(例えば約90℃)以上であり、かつエンジン1の暖機状態を示す冷却水温TWまたは油温TOILが所定温度TWUP(例えば80℃)以上であるとき成立する。
【0051】
ステップS11またはS12の答が否定(NO)であるときは、第1切換制御信号SCTL1を「0」に設定し(ステップS16)、ステップS17に進む。ステップS12で所定実行条件が成立するときは、パイロット噴射を停止し、シングル噴射とする(ステップS13)。すなわち、1気筒1サイクル当たりの燃料噴射回数NINJを1回とし、さらに主噴射時期を通常より進角方向に変更する(ステップS14)。このように燃料噴射をシングル噴射として、燃料噴射時期を通常より進角させることにより、セタン価の違いによる着火時期の差を検出し易くすることができる。ステップS15で第1切換制御信号SCTL1を「1」に設定し、ステップS17に進む。
【0052】
ステップS17では、エンジン1の始動後、またはエンジン1に燃料を供給する燃料タンク(図示せず)の給油後、第1切換制御信号SCTL1が「1」になったか否か、すなわちセタン価推定処理を実行したか否かを判別する。給油直後であることは、燃料メータの増加、またはフィラーキャップの開閉、及びエンジンスイッチのオフからオンへの変化に基づいて判定される。
【0053】
ステップS17の答が肯定(YES)であるときは、上述した第1の誤判定状態におけるパイロット異常燃焼が発生したか否かを判別する(ステップS18)。
【0054】
図10(a)に示したように、パイロット異常燃焼が発生すると、正常燃焼時に比較して、パイロット噴射に対応して熱発生率ROHRが非常に大きくなる。そこで本実施形態では、熱発生率比RROHRを下記式(2)で定義し、熱発生率比RROHRが判定閾値RRTHを超えたとき、パイロット異常燃焼が発生したと判定する。
RROHR=ROPMAX/ROMMAX (2)
ここで、ROPMAX及びROMMAXは、それぞれ図10(a)に示すように、パイロット噴射に対応する熱発生率の最大値、及び主噴射に対応する熱発生率の最大値である。
【0055】
なお、熱発生率ROHRは、下記式(3)により算出される。
ROHR=κ/(κ−1)×PCYL×dV
+1/(κ−1)×VCYL×dP (3)
ここで、κは混合気の比熱比、PCYLは検出筒内圧、dVは筒内容積増加率[m3/deg]、VCYLは気筒容積、dPは筒内圧上昇率[kPa/deg]である。
【0056】
図11に戻り、ステップS17の答が否定(NO)またはステップS18の答が肯定(YES)、すなわち始動後または給油後、セタン価推定が実行されていないとき、またはパイロット異常燃焼が発生したときは、ステップS21に進み、第2切換制御信号SCTL2を「1」に設定する。
【0057】
ステップS18の答が否定(NO)であって、パイロット異常燃焼が発生していないときは、第2の誤判定状態が発生している否かをステップS19及びS20により判別する。すなわち、現在の判定セタン価パラメータCETDの値が「3」であるか否かを判別し(ステップS19)、その答が肯定(YES)であるときは、Pmi変動率(図示平均有効圧力Pmiの標準偏差)CRPMIが判定変動率CRPMITHより大きいか否かを判別する(ステップS20)。この判別は、Pmi変動率CRPMIを算出せずに、以下のようにして行われる。
【0058】
図12(a)は、正常燃焼時の筒内圧PCYLの推移を示し、同図(b)はPmi変動率CRPMIが増加し、失火が発生する直前の燃焼状態に対応する筒内圧PCYLの推移を示す。ここで、図12において右下がりのハッチングを付した圧縮行程に対応する面積を示す圧縮行程面積パラメータSCMPと、右上がりのハッチングを付した膨張行程に対応する面積を示す膨張行程面積パラメータSXPLとの比(以下「面積比」という)RS(=SCMP/SXPL)は、燃焼状態が不安定化する(Pmi変動率CRPMIが増加する)ほど、増加する傾向を示す。そこで、図11のステップS20では、面積比RSが判定面積比RSTHを越えたとき、Pmi変動率CRPMIが大きいと判定し、前記ステップS21に進む。したがって、第2切換制御信号SCTL2が「1」に設定される。
【0059】
面積比RSを用いてPmi変動率の増加を判定する手法によれば、筒内圧センサ2の検出精度の影響を受けない判定を行うことができる。
ステップS19またはS20の答が否定(NO)であるときは、第2切換制御信号SCTL2を「0」に設定する。
【0060】
以上のように図11の処理によれば、エンジン1のアイドル状態において所定実行条件が成立したとき、燃料噴射がシングル噴射として燃料噴射時期を進角させて、セタン価推定処理が許可される(ステップS11〜S15)。さらに、エンジン始動後または給油後、セタン価推定が行われていないとき、パイロット異常燃焼が発生したとき、または使用中の燃料のセタン価が高い(CETD=3)と判定され、かつPmi変動率CRPMIが大きいときは、第2切換制御信号SCTL2が「1」に設定される(ステップS17〜S21)。その結果、図3に示すスイッチ部68の出力が「2」となり、燃料のセタン価が第2セタン価CET2である場合に対応する燃料噴射制御及び排気還流制御が実行される。これにより、第1の誤判定状態を解消して燃焼騒音及びスモークを低減するとともに、第2の誤判定状態を解消して燃焼不安定化あるいは失火を回避することができる。
【0061】
図13は、第1の誤判定状態が検出されたときに、判定セタン価パラメータCETDを「2」に切り換えることの効果を説明するための図である。図13は、推定セタン価CETが第1セタン価CET1である場合について示されている。
【0062】
図13(a)の横軸は、単位時間当たりのNOx排出量GNOxであり、縦軸は単位時間当たりのスート(すす)排出量GSootである。点P1〜P3は、それぞれ燃料のセタン価が第1セタン価CET1、第2セタン価CET2、第3セタン価CET3である場合に対応する。すなわち、燃料のセタン価が高くなるほど、NOx排出量GNOx及びスート排出量GSootがともに増加する。点P3が、第1の誤判定状態に相当し、この状態で判定セタン価パラメータCETDを「1」から「2」に切り換えると、点P3は、点P4に移動し、NOx排出量及びスート排出量が低減される。
【0063】
図13(b)の横軸は、圧力変化率dp/dθの最大値dp/dθMAX(燃焼騒音と相関のあるパラメータ)であり、縦軸は正味燃料消費率BSFCである。この図では、点P5〜P7が、それぞれ燃料のセタン価が第1セタン価CET1、第2セタン価CET2、第3セタン価CET3である場合に対応する。すなわち、燃料のセタン価が高くなるほど、燃焼騒音が増加し、正味燃料消費率BSFCが減少する。この図では、点P7が第1の誤判定状態に相当し、この状態で判定セタン価パラメータCETDを「1」から「2」に切り換えると、点P7は、点P8に移動し、燃焼騒音が低減される。
【0064】
本実施形態では、燃料噴射弁6が燃料噴射手段に相当し、筒内圧センサ2及びECU4が着火時期検出手段及び燃焼異常検出手段を構成し、ECU4がセタン価推定手段、燃料噴射制御手段、及び給油検出手段の一部を構成する。より具体的には、着火時期検出部62が着火時期検出手段の一部に相当し、目標主噴射着火時期算出部61、減算部63、フィルタ処理部64、及びセタン価推定部66がセタン価推定手段に相当し、主噴射時期算出部40が燃料噴射制御手段に相当する。また給油検出を燃料メータを用いて行う場合には、燃料メータも給油検出手段の一部を構成する。
【0065】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、熱発生率ROHRに基づいてパイロット異常燃焼を検出しているが、圧力変化率dp/dθに基づいてパイロット異常燃焼を検出するようにしてもよい。すなわち、図14に示すように、パイロット噴射パルスINJPに対応する圧力変化率最大値dp/dθMP及び主噴射パルスINJMに対応する圧力変化率最大値dp/dθMMを検出し、これらの最大値の比率RMAX(=dp/dθMP÷dp/dθMM)が所定比率を超えたときに、パイロット異常燃焼が発生したと判定するようにしてもよい。あるいは、パイロット噴射パルスINJPに対応する圧力変化率dp/dθの絶対値が所定閾値を越えたときに、パイロット異常燃焼が発生したと判定するようにしてもよい。
【0066】
また上述した実施形態では、燃焼状態の不安定性を示すパラメータとして面積比RSを用いたが、Pmi変動率CRPMIを用いてもよい。
【0067】
また上述した実施形態では、実着火時期CAFMは、筒内圧センサ2により検出される圧力変化率dp/dθが検出閾値DPPを超えた時点として検出するようにしたが、これに限るものではなく、熱発生率ROHRが最大値の50%に達した時期を着火時期として判定するようにしてもよい。
【0068】
また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンなどの制御にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す制御装置の一部の構成をより具体的に示す図である。
【図3】主噴射時期(CAIM)及び目標排気還流量(GEGR)を算出するモジュールの構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す着火時期検出部の構成を示すブロック図である。
【図5】筒内圧センサ出力のバンドパスフィルタ処理を説明するためのタイムチャートである。
【図6】着火時期の検出手法を説明するためのタイムチャートである。
【図7】着火遅れ時間(TDFM)からセタン価(CET)を算出するためのテーブルを示す図である。
【図8】セタン価学習値(CETLRN)に応じて判定セタン価パラメータ(CETD)を設定する手法を説明するための図である。
【図9】推定したセタン価と燃料のセタン価とが異なる場合の問題点を説明するための図である。
【図10】圧縮上死点近傍における熱発生率(ROHR)の推移を示す図である。
【図11】図3に示した切換制御信号(SCTL1,SCTL2)の設定を行う処理のフローチャートである。
【図12】燃焼状態を示すパラメータである面積比(RS)を説明するための図である。
【図13】本実施形態における改善効果を説明するための図である。
【図14】パイロット燃焼異常の検出方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
1 内燃機関
2 筒内圧センサ(着火時期検出手段、燃焼異常検出手段)
4 電子制御ユニット(燃料噴射制御手段、着火時期検出手段、燃焼異常検出手段、セタン価推定手段、給油検出手段)
6 燃料噴射弁(燃料噴射手段)
40 主噴射時期算出部(燃料噴射制御手段)
62 着火時期検出部(着火時期検出手段)
61 目標主噴射着火時期算出部(セタン価推定手段)
63 減算部(セタン価推定手段)
64 フィルタ処理部(セタン価推定手段)
66 セタン価推定部(セタン価推定手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の制御装置に関し、特に使用中の燃料の燃料性状(セタン価)を推定する機能を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、予混合燃焼を行う圧縮着火内燃機関の制御装置が示されている。この装置によれば、燃焼室内の圧力(筒内圧)を検出する筒内圧センサを用いて、予混合燃焼中に燃料の実着火時期を検出し、予め設定された標準燃料着火時期との差である着火時期誤差及び該着火時期誤差のばらつきに応じて、使用中の燃料の性状が判定される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−171818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒内圧センサによる着火時期の検出精度は、センサの精度や燃焼状態の変動による影響を受けるため、検出精度を高めるためには、機関運転状態が安定した状態で100〜400サイクル程度の期間に得られるデータを平均化することが必要である。したがって、上記従来の手法により燃料性状を判定する場合でも、給油直後においては、燃料性状を直ちに精度良く判定することが困難であり、燃料性状に適した燃料噴射制御を行うことができず、一時的に燃焼状態が不安定化したり、粒子状物質の排出量が増加する可能性があった。
【0005】
また給油直後に限らず、センサの異常などによって燃料性状の誤判定が発生した場合にも、同様の不具合が発生する可能性があるため、そのような場合には迅速な対応が望まれる。
【0006】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、給油直後における燃焼状態あるいは排気特性の悪化を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することを第1の目的とし、燃料性状の誤判定が発生した可能性がある場合を迅速に検出し、燃焼状態あるいは排気特性の悪化を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関(1)の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射手段(6)を備えた内燃機関の制御装置において、前記燃料噴射手段(6)により噴射された燃料の着火時期を検出する着火時期検出手段と、検出される着火時期(CAFM)に応じて使用中の燃料のセタン価を推定するセタン価推定手段と、前記セタン価に対応する複数の燃料噴射時期マップ(CAIMM1〜CAIMM3)を備え、前記セタン価推定手段により推定されたセタン価(CETLRN)に応じて前記複数の燃料噴射時期マップのうちの1つを選択し、該選択した燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射手段(6)による燃料噴射の制御を行う燃料噴射制御手段と、前記機関に燃料を供給する燃料タンクに給油が行われたことを検出する給油検出手段とを備え、前記複数の燃料噴射時期マップは、使用可能な燃料の平均的なセタン価(CET2)に対応する平均的燃料噴射時期マップ(CAIMM2)を含み、前記燃料噴射制御手段は、前記給油が行われた直後においては、前記平均的燃料噴射時期マップ(CAIMM2)を用いて前記燃料噴射制御を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、内燃機関(1)の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射手段(6)を備えた内燃機関の制御装置において、前記燃料噴射手段(6)により噴射された燃料の着火時期を検出する着火時期検出手段と、検出される着火時期(CAFM)に応じて使用中の燃料のセタン価を推定するセタン価推定手段と、前記セタン価に対応する複数の燃料噴射時期マップ(CAIMM1〜CAIMM3)を備え、前記セタン価推定手段により推定されたセタン価(CETLRN)に応じて前記複数の燃料噴射時期マップのうちの1つを選択し、該選択した燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射手段(6)による燃料噴射の制御を行う燃料噴射制御手段と、前記燃料噴射手段により噴射された燃料の燃焼異常を検出する燃焼異常検出手段とを備え、前記複数の燃料噴射時期マップは、使用可能な燃料の平均的なセタン価(CET2)に対応する平均的燃料噴射時期マップ(CAIMM2)を含み、前記燃料噴射制御手段は、前記燃焼異常が検出されたときは、前記平均的燃料噴射時期マップ(CAIMM2)を用いて前記燃料噴射制御を行うことを特徴とする。
【0009】
前記燃焼異常検出手段は、前記燃料噴射手段によるパイロット噴射で噴射された燃料の燃焼異常を検出することが望ましい。その場合、パイロット噴射で噴射された燃料の燃焼状態を示すパラメータ(ROPMAX,dp/dθMP)と、主噴射で噴射された燃料の燃焼状態を示すパラメータ(ROMMAX,dp/dθMM)との比に基づいて、パイロット噴射で噴射された燃料の燃焼異常を検出することが望ましい。
【0010】
前記燃焼異常検出手段は、前記推定されたセタン価(CET)が前記平均的なセタン価(CET2)より大きく、かつ前記燃料噴射手段により噴射された燃料の燃焼状態の不安定性を示すパラメータ(RS)が判定閾値(RSTH)より大きいとき、燃焼異常が発生したと判定することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、給油が行われた直後においては、使用可能な燃料の平均的なセタン価に対応した平均的燃料噴射時期マップを用いて燃料噴射制御が行われるので、燃料の実際のセタン価が、例えば平均的燃料噴射時期マップの設定基準としたセタン価より大きい場合であっても、平均的なセタン価との差は、平均的なセタン価より小さいセタン価の燃料を基準として設定されたマップを用いる場合と比べて小さくなり、燃焼状態や排気特性の悪化を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、噴射された燃料の燃焼異常が検出されたときは、平均的燃料噴射時期マップを用いて燃料噴射制御が行われるので、使用中の燃料の推定セタン価が、実際のセタン価から大きくずれていることに起因する、燃焼状態や排気特性の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2は本発明の一実施形態にかかる内燃機関と、その制御装置の構成を示す図である。以下両図を合わせて参照して説明する。内燃機関(以下「エンジン」という)1は、シリンダ内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンであり、各気筒に燃料噴射弁6が設けられている。燃料噴射弁6は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)4に電気的に接続されており、燃料噴射弁6の開弁時期及び開弁時間は、ECU4により制御される。
【0014】
エンジン1は、吸気管7,排気管8、及びターボチャージャ9を備えている。ターボチャージャ9は、排気の運動エネルギにより回転駆動されるタービンと、タービンとシャフトを介して連結されたコンプレッサとを備えている。ターボチャージャ9は、エンジン1に吸入される空気の加圧(圧縮)を行う。
【0015】
吸気管7のコンプレッサ下流側にはインタークーラ21が設けられ、さらにインタークーラ21の下流側には、スロットル弁22が設けられている。スロットル弁22は、アクチュエータ23により開閉駆動可能に構成されており、アクチュエータ23はECU4に接続されている。ECU4は、アクチュエータ23を介して、スロットル弁22の開度制御を行う。
【0016】
排気管8と吸気管7との間には、排気ガスを吸気管7に還流する排気還流通路25が設けられている。排気還流通路25には、排気還流量を制御するための排気還流弁(以下[EGR弁」という)26が設けられている。EGR弁26は、ソレノイドを有する電磁弁であり、その弁開度はECU4により制御される。EGR弁26には、その弁開度(弁リフト量)LACTを検出するリフトセンサ27が設けられており、その検出信号はECU4に供給される。排気還流通路25及びEGR弁26より、排気還流機構が構成される。
【0017】
吸気管7には、吸入空気量GAを検出する吸入空気量センサ31、コンプレッサの下流側の吸気圧(過給圧)PBを検出する過給圧センサ32、及び吸気圧PIを検出する吸気圧センサ33が設けられ、排気管8には排気温TEを検出する排気温センサ34が設けられている。これらのセンサ31〜34は、ECU4と接続されており、センサ31〜34の検出信号は、ECU4に供給される。
【0018】
排気管8の、タービンの下流側には、排気ガス中に含まれる炭化水素などの酸化を促進する触媒コンバータ28と、粒子状物質(主としてすすからなる)を捕集する粒子状物質フィルタ29とが設けられている。
【0019】
エンジン1の各気筒には、筒内圧(燃焼圧力)を検出する筒内圧センサ2が設けられている。本実施形態では、筒内圧センサ2は、各気筒に設けられるグロープラグと一体に構成されている。筒内圧センサ2の検出信号は、ECU4に供給される。なお、筒内圧センサ2の検出信号は、実際には、筒内圧PCYLのクランク角度(時間)に対する微分信号に相当するものであり、筒内圧PCYLは、筒内圧センサ出力を積分することにより得られる。
【0020】
またエンジン1には、クランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ3が設けられている。クランク角度位置センサ3は、クランク角1度毎にパルスを発生し、そのパルス信号はECU4に供給される。クランク角度位置センサ3は、さらに特定気筒の所定クランク角度位置で気筒識別パルスを生成して、ECU4に供給する。
【0021】
ECU4には、エンジン1により駆動される車両のアクセルペダルの操作量APを検出するアクセルセンサ35、エンジン1の冷却水温TWを検出する冷却水温センサ36、エンジン1の潤滑油の温度TOILを検出する油温センサ37、排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ(図示せず)、及びエンジン1の吸気温TAを検出する吸気温センサ(図示せず)などが接続されており、これらのセンサの検出信号がECU4に供給される。
【0022】
ECU4は、エンジン1の各気筒の燃焼室に設けられた燃料噴射弁6の制御信号を駆動回路5に供給する。駆動回路5は、燃料噴射弁6に接続されており、ECU4から供給される制御信号に応じた駆動信号を、燃料噴射弁6に供給する。これにより、ECU4から出力される制御信号に応じた燃料噴射時期において、前記制御信号に応じた燃料噴射量だけ燃料が、各気筒の燃焼室内に噴射される。ECU4は、通常は1つの気筒についてパイロット噴射及び主噴射を実行する。
【0023】
ECU4は、増幅器10と、A/D変換部11と、パルス生成部13と、CPU(Central Processing Unit)14と、CPU14で実行されるプログラムを格納するROM(Read Only Memory)15と、CPU14が演算結果などを格納するRAM(Random Access Memory)16と、入力回路17と、出力回路18とを備えている。筒内圧センサ2の検出信号は、増幅器10に入力される。増幅器10は、入力される信号を増幅する。増幅器10により増幅された信号は、A/D変換部11に入力される。また、クランク角度位置センサ3から出力されるパルス信号は、パルス生成部13に入力される。
【0024】
A/D変換部11は、バッファ12を備えており、増幅器10から入力される筒内圧センサ出力をディジタル値(以下「圧力変化率」という)dp/dθに変換し、バッファ12に格納する。より具体的には、A/D変換部11には、パルス生成部13から、クランク角1度周期のパルス信号(以下「1度パルス」という)PLS1が供給されており、この1度パルスPLS1の周期で筒内圧センサ出力をサンプリングし、ディジタル値に変換してバッファ12に格納する。筒内圧PCYLは、圧力変化率dp/dθを積算することにより算出される。
【0025】
一方、CPU14には、パルス生成部13から、クランク角6度周期のパルス信号PLS6が供給されており、CPU14はこの6度パルスPLS6の周期でバッファ12に格納されたディジタル値を読み出す処理を行う。すなわち、本実施形態では、A/D変換部11からCPU14に対して割り込み要求を行うのではなく、CPU14が6度パルスPLS6の周期で読出処理を行う。
【0026】
入力回路17は、各種センサの検出信号をディジタル値に変換し、CPU14に供給する。なお、エンジン回転数NEは、6度パルスPLSの周期から算出される。またエンジン1の要求トルクTRQは、アクセルペダル操作量APに応じて算出される。
【0027】
CPU14は、エンジン運転状態に応じて目標排気還流量GEGRを算出し、目標排気還流量GEGRに応じてEGR弁26の開度を制御するデューティ制御信号を、出力回路18を介してEGR弁26に供給する。さらにCPU14は、以下に説明するように使用中の燃料のセタン価を推定する処理を実行し、推定したセタン価に応じた燃料噴射制御を行う。
【0028】
図3は、燃料噴射弁6による主噴射時期CAIM及び目標排気還流量GEGRを算出するモジュールの構成を示すブロック図である。このモジュールの機能は、CPU14で実行される処理により実現される。
【0029】
図3に示すモジュールは、主噴射時期CAIMを算出する主噴射時期算出部40と、目標排気還流量GEGRを算出する目標排気還流量算出部50と、使用中の燃料のセタン価CETを推定し、推定したセタン価に応じたセタン価切換信号SWCETを出力するセタン価切換信号生成部60とからなる。本実施形態では、市場で流通している燃料のセタン価を考慮して、使用中の燃料のセタン価を、第1セタン価CET1(例えば41)、または第2セタン価CET2(例えば47)、第3セタン価CET3(例えば57)のいずれかであると判定し、判定したセタン価に応じた燃料噴射時期制御及び排気還流制御が行われる。セタン価切換信号SWCETは、第1〜第3セタン価CET1〜CET3に対応して、「1」〜「3」の値をとる。第2セタン価CET2は、市場で流通している(使用可能な)燃料の平均的なセタン価である。
【0030】
主噴射時期算出部40は、第1主噴射時期マップ値算出部41と、第2主噴射時期マップ値算出部42と、第3主噴射時期マップ値算出部43と、スイッチ部44とからなる。
第1主噴射時期マップ値算出部41は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたCAIMM1マップを検索して、第1主噴射時期マップ値CAIMM1を算出する。CAIMM1マップは、上述した第1セタン価CET1の燃料を基準として設定されている。第2主噴射時期マップ値算出部42は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたCAIMM2マップを検索して、第2主噴射時期マップ値CAIMM2を算出する。CAIMM2マップは、上述した第2セタン価CET2の燃料を基準として設定されている。第3主噴射時期マップ値算出部43は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたCAIMM3マップを検索して、第3主噴射時期マップ値CAIMM3を算出する。CAIMM3マップは、上述した第3セタン価CET3の燃料を基準として設定されている。
【0031】
スイッチ部44は、セタン価切換信号SWCETに応じて、第1〜第3主噴射時期マップ値CAIMM1〜CAIMM3の何れかを選択する。すなわち、SWCET=1であるときは、第1主噴射時期マップ値CAIMM1が選択され、SWCET=2であるときは、第2主噴射時期マップ値CAIMM2が選択され、SWCET=3であるときは、第3主噴射時期マップ値CAIMM3が選択される。燃料のセタン価が低下するほど、燃料噴射時期は進角されるので、運転状態が同一であるときは、CAIMM1>CAIMM2>CAIMM3という関係が成立する。
【0032】
目標排気還流量算出部50は、第1目標EGR量マップ値算出部51と、第2目標EGR量マップ値算出部52と、第3目標EGR量マップ値算出部53と、スイッチ部54とからなる。
第1目標EGR量マップ値算出部51は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたGEGRM1マップを検索して、第1目標EGR量GEGRM1を算出する。GEGRM1マップは、第1セタン価CET1の燃料を基準として設定されている。第2目標EGR量マップ値算出部52は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたGEGRM2マップを検索して、第2目標EGR量GEGRM2を算出する。GEGRM2マップは、第2セタン価CET2の燃料を基準として設定されている。第3目標EGR量マップ値算出部53は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたGEGRM3マップを検索して、第3目標EGR量GEGRM3を算出する。GEGRM3マップは、第3セタン価CET3の燃料を基準として設定されている。
【0033】
スイッチ部54は、セタン価切換信号SWCETに応じて、第1〜第3目標EGR量マップ値GEGRM1〜GEGRM3の何れかを選択する。すなわち、SWCET=1であるときは、第1目標EGR量マップ値GEGRM1が選択され、SWCET=2であるときは、第2目標EGR量マップ値GEGRM2が選択され、SWCET=3であるときは、第3目標EGR量マップ値GEGRM3が選択される。燃料のセタン価が低下するほど、目標EGR量は減少するので、運転状態が同一であるときは、GEGRM1<GEGRM2<GEGRM3という関係が成立する。
【0034】
セタン価切換信号生成部60は、目標主噴射着火時期算出部61と、着火時期検出部62と、減算部63と、フィルタ処理部64と、スイッチ部65と、セタン価推定部66と、判定パラメータ設定部67と、スイッチ部68とからなる。
【0035】
目標主噴射着火時期算出部61は、エンジン回転数NE及び要求トルクTRQに応じて予め設定されたCAFMMマップを検索して、目標主噴射着火時期CAFMMを算出する。CAFMMマップは、第2セタン価CET2(例えば47)の燃料を基準として設定されている。
【0036】
着火時期検出部62は、筒内圧センサ2の出力信号をディジタル値に変換した圧力変化率dp/dθに応じて主噴射着火時期CAFMを検出する。この検出手法は、図4〜6を参照して後述する。減算部63は、目標主噴射着火時期CAFMMから、主噴射着火時期CAFMを減算することにより、着火遅れ角DCAMを算出する。
【0037】
フィルタ処理部64は、比較的長い時間(10〜60秒)かけて得た着火遅れ角DCAMのデータを、最小2乗法演算または移動平均化演算によりフィルタ処理を施す。フィルタ処理後の着火遅れ角DCAMFとする。スイッチ部65は、後述する図11の処理で設定される第1切換制御信号SCTL1により切換制御され、第1切換制御信号SCTL1が「0」のときオフ状態であり、「1」のときオン状態となる。第1切換制御信号SCTL1は、セタン価推定の実行条件が成立したとき、「1」に設定される。
【0038】
セタン価推定部66は、着火遅れ角DCAMFをエンジン回転数NEを用いて、着火遅れ時間TDFMに変換し、着火遅れ時間TDFMに応じて図7に示すCETテーブルを検索し、セタン価CETを算出する。セタン価推定部66は、さらにセタン価CETを下記式(1)に適用し、セタン価学習値CETLRNを算出する。
CETLRN=α×CET+(1−α)×CETLRN (1)
ここで、αは0から1の間の値に設定されるなまし係数、右辺のCETLRNは、前回算出値である。
【0039】
上述したセタン価学習値CETLRNは、4つの気筒の筒内圧センサ出力をすべて用いて算出される。したがって、上記式(1)により、気筒毎に検出されるセタン価CET、及び検出タイミングが異なるセタン価CETの平均化が行われる。なお、セタン価推定処理が実行されないときは、記憶されている最新のセタン価学習値CETLRNが、セタン価推定部66から出力される。
【0040】
判定パラメータ設定部67は、セタン価学習値CETLRNに応じて、判定セタン価パラメータCETDの設定を行う。具体的には、図8に示すように、ヒステリシス特性を付加して、第1閾値CETH1及び第2閾値CETH2と、セタン価学習値CETLRNの比較を行う。すなわち、ヒステリシス特性を付加するためのパラメータ(以下「ヒステリシスパラメータ」という)をΔhとすると、判定セタン価パラメータCETDが「2」であるときは、セタン価学習値CETLRNが第2閾値CETH2にヒステリシスパラメータΔhを加算した値を越えると、判定セタン価パラメータCETDが「3」に変更される。逆に判定セタン価パラメータCETDが「3」であるときは、セタン価学習値CETLRNが第2閾値CETH2からヒステリシスパラメータΔhを減算した値を下回ると、判定セタン価パラメータCETDが「2」に変更される。第1閾値CETH1についても同様の判定により、判定セタン価パラメータCETDが設定される。
【0041】
スイッチ部68は、後述する図11の処理で設定される第2切換制御信号SCTL2により切換制御され、第2切換制御信号SCTL2が「1」のときは「2」を選択し、第2切換制御信号SCTL2が「0」のときは判定セタン価パラメータCETDを選択し、セタン価切換信号SWCETとして出力する。
【0042】
図4は、実着火時期CAFMを算出(検出)する着火時期算出モジュールの構成を示すブロック図である。着火時期算出モジュールの機能は、CPU14による演算処理により実現される。着火時期算出モジュールは、バンドパスフィルタ部71と、位相遅れ補正部72と、着火時期判定部73とからなる。バンドパスフィルタ部71には、筒内圧センサ2から出力される圧力変化率dp/dθが入力される。図5に示す波形W1が入力波形を示し、波形W2が出力波形を示す。バンドパスフィルタ部71では、位相遅れが発生するため、位相遅れ補正部72では、この遅れを補正する。
【0043】
着火時期判定部73は、燃料噴射に対応して、圧力変化率dp/dθがピーク値を示すクランク角度位置を実着火時期CAFMとを判定する。具体的には、図6(b)に示すように、位相遅れ補正部72から出力される圧力変化率dp/dθが検出閾値DPPを超えたクランク角を、実着火時期CAFMと判定する。
【0044】
図6(a)には、クランク角CAIMから開始される噴射パルスINJMが示されており、同図(b)には実着火時期CAFMを検出する角度範囲RDET(例えば10度)が示されている。このように、検出角度範囲RDETを比較的狭い範囲に限定することにより、CPU14の演算負荷を増大させることなく、着火時期を正確に判定することができる。
【0045】
図9は、給油された燃料のセタン価と、推定されたセタン価との関係により、エンジンの作動特性がどのように変化するかを示している。燃料のセタン価と、推定セタン価が一致している状態では、通常のエンジン性能を発揮させることができる。
【0046】
燃料のセタン価が第2セタン価CET2であり、推定セタン価が第1セタン価CET1であるとき、あるいは燃料のセタン価が第3セタン価CET3であり、推定セタン価が第2セタン価CET2であるときは、燃焼騒音が悪化(増大)し、さらに燃料のセタン価が第3セタン価CET3であるのに、推定セタン価が第1セタン価CET1であるとき(以下「第1の誤判定状態」という)は、燃焼騒音が増大するだけでなくスモーク(粒子状物質)の排出量も増加する。
【0047】
一方、燃料のセタン価が第1セタン価CET1であり、推定セタン価が第2セタン価CET2であるとき、あるいは燃料のセタン価が第2セタン価CET2であり、推定セタン価が第3セタン価CET3であるときは、燃焼状態が悪化(不安定化)し、さらに燃料のセタン価が第1セタン価CET1であるのに、推定セタン価が第3セタン価CET3であるとき(以下「第2の誤判定状態」という)は、失火が発生する可能性が高くなる。
【0048】
図10は、膨張行程開始上死点近傍における熱発生率ROHRの推移を示す図である。同図(a)の実線が通常の燃焼状態に対応し、破線が第1の誤判定状態に対応する。すなわち、第1の誤判定状態では、燃料のパイロット噴射に対応する燃焼による熱発生率が異常に大きくなる状態(以下「パイロット異常燃焼」という)が発生する。
【0049】
また図10(b)の実線は通常の燃焼状態に対応し、破線は第2の誤判定状態に対応する。すなわち、第2の誤判定状態では燃焼状態が不安定化し、熱発生率ROHRの低下、あるいは失火が発生する。
そこで本実施形態では、エンジン作動特性が極端に悪化する第1及び第2の誤判定状態を回避するように、上述した第2切換制御信号SCTL2が設定される。
【0050】
以下図11を参照して、第1切換制御信号SCTL1及び第2切換制御信号SCTL2の設定について説明する。図11に示す切換制御信号設定処理は、CPU14において所定時間毎に実行される。
ステップS11では、エンジン1がアイドル状態にあるか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときは、セタン価推定を安定して実行するための所定実行条件が成立するか否かを判別する。この所定実行条件は、例えば排気温TEが所定温度TE0(例えば約90℃)以上であり、かつエンジン1の暖機状態を示す冷却水温TWまたは油温TOILが所定温度TWUP(例えば80℃)以上であるとき成立する。
【0051】
ステップS11またはS12の答が否定(NO)であるときは、第1切換制御信号SCTL1を「0」に設定し(ステップS16)、ステップS17に進む。ステップS12で所定実行条件が成立するときは、パイロット噴射を停止し、シングル噴射とする(ステップS13)。すなわち、1気筒1サイクル当たりの燃料噴射回数NINJを1回とし、さらに主噴射時期を通常より進角方向に変更する(ステップS14)。このように燃料噴射をシングル噴射として、燃料噴射時期を通常より進角させることにより、セタン価の違いによる着火時期の差を検出し易くすることができる。ステップS15で第1切換制御信号SCTL1を「1」に設定し、ステップS17に進む。
【0052】
ステップS17では、エンジン1の始動後、またはエンジン1に燃料を供給する燃料タンク(図示せず)の給油後、第1切換制御信号SCTL1が「1」になったか否か、すなわちセタン価推定処理を実行したか否かを判別する。給油直後であることは、燃料メータの増加、またはフィラーキャップの開閉、及びエンジンスイッチのオフからオンへの変化に基づいて判定される。
【0053】
ステップS17の答が肯定(YES)であるときは、上述した第1の誤判定状態におけるパイロット異常燃焼が発生したか否かを判別する(ステップS18)。
【0054】
図10(a)に示したように、パイロット異常燃焼が発生すると、正常燃焼時に比較して、パイロット噴射に対応して熱発生率ROHRが非常に大きくなる。そこで本実施形態では、熱発生率比RROHRを下記式(2)で定義し、熱発生率比RROHRが判定閾値RRTHを超えたとき、パイロット異常燃焼が発生したと判定する。
RROHR=ROPMAX/ROMMAX (2)
ここで、ROPMAX及びROMMAXは、それぞれ図10(a)に示すように、パイロット噴射に対応する熱発生率の最大値、及び主噴射に対応する熱発生率の最大値である。
【0055】
なお、熱発生率ROHRは、下記式(3)により算出される。
ROHR=κ/(κ−1)×PCYL×dV
+1/(κ−1)×VCYL×dP (3)
ここで、κは混合気の比熱比、PCYLは検出筒内圧、dVは筒内容積増加率[m3/deg]、VCYLは気筒容積、dPは筒内圧上昇率[kPa/deg]である。
【0056】
図11に戻り、ステップS17の答が否定(NO)またはステップS18の答が肯定(YES)、すなわち始動後または給油後、セタン価推定が実行されていないとき、またはパイロット異常燃焼が発生したときは、ステップS21に進み、第2切換制御信号SCTL2を「1」に設定する。
【0057】
ステップS18の答が否定(NO)であって、パイロット異常燃焼が発生していないときは、第2の誤判定状態が発生している否かをステップS19及びS20により判別する。すなわち、現在の判定セタン価パラメータCETDの値が「3」であるか否かを判別し(ステップS19)、その答が肯定(YES)であるときは、Pmi変動率(図示平均有効圧力Pmiの標準偏差)CRPMIが判定変動率CRPMITHより大きいか否かを判別する(ステップS20)。この判別は、Pmi変動率CRPMIを算出せずに、以下のようにして行われる。
【0058】
図12(a)は、正常燃焼時の筒内圧PCYLの推移を示し、同図(b)はPmi変動率CRPMIが増加し、失火が発生する直前の燃焼状態に対応する筒内圧PCYLの推移を示す。ここで、図12において右下がりのハッチングを付した圧縮行程に対応する面積を示す圧縮行程面積パラメータSCMPと、右上がりのハッチングを付した膨張行程に対応する面積を示す膨張行程面積パラメータSXPLとの比(以下「面積比」という)RS(=SCMP/SXPL)は、燃焼状態が不安定化する(Pmi変動率CRPMIが増加する)ほど、増加する傾向を示す。そこで、図11のステップS20では、面積比RSが判定面積比RSTHを越えたとき、Pmi変動率CRPMIが大きいと判定し、前記ステップS21に進む。したがって、第2切換制御信号SCTL2が「1」に設定される。
【0059】
面積比RSを用いてPmi変動率の増加を判定する手法によれば、筒内圧センサ2の検出精度の影響を受けない判定を行うことができる。
ステップS19またはS20の答が否定(NO)であるときは、第2切換制御信号SCTL2を「0」に設定する。
【0060】
以上のように図11の処理によれば、エンジン1のアイドル状態において所定実行条件が成立したとき、燃料噴射がシングル噴射として燃料噴射時期を進角させて、セタン価推定処理が許可される(ステップS11〜S15)。さらに、エンジン始動後または給油後、セタン価推定が行われていないとき、パイロット異常燃焼が発生したとき、または使用中の燃料のセタン価が高い(CETD=3)と判定され、かつPmi変動率CRPMIが大きいときは、第2切換制御信号SCTL2が「1」に設定される(ステップS17〜S21)。その結果、図3に示すスイッチ部68の出力が「2」となり、燃料のセタン価が第2セタン価CET2である場合に対応する燃料噴射制御及び排気還流制御が実行される。これにより、第1の誤判定状態を解消して燃焼騒音及びスモークを低減するとともに、第2の誤判定状態を解消して燃焼不安定化あるいは失火を回避することができる。
【0061】
図13は、第1の誤判定状態が検出されたときに、判定セタン価パラメータCETDを「2」に切り換えることの効果を説明するための図である。図13は、推定セタン価CETが第1セタン価CET1である場合について示されている。
【0062】
図13(a)の横軸は、単位時間当たりのNOx排出量GNOxであり、縦軸は単位時間当たりのスート(すす)排出量GSootである。点P1〜P3は、それぞれ燃料のセタン価が第1セタン価CET1、第2セタン価CET2、第3セタン価CET3である場合に対応する。すなわち、燃料のセタン価が高くなるほど、NOx排出量GNOx及びスート排出量GSootがともに増加する。点P3が、第1の誤判定状態に相当し、この状態で判定セタン価パラメータCETDを「1」から「2」に切り換えると、点P3は、点P4に移動し、NOx排出量及びスート排出量が低減される。
【0063】
図13(b)の横軸は、圧力変化率dp/dθの最大値dp/dθMAX(燃焼騒音と相関のあるパラメータ)であり、縦軸は正味燃料消費率BSFCである。この図では、点P5〜P7が、それぞれ燃料のセタン価が第1セタン価CET1、第2セタン価CET2、第3セタン価CET3である場合に対応する。すなわち、燃料のセタン価が高くなるほど、燃焼騒音が増加し、正味燃料消費率BSFCが減少する。この図では、点P7が第1の誤判定状態に相当し、この状態で判定セタン価パラメータCETDを「1」から「2」に切り換えると、点P7は、点P8に移動し、燃焼騒音が低減される。
【0064】
本実施形態では、燃料噴射弁6が燃料噴射手段に相当し、筒内圧センサ2及びECU4が着火時期検出手段及び燃焼異常検出手段を構成し、ECU4がセタン価推定手段、燃料噴射制御手段、及び給油検出手段の一部を構成する。より具体的には、着火時期検出部62が着火時期検出手段の一部に相当し、目標主噴射着火時期算出部61、減算部63、フィルタ処理部64、及びセタン価推定部66がセタン価推定手段に相当し、主噴射時期算出部40が燃料噴射制御手段に相当する。また給油検出を燃料メータを用いて行う場合には、燃料メータも給油検出手段の一部を構成する。
【0065】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、熱発生率ROHRに基づいてパイロット異常燃焼を検出しているが、圧力変化率dp/dθに基づいてパイロット異常燃焼を検出するようにしてもよい。すなわち、図14に示すように、パイロット噴射パルスINJPに対応する圧力変化率最大値dp/dθMP及び主噴射パルスINJMに対応する圧力変化率最大値dp/dθMMを検出し、これらの最大値の比率RMAX(=dp/dθMP÷dp/dθMM)が所定比率を超えたときに、パイロット異常燃焼が発生したと判定するようにしてもよい。あるいは、パイロット噴射パルスINJPに対応する圧力変化率dp/dθの絶対値が所定閾値を越えたときに、パイロット異常燃焼が発生したと判定するようにしてもよい。
【0066】
また上述した実施形態では、燃焼状態の不安定性を示すパラメータとして面積比RSを用いたが、Pmi変動率CRPMIを用いてもよい。
【0067】
また上述した実施形態では、実着火時期CAFMは、筒内圧センサ2により検出される圧力変化率dp/dθが検出閾値DPPを超えた時点として検出するようにしたが、これに限るものではなく、熱発生率ROHRが最大値の50%に達した時期を着火時期として判定するようにしてもよい。
【0068】
また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンなどの制御にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す制御装置の一部の構成をより具体的に示す図である。
【図3】主噴射時期(CAIM)及び目標排気還流量(GEGR)を算出するモジュールの構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す着火時期検出部の構成を示すブロック図である。
【図5】筒内圧センサ出力のバンドパスフィルタ処理を説明するためのタイムチャートである。
【図6】着火時期の検出手法を説明するためのタイムチャートである。
【図7】着火遅れ時間(TDFM)からセタン価(CET)を算出するためのテーブルを示す図である。
【図8】セタン価学習値(CETLRN)に応じて判定セタン価パラメータ(CETD)を設定する手法を説明するための図である。
【図9】推定したセタン価と燃料のセタン価とが異なる場合の問題点を説明するための図である。
【図10】圧縮上死点近傍における熱発生率(ROHR)の推移を示す図である。
【図11】図3に示した切換制御信号(SCTL1,SCTL2)の設定を行う処理のフローチャートである。
【図12】燃焼状態を示すパラメータである面積比(RS)を説明するための図である。
【図13】本実施形態における改善効果を説明するための図である。
【図14】パイロット燃焼異常の検出方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
1 内燃機関
2 筒内圧センサ(着火時期検出手段、燃焼異常検出手段)
4 電子制御ユニット(燃料噴射制御手段、着火時期検出手段、燃焼異常検出手段、セタン価推定手段、給油検出手段)
6 燃料噴射弁(燃料噴射手段)
40 主噴射時期算出部(燃料噴射制御手段)
62 着火時期検出部(着火時期検出手段)
61 目標主噴射着火時期算出部(セタン価推定手段)
63 減算部(セタン価推定手段)
64 フィルタ処理部(セタン価推定手段)
66 セタン価推定部(セタン価推定手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射手段を備えた内燃機関の制御装置において、
前記燃料噴射手段により噴射された燃料の着火時期を検出する着火時期検出手段と、
検出される着火時期に応じて使用中の燃料のセタン価を推定するセタン価推定手段と、
前記セタン価に対応する複数の燃料噴射時期マップを備え、前記セタン価推定手段により推定されたセタン価に応じて前記複数の燃料噴射時期マップのうちの1つを選択し、該選択した燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射手段による燃料噴射の制御を行う燃料噴射制御手段と、
前記機関に燃料を供給する燃料タンクに給油が行われたことを検出する給油検出手段とを備え、
前記複数の燃料噴射時期マップは、使用可能な燃料の平均的なセタン価に対応する平均的燃料噴射時期マップを含み、前記燃料噴射制御手段は、前記給油が行われた直後においては、前記平均的燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射制御を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射手段を備えた内燃機関の制御装置において、
前記燃料噴射手段により噴射された燃料の着火時期を検出する着火時期検出手段と、
検出される着火時期に応じて使用中の燃料のセタン価を推定するセタン価推定手段と、
前記セタン価に対応する複数の燃料噴射時期マップを備え、前記セタン価推定手段により推定されたセタン価に応じて前記複数の燃料噴射時期マップのうちの1つを選択し、該選択した燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射手段による燃料噴射の制御を行う燃料噴射制御手段と、
前記燃料噴射手段により噴射された燃料の燃焼異常を検出する燃焼異常検出手段とを備え、
前記複数の燃料噴射時期マップは、使用可能な燃料の平均的なセタン価に対応する平均的燃料噴射時期マップを含み、前記燃料噴射制御手段は、前記燃焼異常が検出されたときは、前記平均的燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射制御を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項1】
内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射手段を備えた内燃機関の制御装置において、
前記燃料噴射手段により噴射された燃料の着火時期を検出する着火時期検出手段と、
検出される着火時期に応じて使用中の燃料のセタン価を推定するセタン価推定手段と、
前記セタン価に対応する複数の燃料噴射時期マップを備え、前記セタン価推定手段により推定されたセタン価に応じて前記複数の燃料噴射時期マップのうちの1つを選択し、該選択した燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射手段による燃料噴射の制御を行う燃料噴射制御手段と、
前記機関に燃料を供給する燃料タンクに給油が行われたことを検出する給油検出手段とを備え、
前記複数の燃料噴射時期マップは、使用可能な燃料の平均的なセタン価に対応する平均的燃料噴射時期マップを含み、前記燃料噴射制御手段は、前記給油が行われた直後においては、前記平均的燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射制御を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射手段を備えた内燃機関の制御装置において、
前記燃料噴射手段により噴射された燃料の着火時期を検出する着火時期検出手段と、
検出される着火時期に応じて使用中の燃料のセタン価を推定するセタン価推定手段と、
前記セタン価に対応する複数の燃料噴射時期マップを備え、前記セタン価推定手段により推定されたセタン価に応じて前記複数の燃料噴射時期マップのうちの1つを選択し、該選択した燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射手段による燃料噴射の制御を行う燃料噴射制御手段と、
前記燃料噴射手段により噴射された燃料の燃焼異常を検出する燃焼異常検出手段とを備え、
前記複数の燃料噴射時期マップは、使用可能な燃料の平均的なセタン価に対応する平均的燃料噴射時期マップを含み、前記燃料噴射制御手段は、前記燃焼異常が検出されたときは、前記平均的燃料噴射時期マップを用いて前記燃料噴射制御を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−239738(P2007−239738A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310902(P2006−310902)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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