内燃機関の制御装置
【課題】機関運転の停止及びその再始動を自動的に行う内燃機関において、機関回転速度の過度な上昇や機関ストールの発生を抑制することを目的とする。
【解決手段】
自動停止条件が成立したときに燃料噴射を停止して機関運転を自動的に停止させる自動停止制御の実行中に再始動条件が成立した場合において、機関回転速度NEが閾値NEst以上であるときには、スタータ4を駆動することなく機関運転を再開する。この機関運転の再開時のスロットルバルブ24の開度TAは、自動停止条件成立時のスロットル開度である基準開度TA1に、再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて設定される増大値Xを加算して設定される。
【解決手段】
自動停止条件が成立したときに燃料噴射を停止して機関運転を自動的に停止させる自動停止制御の実行中に再始動条件が成立した場合において、機関回転速度NEが閾値NEst以上であるときには、スタータ4を駆動することなく機関運転を再開する。この機関運転の再開時のスロットルバルブ24の開度TAは、自動停止条件成立時のスロットル開度である基準開度TA1に、再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて設定される増大値Xを加算して設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関運転の停止及びその再始動を自動的に行う内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料消費量の低減を目的として、自動停止条件が成立すると燃料噴射を停止するとともに、スロットルバルブを全閉状態にして機関運転を自動的に停止させる、いわゆる自動停止制御を実行する内燃機関が知られている。こうした自動停止制御が実行される内燃機関においては、再始動条件が成立すると、始動装置が駆動されるとともに燃料噴射が再開されることにより、機関運転が自動的に再開される。
【0003】
ところで、このような自動停止制御が実行されている間であって内燃機関が完全に停止する前に再始動条件が成立すると、クランクシャフトが未だ回転している状態から機関運転が自動的に再開されるようになる。そして、この機関運転の再開時における機関回転速度が所定の閾値より大きいときには、始動装置を駆動することなく燃料噴射を再開することにより内燃機関を再始動する、いわゆる自律復帰が行われる。こうした自律復帰時には燃料噴射を再開するのに併せてスロットルバルブの開度を所定開度まで増大して吸入空気量を増量することにより機関回転速度を上昇させるようにしている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−215154号公報
【特許文献2】特開2008−190458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、スロットルバルブの開度を所定開度まで増大させることにより、始動装置を駆動させることなく機関運転を自動的に再開することができるようにはなる。
しかしながら、自動停止条件が成立して燃料噴射が停止されてから再始動条件が成立するまでの期間は、再始動条件が成立するタイミングによって都度異なる。このため、再始動条件の成立するタイミングによって、機関運転を自動的に再開するために必要となる吸気量も都度異なるものとなる。そして、機関運転の再開時における吸気量が必要以上に増大すると、機関回転速度が過度に上昇するおそれがある一方、このときの吸気量が不足すると機関回転速度が自律運転復帰可能な回転速度にまで上昇することができず機関ストールが発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、機関運転の停止及びその再始動を自動的に行う内燃機関において、始動装置を駆動することなく機関運転を自動的に再開する際、機関回転速度の過度な上昇や機関ストールの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、自動停止条件が成立したときに燃料噴射を停止して機関運転を自動的に停止させる一方、機関回転速度が所定の閾値以下となる前に再始動条件が成立したときには燃料噴射を再開するとともに吸気調量機構の調量開度を所定開度まで増大させることにより始動装置を駆動することなく機関運転を自動的に再開する内燃機関の制御装置において、前記再始動条件が成立したときの機関運転状態に基づいて前記所定開度を設定し同所定開度に基づいて前記吸気調量機構を制御する吸気調量機構制御手段を備えることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、再始動条件が成立したことに基づいて機関運転を自動的に再開する際、吸気調量機構の調量開度を再始動条件成立時の機関運転状態に基づいて設定される所定開度まで増大させるようにしている。このため、吸気量を機関運転状態に応じて適切な量まで増大させることができ、機関回転速度の過度な上昇や機関ストールの発生を抑制することができるようになる。なお、スロットルバルブの開度を変更することにより吸気量を調量するようにした内燃機関ではそのスロットル開度が上記「吸気調量機構の調量開度」に相当し、吸気弁の最大リフト量を変更することにより吸気量を調量するようにした内燃機関ではその最大リフト量が「吸気調量機構の調量開度」に相当する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記自動停止条件が成立したときの前記吸気調量機構の調量開度を基準開度としこれを前記再始動条件成立時の機関運転状態に基づいて決定される所定量をもって増大させることにより前記所定開度を設定することを要旨とする。
【0010】
自動停止条件が成立したときの吸気調量機構の調量開度、すなわち基準開度は、安定したアイドル運転状態を維持すべく同条件成立時の機関温度や補機駆動状態といった機関運転状態に応じて設定されている。上記構成では、こうした自動停止条件成立時の基準開度を所定量だけ増大させることにより再始動条件成立時の開度を設定し、これを所定開度としているため、自動停止条件成立時の機関運転状態についてもこれを所定開度に反映させることができ、同所定開度を機関回転速度の過度な上昇やストールの発生を抑制する上でより適切な開度とすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関回転速度が低いときほど前記所定開度が大きくなるようにこれを設定することを要旨とする。
【0012】
再始動条件が成立したときの機関回転速度が低いときには機関ストールの発生する可能性が高くなる一方、同条件が成立したときの機関回転速度が高いときには機関運転再開後において機関回転速度が過度に上昇する可能性が高くなる。この点、同構成によれば、再始動条件成立時の機関回転速度が低いときほど大きくなるように所定開度を設定するようにしているため、自動停止条件が成立した後における機関回転速度の低下度合に即して吸気量を増大させることができ、機関回転速度の過度な上昇や機関ストールの発生を一層好適に抑制することができるようになる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関温度が低いときほど前記所定開度が大きくなるようにこれを設定することを要旨とする。
【0014】
再始動条件が成立したときの機関温度が低いときには、機関摺動部におけるフリクションが増大するため、機関ストールの発生する可能性が高くなる。この点、同構成によれば、再始動条件成立時の機関温度が低いときほど大きくなるように所定開度を設定するようにしているため、フリクションの大きさに即して吸気量を増大させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記調量開度を前記所定開度まで増大させた後に徐々に減少させることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、機関運転再開時において調量機構の開度を徐々に減少させることで機関回転速度が緩やかに上昇して機関アイドル回転速度に収束するようになるため、その収束性を高めることができるようになるとともに機関運転の再開に伴う機関振動の発生を抑制して円滑に機関運転を再開することができるようになる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記調量開度を徐々に減少させるに際してその減少度合を機関運転状態に基づいて設定することを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、機関運転状態についてもこれを吸気調量機構の減少度合に反映させることができ、同吸気調量機構の調量開度を機関回転速度の過剰な上昇やストールの発生を抑制する上でより適切な開度とすることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、自動停止条件が成立したときに燃料噴射を停止して機関運転を自動的に停止させる一方、機関回転速度が所定の閾値以下となる前に再始動条件が成立したときには燃料噴射を再開するとともに吸気調量機構の調量開度を所定開度まで増大させることにより始動装置を駆動することなく機関運転を自動的に再開する内燃機関の制御装置において、前記調量開度を前記所定開度まで増大させた後、機関運転状態に基づいて設定される減少度合をもって前記調量開度が徐々に減少するように前記吸気調量機構を制御する吸気調量機構制御手段を備えることを要旨とする。
【0020】
同構成によっても、機関運転再開時において調量機構の開度を徐々に減少させることで機関回転速度が緩やかに上昇して機関アイドル回転速度に収束するようになるため、その収束性を高めることができるようになるとともに機関運転の再開に伴う機関振動の発生を抑制して円滑に機関運転を再開することができるようになる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記減少度合を前記再始動条件が成立したときの機関運転状態に基づいて設定することを要旨とする。
【0022】
同構成によれば、再始動条件の成立時における機関運転状態について、これを吸気調量機構の開度を減少させる際の減少度合に反映させることができる。このため、同調量開度の減少度合を機関回転速度の過剰な上昇やストールの発生を抑制するように設定することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関回転速度が低いときほど前記減少度合が小さくなるようにこれを設定することを要旨とする。
【0024】
同構成によれば、機関回転速度が低いときには、吸気量の減少度合が小さくなるようにして、機関ストールの発生を抑制することができる一方、機関回転速度が高いときには、吸気量の減少度合を大きくし速やかに機関回転速度をアイドル回転速度に収束させてその収束性を高めることができる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項8または請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関温度が低いときほど前記減少度合が小さくなるようにこれを設定することを要旨とする。
【0026】
再始動条件が成立したときの機関温度が低いときには、機関摺動部におけるフリクションが増大するため、機関ストールの発生する可能性が高くなる。同構成によれば、再始動条件成立時の機関温度が低いときほど、調量機構の開度を減少させる際の減少度合を小さくするようにしている。このため、フリクションの大きさに即したかたちで吸気量を確保することができ、機関ストールの発生を抑制することができるようになる。
【0027】
なお、吸気調量機構の具体例としては、請求項11に記載の発明によるように、吸気通路に設けられたスロットルバルブを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態にかかる内燃機関及びその制御装置についての全体構成を示した模式図。
【図2】本実施の形態にかかるスロットル開度制御処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図3】本実施の形態にかかるスロットル開度制御処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図4】本実施の形態にかかるスロットル開度の増大値を設定するためのマップ。
【図5】本実施の形態にかかるスロットル開度の漸減値を設定するためのマップ。
【図6】本実施の形態にかかる機関回転速度及びスロットル開度の時間変化を示すタイミングチャート。
【図7】他の実施の形態にかかる機関水温より定められるスロットル開度を示すマップ。
【図8】他の実施の形態にかかる機関回転速度及び機関水温より定められるスロットル開度を示すマップ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した一実施の形態について図1〜図6を参照して説明する。
図1は、本実施の形態における内燃機関及びその制御装置についての全体構成を示した模式図である。同図1に示されるように、シリンダブロック11に形成された複数の気筒(図1ではその一つを示す)には、それぞれ燃焼室16が形成されるとともに、それら燃焼室16と吸気通路23及び排気通路33とをそれぞれ連通・遮断する吸気バルブ22及び排気バルブ32が設けられている。これら吸気バルブ22および排気バルブ32は、クランクシャフト15にそれぞれ駆動連結される吸気カムシャフト及び排気カムシャフト(いずれも図示せず)の回転に伴ってそれぞれ開閉駆動される。また、吸気通路23には、同通路内に燃料を噴射する燃料噴射弁18が設けられるとともに、燃焼室16内には混合気の点火を行う点火プラグ17がそれぞれ設けられている。また、吸気通路23にはモータ24aにより開閉駆動されるスロットルバルブ24が設けられており、このスロットルバルブ24の開度(以下、スロットル開度TAとする)が変更されることにより、燃焼室16に導入される吸気量GAが調量される。
【0030】
内燃機関の運転時には、機関運転状態に応じて調量された吸気と燃料噴射弁18から噴射された燃料とが燃焼室16内に導入され、混合気となる。この混合気は、点火プラグ17によって点火され、燃焼に供される。この燃焼によって生じた排気は排気通路33を通じて排出される。こうした燃焼に伴うピストン13の上下運動は、コネクティングロッド14により回転運動に変換されて、クランクシャフト15を回転させる。また、このクランクシャフト15には、同クランクシャフト15の回転力を利用して発電するオルタネータ6が接続されており、このオルタネータ6により発電された電力はバッテリ(図示せず)に蓄えられる。
【0031】
一方、この内燃機関及びこれを搭載する車両には、機関運転状態及び車両の走行状態を検出するための各種センサが設けられている。例えば、クランクシャフト15の回転速度、すなわち機関回転速度NEを検出するためのクランク角センサ91、シリンダブロック11やシリンダヘッド12に形成されたウォータジャケット19内を流通する冷却水の水温ThWを検出するための水温センサ93、アクセル開度ACCPを検出するためのアクセルセンサ94、車両の走行速度Vを検出するための車速センサ95等が設けられている。これらの各種センサにて検出された値は、電子制御装置5に取り込まれる。
【0032】
電子制御装置5は、これら各種センサからの検出信号に基づいて内燃機関の各種制御を行う。こうした各種制御には、点火プラグ17による混合気の点火時期を制御する点火時期制御、燃料噴射弁18から噴射供給する燃料の量や時期を調整する燃料噴射制御、バッテリの蓄電量を所定範囲に保持するべくオルタネータ6による発電量を制御する発電制御、スロットル開度TAを制御するスロットル開度制御等がある。また、電子制御装置5は、イグニションスイッチ(図示せず)がスタート位置に操作されると、スタータ4を駆動してクランクキングを開始するとともに、燃料噴射及び点火プラグ17による点火を実行することにより、内燃機関を始動する。
【0033】
さらに、電子制御装置5は、所定の自動停止条件が成立すると、燃料噴射及び点火を停止するとともにスロットル開度TAを全閉として機関運転を自動的に停止させる自動停止制御を実行する。このように燃料噴射が停止されると、燃焼室16内での燃焼が行われないため、機関回転速度NEは徐々に低下するようになる。なお、この自動停止条件としては、アクセル開度ACCPが「0」であること、車両の走行速度Vが「0」であること、ブレーキペダルが踏み込まれていること等が挙げられる。
【0034】
ところで、このような自動停止制御の実行中に再始動条件が成立すると、クランクシャフト15が未だ回転している状態において機関運転が再開されるようになる。この再始動条件成立時における機関回転速度NEが、スタータ4を駆動させなくても通常運転に復帰可能な範囲にあるとき、具体的には再始動条件成立時における機関回転速度NEが予め定められた所定の閾値NEst以上にあるときは、スタータ4を駆動させることなく燃料噴射や点火を再開することによって機関運転が自動的に再開される。なお、この再始動条件としては、ブレーキペダルの踏み込みが解除されたこと、アクセル開度ACCPが「0」でないこと、バッテリの充電量が所定値未満に低下したこと等が挙げられる。
【0035】
また、このようにスタータ4を駆動させることなく燃料噴射や点火を再開することによって機関運転を自動的に再開させる際には、スロットル開度TAを全閉から所定開度TA2まで増大させる。
【0036】
ここで、燃料噴射が停止されてから再始動条件が成立するまでの期間はその都度異なる。また、燃料噴射が停止されると、機関回転速度NEは時間経過とともに減少するため、この再始動条件の成立するタイミングによって、再始動に際して必要となる吸気量GAは都度異なるものとなる。そこで、本実施の形態においては、機関運転を再開するにあたってのスロットル開度TAを再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて制御するようにしている。
【0037】
次に、このようなスロットル開度TAの制御態様について詳述する。図2は、電子制御装置5を通じて実行される機関運転の自動停止制御におけるスロットル開度制御処理について、具体的な手順を示したフローチャートである。なおこの一連の処理は電子制御装置5によって所定周期をもって繰り返し実行される。
【0038】
同図2に示されるように、この一連の処理が開始されると、まず自動停止条件が成立したか否かが判断される(ステップS100)。自動停止条件が成立していないと判断された場合(ステップS100:NO)はこの処理は一旦終了する。
【0039】
一方、自動停止条件が成立したと判断された場合(ステップS100:YES)は、燃料噴射及び点火が停止される(ステップS101)。
なお、この自動停止制御においては、オルタネータ6による発電量を制御してクランクシャフト15に作用する負荷を調節することにより、クランクシャフト15を次回に内燃機関を始動する際に始動性が良好となるクランク位置で停止させるようにしている。しかし、燃焼室16に導入される吸気量GAは、そのときの機関回転速度NEに応じて変動し、これに伴ってクランクシャフト15に作用する負荷も変動するため、クランクシャフト15を所望の位置にて停止させることが困難なものとなる可能性がある。そこで、本実施の形態においては、自動停止条件が成立した後、スロットル開度TAを「0」となるよう制御することにより、吸気量GAの変動を抑制するようにし、クランクシャフト15を所望の位置に停止させるようにしている(ステップS102)。
【0040】
次に、機関運転が完全に停止したか否かが判断される(ステップS103)。機関運転が完全に停止したと判断された場合(ステップS103:NO)は、この処理は一旦終了する。
【0041】
一方、機関運転が完全に停止していないと判断された場合(ステップS103:YES)は、次に、再始動条件が成立したか否かが判断される(ステップS104)。再始動条件が成立していないと判断された場合(ステップS104:NO)は、ステップS101以降の処理を再度実行する。
【0042】
一方、再始動条件が成立したと判断された場合(ステップS104:YES)は、機関回転速度NEが閾値NEst以上であるか否かが判断される(ステップS105)。機関回転速度NEが閾値NEst未満であると判断された場合(ステップS105:NO)は、スタータ4を駆動させるとともに燃料噴射及び点火が再開されて通常の機関始動処理が実行される(ステップS106)。
【0043】
機関回転速度NEが閾値NEst以上であると判断された場合(ステップS105:YES)は、スタータ4を駆動することなく機関運転を自動的に再開する自律復帰制御が実行される(ステップS107)。
【0044】
次に、この自律復帰制御について、図3を参照して説明する。図3は、自律復帰制御の実行時においてスロットル開度TAを制御する際の具体的な処理手順を示したフローチャートである。
【0045】
同図3に示されるように、この一連の処理では、まず自動停止条件の成立時のスロットル開度TAが基準開度TA1として設定される(ステップS200)。
次に、再始動条件成立時の機関回転速度NEが検出される(ステップS201)。そして、この再始動条件成立時の機関回転速度NEに応じてスロットル開度TAの増大値Xが設定される(ステップS202)。このスロットル開度TAの増大値Xは、図4に示されるマップに示されるように、再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて設定される。
【0046】
具体的には、再始動条件が成立したときの機関回転速度NEが低いときほど増大値Xが大きくなるように設定される。再始動条件が成立したときの機関回転速度NEが低いときほど、機関回転速度NEの低下による機関ストールの発生する可能性が高くなる。そのため、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときほど、スロットル開度TAが大きくなるように制御することにより、吸気量GAを増量させ、機関ストールの発生を抑制するようにしている。一方、再始動条件が成立したときの機関回転速度NEが高いときには、吸気量GAが過多となり、機関運転が再開される際の機関回転速度NEが過度に上昇する可能性が高くなる。そこで、再始動条件成立時の機関回転速度NEが高いときほど、スロットル開度TAが小さくなるように制御することにより、吸気量GAが少なくなるようにして、機関運転が再開される際の機関回転速度NEの過度の上昇を抑制するようにしている。
【0047】
このように増大値Xを設定した後、この増大値Xを基準開度TA1に加算した値を再始動条件成立時におけるスロットル開度TAの目標開度である所定開度TA2として設定する。そして、スロットルバルブ24の開度がこの所定開度TA2となるよう同スロットルバルブ24を制御する(ステップS203)。
【0048】
このように再始動条件成立時のスロットル開度TAが所定開度TA2となるよう制御された後、次に、スロットル開度TAは漸減値Yをもって徐々に減少するように制御される。この漸減値Y、すなわち減少度合は、図5に示されるマップに示されるように、再始動条件の成立時の機関回転速度NEに基づいて定められる(ステップS204)。
【0049】
具体的には、再始動条件成立時における機関回転速度NEが低いときほど、この漸減値Yは小さい値に設定される。機関回転速度NEが低いときほど、機関回転速度NEが機関ストールの懸念がなくなる範囲まで上昇するために必要な吸気量GAを燃焼室16に導入することに要する時間は長くなる。そこで、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときほど、このスロットル開度TAの減少度合を小さくして、吸気量GAの導入量が多くなるようにしている。一方、再始動条件成立時における機関回転速度NEが高いときは、この漸減値Yは小さい値に設定される。再始動条件成立時における機関回転速度NEが高いときには、機関ストールが発生する懸念も少ないため、速やかにアイドル運転のために必要となるスロットル開度TAに戻すようにしたものである。
【0050】
そして、漸減値Yに基づいて、スロットル開度TAが徐々に減少するようにスロットルバルブ24が制御される(ステップS205)。なお、スロットル開度TAが減少して基準開度TA1に達すると、同スロットル開度TAは基準開度TA1に維持されるようになる。
【0051】
図6は、図2及び図3のフローチャートに示されるスロットル開度制御処理が実行された場合について、(a)機関回転速度NE、(b)スロットル開度TAの推移をそれぞれ示している。なお、実線、1点鎖線、2点鎖線はその順に再始動条件が成立したときの機関回転速度NEが低くなった場合の各推移を示している。
【0052】
図6の実線に示されるように、自動停止条件が成立すると、機関回転速度NEが低下するとともに、スロットル開度TAは「0」となるよう制御される(タイミングt1〜t2)。そして、再始動条件が成立すると(タイミングt2)、この再始動条件成立時のスロットル開度TAは基準開度TA1に増大値Xを加算した所定開度TA2となるよう制御される。なお、1点鎖線及び2点鎖線にて示されるように、この所定開度TA2は、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときほど、大きくなるように制御される。そして、この後、スロットル開度TAは徐々に減少する(タイミングt2〜t3)。なお、1点鎖線及び2点鎖線にて示されるように、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときほど、再始動条件成立後のスロットル開度TAの減少速度は緩やかなものとなる。
【0053】
以上説明した本実施の形態によれば、以下に記載する作用効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、内燃機関の自律復帰時にスロットル開度TAを増大させる際、その所定開度TA2を再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて設定するようにしている。具体的には、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときほど所定開度TA2が大きくなるようにしている。このため、自動停止条件が成立した後における機関回転速度NEの低下度合に即して吸気量を増大させることができ、機関回転速度NEの過度な上昇や機関ストールの発生を好適に抑制することができるようになる。
【0054】
(2)自動停止条件が成立したときのスロットル開度TA、すなわち基準開度TA1は、安定したアイドル運転状態を維持すべく同条件成立時の機関温度や補機駆動状態といった機関運転状態に応じて設定されている。本実施の形態によれば、こうした自動停止条件成立時の基準開度TA1を増大させて所定開度TA2を設定するようしているため、自動停止条件成立時の機関運転状態をこの所定開度TA2に反映させることができ、同所定開度TA2を機関回転速度NEの過度な上昇やストールの発生を抑制する上でより適切な開度とすることができる。
【0055】
(3)機関運転再開時においてスロットル開度TAを徐々に減少させることで機関回転速度NEが緩やかに上昇して機関アイドル回転速度に収束するようになるため、その収束性を高めることができるようになるとともに機関運転の再開に伴う機関振動の発生を抑制して円滑に機関運転を再開することができるようになる。またこのように、スロットル開度TAを減少させる際の漸減値Yを再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて設定するようにし、同機関回転速度NEが低いときほど漸減値Yが小さい値になるようにしている。したがって、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときには、吸気量の減少度合が小さくなるため十分な吸気量が確保され、機関ストールの発生を抑制することができる一方、機関回転速度NEが高いときには、吸気量の減少度合を大きくし、速やかに機関回転速度NEをアイドル回転速度に収束させてその収束性を高めることができる。
【0056】
なお、以上説明した実施形態は次のようにその形態を適宜変更した態様にて実施することができる。
・上記実施の形態においては、再始動条件が成立したときに自動運転条件が成立したときのスロットル開度TAを基準開度TA1として、この基準開度TA1に増大値Xを加算して算出するようにしたが、本実施の形態はこれに限られない。例えば、機関運転状態に基づいて直接所定開度TA2を求めるようにしてもよい。本実施の形態においても、上記(1)及び(3)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0057】
・上記実施の形態においては、再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて漸減値Yを決定し、スロットル開度TAを所定開度TA2からこの漸減値Yをもって徐々に減少させるようにしたが、例えば、再始動条件成立後の機関回転速度NEを所定のタイミングをもって検出し、その検出される機関回転速度NEに基づいてスロットル開度TAの目標開度をその都度設定するようにしてもよい。本実施の形態においても、上記(1)及び(2)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0058】
・上記実施の形態においては、スロットル開度TAの減少させる際の減少度合、すなわち漸減値Yを機関回転速度NEに基づいて設定するようにしたが、本実施の形態はこれに限られるものでなく、予め定められた所定の減少度合をもってスロットル開度TAを減少させるようにしてもよい。本実施の形態においても、上記(1)及び(2)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0059】
・上記実施の形態においては、再始動条件が成立したときの所定開度TA2を機関回転速度NEに基づいて設定するようにしたが、本実施の形態はこれに限られない。例えば、再始動条件成立時の所定開度TA2を、予め定められた開度として設定することもできる。すなわち、自動停止条件成立時のスロットル開度TAに予め定められた増大値Xを加算した値を所定開度TA2として設定してもよい。あるいは、自動停止条件成立時のスロットル開度TAによらず、所定開度TA2が予め定められた開度となるようにこれを設定してもよい。本実施の形態においても、上記(3)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
・ ・上記実施の形態においては、スロットル開度TAを所定開度TA2に制御した後、これを徐々に減少させるようにしたが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、スロットル開度TAの推移が矩形波状となるように、同スロットル開度TAを所定期間にわたって所定開度TA2に保持した後、このスロットル開度TAを減少させるようにしてもよい。本実施の形態においても、上記(1)及び(2)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0060】
・上記実施の形態においては、機関回転速度NEが低いときほど所定開度TA2が大きくなるよう制御するようにしたが、図7に示されるように、これを水温センサ93により検出される水温ThWが低いときほど、所定開度TA2が大きくなるようにしてもよい。すなわち、再始動条件成立時の機関温度(本実施の形態における水温ThW)が低いときには、機関摺動部におけるフリクションが増大するため、機関ストールの発生する可能性が高くなる。そこで、再始動条件成立時の水温ThWが低いときほど大きくなるように所定開度TA2を制御することにより、自動停止条件が成立した後におけるフリクションの大きさに即して吸気量GAを増大させることができる。さらに、水温ThWが低いときほど、漸減値Yが小さくなるよう設定することもできる。
【0061】
・また、この場合において、図8に示されるように、機関回転速度NE及び水温ThWの双方に基づいてスロットル開度TAを設定するようにしてもよい。具体的には、再始動条件成立時の水温ThWが高いときほど、また、機関回転速度NEが高いときほど、スロットル開度TAの所定開度TA2が小さくなるように制御することができる。さらに、所定開度TA2が小さいときほど、漸減値Yが小さくなるよう設定することもできる。
【0062】
・また補機駆動状態に応じて、スロットル開度TAの増大値X及び漸減値Yを変更するようにしてもよい。すなわち、補機が駆動されているときには、所定開度TA2をより大きな値に設定するようにすることもできる。また、スロットル開度TAの漸減値Yを小さくするようにすることもできる。本実施の形態においても、上記作用効果に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0063】
・上記実施の形態においては、スロットル開度TAを変更することにより吸気量を調整するようにしたが、例えば、吸気弁の最大リフト量を変更するリフト量変更機構を備えた内燃機関では、最大リフト量を変更することにより吸気量を調整するようにしてもよい。本実施の形態においても、上記作用効果に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【符号の説明】
【0064】
4…スタータ、5…電子制御装置、6…オルネータ、11シリンダブロック、12…シリンダヘッド、13…ピストン、14…コネクティングロッド、15…クランクシャフト、16…燃焼室、17…点火プラグ、18…燃料噴射弁、19…ウォータジャケット、22…吸気バルブ、23…吸気通路、24…スロットルバルブ、24a…モータ、32…排気バルブ、33…排気通路、91…クランク角センサ、93…水温センサ、94…アクセルセンサ、95…車速センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関運転の停止及びその再始動を自動的に行う内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料消費量の低減を目的として、自動停止条件が成立すると燃料噴射を停止するとともに、スロットルバルブを全閉状態にして機関運転を自動的に停止させる、いわゆる自動停止制御を実行する内燃機関が知られている。こうした自動停止制御が実行される内燃機関においては、再始動条件が成立すると、始動装置が駆動されるとともに燃料噴射が再開されることにより、機関運転が自動的に再開される。
【0003】
ところで、このような自動停止制御が実行されている間であって内燃機関が完全に停止する前に再始動条件が成立すると、クランクシャフトが未だ回転している状態から機関運転が自動的に再開されるようになる。そして、この機関運転の再開時における機関回転速度が所定の閾値より大きいときには、始動装置を駆動することなく燃料噴射を再開することにより内燃機関を再始動する、いわゆる自律復帰が行われる。こうした自律復帰時には燃料噴射を再開するのに併せてスロットルバルブの開度を所定開度まで増大して吸入空気量を増量することにより機関回転速度を上昇させるようにしている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−215154号公報
【特許文献2】特開2008−190458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、スロットルバルブの開度を所定開度まで増大させることにより、始動装置を駆動させることなく機関運転を自動的に再開することができるようにはなる。
しかしながら、自動停止条件が成立して燃料噴射が停止されてから再始動条件が成立するまでの期間は、再始動条件が成立するタイミングによって都度異なる。このため、再始動条件の成立するタイミングによって、機関運転を自動的に再開するために必要となる吸気量も都度異なるものとなる。そして、機関運転の再開時における吸気量が必要以上に増大すると、機関回転速度が過度に上昇するおそれがある一方、このときの吸気量が不足すると機関回転速度が自律運転復帰可能な回転速度にまで上昇することができず機関ストールが発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、機関運転の停止及びその再始動を自動的に行う内燃機関において、始動装置を駆動することなく機関運転を自動的に再開する際、機関回転速度の過度な上昇や機関ストールの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、自動停止条件が成立したときに燃料噴射を停止して機関運転を自動的に停止させる一方、機関回転速度が所定の閾値以下となる前に再始動条件が成立したときには燃料噴射を再開するとともに吸気調量機構の調量開度を所定開度まで増大させることにより始動装置を駆動することなく機関運転を自動的に再開する内燃機関の制御装置において、前記再始動条件が成立したときの機関運転状態に基づいて前記所定開度を設定し同所定開度に基づいて前記吸気調量機構を制御する吸気調量機構制御手段を備えることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、再始動条件が成立したことに基づいて機関運転を自動的に再開する際、吸気調量機構の調量開度を再始動条件成立時の機関運転状態に基づいて設定される所定開度まで増大させるようにしている。このため、吸気量を機関運転状態に応じて適切な量まで増大させることができ、機関回転速度の過度な上昇や機関ストールの発生を抑制することができるようになる。なお、スロットルバルブの開度を変更することにより吸気量を調量するようにした内燃機関ではそのスロットル開度が上記「吸気調量機構の調量開度」に相当し、吸気弁の最大リフト量を変更することにより吸気量を調量するようにした内燃機関ではその最大リフト量が「吸気調量機構の調量開度」に相当する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記自動停止条件が成立したときの前記吸気調量機構の調量開度を基準開度としこれを前記再始動条件成立時の機関運転状態に基づいて決定される所定量をもって増大させることにより前記所定開度を設定することを要旨とする。
【0010】
自動停止条件が成立したときの吸気調量機構の調量開度、すなわち基準開度は、安定したアイドル運転状態を維持すべく同条件成立時の機関温度や補機駆動状態といった機関運転状態に応じて設定されている。上記構成では、こうした自動停止条件成立時の基準開度を所定量だけ増大させることにより再始動条件成立時の開度を設定し、これを所定開度としているため、自動停止条件成立時の機関運転状態についてもこれを所定開度に反映させることができ、同所定開度を機関回転速度の過度な上昇やストールの発生を抑制する上でより適切な開度とすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関回転速度が低いときほど前記所定開度が大きくなるようにこれを設定することを要旨とする。
【0012】
再始動条件が成立したときの機関回転速度が低いときには機関ストールの発生する可能性が高くなる一方、同条件が成立したときの機関回転速度が高いときには機関運転再開後において機関回転速度が過度に上昇する可能性が高くなる。この点、同構成によれば、再始動条件成立時の機関回転速度が低いときほど大きくなるように所定開度を設定するようにしているため、自動停止条件が成立した後における機関回転速度の低下度合に即して吸気量を増大させることができ、機関回転速度の過度な上昇や機関ストールの発生を一層好適に抑制することができるようになる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関温度が低いときほど前記所定開度が大きくなるようにこれを設定することを要旨とする。
【0014】
再始動条件が成立したときの機関温度が低いときには、機関摺動部におけるフリクションが増大するため、機関ストールの発生する可能性が高くなる。この点、同構成によれば、再始動条件成立時の機関温度が低いときほど大きくなるように所定開度を設定するようにしているため、フリクションの大きさに即して吸気量を増大させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記調量開度を前記所定開度まで増大させた後に徐々に減少させることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、機関運転再開時において調量機構の開度を徐々に減少させることで機関回転速度が緩やかに上昇して機関アイドル回転速度に収束するようになるため、その収束性を高めることができるようになるとともに機関運転の再開に伴う機関振動の発生を抑制して円滑に機関運転を再開することができるようになる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記調量開度を徐々に減少させるに際してその減少度合を機関運転状態に基づいて設定することを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、機関運転状態についてもこれを吸気調量機構の減少度合に反映させることができ、同吸気調量機構の調量開度を機関回転速度の過剰な上昇やストールの発生を抑制する上でより適切な開度とすることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、自動停止条件が成立したときに燃料噴射を停止して機関運転を自動的に停止させる一方、機関回転速度が所定の閾値以下となる前に再始動条件が成立したときには燃料噴射を再開するとともに吸気調量機構の調量開度を所定開度まで増大させることにより始動装置を駆動することなく機関運転を自動的に再開する内燃機関の制御装置において、前記調量開度を前記所定開度まで増大させた後、機関運転状態に基づいて設定される減少度合をもって前記調量開度が徐々に減少するように前記吸気調量機構を制御する吸気調量機構制御手段を備えることを要旨とする。
【0020】
同構成によっても、機関運転再開時において調量機構の開度を徐々に減少させることで機関回転速度が緩やかに上昇して機関アイドル回転速度に収束するようになるため、その収束性を高めることができるようになるとともに機関運転の再開に伴う機関振動の発生を抑制して円滑に機関運転を再開することができるようになる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記減少度合を前記再始動条件が成立したときの機関運転状態に基づいて設定することを要旨とする。
【0022】
同構成によれば、再始動条件の成立時における機関運転状態について、これを吸気調量機構の開度を減少させる際の減少度合に反映させることができる。このため、同調量開度の減少度合を機関回転速度の過剰な上昇やストールの発生を抑制するように設定することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関回転速度が低いときほど前記減少度合が小さくなるようにこれを設定することを要旨とする。
【0024】
同構成によれば、機関回転速度が低いときには、吸気量の減少度合が小さくなるようにして、機関ストールの発生を抑制することができる一方、機関回転速度が高いときには、吸気量の減少度合を大きくし速やかに機関回転速度をアイドル回転速度に収束させてその収束性を高めることができる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項8または請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関温度が低いときほど前記減少度合が小さくなるようにこれを設定することを要旨とする。
【0026】
再始動条件が成立したときの機関温度が低いときには、機関摺動部におけるフリクションが増大するため、機関ストールの発生する可能性が高くなる。同構成によれば、再始動条件成立時の機関温度が低いときほど、調量機構の開度を減少させる際の減少度合を小さくするようにしている。このため、フリクションの大きさに即したかたちで吸気量を確保することができ、機関ストールの発生を抑制することができるようになる。
【0027】
なお、吸気調量機構の具体例としては、請求項11に記載の発明によるように、吸気通路に設けられたスロットルバルブを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態にかかる内燃機関及びその制御装置についての全体構成を示した模式図。
【図2】本実施の形態にかかるスロットル開度制御処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図3】本実施の形態にかかるスロットル開度制御処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図4】本実施の形態にかかるスロットル開度の増大値を設定するためのマップ。
【図5】本実施の形態にかかるスロットル開度の漸減値を設定するためのマップ。
【図6】本実施の形態にかかる機関回転速度及びスロットル開度の時間変化を示すタイミングチャート。
【図7】他の実施の形態にかかる機関水温より定められるスロットル開度を示すマップ。
【図8】他の実施の形態にかかる機関回転速度及び機関水温より定められるスロットル開度を示すマップ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明にかかる内燃機関の制御装置を具体化した一実施の形態について図1〜図6を参照して説明する。
図1は、本実施の形態における内燃機関及びその制御装置についての全体構成を示した模式図である。同図1に示されるように、シリンダブロック11に形成された複数の気筒(図1ではその一つを示す)には、それぞれ燃焼室16が形成されるとともに、それら燃焼室16と吸気通路23及び排気通路33とをそれぞれ連通・遮断する吸気バルブ22及び排気バルブ32が設けられている。これら吸気バルブ22および排気バルブ32は、クランクシャフト15にそれぞれ駆動連結される吸気カムシャフト及び排気カムシャフト(いずれも図示せず)の回転に伴ってそれぞれ開閉駆動される。また、吸気通路23には、同通路内に燃料を噴射する燃料噴射弁18が設けられるとともに、燃焼室16内には混合気の点火を行う点火プラグ17がそれぞれ設けられている。また、吸気通路23にはモータ24aにより開閉駆動されるスロットルバルブ24が設けられており、このスロットルバルブ24の開度(以下、スロットル開度TAとする)が変更されることにより、燃焼室16に導入される吸気量GAが調量される。
【0030】
内燃機関の運転時には、機関運転状態に応じて調量された吸気と燃料噴射弁18から噴射された燃料とが燃焼室16内に導入され、混合気となる。この混合気は、点火プラグ17によって点火され、燃焼に供される。この燃焼によって生じた排気は排気通路33を通じて排出される。こうした燃焼に伴うピストン13の上下運動は、コネクティングロッド14により回転運動に変換されて、クランクシャフト15を回転させる。また、このクランクシャフト15には、同クランクシャフト15の回転力を利用して発電するオルタネータ6が接続されており、このオルタネータ6により発電された電力はバッテリ(図示せず)に蓄えられる。
【0031】
一方、この内燃機関及びこれを搭載する車両には、機関運転状態及び車両の走行状態を検出するための各種センサが設けられている。例えば、クランクシャフト15の回転速度、すなわち機関回転速度NEを検出するためのクランク角センサ91、シリンダブロック11やシリンダヘッド12に形成されたウォータジャケット19内を流通する冷却水の水温ThWを検出するための水温センサ93、アクセル開度ACCPを検出するためのアクセルセンサ94、車両の走行速度Vを検出するための車速センサ95等が設けられている。これらの各種センサにて検出された値は、電子制御装置5に取り込まれる。
【0032】
電子制御装置5は、これら各種センサからの検出信号に基づいて内燃機関の各種制御を行う。こうした各種制御には、点火プラグ17による混合気の点火時期を制御する点火時期制御、燃料噴射弁18から噴射供給する燃料の量や時期を調整する燃料噴射制御、バッテリの蓄電量を所定範囲に保持するべくオルタネータ6による発電量を制御する発電制御、スロットル開度TAを制御するスロットル開度制御等がある。また、電子制御装置5は、イグニションスイッチ(図示せず)がスタート位置に操作されると、スタータ4を駆動してクランクキングを開始するとともに、燃料噴射及び点火プラグ17による点火を実行することにより、内燃機関を始動する。
【0033】
さらに、電子制御装置5は、所定の自動停止条件が成立すると、燃料噴射及び点火を停止するとともにスロットル開度TAを全閉として機関運転を自動的に停止させる自動停止制御を実行する。このように燃料噴射が停止されると、燃焼室16内での燃焼が行われないため、機関回転速度NEは徐々に低下するようになる。なお、この自動停止条件としては、アクセル開度ACCPが「0」であること、車両の走行速度Vが「0」であること、ブレーキペダルが踏み込まれていること等が挙げられる。
【0034】
ところで、このような自動停止制御の実行中に再始動条件が成立すると、クランクシャフト15が未だ回転している状態において機関運転が再開されるようになる。この再始動条件成立時における機関回転速度NEが、スタータ4を駆動させなくても通常運転に復帰可能な範囲にあるとき、具体的には再始動条件成立時における機関回転速度NEが予め定められた所定の閾値NEst以上にあるときは、スタータ4を駆動させることなく燃料噴射や点火を再開することによって機関運転が自動的に再開される。なお、この再始動条件としては、ブレーキペダルの踏み込みが解除されたこと、アクセル開度ACCPが「0」でないこと、バッテリの充電量が所定値未満に低下したこと等が挙げられる。
【0035】
また、このようにスタータ4を駆動させることなく燃料噴射や点火を再開することによって機関運転を自動的に再開させる際には、スロットル開度TAを全閉から所定開度TA2まで増大させる。
【0036】
ここで、燃料噴射が停止されてから再始動条件が成立するまでの期間はその都度異なる。また、燃料噴射が停止されると、機関回転速度NEは時間経過とともに減少するため、この再始動条件の成立するタイミングによって、再始動に際して必要となる吸気量GAは都度異なるものとなる。そこで、本実施の形態においては、機関運転を再開するにあたってのスロットル開度TAを再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて制御するようにしている。
【0037】
次に、このようなスロットル開度TAの制御態様について詳述する。図2は、電子制御装置5を通じて実行される機関運転の自動停止制御におけるスロットル開度制御処理について、具体的な手順を示したフローチャートである。なおこの一連の処理は電子制御装置5によって所定周期をもって繰り返し実行される。
【0038】
同図2に示されるように、この一連の処理が開始されると、まず自動停止条件が成立したか否かが判断される(ステップS100)。自動停止条件が成立していないと判断された場合(ステップS100:NO)はこの処理は一旦終了する。
【0039】
一方、自動停止条件が成立したと判断された場合(ステップS100:YES)は、燃料噴射及び点火が停止される(ステップS101)。
なお、この自動停止制御においては、オルタネータ6による発電量を制御してクランクシャフト15に作用する負荷を調節することにより、クランクシャフト15を次回に内燃機関を始動する際に始動性が良好となるクランク位置で停止させるようにしている。しかし、燃焼室16に導入される吸気量GAは、そのときの機関回転速度NEに応じて変動し、これに伴ってクランクシャフト15に作用する負荷も変動するため、クランクシャフト15を所望の位置にて停止させることが困難なものとなる可能性がある。そこで、本実施の形態においては、自動停止条件が成立した後、スロットル開度TAを「0」となるよう制御することにより、吸気量GAの変動を抑制するようにし、クランクシャフト15を所望の位置に停止させるようにしている(ステップS102)。
【0040】
次に、機関運転が完全に停止したか否かが判断される(ステップS103)。機関運転が完全に停止したと判断された場合(ステップS103:NO)は、この処理は一旦終了する。
【0041】
一方、機関運転が完全に停止していないと判断された場合(ステップS103:YES)は、次に、再始動条件が成立したか否かが判断される(ステップS104)。再始動条件が成立していないと判断された場合(ステップS104:NO)は、ステップS101以降の処理を再度実行する。
【0042】
一方、再始動条件が成立したと判断された場合(ステップS104:YES)は、機関回転速度NEが閾値NEst以上であるか否かが判断される(ステップS105)。機関回転速度NEが閾値NEst未満であると判断された場合(ステップS105:NO)は、スタータ4を駆動させるとともに燃料噴射及び点火が再開されて通常の機関始動処理が実行される(ステップS106)。
【0043】
機関回転速度NEが閾値NEst以上であると判断された場合(ステップS105:YES)は、スタータ4を駆動することなく機関運転を自動的に再開する自律復帰制御が実行される(ステップS107)。
【0044】
次に、この自律復帰制御について、図3を参照して説明する。図3は、自律復帰制御の実行時においてスロットル開度TAを制御する際の具体的な処理手順を示したフローチャートである。
【0045】
同図3に示されるように、この一連の処理では、まず自動停止条件の成立時のスロットル開度TAが基準開度TA1として設定される(ステップS200)。
次に、再始動条件成立時の機関回転速度NEが検出される(ステップS201)。そして、この再始動条件成立時の機関回転速度NEに応じてスロットル開度TAの増大値Xが設定される(ステップS202)。このスロットル開度TAの増大値Xは、図4に示されるマップに示されるように、再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて設定される。
【0046】
具体的には、再始動条件が成立したときの機関回転速度NEが低いときほど増大値Xが大きくなるように設定される。再始動条件が成立したときの機関回転速度NEが低いときほど、機関回転速度NEの低下による機関ストールの発生する可能性が高くなる。そのため、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときほど、スロットル開度TAが大きくなるように制御することにより、吸気量GAを増量させ、機関ストールの発生を抑制するようにしている。一方、再始動条件が成立したときの機関回転速度NEが高いときには、吸気量GAが過多となり、機関運転が再開される際の機関回転速度NEが過度に上昇する可能性が高くなる。そこで、再始動条件成立時の機関回転速度NEが高いときほど、スロットル開度TAが小さくなるように制御することにより、吸気量GAが少なくなるようにして、機関運転が再開される際の機関回転速度NEの過度の上昇を抑制するようにしている。
【0047】
このように増大値Xを設定した後、この増大値Xを基準開度TA1に加算した値を再始動条件成立時におけるスロットル開度TAの目標開度である所定開度TA2として設定する。そして、スロットルバルブ24の開度がこの所定開度TA2となるよう同スロットルバルブ24を制御する(ステップS203)。
【0048】
このように再始動条件成立時のスロットル開度TAが所定開度TA2となるよう制御された後、次に、スロットル開度TAは漸減値Yをもって徐々に減少するように制御される。この漸減値Y、すなわち減少度合は、図5に示されるマップに示されるように、再始動条件の成立時の機関回転速度NEに基づいて定められる(ステップS204)。
【0049】
具体的には、再始動条件成立時における機関回転速度NEが低いときほど、この漸減値Yは小さい値に設定される。機関回転速度NEが低いときほど、機関回転速度NEが機関ストールの懸念がなくなる範囲まで上昇するために必要な吸気量GAを燃焼室16に導入することに要する時間は長くなる。そこで、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときほど、このスロットル開度TAの減少度合を小さくして、吸気量GAの導入量が多くなるようにしている。一方、再始動条件成立時における機関回転速度NEが高いときは、この漸減値Yは小さい値に設定される。再始動条件成立時における機関回転速度NEが高いときには、機関ストールが発生する懸念も少ないため、速やかにアイドル運転のために必要となるスロットル開度TAに戻すようにしたものである。
【0050】
そして、漸減値Yに基づいて、スロットル開度TAが徐々に減少するようにスロットルバルブ24が制御される(ステップS205)。なお、スロットル開度TAが減少して基準開度TA1に達すると、同スロットル開度TAは基準開度TA1に維持されるようになる。
【0051】
図6は、図2及び図3のフローチャートに示されるスロットル開度制御処理が実行された場合について、(a)機関回転速度NE、(b)スロットル開度TAの推移をそれぞれ示している。なお、実線、1点鎖線、2点鎖線はその順に再始動条件が成立したときの機関回転速度NEが低くなった場合の各推移を示している。
【0052】
図6の実線に示されるように、自動停止条件が成立すると、機関回転速度NEが低下するとともに、スロットル開度TAは「0」となるよう制御される(タイミングt1〜t2)。そして、再始動条件が成立すると(タイミングt2)、この再始動条件成立時のスロットル開度TAは基準開度TA1に増大値Xを加算した所定開度TA2となるよう制御される。なお、1点鎖線及び2点鎖線にて示されるように、この所定開度TA2は、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときほど、大きくなるように制御される。そして、この後、スロットル開度TAは徐々に減少する(タイミングt2〜t3)。なお、1点鎖線及び2点鎖線にて示されるように、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときほど、再始動条件成立後のスロットル開度TAの減少速度は緩やかなものとなる。
【0053】
以上説明した本実施の形態によれば、以下に記載する作用効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、内燃機関の自律復帰時にスロットル開度TAを増大させる際、その所定開度TA2を再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて設定するようにしている。具体的には、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときほど所定開度TA2が大きくなるようにしている。このため、自動停止条件が成立した後における機関回転速度NEの低下度合に即して吸気量を増大させることができ、機関回転速度NEの過度な上昇や機関ストールの発生を好適に抑制することができるようになる。
【0054】
(2)自動停止条件が成立したときのスロットル開度TA、すなわち基準開度TA1は、安定したアイドル運転状態を維持すべく同条件成立時の機関温度や補機駆動状態といった機関運転状態に応じて設定されている。本実施の形態によれば、こうした自動停止条件成立時の基準開度TA1を増大させて所定開度TA2を設定するようしているため、自動停止条件成立時の機関運転状態をこの所定開度TA2に反映させることができ、同所定開度TA2を機関回転速度NEの過度な上昇やストールの発生を抑制する上でより適切な開度とすることができる。
【0055】
(3)機関運転再開時においてスロットル開度TAを徐々に減少させることで機関回転速度NEが緩やかに上昇して機関アイドル回転速度に収束するようになるため、その収束性を高めることができるようになるとともに機関運転の再開に伴う機関振動の発生を抑制して円滑に機関運転を再開することができるようになる。またこのように、スロットル開度TAを減少させる際の漸減値Yを再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて設定するようにし、同機関回転速度NEが低いときほど漸減値Yが小さい値になるようにしている。したがって、再始動条件成立時の機関回転速度NEが低いときには、吸気量の減少度合が小さくなるため十分な吸気量が確保され、機関ストールの発生を抑制することができる一方、機関回転速度NEが高いときには、吸気量の減少度合を大きくし、速やかに機関回転速度NEをアイドル回転速度に収束させてその収束性を高めることができる。
【0056】
なお、以上説明した実施形態は次のようにその形態を適宜変更した態様にて実施することができる。
・上記実施の形態においては、再始動条件が成立したときに自動運転条件が成立したときのスロットル開度TAを基準開度TA1として、この基準開度TA1に増大値Xを加算して算出するようにしたが、本実施の形態はこれに限られない。例えば、機関運転状態に基づいて直接所定開度TA2を求めるようにしてもよい。本実施の形態においても、上記(1)及び(3)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0057】
・上記実施の形態においては、再始動条件成立時の機関回転速度NEに基づいて漸減値Yを決定し、スロットル開度TAを所定開度TA2からこの漸減値Yをもって徐々に減少させるようにしたが、例えば、再始動条件成立後の機関回転速度NEを所定のタイミングをもって検出し、その検出される機関回転速度NEに基づいてスロットル開度TAの目標開度をその都度設定するようにしてもよい。本実施の形態においても、上記(1)及び(2)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0058】
・上記実施の形態においては、スロットル開度TAの減少させる際の減少度合、すなわち漸減値Yを機関回転速度NEに基づいて設定するようにしたが、本実施の形態はこれに限られるものでなく、予め定められた所定の減少度合をもってスロットル開度TAを減少させるようにしてもよい。本実施の形態においても、上記(1)及び(2)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0059】
・上記実施の形態においては、再始動条件が成立したときの所定開度TA2を機関回転速度NEに基づいて設定するようにしたが、本実施の形態はこれに限られない。例えば、再始動条件成立時の所定開度TA2を、予め定められた開度として設定することもできる。すなわち、自動停止条件成立時のスロットル開度TAに予め定められた増大値Xを加算した値を所定開度TA2として設定してもよい。あるいは、自動停止条件成立時のスロットル開度TAによらず、所定開度TA2が予め定められた開度となるようにこれを設定してもよい。本実施の形態においても、上記(3)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
・ ・上記実施の形態においては、スロットル開度TAを所定開度TA2に制御した後、これを徐々に減少させるようにしたが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、スロットル開度TAの推移が矩形波状となるように、同スロットル開度TAを所定期間にわたって所定開度TA2に保持した後、このスロットル開度TAを減少させるようにしてもよい。本実施の形態においても、上記(1)及び(2)に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0060】
・上記実施の形態においては、機関回転速度NEが低いときほど所定開度TA2が大きくなるよう制御するようにしたが、図7に示されるように、これを水温センサ93により検出される水温ThWが低いときほど、所定開度TA2が大きくなるようにしてもよい。すなわち、再始動条件成立時の機関温度(本実施の形態における水温ThW)が低いときには、機関摺動部におけるフリクションが増大するため、機関ストールの発生する可能性が高くなる。そこで、再始動条件成立時の水温ThWが低いときほど大きくなるように所定開度TA2を制御することにより、自動停止条件が成立した後におけるフリクションの大きさに即して吸気量GAを増大させることができる。さらに、水温ThWが低いときほど、漸減値Yが小さくなるよう設定することもできる。
【0061】
・また、この場合において、図8に示されるように、機関回転速度NE及び水温ThWの双方に基づいてスロットル開度TAを設定するようにしてもよい。具体的には、再始動条件成立時の水温ThWが高いときほど、また、機関回転速度NEが高いときほど、スロットル開度TAの所定開度TA2が小さくなるように制御することができる。さらに、所定開度TA2が小さいときほど、漸減値Yが小さくなるよう設定することもできる。
【0062】
・また補機駆動状態に応じて、スロットル開度TAの増大値X及び漸減値Yを変更するようにしてもよい。すなわち、補機が駆動されているときには、所定開度TA2をより大きな値に設定するようにすることもできる。また、スロットル開度TAの漸減値Yを小さくするようにすることもできる。本実施の形態においても、上記作用効果に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【0063】
・上記実施の形態においては、スロットル開度TAを変更することにより吸気量を調整するようにしたが、例えば、吸気弁の最大リフト量を変更するリフト量変更機構を備えた内燃機関では、最大リフト量を変更することにより吸気量を調整するようにしてもよい。本実施の形態においても、上記作用効果に準じた作用効果を奏することができるようになる。
【符号の説明】
【0064】
4…スタータ、5…電子制御装置、6…オルネータ、11シリンダブロック、12…シリンダヘッド、13…ピストン、14…コネクティングロッド、15…クランクシャフト、16…燃焼室、17…点火プラグ、18…燃料噴射弁、19…ウォータジャケット、22…吸気バルブ、23…吸気通路、24…スロットルバルブ、24a…モータ、32…排気バルブ、33…排気通路、91…クランク角センサ、93…水温センサ、94…アクセルセンサ、95…車速センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動停止条件が成立したときに燃料噴射を停止して機関運転を自動的に停止させる一方、機関回転速度が所定の閾値以下となる前に再始動条件が成立したときには燃料噴射を再開するとともに吸気調量機構の調量開度を所定開度まで増大させることにより始動装置を駆動することなく機関運転を自動的に再開する内燃機関の制御装置において、
前記再始動条件が成立したときの機関運転状態に基づいて前記所定開度を設定し同所定開度に基づいて前記吸気調量機構を制御する吸気調量機構制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記自動停止条件が成立したときの前記吸気調量機構の調量開度を基準開度としこれを前記再始動条件成立時の機関運転状態に基づいて決定される所定量をもって増大させることにより前記所定開度を設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関回転速度が低いときほど前記所定開度が大きくなるようにこれを設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関温度が低いときほど前記所定開度が大きくなるようにこれを設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記調量開度を前記所定開度まで増大させた後に徐々に減少させる
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記調量開度を徐々に減少させるに際してその減少度合を機関運転状態に基づいて設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項7】
自動停止条件が成立したときに燃料噴射を停止して機関運転を自動的に停止させる一方、機関回転速度が所定の閾値以下となる前に再始動条件が成立したときには燃料噴射を再開するとともに吸気調量機構の調量開度を所定開度まで増大させることにより始動装置を駆動することなく機関運転を自動的に再開する内燃機関の制御装置において、
前記調量開度を前記所定開度まで増大させた後、機関運転状態に基づいて設定される減少度合をもって前記調量開度が徐々に減少するように前記吸気調量機構を制御する吸気調量機構制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記減少度合を前記再始動条件が成立したときの機関運転状態に基づいて設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関回転速度が低いときほど前記減少度合が小さくなるようにこれを設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関温度が低いときほど前記減少度合が小さくなるようにこれを設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構は吸気通路に設けられたスロットルバルブである
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項1】
自動停止条件が成立したときに燃料噴射を停止して機関運転を自動的に停止させる一方、機関回転速度が所定の閾値以下となる前に再始動条件が成立したときには燃料噴射を再開するとともに吸気調量機構の調量開度を所定開度まで増大させることにより始動装置を駆動することなく機関運転を自動的に再開する内燃機関の制御装置において、
前記再始動条件が成立したときの機関運転状態に基づいて前記所定開度を設定し同所定開度に基づいて前記吸気調量機構を制御する吸気調量機構制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記自動停止条件が成立したときの前記吸気調量機構の調量開度を基準開度としこれを前記再始動条件成立時の機関運転状態に基づいて決定される所定量をもって増大させることにより前記所定開度を設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関回転速度が低いときほど前記所定開度が大きくなるようにこれを設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関温度が低いときほど前記所定開度が大きくなるようにこれを設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記調量開度を前記所定開度まで増大させた後に徐々に減少させる
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記調量開度を徐々に減少させるに際してその減少度合を機関運転状態に基づいて設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項7】
自動停止条件が成立したときに燃料噴射を停止して機関運転を自動的に停止させる一方、機関回転速度が所定の閾値以下となる前に再始動条件が成立したときには燃料噴射を再開するとともに吸気調量機構の調量開度を所定開度まで増大させることにより始動装置を駆動することなく機関運転を自動的に再開する内燃機関の制御装置において、
前記調量開度を前記所定開度まで増大させた後、機関運転状態に基づいて設定される減少度合をもって前記調量開度が徐々に減少するように前記吸気調量機構を制御する吸気調量機構制御手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記減少度合を前記再始動条件が成立したときの機関運転状態に基づいて設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関回転速度が低いときほど前記減少度合が小さくなるようにこれを設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構制御手段は前記再始動条件が成立したときの機関温度が低いときほど前記減少度合が小さくなるようにこれを設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記吸気調量機構は吸気通路に設けられたスロットルバルブである
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−242648(P2010−242648A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93283(P2009−93283)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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