説明

内燃機関の制御装置

【課題】EGR系を備える内燃機関において、簡易な構成でEGR触媒の過熱を精度よく検出することのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】EGR触媒52の下流のEGRガスの状態に基づいて、該EGR触媒52の過熱を検出する。より具体的には、内燃機関10の機関回転数と機関負荷とに基づいて、推定吸気管圧力、推定吸気管温度、および推定排気空燃比をそれぞれ特定する。そして、内燃機関10の実吸気管圧力が推定吸気管圧力よりも所定量以上低いか否か、実吸気管温度が推定吸気管温度よりも所定量以上低いか否か、および実排気空燃比が推定排気空燃比よりも所定量燃料リッチであるか否か、をそれぞれ判定し、これらが成立した場合に該EGR触媒52の過熱を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に係り、特に、EGR系を備える内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2009−264203号公報に開示されているように、外部EGR装置を有する内燃機関において、EGR通路に配置されたEGR触媒を昇温させるシステムが知られている。このシステムでは、より具体的には、EGR触媒に硫黄分による被毒が生じた場合に、該EGR触媒の温度を上昇させるEGR触媒昇温制御手段が実行される。硫黄被毒した触媒は、高温且つリーンでない状態によって回復することが知られている。上記従来のシステムでは、EGR触媒昇温制御手段によって該EGR触媒の温度を昇温させることができるので、EGR触媒を硫黄被毒から有効に回復させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−264203号公報
【特許文献2】特開2006−2593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のシステムでは、EGR触媒の硫黄被毒が判定された場合に、該EGR触媒の昇温制御が実行される。このため、EGR触媒が過熱状態にある場合に硫黄被毒が判定されてしまうと、EGR触媒の昇温制御が実行されてしまい、触媒の更なる昇温によって浄化性能が著しく低下してしまうおそれがある。そこで、EGR触媒に温度センサを設置して、該触媒の過熱を検出することが考えられる。しかしながら、新たなセンサの追加は、部品点数の増加によるコスト上昇が問題となる。このため、簡易な構成でEGR触媒の過熱を早期に且つ精度よく検出するためのシステムの構築が望まれていた。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、EGR系を備える内燃機関において、簡易な構成でEGR触媒の過熱を精度よく検出することのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
内燃機関の排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路と、
前記EGR通路に配置されたEGR触媒と、
前記EGR通路を流れるEGRガスの流量を調整するためのEGRバルブと、
前記EGR触媒の下流のEGRガスの状態に基づいて、前記EGR触媒の過熱を検出する過熱検出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、
前記過熱検出手段は、
前記内燃機関の機関回転数と機関負荷とから特定される推定吸気管圧力を取得する手段と、
前記内燃機関の実吸気管圧力を検出する圧力検出手段と、
前記実吸気管圧力が前記推定吸気管圧力よりも所定量以上低い場合に、前記EGR触媒の過熱を判定する手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記過熱検出手段は、
前記吸気通路へ還流されるEGRガスの流量を取得する手段と、
前記EGRガス流量から導き出される吸気管温度(以下、推定吸気管温度)を取得する手段と、
前記内燃機関の実吸気管温度を検出する温度検出手段と、
前記実吸気管温度が前記推定吸気管温度よりも所定量以上低い場合に、前記EGR触媒の過熱を判定する手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、
前記過熱検出手段は、
前記吸気通路へ還流されるEGRガスの流量を取得する手段と、
前記EGRガス流量から導き出される排気空燃比(以下、推定排気空燃比)を取得する手段と、
前記内燃機関の実排気空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記実排気空燃比が前記推定排気空燃比よりも所定量燃料リッチである場合に、前記EGR触媒の過熱を判定する手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、EGR触媒の下流に流れるEGRガスの状態に基づいて、該EGR触媒の過熱が検出される。EGR触媒が過熱されると、該EGR触媒の下流へ流通するEGRガスの状態が変化する。このため、本発明によれば、かかる状態変化に基づいて、EGR触媒の過熱を精度よく検出することができる。
【0011】
第2の発明によれば、実吸気管圧力が推定吸気管圧力よりも所定量以上低い場合に、EGR触媒の過熱が判定される。EGR流量が低下すると、吸気管圧力は低下する。また、EGR触媒が過熱されると、EGR系の圧損の増大によってEGR流量が低下する。このため、本発明によれば、吸気管圧力によってEGRガスの流量低下を判定し、これによりEGR触媒の過熱を精度よく判定することができる。
【0012】
第3の発明によれば、実吸気管温度が推定吸気管温度よりも所定量以上低い場合に、EGR触媒の過熱が判定される。EGRガス温度が低下すると、吸気管温度は低下する。EGR触媒が過熱されると、触媒領域の縮小によってEGRガス温度が低下する。このため、本発明によれば、吸気管温度に基づいてEGRガスの温度低下を判定し、これによりEGR触媒の過熱を精度よく判定することができる。
【0013】
第4の発明によれば、実排気空燃比が推定空燃比よりも所定量燃料リッチである場合に、EGR触媒の過熱が判定される。EGR触媒が過熱されると、触媒の浄化性能低下によってEGRガス中の未燃成分が増加する。このため、排気空燃比は、EGR触媒が過熱されるとリッチ側へずれる。このため、本発明によれば、排気空燃比に基づいてEGRガスの空燃比変化を判定し、これによりEGR触媒の過熱を精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態のシステム構成を説明するための概略構成図である。
【図2】EGR触媒52の温度と各種状態量との関係を示す図である。
【図3】本実施の形態において、EGR触媒52のOTを検出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【図4】条件判定Aのルーチンを示すフローチャートである。
【図5】条件判定Bのルーチンを示すフローチャートである。
【図6】吸気管圧力変化量ΔPとEGR量Geとの関係を示す図である。
【図7】EGR量Geと吸気管温度との関係を示す図である。
【図8】条件判定Cのルーチンを示すフローチャートである。
【図9】A/F学習値の変化を示すタイミングチャートである。
【図10】EGR量Geと噴射量補正量qeとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
実施の形態.
[実施の形態の構成]
図1は、本発明の実施の形態のシステム構成を説明するための概略構成図である。内燃機関10の吸気系は、吸気通路12を備えている。空気は大気中から吸気通路12に取り込まれ、各気筒の燃焼室14に分配される。吸気通路12の入口には、エアクリーナ16が取り付けられている。エアクリーナ16の下流近傍には、吸気通路12に吸入される空気の流量に応じた信号を出力するエアフローメータ72が設けられている。
【0017】
エアフローメータ72の下流には、ターボ過給機20が設けられている。ターボ過給機20は、コンプレッサ20aとタービン20bとを備えている。コンプレッサ20aとタービン20bとは連結軸によって一体に連結され、コンプレッサ20aはタービン20bに入力される排気ガスの排気エネルギによって回転駆動される。
【0018】
コンプレッサ20aの下流には、圧縮された空気を冷却するためのインタークーラ22が設けられている。インタークーラ22の下流には、スロットルバルブ24が配置されている。スロットルバルブ24は、アクセル開度に基づいてスロットルモータにより駆動される電子制御式のバルブである。スロットルバルブ24の近傍には、スロットル開度TAを検出するためのスロットルポジションセンサ74が配置されている。また、インタークーラ22には、該インタークーラ22に流入される空気の温度Tiおよび排出される空気の温度Toを検出するための温度センサ76,78が設けられている。
【0019】
また、スロットルバルブ24の下流には、サージタンク26が設けられている。サージタンク26には、スロットルバルブ24の下流での吸気管圧力を検出するための圧力センサ80および吸気管温度を検出するための温度センサ82が、それぞれ配置されている。
【0020】
また、内燃機関10は、燃料を燃焼室14内に直接噴射するための筒内噴射弁28を備えている。筒内噴射弁28には、高圧燃料ポンプによって高圧化された燃料が供給される。また、内燃機関10は、燃焼室14内に突出するように点火プラグ30が取り付けられている。
【0021】
図1に示すとおり、内燃機関10の排気系は、排気通路40を備えている。また、排気通路40には、タービン20bをバイパスしてタービン20bの入口側と出口側とを接続する排気バイパス通路42が接続されている。排気バイパス通路42の途中には、ウエストゲートバルブ(WGV)44が配置されている。
【0022】
また、タービン20bよりも下流側の排気通路40には、排気ガスを浄化するための排気浄化触媒46が配置されている。排気浄化触媒46としては、三元触媒を用いることができる。また、排気浄化触媒46の上流には、その位置で排気空燃比を検出するためのA/Fセンサ84が配置されている。さらに、タービン20bよりも上流側の排気通路40には、背圧Teを検出するための圧力センサ88が配置されている。
【0023】
更に、内燃機関10の排気系には、排気通路40に接続され、吸気通路12に接続されるEGR通路50が設けられている。EGR通路50の途中には、上記の排気浄化触媒46と同様の構成を有するEGR触媒52が設けられている。EGR触媒52よりも吸気通路12側のEGR通路50には、EGRクーラ54が設けられている。EGRクーラ54は、EGR通路50を流れる排気ガスを、機関冷却水により冷却するように構成されている。更に、EGRクーラ54よりも下流側のEGR通路50には、EGRガスの流量を制御するためのEGRバルブ56が設けられている。
【0024】
また、本実施形態のシステムは、各気筒の吸気弁および排気弁をそれぞれ駆動するための吸気可変動弁機構60および排気可変動弁機構62をそれぞれ備えている。これらの可変動弁機構60,62は、吸気弁および排気弁の開閉時期を調整するためのVVT機構をそれぞれ備えているものとする。
【0025】
本実施の形態の内燃機関システムは、ECU(Electronic Control Unit)70を備えている。ECU70の入力側には、上述したセンサに加え、エンジン回転数を検知するためのクランク角センサ86等の各種センサが接続されている。また、ECU70の出力側には、上述したアクチュエータ等の各種アクチュエータが接続されている。ECU70は、それらのセンサ出力に基づいて、内燃機関10の運転状態を制御することができる。
【0026】
[実施の形態の動作]
(外部EGRの制御)
外部EGRは、EGR通路50を通して、排気ガス(既燃ガス)の一部を吸気通路12へ還流させることにより行われる。より具体的には、内燃機関10の機関回転数や機関負荷率等の運転状態に応じてEGRバルブ56の開度が調整されて、排気ガスがEGR通路50に導入される。導入された排気ガスは、EGR触媒52において浄化される。浄化された排気ガスは、その後EGRクーラ54において冷却され、吸気通路12に還流される。外部EGRが行われると冷損を低減させることができるため、燃料消費率(燃費)を効果的に向上させることができる。
【0027】
ここで、外部EGRが実行されると、内燃機関10の運転状態によってはEGR触媒52が過熱された状態(以下、「触媒OT」とも称する)になる場合がある。触媒OTが発生すると、該EGR触媒における浄化性能が低下することが知られている。このため、EGR触媒52のOTは早期に且つ確実に検出されることが好ましい。
【0028】
本出願の発明者は、EGR触媒52がOTした場合の各種状態量を検出して分析を行った。図2は、EGR触媒52の温度と各種状態量との関係を示す図である。尚、この図においては、EGRクーラ54およびインタークーラ22の性能は一定であり、且つ、EGRバルブ56の開度が一定である場合の状態を示している。
【0029】
図2(A)に示すとおり、EGR触媒52の温度が上昇して所定の上限値を超えると、該EGR触媒52のOTが発生する。図2(B)は、OT前後の吸気管圧力変化を示している。尚、図2(B)中の実線は圧力センサ80によって検出された吸気管圧力の実測値を、点線は内燃機関10の機関回転数および機関負荷から導き出される吸気管圧力の推定値(想定圧力)を、それぞれ示している。図2(B)に示すとおり、OT後の吸気管圧力の実測値は、想定圧力よりも低い値になっている。これは、OTの発生によってEGR触媒52の圧損が増加し、これによりEGR量が低下するためと考えられる。
【0030】
また、図2(C)は、EGR触媒52のOT前後の吸気管温度変化を示している。尚、図2(C)中の実線は温度センサ82によって検出された吸気管温度の実測値を、点線は内燃機関10の機関回転数および機関負荷から導き出される吸気管温度の推定値(想定温度)を、それぞれ示している。図2(C)に示すとおり、OT後の吸気管温度の実測値は、想定温度よりも低い値になっている。これは、OTの発生によって該EGR触媒52の活性領域が縮小し、これによりEGRガス温度が低下するためと考えられる。
【0031】
さらに、図2(D)は、EGR触媒52のOT前後の排気空燃比変化を示している。尚、図2(D)中の実線はA/Fセンサ84によって検出された排気空燃比の実測値を、点線は内燃機関10の機関回転数および機関負荷から導き出される排気空燃比の推定値(想定A/F)を、それぞれ示している。図2(D)に示すとおり、OT後の排気空燃比の実測値は、想定A/Fよりもリッチ側の値になっている。これは、OTの発生によって該EGR触媒52の浄化性能が低下し、これによりEGRガスの空燃比がリッチ側へずれるためと考えられる。
【0032】
このように、EGR触媒52にOTが発生すると、吸気管圧力、吸気管温度、および排気空燃比が、内燃機関10の機関回転数および機関負荷から想定される推定値からずれる。そこで、本実施の形態のシステムでは、吸気管圧力、吸気管温度、および排気空燃比の実測値と想定値とを比較することにより、EGR量の低下、EGRガス温度の低下、およびEGRガス空燃比のリッチズレを判定することとする。そして、それらの判定結果に基づいて、EGR触媒52のOTを検出することとする。これにより、EGR触媒52に別途温度センサを設けることなく、OT発生を検出することが可能となる。
【0033】
[実施の形態の具体的処理]
次に、図3乃至図10を参照して、本実施の形態においてEGR触媒52のOTを検出する具体的処理について説明する。図3は、本実施の形態において、EGR触媒52のOTを検出するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【0034】
図3に示すルーチンでは、先ず、条件判定Aのルーチンが呼び出される(ステップ100)。図4は、条件判定Aのルーチンを示すフローチャートである。このルーチンは、より具体的には、内燃機関10においてEGR量が低下しているか否かを判定するためのルーチンである。上記ステップ100では、この図4に示すルーチンが実行される。
【0035】
図4に示すルーチンでは、先ず、外部EGR制御を実行中か否かが判定される(ステップ200)。その結果、外部EGRを実行中でないと判定された場合には、EGR量の判定を実行することはできないと判断されて、次にステップに移行し、条件判定AのフラグがOFFにされる(ステップ202)。そして、本ルーチンは速やかに終了される。
【0036】
一方、上記ステップ200において、外部EGRを実行中であると判定された場合には、EGR量の判定を実行することができると判断されて、次のステップに移行し、吸気管圧力の推定値Taが演算される(ステップ204)。ここでは、具体的には、先ずクランク角センサ86等の検出信号に基づいて、機関回転数および機関負荷の実測値が取り込まれる。ECU70は、機関回転数および機関負荷と吸気管圧力Taとの関係を規定したマップを記憶している。ここでは、かかるマップに基づいて、取り込まれた機関回転数および機関負荷に対応する吸気管圧力Taが取得される。
【0037】
次に、吸気管圧力の実測値Tbが取り込まれる(ステップ206)。ここでは、具体的には、圧力センサ80の出力信号に基づいて、吸気管圧力Tbが検出される。
【0038】
次に、吸気管圧力の推定値Taと実測値Tbとの差(Ta−Tb)が所定値A以上であるか否かが判定される(ステップ208)。所定値Aは、EGR量が所定量以上低下しているか否かを判定するためのしきい値として予め設定された値が使用される。その結果、(Ta−Tb)≧Aの成立が認められない場合には、EGR量が所定量以上低下していないと判断されて、上記ステップ202に移行し、条件判定AのフラグがOFFにされる。
【0039】
一方、上記ステップ208において、(Ta−Tb)≧Aの成立が認められた場合には、EGR量が所定量以上低下している可能性があると判断されて、次のステップに移行し、内燃機関10の各種状態量の推定値が、保有するマップから取り込まれる(ステップ210)。ここでは、より具体的には、吸入空気量Maの推定値Ma1、インタークーラ22の性能を表す指標値Wの推定値W1、吸気バルブタイミングθiの推定値θi1、排気バルブタイミングθeの推定値θe1、スロットル開度Thの推定値Th1、および背圧Teの推定値Te1がマップから取り込まれる。尚、推定値Wは、インタークーラ22の入口の空気温度Tiおよび出口の空気温度Toを用いて、以下の式(1)から導き出される。
W=(Ti−To)/Ti ・・・(1)
【0040】
次に、内燃機関10の各種状態量の実測値が取り込まれる(ステップ212)。ここでは、より具体的には、吸入空気量Maの実測値Ma2、指標値Wの推定値W2、吸気バルブタイミングθiの推定値θi2、排気バルブタイミングθeの推定値θe2、スロットル開度Thの推定値Th2、および背圧Teの推定値Te2が各種センサの出力信号から取り込まれる。
【0041】
次に、各種状態量の推定値と実測値との差が所定値以下か否かが判定される(ステップ214)。ここでは、具体的には、a2(=Ma1−Ma2)≦a1、b2(=W1−W2)≦b1、c2(=θi1−θi2)≦c1、d2(=θe1−θe2)≦d1、e2(=Th1−Th2)≦e1、およびf2(=Te1−Te2)≦f1の成立が判定される。その結果、これらの成立が認められた場合には、上記ステップ208における吸気管圧差(Ta−Tb)は、上記各種状態量に起因するものではない、すなわち、吸気管圧力差(Ta−Tb)は、EGR量が低下したことにより発生したと判断されて、次のステップに移行し、EGRの低下が判定される(ステップ216)。そして、条件判定AのフラグがONにされて、本ルーチンは終了される。一方、上記ステップ214において、各種状態量の推定値と実測値との差が所定値以下であると認められない場合には、吸気管圧力差(Ta−Tb)は、EGR量の低下以外の要因も含む可能性があるとして、蒸気ステップ202に移行し、条件判定AのフラグがOFFにされる。
【0042】
図4に示すルーチンが終了されると、再び図3に示すルーチンに戻り、条件判定AのフラグがONか否かが判定される(ステップ102)。その結果、条件判定AのフラグがOFFと判定された場合には、EGR量が低下していないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。一方、上記ステップ102において、条件判定AのフラグがONと判定された場合には、EGR量が低下しており触媒OTの可能性があると判断されて、次のステップに移行し、条件判定Bのルーチンが呼び出される(ステップ104)。図5は、条件判定Bのルーチンを示すフローチャートである。このルーチンは、より具体的には、内燃機関10においてEGRガス温度が低下しているか否かを判定するためのルーチンである。上記ステップ104では、この図5に示すルーチンが実行される。
【0043】
図5に示すルーチンでは、先ず、外部EGRが実行されていない場合の吸気管圧力の推定値P0が演算される(ステップ300)。ここでは、具体的には、先ずクランク角センサ86等の検出信号に基づいて、機関回転数および機関負荷の実測値が取り込まれる。ECU70は、機関回転数および機関負荷と吸気管圧力P0との関係を規定したマップを記憶している。ここでは、かかるマップに基づいて、取り込まれた機関回転数および機関負荷に対応する吸気管圧力P0が取得される。
【0044】
次に、吸気管圧力の実測値P1が取り込まれる(ステップ302)。ここでは、具体的には、圧力センサ80の出力信号に基づいて、吸気管圧力P1が検出される。
【0045】
次に、EGR量Geが演算される(ステップ304)。ここでは、具体的には、上記ステップ302において取り込まれた吸気管圧力P1と、上記ステップ300において取り込まれた吸気管圧力の推定値P0との差(P1−P0)ΔPが、吸気管圧力変化量として演算される。図6は、吸気管圧力変化量ΔPとEGR量Geとの関係を示す図である。この図に示すとおり、EGR量Geが増加すると、吸気管圧力変化量ΔPが増加する。ECU70は、図6に示すEGR量Geと吸気管圧力の変化量ΔPとの関係を規定したマップを記憶している。ここでは、かかるマップに基づいて、吸気管圧力変化量ΔPに対応するEGR量Geが特定される。
【0046】
次に、吸気管温度Ttが推定される(ステップ306)。ECU70は、EGR量Geと吸気管温度Ttとの関係を規定したマップを記憶している。ここでは、かかるマップに基づいて、EGR量Geに対応する吸気管温度Ttが特定される。
【0047】
次に、吸気管温度の実測値Tfが取り込まれる(ステップ308)。ここでは、具体的には、温度センサ82の出力信号に基づいて、吸気管温度Tfが検出される。
【0048】
次に、吸気管温度の推定値Ttと実測値Tfとの差(Tt−Tf)が所定値α以上であるか否かが判定される(ステップ310)。図7は、EGR量Geと吸気管温度との関係を示す図である。この図に示すとおり、EGR触媒52の活性領域が縮小している場合には、正常な場合に比して吸気管温度が低下する。これは、EGR触媒52の活性領域が縮小すると、排気管へ還流されるEGRガスの温度が低下するからである。ECU70は、EGR量に対応する所定値αを記憶している。ここでは、具体的には、上記ステップ304において演算されたEGR量Geに対応するαが特定される。
【0049】
上記ステップ310の結果、(Tt−Tf)≧所定値αの成立が認められた場合には、EGRガス温度が低下していると判断されて、次のステップに移行し、条件判定BのフラグがONに設定される(ステップ312)。一方、上記ステップ310において(Tt−Tf)≧所定値αの成立が認められない場合には、EGRガス温度が低下していないと判断されて、次のステップに移行し、条件判定BのフラグがOFFに設定される(ステップ314)。
【0050】
図5に示すルーチンが終了されると、再び図3に示すルーチンに戻り、条件判定BのフラグがONか否かが判定される(ステップ106)。その結果、条件判定BのフラグがOFFと判定された場合には、EGRガス温度が低下していないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。一方、上記ステップ106において、条件判定BのフラグがONと判定された場合には、EGRガス温度が低下しており触媒OTの可能性があると判断されて、次のステップに移行し、条件判定Cのルーチンが呼び出される(ステップ108)。図8は、条件判定Cのルーチンを示すフローチャートである。このルーチンは、より具体的には、内燃機関10においてEGRガスの空燃比がリッチ側へずれているか否かを判定するためのルーチンである。上記ステップ106では、この図8に示すルーチンが実行される。
【0051】
図8に示すルーチンでは、先ず、A/Fの学習値が取り込まれる(ステップ400)。次に、所定時間t内のA/F学習値の変化が所定範囲内か否かが判定される(ステップ402)。図9は、A/F学習値の変化を示すタイミングチャートである。図9に示すとおり、A/F学習値が所定範囲よりも高い場合には、燃料系の流量低下の可能性がある。また、A/F学習値が所定範囲よりも低い場合には、吸気系の漏れの可能性がある。上記ステップ402では、これらの異常の発生有無が判定される。その結果、A/F学習値の変化が所定範囲内でない場合には、EGRガスのA/F判定を精度よく行うことができないと判断されて、条件判定CのフラグがOFFに設定される(ステップ404)。そして、その後速やかに本ルーチンは終了される。
【0052】
一方、上記ステップ402において、A/F学習値の変化が所定範囲内である場合には、EGRガスのA/F判定を精度よく行うことができると判断されて、次のステップに移行し、要求噴射量Qeが演算される(ステップ406)。ここでは、具体低には、上記ステップ304において演算されたEGR量Geに基づいて、噴射量補正値qeが推定される。図10は、EGR量Geと噴射量補正量qeとの関係を示す図である。この図に示すとおり、EGR量Geが増加すると、噴射量補正量qeが増加する。ECU70は、図10に示すEGR量Geと噴射量補正量qeとの関係を規定したマップを記憶している。ここでは、かかるマップに基づいて、EGR量Geに対応する噴射量補正量qeが特定される。次に、噴射量補正量qeに基づいて、要求噴射量Qeが演算される。
【0053】
次に、実噴射量Qiが取り込まれる(ステップ408)。そして、取り込まれた実噴射量Qiと上記ステップ408において演算された要求噴射量Qeとの差に基づいて、排気A/Fの推定値λ1が演算される(ステップ410)。
【0054】
次に、排気A/Fの実測値λ2が取り込まれる(ステップ412)。ここでは、具体的には、A/Fセンサ84の出力信号に基づいて、実A/Fλ2が検出される。
【0055】
次にA/Fのズレ(λ1−λ2)が所定値β以上か否かが判定される(ステップ414)。所定値βは、EGRガスのA/Fが所定量以上リッチ側にずれているか否かを判定するためのしきい値として予め設定された値が使用される。その結果、(λ1−λ2)≧Aの成立が認められない場合には、EGRガスのA/Fが所定量以上リッチ側にずれていないと判断されて、上記ステップ402に移行し、条件判定CのフラグがOFFにされる。
【0056】
一方、上記ステップ208において、(λ1−λ2)≧Aの成立が認められた場合には、EGRガスのA/Fが所定量以上リッチ側にずれていると判断されて、次のステップに移行し、条件判定CのフラグがOFFにされる(ステップ416)。
【0057】
図8に示すルーチンが終了されると、再び図3に示すルーチンに戻り、条件判定CのフラグがONか否かが判定される(ステップ110)。その結果、条件判定CのフラグがOFFと判定された場合には、EGRガスのA/Fがリッチ側にずれていないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。一方、上記ステップ110において、条件判定CのフラグがONと判定された場合には、EGRガスのA/Fがリッチ側にずれており触媒OTの可能性があると判断されて、次のステップに移行し、EGR触媒52のOTが判定される(ステップ112)。図3に示すルーチンでは、次に、触媒OTの対策が実施される(ステップ114)。ここでは、具体的には、例えば、ポート噴射率を上げる処理が実行される。これは、EGR触媒52の浄化性能が低下するとポート内に還流されるPM量が増加して、その結果デポジットが増加するからである。
【0058】
以上説明したとおり、本実施の形態のシステムによれば、EGRガスの状態、すなわちEGRガスの量、温度、およびA/Fに基づいて、EGR触媒52のOTが検出される。これにより、簡易な構成で触媒OTの発生を検出することができる。
【0059】
ところで、本実施の形態では、条件判定A、B、およびCのフラグが全てONに設定されている場合に、EGR触媒52のOTを判定することとしているが、係る判定はこの条件に限られない。すなわち、条件判定A、B、およびBの何れか1つまたは2つの判定を実行することで、該EGR触媒52のOT判定を行うこととしてもよい。
【0060】
尚、上述した実施の形態においては、ECU70が、上記ステップ112の処理を実行することにより、前記第1の発明における「過熱判定手段」が実現されている。
【0061】
また、上述した実施の形態においては、圧力センサ80が前記第2の発明における「圧力検出手段」に相当しているとともに、ECU70が、上記ステップ202の処理を実行することにより、前記第2の発明における「推定吸気管圧力を取得する手段」が、上記ステップ208の処理を実行することにより、前記第2の発明における「EGR触媒の過熱を判定する手段」が、それぞれ実現されている。
【0062】
また、上述した実施の形態においては、温度センサ82が前記第3の発明における「温度検出手段」に相当しているとともに、ECU70が、上記ステップ304の処理を実行することにより、前記第3の発明における「EGRガスの流量を取得する手段」が、上記ステップ306の処理を実行することにより、前記第3の発明における「推定吸気管温度を取得する手段」が、上記ステップ310の処理を実行することにより、前記第3の発明における「EGR触媒の過熱を判定する手段」が、それぞれ実現されている。
【0063】
また、上述した実施の形態においては、A/Fセンサ84が前記第4の発明における「空燃比検出手段」に相当しているとともに、ECU70が、上記ステップ304の処理を実行することにより、前記第4の発明における「EGRガスの流量を取得する手段」が、上記ステップ410の処理を実行することにより、前記第4の発明における「推定排気空燃比を取得する手段」が、上記ステップ414の処理を実行することにより、前記第4の発明における「EGR触媒の過熱を判定する手段」が、それぞれ実現されている。
【符号の説明】
【0064】
10 内燃機関
12 吸気通路
14 燃焼室
16 エアクリーナ
20 ターボ過給機
20a コンプレッサ
20b タービン
22 インタークーラ
24 スロットルバルブ
26 サージタンク
28 筒内噴射弁
30 点火プラグ
40 排気通路
42 排気バイパス通路
46 排気浄化触媒
50 EGR通路
52 EGR触媒
54 EGRクーラ
56 EGRバルブ
60 吸気可変動弁機構
62 排気可変動弁機構
70 ECU(Electronic Control Unit)
72 エアフローメータ
74 スロットルポジションセンサ
76,78 温度センサ
80 圧力センサ
82 温度センサ
84 A/Fセンサ
86 クランク角センサ
88 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路と、
前記EGR通路に配置されたEGR触媒と、
前記EGR通路を流れるEGRガスの流量を調整するためのEGRバルブと、
前記EGR触媒の下流のEGRガスの状態に基づいて、前記EGR触媒の過熱を検出する過熱検出手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記過熱検出手段は、
前記内燃機関の機関回転数と機関負荷とから特定される推定吸気管圧力を取得する手段と、
前記内燃機関の実吸気管圧力を検出する圧力検出手段と、
前記実吸気管圧力が前記推定吸気管圧力よりも所定量以上低い場合に、前記EGR触媒の過熱を判定する手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記過熱検出手段は、
前記吸気通路へ還流されるEGRガスの流量を取得する手段と、
前記EGRガス流量から導き出される吸気管温度(以下、推定吸気管温度)を取得する手段と、
前記内燃機関の実吸気管温度を検出する温度検出手段と、
前記実吸気管温度が前記推定吸気管温度よりも所定量以上低い場合に、前記EGR触媒の過熱を判定する手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記過熱検出手段は、
前記吸気通路へ還流されるEGRガスの流量を取得する手段と、
前記EGRガス流量から導き出される排気空燃比(以下、推定排気空燃比)を取得する手段と、
前記内燃機関の実排気空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記実排気空燃比が前記推定排気空燃比よりも所定量燃料リッチである場合に、前記EGR触媒の過熱を判定する手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−127545(P2011−127545A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287937(P2009−287937)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】