説明

内燃機関の制御装置

【課題】この発明は、内燃機関の制御装置に関し、過給圧を利用するブローバイガス還元装置を備える内燃機関において、エゼクターで吸引するガス量を調節可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】オイル劣化防止のために必要な換気流量(トータル換気流量)に基づいて目標過給圧を設定し、WGV46の開度を制御する。目標過給圧は、トータル換気流量から、スロットルバルブ40下流側の負圧による換気流量を減算し、過給圧による換気流量(エゼクターによる換気流量)を算出する。そして、エゼクターによる換気流量を確保するために必要な駆動流量を算出し、この駆動流量を確保するために必要な駆動圧を算出する。最後に、算出した駆動圧と、目標トルクにより算出される過給圧とを比較し、より高圧な方を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の制御装置に関する。より詳細には、ブローバイガスを処理するブローバイガス還元機構を備える内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関のピストンとシリンダ壁面の隙間からクランクケース内に流入するガスを大気中に放出せずに、吸気マニホルドを経由して内燃機関に再導入して燃焼させるブローバイガス還元装置と、吸入ガスを過給する過給機と、を備える内燃機関が知られている。例えば特許文献1には、内燃機関の吸気通路において過給機のコンプレッサを迂回する迂回通路と、この迂回通路上に設けられたエゼクターと、該エゼクターとクランクケースとを接続するPCV(Positive Crankcase Ventilation)通路と、該迂回通路と該吸気通路との接続点のうち該エゼクター上流側の接続点に設けられた流量調整機と、該流量調整機を制御する制御手段と、を備える内燃機関の制御装置が開示されている。
【0003】
上記特許文献1の制御装置は、クランクケース内のガスを、PCV通路、エゼクター、迂回通路、吸気通路の順に流すことを前提としたものである。この制御装置によれば、流量調整機を制御することで、迂回通路側に流す吸入ガス流量と吸気通路側に流す吸入ガス流量とを任意に調節して、エゼクターの上下流に所望の圧力差を生ぜしめることができる。従って、クランクケース内のガスを所望量だけエゼクターで吸引して内燃機関に再導入させることが可能となる。
【0004】
また従来、過給機を備える内燃機関において、過給圧を利用することでクランクケース内のガスを内燃機関に再導入するブローバイガス還元装置が知られている。例えば特許文献3には、内燃機関の吸気通路において過給機のコンプレッサを迂回する迂回通路と、該迂回通路の途中において該迂回通路とクランクケースとを接続する第1PCV通路と、該迂回通路と該第1PCV通路との接続点に設けたエゼクターと、該コンプレッサ下流側おいて該吸気通路と該クランクケースとを接続する第2PCV通路と、を備えるブローバイガス還元装置が開示されている。
【0005】
上記特許文献3の装置によれば、過給時に、クランクケース内のガスを第1PCV通路を経由させて内燃機関に再導入できる。即ち、過給時においては、コンプレッサの上下流に圧力差が生じるのでエゼクターの上下流に圧力差を生ぜしめることができる。よって、クランクケース内に流入のガスをエゼクターで吸引し、迂回通路、吸気通路の順に流して内燃機関に再導入できる。また、上記特許文献3の装置は、非過給時においては、吸気マニホルド内に生じた負圧により、クランクケース内のガスを第2PCV通路、吸気通路を経由させて内燃機関に再導入できる。故に、上記特許文献3の装置によれば、過給時、非過給時に関係なく、クランクケース内のガスを内燃機関に再導入できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−133292号公報
【特許文献2】特開平6−212939号公報
【特許文献3】特開2011−94557号公報
【特許文献4】特開2008−111422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1の流量調整機は迂回通路側および吸気通路側のそれぞれに流量調整弁を有するものであり、その設置に伴うコスト増加の問題が避けられない。この点、上記特許文献3の装置は、上記流量調整機を非搭載とできるものの、上記特許文献1のようにエゼクターで吸引するガス量を調節するものではない。そのため、過給圧によってはこの吸引ガス量が不足してしまう可能性がある。吸引ガス量が不足すると、クランクケース内の換気が不十分となる。故に、上記特許文献3の装置では、オイル劣化を早める可能性があった。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、過給圧を利用するブローバイガス還元装置を備える内燃機関において、エゼクターで吸引するガス量を調節可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
内燃機関の吸気通路に設けられたコンプレッサを備える過給機と、
前記吸気通路において、前記コンプレッサを迂回する迂回通路と、
前記迂回通路の途中において、前記内燃機関のシリンダヘッドと前記迂回通路とを接続する第1PCV通路と、
前記迂回通路と前記第1PCV通路との接続点に設けられ、前記コンプレッサ上流側における吸気通路内圧と、前記コンプレッサ下流側における吸気通路内圧との圧力差によって、前記第1PCV通路内のブローバイガスを前記迂回通路に導入するエゼクターと、
前記エゼクターを経由して内燃機関に流入させるブローバイガス流量の目標値に応じて、前記過給機による過給圧の目標値を設定する目標過給圧設定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記コンプレッサ下流側おいて、前記吸気通路と前記シリンダヘッドとを接続する第2PCV通路と、
前記第2PCV通路に設けられ、前記コンプレッサ下流側における吸気通路内圧と、前記シリンダヘッド内圧との圧力差に応じてその開度が変化するPCVバルブと、
前記PCVバルブの開度に基づいて、前記第2PCV通路を経由して内燃機関に流入するブローバイガス流量を算出するガス流量算出手段と、を備え、
前記目標過給圧設定手段は、内燃機関の運転状態毎に設定されたブローバイガスの要求流量と、前記ガス流量算出手段により算出したブローバイガス流量とを用いて、前記エゼクターを経由して内燃機関に流入させるブローバイガス流量の目標値を算出し、該ブローバイガス流量の目標値を担保する過給圧のうちの最小値を、前記過給圧の目標値として設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、エゼクターを経由して内燃機関に流入させるブローバイガス流量の目標値に応じて、過給機による過給圧の目標値を設定することができる。そのため、エゼクターで吸引するガス量を調節できる。従って、クランクケース内の換気が不十分となることを良好に抑制できる。
【0012】
第1PCV通路および第2PCV通路を備えるシステムにおいては、両通路にクランクケース内のガスが流通可能である。第2の発明によれば、ガス流量算出手段により第2PCV通路を経由するガス流量を算出できるので、内燃機関の運転状態毎に設定されたブローバイガスの要求流量から、この第2PCV通路を経由するガス流量を除外できる。従って、第1PCV通路を経由するガス流量、即ち、エゼクターを経由して内燃機関に流入させるブローバイガス流量を精度高く算出できる。また、一般に過給圧を上昇させると燃費が悪化するので、目標過給圧設定手段による過給圧の目標値は極力低圧であることが望ましい。この点、第2の発明によれば、エゼクターを経由して内燃機関に流入させるブローバイガス流量の目標値を担保する過給圧のうちの最小値を、この過給圧の目標値として設定するので、換気流量を確保しながら燃費最良となる過給圧を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態のシステム構成を示す図である。
【図2】エゼクター36の構造を説明するための図である。
【図3】無過給域におけるブローバイガスの流れを説明するための図である。
【図4】過給域におけるブローバイガスの流れを説明するための図である。
【図5】実施形態において、ECU60により実行されるルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[システム構成の説明]
以下、図1乃至図5を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態のシステム構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態のシステムは、内燃機関としてのエンジン10を備えている。エンジン10の気筒数および気筒配置は特に限定されない。エンジン10は、内部にピストン12を有するシリンダブロック14を備えている。シリンダブロック14の上部にはシリンダヘッド16が組み付けられている。シリンダヘッド16は、シリンダヘッドカバー18により覆われている。ピストン12上面からシリンダヘッド16までの空間は燃焼室20を形成している。シリンダヘッド16は、燃焼室20と連通する吸気通路22と、排気通路24とを備えている。
【0015】
また、本実施形態のシステムは、過給機26を備えている。過給機26は、排気通路24に設けられたタービン26aと、吸気通路22に設けられたコンプレッサ26bとを備えている。タービン26aとコンプレッサ26bとは相互に連結されている。過給機26の作動時には、排気圧を受けて回転するタービン26aによりコンプレッサ26bが駆動され、コンプレッサ26bにより吸入空気が圧縮、過給される。
【0016】
吸気通路22には、コンプレッサ26bにより過給された吸入空気を冷却するインタークーラ28が設けられている。インタークーラ28よりも上流側の吸気通路22には、コンプレッサ26bをバイパスするエアバイパス通路30,32が設けられている。エアバイパス通路30には、ABV(Air By-pass Valve)34が設けられている。ABV34を開弁することで、過給圧の急激な上昇を防止することができる。エアバイパス通路32には、エゼクター36が設けられている。エゼクター36の詳細な説明については後述する。また、インタークーラ28よりも上流側の吸気通路22には、エアクリーナ38が設けられている。一方、インタークーラ28よりも下流側の吸気通路22には、電子制御式のスロットルバルブ40が設けられている。スロットルバルブ40よりも下流側の吸気通路22には、サージタンク42が設けられている。
【0017】
排気通路24には、タービン26aをバイパスする排気バイパス通路44が設けられている。排気バイパス通路44には、電磁駆動式のWGV(Waste Gate Valve)46が設けられている。WGV46を開弁することで背圧を調節できるので、エンジンのポンプ損失や排気ガスの筒内残留量を抑制できる。
【0018】
また、本実施形態のシステムは、ブローバイガスを還元するブローバイガス還元機構を備えている。ブローバイガスとは、ピストン12とシリンダ壁面の隙間からクランクケース内に流入するガスであり、未燃燃料やオイルミストを含むガスである。このブローバイガス還元機構は、3種類のPCV通路48,50,52を備えている。PCV通路48は、シリンダヘッドカバー18とサージタンク42とを接続する。PCV通路48上には、PCVバルブ54が設けられている。PCVバルブ54は、シリンダヘッドカバー18内圧と、サージタンク42内圧との圧力差によってその開度が変化するように構成されている。PCVバルブ54の近傍には、PCVバルブ54の開度を検出するPCV開度センサ56が設けられている。PCV通路50は、コンプレッサ26bよりも上流側において、シリンダヘッドカバー18と吸気通路22とを接続する。PCV通路52は、エゼクター36の吸入口36aと、シリンダヘッドカバー18とを接続する。
【0019】
また、本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)60を備えている。ECU60の入力側には、PCV開度センサ56の他、スロットルバルブ40の開度を検出するスロットル開度センサ、車両の運転者によるアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ、クランク軸の回転角度(クランク角)を検出するクランク角度センサ等、エンジン10の制御に必要な各種のセンサが接続されている。また、ECU60の出力側には、ABV34、スロットルバルブ40、WGV46等の各種アクチュエータが接続されている。
【0020】
図2は、エゼクター36の構造を説明するための図である。エゼクター36は、吸入口36aと、ノズル部36bと、ディヒューザ部36cと、を備えている。吸入口36aはPCV通路52の一端と接続されている。ノズル部36bは、インタークーラ28側のエアバイパス通路32に接続されている。ディヒューザ部36cは、エアクリーナ38側のエアバイパス通路32に接続されている。図2に矢印で示すように、エゼクター内部に駆動流が流れると、この駆動流によって、吸入口36aからディヒューザ部36cに向かう吸引流を生ぜしめることができる。そのため、PCV通路52内のガスをエアバイパス通路32に導入することができる。
【0021】
[本実施形態の特徴]
図3は、無過給域におけるブローバイガスの流れを説明するための図である。無過給域においては、スロットルバルブ40下流側の負圧を利用した換気が実施される。具体的に、スロットルバルブ40下流側に負圧が生じると、シリンダヘッドカバー18内部と、サージタンク42内部との間に圧力差が生じてPCVバルブ54が開く。そのため、クランクケース内のガスは、シリンダヘッドカバー18、PCV通路48を経由してサージタンク42内に流れ込む。これにより、クランクケース内のガスをエンジン10で再燃焼させることが可能となる。またこのとき、吸気通路22からPCV通路50、シリンダヘッドカバー18を経由して、クランクケース内に新気が流れ込む。よって、クランクケース内部が換気される。
【0022】
図4は、過給域におけるブローバイガスの流れを説明するための図である。過給域においては、非過給域に比してスロットルバルブ40下流側の負圧が小さくなる。そのため、PCV通路48を経由してサージタンク42内に流れ込むガス量が少なくなる。但し、過給域においては、コンプレッサ26b下流側の圧力がその上流側の圧力に比して高圧となる。そのため、エゼクター36内部に駆動流を生ぜしめることができる。よって、クランクケース内のガスをエゼクター36で吸引し、エアバイパス通路32を経由してサージタンク42内に導入できる。またこのとき、吸気通路22からPCV通路50、シリンダヘッドカバー18を経由してクランクケース内に新気が流れ込む。よって、クランクケース内部が換気される。このように、過給域においては、スロットルバルブ40下流側の負圧および過給圧を利用した換気が実施される。
【0023】
ところで、筒内圧が高くなればクランクケース内に流入するガス量が増加し易くなる。そのため、筒内圧が高くなる過給域においては、換気流量を十分に確保することが望ましい。何故なら、換気流量が不十分であると、クランクケース内にガスが蓄積してオイル劣化を助長してしまうからである。ここで、換気流量の確保手法のひとつとして、WGV46の開度制御の実行が挙げられる。WGV46の開度制御を実行してその開度を小さくすれば、タービン26a側に多くの排気ガスを流すことができるので、過給圧を上昇させることができる。過給圧を上昇させることができれば、エゼクター36内部を流す駆動流量を増やすことができるので、より多くのガスをエゼクター36で吸引できる。
【0024】
しかしながら、一般に過給圧の上昇は燃費の悪化を伴うものである。また、上記開度制御を実行すると背圧が上昇するのでポンプ損や内部EGR量が増加してしまう。内部EGR量は高温の筒内残留ガスであるため、内部EGR量が増加すればノッキングが発生し易くなってしまう。そのため、ノッキングを抑制するために点火時期を遅角せざるを得なくなり、エンジン効率が低下してしまう。そこで、本実施形態においては、オイル劣化防止のために必要な換気流量(以下、「トータル換気流量」と称す。)に基づいて過給圧の目標値(以下、「目標過給圧」と称す。)設定し、その上で上記開度制御を実行することとしている。これにより、上記開度制御の実行による過給圧の上昇や、上記付随問題の発生を最小限に留めることが可能となる。
【0025】
本実施形態において、トータル換気流量は、予め適合されたECU60内部のマップ(以下、「トータル換気流量マップ」と称す。)により算出される。トータル換気流量マップは、運転状態(エンジン回転数および負荷率)毎にクランクケース内のNOx濃度を測定し、このNOx濃度を一定値以下とするのに必要な外気流量を求めることで作成されたものである。
【0026】
また、目標過給圧は、以下のように設定される。先ず、トータル換気流量から、スロットルバルブ40下流側の負圧による換気流量(以下、「インマニ圧による換気流量」と称す。)を減算する。上述したように、過給域においては、スロットルバルブ40下流側の負圧および過給圧を利用した換気が実施されるので、この減算値は、過給圧による換気流量(以下、「エゼクターによる換気流量」と称す。)に相当する。なお、インマニ圧による換気流量は、トータル換気流量同様、予め適合されたECU60内部のマップ(以下、「インマニ換気流量マップ」と称す。)により算出される。インマニ換気流量マップは、インマニ圧による換気流量と、PCVバルブの開度との関係を求めることで作成されたものである。
次に、エゼクターによる換気流量を確保するために必要な駆動流量を算出する。この駆動流量は、トータル換気流量同様、予め適合されたECU60内部のマップ(以下、「駆動流量マップ」と称す。)により算出される。駆動流量マップは、エゼクターによる換気流量と、エゼクター内部に流す駆動流量との関係を求めることで作成されたものである。
次に、駆動流量を確保するために必要な駆動圧を算出する。この駆動圧は、駆動流量マップ同様、予め適合されたECU60内部のマップ(以下、「駆動圧マップ」と称す。)により算出される。駆動圧マップは、エゼクター内部に流す駆動流量と駆動圧との関係を求めることで作成されたものである。
最後に、駆動圧マップを用いて算出した駆動圧と、目標トルクにより算出される過給圧とを比較し、より高圧な方を選択する。これにより、目標過給圧が設定される。なお、目標トルクにより算出される過給圧は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に基づいて決定されるものであり、上述した各種マップとは別にECU60内部に格納されたドライバーモデルから算出される。
【0027】
[実施の形態における具体的処理]
次に、図5を参照しながら、上述した機能を実現するための具体的な処理について説明する。図5は、本実施形態において、ECU60により実行されるルーチンを示すフローチャートである。なお、図5に示すルーチンは、定期的に繰り返して実行されるものとする。
【0028】
図5に示すルーチンにおいて、先ず、ECU60は、トータル換気流量を算出する(ステップ110)。具体的に、ECU60は、上記スロットル開度センサやクランク角センサから運転状態を取得し、トータル換気流量マップに適用することでトータル換気流量を算出する。
続いて、ECU60は、インマニ圧による換気流量を算出する(ステップ120)。具体的に、ECU60は、PCV開度センサ56からPCVバルブ54の開度を取得し、インマニ換気流量マップに適用することでインマニ圧による換気流量を算出する。
続いて、ECU60は、エゼクターによる換気流量を算出する(ステップ130)。具体的に、ECU60は、ステップ110で算出したトータル換気流量からステップ120で算出したインマニ圧による換気流量を減算することでエゼクターによる換気流量を算出する。
続いて、ECU60は、エゼクターによる換気流量を確保するために必要な駆動流量を算出する(ステップ140)。具体的に、ECU60は、ステップ130で算出したエゼクターによる換気流量を駆動流量マップに適用することで駆動流量を算出する。
続いて、ECU60は、駆動流量を確保するために必要な駆動圧を算出する(ステップ150)。具体的に、ECU60は、ステップ140で算出した駆動流量を駆動圧マップに適用することで駆動圧を算出する。
最後に、ECU60は、目標過給圧を算出する(ステップ160)。具体的に、ECU60は、駆動圧マップを用いて算出した駆動圧と、目標トルクにより算出される過給圧とを比較し、より高圧な方を選択し目標過給圧として設定する。そして、ECU60は、ステップ160で設定した目標過給圧となるように、WGV46の開度を制御する。
【0029】
以上、図5に示したルーチンによれば、目標トルクやトータル換気流量を確保しつつ、WGV46の開度制御の実行による過給圧の上昇やそれに付随した問題の発生を最小限に留めることが可能となる。
【0030】
なお、上記実施形態においては、PCV通路52が上記第1の発明における「第1PCV通路」に、エゼクター36が上記第1の発明における「エゼクター」に、それぞれ相当する。また、上記実施形態においては、ECU60が図5のステップ130〜160の処理を実行することにより上記第1の発明における「目標過給圧設定手段」が実現されている。
また、上記実施形態においては、PCV通路48が上記第2の発明における「第2PCV通路」に、PCVバルブ54が上記第2の発明における「PCVバルブ」に、それぞれ相当している。また、ECU60が図5のステップ120の処理を実行することにより上記第2の発明における「ガス流量算出手段」が実現されている。
【符号の説明】
【0031】
10 エンジン
22 吸気通路
26 過給機
26a タービン
26b コンプレッサ
30,32 エアバイパス通路
36 エゼクター
36a 吸入口
36b ノズル部
36c ディヒューザ部
48,50,52 PCV通路
54 PCVバルブ
56 PCVバルブ開度センサ
60 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に設けられたコンプレッサを備える過給機と、
前記吸気通路において、前記コンプレッサを迂回する迂回通路と、
前記迂回通路の途中において、前記内燃機関のシリンダヘッドと前記迂回通路とを接続する第1PCV通路と、
前記迂回通路と前記第1PCV通路との接続点に設けられ、前記コンプレッサ上流側における吸気通路内圧と、前記コンプレッサ下流側における吸気通路内圧との圧力差によって、前記第1PCV通路内のブローバイガスを前記迂回通路に導入するエゼクターと、
前記エゼクターを経由して内燃機関に流入させるブローバイガス流量の目標値に応じて、前記過給機による過給圧の目標値を設定する目標過給圧設定手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記コンプレッサ下流側おいて、前記吸気通路と前記シリンダヘッドとを接続する第2PCV通路と、
前記第2PCV通路に設けられ、前記コンプレッサ下流側における吸気通路内圧と、前記シリンダヘッド内圧との圧力差に応じてその開度が変化するPCVバルブと、
前記PCVバルブの開度に基づいて、前記第2PCV通路を経由して内燃機関に流入するブローバイガス流量を算出するガス流量算出手段と、を備え、
前記目標過給圧設定手段は、内燃機関の運転状態毎に設定されたブローバイガスの要求流量と、前記ガス流量算出手段により算出したブローバイガス流量とを用いて、前記エゼクターを経由して内燃機関に流入させるブローバイガス流量の目標値を算出し、該ブローバイガス流量の目標値を担保する過給圧のうちの最小値を、前記過給圧の目標値として設定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96247(P2013−96247A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237241(P2011−237241)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】