説明

内燃機関の吸気制御装置

【課題】 排ガス中のNOxを低減とエンジンの大きなトルクの実現とが両立する吸気制御装置は知られていない。
【解決手段】 内燃機関の吸気制御装置は、燃焼室17に空気を供給する吸気管21と、吸気管に酸素を供給し吸気管の空気と混合させる酸素供給手段25,29と、吸気管に不活性ガスを供給し吸気管の空気と混合させるガス供給手段25,38と、空気と酸素及び/又は不活性ガスとを混合した混合吸気中の酸素濃度を測定する酸素センサ50と、酸素センサからの情報に基づき、酸素供給手段からの酸素供給量及び/又はガス供給手段からの不活性ガス供給量を制御する制御手段31,41,52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室に導入(供給)する吸気中の酸素濃度を制御する吸気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンなどの内燃機関では、吸気(通常は空気即ち大気)を吸気系で燃焼室に導入し、導入した吸気を燃焼室で燃料と混合して可燃混合気を生成する。可燃混合気に点火プラグで点火し爆発により得られるエネルギを動力として利用し、可燃混合気が燃焼した排ガスは排気系を通して車外に排出される。
【0003】
近年、排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)等による大気への影響が問題になっており、NOxの排出を抑制するために種々の技術が開発されている。NOxの発生量は燃焼室内での可燃混合気の燃焼状態と関係があり、燃焼状態を決める一つの要因が吸気系から導入される吸気の成分、特に酸素の濃度である。
【0004】
NOxを低減させるためには吸気中の酸素濃度を低くして、燃焼を抑制すれば良い。そのために従来の内燃機関(特許文献1参照)では、排気系の排ガスを排ガス還流装置(EGR)で吸気系に戻し、吸気と混合している。排ガス中の酸素濃度は空気(大気)のそれよりも低いので、空気と排ガスとを混合した混合吸気の酸素濃度は空気の酸素濃度よりも低くなる。こうして、混合吸気の酸素濃度を下げることにより燃焼を抑制し、NOxの発生量を低減している。
【特許文献1】特開平5−231245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記EGRによるNOxの排出量の低減には以下の問題点がある。第1に、EGRで還流される排ガスは非常に高温であるため、これを吸気系の空気と混合するためには冷却して温度を下げることが必要になる。しかし、そのために冷却手段を取り付ければ、その分コストがかさむのみならず、取り付けスペースが必要となる。
【0006】
第2に、排ガスと吸気との混合によりNOxは低減できても、エンジンの大きな動力の(トルク)を得る上では有効と言えない。つまり、追い越しなどのために加速したいときは可燃混合気の活発な燃焼が必要であるが、酸素濃度が低い排ガスを混合してもトルクはあまり向上しない。これに関連して、排ガス中の窒素や酸素の含有量はエンジンの運転条件により変化し不安定であるので、排ガスを吸気と混合して混合吸気中の窒素濃度及び酸素濃度を所定値に制御するのは困難である。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、排ガス中のNOxを低減できるとともに、大きなトルクが得られるように吸気中の酸素濃度を制御できる、吸気制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(イ)本発明者は、吸気管において、空気(大気)に必要に応じて酸素及び/又は不活性ガスを混合することを着想して本発明を完成した。本発明の内燃機関の吸気制御装置は請求項1に記載したように、内燃機関の燃焼室に空気を供給する吸気管と、吸気管に酸素を供給し空気と混合させる酸素供給手段と、吸気管に不活性ガスを供給し空気と混合させるガス供給手段と、空気と酸素及び/又は不活性ガスとを混合した混合吸気中の酸素濃度を測定する酸素センサと、酸素センサからの情報に基づき酸素供給手段からの酸素供給量及び/又はガス供給手段からの不活性ガス供給量を制御する制御手段と、を備えている。
【0009】
なお、例えば特開2001−182573号公報に記載された燃焼制御装置は、大気から酸素及び窒素を分離する酸素・窒素分離器と、蓄圧室と、燃焼室に臨んで取り付けられたガス噴射弁とを示す。分離した後蓄圧した所定量の酸素を含んだ噴射ガスを燃焼室内(筒内)に噴射している。但し、ガス供給量の確保の点から見ると、公開公報の技術のように噴射ガスを筒内に噴射するよりも、本発明のように酸素及び不活性ガスを吸気管に供給する方が、ガス供給量の確保が容易である。また、実現可能性の高さから見ても、公開公報の技術のように噴射ガスを筒内に噴射するために酸素を高圧にするよりも、本発明のように吸気管に、例えば吸気管上のタンクに供給する方が、実現性が高いと考えられる。
【0010】
(ロ)以下、本発明の内燃機関の吸気制御装置の構成要素の種々の態様を説明する。代表的な内燃機関は車両のエンジンであるが、これに限定されない。ガソリンを燃料とするガソリンエンジンでも、軽油を燃料とするディーゼルエンジンでも良い。吸気制御装置は吸気管、酸素供給手段、ガス供給手段、酸素センサ及び制御手段を備えている。吸気管はその一端が大気に開口し、その他端が燃焼室に接続され、空気(大気)を燃焼室に導入するものである。
【0011】
a.酸素供給手段
酸素供給手段は吸気管の途中に接続され、吸気管内を流れる空気に酸素を混合させ、酸素濃度が高い混合吸気を生成する。酸素濃度の向上により燃焼室内での可燃混合気中の燃焼が活発になる。酸素は分離器で大気から分離したり(第1タイプ)、予め酸素を貯えたタンクから供給できる(第2タイプ)。なお、第1タイプ又は第2タイプの酸素に、酸素を利用するためにEGRで還流させた排ガスを混合しても良い(第3タイプ)。上述したように排ガスは非常に高温であるが、酸素や不活性ガスとともに空気に混合すれば、混合吸気の温度はそれほど上昇しない。また、酸素を排気管や車室内に供給することもできる(第4タイプ)。
【0012】
酸素を供給する際は、吸気管の途中から分離しその後合流する分岐管に大気から酸素及び窒素を分離する分離器を配置したり(aタイプ)、また一端が大気に開口し他端が吸気管の途中に接続された吸気管とは別の第1供給管に分離器や酸素タンクを取り付けること(bタイプ)ができる。
【0013】
b.ガス供給手段は吸気管の途中に接続され、吸気管内を流れる空気に不活性ガスを混合させ、不活性ガス濃度が高い即ち酸素濃度が低い混合吸気を生成する。燃焼室内の可燃混合気中の酸素濃度の低下により燃焼が抑制される。不活性ガスの代表例は窒素であるが、これに限定されない。窒素は分離器で大気から分離したり(第5タイプ)、予め窒素を貯えたタンクから供給できる(第6タイプ)。なお、第5タイプ又は第6タイプの窒素に、窒素を利用するためにEGRで還流させた排ガスを混合しても良い(第7タイプ)。
【0014】
不活性ガスの供給の際は、吸気管の途中から分離し、その後合流する分岐管に上記分離器を配置したり(cタイプ)、また一端が大気に開口し他端が吸気管の途中に接続された上記吸気管及び第1供給管とは別の第2供給管に分離器や窒素タンクを取り付ける(dタイプ)ことができる
混合吸気の成分には四つの態様がある。空気と酸素とから成る混合吸気は、酸素センサで検出された検出酸素濃度が、内燃機関の運転状態に応じてECUが記憶している目標酸素濃度よりも低く、酸素濃度を上げたい場合に有効である。酸素の供給により大気中の酸素濃度(含有量約21%)を上回ることも可能である。一方、空気と不活性ガスとから成る混合吸気中は、検出酸素濃度が目標酸素濃度よりも高く、酸素濃度を下げたい場合に有効である。窒素の供給により大気中の窒素濃度(含有量約78%)を上回ることも可能である。
【0015】
空気、酸素及び不活性ガスから成る混合吸気は両者の中間の場合に有効である。更に、EGRで排ガスを還流させる場合その中に含まれている酸素を又は窒素を利用でき、それにより分離器などから供給する酸素及び窒素の量が少なくできる。なお、排ガス中の酸素量が多すぎるとき分離器などから窒素を供給し、また排ガスの温度が高すぎるときは空気又は分離などから窒素を供給できる。
【0016】
以上要するに、酸素は混合吸気中の酸素濃度の上昇、排気管への供給、及び車室内への供給に利用される。窒素は混合吸気中の酸素濃度の低下や還流する排ガスの温度の低下に利用される。排ガスは空気や酸素又は窒素とともに不活性ガスとして利用できる。なお、空気量、酸素量、窒素量及び排ガス量は混合吸気が所定の酸素濃度となるように、調整すれば良い。
【0017】
c.酸素センサ、制御手段
酸素センサは混合吸気中の酸素の濃度を測定するもので、例えば酸化ジルコニア(ZrO2)を利用できる。ZrO2は酸素イオンを自由に通し酸素イオンと反応して起電力を発生するので、この起電力の大きさを調べることにより酸素濃度を測定できる。但し、酸化ジルコニア以外の汎用の酸素センサを使用できる。
【0018】
酸素濃度の正確な測定のためには、吸気混合気が燃焼室に流入する直前、即ち吸気管の吸気口の上流に配置することが望ましい。排ガス中の酸素濃度と可燃混合気の酸素濃度との間には相関関係があるので、酸素センサを排気管の排気口の下流に配置しても、排ガス中の酸素濃度の測定に基づき混合吸気中の酸素濃度を推測できる。
【0019】
制御手段は酸素センサからの情報に基づき、酸素供給量及び不活性ガス供給量を制御する。具体的には、内燃機関の運転条件に応じた最適の酸素濃度を目標酸素濃度とし、酸素センサで検出された検出酸素濃度を目標酸素濃度と比較する。比較結果に応じて、酸素供給手段及び/又はガス供給手段の開度を調整して、例えばタンクに貯蔵された酸素及び/又は窒素の吸気管への流入量を制御する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の内燃機関の吸気制御装置によれば、通常は排ガス中のNOxを低減でき、しかも必要に応じて内燃機関の大きな動力を得るように吸気を制御できる。つまり、NOxの低減と大きなトルクとが両立できる。また、排ガス中のEGRを利用しないで排ガスの冷却手段が不要であり、構造が簡単でコストが安価になる。
【0021】
請求項2の内燃機関の吸気制御装置によれば、酸素及び窒素を大気から分離するので安価でしかも成分が安定している。請求項3の内燃機関の吸気制御装置によれば、吸気管から分岐管が分岐しているので、一部の空気をそのまま送り、残部を分離器で分離できる。
請求項4の内燃機関の吸気制御装置によれば、分離器で分離されタンクに貯蔵された酸素及び窒素のうちの所定量を、必要に応じて制御手段で制御して吸気管に容易に供給できる。請求項5の内燃機関の吸気制御装置によれば、吸気管の空気にEGRにより排ガスを混合し、排ガスを不活性ガスとして利用でき、その分ガス供給手段の構造が簡単になる。
【0022】
請求項6の内燃機関の吸気制御装置によれば、酸素センサが吸気孔の近くにあるので、混合吸気の酸素濃度を正確に測定できる。請求項7の内燃機関の吸気制御装置によれば、酸素センサの配置に融通性が生ずる。請求項8の内燃機関の吸気制御装置によれば、制御手段の目標酸素濃度に基づき酸素及び不活性ガスの供給量を決めれば、短時間にしかも正確な酸素濃度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の最良の形態による内燃機関の吸気制御装置について説明する。
【0024】
<第1の最良の形態>
(イ)構成
図1にガソリンエンジン及びその吸気系を示す。ガソリンエンジン(以下、「エンジン」と呼ぶ)はシリンダ10、ピストン15、吸気弁25、燃料噴射弁44、排気弁55及び点火プラグ60などを含む。詳述すると、シリンダ10のシリンダブロック11に形成されたシリンダボア12にピストン15が摺動可能に滑合され、ピストン−クランク機構がピストン15の往復運動をクランク16の回転運動に変換している。シリンダボア12の上部空間が燃焼室17を形成している。
【0025】
燃焼室17に接続された吸気管21の途中の分岐点23で第1分岐管24が分岐し、分岐点23よりも下流側の混合槽30で吸気管21に合流している。第1分岐管24上に大気から酸素及び窒素を分離する分離器25が配置され、その下流側に酸素タンク29が配置されている。図2に示すように、分離器25は容器26と、その内部に収容された窒素透過膜27とを含む。両端が閉じた円筒形状の容器26の両端壁に第1分岐管24が接続され、周壁から第2分岐管33が分岐している。円筒形状の窒素透過膜(ゼオライト膜)27が容器と同心的に配置されている。導入された空気のうち、酸素は窒素透過膜27の中空部を軸方向に流れ、窒素は窒素透過膜27を半径方向外向きに透過する。
【0026】
分離器25から分岐し混合槽30に合流する第2分岐路33上に吸引ポンプ35が接続され、分離器25内の空気を半径方向外向きに吸引している。排気管55内を流通する排ガスにより作動される駆動源36が吸引ポンプ35に接続されている。第2分岐管33上の吸引ポンプ35の下流側に窒素タンク38が配置されている。上記酸素タンク29及び窒素タンク38はそれぞれ分離器25で分離された酸素及び窒素を一時的に貯蔵できる。
【0027】
第1分岐路24の終端近傍に第1流量調整弁31が配置され、第2分岐路33の終端近傍に第2流量調整弁41が配置されている。ECU52からの指令で第1流量調整弁31及び第2流量調整弁41の開度を調整することにより、酸素タンク29及び窒素タンク38から吸気管21への酸素の流入量(合流量)を変更できる。
【0028】
図1及び図3において、吸気管21の吸気孔22に配置された吸気弁46はシリンダブロック11を覆うシリンダヘッド13内に収容された駆動機構48により駆動され、所定時期に吸気孔22を開閉する。吸気孔22の付近に燃料を噴射する燃料噴射弁44は燃料パイプ(不図示)を介して燃料タンクと接続されている。
【0029】
混合槽30の下流側で吸気口22の上流側に酸素センサ50が配置され、空気と、酸素及び/又は窒素とが混合した混合吸気中の酸素濃度を測定している。酸素センサ50が接続されたECU52が図4に示す、エンジンの運転状態に応じた最適の酸素濃度を目標酸素濃度として記憶している。図4の低負荷域Aは、回転数が0から約2500rpmで、負荷率0から25%の領域である。この低負荷域Aでは、活発な燃焼が要求されないため、必要とされる酸素量が少ない。また、NOxの排出量が少ないことが必要とされるため、燃焼を促進する要因となる酸素濃度を低下させる必要がある。
【0030】
負荷率が60%を超える領域である高負荷域Cでは、燃焼を促進させる必要があるため、必要とされる酸素量が多くなる。中負荷域Bは低負荷域Aと高負荷域Cとの中間の領域で、特に酸素量の増減が必要とされない。なお、これら低負荷域A、高負荷域B及び中間域Cは、予め適合実験などで最適酸素濃度を導出し、ECU52に記憶しておく。
【0031】
ECU52は第1流量調整弁31及び第2流量調整弁41に接続されこれらの開度を調整する。また、燃焼室17に接続された排気管55の吸気孔56に配置された排気弁58は、シリンダヘッド13内に収容された駆動機構59により駆動され、所定時期に排気孔56を開閉する。上記シリンダヘッド13の頂部に、可燃混合気に点火する点火プラグ60が取り付けられている。
【0032】
(ロ)作用
次に、この吸気制御装置の作用を説明する。吸気工程でシリンダ10内のピストン15が下降し、それに伴い大気(空気)が吸気管21を通して燃焼室17に導入される。吸気管21を流れる空気の一部はそのまま混合槽30に流入し、残部は分岐点23で第1分岐管24に分岐して分離器25に流入する。分離器25において、酸素は窒素透過膜27の中空部を軸方向に流れて酸素タンク29に流入し、窒素は窒素透過膜27を半径方向外向きに通過し第2分岐管33を流れて窒素タンク38に流入し、それぞれ一時的に貯蔵される。
【0033】
吸気管21を流れる空気、第1分岐管24を流れる酸素及び第2分岐管33を流れる窒素が混合槽30で合流され、混合吸気を生成する。吸気管21からの空気供給量は流量調整弁(不図示)の開度で、第1分岐管24からの酸素供給量は第1流量調整弁31の開度で、第2分岐管33からの窒素供給量は第2流量調整弁41の開度で、それぞれ決まる。第1流量調整弁31及び第2流量調整弁41の開度は、酸素センサ50が検知した酸素濃度に基づきECU52が決める。ピストン15が上昇する圧縮行程で点火プラグ60により混合吸気に点火される。
【0034】
時間と酸素濃度との関係を示す図5において、ECU52に記憶された目標酸素濃度がXで、酸素センサ50が検出する検出酸素濃度がYで示されている。例えば車両の発進時は、図4にCで示すように負荷率が高く、図5にx1で示す高い目標酸素濃度に対して、y1で示す酸素センサ50による検出酸素濃度が低い。そのため、ECU52からの指令で第1流量調整弁31を開き、第2流量調整弁41を閉じる。すると、吸気管21を流れる空気に第1分岐路24及び酸素タンク29からの酸素が混合槽30に合流し、混合吸気を生成する。その結果、混合吸気中の酸素濃度が上昇し、図4にy1で示すように検出酸素濃度が上下動(脈動)しながら高い目標酸素濃度x1に近づく。混合吸気と燃料噴射弁44から噴射された燃料とが燃焼室17内で混合された可燃混合気に点火プラグ60で点火されると、可燃混合気が活発に燃焼し、大きなトルクが得られる。
【0035】
これに対して、例えば定常走行時は、図4にAで示すように負荷率が低く、図5の低い目標酸素濃度x2に対して、検出酸素濃度y2が高い。そのため、第1流量調整弁31を閉じ第2流量調整弁41を開くと、吸気管21を流れる空気に第2分岐管33及び窒素タンク38からの窒素が混合槽30で合流し、空気と酸素とで混合吸気が生成される。その結果、図5の検出酸素濃度y2が低下し、低い目標酸素濃度x2に近づき、混合吸気の酸素濃度が下降する。従って、燃焼室17内の可燃混合気に点火プラグ60で点火されると、可燃混合気の燃焼が抑制される。なお、図5の中負荷域Bでは、第1流量制御弁31及び第2調整弁41を何れも半開状態にする。
【0036】
(ハ)効果
この吸気制御装置によれば、以下の効果が得られる。第1に、混合吸気中の酸素濃度をエンジンの運転状態に応じて変更できる。即ち、定常走行時等にNOxを低減したいときは第2分岐管33から窒素を吸気管21の空気中に供給し、混合吸気中の酸素濃度を低くして可燃混合気の燃焼を抑制する。空気中の窒素の含有量は約78%であるが、第2分岐管33からの窒素の供給により含有量を78%に近づけ、必要に応じて78%より多くできる。これに対して、発進時等に大きなトルクを得たい場合は第1分岐管24から酸素を吸気管21の空気に供給し、酸素濃度を高くして可燃混合気を活発に燃焼させる。 空気中の酸素の含有量は約21%であるが、第1分岐管24からの酸素の供給により含有量を21%に近づけ、必要に応じて21%より多くできる。
【0037】
第2に、酸素及び窒素は安価で、含有量は安定し、しかもEGRによる排ガスの利用と異なり冷却は不要である。第1分岐管24から供給する酸素及び第2分岐管33から供給する窒素は、大気を分離器25で分離しているからである。第3に、ECU52による第1流量制御弁31及び第2流量制御弁41の制御が正確である。酸素センサ50を吸気管21の吸気孔22の上流側に配置し、燃焼室17に流入する直前の混合吸気中の酸素濃度を測定し、測定結果をECU52にフィードバックしているからである。
【0038】
<第2の最良の形態>
図6に示す第2の最良の形態は、上記第1の最良の形態と比べて、酸素タンク29から供給する酸素を排気管55に供給する点が異なり、その他の点は同じである。以下、異なる構成を中心に説明する。排気管55の途中にNOxを還元して窒素(N2)に浄化するNOx浄化触媒70が配置されている。酸素タンク29から延びた供給管72の先端が排気管55のNOx浄化触媒70の上流側に接続されている。
【0039】
第2の最良の形態によれば、酸素を排気管55上のNOx触媒70の上流側に供給して排ガスと混合させる。このように供給された酸素とDPFとの組み合わせにより、排ガス中のすすの燃焼を促進できる。なお、酸素タンク29の酸素を車室内に供給することもできる。そうすれば、乗員の脳内の血液中の酸素濃度を上げ、集中力の低下や居眠りを防止できる。
【0040】
<第3の最良の形態>
図7及び図8に示す第3の最良の形態は、上記第1の最良の形態と比べて、混合槽30に、EGRで排ガスを還流させる点が異なる。排ガス中の酸素濃度が比較的高い場合、排ガスを第1分岐管24からの酸素の補助手段として利用するものである。詳述すると、排気管55のNOx浄化触媒70の下流側から延びた環流管80(図6中二点鎖線参照)の先端が混合槽30に接続されている。吸気管21を流れる空気、第1分岐管24を流れる酸素の他に、環流管80により排ガスを混合槽30に還流している。
【0041】
第3の最良の形態において、図8にx1で示すように目標酸素濃度が高いときは、第1流量調整弁31の他に流量調整弁82を開く。すると、第1分岐管21及び環流管82から酸素が供給されるので、酸素センサ50による検出酸素濃度がy1で示すように上昇する。また、目標酸素濃度がx2のように下がったときは、流量調整弁31及び/又は82を閉じる。
【0042】
第3の最良の形態によれば、排ガス中の酸素により混合吸気の酸素濃度を調整できるので、その分第1分岐管24からの酸素供給量が少なくて済む。なお排ガスは高温であるが、酸素とともに空気に混合され混合吸気中に占める排ガスの量は少ないので、混合吸気の温度がそれほど上昇する心配はない。
【0043】
<変形例>
以下、上記最良の形態における変形例を示す。
【0044】
第1変形例として、上記第1から第3の最良の形態において、大気から酸素及び窒素を分離する上記分離器25の代わりに、図9に示す分離器100を使用することができる。この分離器は、両端が閉じた円筒形状のケース102の軸方向中間部に円板形状の酸素透過膜104が配置されている。
【0045】
第2変形例として、上記第1から第3の最良の形態において、酸素及び窒素は分離器25などの代わりに、貯蔵タンクから供給することができる。図10に示すように、第1分岐管24に酸素タンク110を接続し、第2分岐管33に窒素タンク115を接続すれば良い。このようにすれば、分離器25等が不要となり、その分コストを低減できる。
【0046】
第3変形例として、上記第1から第3の最良の形態において、酸素センサ50は、吸気管21の代わりに、排気管55に取り付けることもできる。図11に示すように、排気管55の排気孔56の下流に酸素センサ50を取り付け、測定結果をECU52に出力する。排ガス中の酸素濃度と混合吸気中の酸素濃度との間には相関関係があるので、排ガス中の酸素濃度に基づき酸素及び窒素の供給量を決めても、大きな測定誤差は生じない。
【0047】
第4変形例として、上記第3の最良の形態において、図12に示すように混合槽30の下流側に酸素センサ50の他に温度センサ120を設け、その出力をECU52に出力する。EGRで還流される高温の排ガスは通常冷却手段で冷却されるが、冷却が不十分なことがある。そこで、混合槽30の下流側に配置した温度センサ120で混合吸気の温度を検知する。
【0048】
検出温度Yが目標温度Xを超えたときは、流量調整弁82を閉じて環流管80からの排ガスの還流量を減らすとともに、流量調整弁41を開いて第2分岐管33から窒素を供給する。窒素を供給した結果、Yで示すように混合吸気の温度が目標温度まで低下する。この変形例では、排ガスを不活性ガスとして利用でき、しかもその冷却手段が簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の最良の形態による内燃機関の吸気制御装置の全体説明図である。
【図2】図1における2−2断面図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】第1の最良の形態のECUの記憶内容の説明図である。
【図5】第1の最良の形態の作動説明図である。
【図6】第2の最良の形態の吸気制御装置の説明図である。
【図7】第3の最良の形態の吸気制御装置の要部説明図である。
【図8】同じく作動説明図である。
【図9】第1変形例の構成説明図である。
【図10】第2変形例の構成説明図である。
【図11】第3変形例の構成説明図である。
【図12】第4変形例の構成説明図である。
【図13】第4変形例の作動説明図である。
【符号の説明】
【0050】
10:シリンダ 15:ピストン
21:吸気管 22:吸気孔
24:第1分岐管 25:分離器
28:酸素タンク 31:第1流量調整弁
33:第2分岐管 38:窒素タンク
41:第2流量調整弁 44:燃料噴射弁
50:酸素センサ 52:ECU
60:点火プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室(17)に空気を供給する吸気管(21)と、
前記吸気管に酸素を供給し前記吸気管の空気と混合させる酸素供給手段(25,29)と、
前記吸気管に不活性ガスを供給し前記吸気管の空気と混合させるガス供給手段(25,38)と、
空気と酸素及び/又は不活性ガスとを混合した混合吸気中の酸素濃度を測定する酸素センサ(50)と、
前記酸素センサからの情報に基づき、前記酸素供給手段からの酸素供給量及び/又は前記ガス供給手段からの不活性ガス供給量を制御する制御手段(31,41,52)と、
を備えることを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
【請求項2】
前記酸素供給手段が供給する酸素は空気から分離され、前記ガス供給手段が供給する不活性ガスは大気から分離した窒素である請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項3】
前記吸気管の途中から分岐した後吸気管に合流した分岐管(24)に、空気から酸素及び窒素を分離する分離器(25)が配置されている請求項2に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項4】
前記分岐管に、前記分離器で分離された酸素及び窒素を一時的に貯蔵する二つのタンク(29,38)が設けられ、該タンクに貯蔵した酸素及び/又は窒素を、必要に応じて前記制御手段で制御して前記吸気管に供給する請求項3に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項5】
排ガスを排出する排気管(55)から排ガス還流装置(80,82)により排ガスを前記吸気管に還流させる請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項6】
前記酸素センサ(50)は吸気管(21)の吸気孔(22)の上流に配置されている請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項7】
前記酸素センサ(50)は排ガスを排出する排気管(55)の排気口(56)の下流に配置されている請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は内燃機関の運転状態に応じた目標酸素濃度を記憶している請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−220038(P2006−220038A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33189(P2005−33189)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】