説明

内燃機関の吸気系構造

【課題】本発明は、インタークーラ内の凝縮水を適切に処理し、腐食及び異音を防止することのできる内燃機関の吸気系構造を提供する。
【解決手段】インテークマニフォールド(12)内に、EGR通路(17)の導入口方向視で、導入口(17a)と凝縮水導入板(19a)とがオーバラップし、排出部(19e)が反導入口側となるように凝縮水導入部(19)が配設される。また、凝縮水導入部(19)は、導入口(17a)よりEGRガスが未導入である時には凝縮水導入板(19a)が吸入空気の流れ方向と平行となるように、そしてEGRが導入されるとEGRガスの流量により反導入口側方向への回転度合いが変化するようにコイルバネ(20)の付勢力によって調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気系構造に係り、特に、吸気系に滞留する凝縮水の排出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンでは、エンジンから排出される排気ガス中の窒素酸化物(NOx)及びスモーク(煤)を低減するために排気ガスを吸気へ再循環させる排気再循環(EGR)装置が設けられている。そして、近年はNOxの大幅な低減要求に対し、吸気へ大量に排気ガスを導入することが求められており、EGR装置は、排気通路の排気触媒の下流と吸気通路の過給機の上流とをEGRクーラを介してEGR通路で接続し、過給機の上流に低温低圧の排気ガスを吸気に導入することが知られている。
【0003】
しかしながら、エンジンからの排気ガスには、燃料と空気との混合気が燃焼することで発生する水蒸気と燃料中に含まれる硫黄分とが含まれている。そして、吸気通路の過給機の上流に排気ガスを導入するEGR装置では、硫黄分及び水蒸気が含まれる排気ガスが過給機の上流に導入され、吸入空気と共に過給機で加圧された後にインタークーラにて冷却される。この時に水蒸気は、インタークーラで冷却されることで凝縮し凝縮水となり、インタークーラ内に滞留する。そして、滞留した凝縮水に排気ガス中の硫黄分が溶け込み強度の酸性の凝縮水が生成される。
【0004】
このようにインタークーラ内に強度の酸性の凝縮水が滞留すると、インタークーラは放熱性の良いアルミ材等で形成されているのでインタークーラを腐食させる虞がある。また、凝縮水がインタークーラ内で暴れることにより異音が生じる虞がある。
そこで、特許文献1では、インタークーラに滞留した凝縮水をポンプで抜き取り、中和剤を用いて凝縮水を中和し、中和した凝縮水を吸気通路の過給機の上流に戻して、インタークーラ内の凝縮水を処理し、インタークーラの腐食及び凝縮水による異音を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−92005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術では、中和した凝縮水を吸気通路の過給機の上流に戻すようにしている。
しかしながら、吸気通路の過給機の上流に中和した凝縮水を戻すと、再度インタークーラ内で凝縮し、再度凝縮水に硫黄分が溶け込み強度の酸性の凝縮水を生成される虞があり好ましいことではない。
【0007】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、インタークーラ内の凝縮水を適切に処理し、腐食及び異音を防止することのできる内燃機関の吸気系構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の内燃機関の吸気系構造では、吸気通路に吸入空気を過給する過給手段と、過給した前記吸入空気を冷却する冷却手段と、前記吸気通路の前記過給手段の上流に排気ガスを導入する上流側排気再循環手段と、前記吸気通路の前記冷却手段の下流に排気ガスを導入する下流側排気再循環手段とを備える内燃機関の吸気系構造において、前記吸気通路内であって、前記吸気通路の前記冷却手段の下流に前記排気ガスを導入する前記下流側排気再循環手段の導入部と対向する箇所に、前記冷却手段と連通し該冷却手段より凝縮水を導入する凝縮水導入手段を配設することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の内燃機関の吸気系構造では、請求項1において、前記凝縮水導入手段は、前記下流側排気再循環手段の前記導入部より導入される前記排気ガスの流量の増加に伴い、前記吸気通路内に導入する前記凝縮水の流量を増加することを特徴とする。
また、請求項3の内燃機関の吸気系構造では、請求項1或いは2において、前記凝縮水導入手段は、一方の側面に前記凝縮水を前記吸気通路に排出する排出部を有する中空の板状に形成される板部を有し、他方の側面が前記吸気通路内の前記下流側排気再循環手段の前記導入部と対向するように配設されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の内燃機関の吸気系構造では、請求項3において、前記凝縮水導入手段の下流であって、前記下流側排気再循環手段が接続される側の前記吸気通路の壁面に、前記吸気通路内の排気ガスの濃度を検出する濃度検出手段を配設することを特徴とする。
また、請求項5の内燃機関の吸気系構造では、請求項3或いは4において、前記凝縮水導入手段は、前記板部の吸気流れ方向の上流部に、前記板部と連通し前記板部を前記吸気通路内で回転可能に支持する支持部と、前記板部の回転度合いに基づいて前記排出部の開口面積を変化させる排出部可変手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、吸気通路内であって、吸気通路の冷却手段の下流に排気ガスを導入する下流側排気再循環手段の導入部と対向する箇所に、冷却手段と連通し冷却手段より凝縮水を導入する凝縮水導入手段を配設している。
このように凝縮水導入手段を配設することで、吸気通路内が負圧である時に排気ガスを導入して、排気ガスにて凝縮水導入手段を加熱することが可能となる。そして、冷却手段内に滞留した凝縮水を加熱された凝縮水導入手段に導入することで凝縮水を加熱して水蒸気とし、吸気通路内に導入することができる。
【0012】
したがって、冷却手段内に滞留した凝縮水を水蒸気化し内燃機関の燃焼室に直接導入することができるので、水蒸気化した凝縮水が再凝縮を起こすことなく凝縮水を適切に処理し、凝縮水による冷却手段の腐食や凝縮水の滞留による異音を防止することができる。
また、請求項2の発明によれば、下流側排気再循環手段の導入部より導入される排気ガスの流量の増加に伴い、吸気通路内に導入する凝縮水の流量を増加するようにしており、排気ガスの流量が多い場合には、凝縮水導入手段に伝達することが可能な排気ガスの熱量が多くなるので、多くの凝縮水を加熱することが可能となる。
【0013】
したがって、排気ガスの流量の増加に伴い、凝縮水の流量を増加し多くの凝縮水を水蒸気化して、吸気通路内に導入することができる。
よって、冷却手段内に滞留した凝縮水を効率よく短期間に処理することができる。
また、請求項3の発明によれば、凝縮水導入手段は、一方の側面に凝縮水を吸気通路に導入する導入口を有する中空の板状に形成される板部を有し、そして、他方の側面が吸気通路内の下流側排気再循環手段の導入部と対向するように配設している。
【0014】
したがって、凝縮水導入部の板部に排気ガスを接触させることで、排気ガスとの接触面積を増加させ、板部が排気ガスから効率よく受熱することができるので、効率よく凝縮水を水蒸気化することができる。
また、請求項4の発明によれば、濃度検出手段を凝縮水導入手段の下流であって、下流側排気再循環手段が接続される側の吸気通路の壁面に設けている。
【0015】
このように、濃度検出手段を凝縮水導入手段の下流に設けることにより、水蒸気化した凝縮水及び水蒸気化せずに液状の状態の凝縮水が凝縮水導入手段によって内燃機関の燃焼室に直接導入されるように誘導されるので、水蒸気化した凝縮水及び水蒸気化せずに液状の状態の凝縮水が濃度検出手段に直接触れることを防止することができる。
したがって、水蒸気状或いは液状の状態の凝縮水の接触による濃度検出手段の故障を防止することができる。
【0016】
また、請求項5の発明によれば、凝縮水導入手段を板部の吸気流れ方向の上流部に、板部と連通し板部を吸気通路内で回転可能に支持する支持部と、板部の回転度合いに基づいて排出部の面積を変化させる排出部可変手段とを有している。
このように、吸気通路内で板部を回転可能とし、板部の回転度合いに基づいて排出部の開口面積を変化させることで、下流側排気再循環手段の導入部から導入される排気ガスの流量により、板部が回転し排出部の開口面積が変化し、排出部より排出される凝縮水の流量を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に第1実施例に係る内燃機関の吸気系構造が適用されたエンジンの概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る図1のA部の拡大図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る図2のB−B線での断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る図1のA部の拡大図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る凝縮水導入部の展開図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る凝縮水導入板の正面図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る流量調整板の正面図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る凝縮水導入部の非作動時を示す図である。
【図9】本発明の第2実施例に係る凝縮水導入部の作動時を示す図である。
【図10】本発明の第3実施例に係る凝縮水導入板の正面図である。
【図11】本発明の第3実施例に係る流量調整板の正面図である。
【図12】本発明の第4実施例に係る凝縮水導入板の正面図である。
【図13】本発明の第4実施例に係る流量調整板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施例の実施の形態を図面に基づき説明する。
[第1実施例]
図1は、内燃機関の吸気系構造が適用されたエンジンの概略構成図である。また、図2は、本発明の第1実施例に係る図1のA部の拡大図である。そして、図3は、図2のB−B線での断面図である。図中太黒塗り矢印は、EGRガスの流れを、白抜き矢印は、吸入空気の流れを、細矢印は、凝縮水の流れをそれぞれ示す。また、図中二点鎖線は、EGRガスによる回転後の凝縮水導入部の一例を示す。
【0019】
図1に示すように、エンジン(内燃機関)1は、多気筒の筒内直接噴射式内燃機関(例えばコモンレール式ディーゼルエンジン)であり、詳しくは、コモンレールに蓄圧された高圧燃料を各気筒の燃料噴射ノズル2に供給し、任意の噴射時期及び噴射量で当該燃料噴射ノズル2から各気筒の燃焼室3内に噴射可能な構成を成している。
エンジン1の各気筒には、上下摺動可能なピストン4が設けられている。そして、当該ピストン4は、コンロッド5を介してクランクシャフト6に連結されている。また、クランクシャフト6の一端部には回転速度を検出するクランク角センサ7と図示しないフライホイールが設けられている。
【0020】
燃焼室3には、インテークポート8とエキゾーストポート9とが連通されている。
インテークポート8には、燃焼室3と当該インテークポート8との連通と遮断を行うインテークバルブ10が設けられている。また、エキゾーストポート9には、燃焼室3と当該エキゾーストポート9との連通と遮断とを行うエキゾーストバルブ11が設けられている。
【0021】
インテークポート8の上流には、吸入した空気を各気筒に分配するインテークマニフォールド(吸気通路)12が連通するように設けられている。
インテークマニフォールド12の各気筒に吸入空気を分配するための分岐の上流部には、屈曲部12aが形成されている。そして、屈曲部12aには、酸素濃度を検出する空燃比センサ(濃度検出手段)13が設けられている。また、屈曲部12aの下流には、燃焼室3に吸入される吸入空気の圧力を検出するブーストセンサ14と、該吸入空気の温度を検出する吸気温度センサ15とがインテークマニフォールド12内に突出するように設けられている。
【0022】
インテークマニフォールド12とエキゾーストマニフォールド16には、それぞれが連通するように高温の排気ガスの一部を吸気へ戻すEGR通路(下流側排気再循環手段)17が設けられている。また、EGR通路17は、インテークマニフォールド12の屈曲部12aの上流であって、屈曲部12aの外側方向となる壁面に接続されている。また、EGR通路17には、排気ガスが吸気に戻る量、即ちEGRの流量を調整するEGRバルブ(下流側排気再循環手段)18が設けられている。そして、高温のEGRガスは、EGR通路17の導入口(導入部)17aよりインテークマニフォールド12内に導入される。
【0023】
インテークマニフォールド12の屈曲部12aの上流であって、EGR通路17とインテークマニフォールド12との接続部12bの近傍には、EGR通路17の導入口17aより導入される高温の排気ガス(EGRガス)を屈曲部12aに導くための凝縮水導入部(凝縮水導入手段)19が設けられている。
凝縮水導入部19は、凝縮水導入板(板部)19aと、支持軸(支持部)19bと、コイルバネ20と、角度センサ21とで構成されている。
【0024】
凝縮水導入板19aは、中空の薄板状で形成されている。そして、凝縮水導入板19aの吸気流れ方向の上流端部には、一方が開口した導入部19cを有する中空軸の支持軸19bと連通するように一体で形成されている。また、凝縮水導入板19aの一方の側面19dには、中空の薄板状の内部と貫通し、凝縮水を排出する排出部19eが設けられている。
【0025】
コイルバネ20は、凝縮水導入板19aの回転度合いを調整するものである。
角度センサ21は、凝縮水導入板19aの回転度合いを検出するものである。
このように構成される凝縮水導入部19は、EGR通路17の導入口17a方向視で、凝縮水導入板19aが当該導入口17aとオーバラップし、凝縮水導入板19aの排出部19eが反導入口側となるように支持軸19bを介して回転可能にインテークマニフォールド12内の径方向に横断して配設される。また、支持軸19bの閉塞した一端部には、導入口17aよりEGRガスが未導入である時に凝縮水導入板19aが吸気流れ方向と平行となるように付勢力を発生し、また、EGRガスの流量に応じて凝縮水導入板19aのEGR通路17の反導入口側方向への回転度合いを調整するようにコイルバネ20が配設される。更に支持軸19bに配設されるコイルバネ20の外側の支持軸19bには、角度センサ21が配設される。
【0026】
インテークマニフォールド12の上流には、最上流から吸入された新気中のゴミを取り除くエアークリーナ22、排気ガスのエネルギを利用し吸入された新気を圧縮するターボチャージャ(過給手段)23の図示しないコンプレッサハウジングと、圧縮され高温となった新気を冷却するインタークーラ(冷却手段)24と、新気の流量を調整する電子制御スロットルバルブ25と、EGR通路17より導入される高温のEGRガスの流量を調整するための電子制御スロットルバルブ(通路面積可変手段)26が吸気管27を介してインテークマニフォールド12に接続されている。また、電子制御スロットルバルブ25,26には、スロットルバルブの開き度合を検出するスロットルポジションセンサ28,29がそれぞれ備えられている。
【0027】
また、インタークーラ24には、ターボチャージャ23にて圧縮されたEGRガスを含んだ吸気を冷却することにより発生する凝縮水を排出する排出部24aが設けられている。そして、当該排出部24aと凝縮水導入部19の支持軸19bの導入部19cとは、凝縮水導入管30を介して連通して接続されている。
エアークリーナ22の下流でありターボチャージャ23のコンプレッサハウジングの上流の吸気管27には、燃焼室3に吸入される新気の流量を検出するエアーフローセンサ31が吸気管27内に突出するように設けられている。
【0028】
エキゾーストポート9の下流には、各気筒から排出される排気ガスをまとめるエキゾーストマニフォールド16と、ターボチャージャ23に排気ガスを導入する図示しないタービンハウジングと、排気管32とが連通するように設けられている。
排気管32には、上流から順番に排気ガス中の炭化水素(THC)或いは一酸化炭素(CO)等の被酸化成分を酸化する酸化触媒33と、排気ガス中の黒鉛を主成分とする微粒子状物資(PM)を捕集し燃焼させるディーゼルパティキュレートフィルタ34とが連通するように設けられている。
【0029】
排気管32の酸化触媒33の下流でありディーゼルパティキュレートフィルタ34の上流と、ディーゼルパティキュレートフィルタ34の下流には、ディーゼルパティキュレートフィルタ34の前後での圧力を検出する圧力センサ35,36が排気管32内に突出するように設けられている。
吸気管27の電子制御スロットルバルブ25とターボチャージャ23との間と、排気管32のディーゼルパティキュレートフィルタ34の下流には、それぞれが連通するように低温の排気ガスの一部を吸気へ戻すEGR通路(上流側排気再循環手段)37が設けられている。また、EGR通路37には、排気ガスが吸気に戻る量、即ちEGRの流量を調整するEGRバルブ(上流側排気再循環手段)38と、吸気へ戻す排気を冷やすEGRクーラ(上流側排気再循環手段)39とが設けられている。
【0030】
そして、燃料噴射ノズル2、クランク角センサ7、角度センサ21、空燃比センサ13、電子制御スロットルバルブ25,26、スロットルポジションセンサ28,29、エアーフローセンサ31、ブーストセンサ14、吸気温度センサ15、圧力センサ35,36及びEGRバルブ18,38等の各種装置や各種センサ類は、エンジン1の総合的な制御を行うための制御装置であって入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、タイマ及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成される電子コントロールユニット(ECU)40と電気的に接続されており、当該ECU40は各種センサ類からの各情報に基づき各種装置を作動制御する。
【0031】
ECU40の入力側には、クランク角センサ7、空燃比センサ13、ブーストセンサ14、吸気温度センサ15、角度センサ21、スロットルポジションセンサ28,29、エアーフローセンサ31、及び圧力センサ35,36等のセンサ類が電気的に接続されており、これら各種装置及び各種センサ類からの検出情報が入力される。
一方、ECU40の出力側には、燃料噴射ノズル2、電子制御スロットルバルブ25,26及びEGRバルブ18,38が電気的に接続されている。
【0032】
これより、ECU40は、各センサの検出値に基づき、燃料噴射ノズル2からのプレ噴射、メイン噴射及びアフタ噴射の燃料噴射量、噴射時期及びEGRバルブ18、38や電子制御スロットルバルブ25,26の開度等を最適に制御し、エンジン1を高精度に制御する。
このように本発明の第1実施例に係る内燃機関の吸気系構造では、図2に示すように、インテークマニフォールド12内には、EGR通路17の導入口17a方向視で導入口17aと、インタークーラ24の排出部24aと凝縮水導入管30と支持軸19bとを介して連通して接続される凝縮水導入板19aとがオーバラップし、凝縮水導入板19aの排出部19eが反導入口側となるように凝縮水導入部19を配設している。また、凝縮水導入部19は、導入口17aより高温のEGRガスが未導入である時には凝縮水導入板19aが吸入空気の流れ方向と平行となるように、そして導入口17aより高温のEGRが導入されると高温のEGRガスの流量により凝縮水導入板19aの反導入口側方向への回転度合いが変化するようにコイルバネ20の付勢力によって凝縮水導入板19aの回転度合いを調整している。
【0033】
そして、電気制御スロットルバルブ26の作動によって、インテークマニフォールド12内の圧力がインタークーラ24内の圧力より低くなると、インタークーラ24より凝縮水導入管30と支持軸19bとを介して凝縮水導入部19の凝縮水導入板19aに凝縮水が導入する。また、導入口17aより導入される高温のEGRによって、凝縮水導入板19aが熱せられる。そして、凝縮水導入板19a内の凝集水が水蒸気化し、凝縮水導入板19aの排出部19eよりインテークマニフォールド12内に排出し、エンジン1の燃焼室3に導入している。
【0034】
したがって、電気制御スロットルバルブ26の作動によって、インテークマニフォールド12内の負圧を調整して、凝縮水導入部19に導入される凝縮水の流量を調整し、凝縮水導入板19aを用いることで高温のEGRガスとの接触面積を増加させ、高温のEGRガスの熱により凝縮水を効率よく水蒸気化しエンジン1の燃焼室3に直接導入することができるので、水蒸気化した凝縮水が再凝縮を起こすことなく効率良く凝縮水を適切に処理し、凝縮水によるインタークーラ24の腐食や凝縮水の滞留による異音を防止することができる。
【0035】
また、空燃比センサ13を凝縮水導入部19の下流のインテークマニフォールド12の屈曲部12aに設け、凝縮水導入部19の凝縮水導入板19aを導入口17aより導入される高温のEGRガスの流量により反導入口側方向への回転度合いが変化するようにしており、導入された凝縮水が直接空燃比センサ13に接触することがないので空燃比センサ13の故障を防止することができる。
[第2実施例]
以下、本発明の第2実施例に係る内燃機関の吸気系構造について説明する。
【0036】
第2実施例では、上記第1実施例に対して、凝縮水導入部の構造を変更しており、以下に上記第1実施例と異なる凝縮水導入部の構造に付いて説明する。
図4は、本発明の第2実施例に係る図1のA部の拡大図である。また、図5は、凝縮水導入部の展開図である。そして、図6は、凝縮水導入板の正面図を、図7は流量調整板の正面図である。また、図8は、凝縮水導入部の非作動時を、図9凝縮水導入部の作動時を示す図である。なお、図中太黒塗り矢印及び太矢印は、EGRガスの流れを、白抜き矢印は、吸入空気の流れを、細線矢印は、凝縮水の流れをそれぞれ示す。
【0037】
図4及び5に示すとおり、凝縮水導入部(凝縮水導入手段)119は、凝縮水導入板(板部)119aと、支持軸(支持部)119bと、コイルバネ120と、角度センサ121とに加え、流量調整板(排出部可変手段)141と移動量調整板142とで構成されている。
凝縮水導入板119aは、図5及び図6に示すように、第1実施例と同様に、中空の薄板状で形成されている。そして、凝縮水導入板119aの吸気流れ方向の上流端部には、一方が開口した導入部119cを有する中空軸の支持軸119bと連通するように一体で形成されている。また、凝縮水導入板119aの一方の側面119dには、支持軸119bと直交し、反支持軸側が開放した断面が凸字状の挿入溝119fが形成されている。そして、挿入孔119fには、中空の薄板状の内部と貫通し、凝縮水を排出する排出部119eが設けられている。
【0038】
コイルバネ120は、第1実施例と同様に、凝縮水導入板119aの回転度合いを調整するものである。
角度センサ121は、第1実施例と同様に、凝縮水導入板119aの回転度合いを検出するものである。
流量調整板141は、図5及び図7に示すように、側面視で略L字形状の薄板で形成されている。また、L字形状の長辺側の面141aには、凝縮水導入板119aの排出部119eの面積よりも大きな面積の調整部(開口部)141bが形成されている。更に流量調整板141は、調整部方向視で略L字形状となるように短辺側の面141cが形成されている。
【0039】
移動量調整板142は、図5に示すように、薄板で略L字形状に形成されている。
このように構成される凝縮水導入部119は、EGR通路17の導入口17a方向視で、凝縮水導入板119aが当該導入口17aとオーバラップし、凝縮水導入板119aの排出部119eが反導入口側となるように支持軸119bを介して回転可能にインテークマニフォールド12内の径方向に横断して配設される。また、支持軸119bの閉塞した一端部には、導入口17aよりEGRガスが未導入である時に凝縮水導入板119aが吸入空気の流れ方向と平行となるように付勢力を発生し、また、EGRガスの流量に応じて凝縮水導入板119aのEGR通路17の反導入口側方向への回転度合いを調整するようにコイルバネ120が配設されている。更に支持軸119bに配設されるコイルバネ120の外側の支持軸119bには、角度センサ121が配設されている。そして、凝縮水導入板119aの挿入溝119fには、流量調整板141のL字形状の長辺側の面141aが、L字形状の短辺側の面141eが吸気流れ方向の下流方向で、当該短辺側の面141eが反凝縮水導入板側となるように挿入されている。また、移動量調整板142は、図4及び図5に示すように、L字形状の短辺側の面142aが凝縮水導入板119aと対向する位置で、L字形状の長辺側の面142bが流量調整板141の調整部方向視で略L字形状の短辺側の面141cの吸気流れ方向の上流側に当接するようにインテークマニフォールド12内に配設されている。
【0040】
このように本発明の第2実施例に係る内燃機関の吸気系構造では、導入口17aより高温のEGRガスが未導入或いは高温のEGRガスの流量が少ない時には、図8に示すように、凝縮水導入板119aは回転せずに吸入空気の流れ方向と平行、或いは凝縮水導入板119aは回転度合いが小さく、凝縮水導入板119aの排出部119eは、流量調整板141により塞がれ、凝縮水のインテークマニフォールド12内への導入が停止される。また、導入口17aから高温のEGRガスの流量が所定量以上となると、図9に示すように、高温のEGRガスに押されて凝縮水導入板119aが回転する。そして、凝縮水導入板119aが回転すると流量調整板141は、移動量調整板142により凝縮水導入板119aより突出するように移動する。これによって、凝縮水導入板119aの排出部119eと流量調整板141の調整部141bとが連通する。よって、高温のEGRガスの熱により水蒸気化した凝縮水がインテークマニフォールド12内へ導入される。
【0041】
例えば、高温のEGRガスの導入がない、或いは高温のEGRガスの流量が少ないような場合には、凝縮水導入板119aはEGRガスからの受熱量が少なくなる。よって、凝縮水導入板119aへ導入される凝縮水の水蒸気化が促進されない。このような状態で凝縮水導入板119aの排出部119eと流量調整板141の調整部141bとを連通させると、液体の凝縮水がインテークマニフォールド12内に導入され、液体の凝縮水が空燃比センサ13に接触し、空燃比センサ13の故障に繋がる。
【0042】
したがって、高温のEGRガスの導入がない、或いは高温のEGRガスの流量が少ないような場合には、凝縮水導入板119aの排出部119eと流量調整板141の調整部141bとを連通させないことにより、空燃比センサ13の故障を防止することができる。
[第3実施例]
以下、本発明の第3実施例に係る内燃機関の吸気系構造について説明する。
【0043】
第3実施例では、上記第2実施例に対して、流量調整板の調整部を変更しており、以下に上記第2実施例と異なる流量調整板の調整部に付いて説明する。
図10は、凝縮水導入板の正面図を、図11は流量調整板の正面図である。
凝縮水導入板219a(板部)は、図10に示すように、第2実施例と同様に、中空の薄板状で形成されている。そして、凝縮水導入板219aの吸気流れ方向の上流端部は、一方が開口した導入部219cを有する中空軸の支持軸(支持部)219bと連通するように一体で形成されている。また、凝縮水導入板219aの一方の側面219dには、支持軸219bと直交し、反支持軸側が開放した断面が凸字状の挿入溝219fが形成されている。そして、挿入孔219fには、中空の薄板状の内部と貫通し、凝縮水を排出する排出部219eが設けられている。
【0044】
流量調整板(排出部可変手段)241は、図11に示すように、側面視で略L字形状の薄板で形成されている。また、L字形状の長辺側の面241aには、凝縮水導入板219aの排出部219eから排出される凝縮水の流量を調整する調整部(開口部)241bが形成されている。更に流量調整板241は、調整部方向視で略L字形状で形成されている。
【0045】
調整部241bは、中空の薄板状の内部と貫通する複数の丸孔で構成されている。そして、複数の丸孔は、流量調整板241の凝縮水導入板219aへの組み付け時に、支持軸側となる側から、反支持軸側に向かうにつれ、開口面積が小さく形成される。また、流量調整板241の凝縮水導入板219aへの組み付け時に、最支持軸側となる丸孔の開口面積は、凝縮水導入板219aの導入部219cの開口面積と同等或いは大きくなるように形成されている。
【0046】
このように本発明の第3実施例に係る内燃機関の吸気系構造では、導入口17aより導入される高温のEGRガスの流量が増加すると、凝縮水導入板219aは、高温のEGRガスに押されてEGR通路17の反導入口側方向へ回転する。そして、凝縮水導入板219aの排出部219eと、高温のEGRガスの流量に見合った開口面積の流量調整板241の調整部241bとが連通する。
【0047】
したがって、高温のEGRガスの流量が多い場合には、EGRガスの熱量が多くなるので、多くの凝縮水を加熱することが可能であり、高温のEGRガスの流量の増加に伴い、凝縮水の流量を増加し多量の凝縮水を水蒸気化して、エンジン1の燃焼室3に導入することができる。
よって、高温のEGRガスの流量によって、段階的に凝縮水の流量を変化させインタークーラ24内に滞留した凝縮水を効率よく短期間に処理することができる。
[第4実施例]
以下、本発明の第4実施例に係る内燃機関の吸気系構造について説明する。
【0048】
第4実施例では、上記第2実施例に対して、凝縮水導入板の排出部と流量調整板の調整部とを変更しており、以下に上記第2実施例と異なる凝縮水導入板の排出部と流量調整板の調整部とに付いて説明する。
図12は、凝縮水導入板の正面図を、図13は流量調整板の正面図である。
凝縮水導入板(板部)319aは、図12に示すように、第2実施例と同様に、中空の薄板状で形成されている。そして、凝縮水導入板319aの吸気流れ方向の上流端部は、一方が開口した導入部319cを有する中空軸の支持軸(支持部)319bと連通するように一体で形成されている。また、凝縮水導入板319aの一方の側面319dには、支持軸319bと直交し、反支持軸側が開放した断面が凸字状の挿入溝319fが形成されている。そして、挿入孔319fには、中空の薄板状の内部と貫通し、支持軸側に頂点を有し、反支持軸側に底辺を有する三角形状の排出部319eが形成されている。
【0049】
流量調整板(排出部可変手段)341は、図13に示すように、側面視で略L字形状の薄板で形成されている。また、L字形状の長辺側の面341aには、凝縮水導入板319aの排出部319eから排出される凝縮水の流量を調整する調整部(開口部)341bが形成されている。更に流量調整板341は、調整部方向視で略L字形状で形成されている。
【0050】
調整部341bは、中空の薄板状の内部と貫通する丸孔で形成されている。そして、丸孔の直径は、凝縮水導入板319aの導入部319cの底辺長よりも長く設定されている。なお、調整部341bは丸孔に限らず、略三角形状の排出部319eの一部と重複可能な開口であれば形状は多角形などでもよい。
このように本発明の第4実施例に係る内燃機関の吸気系構造では、導入口17aより導入される高温のEGRガスの流量が増加すると、凝縮水導入板319aは、高温のEGRガスに押されてEGR通路17の反導入口側方向へ回転する。そして、凝縮水導入板319aの排出部319eは、流量調整板241の調整部241bにより、高温のEGRガスの流量に見合った凝縮水の流量となるように開口面積が調整され連通する。
【0051】
したがって、高温のEGRガスの流量が多い場合には、EGRガスの熱量が多くなるので、多くの凝縮水を加熱することが可能であり、高温のEGRガスの流量の増加に伴い、凝縮水の流量を増加し多量の凝縮水を水蒸気化して、エンジン1の燃焼室3に導入することができる。
よって、高温のEGRガスの流量によって、連続的に凝縮水の流量を変化させインタークーラ24内に滞留した凝縮水を効率よく短期間に処理することができる。
【0052】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、発明の形態は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、第3実施例では、凝縮水導入板219aの排出部219eを丸孔、流量調整板241の調整部241bを複数の異径の丸孔で形成し、第4実施例では、凝縮水導入板319aの排出部319eを三角形状、流量調整板341の調整部341bを丸孔で形成して凝縮水の流量を調整するようにしているが、これに限定されるものではなく、凝縮水導入板の回転度合いの増加に伴い凝縮水の流量を増加させることができればよい。
【符号の説明】
【0053】
1 エンジン(内燃機関)
12 インテークマニフォールド(吸気通路)
13 空燃比センサ(濃度検出手段)
17 EGR通路(下流側排気再循環手段)
17a 導入口(導入部)
18 EGRバルブ(下流側排気再循環手段)
19,119,219,319 凝縮水導入部(凝縮水導入手段)
19a,119a,219a,319a 凝縮水導入板(板部)
19b,119b,219b,319b 支持軸(支持部)
23 ターボチャージャ(過給手段)
24 インタークーラ(冷却手段)
26 電子制御スロットルバルブ(通路面積可変手段)
37 EGR通路(上流側排気再循環手段)
38 EGRバルブ(上流側排気再循環手段)
39 EGRクーラ(上流側排気再循環手段)
141,241,341 流量調整板(排出部可変手段)
141b,241b,341b 調整部(開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路に吸入空気を過給する過給手段と、過給した前記吸入空気を冷却する冷却手段と、前記吸気通路の前記過給手段の上流に排気ガスを導入する上流側排気再循環手段と、前記吸気通路の前記冷却手段の下流に排気ガスを導入する下流側排気再循環手段とを備える内燃機関の吸気系構造において、
前記吸気通路内であって、前記吸気通路の前記冷却手段の下流に前記排気ガスを導入する前記下流側排気再循環手段の導入部と対向する箇所に、前記冷却手段と連通し該冷却手段より凝縮水を導入する凝縮水導入手段を配設することを特徴とする内燃機関の吸気系構造。
【請求項2】
前記凝縮水導入手段は、前記下流側排気再循環手段の前記導入部より導入される前記排気ガスの流量の増加に伴い、前記吸気通路内に導入する前記凝縮水の流量を増加することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の吸気系構造。
【請求項3】
前記凝縮水導入手段は、一方の側面に前記凝縮水を前記吸気通路に排出する排出部を有する中空の板状に形成される板部を有し、他方の側面が前記吸気通路内の前記下流側排気再循環手段の前記導入部と対向するように配設されることを特徴とする、請求項1或いは2に記載の内燃機関の吸気系構造。
【請求項4】
前記凝縮水導入手段の下流であって、前記下流側排気再循環手段が接続される側の前記吸気通路の壁面に、前記吸気通路内の排気ガスの濃度を検出する濃度検出手段を配設することを特徴とする、請求項3に記載の内燃機関の吸気系構造。
【請求項5】
前記凝縮水導入手段は、前記板部の吸気流れ方向の上流部に、前記板部と連通し前記板部を前記吸気通路内で回転可能に支持する支持部と、前記板部の回転度合いに基づいて前記排出部の開口面積を変化させる排出部可変手段と、を有することを特徴とする、請求項3或いは4に記載の内燃機関の吸気系構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−108482(P2013−108482A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256373(P2011−256373)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】