内燃機関の吸気装置
【課題】第1吸気通路1と、前記第1吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第1吸気制御弁6と、前記第1吸気通路における前記第1吸気制御弁の上流と下流とに連通する第2吸気通路2と、前記第2吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第2吸気制御弁7と、を備える内燃機関の吸気装置において、第1吸気制御弁に続いて第2吸気制御弁が開弁するときに吸入空気量の変化が抑制もしくは停滞した状態を緩和する内燃機関の吸気装置を提供する。
【解決手段】前記第1吸気制御弁6が前記内燃機関の回転数に基づいた所定有効開度θuまたは前記所定有効開度よりも小さい判定開度まで開弁したとき、前記第2吸気制御弁7を開弁するように構成する。
【解決手段】前記第1吸気制御弁6が前記内燃機関の回転数に基づいた所定有効開度θuまたは前記所定有効開度よりも小さい判定開度まで開弁したとき、前記第2吸気制御弁7を開弁するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の吸気管の吸気通路をシリンダに入る前に2本に分けて、一方に第1吸気制御弁を設けるとともに他方に第2吸気制御弁を設け、各制御弁の開き始めるタイミングをずらして低回転速度から高回転速度に至る全領域での運転性能を向上させるようにしたものがある(特許文献1参照)。かかる技術では、第1吸気制御弁と第2吸気制御弁を順次開弁する制御が実行されている。
【0003】
また、2つの吸気制御弁を設けた場合には、特に各吸気制御弁の開度の違いに対しても吸入空気量を正確に求めることが高精度な制御を行う上で重要になる。吸気制御弁として例えばバタフライ弁を用いた場合にはその開度を角度センサ(開度センサ)で検出し、その検出開度に基づき吸入空気量を推定する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−201336号公報
【特許文献2】実公平5−17402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸気制御弁の開度変化に対する吸気制御弁下流における吸気圧力(もしくはエンジンの1気筒あたりの吸入空気量または出力トルク)の変化量はエンジン回転数が低いほど大きく、一方、エンジン回転数が高いほど小さくなる。第1吸気制御弁を小さな開度から徐々に開いていくと、臨界圧力を超えた付近以降は吸気圧力の増加率が低下し、漸近的にある値に収束する、いわゆるサチュレート状態となる。この吸気圧力の収束値はエンジン回転数が高いほど低くなる。そして、この吸気圧力の収束値に対応する第1吸気制御弁の開度(有効開度)は、エンジン回転数が高いほど大きくなる。
【0006】
従来技術のように、第1吸気制御弁を常に予め設定された所定の開度(例えば、全開)まで開いた後に、第2吸気制御弁を開弁するシーケンスとした場合、第1吸気制御弁の開度が達成できる吸気圧力増加率の収束値近傍に到達しているにもかかわらず、第2吸気制御弁が開弁しない事態が生ずる。この結果、サチュレート状態が継続することとなり、エンジントルクの無反応領域が発生する。車両を運転する乗員はアクセルを踏み込んでも車両が加速しないと感じるため、運転のフィーリングが悪化するおそれがあった。かかる現象は加速時だけでなく、減速時にも生じていた。
【0007】
本発明は、かかる課題を鑑み、第1吸気制御弁に続いて第2吸気制御弁が開弁するときに吸気圧力(吸入空気量)の変化が停滞した状態の発生を防止する内燃機関の吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内燃機関の吸気装置である。この装置は、第1吸気通路と、前記第1吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第1吸気制御弁と、前記第1吸気通路における前記第1吸気制御弁の上流と下流とに連通する第2吸気通路と、前記第2吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第2吸気制御弁と、を備えている。この装置は、前記第1吸気制御弁と前記第2吸気制御弁を順次開弁するよう制御する。そして、前記第1吸気制御弁が前記内燃機関の回転数に基づいた所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい判定開度まで開弁したとき、前記第2吸気制御弁を開弁する制御手段を備えることを特徴としている。
【0009】
かかる構成によれば、第2吸気制御弁が開弁するときの第1吸気制御弁の開度は、内燃機関(エンジン)回転数に基づいた所定の開度と設定されている。この所定の開度は、第2吸気制御弁が開弁したときに吸入空気量の変化をほぼ連続的に推移させるように設定されているため、第1吸気制御弁によるサチュレート状態の継続を防止することができる。
【0010】
本発明は、内燃機関の吸気装置において、目標吸入空気量を算出する手段と、前記内燃機関の回転数に応じた前記第1吸気制御弁の所定有効開度を算出する手段と、前記第1吸気制御弁が前記所定有効開度でありかつ前記第2吸気制御弁が全閉相当開度である場合の仮定吸入空気量を算出する手段と、前記目標吸入空気量が前記仮定吸入空気量を超えているか判定する第1判定手段と、前記第1吸気制御弁の開度が前記所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい第1判定開度以上か判定する第2判定手段と、前記第1判定手段および前記第2判定手段の双方が肯定された場合に前記第2吸気制御弁の開弁を許可する許可判定手段と、前記許可判定後に、前記目標吸入空気量が前記仮定吸入空気量以下となり且つ前記第1吸気制御弁の開度が前記所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい第2判定開度未満となる取消条件が成立するまで前記許可判定を継続し、前記取消条件成立後に前記許可判定を取り消す許可取消手段と、を備える構成とすることもできる。
【0011】
かかる構成によれば、前記許可判定後に機関回転数の上昇によって所定有効開度が増加し第1吸気制御弁の開度が当該増加後の所定有効開度よりも小さくなった場合においても、前記取消条件が成立するまで前記許可判定は継続されるため、機関回転数の上昇時に第2吸気制御弁が全閉してしまう又は第2吸気制御弁が一定開度で停滞してしまうことを防ぎ、第2吸気制御弁の安定した作動を実現させることができる。
【0012】
前記構成において、前記所定有効開度は、前記第1吸気制御弁の開度の変化に対する前記第1吸気通路を流れる吸入空気量の変化が所定の割合以下の開度範囲に設定されていることが好ましい。かかる構成によれば、所定有効開度の近傍では、第1吸気制御弁の開度に対する吸入空気量の変化の感度が低いため、吸入空気量の変化を連続的にすることが容易となり、所定有効開度を正確に設定することができる。
【0013】
前記構成は、前記内燃機関は複数の気筒を備えており、前記第2吸気制御弁は各気筒ごとに備えられた多連スロットル弁であり、前記第1吸気制御弁は単一のスロットル弁である、いわゆる多連スロットル式エンジンに適用することが好適である。また、前記所定の開度は前記内燃機関の回転数の上昇に伴い大きくなるよう構成することが好適である。
【0014】
かかる構成によって、吸入空気量の流量が少ない第1吸気通路に備えられた第1吸気制御弁の制御の精度向上を図ることができ、一方吸入空気量の流量が多い第2吸気通路に備えられた第2吸気制御弁の制御の応答性向上を図ることができる。また、エンジン回転数の上昇に伴う吸入空気量の増加に対応した応答性遅れの少ない吸気制御をすることができる。
【0015】
前記構成は、前記第2吸気制御弁が開弁している間、前記第1吸気制御弁は前記所定有効開度に制御され、前記回転数の変化に応じて前記所定有効開度が変化するように構成することができる。かかる構成によって第2吸気制御弁の開弁に伴い内燃機関の回転数が変化した場合であっても、第1吸気制御弁の所定有効開度は変化した回転数に応じた開度とすることができる。
【0016】
また、前記構成は、前記第2吸気制御弁が全閉相当開度まで閉弁したとき、前記第1吸気制御弁を前記所定有効開度よりも閉弁側に駆動する制御手段をさらに備えるように構成することができる。かかる構成によって、開弁時の制御と同様に、車両の減速時における閉弁時の際に生ずるサチュレート状態を抑制することができる
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1吸気制御弁に続いて第2吸気制御弁が開弁するときに吸気圧力(吸入空気量)の変化が抑制もしくは停滞した状態を緩和する内燃機関の吸気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる内燃機関における吸気装置の要部を示す模式図である。
【図2】吸気装置の要部ブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる第1吸気制御弁および第2吸気制御弁の制御要領を示すフロー図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる第1吸気制御弁および第2吸気制御弁の制御要領を示すフロー図である。
【図5】従来の第1吸気制御弁の開度と、第2吸気制御弁の開度と、内燃機関への吸入空気量(吸気圧力)との関係を表すタイムチャートである。
【図6】本発明の一実施形態にかかる第1吸気制御弁の開度と、第2吸気制御弁の開度と、内燃機関への吸入空気量(吸気圧力)との関係を表すタイムチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態にかかる第1吸気制御弁の所定の開度を設定するマップの一例であり、(a)は有効開度の設定のための説明図、(b)は回転数に対する有効開度のチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態にかかるマップの一例であり、(a)は第1吸気制御弁の開度−吸入空気量線図であり、(b)は第2吸気制御弁の開度−吸入空気量線図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる第1吸気制御弁および第2吸気制御弁の制御要領を示すフロー図である。
【図10】エンジン回転数の上昇に伴う、第1吸気制御弁の有効開度に相当する空気量と、目標吸入空気量との関係を表すタイムチャートである。
【図11】エンジン回転数の上昇に伴う、第1吸気制御弁の有効開度に対する実開度の挙動を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態が適用された内燃機関における吸気装置の要部を示す模式図である。図示例の内燃機関は例えば直列5気筒エンジンある。
【0020】
図1を参照すると、各シリンダCL1〜5の各吸気ポートには第1吸気通路1と第2吸気通路2とがそれぞれ連通している。両吸気通路1,2は上流側で1本の吸気ダクト3に連通している。吸気ダクト3の上流にはエアフィルタ4が設けられており、吸入空気(新気)はエアフィルタ4から吸入ダクト3へ吸入される。なお、吸気ダクト3には吸気流量を計測するためのエアフローメータ5が設けられており、両吸気通路1,2はエアフローメータ5の下流側で分岐されている。
【0021】
第1吸気通路1は吸気ダクト3から分岐された1本の通路として設けられている。この1本の通路には、たとえばバタフライバルブからなる第1吸気制御弁6が設けられている。その後、第1吸気通路1は2段階に分岐されて各シリンダCL1〜5の各吸気ポートに連通している。第1吸気制御弁6は5気筒に対して1つのみ設けられている。
【0022】
第2吸気通路2は吸気ダクト3から分岐された後には1本の通路となるエアチャンバからシリンダCL1〜5毎に分岐されて各吸気ポートに連通している。分岐部分すなわちシリンダCL1〜5ごとに、たとえばバタフライバルブからなる第2吸気制御弁7が設けられている。
【0023】
なお、図示例では、各吸気制御弁6,7はドライブ・バイ・ワイヤで制御され、第1吸気制御弁6は対応するアクチュエータ8により、各第2吸気制御弁7は互いに連動するように1つのアクチュエータ9により、それぞれ開閉制御されるようになっている。第1吸気制御弁6とアクチュエータ8との間には第1吸気制御弁6の開度を検出する第1開度センサ10が設けられ、各第2吸気制御弁7とアクチュエータ9との間には第2吸気制御弁7の開度を検出する第2開度センサ11が設けられている。
【0024】
また、各アクチュエータ8,9を制御する制御装置(ECU)100が設けられており、そのECU100には前記した各開度センサ10,11からの開度検出信号と、エアフローメータ5からの上流側空気流量検出信号とがそれぞれ入力している。さらに、ECU100には、アクセルペダル(図示せず)からのアクセル信号ACLと、エンジン回転センサ(図示せず)からの回転数Neと、吸気圧センサ(図示せず)からの吸気圧Pbと、大気圧センサ(図示せず)からの大気圧Paの各信号がそれぞれ入力されている。ECU100ではそれらの信号に応じて各吸気制御弁6,7を制御する。
【0025】
次に、図2の要部ブロック図を参照して本実施形態にかかる吸気装置について説明する。なお、図2では1つのシリンダCL1について代表して示すが、他のシリンダについても同様であり、同様に適用される。
【0026】
本実施形態の吸気装置は、ECU100によって実現できる。ECU100は、一種のコンピュータであり、演算を実行するプロセッサ(CPU)、各種データを一時記憶する記憶領域およびプロセッサによる演算の作業領域を提供するランダム・アクセス・メモリ(RAM)、プロセッサが実行するプログラムおよび演算に使用する各種のデータが予め格納されている読み出し専用メモリ(ROM)、およびプロセッサによる演算の結果およびエンジン系統の各部から得られたデータのうち保存しておくものを格納する書き換え可能な不揮発性メモリを備えている。不揮発性メモリは、システム停止後も常時電圧供給されるバックアップ機能付きRAMで実現することができる。
【0027】
ECU100の吸気制御機能は、前記した回転数Neの信号と、第1開度センサ10が検出した第1吸気制御弁6の開度θ1の信号と、第2開度センサ11が検出した第2吸気制御弁7の開度θ2の信号と、を受け取る入力インタフェース120と、第1吸気制御弁開度補正部101と、第2吸気制御弁開度判定部102と、制御信号等を第1吸気制御弁6のアクチュエータ8および第2吸気制御弁7のアクチュエータ9へ出力する出力インタフェース121と、から構成されている。そして、ECU100は、第1吸気制御弁開度補正部101と、第2吸気制御弁開度判定部102の機能を実現させるようにプログラムされている。
【0028】
入力インタフェース120は、ECU100とエンジン系統の各部とのインタフェース部であり、エンジン系統の様々な箇所から送られてくる車両の運転状態を示す情報を受け取って信号処理を行い、アナログ情報はデジタル信号に変換し、これらをECU100の第1吸気制御弁開度補正部101と、第2吸気制御弁開度判定部102および動力機関系統の制御機器へ受け渡す。図1、2では、一部しか示していないが、これに限定されるものではなく、その他種々の情報が入力される。
【0029】
第1吸気制御弁開度補正部101は、回転数Neの信号を入力し、たとえば、ECU100のメモリに格納されたマップを参照して、回転数Neに基づく有効開度(所定有効開度)θuの信号を算出する。そして、第1吸気制御弁開度補正部101は、第1吸気制御弁6の開度θ1の信号を入力し、開度θ1が算出された有効開度θuになるように制御信号をアクチュエータ8へ出力する。開度θ1が有効開度θuになったとき、第1吸気制御弁開度補正部101は、アクチュエータ9へ第2吸気制御弁7を開動作する旨の制御信号をアクチュエータ9へ出力する。
【0030】
第2吸気制御弁開度判定部102は、第2吸気制御弁7の開度θ2の信号も入力し、第2吸気制御弁7が開閉しているか否かを判定し、判定結果の信号を第1吸気制御弁開度補正部101へ送出する。第1吸気制御弁開度補正部101は、第2吸気制御弁の開閉状況によって、第1吸気制御弁6の開動作の制御信号を調整する。かかるプロセスについての詳細は後記する。
【0031】
出力インタフェース121は、ECU100によって算出された制御指令を吸気装置へ出力する機能を有する。しかしながらこれに限定するものではなく出力インタフェース121には、他のコントローラ等を接続することもできる。
【0032】
次に、図3および図4のフロー図を参照して、吸気装置による制御の例を説明する。図3を参照すると、ステップST1でスロットル目標開度設定処理を行う。そのスロットル目標開度設定処理について図4のフロー図を参照して説明する。
【0033】
図4を参照すると、ステップST1aではアクセル信号ACLの大きさ(踏み込み量)に基づいて要求吸入空気量Gdを算出する。なお、アクセル信号ACLの大きさの変化に対する要求吸入空気量Gdの変化はリニアであって良い。次のステップST1bで要求吸入空気量Gdとアイドルに必要な吸入空気量Giとを加算した目標吸入空気量Gpを算出する。ここで、Gpは1気筒あたりの吸入空気量である。
【0034】
次のステップST1cにおいて、ECU100の第1吸気制御弁開度補正部101は、エンジン回転センサが検出した回転数Neを取得する。そして、第1吸気制御弁開度補正部101は、取得された回転数Neに基づき、ECU100のメモリに格納されたマップ(ステップST1e)を参照して、第1吸気制御弁6の有効開度(所定有効開度)θuを設定し、その信号を算出する(ステップST1d)。
【0035】
ここで、図5〜7を参照して、マップとしてECU100のメモリに格納されたエンジンの回転数Neと有効開度θuとの関係を説明する。図5は従来の第1吸気制御弁の開度と、第2吸気制御弁の開度と、内燃機関への吸入空気量(もしくは吸気圧力または出力トルク)との関係を表すタイムチャートである。図6は本実施形態にかかる第1吸気制御弁の開度と、第2吸気制御弁の開度と、内燃機関への吸入空気量(もしくは吸気圧力または出力トルク)との関係を表すタイムチャートである。図7は本実施形態にかかる第1吸気制御弁の所定の開度を設定するマップの一例であり、(a)は有効開度の設定のための説明図、(b)は回転数に対する有効開度のチャートである。
【0036】
図5は、例えば特許文献1等で開示されている多連スロットル式エンジンにおいて、エンジン回転数が高い場合における、第1吸気制御弁と第2吸気制御弁の開度動作のタイムチャートに、内燃機関への吸入空気量(吸気圧力)の推移を併せて示している。
【0037】
図5を参照すると、エンジン回転数が高い場合には、吸気圧力の変化量が第1吸気制御弁の臨界圧力を超えるため、領域SAで示される、いわゆるサチュレート状態が発生する。
【0038】
その後、第1吸気制御弁は開弁動作を停止して、第2吸気制御弁の開弁に伴い吸入空気量は急激に増加する。その結果、吸入空気量(吸気圧力)は、第1吸気制御弁の開弁に伴う立ち上がりの変化TR1と、第2吸気制御弁の開弁前のサチュレート状態の領域SAと、その後第2吸気制御弁の開弁に伴う大きな変化TR2と、の3段階の変化となり、連続的な推移とならない。この領域SAは、エンジントルクの無反応領域となり、車両を運転する乗員がアクセルを踏み込んでも車両が加速しないと感じ、運転のフィーリングを悪化させるおそれがあった。かかる現象は加速時だけでなく、図5の右半分のチャートに示すように減速時にも生じていた。
【0039】
次に、図6は、本実施形態において、エンジン回転数が高い場合における、第1吸気制御弁と第2吸気制御弁の開度動作のタイムチャートに、内燃機関への吸入空気量(もしくは吸気圧力または出力トルク)の推移を併せて示した図5と同様なチャートである。
【0040】
図6を参照すると、本実施形態はサチュレート状態になる前の第1吸入制御弁が有効開度(所定の開度)のときに、ECU100から第2吸気制御弁へ開弁指令が送られている。かかる構成によって、図5に示した従来技術の領域SAのような現象は発生せず、吸入空気量(吸気圧力)は連続的に推移する。そのためアクセル踏込量に対する吸入空気量もしくは吸気圧力または出力トルクの反応が鈍化することを防止できる。
【0041】
有効開度は、サチュレート状態になる前の、第1吸気制御弁の開度の変化に対する第1吸気通路を流れる吸入空気量の変化が所定の割合以下となる開度に設定されている。かかる開度の範囲内に有効開度が設定されることによって、第1吸気制御弁の開度に対する吸入空気量の変化の感度が低いため、吸入空気量の変化を連続的にすることが容易となり、所定の開度を正確に設定することができる。
【0042】
次に、図7の(a)は内燃機関の吸気圧力PBAのタイムチャートを示しており、各二点鎖線A,B,C,D,E,Fは、この順で、回転数Neが低回転の場合から高回転の場合の吸気圧力PBAの推移を表している。例えば、回転数Neが最も低い場合の吸気圧力PBAの推移は二点鎖線Aで示され、回転数Neが最も高い場合の吸気圧力PBAの推移は一点鎖線Fで示されている。二点鎖線B〜Fの途中から分岐している実線CB,CC,CD,CE,CFは、第1吸気制御弁が有効開度に到達して、第2吸気制御弁が開弁されて増加した吸気圧力PBAの推移を示している。実線が分岐した以降の二点鎖線は、たとえば特許文献1に開示されている従来技術のように、第2吸気制御弁が開弁するときの第1吸気制御弁の開度を常に同じものとした場合の吸気圧力PBAの推移である。なお、前記したように、吸気圧力PBAはエンジン1気筒あたりの吸入空気量あるいは出力トルクとみなすことができる。
【0043】
図7(a)を参照すると、回転数Neが低い二点鎖線Aにおいては、第2吸気制御弁の開弁動作に伴って吸入空気量が増加したときにでも、吸気圧力PBAの変化はほぼ連続的に推移させることができる。
【0044】
しかしながら、二点鎖線Bに対応する回転数Neを超えると、吸気圧力PBAの推移の中に、吸気圧力PBAがサチュレートした状態の領域SAを生じさせる。本実施形態では、吸気圧力PBAの推移が領域SAに到達する前の変化点Pを検出し、この変化点Pに対応する第1吸気制御弁の開度を取得した。この開度が有効開度となり、第1吸気制御弁の開度が有効開度になったときに、第2吸気制御弁を開弁することによって、吸気圧力PBAがサチュレートした状態の領域SAの発生を防止することができる。
【0045】
図7(b)は、前記した変化点Pにおける第1吸気制御弁の有効開度θuを回転数Neごとにサンプリングしてプロットしたチャートの例である。このチャートをマップとしてECU100のメモリに格納することができる。なお、図7(b)のマップの例は標準大気圧のマップとなっているが、例えば図7(a)において、開度または吸気圧力(吸入空気量)を実大気圧に基づいて補正して図7(b)のマップを作成することもできる。
【0046】
図4を再び参照すると、次のステップST1fでは目標吸入空気量Gpが前記した有効開度θuに対応する有効開度相当吸入空気量Guより大きいか否かを判別し、大きいと判定された場合にはステップST1gに進み、小さいと判定された場合にはステップST1hに進む。なお、Guは1気筒あたりの有効開度相当吸入空気量である。
【0047】
ここで図8を参照して、吸気制御弁の開度と吸入空気量との関係に基づき有効開度相当吸入空気量Guを説明する。図8は標準大気圧におけるものであり、(a)は第1吸気制御弁の開度−吸入空気量線図であり、(b)は第2吸気制御弁の開度−吸入空気量線図である。なお、図8の縦軸は、1気筒あたりの吸入空気量を表している。図8(a)を参照すると、例えば開度θxの時に第1吸入空気量Gxとなる。第1吸気制御弁6は先に開く弁であり、主としてアイドリング時や低速回転時における吸入空気量の制御を行うために用いられる。
【0048】
また、第1吸気制御弁6は全閉から全開まで開閉可能にされているが、制御に用いられる開度領域を、図に示されるようにアイドリング用の最小開度から所定の有効開度θuまでとすると良い。なお、有効開度θuは図7(b)のように設定される。
【0049】
最小開度で最小吸入空気量Gsとなり、有効開度θuで有効開度相当吸入空気量Guとなり、その間での開度θxに対応して第1吸入空気量Gxが求められる。また、回転速度Neの違いでその値は変わるため、回転速度別に複数のマップMAP1が用意されており、回転速度Neに応じて1つのマップが用いられる。ここでMAP1は第2吸気制御弁6が全閉状態であることを前提としている。マップの数は任意であり、マップ間を補間すると良い。
【0050】
第2吸気制御弁7の開度に対応する吸入空気量は、図8(b)に示されるマップMAP2から求められる。マップMAP2も数は任意であり、マップ間を補間すると良い。図8(b)の横軸は第2吸気制御弁7の開度であり、縦軸が吸入空気量である。図では、第1吸気制御弁6が有効開度θuの場合の第2吸気制御弁7の開度変化における吸入空気量の変化が実線により示されており、第1吸気制御弁6が最小開度の場合の第2吸気制御弁7の開度変化における吸入空気量の変化が二点鎖線により示されている。なお、図のθ2xは第2吸気制御弁7の目標開度であり、以降のステップで設定される。
【0051】
ステップST1gでは第1吸気制御弁6の目標開度θxを有効開度θuに設定し、次のステップST1iで、実回転速度から選択されたMAP2に基づいて第2吸気制御弁7の目標開度θ2xを設定する。また、ステップST1hではMAP1に基づき目標吸入空気量Gpに対応する第1吸気制御弁6の開度θxを設定し、次のステップST1jで、第2吸気制御弁7の目標開度θ2xを0度に設定する。なお、MAP1およびMAP2は、前記したように標準大気圧のマップとなっているが、これらのマップで求めた開度またはマップに用いる吸入空気量を実大気圧に基づいて補正することもできる。
【0052】
各ステップST1i・1jの次のステップST1kでは目標吸入空気量Gpの今回値Gp(n)が前回値Gp(n−1)よりも大きいか否かを判別し、大きいと判定された場合にはステップST1mに進み、変わらないか小さいと判定された場合にはステップST1nに進む。ステップST1mではスロットル増加フラグFを1とし、ステップST1nではスロットル増加フラグFを0として図4のフローを終了する。
【0053】
再び図3を参照すると、ステップST2に進み、そこでスロットル増加フラグFが1であるか否かを判別する。スロットル増加フラグFは、ステップST1で設定された目標開度が前回よりも開き側の場合を1とする。スロットル増加フラグF2が1であると判定された場合にはステップST3に進む。
【0054】
ステップST3では、第2吸気制御弁7の目標開度が0度(全閉)より大きいか否かを判別する。ステップST1でアイドリング状態や低速走行の場合に相当するようなアクセルペダルの踏み込み量だった場合には第1吸気制御弁6の有効開度θuの範囲内で運転可能であり、そのような目標開度の場合には第2吸気制御弁7の開度は0度と設定される。ステップST3で第2吸気制御弁7の目標開度が0度より大きいと判定された場合にはステップST4に進む。
【0055】
ステップST4では第1吸気制御弁6の実開度(検出開度)θ1が有効開度θuに該当する(θ1≧θu)か否かを判別する。第1吸気制御弁6の実開度θ1が有効開度θuに該当すると判定された場合にはステップST5に進む。第1吸気制御弁6の実開度θ1が有効開度θuに達しており、開き側に駆動制御する場合には第2吸気制御弁7を開く制御を行う場合であり、ステップST5で第2吸気制御弁7を目標開度θ2xまで駆動し、本ルーチンを終了する。ここで、検出開度の誤差等の影響を考慮して、ステップST4における判定開度を有効開度θuそのものとせずに有効開度θuより所定開度小さい判定開度を用いても良い。
【0056】
上記ステップST3で第2吸気制御弁7の目標開度が0度であると判定された場合にはステップST6に進む。この場合には第2吸気制御弁7を開くほどの目標開度が設定されなかった場合であり、ステップST6で、第1吸気制御弁6を目標開度θxに駆動し、本ルーチンを終了する。
【0057】
また上記ステップST4で第1吸気制御弁6の実開度θ1が有効開度θuに達していないと判定された場合にはステップST7に進む。この場合にはステップST3で第2吸気制御弁7を開くと判定されていることから、ステップST7で第1吸気制御弁6を有効開度θuに駆動し、本ルーチンを終了する。
【0058】
上記ステップST2でスロットル増加フラグFが0であると判定された場合にはステップST8に進む。この場合には閉じ側に駆動する場合であり、ステップST8では第2吸気制御弁7の実開度(検出開度)θ2が0度(全閉)より大きいか否かを判別する。ステップST8で第2吸気制御弁7の実開度θ2が0度であると判定された場合には、第2吸気制御弁7が全閉であり、その場合の制御対象は第1吸気制御弁6となることから、ステップST9では第1吸気制御弁6を目標開度θxに駆動し、本ルーチンを終了する。
【0059】
ステップST8で第2吸気制御弁7の実開度θ2が0度より大きいと判定された場合にはステップST10に進む。この場合には、第2吸気制御弁7が開いている状態であることから先に第2吸気制御弁7を全閉側に駆動するために、ステップST10で第2吸気制御弁7を目標開度θ2xに駆動し、さらにステップST11で第1吸気制御弁6を有効開度θuに設定して本ルーチンを終了する。
【0060】
なお、ステップST8で実開度θ2を0度より大きいか否かを判定しているが、第2開度センサ11の精度のばらつきを考慮して、0度よりも大きい所定の全閉相当開度以下となっているか否かを判定するようにしても良い。この場合、全閉相当開度以下であると判定された場合にはステップST9を実行し、全閉相当開度を越えていると判定された場合にはステップST10を実行する。
【0061】
それぞれ、次の制御サイクルではステップST1から再開することになる。例えばステップST7に進んだ場合には第1吸気制御弁6を有効開度θuに駆動するが、その場合には第2吸気制御弁7を目標開度θ2xに駆動する場合であり、次のサイクルでステップST5に進み、第2吸気制御弁7を開く駆動制御を行うことになる。同様にステップST10に進んだ場合に第2吸気制御弁7を全閉にする目標開度が設定されていたら、まず第2吸気制御弁7を全閉にし、次のサイクルでステップST9に進んで第1吸気制御弁6を閉じる駆動制御を行うことになる。
【0062】
このように、本実施形態では、順次開閉する場合にはステップST2以降で制御するようにしており、これらの切替制御を行う開制御切り替え手段と閉制御切り替え手段とは、制御装置ECU内の回路またはプログラムにより構成されていて良い。かかるプロセスとすることによって、第2吸気制御弁7の状態に応じて、第1吸気制御弁6および第2吸気制御弁7を適切に制御し、吸気圧力(吸入空気量)がサチュレートした状態の領域SAの発生を防止することができる。
【0063】
[第2実施形態]
次に図9〜図11を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図9は、本実施形態にかかる第1吸気制御弁および第2吸気制御弁の制御要領を示すフロー図である。図10は、エンジン回転数の上昇に伴う、第1吸気制御弁の有効開度に相当する空気量と、目標吸入空気量との関係を表すタイムチャートであり、図における目標吸入空気量および有効開度相当吸入空気量は1気筒あたりの吸入空気量を表している。図11は、エンジン回転数の上昇に伴う、第1吸気制御弁の有効開度に対する実開度の挙動を表すタイムチャートである。
【0064】
図9を参照すると、ステップST201において、ECU100の第1吸気制御弁開度補正部101は、エンジン回転センサが検出した回転数Neを取得する。そして、第1吸気制御弁開度補正部101は、取得された回転数Neに基づき、ECU100のメモリに格納されたマップ(ステップST203)を参照して、第1吸気制御弁6の有効開度(所定有効開度)θuを設定し、その信号を算出する(ステップST202)。ステップST203で参照するマップは、前記した第1実施形態と同様に、図7(b)に示す変化点Pにおける第1吸気制御弁の有効開度θuを回転数Neごとにサンプリングしてプロットしたチャートが適用される(第1吸気制御弁の所定有効開度を算出する手段)。
【0065】
次のステップST204では、アクセル信号ACLの大きさ(踏み込み量)に基づいて要求吸入空気量Gdを算出する。なお、アクセル信号ACLの大きさの変化に対する要求吸入空気量Gdの変化はリニアであって良い。そして、要求吸入空気量Gdとアイドルに必要な吸入空気量Giとを加算した目標吸入空気量Gpを算出する(目標吸入空気量を算出する手段)。
【0066】
次のステップST205では、エンジン回転数Neおよび有効開度θuのマップを参照して有効開度相当吸入空気量Guを検索する(仮定吸入空気量を算出する手段)。ここで、図10を参照すると、第1吸気制御弁6がある有効開度θuのとき、第1吸気制御弁6を通過する空気量は、エンジン回転数Neに応じて変化する。この空気量が有効開度相当吸入空気量Guであり、図10に相当するタイムチャートが、有効開度θuに基づき設定されたマップとして用いることができる。なお、図10に示すように破線を境にして、有効開度相当吸入空気量Guは目標吸入空気量Gpを下回り、図示しない第2吸気制御弁7が開弁する制御が実行される。
【0067】
次のステップST206では、第2吸気制御弁7の開度θ2がθ2hと比較される。θ2hはしきい値であり、ほぼ0付近の開度が設定されている。θ2がθ2hよりも小さいとき(ステップST206:No)、第2吸気制御弁7は閉弁状態であるため、目標吸入空気量Gpとエンジン回転数Neに基づくマップを参照して、第1吸気制御弁6の開度θ1を検索する(ステップST207)。このマップは前記した図8と同様であり、目標吸入空気量Gpに応じて、第1吸気制御弁6の開度θ1がプロットされているものである。また、回転速度Neの違いでその値は変わるため、回転速度別に複数のマップMAP1が用意されており、回転速度Neに応じて1つのマップが用いられる。マップの数は任意であり、マップ間を補間すると良い。θ2がθ2hよりも大きいとき(ステップST206:Yes)、第2吸気制御弁7は開弁状態であるため、第1吸気制御弁6の開度θ1は有効開度θuとされる(ステップST208)。
【0068】
次のステップST209では、フラグFが1か否かが判断される。フラグFは初期値としては0が設定されており、後記するプロセスにおいて1もしくは0が設定される。このフラグFは、図10に示す目標吸入空気量Gpが有効開度相当吸入空気量Gu以上となる領域(破線より右側の領域)において、第1吸気制御弁6の開度θ1が有効開度θuを超えたときにフラグFを1としている。
【0069】
ここで、図11を参照して、本実施形態における第1吸気制御弁6の開弁制御について説明する。図11は、エンジン回転数Neの上昇に伴う、有効開度θuに対して設定された第1吸気制御弁目標開度θoに応じた第1吸気制御弁実開度θ1の挙動を示している。図11を参照すると、点線で示す有効開度θuに基づき、破線で示す第1吸気制御弁目標開度θoとなるように第1吸気制御弁6が制御される。第1吸気制御弁6は、第1吸気制御弁目標開度θoの動きに追従して開弁され、実線で示す第1吸気制御弁実開度θ1のように開弁する。垂直の破線は図10の破線と同じであり、破線を境にして、有効開度相当吸入空気量Guは目標吸入空気量Gpを下回り、第2吸気制御弁7が開弁する制御が実行される。
【0070】
本実施形態では、後記するプロセスにおいて、有効開度θuとともに第1判定開度θuhと第2判定開度θuLとを新たに設けている。吸気制御弁の開度センサの検出誤差の影響によって、目標とする制御開度(例えば、第1吸気制御弁目標開度θo)と検出された実際の開度(例えば、第1吸気制御弁実開度θ1)との間に、定常的な誤差を生ずる場合がある。この定常的な誤差を考慮してそれぞれの判定開度が設定されており、先ず第1判定開度θuhは有効開度θuより僅かに小さい開度としている(θuh<θu)。ただし、上述した誤差を無視できるような場合(例えば誤差が0と見なせる場合あるいは上記誤差を考慮した補正が既に検出開度に施されている場合など)には第1判定開度θuhとして有効開度θuを用いても良い(θuh=θu)。一方、検出された実際の開度は、目標とする制御開度の信号に対して、通常時間的な遅れをもって作動する。この時間遅れによって第2吸気制御弁7が開閉を繰り返すハンチング現象を生ずることを防止するために、前記した第1判定開度θuhよりも小さな開度の第2判定開度θuLを設定している(θuL<θuh)。ただし、応答性が高く、時間遅れが小さいときには、第1判定開度θuhと第2判定開度θuLとを同じ開度に設定することもできる(θuL=θuh)。
【0071】
再び、図9を参照してプロセスを説明する。フラグFが1と判断されると(ステップST209:Yes)、目標吸入空気量Gpと有効開度相当吸入空気量Guとが比較される(第1判定手段:ステップST210)。目標吸入空気量Gpが有効開度相当吸入空気量Guよりも大きければ(ステップST210:No)、フラグFを1に設定する(ステップST214)。図10を参照すると、破線で示した境界を超え、目標吸入空気量Gpが有効開度θuに開弁された第1吸気制御弁6の空気流量を超えるため、フラグFを1として、第2吸気制御弁7の開弁制御が実行される。開弁制御にあたっては、目標吸入空気量Gpとエンジン回転数Neに基づくマップを参照して、第2吸気制御弁7の開度θ2が検索されて(ステップST215)、本プロセスは終了する。このマップは前記した図8と同じであり、目標吸入空気量Gpに応じて、第2吸気制御弁7の開度θ2がプロットされているものである。また、回転速度Neの違いでその値は変わるため、回転速度別に複数のマップMAP2が用意されており、回転速度Neに応じて1つのマップが用いられる。マップの数は任意であり、マップ間を補間すると良い。
【0072】
目標吸入空気量Gpが有効開度相当吸入空気量Guよりも小さければ(ステップST210:Yes)、第1吸気制御弁実開度θ1が第2判定開度θuLと比較される(第2判定手段:ステップST211)。第1吸気制御弁実開度θ1が第2判定開度θuLと等しい、もしくは大きければ(ステップST211:Yes)、フラッグFを1に設定し(ステップST214)、図8(b)に示す目標吸入空気量Gpとエンジン回転数Neに基づくマップを参照して、第2吸気制御弁7の開度θ2が検索されて(ステップST215)、本プロセスは終了する。
【0073】
第1吸気制御弁実開度θ1が第2判定開度θuLより小さい場合(ステップST211:No)、フラグFは0に設定される(ステップST216)。第2吸気制御弁7の開度θ2は0に設定され(ステップST217)、本プロセスは終了する。
【0074】
フラグFが0と判断されると(ステップST209:No)、目標吸入空気量Gpと有効開度相当吸入空気量Guとが比較される(第1判定手段:ステップST212)。目標吸入空気量Gpが有効開度相当吸入空気量Guよりも小さければ(ステップST212:No)、フラグFは0に設定される(ステップST216)。第2吸気制御弁7の開度θ2は0に設定され(ステップST217)、本プロセスは終了する。
【0075】
目標吸入空気量Gpが有効開度相当吸入空気量Guよりも大きければ(ステップST212:Yes)、第1吸気制御弁実開度θ1が第1判定開度θuhと比較される(第2判定手段:ステップST213)。第1吸気制御弁実開度θ1が第1判定開度θuhと等しい、もしくは大きければ(ステップST213:Yes)、フラグFを1に設定し(ステップST214)、図8(b)に示す目標吸入空気量Gpとエンジン回転数Neに基づくマップを参照して、第2吸気制御弁7の開度θ2が検索されて(ステップST215)、本プロセスは終了する。
【0076】
第1吸気制御弁実開度θ1が第1判定開度θuhより小さい場合(ステップST213:No)、フラグFは0に設定される(ステップST216)。第2吸気制御弁7の開度θ2は0に設定され(ステップST217)、本プロセスは終了する。
【0077】
かかるプロセスを具現化することにより、第1実施形態と同様に、第2吸気制御弁7の状態に応じて、第1吸気制御弁6および第2吸気制御弁7を適切に制御し、吸気圧力(吸入空気量)がサチュレートした状態の領域SAの発生を防止することができる。さらに、本実施形態では、ST212;YesとST213;Yesの条件に基づき第2吸気制御弁7の開弁を許可する許可判定フラグFを1に設定する許可判定手段と、フラグFが1に設定された後、ST210;NoとST211;Noの条件に基づきフラグFを0(初期状態)とする許可取消手段とを備えている。したがって、フラグFが1に設定された後に、機関回転数Neの上昇によって有効開度θuが増加し、当該有効開度θuよりも第1吸気制御弁6の検出開度θ1が一時的に小さくなった場合においても、ST210;NoとST211;Noの条件が成立するまでフラグFは1に継続して設定され、例えばフラグF=1且つGp>Guであれば第1吸気制御弁6の検出開度θ1を確認しない構成となるので、機関回転数Neの上昇に伴う有効開度θuの増大時に、第2吸気制御弁7が全閉してしまう又は第2吸気制御弁7が一定開度で停滞してしまうことを防ぎ、加速時における第2吸気制御弁7の安定した作動を実現させることができる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において改変して用いることができる。たとえば、所定の高応答要求条件(例えばスイッチ操作によりスポーツモードが選択された場合、気筒数可変制御が行われる場合、変速操作時など)が成立する場合に、第1吸気制御弁と第2吸気制御弁を同時に開弁または閉弁する制御手段を本発明に付加してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 第1吸気通路
2 第2吸気通路
6 第1吸気制御弁
7 第2空気制御弁
8,9 アクチュエータ
10、11 開度センサ
100 ECU
101 第1吸気制御弁開度補正部
102 第2吸気制御弁開度判定部
120 入力インタフェース
121 出力インタフェース
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の吸気管の吸気通路をシリンダに入る前に2本に分けて、一方に第1吸気制御弁を設けるとともに他方に第2吸気制御弁を設け、各制御弁の開き始めるタイミングをずらして低回転速度から高回転速度に至る全領域での運転性能を向上させるようにしたものがある(特許文献1参照)。かかる技術では、第1吸気制御弁と第2吸気制御弁を順次開弁する制御が実行されている。
【0003】
また、2つの吸気制御弁を設けた場合には、特に各吸気制御弁の開度の違いに対しても吸入空気量を正確に求めることが高精度な制御を行う上で重要になる。吸気制御弁として例えばバタフライ弁を用いた場合にはその開度を角度センサ(開度センサ)で検出し、その検出開度に基づき吸入空気量を推定する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−201336号公報
【特許文献2】実公平5−17402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸気制御弁の開度変化に対する吸気制御弁下流における吸気圧力(もしくはエンジンの1気筒あたりの吸入空気量または出力トルク)の変化量はエンジン回転数が低いほど大きく、一方、エンジン回転数が高いほど小さくなる。第1吸気制御弁を小さな開度から徐々に開いていくと、臨界圧力を超えた付近以降は吸気圧力の増加率が低下し、漸近的にある値に収束する、いわゆるサチュレート状態となる。この吸気圧力の収束値はエンジン回転数が高いほど低くなる。そして、この吸気圧力の収束値に対応する第1吸気制御弁の開度(有効開度)は、エンジン回転数が高いほど大きくなる。
【0006】
従来技術のように、第1吸気制御弁を常に予め設定された所定の開度(例えば、全開)まで開いた後に、第2吸気制御弁を開弁するシーケンスとした場合、第1吸気制御弁の開度が達成できる吸気圧力増加率の収束値近傍に到達しているにもかかわらず、第2吸気制御弁が開弁しない事態が生ずる。この結果、サチュレート状態が継続することとなり、エンジントルクの無反応領域が発生する。車両を運転する乗員はアクセルを踏み込んでも車両が加速しないと感じるため、運転のフィーリングが悪化するおそれがあった。かかる現象は加速時だけでなく、減速時にも生じていた。
【0007】
本発明は、かかる課題を鑑み、第1吸気制御弁に続いて第2吸気制御弁が開弁するときに吸気圧力(吸入空気量)の変化が停滞した状態の発生を防止する内燃機関の吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内燃機関の吸気装置である。この装置は、第1吸気通路と、前記第1吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第1吸気制御弁と、前記第1吸気通路における前記第1吸気制御弁の上流と下流とに連通する第2吸気通路と、前記第2吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第2吸気制御弁と、を備えている。この装置は、前記第1吸気制御弁と前記第2吸気制御弁を順次開弁するよう制御する。そして、前記第1吸気制御弁が前記内燃機関の回転数に基づいた所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい判定開度まで開弁したとき、前記第2吸気制御弁を開弁する制御手段を備えることを特徴としている。
【0009】
かかる構成によれば、第2吸気制御弁が開弁するときの第1吸気制御弁の開度は、内燃機関(エンジン)回転数に基づいた所定の開度と設定されている。この所定の開度は、第2吸気制御弁が開弁したときに吸入空気量の変化をほぼ連続的に推移させるように設定されているため、第1吸気制御弁によるサチュレート状態の継続を防止することができる。
【0010】
本発明は、内燃機関の吸気装置において、目標吸入空気量を算出する手段と、前記内燃機関の回転数に応じた前記第1吸気制御弁の所定有効開度を算出する手段と、前記第1吸気制御弁が前記所定有効開度でありかつ前記第2吸気制御弁が全閉相当開度である場合の仮定吸入空気量を算出する手段と、前記目標吸入空気量が前記仮定吸入空気量を超えているか判定する第1判定手段と、前記第1吸気制御弁の開度が前記所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい第1判定開度以上か判定する第2判定手段と、前記第1判定手段および前記第2判定手段の双方が肯定された場合に前記第2吸気制御弁の開弁を許可する許可判定手段と、前記許可判定後に、前記目標吸入空気量が前記仮定吸入空気量以下となり且つ前記第1吸気制御弁の開度が前記所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい第2判定開度未満となる取消条件が成立するまで前記許可判定を継続し、前記取消条件成立後に前記許可判定を取り消す許可取消手段と、を備える構成とすることもできる。
【0011】
かかる構成によれば、前記許可判定後に機関回転数の上昇によって所定有効開度が増加し第1吸気制御弁の開度が当該増加後の所定有効開度よりも小さくなった場合においても、前記取消条件が成立するまで前記許可判定は継続されるため、機関回転数の上昇時に第2吸気制御弁が全閉してしまう又は第2吸気制御弁が一定開度で停滞してしまうことを防ぎ、第2吸気制御弁の安定した作動を実現させることができる。
【0012】
前記構成において、前記所定有効開度は、前記第1吸気制御弁の開度の変化に対する前記第1吸気通路を流れる吸入空気量の変化が所定の割合以下の開度範囲に設定されていることが好ましい。かかる構成によれば、所定有効開度の近傍では、第1吸気制御弁の開度に対する吸入空気量の変化の感度が低いため、吸入空気量の変化を連続的にすることが容易となり、所定有効開度を正確に設定することができる。
【0013】
前記構成は、前記内燃機関は複数の気筒を備えており、前記第2吸気制御弁は各気筒ごとに備えられた多連スロットル弁であり、前記第1吸気制御弁は単一のスロットル弁である、いわゆる多連スロットル式エンジンに適用することが好適である。また、前記所定の開度は前記内燃機関の回転数の上昇に伴い大きくなるよう構成することが好適である。
【0014】
かかる構成によって、吸入空気量の流量が少ない第1吸気通路に備えられた第1吸気制御弁の制御の精度向上を図ることができ、一方吸入空気量の流量が多い第2吸気通路に備えられた第2吸気制御弁の制御の応答性向上を図ることができる。また、エンジン回転数の上昇に伴う吸入空気量の増加に対応した応答性遅れの少ない吸気制御をすることができる。
【0015】
前記構成は、前記第2吸気制御弁が開弁している間、前記第1吸気制御弁は前記所定有効開度に制御され、前記回転数の変化に応じて前記所定有効開度が変化するように構成することができる。かかる構成によって第2吸気制御弁の開弁に伴い内燃機関の回転数が変化した場合であっても、第1吸気制御弁の所定有効開度は変化した回転数に応じた開度とすることができる。
【0016】
また、前記構成は、前記第2吸気制御弁が全閉相当開度まで閉弁したとき、前記第1吸気制御弁を前記所定有効開度よりも閉弁側に駆動する制御手段をさらに備えるように構成することができる。かかる構成によって、開弁時の制御と同様に、車両の減速時における閉弁時の際に生ずるサチュレート状態を抑制することができる
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1吸気制御弁に続いて第2吸気制御弁が開弁するときに吸気圧力(吸入空気量)の変化が抑制もしくは停滞した状態を緩和する内燃機関の吸気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる内燃機関における吸気装置の要部を示す模式図である。
【図2】吸気装置の要部ブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる第1吸気制御弁および第2吸気制御弁の制御要領を示すフロー図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる第1吸気制御弁および第2吸気制御弁の制御要領を示すフロー図である。
【図5】従来の第1吸気制御弁の開度と、第2吸気制御弁の開度と、内燃機関への吸入空気量(吸気圧力)との関係を表すタイムチャートである。
【図6】本発明の一実施形態にかかる第1吸気制御弁の開度と、第2吸気制御弁の開度と、内燃機関への吸入空気量(吸気圧力)との関係を表すタイムチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態にかかる第1吸気制御弁の所定の開度を設定するマップの一例であり、(a)は有効開度の設定のための説明図、(b)は回転数に対する有効開度のチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態にかかるマップの一例であり、(a)は第1吸気制御弁の開度−吸入空気量線図であり、(b)は第2吸気制御弁の開度−吸入空気量線図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる第1吸気制御弁および第2吸気制御弁の制御要領を示すフロー図である。
【図10】エンジン回転数の上昇に伴う、第1吸気制御弁の有効開度に相当する空気量と、目標吸入空気量との関係を表すタイムチャートである。
【図11】エンジン回転数の上昇に伴う、第1吸気制御弁の有効開度に対する実開度の挙動を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態が適用された内燃機関における吸気装置の要部を示す模式図である。図示例の内燃機関は例えば直列5気筒エンジンある。
【0020】
図1を参照すると、各シリンダCL1〜5の各吸気ポートには第1吸気通路1と第2吸気通路2とがそれぞれ連通している。両吸気通路1,2は上流側で1本の吸気ダクト3に連通している。吸気ダクト3の上流にはエアフィルタ4が設けられており、吸入空気(新気)はエアフィルタ4から吸入ダクト3へ吸入される。なお、吸気ダクト3には吸気流量を計測するためのエアフローメータ5が設けられており、両吸気通路1,2はエアフローメータ5の下流側で分岐されている。
【0021】
第1吸気通路1は吸気ダクト3から分岐された1本の通路として設けられている。この1本の通路には、たとえばバタフライバルブからなる第1吸気制御弁6が設けられている。その後、第1吸気通路1は2段階に分岐されて各シリンダCL1〜5の各吸気ポートに連通している。第1吸気制御弁6は5気筒に対して1つのみ設けられている。
【0022】
第2吸気通路2は吸気ダクト3から分岐された後には1本の通路となるエアチャンバからシリンダCL1〜5毎に分岐されて各吸気ポートに連通している。分岐部分すなわちシリンダCL1〜5ごとに、たとえばバタフライバルブからなる第2吸気制御弁7が設けられている。
【0023】
なお、図示例では、各吸気制御弁6,7はドライブ・バイ・ワイヤで制御され、第1吸気制御弁6は対応するアクチュエータ8により、各第2吸気制御弁7は互いに連動するように1つのアクチュエータ9により、それぞれ開閉制御されるようになっている。第1吸気制御弁6とアクチュエータ8との間には第1吸気制御弁6の開度を検出する第1開度センサ10が設けられ、各第2吸気制御弁7とアクチュエータ9との間には第2吸気制御弁7の開度を検出する第2開度センサ11が設けられている。
【0024】
また、各アクチュエータ8,9を制御する制御装置(ECU)100が設けられており、そのECU100には前記した各開度センサ10,11からの開度検出信号と、エアフローメータ5からの上流側空気流量検出信号とがそれぞれ入力している。さらに、ECU100には、アクセルペダル(図示せず)からのアクセル信号ACLと、エンジン回転センサ(図示せず)からの回転数Neと、吸気圧センサ(図示せず)からの吸気圧Pbと、大気圧センサ(図示せず)からの大気圧Paの各信号がそれぞれ入力されている。ECU100ではそれらの信号に応じて各吸気制御弁6,7を制御する。
【0025】
次に、図2の要部ブロック図を参照して本実施形態にかかる吸気装置について説明する。なお、図2では1つのシリンダCL1について代表して示すが、他のシリンダについても同様であり、同様に適用される。
【0026】
本実施形態の吸気装置は、ECU100によって実現できる。ECU100は、一種のコンピュータであり、演算を実行するプロセッサ(CPU)、各種データを一時記憶する記憶領域およびプロセッサによる演算の作業領域を提供するランダム・アクセス・メモリ(RAM)、プロセッサが実行するプログラムおよび演算に使用する各種のデータが予め格納されている読み出し専用メモリ(ROM)、およびプロセッサによる演算の結果およびエンジン系統の各部から得られたデータのうち保存しておくものを格納する書き換え可能な不揮発性メモリを備えている。不揮発性メモリは、システム停止後も常時電圧供給されるバックアップ機能付きRAMで実現することができる。
【0027】
ECU100の吸気制御機能は、前記した回転数Neの信号と、第1開度センサ10が検出した第1吸気制御弁6の開度θ1の信号と、第2開度センサ11が検出した第2吸気制御弁7の開度θ2の信号と、を受け取る入力インタフェース120と、第1吸気制御弁開度補正部101と、第2吸気制御弁開度判定部102と、制御信号等を第1吸気制御弁6のアクチュエータ8および第2吸気制御弁7のアクチュエータ9へ出力する出力インタフェース121と、から構成されている。そして、ECU100は、第1吸気制御弁開度補正部101と、第2吸気制御弁開度判定部102の機能を実現させるようにプログラムされている。
【0028】
入力インタフェース120は、ECU100とエンジン系統の各部とのインタフェース部であり、エンジン系統の様々な箇所から送られてくる車両の運転状態を示す情報を受け取って信号処理を行い、アナログ情報はデジタル信号に変換し、これらをECU100の第1吸気制御弁開度補正部101と、第2吸気制御弁開度判定部102および動力機関系統の制御機器へ受け渡す。図1、2では、一部しか示していないが、これに限定されるものではなく、その他種々の情報が入力される。
【0029】
第1吸気制御弁開度補正部101は、回転数Neの信号を入力し、たとえば、ECU100のメモリに格納されたマップを参照して、回転数Neに基づく有効開度(所定有効開度)θuの信号を算出する。そして、第1吸気制御弁開度補正部101は、第1吸気制御弁6の開度θ1の信号を入力し、開度θ1が算出された有効開度θuになるように制御信号をアクチュエータ8へ出力する。開度θ1が有効開度θuになったとき、第1吸気制御弁開度補正部101は、アクチュエータ9へ第2吸気制御弁7を開動作する旨の制御信号をアクチュエータ9へ出力する。
【0030】
第2吸気制御弁開度判定部102は、第2吸気制御弁7の開度θ2の信号も入力し、第2吸気制御弁7が開閉しているか否かを判定し、判定結果の信号を第1吸気制御弁開度補正部101へ送出する。第1吸気制御弁開度補正部101は、第2吸気制御弁の開閉状況によって、第1吸気制御弁6の開動作の制御信号を調整する。かかるプロセスについての詳細は後記する。
【0031】
出力インタフェース121は、ECU100によって算出された制御指令を吸気装置へ出力する機能を有する。しかしながらこれに限定するものではなく出力インタフェース121には、他のコントローラ等を接続することもできる。
【0032】
次に、図3および図4のフロー図を参照して、吸気装置による制御の例を説明する。図3を参照すると、ステップST1でスロットル目標開度設定処理を行う。そのスロットル目標開度設定処理について図4のフロー図を参照して説明する。
【0033】
図4を参照すると、ステップST1aではアクセル信号ACLの大きさ(踏み込み量)に基づいて要求吸入空気量Gdを算出する。なお、アクセル信号ACLの大きさの変化に対する要求吸入空気量Gdの変化はリニアであって良い。次のステップST1bで要求吸入空気量Gdとアイドルに必要な吸入空気量Giとを加算した目標吸入空気量Gpを算出する。ここで、Gpは1気筒あたりの吸入空気量である。
【0034】
次のステップST1cにおいて、ECU100の第1吸気制御弁開度補正部101は、エンジン回転センサが検出した回転数Neを取得する。そして、第1吸気制御弁開度補正部101は、取得された回転数Neに基づき、ECU100のメモリに格納されたマップ(ステップST1e)を参照して、第1吸気制御弁6の有効開度(所定有効開度)θuを設定し、その信号を算出する(ステップST1d)。
【0035】
ここで、図5〜7を参照して、マップとしてECU100のメモリに格納されたエンジンの回転数Neと有効開度θuとの関係を説明する。図5は従来の第1吸気制御弁の開度と、第2吸気制御弁の開度と、内燃機関への吸入空気量(もしくは吸気圧力または出力トルク)との関係を表すタイムチャートである。図6は本実施形態にかかる第1吸気制御弁の開度と、第2吸気制御弁の開度と、内燃機関への吸入空気量(もしくは吸気圧力または出力トルク)との関係を表すタイムチャートである。図7は本実施形態にかかる第1吸気制御弁の所定の開度を設定するマップの一例であり、(a)は有効開度の設定のための説明図、(b)は回転数に対する有効開度のチャートである。
【0036】
図5は、例えば特許文献1等で開示されている多連スロットル式エンジンにおいて、エンジン回転数が高い場合における、第1吸気制御弁と第2吸気制御弁の開度動作のタイムチャートに、内燃機関への吸入空気量(吸気圧力)の推移を併せて示している。
【0037】
図5を参照すると、エンジン回転数が高い場合には、吸気圧力の変化量が第1吸気制御弁の臨界圧力を超えるため、領域SAで示される、いわゆるサチュレート状態が発生する。
【0038】
その後、第1吸気制御弁は開弁動作を停止して、第2吸気制御弁の開弁に伴い吸入空気量は急激に増加する。その結果、吸入空気量(吸気圧力)は、第1吸気制御弁の開弁に伴う立ち上がりの変化TR1と、第2吸気制御弁の開弁前のサチュレート状態の領域SAと、その後第2吸気制御弁の開弁に伴う大きな変化TR2と、の3段階の変化となり、連続的な推移とならない。この領域SAは、エンジントルクの無反応領域となり、車両を運転する乗員がアクセルを踏み込んでも車両が加速しないと感じ、運転のフィーリングを悪化させるおそれがあった。かかる現象は加速時だけでなく、図5の右半分のチャートに示すように減速時にも生じていた。
【0039】
次に、図6は、本実施形態において、エンジン回転数が高い場合における、第1吸気制御弁と第2吸気制御弁の開度動作のタイムチャートに、内燃機関への吸入空気量(もしくは吸気圧力または出力トルク)の推移を併せて示した図5と同様なチャートである。
【0040】
図6を参照すると、本実施形態はサチュレート状態になる前の第1吸入制御弁が有効開度(所定の開度)のときに、ECU100から第2吸気制御弁へ開弁指令が送られている。かかる構成によって、図5に示した従来技術の領域SAのような現象は発生せず、吸入空気量(吸気圧力)は連続的に推移する。そのためアクセル踏込量に対する吸入空気量もしくは吸気圧力または出力トルクの反応が鈍化することを防止できる。
【0041】
有効開度は、サチュレート状態になる前の、第1吸気制御弁の開度の変化に対する第1吸気通路を流れる吸入空気量の変化が所定の割合以下となる開度に設定されている。かかる開度の範囲内に有効開度が設定されることによって、第1吸気制御弁の開度に対する吸入空気量の変化の感度が低いため、吸入空気量の変化を連続的にすることが容易となり、所定の開度を正確に設定することができる。
【0042】
次に、図7の(a)は内燃機関の吸気圧力PBAのタイムチャートを示しており、各二点鎖線A,B,C,D,E,Fは、この順で、回転数Neが低回転の場合から高回転の場合の吸気圧力PBAの推移を表している。例えば、回転数Neが最も低い場合の吸気圧力PBAの推移は二点鎖線Aで示され、回転数Neが最も高い場合の吸気圧力PBAの推移は一点鎖線Fで示されている。二点鎖線B〜Fの途中から分岐している実線CB,CC,CD,CE,CFは、第1吸気制御弁が有効開度に到達して、第2吸気制御弁が開弁されて増加した吸気圧力PBAの推移を示している。実線が分岐した以降の二点鎖線は、たとえば特許文献1に開示されている従来技術のように、第2吸気制御弁が開弁するときの第1吸気制御弁の開度を常に同じものとした場合の吸気圧力PBAの推移である。なお、前記したように、吸気圧力PBAはエンジン1気筒あたりの吸入空気量あるいは出力トルクとみなすことができる。
【0043】
図7(a)を参照すると、回転数Neが低い二点鎖線Aにおいては、第2吸気制御弁の開弁動作に伴って吸入空気量が増加したときにでも、吸気圧力PBAの変化はほぼ連続的に推移させることができる。
【0044】
しかしながら、二点鎖線Bに対応する回転数Neを超えると、吸気圧力PBAの推移の中に、吸気圧力PBAがサチュレートした状態の領域SAを生じさせる。本実施形態では、吸気圧力PBAの推移が領域SAに到達する前の変化点Pを検出し、この変化点Pに対応する第1吸気制御弁の開度を取得した。この開度が有効開度となり、第1吸気制御弁の開度が有効開度になったときに、第2吸気制御弁を開弁することによって、吸気圧力PBAがサチュレートした状態の領域SAの発生を防止することができる。
【0045】
図7(b)は、前記した変化点Pにおける第1吸気制御弁の有効開度θuを回転数Neごとにサンプリングしてプロットしたチャートの例である。このチャートをマップとしてECU100のメモリに格納することができる。なお、図7(b)のマップの例は標準大気圧のマップとなっているが、例えば図7(a)において、開度または吸気圧力(吸入空気量)を実大気圧に基づいて補正して図7(b)のマップを作成することもできる。
【0046】
図4を再び参照すると、次のステップST1fでは目標吸入空気量Gpが前記した有効開度θuに対応する有効開度相当吸入空気量Guより大きいか否かを判別し、大きいと判定された場合にはステップST1gに進み、小さいと判定された場合にはステップST1hに進む。なお、Guは1気筒あたりの有効開度相当吸入空気量である。
【0047】
ここで図8を参照して、吸気制御弁の開度と吸入空気量との関係に基づき有効開度相当吸入空気量Guを説明する。図8は標準大気圧におけるものであり、(a)は第1吸気制御弁の開度−吸入空気量線図であり、(b)は第2吸気制御弁の開度−吸入空気量線図である。なお、図8の縦軸は、1気筒あたりの吸入空気量を表している。図8(a)を参照すると、例えば開度θxの時に第1吸入空気量Gxとなる。第1吸気制御弁6は先に開く弁であり、主としてアイドリング時や低速回転時における吸入空気量の制御を行うために用いられる。
【0048】
また、第1吸気制御弁6は全閉から全開まで開閉可能にされているが、制御に用いられる開度領域を、図に示されるようにアイドリング用の最小開度から所定の有効開度θuまでとすると良い。なお、有効開度θuは図7(b)のように設定される。
【0049】
最小開度で最小吸入空気量Gsとなり、有効開度θuで有効開度相当吸入空気量Guとなり、その間での開度θxに対応して第1吸入空気量Gxが求められる。また、回転速度Neの違いでその値は変わるため、回転速度別に複数のマップMAP1が用意されており、回転速度Neに応じて1つのマップが用いられる。ここでMAP1は第2吸気制御弁6が全閉状態であることを前提としている。マップの数は任意であり、マップ間を補間すると良い。
【0050】
第2吸気制御弁7の開度に対応する吸入空気量は、図8(b)に示されるマップMAP2から求められる。マップMAP2も数は任意であり、マップ間を補間すると良い。図8(b)の横軸は第2吸気制御弁7の開度であり、縦軸が吸入空気量である。図では、第1吸気制御弁6が有効開度θuの場合の第2吸気制御弁7の開度変化における吸入空気量の変化が実線により示されており、第1吸気制御弁6が最小開度の場合の第2吸気制御弁7の開度変化における吸入空気量の変化が二点鎖線により示されている。なお、図のθ2xは第2吸気制御弁7の目標開度であり、以降のステップで設定される。
【0051】
ステップST1gでは第1吸気制御弁6の目標開度θxを有効開度θuに設定し、次のステップST1iで、実回転速度から選択されたMAP2に基づいて第2吸気制御弁7の目標開度θ2xを設定する。また、ステップST1hではMAP1に基づき目標吸入空気量Gpに対応する第1吸気制御弁6の開度θxを設定し、次のステップST1jで、第2吸気制御弁7の目標開度θ2xを0度に設定する。なお、MAP1およびMAP2は、前記したように標準大気圧のマップとなっているが、これらのマップで求めた開度またはマップに用いる吸入空気量を実大気圧に基づいて補正することもできる。
【0052】
各ステップST1i・1jの次のステップST1kでは目標吸入空気量Gpの今回値Gp(n)が前回値Gp(n−1)よりも大きいか否かを判別し、大きいと判定された場合にはステップST1mに進み、変わらないか小さいと判定された場合にはステップST1nに進む。ステップST1mではスロットル増加フラグFを1とし、ステップST1nではスロットル増加フラグFを0として図4のフローを終了する。
【0053】
再び図3を参照すると、ステップST2に進み、そこでスロットル増加フラグFが1であるか否かを判別する。スロットル増加フラグFは、ステップST1で設定された目標開度が前回よりも開き側の場合を1とする。スロットル増加フラグF2が1であると判定された場合にはステップST3に進む。
【0054】
ステップST3では、第2吸気制御弁7の目標開度が0度(全閉)より大きいか否かを判別する。ステップST1でアイドリング状態や低速走行の場合に相当するようなアクセルペダルの踏み込み量だった場合には第1吸気制御弁6の有効開度θuの範囲内で運転可能であり、そのような目標開度の場合には第2吸気制御弁7の開度は0度と設定される。ステップST3で第2吸気制御弁7の目標開度が0度より大きいと判定された場合にはステップST4に進む。
【0055】
ステップST4では第1吸気制御弁6の実開度(検出開度)θ1が有効開度θuに該当する(θ1≧θu)か否かを判別する。第1吸気制御弁6の実開度θ1が有効開度θuに該当すると判定された場合にはステップST5に進む。第1吸気制御弁6の実開度θ1が有効開度θuに達しており、開き側に駆動制御する場合には第2吸気制御弁7を開く制御を行う場合であり、ステップST5で第2吸気制御弁7を目標開度θ2xまで駆動し、本ルーチンを終了する。ここで、検出開度の誤差等の影響を考慮して、ステップST4における判定開度を有効開度θuそのものとせずに有効開度θuより所定開度小さい判定開度を用いても良い。
【0056】
上記ステップST3で第2吸気制御弁7の目標開度が0度であると判定された場合にはステップST6に進む。この場合には第2吸気制御弁7を開くほどの目標開度が設定されなかった場合であり、ステップST6で、第1吸気制御弁6を目標開度θxに駆動し、本ルーチンを終了する。
【0057】
また上記ステップST4で第1吸気制御弁6の実開度θ1が有効開度θuに達していないと判定された場合にはステップST7に進む。この場合にはステップST3で第2吸気制御弁7を開くと判定されていることから、ステップST7で第1吸気制御弁6を有効開度θuに駆動し、本ルーチンを終了する。
【0058】
上記ステップST2でスロットル増加フラグFが0であると判定された場合にはステップST8に進む。この場合には閉じ側に駆動する場合であり、ステップST8では第2吸気制御弁7の実開度(検出開度)θ2が0度(全閉)より大きいか否かを判別する。ステップST8で第2吸気制御弁7の実開度θ2が0度であると判定された場合には、第2吸気制御弁7が全閉であり、その場合の制御対象は第1吸気制御弁6となることから、ステップST9では第1吸気制御弁6を目標開度θxに駆動し、本ルーチンを終了する。
【0059】
ステップST8で第2吸気制御弁7の実開度θ2が0度より大きいと判定された場合にはステップST10に進む。この場合には、第2吸気制御弁7が開いている状態であることから先に第2吸気制御弁7を全閉側に駆動するために、ステップST10で第2吸気制御弁7を目標開度θ2xに駆動し、さらにステップST11で第1吸気制御弁6を有効開度θuに設定して本ルーチンを終了する。
【0060】
なお、ステップST8で実開度θ2を0度より大きいか否かを判定しているが、第2開度センサ11の精度のばらつきを考慮して、0度よりも大きい所定の全閉相当開度以下となっているか否かを判定するようにしても良い。この場合、全閉相当開度以下であると判定された場合にはステップST9を実行し、全閉相当開度を越えていると判定された場合にはステップST10を実行する。
【0061】
それぞれ、次の制御サイクルではステップST1から再開することになる。例えばステップST7に進んだ場合には第1吸気制御弁6を有効開度θuに駆動するが、その場合には第2吸気制御弁7を目標開度θ2xに駆動する場合であり、次のサイクルでステップST5に進み、第2吸気制御弁7を開く駆動制御を行うことになる。同様にステップST10に進んだ場合に第2吸気制御弁7を全閉にする目標開度が設定されていたら、まず第2吸気制御弁7を全閉にし、次のサイクルでステップST9に進んで第1吸気制御弁6を閉じる駆動制御を行うことになる。
【0062】
このように、本実施形態では、順次開閉する場合にはステップST2以降で制御するようにしており、これらの切替制御を行う開制御切り替え手段と閉制御切り替え手段とは、制御装置ECU内の回路またはプログラムにより構成されていて良い。かかるプロセスとすることによって、第2吸気制御弁7の状態に応じて、第1吸気制御弁6および第2吸気制御弁7を適切に制御し、吸気圧力(吸入空気量)がサチュレートした状態の領域SAの発生を防止することができる。
【0063】
[第2実施形態]
次に図9〜図11を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図9は、本実施形態にかかる第1吸気制御弁および第2吸気制御弁の制御要領を示すフロー図である。図10は、エンジン回転数の上昇に伴う、第1吸気制御弁の有効開度に相当する空気量と、目標吸入空気量との関係を表すタイムチャートであり、図における目標吸入空気量および有効開度相当吸入空気量は1気筒あたりの吸入空気量を表している。図11は、エンジン回転数の上昇に伴う、第1吸気制御弁の有効開度に対する実開度の挙動を表すタイムチャートである。
【0064】
図9を参照すると、ステップST201において、ECU100の第1吸気制御弁開度補正部101は、エンジン回転センサが検出した回転数Neを取得する。そして、第1吸気制御弁開度補正部101は、取得された回転数Neに基づき、ECU100のメモリに格納されたマップ(ステップST203)を参照して、第1吸気制御弁6の有効開度(所定有効開度)θuを設定し、その信号を算出する(ステップST202)。ステップST203で参照するマップは、前記した第1実施形態と同様に、図7(b)に示す変化点Pにおける第1吸気制御弁の有効開度θuを回転数Neごとにサンプリングしてプロットしたチャートが適用される(第1吸気制御弁の所定有効開度を算出する手段)。
【0065】
次のステップST204では、アクセル信号ACLの大きさ(踏み込み量)に基づいて要求吸入空気量Gdを算出する。なお、アクセル信号ACLの大きさの変化に対する要求吸入空気量Gdの変化はリニアであって良い。そして、要求吸入空気量Gdとアイドルに必要な吸入空気量Giとを加算した目標吸入空気量Gpを算出する(目標吸入空気量を算出する手段)。
【0066】
次のステップST205では、エンジン回転数Neおよび有効開度θuのマップを参照して有効開度相当吸入空気量Guを検索する(仮定吸入空気量を算出する手段)。ここで、図10を参照すると、第1吸気制御弁6がある有効開度θuのとき、第1吸気制御弁6を通過する空気量は、エンジン回転数Neに応じて変化する。この空気量が有効開度相当吸入空気量Guであり、図10に相当するタイムチャートが、有効開度θuに基づき設定されたマップとして用いることができる。なお、図10に示すように破線を境にして、有効開度相当吸入空気量Guは目標吸入空気量Gpを下回り、図示しない第2吸気制御弁7が開弁する制御が実行される。
【0067】
次のステップST206では、第2吸気制御弁7の開度θ2がθ2hと比較される。θ2hはしきい値であり、ほぼ0付近の開度が設定されている。θ2がθ2hよりも小さいとき(ステップST206:No)、第2吸気制御弁7は閉弁状態であるため、目標吸入空気量Gpとエンジン回転数Neに基づくマップを参照して、第1吸気制御弁6の開度θ1を検索する(ステップST207)。このマップは前記した図8と同様であり、目標吸入空気量Gpに応じて、第1吸気制御弁6の開度θ1がプロットされているものである。また、回転速度Neの違いでその値は変わるため、回転速度別に複数のマップMAP1が用意されており、回転速度Neに応じて1つのマップが用いられる。マップの数は任意であり、マップ間を補間すると良い。θ2がθ2hよりも大きいとき(ステップST206:Yes)、第2吸気制御弁7は開弁状態であるため、第1吸気制御弁6の開度θ1は有効開度θuとされる(ステップST208)。
【0068】
次のステップST209では、フラグFが1か否かが判断される。フラグFは初期値としては0が設定されており、後記するプロセスにおいて1もしくは0が設定される。このフラグFは、図10に示す目標吸入空気量Gpが有効開度相当吸入空気量Gu以上となる領域(破線より右側の領域)において、第1吸気制御弁6の開度θ1が有効開度θuを超えたときにフラグFを1としている。
【0069】
ここで、図11を参照して、本実施形態における第1吸気制御弁6の開弁制御について説明する。図11は、エンジン回転数Neの上昇に伴う、有効開度θuに対して設定された第1吸気制御弁目標開度θoに応じた第1吸気制御弁実開度θ1の挙動を示している。図11を参照すると、点線で示す有効開度θuに基づき、破線で示す第1吸気制御弁目標開度θoとなるように第1吸気制御弁6が制御される。第1吸気制御弁6は、第1吸気制御弁目標開度θoの動きに追従して開弁され、実線で示す第1吸気制御弁実開度θ1のように開弁する。垂直の破線は図10の破線と同じであり、破線を境にして、有効開度相当吸入空気量Guは目標吸入空気量Gpを下回り、第2吸気制御弁7が開弁する制御が実行される。
【0070】
本実施形態では、後記するプロセスにおいて、有効開度θuとともに第1判定開度θuhと第2判定開度θuLとを新たに設けている。吸気制御弁の開度センサの検出誤差の影響によって、目標とする制御開度(例えば、第1吸気制御弁目標開度θo)と検出された実際の開度(例えば、第1吸気制御弁実開度θ1)との間に、定常的な誤差を生ずる場合がある。この定常的な誤差を考慮してそれぞれの判定開度が設定されており、先ず第1判定開度θuhは有効開度θuより僅かに小さい開度としている(θuh<θu)。ただし、上述した誤差を無視できるような場合(例えば誤差が0と見なせる場合あるいは上記誤差を考慮した補正が既に検出開度に施されている場合など)には第1判定開度θuhとして有効開度θuを用いても良い(θuh=θu)。一方、検出された実際の開度は、目標とする制御開度の信号に対して、通常時間的な遅れをもって作動する。この時間遅れによって第2吸気制御弁7が開閉を繰り返すハンチング現象を生ずることを防止するために、前記した第1判定開度θuhよりも小さな開度の第2判定開度θuLを設定している(θuL<θuh)。ただし、応答性が高く、時間遅れが小さいときには、第1判定開度θuhと第2判定開度θuLとを同じ開度に設定することもできる(θuL=θuh)。
【0071】
再び、図9を参照してプロセスを説明する。フラグFが1と判断されると(ステップST209:Yes)、目標吸入空気量Gpと有効開度相当吸入空気量Guとが比較される(第1判定手段:ステップST210)。目標吸入空気量Gpが有効開度相当吸入空気量Guよりも大きければ(ステップST210:No)、フラグFを1に設定する(ステップST214)。図10を参照すると、破線で示した境界を超え、目標吸入空気量Gpが有効開度θuに開弁された第1吸気制御弁6の空気流量を超えるため、フラグFを1として、第2吸気制御弁7の開弁制御が実行される。開弁制御にあたっては、目標吸入空気量Gpとエンジン回転数Neに基づくマップを参照して、第2吸気制御弁7の開度θ2が検索されて(ステップST215)、本プロセスは終了する。このマップは前記した図8と同じであり、目標吸入空気量Gpに応じて、第2吸気制御弁7の開度θ2がプロットされているものである。また、回転速度Neの違いでその値は変わるため、回転速度別に複数のマップMAP2が用意されており、回転速度Neに応じて1つのマップが用いられる。マップの数は任意であり、マップ間を補間すると良い。
【0072】
目標吸入空気量Gpが有効開度相当吸入空気量Guよりも小さければ(ステップST210:Yes)、第1吸気制御弁実開度θ1が第2判定開度θuLと比較される(第2判定手段:ステップST211)。第1吸気制御弁実開度θ1が第2判定開度θuLと等しい、もしくは大きければ(ステップST211:Yes)、フラッグFを1に設定し(ステップST214)、図8(b)に示す目標吸入空気量Gpとエンジン回転数Neに基づくマップを参照して、第2吸気制御弁7の開度θ2が検索されて(ステップST215)、本プロセスは終了する。
【0073】
第1吸気制御弁実開度θ1が第2判定開度θuLより小さい場合(ステップST211:No)、フラグFは0に設定される(ステップST216)。第2吸気制御弁7の開度θ2は0に設定され(ステップST217)、本プロセスは終了する。
【0074】
フラグFが0と判断されると(ステップST209:No)、目標吸入空気量Gpと有効開度相当吸入空気量Guとが比較される(第1判定手段:ステップST212)。目標吸入空気量Gpが有効開度相当吸入空気量Guよりも小さければ(ステップST212:No)、フラグFは0に設定される(ステップST216)。第2吸気制御弁7の開度θ2は0に設定され(ステップST217)、本プロセスは終了する。
【0075】
目標吸入空気量Gpが有効開度相当吸入空気量Guよりも大きければ(ステップST212:Yes)、第1吸気制御弁実開度θ1が第1判定開度θuhと比較される(第2判定手段:ステップST213)。第1吸気制御弁実開度θ1が第1判定開度θuhと等しい、もしくは大きければ(ステップST213:Yes)、フラグFを1に設定し(ステップST214)、図8(b)に示す目標吸入空気量Gpとエンジン回転数Neに基づくマップを参照して、第2吸気制御弁7の開度θ2が検索されて(ステップST215)、本プロセスは終了する。
【0076】
第1吸気制御弁実開度θ1が第1判定開度θuhより小さい場合(ステップST213:No)、フラグFは0に設定される(ステップST216)。第2吸気制御弁7の開度θ2は0に設定され(ステップST217)、本プロセスは終了する。
【0077】
かかるプロセスを具現化することにより、第1実施形態と同様に、第2吸気制御弁7の状態に応じて、第1吸気制御弁6および第2吸気制御弁7を適切に制御し、吸気圧力(吸入空気量)がサチュレートした状態の領域SAの発生を防止することができる。さらに、本実施形態では、ST212;YesとST213;Yesの条件に基づき第2吸気制御弁7の開弁を許可する許可判定フラグFを1に設定する許可判定手段と、フラグFが1に設定された後、ST210;NoとST211;Noの条件に基づきフラグFを0(初期状態)とする許可取消手段とを備えている。したがって、フラグFが1に設定された後に、機関回転数Neの上昇によって有効開度θuが増加し、当該有効開度θuよりも第1吸気制御弁6の検出開度θ1が一時的に小さくなった場合においても、ST210;NoとST211;Noの条件が成立するまでフラグFは1に継続して設定され、例えばフラグF=1且つGp>Guであれば第1吸気制御弁6の検出開度θ1を確認しない構成となるので、機関回転数Neの上昇に伴う有効開度θuの増大時に、第2吸気制御弁7が全閉してしまう又は第2吸気制御弁7が一定開度で停滞してしまうことを防ぎ、加速時における第2吸気制御弁7の安定した作動を実現させることができる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において改変して用いることができる。たとえば、所定の高応答要求条件(例えばスイッチ操作によりスポーツモードが選択された場合、気筒数可変制御が行われる場合、変速操作時など)が成立する場合に、第1吸気制御弁と第2吸気制御弁を同時に開弁または閉弁する制御手段を本発明に付加してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 第1吸気通路
2 第2吸気通路
6 第1吸気制御弁
7 第2空気制御弁
8,9 アクチュエータ
10、11 開度センサ
100 ECU
101 第1吸気制御弁開度補正部
102 第2吸気制御弁開度判定部
120 入力インタフェース
121 出力インタフェース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吸気通路と、前記第1吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第1吸気制御弁と、前記第1吸気通路における前記第1吸気制御弁の上流と下流とに連通する第2吸気通路と、前記第2吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第2吸気制御弁と、を備える内燃機関の吸気装置において、
前記第1吸気制御弁が前記内燃機関の回転数に基づいた所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい判定開度まで開弁したとき、前記第2吸気制御弁を開弁する制御手段を備えることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
第1吸気通路と、前記第1吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第1吸気制御弁と、前記第1吸気通路における前記第1吸気制御弁の上流と下流とに連通する第2吸気通路と、前記第2吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第2吸気制御弁と、を備える内燃機関の吸気装置において、
目標吸入空気量を算出する手段と、前記内燃機関の回転数に応じた前記第1吸気制御弁の所定有効開度を算出する手段と、前記第1吸気制御弁が前記所定有効開度であり且つ前記第2吸気制御弁が全閉相当開度である場合の仮定吸入空気量を算出する手段と、前記目標吸入空気量が前記仮定吸入空気量を超えているか判定する第1判定手段と、前記第1吸気制御弁の開度が前記所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい第1判定開度以上か判定する第2判定手段と、前記第1判定手段および前記第2判定手段の双方が肯定された場合に前記第2吸気制御弁の開弁を許可する許可判定手段と、
前記許可判定後に、前記目標吸入空気量が前記仮定吸入空気量以下となり、かつ、前記第1吸気制御弁の開度が前記所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい第2判定開度未満となる取消条件が成立するまで前記許可判定を継続し、前記取消条件成立後に前記許可判定を取り消す許可取消手段と、を備える内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記所定有効開度は、前記第1吸気制御弁の開度の変化に対する前記第1吸気通路を流れる吸入空気量の変化が所定の割合以下となる開度範囲に設定されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記内燃機関は複数の気筒を備えており、
前記第2吸気制御弁は各気筒ごとに備えられた多連スロットル弁であり、
前記第1吸気制御弁は単一のスロットル弁である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項5】
前記所定有効開度は前記内燃機関の回転数の上昇に伴い大きくなる、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項6】
前記第2吸気制御弁が開弁している間、前記第1吸気制御弁は前記所定有効開度に制御され、前記回転数の変化に応じて前記所定有効開度が変化することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項7】
前記第2吸気制御弁が全閉相当開度まで閉弁したとき、前記第1吸気制御弁を前記所定有効開度よりも閉弁側に駆動する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項1】
第1吸気通路と、前記第1吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第1吸気制御弁と、前記第1吸気通路における前記第1吸気制御弁の上流と下流とに連通する第2吸気通路と、前記第2吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第2吸気制御弁と、を備える内燃機関の吸気装置において、
前記第1吸気制御弁が前記内燃機関の回転数に基づいた所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい判定開度まで開弁したとき、前記第2吸気制御弁を開弁する制御手段を備えることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
第1吸気通路と、前記第1吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第1吸気制御弁と、前記第1吸気通路における前記第1吸気制御弁の上流と下流とに連通する第2吸気通路と、前記第2吸気通路を通過する吸入空気量を制御する第2吸気制御弁と、を備える内燃機関の吸気装置において、
目標吸入空気量を算出する手段と、前記内燃機関の回転数に応じた前記第1吸気制御弁の所定有効開度を算出する手段と、前記第1吸気制御弁が前記所定有効開度であり且つ前記第2吸気制御弁が全閉相当開度である場合の仮定吸入空気量を算出する手段と、前記目標吸入空気量が前記仮定吸入空気量を超えているか判定する第1判定手段と、前記第1吸気制御弁の開度が前記所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい第1判定開度以上か判定する第2判定手段と、前記第1判定手段および前記第2判定手段の双方が肯定された場合に前記第2吸気制御弁の開弁を許可する許可判定手段と、
前記許可判定後に、前記目標吸入空気量が前記仮定吸入空気量以下となり、かつ、前記第1吸気制御弁の開度が前記所定有効開度または前記所定有効開度よりも小さい第2判定開度未満となる取消条件が成立するまで前記許可判定を継続し、前記取消条件成立後に前記許可判定を取り消す許可取消手段と、を備える内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記所定有効開度は、前記第1吸気制御弁の開度の変化に対する前記第1吸気通路を流れる吸入空気量の変化が所定の割合以下となる開度範囲に設定されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記内燃機関は複数の気筒を備えており、
前記第2吸気制御弁は各気筒ごとに備えられた多連スロットル弁であり、
前記第1吸気制御弁は単一のスロットル弁である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項5】
前記所定有効開度は前記内燃機関の回転数の上昇に伴い大きくなる、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項6】
前記第2吸気制御弁が開弁している間、前記第1吸気制御弁は前記所定有効開度に制御され、前記回転数の変化に応じて前記所定有効開度が変化することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項7】
前記第2吸気制御弁が全閉相当開度まで閉弁したとき、前記第1吸気制御弁を前記所定有効開度よりも閉弁側に駆動する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6に記載の内燃機関の吸気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−236476(P2010−236476A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87091(P2009−87091)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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