説明

内燃機関の排気浄化システム

【課題】エンジン始動直後などの暖機運転時において、エンジンの安定燃焼を確保しつつ、HC排出量の増加を抑制し、早期に排気浄化装置の昇温を図ることができる内燃機関の排気浄化システムを提供すること。
【解決手段】エンジン(1)に供給される空気流量を低減することでエンジン(1)から排出される排気ガスの昇温を図る空気流量制御手段(50)と、空気流量制御手段(50)が作動するタイミングを制御する作動タイミング制御手段(52)とを有し、作動タイミング制御手段(52)は、空気流量制御手段(50)が作動してエンジン(1)に供給される空気流量が低減されても、エンジン(1)の燃焼状態が不安定とならないように、空気流量制御手段(50)が作動するタイミングを制御するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DOC、DPF、SCRなどの排気浄化装置を備えた内燃機関の排気浄化システムに関し、詳しくは、エンジン始動直後などの暖機運転時において、早期に排気浄化装置を昇温させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化触媒(DOC)、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)、選択的還元触媒(SCR)などの排気浄化装置は、所定以上の温度環境にならないと浄化機能が十分に発揮されない。例えば、図18は、窒素酸化物(NO)を還元して浄化するSCR装置において、SCR触媒担体温度、SCR入出口におけるNO濃度、およびエンジン運転時間との関係を示した図である。この図18からも分かるように、SCR装置の触媒担体温度が活性温度に達するまでの間は、SCR出口のNO濃度が相対的に高くなっており、SCR装置によるNO浄化機能が十分に発揮されていないことが分かる。よって、エンジン始動直後などの暖機運転時において、早期に排気浄化が行われるようにするためには、SCR装置などの排気浄化装置を早期に昇温する必要がある。
【0003】
従来、排気浄化装置を早期に昇温するために、燃料を噴射するタイミングを変更することや、可変過給機や吸気スロットルを制御してエンジンに供給される空気流量を制御(低減)することが行われている。例えば、特許文献1には、燃料を噴射するタイミングを変更する噴射タイミング制御の一例が開示されている。また特許文献2には、エンジンに供給される空気流量を制御(低減)する空気流量制御の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−65121号公報
【特許文献2】特許第3972611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した排気浄化装置の早期昇温技術の中で、空気流量制御は昇温効果が比較的大きいものである。しかしながら、エンジンに供給する空気流量を制御(低減)すると、気筒内の圧力が低下するため、暖機運転時の早い時期に空気流量制御を実施すると、エンジンの燃焼が不安定となる場合がある。
【0006】
図19は、従来技術において、空気流量制御を開始するタイミングと、エンジン燃焼状態との関係を説明するための図である。エンジン燃焼状態の安定/不安定は、燃料の噴射タイミングにおける気筒内温度(Tcyl)と気筒内圧力(Pcyl)によって評価することができ、気筒内の温度および圧力が高いほど、エンジンの燃焼状態が安定していると評価することができる。そして図19に示すように、エンジン始動直後のまだエンジンの燃焼状態が不安定な状態において、すぐに空気流量制御(ii)を実施すると、エンジンの燃焼状態がより不安定になってしまう。また、空気流量制御(ii)に先立って噴射タイミング制御(i)を実施して気筒内を昇温した場合でも、気筒内の昇温が不十分だと、空気流量制御(ii´)によって気筒内の圧力が低下し、エンジンの燃焼状態が不安定になってしまう。
【0007】
エンジンの燃焼状態が不安定になると、炭化水素(HC)排出量が増加するとともに、最悪の場合には、失火に至ってエンジンが停止してしまう。排気ガスに対する規制が年々厳しくなる中、エンジン始動直後などの暖機運転時において、エンジンの安定燃焼を確保しつつ、早期に排気浄化装置の昇温を図ることのできる排気浄化システムの開発が強く望まれている。
【0008】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みなされた発明であって、エンジン始動直後などの暖機運転時において、エンジンの安定燃焼を確保しつつ、HC排出量の増加を抑制し、早期に排気浄化装置の昇温を図ることができる内燃機関の排気浄化システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の内燃機関の排気浄化システムは、
エンジンと、該エンジンから排出される排気ガスが通過する排気通路と、該排気通路に設置された排気浄化装置とを備えた内燃機関の排気浄化システムにおいて、
前記エンジンに供給される空気流量を低減することで前記エンジンから排出される排気ガスの昇温を図る空気流量制御手段と、該空気流量制御手段が作動するタイミングを制御する作動タイミング制御手段とを有し、
前記作動タイミング制御手段は、前記空気流量制御手段が作動して前記エンジンに供給される空気流量が低減されても、前記エンジンの燃焼状態が不安定とならないように、前記空気流量制御手段が作動するタイミングを制御するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
このように本発明では、空気流量制御手段が作動してエンジンに供給される空気流量が低減されても、エンジンの燃焼状態が不安定とならないように、空気流量制御手段が作動するタイミングを作動タイミング制御手段によって制御している。空気流量制御は昇温効果が大きいものの、エンジンの燃焼を不安定にする恐れがあるとの欠点があったが、本発明によれば、エンジンの安定燃焼を確保しつつ、HC排出量の増加を抑制し、早期に排気浄化装置の昇温を図ることができる内燃機関の排気浄化システムとすることができる。
【0011】
上記発明において、
前記作動タイミング制御手段は、エンジンの始動から所定時間が経過した後に、前記空気流量制御手段を作動させるように構成されており、当該所定時間は、前記エンジンのエンジン回転数および燃料噴射量と対応して算出される。この際、前記所定時間は、前記エンジンが作動している状態における外気温および大気圧の少なくともいずれか一つに対応して補正されることが望ましい。
【0012】
このような本発明によれば、エンジン始動直後における排気浄化装置の昇温と、HC排出量の増加抑制とを、簡易的な方法で制御することができる。またこの際、外気温および/または大気圧に応じて、空気流量制御手段が作動するまでの所定時間を補正することで、外気温や大気圧に応じて精度よく空気流量制御手段を作動させるタイミングを決定することができる。
【0013】
また上記発明において、
前記作動タイミング制御手段は、前記エンジンを冷却するエンジン冷却水もしくは前記エンジン内部を通過する潤滑油の温度が閾値以上になった場合に、前記空気流量制御手段を作動させるように構成することができる。この際、前記冷却水温度もしくは潤滑油温度の閾値は、前記エンジンが作動している状態における外気温および大気圧の少なくともいずれか一つに対応して補正されることが望ましい。
【0014】
このような本発明によれば、エンジン冷却水もしくは潤滑油の温度からエンジンの燃焼状態を把握することで、空気流量制御手段が作動するタイミングを制御することができる。よって、エンジンの安定燃焼を確保しつつ、早期に排気浄化装置の昇温を図ることができる。またこの際、外気温および/または大気圧に応じて冷却水温度もしくは潤滑油温度の閾値を補正することで、外気温や大気圧に応じて精度よく空気流量制御手段を作動させるタイミングを決定することができる。
【0015】
また上記発明において、
前記作動タイミング制御手段は、前記エンジンの気筒内の温度および圧力を推定し、該推定された気筒内の温度および圧力に基づいて、前記空気流量制御手段が作動するタイミングを制御するように構成することができる。
【0016】
このような本発明によれば、空気流量制御を実施した後のエンジンの燃焼状態を精度よく推定した上で、空気流量制御手段が作動するタイミングを制御するため、エンジンの安定燃焼を確保しつつ、早期に排気浄化装置の昇温を図ることができる。
【0017】
また上記発明において、
前記作動タイミング制御手段は、前記エンジンの気筒内の圧力を測定する気筒内圧測定手段を有しており、該気筒内圧測定手段によって測定された気筒内の圧力に基づいて、前記空気流量制御手段が作動するタイミングを制御するように構成することができる。
【0018】
このような本発明によれば、気筒内圧測定手段によって気筒内圧を直接測定することで、エンジンの燃焼安定性を直接的に把握しながら、空気流量制御手段の作動タイミングを制御することができる。よって、エンジンの燃焼状態をリアルタイムで計測しながら空気流量制御を実施することができるため、エンジンの安定燃焼を確保しつつ、早期に排気浄化装置の昇温を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エンジン始動直後などの暖機運転時において、エンジンの安定燃焼を確保しつつ、HC排出量の増加を抑制し、早期に排気浄化装置の昇温を図ることができる内燃機関の排気浄化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の排気浄化システムを備えたディーゼルエンジンの全体構成図である。
【図2】本発明の空気流量制御手段を示したブロック図である。
【図3】第1の実施形態を説明するための概念図である。
【図4】空気流量制御を開始する時間(所定時間:t1)を算出するためのマップであり、(A)は標準マップ、(B)は気温補正マップ、(C)は気圧補正マップである。
【図5】第1の実施形態において、空気流量制御を開始する時間(所定時間:t1)の算出方法を示したブロック図である。
【図6】第1の実施形態における制御フロー図である。
【図7】第2の実施形態を説明するための概念図である。
【図8】第2の実施形態における標準マップ、温度補正マップ、気圧補正マップを説明するための図である。
【図9】第2の実施形態において、所定の冷却水温度(tw1)の算出方法を示したブロック図である。
【図10】第2の実施形態における制御フロー図である。
【図11】第3の実施形態を説明するための概念図である。
【図12】第3の実施形態において、安定燃焼可否の判断方法を示したブロック図である。
【図13】第3の実施形態における制御フロー図である。
【図14】第4の実施形態を説明するための概念図である。
【図15】第4の実施形態における制御フロー図である。
【図16】第4の実施形態の変形例を説明するための図である。
【図17】第4の実施形態の変形例における制御フロー図である。
【図18】SCR装置の触媒担体温度、SCR入出口におけるNO濃度、および運転時間との関係を示した図である。
【図19】従来技術において、空気流量制御を開始するタイミングと、エンジン燃焼状態との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限り、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0022】
図1は、本発明の内燃機関の排気浄化システムを備えたディーゼルエンジンの全体構成図である。まず、図1を参照して、本発明の内燃機関の排気浄化装置の全体構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、本発明の排気浄化システムを備えたディーゼルエンジンは、エンジン1、排気通路3、給気通路13、可変ターボ過給機11、コモンレール燃料噴射装置18、EGR管23などの各種装置・配管、酸化触媒(DOC装置)5、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF装置)7、選択的還元触媒(SCR装置)9などの各種排気浄化装置、およびこれらを制御するエンジンコントローラユニット(ECU)19と各種センサなどから構成されている。
【0024】
エンジン1の下流側には排気通路3が接続されており、排気通路3には、DOC装置5およびDPF装置7が設けられている。DOC装置5は、排気ガス中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化除去するとともに、排気ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化して二酸化窒素(NO)を生成する機能を有する。DPF装置7は、DOC装置5の下流側に設けられ、排気ガス中に含まれるススなどの排気微粒子(PM)をフィルタで捕集し、排気ガスから除去する装置である。
【0025】
また、DPF装置7の下流側には尿素水噴射装置8が設けられ、該尿素水噴射装置8の直下流にはSCR装置9が設けられている。尿素水噴射装置8は、ECU19からの制御信号に基づいて、尿素水タンク8bに貯留されている尿素水を噴射ノズル8aから排気通路3に向けて噴射する。排気通路3に噴射された尿素水は、排気ガス27の熱により加水分解されてアンモニア(NH)を生成し、この生成されたアンモニア(NH)が還元剤となって、SCR装置9において排気ガス27に含まれるNOの還元が行われる。
【0026】
これらDOC装置5およびSCR装置9において排気ガスの浄化を進行させるためには、DOC装置5およびSCR装置9に担持されている触媒を活性温度以上に加熱する必要がある。また、DPF装置7において、フィルタに捕集されたPMを除去してフィルタを再生するためには、DPF装置7を所定以上の温度に加熱する必要がある。すなわち、これら排気浄化装置において十分な浄化機能が発揮されるためには、排気浄化装置を所定以上の温度に加熱する必要がある。本発明の内燃機関の排気浄化システムでは、これら排気浄化装置の昇温を図る手段として、後述する空気流量制御手段50を有している。
【0027】
一方、エンジン1の上流側には、給気通路13が接続されている。そして、給気通路13と排気通路3との間には、可変ターボ過給機11が設けられている。この可変ターボ過給機11は、排気通路3に配置されている排気タービン11bと、給気通路13に配置されているコンプレッサ11aとを有しており、該コンプレッサ11aは排気タービン11bによって同軸駆動されるようになっている。また、この可変ターボ過給機11は、ECU19からの制御信号に基づいて、可変ノズルベーン(不図示)の開度や、ウエストゲートバルブ(不図示)の開度が調整されることで、コンプレッサ11aから吐出される空気26の流量を制御できるようになっている。
【0028】
また、給気通路13にはインタークーラ15および給気スロットルバルブ17が設けられている。そして、コンプレッサ11aから吐出された空気26は、インタークーラ15で冷却された後、給気スロットバルブ17を通過して、エンジン1の各気筒内の燃焼室1aに流入するようになっている。この際、給気スロットルバルブ17は、ECU19からの制御信号に基づいてその開度が調整されることで、エンジン1に供給される給気流量を制御するようになっている。
【0029】
また、エンジン1には、燃焼室1aに燃料を噴射するコモンレール燃料噴射装置18が設けられている。このコモンレール燃料噴射装置18は、ECU19からの制御信号に基づいて、噴射時期および噴射量が制御されるようになっている。後述する噴射タイミング制御は、ECU19からの制御信号に基づき、コモンレール燃料噴射装置18から燃焼室1aに噴射する燃料の噴射量および噴射時期を、通常運転モードとは異なるように制御することで行われる。
【0030】
また、排気通路3の排気タービン11bの上流側よりEGR管23が分岐し、給気スロットルバルブ17の下流側に接続している。また、EGR管23には、EGRクーラ24とともに、EGRバルブ25が配置されている。そして、EGRバルブ25を開閉制御することにより、エンジン1から排出された排気ガス27の一部が、EGR管23を通ってエンジン1を再循環するようになっている。
【0031】
エンジン1から排出された排気ガス27は、排気通路3を通って、上述した排気タービン11bを駆動してコンプレッサ11aを同軸駆動させる。そして、排気通路3を通過し、上述したDOC装置5、DPF装置7、SCR装置9を通過する。また、給気通路13には、コンプレッサ11aへ流入する空気流量を検出するエアフローメータ31が配置されており、該エアフローメータ31にて測定された給気流量に関する信号が、ECU19へと入力されるようになっている。
【0032】
また、排気通路3には、DOC入口温度センサ35、DPF入口圧力センサ36、DPF入口温度センサ37、DPF差圧センサ38、およびDPF出口温度センサ39が配置されている。そして、これらセンサ類で測定されたDOC入口温度、DPF入口温度、DPF出口温度などに関する信号が、ECU19へと入力されるようになっている。また、SCR装置9の下流側にも、SCR出口温度センサ33およびNOセンサ34が配置されている。そして、これらSCR出口温度センサ33およびNOセンサ34で測定されたSCR装置9の下流側における温度およびNO濃度に関する信号が、ECU19へと入力されるようになっている。
【0033】
また、給気スロットルバルブ17の下流側には、給気温度センサ41および給気圧力センサ43が配置されている。そして、該給気温度センサ41にて測定された給気温度、および該給気圧力センサ43で測定された給気圧力に関する信号が、ECU19へと入力されるようになっている。そして、ECU19において、これら給気温度、給気圧力などに基づいて最適なEGR量を算出することで、上述したEGRバルブ25の開閉制御が行われるようになっている。
【0034】
また、ECU19では、不図示のクランクセンサ、カムセンサ、アクセルセンサ、スロットルセンサ等の各種センサからの入力信号を基に、エンジン回転数および燃料噴射量が算出されるようになっている。また、エンジン1の周囲には不図示の冷却水通路が形成されるとともに、該冷却水通路を流れるエンジン冷却水の水温を測定する冷却水温度測定手段(不図示)が配置されている。
【0035】
ECU19は、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、およびI/Oインターフェイスなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。上述したセンサ類からの各種信号は、I/Oインターフェイスを介してCPUに入力される。CPUでは、ROMに記憶されている制御プログラムに従って、各種制御を実行するように構成されている。そして、図1に示すように、該ECU19によって、本発明の空気流量制御手段50、および作動タイミング制御手段52が構成されている。
【0036】
図2は、本発明の空気流量制御手段50を示したブロック図である。本実施形態の空気流量制御手段50は、作動タイミング制御手段52からの指令に基づいて、上述した給気スロットル17および可変ターボ過給機11の開度を制御し、エンジン1に供給される空気流量を制御(低減)することができるように構成されている。なお、本発明の空気流量制御手段50は、必ずしも給気スロットル17および可変ターボ過給機11の両方を制御するように構成されていなくともよく、エンジン1に供給される空気流量を制御(低減)することが可能であれば、いずれか一方だけを制御するように構成されていてもよいものである。
【0037】
空気流量制御は昇温効果が高く、エンジン始動直後などの暖機運転時において、排気浄化装置の早期の昇温を図る上で極めて有効である。その一方、上述した図19において説明したように、空気流量制御を行うと気筒内の圧力が低下するため、エンジン始動後のあまり早いタイミングで空気流量制御を実施すると、エンジンの燃焼状態が不安定になってしまう。
【0038】
このため本発明では、作動タイミング制御手段52によって空気流量制御手段50が作動するタイミングを制御することで、空気流量制御が実施されても、エンジン1の燃焼状態が不安定とならないように構成されている。
以下、本発明の作動タイミング制御手段52の実施形態について、具体的に説明する。
【0039】
<第1の実施形態>
図3は、第1の実施形態を説明するための概念図であり、図3(A)は、空気流量制御を開始するタイミングとエンジン燃焼状態との関係を示した図、図3(B)は、エンジン運転時間と、SCR触媒担体温度との関係を示した図である。
この第1の実施形態の作動タイミング制御手段52は、図3に示したように、エンジン1の始動後、噴射タイミング制御(i)を実施するとともに、エンジン1の暖機運転(ii)を行うようになっている。そして、エンジン1の始動から所定時間(t1)が経過した後に、空気流量制御(iii)を実施するように構成されている。
【0040】
上記所定時間(t1)は、図5に示すように、エンジン1のエンジン回転数(Ne)および燃料噴射量(Qf)を入力データとする標準マップ56によって算出された標準時間(t1´)に、外気温を入力データとする温度補正マップ57によって算出される温度補正係数、および大気圧を入力データとする気圧補正マップ58によって算出される気圧補正係数を乗じて算出される(温度・気圧補正)。これら標準マップ56、温度補正マップ57、気圧補正マップ58は、実験等を行うことによって作成され、予めECU19のROMに記憶されている。
【0041】
本実施形態において、上述した温度補正および気圧補正は、いずれか一方だけ実施するようにしてもよく、また両方とも実施しなくてもよいものである。温度補正および気圧補正の両方とも実施しない場合は、図5において、標準時間(t1´)がそのまま所定時間(t1)となる。
【0042】
ここで、エンジン回転数(Ne)と標準時間(t1´)との関係は、図4(A)に示すように、エンジン回転数(Ne)が高いほど標準時間(t1´)は短くなり、反対に、エンジン回転数(Ne)が低いほど標準時間(t1´)は長くなる。また、燃料噴射量(Qf)と標準時間(t1´)との関係は、燃料噴射量(Qf)が多いほど標準時間(t1´)は短くなり、反対に、燃料噴射量(Qf)が少ないほど標準時間(t1´)は長くなる。また、図4(B)に示すように、外気温が高いほど気温補正係数は小さくなり、図4(C)に示すように、大気圧が高いほど気圧補正係数は小さくなる。
【0043】
図6は、第1の実施形態における制御フロー図である。この図6に示したように、第1の実施形態における作動タイミング制御手段52は、エンジン始動後(S10)、噴射タイミング制御を実施し(S11)、エンジンの昇温を行う。そして、上述した図5に示したように、空気流量制御を開始する時間(所定時間:t1)を算出する(S12)。そして、算出された所定時間(t1)を記憶するとともに(S13)、記憶した所定時間(t1)と経過時間(t)とを比較し(S14)、t≧t1の場合(S14においてYes)には、空気流量制御を実施する(S15)。一方、t<t1の場合(S14においてNo)は、空気流量制御は実施せずに、S12に戻る。
【0044】
このように、第1の実施形態における作動タイミング制御手段52は、エンジン1の始動から所定時間(t1)が経過した後に、空気流量制御手段50を作動させるように構成されている。当該所定時間(t1)は、図5に示したように、エンジン1のエンジン回転数(Ne)および燃料噴射量(Qf)を入力データとする標準マップ56によって算出される。また、必要に応じて、エンジン1が作動している状態の外気温および大気圧によって補正されることで算出される。
【0045】
このような第1の実施形態によれば、エンジン始動直後における排気浄化装置の昇温と、HC排出量の増加抑制とを、簡易的な方法で制御することができる。またこの際、外気温および/または大気圧に応じて所定時間を補正するため、外気温や大気圧に応じて精度よく空気流量制御手段50を作動させるタイミングを決定することができる。
【0046】
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態を説明するための概念図であり、図7(A)は、空気流量制御を開始するタイミングとエンジン燃焼状態との関係を示した図、図7(B)は、エンジン運転時間と、SCR触媒担体温度および冷却水温度との関係を示した図である。第2の実施形態の作動タイミング制御手段52は、図7に示したように、エンジン1の始動後、噴射タイミング制御(i)を実施するとともに、エンジン1の暖機運転(ii)を行うようになっている。そして、エンジン冷却水が所定の冷却水温度(tw1)に到達した後に、空気流量制御(iii)を実施するように構成されている。なお、エンジン冷却水温度は、上述した不図示の冷却水温測定手段などによって把握することができる。
【0047】
上記所定の冷却水温度(tw1)は、図9に示すように、エンジン1のエンジン回転数(Ne)および燃料噴射量(Qf)を入力データとする標準マップ66によって算出された標準冷却水温度(tw1´)に、外気温を入力データとする温度補正マップ67によって算出される温度補正係数、および大気圧を入力データとする気圧補正マップ68によって算出される気圧補正係数を乗じて算出される(温度・気圧補正)。これら標準マップ66、温度補正マップ67、気圧補正マップ68は、実験等を行うことによって作成され、予めECU19のROMに記憶されている。
【0048】
本実施形態においても、上述した温度補正および気圧補正は、いずれか一方だけ実施するようにしてもよく、また両方とも実施しなくてもよいものである。温度補正および気圧補正の両方とも実施しない場合は、図9において、標準冷却水温度(tw1´)がそのまま所定の冷却水温度(tw1)となる。
【0049】
ここで、エンジン回転数(Ne)と標準冷却水温度(tw1´)との関係は、図8(A)に示すように、所定の燃料噴射量までは、エンジン回転数(Ne)が高いほど標準冷却水温度(tw1´)は低くなり、反対に、エンジン回転数(Ne)が低いほど標準冷却水温度(tw1´)は高くなる。また、燃料噴射量(Qf)と標準冷却水温度(tw1´)との関係は、所定の燃料噴射量までは、燃料噴射量(Qf)が多いほど標準冷却水温度(tw1´)は低くなり、反対に、燃料噴射量(Qf)が少ないほど標準冷却水温度(tw1´)は高くなる。燃料噴射量(Qf)が前記所定値を超えると、エンジン回転数(Ne)に関わらず、標準冷却水温度(tw1´)はほぼ一定となる。また、図8(B)に示すように、外気温が高いほど気温補正係数は小さくなり、図8(C)に示すように、大気圧が高いほど気圧補正係数は小さくなる。
【0050】
図10は、第2の実施形態における制御フロー図である。この図10に示したように、第2の実施形態における作動タイミング制御手段52は、エンジン始動後(S20)、噴射タイミング制御を実施し(S21)、エンジンの昇温を行う。そして、上述した図9に示したように、空気流量制御を開始する所定の冷却水温度(tw1)を算出する(S22)。そして、算出された所定の冷却水温度(tw1)と不図示の冷却水温度測定手段で測定した冷却水温度(tw)とを比較する(S23)。そして、tw≧tw1の場合(S23においてYes)に、空気流量制御を実施する(S24)。一方、tw<tw1の場合(S23においてNo)は、空気流量制御は実施せずに、S22に戻る。
【0051】
このように、第2の実施形態における作動タイミング制御手段52は、エンジン1を冷却するエンジン冷却水の温度が閾値(所定の冷却水温度:tw1)以上になった場合に、空気流量制御手段50を作動させるように構成されている。所定の冷却水温度(tw1)は、図9に示したように、エンジン1のエンジン回転数(Ne)および燃料噴射量(Qf)を入力データとする標準マップ66によって算出される。また、必要に応じて、エンジン1が作動している状態の外気温および大気圧によって補正されることで算出される。また、エンジン冷却水温度は、上述した冷却水温測定手段などによって把握することができる。
【0052】
また、上述したエンジン冷却水の温度に替えて、前記エンジン内部を通過する潤滑油の温度によって、エンジン1の燃焼状態を把握することもできる。すなわち、エンジン1の内部を通過する潤滑油の温度が閾値以上になった場合に、空気流量制御手段50を作動させるように構成することもできる。この際、所定の潤滑油温度(閾値)は、上述したエンジン冷却水の場合と同様、エンジン1のエンジン回転数(Ne)および燃料噴射量(Qf)を入力データとする標準マップによって算出することができる。また、上述したエンジン冷却水の場合と同様、必要に応じて、エンジン1が作動している状態の外気温および大気圧によって補正することで算出してもよい。また、潤滑油温度は、潤滑経路上の適当な位置に配置された温度センサー(不図示)などによって把握することができる。
【0053】
このような第2の実施形態によれば、エンジン冷却水の温度もしくは潤滑油温度からエンジン1の燃焼状態を把握することで、空気流量制御手段50が作動するタイミングを制御することができる。よって、エンジン1の安定燃焼を確保しつつ、早期に排気浄化装置の昇温を図ることができる。またこの際、外気温および/または大気圧に応じて冷却水温度もしくは潤滑油温度の閾値を補正することで、外気温や大気圧に応じて精度よく空気流量制御手段50を作動させるタイミングを決定することができる。
【0054】
<第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態を説明するための概念図であり、空気流量制御を開始するタイミングとエンジン燃焼状態との関係を示している。この第3の実施形態の作動タイミング制御手段52は、エンジン1の始動後、噴射タイミング制御(i)を実施するとともに、エンジン1の暖機運転(ii)を行うようになっている。そして、エンジン1の燃焼状態が「安定燃焼」にあることを確認した後に、空気流量制御(iii)を実施するように構成されている。
【0055】
ここで本実施形態における「安定燃焼」とは、空気流量制御(iii)を実施しても、エンジン1の燃焼状態が安定状態にあることを言う。すなわち、図11において符号a´で示したエンジンの燃焼状態は本実施形態で言うところの安定燃焼ではなく、符号aで示したエンジンの燃焼状態において、はじめて本実施形態で言うところの安定燃焼と判断される。
【0056】
エンジン1の燃焼状態が「安定燃焼」にあるか否かの判断は、図12に示したように、燃料噴射タイミング(θ)における気筒内温度(Tcyl)および気筒内圧力(Pcyl)を入力データとする安定燃焼判断マップ76によって判断される。燃料噴射タイミング(θ)における気筒内温度(Tcyl)は、給気温度センサ41で測定された給気温度と、燃料噴射タイミング(θ)とから演算(推定)される。また、燃料噴射タイミング(θ)における気筒内圧力(Pcyl)は、給気圧力センサ43で測定された給気圧力と、燃料噴射タイミング(θ)とから演算(推定)される。また、燃料噴射タイミング(θ)は、エンジン回転数(Ne)と燃料噴射量(Qf)とを入力データとするマップ78によって算出される。
【0057】
図13は、第3の実施形態における制御フロー図である。この図13に示したように、第3の実施形態における作動タイミング制御手段52は、エンジン始動後(S30)、噴射タイミング制御を実施し(S31)、エンジンの昇温を行う。そして、上述した図12に示したように、燃料噴射タイミング(θ)における気筒内温度(Tcyl)、および気筒内圧力(Pcyl)を算出する(S32、S33)。なお、S32とS33は、その順番が逆でも構わないし、同時であってもよいものである。そして、上述した安定燃焼マップ76によって、給気流量制御後のエンジン1の「安定燃焼」の可否を判断する(S34)。安定燃焼可と判断された場合(S34においてYes)は、空気流量制御を実施する(S35)。一方、安定燃焼否と判断された場合(S34においてNo)は、空気流量制御は実施せず、S32に戻る。
【0058】
このように、第3の実施形態における作動タイミング制御手段52は、エンジン1の気筒内の温度および圧力を推定し、この推定された気筒内の温度および圧力に基づいて、空気流量制御後の気筒内が「安定燃焼」状態にあるか否かを判断した後に、空気流量制御手段50を作動させるようになっている。
【0059】
したがって、このような第3の実施形態によれば、空気流量制御を実施した後のエンジン1の燃焼状態を精度よく推定した上で、空気流量制御手段50が作動するタイミングを制御するため、エンジン1の安定燃焼を確保しつつ、早期に排気浄化装置の昇温を図ることができるようになっている。
【0060】
<第4の実施形態>
図14は、第4の実施形態を説明するための概念図であり、図14(A)は、空気流量制御を開始するタイミングとエンジン燃焼状態との関係を示した図、図14(B)は、エンジン運転時間と、気筒内最高圧力変動率(Pmax−COV)、可変ターボ過給機のベーン開度、SCR触媒担体温度との関係を示した図であり、可変ターボ過給機11のベーン開度を調整することで、空気流量制御を行っている例を示している。
この第4の実施形態の作動タイミング制御手段52は、気筒内の圧力を測定する気筒内圧測定手段(不図示)を有している。そして、エンジン1の始動後、噴射タイミング制御(i)を実施した後に、気筒内圧測定手段によって気筒内の圧力をセンシングし、エンジン1の燃焼状態を安定状態に保ちながら、空気流量制御(ii)を実施するように構成されている。
【0061】
エンジン1の燃焼状態が安定状態か否かの判断は、例えば、気筒内最高圧力(Pmax)の変動率(cov)から判断することができる。すなわち、ある特定期間のサイクルにおける気筒内最高圧力の標準偏差σ(Pmax)と、気筒内最高圧力の算術平均値(Pmax_avg)とから、気筒内最高圧力変動率(Pmax−COV)を下記式(1)により求め、この気筒内最高圧力変動率(Pmax−COV)が、あらかじめECU19のROMに記憶されている閾値(例えば1%)を超えない場合は、燃焼状態が安定状態にあると判断することができる。
max−COV=(σ(Pmax))/(Pmax_avg) ・・・(1)
【0062】
図15は、第4の実施形態における制御フロー図である。この図15に示したように、第4の実施形態における作動タイミング制御手段52は、エンジン始動後(S40)、噴射タイミング制御を実施し(S41)、エンジンの昇温を行う。そして、上述した気筒内圧測定手段によって気筒内最高圧力(Pmax)を検出するとともに(S42)、気筒内最高圧力変動率(Pmax−COV)を算出する(S43)。そして、算出した気筒内最高圧力変動率(Pmax−COV)が閾値以下の場合(S44においてYes)は、空気流量制御が開始される(S45)。空気流量制御では、例えば可変ターボ過給機11のベーン開度が徐々に調整されることで、エンジン1に供給される空気流量が緩やかに低減される。一方、算出した気筒内最高圧力変動率(Pmax−COV)が閾値より大きい場合(S44においてNo)は、空気流量制御は実施せずに、S42に戻る。
【0063】
空気流量制御(S45)の開始後は、空気流量制御中の気筒内最高圧力変動率(Pmax−COV)を算出して閾値との比較を行う(S46)。そして、気筒内最高圧力変動率(Pmax−COV)が閾値を下回る場合(S46においてYes)は、空気流量が目標制御量に到達したか否かが判定され(S47)、目標制御量に到達した場合は、そこで空気流量制御が終了(S48)し、空気流量が目標制御量に到達していない場合は、S45に戻って空気流量制御が継続される。一方、気筒内最高圧力変動率(Pmax−COV)が閾値より大きい場合(S46においてNo)は、空気流量制御を中断(S49)してS42に戻る。
【0064】
なお、上記説明では、可変ターボ過給機11のベーン開度を徐々に調整することで、エンジン1に供給される空気流量が緩やかに低減される場合を例に説明した。しかしながら本実施形態はこれに限定されず、例えば、図16に示したように、給気スロットルバルブ17の開度を段階的に絞ることで、エンジン1に供給される空気流量を階段状に制御することも可能である。この場合の制御フローは、図17に示すとおりである。すなわち、空気流量制御が段階的に行われるため、図15における空気流量制御の開始(S45)および空気流量制御を中断(S49)が、図17では一つのステップとして表記され、空気流量制御の実施(S45´)として表される。
【0065】
また、上記説明では、エンジン1の燃焼状態の判断を、気筒内最高圧力変動率(Pmax−cov)から判断していたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、上述した気筒内圧測定手段によって図示平均圧力(IMEP)を算出し、このIMEPの変動率によって、エンジンの燃焼状態を判断するようにしてもよいものである。
【0066】
このように、第4の実施形態における作動タイミング制御手段52は、エンジン1の気筒内の圧力を測定する気筒内圧測定手段(不図示)を有しており、該気筒内圧測定手段によって測定された気筒内の圧力に基づいて、エンジン1の燃焼状態をリアルタイムで計測しながら、空気流量制御手段50が作動するタイミングが制御されるようになっている。
【0067】
したがって、このような第4の実施形態によれば、気筒内圧測定手段によってエンジン1の燃焼安定性をリアルタイムに直接的に把握しながら、空気流量制御手段50の作動タイミングを制御することができるため、エンジン1の安定燃焼を確保しつつ、早期に排気浄化装置の昇温を図ることができるようになっている。
【0068】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0069】
例えば、上述した実施形態の説明では、空気流量制御手段50によって昇温される排気浄化装置として、SCR装置9を例に説明した。しかしながら、本発明の排気浄化装置としては、SCR装置の他に、DOC装置5やDPF装置7などが挙げられる。本発明は、これらDOC装置5およびDPF装置7を備える内燃機関の排気浄化システムとしても、好適に用いられるものである。
【0070】
また、上述した実施形態の説明では、空気流量制御の実施に先立って、噴射タイミング制御が実施されるものとして説明したが、本発明において、噴射タイミング制御の実施は必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、DOCやDPF、SCRなどの排気浄化装置を備えたディーゼルエンジンの排気浄化システムとして、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン
3 排気通路
5 DOC装置
7 DPF装置
8 尿素水噴射装置
9 SCR装置
11 可変ターボ過給機
13 給気通路
15 インタークーラ
17 給気スロットルバルブ
18 コモンレール燃料噴射装置
19 ECU
23 EGR管
24 EGRクーラ
25 EGRバルブ
26 空気
27 排気ガス
31 エアフローメータ
33 SCR出口温度センサ
34 NOセンサ
35 DOC入口温度センサ
36 DPF入口圧力センサ
37 DPF入口温度センサ
38 DPF差圧センサ
39 DPF出口温度センサ
41 給気温度センサ
43 給気圧力センサ
50 空気流量制御手段
52 作動タイミング制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンから排出される排気ガスが通過する排気通路と、該排気通路に設置された排気浄化装置とを備えた内燃機関の排気浄化システムにおいて、
前記エンジンに供給される空気流量を低減することで前記エンジンから排出される排気ガスの昇温を図る空気流量制御手段と、該空気流量制御手段が作動するタイミングを制御する作動タイミング制御手段とを有し、
前記作動タイミング制御手段は、前記空気流量制御手段が作動して前記エンジンに供給される空気流量が低減されても、前記エンジンの燃焼状態が不安定とならないように、前記空気流量制御手段が作動するタイミングを制御するように構成されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化システム。
【請求項2】
前記作動タイミング制御手段は、エンジンの始動から所定時間が経過した後に、前記空気流量制御手段を作動させるように構成されており、当該所定時間は、前記エンジンのエンジン回転数および燃料噴射量と対応して算出されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項3】
前記所定時間は、前記エンジンが作動している状態における外気温および大気圧の少なくともいずれか一つに対応して補正されることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項4】
前記作動タイミング制御手段は、前記エンジンを冷却するエンジン冷却水もしくは前記エンジン内部を通過する潤滑油の温度が閾値以上になった場合に、前記空気流量制御手段を作動させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項5】
前記冷却水温度もしくは潤滑油温度の閾値は、前記エンジンが作動している状態における外気温および大気圧の少なくともいずれか一つに対応して補正されることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項6】
前記作動タイミング制御手段は、前記エンジンの気筒内の温度および圧力を推定し、該推定された気筒内の温度および圧力に基づいて、前記空気流量制御手段が作動するタイミングを制御するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項7】
前記作動タイミング制御手段は、前記エンジンの気筒内の圧力を測定する気筒内圧測定手段を有しており、該気筒内圧測定手段によって測定された気筒内の圧力に基づいて、前記空気流量制御手段が作動するタイミングを制御するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−104415(P2013−104415A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251048(P2011−251048)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】