説明

内燃機関の燃料噴射装置

【課題】内燃機関の燃料噴射装置に関し、燃料噴射量及び噴射時期の制御精度を効果的に向上する。
【解決手段】噴孔21が形成されたインジェクタボディ20と、インジェクタボディ20の先端側に形成された燃料室22と、インジェクタボディ20の基端側に形成された圧力制御室23と、圧力制御室23内に導入された高圧燃料を排出する排出路26と、インジェクタボディ20の基端部に設けられて排出路26を開閉する電磁弁30と、インジェクタボディ20内に収容された第1ニードル40と、燃料室22内に収容されて噴孔21を開閉する第2ニードル50と、第1ニードル40と第2ニードル50との間に設けられた磁歪素子60と、インジェクタボディ20の外周面に設けられたコイル61と、電磁弁30及びコイル61への電流の印加を制御する制御手段10とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射装置に関し、特にインジェクタのニードル全長を可変にした内燃機関の燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コモンレールに畜圧した高圧燃料をインジェクタの燃料室及び、ニードルの背圧を発生させる圧力制御室に供給し、ソレノイドを用いて圧力制御室の圧力を増減させてニードルを軸方向に移動させることで、燃料の噴射と停止とを切替えるコモンレール式の燃料噴射装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−9809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のコモンレール式の燃料噴射装置においては、内燃機関の運転状態に応じて燃料噴射の開始初期における噴射率波形の傾きや噴射回数を変化させることで、有害排出ガス等の低減が可能である。そのため、高速かつ噴射バラツキの少ない燃料噴射を行うべく、ソレノイドに替えてピエゾ素子を用いた燃料噴射装置も実用化されている。
【0005】
しかしながら、ピエゾ素子を用いた燃料噴射装置では、コストの増大や耐久性の低下を招く可能性がある。また、ピエゾ素子の変位量が小さいことから、ピエゾ素子自体の寸法を大きく確保する必要があり、インジェクタ内部の燃料流路が小さくなることで、インジェクタの耐圧や圧力損失の増大による噴射率低下を招く可能性もある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたもので、その目的は、燃料噴射量及び噴射時期の制御精度を効果的に向上することができる内燃機関の燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の内燃機関の燃料噴射装置は、先端部に高圧燃料を噴射する噴孔が形成されたインジェクタボディと、前記インジェクタボディの先端側に形成されて前記高圧燃料が導入される燃料室と、前記インジェクタボディの基端側に形成されて前記高圧燃料が導入される圧力制御室と、前記インジェクタボディに前記圧力制御室と連通して形成され、前記圧力制御室に導入された前記高圧燃料を排出する排出路と、前記インジェクタボディの基端部に設けられ、電流が印加されると前記排出路を開放する一方、電流の印加が停止されると前記排出路を閉鎖する電磁弁と、前記インジェクタボディ内に移動可能に収容されると共に、前記燃料室内の前記高圧燃料から基端側に向けた圧力を受ける一方、前記圧力制御室内の前記高圧燃料から先端側に向けた圧力を受ける第1ニードルと、前記燃料室内に移動可能に収容されると共に、その先端部が前記燃料室の先端側内壁に着座した際に前記噴孔を閉鎖する一方、前記燃料室の先端側内壁から離間した際に前記噴孔を開放する第2ニードルと、前記第1ニードルの先端部と前記第2ニードルの基端部との間に設けられ、その外周に磁界が形成されると先端側及び基端側に向けて伸びる磁歪素子と、前記インジェクタボディの外周面に設けられ、電流が印加された際に前記磁歪素子の外周に磁界を形成するコイルと、内燃機関の運転状態に応じて前記電磁弁及び前記コイルへの電流の印加を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記制御手段は、ブーツ噴射を行う時に、初期の噴射率の傾きが小さくなるように、前記電磁弁に所定期間の電流を印加して前記第1ニードルを基端側に移動させると共に、該所定期間よりも短い期間の電流を前記コイルに印加して前記第2ニードルを先端側に移動させるようにしてもよい。
【0009】
また、前記制御手段は、プレ噴射を含む多段噴射を行う時に、プレ噴射とメイン噴射とが近接するように、前記電磁弁に所定期間の電流を印加して前記第1ニードルを基端側に移動させると共に、該所定期間よりも短い期間、次第に大きくなる電流を前記コイルに印加して前記第2ニードルを先端側に移動させるプレ噴射を行うようにしてもよい。
【0010】
また、前記制御手段は、燃料噴射終了時に、前記磁歪素子を伸ばして前記第2ニードルを早期に着座させるように、前記電磁弁への所定期間の電流の印加を中止した後に、前記コイルに該所定期間よりも短い期間の電流を印加するようにしてもよい。
【0011】
また、前記制御手段は、燃料噴射時に、前記噴孔から噴射される前記高圧燃料にキャビテーションを生じさせるように、前記電磁弁に所定期間の電流を印加すると共に、前記コイルに所定周期で変化する電流を印加するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の内燃機関の燃料噴射装置によれば、燃料噴射量及び噴射時期の制御精度を効果的に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置の全体構成図において、インジェクタが閉弁した状態を示す模式的な部分断面図である。
【図2】図1のソレノイドコイルに電流が印加されてインジェクタが開弁した状態を示す図である。
【図3】図1のソレノイドコイル及び磁歪用コイルに電流が印加されてインジェクタが開弁した状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置によるブーツ噴射制御の噴射特性を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置による多段噴射制御の噴射特性を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置による噴射終了制御の噴射特性を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置による微粒化噴射制御の噴射特性を示す図である。
【図8】他の実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置の全体構成を示す模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜7に基づいて、本発明の一実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0015】
本実施形態の燃料噴射装置1は、内燃機関としての図示しないディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)に適用されるもので、図1に示すように、燃料タンクTから高圧ポンプPにより汲み上げられると共に、コモンレールCで畜圧された高圧燃料を燃焼室内に噴射するインジェクタIと、制御手段としてのコントロールユニット10と、電力を供給する電力供給源11とを備えている。
【0016】
インジェクタIは、先端部に噴孔21が形成された中空状のインジェクタボディ20と、インジェクタボディ20の先端側に形成された燃料室22と、インジェクタボディ20の基端側に形成された圧力制御室23と、インジェクタボディ20の基端部に設けられたソレノイド(電磁弁)30と、インジェクタボディ20内に移動可能に収容された第1ニードル40と、燃料室22内に移動可能に収容された第2ニードル50と、第2ニードル50の中空部52内に伸縮可能に収容された磁歪素子60と、インジェクタボディ20の外周面に設けられた磁歪用コイル61とを備えている。
【0017】
燃料室22は噴孔21を介してエンジンの燃焼室と連通すると共に、その先端側の内壁面には第2ニードル50の円錐面51が着座するシート面24が設けられている。また、燃料室22及び圧力制御室23には、インジェクタボディ20に形成された供給路25を介してコモンレールCからの高圧燃料が導入されるように構成されている。さらに、圧力制御室23には、圧力制御室23内の高圧燃料を排出するための排出路26が接続されている。この排出路26から排出された燃料は、インジェクタボディ20に形成された回収路27を介して燃料タンクTに回収されるように構成されている。
【0018】
ソレノイド30は、導電性のアーマチャ31と、アーマチャ31を電磁力により吸引する固定用コア32と、固定用コア32に電磁力を付与するソレノイドコイル33と、アーマチャ31を先端側に向けて付勢するリターンスプリング34とを備えている。すなわち、ソレノイド30は、ソレノイドコイル33に電流が印加されると、電磁力によりアーマチャ31を吸引(リフト)して排出路26を開放する一方、ソレノイドコイル33への電流の印加が停止されると、リターンスプリング34の付勢力によりアーマチャ31を先端側に移動(降下)させて排出路26を閉鎖するように構成されている。
【0019】
第1ニードル40は、略円柱状に形成されており、圧力制御室23内の高圧燃料から先端側に向けた圧力を受けるサーボピストン41と、燃料室22内の高圧燃料から基端側に向けた圧力を受けると共に、ニードルスプリング42から先端側に向けた付勢力を受けるノズルピストン43とを備えている。すなわち、アーマチャ31が排出路26を閉鎖して、圧力制御室23及びニードルスプリング42による先端側に向けた力が燃料室22による基端側に向けた力よりも大きくなると、第1ニードル40は先端側へ移動(降下)する(図1参照)。一方、アーマチャ31が排出路26を開放して、圧力制御室23及びニードルスプリング42による先端側に向けた力が燃料室22による基端側に向けた力よりも小さくなると、第1ニードル40は基端側へ移動(リフト)するように構成されている(図2,3参照)。
【0020】
第2ニードル50は、基端側を略円柱状に形成されると共に、先端側にシート面24と接触する円錐面51が設けられている。また、第2ニードル50には、磁歪素子60を収容する中空部52が形成されている。さらに、第2ニードル50の基端部には中空部52と連通する開口部53が形成されている。
【0021】
磁歪素子60は中空部52内に伸縮自在に収容されている。また、磁歪素子60の上部には、下端側を中空部52内に摺動自在に収容されると共に、上端側を開口部53に挿通させた磁歪用ピストン62が設けられている。この磁歪用ピストン62の上端部は、第1ニードル40の先端部に固定されている。さらに、中空部52内には、磁歪素子60及び磁歪用ピストン62を先端側に向けて付勢する磁歪用スプリング63が介装されている。そして、インジェクタボディ20の外周面に設けられた磁歪用コイル61に電流が印加されて磁歪素子60の外周に磁界が形成されると、磁歪素子60は軸方向に伸びた状態に維持される。これにより、第2ニードル50の円錐面51と燃料室22のシート面24との間の隙間Gは、磁歪用コイル61に印加される電流量に応じた所定の間隔に調整されるように構成されている(図3参照)。
【0022】
電力供給源11は、例えば車両の電装系に電力を供給するバッテリーであって、コントロールユニット10を介してソレノイドコイル33及び磁歪用コイル61と電気的に接続されている。
【0023】
コントロールユニット10は、エンジンの運転状態に応じて燃料噴射量や燃料噴射時期等の噴射制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。この噴射制御を行うために、コントロールユニット10には、ソレノイドコイル33、磁歪用コイル61、何れも図示しないエンジン回転センサやアクセル開度センサ等が電気的に接続されている。以下、本実施形態のコントロールユニット10による各噴射制御について具体的に説明する。
【0024】
図4に示すようなブーツ噴射制御を行う場合、アーマチャ31をリフトさせて排出路26を開放すべく、まずT0の時点でソレノイドコイル33に所定量の電流を印加する。その後、T1でアーマチャ31がリフトを開始すると、このアーマチャ31のリフト中であるT2の時点で磁歪用コイル61に所定量の電流を印加する。この時、磁歪用コイル61に印加する電流の初期値は、磁歪素子60の初期動作が滑らかとなるように大きめに設定されている。また、その後の所定期間は磁歪素子60を伸ばした状態にして、円錐面51とシート面24との間の隙間Gが一定に保たれるように、磁歪用コイル61に印加される電流は初期値よりも小さい所定の一定値に維持される。その後、T3の時点で磁歪用コイル61への電流の印加を停止して磁歪素子60を縮める(元に戻す)ことで、円錐面51とシート面24との間の隙間Gを最大にする。さらに、所定期間が経過したT4の時点で、ソレノイドコイル33への電流の印加を停止してブーツ噴射を終了する。
【0025】
このように、磁歪素子60を用いて第1ニードル40及び第2ニードル50を含むニードル全長を可変とした噴射制御を実行することにより、初期の噴射率の傾きが小さい理想的な噴射波形のブーツ噴射を実現可能に構成されている。
【0026】
次に本実施形態の燃料噴射装置1による多段噴射制御について説明する。図5に示すようなプレ噴射を行う場合、アーマチャ31をリフトさせて排出路26を開放すべく、まずT0の時点でソレノイドコイル33に所定量の電流を印加する。その後、T1でアーマチャ31がリフトを開始して、T2でリフト量が最大になると、T3の時点で磁歪用コイル61に所定量の電流を印加する。この時、磁歪用コイル61に印加する電流の初期値は、磁歪素子60の初期動作が滑らかとなるように大きめに設定されている。また、その後の所定期間は第1ニードル40のリフト速度よりも磁歪素子61の伸びる速度が速くなるように、磁歪用コイル61に印加する電流は次第に大きくなるように設定される。その後、T4で磁歪素子60が伸び切ると、磁歪素子60を縮めて円錐面51とシート面24との間の隙間Gを最大にするメイン噴射を行うように、磁歪用コイル61への電流の印加を停止する。さらに、所定期間が経過したT5の時点で、ソレノイドコイル33への電流の印加を停止してメイン噴射を終了する。
【0027】
このように、磁歪素子60を用いてニードル全長を可変とした多段噴射制御を実行することにより、プレ噴射とメイン噴射とが近接した精度の高い多段噴射を実現可能に構成されている。
【0028】
次に本実施形態の燃料噴射装置1による噴射終了制御について説明する。図6に示すような通常噴射(メイン噴射が1回)を行う場合、アーマチャ31をリフトさせて排出路26を開放すべく、まずT0の時点でソレノイドコイル33に所定量の電流を印加する。T1でアーマチャ31がリフトを開始すると、T2の時点でアーマチャ31のリフト量は最大になると共に、円錐面51とシート面24との間の隙間Gも最大になる。その後、排出路26を閉鎖すべく、T3の時点でソレノイドコイル33への電流の印加を停止すると、T4の時点でアーマチャ31の降下が開始される。この際、磁歪素子60を伸ばして円錐面51とシート面24との間の隙間Gが早期に閉鎖されるように、T4の直後であるT5の時点で、磁歪用コイル61に所定量の電流を印加する。さらに、第2ニードル50の着座時に、円錐面51とシート面24との接触による衝撃を抑制すべく、磁歪用コイル61への電流の印加は閉弁直前のT6の時点で停止される。
【0029】
このように、燃料噴射を終了する閉弁動作時に磁歪素子60を伸ばすことで、従来の噴射終了制御(図6の破線参照)よりも早期の閉弁動作が可能に構成されている。また、閉弁直前に磁歪用コイル61への電流の印加を停止することで、第2ニードル50の着座速度が低減され、接触部の摩耗や衝撃力を効果的に低減することが可能に構成されている。なお、この噴射終了制御はメイン噴射のみならず、前述のブーツ噴射や多段噴射等の噴射終了時に適用することもできる。
【0030】
次に本実施形態の燃料噴射装置1による燃料の微粒化噴射制御について説明する。図7に示すような通常噴射(メイン噴射が1回)を行う場合、アーマチャ31をリフトさせて排出路26を開放すべく、まずT0の時点でソレノイドコイル33に所定量の電流を印加する。T1でアーマチャ31がリフトを開始すると、T2の時点でアーマチャ31のリフト量は最大になると共に、円錐面51とシート面24との間の隙間Gも最大になる。その後、T3からT4の所定期間、磁歪用コイル61に印加する電流を所定周期で変化させる。その後、排出路26を閉鎖すべく、T5の時点でソレノイドコイル33への電流の印加を停止すると、T6でアーマチャ31が降下を開始して燃料噴射を終了する。
【0031】
このように、燃料噴射期間中に磁歪用コイル61に印加する電流を所定周期で変化させて、円錐面51とシート面24との間の隙間Gを高速で微量変化させることで、噴孔21から噴射される燃料にキャビテーションが生じ、燃焼室内に噴霧される燃料の微粒化が促進されるように構成されている。
【0032】
以上のような構成により、本実施形態に係る内燃機関の燃料噴射装置1によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0033】
ブーツ噴射や多段噴射を行う場合、磁歪素子60を伸ばして第1ニードル40及び第2ニードル50を含むニードル全長を変更することで、円錐面51とシート面24との間の隙間Gは所定の間隔に精度良く調整される。すなわち、燃料噴射量や噴射時期の制御精度が効果的に向上され、初期の噴射率の傾きが小さいブーツ噴射や、プレ噴射とメイン噴射とが近接した噴射形状の多段噴射等、エンジンの運転状態に応じた任意の噴射形状に適宜変更することができる。このように、任意の噴射形状に可変とすることで、有害排出ガスや燃焼音が効果的に低減されると共に、エンジンの燃費性能も効果的に向上される。
【0034】
また、噴射終了時に噴射率の傾きが滑らかになると、エンジン筒内で燃料噴霧が貫徹力を失い、筒内の雰囲気ガスとの混合が抑制されるため、煤や未燃炭化水素、一酸化炭素等の有害排出ガスが生成されることになる。本実施形態の燃料噴射装置1によれば、インジェクタIの閉弁時に、磁歪素子60を伸ばして円錐面51とシート面24との間の隙間Gを早期に閉鎖することで、燃料噴射を瞬時に終了することが可能に構成されている。したがって、噴射終了時における煤や未燃炭化水素、一酸化炭素等の有害排出ガスの生成が抑制され、エンジンの排ガス性能を効果的に向上することができる。
【0035】
また、噴射終了時において、磁歪用コイル61への電流の印加を閉弁直前に停止することで、第2ニードル50の着座速度は低減される。したがって、第2ニードル50の円錐面51とインジェクタボディ20のシート面24との接触部の摩耗や着座による衝撃力を効果的に低減することができる。
【0036】
また、通常噴射等の燃料噴射期間中においては、磁歪用コイル61に印加する電流を所定周期で変化させることで、円錐面51とシート面24との間の隙間Gは高速かつ微量に変化される。すなわち、噴孔21から噴射される燃料にキャビテーションが生じ、燃焼室内に噴霧される燃料の微粒化が促進されることで、燃焼過程で生じる煤を効果的に低減することができる。
【0037】
また、磁歪素子60に圧力をかけた際、インダクタンスが変化することにより磁歪用コイル61に起電力が発生する。このような起電力を検知して、第1ニードル40や第2ニードル50のリフト時及び、第2ニードル50の着座時における磁歪素子60への圧力を検出することで、これらニードル40,50の動作位置を適宜検出することが可能となり、燃料噴射量や燃料噴射時期等の噴射制御の精度(個体間のバラツキ低減を含む)を効果的に向上することができる。
【0038】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0039】
例えば、上述の実施形態において、第1ニードル40がサーボピストン41及びニードルピストン43を備えるものとして説明したが、図8に示すように、第1ニードル40がサーボピストン41を備える一方、第2ニードル50がニードルピストン43を備えるように構成してもよい。
【0040】
この場合、磁歪素子60の伸縮制御により、圧力制御室23の容積を即座に変更することが可能となり、第2ニードル50の移動速度(インジェクタIの開閉弁速度)を可変とすることができる。さらに、アーマチャ31が動作した際の圧力制御室23の圧力を検出することで、アーマチャ31が開閉動作しない場合等の状況把握が可能となり、磁歪素子60をインジェクタIの故障検知に利用することもできる。
【0041】
また、磁歪素子60は第2ニードル50の中空部52内に収容されるものとして説明したが、例えば、磁歪素子60を第1ニードル40の先端部と第2ニードル50の基端部との間に介装させる単純な構成としてもよい。この場合も上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0042】
また、圧力制御室23の制御にソレノイド30を用いるものと説明したが、このソレノイド30に替えてピエゾ素子や磁歪素子を適用してもよい。
【0043】
また、本実施形態の燃料噴射装置1は、ディーゼルエンジンに適用されるものとして説明したが、例えばガソリンエンジン等の他の内燃機関にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 燃料噴射装置
10 コントロールユニット(制御手段)
20 インジェクタボディ
21 噴孔
22 燃料室
23 圧力制御室
26 排出路
30 ソレノイド(電磁弁)
40 第1ニードル
50 第2ニードル
60 磁歪素子
61 磁歪用コイル(コイル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に高圧燃料を噴射する噴孔が形成されたインジェクタボディと、
前記インジェクタボディの先端側に形成されて前記高圧燃料が導入される燃料室と、
前記インジェクタボディの基端側に形成されて前記高圧燃料が導入される圧力制御室と、
前記インジェクタボディに前記圧力制御室と連通して形成され、前記圧力制御室に導入された前記高圧燃料を排出する排出路と、
前記インジェクタボディの基端部に設けられ、電流が印加されると前記排出路を開放する一方、電流の印加が停止されると前記排出路を閉鎖する電磁弁と、
前記インジェクタボディ内に移動可能に収容されると共に、前記燃料室内の前記高圧燃料から基端側に向けた圧力を受ける一方、前記圧力制御室内の前記高圧燃料から先端側に向けた圧力を受ける第1ニードルと、
前記燃料室内に移動可能に収容されると共に、その先端部が前記燃料室の先端側内壁に着座した際に前記噴孔を閉鎖する一方、前記燃料室の先端側内壁から離間した際に前記噴孔を開放する第2ニードルと、
前記第1ニードルの先端部と前記第2ニードルの基端部との間に設けられ、その外周に磁界が形成されると先端側及び基端側に向けて伸びる磁歪素子と、
前記インジェクタボディの外周面に設けられ、電流が印加された際に前記磁歪素子の外周に磁界を形成するコイルと、
内燃機関の運転状態に応じて前記電磁弁及び前記コイルへの電流の印加を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
ブーツ噴射を行う時に、初期の噴射率の傾きが小さくなるように、前記電磁弁に所定期間の電流を印加して前記第1ニードルを基端側に移動させると共に、該所定期間よりも短い期間の電流を前記コイルに印加して前記第2ニードルを先端側に移動させる請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
プレ噴射を含む多段噴射を行う時に、プレ噴射とメイン噴射とが近接するように、前記電磁弁に所定期間の電流を印加して前記第1ニードルを基端側に移動させると共に、該所定期間よりも短い期間、次第に大きくなる電流を前記コイルに印加して前記第2ニードルを先端側に移動させるプレ噴射を行う請求項1又は2に記載の内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
燃料噴射終了時に、前記磁歪素子を伸ばして前記第2ニードルを早期に着座させるように、前記電磁弁への所定期間の電流の印加を中止した後に、前記コイルに該所定期間よりも短い期間の電流を印加する請求項1から3の何れかに記載の内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
燃料噴射時に、前記噴孔から噴射される前記高圧燃料にキャビテーションを生じさせるように、前記電磁弁に所定期間の電流を印加すると共に、前記コイルに所定周期で変化する電流を印加する請求項1から4の何れかに記載の内燃機関の燃料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−53571(P2013−53571A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192841(P2011−192841)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】