説明

内燃機関の蓄ガス方法及び内燃機関

【課題】蓄ガス容器に溜め込んだ蓄圧されたガスを過給補助に用いる内燃機関において、蓄ガス容器に貯蔵された前記ガスの酸素濃度を精度よく測定し、蓄ガス容器内の蓄圧されたガスの酸素濃度を適切な濃度範囲内に維持でき、蓄ガス容器からエンジンのシリンダ内に過給補助を行うときに、蓄ガス容器内に蓄えられた適正な酸素濃度のガスを供給して、排気ガス性能のばらつきを抑えることができる内燃機関の蓄ガス方法及び内燃機関を提供する。
【解決手段】蓄ガス容器27内の酸素濃度Coを調整する制御において、蓄ガス容器27内の蓄圧されたガスCの酸素濃度Coの計測で、蓄ガス容器27内のガスCの一部Cpを大気圧に近い状態に導いて、大気圧に近い状態に導いた前記ガスCpの酸素濃度Coaを測定して、この測定値Coaを蓄ガス容器27内の酸素濃度Coの測定値Comとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の過渡状態のときに、蓄ガス容器に蓄圧されたガスを、シリンダ内に供給してEGR率を高めることができる内燃機関の蓄ガス方法及び内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を低減するEGR(排気再循環)においては、過給システムを備えた内燃機関では、高圧EGR方式と低圧EGR方式とがある。この高圧EGR方式では、例えば、図11に示すように、高圧EGRシステムを備えた内燃機関1Xでは、ターボ式過給機14よりもエンジン本体11側にEGR通路17が設けられており、エンジン本体11の排気マニホールド11bから吸気マニホールド11aにEGR通路17経由でEGRガスGeを還流している。また、低圧EGR方式では、例えば、図12に示すように、低圧EGRシステムを備えた内燃機関1Yでは、ターボ式過給機14よりもエンジン本体11とは反対側にEGR通路17が設けられており、タービン14bの下流側からコンプレッサ14aの上流側にEGR通路17経由でEGRガスGeを還流している。
【0003】
これらのいずれのEGR方式でも、EGRガス量の制御には、MAF制御方式が一般的に使用されている。このMAF制御方式では、EGR無しでエンジンのシリンダ内に吸入される新気量(空気量)をMoとし、EGRを行うことでシリンダ内に吸入される新気量をMeとすると、還流されるEGRガス量のMegrがMegr=Mo−Meとなるので、これに基づいて、EGR弁21の弁開度により新気量Meを制御することで、EGRガス量Megrを制御している。
【0004】
つまり、エンジンの回転速度Neと燃料負荷Qをパラメータにして、各エンジンの運転状態に対する新気量Meを予め設定して作成した新気量Meのデータマップを基に、実際のエンジン運転時の回転速度Neと燃料負荷Qから目標の新気量Metを算出して、実際の新気量Meをこの目標の新気量Metになるように制御することで、EGRガス量Megrを制御している。
【0005】
しかしながら、ターボ式過給機を使用する場合には排気ガスのエネルギー(エンタルピ)を用いて過給を行うため、ターボ式過給機の応答遅れ(ターボラグ)を無くすことは不可能であり、このMAF制御方式では、このターボラグに起因する次のような問題がある。ターボラグにより負荷が急激に増加する過渡運転状態では、過給圧が定常運転時に設定した圧力まで上昇しないため、エンジンの吸入空気量が低下する。つまり、ターボ式過給機付きエンジンでも無過給エンジンと同程度の吸気量となってしまう。
【0006】
従って、定常運転条件で設定した目標のEGR量に達成することができず、図13に示すように、急激な過渡運転を行う際にNOxの排出量が増加する。また、煤の発生量を制限するために、過給圧があるレベルより上がらない場合には煤が増加しない領域内に燃料の投入量が抑えられるというスモークリミット制御が行われる。その結果、図14及び図15に示すように、燃料噴射量Qと空気量(Mo、Me)が共に点線で示されるように抑えられ、加速時のパワーが抑えられてしまうという問題がある。そのために、加速時等の負荷が急激に増加する過渡運転時には、NOx排出量の増加や燃費の悪化が発生する。
【0007】
一方、エンジンのクランクシャフト等によって、過給機を直接駆動して過給を行う機械式過給装置を使用する場合では、過給の応答遅れをなくす事ができるが、エンジンの回転速度が決まると燃料量の多少に関わらず、過給量が決まるために、また、駆動に要する仕事量が大きいために、燃費が悪化するという問題がある。
【0008】
この対策として、近年では、図16に示すような蓄ガス供給システムを備えた内燃機関1Zが研究されており、この蓄ガス供給システムでは、内燃機関1Zから排出される排気ガスGの一部Gpを空気Aaと混合した混合ガスCを容積型コンプレッサ(排気圧縮器)25で圧縮して高圧化し、この高圧化した混合ガスCを蓄ガス容器(圧力容器)27内に溜め込み、過渡時に放出電磁弁36を開弁して混合ガスCを調圧弁29経由で吸気弁(吸気スロットル)35の下流の吸気通路12に放出し、これにより、内燃機関1Zのシリンダ内への吸気量を過給機付きエンジン並みに増加させると共に、EGRの効果によるNOxの低減を図り、ターボラグの問題を解消している過給制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この蓄ガス供給システムを採用した場合は、過渡時に加圧された混合ガスCをエンジン1Zの吸気通路12内に放出することで過給圧を上げて、シリンダ内への空気量を増加させることができるので燃料量も増やすことができる。その結果、加速性能が向上し、煤の排出も抑えることができる。また、過給圧は排気マニホールド11bの内圧よりも高くなるので、内燃機関1Zのポンピング損失が低下し燃費の向上を図ることができる。
【0010】
しかしながら、蓄ガス容器内の蓄圧されたガスの組成を、排気ガスと空気の混合比を基にして調整している場合には、この混合比を一定にする制御はできても、排気ガスの酸素濃度がエンジンの運転状態によって変化する可能性があり、ガスの酸素濃度を一定に保てるとは限らない。
【0011】
特に、蓄ガス容器に導入する排気ガスを排気通路から導入するときに、エンジンの負荷状態によって排気ガス中の酸素濃度が低い場合や、酸素濃度が高い場合が発生する。従って、蓄ガス容器内のガスを排気ガスと空気の混合比一定で制御した場合には、ガスの酸素濃度がばらつくために、煤とNOx等の排気性能にばらつきが発生する可能性がある。
【0012】
これを防止するためには、蓄ガス容器の内部の酸素濃度を測定して、排気ガスと空気との混合比を制御することが、排気性能のばらつきを抑えるために有効であると考えられる。この蓄ガス容器の内部の酸素濃度を測定するために、酸素濃度計を用いることが考えられるが、酸素濃度計は圧力依存性が高く、蓄ガス容器内の圧力による影響を補正する必要があり、測定精度が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011−21558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス圧縮装置を用いて、排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを蓄ガス容器に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡状態のときに前記ガスをシリンダ内に一時的に供給して過渡状態のNOxの排出を抑制するとともに加速性能を向上させる内燃機関において、蓄ガス容器に貯蔵されたガスの酸素濃度を精度よく測定し、蓄ガス容器内のガスの酸素濃度を適切な濃度範囲内に維持でき、蓄ガス容器からエンジンのシリンダ内に過給補助を行うときに、蓄ガス容器内に蓄えられた適正な酸素濃度のガスを供給して、排気ガス性能のばらつきを抑えることができる内燃機関の蓄ガス方法及び内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明の内燃機関の蓄ガス方法は、内燃機関の排気ガスの一部をシリンダ内に再循環するためのEGR通路と、内燃機関の排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを圧縮するガス圧縮装置と、該ガス圧縮装置で圧縮された前記ガスを貯蓄する蓄ガス容器と、該蓄ガス容器から前記ガスを吸気系通路に供給するための蓄ガス供給通路を備えた内燃機関の過給補助方法において、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を調整する制御において、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度の計測で、前記蓄ガス容器内の前記ガスの一部を大気圧に近い状態に導いて、大気圧に近い状態に導いた前記ガスの酸素濃度を測定して、この測定値を前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度の測定値とする酸素濃度測定方法を用いることを特徴とする方法である。
【0016】
この方法によれば、蓄ガス容器内のガスの酸素濃度を、測定時の圧力に大きな影響を受ける酸素濃度計で測定するために、測定する蓄ガス容器内の蓄圧されたガスの一部を、このガスを加圧するガス圧縮装置の入口側に戻して、又は、大気に開放して、略大気圧に減圧した状態にしてから、酸素濃度計でこのガスの酸素濃度を測定する。これにより、酸素濃度計の圧力依存性を排除して、蓄ガス容器内のガスの酸素濃度を精度よく測定することができる。
【0017】
従って、蓄ガス容器に貯蔵されたガスの酸素濃度を精度よく測定し、蓄ガス容器内のガスの酸素濃度を適切な濃度範囲内に維持でき、蓄ガス容器からエンジンのシリンダ内に過給補助を行うときに、蓄ガス容器内に蓄えられた適正な酸素濃度のガスを供給して、排気ガス性能のばらつきを抑えることができる。
【0018】
また、上記の内燃機関の蓄ガス方法において、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が予め設定した第1上限圧力より高くなったときは、前記ガスを放出し、排気ガス又は空気を前記蓄ガス容器内に蓄圧する際には、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を前記酸素濃度測定方法で測定しながら、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1下限酸素濃度より低いときは空気を蓄圧し、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1上限酸素濃度より高いときは排気ガスを蓄圧すると、蓄ガス容器内のガスの酸素濃度と圧力を予め設定した範囲内の酸素濃度と予め設定した範囲内の圧力に効率よく維持することができる。
【0019】
あるいは、上記の内燃機関の蓄ガス方法において、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が予め設定した第1上限圧力より高くなったときは、前記ガスを放出し、排気ガス又は空気を前記蓄ガス容器内に蓄圧する際には、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を前記酸素濃度測定方法で測定しながら、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1下限酸素濃度より低いときで、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力以下のときは、前記ガスを放出することなく空気を蓄圧し、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が前記第1下限酸素濃度より低い予め設定した第2下限酸素濃度より低いとき、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力より大きいときは、前記ガスを放出して空気を蓄圧し、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1上限酸素濃度より高いときで、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力以下のときは、前記ガスを放出することなく排気ガスを蓄圧し、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が前記第1上限酸素濃度より高い予め設定した第2上限酸素濃度より高く、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第2上限圧力より高いときは、前記ガスを放出して排気ガスを蓄圧すると、蓄ガス容器内のガスの酸素濃度と圧力を予め設定した範囲内の酸素濃度と予め設定した範囲内の圧力に効率よく維持することができる。
【0020】
そして、上記の目的を達成するための内燃機関は、上記の内燃機関の蓄ガス方法を実施できる内燃機関であり、内燃機関の排気ガスの一部をシリンダ内に再循環するためのEGR通路と、内燃機関の排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを圧縮するガス圧縮装置と、該ガス圧縮装置で圧縮された前記ガスを貯蓄する蓄ガス容器と、該蓄ガス容器から前記ガスを吸気系通路に供給するための蓄ガス供給通路と、前記蓄ガス容器に排気ガスまたは空気を蓄圧するための装置を制御する制御装置を備えた内燃機関において、前記制御装置が、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を調整する制御において、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度の計測で、前記蓄ガス容器内の前記ガスの一部を大気圧に近い状態に導いて、大気圧に近い状態に導いた前記ガスの酸素濃度を測定して、この測定値を前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度の測定値とする酸素濃度測定方法を用いる制御を行うように構成される。 この構成によれば、蓄ガス容器内のガスの酸素濃度を、測定時の圧力に大きな影響を受ける酸素濃度計で測定するために、測定する蓄ガス容器内の蓄圧されたガスの一部を、このガスを加圧するガス圧縮装置の入口側に戻して、又は、大気に開放して、略大気圧に減圧した状態にしてから、酸素濃度計でこのガスの酸素濃度を測定する。これにより、酸素濃度計の圧力依存性を排除して、蓄ガス容器内のガスの酸素濃度を精度よく測定することができる。
【0021】
従って、蓄ガス容器に貯蔵されたガスの酸素濃度を精度よく測定し、蓄ガス容器内のガスの酸素濃度を適切な濃度範囲内に維持でき、蓄ガス容器からエンジンのシリンダ内に過給補助を行うときに、蓄ガス容器内に蓄えられた適正な酸素濃度のガスを供給して、排気ガス性能のばらつきを抑えることができる。
【0022】
上記の内燃機関において、前記制御装置が、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が予め設定した第1上限圧力より高くなったときは、前記ガスを放出し、排気ガス又は空気を前記蓄ガス容器内に蓄圧する際には、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を前記酸素濃度測定方法で測定しながら、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1下限酸素濃度より低いときは空気を蓄圧し、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1上限酸素濃度より高いときは排気ガスを蓄圧する制御を行うように構成する。この構成により、蓄ガス容器内の蓄圧されたガスの酸素濃度と圧力を予め設定した範囲内の酸素濃度と予め設定した範囲内の圧力に効率よく維持することができる。
【0023】
あるいは、上記の内燃機関において、前記制御装置が、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が予め設定した第1上限圧力より高くなったときは、前記ガスを放出し、排気ガス又は空気を前記蓄ガス容器内に蓄圧する際には、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を前記酸素濃度測定方法で測定しながら、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1下限酸素濃度より低いときで、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力以下のときは、前記ガスを放出することなく空気を蓄圧し、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が前記第1下限酸素濃度より低い予め設定した第2下限酸素濃度より低いとき、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力より大きいときは、前記ガスを放出して空気を蓄圧し、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1上限酸素濃度より高いときで、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力以下のときは、前記ガスを放出することなく排気ガスを蓄圧し、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が前記第1上限酸素濃度より高い予め設定した第2上限酸素濃度より高く、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第2上限圧力より高いときは、前記ガスを放出して排気ガスを蓄圧する制御を行うように構成する。この構成により、蓄ガス容器内の蓄圧されたガスの酸素濃度と圧力を所定の範囲内の酸素濃度と所定の範囲内の圧力に効率よく維持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る内燃機関の蓄ガス方法及び内燃機関によれば、ガス圧縮装置を用いて、排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを蓄ガス容器に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡状態のときに前記ガスをシリンダ内に一時的に供給して過渡状態のNOxの排出を抑制するとともに加速性能を向上させる内燃機関において、蓄ガス容器に貯蔵されたガスの酸素濃度を精度よく測定し、蓄ガス容器内の蓄圧されたガスの酸素濃度を適切な濃度範囲に維持でき、蓄ガス容器からエンジンのシリンダ内に過給補助を行うときに、適正な酸素濃度のガスを供給して、排気ガス性能のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の内燃機関の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る第2の実施の形態の内燃機関の構成を示す図である。
【図3】蓄ガス容器内の酸素濃度測定に関係する構成を示す図である。
【図4】蓄ガス容器内の酸素濃度測定に関係する他の構成を示す図である。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態の蓄ガス方法の制御フローの一例を示す図である。
【図6】本発明に係る第2の実施の形態の蓄ガス方法の制御フローの一例を示す図である。
【図7】蓄ガス方法と過給補助方法と絡めた制御方法の制御フローの一例を示す図である。
【図8】蓄ガス用のガス圧縮装置の駆動を説明するための図である。
【図9】三方切替弁で構成された流路切替装置の構造を吸気ラインが連通された状態で示す図である。
【図10】三方切替弁で構成された流路切替装置の構造を蓄ガス供給ラインが連通された状態で示す図である。
【図11】従来技術の高圧EGR方式の内燃機関の構成を示す図である。
【図12】従来技術の低圧EGR方式の内燃機関の構成を示す図である。
【図13】車速の変化と瞬時NOx排出量の関係を示す図である。
【図14】全負荷における燃料噴射量の特性と過渡時の動きを示す図である。
【図15】過渡時のターボ式過給機の応答遅れとEGRの関係を示す図である。
【図16】先行技術の内燃機関の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関の蓄ガス方法及び内燃機関について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明に係る第1の実施の形態のエンジン(内燃機関)1は、エンジン本体11と吸気マニホールド11aに接続する吸気通路12と排気マニホールド11bに接続する排気通路13を有して構成される。この吸気マニホールド11aと吸気通路12とで吸気系通路を形成し、排気マニホールド11bと排気通路13とで排気系通路を形成する。
【0028】
吸気通路12には、ターボ式過給機14のコンプレッサ14aが設けられ、排気通路13には、ターボ式過給機14のタービン14bと、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)装置15とNOx吸蔵還元型触媒等で形成されるNOx浄化触媒16が設けられている。
【0029】
また、タービン14bの上流側の排気通路13からEGR通路17が分岐され、コンプレッサ14aの上流側の吸気通路12にEGR合流部18で合流している。このEGR通路17には上流側から、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)装置19とEGRクーラ20とEGR弁21が設けられている。
【0030】
更に、NOx浄化触媒16の下流側の排気通路13から分岐して、排気ガス導入通路22が設けられている。この排気ガス導入通路22にはEGRクーラ23と三方弁24が設けられ、この排気ガス導入通路22は機械式の容積型過給機(往復動式が望ましい)等で形成されるガス圧縮装置25に接続されている。このガス圧縮装置25は、圧縮ガス供給通路26により圧力容器等で形成される蓄ガス容器27に接続されている。また、この蓄ガス容器27は蓄ガス供給通路28により吸気通路12と接続されている。この排気ガス導入通路22と圧縮ガス供給通路26と蓄ガス供給通路28で蓄圧ガス系通路を形成する。
【0031】
図8に示すように、このガス圧縮装置25は、エンジン1を搭載した車両の車軸31から歯車32、33と、電磁クラッチ34を経由してガス圧縮装置25の駆動軸に動力を伝達する。この電磁クラッチ34をONにして接続することにより、ガス圧縮装置25を駆動して、排気ガス導入通路22からの排気ガスGの一部Gpと空気Aaとこれらの混合ガスのいずれかのガスCを、圧縮して高圧化して蓄ガス容器27に供給し、貯蔵する。なお、蓄ガス供給通路28には、調圧弁29が配置され、流路切替装置30に供給されるガスCの圧力を調整する。このとき、三方弁24で、排気ガスGの一部Gpの量と空気Aaの量を調整して、蓄ガス容器27で貯蔵されるガスCにおける酸素濃度を略一定に保つことが好ましく、これにより、EGRを行うときの制御を単純化することができる。
【0032】
そして、上記の機器類の制御を行うために、エンジンコントロールユニット(ECU)と呼ばれるエンジン1の運転の全般を制御する制御装置40を設け、この制御装置40で蓄ガス容器27内の圧力Pmやエンジン回転速度Neやアクセル開度Ac等を検出して、その結果に基づいて電磁クラッチ34や三方弁24を制御して、蓄ガス容器27内のガスCの量(圧力)と排気ガスGpと空気Aaの混合比率を調整制御する。
【0033】
そして、図3に示すように、この蓄ガス容器27の内部の最大圧を調整する電磁開閉弁27aを蓄ガス容器27に設ける。更に、蓄ガス容器27の内部のガスCの酸素濃度を測定するために、蓄ガス容器27に連通する酸素濃度測定通路51を設けて、この酸素濃度測定通路51には、上流側から、すなわち、蓄ガス容器27側から電磁開閉弁52と酸素濃度計53を設ける。この酸素濃度測定通路は51は、ガス圧縮装置25の上流側の排気ガス導入通路22に連通させて、酸素濃度を測定した後のガスCをガス圧縮装置25の入口側に戻すように構成してもよく、図4に示すように、大気開放として酸素濃度を測定した後のガスCを大気中に放出するように構成してもよい。また、蓄ガス容器27には、蓄ガス容器27の内部のガスCの温度を計測するための温度計54と圧力計55を設ける。
【0034】
つまり、エンジン1は、排気ガスGの一部Geをシリンダ内に再循環するためのEGR通路17と、エンジン1の排気ガスGの一部Gpと空気Aaとこれらの混合ガスのいずれかのガスCを圧縮するガス圧縮装置25と、このガス圧縮装置25で圧縮されたガスCを貯蓄する蓄ガス容器27と、この蓄ガス容器27と吸気通路12を接続する蓄ガス供給通路28を備えて構成される。
【0035】
そして、吸気通路12と蓄ガス供給通路28は流路切替装置30を介して接続される。また、流路切替装置30は吸気通路12の下流側の通路側を開放したまま、蓄ガス供給通路28側と吸気通路12の上流側の通路側とを切り替えるように構成される。
【0036】
この流路切替装置30は、図9及び図10に示すような三方切替弁で構成することができる。また、図示しないが、吸気系通路12に設けた吸気弁と、蓄ガス供給通路28に設けた開閉弁で構成することもできる。つまり、流路切替装置30を用いずに、吸気通路12を吸気弁(吸気スロットル)等で閉塞する方式の場合には、吸気弁(図示しない)の上流にEGR合流部18を設けて、EGRガスGeをEGR弁21と吸気弁(図示しない)とで2段構えで遮断する。
【0037】
図9及び図10に示す流路切替装置30では、駆動用ガスApを入れてピストンの背面の空気Aeを抜くことで、高速駆動用のシリンダ30aのロッド30bを移動させることにより、シャッター部30cを移動させて、図9に示すように、蓄ガス供給通路28側を閉じて、吸気通路12の上流側12aと下流側12bを連通させ、また、図10に示すように、吸気通路12の上流側12a側を閉じて、蓄ガス供給通路28と吸気通路12の下流側12bを連通させる。
【0038】
次に、本発明に係る第2の実施の形態のエンジン(内燃機関)1Aについて説明する。図2に示すように、この第2の実施の形態のエンジン1Aでは、EGR通路17がNOx浄化触媒16の下流側の排気通路13から分岐し、このEGR通路17から排気ガス導入通路22が分岐している点が、EGR通路17がターボ式過給機14のタービン14bの上流側の排気通路13から分岐して、排気ガス導入通路22がNOx浄化触媒15の下流側の排気通路13から分岐している第1の実施の形態と異なっている。その他の点は、第1の実施の形態と同じである。
【0039】
つまり、EGR通路17に流入する排気ガスGeが、第1の実施の形態のエンジン1では、ターボ式過給機14のタービン14bを通過する前の排気ガスGの一部となっているのに対して、この第2の実施の形態のエンジン1Aでは、ターボ式過給機14のタービン14bを通過した後の排気ガスGの一部となっている。言い換えれば、第1の実施の形態のエンジン1では、高圧EGR方式が採用されており、第2の実施の形態のエンジン1Aでは低圧EGR方式が採用されている。
【0040】
次に、エンジン(内燃機関)1、1Aの制御装置40で行う、内燃機関の蓄ガス方法について説明する。この内燃機関の蓄ガス方法は、上記の構成のエンジン1、1Aで実施できる方法である。先ず、内燃機関の過給補助方法について説明する。この内燃機関の過給補助方法は、エンジン1、1Aの排気通路(排気系通路)13の排気ガスGの一部Gpを空気Aaとこれらの混合ガスのいずれかのガスCを圧縮して貯蓄する。
【0041】
それと共に、過給補助方法では、エンジン1、1Aの過渡運転でないときには、エンジン1、1Aの排気ガスGの一部Geを、EGR通路17を経由してシリンダ内に再循環し、エンジン1、1Aの過渡運転であるときには、ガス容器27から蓄圧されたガスCを一時的に吸気通路(吸気系通路)12に供給する。つまり、エンジン1、1Aの運転状態が過渡状態であるときには、EGR通路17からのEGRガスGeと、吸気通路12からの新気Aとを流路切替装置30で遮断して、ガスCのみを吸気通路12に供給する。
【0042】
また、この内燃機関の過給補助方法において、EGRガスGeと新気Aとの遮断、及びガスCの供給を、図9と図10で示すような三方切替弁で構成した流路切替装置30で行うか、あるいは、EGRガスGeと新気Aとの遮断、及びガスCの供給を、吸気通路(吸気系通路)12に設けた吸気弁(図示しない)と、蓄ガス供給通路28に設けた開閉弁(図示しない)で行う。
【0043】
これらの制御においては制御装置40で、エンジン回転速度Ne、エンジン空気量(Mo、Me)、エンジン燃料量(燃料噴射量)Q、蓄ガス容器27の内部の圧力Pm等の検出値等に基づいて、調圧弁29とEGR弁21と流路切替装置30を制御する。
【0044】
次に、第1の実施の形態の内燃機関の蓄ガス方法について、図5に例示するフローチャートに基づいて説明する。この第1の実施の形態の内燃機関の蓄ガス方法は、制御装置40によって例えば、図5に例示されるような制御フローによって実施されるものである。図5の制御フローは、エンジン1、1Aの運転開始と共に、上位の制御フローから呼ばれて、スタートし、ステップS11〜ステップS12、又は、ステップS11〜ステップS15、又は、ステップS11〜ステップS17を繰り返し実施し、エンジン1、1Aの運転停止により、割り込みが発生して、フローの途中からリターンに行き、上位の制御フローに戻って、この制御フローの実施が停止するものとして示してある。
【0045】
図5の制御フローが呼ばれると、ステップS11で、圧力計55で測定した、蓄ガス容器27の内部のガスCの圧力である測定圧力Pmが予め設定した第1上限圧力P1より高いか否かを判定する。測定圧力Pmが第1上限圧力P1より高い(Pm>P1)の場合には(YES)、ステップS12にて電磁開閉弁52を閉弁したまま、電磁開閉弁27aを予め設定した放出時間Tdbの間、開弁してガスCを放出し、蓄ガス容器27内のガスCの圧力を下げて、蓄ガス容器27に更に排気ガスG又は空気Aaを蓄圧できるようにする。この放出時間Tdbの値は実験で設定する。測定圧力Pmが第1上限圧力P1以下(Pm≦P1)場合には(NO)、ステップS13〜ステップS17で、空気Aa又は排気ガスGの一部Gpを蓄ガス容器27内に蓄圧する。
【0046】
ステップS13では、蓄ガス容器27の内部のガスCの酸素濃度Coを測定する。この蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Coを計測するための酸素濃度測定方法では、蓄ガス容器27内のガスCの一部Cpを大気圧に近い状態に導いて、大気圧に近い状態に導いたガスCpの酸素濃度Coaを測定する。この測定値Coaを蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Coの測定値Comとする。
【0047】
つまり、電磁開閉弁27aを閉弁したまま、蓄ガス容器27の酸素濃度測定通路51の電磁開閉弁52を予め設定した開放時間Tdaの間だけ開弁し、蓄ガス容器27内のガスCの一部Cpを短時間、ガス圧縮装置25の入口側上流に導入(図3の構成)、又は大気中に(図4の構成)開放することで、測定する蓄ガス容器27内のガスCの一部Cpを略大気圧とし、この略大気圧になったガスCの一部Cpの酸素濃度Coを酸素濃度計53で測定し、この測定値Coaを蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Coの測定値Comとする。この開放時間Tdaの値は、実験で酸素濃度計53の応答性を考慮して決定するが、極力短い時間とすることが好ましい。
【0048】
次のステップS14で、酸素濃度Comが予め設定した第1下限酸素濃度Cb1より低いか否かの判定(下限判定)を行う。このステップS14の判定で、酸素濃度Comが第1下限酸素濃度Cb1以上(Com≧Cb1)の場合には(NO)、ステップS16に行き、酸素濃度Comが第1下限酸素濃度Cb1より低い(Com<Cb1)場合には(YES)、ステップS15に行き、空気Aaを蓄圧する。
【0049】
ステップS15の空気Aaの蓄圧では、三方弁24を空気Aa側とガス圧縮装置25側が連通するように切り替えると共に、ガス圧縮装置25を駆動して、予め設定した供給時間Tseの間空気Aaを蓄ガス容器27に供給する。この供給時間Tseの値は実験などで設定する。その後、ステップS11に戻る。
【0050】
ステップS16では、酸素濃度Comが予め設定した第1上限酸素濃度Cc1より高いか否かの判定を行う。このステップS16の判定で、酸素濃度Comが第1上限酸素濃度Cc1より高い(Com>Cc1)の場合には(YES)、ステップS17に行き、排気ガスGを蓄圧し、酸素濃度Comが第1上限酸素濃度Cc1以下(Com≦Cc1)場合には(NO)、そのまま、ステップS11に戻る。
【0051】
ステップS17の排気ガスGの蓄圧、厳密には、排気ガスGの一部Gpの蓄圧では、三方弁24を排気ガスGの一部Gp側とガス圧縮装置25側が連通するように切り替えると共に、ガス圧縮装置25を駆動して、予め設定した供給時間Tseの間排気ガスGの一部Gpを蓄ガス容器27に供給する。その後、ステップS11に戻る。
【0052】
このステップS11〜ステップS17を繰り返すことで、蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Coを目標とする範囲内(Cb1≦Co≦Cc1)に維持する。そして、エンジン1、1Aの運転停止により、割り込みが発生して、フローの途中からリターンに行き、上位の制御フローに戻って、この上位の制御フローの停止と共に、この制御フローも停止する。
【0053】
次に、第2の実施の形態の内燃機関の蓄ガス方法について、図6に例示するフローチャートに基づいて説明する。この第2の実施の形態の内燃機関の蓄ガス方法は、制御装置40によって例えば、図6に例示されるような制御フローによって実施されるものである。図6の制御フローは、エンジン1、1Aの運転開始と共に、上位の制御フローから呼ばれて、スタートし、ステップS21〜ステップS22、又は、ステップS21〜ステップS28、又は、ステップS21〜ステップS30を繰り返し実施し、エンジン1、1Aの運転停止により、割り込みが発生して、フローの途中からリターンに行き、上位の制御フローに戻って、この制御フローの実施が停止するものとして示してある。
【0054】
図6の制御フローが呼ばれると、ステップS21で、第1の実施の形態の蓄ガス方法の図5のステップS11と同様に、圧力計55で測定した、蓄ガス容器27の内部のガスCの圧力である測定圧力Pmが予め設定した第1上限圧力P1より高いか否かを判定する。測定圧力Pmが第1上限圧力P1より高い(Pm>P1)の場合には(YES)、ステップS22にて電磁開閉弁52を閉弁したまま、電磁開閉弁27aを予め設定した放出時間Tdbの間、開弁してガスCを放出し、蓄ガス容器27内のガスCの圧力を下げて、蓄ガス容器27に更に排気ガスG又は空気Aaを蓄圧できるようにする。この放出時間Tdbの値は実験で設定する。測定圧力Pmが第1上限圧力P1以下(Pm≦P1)場合には(NO)、ステップS23〜ステップS30で、空気Aa又は排気ガスGを蓄ガス容器27内に蓄圧する。
【0055】
ステップS23では、蓄ガス容器27の内部の蓄圧されたガスCの酸素濃度Coを測定する。この蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Coを計測するための酸素濃度測定方法は、第1の実施の形態の酸素濃度測定方法と同じであり、ステップS13と同じである。
【0056】
次のステップS24で、第1の判定を行う。この第1の判定では、蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Comが予め設定した第1下限酸素濃度Cb1より低いときで、かつ、蓄ガス容器27内のガスCの圧力Pmが予め設定した第1上限圧力P1よりも低い予め設定した第2上限圧力P2以下であるか否かを判定する。酸素濃度Comが第1下限酸素濃度Cd1より低い(Com≧Cb1)ときで、かつ、圧力Pmが第2上限圧力P2以下である(Pm≦P2)場合には(YES)、蓄ガス容器27に蓄ガスする余裕があるとして、ガスCを放出することなく、ステップS28で空気Aaを蓄圧する。このステップS28の空気Aaの蓄圧は、第1の実施の形態の蓄ガス方法のステップS15と同じである。そうでない場合は(NO)ステップS25に行く。
【0057】
ステップS25では、第2の判定を行う。この第2の判定では、蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Comが第1下限酸素濃度Cb1より低い予め設定した第2下限酸素濃度Cb2より低いとき、かつ、蓄ガス容器27内のガスCの圧力Pmが第1上限圧力P1よりも低い予め設定した第2上限圧力P2より大きいか否かを判定する。酸素濃度Comが第2下限酸素濃度Cb2より低い(Com<Cb2)とき、かつ、圧力Pmが第2上限圧力P2より大きい(Pm>P2)場合には(YES)、蓄ガス容器27に蓄ガスする余裕が無いとして、ステップS29で、電磁開閉弁52を閉弁したまま、電磁開閉弁27aを予め設定した放出時間Tdbの間、開弁して蓄圧されたガスCを放出してから、ステップS28に行き、空気Aaを蓄圧する。そうでない場合は(NO)ステップS26に行く。
【0058】
ステップS26では、第3の判定を行う。この第3の判定では、蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Comが予め設定した第1上限酸素濃度Cc1より高いときで、かつ、蓄ガス容器27内のガスCの圧力Pmが第1上限圧力P1よりも低い予め設定した第2上限圧力P2以下であるか否かを判定する。酸素濃度Comが第1上限酸素濃度Cc1より高いときで、かつ、圧力Pmが第2上限圧力P2以下である場合には、蓄ガス容器27に蓄ガスする余裕があるとして、蓄圧されたガスCを放出することなく、ステップS30で排気ガスGを蓄圧する。このステップS30の排気ガスGの蓄圧は、第1の実施の形態の蓄ガス方法のステップS17と同じである。そうでない場合は(NO)ステップS27に行く。
【0059】
ステップS27では、第4の判定を行う。この第4の判定では、蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Comが第1上限酸素濃度Cc1より高い予め設定した第2上限酸素濃度Cc2より高く、かつ、蓄ガス容器27内のガスCの圧力Pmが第2上限圧力P2より高いか否かを判定する。酸素濃度Comが第2上限酸素濃度Cc2より高く、かつ、圧力Pmが第2上限圧力P2より高い場合には(YES)、蓄ガス容器27に蓄ガスする余裕が無いとして、ステップS31で、電磁開閉弁52を閉弁したまま、電磁開閉弁27aを予め設定した放出時間Tdbの間、開弁して蓄圧されたガスCを放出してから、ステップS30に行き、排気ガスGを蓄圧する。そうでない場合は(NO)ステップS21に戻る。
【0060】
このステップS21〜ステップS22、又は、ステップS21〜ステップS28、又は、ステップS21〜ステップS30を繰り返すことで、蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Coを目標とする範囲内(Cb1≦Co≦Cc1)に維持する。そして、エンジン1、1Aの運転停止により、割り込みが発生して、フローの途中からリターンに行き、上位の制御フローに戻って、この上位の制御フローの停止と共に、この制御フローも停止する。
【0061】
次に、上記の第1及び第2の実施の形態の内燃機関の蓄ガス方法と過給補助方法を絡めた制御について、図7に例示するフローチャートに基づいて説明する。この制御は、蓄ガス容器27からエンジン1、1Aのシリンダ内に蓄圧されたガスCを供給する(過給補助する)過給補助と蓄ガスとの関係に関するものである。
【0062】
この制御は、制御装置40によって例えば、図7に例示されるような制御フローによって実施されるものである。図7の制御フローは、エンジン1、1Aの運転開始と共に、上位の制御フローから呼ばれて、スタートし、ステップS41〜ステップS43、又は、ステップS41〜ステップS44を繰り返し実施し、エンジン1、1Aの運転停止により、割り込みが発生して、フローの途中からリターンに行き、上位の制御フローに戻って、この制御フローの実施が停止するものとして示してある。
【0063】
図7の制御フローが呼ばれると、ステップS41で、過給補助を実施したか否かを判定する。過給補助をしていない場合は(NO)、次のステップS42で、蓄ガス容器27内の蓄圧されたガスCの状態の判定をする。この判定では、蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Comが目標とする予め設定した酸素濃度の範囲内(Cd1≦Com≦Cc1)に収まり、つまり、目標とする設定濃度Ctに対し、ΔCの幅内に収まっており(Cd1=Ct−ΔC,Cc1=Ct+ΔC)、同時に、蓄ガス容器27のガスCの内圧Pmが目標とする設定圧力Ptに対し、ΔPの範囲内に収まっているか否かを判定する。このΔCはエンジンの性能の酸素濃度に対する感度より決定し、ΔPは、例えば、過給補助の継続時間(例えば、1秒)を経過した後の蓄ガス容器27のガスCの内圧Pmと補機類等を動かすのに必要な最小圧力とから決定する。
【0064】
このステップS42の判定で、ガスCの酸素濃度と圧力が設定範囲内にあれば(YES)、ステップS43に行き、蓄ガスのための制御を行わずに所定の時間(ステップS41の過給補助の判定のインターバルに関係する時間)の間そのまま経過する。ガスCの酸素濃度Comと圧力Pmのいずれかが設定範囲内に無ければ、ステップS44に行き、蓄ガスのための制御を行う。この蓄ガスのための制御としては、図5の制御又は図6の制御を用いることができる。
【0065】
また、ステップS41の判定で、過給補助を実施していれば(YES)、蓄ガス容器27内の蓄圧されたガスCがエンジン1、1Aのシリンダ内に供給された後に、ステップS44に行き、蓄ガスのための制御を行う。
【0066】
このステップS41〜ステップS43、又は、ステップS41〜ステップS44を繰り返し実施し、エンジン1、1Aの運転停止により、割り込みが発生して、フローの途中からリターンに行き、上位の制御フローに戻り、上位の制御フローの停止と共に、この制御フローも停止する。この図7の制御により、蓄圧されたガスCを用いた過給補助を実施したか否かを判定して、蓄ガスのための制御を実施するか否かを判定することができる。
【0067】
上記の内燃機関の蓄ガス方法及びエンジン(内燃機関)1、1Aによれば、蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Coを、測定時の圧力に大きな影響を受ける酸素濃度計53で測定するために、測定する蓄ガス容器27内のガスCの一部Cpを、ガス圧縮装置25の入口側に戻して、又は、大気に開放して、略大気圧に減圧した状態にしてから、酸素濃度計53でこのガスCpの酸素濃度Coaを測定する。これにより、酸素濃度計53の圧力依存性を排除して、蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Coを精度よく測定することができる。
【0068】
従って、蓄ガス容器27に貯蔵されたガスCの酸素濃度Coを精度よく測定し、蓄ガス容器27内のガスCの酸素濃度Coを適切な濃度範囲内に維持でき、蓄ガス容器27からエンジン1、1Aのシリンダ内に過給補助を行うときに、蓄ガス容器27内に蓄えられた適正な酸素濃度CoのガスCを供給して、排気ガス性能のばらつきを抑えることができる。
【0069】
また、蓄ガス容器27内の蓄圧されたガスCの酸素濃度Coと圧力Pmを予め設定した範囲内の酸素濃度と予め設定した範囲内の圧力に効率よく維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の内燃機関の蓄ガス方法及び内燃機関は、蓄ガスを用いる過給補助を行う内燃機関において、蓄ガス容器に貯蔵されたガスの酸素濃度を精度よく測定し、蓄ガス容器内のガスの酸素濃度を適切な濃度範囲内に維持でき、蓄ガス容器からエンジンのシリンダ内に過給補助を行うときに、蓄ガス容器内に蓄えられた適正な酸素濃度のガスを供給して、排気ガス性能のばらつきを抑えることができるので、排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを蓄ガス容器に溜め込み、負荷が急激に増加する過渡運転時に蓄圧されたガスをシリンダ内に一時的に供給して過渡運転時のNOxの排出を抑制するとともに加速性能を向上させる、トラックやバスや乗用車等に搭載する内燃機関の蓄ガス方法及び内燃機関で利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1、1A、1X、1Y、1Z エンジン(内燃機関)
11 エンジン本体
11a 吸気マニホールド(吸気系通路)
11b 排気マニホールド(排気系通路)
12 吸気通路(吸気系通路)
13 排気通路(排気系通路)
14 ターボ式過給機
17 EGR通路
21 EGR弁
22 排気ガス導入通路
25 ガス圧縮装置
26 圧縮ガス供給通路
27 蓄ガス容器
27a 電磁開閉弁
28 蓄ガス供給通路
30 流路切替装置
31 車両の車軸
34 電磁クラッチ
35 吸気弁(吸気スロットル)
40 制御装置
51 酸素濃度測定通路
52 電磁開閉弁
53 酸素濃度計
54 温度計
55 圧力計
A 新気
Aa 空気
Ac アクセル開度
C ガス
Cb1 第1下限酸素濃度
Cb2 第2下限酸素濃度
Cc1 第1上限酸素濃度
Cc2 第2上限酸素濃度
Co ガスの酸素濃度
Coa 大気圧に近い状態に導いたガスの酸素濃度
Com 蓄ガス容器内の酸素濃度の測定値
Cp 蓄ガス容器内のガスの一部
Ct 目標設定酸素濃度
G 排気ガス
Ge EGRガス
Gp 排気ガスの一部
Ne エンジン回転速度
P 吸気圧
P1 第1上限圧力
P2 第2上限圧力
Pm 蓄ガス容器の内圧(測定圧力)
Pt 設定圧力
Tda 開放時間
Tdb 放出時間
Tse 供給時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスの一部をシリンダ内に再循環するためのEGR通路と、
内燃機関の排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを圧縮するガス圧縮装置と、
該ガス圧縮装置で圧縮された前記ガスを貯蓄する蓄ガス容器と、
該蓄ガス容器から前記ガスを吸気系通路に供給するための蓄ガス供給通路を備えた内燃機関の過給補助方法において、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を調整する制御において、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度の計測で、前記蓄ガス容器内の前記ガスの一部を大気圧に近い状態に導いて、大気圧に近い状態に導いた前記ガスの酸素濃度を測定して、この測定値を前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度の測定値とする酸素濃度測定方法を用いることを特徴とする内燃機関の蓄ガス方法。
【請求項2】
前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が予め設定した第1上限圧力より高くなったときは、前記ガスを放出し、
排気ガス又は空気を前記蓄ガス容器内に蓄圧する際には、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を前記酸素濃度測定方法で測定しながら、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1下限酸素濃度より低いときは空気を蓄圧し、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1上限酸素濃度より高いときは排気ガスを蓄圧することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の蓄ガス方法。
【請求項3】
前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が予め設定した第1上限圧力より高くなったときは、前記ガスを放出し、
排気ガス又は空気を前記蓄ガス容器内に蓄圧する際には、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を前記酸素濃度測定方法で測定しながら、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1下限酸素濃度より低いときで、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が予め設定した第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力以下のときは、前記ガスを放出することなく空気を蓄圧し、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が前記第1下限酸素濃度より低い予め設定した第2下限酸素濃度より低いとき、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力より大きいときは、前記ガスを放出して空気を蓄圧し、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1上限酸素濃度より高いときで、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力以下のときは、前記ガスを放出することなく排気ガスを蓄圧し、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が前記第1上限酸素濃度より高い予め設定した第2上限酸素濃度より高く、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第2上限圧力より高いときは、前記ガスを放出して排気ガスを蓄圧することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の蓄ガス方法。
【請求項4】
内燃機関の排気ガスの一部をシリンダ内に再循環するためのEGR通路と、
内燃機関の排気ガスの一部と空気とこれらの混合ガスのいずれかのガスを圧縮するガス圧縮装置と、
該ガス圧縮装置で圧縮された前記ガスを貯蓄する蓄ガス容器と、
該蓄ガス容器から前記ガスを吸気系通路に供給するための蓄ガス供給通路と、
前記蓄ガス容器に排気ガスまたは空気を蓄圧するための装置を制御する制御装置を備えた内燃機関において、
前記制御装置が、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を調整する制御において、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度の計測で、前記蓄ガス容器内の前記ガスの一部を大気圧に近い状態に導いて、大気圧に近い状態に導いた前記ガスの酸素濃度を酸素濃度計で測定して、この測定値を前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度の測定値とする酸素濃度測定方法を用いる制御を行うことを特徴とする内燃機関。
【請求項5】
前記制御装置が、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が予め設定した第1上限圧力より高くなったときは、前記ガスを放出し、
排気ガス又は空気を前記蓄ガス容器内に蓄圧する際には、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を前記酸素濃度測定方法で測定しながら、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1下限酸素濃度より低いときは空気を蓄圧し、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1上限酸素濃度より高いときは排気ガスを蓄圧する制御を行うことを特徴とする請求項4記載の内燃機関。
【請求項6】
前記制御装置が、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が予め設定した第1上限圧力より高くなったときは、前記ガスを放出し、
排気ガス又は空気を前記蓄ガス容器内に蓄圧する際には、前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度を前記酸素濃度測定方法で測定しながら、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1下限酸素濃度より低いときで、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力以下のときは、前記ガスを放出することなく空気を蓄圧し、 前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が前記第1下限酸素濃度より低い予め設定した第2下限酸素濃度より低いとき、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力より大きいときは、前記ガスを放出して空気を蓄圧し、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が予め設定した第1上限酸素濃度より高いときで、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第1上限圧力よりも低い予め設定した第2上限圧力以下のときは、前記ガスを放出することなく排気ガスを蓄圧し、
前記蓄ガス容器内の前記ガスの酸素濃度が前記第1上限酸素濃度より高い予め設定した第2上限酸素濃度より高く、かつ、前記蓄ガス容器内の前記ガスの圧力が前記第2上限圧力より高いときは、前記ガスを放出して排気ガスを蓄圧する制御を行うことを特徴とする請求項4記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−251490(P2012−251490A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125065(P2011−125065)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】