説明

内燃機関用潤滑油組成物

【課題】 燃料経済性を改善し、同時に、高温酸化、ピストン堆積物生成および摩耗発生の低減をもたらす低リン潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】 下記成分を含む潤滑油組成物:a)主要量の潤滑粘度の基油、b)約0.1乃至10質量%の全塩基価(TBN)が約25〜500の過塩基性アルカリ土類金属アルキルアリールスルホネート清浄剤、c)約0.02〜10質量%のオキシモリブデン含有錯体、d)約0.1〜5質量%の摩擦緩和剤、及びe)約0.2〜10質量%の、ジフェニルアミン型、硫黄含有化合物及びそれらの混合物からなる群より選ばれた酸化防止剤、但し、オキシモリブデン含有錯体と酸化防止剤の総濃度は潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも1.3質量%であり、全潤滑油組成物のリン分は潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の潤滑油組成物に関するものである。特に、本発明は、燃料経済性を改善すると共に、高温酸化、ピストン堆積物の生成および摩耗の発生を防ぐ低リン分の潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造者は、将来のモーター油について、燃料経済性および堅牢性の改善を要求し続けている。例えば、国際潤滑剤標準化承認委員会(ILSAC)のGF−4規格(最終の標準規格は2004年1月14日に発表され、2004年6月1日に修正された)では、ILSAC GF−3に比べて、燃料経済性の改善、そして高温酸化、高温ピストン堆積物生成および摩耗発生についての改善が要求されている。ILSAC GF−4には、最小性能要求(エンジン・シーケンスとベンチ試験の両方)、および車両製造者が満足できる装置性能及び寿命に必要であると考えるようなエンジン油の化学的及び物理的性状が明記されている。
【0003】
さらに、ILSAC GF−4では、完成油のリン量が0.08質量%に制限されている。これは、耐摩耗性添加剤として好ましい特徴を持ち、普通に使用されている摩耗抑制添加剤であるジアルキルジチオリン酸亜鉛の使用に制限を課すものである。ジアルキルジチオリン酸亜鉛の使用に関しては問題が生じている。すなわち、リン及び硫黄の誘導体が触媒コンバータの触媒成分を害する。汚染を低減して、内燃機関の排気物中の例えば炭化水素、一酸化炭素および酸化窒素のような有毒ガスを減らすように設計された政府規制を満たすのに有効な触媒コンバータが必要になるにつれて、このことは主要な関心事になっている。そのような触媒コンバータには一般に、触媒金属、例えば白金又はその変種と金属酸化物との組合せが使用され、有毒ガスを無毒ガスに変換するために、排気流中、例えば自動車の排気管に取り付けられている。前述したように、これらの触媒成分はリン及び硫黄成分、またはジアルキルジチオリン酸亜鉛のリン及び硫黄分解生成物によって害を受け、従ってリン及び硫黄添加剤を含むエンジン油の使用は、触媒コンバータの寿命および有効性を実質的に低減させる。従って、触媒コンバータの活性を維持してその寿命を延ばすためには、エンジン油のリン及び硫黄分を減らすことが望ましい。
【0004】
ピストン堆積物の抑制に一般に使用されている添加剤が往々にして燃料経済性および摩耗低減には有害であるなら、ILSAC GF−4要求値の均衡を同時に図ることは難しい。配合についての一連の熱心な研究を通して、両立が困難な要求値を満たすことができる添加剤の独自の組合せが発見されてきている。
【0005】
しかし、潤滑油のリン分の更なる減少および硫黄分の限度に対する要求が非常に高いために、前記の低減は、実際に現在の分量では満足させられず、そして厳しい耐摩耗性および酸化腐食防止性も、そして今日のエンジン油に要求される清浄度(すなわち、堆積物生成低減)もまだ満たすことができない。よって、リン及び硫黄は低レベルであるが、例えばジアルキルジチオリン酸亜鉛を高レベルで含む潤滑油が今日供する必要な摩耗、酸化腐食および堆積物生成低減をなお供しつつ、上述した潤滑油の不利益を被らない、潤滑油および添加剤および添加剤パッケージを開発することが望まれている。
【0006】
特許文献1には、低リン分潤滑油で潤滑にして内燃機関の摩耗を低減する方法および潤滑剤組成物が開示されている。潤滑剤組成物は、モリブデン/窒素含有化合物の錯体と少なくとも一種のリン含有化合物との相乗作用的な組合せを含む、ただし、組成物に用いられた全リンは組成物の全質量に基づき約0.06質量%以下である。
【0007】
特許文献2には、基油、および極性促進剤の存在下で酸性モリブデン化合物と塩基性窒素化合物を反応させることにより製造された油溶性の硫化又は未硫化オキシモリブデン錯体を摩擦低減量、および硫化オキシモリブデンジアルキルジチオカルバメートを低濃度で有するエンジン油であって、併用によりエンジン油に基づきモリブデンが少なくとも百万分の450部で、またジアルキルジチオカルバメートからのモリブデンが百万分の175部以下であるエンジン油が開示されている。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6696393号明細書、ボッファ、2004年2月24日発行
【特許文献2】米国特許第6562765号明細書、ボッファ、2004年5月13日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、燃料経済性の改善を示す内燃機関用潤滑油組成物に関する。特に、本発明は、潤滑粘度の基油、スルホネート清浄剤、オキシモリブデン含有錯体、摩擦緩和剤および酸化防止剤を用いて、潤滑油組成物で燃料経済性の向上の達成を実現しながら、同時に高温酸化、ピストン堆積物生成および摩耗発生の低減をたらす低リン潤滑油組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、最も広い観点では、本発明は、下記の成分を含む潤滑油組成物に関する:
a)主要量の潤滑粘度の基油、
b)約0.1乃至10質量%の全塩基価(TBN)が約25乃至500の過塩基性アルカリ土類金属アルキルアリールスルホネート清浄剤、
c)約0.02乃至10質量%のオキシモリブデン含有錯体、
d)約0.1乃至5.0質量%の摩擦緩和剤、および
e)約0.2乃至10質量%の、ジフェニルアミン型化合物、硫黄含有化合物およびそれらの混合物からなる群より選ばれた酸化防止剤、
[ただし、オキシモリブデン含有錯体と酸化防止剤の総濃度は、潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも1.3質量%でなければならず、そして全潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%かそれ以下である]。
【0011】
本発明の潤滑油組成物は更に、油溶性のリン含有耐摩耗性化合物、および平均分子量450乃至3000のポリアルキレンから誘導されたアルケニルコハク酸イミド分散剤を含んでいてもよい。
【0012】
上述したように、本発明の潤滑油組成物は、燃料経済性の改善をもたらし、同時に高温酸化、ピストン堆積物生成および摩耗発生の低減をももたらす。従って、本発明は更に、内燃機関、好ましくはガソリン内燃機関の燃料経済性を改善する方法であって、本発明の潤滑油組成物を用いて該機関を作動させることからなる方法にも関する。
【発明の効果】
【0013】
数ある要因のうちでも、本発明は、低リン潤滑油組成物の添加剤成分のある一定の組合せが、他の従来の潤滑油組成物に比べて燃料経済性の改善をもたらすという驚くべき発見に基づいている。つまり、潤滑粘度の基油、スルホネート清浄剤、オキシモリブデン含有錯体、摩擦緩和剤および酸化防止剤を用いた低リン潤滑油組成物は、燃料経済性を改善しながら、同時に高温酸化、ピストン堆積物生成および摩耗発生の低減をももたらすことを示している。従って、そのような潤滑油組成物をエンジン油用途、ギヤ油用途、あるいは潤滑を要するその他の用途に用いることによって、燃料経済性を全般的に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上述したように、本発明によれば、潤滑粘度の基油、スルホネート清浄剤、オキシモリブデン含有錯体、摩擦緩和剤および酸化防止剤のある一定の組合せを、リン分が潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%以下である低リン潤滑油組成物に用いることによって、内燃機関の燃料経済性が改善される。
【0015】
以下に、本発明の潤滑油組成物に用いられるこれらの成分各々について詳細に述べる。しかしながら、その記述に先立って、以下の用語は特に断わらない限り以下の意味を有する。
【0016】
「アルカリ土類金属」は、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム、またはそれらの混合物を意味する。
【0017】
「炭化水素基」は、アルキル基、またはアルケニル基を意味する。
【0018】
「金属」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を意味する。
【0019】
「油溶性のリン含有耐摩耗性化合物」は、潤滑剤組成物のリンを含む添加剤を意味し、そして単独でも、あるいは他の添加剤と組み合わせて使用しても、その潤滑剤組成物で潤滑にした内燃機関の作動中に耐摩耗性の向上を示すものである。そのような添加剤においてリンは一般に、添加剤の機能に不可欠である。
【0020】
「全リン」は、リンが油溶性のリン含有耐摩耗性化合物の一部として存在するか、あるいは金属二炭化水素ジチオリン酸塩を製造するのに使用されたP25の存在ゆえに残存する残留リンのように、潤滑剤組成物中に夾雑物の形で存在するかに関係なく、潤滑剤組成物中のそのようなリンの全量を意味する。いずれにしても、潤滑剤組成物に許容されるリンの量は出所に依存しない。しかしながら、リンは潤滑剤添加剤の一部であることが好ましい。
【0021】
「全塩基価」又は「TBN」は、生成物1グラムを中和するのに必要なKOHのミリグラムと等価な値を意味する。従って、TBNが高いほど、生成物の過塩基性が強いこと、よって酸を中和できる塩基の保有度が高いことを反映している。生成物のTBNは、ASTM規格D2896または同等の方法により決定することができる。
【0022】
特に明記しない限り、パーセントは全て質量パーセント(%)である。
【0023】
[スルホネート清浄剤]
金属清浄剤は、燃焼過程および/または潤滑剤酸化の酸性副生物を中和し、そして石鹸効果を与えてピストンや他の高温表面を清浄に保ち、それによりスラッジを防止するために、エンジン油用潤滑油配合物に広く用いられている。種々の潤滑剤清浄剤を製造するために、多数の異なった種類の界面活性剤が使用されている。金属清浄剤の一般的な例としては次のものが挙げられる:スルホネート、アルキルフェネート、硫化アルキルフェネート、カルボキシレート、サリチレート、ホスホネート、およびホスフィネート。市販品は一般に中性または過塩基性を意味する。過塩基性金属スルホネートは一般に、炭化水素、スルホン酸、金属酸化物又は水酸化物(例えば、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム)、およびキシレン、メタノールおよび水などの促進剤の混合物を炭酸塩化することにより製造される。例えば過塩基性カルシウムスルホネートを製造するには、炭酸塩化において、酸化又は水酸化カルシウムを二酸化炭素ガスと反応させて炭酸カルシウムを生成させる。スルホン酸を過剰のCaOまたはCa(OH)で中和して、スルホネートを生成させる。カルシウムスルホネートを過塩基化する公知の先行技術方法により、一般にTBNが300乃至400mgKOH/gmか、それ以上の高いアルカリ保有度が生じる。
【0024】
「スルホネート」の意味には、合成アルキルアリール化合物のスルホン酸の塩も含まれ、これは往々にして好ましいものである。これらの酸も、アルキルアリール化合物を硫酸または三酸化硫黄で処理することにより製造される。アリール環の少なくとも1個のアルキル置換基は、上述したように油溶化基である。こうして得られた酸は合成アルキルアリールスルホン酸として、またその塩はアルキルアリールスルホネートとして知られる。アルキルが直鎖であるスルホネートは、公知の線状アルキルアリールスルホネートである。一般にこれらは、エチレンをオリゴマー化してC14〜C40の炭化水素にした後、アリール炭化水素のフリーデル・クラフツ反応によりアルキル化することによって得られる。分枝鎖オレフィンは、例えばプロピレンをオリゴマー化してC15〜C42の炭化水素、特にはプロピレンの四元共重合体を二量化したC24オレフィンにすることから、あるいは芳香族炭化水素をノルマルアルファオレフィンを使用してアルキル化することから得ることができる。好ましいアリール基はフェニルおよび置換フェニルであり、好ましくはトリル、キシリル、特にはオルト−キシリル、エチルフェニルおよびクメニル等である。
【0025】
スルホン化により得られた酸を、塩基性で反応性のアルカリ又はアルカリ土類金属化合物で中和することにより金属塩に変換して、I族又はII族金属スルホネートを生成させる。一般に、酸はアルカリ金属塩基で中和する。アルカリ土類金属塩はアルカリ金属塩から複分解により得られる。あるいは、スルホン酸をアルカリ土類金属塩基で直接中和することもできる。これにより、スルホネートは過塩基化されるが、そのような過塩基性物質およびそのような物質の製造方法は当該分野の熟練者には知られている。例えば、米国特許第3496105号(ルスール)、1970年2月17日発行、特に第3欄及び第4欄を参照されたい。
【0026】
スルホネートは、本発明の潤滑油組成物中にアルカリ土類金属塩またはそれらの混合物の形で存在する。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムおよびバリウムが挙げられ、そのうちでもカルシウムが好ましい。過剰のアルカリ金属塩基と二酸化炭素または他の適当な塩基原料を用いて、スルホネートを過アルカリ化する。不適正な過塩基化は、高粘度のスルホネートまたは所望したよりも低い過塩基性を招くことになるので、往々にして過塩基化工程には特別の注意を払いながら、促進剤を用いてまたは用いないで連続的または段階的にこれを添加する。油溶性の過塩基性アルカリ土類金属アルキルアリールスルホネート清浄剤を好適な条件下で過塩基化して、実質的にTBNを約25乃至500、好ましくはTBNを約250乃至500、最も好ましくはTBNを約300乃至450にする。TBNはASTM D2986に従って測定することができる。過塩基化に特に好ましいのは、酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムと二酸化炭素であり、過塩基性カルシウムスルホネートが生成する。さらに、これらの好ましいTBN範囲では、スルホネート清浄剤の100℃動粘度は500cSt以下であることが好ましく、好ましくは350cSt以下、好ましくは250cSt以下、より好ましくは200cSt以下、そして更に好ましくは180cSt以下である。
【0027】
しかしながら、特に好ましいのは、その広い入手性ゆえに、石油スルホン酸の塩、特には、潤滑油留分などの各種の炭化水素留分、および炭化水素油を選択した溶剤で抽出して得られた芳香族に富んだ抽出物をスルホン化して得られた石油スルホン酸の塩であり、その抽出物は所望により、スルホン化前にアルキル化触媒を用いてオレフィンまたは塩化アルキルと反応させてアルキル化してもよい。また、ベンゼンジスルホン酸などの有機ポリスルホン酸の塩等であり、これはアルキル化してあってもしてなくてもよい。
【0028】
本発明に使用するのに好ましい塩は、アルキル基(類)が炭素原子を少なくとも約8個、例えば炭素原子約8〜40個を含むアルキル化芳香族スルホン酸の塩である。スルホネートの出発物質として好ましい別のグループは、脂肪族置換基(類)が全部で炭素原子を少なくとも12個含む脂肪族置換環状スルホン酸であり、例えば、アルキルアリールスルホン酸、アルキル脂環式スルホン酸、アルキル複素環式スルホン酸、および脂肪族基(類)が全部で炭素原子を少なくとも12個含む脂肪族スルホン酸である。これら油溶性スルホン酸の特定の例としては、石油スルホン酸、ペトロラタムスルホン酸、モノ及びポリワックス置換ナフタレンスルホン酸、置換スルホン酸、例えばセチルベンゼンスルホン酸およびセチルフェニルスルホン酸等、脂肪族スルホン酸、例えばパラフィンワックススルホン酸、ヒドロキシ置換パラフィンワックススルホン酸等、脂環式スルホン酸、石油ナフタレンスルホン酸、セチルシクロペンチルスルホン酸、およびモノ及びポリワックス置換シクロヘキシルスルホン酸等を挙げることができる。「石油スルホン酸」は、石油製品から直接誘導される全ての天然スルホン酸を包含することを意味する。本発明の組成物に使用するのに適した代表的なII族金属スルホネートとしては、以下に例示する金属スルホネートを挙げることができる:カルシウムホワイトオイルベンゼンスルホネート、バリウムホワイトオイルベンゼンスルホネート、マグネシウムホワイトオイルベンゼンスルホネート、カルシウムジポリプロペンベンゼンスルホネート、バリウムジポリプロペンベンゼンスルホネート、マグネシウムジポリプロペンベンゼンスルホネート、カルシウムマホガニー石油スルホネート、バリウムマホガニー石油スルホネート、マグネシウムマホガニー石油スルホネート、カルシウムトリアコンチルスルホネート、マグネシウムトリアコンチルスルホネート、カルシウムラウリルスルホネート、バリウムラウリルスルホネート、マグネシウムラウリルスルホネート等。
【0029】
また、合成アルキルアリールスルホネートも好ましい。特に有用なものは、アルキル基の1位又は2位に結合したアリールスルホネートを有する合成アルキルアリールスルホネートであり、好ましくは5モル%より多く、より好ましくは13モル%より多く、そして更に好ましくは20モル%より多く有するものである、というのはこれらは、良好な混合性および溶解性を示す一方で、これらの過塩基性レベルでは皮膜を形成しないからである。線状のモノアルキルスルホネートも好ましい。アルキル鎖が炭素を14〜40個の間で含むことが好ましく、より好ましくはアルキルアリールスルホネートがC14〜C40のノルマルアルファオレフィンから誘導され、特にはC20〜C28またはC20〜C24のノルマルアルファオレフィンから誘導される。
【0030】
高TBNスルホネートの混合物も用いることができ、天然スルホネートと合成スルホネートの混合物、合成スルホネートの混合物、例えばモノアルキルとジアルキルスルホネートの混合物、モノアルキルとポリアルキルスルホネートの混合物、またはジアルキルとポリアルキルスルホネートの混合物が挙げられる。
【0031】
過塩基性アルカリ土類金属アルキルアリールスルホネート清浄剤のTBNは、一般に約25乃至500であり、好ましくは250乃至500であり、より好ましくは300乃至450である。
【0032】
過塩基性アルカリ土類金属アルキルアリールスルホネート清浄剤は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.1乃至10質量%を占め、好ましくは0.5乃至3.0質量%を占める。
【0033】
[オキシモリブデン含有錯体]
本発明に用いられる未硫化又は硫化オキシモリブデン含有錯体は一般に、塩基性窒素化合物のオキシモリブデン錯体とみなすことができる。そのようなモリブデン/硫黄錯体は当該分野では知られていて、例えば米国特許第4263152号(キング、外)に記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0034】
本発明に用いられるモリブデン組成物の構造は確実には分かっていないが、モリブデン組成物は、モリブデンがこれら組成物の製造に使用した塩基性窒素含有化合物の一以上の窒素原子と錯体を形成しているか、あるいはその塩であり、モリブデンの価数が酸素または硫黄の原子で満たされている化合物であると理解される。
【0035】
本発明に用いられるオキシモリブデン及びオキシモリブデン/硫黄錯体を製造するのに使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物である。酸性とは、ASTM試験D−664又はD−2896滴定法により測定されるような塩基性窒素化合物と、モリブデン化合物が反応することを意味する。一般に、これらモリブデン化合物は六価であり、次のような組成物によって表される:モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよび他のアルカリ金属モリブデン酸塩、および水素塩など他のモリブデンの塩、例えばモリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo23Cl6、三酸化モリブデン、または類似の酸性モリブデン化合物。好ましい酸性モリブデン化合物は、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウムおよびアルカリ金属モリブデン酸塩である。特に好ましいのはモリブデン酸およびモリブデン酸アンモニウムである。
【0036】
オキシモリブデン錯体を製造するのに使用される塩基性窒素化合物は、少なくとも1個の塩基性窒素を有し、そして油溶性であることが好ましい。そのような組成物の代表的な例としては、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、炭化水素ポリアミン、マンニッヒ塩基、リンアミド、チオリンアミド、ホスホンアミド、分散剤型粘度指数向上剤、およびそれらの混合物がある。窒素含有組成物はいずれも、組成物が塩基性窒素を含有し続ける限り、当該分野で公知の方法を使用して、例えばホウ素を用いて後処理してもよい。これらの後処理は、特にコハク酸イミドおよびマンニッヒ塩基組成物に適用できる。
【0037】
上記のモリブデン錯体を製造するのに使用することができるモノ及びポリコハク酸イミドは、多数の文献に開示され、当該分野でもよく知られている。コハク酸イミドのある基本的な種類、および当該分野の用語「コハク酸イミド」に包含される関連物質については、米国特許第3219666号、第3172892号及び第3272746号に教示されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。「コハク酸イミド」には、多数のアミド、イミド、また生成しうるアミジン種が含まれると当該分野では理解されている。しかしながら、主生成物はコハク酸イミドであり、この用語は一般に、アルケニル置換コハク酸又は無水物と窒素含有化合物との反応の生成物を意味するとみなされている。好ましいコハク酸イミドは、市販されているゆえに、炭化水素基が炭素原子約24〜約350個を含む炭化水素コハク酸無水物とエチレンアミンから製造されるようなコハク酸イミドであり、該エチレンアミンは特に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンおよびテトラエチレンペンタアミンにより特徴付けられる。特に好ましいのは、炭素原子数70〜128のポリイソブテニルコハク酸無水物と、テトラエチレンペンタアミンまたはトリエチレンテトラアミンまたはそれらの混合物とから製造されるようなコハク酸イミドである。
【0038】
また、「コハク酸イミド」には、炭化水素コハク酸又は無水物と、2個以上の第二級アミノ基に加えて少なくとも1個の第三級アミノ窒素を含むポリ第二級アミンとのコオリゴマーも含まれる。通常は、この組成物の平均分子量は1500と50000の間にある。代表的な化合物としては、ポリイソブテニルコハク酸無水物とエチレンジピペラジンを反応させて製造したものがある。
【0039】
カルボン酸アミド組成物も、本発明に用いられるオキシモリブデン錯体を製造するのに適した出発物質である。そのような化合物の代表例としては、米国特許第3405064号に開示されているものがあり、その開示内容も参照として本明細書の記載とする。これらの組成物は通常は、主脂肪鎖中の脂肪族炭素原子数が少なくとも12〜350で、所望により分子を油溶性にするのに充分な脂肪族側基を持つカルボン酸又はその無水物又はエステルを、アミンまたはエチレンアミンなどの炭化水素ポリアミンと反応させて、モノ又はポリカルボン酸アミドとすることにより製造される。好ましいのは、(1)一般式R’COOH(ただし、R’はC12-20のアルキルである)を持つカルボン酸、またはこの酸とポリイソブテニル基が炭素原子約72〜128個を含むポリイソブテニルカルボン酸との混合物、および(2)エチレンアミン、特にトリエチレンテトラアミンまたはテトラエチレンペンタアミンまたはそれらの混合物から製造されるようなアミドである。
【0040】
本発明に使用できる別の部類の化合物は、炭化水素モノアミンおよび炭化水素ポリアミンであり、好ましくは米国特許第3574576号に開示されている種類であり、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。炭化水素基は、アルキル、または一つ又は二つの部位に不飽和があるオレフィンであることが好ましく、通常は炭素原子約9〜350個、好ましくは約20〜200個を含む。特に好ましい炭化水素ポリアミンとしては、例えば、ポリ塩化イソブテニルと、ポリアルキレンポリアミン、例えばエチレンアミン、具体的にはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、2−アミノエチルピペラジン、1,3−プロピレンジアミンおよび1,2−プロピレンジアミン等とを反応させることにより誘導されるものがある。
【0041】
塩基性窒素を供給するために使用できる別の部類の化合物としては、マンニッヒ塩基組成物がある。これらの組成物は、フェノール、またはC9-200のアルキルフェノール、アルデヒド、例えばホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド前駆体と、アミン化合物とから製造される。アミンはモノアミンでもポリアミンでもよく、そして代表的な組成物は、アルキルアミン、例えばメチルアミンまたはエチレンアミン、具体的にはジエチレントリアミンまたはテトラエチレンペンタアミン等から製造される。フェノール系物質は硫化されていてもよいが、好ましいのはドデシルフェノールまたはC80-100のアルキルフェノールである。本発明に使用することができる代表的なマンニッヒ塩基については、米国特許第4157309号及び第3649229号、第3368972号及び第3539663号に開示されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。最後の参照特許には、炭素原子数が少なくとも50、好ましくは炭素原子数50〜200のアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドおよびアルキレンポリアミンHN(ANH)nH(ただし、Aは炭素原子数約2〜6の飽和二価アルキル炭化水素であり、nは約1−10である)とを反応させて製造したマンニッヒ塩基、および該アルキレンポリアミンの縮合物を更に尿素またはチオ尿素と反応させてもよいこと、が開示されている。潤滑油添加剤を製造するための出発物質としてのこれらマンニッヒ塩基の有用性は、マンニッヒ塩基を従来技術を用いて処理して組成物にホウ素を導入することによって、しばしば著しく改善することができる。
【0042】
本発明に用いられるオキシモリブデン錯体を製造するのに使用できる別の部類の組成物としては、リンアミドおよびホスホンアミド、例えば米国特許第3909430号及び第3968157号に開示されているものがあり、その開示内容も参照として本明細書の記載とする。これらの組成物は、少なくとも1個のP−N結合を持つリン化合物を形成することにより製造することができる。例えば、酸塩化リンと炭化水素ジオールをモノアミンの存在下で反応させることにより、あるいは酸塩化リンと二官能価第二級アミンおよび一官能価アミンとを反応させることにより、製造することができる。チオリンアミドは、炭素原子を約2〜450個かそれ以上含む不飽和炭化水素化合物、例えばポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、エチレン、1−ヘキセン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレンおよび4−メチル−1−ペンテン等と、五硫化リンおよび前に明示した窒素含有化合物、特にはアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルポリアミン、またはアルキレンアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンおよびテトラエチレンペンタアミン等とを反応させることにより製造することができる。
【0043】
本発明に用いられるモリブデン錯体を製造するのに使用できる別の部類の窒素含有組成物としては、いわゆる分散剤型粘度指数向上剤(VI向上剤)が挙げられる。これらVI向上剤は通常は、炭化水素重合体、特には、脂環式又は脂肪族オレフィン又はジオレフィンなどの一以上のコモノマーから誘導された付加単位を任意に含む、エチレンおよび/またはプロピレンから誘導された重合体を官能化することにより製造される。官能化は、通常は少なくとも1個の酸素原子を持つ反応性部位(群)を重合体に導入する各種の方法により行うことができる。次いで、重合体を窒素含有原料と接触させて重合体の主鎖に窒素含有官能基を導入する。通常使用される窒素原料としては、任意の塩基性窒素化合物、特には前記のような窒素含有化合物及び組成物が挙げられる。好ましい窒素原料は、エチレンアミンなどのアルキレンアミン、アルキルアミンおよびマンニッヒ塩基である。
【0044】
本発明に使用するのに好ましい塩基性窒素化合物は、コハク酸イミド、カルボン酸アミドおよびマンニッヒ塩基である。より好ましいのは、平均分子量が1000または1300または2300のコハク酸イミド、およびそれらの混合物である。そのようなコハク酸イミドは、当該分野で知られているように、ホウ素またはエチレンカーボネートで後処理することができる。
【0045】
また、本発明のオキシモリブデン錯体は硫化することもできる。本発明に使用されるオキシモリブデン/硫黄錯体を製造するための代表的な硫黄原料としては、硫黄、硫化水素、一塩化硫黄、二塩化硫黄、五硫化リン、R”2x(ただし、R”は炭化水素基、好ましくはC1-40のアルキルであり、そしてxは少なくとも2である)、(NH42y(ただし、yは少なくとも1である)などの無機硫化物及び多硫化物、チオアセトアミド、チオ尿素、および一般式R”SH(ただし、R”は前に定義した通りである)のメルカプタンがある。また、従来の硫黄含有酸化防止剤、例えば、硫化及び多硫化ワックス、硫化オレフィン、硫化カルボン酸及びエステルおよび硫化エステルオレフィン、および硫化アルキルフェノール及びそれらの金属塩も硫化剤として使用できる。
【0046】
硫化脂肪酸エステルは、硫黄、一塩化硫黄および/または二塩化硫黄と不飽和脂肪酸エステルとを高温で反応させることにより製造される。代表的なエステルとしては、C8〜C24の不飽和脂肪酸、例えばパルミトオレイン酸、オレイン酸、リシノール酸、ペトロセリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、オレオステアリン酸、リカン酸、パラナリン酸、タリル酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、セトレイン酸等のC1−C20アルキルエステルを挙げることができる。混合不飽和脂肪酸エステル、例えばタル油、アマニ油、オリーブ油、ヒマシ油、ピーナッツ油、ナタネ油、魚油およびマッコウ鯨油等の動物脂肪および植物油から得られたものを用いると、特に良好な結果が得られる。
【0047】
脂肪酸エステルの例としては、ラウリルタレート、メチルオレエート、エチルオレエート、ラウリルオレエート、セチルオレエート、セチルリノレエート、ラウリルリシノレエート、オレイルリノレエート、オレイルステアレート、およびアルキルグリセリドを挙げることができる。
【0048】
架橋硫化エステルオレフィン、例えばC10〜C25のオレフィンと、C10〜C25の脂肪酸とC10〜C25のアルキル又はアルケニルアルコールの脂肪酸エステル(ただし、脂肪酸および/またはアルコールは不飽和である)との硫化混合物も使用することができる。
【0049】
硫化オレフィンは、C3〜C6のオレフィンまたはそれから誘導された低分子量ポリオレフィンと、硫黄、一塩化硫黄および/または二塩化硫黄などの硫黄含有化合物との反応により製造される。
【0050】
また、芳香族硫化物および硫化アルキル、例えば硫化ジベンジル、硫化ジキシリル、硫化ジセチル、硫化及び多硫化ジパラフィンワックス、および分解ワックス−硫化オレフィン等も使用できる。それらは、オレフィン不飽和化合物などの出発物質を硫黄、一塩化硫黄および二塩化硫黄で処理することにより製造することができる。特に好ましいのは、米国特許第2346156号に記載されているパラフィンワックスチオマーである。
【0051】
硫化アルキルフェノールおよびそれらの金属塩としては、硫化ドデシルフェノールおよびそのカルシウム塩などの組成物が挙げられる。アルキル基は通常は炭素原子を約9〜300個含む。金属塩は、I族又はII族の塩であることが好ましく、特にはナトリウム、カルシウム、マグネシウムまたはバリウムである。
【0052】
好ましい硫黄原料は、硫黄、硫化水素、五硫化リン、R"'2z(ただし、R"'は炭化水素基、好ましくはC1〜C10のアルキルであり、そしてzは少なくとも3である)、R"'がC1〜C10のアルキルであるメルカプタン、無機硫化物及び多硫化物、チオアセトアミド、およびチオ尿素である。最も好ましい硫黄原料は、硫黄、硫化水素、五硫化リン、および無機硫化物及び多硫化物である。
【0053】
本発明に用いられるモリブデン錯体の製造に使用される極性促進剤は、酸性モリブデン化合物と塩基性窒素化合物の間の相互作用を促すものである。多種多様のそのような促進剤は当該分野の熟練者にはよく知られている。代表的な促進剤としては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタン−ジオール、ジエチレングリコール、ブチルセロソルブ、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、メチルカルビトール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチル−ジエタノール−アミン、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリンアミド、テトラヒドロフラン、および水がある。好ましいのは水およびエチレングリコールである。特に好ましいのは水である。
【0054】
通常は極性促進剤を反応混合物に別に添加するが、特に水の場合には、無水ではない出発物質の成分として、あるいは(NH46Mo724・H2Oなど酸性モリブデン化合物の水和水として存在してもよい。また、水は水酸化アンモニウムとして添加してもよい。
【0055】
本発明に使用されるオキシモリブデン錯体の製造方法は、酸性モリブデン前駆体の溶液および極性促進剤と塩基性窒素含有化合物とを、希釈剤を用いてまたは用いないで合成することである。必要ならば、希釈剤を用いて撹拌を容易にするのに適した粘度にする。代表的な希釈剤は、潤滑油、および炭素と水素のみを含む液体化合物である。所望により、水酸化アンモニウムを反応混合物に加えてモリブデン酸アンモニウムの溶液としてもよい。この反応は、様々な温度で実施できるが、一般には混合物の融点かそれ以下から還流温度で行う。通常は大気圧で実施するが、所望によりそれより高いまたは低い圧力も使用することができる。この反応混合物は任意に、前に明示した硫黄原料を用いて、硫黄原料が酸性モリブデン化合物および塩基性窒素化合物と反応するような好適な圧力と温度で処理することができる。場合によっては、硫黄原料との反応が完了する前に反応混合物から水を除去することが望ましい。
【0056】
オキシモリブデン錯体の好ましい改良製造方法では、反応器を撹拌しながら、約120℃かそれより低い温度、好ましくは約70℃乃至約90℃の温度に加熱する。次いで、酸化モリブデンまたは他の好適なモリブデン原料を反応器に入れ、モリブデンが充分に反応するまで温度を約120℃かそれ以下、好ましくは約70℃乃至約90℃に維持する。反応混合物から過剰の水を取り除く。除去方法としては、これに限定されるものではないが、反応器の温度を約120℃以下、好ましくは約70℃と約90℃の間の温度に維持しながらの減圧蒸留または窒素ストリッピングを挙げることができる。モリブデン含有組成物の色度を低く維持するために、ストリッピング工程中の温度を約120℃以下の温度に保つ。ストリッピングは通常は大気圧で行うが、それより高いまたは低い圧力も使用できる。ストリッピング工程は、一般には約0.5乃至約5時間かけて行う。
【0057】
所望により、この反応混合物を前に明示した硫黄原料を用いて、硫黄原料が酸性モリブデン化合物および塩基性窒素化合物と反応するような好適な圧力と約120℃を越えない温度で処理することにより、この生成物を硫化することができる。硫化工程は、一般には約0.5乃至約5時間、好ましくは約0.5乃至約2時間かけて行う。場合によっては、硫黄原料との反応完了前に反応混合物から極性促進剤(水)を除去することが望ましい。このような方法で生成したオキシモリブデン錯体およびオキシモリブデン/硫黄錯体は、(高温で製造した錯体と比較すると)色が薄く、その一方で良好な燃料経済、優れた酸化防止および耐摩耗性能の品質を保持している。この例の色は、パーキン・エルマー・ラムダ18UV−可視ダブルビーム分光光度計のようなUV分光光度計を使用すると、もっと視覚化または定量化することができる。ここで使用したように、この試験では、イソオクタン溶媒での一定濃度のモリブデン組成物の可視スペクトルを記録した。スペクトルは、ナノメータの波長に対してプロットした吸光度を表す。スペクトルは、電磁線の可視領域から近赤外領域(350ナノメータ乃至900ナノメータ)に及ぶ。この試験で色の濃い試料は、一定のモリブデン濃度で高波長になればなるほど高い吸光度を示した。色測定用の試料の調製は、モリブデン含有組成物をイソオクタンで希釈して、モリブデン含有組成物/イソオクタン混合物グラム当りモリブデン0.00025gという一定のモリブデン濃度にすることからなる。試料測定に先立って、大気対大気で走査することにより分光光度計を基準化する。光路長1センチメートルの石英セルを用いて大気基準に対して、350ナノメータ乃至900ナノメータのUV可視スペクトルを得る。867ナノメータの吸光度をゼロに設定することにより、スペクトルの偏りを補正する。次いで、波長350ナノメータにおける試料の吸光度を求める。
【0058】
これらの新規なオキシモリブデン/硫黄錯体の特徴については、米国特許出願第10/159446号、2002年5月31日出願、題名「色の低減したモリブデン含有組成物およびその製造方法」に開示されていて、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0059】
反応混合物において、モリブデン化合物と塩基性窒素化合物の比は重要ではないが、しかし、塩基性窒素に対してモリブデンの量が増加するにつれて生成物の濾過はより困難になる。モリブデン成分はおそらくはオリゴマー化しているので、組成物中に容易に保持できる限り多量のモリブデンを加えることが有利である。通常は、反応混合物に塩基性窒素原子当りモリブデン原子約0.01乃至2.00を入れる。好ましくは、塩基性窒素原子当りモリブデン原子約0.3乃至1.0、最も好ましくは約0.4乃至0.7を反応混合物に加える。
【0060】
任意に硫化した場合には、硫化オキシモリブデン含有組成物は、一般に塩基性窒素分散剤化合物の硫黄/モリブデン錯体とみなすことができ、硫黄対モリブデンの質量比は、好ましくは約(0.01〜1.0)対1であり、より好ましくは約(0.05〜0.5)対1であり、そして窒素対モリブデンの質量比は、約(1〜10)対1であり、より好ましくは約(2〜5)対1である。硫黄の極めて少ない混合では、硫黄対モリブデンの質量比を約(0.01〜0.08)対1とすることができる。
【0061】
オキシモリブデン含有錯体は、本発明の潤滑油組成物の全質量に基づき約0.02乃至10質量%、好ましくは約0.1乃至2.0質量%を占める。
【0062】
[摩擦緩和剤]
摩擦緩和剤(あるいは摩擦調整剤)としては、脂肪族カルボン酸、ポリオールの脂肪族カルボン酸エステル、例えばグリセロールオレエートで例示される脂肪酸のグリセロールエステル、グリセロール脂肪酸モノエステルのホウ酸エステル、脂肪族ホスホン酸エステル、脂肪族リン酸エステル、脂肪族チオホスホン酸エステル、脂肪族チオリン酸エステル等の化合物を挙げることができる、ただし、脂肪族基は、化合物を好適に油溶性にするために通常は炭素原子を約8個より多く含む。
【0063】
好適な摩擦緩和剤の代表的な例は、脂肪酸エステルを開示する米国特許第3933659号;二量化脂肪酸のグリセロールエステルを開示する米国特許第4105571号;カルボン酸及び無水物とアルカノールのエステルを開示する米国特許第4702859号;グリセロールと脂肪酸とホウ酸から構成されたエステルからなる、好ましいホウ酸化グリセロールモノオレエートであり、そして該エステルが、単独または組合せで用いるホウ酸エステルを平均してホウ酸残留物の単位モル当り、炭素原子数約8〜24の飽和又は不飽和アルキル基を含むカルボン酸残留物2.0モルまでと、グリセロール残留物約1.5乃至2.0モルの正量を有し、該カルボン酸残留物と該グリセロール残留物のモル比が、カルボン酸残留物1モルに基づいてグリセロール残留物1.2モル以上である米国特許第4530771号及び第5629272号;アルカンホスホン酸塩を開示する米国特許第3779928号に見られる。これらの開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0064】
好ましい態様では、本発明の潤滑油組成物に用いられる摩擦緩和剤は、米国特許第6203584号に開示されているようなカルボン酸と多価アルコールのエステルであり、その開示内容も如何なる目的であれ参照として本明細書の記載とする。本発明の燃料組成物に用いられるエステル成分は、カルボン酸と多価アルコールのエステルである、ただし、カルボン酸はカルボン酸基1〜約4個と炭素原子約8〜約50個を有し、そして多価アルコールは炭素原子約2〜約50個とヒドロキシ基約2〜約6個を有する。
【0065】
エステル化合物の製造に用いられるカルボン酸は一般に、カルボン酸基約1〜約4個と炭素原子約8〜約50個を持つ、脂肪族飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖モノ又はポリカルボン酸である。
【0066】
カルボン酸は、モノカルボン酸であるとき、炭素原子約8〜約30個を含むことが好ましく、より好ましくは炭素原子約10〜約28個、最も好ましくは炭素原子約10〜約22個を含む。
【0067】
飽和モノカルボン酸の例としては、炭素原子数約10〜約22のもの、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびベヘン酸を挙げることができる。不飽和モノカルボン酸の例としては、炭素原子数約10〜約22のもの、例えばオレイン酸、エライジン酸、パルミトオレイン酸、ペトロセリン酸、オレオステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、およびヒポガエイン酸を挙げることができる。
【0068】
カルボン酸は、ポリカルボン酸であるとき、カルボン酸基を一般には約2〜約4個、好ましくは約2〜約3個、より好ましくは約2個持つ脂肪族飽和又は不飽和ポリカルボン酸である。好適なジカルボン酸の例としてはドデセニルコハク酸がある。
【0069】
カルボン酸はオレイン酸であることが好ましい。
【0070】
エステル化合物の製造に使用されるアルコールは一般に、ヒドロキシ基約2〜約6個と、炭素原子約2〜約50個、好ましくは炭素原子約2〜約30個、より好ましくは炭素原子約2〜約12個とを持つ、脂肪族飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖多価アルコールである。
【0071】
好適な多価アルコールとしては、ジヒドロキシアルコール、例えばアルキレングリコール、具体的にはエチレングリコールおよびプロピレングリコール、トリヒドロキシアルコール、例えばグリセロール、テトラヒドロキシアルコール、例えばペンタエリトリトール、およびヘキサヒドロキシアルコール、例えばソルビトールを挙げることができる。
【0072】
カルボン酸と多価アルコールを当該分野では公知の一般的なエステル化条件下で反応させて、本発明に用いられるエステルとする。
【0073】
使用することができる多価アルコールのエステルの例には、ヒドロキシ基全部がエステル化しているものと、ヒドロキシ基全部はエステル化していないものとがある。特定の例としては、三価アルコールと一以上の上記飽和又は不飽和カルボン酸とから製造されたエステル、例えばグリセロールモノエステルおよびグリセロールジエステル、具体的にはグリセロールモノオレエート、グリセロールジオレエートおよびグリセロールモノステアレートがある。そのような多価エステルは、当該分野で述べられているエステル化により製造することもできるし、および/または市販されてもいる。
【0074】
エステルは、遊離ヒドロキシ基を1個以上有していてもよい。
【0075】
本発明での使用に適した好ましいエステルとしては、グリセロールモノオレエート、ペンタエリトリトールモノオレエート、およびソルビタンモノオレエートが挙げられ、特にはグリセロールモノオレエートおよびペンタエリトリトールモノオレエートである。
【0076】
カルボン酸と多価アルコールとのエステルのホウ酸誘導体は、本発明の潤滑油組成物に特に有用である。好適なホウ酸エステルについては、前記米国特許第4530771号及び第5629272号に開示されていて、その開示内容も全て如何なる目的であれ参照内容として本明細書の記載とする。
【0077】
本発明の潤滑油に用いられる摩擦緩和剤は、ホウ酸化グリセロールモノオレエートであることが最も好ましい。
【0078】
摩擦緩和剤は、本発明の潤滑油組成物に、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.1乃至5質量%の量で混合される。好ましくは、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.2乃至1.5質量%の摩擦緩和剤を使用することができる。
【0079】
[酸化防止剤]
本発明の潤滑油組成物には酸化防止剤又は抗酸化剤が用いられる。酸化防止剤は、基材油がサービス中に劣化する傾向を低減するものであり、その劣化は、金属表面のスラッジやワニス状堆積物などの酸化生成物および粘度増加により証明することができる。
【0080】
潤滑油組成物に用いられる酸化防止剤は、ジフェニルアミン型、硫黄含有化合物およびそれらの混合物からなる群より選ばれることが好ましい。
【0081】
本発明に用いられるジフェニルアミン型酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミンおよびアルキル化−α−ナフチルアミンからなる群より選ぶことができる。好ましいジフェニルアミン型酸化防止剤はアルキル化ジフェニルアミンである。
【0082】
あるいは、本発明の潤滑油組成物に用いられる酸化防止剤は硫黄含有化合物であってもよく、これらに限定されるものではないが、例えば、好ましくはC5〜C12アルキル側鎖を持つアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、無灰の油溶性フェネート及び硫化フェネート、リン硫化又は硫化炭化水素、硫化及び多硫化ワックス、硫化オレフィン、硫化カルボン酸及びエステル、硫化エステル−オレフィン、硫化アルキルフェノール、リンエステル、金属チオカルバメート又はジチオカルバメート(ただし、金属は亜鉛、銅またはモリブデンである)、無灰チオカルバメート又はジチオカルバメート(すなわち、基本的に無金属)、具体的にはメチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート)、エチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート)、およびイソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジアルキルジチオカルバメート)(ただし、ジアルキルジチオカルバメートのアルキル基は炭素原子数1〜6であることが好ましい)である。好ましい無灰ジチオカルバメートの例としては、メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)、エチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)、およびイソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジブチルジチオカルバメート)がある。好ましくは、硫黄含有酸化防止剤はチオカルバメートまたはジチオカルバメートである。より好ましくは、硫黄含有酸化防止剤はジチオカルバメートである。
【0083】
酸化防止剤は、単独で使用してもよいし、あるいは相互に組み合わせてまたは別の型の酸化防止剤と組み合わせて使用してもよい。
【0084】
酸化防止剤は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.2乃至10質量%、好ましくは0.5乃至2.5質量%を占める。
【0085】
本発明の潤滑油組成物は、オキシモリブデン含有錯体と酸化防止剤の総濃度が潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも1.3質量%、好ましくは少なくとも1.45質量%であるとき、堆積物を低減するのに著しい効果がある。
【0086】
[油溶性のリン含有耐摩耗性化合物]
本発明の潤滑油組成物はまた、油溶性のリン含有耐摩耗性化合物を含んでいてもよい。耐摩耗剤である金属二炭化水素ジチオリン酸塩を少量、潤滑剤組成物に添加することが好ましい。金属は亜鉛であることが好ましい。二炭化水素ジチオリン酸塩は約0.1乃至2質量%の量で存在することができるが、一般には低リン組成物が望ましいので、二炭化水素ジチオリン酸塩は潤滑油組成物に約0.25乃至1.2質量%、好ましくは約0.5乃至0.7質量%で用いられる。好ましくは、ジアルキルチオリン酸亜鉛(ZDDP)が使用される。これは、潤滑油組成物に酸化防止性と耐摩耗性を付与する。そのような化合物は、公知技術に従ってまず、通常はアルコールまたはフェノールとP25の反応によりジチオリン酸を生成させ、次いでジチオリン酸を好適な亜鉛化合物で中和することにより製造することができる。第一級及び第二級アルコールの混合物を含むアルコールの混合物も使用することができる。そのようなアルコールの例としては、これらに限定されるものではないが、次のリストを挙げることができる:イソ−プロパノール、イソ−オクタノール、2−ブタノール、メチルイソブチルカルビノール(4−メチル−1−ペンタン−2−オール)、1−ペンタノール、2−メチルブタノール、および2−メチル−1−プロパノール。炭化水素基は、第一級、第二級またはそれらの混合物であってよく、例えば化合物は、第一級又は第二級炭素原子から誘導された第一級及び/又は第二級アルキル基を含んでいてもよい。さらに、用いられるなら第二級アルキル基の質量%は、好ましくは少なくとも50、より好ましくは75以上、最も好ましくは約85乃至100であり、例としては85質量%の第二級アルキル基と15質量%の第一級アルキル基を有するZDDPがあり、具体的には85質量%のブタン−2−オールと15質量%のイソ−オクタノールとから製造されたZDDPがある。更に好ましいのは、s−ブタノールとメチルイソブチルカルビノールから誘導されたZDDPであり、そして最も好ましいのはs−ブタノールが75モル%のものである。
【0087】
金属二炭化水素ジチオリン酸塩は、潤滑油組成物のリン分の全部ではないとしても大部分を供給する。その量は潤滑油組成物において、リン元素の質量%で表して0.08以下、好ましくは0.06以下、より好ましくは0.05のリン分を供給する量である。
【0088】
油溶性のリン含有耐摩耗性化合物は、潤滑油組成物の全質量%に基づき約0.1乃至2.0質量%、好ましくは0.25乃至1.2質量%を占める。
【0089】
[分散剤]
本発明の潤滑油組成物にはまた、分散剤を用いてもよい。分散剤は、アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸無水物およびアルケニルコハク酸エステルなどの無灰分散剤、またはこのような分散剤の混合物であってもよい。
【0090】
無灰分散剤は、大まかには数グループに分類される。そのようなグループの一つは、アミン、アミド、イミン、イミドおよびヒドロキシルカルボキシル等を含む一以上の付加的極性機能を持つカルボン酸エステルを含む共重合体に関する。これらの生成物は、長鎖のアルキルアクリレート又はメタクリレートと上記機能を持つ単量体とを共重合させることにより製造することができる。このようなグループとしては、アルキルメタクリレート−ビニルピロリジノン共重合体、およびアルキルメタクリレート−ジアルキルアミノエチルメタクリレート共重合体等を挙げることができる。さらに、高分子量のアミド及びポリアミドまたはエステル及びポリエステル、例えばテトラエチレンペンタアミン、ポリビニルポリステアレート、および他のポリステアラミドも用いることができる。好ましい分散剤は、N−置換長鎖アルケニルコハク酸イミドである。
【0091】
モノ及びビスアルケニルコハク酸イミドは通常、アルケニルコハク酸又は無水物とアルキレンポリアミンの反応から誘導される。これらの化合物は一般に、下記式を有すると考えられる。
【0092】
【化1】

【0093】
式中、R2は、実質的に分子量が約450乃至3000の炭化水素基、すなわちR2は、炭素原子約30〜約200個を含む炭化水素基、好ましくはアルケニル基であり;Alkは、炭素原子数約2〜10、好ましくは約2〜6のアルキレン基であり;R3、R4およびR5は、C1〜C4のアルキル又はアルコキシまたは水素から選ばれ、好ましくは水素であり;そしてxは、約0〜10、好ましくは約0〜3の整数である。アルキレン又はアルケニレンコハク酸又は無水物とアルキレンポリアミンとの実際の反応生成物は、スクシナミン酸およびコハク酸イミドを含む化合物の混合物からなる。しかしながら、この反応生成物を上記式のコハク酸イミドとして表すことは慣例である、というのはこれは混合物の主成分だからである。生成するモノアルケニルコハク酸イミドとビスアルケニルコハク酸イミドは、ポリアミンとコハク酸基の充填モル比、特に使用したポリアミンに依存しうる。ポリアミンとコハク酸基の充填モル比が約1:1では、主としてモノアルケニルコハク酸イミドが生成する。ポリアミンとコハク酸基の充填モル比が約1:2では、主としてビスアルケニルコハク酸イミドが生成する。
【0094】
これらのN−置換アルケニルコハク酸イミドは、無水マレイン酸とオレフィン炭化水素を反応させた後、得られたアルケニルコハク酸無水物とアルキレンポリアミンを反応させることにより製造することができる。上記式のR2基、すなわちアルケニル基は、炭素原子約2〜5個を含むオレフィン単量体から合成した重合体から誘導することが好ましい。よって、アルケニル基は、炭素原子約2〜5個を含むオレフィンを重合させて分子量が約450乃至3000の範囲にある炭化水素を生成させることにより得られる。そのようなオレフィン単量体の例示としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、およびそれらの混合物がある。
【0095】
好ましい観点では、アルケニルコハク酸イミドは、ポリアルキレンコハク酸無水物とアルキレンポリアミンを反応させることにより製造することができる。ポリアルキレンコハク酸無水物は、ポリアルキレン(好ましくは、ポリイソブテン)と無水マレイン酸の反応生成物である。そのようなポリアルキレンコハク酸無水物の製造には、従来のポリイソブテン、または高メチルビニリデンポリイソブテンを使用することができる。この製造には、熱的方法、塩素化法、遊離基法、酸触媒法、あるいはその他任意の方法を使用することができる。好適なポリアルキレンコハク酸無水物の例としては、米国特許第3361673号に記載の熱的PIBSA(ポリイソブテニルコハク酸無水物)、米国特許第3172892号に記載の塩素化PIBSA、米国特許第3912764号に記載の熱的及び塩素化PIBSAの混合物、米国特許第4234435号に記載の高コハク酸比PIBSA、米国特許第5112507号及び第5175225号に記載のポリPIBSA、米国特許第5565528号及び第5616668号に記載の高コハク酸比ポリPIBSA、米国特許第5286799号、第5319030号及び第5625004号に記載の遊離基PIBSA、米国特許第4152499号、第5137978号及び第5137980号に記載の高メチルビニリデンポリブテンから製造されたPIBSA、欧州特許出願公開第EP355895号に記載の高メチルビニリデンポリブテンから製造された高コハク酸比PIBSA、米国特許第5792729号に記載の三元共重合体PIBSA、米国特許第5777025号及び欧州特許出願公開第EP542380号に記載のスルホン酸PIBSA、および米国特許第5523417号及び欧州特許出願公開第EP602863号に記載の精製PIBSAがある。これらの各文書の開示内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。ポリアルキレンコハク酸無水物は、ポリイソブテニルコハク酸無水物であることが好ましい。好ましい一態様では、ポリアルキレンコハク酸無水物は、数平均分子量が少なくとも450、より好ましくは少なくとも約900乃至3000、更に好ましくは少なくとも約900乃至2300であるポリイソブテニルコハク酸無水物である。
【0096】
別の好ましい態様では、ポリアルキレンコハク酸無水物の混合物が用いられる。この態様では、混合物は低分子量のポリアルキレンコハク酸無水物成分と、高分子量のポリアルキレンコハク酸無水物成分とからなることが好ましい。より好ましくは、低分子量成分の数平均分子量は約450乃至1000未満であり、高分子量成分の数平均分子量は約1000乃至約3000である。更に好ましくは、低分子量成分も高分子量成分も共にポリイソブテニルコハク酸無水物である。あるいは、上記に明らかにしたように、様々な分子量のポリアルキレンコハク酸無水物成分を、分散剤として並びに他の上記分散剤との混合物として組み合わせることができる。
【0097】
また、ポリアルキレンコハク酸無水物は、清浄剤と混ぜ合わせることができ、清浄剤混合物の安定性および混合性を改善すると思われる。清浄剤と一緒に用いられる場合には、ポリアルキレンコハク酸無水物は、清浄剤混合物の約0.5乃至5.0質量%、好ましくは約1.5乃至4.0質量%を占めることができる。
【0098】
コハク酸イミドを製造するのに使用される好ましいポリアルキレンアミンは、下記式を有する:
【0099】
【化2】

【0100】
ただし、zは約0〜10の整数であり、そしてAlk、R3、R4およびR5は前に定義した通りである。
【0101】
アルキレンアミンとしては主に、メチレンアミン、エチレンアミン、ブチレンアミン、プロピレンアミン、ペンチレンアミン、ヘキシレンアミン、ヘプチレンアミン、オクチレンアミン、その他のポリメチレンアミン、またピペラジンおよびアミノアルキル置換ピペラジンのようなアミンの環状物及び高次類似物も挙げることができる。それらの例示としては具体的には、エチレンジアミン、トリエチレンテトラアミン、プロピレンジアミン、デカメチルジアミン、オクタメチレンジアミン、ジヘプタメチレントリアミン、トリプロピレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、トリメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ジトリメチレントリアミン、2−ヘプチル−3−(2−アミノプロピル)−イミダゾリン、4−メチルイミダゾリン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ビス(2−アミノエチル)イミダゾリン、1−(2−アミノプロピル)−ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、および2−メチル−1−(2−アミノブチル)ピペラジンがある。このような高次類似物は、二以上の上記アルキレンアミンを縮合することにより得られ、同様に有用である。
【0102】
エチレンアミンは特に有用である。それらについては、化学技術大辞典(Encyclopedia of Chemical Technology)、カーク・オスマー(Kirk-Othmer)著、第5巻、p.898−905の「エチレンアミン」の項目(インターサイエンス・パブリッシャーズ、ニューヨーク、1950年)に詳細に記載されている。
【0103】
「エチレンアミン」は、包括的な意味で使用され、大部分が下記構造に当てはまるポリアミンの部類を意味する。ただし、aは1〜10の整数である。
【0104】

2N(CH2CH2NH)a
【0105】
よって、その例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、およびペンタエチレンヘキサアミン等を挙げることができる。
【0106】
本発明のアルケニルコハク酸イミド組成物に使用される個々のアルケニルコハク酸イミドは、米国特許第2992708号、第3018250号、第3018291号、第3024237号、第3100673号、第3172892号、第3202678号、第3219666号、第3272746号、第3361673号、第3381022号、第3912764号、第4234435号、第4612132号、第4747965号、第5112507号、第5241003号、第5266186号、第5286799号、第5319030号、第5334321号、第5356552号、第5716912号に開示されているような従来法により製造することができ、その開示内容も全て如何なる目的であれ参照として本明細書の記載とする。
【0107】
また、「アルケニルコハク酸イミド」には、米国特許第4612132号(ウォレンベルグ、外)及び第4746446号(ウォレンベルグ、外)等に開示のホウ酸塩またはエチレンカーボネートを含む後処理法、並びにその他の後処理法で後処理したコハク酸イミドも含まれ、その各開示内容も全て本明細書の記載とする。カーボネート処理したアルケニルコハク酸イミドは、分子量が約450乃至3000、好ましくは約900乃至2500、より好ましくは約1300乃至2300、好ましくは約2000乃至2400のポリブテン、並びにこれら分子量の混合物から誘導されたポリブテンコハク酸イミドであることが好ましい。ポリブテンコハク酸イミドは、米国特許第5716912号に教示されているように、反応性条件下で、ポリブテンコハク酸誘導体、不飽和酸性試薬とオレフィンの不飽和酸性試薬共重合体およびポリアミンの混合物を反応させることより製造することが好ましく、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0108】
分散剤は、本発明の潤滑油組成物に用いられる場合には、潤滑油組成物の全質量に基づき約2.0乃至10質量%、好ましくは3.0乃至5.0質量%を占める。
【0109】
[潤滑粘度の基油]
本発明の潤滑油組成物は主要量の潤滑粘度の基油を含んでいる。ここで使用される基油は、単独の製造者により同一の仕様に(供給源や製造者の所在地に依存しないで)製造され、同じ製造者の仕様を満たし、そして独特の処方、製造物確認番号またはその両方によって確認される、潤滑剤成分である基材油または基材油のブレンドと定義される。蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を含むが、それらに限定されない各種の異なる処理を用いて基材油を製造することができる。再精製基材油には、製造、汚染または以前の使用によって混入した物質は実質的に含まれない。本発明の基油は、任意の天然または合成の潤滑基油留分であってよく、特には、動粘度が摂氏100度(℃)で約4センチストークス(cSt)乃至約20cStのものである。炭化水素合成油としては例えば、エチレンの重合、すなわちポリアルファオレフィン又はPAOから製造された油、あるいは一酸化炭素ガスと水素ガスを用いてフィッシャー・トロプシュ法などの炭化水素合成法により製造された油を挙げることができる。好ましい基油としては、あるとしても若干の重質留分、例えば約100℃粘度が約20cStかそれ以上の潤滑油留分をあるとしても若干含むものがある。基油として使用される油は、所望とするグレードのエンジン油、例えばSAE粘度グレードが0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30または15W−40の潤滑油組成物となるように、所望の最終用途および完成油の添加剤に応じて選択され、あるいはブレンドされる。
【0110】
基油は、天然の潤滑油、合成の潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な基油としては、合成ろうおよび粗ろうの異性化により得られた基材油、並びに粗製物の芳香族及び極性成分を(溶剤抽出というよりはむしろ)水素化分解して生成した水素化分解基材油を挙げることができる。好適な基油としては、API公報1509、第14版、補遺I、1998年12月に規定されている全API区分I、II、III、IV及びVに含まれるものが挙げられ、その内容も如何なる目的であれ参照として本明細書の記載とする。表1に、I、II及びIII種基油の飽和度レベルおよび粘度指数を列挙する。IV種基油はポリアルファオレフィン(PAO)である。V種基油には、I、II、III又はIV種に含まれなかったその他全ての基油が含まれる。II、III及びIV種基油も本発明に有用である。II及びIII種基油は、I、II及びIII種基材油又は基油を一種以上混ぜ合わせることにより製造してもよい。
【0111】
表 1
I、II及びIII種基材油の飽和度、硫黄および粘度指数
─────────────────────────────────────
種類 飽和度 粘度指数
(ASTM D2007による決定) (ASTM D4294、ASTM D4297
硫黄 又はASTM D3120による決定)
(ASTM D2270による決定)
─────────────────────────────────────
I 飽和度90%未満及び/ 80以上、120未満
又は硫黄0.03%より上
II 飽和度90%以上及び 80以上、120未満
硫黄0.03%以下
III 飽和度90%以上及び 120以上
硫黄0.03%以下
─────────────────────────────────────
IV 全てのポリアルファオレフィン(PAO)
─────────────────────────────────────
V I、II、III又はIV種に含まれないその他全て
─────────────────────────────────────
【0112】
天然の潤滑油としては、動物油、植物油(例えば、ナタネ油、ヒマシ油およびラード油)、石油、鉱油、および石炭または頁岩から誘導された油を挙げることができる。
【0113】
合成油としては、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、それらの類似物および同族体等を挙げることができる。また、合成潤滑油としては、アルキレンオキシド重合体、真の共重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって変性したそれらの誘導体も挙げることができる。合成潤滑油の別の好適な部類には、ジカルボン酸と各種アルコールのエステルが含まれる。また、合成油として使用できるエステルとしては、C5〜C12のモノカルボン酸とポリオールとポリオールエーテルから製造されたものも挙げられる。トリアルキルリン酸エステル油、例えばトリ−n−ブチルホスフェートおよびトリ−イソ−ブチルホスフェートで例示されるものも、基油として使用に適している。
【0114】
ケイ素ベースの油(例えば、ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ又はポリアリールオキシ・シロキサン油及びシリケート油)は、合成潤滑油の別の有用な部類を構成する。その他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル、高分子量テトラヒドロフラン、およびポリアルファオレフィン等が挙げられる。
【0115】
基油は、未精製、精製、再精製の油、またはそれらの混合物から誘導してもよい。未精製油は、天然原料または合成原料(例えば、石炭、頁岩またはタール・サンド・ビチューメン)から直接、それ以上の精製や処理無しに得られる。未精製油の例としては、レトルト操作により直接得られた頁岩油、蒸留により直接得られた石油、またはエステル化処理により直接得られたエステル油が挙げられ、次いで各々それ以上の処理無しに使用することができる。精製油は、一以上の特性を改善するために一以上の精製工程で処理されていることを除いては、未精製油と同じである。好適な精製技術としては、蒸留、水素化分解、水素化処理、脱ろう、溶剤抽出、酸又は塩基抽出、ろ過、およびパーコレートが挙げられ、それらは全て当該分野の熟練者には知られている。再精製油は、使用済の油を精製油を得るために用いたのと同様の方法で処理することにより得られる。これらの再精製油は、再生又は再処理油としても知られていて、しばしば使用された添加剤や油分解生成物の除去のための技術により更に処理される。
【0116】
ろうの水素異性化から誘導された基油も、単独で、あるいは前記天然及び/又は合成基油と組み合わせて使用することができる。そのようなろう異性体油は、天然又は合成ろうまたはそれらの混合物を、水素異性化触媒上で水素異性化することにより製造される。
【0117】
本発明の潤滑油組成物には、主要量の潤滑粘度の基油を使用することが好ましい。ここで明示する主要量の潤滑粘度の基油は、潤滑油組成物の40質量%かそれ以上を占め、好ましくは約40質量%乃至約97質量%、より好ましくは約50質量%乃至約97質量%、更に好ましくは約60質量%乃至約97質量%、そして最も好ましくは約80質量%乃至約95質量%を占める。
【0118】
[その他の添加剤]
以下の添加剤成分は、本発明に好ましく用いることができる成分の幾つかの例である。これら添加剤の例は、本発明を説明するために記されるのであって本発明を限定しようとするものではない:
【0119】
1)金属清浄剤:硫化又は未硫化のアルキル又はアルケニルフェネート、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化又は未硫化のアルキル又はアルケニルナフテネート、アルカノール酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩、およびそれらの化学的及び物理的混合物。
【0120】
2)酸化防止剤:酸化防止剤は、鉱油がサービス中に劣化する傾向を低減するものであり、その劣化は、金属表面のスラッジ及びワニス状堆積物のような酸化生成物によって、また粘度の増加によって証明される。本発明に使用できる酸化防止剤の例としては、これらに限定されるものではないが、フェノール型(フェノール系)酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−I−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−t−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)を挙げることができる。
【0121】
3)耐摩耗剤:その名称が意味するように、これら添加剤は可動金属部分の摩耗を低減する。そのような添加剤の例としては、これらに限定されるものでないが、リン酸エステル、亜リン酸エステル、カルバメート、エステル、硫黄含有化合物、およびモリブデン錯体を挙げることができる。
【0122】
4)錆止め添加剤(錆止め剤)
a)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
b)その他の化合物:ステアリン酸およびその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0123】
5)抗乳化剤:アルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0124】
6)極圧剤(EP剤):硫化油、硫化ジフェニル、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛。
【0125】
7)多機能添加剤:硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノリンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【実施例】
【0126】
本発明について、下記の実施例により更に説明するが、これらは特に有利な態様を示すものである。なお、実施例は本発明を説明するために記されるのであって、本発明を限定しようとするものではない。本出願は、添付した特許請求の真意および範囲から逸脱することなく当該分野の熟練者によってなされうる様々な変更や置換を包含するものである。
【0127】
[実施例1]
下記の成分を一緒にブレンドしてSAE5W−20粘度グレードの配合物を得ることにより、本発明の低リン潤滑油組成物を製造した(表2)。
【0128】
表 2 潤滑油組成物
──────────────────────────────────
成分a 油A 油B 油C
(基準) (比較) (本発明)
──────────────────────────────────
Caスルホネート 50.0 50.0 50.0
(ミリモル)
オキシモリブデン 0.5 0.5 0.5
錯体
摩擦緩和剤 0 0.5 0.5
(窒素含有) (エステル含有)
ジフェニルアミン型 0.4 0.4 0.4
酸化防止剤
──────────────────────────────────
a:潤滑油の成分の量は特に断わらない限り質量%で表す。成分は次の通りである:
Caスルホネートは、ベンゼンとC20〜C24ノルマルアルファオレフィンから誘導した高過塩基性(HOB)TBN426カルシウムアルキルアリールスルホネートである。
オキシモリブデン錯体は、硫化モリブデン・コハク酸イミド錯体であり、活性成分で表す。
摩擦緩和剤:窒素含有:ヤシ油とジエタノールアミンの反応生成物(シェブロン・オロナイト・カンパニー、LLCより入手)。
エステル含有:米国特許第5629272号に開示のホウ酸化グリセロールモノオレエート。
ジフェニルアミン型酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミンである。
【0129】
潤滑油組成物の残余には、II種基油、および少量のその他の成分、具体的には消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、分散剤、硫黄含有酸化防止剤、第一級及び第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物が含まれ、潤滑油組成物の全質量に基づきリン分0.08質量%以下である。
【0130】
シーケンスVIBスクリーナという名称のシーケンスVIB試験の短縮型を使用してエンジン試験を行うことによって、燃料経済性能を求めた。シーケンスVIB(ASTM D6837)は、乗用車および低摩擦エンジンを備えた軽量トラックの燃料経済を改善する潤滑剤の能力を測定する、エンジンダイナモメータ試験である。その方法では、五つの異なる作動段階に渡って試験潤滑剤の性能を基線潤滑剤の性能と比較する。標準シーケンスVIB試験は、基線油(BC)における2回の五段階燃料経済測定、試験の開始時(I相)に1回および終了時(II相)に1回からなる各試験と、フラッシ及び運転型操作とを組み合わせたものである。2回の基線運転で試験油の評価を行う。1500r/分および油温度125℃で16時間エンジンを作動させている間に試験油が最初に経時変化した後、候補試験油のI相燃料経済を算出する。次いで、エンジン速度2250r/分および油温度135℃で80時間、試験油をもう一度五段階燃料経済測定にかける。基線油の燃料経済と比較した候補油のI相及びII相燃料経済改善を算出する。短縮シーケンスVIBスクリーナでは、I相燃料経済だけは厳密な調整無しで求める。算出した燃料経済改善は、現在製造されている車両のうちの代表的な車両を、現在のEPA(環境保護局)試験サイクルの下で運転して得られた燃料経済の結果に等しい。ASTM基線(基準油BC)に対する燃料経済改善の最小%に関する合格の判定基準は、ここで使用するとき、SAE0W−20及び5W−20粘度グレードではI相(16時間経過)後で少なくとも最小2.4%であり、SAE0W−30及び5W30粘度グレードでは最小2.0%であり、そしてその他全てのSAEマルチ粘度グレードでは少なくとも1.3%である。表3に、VIBスクリーナ試験の結果を表示する。%FEI値が高いほど燃料経済の改善を示している。
【0131】
表 3 VIBスクリーナ試験の結果
──────────────────────
油 %燃料経済改善(FEI)
──────────────────────
A(基準) 1.73
B(比較) 2.32
C(本発明) 2.55
──────────────────────
【0132】
この結果が示すように、本発明の潤滑油組成物(油C)は、基準油Aに対して燃料経済の優れた改善をもたらした。比較の油Bも、基準油Aに対して燃料経済の無視できない改善を与えるが、油Cが与えるほどの大きさではない。
【0133】
[実施例2]
下記表4の結果は、本発明の潤滑油組成物の別の利益を証明するものである。表4の成分を一緒にブレンドしてSAE5W−30粘度グレードの配合物を得ることにより、低リン潤滑油組成物を製造した。
【0134】
TEOST MHT4(中高温熱酸化エンジン油シミュレーション試験、タンナス・カンパニーの商品名)試験は、中高温で自動車エンジン油にさらした特別な試験棒上のエンジン堆積物を測定するためのものである。この試験では、少量の有機金属触媒を含む試験用エンジン油の試料を連続的に循環させて、2個の金属端キャップを被せたガラス製マントル内に配置した、予備計量した特別な線巻棒状付着具の外側に流す。285℃の「ホットスポット」を24時間一定温度にするために、棒状付着具を抵抗加熱する。この間中、乾燥空気を10mL/分の特定速度でマントル室に流す。試験の終了時に、揮発性炭化水素溶媒を用いて棒状付着具から油残留分を注意深く洗い落とし、そして洗っている間に棒状付着具から抜け落ちた如何なる堆積物も捕らえてろ過する。棒状付着具とフィルタを乾燥した後、棒とフィルタの堆積物の質量を測定する。棒状付着具の堆積物の質量とフィルタの堆積物の質量との和が全棒状付着具堆積物質量である。合格限界は、ILSAC GF−4規格に基づき35mgかそれ以下である。
【0135】
表 4 TEOST MHT4試験の結果
────────────────────────────────────
成分a 油D 油E 油F 油G
────────────────────────────────────
Caスルホネート 45 45 45 45
(ミリモル)
オキシモリブデン 0.4 0.4
錯体
摩擦緩和剤 0.3 0.3 0.3 0.3
ジフェニルアミン型 − 1.0 1.0
酸化防止剤
TEOST MHT4 92.3 74.8 51.5 32
全堆積物(mg)
────────────────────────────────────
:潤滑油の成分の量は特に断わらない限り質量%で表す。成分は次の通りである:
Caスルホネートは、ベンゼンとC20〜C24ノルマルアルファオレフィンから誘導した高過塩基性TBN426カルシウムアルキルアリールスルホネートである。
オキシモリブデン錯体は、硫化モリブデン・コハク酸イミド錯体であり、活性成分で表す。
摩擦緩和剤は、米国特許第5629272号に開示のホウ酸化グリセロールモノオレエートである。
ジフェニルアミン型酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミンである。
【0136】
潤滑油組成物の残余には、II種基油、および少量のその他の成分、具体的には消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、分散剤、低過塩基性清浄剤、第一級及び第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物が含まれ、潤滑油組成物の全質量に基づきリン分0.08質量%以下である。
【0137】
データは、本発明の潤滑油組成物(油G)、すなわちオキシモリブデン錯体と酸化防止剤の組合せを有する組成物で得られた全堆積物が32mgであったことを示している。比較の油D(オキシモリブデン錯体も酸化防止剤も無し)、油E(オキシモリブデン錯体のみ)、および油F(酸化防止剤のみ)は、TEOST MHT4試験に合格しなかった。これらの結果は、本発明の潤滑油組成物におけるオキシモリブデン錯体と酸化防止剤の組合せが、どちらか一方の成分を単独で用いた場合よりも堆積物の生成を低減するのに効果があることを明らかにしている。
【0138】
[実施例3]
下記表5の結果は、本発明の潤滑油組成物にはHOBフェネート(油I)に対してHOBスルホネート(油H)を使用することが、シーケンスVIBスクリーナ試験で優れた結果をもたらすことを明らかにしている。表5の成分を一緒にブレンドしてSAE5W−20粘度グレードの配合物を得ることにより、低リン潤滑油組成物を製造した。
【0139】
表 5 HOBスルホネート対HOBフェネートの
シーケンスVIBスクリーナ試験
──────────────────────────────
成分a 油H 油I
──────────────────────────────
HOB清浄剤 Caスルホネート Caフェネート
(55ミリモル)
オキシモリブデン錯体 0.5 0.5
摩擦緩和剤 0.5 0.5
ジフェニルアミン型 0.4 0.4
酸化防止剤
VIBスクリーナ燃料 2.45 2.08
経済(%FEI)
──────────────────────────────
:潤滑油の成分の量は特に断わらない限り質量%で表す。成分は次の通りである:
Caスルホネートは、ベンゼンとC20〜C24ノルマルアルファオレフィンから誘導した高過塩基性(HOB)TBN426カルシウムアルキルアリールスルホネートである。
Caフェネートは、米国特許第3178368号に記載のTBN250カルシウムアルキルフェネートである。
オキシモリブデン錯体は、硫化モリブデン・コハク酸イミド錯体であり、活性成分で表す。
摩擦緩和剤は、米国特許第5629272号に開示のホウ酸化グリセロールモノオレエートである。
ジフェニルアミン型酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミンである。
【0140】
潤滑油組成物の残余には、II種基油、および少量のその他の成分、具体的には消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、分散剤、硫黄含有酸化防止剤、第一級及び第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物が含まれ、潤滑油組成物の全質量に基づきリン分0.08質量%以下である。
【0141】
[実施例4]
オキシモリブデン含有錯体と酸化防止剤の総濃度は、潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも1.3質量%である。表6は、オキシモリブデン含有錯体と酸化防止剤の濃度が少なくとも1.3質量%では、ASTMシーケンスIIIG/ミニ回転型粘度計(MRV)使用済み油(ASTM D4684)試験に合格しないことを明示する結果を示している。
【0142】
この試験では、表6の成分を一緒にブレンドしてSAE5W−30粘度グレードの配合物を得ることにより、低リン潤滑油組成物を製造した。
【0143】
高温条件下で油増粘とピストン堆積物を測定する試験であり、動弁装置の摩耗に関する情報を与えてくれるASTMシーケンスIIIG試験に、まず潤滑油組成物をかける。1996/1997 231C.I.C(3800CC)IIシリーズジェネラル・モーターズV−6燃料噴射式エンジンを用いて、ASTMシーケンスIIIG試験を行う。無鉛ガソリンを使用して、エンジンを10分間の初期油面調整操作にかけた後、150分間で加速及び荷重状態まで緩やかに高める操作にかけた。次いで、エンジンを125bhp、3600rpmおよび油温150℃で100時間作動させ、油面検査のために20時間の間隔で中断した。その後、使用済み油をMRV試験にて評価した。MRV試験では、45時間浸して試験温度まで冷却した後の使用済み油の粘度を降伏応力を測定することにより求める。この試験を使用して、低温でのエンジン油のポンピング特性と見掛け粘度を評価する。最大許容粘度は、ILSAC GF−4規格に基づき60000である。
【0144】
表 6 MRV試験の結果
──────────────────────────────
成分a 油J 油K
──────────────────────────────
Caスルホネート 40.0 40.0
(ミリモル)
オキシモリブデン錯体 0.2 0.3
摩擦緩和剤 0.3 0.3
ジフェニルアミン型 1.0 1.25
酸化防止剤
MRV、最大cP60000 185500 42100
──────────────────────────────
:潤滑油の成分の量は特に断わらない限り質量%で表す。成分は次の通りである:
Caスルホネートは、ベンゼンとC20〜C24ノルマルアルファオレフィンから誘導した高過塩基性(HOB)TBN426カルシウムアルキルアリールスルホネートである。
オキシモリブデン錯体は、硫化モリブデン・コハク酸イミド錯体であり、活性成分で表す。
摩擦緩和剤は、米国特許第5629272号に開示のホウ酸化グリセロールモノオレエートである。
ジフェニルアミン型酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミンである。
【0145】
潤滑油組成物の残余には、II種基油、および少量のその他の成分、具体的には消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、フェネート、第一級及び第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物が含まれ、潤滑油組成物の全質量に基づきリン分0.08質量%以下である。
【0146】
上記表6に表示した結果から分かるように、オキシモリブデン含有錯体と酸化防止剤の総濃度が潤滑油組成物の全質量に基づき1.3質量%未満であるとき、潤滑油組成物(油J)はMRV試験に不合格である。
【0147】
[実施例5]
薄膜酸素消費(TFOUT)試験(ASTM D4742)は、ガソリン自動車機関におけるエンジン油の酸化安定性を評価するものである。この試験は、160℃で実施して、油がガソリン内燃機関内で置かれる状況の部分シミュレーションでは、金属触媒パッケージ、燃料パッケージおよび水と共に酸素で加圧した高圧反応器を利用する。表7に、更に硫黄含有化合物を含む本発明の潤滑油組成物の酸化安定性を示す。その結果を、硫黄含有化合物を含まない本発明の潤滑油組成物(基線)と比較する。時間(分)が長いほど、潤滑油組成物は耐酸化性が良好である。
【0148】
表 7 TFOUT試験a
────────────────────────────────────
硫黄含有化合物 %硫黄分 TFOUT(分)
────────────────────────────────────
硫化植物油/ラード油 12 27
グリセロールトリオレエート/ 10 48
オクチルオレエート、10%硫化+
0.5%メルカプトベンゾチアゾール
硫化トウモロコシ油 11 50
メチレンビス(ジブチル 30 183
ジチオカルバメート)
亜鉛ジブチルジチオカルバメート 27 260
────────────────────────────────────
:硫黄に基づいて0.15質量%の各硫黄含有化合物について、下記の組成を有する基線5W−20配合物で個々に評価した:
45ミリモルのHOBCaスルホネート(ベンゼンとC20〜C24ノルマルアルファオレフィンから誘導したTBN426カルシウムアルキルアリールスルホネート)
0.2質量%のオキシモリブデン錯体(硫化モリブデン・コハク酸イミド錯体、活性成分で表示)
0.3質量%の摩擦緩和剤(米国特許第5629272号に開示のホウ酸化グリセロールモノオレエート)
1.0質量%のジフェニルアミン型酸化防止剤(アルキル化ジフェニルアミン)
【0149】
潤滑油組成物の残余には、II種基油、および少量のその他の成分、具体的には消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、分散剤、低過塩基性清浄剤、第一級及び第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物が含まれ、潤滑油組成物の全質量に基づきリン分0.08質量%以下である。
【0150】
TFOUT試験の結果は、使用する硫黄含有化合物の種類によって酸化安定性が相当に変化することを明らかにしている。これらの結果に基づいてTFOUT試験では、メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)と亜鉛ジブチルジチオカルバメートが、酸化を防止するのに非常に効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む潤滑油組成物:
a)主要量の潤滑粘度の基油、
b)約0.1乃至10質量%の全塩基価(TBN)が約25乃至500の過塩基性アルカリ土類金属アルキルアリールスルホネート清浄剤、
c)約0.02乃至10質量%のオキシモリブデン含有錯体、
d)約0.1乃至5.0質量%のエステル系摩擦緩和剤、および
e)約0.2乃至10.0質量%の、ジフェニルアミン化合物、硫黄含有化合物およびそれらの混合物からなる群より選ばれた酸化防止剤、
[ただし、オキシモリブデン含有錯体と酸化防止剤との総濃度は、潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも1.3質量%であり、そして全潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%以下である]。
【請求項2】
オキシモリブデン含有錯体と酸化防止剤の総濃度が、潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも1.45質量%である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.06質量%以下である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.05質量%以下である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
アルカリ土類金属がカルシウムである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
スルホネート清浄剤が、C14-40の炭素線状ノルマルアルファオレフィンから誘導されて、少なくとも13モル%のアルキル基がアルキル基の1位又は2位でアリール基に結合しているものである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
TBNが約250乃至500である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
TBNが約300乃至450である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
さらに、油溶性のリン含有耐摩耗性化合物を含む請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
油溶性のリン含有耐摩耗性化合物が、金属ジチオリン酸塩、リンエステル、リン酸アミンおよびホスフィン酸アミン、硫黄含有リンエステル、リンアミドおよびホスホンアミドからなる群より選ばれる請求項9に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
リンエステルが、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、酸化ホスフィン、亜リン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、亜ホスフィン酸エステルおよびホスフィンからなる群より選ばれる請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
硫黄含有リンエステルが、ホスホロ・モノチオン酸塩およびホスホロ・ジチオン酸塩からなる群より選ばれる請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
油溶性のリン含有耐摩耗性化合物が金属ジチオリン酸塩である請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
金属ジチオリン酸塩がジアルキルジチオリン酸亜鉛である請求項13に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
オキシモリブデン含有錯体に用いられる窒素含有化合物が、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、炭化水素ポリアミン、マンニッヒ塩基、リンアミド、チオリンアミド、ホスホンアミド、分散剤型粘度指数向上剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
窒素含有化合物がコハク酸イミドであり、そしてオキシモリブデン含有錯体がモリブデン・コハク酸イミドである請求項15に記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
モリブデン・コハク酸イミドが硫化モリブデン・コハク酸イミドである請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
モリブデン・コハク酸イミドが未硫化モリブデン・コハク酸イミドである請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
エステル系摩擦緩和剤がホウ酸化グリセロールモノオレエートエステルである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
酸化防止剤がジフェニルアミン型酸化防止剤である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
ジフェニルアミン型酸化防止剤が、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミンおよびアルキル化−α−ナフチルアミンからなる群より選ばれる請求項20に記載の潤滑油組成物。
【請求項22】
ジフェニルアミン型酸化防止剤がアルキル化ジフェニルアミンである請求項21に記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
酸化防止剤が硫黄含有化合物である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
硫黄含有化合物が、硫化エステル化合物、硫化オレフィンおよびジチオカルバメートからなる群より選ばれる請求項23に記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
硫黄含有化合物がジチオカルバメートである請求項24に記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
さらに、平均分子量約450乃至3000のポリアルキレンから誘導されたアルケニルコハク酸イミド分散剤を含む請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
ポリアルキレンが平均分子量が約900乃至2300のポリイソブテニルである請求項26に記載の潤滑油組成物。
【請求項28】
ポリイソブテニルコハク酸イミドがエチレンカーボネートで後処理されたものである請求項27に記載の潤滑油組成物。
【請求項29】
ガソリン内燃機関の燃料経済を改善する方法であって、下記の成分を含む潤滑油組成物を用いて該機関を作動させることからなる方法:
a)主要量の潤滑粘度の基油、
b)約0.1乃至10質量%の全塩基価(TBN)が約25乃至500の過塩基性アルカリ土類金属アルキルアリールスルホネート清浄剤、
c)約0.02乃至10質量%のオキシモリブデン含有錯体、
d)約0.1乃至5.0質量%のエステル系摩擦緩和剤、および
e)約0.2乃至10.0質量%の、ジフェニルアミン化合物、硫黄含有化合物およびそれらの混合物からなる群より選ばれた酸化防止剤、
[ただし、オキシモリブデン含有錯体と酸化防止剤の総濃度は、潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも1.3質量%であり、そして全潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.08質量%以下である]。
【請求項30】
オキシモリブデン含有錯体と酸化防止剤の総濃度が、少なくとも1.45質量%である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.06質量%以下である請求項29に記載の方法。
【請求項32】
リン分が、潤滑油組成物の全質量に基づき0.05質量%以下である請求項29に記載の方法。
【請求項33】
アルカリ土類金属がカルシウムである請求項29に記載の方法。
【請求項34】
スルホネート清浄剤が、C14-40の炭素線状ノルマルアルファオレフィンから誘導されて、少なくとも13モル%のアルキル基がアルキル基の1位又は2位でアリール基に結合しているものである請求項29に記載の方法。
【請求項35】
TBNが約250乃至500である請求項29に記載の方法。
【請求項36】
TBNが約300乃至450である請求項29に記載の方法。
【請求項37】
さらに、油溶性のリン含有耐摩耗性化合物を含む請求項29に記載の方法。
【請求項38】
油溶性のリン含有耐摩耗性化合物が、金属ジチオリン酸塩、リンエステル、リン酸アミンおよびホスフィン酸アミン、硫黄含有リンエステル、リンアミドおよびホスホンアミドからなる群より選ばれる請求項37に記載の方法。
【請求項39】
リンエステルが、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、酸化ホスフィン、亜リン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、亜ホスフィン酸エステルおよびホスフィンからなる群より選ばれる請求項38に記載の方法。
【請求項40】
硫黄含有リンエステルが、ホスホロ・モノチオン酸塩およびホスホロ・ジチオン酸塩からなる群より選ばれる請求項38に記載の方法。
【請求項41】
油溶性のリン含有耐摩耗性化合物が金属ジチオリン酸塩である請求項38に記載の方法。
【請求項42】
金属ジチオリン酸塩がジアルキルジチオリン酸亜鉛である請求項41に記載の方法。
【請求項43】
オキシモリブデン含有錯体に用いられる窒素含有化合物が、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、炭化水素ポリアミン、マンニッヒ塩基、リンアミド、チオリンアミド、ホスホンアミド、分散剤型粘度指数向上剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項29に記載の方法。
【請求項44】
窒素含有化合物がコハク酸イミドであり、そしてオキシモリブデン含有錯体がモリブデン・コハク酸イミドである請求項43に記載の方法。
【請求項45】
モリブデン・コハク酸イミドが硫化モリブデン・コハク酸イミドである請求項44に記載の方法。
【請求項46】
モリブデン・コハク酸イミドが未硫化モリブデン・コハク酸イミドである請求項44に記載の方法。
【請求項47】
エステル系摩擦緩和剤がホウ酸化グリセロールモノオレエートエステルである請求項29に記載の方法。
【請求項48】
酸化防止剤がジフェニルアミン型酸化防止剤である請求項29に記載の方法。
【請求項49】
ジフェニルアミン型酸化防止剤が、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミンおよびアルキル化−α−ナフチルアミンからなる群より選ばれる請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ジフェニルアミン型酸化防止剤がアルキル化ジフェニルアミンである請求項49に記載の方法。
【請求項51】
酸化防止剤が硫黄含有化合物である請求項29に記載の方法。
【請求項52】
硫黄含有化合物が、硫化エステル化合物、硫化オレフィンおよびジチオカルバメートからなる群より選ばれる請求項51に記載の方法。
【請求項53】
硫黄含有化合物がジチオカルバメートである請求項52に記載の方法。
【請求項54】
さらに、平均分子量約450乃至3000のポリアルキレンから誘導されたアルケニルコハク酸イミド分散剤を含む請求項29に記載の方法。
【請求項55】
ポリアルキレンが平均分子量が約900乃至2300のポリイソブテニルである請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ポリイソブテニルコハク酸イミドがエチレンカーボネートで後処理されたものである請求項55に記載の方法。

【公開番号】特開2007−63336(P2007−63336A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248354(P2005−248354)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】