説明

内視鏡式X線装置

【課題】内視鏡で直接検査対象14を特定し、この特定に基づいて検査対象14に直接X線を照射することにより検査対象14内部を検査可能として検査不要箇所への被曝をなくし、かつ、高精度な検査を可能とした内視鏡式X線装置を提供すること。
【解決手段】真空管管壁にX線透過可能な薄膜からなるX線導出窓7を備え、真空管内部にX線発生手段(軸状陽極37、環状陰極39、電子遮蔽部材51)を備えると共にこのX線発生手段が発生したX線をX線導出窓7から窓外前方へ照射するX線管3と、X線照射方向のX線照射領域内を撮影可能にX線管3に一体固定された内視鏡5と、を備え構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡とX線管とを用いた内視鏡式X線装置に関するものである。このX線管は、電界放射型の冷陰極から電界放射により電子放出し、この放出電子を陽極に衝突させてX線を発生させるものであり、管径が数mm程度に超小型化が可能なX線管である。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、機器や管内の検査用や人体等の医療用等で使用されるものであり、近年では、光源装置からの光をCCDカメラのレンズ前面の全外周から光ファイバ等を用いて投光可能にして暗所での撮像が可能となっている(特許文献1参照)。
【0003】
上記内視鏡単独の場合、ケーブル先端に取り付けた内視鏡CCDカメラ例えば機器や管内や人体内(内部)に挿入していき、随時、内部の撮影画像をリアルタイムで得ると共に、その撮影画像から検査対象と思われる部位を発見すると、その発見位置から内視鏡CCDカメラで検査対象を観察しつつ一定の検査等を行うことができる。
【0004】
しかしながら、内視鏡検査方式では検査対象の表面部位に対して一定の検査を行うことができても、検査対象内部の検査はできない。
【0005】
一方、X線管は機器や人体等の前面からX線を照射し、それらの後部に配置したX線検出器で透過X線を検出し、この検出に基づいてX線画像から内部を検査することができる。
【0006】
しかしながら、このX線検査方式では内部を検査できてもその内部のどの位置に検査対象が存在するかどうかが発見しにくい。また、検査対象以外の部位にもX線が照射され被曝量が増大する。
【特許文献1】特開2004−275339
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、内視鏡で、直接、検査対象を特定し、この特定に基づいて検査対象に直接X線を照射することにより検査対象内部の検査実施を可能とする一方で、検査不要箇所への被曝を極力減らして高精度な検査を可能とした内視鏡式X線装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による内視鏡式X線装置は、内部に備えたX線発生手段が発生したX線を、管壁に設けたX線導出窓から窓外のX線照射領域に照射するX線管と、上記X線照射領域のモニタないし撮影が可能に上記X線管に一体固定された内視鏡と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、内視鏡による直接の外観観察で検査対象を特定すると、その検査対象に対してX線管によりX線を照射して検査対象の内部検査を実施することができる。すなわち、本発明では、検査対象をまず内視鏡で特定しているから、X線は検査対象にのみ照射して検査不要箇所へのX線被曝量を極力減らしかつ高精度な検査を行うことができるようになる。
【0010】
本発明の好ましい態様は、上記X線発生手段が、先端側がX線照射方向線上に延びる錐形でかつその錐形頂部がX線照射方向線上前方向に向く陽極と、この陽極先端部の半径方向外側を該陽極先端部と同心で環状に囲み外周面がナノ炭素膜からなる電界放射型の環状陰極と、少なくとも環状陰極のX線照射方向両側に配置されて環状陰極が放出する電子を遮蔽する電子遮蔽部材と、を備えると共に、上記X線導出窓を上記X線照射方向線上で陽極先端部前方の真空管管壁に設けることである。
【0011】
なお、上記錐形には円錐形、角錐形、を含む。この場合、全周が錐形に限定されず、部分的に錐形でもよい。上記錐形斜面のプロフィールは先端に向けての縮径割合が一定である直線状に限定されず、先端に向けて縮径割合が連続的またはステップ的に変化する形状(放物線状等)であってもよいし、先端に向けて縮径する針形であっても、錐形状に含むことができる。上記環状は完全に閉じた環状に限定されず、部分環状も含む。上記錐形頂部は鋭利な頂部に限定されず、多少の丸み等を含むことができる。
【0012】
上記X線発生手段を備えた場合、陽極先端部が錐形であること、この陽極先端部周囲に環状陰極を配置したこと、この環状陰極から放出する電子を部分的に遮蔽する電子遮蔽部材を配置したこと、に加えて、陽極先端部前方にX線導出窓を配置し、X線を実質的には略直進可能な構成としたことから、陽極先端部と環状陰極との間に高電界を印加し、環状陰極から発生した電子を電子遮蔽部材で電子遮蔽することにより、陽極先端部斜面に向けて所定ビーム径の電子ビームに集束させ、上記陽極先端部斜面に電子ビームを衝突させて上記陽極先端部斜面からX線束を発生させ、そのX線束をX線照射方向線上前方のX線導出窓に向けて直進させて窓外の検査対象にスポット状に照射することができる。
【0013】
そのため、上記態様による検査対象に対してはスポット内周から外周へのX線照射密度が一様でスポット径が小さく制御されたX線照射スポットを生成でき、検査対象を高精度に検査することができるようになる。
【0014】
本発明の好ましい態様は、上記電子遮蔽部材は、環状陰極のX線照射方向両側で該X線照射方向周り環状の一対の環状板部を備え、両環状板部のX線照射方向間対向距離および内径の少なくともいずれか一方が調整可能なっていることである。X線照射方向両側の環状板部は互いに独立して配置することにより、電子遮蔽部材により環状陰極の放出電子の遮蔽を制御することができるようにしてもよい。
【0015】
本発明の好ましい態様は、上記環状陰極と上記電子遮蔽部材は、陽極先端部に対してX線照射方向線上を相対移動可能になっている、ことである。
【0016】
本発明の好ましい態様は、上記陽極先端部の外周斜面のX線照射方向線に対する角度が、環状陰極からの電子ビームのビーム径よりも陽極先端部から発生したX線束の束径を小さくする角度に調整されていることである。
【0017】
本発明の好ましい態様は、上記陽極が、上記先端部に連成され該先端部より熱容量が大きくかつ先端部の発生熱の導熱に用いる導熱部を有する構成とすることである。この態様では、先端部が電子ビーム衝突で発熱しても、その発熱は導熱部に導熱されるので、当該先端部は冷却されて、X線束の発生効率を向上させることができるようになる。
【0018】
本発明の好ましい態様は、上記陽極の導熱部後端部が真空管外に導出されると共に真空管の真空封止部分とすることである。
【0019】
この態様では、導熱部が真空管外に導出されているので、上記導熱した熱が真空管外に放熱され、より先端部の放熱効果が向上し、結果、よりX線束の発生効率を向上させることができるようになる。
【0020】
本発明の好ましい態様は、上記陽極先端部斜面の角度を陽極先端部先端ほど連続指数関数的にまたはステップ的に小さくする構成とすることである。この態様では、環状陰極と陽極先端部斜面との対向位置を軸方向にずらせることにより、X線束の束径をより小さく集束させたり、その逆に束径を広がらせたりすることができる。
【0021】
なお、陽極先端部と環状陰極との間に電子加速手段を配置してもよい。環状陰極は中実でも中空でもよい。陽極は中実でも中空でもよい。電子遮蔽部材は、環状陰極からの遠近移動および/または内径拡縮調整可能としてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検査対象にX線を照射する前に、まず、内視鏡で直接検査対象を外観観察で特定し、この特定に基づいてX線管から検査対象に対して直接X線を照射して検査対象内部を検査することが可能となり、検査不要箇所への被曝を減らせると共に検査対象内部の高精度な検査を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る内視鏡式X線装置を説明する。
【0024】
図1は、同内視鏡式X線装置の外観斜視図、図2は同内視鏡式X線装置の使用例を示す図である。図3は内視鏡式X線装置が備えるX線管の断面図、図4は図3のA−A線に沿う断面構成を示す図、図5は図3で示すX線管の要部(軸状陽極、環状陰極、電子遮蔽部材、X線導出窓)断面を拡大して示す図、図6は同要部の外観を拡大して示す図である。図7は内視鏡式X線装置において特にX線管の動作状態を説明するための図である。図8は図7の動作説明において、環状陰極から放出された電子が遮蔽部材により遮蔽される関係を説明するための図、図9は図7の動作説明において陽極先端部の円錐斜面の角度による電子ビーム径とX線束径との関係を説明するための図、図10はX線束径の制御を示す図である。
【0025】
まず図1を参照して、実施の形態の内視鏡式X線装置1は、X線管3に内視鏡5が一体固定されて構成されている。X線管3はX線照射方向前端部にX線導出窓7を備え、X線をX線導出窓7から窓外前方へ照射することができる。内視鏡5は、X線照射方向のX線照射領域内をモニタしたり撮影したりすることが可能になっている。
【0026】
内視鏡式X線装置1は内部に2本の同軸ケーブル9a,9bが一体ケーブル9化されている。同軸ケーブル9a先端部はX線管3側に、同軸ケーブル9b先端部は内視鏡5側に接続されている。同軸ケーブル9a後端側は駆動電源側(図1では接続配線の図示略)に、同軸ケーブル9b後端側は内視鏡5の手元操作部11に接続されている。手元操作部11には複数の操作部13,15と、ビューファインダ17とが装備されている。ケーブル9a,9b内には各種配線が収納されるが、この配線等の説明は略する。内視鏡5は内部にカメラを内蔵させてもよいし、モニタ機能のみとしカメラを外付け可能としてもよい。
【0027】
図2を参照して医者はオペレータとして内視鏡式X線装置1を、ケーブル9を用いて、例えば胃内部に挿入する。人体にはX線の入射により透明な結晶が蛍光を発する現象(シンチレーション)を利用したX線検出バンド(X線検出器)19が巻き付けられている。オペレータは内視鏡式X線装置1が胃内部に到達すると、手元操作部11のビューファインダ17から内視鏡5による胃内部光学画像をモニタしつつ手元内視鏡操作部13により内視鏡式X線装置1を胃内部で旋回させるなどの操作を行う。そして内視鏡5により検査対象14を発見することができると、手元X線管操作部15を操作してその検査対象14にX線管3のX線導出窓7からX線を照射する。この場合、手元操作部11のビューファインダ17にはX線照射位置を示す十字マークを表示してX線を正確に検査対象14に照射可能としたり、あるいは、X線照射領域を示す円形等のマークを表示して検査対象14に合わせたX線照射スポットでX線を照射可能としてもよい。
【0028】
X線管3のX線導出窓7から照射されたX線はX線検出バンド19で検出される。X線検出バンド19にはX線立体画像生成表示部21が接続されている。このとき、X線照射位置を変えるために内視鏡式X線装置1を胃内部で移動操作して検査対象14に別の位置からX線を照射する。検査対象14に対して異なる複数の位置からX線照射し、X線立体画像生成表示部21ではその複数のX線検査対象画像を処理して検査対象14の立体X線画像14aを表示部23に表示処理する。この立体X線画像14aの生成処理は周知でありその説明は略する。
【0029】
こうして実施の形態の内視鏡式X線装置1では、内視鏡5で、直接、検査対象14を特定し、この特定に基づいて検査対象14に、直接、X線管3からX線を照射することにより検査対象14内部を検査する立体X線画像14aのためのデータを得ることができるので、検査不要箇所へのX線被曝を減らし、かつ、高精度な検査を行うことができる。
【0030】
図3ないし図6を参照して、内視鏡5は、鏡胴体25内部に照明用レンズ26や対物用レンズ27、等を含む撮像光学系や発光素子28、CCDイメージセンサ29等を含むと共に、発光素子駆動線31やCCDイメージセンサ29の信号線32を内蔵する。CCDイメージセンサ29は、長方形の撮像領域(受光面)を有するものであり、制御回路33から発光素子駆動線31を介して駆動信号を印加して発光素子28を駆動して撮影領域内部を照明すると共に当該内部の反射光をCCDイメージセンサ29で受光し、その受光戻り信号を信号線32を介して制御回路33で画像信号に変換し、手元操作部11のビューファインダ17にデジタル画像を表示させることができるようになっている。
【0031】
X線管3は、真空管35端部にX線を透過できる膜厚数μm程度の薄膜例えばベリリウム膜からなるX線導出窓7を備える。X線管3はその後部にケーブル9が接続され、このケーブル9を介して駆動電源から例えばパルス状電圧が印加され、X線導出窓7からX線検査対象14にX線をスポット状に照射することができるようになっている。
【0032】
真空管35は、X線照射方向線L1方向に長手の円筒直管からなり内部が真空とされており、当該内部に軸状陽極37、環状陰極39、電子遮蔽部材41を備える。
【0033】
軸状陽極37はX線照射方向線L1方向に直線的に延びるように配置されている。軸状陽極37の先端部37aのX線照射方向線L1と同軸前方にX線導出窓7が位置している。
【0034】
軸状陽極37の先端部37aは円錐斜面37a2形状をなし電子ビーム衝突によりX線が発生するターゲットとなる。ターゲット材料は特に限定しない。軸状陽極37の陽極先端部37aの後部側は熱容量が大きくかつ先端部37aでの発生熱を導熱する導熱部37bとなり、また導熱部37bの後部側は真空管10後部外に導出され真空管35を真空封止する部分37cとなると共にケーブル9に接続され高電圧が印加可能となっている。
【0035】
陽極先端部37aは、頂部37a1がX線照射方向線L1上に位置し円錐中心線がX線照射方向線L1に一致する円錐形状をなし、その円錐斜面37a2は、X線照射方向線L1に対して所定角度の斜面である。
【0036】
環状陰極39は、陽極先端部37aの半径方向外側を環状に囲み環状導線39aの外周面にナノ炭素膜39bが形成されている。
【0037】
ナノ炭素膜39bはカーボンナノチューブ、カーボンナノウォール、カーボンナノファイバー、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスダイヤモンド、結晶性ダイヤモンド、グラファィト、フラーレン、針状炭素膜等、微細なnmオーダーの突起を有するものである。
【0038】
環状陰極39は、軸状陽極37との間の電界印加により電界放射して半径方向内側の軸状陽極37に向けて電子を放出する。上記電界印加は、軸状陽極37に例えば駆動電源43から高電位を印加することにより行われる。電位の印加形態は各種あり、本実施の形態は特に限定されない。
【0039】
例えば駆動電源43をパルス電源で構成し、マイクロコンピュータ45の制御でパルス電源から軸状陽極37に極短パルスを印加してもよい。例えば軸状陽極37に正パルス状電圧+V、環状陰極39に正パルス状電圧+Vと同期してこの正パルス状電圧+Vと絶対値が同じ大きさの負パルス状電圧−Vを印加するようにしてパルス電源の電圧の大きさを半分に制御可能としてもよい。このパルス状電圧の波形は矩形状波でもよいし、鋸歯状波でもよいし、その他の波形形状でもよい。
【0040】
電子遮蔽部材41は、環状陰極39のX線照射方向両側に配置されて環状陰極39が放出する電子のうちX線照射方向両側方向への電子を遮蔽する電子遮蔽部材であり、X線照射方向両側の環状板部41a,41bと両環状板部41a,41bを連設する円筒部16cとを備える。電子遮蔽部材41は環状陰極39と同電位または略同電位が印加される。
【0041】
図7を参照して軸状陽極37に高パルス状電圧が印加されると、陽極先端部37aと環状陰極39との間に高電界が印加される。これによって環状陰極39から陽極先端部37aに向けて電子が電界放射により放出され、この放出した電子が陽極先端部37aの円錐斜面37a2に衝突する。
【0042】
円錐斜面37a2に電子が衝突すると、該円錐斜面12aからX線が発生する。このX線はX線照射方向線L1方向に直進し、X線導出窓7から窓外のX線検査対象14をスポット状に照射する。
【0043】
この場合、環状陰極39から放出した電子を電子遮蔽部材41で遮蔽することにより電子を陽極先端部37aに衝突させるが、このとき環状板部41a,41bの対向距離や内径を調整することにより電子を破線で示す軌道の電子を遮蔽し実線で示す軌道の電子のみを陽極先端部37aに広がりが狭い電子ビームとして衝突させる。
【0044】
これにより陽極先端部37aの円錐斜面37a2から発生するX線束の束径を小さく絞り込み可能とし、X線検査対象14に対してX線照射スポット49dの形態でX線を照射することができる。
【0045】
また、陽極先端部37aの円錐斜面37a2の角度を調整することにより、陽極先端部37aの円錐斜面37a2に衝突する電子ビームのビーム径が同じでも、陽極先端部37aの円錐斜面37a2から発生するX線束の束径をより小さく絞り込み可能としている。
【0046】
次に図7を参照して環状陰極39から放出された電子が電子遮蔽部材41により遮蔽される関係を説明する。
【0047】
図8(a1)は電子遮蔽部材41の両環状板部41a,41bの対向距離がD1のときであり、このときの環状陰極39から放出される電子の広がり角度はθ1である。
【0048】
図8(a2)は電子遮蔽部材41の両環状板部41a,41bの対向距離がD2(<D1)のときであり、このときの環状陰極39から放出される電子の広がり角度はθ2(<θ1)である。すなわち両環状板部41a,41bの対向距離を小さくすると、環状陰極39から放出される電子を陽極先端部37aに効果的に集束させることができる。
【0049】
図8(b1)は電子遮蔽部材41の両環状板部41a,41bの内径がR1のときであり、このときの環状陰極39から放出される電子の広がり角度はθ1である。
【0050】
図8(b2)は電子遮蔽部材41の両環状板部41a,41bの内径がR2(<R1)のときであり、このときの環状陰極39から放出される電子の広がり角度はθ2(<θ1)である。すなわち両環状板部41a,41bの内径を小さくすると、環状陰極39から放出される電子を陽極先端部37aに効果的に集束させることができる。
【0051】
次に図9を参照して陽極先端部37aの円錐斜面37a2の角度による電子ビーム径とX線束径との関係を説明する。
【0052】
図9(a)は円錐斜面37a2の角度がθ1であり、円錐斜面37a2に衝突した電子ビームB1のビーム径r1に対して円錐斜面37a2から発生したX線束B2の束径r2は大きく、X線照射方向線L1前方のX線検査対象14に照射するX線照射スポット49のスポット径r3は大きい。
【0053】
図9(b)は円錐斜面の角度がθ2(<θ1)であり、円錐斜面37a2に衝突した電子ビームB1のビーム径r1に対して円錐斜面37a2から発生したX線束B2の束径r2は小さく、X線照射方向線L1前方のX線検査対象14に照射するX線照射スポット49のスポット径r3は小さい。すなわち円錐斜面37a2の角度を小さくすることにより、電子ビームB1のビーム径は同じでもX線束の束径を小さくしてX線照射スポット49を小さくすることができる。
【0054】
以上から実施の形態では、陽極先端部37aと環状陰極39との間での電界印加で環状陰極39から発生した電子が電子遮蔽部材41で遮蔽されてその半径方向内側の陽極先端部37aの円錐斜面37a2に向けて所定の電子ビームに集束される。
【0055】
これによって、陽極先端部37aの円錐斜面37a2に電子ビームが衝突して上記円錐斜面37a2から発生するX線束はX線照射方向線L1上前方のX線導出窓7に向けて直進し窓7外のX線検査対象14にスポット状に照射することができる。
【0056】
その結果、X線検査対象14に対するX線照射スポット49はスポット内周から外周へのX線密度が一様であり、かつ、陽極先端部37aの円錐斜面37a2の斜面角度を小さくしてスポット径も小さくすることができる。
【0057】
図10を参照して、環状陰極39と電子遮蔽部材41とで構成される電子ビーム照射セット51をX線照射方向に、軸状陽極37に対して相対移動可能にする。電子ビーム照射セット51を図10(a)ないし図10(c)で示すように陽極先端部37aに対してd11ないしd13に移動すると、図10(a)ではX線束径はr21、図10(b)でのX線束径はr22(<r21)、図10(c)ではX線束径はr23(<r22)である。すなわち電子ビーム照射セット51を陽極先端部37aの先端へ相対移動するほど、X線束径を小さくし、X線照射スポット49のスポット径r3を小さくすることができる。すなわち、実施の形態では、電子ビーム照射セット51をX線照射方向に、軸状陽極37に対して相対移動可能とすることにより、X線照射スポット48のスポット径をr1,r2,r3…に調整して検査対象14に合わせた検査を実施可能とすることができる。
【0058】
以上説明したように実施の形態では、X線管3と、X線照射方向のX線照射領域内を撮影可能に上記X線管に一体固定された内視鏡5と、を備えたことにより、内視鏡5での直接観察で検査対象14を特定すると、その検査対象14に対してその前面側からX線管3からX線を照射する一方、検査対象14後方に配置したX線検出バンド19で、検査対象14を透過したX線を検出すると共にその検出に基づいてX線画像14aを得ることができる。このことにより、検査対象14を容易に特定することができると同時に検査対象14にのみX線を照射し、検査不要箇所へのX線照射を無くすことにより、被曝量を減らしかつ高精度な検査を行うことができるようになる。
【0059】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、種々な変更ないしは変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、同内視鏡式X線装置の外観斜視図である。
【図2】図2は同内視鏡式X線装置の使用例を示す図である。
【図3】図3は内視鏡式X線装置が備えるX線管の断面図である。
【図4】図4は図3のA−A線に沿う断面構成を示す図である。
【図5】図5は図3で示すX線管の要部(軸状陽極、環状陰極、電子遮蔽部材、X線導出窓)断面を拡大して示す図である。
【図6】図6は同要部の外観を拡大して示す図である。
【図7】図7は内視鏡式X線装置において特にX線管の動作状態を説明するための図である。
【図8】図8は図7の動作説明として環状陰極から放出された電子が遮蔽部材により遮蔽される関係を説明するための図である。
【図9】図9は図7の動作説明として陽極先端部の円錐斜面の角度による電子ビーム径とX線束径との関係を説明するための図である。
【図10】図10は電子ビーム照射セット(環状陰極と電子遮蔽部材)と陽極先端部とのX線照射方向での位置関係制御によるX線束径の制御を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 内視鏡式X線装置
3 X線管
5 内視鏡
7 X線導出窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に備えたX線発生手段が発生したX線を、管壁に設けたX線導出窓から窓外のX線照射領域に照射するX線管と、上記X線照射領域のモニタないし撮影が可能に上記X線管に一体固定された内視鏡と、を備えることを特徴とする内視鏡式X線装置。
【請求項2】
上記X線発生手段は、
先端側がX線照射方向線上に延びる錐形でかつその錐形頂部がX線照射方向線上前方向に向く陽極と、
この陽極先端部の半径方向外側を該陽極先端部と同心で環状に囲み外周面がナノ炭素膜からなる電界放射型の環状陰極と、
少なくとも環状陰極のX線照射方向両側に配置されて環状陰極が放出する電子を遮蔽する電子遮蔽部材と、
を備えると共に、
上記X線導出窓を上記X線照射方向線上で陽極先端部前方の真空管管壁に設けた、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡式X線装置。
【請求項3】
上記電子遮蔽部材は、環状陰極のX線照射方向両側で該X線照射方向周り環状の一対の環状板部を備え、両環状板部のX線照射方向間対向距離および内径の少なくともいずれか一方が調整可能なっている、ことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡式X線装置。
【請求項4】
上記環状陰極と上記電子遮蔽部材は電子ビーム照射セットとして、陽極先端部に対してX線照射方向線上を相対移動可能になっている、ことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡式X線装置。
【請求項5】
上記陽極先端部の外周斜面のX線照射方向線に対する角度が、環状陰極からの電子ビームのビーム径よりも陽極先端部から発生したX線束の束径を小さくする角度に調整されている、ことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡式X線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−288160(P2008−288160A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134470(P2007−134470)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(504224371)ダイヤライトジャパン株式会社 (105)
【出願人】(504116755)
【出願人】(507164467)
【出願人】(591222108)
【Fターム(参考)】