説明

内視鏡装置

【課題】1つの光源ランプから発せられる励起光と非励起光との双方の光量を制御し、最適な明るさバランスを得る。
【解決手段】光源ランプ31から紫外域及び可視光域の照明光が発光されると、この照明光が第1絞り機構33及び第2絞り機構34で光量調整され、回転フィルタ35を介して観察対象に順次照射される。そして、観察対象からの蛍光及びRGB反射光を内視鏡挿入部10aの撮像ユニット12で撮像し、画像処理ユニット51で生成した蛍光画像及び通常画像をモニタ100に表示する。このとき、第1絞り機構33は照明光の波長帯域のうち励起光及びRGB光の光量を調整し、第2絞り機構34は紫外域の光に対して透過性を有して励起光の光量に影響することなくRGB光の光量を調整する。これにより、1つの光源ランプから発せられる励起光とRGB光との双方の光量を制御し、最適な明るさバランスを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光画像と通常画像を撮像可能な内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蛍光画像と通常画像を撮像可能な面順次式電子内視鏡装置においては、光源装置からの励起光の照射により生体粘膜から発せられる自家蛍光の強度は、非励起光の照射により得られる粘膜からの反射光強度に比べて非常に弱い。このため、蛍光画像と通常画像を同時に撮像する場合、光源から発せられる励起光と非励起光との光量を同一の絞り機構で制御し、非励起光の光量を抑えるようとすると、同時に励起光の光量が抑えられてしまい、十分な明るさの蛍光画像を得ることが困難であるという問題が生じる。
【0003】
これに対処するに、蛍光画像と通常画像との明るさ調整に関して、従来から種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、2つの光源ランプのそれぞれに対して絞り機構を備え、個別に光量を調整する技術が提案されている。また、特許文献2には、撮像素子で光電変換されたアナログ信号において、蛍光画像の信号を通常画像の信号より大きいゲインで増幅した後にデジタル変換する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2002−95635号公報
【特許文献1】特開2003−10101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、2つの光源ランプのそれぞれに対して絞り機構を備え、個別に光量を調整している。従って、光源ランプを2つ備える必要があり、装置が大型化するばかりでなく、コスト上昇を招いてしまう。
【0005】
また、特許文献2の技術では、撮像素子で光電変換されたアナログ信号において、蛍光画像の信号を通常画像の信号より大きいゲインで増幅した後にデジタル変換している。このため、蛍光画像のS/N特性が悪化する可能性があり、ノイズの多い画像になる虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、1つの光源ランプから発せられる励起光と非励起光との双方の光量を適正に制御し、最適な明るさバランスを得ることが可能な内視鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による第1の内視鏡装置は、紫外域及び可視域を含む照明光を発光する発光手段と、前記照明光の波長帯域を紫外域または可視域の光に制限する波長制限手段を備えた照明手段と、前記照明光を観察対象に伝送する照明伝送手段と、観察対象から発せられる蛍光または反射光を撮像する撮像手段を備えた内視鏡挿入部と、前記撮像手段より得られる撮像信号に基づき、前記蛍光による蛍光画像及び前記反射光による通常画像の合成画像を生成する画像生成手段とを備えた内視鏡装置において、前記照明光の波長帯域のうち、紫外光及び可視光に対して透過性を持たない素材からなる第1の遮光手段を前記発光手段と前記波長制限手段との間の光路上に備え、紫外光に対してのみ透過性を有する第2の遮光手段を前記波長制限手段と前記第1の遮光手段との間の光路上に備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明による第2の内視鏡装置は、可視領域を含む照明光を発光する発光手段と、前記照明光の光量を調整する光量調整手段を備えた照明手段と、前記照明光を観察対象まで伝達する光伝達手段と、前記観察対象からの光を撮像する撮像手段を備えた内視鏡挿入部と、前記撮像手段により得られる撮像信号から合成画像を生成する画像生成手段とを備えた内視鏡装置において、前記照明光の波長帯域を制限する波長制限手段を備え、前記波長制限手段は、前記照明光の波長帯域を、蛍光画像を得るための励起光と通常画像を得るための非励起光とに制限し、前記非励起光を前記励起光より少ない光量に制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1つの光源ランプから発せられる励起光と非励起光との双方の光量を適正に制御し、最適な明るさバランスを得ることができる。
【0010】
特に、第1の内視鏡装置においては、第1の遮光手段によって励起光及び可視光の光量を調整し、第2の遮光手段によって可視光に対してのみ光量調整を行うことが可能であり、1つの光源ランプから発せられる励起光の光量と可視光の光量とを個別に制御し、最適な明るさバランスを得ることができる。
【0011】
また、第2の内視鏡装置においては、波長制限手段で非励起光の光量を励起光の光量より少ない光量に制限することにより、励起光の照射によって観察対象から発せられる自家蛍光の光量と非励起光の照射による反射光の光量とを同等にすることが可能であり、ゲイン調整によるノイズを抑制しつつ、最適な明るさバランスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図4は本発明の実施の第1形態に係わり、図1は内視鏡装置の全体構成図、図2は撮像ユニットの構成を示す説明図、図3は回転フィルタの構成を示す説明図、図4は画像処理ユニットの構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、第1形態の内視鏡装置1は、生体粘膜等の観察対象5から発せられる蛍光または反射光による観察が可能な内視鏡10と、観察対象5を照明するための照明光を内視鏡10に供給する光源装置30と、内視鏡10からの撮像信号を処理して観察画像を生成するためのプロセッサ50と、プロセッサ50で生成した観察画像を表示するためのモニタ100とを備えている。
【0014】
内視鏡10は、体腔内等に挿入される内視鏡挿入部10aと、この内視鏡挿入部10aの基端側に設けられた操作部10bとを備えている。内視鏡挿入部10aの先端部には、光源装置30から発せられる照明光を伝送して観察対象5に照射するための照明伝送手段としてのライトガイド11の出射端と、照明光の照射によって観察対象5から発せられる蛍光及び反射光を撮像するための撮像手段としての撮像ユニット12とが配置されている。
【0015】
撮像ユニット12は、図2に示すように、蛍光及び反射光の入射光を光電変換する撮像素子13の前面に、入射光を撮像素子13に集光する対物レンズ14が配置され、更に、対物レンズ14の前面に、照明光を観察対象に照射したときの反射光のうち励起光の波長帯域をカットする励起光カットフィルタ15が配置されて構成されている。蛍光及び反射光を撮像する撮像素子13としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMD(Charge Multiplying Detector))等の撮像素子が用いられる。
【0016】
また、内視鏡10の操作部10bには、赤、緑、青の光の照射による通常画像のみ表示する通常画像モードと、励起光の照射による蛍光画像及び赤、緑、青の光による通常画像を同時に表示する同時観察モードとの間で切り替え操作を行うモード切替スイッチ16が配設されている。
【0017】
尚、以下では、赤、緑、青の光をRGB光と記述し、赤、緑、青の光を観察対象に照射したときの反射光をRGB反射光と記述する。
【0018】
次に、光源装置30は、本形態においては、紫外域の波長帯域の励起光と可視域の光とを含む照明光を観察対象に照射するための照明手段として形成され、紫外域及び可視域に分光スペクトルをもつ照明光を発光可能な発光手段としての光源ランプ31と、照明光の熱線をカットする熱線カットフィルタ32と、照明光の光路上に配置され、照明光の光量を調整する第1絞り機構33及び第2絞り機構34と、照明光の光路上に配置されて回転動作することにより、照明光をRGB光または紫外域の波長帯域をもつ励起光に制限する波長制限手段としての回転フィルタ35と、回転フィルタ35を回転動作させるモータ36と、モータ36の駆動を制御する駆動制御回路37と、励起光及びRGB光を集光する集光レンズ38とを備えている。
【0019】
尚、第1絞り機構33は、紫外域及び可視域の光に対して吸収特性または反射特性を有するフィルタ素材からなり、紫外光及び可視光に対して透過性を持たない素材からなる第1の遮光手段を形成している。また、第2絞り機構34は、紫外域の光を透過し、可視域の光に対してのみ吸収特性または反射特性を有するフィルタ素材からなり、紫外光に対してのみ透過性を有する第2の遮光手段を形成している。
【0020】
図3に示すように、回転フィルタ35は、RGB光を透過するバンドパスフィル夕35a,35b,35cと、紫外域の励起光を透過するバンドパスフィルタ35dとを備え、これらのバンドパスフィルタ35a〜35dを同心円状に配置したものである。回転フィルタ35は、モータ36によって回転駆動され、その結果、照明光の光路上に配置されるフィルタの種類が順次入れ替り、分光特性の異なる数種類のフィルタを透過した光が断続的に照射される。この回転フィルタ35を介して断続的に照射される光を、以下、面順次光と記述する。
【0021】
一方、プロセッサ50は、撮像ユニット12からの撮像信号を処理し、観察対象からのRGB反射光による通常画像と、観察対象から発せられる蛍光による蛍光画像との合成画像を生成する画像生成手段としての画像処理ユニット51を主として備えている。
【0022】
画像処理ユニット51は、図4に詳細が示されるように、撮像信号のノイズ除去等を行うプリプロセス回路52、アナログの撮像信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ53、デジタル信号に基づきカラーバランス補正を行うためのカラーバランス補正回路54、デジタル信号を照明光の種類ごとに分離するためのセレクタ55、分離された信号を同時化するための4つのメモリ56a,56b,56c,56d、4つのメモリ56a〜56dで同時化された信号に対して演算処理を施し、2種類の観察画像と文字情報を生成するための画像処理回路57、演算処理されたデジタル信号をアナログの映像信号に変換するためのD/Aコンバータ58a,58b,58cを備えている。
【0023】
また、画像処理ユニット51には、撮像ユニット12の撮像素子13による撮像のタイミングと回転フィルタ35による照明光の照射タイミングとを同期させるタイミングジェネレータ59、撮像信号に基づき光源装置30の絞り機構(第1絞り機構33及び第2絞り機構34)の動作を制御する調光回路60、撮像素子13を駆動するドライバ61、モード切替スイッチ16の動作を検知し、通常画像モードと同時観察モードとの切り替え操作を行うCPU62を備えている。
【0024】
次に、以上の構成を有する内視鏡装置1の動作について説明する。先ず、光源装置30に内蔵された光源ランプ31から紫外域及び可視光域に分光スペクトルをもつ照明光が発光されると、この照明光が熱線カットフィルタ32に入射される。熱線カットフィルタ32は、照明光に含まれる熱線を遮光し、これにより、観察対象の発熱が抑制される。
【0025】
熱線カットフィルタ32で熱線がカットされた照明光は、第1絞り機構33及び第2絞り機構34により、光量が調整される。第1絞り機構33及び第2絞り機構34は、プロセッサ50内部の調光回路60からの信号に基づいて制御され、光の通過領域に挿入されて狭められることにより、照明光の光量を調整する。詳細には、第1絞り機構33は、照明光の光路上で開閉動作することにより、照明光の波長帯域のうち励起光及びRGB光の光量を調整する機構となっており、また、第2絞り機構34は、紫外域の光に対して透過性を有するため、励起光の光量に影響することなくRGB光の光量を調整する機構となっている。
【0026】
更に、第1絞り機構33及び第2絞り機構34で光量調整された照明光は、光路上に備えられた回転フィルタ35に入射され、この回転フィルタ35から面順次光として出射される。すなわち、回転フィルタ35は、駆動制御回路37からの制御信号を受けたモータ36の作動により回転駆動し、照明光の光路上に、分光特性の異なるバンドパスフィルタ35a〜35dが順次配置されて入れ替わることで、RGB光及び励起光が集光レンズ38を介してライトガイド11の入射端に順次入射される。
【0027】
光源装置30からの面順次光は、ライトガイド11によって導光されて内視鏡挿入部10a先端の出射端から観察対象に照射され、面順次光の照射によって観察対象から得られる自家蛍光または反射光が内視鏡挿入部10aの先端に内蔵された撮像ユニット12により撮像される。撮像ユニット12による撮像は、プロセッサ50内部のタイミングジェネレータ59により制御され、面順次光の照射タイミングに同期して行われる。
【0028】
励起光が照射される時間帯においては、観察対象から発せられる自家蛍光及び励起光の反射光のうち、近紫外に分光スペクトルをもつ励起光の反射が励起光カットフィルタ15で遮光され、可視域に分光スペクトルを持つ自家蛍光のみが対物レンズ14により集光されて撮像素子13によって光電変換される。
【0029】
また、RGB光の照射時には、可視域に分光スペクトルを持つRGB反射光は励起光カットフィルタ15で遮光されることなく、撮像素子13によって光電変換される。この光電変換により撮像素子13内で生成された撮像信号は、プロセッサ50内の画像処理ユニット51においてアナログ的な増幅処理によりレベル調整される。
【0030】
画像処理ユニット51は、図4に示すように、撮像素子13から送られる撮像信号をプリプロセス回路52でノイズ除去とゲイン調整を行い、A/Dコンバータ53を介してデジタル信号に変換し、カラーバランス補正回路54でゲイン調整した後に、セレクタ55で分離して、RGB光及び蛍光(R,G,B,S)毎の4つのメモリ56a〜56dに格納する。このとき、連続して送られてくる撮像信号は、セレクタ55において面順次光の照射タイミングに基づいて分離され、分離された撮像信号は、メモリ56a〜56dにおいて同時化された後、画像処理回路57に出力される。
【0031】
画像処理回路57は、各メモリ56a〜56dから送られる撮像信号を基に、RGB光による通常画像と励起光による蛍光画像とを生成し、その一部を分離または合成し、文字情報を付加した後に画像データとしてモニタ100に出力する。このとき、モニタ100は、画像処理ユニット51からの画像データを受信し、本実施形態における内視鏡装置1の操作者が観察対象をカラーイメージとして観察するための観察画像を表示する。
【0032】
尚、このとき、タイミングジェネレータ59は、回転フィルタ35の駆動制御回路37から送られてくる同期信号を受けて、撮像素子13が照明光の照射タイミングに同期して撮像するように、撮像素子13を駆動するためのドライバ61を制御する。
【0033】
また、画像処理ユニット51においては、CPU62が内視鏡10のモード切替スイッチ16による通常画像モードと同時観察モードとの切り替え操作を検知し、画像処理回路57に切替信号を送信する。画像処理回路57は、通常画像モードが選択されたことを示す切替信号をCPU62から受信した場合、メモリ56a〜56cに格納されたRGB光による3つの撮像信号に基づき通常画像を生成する。また、画像処理回路57は、同時観察モードが選択されたことを示す切替信号をCPU62から受信した場合、R,G,B,Sのメモリ56a〜56dに格納されたRGB反射光及び蛍光による4つの撮像信号(同時化された4つの撮像信号)を受けて、通常画像と蛍光画像との合成画像を生成する。
【0034】
モード切替え操作を検知したCPU62からの切替信号は、同時に、ドライバ61と調光回路60に送られる。ドライバ61は、CPU62からの切替信号に基づき、撮像素子13の駆動を制御する。また、調光回路60は、CPU62からの切替信号と、セレクタ55を介したプリプロセス回路52からの調光信号とに基づき、第1絞り機構33及び第2絞り機構34を制御する。
【0035】
次に、プリプロセス回路52と調光回路60、及び第1絞り機構33と第2絞り機構34とが照明光の光量調整を行う過程について説明する。
【0036】
プリプロセス回路52は、撮像信号がもつ画像の明るさに関する情報信号を生成する。調光回路60は、この画像の明るさに関する情報信号に基づき、第1絞り機構33及び第2絞り機構34を制御するための調光信号を生成する。尚、画像の明るさに関する情報信号及びそれに基づく調光信号は、RGB反射光と蛍光のそれぞれの撮像信号において生成される。
【0037】
第1絞り機構33は、蛍光の調光信号に基づいて励起光の照射光の光量調整を行う。このとき、第1絞り機構33は、励起光と同時にRGB光の光量に対しても絞りの効果をもつが、一般に観察対象から発せられる自家蛍光はRGB反射光に比べて光量が非常に少なく、RGB光を最適な光量に調整するためには、第1絞り機構33による光量絞りだけでは不十分である。
【0038】
これに対し、第2絞り機構34は、RGB反射光の撮像信号に基づく調光信号を受けて、光源装置30から発せられるRGB照明光が最適な光量になるように調整する。このとき、第2絞り機構34は、紫外域の励起光に対して透過性をもつため、第1絞り機構33によって調整された励起光の光量に対しては影響を与えない。
【0039】
以上のように、第1形態の内視鏡装置1においては、光源ランプ31から発せられる照明光を回転フィルタ35を通じて励起光及びRGB光を順次照射することにより、観察対象から得られる蛍光画像及び通常画像を同時に撮像し、モニタ100に表示することができる。この場合の観察対象は、主として気管支や消化器等の生体組織であるが、一般に生体組織から発せられる自家蛍光強度は、RGB反射光に比べて非常に微弱であり、画像の明るさを一定に保つために励起光とRGB光を個別に光量調整する必要がある。これに対し、本実施形態における第1絞り機構33は、紫外域の励起光と可視域のRGB光の光量を調整する機能を有しており、第2絞り機構34は、可視域のRGB光に対してのみ光量調整を行うため、1つの光源ランプから発せられる励起光とRGB光との双方の光量を適正に制御し、最適な明るさバランスを得ることができる。
【0040】
また、蛍光画像または通常画像の明るさに応じて励起光とRGB光を同一の絞り機構で制御する場合には、励起光とRGB光のうちどちらかの光量が必要以上に絞られるため、撮像信号に対してゲイン調整を行う必要があり、片方の画像のS/N特性が悪化し、ノイズの多い画像になってしまう。これに対し、本実施形態における内視鏡装置1は、励起光と照明光とを個別に調光可能なため、蛍光画像と通常画像のそれぞれに対して最適な光量が確保でき、撮像信号のゲイン調整を少なくしてノイズの少ない画像を得ることができる。
【0041】
例えば、図1の内視鏡装置1において、内視鏡挿入部10a先端が観察対象5に近い位置で撮像する場合、蛍光及びRGB反射光は観察に十分な光量が得られ、それぞれ第1絞り機構33と第2絞り機構34により適正な光量に調整されるため、プロセッサ50内部で撮像信号をゲイン調整することなく、ノイズの少ない蛍光画像と通常画像とを得ることができる。
【0042】
一方、内視鏡挿入部10a先端から観察対象5までの距離が遠く、励起光を最大の光量で照射しても観察に十分な光量の蛍光が得られない場合には、蛍光による撮像信号に対してゲイン調整を行う必要があるが、この場合においても、十分な光量が得られるRGB反射光は第2絞り機構34によって適正な光量に調整されるため、ゲイン調整を行う必要がなくノイズの少ない通常画像を得ることができる。
【0043】
また、励起光とRGB光に対して個別に絞り機構を設ける必要がないため、1つの光源ランプから照射される照明光を紫外域の励起光と可視域のRGB光に分光する機構を設けるか、もしくは励起光とRGB光に対して2つの専用光源ランプを設ける必要がなく、光源装置の大型化とコスト増加を抑えるという効果も得ることができる。
【0044】
次に、本発明の実施の第2形態について説明する。図5〜図11は本発明の実施の第2形態に係り、図5は内視鏡装置の全体構成図、図6は回転フィルタの構成を示す説明図、図7は第1切替フィルタの分光特性を示す説明図、図8は第2切替フィルタの分光特性を示す説明図、図9は通常画像モード時のフィルタ配置を示す説明図、図10は同時観察モード時のフィルタ配置を示す説明図、図11は各観察モードにおける面順次光の照射タイミングを示す説明図である。
【0045】
第2形態は、前述の第1形態に対し、第1絞り機構33及び第2絞り機構34に代えて、励起光及びRGB光の一部を遮光する絞り機構65を用いるものであり、前述した同一の絞り機構で励起光とRGB光とを制御する場合の問題、すなわち、励起光とRGB光のうちどちらかの光量が必要以上に絞られることに対処するため撮像信号のゲイン調整を行い、その結果として片方の画像のS/N特性が悪化し、ノイズの多い画像になってしまうという問題を回避するため、回転フィルタ35の構成を変更する。
【0046】
尚、第1形態と同様の部材や回路部については同様の番号を付して、その説明を省略する。
【0047】
図5に示すように、第2形態の内視鏡装置1Aは、第1形態における内視鏡装置1とほぼ同じ構成であり、内視鏡10と、第1形態における第1絞り機構33及び第2絞り機構34に代えて、励起光及びRGB光の一部を遮光する絞り機構65を備えると共に、回転フィルタ35に代えて、外周と内周とにそれぞれ異なるフィルタ群を備えた回転フィルタ66を備えた光源装置30Aと、プロセッサ50と、モニタ100とを備えて構成されている。
【0048】
光源装置30Aの絞り機構65は、励起光及びRGB光の両方に対して透過性を持たない素材から構成されている。また、回転フィルタ66は、図6に示すように、外周側の第1切替フィルタ67と、この第1切替フィルタ67よりも小径に形成されて内周側に同心状に配置された第2切替フィルタ68とから構成されている。
【0049】
第1切替フィルタ67は、RGB光及び励起光を透過する4つのバンドパスフィルタ67a,67b,67c,67dを同心円状に配置した構成を有し、内周側の第2切替フィルタ68は、RGB光を透過する3つのバンドパスフィルタ68a,68b,68cが同心円状に配置された構成を有している。
【0050】
第1切替フィルタ67の4つのバンドパスフィルタ67a〜67dのうち、RGB光を透過するバンドパスフィルタ67a,67b,67cは、励起光を透過するバンドパスフィルタ67dよりも低い透過率を有しており、図7に示すように、バンドパスフルタ67dを通過した励起光の光量に対して、バンドパスフィルタ67a,67b,67cを通過したRGB光(R’、G’、B’)の光量が少なくなるように設定されている。
【0051】
尚、第2実施形態における励起光の波長帯域は、第1実施形態とは異なり、紫外域のみではなく青色の可視域の波長帯域を含んでいる。
【0052】
また、第2切替フィルタ68の3つのバンドパスフィルタ68a〜68cは、図8に示すように、第1切替フィルタ67のRGBフィルタ(バンドパスフィルタ67a〜67c)より光量の多いRGB光(R”、G”、B”)を透過する特性に設定されている。
【0053】
以上の構成を有する第2形態における内視鏡装置1Aの動作は、第1形態とほとんど同じであり、通常画像モード及び同時観察モードにおける回転フィルタ66及び絞り機構65に係る動作について、異なる箇所のみ説明する。
【0054】
プロセッサ50の画像処理ユニット51に備えられたCPU62がモード切替スイッチ16による通常画像モードと同時観察モードとの切替え操作を検知し、切替信号を生成すると、この切替信号は、タイミングジェネレータ59を介して光源装置30Aに内蔵されたモータ36の駆動制御回路37に送信される。駆動制御回路37は、選択されたモードに応じて照明光の光路に対する回転フィルタ66の配置を切り替える。尚、画像処理回路57における切替信号受信時の動作は、第1形態と同様である。
【0055】
例えば、駆動制御回路37は、通常画像モードが選択されたことを示す切替信号を受信すると、図9に示すように、回転フィルタ66内周の第2切替フィルタ68のフィルタ群が照明光の光路上に移動するようにモータ36の駆動を制御する。このとき、第2切替フィルタ68のフィルタ群を透過した照明光は、図11に示すように光量の多いR”G”B”の面順次光として、光伝達手段としてのライトガイド11によって観察対象まで伝達されて照射される。
【0056】
また、駆動制御回路37において同時観察モードが選択されたことを示す切替信号が受信されると、図10に示すように、回転フィルタ66外周の第1切替フィルタ67のフィルタ群が照明光の光路上に移動されるようにモータ36の駆動を制御する。このとき。照明光として、図11に示すように、励起光とこの励起光より光量の少ないR’G’B’の面順次光が観察対象に照射される。
【0057】
すなわち、第2形態における波長制限手段としての回転フィルタ66は、外周側の第1切替フィルタ67により、照明光の波長帯域を、蛍光画像を得るための励起光と通常画像を得るための非励起光とに制限し、非励起光の光量を励起光の光量より少ない光量に制限する機能を実現している。
【0058】
一方、第2形態における絞り機構65は、画像処理ユニット51に内蔵された調光回路60からの調光信号に基づき、照明光の一部を遮光することにより光量を調整する。前述したように、第2形態における絞り機構65は、励起光及びRGB光の両方に対して透過性を持たない素材からなり、照明光の光量を調整する光量調整手段を形成している。
【0059】
以上のように、第2形態の内視鏡装置1Aにおいては、回転フィルタ66は、外周のフィルタ群に励起光用フィルタより透過率の低いRGBフィルタを配し、同時観察モードにおいて観察対象から発せられる蛍光とRGB反射光の光量が同等の光量となるように構成されており、撮像素子13に入射する蛍光とRGB反射光がほぼ同等の光量となっている。従って、蛍光を励起するための励起光とRGB光とを個別に光量調整する必要がなく、1つの光源ランプから発せられる励起光とRGB光との双方の光量を、1つの絞り機構65で制御し、第1形態と同様、最適な明るさバランスを得ることができる。
【0060】
この場合、撮像素子に入射する蛍光の光量がRGB反射光の光量に対して非常に微弱な場合、励起光とRGB光とを同一の絞り機構で制御する構成では、撮像素子におけるRGB反射光の飽和を避けるために光量を抑制すると同時に蛍光の光量が極端に少なくなるため、プロセッサ内部でゲイン調整を行う必要があり、蛍光画像のS/N特性が悪化してノイズの多い画像になってしまうという問題があるが、これに対して第2形態では、撮像素子に入射する蛍光とRGB反射光はほぼ同等の光量であるため、RGB反射光の光量を抑制しても蛍光の光量が極端に少なくなることはなく、ゲイン調整によるノイズの増加が少ないという利点がある。
【0061】
尚、以上の各実施形態における撮像ユニット12において、撮像素子13前面(対物レンズ14前面)に配置される励起光カットフィルタ15に代えて、モザイク状のカラーフィルタを備えるようにしても良い。このモザイク状のカラーフィルタを採用する場合には、光源装置30(30A)内に、図12に示すように、蛍光画像を得るための励起光及び通常画像を得るための白色光の波長帯域を透過する2つのバンドパスフィルタ70a,70bを同心円状に配した回転フィルタ70を備える。
【0062】
この回転フィルタ70の回転動作により、励起光及び白色光が面順次光として照射され、撮像素子13はタイミングジェネレータ59により励起光と白色光の照射タイミングに同期して撮像する。モザイク状のカラーフィルタを透過した光は、撮像素子13の各画素で受光され、各画素における撮像信号を画像処理回路57で演算処理することによりカラー画像が生成される。
【0063】
また、各実施形態においては、内視鏡挿入部10aの先端部に1つの撮像ユニット12を備える例について説明したが、図13に示すように、撮像ユニット12と撮像ユニット12’との2つの撮像ユニットを備えるようにしても良い。前面に励起光カットフィルタ15を有する撮像ユニット12は蛍光撮像用とし、励起光カットフィルタを有しない撮像ユニット12’はRGB反射光撮像用として用いる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の第1形態に係り、内視鏡装置の全体構成図
【図2】同上、撮像ユニットの構成を示す説明図
【図3】同上、回転フィルタの構成を示す説明図
【図4】同上、画像処理ユニットの構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施の第1形態に係り、内視鏡装置の全体構成図
【図6】同上、回転フィルタの構成を示す説明図
【図7】同上、第1切替フィルタの分光特性を示す説明図
【図8】同上、第2切替フィルタの分光特性を示す説明図
【図9】同上、通常画像モード時のフィルタ配置を示す説明図
【図10】同上、同時観察モード時のフィルタ配置を示す説明図
【図11】同上、各観察モードにおける面順次光の照射タイミングを示す説明図
【図12】変形例に係り、回転フィルタの構成を示す説明図
【図13】同上、撮像ユニットの構成を示す説明図
【符号の説明】
【0065】
1,1A 内視鏡装置
5 観察対象
10 内視鏡
10a 内視鏡挿入部
11 ライトガイド
12 撮像ユニット
13 撮像素子
30,30A 光源装置
31 光源ランプ
33 第1絞り機構
34 第2絞り機構
35 回転フィルタ
51 画像処理ユニット
65 絞り機構
66 回転フィルタ
67 第1切替フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外域及び可視域を含む照明光を発光する発光手段と、前記照明光の波長帯域を紫外域または可視域の光に制限する波長制限手段を備えた照明手段と、前記照明光を観察対象に伝送する照明伝送手段と、観察対象から発せられる蛍光または反射光を撮像する撮像手段を備えた内視鏡挿入部と、前記撮像手段より得られる撮像信号に基づき、前記蛍光による蛍光画像及び前記反射光による通常画像の合成画像を生成する画像生成手段とを備えた内視鏡装置において、
前記照明光の波長帯域のうち、紫外光及び可視光に対して透過性を持たない素材からなる第1の遮光手段を前記発光手段と前記波長制限手段との間の光路上に備え、
紫外光に対してのみ透過性を有する第2の遮光手段を前記波長制限手段と前記第1の遮光手段との間の光路上に備えたことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
可視領域を含む照明光を発光する発光手段と、前記照明光の光量を調整する光量調整手段を備えた照明手段と、前記照明光を観察対象まで伝達する光伝達手段と、前記観察対象からの光を撮像する撮像手段を備えた内視鏡挿入部と、前記撮像手段により得られる撮像信号から合成画像を生成する画像生成手段とを備えた内視鏡装置において、
前記照明光の波長帯域を制限する波長制限手段を備え、
前記波長制限手段は、前記照明光の波長帯域を、蛍光画像を得るための励起光と通常画像を得るための非励起光とに制限し、前記非励起光を前記励起光より少ない光量に制限することを特徴とする内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−167325(P2007−167325A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368684(P2005−368684)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】