説明

内視鏡装置

【課題】内視鏡先端部からPDD用レーザ光とPDT用レーザ光とを切り替え自在に照射でき、しかもPDT用レーザ光の照準を正確に合わせることができる内視鏡装置を提供する。
【解決手段】被検体内に挿入される内視鏡先端部からスペクトルの互いに異なる複数種の光を被検体に向けて照射し、内視鏡先端部の観察窓から被検体を観察する内視鏡装置であって、光線力学的診断のための診断用レーザ光を出力する第1の光源と、光線力学治療のための治療用レーザ光を出力する第2の光源からの各出射光を、内視鏡先端部に配設された照射窓から被検体に向けて照射する光照射手段と、治療用レーザ光が照射窓から照射される出射角を診断用レーザ光の出射角より小さくする出射角変更手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡の挿入部先端からレーザ光を照射して、患者の体腔内壁に生じた腫瘍を診断・治療する光線力学的診断(Photodynamic Diagnosis:PDD)及び光線力学的治療(Photodynamic Diagnosis:PDD)の技術が開発されている。これらPDD,PDTにおいては、予め腫瘍親和性があり且つ特定の励起光に対して感応する光感受性物質を生体に投与する。PDDにおいては、励起光となる診断用レーザ光を生体組織表面に照射して、癌などの腫瘍が存在する病巣部で光感受性物質の濃度が高くなった部位からの蛍光を観察する。また、PDTにおいては、この蛍光の生じた部位に照準を合わせて特定波長の治療用レーザ光を比較的強い出力で照射して、病巣部の病変組織を破壊する。
【0003】
上記のPDD,PDTを行う内視鏡装置が、例えば特許文献1,2に提案されている。これらの内視鏡装置は、内視鏡挿入部先端の照射窓から診断用のレーザ光を照射することにより病巣部の特定を行った後、治療用レーザ光を出射するPDTプローブを鉗子孔に挿入し、内視鏡先端部から突出させて、特定した病巣部に向けて治療用レーザ光を照射する構成となっている。そのため、治療用レーザ光を特定された病巣部に向けて照射する場合、PDTプローブが内視鏡先端部とは独立して可動状態となるために、治療用レーザ光の照準を合わせにくく、正確に病巣部に合わせ続けることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−130183号公報
【特許文献2】特開2006−94907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、内視鏡先端部から診断用レーザ光と治療用レーザ光とを切り替え自在に照射でき、しかも治療用レーザ光の照準を正確に合わせることができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記構成からなる。
被検体内に挿入される内視鏡先端部からスペクトルの互いに異なる複数種の光を被検体に向けて照射し、前記内視鏡先端部の観察窓から被検体を観察する内視鏡装置であって、
光線力学的診断のための診断用レーザ光を出力する第1の光源と、光線力学治療のための治療用レーザ光を出力する第2の光源からの各出射光を、内視鏡先端部に配設された照射窓から被検体に向けて照射する光照射手段と、
前記治療用レーザ光が前記照射窓から照射される出射角を、前記診断用レーザ光が前記照射窓から照射される出射角より小さくする出射角変更手段と、
を備えた内視鏡装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の内視鏡装置によれば、内視鏡先端部から診断用レーザ光と治療用レーザ光とを任意に切り替えて照射できるため、PDDとPDTを円滑に繰り返し実施することができる。しかも治療用レーザ光の照準を正確に合わせることができ、高効率で確実なPDTが行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡装置の概念的なブロック構成図である。
【図2】図1に示す内視鏡装置の一例としての外観図である。
【図3】PDD,PDTの手技手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】PDD用レーザ光とPDT用レーザ光の照射の様子と、観察画像の一例を模式的に示す説明図である。
【図5】PDD用レーザ光の照射、白色光の照射、PDT用レーザ光の照射のタイミングを示すタイムチャートである。
【図6】PDD用レーザ光の照射、白色光の照射、PDT用レーザ光の照射のタイミングを示すタイムチャートである。
【図7】PDD用レーザ光の照射、白色光の照射、PDT用レーザ光の照射のタイミングを示すタイムチャートである。
【図8】PDD用レーザ光の照射、白色光の照射、PDT用レーザ光の照射のタイミングを示すタイムチャートである。
【図9】PDD用レーザ光の照射、白色光の照射、PDT用レーザ光の照射のタイミングを示すタイムチャートである。
【図10】他の構成の内視鏡装置の概念的なブロック構成図である。
【図11】(A)は光ファイバの光出射端の模式的な拡大断面図、(B)は光ファイバの光出射端部の平面図である。
【図12】白色照明光を生成するレーザ光源を複数設けた光源装置周辺の構成例を示す概略的なブロック構成図である。
【図13】白色照明光と、中心波長405nmのレーザ光とを蛍光体から出射させる光源装置周辺の構成例を示す概略的なブロック構成図である。
【図14】内視鏡先端部の照射窓を4箇所に設けた場合の光源装置周辺の構成例を示す概略的なブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡装置の概念的なブロック構成図、図2は図1に示す内視鏡装置の一例としての外観図である。
図1、図2に示すように、内視鏡装置100は、内視鏡11と、この内視鏡11が接続される制御装置13とを有する。制御装置13には、画像情報等を表示する表示部15と、入力操作を受け付ける入力部17が接続されている。内視鏡11は、被検体内に挿入される内視鏡挿入部19の先端から照明光を出射する照明光学系と、被観察領域を撮像する撮像素子21(図1参照)を含む撮像光学系とを有する、電子内視鏡である。
【0010】
また、内視鏡11は、内視鏡挿入部19と、内視鏡挿入部19の先端の湾曲操作や観察のための操作を行う操作部23(図2参照)と、内視鏡11を制御装置13に着脱自在に接続するコネクタ部25A,25Bを備える。なお、図示はしないが、操作部23及び内視鏡挿入部19の内部には、組織採取用処置具等を挿入する鉗子チャンネルや、送気・送水用のチャンネル等、各種のチャンネルが設けられる。
【0011】
内視鏡挿入部19は、可撓性を持つ軟性部31と、湾曲部33と、先端部(以降、内視鏡先端部とも呼称する)35から構成される。内視鏡先端部35には、図1に示すように、被観察領域へ光を照射する照射窓37A,37B,37Cと、観察窓38を通して被観察領域の画像情報を取得するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子21が配置されている。なお、観察窓38と撮像素子21の間には特定の波長成分を制限する光カットフィルタ42と対物レンズユニット39とが配置される。
【0012】
内視鏡挿入部19の湾曲部33は、軟性部31と先端部35との間に設けられ、図2に示す操作部23に配置されたアングルノブ22の回動操作により湾曲自在にされている。この湾曲部33は、内視鏡11が使用される被検体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲でき、内視鏡先端部35の照射窓37A,37B,37Cの光照射方向、及び観察窓38による撮像素子21の観察方向を所望の観察部位に向けることができる。
【0013】
制御装置13は、内視鏡先端部35の照射窓37A,37B,37Cに光を供給する光源装置41と、撮像素子21からの画像信号を画像処理するプロセッサ43とを備え、コネクタ部25A,25Bを介して内視鏡11に接続される。また、プロセッサ43には、前述の表示部15と入力部17が接続されている。プロセッサ43は、内視鏡11の操作部23や入力部17からの指示に基づいて、内視鏡11から伝送されてくる撮像信号を画像処理し、表示用画像を生成して表示部15へ供給する。
【0014】
光源装置41は、互いに中心発光波長の異なる複数のレーザ光源を有し、本構成例においては、図1に示すように、中心発光波長が445nmのレーザ光源LD1、405nmのレーザ光源LD2、665nmのレーザ光源LD3を備えている。LD1は青色レーザ光を出射して後述する波長変換部材により白色照明光を生成する白色照明用光源であり、LD2は光線力学的診断(PDD)を行うための診断用レーザ光(以下、PDD用レーザ光と呼称する)を出力する光源で、紫色レーザ光を出射する特殊光観察用の光源としても用いる。また、LD3は、治療用レーザ光(以下、PDT用レーザ光と呼称する)を比較的強い出力で生体組織表面に照射して癌などの腫瘍を治療する光線力学的治療(PDT)を行うための光源である。
【0015】
PDDにおいては、生体に投与され腫瘍親和性があり且つLD2のレーザ光の波長に対して感応する光感受性物質が、癌などの腫瘍の病巣部で濃度が高くなった部位で励起発光するので、この励起発光光を検出することで、患者の病巣部の位置を特定する。このPDDにより特定された病巣部に対して、LD3によるPDT用レーザ光の照射が施される。
【0016】
これらLD1〜LD3の光源は、光源制御部49によりそれぞれ個別に調光制御されており、各レーザ光線の出射タイミングや出射光量比は任意に変更自在になっている。
【0017】
上記のレーザ光源LD1〜LD3としては、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオード等を用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオード等の発光体を用いた構成としてもよい。なお、白色照明光は、レーザ光源LD1と波長変換部材に代えてキセノンランプやハロゲンランプ等を用いることもできる。
【0018】
また、LD3の中心発光波長は620〜680nmの範囲であればよい。なお、LD2,LD3の波長は使用する薬剤に応じて適宜選定する。例えば表1に示すように、フォトフリン(及び5−ALA(アミノレブリン酸))の場合、LD2の中心発光波長は405nm、LD3は630nmの波長成分を含むようにする。また、レザフィリンの場合、LD2の中心発光波長は405nm、LD3は664nmの波長成分を含むようにする。
【0019】
【表1】

【0020】
これらLD1〜LD3から出射されるレーザ光は、集光レンズ(図示略)によりそれぞれ光ファイバ36A,36B,36Cに入力されコネクタ部25Aに伝送される。コネクタ部25Aから内視鏡先端部35までの間は光ファイバ55A,55B,55Cが延設されており、LD1からのレーザ光は光ファイバ55Aに、LD2からのレーザ光は光ファイバ55Bに、LD3からのレーザ光は光ファイバ55Bにそれぞれ導入される。LD1からのレーザ光は、内視鏡先端部35に配置された波長変換部材である蛍光体57に照射されて照射窓37Aから白色光が出射される。LD2,LD3からのレーザ光は、光偏向・拡散部材58A,58Bを通して照射窓37B,37Cからそれぞれ出射される。
【0021】
光ファイバ36A,36B,36C、及び55A,55B,55Cはマルチモードファイバであり、例えば、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径がφ0.3〜0.5mmの細径なファイバケーブルを使用できる。
【0022】
なお、LD1〜LD3の各光源の発光波長や組み合わせは、内視鏡装置100の使用目的に応じて適宜変更が可能である。
【0023】
蛍光体57は、LD1からの青色レーザ光の一部を吸収して緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体物質(例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光体)を含んで構成される。これにより、青色レーザ光を励起光とする緑色〜黄色の励起発光光と、蛍光体57により吸収されず透過した青色レーザ光とが合わされて、白色(疑似白色)の照明光が生成される。
【0024】
ここで、本明細書でいう白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限らず、例えば、基準色であるR(赤),G(緑),B(青)等、特定の波長帯の光を含むものであればよく、例えば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光等も広義に含むものとする。
【0025】
また、蛍光体57は、レーザ光の可干渉性により生じるスペックルに起因して、撮像の障害となるノイズの重畳や、動画像表示を行う際のちらつきの発生を防止できる。上記の蛍光体57としては、蛍光体を構成する蛍光物質と、充填剤となる固定・固化用樹脂との屈折率差を考慮して、蛍光物質そのものと充填剤に対する粒径を、赤外域の光に対して吸収が小さく、かつ散乱が大きい材料で構成することが好ましい。これにより、赤色や赤外域の光に対して光強度を落とすことなく散乱効果が高められ、光学的損失が小さくなる。
【0026】
光偏向・拡散部材58A,58Bは、LD2,LD3からのレーザ光を透過させる材料であればよく、例えば透光性を有する樹脂材料やガラス等が用いられる。さらには、光偏向・拡散部材58A,58Bは、樹脂材料やガラスの表面等に、微小凹凸や屈折率の異なる粒子(フィラー等)を混在させた光拡散層を設けた構成や、半透明体の材料を用いた構成としてもよい。これにより、光偏向・拡散部材58から出射する透過光は、所定の照射領域内で光量が均一化される。
【0027】
また、これら光偏向・拡散部材58A,58Bは、治療用のPDT用レーザ光が、特殊光観察用及び診断用のPDD用レーザ光よりも狭い範囲に照射されるように、光学特性を相互に異ならせている。つまり、光偏向・拡散部材58Bから出射する光の出射角(出射光軸からの広がり角)が、光偏向・拡散部材58Aから出射する光の出射角より小さくなるように、各光偏向・拡散部材58A,58Bに相互に異なるレンズ効果を持たせている。即ち、光偏向・拡散部材58Aは光の出射角を拡げ、光偏向・拡散部材58Bは光の出射角を狭める光学レンズ部材として機能している。
【0028】
上記のようにLD1からの青色レーザ光と蛍光体57からの励起発光光による白色光、及びLD2,LD3からの各レーザ光は、内視鏡先端部35の照射窓37A,37B,37Cから被検体の被観察領域に向けてそれぞれ照射される。各レーザ光の出射の切り替えは、内視鏡11に設けたスイッチ80の操作により行う。そして、照明光が照射された被観察領域の様子は、観察窓38から光カットフィルタ42を通じて対物レンズユニット39により撮像素子21の受光面上に結像されて、撮像画像が生成される。
【0029】
光カットフィルタ42は、LD3から比較的高強度で出力されるPDT用レーザ光の波長成分の透過を制限し、可視光域の光は透過させる光学特性を有している。なお、光カットフィルタ42としては、PDT用レーザ光の透過を制限する他に、PDD用レーザ光の透過も制限する光学特性を持たせてもよく、また、PDD用レーザ光だけの透過を制限する光学特性としてもよい。
【0030】
この撮像素子21から出力される撮像画像の画像信号は、スコープケーブル59を通じてA/D変換器61に伝送されてデジタル信号に変換され、コネクタ部25Bを介してプロセッサ43の画像処理部63に入力される。画像処理部63は、デジタル信号に変換された撮像素子21からの撮像画像信号に対して、ホワイトバランス補正、ガンマ補正、輪郭強調、色補正等の各種処理を施す。画像処理部63で処理された撮像画像信号は、制御部65に送られて、制御部65で各種情報と共に内視鏡観察画像にされて表示部15に表示され、必要に応じて、メモリやストレージ装置からなる記憶部67に記憶される。
【0031】
次に、上記構成の内視鏡装置を用いてPDD,PDTの手技を行う手順を説明する。
図3にPDD,PDTの手技手順の一例をフローチャートで示した。このフローチャートに基づけば、まず、図1に示すLD1から青色レーザ光を出射して、蛍光体57を有する照射窓37Aから白色光を照射する。また、LD2からPDD用レーザ光である紫色レーザ光(狭帯域光)を照射して照明光とする特殊光観察を行うことにより、組織表層の毛細血管が強調され血管構造が観察しやすくなる。
【0032】
上記のように、白色光による通常観察、又は白色光に青色レーザ光や紫色レーザ光を加えた照明光による特殊光観察を行い(S1)、内視鏡先端部を患部位置まで進入させる。そして、内視鏡先端部が患部付近に到達したときに、LD1からの光出力を停止して、LD2からのPDD用レーザ光を照射する(S2)。すると、患者に投与された光感受性物質の濃度が高くなる病巣部がPDD用レーザ光により励起発光するので、PDDによる蛍光検出によって病巣部の有無を確認する(S3)。
【0033】
これを病巣部が発見されるまで繰り返す。病巣部が発見された場合、病巣部に内視鏡先端部を近づけ、病巣部にPDT用レーザ光照射の照準を合わせる(S4)。具体的には、PDT用レーザ光の照射領域が、照射面上でφ20mm以下の範囲になるように、PDD用レーザ光を照射して確認しつつ内視鏡挿入部の位置を調整する。本構成の内視鏡装置100では、内視鏡先端部35にPDD用レーザ光とPDT用レーザ光を出射する照射窓が配置されているため、内視鏡先端部35の向きを変更することでPDT用レーザ光の照準を簡単に合わせることができる。
【0034】
そして、病巣部にPDTレーザ光の照準を合わせた後、LD3を駆動してPDT用レーザ光を照射窓37A,37Bから病巣部に向けて比較的高強度で照射する(S5)。このとき、観察窓38から取り込まれる光は、光カットフィルタ42によりPDT用レーザ光の成分が遮光されて撮像素子21への導入が制限される。なお、PDT用レーザ光の照射時は、PDT用レーザ光のみ照射する以外にも、PDD用レーザ光、白色光のいずれか又は双方を同時に照射することで、観察画像を飽和させることなく適正な露出で観察を続けることができる。
【0035】
図4にPDD用レーザ光とPDT用レーザ光の照射の様子と、観察画像の一例を模式的に示した。図示のように、被検体71の被観察領域となる生体組織表層にPDD用レーザ光を照射した場合、観察画像上では、光感受性物質濃度が高い病変部73から蛍光が生じ、この蛍光により明るく映出される。一方、病変部73以外の領域75は蛍光を発しないために暗く映出される。このときの観察画像により病変部の位置を特定して、この病変部73の特定の狭い領域(直径20mm以下)に向けてPDT用レーザ光を照射する。PDT用レーザ光を照射すると、PDT用レーザ光の照射領域77から、PDT用レーザ光の反射光が観察窓38(図1参照)に向かうが、光カットフィルタ42によりPDT用レーザ光の反射光が遮光されて観察画像には現れない。一方、PDD用レーザ光の照射により発生する蛍光は光カットフィルタ42を透過して観察画像に現れる。
【0036】
このように、本構成によれば、フォトフリンや5−ALAを蛍光薬剤として利用した場合、PDT用レーザ光の照射中でも、PDD用レーザ光を照射し続けることで、観察画像を図1に示す表示部15に映出させることができる。そして、PDT用レーザ光の照射により病巣部の治療が進むと、PDT用レーザ光の照射領域における光感受性物質濃度が低下して、発生する蛍光量が減少する様子が動的に観察できる。つまり、治療の進行に伴って観察画像におけるPDT用レーザ光の照射領域77からの蛍光が徐々に暗くなり、PDT用レーザ光の照射領域77からのPDD用レーザ光による蛍光の減少、即ち、治療の進行度合いが観察画像上でリアルタイムに確認できる。
【0037】
従って、PDT用レーザ光の照射中に、PDD用レーザ光による蛍光の減少の様子から間接的に、PDT用レーザ光の照射位置ずれの有無を確認できる。これにより、例えば照射位置にずれが生じた場合に、内視鏡11を操作してPDT用レーザ光が病巣部に正しく照射されるように随時調整することも可能になる。
【0038】
また、光カットフィルタ42を設けずに、白色光とPDD用レーザ光とを照射したときと同じ撮像条件でPDT用レーザ光を照射して撮像することもできる。その際、近接ズーム観察時等に観察画像がハレーションを起こすこともあるが、その場合には、撮像素子の電子シャッタ機能を利用してPDT用レーザ光照射時における撮像素子の電荷蓄積時間を短縮する制御を行うと、適正露出の観察画像が得られるようになる。また、白色光とPDD用レーザ光照射時と、PDT用レーザ照射時とで回路ゲインを変更することでも適正露光に制御できる。さらに、電子シャッタと回路ゲインの変更を同時に行うことで撮像条件を簡単に適正化することができる。勿論、PDT用レーザ光照射とPDD用レーザ光の照射を交互に行う場合は、各光の照射時にそれぞれ露出を適正にして撮像してもよく、これにより常に適正なPDD観察を行うことができる。
【0039】
上記の光カットフィルタ42を設けない構成とすれば、例えば蛍光薬剤としてレザフィリンを用いて、PDT治療光の波長とPDD蛍光の波長が近くなる場合であってもPDDを行うことができる。つまり、レザフィリンからの蛍光が光カットフィルタ42により遮光されることがなくなり、撮像素子で検出できるようになる。
【0040】
病巣部にPDT用レーザ光を照射して所定時間が経過した後(S6)、LD3によるPDT光の照射を停止して(S7)、PDTを終了する。そして、PDD用レーザ光の照射により、病巣部であった位置からの蛍光の有無を確認する。病巣部の位置から蛍光が発生する場合は、再び病巣部に向けてPDT光を照射する等の処置を行い、蛍光が観察されなかった場合は、病巣部が根治したものとして処置を終了する(S8)。
【0041】
上記のように、内視鏡挿入部を患者の体腔内に挿入したままの状態で、通常観察又は特殊光観察、PDD、PDTの各処置を連続して実施することができる。しかも、PDDを行う場合と、PDTを行う場合とを、スイッチ80の操作等により早急に切り替えることができ、また、内視鏡挿入部19の湾曲部33の湾曲動作、或いは必要に応じて進退動作させることにより、PDT用レーザ光を所望の領域に正確に照準させることができる。これにより、手技を効率良く、正確かつ迅速に実施でき、患者への負担を軽減できる。
【0042】
ここで、特殊光観察、蛍光観察について詳細に説明する。
特殊光観察は、生体組織に関連して設定された特定の波長帯の光を照射して、通常の白色照明光からは得られない生体組織の情報を抽出する観察方法である。例えば、400nm程度の短波長における狭帯域光の照射により、粘膜表層の毛細血管像の強調表示や、粘膜表面の微細模様(ピットパターン等)の強調表示が行える。これは、血管内の血液中のヘモグロビンが可視波長域のうち415nmの光を強く吸収し、生体組織が短い波長(青)から長い波長(赤)にかけて散乱が弱くなる傾向があるためである。例えば波長415nmの光は、血管位置に照射されるとヘモグロビンによる強い吸収を受けて殆ど光が粘膜表面に返ってこない。一方、血管の周囲組織からは、光が生体組織内を殆ど拡散せずに反射、散乱光として返ってくる。このため、血管像が高いコントラストで映出される。一方、長い波長(例えば波長500nm程度)の光は、415nmに比較してヘモグロビンによる吸収が弱く、血管位置に入射した光の一部は血管を透過して周辺組織により散乱し、生体組織内を広く深く拡散していく。このため、表層の毛細血管観察用に短波長の狭帯域光が利用され、太い血管の観察用に長波長の狭帯域光が利用される。
【0043】
蛍光観察は、励起光を生体に照射して、生体組織に存在する蛍光物質からの自家蛍光、又は生体に注入した薬剤からの薬剤蛍光の蛍光強度やスペクトルに基づいて診断する観察方法である。生体組織には、チロシン、トリプトファン、NADH、FAD、コラーゲン、エラスチン等の蛍光物質が含まれており、自家蛍光では、これらの蛍光成分が重なって観察される。蛍光強度は、腫瘍性病変の変化を粘膜上皮の肥厚や血流量の増大として間接的に表した指標となり、正常粘膜の自家蛍光強度に比較して腫瘍からの自家蛍光強度は著しく減弱する。腫瘍性組織は正常組織に比べて血液量が豊富であり、血液中に含まれるヘモグロビンが青色の光を強く吸収するため蛍光物質に届く励起光が弱くなり、自家蛍光が減弱する。また、腫瘍性組織は低酸素状態にあるといわれており、フラビンの酸化還元反応によっても蛍光強度が減弱する。
【0044】
さらに、近赤外光を用いて生体深部を観察する技術もある。光が生体に照射されると、散乱や吸収を受けて減衰する。散乱による光の減衰は波長の関数となっており、波長が長い近赤外の光は比較的散乱が弱いため、波長が短い光よりも生体深部まで浸透する。血液中に含まれるヘモグロビンは、青色光を良く吸収する一方、赤〜近赤外域の光をあまり吸収しないため、生体組織深部の観察には近赤外光が適している。また、近赤外光を吸収する薬剤としてICG(インドシアニングリーン)があり、血管造影剤等に利用されている。病変部にICGを局注すれば、血流方向や範囲を把握できるため、診断や治療に利用することができる。このように近赤外光は、生体組織への照射によりヘモグロビンが多量に存在する太い静脈を良好に映出でき、さらにICGを血管内投与することにより、血管をよりコントラスト良く観察することができる。
【0045】
次に、LD1,LD2,LD3からのレーザ光の照射タイミングについて説明する。
PDD用レーザ光の照射、白色光の照射、PDT用レーザ光の照射タイミングは、撮像素子による撮像フレームと同期して切り替えることが好ましい。図5〜図9にそれぞれ照射タイミングの例を示した。図5に示すパターンにおいては、撮像フレームの奇数フレームでPDD用レーザ光と白色光とを照射して撮像し、偶数フレームでPDT用レーザ光を照射して撮像する。この場合、奇数フレームにて、通常観察時の画像とPDDの蛍光とが重畳された画像を取得でき、これにより、白色光による照明によって観察場所の確認が容易となり、蛍光を発する病巣部の位置の把握が簡単に行える。そして、偶数フレームにて、PDT用レーザ光の照射の様子が映出した画像を取得できる。これら奇数フレームと偶数フレームを一枚の画像情報として重ねて表示することで、通常観察時の観察画像上にPDD、PDTを実施している画像を同時に表示できる。これによれば、PDD,PDTを高い視認性でより円滑に行うことができる。
【0046】
また、図6に示すパターンでは、図5のパターンの偶数フレームで白色光をPDT用レーザ光と合わせて照射している。これによれば、偶数フレームにおけるPDT時の観察画像が、白色光により色再現性が高められ、より自然な画像として取得することができる。
【0047】
なお、上記の偶数フレームの画像と、奇数フレームの画像とを一枚の画像情報として重ね合わせずに、表示部15の表示領域内で、それぞれ別々の位置に表示させることもできる。その場合には、病巣部位と治療部位をそれぞれ確認する等、双方を対比させながら観察や治療を行うことができる。
【0048】
次に、図7に示すパターンでは、第1フレームはPDD用レーザ光と白色光とを照射して観察し、第2フレームから第NフレームまでのフレームはPDT用レーザ光を照射して治療を実施する。このパターンによれば、PDT用レーザ光の連続照射により治療効率を向上できる。
【0049】
図8に示すパターンでは、第1フレームは白色光を照射し、第2フレームはPDD用レーザ光を照射してPDD観察を行い、第3フレームから第NフレームまでのフレームはPDT用レーザ光を照射して治療を実施する。これによれば、白色光を照射するフレームとPDD用レーザ光を照射するフレームを異ならせて、PDD時の微弱な蛍光をも容易に観察できるようになる。
【0050】
図9に示すパターンでは、白色光を連続して点灯させたまま、第1フレームはさらにPDD用レーザ光を照射して観察し、第2フレームから第NフレームまでのフレームはPDD用レーザ光をの照射を停止してPDT用レーザ光を照射して治療を実施する。このパターンによれば、PDT用レーザ光の連続照射により治療効率を向上できる。
【0051】
次に、内視鏡装置の他の構成例を説明する。
図10は他の構成の内視鏡装置の概念的なブロック構成図である。なお、以降の説明では、図1と共通する構成要素に対しては同一の符号を付与することで、その説明を省略又は簡略化する。
この内視鏡装置200は、LD2,LD3からの出力光をコンバイナ51により合波してから内視鏡先端部35に伝送する点と、LD2,LD3からの出力光を伝送する光ファイバを1系統に纏めてダブルクラッドファイバを用いる点で図1に示す内視鏡装置100と異なる以外は、同一の構成となっている。即ち、内視鏡先端部35は、白色光照射用の照射窓37Aと、PDD用レーザ光及びPDT用レーザ光の共通の照射窓37Dを備えている。照射窓37Dには、PDD用レーザ光源であるLD2と、PDT用レーザ光源であるLD3からの各出力光が合波された光が供給される。つまり、LD2とLD3からの各出力光をコンバイナ51により合波して、光ファイバ36Dを通じてコネクタ部25Aに伝送する。そして、内視鏡11側では、合波された出力光がコネクタ部25Aから光ファイバ55Dを通じて内視鏡先端部35の照射窓37Dまで伝送される。
【0052】
なお、光ファイバ55Dの光出射端には透光性を有する保護ガラス81が配置され、この保護ガラス81を通じてPDD用レーザ光、PDT用レーザ光が出射される。
【0053】
図11(A)に光ファイバ55Dの光出射端の模式的な拡大断面図、図11(B)に光出射端部の平面図を示した。光ファイバ55Dは、コア83の外側を覆う第1クラッド85と、第1クラッド85の外側を覆う第2クラッド87との互いに屈折率の異なる二重構造のクラッドを有するダブルクラッドファイバである。なお、第2クラッド87の外側は外皮89で覆われており、コア83及び各クラッド85,87の屈折率は、第2クラッド87、第1クラッド85、コア83の順で大きくされている。
【0054】
この光ファイバ55Dによれば、LD3からのPDT用レーザ光(中心波長664nm)がコア83内で伝送され、光出射端から出射角αで出射される。また、LD2からのPDD用レーザ光(中心波長405nm)がコア83及び第1クラッド85内で伝送され、光出射端から出射角αで出射される。つまり、光ファイバ55D内を伝送された光が、波長の違いによってコア83内か、コア83及び第1クラッド85内かに分類されて、それぞれ異なる出射角で出射される。
【0055】
従って、光ファイバ55Dの光出射端からPDD用レーザ光が出射角αで出射され、PDT用レーザ光が出射角αで出射されるようになる。そして、出射された光は保護ガラス81を通じて被検体に照射される。
【0056】
本内視鏡装置200の構成によれば、PDD用レーザ光とPDT用レーザ光とを同じ光路から出射させることができ、PDT用レーザ光の照準を、PDD用レーザ光の出射光軸に合わせることで、簡単かつ正確にPDT用レーザ光を所望の位置に照射できる。なお、光ファイバ55Dのコア83及び各クラッド85,87の屈折率の順を上記とは逆にすると、各レーザ光の出射角の関係も逆にできる。
【0057】
次に、光源装置41の他の構成例について説明する。
光源装置41のレーザ光源は、LD1,LD2,LD3の3つに限らず、さらに増設することができる。
図12は白色照明光を生成するレーザ光源を複数設けた光源装置周辺の構成例を示している。この光源装置41Aは、中心波長445nmのレーザ光を出力するレーザ光源LD1−1,LD1−2を備えている。そして、各レーザ光源LD1−1,LD1−2から出力されるレーザ光は、コンバイナ51Aによって合波され、光ファイバ36A,55Aを通じて内視鏡先端部の蛍光体57に照射される。
【0058】
この光源装置41Aによれば、複数のレーザ光源LD1−1、LD1−2から出力されるレーザ光を合波することで、レーザ光源の個体差による波長のばらつきが抑えられ、蛍光体57の発光の色味変化が抑制できる。
【0059】
また、図13は白色照明光と、中心波長405nmのレーザ光とを蛍光体57から出射させる光源装置周辺の構成例を示している。この光源装置41Bは、白色照明光を生成する中心波長445nmのレーザ光源LD1−1,LD1−2と、特殊光観察及びPDD用の中心波長405nmのレーザ光源LD2−1,LD2−2を備えている。そして、各レーザ光源LD1−1,LD1−2,LD2−1,LD2−2から出力されるレーザ光は、コンバイナ51Bによって合波され、光ファイバ36A,55Aを通じて内視鏡先端部の蛍光体57に照射される。なお、蛍光体57はLD2−1,LD2−2の波長成分に対しては吸収の少ない特性のものを用いる。これにより、LD2−1,LD2−2からの出力光が蛍光体57に照射されると、蛍光体57の励起を抑えて拡散して出射されるようになる。
【0060】
この光源装置41Bによれば、前述した蛍光体57の発光の色味変化が抑制できるとともに、LD2−1,LD2−2からの出力光を拡散させて出射することができる。また、同じ波長の光源を複数備えることで、いずれか一方の光源が故障しても他方の光源で手技を続行、或いは手技の終了処理を行うことができる。
【0061】
また、図14は、内視鏡先端部の照射窓を4箇所に設けた場合の光源装置周辺の構成例を示している。この光源装置41Cは、白色照明光を生成する中心波長445nmのレーザ光源LD1−1,LD1−2と、特殊光観察及びPDD用の中心波長405nmのレーザ光源LD2と、PDT用レーザ光源LD3をと備える。LD2とLD3からの出力光はコンバイナ51により合波され、カプラ53により複数の光路に分波されて、各光路の光出射端に配置された光偏向・拡散部材58から出射される。また、LD1−1,LD1−2からの出力光も同様にコンバイナ51Aにより合波され、カプラ53Aにより複数の光路に分波されて、各光路の光出射端に配置された蛍光体57,57によって白色照明光が生成される。
【0062】
この光源装置41Cと蛍光体57及び光偏向・拡散部材58によれば、同種の光を出射する照射窓を複数有することで、被検体の広い範囲に対してむらなく光を照射でき、観察画像に影が生じることを防止できる。
【0063】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0064】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1)被検体内に挿入される内視鏡先端部からスペクトルの互いに異なる複数種の光を被検体に向けて照射し、前記内視鏡先端部の観察窓から被検体を観察する内視鏡装置であって、
光線力学的診断のための診断用レーザ光を出力する第1の光源と、光線力学治療のための治療用レーザ光を出力する第2の光源からの各出射光を、内視鏡先端部に配設された照射窓から被検体に向けて照射する光照射手段と、
前記治療用レーザ光が前記照射窓から照射される出射角を、前記診断用レーザ光が前記照射窓から照射される出射角より小さくする出射角変更手段と、
を備えた内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、同一の内視鏡先端部から診断用レーザ光と治療用レーザ光とを任意に切り替えて照射でき、光線力学的診断と光線力学的治療とを円滑に繰り返し実施することができる。また、診断用レーザ光と治療用レーザ光が共に内視鏡先端部の照射窓から出射されるため、光の出射方向を内視鏡の先端部の向きで調整でき、治療用レーザ光の照準を合わせる作業が簡単になる。しかも治療用レーザ光が診断用レーザ光の照射範囲より狭い特定の範囲に照射されるので、光線力学的診断時と光線力学的治療時で内視鏡先端部を進退移動させる等の手間を省くことができ、高効率で確実な診断、治療が行える。
【0065】
(2) (1)の内視鏡装置であって、
前記光照射手段が、
前記治療用レーザ光と前記診断用レーザ光とを合波する合波手段と、
前記合波後のレーザ光を前記内視鏡先端部に伝送する光ファイバと、を備えた内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、治療用レーザ光と診断用レーザ光を合波して光ファイバに導入するため、内視鏡先端部へ伝送する光路を一つに纏めることができる。これにより、内視鏡先端部の細径化が図られる。
【0066】
(3) (2)の内視鏡装置であって、
前記光ファイバが、コアの外側を覆う第1クラッドと、該第1クラッドの外側を覆う第2クラッドとの互いに屈折率の異なる二重構造のクラッドを有し、
前記治療用レーザ光が前記コア内で伝送され、
前記診断用レーザ光が前記コア及び前記第1クラッド内で伝送されて、
前記伝送された治療用レーザ光及び診断用レーザ光を、前記光ファイバの光出射端からそれぞれ異なる出射角で出射する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、伝送するレーザ光の波長に応じて、コア内、コア及び第1クラッド内の異なる領域で伝送されるようになり、光ファイバの光出射端から出射する際に、互いに異なる出射角となる。
【0067】
(4) (1)の内視鏡装置であって、
前記出射角変更手段が、前記診断用レーザ光の光路途中、前記治療用レーザ光の光路途中の少なくともいずれかに配置された光学レンズ部材である内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、光路途中に配置された光学レンズ部材により、診断用レーザ光と治療用レーザ光の照射窓からの出射角を簡単な構成で変更できる。
【0068】
(5) (1)〜(4)のいずれかの内視鏡装置であって、
前記光照射手段へ更に白色光を供給する白色照明用光源を備えた内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、照射窓から白色光を出射させるための光が白色照明用光源から供給され、白色光照明(通常照明)を行うことができる。
【0069】
(6) (5)の内視鏡装置であって、
前記内視鏡先端部に、前記診断用レーザ光及び前記治療用レーザ光を出射する第1の照射窓と、
前記白色光を出射する第2の照射窓と、が配置された内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、診断用レーザ光と治療用レーザ光とを共に第1の照射窓から共通の光学系を通して出射させるため、内視鏡先端部の細径化が図られる。また、治療用レーザ光が診断用レーザ光と同じ照射窓から出射されるため、治療用レーザ光の照準が合わせやすくなる。また、診断用レーザ光及び治療用レーザ光とは異なる照射窓から白色光を出射させるため、照明光の照射方向や照射窓の配置等の設計自由度が向上する。
【0070】
(7) (6)の内視鏡装置であって、
前記白色照明用光源が出射する白色照明用レーザ光の一部が、前記第2の照射窓の内側に配置された波長変換部材により波長変換され、該波長変換された光と前記白色照明用レーザ光とによって白色光が生成される内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、白色照明用レーザ光と、波長変換部材により波長変換された光とによって、高効率で高輝度な白色光を生成することができる。また、診断用レーザ光と治療用レーザ光を白色光とは別の照射窓から出射させるため、波長変換部材を診断用レーザ光と治療用レーザ光の光路途中に設けずに済み、これにより、診断用レーザ光と治療用レーザ光の光損失を抑え不要光の発生を防止できる。
【0071】
(8) (7)の内視鏡装置であって、
前記白色照明用光源が複数備えられ、それぞれの白色照明用光源からの出射光を合波して前記光照射手段に供給する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、白色照明用光源の個体差により発光波長に誤差が生じる場合でも、複数の白色照明用光源を合波させることで誤差が平均化され、蛍光体の励起発光の色味が規定通りの色味に保たれる。これにより、発生させる白色照明光を、高精度に規定通りの色調にできる。
【0072】
(9) (5)〜(8)のいずれかの内視鏡装置であって、
前記観察窓から被検体を撮像する撮像素子と、
前記診断用レーザ光、前記治療用レーザ光、及び前記白色光の各出射タイミングを前記撮像素子の撮像タイミングと同期して制御する光源制御部を備えた内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、光源制御部が撮像素子の撮像タイミングと同期して光照射することで、病巣部の観察と治療とを同時に行うことができる。例えば、治療用レーザ光の照射による治療が進むにつれて、診断用レーザ光による蛍光の発生が減少する様子をリアルタイムで観察しながら治療を進めることができる。
【符号の説明】
【0073】
11 内視鏡
13 制御装置
19 内視鏡挿入部
21 撮像素子
35 内視鏡先端部
36A,36B,36C,36D 光ファイバ
37A,37B,37C,37D 照射窓
41,41A,41B,41C 光源装置
42 光カットフィルタ
43 プロセッサ
49 光源制御部
51 コンバイナ
53 カプラ
55,55A,55B,55C,55D光ファイバ
57 蛍光体(波長変換部材)
58A,58B 光偏向・拡散部材
65 制御部
71 被検体
73 病変部
75 病変部以外の領域
77 PDT用レーザ光の照射領域
80 スイッチ
81 保護ガラス
83 コア
85 第1クラッド
87 第2クラッド
100,200 内視鏡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される内視鏡先端部からスペクトルの互いに異なる複数種の光を被検体に向けて照射し、前記内視鏡先端部の観察窓から被検体を観察する内視鏡装置であって、
光線力学的診断のための診断用レーザ光を出力する第1の光源と、光線力学治療のための治療用レーザ光を出力する第2の光源からの各出射光を、内視鏡先端部に配設された照射窓から被検体に向けて照射する光照射手段と、
前記治療用レーザ光が前記照射窓から照射される出射角を、前記診断用レーザ光が前記照射窓から照射される出射角より小さくする出射角変更手段と、
を備えた内視鏡装置。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡装置であって、
前記光照射手段が、
前記治療用レーザ光と前記診断用レーザ光とを合波する合波手段と、
前記合波後のレーザ光を前記内視鏡先端部に伝送する光ファイバと、を備えた内視鏡装置。
【請求項3】
請求項2記載の内視鏡装置であって、
前記光ファイバが、コアの外側を覆う第1クラッドと、該第1クラッドの外側を覆う第2クラッドとの互いに屈折率の異なる二重構造のクラッドを有し、
前記治療用レーザ光が前記コア内で伝送され、
前記診断用レーザ光が前記コア及び前記第1クラッド内で伝送されて、
前記伝送された治療用レーザ光及び診断用レーザ光を、前記光ファイバの光出射端からそれぞれ異なる出射角で出射する内視鏡装置。
【請求項4】
請求項1記載の内視鏡装置であって、
前記出射角変更手段が、前記診断用レーザ光の光路途中、前記治療用レーザ光の光路途中の少なくともいずれかに配置された光学レンズ部材である内視鏡装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の内視鏡装置であって、
前記光照射手段へ更に白色光を供給する白色照明用光源を備えた内視鏡装置。
【請求項6】
請求項5記載の内視鏡装置であって、
前記内視鏡先端部に、前記診断用レーザ光及び前記治療用レーザ光を出射する第1の照射窓と、
前記白色光を出射する第2の照射窓と、が配置された内視鏡装置。
【請求項7】
請求項6記載の内視鏡装置であって、
前記白色照明用光源が出射する白色照明用レーザ光の一部が、前記第2の照射窓の内側に配置された波長変換部材により波長変換され、該波長変換された光と前記白色照明用レーザ光とによって白色光が生成される内視鏡装置。
【請求項8】
請求項7記載の内視鏡装置であって、
前記白色照明用光源が複数備えられ、それぞれの白色照明用光源からの出射光を合波して前記光照射手段に供給する内視鏡装置。
【請求項9】
請求項5〜請求項8のいずれか1項記載の内視鏡装置であって、
前記観察窓から被検体を撮像する撮像素子と、
前記診断用レーザ光、前記治療用レーザ光、及び前記白色光の各出射タイミングを前記撮像素子の撮像タイミングと同期して制御する光源制御部を備えた内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−104199(P2011−104199A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263912(P2009−263912)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】