説明

内部欠陥検査装置および内部欠陥検査方法

【課題】本発明は、分解能よりも小さいサイズの欠陥を検出可能であって、より簡易な構成でより短い検査時間で欠陥を検出し得る内部欠陥検査装置および該方法を提供する。
【解決手段】本発明の内部欠陥検査装置Daは、検査対象の物体SMを透過可能な波長の照明光を放射する光源部1と、光源部1から放射された照明光を検査対象の物体SMに照射する照明光学系2と、検査対象の物体SMの光学像を形成する撮像光学系3aと、撮像光学系3aによって形成された光学像を光電変換することによって光学像の画像信号を生成する撮像素子4aおよび画像処理部71aと、この生成された光学像の画像信号に基づいて検査対象の物体SMを提示する出力部6とを備え、照明光学系2と撮像光学系3aとは、暗視野光学系を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗視野光学系を用いて検査対象の物体内部に生じている欠陥を検出する内部欠陥検査装置および内部欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクスの発展により、様々な電子部品が開発され、製造されている。この電子部品は、小型化、高速化および省電力化等の要請から、多くの場合、LSIやIC等の集積回路として実現される。この集積回路は、半導体ウェハを用いて製造され、この半導体ウェハは、インゴットをスライスすることによって製造される。また、近年の環境対策の要請から太陽電池(PV)の開発も進展している。この太陽電池は、インゴットまたはインゴットから切り出した直方体のブリックもしくは直接的に製造されたブリックをスライスすることによって製造される。
【0003】
このインゴットは、原料融液から成長させることによって製造される。例えば、単結晶シリコンインゴットは、いわゆるチョクラルスキー法(Czochralski法)やフローティングゾーン法(Floating Zone法)によって製造される。また前記太陽電池は、半導体グレード(純度11N以上)ほどの純度を必要とせず、7N程度の純度(太陽電池グレード)でよいことから、太陽電池用のインゴットやブリックは、半導体グレードの精製工程を簡略した方法や、半導体グレード・シリコンの加工工程で発生した端材を直方体のるつぼに入れて溶かしそして固める方法等によって製造される。このようにインゴットやブリックの製造工程には、融液から固化される工程が含まれるため、その固形化される過程でインゴットやブリックの内部に例えば略球形のボイド(Void、空隙)と呼ばれる欠陥が発生することがある。
【0004】
このような欠陥を含むインゴットやブリックあるいはこれらからスライスされた半導体ウェハや太陽電池ウェハは、不良品となるので、前記欠陥を検出することが要請されている。
【0005】
このような欠陥を検査する検査装置は、例えば、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示のシリコンウェーハの結晶欠陥検査装置は、シリコンウェーハに赤外線を照射し、このシリコンウェーハを透過した赤外線を撮像して得られる画像から当該シリコンウェーハの結晶欠陥を検査するシリコンウェーハの結晶欠陥検査装置であって、前記シリコンウェーハにおける一定の視野領域を有する低倍率検査画像を取得する低倍率の対物レンズと、前記低倍率検査画像を画像処理して結晶欠陥の位置を確認および記憶する位置確認手段と、前記確認された結晶欠陥の位置を一定の視野領域の中に位置させて、当該視野領域の高倍率検査画像を取得する高倍率の対物レンズと、前記高倍率検査画像に基づいて前記結晶欠陥の形状を求め、前記結晶欠陥の形状情報から、円形か円形以外の不定形状かで当該結晶欠陥がボイドかパーティクルかを判定する判定手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−258555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1に開示のシリコンウェーハの結晶欠陥検査装置では、明視野光学系が採用されているので、欠陥部分は、暗部として画像化される。このため、検出可能な欠陥(暗部)の大きさは、検査対象の物体を撮像するカメラ装置の分解能に依存し、撮像光学系の光学倍率と撮像素子の画素サイズとから決定される分解能と同等のオーダとなる。したがって、明視野光学系では、前記オーダよりも小さい欠陥の検出は、困難となる。
【0008】
また、前記特許文献1に開示のシリコンウェーハの結晶欠陥検査装置では、光学倍率を上げて前記分解能を上げるために、低倍率の対物レンズと高倍率の対物レンズとが用いられている。より具体的には、低倍率の対物レンズで撮像してまず欠陥の位置が特定され、その特定された位置を高倍率の対物レンズで撮像して欠陥が検出される。したがって、前記特許文献1に開示のシリコンウェーハの結晶欠陥検査装置では、低倍率の対物レンズと高倍率の対物レンズが必要であり、またこれら対物レンズの切り換えも必要となるため、構成が複雑化してしまう。また、前記特許文献1に開示のシリコンウェーハの結晶欠陥検査装置では、低倍率の対物レンズで撮像した画像を処理して高倍率の対物レンズで撮像した画像を処理するため、検査時間も長くかかってしまう。特に、不良品を加工して不良な最終製品を製造してしまうという前記加工の工程の無駄と最終製品の不良とを低減するべく、製造ライン中で前記欠陥を検出して不良品を排除しようとする場合には、検査時間の短縮化は、重要である。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、分解能よりも小さいサイズの欠陥を検出可能であって、より簡易な構成でより短い検査時間で欠陥を検出することができる内部欠陥検査装置および内部欠陥検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる内部欠陥検査装置は、検査対象の物体を透過可能な波長の照明光を放射する光源部と、前記光源部から放射された前記照明光を前記検査対象の物体に照射する照明光学系と、前記検査対象の物体の光学像を形成する撮像光学系と、前記撮像光学系によって形成された前記光学像を光電変換することによって前記光学像の画像信号を生成する撮像部と、前記撮像部で生成された前記光学像の画像信号に基づいて前記検査対象の物体内部における欠陥を提示する提示部とを備え、前記照明光学系と前記撮像光学系とは、暗視野光学系を形成していることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明の他の一態様にかかる内部欠陥検査方法は、検査対象の物体を透過可能な波長の照明光を前記検査対象の物体に所定の照明光学系によって照射し、前記検査対象の物体の光学像を、前記所定の照明光学系とで暗視野光学系を形成する所定の撮像光学系によって形成し、前記撮像光学系によって形成された前記光学像を光電変換することによって前記光学像の画像信号を生成し、前記生成された前記光学像の画像信号に基づいて前記検査対象の物体内部における欠陥を提示することを特徴とする。
【0012】
このような構成の内部欠陥検査装置および内部欠陥検査方法では、暗視野光学系が用いられている。この暗視野光学系では、欠陥があると、照明光は、この欠陥によって散乱され、この散乱光が撮像部によって撮像される。したがって、暗視野光学系では、欠陥は、輝点として観察される。このため、撮像素子の画素サイズより小さい輝点でも画素で受光されれば(前記輝点の光が撮像素子の画素全面を照らさなくても撮像素子の画素の一部を照らせば)、該画素で前記輝点の光が光電変換され該画素から信号が出力される。このため、このような暗視野光学系を用いた内部欠陥検査装置および内部欠陥検査方法は、分解能よりも小さいサイズの欠陥を検出することができる。そして、このような暗視野光学系を用いた内部欠陥検査装置および内部欠陥検査方法は、背景技術で説明したような光学倍率を上げて前記分解能を上げるために低倍率の対物レンズと高倍率の対物レンズとを用いる必要がないので、より簡易な構成でより短い検査時間で欠陥を検出することができる。
【0013】
また、他の一態様では、上述の内部欠陥検査装置において、前記撮像光学系は、互いに異なる複数の方向で前記検査対象の物体の光学像をそれぞれ形成する複数であり、前記撮像部は、複数の前記撮像光学系のそれぞれに対応して設けられた複数であることを特徴とする。
【0014】
このような構成の内部欠陥検査装置では、複数の撮像光学系によって互いに異なる複数の方向で検査対象の物体の光学像がそれぞれ形成される。通常、前記欠陥は、前記複数の画像に写る一方、ノイズ等は、前記複数の画像全てに写ることがほとんど無い。このため、このような構成の内部欠陥検査装置は、これら複数の光学像の画像を相互に比較することによって、検査対象の物体と撮像光学系との間であって、前記検査対象の物体における前記撮像光学系の光軸と交差する面で生じる散乱等のノイズの影響を低減することができる。
【0015】
また、他の一態様では、これら上述の内部欠陥検査装置において、前記検査対象の物体における前記撮像光学系の光軸と交差する面上を覆う、前記検査対象の物体における屈折率と同じの屈折率を持つ液体、または、前記検査対象の物体における屈折率と前記検査対象の物体の外部雰囲気における屈折率との間の屈折率を持つ液体をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
このような構成の内部欠陥検査装置は、前記検査対象の物体と撮像光学系との間であって、前記検査対象の物体における前記撮像光学系の光軸と交差する面が粗面であっても、該面上を前記液体によって覆うので、該面での散乱を低減することができる。そして、仮に該面で散乱が生じる場合でもこの散乱は、欠陥による散乱よりも小さいため、該面での散乱と欠陥での散乱とを区別することが可能となり、欠陥の検出が可能となる。
【0017】
また、他の一態様では、これら上述の内部欠陥検査装置において、前記撮像光学系における焦点深度または被写界深度は、前記照明光学系によって照射される前記照明光の範囲全体に対応することを特徴とする。
【0018】
このような構成の内部欠陥検査装置は、前記照明光学系によって照射される前記照明光の範囲全体を一度に検査することができ、検査時間の短縮化を図ることができる。
【0019】
また、他の一態様では、これら上述の内部欠陥検査装置において、前記撮像光学系における焦点深度または被写界深度は、前記照明光学系によって照射される前記照明光の範囲の一部に対応することを特徴とする。
【0020】
このような構成の内部欠陥検査装置は、検出範囲が撮像光学系における焦点深度または被写界深度の範囲に限られるので、欠陥を検出した場合に、撮像光学系の光軸方向における該欠陥の位置を推定することができる。
【0021】
また、他の一態様では、上述の内部欠陥検査装置において、前記検査対象の物体と前記撮像光学系の焦点面との間の距離を変更する距離変更機構をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
このような構成の内部欠陥検査装置は、距離変更機構によって検査対象の物体を走査することができ、検査対象の物体全体を検査することができる。
【0023】
また、他の一態様では、これら上述の内部欠陥検査装置において、前記照明光は、スリット状(シート状)の光であることを特徴とする。
【0024】
このような構成の内部欠陥検査装置は、検出範囲がスリット状(シート状)の照明光の範囲に限られるので、欠陥を検出した場合に、該欠陥の位置を推定することができる。
【0025】
また、他の一態様では、上述の内部欠陥検査装置において、前記スリット状の光の照射位置を移動する照射位置移動機構をさらに備えることを特徴とする。
【0026】
このような構成の内部欠陥検査装置は、照射位置移動機構によって検査対象の物体を走査することができ、検査対象の物体全体を検査することができる。
【0027】
また、他の一態様では、これら上述の内部欠陥検査装置において、前記照明光学系は、前記光源部から放射された前記照明光を、互いに異なる複数の方向で前記検査対象の物体にそれぞれ照射する複数であることを特徴とする。
【0028】
このような構成の内部欠陥検査装置は、複数の照明光のそれぞれを前記検査対象の物体に照射するので、散乱光の輝度が増加することから、検出感度を向上することができ、欠陥をより検出することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明にかかる内部欠陥検査装置および内部欠陥検査方法は、分解能よりも小さいサイズの欠陥を検出可能であって、より簡易な構成でより短い検査時間で欠陥を検出することができる
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態における内部欠陥検査装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す第1実施形態の内部欠陥検査装置によって得られる検査画像を説明するための模式図である。
【図3】第2実施形態における内部欠陥検査装置の構成を示す図である。
【図4】図2に示す第2実施形態の内部欠陥検査装置によって得られる検査画像を説明するための模式図である。
【図5】第3実施形態における内部欠陥検査装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。なお、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0032】
本実施形態における内部欠陥検査装置Dは、検査対象の物体内に存在する欠陥を検出する装置である。この内部欠陥検査装置Dは、検査対象の物体を透過可能な波長の照明光を放射する光源部と、前記光源部から放射された前記照明光を前記検査対象の物体に照射する照明光学系と、前記検査対象の物体の光学像を形成する撮像光学系と、前記撮像光学系によって形成された前記光学像を光電変換することによって前記光学像の画像信号を生成する撮像部と、前記撮像部で生成された前記光学像の画像信号に基づいて前記検査対象の物体内部における欠陥を提示する提示部とを備え、前記照明光学系と前記撮像光学系とは、暗視野光学系を形成しているものである。前記検査対象の物体は、任意の固体物であってよく、例えばシリコンブリック等である。そして、本実施形態の内部欠陥検査装置Dは、暗視野光学系によって前記欠陥を検出するので、検査対象の物体内に存在する、照明光を散乱させる界面を検出することができるから、前記欠陥は、このような界面を持つものである。前記欠陥は、例えば、このような固体物の検査対象の物体内に存在する例えばボイド(Void)等の空隙等である。このように本実施形態の内部欠陥検査装置Dおよびこれに実装された内部欠陥検査方法は、暗視野光学系が用いられているので、分解能よりも小さいサイズの欠陥を検出することができ、そして、背景技術で説明したような光学倍率を上げて前記分解能を上げるために低倍率の対物レンズと高倍率の対物レンズとを用いる必要がないので、より簡易な構成でより短い検査時間で欠陥を検出することができる。このような内部欠陥検査装置Dおよびこれに実装された内部欠陥検査方法の実施の一形態を第1ないし第3実施形態として以下により詳細に説明する。
【0033】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態における内部欠陥検査装置Daの構成について説明する。図1は、第1実施形態における内部欠陥検査装置の構成を示す図である。図1において、第1実施形態の内部欠陥検査装置Daは、光源部1と、照明光学系2と、撮像光学系3aと、撮像素子4aと、入力部5と、出力部6と、演算制御部7aと、記憶部8とを備える。
【0034】
光源部1は、演算制御部7aの制御に従って、検査対象の物体SMを透過可能な波長の照明光を放射するための装置である。照明光は、検査対象の物体SMを透過することができればよく、検査対象の物体SM中を伝播する間にその強度が減衰してもよい。照明光は、検査対象の物体SMに応じて適宜に選択される。例えば、検査対象の物体SMがシリコン(Si)である場合には、照明光は、赤外線が好適である。このため、この場合では、光源部1は、赤外線領域における所定波長の光を放射する赤外線光源装置を備えて構成される。また例えば、検査対象の物体SMがガラスである場合には、照明光は、可視光が好適である。このため、この場合では、光源部1は、可視光領域における所定波長の光を放射する可視光光源装置を備えて構成される。なお、例えばランプ等の光源から放射される光に、照明光として不要な波長成分が含まれている場合には、光源部1は、前記不要な波長成分を遮断する光学フィルタをさらに備えて構成されてもよい。光源部1から放射された照明光は、照明光学系2へ入射される。
【0035】
照明光学系2は、光源部1から放射された照明光を検査対象の物体SMに照射するものである。照明光学系2は、例えば、本実施形態では、略均一な光強度で検査対象の物体SMを照明するために、光源部1から放射された照明光を略平行光線束として射出するコリメートレンズを備えて構成される。なお、図1に示す例では、照明光は、照明光学系2によって略平行光線束とされ、略平行光線束で検査対象の物体SMに照射されているが、照明光は、平行光線束でなくてもよい(非平行光線束であってもよい)。照明光学系2から射出された照明光は、検査対象の物体における所定の表面へ照射される。
【0036】
撮像光学系3aは、検査対象の物体SMの光学像を撮像素子4aの受光面上に形成するものである。検査対象の物体SMからの光線は、撮像光学系3aによって撮像素子4aの受光面上に結像され、検査対象の物体SMの光学像となる。撮像光学系3aにおける焦点深度または被写界深度は、例えば、照明光学系2によって照射される照明光の範囲全体Laに対応するものであってもよい。このような構成では、照明光学系2によって照射される照明光の範囲全体を一度に検査することができるので、検査時間の短縮化を図ることができる。また例えば、撮像光学系3aにおける焦点深度または被写界深度は、照明光学系2によって照射される照明光の範囲の一部Lbに対応するものであってもよい。このような構成では、検出範囲が撮像光学系3aにおける焦点深度または被写界深度の範囲に限られるので、欠陥を検出した場合に、撮像光学系3aの光軸方向における該欠陥の位置を推定することができる。
【0037】
なお、一般には、或る距離に焦点を合わせた場合に、その距離の光軸上の一点から出た光は、レンズを通ったあと、焦点面の光軸上の一点に結像する。そして、焦点面の前後においても焦点が合ったように見える範囲があり、この範囲が焦点深度である。また、或る距離に焦点を合わせた場合に、その距離にある被写体が鮮明に写るだけでなく、被写体の前後も或る範囲では鮮明に写る。この鮮明に写っている被写体の前後の奥行きが被写界深度である。
【0038】
本実施形態では、撮像光学系3aは、その焦点深度または被写界深度が照明光学系2によって照射される照明光の範囲の一部Lbとなるように構成される。そして、この場合において、本実施形態の内部欠陥検査装置Daは、検査対象の物体SMを撮像光学系の光軸方向で走査するために、演算制御部7aの制御に従って、検査対象の物体SMと撮像光学系3aの焦点面との間の距離を変更する図略の距離変更機構をさらに備えている。このような距離変更機構は、例えば、フォーカス機構のように、撮像光学系3aをその光軸方向に移動する機構である。また例えば、この距離変更機構は、検査対象の物体SMを載置するための載置台と、前記載置台を撮像光学系3aの光軸方向に移動する移動機構とを備えるステージ装置(例えばXYステージ装置等)である。焦点深度または被写界深度が照明光学系2によって照射される照明光の範囲の一部Lbとなるように撮像光学系3aが構成されている場合に、このような距離変更機構をさらに備えることによって、このような構成の内部欠陥検査装置Daは、検査対象の物体SM全体を検査することができ、そして、欠陥を検出した場合に、撮像光学系3aの光軸方向における該欠陥の位置も推定することができる。
【0039】
また、図1において、撮像素子4aは、演算制御部7aに接続され、撮像光学系3aによって形成された検査対象の物体SMの光学像を光電変換することによって前記光学像の画像信号を生成するものである。撮像素子4aは、2次元アレイ状に配設された複数の画素としての複数の光電変換素子を備えた例えばCCD型イメージセンサやCMOS型イメージセンサ等を備えて構成される。撮像素子4aで生成された前記光学像の画像信号は、演算制御部7aへ出力される。
【0040】
入力部5は、演算制御部7aに接続され、外部から当該内部欠陥検査装置Daにコマンド(命令)やデータ等を入力するための装置であり、例えばタッチパネルやキーボード等である。出力部6は、演算制御部7aに接続され、入力部5から入力されたコマンドやデータおよび演算制御部7aの演算結果(例えば前記光学像の画像や検出した内部欠陥等)等を出力するための装置であり、例えばCRTディスプレイやLCD(液晶ディスプレイ)や有機ELディスプレイ等のディスプレイおよびプリンタ等の印刷装置等である。
【0041】
記憶部8は、演算制御部7aに接続され、内部欠陥検査装置Daの各部を当該機能に応じて制御するための制御プログラムや内部欠陥Vを撮像素子4aの撮像結果に基づいて求める内部欠陥検出プログラム等の各種の所定のプログラム、および、前記所定のプログラムの実行に必要なデータ等の各種の所定のデータ等を記憶する、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、および、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる後述のCPUのワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)、ならびに、これらの周辺回路を備えて構成される。
【0042】
演算制御部7aは、内部欠陥検査装置Daの各部を当該機能に応じて制御する回路であり、そして、検査対象の物体SMにおける内部欠陥Vを撮像素子4aの検出結果に基づいて求めるものである。演算制御部7aは、例えば、記憶部8に記憶されている所定のプログラムを読み出して実行することによって所定の制御処理や所定の演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)およびこの周辺回路を備えて構成される。演算制御部7aは、機能的に、画像処理部71aと、欠陥検出部72aとを備えている。
【0043】
画像処理部71aは、撮像素子4aの画像信号に基づいて検査対象の物体SMの画像を生成するものである。より具体的には、画像処理部71aは、増幅処理、デジタル変換処理等を行うと共に、画像全体に対して適正な黒レベルの決定、γ補正、ホワイトバランス調整(WB調整)、輪郭補正および色ムラ補正等の周知の画像処理を行って、撮像素子4aの画像信号から検査対象の物体SMの画像を生成する。
【0044】
欠陥検出部72aは、画像処理部71aによって生成された検査対象の物体SMの画像(画像信号)に基づいて検査対象の物体SM内部における欠陥Vを検出するものである。目視によって欠陥Vを検出するべく、画像処理部71aによって生成された検査対象の物体SMの画像を出力部6に出力することで、前記光学像の画像信号に基づいて前記検査対象の物体内部における欠陥Vを提示してもよいが、本実施形態の内部欠陥検査装置Daは、さらに、欠陥検出部72aを備え、この欠陥検出部72aによって欠陥Vを検出し、その検出結果も出力部6に出力するように構成されている。なお、出力部6には、検査対象の物体SMの画像のみが提示され、検出結果が提示されなくてもよく、また、検査対象の物体SMの画像が提示されずに、検出結果のみが提示されてもよい。
【0045】
なお、これら撮像素子4aおよび画像処理部71aは、撮像光学系3によって形成された検査対象の物体SMにおける光学像を光電変換することによって前記光学像の画像信号を生成する撮像部の一例に相当する。また、撮像素子4aに代え、これら撮像素子4aと画像処理部71aと備えたカメラ装置が用いられてもよく、この場合において、演算制御部7aには、前記カメラ装置から、検査対象の物体SMにおける光学像の画像信号が入力され、この前記光学像の画像信号が欠陥検出部72aによって処理される。
【0046】
そして、本実施形態の内部欠陥検査装置Daでは、照明光学系2と撮像光学系3aとは、暗視野光学系を形成している。暗視野光学系は、照明光学系2で検査対象の物体SMを照明した場合に、撮像光学系3aが照明光の透過光方向および照明光の正反射方向を除いた方向から前記検査対象の物体SMを観測する光学系である。暗視野光学系では、照明光の散乱成分が捉えられ、観測される。
【0047】
より具体的には、本実施形態では、例えば、照明光学系2の光軸と撮像光学系3aの光軸とが互いに直交するように、照明光学系2と撮像光学系3aとは、配置されている。すなわち、撮像光学系3aは、照明光学系2によって検査対象の物体SMに照明されている照明光の進行方向における側面から検査対象の物体SMを観測し、検査対象の物体SMからの光を捉えている。
【0048】
次に、第1実施形態における内部欠陥検査装置Daの動作について説明する。図2は、図1に示す第1実施形態の内部欠陥検査装置によって得られる検査画像を説明するための模式図である。
【0049】
検査が開始されると、内部欠陥検査装置Daは、演算制御部7aの制御によって前記図略の距離変更機構を操作することによって、検査対象の物体SMと撮像光学系3aの焦点面との間の距離を所定の距離に変更する。例えば、撮像光学系3aの焦点深度が照明光学系2によって照射される照明光の範囲の一部Lbに対応するように構成されている場合には、検査対象の物体SM内に仮想的に設定される所定の物体面からの光が撮像光学系3aによって撮像素子4aの受光面に合焦するように、検査対象の物体SM(すなわち、前記所定の物体面)と撮像光学系3aの焦点面との間の前記距離が前記距離変更機構によって変更される。また例えば、撮像光学系3aの被写界深度が照明光学系2によって照射される照明光の範囲の一部Lbに対応するように構成されている場合には、検査対象の物体SM内に仮想的に設定される所定の物体面からの光が撮像光学系3aによって撮像素子4aの受光面に合焦するように、検査対象の物体SM(すなわち、前記所定の物体面)と撮像光学系3aの焦点面との間の前記距離が前記距離変更機構によって変更される。前記所定の物体面は、例えば、照明光学系2の光軸に平行であって撮像光学系3aの光軸と直交する面である。
【0050】
続いて、内部欠陥検査装置Daは、演算制御部7aの制御によって光源部1を操作することによって、検査対象の物体SMに光源部1を照射する。
【0051】
これによって光源部1は、照明光を放射する。この光源部1から放射された照明光は、照明光学系2を介して検査対象の物体SMに入射される。図1に示す例では、光源部1から放射された照明光は、照明光学系2に入射され、照明光学系2で略平行光線束となって照明光学系2から射出され、この略平行光線束の照明光は、検査対象の物体SMにおける略平面な上面(入射面)に入射される。
【0052】
検査対象の物体SMに入射された照明光は、検査対象の物体SM内を伝播して進行し、前記入射面と対向する略平面な下面(射出面)から射出される。ここで、検査対象の物体SM内に例えば略球形の空隙(ボイド)等の欠陥Vが存在すると、検査対象の物体SM内を伝播して進行している照明光は、前記欠陥Vの界面によって散乱される。なお、欠陥Vは、略球形である必要はなく、不定型形状等の任意の形状であってよい。この散乱光は、その一部が撮像光学系3aに入射され、撮像光学系3aによって前記欠陥Vの光学像が撮像素子4aの受光面上に形成される。前記欠陥Vの光学像は、撮像素子4aによって光電変換され、前記欠陥Vの光学像に対応する画像信号が生成される。この画像信号は、撮像素子4aから演算制御部7aに入力される。
【0053】
撮像素子4aから演算制御部7aに画像信号が入力されると、画像処理部71aは、撮像素子4aの画像信号に基づいて検査対象の物体SMの画像を生成する。画像処理部71aは、この検査対象の物体SMの画像を出力部6に出力するとともに、欠陥検出部72aに通知される。出力部6には、例えば、図2に示すような検査対象の物体SMの画像が提示される。この出力部6に提示された検査対象の物体SMの画像をオペレータが目視確認することによって前記欠陥Vが認識されて検出されてもよい。
【0054】
一方、欠陥検出部72aは、検査対象の物体SMの画像について、この画像内に所定の輝度レベル以上の輝度レベルを持つ画素があるか否かが判定され、所定の輝度レベル以上の輝度レベルを持つ画素がある場合には、当該画素が前記欠陥Vに対応するものと判定され、当該画素に対応する前記所定の物体面上の座標が算出される。そして、欠陥検出部72aは、この検出した欠陥Vおよびこの欠陥Vの座標を出力部6に出力する。出力部6には、欠陥Vを検出した旨とこの欠陥Vの座標が提示される。
【0055】
そして、この所定の物体面における検査が終了すると、前記所定の物体面が前記図略の距離変更機構によってずらされ、同様の動作によって検査が行われる。そして、これが繰り返され、検査対象の物体SM全体が走査される。
【0056】
このように動作することによって、本実施形態の内部欠陥検査装置Daは、検査対象の物体SM内に存在する欠陥Vを検出することができる。
【0057】
そして、本実施形態の内部欠陥検査装置Daおよびこれに実装されている内部欠陥検査方法では、上述したように照明光学系2と撮像光学系3aとは、暗視野光学系で構成されている。この暗視野光学系では、欠陥Vがあると、照明光は、この欠陥Vによって散乱され、この散乱光が撮像光学系3aを介して撮像素子4aによって撮像される。したがって、暗視野光学系では、欠陥Vは、輝点として観察される。このため、撮像素子4aの画素サイズより小さい輝点でも画素で受光されれば(前記輝点の光が撮像素子4aの画素全面を照らさなくても撮像素子4aの画素の一部を照らせば)、該画素で前記輝点の光が光電変換され該画素から信号が出力される。このため、このような暗視野光学系を用いた内部欠陥検査装置Daおよびその内部欠陥検査方法は、分解能よりも小さいサイズの欠陥Vを検出することができる。そして、このような暗視野光学系を用いた内部欠陥検査装置Daおよびその内部欠陥検査方法は、背景技術で説明したような光学倍率を上げて前記分解能を上げるために低倍率の対物レンズと高倍率の対物レンズとを用いる必要がないので、より簡易な構成でより短い検査時間で欠陥を検出することができる。また、ノイズが生じた場合でも、明視野光学系では所定の輝度レベルの背景に前記ノイズが重畳されることになるが、暗視野光学系では輝度レベル0の背景に前記ノイズが重畳されることになるので、暗視野光学系は、明視野光学系に較べてノイズ耐性が強く、SNが向上するものと考えられる。
【0058】
次に、別の実施形態について説明する。
【0059】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態における内部欠陥検査装置の構成を示す図である。図4は、図2に示す第2実施形態の内部欠陥検査装置によって得られる検査画像を説明するための模式図である。図4(A)は、第1撮像光学系3b−1、第1撮像素子4b−1および第1画像処理部71b−1によって得られる第1検査画像を示し、図4(B)は、第2撮像光学系3b−2、第2撮像素子4b−2および第2画像処理部71b−2によって得られる第2検査画像を示す。
【0060】
第1実施形態の内部欠陥検査装置Daは、検査対象の物体SMを一方向から撮像したが、第2実施形態の内部欠陥検査装置Dbは、検査対象の物体SMを互いに異なる複数の方向から撮像するものである。このため、前記撮像光学系は、互いに異なる複数の方向で検査対象の物体SMの光学像をそれぞれ形成する複数であり、前記撮像部は、複数の前記撮像光学系のそれぞれに対応して設けられた複数である。
【0061】
例えば、検査対象の物体SMを互いに異なる2方向から撮像する内部欠陥検査装置Dbは、図3に示すように、光源部1と、照明光学系2と、撮像光学系3bと、撮像素子4bと、入力部5と、出力部6と、演算制御部7bと、記憶部8とを備える。
【0062】
これら第2実施形態の内部欠陥検査装置Dbにおける光源部1、照明光学系2、入力部5、出力部6および記憶部8は、第1実施形態の内部欠陥検査装置Daにおける光源部1、照明光学系2、入力部5、出力部6および記憶部8とそれぞれ同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
撮像光学系3bは、検査対象の物体SMの光学像を複数の撮像素子4bの各受光面上にそれぞれ形成するものである。図3に示す例では、上述のように、撮像光学系3bは、第1撮像光学系3b−1と、第2撮像光学系3b−2とを備えている。撮像素子4bは、複数の前記撮像光学系3bのそれぞれに対応して設けられた複数であって、それぞれ、演算制御部7bに接続され、各撮像光学系3bによって形成された検査対象の物体SMの各光学像をそれぞれ光電変換することによって前記光学像の各画像信号をそれぞれ生成するものである。図3に示す例では、撮像素子4bは、第1撮像光学系3b−1に対応して設けられた第1撮像素子4b−1と、第2撮像光学系3b−2に対応して設けられた第1撮像素子4b−2とを備えている。検査対象の物体SMからの光線は、第1撮像光学系3b−1によって第1撮像素子4b−1の受光面上に結像され、検査対象の物体SMの第1光学像となる。また、検査対象の物体SMからの光線は、第2撮像光学系3b−2によって第2撮像素子4b−2の受光面上に結像され、検査対象の物体SMの第2光学像となる。
【0064】
また、これら撮像光学系3bにおける各焦点深度または各被写界深度は、第1実施形態で説明したように、例えば、照明光学系2によって照射される照明光の範囲全体Laに対応するものであってもよく、また例えば、照明光学系2によって照射される照明光の範囲の一部Lbに対応するものであってもよい。そして、この場合において、本実施形態の内部欠陥検査装置Dbは、検査対象の物体SMと撮像光学系3bの焦点面との間の距離を変更する図略の複数の距離変更機構をさらに備えてもよい。
【0065】
そして、これら複数の撮像光学系3bは、撮像光学系3aとで暗視野光学系を形成しており、互いに異なる複数の方向で検査対象の物体SMの光学像をそれぞれ形成するように配置されている。図3に示す例では、第1および第2撮像光学系3b−1、3b−2は、互いに対向するように配置されている。より具体的には、本実施形態では、例えば、照明光学系2の光軸と第1撮像光学系3b−1の光軸とが互いに直交するように、照明光学系2と第1撮像光学系3b−1とは、配置され、照明光学系2の光軸と第2撮像光学系3b−2の光軸とが互いに直交するように、照明光学系2と第2撮像光学系3b−2とは、配置されている。すなわち、第1および第2撮像光学系3b−1、3b−2のそれぞれは、照明光学系2によって検査対象の物体SMに照明されている照明光の進行方向における側面から検査対象の物体SMを観測し、検査対象の物体SMからの光を捉えている。そして、第1撮像光学系3b−1の光軸と第2撮像光学系3b−2の光軸とが互いに一致するように、第1撮像光学系3b−1と第2撮像光学系3b−2とは、配置されている。すなわち、第1撮像光学系3b−1は、第1側面から検査対象の物体SMを観測し、検査対象の物体SMからの光を捉え、第2撮像光学系3b−2は、前記第1側面と対向する第2側面から検査対象の物体SMを観測し、検査対象の物体SMからの光を捉えている。
【0066】
演算制御部7bは、内部欠陥検査装置Daの各部を当該機能に応じて制御する回路であり、そして、検査対象の物体SMにおける内部欠陥Vを撮像素子4bの検出結果に基づいて求めるものである。演算制御部7bは、例えば、記憶部8に記憶されている所定のプログラムを読み出して実行することによって所定の制御処理や所定の演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)およびこの周辺回路を備えて構成される。演算制御部7bは、機能的に、画像処理部71bと、欠陥検出部72bとを備えている。
【0067】
画像処理部71bは、複数の撮像素子4bの各画像信号に基づいて検査対象の物体SMの各画像を生成するものである。より具体的には、画像処理部71bは、複数の撮像素子4bのそれぞれに対応して設けられた複数であって、複数の撮像素子4bの各画像信号に対し、増幅処理、デジタル変換処理等を行うと共に、画像全体に対して適正な黒レベルの決定、γ補正、ホワイトバランス調整(WB調整)、輪郭補正および色ムラ補正等の周知の画像処理を行って、複数の撮像素子4bの各画像信号から検査対象の物体SMの各画像を生成する。図3に示す例では、画像処理部71bは、第1撮像素子4b−1に対応して設けられた第1画像処理部71b−1と、第2撮像素子4b−2に対応して設けられた第1画像処理部71b−2とを備えている。
【0068】
欠陥検出部72bは、画像処理部71bによって生成された検査対象の物体SMの各画像(各画像信号)に基づいて検査対象の物体SM内部における欠陥Vを検出するものである。目視によって欠陥を検出するべく、複数の画像処理部71bによって生成された検査対象の物体SMの各画像を出力部6に出力することで、前記光学像の画像信号に基づいて前記検査対象の物体SM内部における欠陥Vを提示してもよいが、本実施形態の内部欠陥検査装置Daは、さらに、欠陥検出部72bを備え、この欠陥検出部72bによって欠陥Vを検出し、その検出結果も出力部6に出力するように構成されている。なお、出力部6には、検査対象の物体SMの画像のみが提示され、検出結果が提示されなくてもよく、また、検査対象の物体SMの画像が提示されずに、検出結果のみが提示されてもよい。
【0069】
なお、これら複数の撮像素子4bおよび複数の画像処理部71bは、撮像光学系3によって形成された検査対象の物体SMにおける各光学像を光電変換することによって前記光学像の各画像信号を生成する撮像部の一例に相当する。また、複数の撮像素子4bに代え、これら撮像素子4bと画像処理部71bと備えた複数のカメラ装置が用いられてもよく、この場合において、演算制御部7bには、前記複数のカメラ装置から、検査対象の物体SMにおける光学像の各画像信号がそれぞれ入力され、この前記光学像の各画像信号が欠陥検出部72bによって処理される。
【0070】
このような構成の第2実施形態の内部欠陥検査装置Dbは、第1実施形態の内部欠陥検査装置Daと同様に動作することによって、所定の物体面において、前記欠陥Vの光学像は、複数の撮像素子4bによってそれぞれ光電変換され、前記欠陥Vの光学像に対応する各画像信号が生成される。これら各画像信号は、複数の撮像素子4bのそれぞれから演算制御部7aに入力される。複数の撮像素子4bから演算制御部7bに各画像信号が入力されると、複数の画像処理部71bは、複数の撮像素子4aの各画像信号に基づいて検査対象の物体SMの各画像を生成する。複数の画像処理部71bは、この検査対象の物体SMの各画像を出力部6に出力するとともに、欠陥検出部72bに通知される。図3に示す例では、第1撮像光学系3b−1、第1撮像素子4b−1および第1画像処理部71b−1によって検査対象の物体SMにおける第1側面から観測される検査対象の物体SMの第1画像が生成されるとともに、第2撮像光学系3b−2、第2撮像素子4b−2および第2画像処理部71b−2によって検査対象の物体SMにおける第2側面から観測される検査対象の物体SMの第2画像が生成される。出力部6には、例えば、図4(A)および(B)に示すような検査対象の物体SMの各画像(第1画像および第2画像)が提示される。この出力部6に提示された検査対象の物体SMの各画像をオペレータが目視確認することによって前記欠陥Vが認識されて検出されてもよい。
【0071】
一方、欠陥検出部72bは、例えば、検査対象の物体SMの各画像のそれぞれについて、画像内に所定の輝度レベル以上の輝度レベルを持つ画素があるか否かが判定され、所定の輝度レベル以上の輝度レベルを持つ画素がある場合には、当該画素が前記欠陥Vに対応するものと判定され、当該画素に対応する前記所定の物体面上の座標が算出される。そして、欠陥検出部72bは、検査対象の物体SMの各画像のそれぞれについて、この検出した欠陥Vおよびこの欠陥Vの座標を出力部6に出力する。出力部6には、検査対象の物体SMの各画像のそれぞれについて、欠陥Vを検出した旨とこの欠陥Vの座標が提示される。なお、この場合において、欠陥検出部72bは、検査対象の物体SMの各画像における各欠陥Vについて、互いにそれらの座標が比較され、それらの座標が一致する場合には、それら座標の欠陥Vは、真の欠陥Vであると判定し、それらの座標が一致しない場合には、それらの座標の欠陥Vは、検査対象の物体SMの表面に付着したパーティクル等のノイズであると判定してもよい。
【0072】
また例えば、欠陥検出部72bは、検査対象の物体SMの各画像を互いに足し合わせて検査対象の物体SMの画像とし、この画像について、この画像内に所定の輝度レベル以上の輝度レベルを持つ画素があるか否かが判定され、所定の輝度レベル以上の輝度レベルを持つ画素がある場合には、当該画素が前記欠陥Vに対応するものと判定され、当該画素に対応する前記所定の物体面上の座標が算出されてもよい。そして、欠陥検出部72bは、この検出した欠陥Vおよびこの欠陥Vの座標を出力部6に出力する。出力部6には、欠陥Vを検出した旨とこの欠陥Vの座標が提示される。なお、この場合において、出力部6には、検査対象の物体SMの各画像を互いに足し合わせた検査対象の物体SMの画像が提示されてもよい。
【0073】
そして、この所定の物体面における検査が終了すると、前記所定の物体面が前記図略の距離変更機構によってずらされ、同様の動作によって検査が行われる。そして、これが繰り返され、検査対象の物体SM全体が走査される。
【0074】
このように動作することによって、本実施形態の内部欠陥検査装置Dbは、検査対象の物体SM内に存在する欠陥Vを検出することができ、分解能よりも小さいサイズの欠陥Vを検出することができるとともに、より簡易な構成でより短い検査時間で欠陥を検出することができる。
【0075】
そして、本実施形態の内部欠陥検査装置Dbでは、複数の撮像光学系3bによって互いに異なる複数の方向で検査対象の物体SMの光学像がそれぞれ形成される。通常、前記欠陥は、前記複数の画像に写る一方、ノイズ等は、前記複数の画像全てに写ることがほとんど無い。このため、このような構成の内部欠陥検査装置Dbは、これら複数の光学像の画像を相互に比較することによって、検査対象の物体SMと撮像光学系3bとの間であって、検査対象の物体SMにおける撮像光学系3bの光軸と交差する面で生じる散乱等のノイズの影響を低減することができる。
【0076】
次に、別の実施形態について説明する。
【0077】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態における内部欠陥検査装置の構成を示す図である。第3実施形態の内部欠陥検査装置Dcは、上述の第1および第2実施形態の内部欠陥検査装置Da、Dbにおいて、検査対象の物体SMにおける撮像光学系3a、3bの光軸と交差する面上を覆う液体をさらに備えて構成される。例えば、図5には、第1実施形態の内部欠陥検査装置Daに対する、第3実施形態の内部欠陥検査装置Dcの例が示されている。この第1実施形態の内部欠陥検査装置Daに対する、第3実施形態の内部欠陥検査装置Dcは、図5に示すように、光源部1と、照明光学系2と、撮像光学系3aと、撮像素子4aと、入力部5と、出力部6と、演算制御部7aと、記憶部8とを備え、さらに、検査対象の物体SMにおける撮像光学系3aの光軸と交差する面上を覆う液体21を備える。これら第3実施形態の内部欠陥検査装置Dcにおける光源部1、照明光学系2、撮像光学系3a、撮像素子4a、入力部5、出力部6、演算制御部7aおよび記憶部8は、第1実施形態の内部欠陥検査装置Daにおける光源部1、照明光学系2、撮像光学系3a、撮像素子4a、入力部5、出力部6、演算制御部7aおよび記憶部8とそれぞれ同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
なお、図示しないが、第2実施形態の内部欠陥検査装置Dbに対する、第3実施形態の内部欠陥検査装置Dcは、光源部1と、照明光学系2と、撮像光学系3bと、撮像素子4bと、入力部5と、出力部6と、演算制御部7bと、記憶部8とを備え、さらに、検査対象の物体SMにおける撮像光学系3bの光軸と交差する面上を覆う液体21を備えるものである。
【0079】
この液体21は、検査対象の物体における屈折率と同じの屈折率を持つ液体、または、検査対象の物体SMにおける屈折率と検査対象の物体SMの外部雰囲気における屈折率との間の屈折率を持つ液体である。例えば、シリコンの屈折率は、近赤外波長域において約3.5であり、このような検査対象の物体SMに対し、液体21は、例えば高屈折率のシリコンオイル等である。
【0080】
検査対象の物体SMにおける撮像光学系3a、3bの光軸と交差する面に対し、重力が撮像光学系3a、3bから検査対象の物体SMへ向かう方向(下方向)に作用するように、第3実施形態の内部欠陥検査装置Dcが構成される場合には、このような液体21は、前記重力によって、検査対象の物体SMにおける撮像光学系3a、3bの光軸と交差する前記面上に保持される。あるいは、第3実施形態の内部欠陥検査装置Dcは、前記液体21を検査対象の物体SMにおける撮像光学系3a、3bの光軸と交差する前記面上に保持する保持部材を備えてもよい。このような保持部材は、例えば、所定の間隔を空けて前記検査対象の物体SMを収容する筐体等である。液体21は、この筐体に前記検査対象の物体SMを収容した後に生じる前記所定の間隔の隙間に充填される。
【0081】
このような構成の第3実施形態における内部欠陥検査装置Dcは、検査対象の物体SMと撮像光学系3(3a、3b)との間であって、検査対象の物体SMにおける撮像光学系3の光軸と交差する面が粗面であっても、該面上を前記液体21によって覆うので、該面での散乱を低減することができる。そして、仮に該面で散乱が生じる場合でもこの散乱は、欠陥Vによる散乱よりも小さいため、該面での散乱と欠陥Vでの散乱とを区別することが可能となり、欠陥Vの検出が可能となる。
【0082】
なお、上述の第1ないし第3実施形態における内部欠陥検査装置Dは、照明光学系2と撮像光学系3とは、照明光学系2の光軸と撮像光学系3の光軸とが直交するように、配置されたが、これに限定されるものではなく、暗視野光学系であれば、照明光学系2と撮像光学系3aとは、照明光学系2の光軸と撮像光学系3aの光軸とが他の角度で交差するように、配置されてもよい。
【0083】
また、上述の第1ないし第3実施形態における内部欠陥検査装置Dでは、撮像光学系3は、その焦点深度または被写界深度が照明光学系2によって照射される前記照明光の範囲の一部に対応するように構成されたが、これと合わせて、またはこれに代え(すなわち、撮像光学系3は、その焦点深度または被写界深度が照明光学系2によって照射される前記照明光の範囲全体に対応するように構成される)、前記照明光がスリット状(シート状)の光であってもよい。
【0084】
このような構成によっても、内部欠陥検査装置Dは、検出範囲がスリット状(シート状)の照明光の範囲に限られるので、欠陥を検出した場合に、該欠陥の位置を推定することができる。
【0085】
また、このような構成において、内部欠陥検査装置Dは、前記スリット状の光の照射位置を移動する照射位置移動機構をさらに備えて構成されてもよい。このような照射位置移動機構は、例えば、照明光学系の光軸方向を変える機構や、例えばXYステージ装置等のステージ装置等である。
【0086】
このような構成の内部欠陥検査装置Dは、照射位置移動機構によって検査対象の物体SMを走査することができ、検査対象の物体SM全体を検査することができる。
【0087】
また、上述の第1ないし第3実施形態における内部欠陥検査装置Dにおいて、照明光学系2は、光源部1から放射された照明光を、互いに異なる複数の方向で検査対象の物体SMにそれぞれ照射する複数であってもよい。このような照明光学系2は、例えば、1つの光源部1から放射された照明光を2つに分配し、一方の照明光を検査対象の物体SMの上面から照射するとともに、他方の照明光を検査対象の物体SMの下面から照明するものである。また例えば、光源部1が2つであって、このような照明光学系2は、一方の光源部1から放射された照明光を検査対象の物体SMの上面から照射するとともに、他方の光源部1から放射された照明光を検査対象の物体SMの下面から照明するものである。この例では、上下2方向であったが、一方の照明光学系2の光軸に直交する側面から検査対象の物体SMを照明するように、他方の照明光学系2が構成されてもよい。あるいは、照明光学系2は、検査対象の物体SMを3方向あるいは4方向等の他方向から照明してもよい。
【0088】
このような構成の内部欠陥検査装置Dは、複数の照明光のそれぞれを検査対象の物体SMに照射するので、散乱光の輝度が増加することから、検出感度を向上することができ、欠陥をより検出することができる。
【0089】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0090】
Da、Db、Dc 内部欠陥検査装置
1 光源部
2 照明光学系
3a、3b 撮像光学系
4a、4b 撮像素子
6 出力部
7a、7b 演算制御部
71a、71b 画像処理部
72a、72b 欠陥検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の物体を透過可能な波長の照明光を放射する光源部と、
前記光源部から放射された前記照明光を前記検査対象の物体に照射する照明光学系と、
前記検査対象の物体の光学像を形成する撮像光学系と、
前記撮像光学系によって形成された前記光学像を光電変換することによって前記光学像の画像信号を生成する撮像部と、
前記撮像部で生成された前記光学像の画像信号に基づいて前記検査対象の物体内部における欠陥を提示する提示部とを備え、
前記照明光学系と前記撮像光学系とは、暗視野光学系を形成していること
を特徴とする内部欠陥検査装置。
【請求項2】
前記撮像光学系は、互いに異なる複数の方向で前記検査対象の物体の光学像をそれぞれ形成する複数であり、
前記撮像部は、複数の前記撮像光学系のそれぞれに対応して設けられた複数であること
を特徴とする請求項1に記載の内部欠陥検査装置。
【請求項3】
前記検査対象の物体における前記撮像光学系の光軸と交差する面上を覆う、前記検査対象の物体における屈折率と同じの屈折率を持つ液体、または、前記検査対象の物体における屈折率と前記検査対象の物体の外部雰囲気における屈折率との間の屈折率を持つ液体をさらに備えること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の内部欠陥検査装置。
【請求項4】
前記撮像光学系における焦点深度または被写界深度は、前記照明光学系によって照射される前記照明光の範囲全体に対応すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の内部欠陥検査装置。
【請求項5】
前記撮像光学系における焦点深度または被写界深度は、前記照明光学系によって照射される前記照明光の範囲の一部に対応すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の内部欠陥検査装置。
【請求項6】
前記検査対象の物体と前記撮像光学系の焦点面との間の距離を変更する距離変更機構をさらに備えること
を特徴とする請求項5に記載の内部欠陥検査装置。
【請求項7】
前記照明光は、スリット状の光であること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の内部欠陥検査装置。
【請求項8】
前記スリット状の光の照射位置を移動する照射位置移動機構をさらに備えること
を特徴とする請求項7に記載の内部欠陥検査装置。
【請求項9】
前記照明光学系は、前記光源部から放射された前記照明光を、互いに異なる複数の方向で前記検査対象の物体にそれぞれ照射する複数であること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の内部欠陥検査装置。
【請求項10】
検査対象の物体を透過可能な波長の照明光を前記検査対象の物体に所定の照明光学系によって照射し、
前記検査対象の物体の光学像を、前記所定の照明光学系とで暗視野光学系を形成する所定の撮像光学系によって形成し、
前記撮像光学系によって形成された前記光学像を光電変換することによって前記光学像の画像信号を生成し、
前記生成された前記光学像の画像信号に基づいて前記検査対象の物体内部における欠陥を提示すること
を特徴とする内部欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−181135(P2012−181135A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45071(P2011−45071)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000130259)株式会社コベルコ科研 (174)
【Fターム(参考)】