説明

円筒体の表面検査方法および同装置

【課題】円筒体90(90’)の種々の径サイズに容易に対応しながら、高い検査精度を確保する。
【解決手段】円筒体90(90’)の両側端部の内周面92に一対の基準部20,20を接触させ、前記円筒体90(90’)と前記一対の基準部20,20との接触部分が前記円筒体90(90’)の内周面92上で周方向にずれていくように前記円筒体90(90’)を回転させ、前記円筒体90(90’)の内周面92と前記一対の基準部20,20との2つの接触部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体90(90’)の外側から対峙する基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば感光ドラム用基体等の円筒体の表面状態を検査する表面検査方法および同装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
高い表面精度が求められる感光ドラム用基体等では、キズ、凹凸、異物付着および汚れ等の表面欠陥を検出するため、表面検査が行われている。
【0003】
従来、このような感光ドラム用基体等の円筒体の表面検査方法としては、その両端部をコーン式クランプ、コレットチャックまたはダイヤフラムチャック等の把持体で支持し、この把持体とともに円筒体を回転させながら、検査照明光を照射し、その反射光を光学カメラ等によって受光して行うことが一般的である。
【0004】
また、下記特許文献1および2には、円筒体の外周面を下側から支持ローラによって支持し、この支持ローラを回転駆動させることで円筒体を回転させながら、検査照明光を照射し、反射光を受光する方法が提案されている。
【0005】
また、下記特許文献1には、検査対象物である円筒体の複数の径サイズに対応するため、円筒体を支持する支持ローラを外形サイズの異なるものに交換することで、円筒体の検査対象部分の高さ位置を一定化することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−140079号公報
【特許文献2】特開平9−243568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、円筒体の両端を把持体で支持しながら回転させる従来の方法では、異なる径サイズの円筒体を順次検査する場合の段取り替え時等において、円筒体の外周面の高さ位置が変化してしまうため、検査照明やカメラ等の位置や角度をそれぞれ再設定しなければならない。ところが、表面検査時の検査照明やカメラの位置関係は極めて高い精度が要求されるため、段取り替えの度には適切な検査条件が再現できず、検査精度も毎々変化してしまうという問題があった。
【0008】
また、上述した特許文献1のように、異なる径サイズの円筒体を順次検査する場合の段取り替え時に対応するサイズの支持ローラに交換することとすれば、段取り替えの度に支持ローラを交換する手間がかかるとともに、支持ローラを交換可能に構成することによる機械的精度の低下が避けられないため、支持ローラの位置や回転精度が確保できず、その結果、十分な検査精度が確保できないという問題があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、円筒体の種々の径サイズに容易に対応しながら、高い検査精度を確保することができる円筒体の表面検査方法および同装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の手段を提供する。すなわち、
[1]円筒体の両側端部の内周面に一対の基準部を接触させ、
前記円筒体と前記一対の基準部との接触部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させ、
前記円筒体の内周面と前記一対の基準部との2つの接触部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体の外側から対峙する基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行うことを特徴とする円筒体の表面検査方法。
【0010】
[2]前記円筒体の内周面に接触する支持ローラと前記一対の基準部とにより、前記円筒体を支持することを特徴とする前項1に記載の円筒体の表面検査方法。
【0011】
[3]円筒体の両側端部の外周面に一対の基準部を接触させ、
前記円筒体と前記一対の基準部との接触部分が前記円筒体の外周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させ、
前記円筒体の外周面と前記一対の基準部との2つの接触部分を通る前記円筒体の外周面上の仮想的な基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行うことを特徴とする円筒体の表面検査方法。
【0012】
[4]前記一対の基準部は、前記円筒体の回転に連れ回りする回転体であることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の円筒体の表面検査方法。
【0013】
[5]前記一対の基準部は、前記円筒体に対して点接触することを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の円筒体の表面検査方法。
【0014】
[6]前記一対の基準部は、前記円筒体に対して線接触することを特徴とする前項1〜5のいずれかに記載の円筒体の表面検査方法。
【0015】
[7]前記表面状態の検出は、前記基準線上またはその近傍に光を照射し、その反射光を受光することによって行うことを特徴とする前項1〜6のいずれかに記載の円筒体の表面検査方法。
【0016】
[8]前記表面状態の検出は、前記基準線上またはその近傍からの正反射光を受光することによって行うことを特徴とする前項7に記載の円筒体の表面検査方法。
【0017】
[9]表面精度が求められる円筒体を成型する工程と、
前記円筒体を検査対象物として前項1〜8のいずれかに記載の表面検査方法を行う表面検査工程と、
前記表面検査工程における検査結果が所定の基準を満たすか否かにより当該円筒体を分別し、前記所定の基準を満たす場合に当該円筒体を完成品とする判別工程と、
を備えたことを特徴とする円筒体の製造方法。
【0018】
[10]前項9に記載の円筒体の製造方法により製造されたことを特徴とする円筒体。
【0019】
[11]前項9に記載の円筒体の製造方法により製造されたことを特徴とする感光ドラム用基体。
【0020】
[12]円筒体の両側端部の内周面に接触する一対の基準部と、
前記円筒体と前記一対の基準部との接触部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させたときに、前記円筒体の内周面と前記一対の基準部との2つの接触部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体の外側から対峙する基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行う表面状態検出器と、
を備えたことを特徴とする円筒体の表面検査装置。
【0021】
[13]円筒体の両側端部の外周面にを接触する一対の基準部と、
前記円筒体と前記一対の基準部との接触部分が前記円筒体の外周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させたときに、前記円筒体の外周面と前記一対の基準部との2つの接触部分を通る前記円筒体の外周面上の仮想的な基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行う表面状態検出器と、
を備えたことを特徴とする円筒体の表面検査装置。
[14]表面精度が求められる円筒体を成型する成型手段と、
前記円筒体を検査対象物として表面検査を行う前項12または13に記載の表面検査装置と、
前記表面検査装置における検査結果が所定の基準を満たすか否かにより当該円筒体を分別し、前記所定の基準を満たす場合に当該円筒体を完成品とする判別手段と、
を備えたことを特徴とする円筒体の製造システム。
【発明の効果】
【0022】
上記発明[1]にかかる表面検査方法によれば、一対の基準部と接触する円筒体の内周面の高さ位置が円筒体の径サイズによらず固定され、これに円筒体の外側から対峙する基準線上またはその近傍の高さ位置は、円筒体の肉厚が同一である限り変化しない。表面状態の検出は、この高さ位置が変化しないことで検査条件が変化しない領域に対して行われるため、検査治具等を交換することなく、円筒体の種々の径サイズに容易に対応することができ、また、検査治具等の交換を要しないことから高い検査精度も確保することができる。
【0023】
上記発明[2]によれば、円筒体は、その内周面に接触する支持ローラと一対の基準部とによって支持されるため、その回転が安定し、高い検出精度が得られるとともに、外周面への接触痕の発生を低減することができる。
【0024】
上記発明[3]にかかる表面検査方法によれば、一対の基準部と接触する円筒体の外周面の高さ位置が円筒体の径サイズによらず固定され、これを通る基準線上またはその近傍の高さ位置が変化しない。表面状態の検出は、この高さ位置が変化しないことで検査条件が変化しない領域に対して行われるため、検査治具等を交換することなく、円筒体の種々の径サイズに容易に対応することができ、また、検査治具等の交換を要しないことから高い検査精度も確保することができる。
【0025】
上記発明[4]によれば、一対の基準部が円筒体の回転に連れ回りする回転体であるため、円滑に円筒体を回転させ、安定した検査を行うことができる。
【0026】
上記発明[5]によれば、一対の基準部が円筒体に対して点接触するため、一対の基準部と接触する円筒体の高さ位置をより明確にして検査を行うことができる。
【0027】
上記発明[6]によれば、一対の基準部が円筒体に対して線接触するため、円筒体に作用する基準部との接触圧を低減することができる。
【0028】
上記発明[7]によれば、基準線上またはその近傍に光を照射し、その反射光を受光することによって表面状態の検出が行われるため、光学的に種々の欠陥を検出することができる。
【0029】
上記発明[8]によれば、表面状態の検出を基準線上またはその近傍からの正反射光を受光することによって行うため、光学的に種々の欠陥を高いS/Nをもって検出することができる。
【0030】
上記発明[9]にかかる円筒体の製造方法によれば、上記表面検査方法により高い検査精度が得られるため、確実に所定の基準を満たす表面精度に優れた円筒体を提供することができる。
【0031】
上記発明[10]にかかる円筒体によれば、上述した円筒体の製造方法により製造されるため、各種用途に好適に使用することができる。
【0032】
上記発明[11]にかかる感光ドラム用基体によれば、上述した円筒体の製造方法により製造されるため電子写真システムにおける優れた画像形成に貢献することができる。
【0033】
上記発明[12]にかかる表面検査装置によれば、一対の基準部と接触する円筒体の内周面の高さ位置が円筒体の径サイズによらず固定され、これに円筒体の外側から対峙する基準線上またはその近傍の高さ位置は、円筒体の肉厚が同一である限り変化しない。表面状態の検出は、この高さ位置が変化しないことで検査条件が変化しない領域に対して行われるため、検査治具等を交換することなく、円筒体の種々の径サイズに容易に対応することができ、また、検査治具等の交換を要しないことから高い検査精度も確保することができる。
【0034】
上記発明[13]にかかる表面検査装置によれば、一対の基準部と接触する円筒体の外周面の高さ位置が円筒体の径サイズによらず固定され、これを通る基準線上またはその近傍の高さ位置が変化しない。表面状態の検出は、この高さ位置が変化しないことで検査条件が変化しない領域に対して行われるため、検査治具等を交換することなく、円筒体の種々の径サイズに容易に対応することができ、また、検査治具等の交換を要しないことから高い検査精度も確保することができる。
【0035】
上記発明[14]にかかる円筒体の製造方法によれば、上記表面検査装置により高い検査精度が得られるため、確実に所定の基準を満たす表面精度に優れた円筒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明の第1実施形態にかかる円筒体の表面検査方法を実行する検査装置の側面図である。
【図2】図2は同装置の正面図である。
【図3】図3は同装置における検査手順の説明図である。(a)は、同装置の正面図、(b)は、同装置の側面図である。
【図4】図4は同装置における検査手順の説明図である。(a)は、同装置の正面図、(b)は、同装置の側面図である。
【図5】図5は同装置における検査手順の説明図である。(a)は、同装置の正面図、(b)は、同装置の側面図である。
【図6】図6は本発明の第2実施形態にかかる円筒体の表面検査方法を実行する検査装置の側面図である。
【図7】図7は同装置の正面図である。
【図8】図8は同装置における検査手順の説明図である。(a)は、同装置の正面図、(b)は、同装置の側面図である。
【図9】図9は同装置における検査手順の説明図である。(a)は、同装置の正面図、(b)は、同装置の側面図である。
【図10】図10は同装置における検査手順の説明図である。(a)は、同装置の正面図、(b)は、同装置の側面図である。
【図11】図11は本発明の第3実施形態にかかる表面検査装置の正面図である。
【図12】図12は同装置の平面図である。
【図13】図13は同装置の側面図である。
【図14】図14は第3実施形態におけるチャック部570の正面図である。
【図15】図15は同チャック部570の側面図である。
【図16】図16は第3実施形態における遮光体520の斜視図である。
【図17】図17は第3実施形態にかかる円筒体90の表面検査装置の要部の概略を表した側面図である。
【図18】図18は同斜視図である。
【図19】図19は本発明にかかる製造システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図20】図20は押出工程を行う押出機の概略平面図である。
【図21】図21は押出機本体が備える押出ダイスの一例における断面図である。
【図22】図22はこの引抜き工程を行う引抜き機の一例を示す断面である。
【図23】図23は口付け部切除工程を行う切断機の一例を示す断面図である。
【図24】図24は曲がり矯正工程を行うロール矯正機の一例を示す概念図である。
【図25】図25は超音波洗浄機の一例を示す概念図である。
【図26】図26(a)は、本発明にかかる円筒体の表面検査方法の変形例の正面説明図、(b)は同側面図である。
【図27】図27(a)は、本発明にかかる円筒体の表面検査方法の変形例の正面説明図、(b)は同側面図である。
【図28】図28(a)は、本発明にかかる円筒体の表面検査方法の変形例の正面説明図、(b)は同側面図である。
【図29】図29(a)は、本発明にかかる円筒体の表面検査方法の変形例の正面説明図、(b)は同側面図である。
【図30】図30(a)は、本発明にかかる円筒体の表面検査方法の変形例の正面説明図、(b)は同側面図である。
【図31】図31(a)は、本発明にかかる円筒体の表面検査方法の変形例の正面説明図、(b)は同側面図である。
【図32】図32(a)は、本発明にかかる円筒体の表面検査方法の変形例の正面説明図、(b)は同側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について、模式的な説明図を参照しながら説明する。
【0038】
図1は、この第1実施形態にかかる円筒体の表面検査方法を実行する検査装置の側面図である。図2は、同装置の正面図である。
【0039】
これらの図に示すように、この検査装置は、検査対象物である円筒体(管体)90を回転させながら、検査対象とする円筒体90の外表面を順次検査するようになっている。
【0040】
<円筒体>
この表面検査方法の対象となる円筒体(管体)90は、たとえば電子写真システムを構成する複写機、プリンタ、FAX装置、これらの複合機等において、感光ドラム、転写ローラ、現像ローラ、その他各部に利用されるものであり、その外周面91が表面検査の検査対象領域とされる。
【0041】
このような円筒体90としては、具体的には、電子写真システムを採用した複写機やプリンタ等における感光ドラム用の素管や基体を挙げることができる。なお、感光ドラム用の基体とは、切削加工や引抜き加工等が行われた後の管体であって、感光層の形成前の管体をいう。また、感光ドラム用基体に感光層を形成した後の管体も、本発明の検査を行う対象たる円筒体とできる。
【0042】
このような円筒体90の製造方法としては、後述するように、押出成形および引き抜き成形の組み合わせを挙げることができる。ただし、これに限定されるものではなく、押出成形、引き抜き成形、鋳造、鍛造、射出成形、切削加工またはこれらの組み合わせなど、管体を製管できる方法であればよい。
【0043】
また、対象とする円筒体90の材質は特に限定されるものでなく、各種の金属材料の他、合成樹脂等を適用することができる。たとえば、アルミニウムおよびアルミニウム合金(1000〜7000系)、銅および銅合金、鋼材、マグネシウムおよびマグネシウム合金を挙げることができる。
【0044】
特に好ましい材質の例として、アルミニウム合金の3003合金、6061合金、6051合金および7075合金を挙げることができる。たとえば3003合金は好ましくは感光ドラム用基体として用いることができ、6061合金は好ましくは自動車部品であるプロペラシャフトとして用いることができ、6051合金は好ましくは一般機械部品として用いることができ、7075合金は好ましくはバット用素管として用いることができる。なお、本明細書中の「アルミニウム」はアルミニウム合金を含むものである。
【0045】
このような円筒体(管体)90は、その測定時には、図1および図2に示すように、その両側端部において、一対の基準ローラ20,20および支持ローラ30,30によって支持される。
<基準ローラ>
基準ローラ20,20は、この実施形態では、円筒体90の両側端部の内周面92に接触している。また、基準ローラ20,20は、円筒体90の内周面92の上部に接触しており、円筒体90の重量を支持している。
【0046】
このように、基準ローラ20,20は、円筒体90の内周面92に接触するため、検査対象領域である円筒体90の外周面91に接触痕が発生することを可及的に軽減している。
【0047】
これら一対の基準ローラ20,20は、表面検査時の高さ位置が一定となるように支持されており、表面検査における円筒体90の高さ位置を位置決めすることで、一対の基準部を構成する一対の基準体をなしている。なお、一対の基準部とは、表面検査時の円筒体90に接触してその高さ位置を一定化する部位であり、たとえばこのような一対の基準ローラ20,20によって構成されるものである。
【0048】
また、これら一対の基準ローラ20,20は、一旦適正な高さ位置に設定されれば、径サイズの異なる円筒体90に対する表面検査を行う場合であっても、その高さ位置が変化しないようになっている。これにより、一対の基準ローラ20,20の高さ位置は高い位置精度を確実に確保することができるようになっている。
【0049】
このように一対の基準ローラ20,20の高さ位置が安定していることにより、円筒体90の内周面92のうち、この基準ローラ20,20に接触している部分21は、円筒体90の径サイズによらず、常に同じ高さ位置に位置することとなる。
【0050】
そして、円筒体90の肉厚が同一である限り、図1に実線および破線で径サイズの異なる円筒体90,90’を表しているように、この基準ローラ20,20に接触している部分21に対向する部分22の高さ位置も、径サイズによらず、常に同じ高さ位置に位置することになる。
【0051】
また、これら一対の基準ローラ20,20は、その外周が中央部が円弧状に膨出した形状に構成され、円筒体90の内周面92に対して点接触するようになっている。これにより、一対の基準ローラ20,20と接触する円筒体90の高さ位置をより明確にして検査を行うことができる。
【0052】
これら一対の基準ローラ20,20は、両側からそれぞれ回転可能に支持されており、円筒体90の回転に連れ回りする回転体として構成されている。これにより、円筒体90の円滑な回転が確保される。
【0053】
また、この基準ローラ20,20の一方は、検査実行時に図示しない駆動源から回転駆動力が伝達されて回転し、検査対象物である円筒体(管体)90を回転駆動するようになっている。これにより、円筒体90を回転駆動するために円筒体90に接触する部材を削減し、円筒体90が損傷する可能性が軽減される。
【0054】
また、一対の基準ローラ20,20は、図2に示すように、円筒体90の軸方向についてそれぞれ外側に移動動作可能に支持されており、これにより、円筒体90を検査位置に搬入または搬出する際に、円筒体90の両外側に待避できるようになっている。
【0055】
<支持ローラ>
支持ローラ30,30は、この実施形態では、円筒体90の両側端部の内周面92に接触している。また、支持ローラ30,30は、円筒体90の内周面92の下部に接触しており、円筒体90を下方に付勢して円筒体の内周面92の上部を上記一対の基準ローラ20,20に確実に接触させるようになっている。
【0056】
このように支持ローラ30,30は、上述した基準ローラ20,20と同様、円筒体90の内周面92に接触するため、検査対象領域である円筒体90の外周面91に接触痕が発生することを可及的に軽減している。
【0057】
この支持ローラ30,30は、その高さ位置を変更可能に支持されており、表面検査時には、円筒体90の上側の内周面92が一対の基準ローラ20,20にちょうど接触する高さ位置となるように、円筒体90の径サイズに応じて、その高さ位置が変更されるようになっている。
【0058】
また、支持ローラ30,30は、検査位置に円筒体90が搬入されてきた際には、基準ローラ20,20に近づくように移動して、基準ローラ20,20とともに円筒体90の内側に挿入できるようになっている。
【0059】
また、支持ローラ30,30は、両側からそれぞれ回転可能に支持されており、円筒体90の回転に連れ回りする回転体として構成されている。これにより、円筒体90の円滑な回転が確保される。
【0060】
また、支持ローラ30,30は、図2に示すように、円筒体90の軸方向についてそれぞれ外側に移動動作可能に支持されており、これにより、円筒体90を検査位置に搬入または搬出する際に、円筒体90の両外側に待避できるようになっている。
【0061】
また、支持ローラ30,30は、円筒体90の内周面と接触する小径部とその外側の大径部とを有し、小径部と大径部との境界部の立ち上がり面において、円筒体90の端面と接触するように構成されている。これにより、円筒体90をその軸方向について位置決めし、適切な姿勢で表面状態の検出が行われるようになっている。
【0062】
<表面状態検出器>
このようにして一対の基準ローラ20,20および支持ローラ30,30によって支持され、回転駆動される円筒体90は、検査対象領域である外周面91の表面状態が、表面状態検出器10によって検出される。
【0063】
表面状態検出器10は、円筒体90の外周面91の傷、凹み、汚れ、変色、変質、その他の表面欠陥のうち少なくとも1種類を検出する。
【0064】
この実施形態では、一対の基準ローラ(基準部)20,20と円筒体90の内周面92とが接触する接触部分を通る仮想的な直線に対し、円筒体90の外側から対峙する直線を、基準線と呼ぶこととする。
【0065】
表面状態検出器10は、円筒体90の外周面91のうち、この基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行うように、その位置および角度が設定されている。
【0066】
この実施形態では、表面状態検出器10は、円筒体90の外周面91に検査照明光を照射する照明11と、円筒体90からの反射光を受光してその表面状態を検出するカメラ13とを備えている。
【0067】
照明11は、たとえば円筒体90の長さに応じた蛍光灯等から構成され、円筒体90の外周面91の前記基準線を含む領域に検査照明光を照射するようになっている。
【0068】
カメラ13は、たとえば円筒体90の長手方向に沿った細長領域を検出領域とするラインセンサカメラ等から構成され、円筒体90の外周面91の前記基準線上またはその近傍領域を検出領域とするようにその位置および角度が設定されている。
【0069】
また、この実施形態では、表面状態検出器10が、検査照明光の反射光のうち、正反射光を受光することによって表面状態の検出を行う。このため、円筒体90の外周面91上の基準線の位置およびその面の向きに対して、照明11およびカメラ13は、両者の位置および角度が設定されている。
【0070】
ここで、円筒体90の内周面92が一対の基準ローラ20,20によって位置決めされるため、円筒体90の肉厚が変化しない限り、径サイズが変化しても、円筒体90の外周面91上の基準線の位置およびその面の向き(角度)は変化しない。
【0071】
表面状態検出器10は、照明11から照射される検査照明光が円筒体90の外周面91で反射した反射光をカメラ13で受光するものであるため、これらの位置(距離)および角度を正確に設定することが求められるが、基準ローラ20,20との接触により、円筒体90の外周面91の高さ位置および向き(角度)は円筒体90の径サイズが変化しても変化しないため、そのまま何らの検査治具等を交換することなく、円筒体90の種々の径サイズに容易に対応することができ、また、検査治具等の交換を要しないことから高い検査精度も確保することができる。
【0072】
このため、同一の治具を各径サイズの円筒体90の検査に汎用的に使用することができる。
【0073】
また、検査対象とする円筒体90の径サイズを変更する場合であっても、表面状態検出器10と基準線との位置関係が変化しないため、再調整等が不要であり、段取り替えに要する工数や時間を低減することができる。
【0074】
したがって、高精度で多様な径サイズの円筒体90に対応し、工業化に好適な安価な検査システムを構築できる。
【0075】
<検査手順>
次に、この表面検査装置における表面検査の手順について説明する。図3〜図5は、この装置における検査手順の各工程の説明図であり、各図において(a)は同装置の正面図、(b)は同装置の側面図である。
【0076】
図3は、検査対象物である円筒体90が搬入される前の状態を示している。この図3において、破線は検査実行時に円筒体90が位置する検査位置であり、図3(a)に示すように、円筒体90の搬入前は、一対の基準ローラ20,20および支持ローラ30,30は、円筒体90の両外側に待避しているとともに、図3(b)に示すように、円筒体90の内径の内側に挿入できるように、支持ローラ30,30は基準ローラ20,20に接近している。
【0077】
図4は、検査対象物である円筒体90が検査位置に搬入されてきた状態を示している。この図4(a)および(b)に示すように、円筒体90は、たとえば一対の一時取置き台40,40によってその両端部を下側から支持されて搬入され、下方から検査位置の若干上方位置まで持ち上げられる。このとき、基準ローラ20および支持ローラ30の高さ位置は、円筒体90の内周面92の完全に内側に位置している。そして、図4(a)に示すように一対の基準ローラ20,20および支持ローラ30,30は、円筒体90の内周面92の内側に挿入される。
【0078】
図5は、表面検査の実行状態を示している。この図5(a)および(b)に示すように、円筒体90の内周面92の内側に基準ローラ20,20および支持ローラ30,30が挿入されれば、一時取置き台40,40は下降し、これにより円筒体90は、その内周面92の上部において一対の基準ローラ20,20に支持された状態となる。引き続き、支持ローラ30,30も円筒体90の内周面92の下側に当接するまで下降して円筒体90を確実に基準ローラ20,20に接触させる。この状態で、基準ローラ20が図示しない回転駆動源により回転駆動されることにより円筒体90が回転し、表面状態検出器10の照明11およびカメラ13によって、基準線上の表面欠陥が順次検出される。
【0079】
この表面欠陥の検出は、円筒体90の回転が安定してから行うことが好ましい。
【0080】
こうして円筒体90が一回転以上回転し、その全周について表面検査が完了すれば、基準ローラ20,20の回転を止め、この円筒体90対する表面検査を終了する。
【0081】
そして、上述した円筒体90を検査位置に搬入した手順とは逆の手順で円筒体が搬出される。
【0082】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、模式的な説明図を参照しながら説明する。上述した第1実施形態と実質的に同一の構成要素には同一符号を付している。
【0083】
図6は、この第2実施形態にかかる円筒体の表面検査方法を実行する検査装置の側面図である。図7は、同装置の正面図である。
【0084】
この第2実施形態は、検査対象物である円筒体(管体)90の高さ位置を決定する基準ローラを円筒体90の外側から接触させ、この接触部分を通る円筒体90の外周面上の仮想的な直線を基準線として、表面検査を行うものである。
【0085】
この第2実施形態においても、表面検査の対象となる円筒体(管体)90は、たとえば電子写真システムを構成する複写機、プリンタ、FAX装置、これらの複合機等において、感光ドラム、転写ローラ、現像ローラ、その他各部に利用されるものであり、その外周面91が表面検査の検査対象領域とされる。
【0086】
<基準ローラ>
基準ローラ25,25は、この第2実施形態では、円筒体90の両側端部の外周面91に接触している。
【0087】
これら一対の基準ローラ25,25は、表面検査時の高さ位置が一定となるように支持されており、表面検査における円筒体90の高さ位置を位置決めすることで、一対の基準部を構成する一対の基準体をなしている。なお、一対の基準部とは、表面検査時の円筒体90に接触してその高さ位置を一定化する部位であり、たとえばこのような一対の基準ローラ25,25によって構成されるものである。
【0088】
また、これら一対の基準ローラ25,25は、一旦適正な高さ位置に設定されれば、径サイズの異なる円筒体90に対する表面検査を行う場合であっても、その高さ位置が変化しないようになっている。これにより、一対の基準ローラ25,25の高さ位置は高い位置精度を確実に確保することができるようになっている。
【0089】
このように一対の基準ローラ25,25の高さ位置が安定していることにより、円筒体90の外周面91のうち、この基準ローラ25,25に接触している部分21は、図6に実線および破線で径サイズの異なる円筒体90,90’を表しているように、円筒体90,90’の径サイズによらず、常に同じ高さ位置に位置することとなる。これは、円筒体90の肉厚が異なる場合も同様である。
【0090】
また、これら一対の基準ローラ25,25は、その外周が中央部が円弧状に膨出した形状に構成され、円筒体90の外周面91に対して点接触するようになっている。これにより、一対の基準ローラ25,25と接触する円筒体90の高さ位置をより明確にして検査を行うことができる。
【0091】
これら一対の基準ローラ25,25は、両側からそれぞれ回転可能に支持されており、円筒体90の回転に連れ回りする回転体として構成されている。これにより、円筒体90の円滑な回転が確保される。
【0092】
また一対の基準ローラ25,25は、外側から当接するため、円筒体90の内側に挿入するために円筒体90の軸方向について移動動作させる必要がない。この点からも、一対の基準ローラ25,25は、高い位置精度を確保することができるものとなっている。
【0093】
<支持ローラ>
支持ローラ35,35は、この第2実施形態では、円筒体90の両側端部の内周面92の上部に接触して、円筒体90の重量を支持している。
【0094】
この支持ローラ35,35が円筒体90と接触する部分は、前記一対の基準ローラ25,25に対向する部分であって、円筒体90を上方に付勢して円筒体90の外周面91の上部を上記一対の基準ローラ25,25に確実に接触させるようになっている。
【0095】
このように円筒体90を支持する支持ローラ35,35は、円筒体90の内周面92に接触するため、検査対象領域である円筒体90の外周面91に接触痕が発生することを可及的に軽減している。
【0096】
この支持ローラ35,35は、その高さ位置を変更可能に支持されており、表面検査時には、円筒体90の上側の外周面91が一対の基準ローラ25,25にちょうど接触する高さ位置となるように、円筒体90の肉厚に応じて、その高さ位置が変更されるようになっている。
【0097】
また、支持ローラ35,35は、検査位置に円筒体90が搬入されてきた際には、基準ローラ25,25から離れるように移動して、円筒体90の内側に挿入できるようになっている。
【0098】
また、支持ローラ35,35は、両側からそれぞれ回転可能に支持されており、円筒体90の回転に連れ回りする回転体として構成されている。これにより、円筒体90の円滑な回転が確保される。
【0099】
また、支持ローラ35,35の一方は、検査実行時に図示しない駆動源から回転駆動力が伝達されて回転し、検査対象物である円筒体(管体)90を回転駆動するようになっている。これにより、円筒体90を回転駆動するために円筒体90に接触する部材を削減し、円筒体90が損傷する可能性が軽減される。
【0100】
また、支持ローラ35,35は、図7に示すように、円筒体90の軸方向についてそれぞれ外側に移動動作可能に支持されており、これにより、円筒体90を検査位置に搬入または搬出する際に、円筒体90の両外側に待避できるようになっている。
【0101】
<表面状態検出器>
このようにして一対の基準ローラ25,25および支持ローラ35,35によって支持され、回転駆動される円筒体90は、検査対象領域である外周面91の表面状態が、表面状態検出器10によって検出される。
【0102】
この表面状態検出器10は、上述した第1実施形態のそれと同様に、円筒体90の外周面91の傷、凹み、汚れ、変色、変質、その他の表面欠陥のうち少なくとも1種類を検出する。
【0103】
この第2実施形態では、一対の基準ローラ(基準部)25,25と円筒体90の外周面91とが接触する接触部分を通る仮想的な直線を基準線と呼ぶこととする。
【0104】
この第2実施形態の表面状態検出器10は、円筒体90の外周面91のうち、この基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行うように、その位置および角度が設定されている。
【0105】
この第2実施形態の表面状態検出器10の具体的な構成は、上述した第1実施形態のそれと同様であり、円筒体90の外周面91に検査照明光を照射する照明11と、円筒体90からの反射光を受光してその表面状態を検出するカメラ13とを備えている。
【0106】
照明11は、たとえば円筒体90の長さに応じた蛍光灯等から構成され、円筒体90の外周面91の前記基準線を含む領域に検査照明光を照射するようになっている。
【0107】
カメラ13は、たとえば円筒体90の長手方向に沿った細長領域を検出領域とするラインセンサカメラ等から構成され、円筒体90の外周面91の前記基準線上またはその近傍領域を検出領域とするようにその位置および角度が設定されている。
【0108】
また、この第2実施形態でも、表面状態検出器10が、検査照明光の反射光のうち、正反射光を受光することによって表面状態の検出を行う。このため、円筒体90の外周面91上の基準線の位置およびその面の向きに対して、照明11およびカメラ13は、両者の位置および角度が設定されている。
【0109】
ここで、円筒体90の外周面91が一対の基準ローラ25,25によって位置決めされるため、円筒体90の径サイズが変化しても、円筒体90の外周面91上の基準線の位置およびその面の向き(角度)は変化しない。
【0110】
特に、この第2実施形態では、基準ローラ25,25が円筒体90の外周面91に接触するため、円筒体90の肉厚が変化しても、前記基準線の位置および向きは変化しない。
【0111】
表面状態検出器10は、照明11から照射される検査照明光が円筒体90の外周面91で反射した反射光をカメラ13で受光するものであるため、これらの位置(距離)および角度を正確に設定することが求められるが、基準ローラ25,25との接触により、円筒体90の外周面91の高さ位置および向き(角度)は円筒体90の径サイズや肉厚が変化しても変化しないため、そのまま何らの検査治具等を交換することなく、円筒体90の種々の径サイズや肉厚に容易に対応することができ、また、検査治具等の交換を要しないことから高い検査精度も確保することができる。
【0112】
このため、同一の治具を各径サイズの円筒体90の検査に汎用的に使用することができる。
【0113】
また、検査対象とする円筒体90の径サイズや肉厚を変更する場合であっても、表面状態検出器10と基準線との位置関係が変化しないため、再調整等が不要であり、段取り替えに要する工数や時間を低減することができる。
【0114】
したがって、高精度で多様な径サイズや肉厚の円筒体90に対応し、工業化に好適な安価な検査システムを構築できる。
【0115】
<検査手順>
次に、この第2実施形態にかかる表面検査装置における表面検査の手順について説明する。図8〜図10は、この装置における検査手順の各工程の説明図であり、各図において(a)は同装置の正面図、(b)は同装置の側面図である。
【0116】
図8は、検査対象物である円筒体90が搬入される前の状態を示している。この図8において、破線は検査実行時に円筒体90が位置する検査位置であり、図8(a)に示すように、円筒体90の搬入前は、支持ローラ35,35は、円筒体90の両外側に待避しているとともに、図8(b)に示すように、円筒体90の内径の内側に挿入できるように、支持ローラ35,35は基準ローラ25,25から円筒体90の肉厚分以上離れている。なお、一対の基準ローラ25,25の位置は検査実行時に位置すべき位置にある。
【0117】
図9は、検査対象物である円筒体90が検査位置に搬入されてきた状態を示している。この図9(a)および(b)に示すように、円筒体90は、たとえば一対の一時取置き台40,40によってその両端部を下側から支持されて搬入され、下方から検査位置の若干下方位置まで持ち上げられる。このとき、基準ローラ25は、円筒体90の外周面91より上方に位置し、支持ローラ30は、円筒体90の内周面92の完全に内側に位置している。そして、図9(a)に示すように支持ローラ35,35は、円筒体90の内周面92の内側に挿入される。
【0118】
図10は、表面検査の実行状態を示している。この図10(a)および(b)に示すように、円筒体90の内周面92の内側に支持ローラ35,35が挿入されれば、一時取置き台40,40は下降し、これにより円筒体90は、その内周面92の上部において支持ローラ35,35に支持された状態となる。引き続き、支持ローラ35,30は円筒体90を支持した状態で上昇し、円筒体90の外周面91を基準ローラ25,25に接触させる。この状態で、支持ローラ35が図示しない回転駆動源により回転駆動されることにより円筒体90が回転し、表面状態検出器10の照明11およびカメラ13によって、基準線上の表面欠陥が順次検出される。
【0119】
この表面欠陥の検出は、円筒体90の回転が安定してから行うことが好ましい。
【0120】
こうして円筒体90が一回転以上回転し、その全周について表面検査が完了すれば、支持ローラ35の回転を止め、この円筒体90に対する表面検査を終了する。
【0121】
そして、上述した円筒体90を検査位置に搬入した手順とは逆の手順で円筒体が搬出される。
【0122】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0123】
図11は、本発明の第3実施形態にかかる表面検査装置の正面図である。図12は、同装置の平面図である。図13は、同装置の側面図である。
【0124】
この表面検査装置500は、図11に示すように、光源510、遮光体520、カメラ530、検査位置の管体(検査対象物)90を支持するチャック部570およびカメラ530によって撮像された画像を処理する画像処理装置580等を備えた検査装置本体501と、検査装置本体501に管体90を供給する管体供給コンベア551と、検査装置本体501から管体90を順次搬出する合格品搬出コンベア552および不合格品搬出コンベア553とを備えている。
【0125】
管体供給コンベア551は、上縁部がV型に切り欠かれた管体支持台559…で各管体90…の両端近傍部分を支持し、各管体支持台559…を図示しない駆動チェーンで移動させることにより、検査前の管体90を検査装置本体501に移送する。
【0126】
検査装置本体501の管体供給側(図11,図12の左側)には、管体90を両側端部から挟んで持ち上げて移送するコンベア間移載装置554が設けられており、管体供給コンベア551によって搬送されてきた管体90を、コンベア間移載装置554によって検査装置本体501内の搬送コンベア561に移載するようになっている。
【0127】
合格品搬出コンベア552および不合格品搬出コンベア553は、ともに、上縁部がV型に切り欠かれた管体支持台559…で各管体90…の両端近傍部分を支持し、各管体支持台559…を図示しない駆動チェーンで移動させることにより、検査後の管体90を検査装置本体501から搬出する。また、合格品搬出コンベア552と不合格品搬出コンベア553をまたぐ位置には、不合格品払出ロボット556が設けられており、検査装置本体501における検査で不合格品と判定された管体90を、合格品搬出コンベア552上から不合格品搬出コンベア553上に送り出すようになっている。
【0128】
検査装置本体501の管体搬出側(図11,図12の右側)には、管体90を両側端部から挟んで持ち上げて移送するコンベア間移載装置555が設けられており、検査装置本体501内の搬送コンベア562上の管体90を、コンベア間移載装置555によって合格品搬出コンベア552に移載するようになっている。
【0129】
検査装置本体501内の搬送コンベア561,562は、上縁部がV型に切り欠かれた管体支持台563…で各管体90…の両端近傍部分を支持し、各管体支持台563…を駆動チェーンで移動させることにより、検査直前および直後の管体90を移送する。
【0130】
<回転移送装置>
検査前後の搬送コンベア561,562の間には、管体90を検査位置Bに移送する回転移送装置564が配置されている。この回転移送装置564は、管体90を支持するチャック部570を複数(ここでは4個)備えている。
【0131】
各チャック部570…は、回転駆動モータ565の回転軸566に接続された回転フレーム567に取り付けられており、搬送コンベア561から管体90を取り出すの取出位置Aと、光源510、遮光体520およびカメラ530等の検査光学系による検査を実行する検査位置Bと、搬送コンベア562に管体90を送り出す送出位置Cとに同時に位置するチャック部570…が存在するように配置されている。
【0132】
そして、取出位置Aに位置するチャック部570は搬送コンベア561から検査前の管体90をチャックして取り出し、検査位置Bに位置するチャック部570は管体90を回転支持して表面検査を実行し、送出位置Cに位置するチャック部570は検査後の管体90のチャックを解除して搬送コンベア562に送り出す作業を、同時並行して行うことができるようになっている。また、取出位置Aから検査位置Bに移動するチャック部570は、検査位置Bに搬送するまでに管体90の回転が安定するように、予め管体90の回転駆動を開始するようになっており、これにより検査位置Bに到着すれば即座に表面検査を実行して、サイクルタイムの短縮を図ることができるようになっている。
【0133】
<チャック部>
図14は、第3実施形態におけるチャック部570の正面図である。図15は、同チャック部570の側面図である。
【0134】
これらの図に示すように、各チャック部570は、1つの基準ローラ571と、2つの支持ローラ572,572とを備えており、管体90の両側に配置された一対のチャック部570,570が協働して、1本の管体90をチャックするようになっている。
【0135】
各チャック部570における基準ローラ571は、検査位置Bにおける姿勢では、管体90の内周面の上側に接触してその高さ位置を規定する。この基準ローラ571は、基準部を構成している。基準ローラ571は、チャック部本体576に対して回転可能に取り付けられ、検査実行時に管体90とともに回転する。また、協働して1本の管体90をチャックする一対のチャック部570の一方には、基準ローラ回転駆動モータ573が設けられ、検査実行時に基準ローラ571を回転駆動することにより、管体90を回転させることができるようになっている。
【0136】
支持ローラ572,572は、検査位置Bにおける姿勢では、管体90の内周面の下側左右にそれぞれ接触し、エア駆動圧によって管体90を下方に付勢することにより、管体90の内周面の上側を確実に基準ローラ571に接触させて、その高さ位置を安定させる。また、支持ローラ572、572は、チャック部本体576に対して回転可能に取り付けられ、検査実行時には管体90とともに回転する。また、支持ローラ572,572は、図14,図15に破線と実線とで示すように、検査位置Bにおける姿勢では、上下方向に移動することにより基準ローラ571との距離を管体90の内径よりも小さくして、管体90をチャックする前後には基準ローラ571とともに管体90の内側に挿入することができるようになっている。これらの動作のため、各チャック部570…には、支持ローラ572,572をエア駆動圧によって上下に移動動作させる支持ローラ駆動部574が設けられている。
【0137】
基準ローラ571および支持ローラ572,572が取り付けられたチャック部本体576は、回転移送装置564の回転フレーム567に取り付けられたチャック部ベース577に対し、スライド駆動部575によって管体90の軸方向にスライド動作可能となっており、管体90を両外側から挟み込んでチャックすることができるようになっている。
【0138】
<光源>
光源510は、検査位置Bに搬送されてきた管体90に対して検査のための光を照射する。この光源510は、高輝度が得られる蛍光灯等のライン状光源から構成され、管体90の長手方向に沿った広がりを有している。この光源510は、図11に示すように、光源支持フレーム513によって、検査位置Bにある管体10のほぼ真上に配置され、照射する光を効率的に管体10側に向けるため、光源フード512によって下方以外が覆われている。
【0139】
<遮光体>
遮光体520は、光源510から照射される光の一部を遮光して、管体90の外周面91に種々の異なる光学条件を構成する。
【0140】
図16は、第3実施形態における遮光体520の斜視図である。図16に示すように、第3実施形態の遮光体520は、スリット孔状の透光部523…と、遮光部524…とが交互に繰り返すように形成されたスリット体から構成されている。透光部523および遮光部524の大きさは、適宜設定することができるが、たとえば、透光部523の幅(開口幅)aは1〜6mm程度、遮光部524の幅bは3〜6mm程度が好ましい。
【0141】
この遮光体520は、図11〜図13に示すように、遮光体支持台525に取り付けられ、光源510と検査位置Bの管体90との間に配置されている。
【0142】
<カメラ>
カメラ530は、多数の光量検出要素が一次元的に配列されてなるラインセンサ532と、所定の検出領域531をラインセンサ532上に結像するレンズ等を備えたラインセンサカメラとして構成されており、検出領域531の各部から入射する光量を検出する。このカメラ530は、その位置および角度を微調整可能なカメラ支持台534に取り付けられ、検査位置Bの管体90の外周面91の所定位置を検出領域として狙っている。
【0143】
<スライドテーブル>
遮光体520が取り付けられる遮光体支持台525およびカメラ530が取り付けられるカメラ支持台534は、ともにスライドテーブル540上に取り付けられ、検査位置Bの管体90の軸方向についてスライド移動動作可能となっている。すなわち、スライドテーブル540は、本体フレーム502に固定されたスライドテーブル支持台542上をスライドコロ541によってスライド移動動作可能に支持され、スライド駆動モータ543によってスライド駆動されるようになっている。
【0144】
このスライド駆動動作のストロークは、遮光体520の透光部523の幅aおよび遮光部524の幅bの和よりも大きく設定されている。具体的には、たとえば、透光部523の幅aおよび遮光部524の幅bの和の1.1倍以上程度が好ましい。これにより、管体90の外周面の検査対象領域91の軸方向位置の全域が、遮光体520の透光部523および遮光部524の直下に位置する場合が実現されるようになっている。
【0145】
この第3実施形態では、光源510、遮光体520、カメラ530、およびスライドテーブル540等が、管体(円筒体)90の表面状態を光学的に検出する光学的表面状態検出器として機能するようになっている。
【0146】
<要部>
図17は、第3実施形態にかかる管体90の表面検査装置の要部の概略を表した側面図である。図18は、同斜視図である。
【0147】
図17に示すように、カメラ530は、管体90の曲率に応じて、遮光体520が存在しなければ常に光源510から管体90外周面の検査対象領域91に入射する光の正反射光を受光する位置に配置されている。
【0148】
また、カメラ530による検出領域531は、管体90の内周面側において一対の基準ローラ571,571と接触する2つの接触部分を通る仮想的な直線に対して管体90の外側から対峙する基準線上に設定されている。この基準線上の領域は、管体90の各部のうちで、基準ローラ571によって支持されているために最も位置および角度が安定する部分である。したがって、管体90の曲がり等の形状精度により、表面検査の結果に影響が及ぶことを低減することができる。
【0149】
また、カメラ531による検出領域531は基準ローラ571に対向する部分となっているため、径サイズが異なる管体90であっても、ほぼ同一の光学条件を構成することができる。とくに、管体90の厚みが同一であれば、検出領域531については実質的に同一の光学条件を構成することができる。したがって、種々のサイズの管体90の表面検査を行う場合であっても、段取り替えに要する手間および時間を最小限に抑え、効率的に表面検査を実行することができる。
【0150】
また、管体90は、その内周面側から支持されているため、基準ローラ571等が管体90の外周面91に影を生じるなどの表面検査への悪影響を低減することができる。
【0151】
また、図18に示すように、光源510は、管体90の軸方向に広がりを有し、下向きに種々の角度の光を照射するため、管体90外周面の検査対象領域91の各部位には遮光体520のの透光部523を通過した種々の角度の光が入射するが、遮光体520の遮光部524…により入射する光の角度は制限されている。このため、カメラ530から見ると、カメラ530の検出領域531には、カメラ530に入射する正反射光が存在する正反射光領域528と、正反射光が存在しない正反射光制限領域529とが形成されている。第3実施形態では、正反射光領域528は明領域、正反射光制限領域529は暗領域となっており、カメラ530の検出領域531は、明領域と暗領域とこれらの境界領域とを通過する連続した領域となっている。
【0152】
また、明領域および暗領域は、検出領域531の長手方向について複数の明領域と暗領域とが交互に繰り返すように形成され、検出領域531は、明領域および暗領域の境界領域が延びる方向に対して垂直に境界領域を横切っている。このため、検出領域531が境界領域を確実に横切って明領域と暗領域と境界領域とを同時に検出することができるようになっている。
【0153】
具体的な表面検査の実行は、検査位置Bに送り込まれ、基準ローラ570によって回転駆動される管体90に対して、カメラ530により連続的にその外周面91を撮像することによって行われる。したがって、管体90の外周面91の各周方向位置が順次カメラ530の検出領域531となり、その全域を検査することができる。
【0154】
また、こうして管体90を回転させながら、遮光体520は管体90の軸方向について、遮光体520の透光部523の幅aおよび遮光部524の幅bの和よりも大きなストロークでスライド移動動作する。このため、管体90の外周面91全域を正反射光領域(明領域)528および正反射光制限領域(暗領域)529、さらにこれらの境界領域としてカメラ530の検出領域531に含れることとなり、外周面91の全域について異なる光学条件のもとで表面検査を行うことができる。
【0155】
また、カメラ530が遮光体520とともにスライド移動動作するため、カメラ530の検出領域531内では、常に同じ位置に正反射光領域(明領域)528および正反射光制限領域(暗領域)529が形成されることになる。このため、表面欠陥の検出を、単純な画像処理によって確実に行うことができる。
【0156】
また、管体90を回転させながら遮光体520およびカメラ530が管体90の軸方向に移動するため、管体90の外周面91上の正反射光領域528や正反射光制限領域529、さらにカメラ530の検出領域531は、管体90の外周面91上を螺旋状に移動することとなる。この場合、管体90の外周面91上の各部位は、遮光体520およびカメラ530の移動により、管体90の一回転毎に異なる光学条件の下で表面検査されることになる。
【0157】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0158】
この第4実施形態は、上述した第3実施形態にかかる表面検査装置500を備えた管体90の製造システムである。
【0159】
図19は、第4実施形態にかかる管体の製造システム7の構成を示す機能ブロック図である。
【0160】
この製造システム7は、管体10を製管する製管装置71と、上述した管体の表面検査装置500と、表面検査装置500の検査結果を製管装置71にフィードバックするフィードバック部72とを備えている。
【0161】
製管装置71は、たとえば、アルミニウム合金の引抜き加工によって感光ドラム基体を製管する場合であれば、原料を溶解させて押出加工材料を製造する工程、押出工程、引抜工程、曲がり矯正工程、所定長さへの切断工程、粗洗浄工程、仕上げ洗浄工程等を実行する各機械装置の集合として構成されている。
【0162】
押出工程は、たとえばアルミニウム製のビレットを押出してアルミニウム押出素管を得る工程である。
【0163】
図20は、この押出工程を行う押出機の概略平面図である。押出機本体73から押し出されたアルミニウム押出素管74は、複数対配置された支持ローラ75…によって押出方向前方に搬送され、切断機76により所定長さRに切断される。
【0164】
図21は、押出機本体が備える押出ダイスの一例における断面図である。この押出ダイス77は、ポートホールダイスであり、771はダイス雌型、772はダイス雄型である。ダイス雌型771には中央部に貫通上の押出孔773が形成されるとともに、押出孔773の入口側の周面が円形のベアリング部774となされている。なお、775はレリーフ部である。一方、ダイス雄型772は、その中央部に断面円形の成型凸部776を有するとともに、成形凸部776の先端周面に円形のベアリング部777が形成されている。なお778は、アルミニウムビレットを通過させる通過孔である。そして、前記ダイス雌型771と前記ダイス雄型772とが組み合わされ、雄型772の成形凸部776先端が雌型771の押出孔773に望んで雌雄両型のベアリング部774,777が環状の成形間隙779を介して対向状の配置されている。
【0165】
なお、押出方式は特に限定されることはなく、ポートホールダイスを用いたものでもマンドレル押出でもよい。
【0166】
引抜き工程は、押出加工によって得られた所定長さのアルミニウム押出素管を引抜き加工してアルミニウム引抜管を得る工程である。
【0167】
図22は、この引抜き工程を行う引抜き機の一例を示す断面である。この引抜き機78は、たとえば、アルミニウム押出素管781を引抜きダイス782と引抜きプラグ783との間に通し、押出素管781先端に形成された口付け部784をキャリッジ部のチャック部785で掴んで該キャリッジ部を前方に移動させることにより、アルミニウム引抜き管786を得るようになっている。引抜きプラグ783は、ロッド787によって支持されている。このロッド787には1個または複数個の中子788がその略全長に亘って装着されており、この中子788は、押出素管781の内周面に当接して自重により押出素管781がたわむことを防止して、引抜きの初めから終わりまで押出素管781の軸線をダイス782の軸線に一致した状態に保持できるようになっている。また、引抜き加工中には、引抜きダイス782と押出素管781との間に潤滑油が供給されるようになっている。
【0168】
なお、この引抜き工程は、プラグを固定しない浮きプラグ引き方式によって引抜きを行うようにしてもよい。また、引抜きは、1回だけ行ってアルミニウム引抜き管を得るようにしてもよいが、引抜きを複数回繰り返し行って順次的に縮径し、もってアルミニウム引抜き管を得るようにするのが好ましい。とくに、引抜きを2回行ってアルミニウム引抜き管を得るのが好ましい。
【0169】
曲がり矯正工程は、引抜き加工によって得られたアルミニウム引抜き管の曲がりを矯正する工程である。具体的には、引抜き加工によって得られたアルミニウム引抜き管は、まず、その口付け部がプレス切断法により除去され、その後、ロール矯正機に投入され、内部の矯正ロールの作用で真っ直ぐに矯正される。
【0170】
図23は、口付け部切除工程を行う切断機の一例を示す断面図である。この切断機79は、アルミニウム引抜き管791の口付け部792側の端部を金型793,793の内方に挿入し、切断刃794を下降させることにより、該口付け部792を切断除去する。この切断は突切り刃によって行われるから切粉の発生はなく、切粉等がロール矯正機内に持ち込まれ、アルミニウム引抜き管791にキズがつくことがないようになっている。
【0171】
図24は、曲がり矯正工程を行うロール矯正機の一例を示す概念図である。このロール矯正機81は、その内部の矯正ローラ812の作用によって、口付け部が切除されたアルミニウム引抜き管811を真っ直ぐに矯正するようになっている。
【0172】
粗洗浄工程は、上記引抜き工程等においてアルミニウム引抜き管に付着した潤滑油等を除去する工程である。この粗洗浄工程は、たとえば脱脂力を有する溶剤を用いて行われる。具体的手法としては、特に限定されないが、たとえば浸漬法、シャワー法等が挙げられる。
【0173】
仕上げ洗浄工程は、好適には、たとえば超音波洗浄によって行われる。
【0174】
図25は、超音波洗浄機の一例を示す概念図である。この超音波洗浄機83は、洗浄槽831に貯められた洗浄液832に被洗浄物である複数個のアルミニウム引抜き管833を浸漬しておき、振動子834によって洗浄液832中に超音波を送ることにより、被洗浄物であるアルミニウム引抜き管833を洗浄するものである。
【0175】
超音波の照射方式は特に限定されることはなく、図25に示す投げ込み型のほか、接着型、振動伝達子型その他各種の洗浄機を用いることができる。また、洗浄液としては、一般には白灯油、軽油、アルカリ、界面活性剤あるいはトリクロロエチレンなどが用いられるが、これらに限定されることはなく、水系、炭化水素系、塩素系有機溶媒などを適宜用いればよい。
【0176】
上記のような押出工程、切断工程、引抜き工程、曲がり矯正工程、洗浄工程、仕上げ洗浄工程を経て得られた管体(アルミニウム引抜き管)90は、表面品質精度に優れ、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置の感光ドラム基体として好適である。
【0177】
こうして製管された管体(アルミニウム引抜き管)90は、上述した表面検査装置500においてその表面状態が所定の許容範囲内にあるか否かが検査され、この検査結果が所定の許容範囲内にあるのであれば、その管体90を完成品と判定する。
【0178】
また、表面検査装置500において、管体90に発生している不良の種類や特徴等が判別された場合には、この検査結果をフィードバック部72が製管装置71にフィードバックし、これにより不良管の発生を未然に防止するようになっている。
【0179】
こうして検査結果がフィードバックされた製管装置71においては、検査結果の内容に応じて、製管条件の設定に供される。具体的には、押出ダイスの取付状態や押出速度等の押出条件の設定、素管の選別、引抜きダイスの取付状態の確認や引抜き速度等の引抜き条件の設定、ロール矯正機におけるロール高さ調整や搬送速度等のロール矯正機条件が制御される。これにより、より確実に必要十分な表面精度を持った管体を得ることができるとともに、仮に不良管が発生した場合でも、速やかにこれに対応し、不良管の発生数を抑えることができる。
【0180】
このような製造システム7によれば、所定の形状精度を有する管体、および管体の集合を確実に得ることができる。
【0181】
[その他の実施形態]
以上、本発明をいくつかの具体的な実施形態に基づいて説明したが、本発明は、以下のように構成してもよい。
【0182】
(1)円筒体90の内周面92に一対の基準部を当接させる場合であっても、基準部と円筒体90の内周面92とを確実に接触させる支持ローラ等の構成は、上述した各実施形態に限定されない。
【0183】
図26は、円筒体の外周面に接触する部材によって基準部に円筒体の内周面を確実に接触させるように構成した変形例であり、(a)はその正面説明図、(b)は同側面図である。この例では、一対の基準ローラ20,20を円筒体90の内周面92の上側に接触する位置に設ける一方、円筒体90の両側それぞれにおいて、2つずつの支持ローラ31…を基準ローラ20,20の接触部と周方向にずれた両側に配置している。このようにすると、円筒体90が一対の基準ローラ20,20に接触した状態で、周方向に揺動することを防止することができ、検出領域の向き(角度)をより安定させて表面状態の検出を行うことができる。
【0184】
図27は、円筒体の外周面に接触する部材によって基準部に円筒体の内周面を確実に接触させるように構成した変形例であり、(a)はその正面説明図、(b)は同側面図である。この例では、一対の基準ローラ20,20を円筒体90の内周面92の上側に接触する位置に設ける一方、円筒体90の両側それぞれにおいて、プーリ33,33に掛け渡された固定ワイヤ32によって円筒体90を一対の基準ローラ20,20に押し付けるように構成している。このようにすると、一対の基準ローラ20,20の接触部に対向する基準線の近傍において、支持ローラ等が表面検出器10による検査照明光等を遮ることを軽減して、好適な検出条件で表面状態の検出を行うことができる。
【0185】
図28は、円筒体の外周面に接触する部材によって基準部に円筒体の内周面を確実に接触させるように構成した変形例であり、(a)はその正面説明図、(b)は同側面図である。この例では、一対の基準ローラ20,20を円筒体90の内周面92の上側に接触する位置に設ける一方、外周面をテーパー状に構成した支持ローラ34,34を円筒体90の内周面92の下側に接触するように配置している。このようにすると、円筒体90が軸方向にずれることを可及的に防止しながら、安定した状態で表面状態の検出を行うことができる。
【0186】
(2)円筒体90の外周面91に一対の基準部を当接させる場合であっても、基準部と円筒体90の外周面91とを確実に接触させる支持ローラ等の構成は、上述した各実施形態に限定されない。
図29は、円筒体の外周面に接触する部材によって基準部に円筒体の外周面を確実に接触させるように構成した変形例であり、(a)はその正面説明図、(b)は同側面図である。この例では、一対の基準ローラ25,25を円筒体90の外周面91の上側に接触する位置に設ける一方、円筒体90の両側それぞれにおいて、2つずつの支持ローラ36…を円筒体90の外側であって最下部から周方向にずれた両側に配置している。このようにすると、円筒体90が一対の基準ローラ25,25に接触した状態で、周方向に揺動することを防止することができ、検出領域の向き(角度)をより安定させて表面状態の検出を行うことができる。
【0187】
図30は、円筒体の外周面に接触する部材によって基準部に円筒体の外周面を確実に接触させるように構成した変形例であり、(a)はその正面説明図、(b)は同側面図である。この例では、一対の基準ローラ25,25を円筒体90の外周面91の上側に接触する位置に設ける一方、円筒体90の両側それぞれにおいて、2つずつの支持ローラ37…を円筒体90の内側であって一対の基準ローラ25,25との接触部分から周方向にずれた両側に配置している。このようにすると、円筒体90が一対の基準ローラ25,25に接触した状態で、周方向に揺動することを防止することができ、検出領域の向き(角度)をより安定させて表面状態の検出を行うことができる。
【0188】
図31は、円筒体の内周面に接触する部材によって基準部に円筒体の内周面を確実に接触させるように構成した変形例であり、(a)はその正面説明図、(b)は同側面図である。この例では、一対の基準部をプーリ27,27に掛け渡された基準ワイヤ26,26によって構成し、円筒体90の内周面92の上側に接触する支持ローラ35,35によって円筒体を前記基準ワイヤ26,26に押し付けるように構成している。このようにすると、一対の基準部(基準ワイヤ)26,26の接触部に対向する基準線の近傍において、基準ローラ等が表面検出器10による検査照明光等を遮ることを軽減して、好適な検出条件で表面状態の検出を行うことができる。
【0189】
図32は、円筒体の内周面に接触する部材によって基準部に円筒体の外周面を確実に接触させるように構成した変形例であり、(a)はその正面説明図、(b)は同側面図である。この例では、一対の基準ローラ25,25を円筒体90の外周面91の上側に接触する位置に設ける一方、外周面をテーパー状に構成した支持ローラ38,38を円筒体90の内周面92の上側に接触するように配置している。このようにすると、円筒体90が軸方向にずれることを可及的に防止しながら、安定した状態で表面状態の検出を行うことができる。
【0190】
(3)上記各実施形態においては、一対の基準部は、円筒体と点接触する基準ローラ等から構成したが、一対の基準部は、円筒体に対して線接触するように構成してもよい。たとえば、一対の基準部を円筒体の軸方向について所定の接触長さをもって線接触する円柱体から構成すれば、検査対象物である円筒体と基準部との接触圧を低減して、円筒体が過度に変形するなどの事態を未然に防止することができる。
【0191】
(4)一対の基準部は、検査対象物たる円筒体とともに回転しないものであってもよい。たとえば、摩擦係数の低い材質で不動の基準部を構成し、円筒体を基準部に対して滑らせながら回転させるようにしてもよい。
【0192】
(5)上記実施形態では、基準線上の表面状態を検出するようにしたが、基準線の近傍の表面状態を検出するようにしてもよい。
【0193】
(6)上記実施形態では、円筒体の外周面の表面状態を光学的に検出するように構成し、カメラを検査照明光の正反射光を受光する位置に配置したが、正反射光を受光する位置からずれた位置を狙うようにカメラを配置し、表面欠陥が存在する場合に正反射光がカメラに入射するようにしてもよい。
【0194】
(7)上記実施形態では、ラインセンサカメラによって表面状態を検出するようにしたが、エリアセンサカメラ等を採用してもよい。
【0195】
(8)上記実施形態では、円筒体の外周面の表面状態を光学的な検出器によって検出したが、表面状態検出器は、円筒体の表面状態を検出することができるものであれば、任意の検出器を採用することができる。
【0196】
たとえば、光干渉式表面形状測定装置(位相シフト法)、検出領域に接触する作動トランス方式の検出装置、走査型共焦点レーザ顕微鏡(レーザ変位計)、ヘテロダイン、電子力間顕微鏡、表面電位計、材料特定や鏡面光沢度の測定装置等を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0197】
この発明の円筒体の表面検査方法は、円筒体の表面状態を検査する際に用いることができる。
【符号の説明】
【0198】
10 表面状態検出器
11 照明
13 カメラ
20 基準ローラ(基準部)
30 支持ローラ
90 円筒体
91 円筒体の外周面
92 円筒体の内周面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の両側端部の内周面に一対の基準部を接触させ、
前記円筒体と前記一対の基準部との接触部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させ、
前記一対の基準部は、前記円筒体の回転に連れ回りする一対の基準ローラであり、
前記円筒体の内周面と前記一対の基準部との2つの接触部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体の外側から対峙する基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行うとともに、
前記表面状態の検出は、照明によって前記基準線上またはその近傍に光を照射し、その反射光をカメラで受光することによって行うものとし、
一つの基準ローラに対し、2つの支持ローラを備えており、これらの3つのローラを円筒体の内周面における3箇所に接触させるようにしたことを特徴とする円筒体の表面検査方法。
【請求項2】
前記円筒体の内周面における上端部に前記基準ローラを接触させ、下部両側に前記支持ローラを接触させることを特徴とする請求項1に記載の円筒体の表面検査方法。
【請求項3】
円筒体の両側端部の外周面に一対の基準部を接触させ、
前記円筒体と前記一対の基準部との接触部分が前記円筒体の外周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させ、
前記一対の基準部は、前記円筒体の回転に連れ回りする一対の基準ローラであり、
前記円筒体の外周面と前記一対の基準部との2つの接触部分を通る前記円筒体の外周面上の仮想的な基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行うとともに、
前記表面状態の検出は、照明によって前記基準線上またはその近傍に光を照射し、その反射光をカメラで受光することによって行うものとし、
一つの基準ローラに対し、2つの支持ローラを備えており、これらの3つのローラを円筒体の外周面における3箇所に接触させるようにしたことを特徴とする円筒体の表面検査方法。
【請求項4】
前記円筒体の外周面における上端部に前記基準ローラを接触させ、下部両側に前記支持ローラを接触させることを特徴とする請求項3に記載の円筒体の表面検査方法。
【請求項5】
円筒体の両側端部の内周面に一対の基準部を接触させ、
前記円筒体と前記一対の基準部との接触部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させ、
前記一対の基準部は、前記円筒体の回転に連れ回りする一対の基準ローラであり、
前記円筒体の内周面と前記一対の基準部との2つの接触部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体の外側から対峙する基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行うとともに、
前記表面状態の検出は、照明によって前記基準線上またはその近傍に光を照射し、その反射光をカメラで受光することによって行うものとし、
前記円筒体の回転は、前記基準ローラを回転駆動させることによって行うようにしたことを特徴とする円筒体の表面検査方法。
【請求項6】
径サイズの異なる円筒体を順次検査することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の円筒体の表面検査方法。
【請求項7】
段取り替え時に、前記照明および前記カメラの位置や角度を再調整しないことを特徴とする請求項6に記載の円筒体の表面検査方法。
【請求項8】
前記一対の基準部は、前記円筒体に対して点接触することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の円筒体の表面検査方法。
【請求項9】
前記一対の基準部は、前記円筒体に対して線接触することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の円筒体の表面検査方法。
【請求項10】
前記表面状態の検出は、前記基準線上またはその近傍からの正反射光を受光することによって行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の円筒体の表面検査方法。
【請求項11】
表面精度が求められる円筒体を成型する工程と、
前記円筒体を検査対象物として請求項1〜10のいずれかに記載の表面検査方法を行う表面検査工程と、
前記表面検査工程における検査結果が所定の基準を満たすか否かにより当該円筒体を分別し、前記所定の基準を満たす場合に当該円筒体を完成品とする判別工程と、
を備えたことを特徴とする円筒体の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の円筒体の製造方法により製造されたことを特徴とする円筒体。
【請求項13】
請求項11に記載の円筒体の製造方法により製造されたことを特徴とする感光ドラム用基体。
【請求項14】
円筒体の両側端部の内周面に接触する一対の基準部と、
前記円筒体と前記一対の基準部との接触部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させたときに、前記円筒体の内周面と前記一対の基準部との2つの接触部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体の外側から対峙する基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行う表面状態検出器と、を備え、
前記一対の基準部は、前記円筒体の回転に連れ回りする一対の基準ローラであり、
前記表面状態検出器は、前記基準線上またはその近傍に光を照射する照明と、円筒体からの反射光を受光するカメラとを備え、
一つの基準ローラに対し、2つの支持ローラを備えており、これらの3つのローラを円筒体の内周面における3箇所に接触させるようにしたことを特徴とする円筒体の表面検査装置。
【請求項15】
前記円筒体の内周面における上端部に前記基準ローラを接触させ、下部両側に前記支持ローラを接触させることを特徴とする請求項14に記載の円筒体の表面検査装置。
【請求項16】
円筒体の両側端部の外周面に接触する一対の基準部と、
前記円筒体と前記一対の基準部との接触部分が前記円筒体の外周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させたときに、前記円筒体の外周面と前記一対の基準部との2つの接触部分を通る前記円筒体の外周面上の仮想的な基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行う表面状態検出器と、を備え、
前記一対の基準部は、前記円筒体の回転に連れ回りする一対の基準ローラであり、
前記表面状態検出器は、前記基準線上またはその近傍に光を照射する照明と、円筒体からの反射光を受光するカメラとを備え、
一つの基準ローラに対し、2つの支持ローラを備えており、これらの3つのローラを円筒体の外周面における3箇所に接触させるようにしたことを特徴とする円筒体の表面検査装置。
【請求項17】
前記円筒体の外周面における上端部に前記基準ローラを接触させ、下部両側に前記支持ローラを接触させることを特徴とする請求項16に記載の円筒体の表面検査装置。
【請求項18】
円筒体の両側端部の内周面に接触する一対の基準部と、
前記円筒体と前記一対の基準部との接触部分が前記円筒体の内周面上で周方向にずれていくように前記円筒体を回転させたときに、前記円筒体の内周面と前記一対の基準部との2つの接触部分を通る仮想的な直線に対し、前記円筒体の外側から対峙する基準線上またはその近傍に対して表面状態の検出を行う表面状態検出器と、を備え、
前記一対の基準部は、前記円筒体の回転に連れ回りする一対の基準ローラであり、
前記表面状態検出器は、前記基準線上またはその近傍に光を照射する照明と、円筒体からの反射光を受光するカメラとを備え、
前記円筒体の回転は、前記基準ローラが回転駆動することによって行われることを特徴とする円筒体の表面検査装置。
【請求項19】
円筒体の径サイズにかかわらず、前記基準線またはその近傍の高さ位置が変化しないことを特徴とする請求項14〜18のいずれか1項に記載の円筒体の表面検査装置。
【請求項20】
表面精度が求められる円筒体を成型する成型手段と、
前記円筒体を検査対象物として表面検査を行う請求項14,16または18に記載の表面検査装置と、
前記表面検査装置における検査結果が所定の基準を満たすか否かにより当該円筒体を分別し、前記所定の基準を満たす場合に当該円筒体を完成品とする判別手段と、
を備えたことを特徴とする円筒体の製造システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−158478(P2011−158478A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41212(P2011−41212)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2005−155388(P2005−155388)の分割
【原出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】