円筒形二次電池
【課題】円筒形二次電池において、正極または負極の集電部材に接合される導電リードの重なり枚数のばらつきに起因する接合力のばらつきを小さくする。
【解決手段】導電リードが、薄い円筒形状を有する正極または負極の集電部材に捲回された状態で溶接されている円筒形二次電池において、導電リードのピッチの公差をΔp、導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差をΔwとしたとき、導電リードのピッチが、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値の変動幅がΔpとΔwの和よりも大きい範囲に亘り0.2以下である領域A、B,Cのいずれかの領域内に定められている。
【解決手段】導電リードが、薄い円筒形状を有する正極または負極の集電部材に捲回された状態で溶接されている円筒形二次電池において、導電リードのピッチの公差をΔp、導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差をΔwとしたとき、導電リードのピッチが、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値の変動幅がΔpとΔwの和よりも大きい範囲に亘り0.2以下である領域A、B,Cのいずれかの領域内に定められている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒形二次電池に関し、より詳細には、正極および負極の少なくとも一方と集電部材とが接合される円筒形二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池等に代表される円筒形二次電池は、電池容器内に、正極電極と負極電極とがセパレータを介して軸芯の周囲に捲回された電極群が収容され、電解液が注入されて構成される。正・負極の電極は、それぞれ、正・負極の金属箔の両面に塗工された、正・負極の活物質を有する。正・負極の金属箔は、それぞれ、長手方向の片側縁に沿って所定のピッチで配列された多数の導電リードを有する。
【0003】
正・負極の金属箔の導電リードは、それぞれ、薄い円筒形の集電板の外周に捲回され、導電リード同士が多数枚、重ね合わされた状態で電極集電部材に超音波溶接等により接合される。
正・負極の金属箔に形成された導電リードは、通常、数十mm程度の等間隔で配列されており、金属箔の長さは数千mmの長さを有するため、導電リードは、電極集電部材の外周に数十周捲回される。捲回された導電リードは、周回毎に位置がずれるため、重ね合わされる枚数は電極集電部材の位置により相違する。つまり、導電リードが重なる枚数にはばらつきが生じる。
【0004】
上述した如く、導電リードは電極集電部材に溶接されるが、導電リードの重なる枚数が多い箇所では、接合時に大きなエネルギが必要とされ、逆に、導電リードの重なる枚数が少ない箇所では、接合時に必要なエネルギは小さくてよい。接合時のエネルギは一定であるから、導電リードの重なる枚数のばらつきが大きくなると、接合力等の接合状態のばらつきが大きくなる。
これに伴って、導電リードと電極集電部材の内部抵抗等のばらつきが大きくなり電池性能が低下する。
【0005】
この対応として、電極集電部材に捲回される金属箔に形成された導電リードのピッチを、金属箔の長手方向の距離に比例して、順次大きくなるように変化させ、電極集電部材に捲回した状態で、導電リードが所定の角度の箇所だけで重なるようにした構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−111259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたように、金属箔に形成する導電リードのピッチを、金属箔の長手方向の距離に比例して順次大きくなるように変化するように形成することは、製造方法が複雑化し、生産性が低下する。また、捲回時に、トルクのばらつきも発生することから、歩留まりの低下も予測される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の円筒形二次電池は、長手方向の一側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された正極電極箔の両面に正極合剤が形成された正極電極と、正極電極の導電リードが形成された一側縁に対向する他側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された負極金属箔の両面に負極合剤が形成された負極電極とがセパレータを介して捲回された電極群と、正極電極および負極電極の少なくとも一方の導電リードが捲回され重なって接合された集電部材と、電極群および集電部材が収容され、電解液が注入された電池容器とを備えた円筒形二次電池において、導電リードが根元部から先端部に向けて先細に形成され、導電リードのピッチの公差をΔp、導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差をΔwとしたとき、導電リードのピッチが、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値の変動幅がΔpとΔwの和よりも大きい範囲に亘り所定値以下である適正領域内に定められたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の円筒形二次電池によれば、導電リードのピッチは、導電リードの重なり枚数の変動幅が導電リードのピッチの公差Δpおよび導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差Δwに対して、十分大きな範囲に亘り、所定の値よりも小さい範囲に定められているので、導電リードの重なり枚数のばらつきを十分に小さくし、接合状態のばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る円筒形二次電池の一実施形態の断面図。
【図2】図1に示された円筒形二次電池の分解斜視図。
【図3】図1の電極群の詳細を示し、一部を切断した状態の斜視図。
【図4】図3に図示された電極群の正・負極電極、セパレータを一部展開した状態の平面図。
【図5】図1における円筒形二次電池の正極リード周辺の拡大断面図。
【図6】集電部材の外周に重ねられた導電リードの円周角度に対する重なり枚数を示すグラフ。
【図7】導電リードの重なり枚数の分布を示すグラフ。
【図8】導電リードのピッチに対する導電リードの重なり枚数の偏差を示すグラフ。
【図9】図8に図示された各適正領域の導電リードピッチの範囲と重なり枚数に関する表。
【図10】図8に図示された領域A、B、Cに対する導電リードの幅と導電リードのピッチの関係を示すグラフ。
【図11】図8に図示された領域A、B、Cに対する集電部材の外径と導電リードのピッチの関係を示すグラフ。
【図12】図8に図示された領域A、B、Cに対する電極長さと導電リードのピッチの関係を示すグラフ。
【図13】図8に図示された領域A、B、Cに対する電極繰り返し厚さと導電リードのピッチの関係を示すグラフ。
【図14】図8に図示された領域A、B、Cに対する電極長さ、電極繰り返し厚さおよび導電リードのピッチの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の円筒形二次電池を図面と共に説明する。
図1は、この発明の円筒形二次電池の一実施の形態を示す拡大断面図であり、図2は、図1に示された円筒形二次電池の分解斜視図である。
円筒形二次電池1は、例えば、リチウムイオン二次電池であり、外形40mmφ、高さ100mmの寸法を有する。この円筒形二次電池1は、底部を有し、上部が開口された有底無頭の円筒形の電池缶2および電池缶2の上部を封口するハット型の電池蓋3で構成される電池容器4の内部に、以下に説明する発電用の各構成部材が収容され、非水電解液5が注入されている。
【0012】
有底無頭の円筒形の電池缶2には、上端側に設けられた開口部2b側に電池缶2の内側に突き出した溝2aが形成されている。
電池缶2の中央部には、電極群10が配置されている。電極群10は、軸方向に沿う中空部を有する細長い円筒形の軸芯15と、軸芯15の周囲に捲回された正極電極および負極電極とを備える。図3は、電極群10の構造の詳細を示し、一部を切断した状態の斜視図である。また、図4は、図3に図示された電極群の正・負極電極、セパレータを一部展開した状態の平面図である。
図3に図示されるように、電極群10は、軸芯15の周囲に、正極電極11、負極電極12、および第1、第2のセパレータ13、14が捲回された構造を有する。
【0013】
軸芯15は、軸に沿って形成された中空部を有する中空円筒状を有する。軸芯15には、負極電極12、第1のセパレータ13、正極電極11および第2のセパレータ14が、この順に積層され、捲回されている。最内周の負極電極12の内側には第1のセパレータ13および第2のセパレータ14が数周(図3では、1周)捲回されている。第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、絶縁性の多孔質体で形成されている。また、最外周側は負極電極12およびその外周に捲回された第2のセパレータ14となっている。最外周の第2のセパレータ14が接着テープ19で止められる(図2参照)。
【0014】
正極電極11は、アルミニウム箔により形成され長尺な形状を有し、正極金属箔11aと、この正極金属箔11aの両面に正極合剤が塗布された正極処理部11bを有する。正極金属箔11aの長手方向に延在する上方側の側縁は、正極合剤が塗布されずアルミニウム箔が露出した正極合剤未処理部11cとなっている。この正極合剤未処理部11cには、軸芯15の軸に沿って上方に突き出す多数の正極リード16が等間隔に一体的に形成されている。
【0015】
正極合剤は正極活物質と、正極導電材と、正極バインダとからなる。正極活物質はリチウム酸化物が好ましい。例として、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウム複合酸化物(コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる2種類以上を含むリチウム酸化物)等が挙げられる。正極導電材は、正極合剤中におけるリチウムの吸蔵放出反応で生じた電子の正極電極への伝達を補助できるものであれば制限は無い。しかし中でも上述の材料である、コバルト酸リチウムとマンガン酸リチウムとニッケル酸リチウムとからなるリチウム複合酸化物を使用することにより良好な特性が得られる。
【0016】
正極バインダは、正極活物質と正極導電材を結着させ、また正極合剤と正極集電体を結着させることが可能であり、非水電解液5との接触により、大幅に劣化しなければ特に制限はない。正極バインダの例としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ素ゴムなどが挙げられる。正極合剤よる正極処理部11bの形成方法は、正極電極上に正極合剤が形成される方法であれば制限はない。正極合剤による正極処理部11bの形成方法の例として、正極合剤の構成物質の分散溶液を正極金属箔11a上に塗布する方法が挙げられる。このような方法で製造することにより特性の優れた正極合剤が得られる。
【0017】
正極合剤を正極金属箔11aに塗布する方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法、等が挙げられる。正極合剤に分散溶液の溶媒例として、N−メチルピロリドン(NMP)や水等を添加し、混練したスラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、プレスし、裁断する。正極合剤の塗布厚さの一例としては片側約40μmである。正極金属箔11aをプレスにより裁断する際、正極リード16を一体的に形成する。すべての正極リード16の長さは、ほぼ同じである。
【0018】
負極電極12は、銅箔により形成され長尺な形状を有し、負極金属箔12aと、この負極金属箔12aの両面に負極合剤が塗布された負極処理部12bを有する。負極金属箔12aの長手方向に延在する下方側の側縁は、負極合剤が塗布されず銅箔が露出した負極合剤未処理部12cとなっている。この負極合剤未処理部12cには、軸芯15の軸に沿って正極リード16とは反対方向に延出された、多数の負極リード17が等間隔に一体的に形成されている。
【0019】
負極合剤は、負極活物質と、負極バインダと、増粘剤とからなる。負極合剤は、アセチレンブラックなどの負極導電材を有しても良い。負極活物質としては、黒鉛炭素を用いること、特に人造黒鉛を使用することが好ましい。黒鉛炭素を用いることにより、大容量が要求されるプラグインハイブリッド自動車や電気自動車向けのリチウムイオン二次電池が作製できる。負極合剤による負極合剤処理部12bの形成方法は、負極金属箔12a上に負極合剤が形成される方法であれば制限はない。しかしその中でも次に記載する方法により優れた特性の負極合剤が得られる。負極合剤を負極金属箔12aに塗布する方法の例として、負極合剤の構成物質の分散溶液を負極金属箔12a上に塗布する方法が挙げられる。塗布方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法等が挙げられる。
【0020】
負極合剤を負極金属箔12aに塗布する方法の例として、負極合剤に分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンや水を添加し、混練したスラリを、厚さ10μmの圧延銅箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、プレスし、裁断する。負極合剤の塗布厚さの一例としては片側約40μmである。負極金属箔12aをプレスにより裁断する際、負極リード17を一体的に形成する。すべての負極リード17の長さは、ほぼ同じである。
【0021】
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の幅をWS、負極金属箔12aに形成される負極処理部12bの幅をWC、正極金属箔11aに形成される正極処理部11bの幅をWAとした場合、下記の式を満足するように形成される。
WS>WC>WA(図3参照)
すなわち、正極処理部11bの幅WAよりも、常に、負極処理部12bの幅WCが大きい。これは、リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質であるリチウムがイオン化してセパレータを浸透するが、負極側に負極活物質が形成されておらず負極金属箔12aが表出していると負極金属箔12aにリチウムが析出し、内部短絡を発生する原因となるからである。
【0022】
正極金属箔11aの正極合剤未処理部11cに形成される正極リード(導電リード)16および負極金属箔12aの負極合剤未処理部12cに形成される負極リード(導電リード)17は、例えば、ロールカッタにより、図4に図示されるように、所定のピッチpで等間隔に形成される。
正極リード16および負極リード17は、根元部の幅w1が太く、先端部の幅w2が細い、先細形状を有する。一例を挙げれば、根元部の幅w1は5mm程度であり、先端部の幅w2が4mm程度、根元部の幅w1と先端部の幅w2の差Δwが1mm程度である。
正極リード16と負極リード17の根元部の幅w1と先端部の幅w2とは、同一であっても良いし、異なってもよい。後述する如く、正極リード16および負極リード17の幅は、導電リードの重ね枚数のばらつきに大きな影響がない。
【0023】
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、それぞれ、例えば、厚さ40μmのポリエチレン製多孔膜で形成されている。
図1および図3において、中空な円筒形状の軸芯15は軸方向(図面の上下方向)の上端部の内面に中空部よりも径大の溝15aが形成され、この溝15aに大略薄い円筒状の正極集電部材27が圧入されている。正極集電部材27は、例えば、アルミニウムにより形成され、円盤状の基部27a、この基部27aの内周部において軸芯15側に向かって突出し、軸芯15の内面に圧入される下部筒部27b、および外周縁において電池蓋3側に突き出す上部筒部27cを有する。正極集電部材27の基部27aには、電池内部で発生するガスを放出するための開口部27d(図2参照)が形成されている。
【0024】
正極金属箔11aの正極リード16は、すべて、正極集電部材27の上部筒部27cに溶接される。図2に図示されるように、正極リード16は、正極集電部材27の上部筒部27c上に重なり合って接合される。各正極リード16は大変薄いため、1つでは大電流を取りだすことができない。このため、軸芯15への巻き始めから巻き終わりまでの全長に亘り、多数の正極リード16が所定間隔に形成されている。
【0025】
正極集電部材27は、電解液によって酸化されるので、アルミニウムで形成することにより信頼性を向上することができる。アルミニウムは、なんらかの加工により表面が露出すると、直ちに、表面に酸化アルミウム皮膜が形成され、この酸化アルミニウム皮膜により、電解液による酸化を防止することができる。
また、正極集電部材27をアルミニウムで形成することにより、正極金属箔11aの正極リード16を超音波溶接またはスポット溶接等により溶接することが可能となる。
【0026】
正極集電部材27の上部筒部27cの外周には、正極金属箔11aの正極リード16および押え部材28が溶接されている。多数の正極リード16は、正極集電部材27の上部筒部27cの外周に密着させておき、正極リード16の外周に押え部材28をリング状に巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。
【0027】
軸芯15の下端部の外周には、外径が径小とされた段部15bが形成され、この段部15bに負極集電部材21が圧入されて固定されている。負極集電部材21は、例えば、銅により形成され、円盤状の基部21aに軸芯15の段部15bに圧入される開口部21bが形成され、外周縁に、電池缶2の底部側に向かって突き出す外周筒部21cが形成されている。
負極金属箔12aの負極リード17は、すべて、負極集電部材21の外周筒部21cに超音波溶接等により溶接される。各負極リード17は大変薄いため、大電流を取りだすために、軸芯15への巻き始めから巻き終わりまで全長にわたり、所定間隔で多数形成されている。
【0028】
負極集電部材21の外周筒部21cの外周には、負極金属箔12aの負極リード17および押え部材22が溶接されている。多数の負極リード17を、負極集電部材21の外周筒部21cの外周に密着させておき、負極リード17の外周に押え部材22をリング状に巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。
負極集電部材21の下面には、ニッケルからなる負極通電リード23が溶接されている。
負極通電リード23は、鉄製の電池缶2の底部において、電池缶2に溶接されている。
【0029】
ここで、正極集電部材27に形成された開口部27eは、負極通電リード23を電池缶2に溶接するための電極棒(図示せず)を挿通するためのものである。電極棒を正極集電部材27に形成された開口部27eから軸芯15の中空部に差し込み、その先端部で負極通電リード23を電池缶2の底部内面に押し付けて抵抗溶接を行う。負極集電部材21に接続されている電池缶2の底面は一方の出力端子として作用し、電極群10に蓄電された電力を電池缶2から取り出すことができる。
【0030】
多数の正極リード16が正極集電部材27に溶接され、多数の負極リード17が負極集電部材21に溶接されることにより、正極集電部材27、負極集電部材21および電極群10が一体的にユニット化された発電ユニット20が構成される(図2参照)。但し、図2においては、図示の都合上、負極集電部材21、押え部材22および負極通電リード23は発電ユニット20から分離して図示されている。
【0031】
正極集電部材27の基部27aの上面には、複数のアルミニウム箔が積層されて構成されたフレキシブルな接続部材33が、その一端部を溶接されて接合されている。接続部材33は、複数枚のアルミニウム箔を積層して一体化することにより、大電流を流すことが可能とされ、且つ、フレキシブル性を付与されている。つまり、大電流を流すには接続部材33の厚さを大きくする必要があるが、1枚の金属板で形成すると剛性が大きくなり、フレキシブル性が損なわれる。そこで、板厚の小さな多数のアルミニウム箔を積層してフレキシブル性を持たせている。接続部材33の厚さは、例えば、0.5mm程度であり、厚さ0.1mmのアルミニウム箔を5枚積層して形成される。
【0032】
正極集電部材27の上部筒部27c上には、電池蓋ユニット30が配置されている。電池蓋ユニット30は、リング形状をした絶縁板34、絶縁板34に設けられた開口部34aに嵌入された接続板35、接続板35に溶接されたダイアフラム37およびダイアフラム37に、かしめにより固定された電池蓋3により構成される。
絶縁板34は、円形の開口部34aを有する絶縁性樹脂材料からなるリング形状を有し、正極集電部材27の上部筒部27c上に載置されている。
【0033】
絶縁板34は、開口部34a(図2参照)および下方に突出する側部34bを有している。絶縁板34の開口部34a内には接続板35が嵌合されている。接続板35の下面には、接続部材33の他端部が溶接されて接合されている。この場合、接続部材33は他端部側において湾曲状に折り返されて、正極集電部材27に溶接された面と同じ面が接続板35に溶接されている。
【0034】
接続板35は、アルミニウム合金で形成され、中央部を除くほぼ全体が均一でかつ、中央側が少々低い位置に撓んだ、ほぼ皿形状を有している。接続板35の厚さは、例えば、1mm程度である。接続板35の中心には、薄肉でドーム形状に形成された突起部35aが形成されており、突起部35aの周囲には、複数の開口部35b(図2参照)が形成されている。開口部35bは、電池内部に発生するガスを放出する機能を有している。
【0035】
接続板35の突起部35aはダイアフラム37の中央部の底面に抵抗溶接または摩擦攪拌接合により接合されている。ダイアフラム37はアルミニウム合金で形成され、ダイアフラム37の中心部を中心とする円形の切込み37aを有する。切込み37aはプレスにより上面側をV字形状に押し潰して、残部を薄肉にしたものである。ダイアフラム37は、電池の安全性確保のために設けられており、電池の内圧が上昇すると、第1段階として、上方に反り、接続板35の突起部35aとの接合を剥離して接続板35から離間し、接続板35との導通を絶つ。第2段階として、それでも内圧が上昇する場合は切込み37aにおいて開裂し、内部のガスを放出する機能を有する。
【0036】
ダイアフラム37は周縁部において電池蓋3の周縁部を固定している。ダイアフラム37は図2に図示されるように、当初、周縁部に電池蓋3側に向かって垂直に起立する側壁37bを有している。この側壁37b内に電池蓋3を収容し、かしめ加工により、側壁37bを電池蓋3の上面側に屈曲して固定する。
【0037】
電池蓋3は、炭素鋼等の鉄で形成してニッケルめっきが施されており、ダイアフラム37に接触する円盤状の周縁部3aと、この周縁部3aから上方に突出す有頭無底の筒部3bを有するハット型を有する。筒部3bには開口部3cが形成されている。この開口部3cは、電池内部に発生するガス圧によりダイアフラム37が開裂した際、ガスを電池外部に放出するためのものである。電池蓋3は一方の電力出力端として作用し、電池蓋3から蓄電された電力を取り出すことができる。
なお、電池蓋3が鉄で形成されている場合には、別の円筒形二次電池と直列に接合する際、鉄で形成された別の円筒形二次電池とスポット溶接により接合することが可能である。
【0038】
ダイアフラム37の側壁37bと周縁部を覆ってガスケット43が設けられている。ガスケット43は、ゴムで形成されており、限定する意図ではないが、1つの好ましい材料の例として、フッ素系樹脂をあげることができる。
ガスケット43は、当初、図2に図示されるように、リング状の基部43aの周側縁に、上部方向に向けてほぼ垂直に起立して形成された外周壁部43bを有する形状を有している。
【0039】
そして、プレス等により、電池缶2と共にガスケット43の外周壁部43bを屈曲して基部43aと外周壁部43bにより、ダイアフラム37と電池蓋3を軸方向に圧接するようにかしめ加工される。これにより、電池蓋3、ダイアフラム37、絶縁板34および接続板35が一体に形成された電池蓋ユニット30がガスケット43を介して電池缶2に固定される。
【0040】
電池缶2の内部には、非水電解液5が所定量注入されている。非水電解液5の一例としては、リチウム塩がカーボネート系溶媒に溶解した溶液を用いることが好ましい。リチウム塩の例として、フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、フッ化ホウ酸リチウム(LiBF6)、等が挙げられる。また、カーボネート系溶媒の例として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、或いは上記溶媒の1種類以上から選ばれる溶媒を混合したもの、が挙げられる。
【0041】
しかして、上述した如く、正極電極11に形成された多数の正極リード16は、すべて、正極集電部材27の上部筒部27cの外周に超音波溶接等により溶接される。この場合、正極集電部材27の上部筒部27cの外周の全周囲に亘り、正極リード16をほぼ均等に配分して密着し、正極リード16の外周に押え部材28を巻き付ける。より正確には、押さえ部材28を平坦状に保持し、正極リード16が捲回された正極集電部材27を正極リード16に密着させた状態で回転させながら、超音波溶接等により、正極集電部材27に正極リード16および押え部材28を溶接する。
【0042】
負極リード17を負極集電部材21に溶接する方法も、正極側と同様に行われる。図5は、正極リード16周辺における円筒形二次電池1の拡大断面図である。
正極リード16は、例えば、20〜60mmのピッチで等間隔に形成されており、正極金属箔11aは、例えば、3000〜5000mmの長さを有し、正極リード16は正極集電部材の27の上部筒部27cの外面に数十周捲回される。
【0043】
正極電極11は、軸芯15の外周に捲回されており、1周毎に厚さが増大する。つまり、正極電極11、負極電極12、第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の合計の厚さ(電極繰り返し厚さ)分が1周毎に増大する。
従って、一定のピッチpで配列された正極リード16は、1周毎に、異なる円周角度の位置で正極集電部材27の上部筒部27cに接合される。これに起因して、正極集電部材27に接合される正極リード16の重なり枚数は、円周角度に関してばらつきが生じる。このことは、負極側においても同一であり、負極リード17は、円周角度の位置によって異なる重なり枚数で、負極集電部材21の外周筒部21cに接合される。
以下、正極リード16および負極リード17を代表して導電リード16の重なり枚数のばらつきについて説明する。
【0044】
(導電リードの重なりの要因)
図6は、正極集電部材27の上部筒部27cの外周に捲回された正極金属箔11aに形成された導電リード16の重なり枚数を示すグラフである。図6では、導電リード16の重なり枚数は、正極集電部材27の上部筒部27cの外周面27gを0枚として、半径方向への距離に比例して増大する図として示されている。この図は、軸正極集電部材27の上部筒部27cの外周面27gの巻始め位置Sから、0.5°間隔で導電リード16の重なり枚数を示したものである。
図6において、導電リード16の重なり枚数の最低は、ほぼ5枚であり、導電リード16の重なり枚数の最大は、ほぼ15枚である。最低と最大の重なり枚数の間で、導電リード16の重なり枚数が0.5°毎に示されている。
【0045】
図7は、図6に図示された重なり枚数を、発生位置割合の分布で示したグラフである。
図7のデータは、導電リード16の重なり枚数の標準偏差を求める際に用いることができる。
【0046】
図8は、導電リード16のピッチが10〜80mmの範囲において、0.1mm刻みで計算を行い、重なり枚数の標準偏差の変動をグラフにしたものである。重なり枚数は、導電リード16の幅を5mm、正極集電部材27の上部筒部27cの外径を30mm、電極の繰り返し厚さy(図2参照)、すなわち、正極電極11、負極電極12、第1のセパレータ13、第2のセパレータ14の厚さの合計を0.25mm、正極電極11の長さを4000mmとして演算により求めた。横軸は導電リード16のピッチであり、縦軸は、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値である。この場合、導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値は、導電リード16のピッチpが10〜100mmの間における重なり枚数の平均値とした。以下においては、説明の単純化のために、縦軸の定義である、「導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値」を、単に、「導電リードの重なり枚数の偏差の相対値」とする。
【0047】
図8において、縦軸、すなわち、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値が小さいということは、超音波溶接等の溶接時に必要とされるエネルギの大きさが一定値に近くてすむことを意味するので、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値が大きい場合よりも好ましい。図8においては、導電リード16のピッチが大きくなる程、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値が小さくなる傾向がある。これは、導電リード16のピッチが大きくなる程、集電部材に捲回される導電リード16の枚数が減少することが一つの要因であるためと考えられる。
【0048】
しかし、最も重要なことは、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅が、導電リード16のピッチの広い範囲に亘り小さいことである。以下、このことについて説明する。
【0049】
導電リード16の重なり枚数に影響する製造上の要因が2つある。
第1の要因は、導電リード16のピッチpの公差である。導電リード16の位置は、製造時において、導電リード16のピッチpの公差分ばらつくため、導電リード16の重なり枚数に影響する。
第2の要因は、導電リード16の形状である。上述した如く、導電リード16は、根元部の幅w1が大きく、先端部の幅w2が小さい先細形状を有する。導電リード16は、軸芯15に捲回されており、内周側から外周側に向けて導電リード16の根元部から正・負極の集電部材27、21までの距離が変化する。このため、導電リード16の根元部側で接合される場合と、導電リード16の先端部側で接合される場合とがあり、それぞれ、溶接部における導電リード16の幅が変化する。従って、これに伴って導電リード16の重なり枚数が変動する。
導電リード16のピッチpの公差をΔp、導電リード16の根元部の幅w1と先端部の幅w2との差Δw=(w1−w2)とするとき、導電リード16の位置は、(Δp+Δw)だけばらつくことになる。
【0050】
すなわち、図8において、例えば、導電リード16のピッチpが60mm程度の場合の導電リードの重なり枚数の偏差の相対値f1は、0.7程度と小さい値である。しかし、導電リード16のピッチpが61mm程度における導電リードの重なり枚数の偏差の相対値f2は0.9程度に急激に増大する。
このように、導電リード16のピッチpが僅かに変化したときに導電リードの重なり枚数の偏差の相対値が大きく変動する領域では、製造時のばらつきにより、導電リード16の重なり枚数が大きく変動することを意味する。
すなわち、導電リード16を正・負極の集電部材27、21に溶接する際に、導電リード16の重なり枚数の変動幅を小さくして接合力を均一にするには、導電リード16のピッチpを、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅の小さい範囲が導電リード16のピッチpの広い範囲に亘って連続する領域内に定めることが重要である。
【0051】
実際の製造条件を適用すると、第1の要因である、導電リード16を形成する際の製造上の公差Δpは1mm(±0.5mm)である。第2の要因である、導電リード16の根元部の幅w1と先端部の幅w2との差Δwは、上述した如く、1mm程度である。
従って、実際の製造において、導電リード16の位置は、(Δp+Δw)=2mm程度ずれる可能性がある。
【0052】
図8において、領域A、B、Cは、いずれも、導電リード16のピッチpが2mm以上の範囲に亘り、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅が0.2以下である。これらの領域は、導電リード16のピッチpが2mm以上の範囲に亘る他の領域よりも、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅が小さい。
このように、導電リード16のピッチpが領域A、B、Cの範囲内では、製造時に導電リード16の位置がずれたとしても、導電リード16の重なり枚数が大きく変動することはない。従って、領域A、B、Cの範囲内において、導電リード16のピッチpを定めれば、導電リード16の重なり枚数の変動幅を小さくすることができる。その結果、均一性が高い接合が実現できる。均一性の高い接合により、内部抵抗のばらつき等が小さい電池性能が優れた円筒形二次電池1を作製することが可能となる。
なお、図8において、領域AとBの間は、導電リード16のピッチpが2mm以上の範囲に亘り、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅が0.2以下であるので、導電リード16のピッチpを、この領域の範囲内から定めるようにしても良い。しかし、この領域は、領域A、B、Cに比較し、導電リード16のピッチpの範囲が狭く、かつ、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅が大きいので、領域A、B、Cの範囲内から定めるようにする方が望ましい。以下、領域A、B、Cを適正領域とする。
図9に、図8に図示された各適正領域A、B、Cに対する導電リード16のピッチの下限値と上限値および(導電リードの重なり枚数の標準偏差/導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値)の幅の値を表として示した。
【0053】
適正領域A、B、Cの範囲内は、いずれも導電リード16の重なり枚数の変動幅が小さく、良好な円筒形二次電池1を得ることができる。しかし、導電リード16のピッチpが大きくなると、正・負極の集電部材27、21に接合される導電リード16の数が減少し、内部抵抗が増大する。この意味では、導電リード16のピッチpは、適正領域AまたはBの領域内で定める方が適正領域Cの領域内に定めるよりも望ましい。
【0054】
この場合、後述するが、導電リード16の根元部の幅w1は、導電リード16の重なり枚数の変動に関して影響がないので、導電リード16のピッチpを大きくした場合に、導電リード16の根元部の幅w1を大きくするようにしてもよい。
しかし、導電リード16の幅を大きくすることは、円筒形状の正・負極の集電部材27、21との接合部が幅広くなることを意味する。導電リード16の接合部は、円筒形状の正・負極の集電部材27、21の外周に倣って円弧状となるため、導電リード16の接合部の幅が大きくなると、導電リード16の根元側の接合されない部分に対して大きく変形するため、導電リード16が破損し易くなる。従って、このことも考慮して、導電リード16の幅寸法を定める必要がある。
【0055】
(導電リードの重なり枚数のパラメータ)
次に、導電リード16の重なり枚数に影響するパラメータに関して述べる。
導電リード16の重なり枚数に影響するパラメータとして、導電リード16のピッチp以外に、下記に示す4つがある。
(i)導電リードの幅
(ii)正・負極の集電部材の外径
(iii)正・負極の電極長さ
(iv)電極繰り返し厚さ
以下、各パラメータと導電リード16の重なり枚数との関連について、順次、説明する。
【0056】
(導電リードの幅)
図10は、図8に図示された適正領域A、B、Cに対する導電リードの幅と導電リードのピッチの関係を示すグラフである。
図8の場合と同様に、導電リード16のピッチpを0.1mmずつ変化させたときの導電リードの重なり枚数の標準偏差がどのように変動するかを、導電リード16の幅が3.0mm〜7.0mmの範囲に対して演算により求めたものである。すなわち、導電リード16の幅が、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mmに対して、それぞれ、図8のグラフを作成し、各グラフにおいて、図8に示す領域A、B、Cの範囲となる導電リード16のピッチpをプロットしたものである。導電リード16の幅以外の各パラメータは、正・負極の集電部材27、21の外径を30mm、電極長さ(図示せず)を4000mm、電極繰り返し厚さyを0.25mmとした。
【0057】
図10において、導電リード16の幅の変動によって、重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cには殆ど違いが見られない。つまり、導電リード16の幅は、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動には影響しないことが分かる。
【0058】
(集電部材の外径)
図11は、図8に図示された適正領域A、B、Cに対する正・負極の集電部材27、21の外径と導電リードのピッチの関係を示すグラフである。
図8の場合と同様に、導電リード16のピッチpを0.1mmずつ変化させたときの導電リードの重なり枚数の標準偏差がどのように変動するかを、正・負極の集電部材27、21が28.0mm〜32.0mmの範囲に対して演算により求めたものである。すなわち、集電部材27、21の外径が、28.0mm、29.0mm、30.0mm、31.0mm、32.0mm、33.0mmに対して、それぞれ、図8のグラフを作成し、各グラフにおいて、図8に示す領域A、B、Cの範囲となる導電リード16のピッチpをプロットしたものである。正・負極の集電部材27、21の外径以外の各パラメータは、導電リード16の幅を5mm、電極長さ(図示せず)を4000mm、電極繰り返し厚さyを0.25mmとした。
【0059】
図11において、正・負極の集電部材27、21の外径が変動しても、重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cには殆ど違いが見られない。つまり、正・負極の集電部材27、21の外径は、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動には影響しないことが分かる。
【0060】
(電極長さ)
図12は、図8に図示された適正領域A、B、Cに対する電極長さ(図示せず)と導電リードのピッチの関係を示すグラフである。
図8の場合と同様に、導電リード16のピッチpを0.1mmずつ変化させたときの導電リードの重なり枚数の標準偏差がどのように変動するかを、電極長さが3000mm〜5000mmの範囲に対して演算により求めたものである。すなわち、電極長さが、3000mm、3500mm、4000mm、4500mm、5000mmに対して、それぞれ、図8のグラフを作成し、各グラフにおいて、図8に示す領域A、B、Cの範囲となる導電リード16のピッチpをプロットしたものである。電極長さ以外の各パラメータは、導電リード16の幅を5mm、正・負極の集電部材27、21の外径を30mm、電極繰り返し厚さyを0.25mmとした。
【0061】
図12において、電極長さの変動によって、重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cが変化している。つまり電極長さは、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動に影響するパラメータである。
【0062】
(電極繰り返し厚さ)
図13は、図8に図示された適正領域A、B、Cに対する電極繰り返し厚さyと導電リードのピッチの関係を示すグラフである。
上述した如く、電極繰り返し厚さy(図2参照)は、正極電極11、負極電極12、第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の合計の厚さである。
図8の場合と同様に、導電リード16のピッチpを0.1mmずつ変化させたときの導電リードの重なり枚数の標準偏差がどのように変動するかを、電極繰り返し厚さyが0.23mm〜0.27mmの範囲に対して演算により求めたものである。すなわち、電極繰り返し厚さが、0.23mm、0.24mm、0.25mm、0.26mm、0.27mmに対して、それぞれ、図8のグラフを作成し、各グラフにおいて、図8に示す領域A、B、Cの範囲となる導電リード16のピッチpをプロットしたものである。電極繰り返し厚さy以外の各パラメータは、導電リード16の幅を5mm、正・負極の集電部材27、21の外径を30mm、電極長さを4000mmとした。
【0063】
図13において、電極繰り返し厚さyの変動によって、重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cが変化している。つまり、電極繰り返し厚さyは、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動に影響するパラメータである。
【0064】
以上の結果より、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cは、導電リード16の幅および正・負極の集電部材27、21の外径の変化には影響されず、電極長さと電極繰返し厚さyにより変動することが分かった。
また、図12および図13により、適正領域A、B、Cの変動は、電極長さと電極繰返し厚さyの変化に直線近似できると考えられる。
【0065】
図14は、図8に図示された適正領域A、B、Cに対する電極長さ、電極繰り返し厚さおよび導電リードのピッチの関係を示すグラフである。
導電リード16の重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cは、図14に示す如く、導電リード16のピッチp、電極長さ、電極繰返し厚さyの3つのパラメータによって構成される平面によって限定することができる。
円筒形二次電池1を作製する際に、導電リード16ピッチpを、電極長さと電極繰返し厚さyの関数によって、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cの範囲内とするように定める。このことにより、導電リード16のピッチpの重なり枚数の偏差の変動を抑制することが可能となる。
【0066】
電極長さをxmm、電極繰返し厚さをymm、導電リード16のピッチをpとしたとき、各適正領域A、B、Cに対して、その関数は、下記通りとなる。
(1)適正領域A:
3.4341 + 0.00266972 x + 37.6812 y<p<-1.75694 + 0.0032418 x + 63.7681 y
(2)適正領域B:
2.76142 + 0.0032418 x + 55.0725 y<p<2.30873 + 0.00411899 x + 68.1159 y
(3)適正領域C:
3.65859 + 0.00495805 x + 62.3188 y<p<-11.1444 + 0.00781846 x + 143.478 y
【0067】
以上説明した通り、上記実施形態では、導電リードのピッチの公差をΔp、導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差をΔwとしたとき、導電リードのピッチが、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値の変動幅がΔpとΔwの和よりも大きい範囲に亘り0.2以下である範囲内に定められているので、導電リードの重なり枚数のばらつきを十分に小さくすることができる。その結果、導電リードが均一に集電部材の外周面に溶接される。このため、内部抵抗のばらつき等が小さい電池性能が優れた円筒形二次電池1を作製することが可能となる。この場合、導電リード16のピッチpは等間隔であるので、正極電極11、負極電極12および電極群10の製造も効率的である。
【0068】
なお、上記実施形態では、リチウムイオン円筒形二次電池の場合で説明した。しかし、本発明は、ニッケル水素電池またはニッケル・カドミウム電池、鉛蓄電池のように水溶性電解液を用いる円筒形二次電池にも適用が可能である。
【0069】
また、上記実施形態では、導電リード16の公差Δpを1mm、導電リード16の根元部の幅w1と先端部の幅w2との差Δwを1mmをとして説明したが、ΔpおよびΔwの値が、それぞれ、異なる電極ユニットを用いた二次電池にも本発明を適用することが可能である。
【0070】
上記実施形態では、電極群10を、正極電極11と負極電極12との間に、第1、第2のセパレータ13、14を介在させた構造としたが、第1、第2のセパレータ13、14間を1枚のセパレータで分離させる構造としてもよい。その他、本発明の円筒形二次電池は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して適用することが可能であり、要は、長手方向の一側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された正極金属箔の両面に正極合剤が形成された正極電極と、正極電極の導電リードが形成された一側縁に対向する他側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された負極金属箔の両面に負極合剤が形成された負極電極とがセパレータを介して捲回された電極群と、正極電極および負極電極の少なくとも一方の導電リードが捲回され重なって接合された集電部材と、電極群および集電部材が収容され、電解液が注入された電池容器とを備えた円筒形二次電池において、導電リードが根元部から先端部に向けて先細に形成され、導電リードのピッチの公差をΔp、導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差をΔwとしたとき、導電リードのピッチが、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値の変動幅がΔpとΔwの和よりも大きい範囲に亘り所定値以下である適正領域内に定められたものであればよい。
【符号の説明】
【0071】
1 円筒形二次電池
2 電池缶
3 電池蓋
4 電池容器
5 非水電解液
10 電極群
11 正極電極
12 負極電極
13 第1のセパレータ
14 第2のセパレータ
16 正極リード(導電リード)
17 負極リード(導電リード)
21 負極集電部材
27 正極集電部材
30 電池蓋ユニット
A、B、C 適正領域
p 導電リードのピッチ
x 電極長さ
y 電極繰り返し厚さ
w1 導電リード根元部の幅
w2 導電リード先端部の幅
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒形二次電池に関し、より詳細には、正極および負極の少なくとも一方と集電部材とが接合される円筒形二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池等に代表される円筒形二次電池は、電池容器内に、正極電極と負極電極とがセパレータを介して軸芯の周囲に捲回された電極群が収容され、電解液が注入されて構成される。正・負極の電極は、それぞれ、正・負極の金属箔の両面に塗工された、正・負極の活物質を有する。正・負極の金属箔は、それぞれ、長手方向の片側縁に沿って所定のピッチで配列された多数の導電リードを有する。
【0003】
正・負極の金属箔の導電リードは、それぞれ、薄い円筒形の集電板の外周に捲回され、導電リード同士が多数枚、重ね合わされた状態で電極集電部材に超音波溶接等により接合される。
正・負極の金属箔に形成された導電リードは、通常、数十mm程度の等間隔で配列されており、金属箔の長さは数千mmの長さを有するため、導電リードは、電極集電部材の外周に数十周捲回される。捲回された導電リードは、周回毎に位置がずれるため、重ね合わされる枚数は電極集電部材の位置により相違する。つまり、導電リードが重なる枚数にはばらつきが生じる。
【0004】
上述した如く、導電リードは電極集電部材に溶接されるが、導電リードの重なる枚数が多い箇所では、接合時に大きなエネルギが必要とされ、逆に、導電リードの重なる枚数が少ない箇所では、接合時に必要なエネルギは小さくてよい。接合時のエネルギは一定であるから、導電リードの重なる枚数のばらつきが大きくなると、接合力等の接合状態のばらつきが大きくなる。
これに伴って、導電リードと電極集電部材の内部抵抗等のばらつきが大きくなり電池性能が低下する。
【0005】
この対応として、電極集電部材に捲回される金属箔に形成された導電リードのピッチを、金属箔の長手方向の距離に比例して、順次大きくなるように変化させ、電極集電部材に捲回した状態で、導電リードが所定の角度の箇所だけで重なるようにした構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−111259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたように、金属箔に形成する導電リードのピッチを、金属箔の長手方向の距離に比例して順次大きくなるように変化するように形成することは、製造方法が複雑化し、生産性が低下する。また、捲回時に、トルクのばらつきも発生することから、歩留まりの低下も予測される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の円筒形二次電池は、長手方向の一側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された正極電極箔の両面に正極合剤が形成された正極電極と、正極電極の導電リードが形成された一側縁に対向する他側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された負極金属箔の両面に負極合剤が形成された負極電極とがセパレータを介して捲回された電極群と、正極電極および負極電極の少なくとも一方の導電リードが捲回され重なって接合された集電部材と、電極群および集電部材が収容され、電解液が注入された電池容器とを備えた円筒形二次電池において、導電リードが根元部から先端部に向けて先細に形成され、導電リードのピッチの公差をΔp、導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差をΔwとしたとき、導電リードのピッチが、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値の変動幅がΔpとΔwの和よりも大きい範囲に亘り所定値以下である適正領域内に定められたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の円筒形二次電池によれば、導電リードのピッチは、導電リードの重なり枚数の変動幅が導電リードのピッチの公差Δpおよび導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差Δwに対して、十分大きな範囲に亘り、所定の値よりも小さい範囲に定められているので、導電リードの重なり枚数のばらつきを十分に小さくし、接合状態のばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る円筒形二次電池の一実施形態の断面図。
【図2】図1に示された円筒形二次電池の分解斜視図。
【図3】図1の電極群の詳細を示し、一部を切断した状態の斜視図。
【図4】図3に図示された電極群の正・負極電極、セパレータを一部展開した状態の平面図。
【図5】図1における円筒形二次電池の正極リード周辺の拡大断面図。
【図6】集電部材の外周に重ねられた導電リードの円周角度に対する重なり枚数を示すグラフ。
【図7】導電リードの重なり枚数の分布を示すグラフ。
【図8】導電リードのピッチに対する導電リードの重なり枚数の偏差を示すグラフ。
【図9】図8に図示された各適正領域の導電リードピッチの範囲と重なり枚数に関する表。
【図10】図8に図示された領域A、B、Cに対する導電リードの幅と導電リードのピッチの関係を示すグラフ。
【図11】図8に図示された領域A、B、Cに対する集電部材の外径と導電リードのピッチの関係を示すグラフ。
【図12】図8に図示された領域A、B、Cに対する電極長さと導電リードのピッチの関係を示すグラフ。
【図13】図8に図示された領域A、B、Cに対する電極繰り返し厚さと導電リードのピッチの関係を示すグラフ。
【図14】図8に図示された領域A、B、Cに対する電極長さ、電極繰り返し厚さおよび導電リードのピッチの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の円筒形二次電池を図面と共に説明する。
図1は、この発明の円筒形二次電池の一実施の形態を示す拡大断面図であり、図2は、図1に示された円筒形二次電池の分解斜視図である。
円筒形二次電池1は、例えば、リチウムイオン二次電池であり、外形40mmφ、高さ100mmの寸法を有する。この円筒形二次電池1は、底部を有し、上部が開口された有底無頭の円筒形の電池缶2および電池缶2の上部を封口するハット型の電池蓋3で構成される電池容器4の内部に、以下に説明する発電用の各構成部材が収容され、非水電解液5が注入されている。
【0012】
有底無頭の円筒形の電池缶2には、上端側に設けられた開口部2b側に電池缶2の内側に突き出した溝2aが形成されている。
電池缶2の中央部には、電極群10が配置されている。電極群10は、軸方向に沿う中空部を有する細長い円筒形の軸芯15と、軸芯15の周囲に捲回された正極電極および負極電極とを備える。図3は、電極群10の構造の詳細を示し、一部を切断した状態の斜視図である。また、図4は、図3に図示された電極群の正・負極電極、セパレータを一部展開した状態の平面図である。
図3に図示されるように、電極群10は、軸芯15の周囲に、正極電極11、負極電極12、および第1、第2のセパレータ13、14が捲回された構造を有する。
【0013】
軸芯15は、軸に沿って形成された中空部を有する中空円筒状を有する。軸芯15には、負極電極12、第1のセパレータ13、正極電極11および第2のセパレータ14が、この順に積層され、捲回されている。最内周の負極電極12の内側には第1のセパレータ13および第2のセパレータ14が数周(図3では、1周)捲回されている。第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、絶縁性の多孔質体で形成されている。また、最外周側は負極電極12およびその外周に捲回された第2のセパレータ14となっている。最外周の第2のセパレータ14が接着テープ19で止められる(図2参照)。
【0014】
正極電極11は、アルミニウム箔により形成され長尺な形状を有し、正極金属箔11aと、この正極金属箔11aの両面に正極合剤が塗布された正極処理部11bを有する。正極金属箔11aの長手方向に延在する上方側の側縁は、正極合剤が塗布されずアルミニウム箔が露出した正極合剤未処理部11cとなっている。この正極合剤未処理部11cには、軸芯15の軸に沿って上方に突き出す多数の正極リード16が等間隔に一体的に形成されている。
【0015】
正極合剤は正極活物質と、正極導電材と、正極バインダとからなる。正極活物質はリチウム酸化物が好ましい。例として、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウム複合酸化物(コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる2種類以上を含むリチウム酸化物)等が挙げられる。正極導電材は、正極合剤中におけるリチウムの吸蔵放出反応で生じた電子の正極電極への伝達を補助できるものであれば制限は無い。しかし中でも上述の材料である、コバルト酸リチウムとマンガン酸リチウムとニッケル酸リチウムとからなるリチウム複合酸化物を使用することにより良好な特性が得られる。
【0016】
正極バインダは、正極活物質と正極導電材を結着させ、また正極合剤と正極集電体を結着させることが可能であり、非水電解液5との接触により、大幅に劣化しなければ特に制限はない。正極バインダの例としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ素ゴムなどが挙げられる。正極合剤よる正極処理部11bの形成方法は、正極電極上に正極合剤が形成される方法であれば制限はない。正極合剤による正極処理部11bの形成方法の例として、正極合剤の構成物質の分散溶液を正極金属箔11a上に塗布する方法が挙げられる。このような方法で製造することにより特性の優れた正極合剤が得られる。
【0017】
正極合剤を正極金属箔11aに塗布する方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法、等が挙げられる。正極合剤に分散溶液の溶媒例として、N−メチルピロリドン(NMP)や水等を添加し、混練したスラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、プレスし、裁断する。正極合剤の塗布厚さの一例としては片側約40μmである。正極金属箔11aをプレスにより裁断する際、正極リード16を一体的に形成する。すべての正極リード16の長さは、ほぼ同じである。
【0018】
負極電極12は、銅箔により形成され長尺な形状を有し、負極金属箔12aと、この負極金属箔12aの両面に負極合剤が塗布された負極処理部12bを有する。負極金属箔12aの長手方向に延在する下方側の側縁は、負極合剤が塗布されず銅箔が露出した負極合剤未処理部12cとなっている。この負極合剤未処理部12cには、軸芯15の軸に沿って正極リード16とは反対方向に延出された、多数の負極リード17が等間隔に一体的に形成されている。
【0019】
負極合剤は、負極活物質と、負極バインダと、増粘剤とからなる。負極合剤は、アセチレンブラックなどの負極導電材を有しても良い。負極活物質としては、黒鉛炭素を用いること、特に人造黒鉛を使用することが好ましい。黒鉛炭素を用いることにより、大容量が要求されるプラグインハイブリッド自動車や電気自動車向けのリチウムイオン二次電池が作製できる。負極合剤による負極合剤処理部12bの形成方法は、負極金属箔12a上に負極合剤が形成される方法であれば制限はない。しかしその中でも次に記載する方法により優れた特性の負極合剤が得られる。負極合剤を負極金属箔12aに塗布する方法の例として、負極合剤の構成物質の分散溶液を負極金属箔12a上に塗布する方法が挙げられる。塗布方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法等が挙げられる。
【0020】
負極合剤を負極金属箔12aに塗布する方法の例として、負極合剤に分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンや水を添加し、混練したスラリを、厚さ10μmの圧延銅箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、プレスし、裁断する。負極合剤の塗布厚さの一例としては片側約40μmである。負極金属箔12aをプレスにより裁断する際、負極リード17を一体的に形成する。すべての負極リード17の長さは、ほぼ同じである。
【0021】
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の幅をWS、負極金属箔12aに形成される負極処理部12bの幅をWC、正極金属箔11aに形成される正極処理部11bの幅をWAとした場合、下記の式を満足するように形成される。
WS>WC>WA(図3参照)
すなわち、正極処理部11bの幅WAよりも、常に、負極処理部12bの幅WCが大きい。これは、リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質であるリチウムがイオン化してセパレータを浸透するが、負極側に負極活物質が形成されておらず負極金属箔12aが表出していると負極金属箔12aにリチウムが析出し、内部短絡を発生する原因となるからである。
【0022】
正極金属箔11aの正極合剤未処理部11cに形成される正極リード(導電リード)16および負極金属箔12aの負極合剤未処理部12cに形成される負極リード(導電リード)17は、例えば、ロールカッタにより、図4に図示されるように、所定のピッチpで等間隔に形成される。
正極リード16および負極リード17は、根元部の幅w1が太く、先端部の幅w2が細い、先細形状を有する。一例を挙げれば、根元部の幅w1は5mm程度であり、先端部の幅w2が4mm程度、根元部の幅w1と先端部の幅w2の差Δwが1mm程度である。
正極リード16と負極リード17の根元部の幅w1と先端部の幅w2とは、同一であっても良いし、異なってもよい。後述する如く、正極リード16および負極リード17の幅は、導電リードの重ね枚数のばらつきに大きな影響がない。
【0023】
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14は、それぞれ、例えば、厚さ40μmのポリエチレン製多孔膜で形成されている。
図1および図3において、中空な円筒形状の軸芯15は軸方向(図面の上下方向)の上端部の内面に中空部よりも径大の溝15aが形成され、この溝15aに大略薄い円筒状の正極集電部材27が圧入されている。正極集電部材27は、例えば、アルミニウムにより形成され、円盤状の基部27a、この基部27aの内周部において軸芯15側に向かって突出し、軸芯15の内面に圧入される下部筒部27b、および外周縁において電池蓋3側に突き出す上部筒部27cを有する。正極集電部材27の基部27aには、電池内部で発生するガスを放出するための開口部27d(図2参照)が形成されている。
【0024】
正極金属箔11aの正極リード16は、すべて、正極集電部材27の上部筒部27cに溶接される。図2に図示されるように、正極リード16は、正極集電部材27の上部筒部27c上に重なり合って接合される。各正極リード16は大変薄いため、1つでは大電流を取りだすことができない。このため、軸芯15への巻き始めから巻き終わりまでの全長に亘り、多数の正極リード16が所定間隔に形成されている。
【0025】
正極集電部材27は、電解液によって酸化されるので、アルミニウムで形成することにより信頼性を向上することができる。アルミニウムは、なんらかの加工により表面が露出すると、直ちに、表面に酸化アルミウム皮膜が形成され、この酸化アルミニウム皮膜により、電解液による酸化を防止することができる。
また、正極集電部材27をアルミニウムで形成することにより、正極金属箔11aの正極リード16を超音波溶接またはスポット溶接等により溶接することが可能となる。
【0026】
正極集電部材27の上部筒部27cの外周には、正極金属箔11aの正極リード16および押え部材28が溶接されている。多数の正極リード16は、正極集電部材27の上部筒部27cの外周に密着させておき、正極リード16の外周に押え部材28をリング状に巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。
【0027】
軸芯15の下端部の外周には、外径が径小とされた段部15bが形成され、この段部15bに負極集電部材21が圧入されて固定されている。負極集電部材21は、例えば、銅により形成され、円盤状の基部21aに軸芯15の段部15bに圧入される開口部21bが形成され、外周縁に、電池缶2の底部側に向かって突き出す外周筒部21cが形成されている。
負極金属箔12aの負極リード17は、すべて、負極集電部材21の外周筒部21cに超音波溶接等により溶接される。各負極リード17は大変薄いため、大電流を取りだすために、軸芯15への巻き始めから巻き終わりまで全長にわたり、所定間隔で多数形成されている。
【0028】
負極集電部材21の外周筒部21cの外周には、負極金属箔12aの負極リード17および押え部材22が溶接されている。多数の負極リード17を、負極集電部材21の外周筒部21cの外周に密着させておき、負極リード17の外周に押え部材22をリング状に巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。
負極集電部材21の下面には、ニッケルからなる負極通電リード23が溶接されている。
負極通電リード23は、鉄製の電池缶2の底部において、電池缶2に溶接されている。
【0029】
ここで、正極集電部材27に形成された開口部27eは、負極通電リード23を電池缶2に溶接するための電極棒(図示せず)を挿通するためのものである。電極棒を正極集電部材27に形成された開口部27eから軸芯15の中空部に差し込み、その先端部で負極通電リード23を電池缶2の底部内面に押し付けて抵抗溶接を行う。負極集電部材21に接続されている電池缶2の底面は一方の出力端子として作用し、電極群10に蓄電された電力を電池缶2から取り出すことができる。
【0030】
多数の正極リード16が正極集電部材27に溶接され、多数の負極リード17が負極集電部材21に溶接されることにより、正極集電部材27、負極集電部材21および電極群10が一体的にユニット化された発電ユニット20が構成される(図2参照)。但し、図2においては、図示の都合上、負極集電部材21、押え部材22および負極通電リード23は発電ユニット20から分離して図示されている。
【0031】
正極集電部材27の基部27aの上面には、複数のアルミニウム箔が積層されて構成されたフレキシブルな接続部材33が、その一端部を溶接されて接合されている。接続部材33は、複数枚のアルミニウム箔を積層して一体化することにより、大電流を流すことが可能とされ、且つ、フレキシブル性を付与されている。つまり、大電流を流すには接続部材33の厚さを大きくする必要があるが、1枚の金属板で形成すると剛性が大きくなり、フレキシブル性が損なわれる。そこで、板厚の小さな多数のアルミニウム箔を積層してフレキシブル性を持たせている。接続部材33の厚さは、例えば、0.5mm程度であり、厚さ0.1mmのアルミニウム箔を5枚積層して形成される。
【0032】
正極集電部材27の上部筒部27c上には、電池蓋ユニット30が配置されている。電池蓋ユニット30は、リング形状をした絶縁板34、絶縁板34に設けられた開口部34aに嵌入された接続板35、接続板35に溶接されたダイアフラム37およびダイアフラム37に、かしめにより固定された電池蓋3により構成される。
絶縁板34は、円形の開口部34aを有する絶縁性樹脂材料からなるリング形状を有し、正極集電部材27の上部筒部27c上に載置されている。
【0033】
絶縁板34は、開口部34a(図2参照)および下方に突出する側部34bを有している。絶縁板34の開口部34a内には接続板35が嵌合されている。接続板35の下面には、接続部材33の他端部が溶接されて接合されている。この場合、接続部材33は他端部側において湾曲状に折り返されて、正極集電部材27に溶接された面と同じ面が接続板35に溶接されている。
【0034】
接続板35は、アルミニウム合金で形成され、中央部を除くほぼ全体が均一でかつ、中央側が少々低い位置に撓んだ、ほぼ皿形状を有している。接続板35の厚さは、例えば、1mm程度である。接続板35の中心には、薄肉でドーム形状に形成された突起部35aが形成されており、突起部35aの周囲には、複数の開口部35b(図2参照)が形成されている。開口部35bは、電池内部に発生するガスを放出する機能を有している。
【0035】
接続板35の突起部35aはダイアフラム37の中央部の底面に抵抗溶接または摩擦攪拌接合により接合されている。ダイアフラム37はアルミニウム合金で形成され、ダイアフラム37の中心部を中心とする円形の切込み37aを有する。切込み37aはプレスにより上面側をV字形状に押し潰して、残部を薄肉にしたものである。ダイアフラム37は、電池の安全性確保のために設けられており、電池の内圧が上昇すると、第1段階として、上方に反り、接続板35の突起部35aとの接合を剥離して接続板35から離間し、接続板35との導通を絶つ。第2段階として、それでも内圧が上昇する場合は切込み37aにおいて開裂し、内部のガスを放出する機能を有する。
【0036】
ダイアフラム37は周縁部において電池蓋3の周縁部を固定している。ダイアフラム37は図2に図示されるように、当初、周縁部に電池蓋3側に向かって垂直に起立する側壁37bを有している。この側壁37b内に電池蓋3を収容し、かしめ加工により、側壁37bを電池蓋3の上面側に屈曲して固定する。
【0037】
電池蓋3は、炭素鋼等の鉄で形成してニッケルめっきが施されており、ダイアフラム37に接触する円盤状の周縁部3aと、この周縁部3aから上方に突出す有頭無底の筒部3bを有するハット型を有する。筒部3bには開口部3cが形成されている。この開口部3cは、電池内部に発生するガス圧によりダイアフラム37が開裂した際、ガスを電池外部に放出するためのものである。電池蓋3は一方の電力出力端として作用し、電池蓋3から蓄電された電力を取り出すことができる。
なお、電池蓋3が鉄で形成されている場合には、別の円筒形二次電池と直列に接合する際、鉄で形成された別の円筒形二次電池とスポット溶接により接合することが可能である。
【0038】
ダイアフラム37の側壁37bと周縁部を覆ってガスケット43が設けられている。ガスケット43は、ゴムで形成されており、限定する意図ではないが、1つの好ましい材料の例として、フッ素系樹脂をあげることができる。
ガスケット43は、当初、図2に図示されるように、リング状の基部43aの周側縁に、上部方向に向けてほぼ垂直に起立して形成された外周壁部43bを有する形状を有している。
【0039】
そして、プレス等により、電池缶2と共にガスケット43の外周壁部43bを屈曲して基部43aと外周壁部43bにより、ダイアフラム37と電池蓋3を軸方向に圧接するようにかしめ加工される。これにより、電池蓋3、ダイアフラム37、絶縁板34および接続板35が一体に形成された電池蓋ユニット30がガスケット43を介して電池缶2に固定される。
【0040】
電池缶2の内部には、非水電解液5が所定量注入されている。非水電解液5の一例としては、リチウム塩がカーボネート系溶媒に溶解した溶液を用いることが好ましい。リチウム塩の例として、フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、フッ化ホウ酸リチウム(LiBF6)、等が挙げられる。また、カーボネート系溶媒の例として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、或いは上記溶媒の1種類以上から選ばれる溶媒を混合したもの、が挙げられる。
【0041】
しかして、上述した如く、正極電極11に形成された多数の正極リード16は、すべて、正極集電部材27の上部筒部27cの外周に超音波溶接等により溶接される。この場合、正極集電部材27の上部筒部27cの外周の全周囲に亘り、正極リード16をほぼ均等に配分して密着し、正極リード16の外周に押え部材28を巻き付ける。より正確には、押さえ部材28を平坦状に保持し、正極リード16が捲回された正極集電部材27を正極リード16に密着させた状態で回転させながら、超音波溶接等により、正極集電部材27に正極リード16および押え部材28を溶接する。
【0042】
負極リード17を負極集電部材21に溶接する方法も、正極側と同様に行われる。図5は、正極リード16周辺における円筒形二次電池1の拡大断面図である。
正極リード16は、例えば、20〜60mmのピッチで等間隔に形成されており、正極金属箔11aは、例えば、3000〜5000mmの長さを有し、正極リード16は正極集電部材の27の上部筒部27cの外面に数十周捲回される。
【0043】
正極電極11は、軸芯15の外周に捲回されており、1周毎に厚さが増大する。つまり、正極電極11、負極電極12、第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の合計の厚さ(電極繰り返し厚さ)分が1周毎に増大する。
従って、一定のピッチpで配列された正極リード16は、1周毎に、異なる円周角度の位置で正極集電部材27の上部筒部27cに接合される。これに起因して、正極集電部材27に接合される正極リード16の重なり枚数は、円周角度に関してばらつきが生じる。このことは、負極側においても同一であり、負極リード17は、円周角度の位置によって異なる重なり枚数で、負極集電部材21の外周筒部21cに接合される。
以下、正極リード16および負極リード17を代表して導電リード16の重なり枚数のばらつきについて説明する。
【0044】
(導電リードの重なりの要因)
図6は、正極集電部材27の上部筒部27cの外周に捲回された正極金属箔11aに形成された導電リード16の重なり枚数を示すグラフである。図6では、導電リード16の重なり枚数は、正極集電部材27の上部筒部27cの外周面27gを0枚として、半径方向への距離に比例して増大する図として示されている。この図は、軸正極集電部材27の上部筒部27cの外周面27gの巻始め位置Sから、0.5°間隔で導電リード16の重なり枚数を示したものである。
図6において、導電リード16の重なり枚数の最低は、ほぼ5枚であり、導電リード16の重なり枚数の最大は、ほぼ15枚である。最低と最大の重なり枚数の間で、導電リード16の重なり枚数が0.5°毎に示されている。
【0045】
図7は、図6に図示された重なり枚数を、発生位置割合の分布で示したグラフである。
図7のデータは、導電リード16の重なり枚数の標準偏差を求める際に用いることができる。
【0046】
図8は、導電リード16のピッチが10〜80mmの範囲において、0.1mm刻みで計算を行い、重なり枚数の標準偏差の変動をグラフにしたものである。重なり枚数は、導電リード16の幅を5mm、正極集電部材27の上部筒部27cの外径を30mm、電極の繰り返し厚さy(図2参照)、すなわち、正極電極11、負極電極12、第1のセパレータ13、第2のセパレータ14の厚さの合計を0.25mm、正極電極11の長さを4000mmとして演算により求めた。横軸は導電リード16のピッチであり、縦軸は、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値である。この場合、導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値は、導電リード16のピッチpが10〜100mmの間における重なり枚数の平均値とした。以下においては、説明の単純化のために、縦軸の定義である、「導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値」を、単に、「導電リードの重なり枚数の偏差の相対値」とする。
【0047】
図8において、縦軸、すなわち、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値が小さいということは、超音波溶接等の溶接時に必要とされるエネルギの大きさが一定値に近くてすむことを意味するので、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値が大きい場合よりも好ましい。図8においては、導電リード16のピッチが大きくなる程、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値が小さくなる傾向がある。これは、導電リード16のピッチが大きくなる程、集電部材に捲回される導電リード16の枚数が減少することが一つの要因であるためと考えられる。
【0048】
しかし、最も重要なことは、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅が、導電リード16のピッチの広い範囲に亘り小さいことである。以下、このことについて説明する。
【0049】
導電リード16の重なり枚数に影響する製造上の要因が2つある。
第1の要因は、導電リード16のピッチpの公差である。導電リード16の位置は、製造時において、導電リード16のピッチpの公差分ばらつくため、導電リード16の重なり枚数に影響する。
第2の要因は、導電リード16の形状である。上述した如く、導電リード16は、根元部の幅w1が大きく、先端部の幅w2が小さい先細形状を有する。導電リード16は、軸芯15に捲回されており、内周側から外周側に向けて導電リード16の根元部から正・負極の集電部材27、21までの距離が変化する。このため、導電リード16の根元部側で接合される場合と、導電リード16の先端部側で接合される場合とがあり、それぞれ、溶接部における導電リード16の幅が変化する。従って、これに伴って導電リード16の重なり枚数が変動する。
導電リード16のピッチpの公差をΔp、導電リード16の根元部の幅w1と先端部の幅w2との差Δw=(w1−w2)とするとき、導電リード16の位置は、(Δp+Δw)だけばらつくことになる。
【0050】
すなわち、図8において、例えば、導電リード16のピッチpが60mm程度の場合の導電リードの重なり枚数の偏差の相対値f1は、0.7程度と小さい値である。しかし、導電リード16のピッチpが61mm程度における導電リードの重なり枚数の偏差の相対値f2は0.9程度に急激に増大する。
このように、導電リード16のピッチpが僅かに変化したときに導電リードの重なり枚数の偏差の相対値が大きく変動する領域では、製造時のばらつきにより、導電リード16の重なり枚数が大きく変動することを意味する。
すなわち、導電リード16を正・負極の集電部材27、21に溶接する際に、導電リード16の重なり枚数の変動幅を小さくして接合力を均一にするには、導電リード16のピッチpを、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅の小さい範囲が導電リード16のピッチpの広い範囲に亘って連続する領域内に定めることが重要である。
【0051】
実際の製造条件を適用すると、第1の要因である、導電リード16を形成する際の製造上の公差Δpは1mm(±0.5mm)である。第2の要因である、導電リード16の根元部の幅w1と先端部の幅w2との差Δwは、上述した如く、1mm程度である。
従って、実際の製造において、導電リード16の位置は、(Δp+Δw)=2mm程度ずれる可能性がある。
【0052】
図8において、領域A、B、Cは、いずれも、導電リード16のピッチpが2mm以上の範囲に亘り、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅が0.2以下である。これらの領域は、導電リード16のピッチpが2mm以上の範囲に亘る他の領域よりも、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅が小さい。
このように、導電リード16のピッチpが領域A、B、Cの範囲内では、製造時に導電リード16の位置がずれたとしても、導電リード16の重なり枚数が大きく変動することはない。従って、領域A、B、Cの範囲内において、導電リード16のピッチpを定めれば、導電リード16の重なり枚数の変動幅を小さくすることができる。その結果、均一性が高い接合が実現できる。均一性の高い接合により、内部抵抗のばらつき等が小さい電池性能が優れた円筒形二次電池1を作製することが可能となる。
なお、図8において、領域AとBの間は、導電リード16のピッチpが2mm以上の範囲に亘り、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅が0.2以下であるので、導電リード16のピッチpを、この領域の範囲内から定めるようにしても良い。しかし、この領域は、領域A、B、Cに比較し、導電リード16のピッチpの範囲が狭く、かつ、導電リードの重なり枚数の偏差の相対値の変動幅が大きいので、領域A、B、Cの範囲内から定めるようにする方が望ましい。以下、領域A、B、Cを適正領域とする。
図9に、図8に図示された各適正領域A、B、Cに対する導電リード16のピッチの下限値と上限値および(導電リードの重なり枚数の標準偏差/導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値)の幅の値を表として示した。
【0053】
適正領域A、B、Cの範囲内は、いずれも導電リード16の重なり枚数の変動幅が小さく、良好な円筒形二次電池1を得ることができる。しかし、導電リード16のピッチpが大きくなると、正・負極の集電部材27、21に接合される導電リード16の数が減少し、内部抵抗が増大する。この意味では、導電リード16のピッチpは、適正領域AまたはBの領域内で定める方が適正領域Cの領域内に定めるよりも望ましい。
【0054】
この場合、後述するが、導電リード16の根元部の幅w1は、導電リード16の重なり枚数の変動に関して影響がないので、導電リード16のピッチpを大きくした場合に、導電リード16の根元部の幅w1を大きくするようにしてもよい。
しかし、導電リード16の幅を大きくすることは、円筒形状の正・負極の集電部材27、21との接合部が幅広くなることを意味する。導電リード16の接合部は、円筒形状の正・負極の集電部材27、21の外周に倣って円弧状となるため、導電リード16の接合部の幅が大きくなると、導電リード16の根元側の接合されない部分に対して大きく変形するため、導電リード16が破損し易くなる。従って、このことも考慮して、導電リード16の幅寸法を定める必要がある。
【0055】
(導電リードの重なり枚数のパラメータ)
次に、導電リード16の重なり枚数に影響するパラメータに関して述べる。
導電リード16の重なり枚数に影響するパラメータとして、導電リード16のピッチp以外に、下記に示す4つがある。
(i)導電リードの幅
(ii)正・負極の集電部材の外径
(iii)正・負極の電極長さ
(iv)電極繰り返し厚さ
以下、各パラメータと導電リード16の重なり枚数との関連について、順次、説明する。
【0056】
(導電リードの幅)
図10は、図8に図示された適正領域A、B、Cに対する導電リードの幅と導電リードのピッチの関係を示すグラフである。
図8の場合と同様に、導電リード16のピッチpを0.1mmずつ変化させたときの導電リードの重なり枚数の標準偏差がどのように変動するかを、導電リード16の幅が3.0mm〜7.0mmの範囲に対して演算により求めたものである。すなわち、導電リード16の幅が、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mmに対して、それぞれ、図8のグラフを作成し、各グラフにおいて、図8に示す領域A、B、Cの範囲となる導電リード16のピッチpをプロットしたものである。導電リード16の幅以外の各パラメータは、正・負極の集電部材27、21の外径を30mm、電極長さ(図示せず)を4000mm、電極繰り返し厚さyを0.25mmとした。
【0057】
図10において、導電リード16の幅の変動によって、重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cには殆ど違いが見られない。つまり、導電リード16の幅は、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動には影響しないことが分かる。
【0058】
(集電部材の外径)
図11は、図8に図示された適正領域A、B、Cに対する正・負極の集電部材27、21の外径と導電リードのピッチの関係を示すグラフである。
図8の場合と同様に、導電リード16のピッチpを0.1mmずつ変化させたときの導電リードの重なり枚数の標準偏差がどのように変動するかを、正・負極の集電部材27、21が28.0mm〜32.0mmの範囲に対して演算により求めたものである。すなわち、集電部材27、21の外径が、28.0mm、29.0mm、30.0mm、31.0mm、32.0mm、33.0mmに対して、それぞれ、図8のグラフを作成し、各グラフにおいて、図8に示す領域A、B、Cの範囲となる導電リード16のピッチpをプロットしたものである。正・負極の集電部材27、21の外径以外の各パラメータは、導電リード16の幅を5mm、電極長さ(図示せず)を4000mm、電極繰り返し厚さyを0.25mmとした。
【0059】
図11において、正・負極の集電部材27、21の外径が変動しても、重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cには殆ど違いが見られない。つまり、正・負極の集電部材27、21の外径は、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動には影響しないことが分かる。
【0060】
(電極長さ)
図12は、図8に図示された適正領域A、B、Cに対する電極長さ(図示せず)と導電リードのピッチの関係を示すグラフである。
図8の場合と同様に、導電リード16のピッチpを0.1mmずつ変化させたときの導電リードの重なり枚数の標準偏差がどのように変動するかを、電極長さが3000mm〜5000mmの範囲に対して演算により求めたものである。すなわち、電極長さが、3000mm、3500mm、4000mm、4500mm、5000mmに対して、それぞれ、図8のグラフを作成し、各グラフにおいて、図8に示す領域A、B、Cの範囲となる導電リード16のピッチpをプロットしたものである。電極長さ以外の各パラメータは、導電リード16の幅を5mm、正・負極の集電部材27、21の外径を30mm、電極繰り返し厚さyを0.25mmとした。
【0061】
図12において、電極長さの変動によって、重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cが変化している。つまり電極長さは、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動に影響するパラメータである。
【0062】
(電極繰り返し厚さ)
図13は、図8に図示された適正領域A、B、Cに対する電極繰り返し厚さyと導電リードのピッチの関係を示すグラフである。
上述した如く、電極繰り返し厚さy(図2参照)は、正極電極11、負極電極12、第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の合計の厚さである。
図8の場合と同様に、導電リード16のピッチpを0.1mmずつ変化させたときの導電リードの重なり枚数の標準偏差がどのように変動するかを、電極繰り返し厚さyが0.23mm〜0.27mmの範囲に対して演算により求めたものである。すなわち、電極繰り返し厚さが、0.23mm、0.24mm、0.25mm、0.26mm、0.27mmに対して、それぞれ、図8のグラフを作成し、各グラフにおいて、図8に示す領域A、B、Cの範囲となる導電リード16のピッチpをプロットしたものである。電極繰り返し厚さy以外の各パラメータは、導電リード16の幅を5mm、正・負極の集電部材27、21の外径を30mm、電極長さを4000mmとした。
【0063】
図13において、電極繰り返し厚さyの変動によって、重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cが変化している。つまり、電極繰り返し厚さyは、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動に影響するパラメータである。
【0064】
以上の結果より、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cは、導電リード16の幅および正・負極の集電部材27、21の外径の変化には影響されず、電極長さと電極繰返し厚さyにより変動することが分かった。
また、図12および図13により、適正領域A、B、Cの変動は、電極長さと電極繰返し厚さyの変化に直線近似できると考えられる。
【0065】
図14は、図8に図示された適正領域A、B、Cに対する電極長さ、電極繰り返し厚さおよび導電リードのピッチの関係を示すグラフである。
導電リード16の重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cは、図14に示す如く、導電リード16のピッチp、電極長さ、電極繰返し厚さyの3つのパラメータによって構成される平面によって限定することができる。
円筒形二次電池1を作製する際に、導電リード16ピッチpを、電極長さと電極繰返し厚さyの関数によって、導電リード16の重なり枚数の偏差の変動幅が小さい適正領域A、B、Cの範囲内とするように定める。このことにより、導電リード16のピッチpの重なり枚数の偏差の変動を抑制することが可能となる。
【0066】
電極長さをxmm、電極繰返し厚さをymm、導電リード16のピッチをpとしたとき、各適正領域A、B、Cに対して、その関数は、下記通りとなる。
(1)適正領域A:
3.4341 + 0.00266972 x + 37.6812 y<p<-1.75694 + 0.0032418 x + 63.7681 y
(2)適正領域B:
2.76142 + 0.0032418 x + 55.0725 y<p<2.30873 + 0.00411899 x + 68.1159 y
(3)適正領域C:
3.65859 + 0.00495805 x + 62.3188 y<p<-11.1444 + 0.00781846 x + 143.478 y
【0067】
以上説明した通り、上記実施形態では、導電リードのピッチの公差をΔp、導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差をΔwとしたとき、導電リードのピッチが、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値の変動幅がΔpとΔwの和よりも大きい範囲に亘り0.2以下である範囲内に定められているので、導電リードの重なり枚数のばらつきを十分に小さくすることができる。その結果、導電リードが均一に集電部材の外周面に溶接される。このため、内部抵抗のばらつき等が小さい電池性能が優れた円筒形二次電池1を作製することが可能となる。この場合、導電リード16のピッチpは等間隔であるので、正極電極11、負極電極12および電極群10の製造も効率的である。
【0068】
なお、上記実施形態では、リチウムイオン円筒形二次電池の場合で説明した。しかし、本発明は、ニッケル水素電池またはニッケル・カドミウム電池、鉛蓄電池のように水溶性電解液を用いる円筒形二次電池にも適用が可能である。
【0069】
また、上記実施形態では、導電リード16の公差Δpを1mm、導電リード16の根元部の幅w1と先端部の幅w2との差Δwを1mmをとして説明したが、ΔpおよびΔwの値が、それぞれ、異なる電極ユニットを用いた二次電池にも本発明を適用することが可能である。
【0070】
上記実施形態では、電極群10を、正極電極11と負極電極12との間に、第1、第2のセパレータ13、14を介在させた構造としたが、第1、第2のセパレータ13、14間を1枚のセパレータで分離させる構造としてもよい。その他、本発明の円筒形二次電池は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して適用することが可能であり、要は、長手方向の一側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された正極金属箔の両面に正極合剤が形成された正極電極と、正極電極の導電リードが形成された一側縁に対向する他側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された負極金属箔の両面に負極合剤が形成された負極電極とがセパレータを介して捲回された電極群と、正極電極および負極電極の少なくとも一方の導電リードが捲回され重なって接合された集電部材と、電極群および集電部材が収容され、電解液が注入された電池容器とを備えた円筒形二次電池において、導電リードが根元部から先端部に向けて先細に形成され、導電リードのピッチの公差をΔp、導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差をΔwとしたとき、導電リードのピッチが、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値の変動幅がΔpとΔwの和よりも大きい範囲に亘り所定値以下である適正領域内に定められたものであればよい。
【符号の説明】
【0071】
1 円筒形二次電池
2 電池缶
3 電池蓋
4 電池容器
5 非水電解液
10 電極群
11 正極電極
12 負極電極
13 第1のセパレータ
14 第2のセパレータ
16 正極リード(導電リード)
17 負極リード(導電リード)
21 負極集電部材
27 正極集電部材
30 電池蓋ユニット
A、B、C 適正領域
p 導電リードのピッチ
x 電極長さ
y 電極繰り返し厚さ
w1 導電リード根元部の幅
w2 導電リード先端部の幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された正極金属箔の両面に正極合剤が形成された正極電極と、前記正極電極の導電リードが形成された一側縁に対向する他側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された負極金属箔の両面に負極合剤が形成された負極電極とがセパレータを介して捲回された電極群と、
前記正極電極および負極電極の少なくとも一方の導電リードが捲回され重なって接合された集電部材と、
前記電極群および前記集電部材が収容され、電解液が注入された電池容器とを備えた円筒形二次電池において、
前記導電リードが根元部から先端部に向けて先細に形成され、前記導電リードのピッチの公差をΔp、前記導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差をΔwとしたとき、前記導電リードのピッチが、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値の変動幅がΔpとΔwの和よりも大きい範囲に亘り所定以下である適正領域内に定められたことを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードのピッチが、前記導電リードの重なり枚数の偏差の変動幅が2mm以上の範囲に亘り0.2以下である領域内に定められたことを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項3】
請求項1に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードのピッチが、前記導電リードの重なり枚数の偏差の変動幅が2mm以上の範囲に亘り0.1以下である領域内に定められたことを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードのピッチをpmm、電極の長さをxmm、前記正極電極、前記負極電極および前記第1、第2のセパレータの厚さの合計である電極繰り返し厚さをymmとするとき、下記の式を満足することを円筒形二次電池。
3.4341 + 0.00266972 x + 37.6812 y<p<-1.75694 + 0.0032418 x + 63.7681 y
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードのピッチをpmm、電極の長さをxmm、前記正極電極、前記負極電極および前記第1、第2のセパレータの厚さの合計である電極繰り返し厚さをymmとするとき、下記の式を満足することを円筒形二次電池。
2.76142 + 0.0032418 x + 55.0725 y<p<2.30873 + 0.00411899 x + 68.1159 y
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードのピッチをpmm、電極の長さをxmm、前記正極電極、前記負極電極および前記第1、第2のセパレータの厚さの合計である電極繰り返し厚さをymmとするとき、下記の式を満足することを円筒形二次電池。
3.65859 + 0.00495805 x + 62.3188 y<p<-11.1444 + 0.00781846 x + 143.478 y
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードは正極電極の導電リードおよび前記負極電極の導電リードであることを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項1】
長手方向の一側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された正極金属箔の両面に正極合剤が形成された正極電極と、前記正極電極の導電リードが形成された一側縁に対向する他側縁に沿って多数の導電リードが所定ピッチで形成された負極金属箔の両面に負極合剤が形成された負極電極とがセパレータを介して捲回された電極群と、
前記正極電極および負極電極の少なくとも一方の導電リードが捲回され重なって接合された集電部材と、
前記電極群および前記集電部材が収容され、電解液が注入された電池容器とを備えた円筒形二次電池において、
前記導電リードが根元部から先端部に向けて先細に形成され、前記導電リードのピッチの公差をΔp、前記導電リードの根元部と先端部の幅寸法の差をΔwとしたとき、前記導電リードのピッチが、導電リードの重なり枚数の標準偏差を導電リードの重なり枚数の標準偏差の平均値で除した数値の変動幅がΔpとΔwの和よりも大きい範囲に亘り所定以下である適正領域内に定められたことを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードのピッチが、前記導電リードの重なり枚数の偏差の変動幅が2mm以上の範囲に亘り0.2以下である領域内に定められたことを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項3】
請求項1に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードのピッチが、前記導電リードの重なり枚数の偏差の変動幅が2mm以上の範囲に亘り0.1以下である領域内に定められたことを特徴とする円筒形二次電池。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードのピッチをpmm、電極の長さをxmm、前記正極電極、前記負極電極および前記第1、第2のセパレータの厚さの合計である電極繰り返し厚さをymmとするとき、下記の式を満足することを円筒形二次電池。
3.4341 + 0.00266972 x + 37.6812 y<p<-1.75694 + 0.0032418 x + 63.7681 y
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードのピッチをpmm、電極の長さをxmm、前記正極電極、前記負極電極および前記第1、第2のセパレータの厚さの合計である電極繰り返し厚さをymmとするとき、下記の式を満足することを円筒形二次電池。
2.76142 + 0.0032418 x + 55.0725 y<p<2.30873 + 0.00411899 x + 68.1159 y
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードのピッチをpmm、電極の長さをxmm、前記正極電極、前記負極電極および前記第1、第2のセパレータの厚さの合計である電極繰り返し厚さをymmとするとき、下記の式を満足することを円筒形二次電池。
3.65859 + 0.00495805 x + 62.3188 y<p<-11.1444 + 0.00781846 x + 143.478 y
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の円筒形二次電池において、前記導電リードは正極電極の導電リードおよび前記負極電極の導電リードであることを特徴とする円筒形二次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−160282(P2012−160282A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17745(P2011−17745)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
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