説明

円筒研削装置および研削方法

【課題】インゴットの研削加工効率を向上させることができる円筒研削装置および研削方法を提供することを目的とする。
【解決手段】円柱状のインゴットの側面を研削するための円筒研削装置であって、少なくとも3つのローラーと、前記ローラーを支持するアームから成り、前記インゴットに対して水平方向から進退動して前記ローラーを圧接可能な芯出し手段を具備し、テーブルに前記円柱状のインゴットを縦置きに載置し、前記インゴットの両側の端面を一対のクランプで鉛直方向に保持し、回転手段で前記インゴットを軸周りに回転しながら前記芯出し手段が前記インゴットに対して水平方向から進退動して、前記インゴットの側面に前記ローラーを圧接させることによって、前記回転手段の回転軸と前記インゴットの中心軸を一致させた後、前記インゴットを研磨ホイールで研削するものであることを特徴とする円筒研削装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造において、単結晶インゴットの円筒研削工程に使用される円筒研削装置およびそれを用いた研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CZ法等によって製造された単結晶インゴットは円柱状の胴体部にコーン状の端部(トップ部およびテイル部)を有している。そして、ブロックの切断工程にて、内周刃スライサー、外周刃スライサー、バンドソー等によって、これらコーン状の端部が切り離され円柱状の胴体部のみとされる。さらに、胴体部は必要に応じて複数のブロックに切断される。その後、各インゴットブロックは所定の径となるように外周面に研削加工が施された後、ワイヤソー等によって、多数枚のシリコンウェーハにスライス切断される。
【0003】
円筒状のインゴットの外周面を研削する研削装置としては、円筒研削装置が最も一般的である。
図4に従来の一般的な円筒研削装置の一例の概略図を示す。
この円筒研削装置101は、インゴット105を保持するためのクランプ102、102’、インゴット105を回転駆動させるための回転手段104、インゴット105を研削する砥石103等を具備したものであり、前記クランプ102、102’から回転駆動力を伝達してインゴット105を軸周りに回転させるとともに、前記インゴット105に対し、回転する円盤状の砥石103をその回転軸方向へ送り込むと同時に前記クランプ102、102’の回転軸方向にも送る、いわゆるトラバース動させることにより、前記インゴット102、102’の外周面を研削するように構成されている。
【0004】
円筒研削装置101において、インゴット105はその端面を水平方向から保持され、すなわち、インゴット105の回転軸を水平方向と一致するように保持されている。前記のように砥石103は、その砥石103の回転軸方向のインゴット105側へ送りられると同時に、前記クランプ102、102’の回転軸方向にも送られるので、前記インゴット105の回転軸と前記クランプ102、102’の回転軸がずれていると円筒状に研削することができなし、必要以上の削り代が発生してしまう。従って、研削前にインゴットの芯出しを行うことが不可欠である。
【0005】
この芯出しに関して、ワークの軸方向の複数個所における断面形状を計測し、その結果から研磨中心を演算によって算出し、ワークの位置を調整する駆動部によって算出された研磨中心とワークの回転中心とのズレを調整する円筒研削装置が開示されている(特許文献1参照)。
また、固定棒によってワークの両側の端面を把持してワークを研削する外径研削機であって、ワーク載置部にワークを載置し、その状態で前記固定棒の中心線延長上からワーク載置部のワーク接触部までの垂直に降ろした距離がワークの半径に等しく構成されるようにした外径研削機が開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
しかし、前記のような研削装置を用いた場合でも、芯出しを精度良く行うためには、最終的に熟練作業者がプラスチックハンマー等でワークを叩いて目視により最終芯出しを行う方法がとられているのが現状である。そのため、芯出しを精度良く行うことはできるものの、インゴットの研削を開始するまでの工程で時間を要してしまい、このことが研削加工効率を低下させる一因となっていた。
【0007】
【特許文献1】特開平2−131849号公報
【特許文献2】実開平6−63266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたもので、円柱状のインゴットの側面の研削加工において、インゴットを円筒研削装置のテーブルに載置してから、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間を短縮することによって、インゴットの研削加工効率を向上させることができる円筒研削装置および研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、円柱状のインゴットを縦置きに載置するテーブルと、前記インゴットの両側の端面を鉛直方向から保持する一対のクランプと、前記インゴットを軸周りに回転駆動させるための回転手段と、前記回転手段の回転軸方向に移動可能な研磨ホイールを具備した前記円柱状のインゴットの側面を研削するための円筒研削装置であって、少なくとも3つのローラーと、前記ローラーを支持するアームから成り、前記インゴットに対して水平方向から進退動して前記ローラーを圧接可能な芯出し手段を具備し、前記テーブルに前記円柱状のインゴットを縦置きに載置し、前記インゴットの両側の端面を前記一対のクランプで鉛直方向に保持し、前記回転手段で前記インゴットを軸周りに回転しながら前記芯出し手段が前記インゴットに対して水平方向から進退動して、前記インゴットの側面に前記ローラーを圧接させることによって、前記回転手段の回転軸と前記インゴットの中心軸を一致させた後、前記インゴットを前記研磨ホイールで研削するものであることを特徴とする円筒研削装置を提供する(請求項1)。
【0010】
このように、本発明の円筒研削装置は、少なくとも3つのローラーと、前記ローラーを支持するアームから成り、前記インゴットに対して水平方向から進退動して前記ローラーを圧接可能な芯出し手段を具備し、前記テーブルに前記円柱状のインゴットを縦置きに載置し、前記インゴットの両側の端面を前記一対のクランプで鉛直方向に保持し、前記回転手段で前記インゴットを軸周りに回転しながら前記芯出し手段が前記インゴットに対して水平方向から進退動して、前記インゴットの側面に前記ローラーを圧接させることによって、前記回転手段の回転軸と前記インゴットの中心軸を一致させた後、前記インゴットを前記研磨ホイールで研削するので、熟練作業員によることなく、機械的に芯出しを行うことができるとともに、インゴットを円筒研削装置のテーブルに載置してから、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間を短縮することができ、インゴットの研削加工効率を向上させることができる。
【0011】
このとき、前記テーブルはU字型の切り欠きを有することが好ましい(請求項2)。
このように、前記テーブルがU字型の切り欠きを有していれば、簡単な構造でクランプとテーブルの干渉を回避して、前記インゴットを前記クランプの上に出し入れすることができ、安価に構成できるとともに工程時間を短縮することができる。それによって、インゴットを円筒研削装置のテーブルに載置してから、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間をより短縮することができ、インゴットの研削加工効率をより向上させることができる。
【0012】
またこのとき、前記芯出し手段は、Y字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材がそれぞれ左右対称に1対有するものとすることができる(請求項3)。
このように、前記芯出し手段は、Y字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材がそれぞれ左右対称に1対有するものであれば、簡単な構造で芯出しを精度良く行うことができるものとすることができる。
【0013】
また、本発明は、円柱状のインゴットの側面を研削する円筒研削装置によるインゴットの研削方法であって、テーブルに前記円柱状のインゴットを縦置きに載置し、前記インゴットの両側の端面を軸周りに回転可能なクランプで鉛直方向に保持し、前記クランプで保持した前記インゴットを軸周りに回転させながら、少なくとも3つのローラーと、前記ローラーを支持するアームから成る芯出し手段を前記インゴットに対して水平方向から進退動させ、前記インゴットの側面に前記ローラーを圧接させることによって、前記クランプの回転軸と前記インゴットの中心軸を一致させた後、研磨ホイールを前記インゴットの側面に当接させ、前記研磨ホイールを鉛直方向に移動させて、前記インゴットの側面を研削することを特徴とするインゴットの研削方法を提供する(請求項4)。
【0014】
このように、テーブルに前記円柱状のインゴットを縦置きに載置し、前記インゴットの両側の端面を軸周りに回転可能なクランプで鉛直方向に保持し、前記クランプで保持した前記インゴットを軸周りに回転させながら、少なくとも3つのローラーと、前記ローラーを支持するアームから成る芯出し手段を前記インゴットに対して水平方向から進退動させ、前記インゴットの側面に前記ローラーを圧接させることによって、前記クランプの回転軸と前記インゴットの中心軸を一致させた後、研磨ホイールを前記インゴットの側面に当接させ、前記研磨ホイールを鉛直方向に移動させて、前記インゴットの側面を研削することで、熟練作業員によることなく、機械的に芯出しを行うことができるとともに、インゴットを円筒研削装置のテーブルに載置してから、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間を短縮することができ、インゴットの研削加工効率を向上させることができる。
【0015】
このとき、前記テーブルにU字型の切り欠きを設けることが好ましい(請求項5)。
このように、前記テーブルにU字型の切り欠きを設けることで、簡単な構成でクランプとテーブルの干渉を回避して、前記インゴットを前記クランプの上に出し入れすることができ、安価に構成できるとともに工程時間を短縮することができる。それによって、インゴットを円筒研削装置のテーブルに載置してから、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間をより短縮することができ、インゴットの研削加工効率をより向上させることができる。
【0016】
またこのとき、前記芯出し手段として、Y字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材をそれぞれ左右対称に1対有するものを用いることができる(請求項6)。
このように、前記芯出し手段として、Y字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材がそれぞれ左右対称に1対有するものを用いれば、簡単な構造で芯出しを精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、円筒研削装置において、テーブルに前記円柱状のインゴットを縦置きに載置し、前記インゴットの両側の端面を軸周りに回転可能なクランプで鉛直方向に保持し、前記クランプで保持した前記インゴットを軸周りに回転させながら、少なくとも3つのローラーと、前記ローラーを支持するアームから成る芯出し手段を前記インゴットに対して水平方向から進退動させ、前記インゴットの側面に前記ローラーを圧接させることによって、前記クランプの回転軸と前記インゴットの中心軸を一致させた後、研磨ホイールを前記インゴットの側面に当接させ、前記研磨ホイールを鉛直方向に移動させて、前記インゴットの側面を研削するので、熟練作業員によることなく、機械的に芯出しを行うことができるとともに、インゴットを円筒研削装置のテーブルに載置してから、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間を短縮することができ、インゴットの研削加工効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来、円柱状のインゴットの側面の研削加工において、インゴットの研削を開始する前の工程には、作業者による手作業が必要であり、特に、インゴットの芯出し作業は最終的に熟練者がインゴットをプラスチックハンマーで叩いて目視により最終芯出しを行う方法がとられているのが現状である。また、従来の一般的な円筒研削装置では、インゴットをその回転軸が水平方向となるように保持しており、前記芯出し作業は大変手間のかかるものであった。特に、近年の大口径化したインゴットを加工する場合その手間が顕著であった。そのため、熟練作業者によって芯出しを精度良く行うことはできるものの、前記のようにインゴットの研削を開始するまでの工程で時間を要してしまい、このことが研削加工効率を低下させる一因となっていた。
【0019】
そこで、本発明者は、熟練作業員によるところなく機械的に芯出しを行うため、また、インゴットの研削を開始するまでの工程時間を短縮するために鋭意検討を重ねた。その結果、インゴットを鉛直方向に保持するようにすれば、熟練作業員によることなく効率良く芯出しを行うことができ、さらに、インゴットを軸周りに回転させながら複数のローラーを有した芯出し手段でインゴットを圧接させるようにすれば、機械的に短時間で精度良く芯出しを行うことができることを見出した。
【0020】
すなわち、本発明は円筒研削装置において、テーブルに前記円柱状のインゴットを縦置きに載置し、前記インゴットの両側の端面を軸周りに回転可能なクランプで鉛直方向に保持し、前記クランプで保持した前記インゴットを軸周りに回転させながら、少なくとも3つのローラーと、前記ローラーを支持するアームから成る芯出し手段を前記インゴットに対して水平方向から進退動させ、前記インゴットの側面に前記ローラーを圧接させることによって、前記クランプの回転軸と前記インゴットの中心軸を一致させた後、研磨ホイールを前記インゴットの側面に当接させ、前記研磨ホイールを鉛直方向に移動させて、前記インゴットの側面を研削するので、熟練作業員によるところなく、機械的に芯出しを行うことができるとともに、インゴットを円筒研削装置のテーブルに載置してから、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間を短縮することができ、インゴットの研削加工効率を向上させることができる。
【0021】
図1は本発明の円筒研削装置の一例を示す概略図である。
図1に示すように、円筒研削装置1は、研削する円筒状のインゴット5の端面6を保持するための一対のクランプ2、2’と、前記インゴット5を軸周りに回転駆動させるための回転手段4と、前記インゴット5の側面7を研削する砥石であり軸周りに回転可能な研磨ホイール3が設けられている。そして、前記研磨ホイール3を前記インゴットの側面7に当接させ、前記インゴットの側面7に沿って上下に移動させることにより、前記インゴット5の側面を研削するものである。
【0022】
本発明に係る円筒研削装置1は、インゴット5を縦置きに載置するテーブル8を有している。そして、前記テーブル8上に縦置きにされたインゴット5は前記テーブル8を移動させることでクランプ2’上に搬送される。一対のクランプ2、2’は、少なくとも1つが鉛直方向に昇降動自在となっており、前記インゴット5の端面を前記クランプ2、2’によって鉛直方向から保持することができるようになっている。
このようなインゴットの保持は、例えば油圧シリンダによるクランプ間の押圧力によって行うことができ、その押圧力はその強弱を所望の値に調整可能となっている。
【0023】
また、クランプ2、2’は軸周りに回転可能であり、回転手段4からの回転駆動力が前記クランプ2’に伝達され、前記クランプ2、2’によって保持されたインゴット5を軸周りに回転できるようになっている。
また、研磨ホイール3は、その軸周りに高速回転可能である。また、研磨ホイール3は軸方向に前後動自在であり、前進することでインゴットの側面7に当接して研削するようになっている。また、前記インゴットの側面7に沿って、すなわち鉛直方向に、移動可能となっており、トラバース研削が可能となっている。そして、インゴット5を回転手段4により軸周りに回転させながら、研磨ホイール3を前記のようにトラバース動させインゴット5の側面を研削していくものとなっている。
【0024】
ここで、研削時にインゴット5の位置ずれ等が発生しないように、インゴット5を保持する前記クランプ2、2’間の研削時の押圧力を、例えば、10000〜20000Nとすることができる。しかし、これらの条件はこれに限定されず、研削中にインゴット5がクランプ2、2’間で移動して位置ずれ等が発生しない押圧力となっていれば良い。
またここで、研削時における前記インゴット5を軸周りに回転させる回転速度は、例えば、5〜20rpmとすることができる。しかし、これらの条件もこれに限定されず、インゴットの外径等の条件によって適宜決定すれば良い。
【0025】
そして、本発明に係る円筒研削装置1は、クランプ2、2’上に載置されたインゴット5の芯出しを行うための芯出し手段9を有している。この芯出し手段9は、少なくとも3つのローラー11と、前記ローラー11を支持するアーム10から構成されている。そして、芯出し手段9は、前記インゴット5に対して水平方向から進退動して前記ローラー11をインゴットに圧接可能となっている。
【0026】
ところで、本発明の円筒研削装置1では、前記のようにインゴット5を鉛直方向に保持するので、従来の横向きにインゴットを保持する場合と比較して、芯出し時におけるクランプ2、2’間の押圧力を小さくすることができるので、効率的に芯出しを行うことができるものとなっている。そして、前記芯出し手段9を用いて、回転手段4でインゴット5を軸周りに回転させながら、前記芯出し手段9を前記インゴット5に対して水平方向から進退動して、前記ローラー11を前記インゴット5に圧接させれば、回転手段4の回転軸(クランプの回転軸)とインゴット5の中心軸を一致させて芯出しする工程を熟練作業員によるところなく、機械的に芯出しを行うことができるとともに、短時間で精度良く行うことができる。
このように、本発明の円筒研削装置は、研削加工効率を向上させることができるものとなっている。
【0027】
ここで、前記ローラー11の数は3個以上あれば特に限定されないが、例えば4〜6個とすることができる。
またここで、芯出し時の前記クランプ間の押圧力を、例えば、2000〜8000Nとすることができる。こうすることで、前記芯出し手段9のローラ11によって圧接されたインゴット5がクランプ2、2’間で芯出し位置に移動可能とすることができる。しかし、これらの条件はこれに限定されず、芯出し時において、インゴット5がクランプ2、2’間で芯出し位置に移動できる押圧力であれば良く、インゴットの外径等によって適宜決定すれば良い。
【0028】
またここで、芯出し時における、前記インゴット5を軸周りに回転させる回転速度は、例えば、1〜5rpmとすることができる。しかし、これらの条件はこれに限定されず、インゴットの外径等の条件によって、効率よく芯出しすることができる回転速度に適宜決定すれば良い。
【0029】
またこのとき、図2(A)に示すように、前記テーブルはU字型の切り欠きを有することが好ましい。
このように、前記テーブルがU字型の切り欠きを有していれば、図2(B)に示すように、インゴット5を載置したテーブル8がクランプ2’の上方から下降して後退するようにすれば、前記インゴット5を前記クランプ2’の上に簡単に移載することができ、工程時間を短縮することができる。それによって、前記インゴット5を円筒研削装置1のテーブル8に載置してから、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間をより短縮することができ、インゴットの研削加工効率をより向上させることができるとともに、装置も安価に構成することができる。
ここで、前記テーブル8の表面にインゴットの直径の目安となる樹脂を貼っておくことができる(図2(A)中の斜線部分)。このようにすればインゴット5をテーブル8上に縦置きに載置する位置の目安とすることができ、大幅にインゴット5が軸からずれてテーブル8上に載置されることが防止され、後続する芯出し工程での利便に供する。
【0030】
またこのとき、前記芯出し手段9は、Y字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材がそれぞれ左右対称に1対有するものとすることができる。
図3に本発明の円筒研削装置で使用することができる芯出し手段の一例を示す。
図3に示すように、Y字型のアーム10、10’の先端に2つのローラー11、11’が設けられており、この芯出し部材12がそれぞれ左右対称に設置されている。また、それぞれの前記部材は、例えばエアシリンダ等により前進、後退を動作させることができるようになっている。そして、前記芯出し部材12をインゴット5に向かって前進させることにより前記インゴット5を前記ローラー11、11’で圧接できるようになっている。
このように、前記芯出し手段9は、Y字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材12がそれぞれ左右対称に1対有するものであれば、簡単な構造で芯出しを精度良く行うことができるものとすることができる。
【0031】
次に、本発明のインゴットの研削方法について説明する。
本発明のインゴットの研削方法では、図1に示すような円筒研削装置1を用いて、まず、テーブル8に円柱状のインゴット5を縦置きに載置する。そして、前記テーブル8をクランプ2’上に移動させた後、下降させることで前記インゴット5をクランプ2’上に移載し、前記インゴット5の両側の端面6をクランプ2、2’で鉛直方向に保持する。
ここで、図1の円筒研削装置の例では、インゴット5のクランプ2’への移載はテーブルを移動させることによって行われているが、クランプ2’が移動するような構成としても良い。
【0032】
次に、前記クランプ2、2’で保持した前記インゴット5を軸周りに回転させながら、少なくとも3つのローラー11と、前記ローラー11を支持するアーム10から成る芯出し手段9を前記インゴット5に対して水平方向から進退動させ、前記インゴット5の側面7に前記ローラー11を圧接させることによって、前記クランプ2、2’の回転軸と前記インゴット5の中心軸を一致させて芯出しを行う。
ここで、ローラー11の数は3個以上あれば特に限定されないが、例えば4〜6個のローラーを有する芯出し手段を用いても良い。
【0033】
またここで、芯出し時における、前記クランプ2、2’間の押圧力を、例えば、2000〜8000Nとすることができる。こうすることで、前記芯出し手段9のローラ11によって圧接された前記インゴット5が前記クランプ2、2’間で芯出し位置に移動することができる。しかし、これらの条件はこれに限定されず、芯出し時において、前記インゴット5が前記クランプ2、2’間で芯出し位置に移動できる押圧力であれば良く、インゴットの外径等によって適宜決定すれば良い。
またここで、芯出し時における、前記インゴット5を軸周りに回転させる回転速度は、例えば、1〜5rpmとすることができる。しかし、これらの条件もこれに限定されず、インゴットの外径等の条件によって、効率よく芯出しすることができる回転速度に適宜決定すれば良い。
またここで、芯出しの完了は、芯出しを開始してから所定の時間が経過した時点とすることができる。ここで、所定の時間は特に限定されず、精度良く芯出しが行える時間であれば良く、例えば30秒から2分とすることができる。
【0034】
その後、インゴットに圧接させていた前記芯出し手段9を後退させる。また、研削時においてインゴット5の位置ずれ等が発生しないように、インゴット5を保持する前記クランプ2、2’間の押圧力を増加して前記インゴット5を固定する。そして、前記インゴット5を軸周りに回転させながら、研磨ホイール3を前記インゴットの側面7に当接させ、前記研磨ホイール3を鉛直方向に移動させて、インゴット5の側面を研削する。
ここで、研削時における前記クランプ2、2’間の押圧力を、例えば、10000〜20000Nとすることができる。このようにすれば、研削中にインゴット5がクランプ2、2’間を移動して位置ずれ等が発生するのを防ぐことができる。しかし、これらの条件もこれに限定されず、研削中にインゴット5がクランプ2、2’間を移動して位置ずれ等が発生しない押圧力となっていれば良い。
【0035】
またここで、研削時における前記インゴット5を軸周りに回転させる回転速度は、例えば、5〜20rpmとすることができる。しかし、これらの条件はこれに限定されず、インゴットの外径等の条件によって適宜決定すれば良い。
このとき、図2(A)に示すように、前記テーブル8にU字型の切り欠きを設けることが好ましい。
このように、前記テーブル8にU字型の切り欠きを設けることで、図2(B)に示すように、インゴット5を載置したテーブル8がクランプ2’の上方から下降するようにすれば、テーブル8とクランプ2’を互いに干渉することなく、前記インゴット5を前記クランプ2、2’の上に簡単に移載することができ、工程時間を短縮することができる。それによって、前記インゴット5を円筒研削装置1のテーブル8に載置してから、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間をより短縮することができ、インゴットの研削加工効率をより向上させることができるとともに、装置を安価に構成できる。
【0036】
またこのとき、前記芯出し手段9として、図3に示すような、Y字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材12をそれぞれ左右対称に1対有するものを用いることができる。
このように、前記芯出し手段9として、Y字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材がそれぞれ左右対称に1対有するものを用いれば、簡単な構造で芯出しを精度良く行うことができる。
ここで、芯出し手段9の水平方向の進退動を、例えばエアシリンダ等によって行うことができ、その際の供給圧力を0.3〜0.6MPaとすることができる。しかし、これらの条件はこれに限定されず、研削するインゴットの外径や使用する芯出し手段の大きさ等によって適宜決定すれば良い。
【0037】
以上説明したように、本発明のインゴットの研削方法は、テーブルに前記円柱状のインゴットを縦置きに載置し、前記インゴットの両側の端面を軸周りに回転可能なクランプで鉛直方向に保持し、前記クランプで保持した前記インゴットを軸周りに回転させながら、少なくとも3つのローラーと、前記ローラーを支持するアームから成る芯出し手段を前記インゴットに対して水平方向から進退動させ、前記インゴットの側面に前記ローラーを圧接させることによって、前記クランプの回転軸と前記インゴットの中心軸を一致させた後、研磨ホイールを前記インゴットの側面に当接させ、前記研磨ホイールを鉛直方向に移動させて、前記インゴットの側面を研削するので、インゴットを円筒研削装置のテーブルに載置してから、熟練作業員によるところなく、機械的に芯出しを行うことができるとともに、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間を短縮することができ、インゴットの研削加工効率を向上させることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
図1に示すような円筒研削装置を用い、直径300mmのシリコンインゴットを1ブロック研削し、芯出しの精度と研削時間を測定した。図2(A)に示すようなU字の切り欠きを有するテーブルを使用し、芯出し手段として、図3に示すようなY字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材をそれぞれ左右対称に1対有するものを使用した。また、芯出し手段の水平方向の進退動を、エアシリンダによって行い、0.5MPaの供給圧によってインゴットに圧接させた。また、芯出し時において、クランプ間の押圧力を5000Nとし、回転速度3rpmでインゴットを軸周りに回転させた。そして、芯出し完了までの所定時間を1分とした。
また、芯出し完了後にクランプ間の押圧力を15000Nにして、クランプ間のインゴットを固定し、回転速度10rpmでインゴットを軸周りに回転させながらインゴットを研削した。
【0039】
その結果、芯出しを±1mmの精度で行うことができ、後述の比較例1と同等の高精度とすることができた。また、研削完了までの工程時間は約51分であった。比較例1の結果である約80分に比べ約1.6倍の研削加工効率が向上していることが分かった。
このことによって、本発明の円筒研削装置を用いた研削方法は、インゴットを円筒研削装置のテーブルに載置してから、芯出しを精度良く完了させるまでの工程時間を短縮することができ、インゴットの研削加工効率を向上させることができることが確認できた。
【0040】
(比較例1)
実施例1と同様の条件のシリコンインゴットを図4に示すような従来の円筒研削装置を用い、熟練作業者によって芯出しを行った後、1ブロック研削し、実施例1と同様の評価を行った。
その結果、芯出しの精度が±1mmと高精度で行うことができたが、インゴットの装置への載置から芯出し完了までの工程時間は約30分であり、研削完了までの工程時間は約80分という結果であった。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の円筒研削装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の円筒研削装置で使用することができるテーブルの一例を示す概略図である。(A)テーブルの下面図。(B)テーブルによりインゴットをクランプに移載した後、テーブルを降下させた様子を示した概略図。
【図3】本発明の円筒研削装置で使用することができる芯出し手段の一例を示す概略図である。
【図4】従来の円筒研削装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1…円筒研削装置、 2、2’…クランプ、 3…研磨ホイール、
4…回転手段、 5…インゴット、6…インゴットの端面、
7…インゴットの側面、8…テーブル、9…芯出し手段、
10、10’…アーム、11、11’…ローラー、12…芯出し部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、円柱状のインゴットを縦置きに載置するテーブルと、前記インゴットの両側の端面を鉛直方向から保持する一対のクランプと、前記インゴットを軸周りに回転駆動させるための回転手段と、前記回転手段の回転軸方向に移動可能な研磨ホイールを具備した前記円柱状のインゴットの側面を研削するための円筒研削装置であって、少なくとも3つのローラーと、前記ローラーを支持するアームから成り、前記インゴットに対して水平方向から進退動して前記ローラーを圧接可能な芯出し手段を具備し、前記テーブルに前記円柱状のインゴットを縦置きに載置し、前記インゴットの両側の端面を前記一対のクランプで鉛直方向に保持し、前記回転手段で前記インゴットを軸周りに回転しながら前記芯出し手段が前記インゴットに対して水平方向から進退動して、前記インゴットの側面に前記ローラーを圧接させることによって、前記回転手段の回転軸と前記インゴットの中心軸を一致させた後、前記インゴットを前記研磨ホイールで研削するものであることを特徴とする円筒研削装置。
【請求項2】
前記テーブルはU字型の切り欠きを有することを特徴とする請求項1に記載の円筒研削装置。
【請求項3】
前記芯出し手段は、Y字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材がそれぞれ左右対称に1対有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の円筒研削装置。
【請求項4】
円柱状のインゴットの側面を研削する円筒研削装置によるインゴットの研削方法であって、テーブルに前記円柱状のインゴットを縦置きに載置し、前記インゴットの両側の端面を軸周りに回転可能なクランプで鉛直方向に保持し、前記クランプで保持した前記インゴットを軸周りに回転させながら、少なくとも3つのローラーと、前記ローラーを支持するアームから成る芯出し手段を前記インゴットに対して水平方向から進退動させ、前記インゴットの側面に前記ローラーを圧接させることによって、前記クランプの回転軸と前記インゴットの中心軸を一致させた後、研磨ホイールを前記インゴットの側面に当接させ、前記研磨ホイールを鉛直方向に移動させて、前記インゴットの側面を研削することを特徴とするインゴットの研削方法。
【請求項5】
前記テーブルにU字型の切り欠きを設けることを特徴とする請求項4に記載のインゴットの研削方法。
【請求項6】
前記芯出し手段として、Y字型のアームに2つのローラーが設けられた芯出し部材をそれぞれ左右対称に1対有するものを用いることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のインゴットの研削方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−190142(P2009−190142A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35045(P2008−35045)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】