説明

再分散性重合体粉末のための再分散剤、および再分散剤を含む再分散性重合体粉末

この発明は、再分散されるべき重合体およびオルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩を含む再分散性重合体粉末、ならびに再分散性重合体粉末を製造するための方法に関する。より特定的には、この発明は、再分散性重合体粉末における再分散補助剤としての、オルト−クレゾール系の縮合重合体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、再分散性重合体粉末の製造用の再分散補助剤、および再分散補助剤を作るためのプロセスに関する。特に、この発明は、再分散性重合体粉末系における再分散補助剤としての、たとえばオルト−クレゾールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合体などのオルト−クレゾール系の縮合重合体およびその塩類の使用に関する。この発明は、さらに、このような再分散補助剤を含む再分散性重合体粉末、およびこのような再分散性重合体粉末を含む組成または系に関する。
【背景技術】
【0002】
再分散性薄膜形成重合体を粉末の形で使用することは、いくつかの産業の至るところで広く普及している。たとえば、このような再分散性薄膜形成重合体は、タイルの接着剤のための建設用結合剤、合成樹脂プラスタ、床を平らにする混合物として使用され、水を必要としない系が概して望ましい場所で使用される。これらの系は、概して、たとえば砂、セメント、炭酸カルシウム、シリカフラワー、変性セルロース系の増粘剤、および乾燥重合体粉末などの原材料の乾式混合によって生成されて、すぐに使用できる、仕上り生成物であって、使用する時点で水が加えられて、現場で混合される生成物を得る。これらの系は、2成分系の必要性を回避するので、有利である。2成分系とは、一方の成分が水性重合体の分散系を含み、他方の成分がセメントなどの水硬性の成分を含んでもよい粉末成分を含むというものである。このような系を回避することは、たとえば経済性、有用性、および環境問題などのいくつかの理由で有利であるだろう。
【0003】
薄膜形成重合体を粉末の形で得るために、重合体の液体分散系は、たとえば噴霧乾燥または凍結乾燥などの好適な方法によって水が除去される場合に、乾燥動作を受ける。噴霧乾燥は広く使用され、理解される方法であり、十分に制御された予め定められた条件下で、さらに処理される必要がない微粉を生み出す。したがって、この方法は概して好ましい。
【0004】
ガラス転移が50℃を下回る再分散性薄膜形成重合体粉末を製造するために、ある量の再分散補助剤を噴霧乾燥する前に、液体分散系を増やすことが概して必要である。再分散補助剤は、不可逆性の一次粒子の形成を防ぐために個々の重合体粒子をコーティングするように働く。このような補助剤は、さらに、乾燥した重合体が噴霧乾燥機の壁に固着するのを極力抑えることによって、噴霧乾燥プロセスでの収量を有利に増加させる。再分散補助剤は、さらに、「ブロッキング」(重量圧力下での重合体粒子の熱可塑性融解)を極力抑えることによって、重合体粉末の貯蔵安定性を向上させることができ、概して、水の再導入時に重合体粉末の再分散性を促進するようにいくつかの親水性の特性を有する筈である。
【0005】
これまで公知の再分散性重合体粉末は、概して、水溶性であり、かつ噴霧乾燥の前に重合体の分散系に概して添加される再分散補助剤を含む。上述のように、これは噴霧乾燥の動作中に一次粒子の形成を有利に防ぐか、または減少させる。
【0006】
ポリビニルアルコールは、長い間、エチレン酢酸ビニル(EVA)の分散系のための再分散補助剤として従来から使用されてきた。たとえば、ヘキスト株式会社(Hoechst Aktinengellschaft)に譲渡された米国特許番号第3,883,489号は、エチレン酢酸ビニルの分散系のための再分散補助剤としてポリビニルアルコールを使用する。ポリビニルアルコールは、それほど効果的ではないが、再分散性アクリルまたはスチレン−アクリル
重合体粉末の製造においても再分散補助剤として使用されることができる。たとえば、ワッカーケミー社(Wacker-Chemie GmbH)に譲渡された米国特許番号第5,567,750号は、再分散性スチレン−アクリル重合体粉末の製造のために、アミノ官能基のポリビニルアルコールと共にポリビニルアルコールを使用する。エアプロダクツアンドケミカルズ(Air Products and Chemicals)に譲渡された米国特許番号第5,519,084号は、最大15%のオレフィン不飽和カルボン酸から構成されるアクリル重合体とともに、再分散補助剤としてポリビニルアルコールを使用する。しかしながら、ポリビニルアルコールは、エチレン酢酸ビニルの分散系のためのものであるので、アクリル樹脂またはスチレンアクリル樹脂またはスチレンブタジエンの分散系のための再分散補助剤としては完全に満足のいくものではない。
【0007】
再分散補助剤としてのアリールスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合体の塩類の使用も、特にアクリルの分散系で公知である。「再分散性合成粉末および製造の方法(“Redispersible synthetic powder and method of production”)」として翻訳されるドイツ特許公開公報(German Offenlegungsschrift)24 45 813は、再分散性粉末のための再分散補助剤としての、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合体およびナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合体、ならびにそれらのアルカリ塩類またはそれらのアルカリ土類金属塩類の使用を記載する。BASFに譲渡された米国特許番号第5,225,478号も、再分散補助剤としての、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合体およびそのアルカリ塩類またはアルカリ土類金属塩類の使用を記載する。BASFに譲渡された米国特許番号第6,028,167号は、再分散補助剤の分子量を制御することによる改善点を記載する。同様に、オーストラリア特許番号第718,907号は、再分散補助剤の分子量を制御または制限することによる、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合体の改善点を記載する。
【0008】
分子量制御の問題は概して、再分散性粉末のための再分散補助剤の製造において重要であると考えられる。たとえば、米国特許番号第6,028,167号は、分子量が750のフェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合体の製造方法を実施例S1に記載する。唯一の変更が濃縮時間の増加、したがって分子量の増加である状態で、実施例S1が(実施例S2として)同様に行われた。実施例S2は、再分散補助剤としては実施例S1ほど効果的ではなかった。したがって、工業規模で製造する間は、分子量制御は重要なパラメータである。さらに、反応の後には、ある残留量の高分子量(>10,000)の成分が常に残っている(同一の特許−発明の実施例における表1)。再分散補助剤のこの部分は、重合体粉末を再分散させるのに必要な、分子量がより低い種ほど効果的ではないことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、再分散性重合体粉末の製造用の代替的な再分散補助剤を提供することである。特に、ガラス転移温度が比較的低い重合体を含む系において使用するのに好適な再分散補助剤である。より特定的には、この発明は、オルト−クレゾールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合体系の二量体または低重合体およびその塩類の製造、ならびに再分散補助剤のような生成物の使用に関する。この発明は、さらに、このような再分散補助剤の製造を、分子量の点でより再現可能なものにすることになる工業プロセスを有利に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の1つの局面に従って、再分散性重合体粉末が提供され、
再分散されるべき重合体と、
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩とを含む再分散性重合体粉末が提供さ
れる。
【0011】
この発明の別の局面に従って、再分散性重合体粉末を製造するための方法が提供され、
再分散されるべき重合体およびオルト−クレゾール系の縮合重合体の分散系を形成することと、
再分散性重合体粉末を形成するために分散系を乾燥させることとを含む方法が提供される。
【0012】
すぐ前の段落の方法によって製造される重合体粉末も提供される。
さらなる局面に従って、この発明は、再分散性重合体粉末における、再分散補助剤としての、オルト−クレゾール系の縮合重合体の使用を提供する。
【0013】
この発明に従って記載される再分散性重合体粉末を結合剤として含む生成物も提供される。さらに、たとえば水硬性の組成物、接着剤、コーティングの組成物、合成樹脂の下塗りなどの製品のため、および建築材料を改質するための結合剤のような再分散性重合体粉末の使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書において使用されるように、「オルト−クレゾール系の縮合重合体」という用語は、主に、オルト−クレゾールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合重合体および(オルト−クレゾール/フェノール)スルホン酸ホルムアルデヒド縮合重合体を含むが、さらに、このような濃縮反応に好適な他の単量体との、オルト−クレゾールスルホン酸の混合縮合重合体、より具体的にはそのスルホン化生成物を、その範囲内に含んでもよい。
【0015】
オルト−クレゾールは、この発明の再分散補助剤にとって重要な開始材料であり、この発明の再分散補助剤のさまざまな用途に極めて重要である。以下は、この発明の生成物がなぜ効果的であるのかということについてのいずれの理論によっても限定されることを望まず、この発明の範囲を制限するようには決して意図されないが、この発明の最も可能性の高い合成生成物についての情報として機能する指針としての役割を果たす。
【0016】
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩は、1つの実施形態において、オルト−クレゾールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合重合体であって、
(i) 好ましくは硫酸が僅かに過剰である状態の下で、オルト−クレゾールを硫酸でスルホン化するステップと、
(ii) スルホン化オルト−クレゾールをホルムアルデヒドで濃縮するステップとを含む方法によって製造されてもよい。
【0017】
この発明のこの実施形態の第1のステップは、等モル濃度よりも僅かに大きい(つまり、硫酸が僅かに過剰である)状態の下で、オルト−クレゾールを硫酸でスルホン化することを含む。オルト−クレゾールのスルホン化は、概して、ヒドロキシル基に対してオルト/パラ反応である。しかしながら、スルホン化は通常、たとえば立体障害などの理由により、利用可能な唯一のオルト位とは対照的に、ヒドロキシル基に対してパラ位で行われる。この第1のステップは主に、ヒドロキシル基に対してパラ位にあるスルホン基を有するオルト−クレゾールスルホン酸を形成するであろう。硫酸の添加は、好ましくは、35から60℃で行なわれ、最終的なスルホン化は、好ましくは、より高い温度(たとえば85から95℃)で行なわれる。第2のステップは、スルホン化オルト−クレゾールをホルムアルデヒドで濃縮することを含む。濃縮が主にオルト/パラであるので、濃縮は残余のオルト位でのみ行なわれることになる。製造される主要な生成物は、2つのオルト−クレゾールスルホン酸分子からなる二量体である。
【0018】
代替的な実施形態に従って、オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩は、オルト−クレゾールスルホン酸を混合される縮合重合体であって、
(i) 好ましくは硫酸が僅かに過剰である状態の下で、オルト−クレゾールを硫酸でスルホン化するステップと、
(ii) スルホン化オルト−クレゾールを融和性の単量体で濃縮するステップとを含む方法によって製造されてもよい。
【0019】
この実施形態では、オルト−クレゾールスルホン酸は、たとえばクレゾール(混合異性体)、フェノール、レゾシノール、ナフタレン、メタ−クレゾール、パラ−クレゾール、およびそれらのそれぞれのスルホン化された酸などの、単量体との混合縮合重合体の生成のための分子量調整剤として使用される。低重合体の他の組合せが、結果として生じる反応体生成物に存在することになるが、生成物は概して、効果的でありかつ再分散性重合体粉末のための再分散補助剤に好ましい分子量の範囲内にある低分子量の種である。より重要なことには、高分子量の種は、上述のステップを使用して大幅に減少または排除される。オルト−クレゾールのスルホン化が第1のステップ(濃縮のための反応点を唯一の残余のオルト位に減少させるため)において完全である限りこれは当てはまると考えられ、最終生成物の分子量を調整するためにかなりの量のオルト−クレゾールが使用される。最終生成物は、使用する前に塩基で中和されてもよい。
【0020】
この発明に従って、オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩の製造には2つの好ましい局面が存在する。第1は、上述のように、オルト−クレゾールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合重合体およびその塩類を形成するための、オルト−クレゾールの使用を含む。第2の好ましい局面は、オルト−クレゾール/フェノール−スルホン酸ホルムアルデヒド縮合重合体またはその塩類を形成するための、開始材料として混合されるオルト−クレゾールおよびフェノール、または開始材料として混合されるオルト−クレゾールスルホン酸およびフェノールスルホン酸の使用である。オルト−クレゾールはスルホン化の前にフェノールと混合されてもよく、あるいはオルト−クレゾールスルホン酸は濃縮の前にフェノールスルホン酸と混合されてもよい。プロセスの他の修正例が当業者に明らかであり、このような修正例はこの発明の精神の範囲内に含まれる。
【0021】
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩、好ましくはオルト−クレゾールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合体は概して、その塩類の形で使用される。塩類は概して、アルカリ金属塩類またはアルカリ土類金属塩類を含む。アンモニウム塩類または有機アミンも使用されてもよい。好ましい塩類は、カルシウム塩類もしくはナトリウム塩類、またはこれらの組合せである。
【0022】
この発明は、さらに、再分散性重合体粉末を準備する際の再分散補助剤としての、オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩類、特にオルト−クレゾールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合体およびその塩類の使用も提供する。好ましくは、オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩は、固体重合体粉末に対して固体のオルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩が約1重量%から約30重量%のレベル、より好ましくは、約1重量%から約15重量%のレベルで添加される。これは、重合体の重量に基づいてより多くの量の再分散補助剤を概して必要とする先行技術の生成物と比較して、この発明の粉末の利点を示す。
【0023】
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩と組合せられて使用されてもよい重合体は、概して、ガラス転移が50℃を下回る重合体である。最も好ましいのは、概してガラス転移が5℃を下回る可撓性重合体である。たとえば、乳化重合技術を使用して製造される重合体である。重合体は、混じり気のないアクリル重合体(実施例は、アクリル酸ブチルなどの、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸アルキルに基づいている)、スチレン
−アクリル(実施例は、アクリル酸2−エチルヘキシルなどの、スチレンおよびアクリル酸アルキルに基づいている)、アクリル酸アルキルまたはエチレンまたはマレイン酸塩との酢酸ビニル共重合体、およびスチレン−ブタジエン系の重合体であってもよい。より特定的には、重合体は、スチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ブタジエン、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸イソプロピル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸ジブチル、エチレン、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチルからなる群から選択される2つ以上の単量体を好ましくは含んでもよい。
【0024】
しかしながら、この発明の中で使用されるべき重合体のタイプは上述の組合せに限定されるものではないが、業界において使用され、建設用製品の製造において使用され、水の中で陰イオンまたは非イオンの分散系重合体として使用される殆どの重合体は、乾燥、特に噴霧乾燥の前に液体の形で混合されるときに2つの成分が融和性である限り、オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩とともに概して使用されることができる。これらのタイプの重合体の例は、概して、オーストラリア特許番号第717,206号の記載において参照される重合体であり、これは引用によって本明細書全体に援用される。このタイプの重合体は、この発明の使用に不可欠ではない。
【0025】
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩は、概して、乾燥の前に重合体の分散系と混合される。結果として生じる混合物は次いで、従来の噴霧乾燥技術を使用して好ましくは噴霧乾燥される。たとえば、回転ディスク噴霧、単一の流体ノズルまたは複数の流体ノズルが、120から180℃に加熱された空気を好ましくは使用して、チャンバにおいて乾燥動作とともに噴霧ステップのために使用される。結果として生じる重合体粉末は好ましくは、サイクロンまたはフィルタバック収容箱に集められる。重合体粉末が空気の流れの中に浮遊している間に、凝結防止剤も計測供給されてもよい。
【0026】
この発明の実施形態は以下の実施例を参照してより詳細に以下に記載され、以下の実施例は例示のためにのみ与えられ、この発明の範囲を限定するものと決して考えられるべきではない。
【実施例】
【0027】
実施例
準備例D1
2つの投入ライン、速度可変式機械攪拌器、還流濃縮器、ガラス温度計、および水槽を備え付けるガラス製の1リットルの研究室反応器は、脱イオン水を77グラム、重炭酸ナトリウムを0.8グラム、30モルのエチレンオキシドとともにノニルフェノールエトキシレートを0.5グラム、30モルのエチレンオキシドとともに硫酸化ノニルフェノールエトキシレートの固体ナトリウム塩を0.35グラム装填された。水を78グラム、30モルのエチレンオキシドとともにノニルフェノールエトキシレートを2グラム、30モルのエチレンオキシドとともに硫酸化ノニルフェノールエトキシレートの固体ナトリウム塩を0.7グラム、アクリルアミドを5グラム、アクリル酸ブチルを144グラム、およびスチレンを96グラム含む供給混合物1から17グラムが上記に添加され、85℃に加熱された。温度が一旦85℃に達すると、1.6グラムの過硫酸ナトリウムとともに22グラムの水から構成される混合物番号2が2グラム添加された。反応器の内容物は、10分の反応時間が与えられた。残余の混合物1は、次いで、2時間に亘って供給され、残余の混合物2は2時間10分に亘って供給された。反応器のフラスコの内容物は、水槽の温度を制御することによって85℃に保たれた。攪拌器の速度は約400rpmであった。供給の終りに、反応生成物は30分間85℃に保たれた。0.5グラムのTBHP(70%の溶液)が次いで2グラムの水として添加され、反応生成物は室温に冷却することを可能
にした。次いで、2グラムの水に2グラムのアンモニアを含む混合物が、pH7以上をもたらすように添加された。生成物は200ミクロンのスクリーンを通して濾過され、開始ガラス転移(島津DSC−60示差走査熱量計を用いて測定されるように)が3℃の、固形物含有量が57%の重合体の分散系をもたらした。
【0028】
実施例1
1つの投入ライン、速度可変式機械攪拌器、還流濃縮器、および水槽を備えるガラス製の3リットルの研究室反応器は、オルト−クレゾールを350グラム装填され、60℃に加熱された。60℃で、390グラムの硫酸(98%)が40分に亘って添加され、次いで内容物の温度は75分間85−95℃で加熱された。反応器の内容物はそこで再び60℃に冷却され、600グラムの水が添加された。180グラムのホルムアルデヒド(30%水溶液)および800グラムの水を含む混合物が、次いで、30分に亘って反応器に投入され、次いで、内容物は2.5時間85−95℃で加熱された。次に、反応器の内容物は室温に冷却され、水酸化カルシウム(280グラム)および水(1600グラム)の溶液に添加され、濾過された。結果として生じる混合物のpHは8.3であり、固形物含有量は22.5%であった。結果として生じる混合物は塩基での中和の際に泡沫状であり、界面活性剤タイプの特性を明らかに示した。
【0029】
実施例2
実施例1と同様の手順で行われたが、350グラムのオルト−クレゾールは175グラムのオルト−クレゾールと153グラムのフェノールとに取替えられ、水酸化カルシウムは300グラムに増加された。結果として生じる混合物のpHは8.7であり、固形物含有量は22.8%であった。結果として生じる混合物は、実施例1と比較すると、塩基での中和の際に泡沫がより少ないが、依然として界面活性剤タイプの特性を明らかに示した。
【0030】
実施例3
実施例1と同様に行われたが、濃縮時間が75分から7時間に増加された。生成物は実施例1よりも僅かに色が濃かったが、すべての他の特性は同様のものであった(中和の際の泡沫および8.4のpH)。
【0031】
比較例1
実施例3と同様に行われたが、オルト−クレゾールは完全にフェノールと取替えられた。生成物の色は実施例1と同様であったが、中和の際、それほど泡沫がなく、より低い界面活性剤タイプの特性およびより高い分子量の種の可能性を明らかに示した。
【0032】
実施例4
実施例1と同様の手順で行われたが、生成物は、水酸化カルシウムおよび水の混合物ではなく、505グラムの水酸化ナトリウム(46%水溶液)で中和された。
【0033】
比較例2
ロマーD(Lomar D)(コギンズ(Cogins)から入手可能な商業的な高分子量のナフタレンスルホン酸ナトリウム塩ホルムアルデヒド縮合物)は、25%の水溶液にされた。生成物は泡沫がなく、非常に色が濃かった。
【0034】
実施例の粉末P1
水を500グラム、実施例1を190グラム、実施例D1を1000グラム、および脱泡剤(フォーマスタ(Foamaster)8034e)を5グラム含む混合物、ならびに水酸化ナトリウム(46%水溶液)が3グラム混合され、「ニロ製造小型(Niro production minor)」噴霧乾燥機の中で噴霧乾燥された。この噴霧乾燥機は、ニロ デンマーク(Niro
Denmark)によって製造され、ヌビロサ ドイツ(Nubilosa Germany)によって製造される「ヌビロサ」ノズルを再装備する。注入口の温度は130℃であり、空気の排出口は最大50%に設定された。細かいタルクが固体重合体に基づいて2−3%で、空気の流れの中に計測供給された。生成物は集められて、水と混合されるとき、ならびに混合物として砂、セメントおよび水と混合されるときにも再分散性が評価された。生成物は非常に再分散可能であった。
【0035】
実施例の粉末P2
実施例の粉末P2は、再分散性補助剤の実施例2と共に実施例の粉末P1のとおりに準備された。得られる生成物は、実施例の粉末P1と同様の結果を有して、非常に容易に再分散可能であった。
【0036】
実施例の粉末P3
実施例の粉末P3は、再分散性補助剤の実施例3と共に実施例の粉末P1のとおりに準備された。得られる生成物は、実施例の粉末P1よりも僅かに色が濃かったが、再分散性は実施例の粉末P1と依然として同じであった。この実施例は、再分散補助剤の反応時間が先行技術の実施例(米国特許番号第6,028,167号における実施例にあるように)のように反応時間(濃縮時間)に影響を受けないことを示し、プロセス条件に過度に依存しないより均一な生成物を示す。
【0037】
比較例の粉末CP1
実施例の粉末CP1は、再分散性補助剤の比較例1と共に実施例の粉末P1のとおりに準備された。得られる生成物は実施例の粉末P1よりも僅かに再分散性が少なかった。
【0038】
実施例の粉末P4
実施例の粉末P4は、再分散性補助剤の実施例4と共に実施例の粉末P1のとおりに準備された。得られる生成物は非常に容易に再分散可能であり(実施例の粉末P1よりも)、吸湿性が非常に高かった。
【0039】
比較例の粉末CP2
実施例の粉末CP2は、再分散性補助剤の比較例2と共に実施例の粉末P1のとおりに準備された。得られる生成物は、この濃縮生成物の非常に高い分子量のために再分散可能ではなかった。
【0040】
この明細書においていずれの先行技術を参照することも、その先行技術がオーストラリアで共通の一般的な知識の一部を形成するということを認識またはどんな形でも提案するものではなく、そのようにとられるべきではない。
【0041】
この発明は非限定的な例によってのみ記載されており、記載されるこの発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの修正および変形がなされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再分散性重合体粉末であって、
再分散されるべき重合体と、
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩とを含む、再分散性重合体粉末。
【請求項2】
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩は、オルト−クレゾールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合重合体であって、
(i) オルト−クレゾールを硫酸でスルホン化するステップと、
(ii) スルホン化オルト−クレゾールをホルムアルデヒドで濃縮するステップとを含む方法によって製造される、請求項1に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項3】
スルホン化ステップ(i)は硫酸が僅かに過剰である状態の下で実施される、請求項2に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項4】
オルト−クレゾールへの硫酸の添加は35から60℃で行なわれ、最終的なスルホン化は85から95℃のより高い温度で行なわれる、請求項2に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項5】
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩は、オルト−クレゾールスルホン酸を混合される縮合重合体であって、
(i) オルト−クレゾールを硫酸でスルホン化するステップと、
(ii) スルホン化オルト−クレゾールを融和性の単量体で濃縮するステップとを含む方法によって製造される、請求項1に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項6】
スルホン化ステップ(i)は硫酸が僅かに過剰である状態の下で実施される、請求項5に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項7】
融和性の単量体は、クレゾール、フェノール、レゾシノール、ナフタレン、メタ−クレゾール、パラ−クレゾール、およびそれらのそれぞれのスルホン化された酸から選択される、請求項5に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項8】
融和性の単量体はフェノールである、請求項7に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項9】
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、請求項1に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項10】
オルト−クレゾール系の縮合重合体は、カルシウム塩もしくはナトリウム塩またはそれらの組合せである、請求項9に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項11】
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩は、固体重合体粉末に対して固体のオルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩が約1重量%から約30重量%のレベルで添加される、請求項1に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項12】
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩は、約1%から約15%のレベルで添加される、請求項11に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項13】
再分散されるべき重合体のガラス転移は50℃を下回る、請求項1に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項14】
再分散されるべき重合体は、ガラス転移が5℃を下回る少なくとも1つの可撓性重合体
を含む、請求項13に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項15】
再分散されるべき重合体は、混じり気のないアクリル重合体、スチレン−アクリル重合体、アクリル酸アルキルまたはエチレンまたはマレイン酸塩との酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン系の重合体、およびそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項16】
再分散されるべき重合体は、スチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ブタジエン、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸イソプロピル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸ジブチル、エチレン、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびメタクリル酸ヒドロキシエチルからなる群から選択される2つ以上の単量体を含む、請求項15に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項17】
オルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩は、それらの乾燥の前に、再分散されるべき重合体の分散系と混合され、結果として生じる混合物は次いで、従来の噴霧乾燥技術を使用して噴霧乾燥される、請求項1に記載の再分散性重合体粉末。
【請求項18】
再分散性重合体粉末を製造するための方法であって、
再分散されるべき重合体およびオルト−クレゾール系の縮合重合体の分散系を形成することと、
再分散性重合体粉末を形成するために分散系を乾燥させることとを含む、方法。
【請求項19】
再分散されるべき重合体およびオルト−クレゾール系の縮合重合体またはその塩の分散系は、前記再分散性重合体粉末を形成するために噴霧乾燥される、請求項18に記載の再分散性重合体粉末を製造するための方法。
【請求項20】
分散系は回転ディスク噴霧、単一の流体ノズルまたは複数の流体ノズルを使用して霧状にされ、120から180℃に加熱された空気を使用して、チャンバにおいて乾燥され、結果として生じる再分散性重合体粉末はサイクロンまたはフィルタバック収容箱に集められる、請求項19に記載の再分散性重合体粉末を製造するための方法。
【請求項21】
重合体粉末が空気の流れの中に浮遊している間に、凝結防止剤が重合体粉末の中に計測供給される、請求項18に記載の再分散性重合体粉末を製造するための方法。
【請求項22】
請求項18の方法によって製造される再分散性重合体粉末。
【請求項23】
再分散性重合体粉末における再分散補助剤としての、オルト−クレゾール系の縮合重合体の使用。
【請求項24】
請求項1または22に記載の再分散性重合体粉末を結合剤として含む生成物。
【請求項25】
前記生成物は、水硬性の組成物、接着剤、コーティングの組成物、合成樹脂の下塗り、および改質された建築材料から選択される、請求項24に記載の生成物。
【請求項26】
生成物のための結合剤としての、請求項1または22に記載の再分散性重合体粉末の使用。
【請求項27】
生成物は、水硬性の組成物、接着剤、コーティングの組成物、合成樹脂の下塗り、および改質された建築材料から選択される、請求項26に記載の使用。

【公表番号】特表2007−504287(P2007−504287A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524169(P2006−524169)
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000128
【国際公開番号】WO2005/021145
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506069479)アクオス・プロプライエタリー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ACQUOS PTY LTD
【Fターム(参考)】