説明

再剥離性圧着記録用紙

【課題】 優れた搬送性、印字特性、圧着強度および印刷強度を示す再剥離性圧着記録用紙の提供。
【解決手段】 この課題は、紙基材上に常温、常圧の通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に再剥離可能である感圧接着層を形成し、紙基材の片面または両面に該感圧接着層を有する再剥離性圧着記録用紙において、該感圧接着層に合成非晶質シリカ、メタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンおよびポリオレフィンワックスを含有し、且つ該感圧接着層中に占める合成非晶質シリカの一部に、レーザー回折・散乱法における平均粒子径10〜18μmの合成非晶質シリカを、感圧接着層に占める割合として1.5〜7質量%含有し、メタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンの配合量が感圧接着層に占める割合として20〜35質量%、更にポリオレフィンワックスの配合量が感圧接着層に占める割合として6質量%以下とすることにより、ISO5359による静摩擦係数が0.45〜0.70、動摩擦係数が0.30〜0.50であることによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材上に常温、常圧の通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に再剥離可能である感圧接着層を有する再剥離性圧着記録用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行、クレジット会社、保険会社、官庁等から各個人宛に貯金、残金状況等個人情報を通知する手段として、親展葉書が普及している。親展葉書は、基材に感圧接着剤を塗布した後、共通情報をオフセット印刷、グラビア印刷等で行い、個人情報をレーザービーム方式や電子写真方式等で印字した後、親展情報の印刷面同士を適度の圧力で加圧することによって接着させ、各個人に郵送された後、再剥離することで情報を得ることができることから多くの提案がなされている。
【0003】
再剥離性圧着記録紙にはロール状若しくは帯状の連続帳票とA3、A4などのサイズに加工された枚用状のカット判帳票があり、連続帳票は高速大量処理に適しており、カット判帳票は公共団体の通知用葉書など比較的少量の用途に適している。
【0004】
カット判帳票を用いて再剥離性圧着葉書を作成する方法としては、共通情報の場合にはオフセット印刷、グラビア印刷等で印刷した後、規格サイズのカット帳票に加工し、個人情報の場合には小型のレーザービーム方式や電子写真方式のプリンター等で印刷する。その後、シーラー処理により圧着加工を行う方法が一般的である。また共通情報についてもレーザービーム方式や電子写真方式等のプリンターで印刷することも可能である。
【0005】
カット判帳票で再剥離性圧着葉書を作成する場合、連続帳票の場合と比べ、印刷工程に於いてスプロケット加工、ミシン目加工等が不要である他に、汎用に使用されている小型のレーザービーム方式や電子写真方式等のプリンターを所有していれば、シーラーとカット判帳票を購入するだけで再剥離性圧着葉書を作成することができ、コスト的に非常に有利である。
【0006】
再剥離性圧着葉書を作成するカット判帳票用の再剥離性圧着用紙に関しては例えば特許文献1で、A4カット判から3つ折り圧着葉書を作成する隠蔽葉書が挙げられているが、このように従来の圧着用紙からA4カット判帳票を作成しても、感圧接着剤として一般に使用される感圧接着剤天然ゴム系共重合系エマルジョンの影響でカット判帳票は摩擦が高く滑りにくいことやブロッキングを生じやすいことから、個人情報などを印刷する小型のレーザービーム方式や電子写真方式のプリンターで印字を行う際に用紙トレーからのピックアップ不良及び用紙の重送、紙詰まりが頻発し、カット判帳票としては搬送性・走行性に問題があった。
【0007】
圧着用紙のブロッキング・紙詰まりを防止し、搬送性・走行性を改善する提案は、ロール状の連続帳票では多数なされている。例えば特許文献2には感圧接着性樹脂100重量部に使用環境温度より高い融点の0.1μm〜50μmの合成樹脂粒子を1〜200重量部配合することにより、耐ブロッキング性を改善した感圧接着シートが挙げられている。
【0008】
また特許文献3ではプリンター内での紙詰まりを改善する提案としてJIS P−8147による静摩擦係数を0.75以下とし、また20〜50μmの粗大な熱可塑性合成樹脂粒子を含有させることで、プリンター内での紙詰まりが無く、また印字する際の電子写真方式のプリンターのヒートロール定着で熱可塑性樹脂粒子が潰され、粗大粒子による再剥離強度が低下さえないという技術が挙げられている。
【特許文献1】特開平10−86558号公報
【特許文献2】特開平11−115348号公報
【特許文献3】特開2002−302895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら連続帳票の圧着用紙に比べ、カット判帳票はプリンター印字の際に、より高い走行性・搬送性を求められる。具体的には、合成樹脂粒子でブロッキングを改善したとしても、未溶融の該粒子または粗大な粒子による凹凸が圧着用紙の摩擦抵抗を大きくし、用紙がロール状に繋がる連続帳票と異なるカット判帳票の場合には、紙詰まりや用紙トレーからの重送が発生する。このため、カット判帳票を印字するレーザービーム方式等のプリンターでは走行性・搬送性改善効果は不十分である。
【0010】
また、粗大な熱可塑性合成樹脂粒子を添加する技術はブロッキング防止には効果があり、またプリンターのトナー定着方式がヒートロール定着タイプの場合は、過熱ロールにより潰され平坦な面が得られるものの、フラッシュ定着タイプでは、一般にキセノンフラッシュランプ等の一定波長の光源を吸収発熱してトナー定着するため、非接触式であり、また発熱も瞬間的なもののため、粗大粒子が平坦になることなく、印字後に圧着した際に再剥離強度が大きく低下し十分な値を得られない。
【0011】
また、静摩擦係数を一定以下に抑えるという技術に於いては、静摩擦係数が低すぎた場合に問題を生じる。静摩擦係数が低過ぎた場合、ピックアップロールと圧着用紙が滑り過ぎて用紙トレーから紙を送り出せないピックアップ不良が発生する。
【0012】
本発明は前述の問題点を解決するためのものであり、具体的には小規模なレーザービーム方式、電子写真方式のプリンターでカット判帳票を印字した場合に、プリンター内での用紙のブロッキング、ピックアップ、重送、紙詰まりを生じることなく、しかも印字の際のトナー定着方式がヒートロール方式であっても、それどころかフラッシュ方式であっても、シーラーで圧着後に十分な再剥離強度を発現する再剥離性圧着記録用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明の再剥離性圧着記録紙を発明するに至った。
【0014】
即ち、上記課題は、本発明の再剥離性圧着記録用紙は、再剥離性圧着葉書用カット判帳票に適した用紙であって、紙基材上に常温、常圧の通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に再剥離可能である感圧接着層を形成し、紙基材の片面または両面に該感圧接着層を有する再剥離性圧着記録用紙において、該感圧接着層に合成非晶質シリカ、天然ゴムにメタクリル酸アルキルをグラフトさせたグラフト共重合体エマルジョン(以下、メタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンと言う)およびポリオレフィンワックスを含有し、且つ該感圧接着層中に占める合成非晶質シリカの一部に、レーザー回折・散乱法における平均粒子径10〜18μmの合成非晶質シリカを、感圧接着層に占める割合として1.5〜7質量%含有し、メタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンの配合量が感圧接着層に占める割合として20〜35質量%、更にポリオレフィンワックスの配合量が感圧接着層に占める割合として6質量%以下とすることにより、ISO5359による静摩擦係数が0.45〜0.70、動摩擦係数が0.30〜0.50であることを特徴とする、2つ折りタイプの片面剥離用および3つ折りタイプの両面剥離用の再剥離性圧着記録用紙によって解決される。
【0015】
請求項2の発明では紙基材上に感圧接着層を形成した後、カレンダー処理を行ったことを含むものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係わる再剥離性圧着記録用紙は、このような構成によって、再剥離性圧着用紙の静摩擦係数と動摩擦係数を一定範囲内とすることで小型のレーザービームプリンターや電子写真機内でのピックアップ不良や紙詰まり等の走行性不良を防止することができる。また、圧着後に適切な再剥離強度を得ることができ、この再剥離性圧着記録用紙を用いて作成された再剥離性圧着葉書が、配送中に剥離するという事故を防止でき、また受取人に配達された後に於いては、再剥離面を剥離する際に紙面が破れ記載情報が損なわれるという問題が起こらない。その結果として、本発明の再剥離性圧着記録用紙はカット判帳票として小規模なレーザービーム方式、電子写真方式のプリンターで印字した場合に、プリンター内での用紙のブロッキング、ピックアップ、重送、紙詰まり、NIP印字に問題を生じることなく、且つシーラーで圧着後に十分な再剥離強度を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の再剥離性圧着記録用紙からなるカット判帳票において、小型プリンターにて圧着葉書を作成する場合に、ピックアップ不良、紙詰まり等、プリンター内での良好な走行性・搬送性と圧着加工時の適正な再剥離強度を満たすには、主要薬品の選択と配合量が重要であり、合成非晶質シリカ、メタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョン、ポリオレフィンワックスを組み合わせ、一定量のメタクリル酸メチルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンを含有し、ISO5359による静摩擦係数が0.45〜0.70、動摩擦係数が0.30〜0.50とすることが、それらの条件を満たすものである。
【0019】
上記の目的を達成する為に、本発明の再剥離性圧着記録用紙は、再剥離性圧着葉書用カット判帳票に適した用紙に於いて、紙基材の両面若しくは片面に感圧接着剤を含む感圧接着層が設けられており、一方の面が再剥離面、他方の面が非剥離面若しくは両方の面が再剥離面とされており、合成非晶質シリカ、メタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョン、ポリオレフィンワックスを含有し、ISO5359による静摩擦係数が0.45〜0.70、好ましくは0.50〜0.65、動摩擦係数が0.30〜0.50、好ましくは0.33〜0.47である。静摩擦係数が0.45より低いか、動摩擦係数が0.30より低いと、用紙が滑り過ぎ、プリンター用紙トレイからのピックアップ不良が発生する他、紙揃えが悪く扱い難いという問題がある。また静摩擦係数が0.70より高いか、動摩擦係数が0.50より高いと用紙も重送やプリンター内での紙詰まり等搬送性・走行性が劣るという問題がある。
【0020】
感圧接着層中に占める合成非晶質シリカの割合としては30〜45質量%、好ましくは33〜40質量%であるが、これに限定されるものではない。合成非晶質シリカの割合が30質量%未満では、レーザービームプリンターや電子写真機のトナー定着ロールのクリーニングに使用されるシリコンオイルが用紙表面に転移した際に吸収し切れず、圧着力が大幅に低下してしまう。また45質量%以上では、シリカは比表面積が高いため摩擦係数が高くなり搬送し難くなる他、感圧接着層の強度が低下し、プレ印刷工程やプリンター内でシリカが脱落してしまう。
【0021】
合成非晶質シリカの一部として配合される粗大粒子として更にレーザー回折・散乱法における平均粒子径10〜18μm、好ましくは11〜17μmの合成非晶質シリカは、感圧接着層に占める割合として1.5〜7質量%、好ましくは2〜6質量%含有するものである。平均粒子径10μm未満や配合量が1.5質量%未満ではブロッキング防止効果が得られず、所定の摩擦係数を得られない。また平均粒子径18μmより大きい場合や配合量が7質量%より多いと、圧着力の低下が大きい他、印刷工程やプリンター内での脱落が発生し易いという問題がある。その他に7質量%より多い場合や20μmより大きい場合には表面の凹凸が大き過ぎる為、逆に面同士の引っ掛かりが発生し、逆に摩擦抵抗が上昇してしまう。更にはプレ印刷時や電子写真機のトナーの受理が低下し、適正な印刷・印字を得ることができない等の問題を発生する。
【0022】
メタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンはエマルジョン状態で天然ゴムにメタクリル酸アルキル、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等をグラフト重合させたグラフト共重合体を意味する。特にメタクリル酸メチルをグラフトさせたメタクリル酸メチルグラフト共重合体のエマルジョンが有利である。該エマルジョンの配合量は、感圧接着層に占める割合として20〜35質量%、好ましくは22〜30質量%である。20質量%未満では、摩擦係数をある程度低く抑えられるが、十分な圧着強度を得ることができずに、親展はがき用の再剥離性圧着記録紙としての機能を満たさない。35質量%より多いと高い圧着強度が得られるものの滑り難く、プリンター内で用紙の重送・紙詰まり等を発生させる。
【0023】
本発明で使用するポリオレフィンワックスは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスまたはエチレン−プロピレン共重合体ワックス、特にポリエチレンワックスである。該ワックスの配合量は感圧接着層に占める割合として6質量%以下、好ましくは2〜4質量%である。配合量が6質量%より多いと滑り効果は大きいものの圧着強度が大きく低下するという問題が生じる。
【0024】
紙基材上に感圧接着層を形成した後、カレンダー処理を行うことで、より搬送性を向上させることができるがカレンダー装置としては、片面が樹脂ロールやコットンロールであるスーパーカレンダー、ソフトカレンダーが好ましい。両面が金属ロールの場合、圧力の制御が難しく、圧力が強過ぎた場合に、再剥離性圧着記録用紙の表裏両面に塗布した感圧接着層に配合した粗大粒子シリカが潰れてしまい、逆に摩擦係数が高くなってしまう。
【0025】
このような構成によって、再剥離性圧着用紙の静摩擦係数と動摩擦係数を一定範囲内とすることでプリンター内でのピックアップ不良や紙詰まり等の走行性不良を防止し、且つ良好な再剥離性能を得ることができる。
【0026】
本発明に用いる平均粒子径10〜18μmの粗大粒子合成非晶質シリカ以外に、更に微粉の合成非晶質シリカとしては沈降法合成シリカ又はゲル法合成シリカを使用できる。超微粉シリカの二次凝集粒子である沈降法合成シリカはクッション性に優れ、滑り適性としては二次凝集粒子が緻密であり、硬いゲル法合成シリカに劣るが、これに限定されるものではない。粗大粒子以外の合成非晶質シリカの粒径としては、レーザー回折・散乱法による平均粒子径で3〜7μmのものが好ましく、更に好ましくは4〜6μmである。
【0027】
なお本発明においては、ゲル法合成非晶質シリカと沈降法合成非晶質シリカに混合して使用しても良い。
【0028】
感圧接着剤塗工液には各種添加剤を含有しても良く、塗工時の作業向上の為、レベリング剤や消泡剤・抑泡剤、視感による白色度向上のため蛍光染料、導電性を付与させるため界面活性剤や無機塩類からなるいわゆる帯電防止剤などを含有させることができる。その他、必要に応じて分散剤、印刷適性向上剤、潤滑剤、撥水剤、浸透剤、増粘剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、染料、染料定着剤、サイズ剤、紙力増強剤、保水剤、消臭剤、防腐剤、防黴剤等の添加剤等も、本発明の再剥離性圧着記録紙の品質を損なわない範囲で併用することが出来る。
【0029】
さらに、印刷強度(表面強度)を向上させる目的において、酸化澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、大豆蛋白、合成蛋白、カゼインなどを並びに酢酸ビニル系、メチルメタクリレート・ブタジェン系エマルジョン、スチレン・ブタジエン系エマルジョン、アクリル・ブタジエン系エマルジョン等も、本発明の再剥離性圧着記録紙の品質を損なわない範囲で併用することが出来る。
【0030】
感圧接着層塗工液の塗工方式としては、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ダイコーター等の一般的なコーターによって塗工されるが、塗工量は片面当り乾燥重量で3〜15g/m、好ましくは4〜10g/mの範囲で調整されるのが望ましい。塗工量を上記範囲に限定した理由は、3g/m以下ではオフセットインキ受理層且やレーザービームプリンターや電子写真機のトナー定着ロールのクリーニングに使用されるシリコンオイルの受容性が低下し、印字品位や印刷仕上がり等の視感的な面で劣り、更に感圧接着剤層としての接着力が低下し、好ましくないためである。また、塗工量が15g/mを越えると、印字品位や印刷の仕上がり等の視感的な見栄えは向上するが、経済的な面から実用性が劣り、筆記性が乏しく、紙粉が発生しやすい他、感圧接着層としての接着力が強すぎて印字面の紙表面破壊を起こし、好ましくない。
【0031】
感圧接着層を片面にしか設けない2つ折りタイプの再剥離性圧着記録紙の場合は、裏面に印刷インクやトナー印字の受理性を向上させる為に塗工層を設けることができる。
【0032】
2つ折りタイプの再剥離性圧着記録紙の裏面に設ける塗工層に用いる顔料としては、合成非晶質シリカ、酸化チタン、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、タルク、プラスチックピグメント、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムを本発明の効果を損なわない範囲で単独又は混合して使用できるが、レーザービームプリンターや電子写真機のトナー定着ロールのクリーニングに使用されるシリコンオイルが用紙表面に転移した際に吸収する必要があるため、吸収性の高い合成非晶質シリカが好ましい。
【0033】
2つ折りタイプの再剥離性圧着記録紙の裏面に設ける塗工層の印刷強度(表面強度)を向上させる目的において、酸化澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、大豆蛋白、合成蛋白、カゼインなどを並びに酢酸ビニル系、メチルメタクリレート・ブタジェン系エマルジョン、スチレン・ブタジエン系エマルジョン、アクリル・ブタジエン系エマルジョン等も、本発明の再剥離性圧着記録紙の品質を損なわない範囲で併用することが出来る。
【0034】
2つ折りタイプの再剥離性圧着記録紙の裏面に設ける塗工層液の塗工方式としては、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ダイコーター等の一般的なコーターによって塗工されるが、塗工量は片面当り乾燥重量で15g/m以下、好ましくは10g/m以下の範囲で調整されるのが望ましい。塗工量を上記範囲に限定した理由は、3g/m以下ではオフセットインキ受理層且やレーザービームプリンターや電子写真機のトナー定着ロールのクリーニングに使用されるシリコンオイルの受容性が低下し、印字品位や印刷仕上がり等の視感的な面で劣り、好ましくないためである。また、塗工量が15g/mを越えると、印字品位や印刷の仕上がり等の視感的な見栄えは向上するが、経済的な面から実用性が劣り、筆記性が乏しく、紙粉が発生しやすく、好ましくない。
[実施例]
本発明を以下の実施例、比較例により説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例または比較例において示す「部」及び「%」は、特に明記しない限り絶乾質量部及び絶乾質量%を示す。なお、顔料の平均粒子径は光散乱法またはレーザー回折法で測定されるが、ここでは顔料粒子を水に分散させた懸濁液状態でレーザー回折法で測定している。
<支持体の形成>
【0035】
広葉樹晒クラフトパルプL−BKPからなるパルプスラリー中の絶乾パルプ100%に対し、酸化チタン(A−110:堺化学社製)5%、カチオン化でん粉(ケート308:日本NSC社製)0.8%、中性ロジンサイズ剤(NT−85:荒川化学社製)0.4%、湿潤紙力増強剤0.3%(WS−4020:星光PMC社製)の配合で抄紙し、米坪110g/mの原紙を抄造した。
【実施例1】
【0036】
得られた支持体上に、以下の配合の感圧接着層塗工液(固形分20%)を作成し、乾燥塗工量が片面当り7.5g/mとなるように両面塗工し、乾燥させて再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを実施例1とした。
【0037】
【表1】

【実施例2】
【0038】
実施例1において、片面コットンロールのスーパーカレンダーで線圧40kg/cmで1パス処理した以外は実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【実施例3】
【0039】
実施例2においてサイロジェットP−405を24質量%、サイロジェットP−612を7質量%、サイビノールX−103−204Eを35質量%に変更した以外は、実施例2と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【実施例4】
【0040】
実施例1においてサイロジェットP−612を1.5質量%、ビニブラン2682を23.5質量%、サイビノールX−103−204Eを22質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【実施例5】
【0041】
実施例2においてサイロジェットP−612をサイロジェットP−616(平均粒子径17.2μm)に変更し、添加量を1.5質量%とし、更にビニブラン2682を18.5質量%、サイビノールX−103−204Eを27質量%に変更した以外は、実施例2と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【実施例6】
【0042】
得られた支持体上に、以下の配合の感圧接着層塗工液(固形分20%)を作成し、乾燥塗工量が片面当り7.5g/mとなるように両面塗工し、乾燥させて再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを実施例とした。
【0043】
【表2】

【実施例7】
【0044】
実施例6に於いて、片面コットンロールのスーパーカレンダーで線圧40kg/cmで1パス処理した以外は実施例6と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【実施例8】
【0045】
片面を実施例1の通りの感圧接着層塗工液を塗工し、残りの片面の塗料を以下の配合として、塗布した以外は実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【0046】
【表3】

【実施例9】
【0047】
実施例8に於いて、片面コットンロールのスーパーカレンダーで線圧40kg/cmで1パス処理した以外は実施例6と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例1】
【0048】
得られた支持体上に、以下の配合の感圧接着層塗工液(固形分20%)を作成し、乾燥塗工量が片面当り7.5g/mとなるように両面塗工し、乾燥させて再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを実施例とした。
【0049】
【表4】

【比較例2】
【0050】
比較例2に於いて片面コットンロールのスーパーカレンダーで線圧40kg/cmで1パス処理した以外は比較例2と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例3】
【0051】
実施例1に於いて、サイロジェットP−405を26質量%、サイロジェットP−612を12質量%とした以外は実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例4】
【0052】
比較例3に於いて片面コットンロールのスーパーカレンダーで線圧40kg/cmで1パス処理した以外は比較例3と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例5】
【0053】
実施例1に於いてサイロジェットP−405を36.5質量%、サイロジェットP−612をサイロジェットP−407(平均粒子径7.8μm)に変更し、配合量を1.5質量%とした以外は実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例6】
【0054】
比較例5に於いて片面コットンロールのスーパーカレンダーで線圧40kg/cmで1パス処理した以外は比較例5と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例7】
【0055】
実施例1に於いてサイロジェットP−405を31質量%、サイロジェットP−612をカープレックスBS−306(合成シリカ:デグサジャパン製 平均粒子径24.6μm)7質量%に変更した以外は実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例8】
【0056】
得られた支持体上に、以下の配合の感圧接着層塗工液(固形分20%)を作成し、乾燥塗工量が片面当り7.5g/mとなるように両面塗工し、乾燥させて再剥離性圧着記録用紙を作製し、これを実施例とした。
【0057】
【表5】

【比較例9】
【0058】
実施例4に於いてサイロジェットP−405を32質量%、サイロジェットP−612を3質量%、ポリエチレンワックスE−2000を12質量%とした以外は実施例4と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例10】
【0059】
比較例9に於いて片面コットンロールのスーパーカレンダーで線圧40kg/cmで1パス処理した以外は比較例9と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例11】
【0060】
【表6】

【比較例12】
【0061】
比較例11に於いて片面コットンロールのスーパーカレンダーで線圧40kg/cmで1パス処理した以外は比較例11と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例13】
【0062】
【表7】

【比較例14】
【0063】
比較例13に於いて片面コットンロールのスーパーカレンダーで線圧40kg/cmで1パス処理した以外は比較例13と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例15】
【0064】
実施例1に於いてサイロジェットP−405の変わりにLMS−100(タルク:富士タルク工業製)を用いた以外は実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【比較例16】
【0065】
実施例1に於いてサイロジェットP−405の変わりにアンシレックス93(不定形の焼成カオリン:エンゲルハートミネラルズ製)を用いた以外は実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を得た。
【0066】
この様にして得られた再剥離性圧着記録用紙について以下の評価試験を行い、その結果を表8に示した。
摩擦測定試験:
・ 静摩擦係数、(2)動摩擦係数
得られた記録シートの表面と裏面同士の摩擦係数をNSF−100(野村商事製:摩擦試験機)にてISO15359:1999制定に準じて測定を行った。
(3)搬送性(ピックアップ適性):
A4サイズの記録シートを連続印字し、用紙トレイからスムーズに送り出されるかを評価した。プリンターはレーザービームプリンター(Canon社製、LASER SHOT LBP−1910)で評価を行った。
◎:ピックアップ不良がほとんどなく(200枚当り不良0〜1枚)、非常にスムーズに搬送される。
○:ピックアップ不良は少しあるが(200枚当り重送2〜3枚)、スムーズに搬送される。
△:ピックアップ不良が多少あり(200枚当り重送4〜9枚)、あまりスムーズに搬送されない。
(4)搬送性(重送・紙詰まり適性):
A4サイズの記録シートを連続印字し、重送、紙詰まり等がなく、スムーズに搬送されるかを評価した。プリンターはレーザービームプリンター(Canon社製、LASER SHOT LBP−1910)で評価を行った。
◎:重送、紙詰まりがほとんどなく(200枚当り重送、紙詰まり0〜1枚)、非常にスムーズに搬送される。
○:重送、紙詰まりは少しあるが(200枚当り重送、紙詰まり2〜3枚)、スムーズに搬送される。
△:重送、紙詰まりが多少あり(200枚当り重送、紙詰まり4〜9枚)、あまりスムーズに搬送されない。
×:重送、紙詰まりが多く(200枚当り重送、紙詰まり10枚以上)、スムーズに搬送されない。
(5)ノンインパクトプリンティング(NIP)印字適性試験:
得られた再剥離性圧着記録用紙の塗工面をレーザービームプリンター(Canon社製、LASER SHOT LBP−1910)を用いてテスト印字パターン(文字、線、ベタ)を印字し、視感で評価した。鮮明な画像、印字が得られたものから◎、○、△とした。
(6)剥離強度試験:
得られた再剥離性圧着記録用紙を幅100mm、長さ100mmに裁断し、塗工面同士を重ね合わせてドライシーラー(プレッスルエコノ:トッパン・フォームズ株式会社製)を用いて加圧接着した。次にこの試料の幅方向中央部を25mm幅に断裁して、23℃、50%R.H.環境下でストログラフM−1型(東洋精機製作所製)で速度300mm/分、剥離角90°(T型剥離)で剥離してその抵抗値を平均化して剥離強度gf/25mmを求める。
◎:100以上〜150gf未満/25mmと、
○:50以上〜100gf未満/25mmは実用レベル剥離強度である。
△:20以上〜50 gf未満/25mmと、
×:0以上〜20 gf未満/25mmは剥離強度が弱く実用レベルでない。
(7)オフセット印刷適性:
RI−3型印刷適性試験機(明製作所製)を使用して印刷強さを評価した。印刷速度60rpm。印圧8.5mm、インクは東洋インク性タック値15 0.4cc、3回刷り。
視感で評価し、良い順に◎、○、△、×とし、◎、○であれば実用上問題ないレベルである。
【0067】
【表8】

【0068】
表8からも判る通り、実施例1〜9は、支持体上の両面乃至は片面に常温、常圧の通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に再剥離可能である感圧接着層を形成し、紙基材の両面乃至片面に該感圧接着層を有する再剥離性圧着記録用紙において、少なくとも片面の該感圧接着層に合成非晶質シリカ、天然ゴムにメタクリル酸アルキルをグラフトさせたグラフト共重合−エマルジョンとしてのメタクリル酸メチルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンおよびポリオレフィンワックスとしてのポリエチレンワックスを含有し、且つ該感圧接着層中に占める合成非晶質シリカの一部に、レーザー回折・散乱法における平均粒子径10〜18μmの合成非晶質シリカを、感圧接着層に占める割合として1.5〜7質量%含有し、メタクリル酸メチルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンの配合量が感圧接着層に占める割合として20〜35質量%、更にポリエチレンワックスの配合量が感圧接着層に占める割合として6質量%以下とすることにより、ISO5359による静摩擦係数が0.45〜0.70、動摩擦係数が0.30〜0.50であることを特徴とする再剥離性圧着記録用紙が優れた搬送性、印字特性、圧着強度および印刷強度を示すことがわかる。比較例1、2、5および6からは該感圧接着層が平均粒子径10〜18μmの合成非晶質シリカを含まない結果として、上記記録用紙の重送・紙詰まり適性が悪いこと、比較例3および4からは平均粒子径10〜18μmの合成非晶質シリカの量が12質量%と、本発明の上限値7質量%を超えているために、剥離強度(圧着強度)が弱く実用性がないこと、比較例7からは本発明の上限値18μmを超える平均粒子径24.6μmの合成シリカを用いた場合には剥離強度が弱くなること、比較例8からは合成シリカの平均粒子径が9.9μmと本発明の下限値10μmを下回った場合には重送・紙詰まり適性が悪いこと、比較例9および10からはポリオレフィンワックスの使用量が12質量%と本発明の上限値6質量%を上回った場合には剥離強度が弱くなること、比較例11および12からはメタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンの使用量が17質量%と本発明の下限値20質量%を下回った場合には剥離強度が弱くなること、比較例13および14からはメタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンの使用量が45質量%と本発明の上限値35質量%を上回った場合には重送・紙詰まり適性が悪くそしてカレンダー処理して搬送性を高めたとしても印刷強度が悪く実用性がないこと、そして比較例15および16からは合成非晶質シリカの代わりにタルクまたは焼成カオリンを用いたのではピックアップ搬送性、剥離強度および印刷強度が弱いか、重送・紙詰まり適性および剥離強度が悪いことがわかります。比較例1〜16は本発明の上記条件から外れるもので、本発明で課題とする再剥離性圧着記録用紙が得られないことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に常温、常圧の通常状態では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に再剥離可能である感圧接着層を形成し、紙基材の片面または両面に該感圧接着層を有する再剥離性圧着記録用紙において、該感圧接着層に合成非晶質シリカ、天然ゴムにメタクリル酸アルキルをグラフトさせたグラフト共重合体エマルジョン(以下、メタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンと言う)およびポリオレフィンワックスを含有し、且つ該感圧接着層中に占める合成非晶質シリカの一部に、レーザー回折・散乱法における平均粒子径10〜18μmの合成非晶質シリカを、感圧接着層に占める割合として1.5〜7質量%含有し、メタクリル酸アルキルグラフト共重合天然ゴムエマルジョンの配合量が感圧接着層に占める割合として20〜35質量%、更にポリオレフィンワックスの配合量が感圧接着層に占める割合として6質量%以下とすることにより、ISO5359による静摩擦係数が0.45〜0.70、動摩擦係数が0.30〜0.50であることを特徴とする再剥離性圧着記録用紙。
【請求項2】
紙基材上に感圧接着層を形成した後、カレンダー処理を行ったことを特徴とする請求項1記載の再剥離性圧着記録用紙。

【公開番号】特開2008−238447(P2008−238447A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78762(P2007−78762)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】