説明

再生プラスチック材料及び成形体

【課題】相溶性が改善され、高い物性を有する再生プラスチック材料、及び前記プラスチック材料から構成されたプラスチック成形体を提供する。
【解決手段】少なくとも1種は使用済みのものである複数種のポリマーと、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、及び共重合体系相溶化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤とを含むプラスチック材料から構成されたシート状あるいはフィルム状成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相溶化剤ないしは改質剤として、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、及び共重合体系相溶化剤から選ばれる相溶化剤が用いられたプラスチック材料、再生プラスチック材料、及び前記プラスチック材料から構成されたプラスチック成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護、資源の有効利用すなわち再資源化、廃棄物処理問題などの観点から、廃棄プラスチックの再利用・再使用は重要な課題となっている。
しかし、プラスチック製品の再使用には、極めて大きな技術的問題があり、ペット(PET)ボトルのリサイクル以外では再使用は殆ど行われていないのが現状である。すなわち、従来技術では、ペットボトルの様に添加物もない透明な単一樹脂からなり、且つ使用時の内容物も極めて清浄なものでも、再使用における粘度低下による着色や種々の物性低下が避けられない。その結果、商品として十分な性能を有する再生品が得られず、使用済み品の回収コストや、再生品の外観、品質等を考慮すると、ペットボトルでさえ、未だ十分に実用性あるリサイクルシステムとはなっていない。
【0003】
ましてペットボトル以外のプラスチック製品の再使用に際しては、これらプラスチック製品は添加物を多く含んでいたり多種の樹脂からなっているために、着色や物性低下が避けられない。すなわち、ペットボトル以外のプラスチック製品については、再生品の安全性、生産性、品質が実用的使用には不十分であり、また再生コストもかかり、リサイクルシステムは未だ確立されていない。
【0004】
廃棄プラスチックの完全な分別回収は困難であり、再生過程においては、通常複数種のポリマーが混合される。そのため、再生されたプラスチックのポリマー物性は低下する。プラスチック再生時にオイルなどの可塑剤を多量に配合して物性低下防止を図っているが、元の物性を回復することは困難である。
【0005】
また、再生時に混合される複数種のポリマーが互いに非相溶の異種ポリマーであれば、均一な分散が得られず、再生されたプラスチックのポリマー物性は大きく低下する。このように、再生されたプラスチックのポリマー物性は低いため、低い物性値であっても使用可能な限られた用途にしか、再生プラスチックを利用することができない。
【0006】
このような事情から、廃棄プラスチックのリサイクルは依然として極めて低いレベルに止まっており、環境・資源問題の大きな要因となっている。
【0007】
一方、各種プラスチック製品には、難燃性が要求されることも多い。プラスチック成形体に難燃性を付与するためには、一般的にプラスチック材料に難燃剤を配合することが考えられる。しかしながら、プラスチック材料に難燃剤を配合すると、プラスチックの物性低下を招きやすい。特に、プラスチック材料に互いに非相溶の異種ポリマーが含まれていると、異種ポリマーの均一な分散が得られず、難燃剤の配合により更にプラスチックの物性は大きく低下する。難燃剤の配合による物性低下の問題は、未使用のプラスチック材料の場合よりも、廃棄プラスチックからの再生プラスチック材料の場合に、より大きくなる。
【0008】
また、各種プラスチック製品には、強度向上、耐熱性向上、耐水性向上、耐温水性向上、耐湿性向上など、あるいはその他の種々の性能・機能の向上が要求されることも多い。このような場合には、種々の性能・機能に応じて、各種の無機フィラー及び/又は有機フィラーをプラスチック材料に配合することが考えられる。しかしながら、プラスチック材料に無機フィラー及び/又は有機フィラーを配合すると、難燃剤におけるのと同様にプラスチックの物性低下を招きやすい。
【0009】
このような事情から、プラスチック材料に難燃剤を配合しても、プラスチックの物性低下を起こさず且つ難燃性を付与する技術の開発が要望されている。特に、廃棄プラスチックをリサイクルし再資源化するに当たり、異種ポリマーが混合された場合、とりわけ互いに非相溶の異種ポリマーが混合された場合であっても、ポリマー物性低下を起こさず且つ難燃性を付与する技術の開発が要望されている。そして、プラスチック材料に各種の無機フィラー及び/又は有機フィラーを配合しても、プラスチックの物性低下を起こさず且つ種々の性能・機能を付与する技術の開発が要望されている。
【0010】
【特許文献1】特開2000−129099号公報
【特許文献2】特開2001−220473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、相溶化剤ないしは改質剤として、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、及び共重合体系相溶化剤から選ばれる相溶化剤が用いられたプラスチック材料、再生プラスチック材料、及び前記プラスチック材料から構成されたプラスチック成形体を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の目的は、高い物性を有する難燃性プラスチック材料、高い物性を有する難燃性の再生プラスチック材料、及び前記プラスチック材料から構成された難燃性のプラスチック成形体を提供することにある。また、本発明の目的は、無機フィラー及び/又は有機フィラーが配合されたプラスチック材料、無機フィラー及び/又は有機フィラーが配合された再生プラスチック材料、及び前記プラスチック材料から構成された無機フィラー及び/又は有機フィラーが配合されたプスチック成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、1種又は複数種のポリマーと、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、及び共重合体系相溶化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤とを含む、プラスチック材料である。
【0014】
本発明は、さらに難燃剤を含む、前記のプラスチック材料である。
本発明は、さらに無機フィラー及び/又は有機フィラーを含む、前記のプラスチック材料である。
【0015】
本発明は、相溶化剤としてさらにアイオノマー樹脂が併用されている、前記のプラスチック材料である。
【0016】
本発明は、1種又は複数種のポリマー100重量部に対して、前記相溶化剤0.1〜100重量部を含む、前記のプラスチック材料である。ここで、相溶化剤の配合量は、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、及び共重合体系相溶化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤、及び用いる場合にはアイオノマー樹脂の合計量である。
【0017】
本発明は、1種又は複数種のポリマーのすべてが、未使用のポリマーである、前記のプラスチック材料である。
本発明は、1種又は複数種のポリマーのうちの少なくとも1種は、使用済みのポリマーである、前記のプラスチック材料である。
本発明は、1種又は複数種のポリマーのすべてが、使用済みのポリマーである、前記のプラスチック材料である。
【0018】
本発明は、プラスチック材料が複数種のポリマーを含み、複数種のポリマーには互いに非相溶の異種ポリマーが含まれる、前記のプラスチック材料である。
【0019】
本発明は、プラスチック材料が複数種のポリマーを含み、複数種のポリマーには互いに相溶する異種ポリマーが含まれる、前記のプラスチック材料である。
【0020】
本発明は、1種又は複数種のポリマーが、熱可塑性ポリマー及び/又は熱硬化性ポリマーから選ばれる、前記のプラスチック材料である。
【0021】
本発明は、少なくとも1種は使用済みのものである1種又は複数種のポリマー材料に、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、及び共重合体系相溶化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤と、必要に応じて難燃剤と、必要に応じて無機フィラー及び/又は有機フィラーとを配合することにより得られた、再生プラスチック材料である。
【0022】
本発明は、前記のうちのいずれかのプラスチック材料から構成された、プラスチック成形体である。難燃剤が含まれる場合は、難燃性のプラスチック成形体となる。成形体としては、限定されることなく、繊維状成形体、シート状あるいはフィルム状成形体、射出成形体、管状押し出し成形体、ラミネート成形体、又は発泡成形体等の各種のものが挙げられる。また、本発明において、前記のうちのいずれかのプラスチック材料を主成分とする、コーティング材料、被覆材料、又は接着剤を得ることもできる。
【0023】
シート状あるいはフィルム状成形品として、とりわけ、表面に微細凸状を有するシート状あるいはフィルム状成形品が挙げられる。より特別には、表面1mm2 当たりに、高さ0.5〜5μmの微細凸状を少なくとも1,000 個有するシート状あるいはフィルム状成形品が挙げられる。
【0024】
繊維状成形品として、マルチフィラメント、モノフィラメント、フラットヤーン、ステープルファイバー、スパンボンド又はフラッシュ紡糸構造物が挙げられる。とりわけ、表面にストリークを有する繊維状成形品が挙げられる。
【0025】
コーティング材料のコーティング対象物としては、例えば、金属板、プラスチックフィルムやシート、繊維又はパルプ製不織布等が挙げられる。コーティング材料の形態としては、粉体塗料、水分散塗料又は有機系塗料の形態が挙げられる。接着材料の接着対象物としては、金属、セラミック、有機構造物等が挙げられる。接着材料の形態としては、例えば、ホットメルト接着剤が挙げられる。
【0026】
さらに、本発明は、リサイクルすべきプラスチックに、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、及び共重合体系相溶化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤を配合して、再生プラスチック材料を得ることを特徴とする、プラスチック材料リサイクル方法にも関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高い物性を有するプラスチック材料、高い物性を有する再生プラスチック材料、及び前記プラスチック材料から構成されたプラスチック成形体が提供される。
【0028】
本発明は、互いに相溶性の異種ポリマーにも適用できるが、とりわけ、互いに非相溶の異種ポリマー(例えば、脂肪族ポリマーと芳香族ポリマー、極性ポリマーと非極性ポリマー)を相溶化させたい場合に特に有効である。
【0029】
本発明は、未使用の樹脂にも使用済みの回収樹脂にも適用できるが、回収樹脂の場合にも高い物性を有する再生プラスチック材料が得られるので、この再生プラスチック材料は広い分野・用途に利用可能である。このように、本発明は、廃棄プラスチックの再生利用に大いに貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明において、1種又は複数種のポリマーには、特に限定されることなく、種々の熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ゴムなどの高分子材料を含む材料が含まれるが、熱可塑性ポリマーが好ましい。熱可塑性ポリマーとしては、市販のポリマーあるいは新規に合成されたポリマーを用いることができる。
【0031】
高分子材料として具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体樹脂(ACS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂(AS)、ポリブテン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体樹脂(ASA)、ビスマレイミドトリアジン樹脂、塩素化ポリエーテル、塩素化ポリエチレン、アリル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール樹脂(EVA)、アイオノマー、メタクリル−スチレン共重合体、ニトリル樹脂、ポリエステル〔ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など〕、オレフィンビニルアルコール共重合体、石油樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアリルスルフォン、ポリベンゾイミダゾール、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、メタクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ブタジエン−スチレン樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、キシレン樹脂、架橋ポリエチレン等の架橋ポリオレフィン、架橋ポリスチレン、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、生分解性樹脂、熱可塑性エラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム等、及びこれら高分子化合物の繊維強化品(FRP)が挙げられる。これらは、例示であって、他の種々のポリマーも含まれる。
【0032】
上記のうち、ほとんどは熱可塑性タイプであり、ビスマレイミドトリアジン樹脂、エポキシ樹脂、FRP、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂は、熱硬化性タイプである。また、ポリウレタン、シリコーン樹脂、キシレン樹脂は、熱可塑性タイプのものと熱硬化性タイプのものがある。熱硬化性タイプについては、粉砕品を用いる方が好ましい。また、架橋ポリエチレン等の架橋ポリオレフィンや架橋ポリスチレンについても、粉砕品を用いる方が好ましい。
【0033】
本発明において、上記ポリマーは、未使用の樹脂(Virgin resin)でも良いが、使用済みの回収樹脂でもよい。すなわち、本発明には、1種又は複数種のポリマーのすべてが未使用のポリマーである形態、1種又は複数種のポリマーのうちの少なくとも1種が使用済みのポリマーである形態が含まれ、1種又は複数種のポリマーのすべてが使用済みのポリマーである形態も含まれる。
【0034】
特に限定されないが、回収樹脂を含む場合に特に本発明の効果が得られる。回収樹脂は、異種の樹脂の混合物形態であることが多く、従来は良好な相溶性が得られなかったが、本発明では次に述べる相溶化剤の含有により良好な相溶性が得られ、物性低下を起こすことなく、再生プラスチック材料が得られる。回収樹脂の再使用に当たっては、使用中での光、熱或いはガスによる劣化や他の物との接触による傷や汚染が考えられるので、予め、水や酸/アルカリ等による化学的洗浄、或いはサンドブラストや摩擦等による表面の物理的洗浄を行うことも好ましい。
【0035】
本発明において、オキサゾリン系相溶化剤(B)、エラストマー系相溶化剤(C)、反応性相溶化剤(D)、及び共重合体系相溶化剤(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤を用いる。
【0036】
オキサゾリン系相溶化剤(B)としては、例えば、次のB1〜B3の各タイプが挙げられる。
B1タイプとして、ビスオキサゾリン/スチレン/無水マレイン酸共重合体(OXZ;三国製薬製)等が挙げられる。
B2タイプとして、ビスオキサゾリン/無水マレイン酸変性ポリエチレン〔OXZ(三国製薬製)とPE(三洋化成製、ユーメックス2000)とのブレンド〕等が挙げられる。
B3タイプとして、ビスオキサゾリン/無水マレイン酸変性ポリプロピレン〔OXZ(三国製薬製)とPP(三洋化成製、ユーメックス1010)とのブレンド〕等が挙げられる。
【0037】
エラストマー系相溶化剤(C)としては、例えば、次のC1〜C4の各タイプが挙げられる。
C1タイプとして、スチレンエチレンブタジエン共重合体(SEB;旭化成工業製、タフテック)等が挙げられる。
C2タイプとして、スチレンエチレンブタジエンスチレン共重合体(SEBS;旭化成工業製)等が挙げられる。
C3タイプとして、水添スチレンイソプロピレンスチレン共重合体(H−SIS)等が挙げられる。
C4タイプとして、芳香族系樹脂、石油樹脂(新日本石油製のネオポリマー)等が挙げられる。
【0038】
反応性相溶化剤(D)は、二重結合、カルボキシル基、エポキシ基などを有するポリマーであって、成形加工工程で相溶化させようとするポリマーの一方または両方と反応してグラフトまたはブロック構造に基づく界面活性剤的な働きをして相溶化剤として機能するものである(参考文献:「ポリマーアロイ」基礎と応用、高分子学会編、1993年発行)。反応性相溶化剤(D)としては、例えば、次のD1〜D5の各タイプが挙げられる。
【0039】
D1タイプ:
エチレングリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA;共重合重量組成、例えばE/GMA=100/6〜12)、エチレングリシジルメタクリレート−ビニルアルコール共重合体(E−GMA−VA;共重合重量組成、例えばE/GMA/VA=100/3〜12/8〜5)、エチレングリシジルメタクリレート−メタクリレート共重合体(E−GMA−MA;共重合重量組成、例えばE/GMA/MA=100/3〜6/30)等が挙げられる。具体的には、住友化学製、ボンドファーストE、ボンドファースト2C;日本ポリオレフィン製、レクスパールRA、レクスパールET、レクスパールRCが挙げられる。
【0040】
D2タイプ:
エチレン無水マレイン酸エチルアクリレート共重合体(E−MAH−EA;住友化学製、ボンダイン)等が挙げられる。
【0041】
D3タイプ:
エチレングリシジルメタクリレート−アクリロニトリルスチレン(EGMA−AS;共重合重量組成、例えばEGMA/AS=70/30)、エチレングリシジルメタクリレート−ポリスチレン(EGMA−PS;共重合重量組成、例えばEGMA/PS=70/30)、エチレングリシジルメタクリレート−ポリメチルメタクリレート(EGMA−PMMA、例えばEGMA/PMMA=70/30)等が挙げられる。具体的には、日本油脂製、モディパーが挙げられる。
【0042】
D4タイプ:
酸変性型ポリエチレンワックス(APEW;三井化学製、ハイワックス)等が挙げられる。
【0043】
D5タイプ:
COOH化ポリエチレングラフトポリマー、COOH化ポリプロピレングラフトポリマー等が挙げられる。
【0044】
共重合体系相溶化剤(E)としては、例えば、ポリエチレン−ポリアミドグラフト共重合体(PE−PA GP)、ポリプロピレン−ポリアミドグラフト共重合体(PP−PA GP)等が挙げられる。また、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、アセタール基、マレイン酸基、オキサゾリン基及びカルボン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を含み、メルトフローレートが1以上の低粘度の共重合体ポリマーが挙げられ、具体的には、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、EVA・PVC・グラフト共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、水添スチレン−イソプロピレン−ブロック共重合体等が挙げられる。具体的には、三井・デュポンポリケミカル製、エルバロイが例示される。
【0045】
本発明においては、1種又は複数種のポリマーの種類等に応じて、上記のオキサゾリン系相溶化剤(B)、エラストマー系相溶化剤(C)、反応性相溶化剤(D)、及び共重合体系相溶化剤(E)の中から選ばれる1種の相溶化剤又は2種以上の相溶化剤を組み合わせて用いる。
【0046】
また、本発明においては、1種又は複数種のポリマーの種類等に応じて、上記の相溶化剤(B)〜(E)の他に、さらに相溶化剤としてアイオノマー樹脂(A)を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本発明において、アイオノマー樹脂(A)としては、種々のタイプのものが含まれる。典型的なアイオノマーは、(a)ホスト高分子の主鎖に部分的に側鎖イオン基が存在するものである(側鎖型)。別のタイプのアイオノマーは、(b)両末端に例えばカルボン酸基が存在するホスト高分子あるいはオリゴマーに金属イオンが中和することより高分子化したものである(テレケリック型)。また別のタイプのアイオノマーは、(c)主鎖に陽イオンを有し、そこに陰イオンが結合したものである(アイオネン)。
【0048】
【化1】

【0049】
ホスト高分子のイオン基に対する対イオンとしては、Li+ 、Na+ 、K+ 等のアルカリ金属イオン、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+等のアルカリ土類金属イオン、Zn2+、Cu2+、Mn2+、Ni2+、Co2+、Co3+、Fe3+、Cr3+等の遷移金属イオンが用いられる。また、陽イオンホスト高分子に対しては、Cl- 、Br- 、I- 等の陰イオンが用いられる。
【0050】
このようなアイオノマー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、プロピレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、プロピレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、ブチレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−ビニルスルホン酸共重合体アイオノマー、スチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、スルホン化ポリスチレンアイオノマー、フッ素系アイオノマー、テレケリックポリブタジエンアクリル酸アイオノマー、スルホン化エチレン−プロピレン−ジエン共重合体アイオノマー、水素化ポリペンタマーアイオノマー、ポリペンタマーアイオノマー、ポリ(ビニルピリジウム塩)アイオノマー、ポリ(ビニルトリメチルアンモニウム塩)アイオノマー、ポリ(ビニルベンジルホスホニウム塩)アイオノマー、スチレン−ブタジエンアクリル酸共重合体アイオノマー、ポリウレタンアイオノマー、スルホン化スチレン−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンサルフェイトアイオノマー、酸−アミンアイオノマー、脂肪族系アイオネン、芳香族系アイオネン等が挙げられる。
【0051】
これらアイオノマー樹脂は、互いに非相溶の異種ポリマーを相溶化させる効果を有する。これらアイオノマー樹脂の1種を相溶化剤又はプラスチックリサイクル用改質剤として用いてもよく、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
これらアイオノマー樹脂のうち、エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体アイオノマーが好ましく用いられる。これらは、脂肪族ポリマーと芳香族ポリマーの相溶性、及び極性ポリマーと非極性ポリマーの相溶性を向上させる場合に特に有効である。エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマーとして、より具体的には、ハイミラン1554、ハイミラン1555、ハイミラン1557、ハイミラン1601、ハイミラン1605、ハイミラン1650、ハイミラン1652、ハイミラン1652 SR 、ハイミラン1652 SB 、ハイミラン1702、ハイミラン1705、ハイミラン1706、ハイミラン1707、ハイミラン1855、ハイミラン1856(以上、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0053】
前記相溶化剤〔(B)〜(E)、用いる場合には(A)も含まれる〕の配合量は、リサイクルすべきプラスチックの種類や、それに混入している他種ポリマーの種類や量、又は配合したい他種ポリマーの種類や量によって、適宜決定するとよい。他種ポリマーが、リサイクルすべき主たるプラスチックと同系統のポリマー(すなわち、比較的相溶性のあるポリマー)であれば、相溶化剤の配合量は比較的少なく使用すると良いであろう。一方、他種ポリマーが、リサイクルすべき主たるプラスチックと非相溶のポリマーであれば、同系統のポリマーの場合に比べると、相溶化剤の配合量は多く使用すると良いであろう。また、主たるプラスチックへの他種ポリマーの混入量が多くなると、一般的に相溶化剤の配合量も多くする必要がある。ポリマーが未使用の場合も同様である。
【0054】
前記相溶化剤〔(B)〜(E)、併用して用いる場合には(A)も含まれる〕の配合量は、上記観点から適宜決定されるが、1種又は複数種の(リサイクルすべき又は未使用の)ポリマー100重量部に対して、通常相溶化剤の合計量0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、更に好ましくは1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部を配合する。相溶化剤が0.1重量部未満では、相溶化効果が得られにくく、一方、相溶化剤が100重量部を超えると、相溶化効果が飽和するばかりか耐熱性の低下やコストアップとなる場合があり好ましくない。特に、用途毎に生産性や目的物の品位や性能を考慮して、相溶化剤の使用量を決める必要がある。相溶化剤として(A)を併用する場合には、相溶化剤(B)〜(E)を相溶化剤全量の10重量%以上とすることがよい。
【0055】
本発明において、相溶化剤が好ましく適用されるポリマーの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられ、PETの再生プラスチック材料、及びそれからの成形品が得られる。
【0056】
本発明において、相溶化剤が好ましく適用される互いに非相溶の異種ポリマーの組合せとしては、例えば、脂肪族ポリマーと芳香族ポリマー、極性ポリマーと非極性ポリマー、ポリオレフィン系樹脂とエンジニアリングプラスチックの組合せが挙げられ、これら樹脂を主体とする新品の又は再生のプラスチック材料、及びそれからの成形品が得られる。
【0057】
より詳細には、ポリオレフィン系樹脂には、主として、ポリプロピレン、極低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等及びそれらの混合物が含まれる。エンジニアリングプラスチックには、ABS樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアセタールポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスチレン、ポリイミド等及びそれらの混合物が含まれる。
【0058】
より具体的には、例えば、PEとPET、PPとPET、PEとABS、PEとPBT、PEとPA、PPとABS、PCとABS、PETとABS、PSとPE、PSとPP、PSとPET、PCとPE、PCとPP、PCとPET、PAとPETの組合せが挙げられる。これらのポリマーは使用後に回収された各種ポリマーにも十分適用可能である。もちろん、これらの他にも、多様な組合せが存在し、2種の異種ポリマーのみならず、3種以上の異種ポリマーの組合せにも適用される。
【0059】
本発明において、上記ポリマーの組み合わせの場合には、限定されないが、次の表に示す相溶化剤タイプを用いることが好ましい。
【0060】
【表1】

【0061】
従来、これらの再生において、廃棄プラスチック中に異種ポリマーの混入があるため、十分高い物性を有する再生プラスチックからの成形品や材料は得られなかった。本発明によって、異種ポリマーを含む廃棄プラスチックの相溶化が達成でき、十分高い物性を有する再生プラスチック材料やそれから構成される成形品が得られる。
【0062】
本発明において、プラスチック材料には、前記相溶化剤の他に、必要に応じて、プラスチックリサイクル用改質剤ないしは添加剤として、難燃剤及び/又はフィラーを含ませてもよい。
【0063】
難燃剤は、優れた難燃性を付与するために必要に応じて添加される。難燃剤には、特に限定されることなく、種々のタイプの難燃剤、すなわち、ホウ酸系難燃剤、リン系難燃剤、前記ホウ酸系難燃剤及び前記リン系難燃剤以外のその他の無機系難燃剤、チッソ系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、有機系難燃剤、及びコロイド難燃物質からなる群から選ばれる各種の難燃剤が含まれる。
【0064】
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、テトラブロモ・ビスフェノールA誘導体(TBA)、テトラブロモ・ビスフェノールS誘導体、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモエタン(TBE)、ブタンテトラブロモブタン(TBB)、ヘキサブロモシクロデカン(HBCD)等の臭素系難燃剤、塩素化パラフィン、塩素化ポリフェニル、塩素化ジフェニル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン等の塩素系難燃剤が挙げられる。これらは、三酸化アンチモン等と併用することにより、さらに良好な難燃効果を発揮する。
【0065】
リン系難燃化合物としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、赤燐、リン酸エステル、トリクレジルホスフェート、トリ(β−クロロエチル)ホスフェート、トリ(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリ(ジブロモプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−ジクロロプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0066】
その他の無機系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、酸化スズの水和物、ホウ砂等の無機金属水和物、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム−カルシウム、炭酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、赤リン、膨張黒鉛等が挙げられる。
【0067】
これらの難燃剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明において、1種又は複数種のポリマー材料に対する難燃剤の添加量は、目的とする難燃性により異なるため特に限定されることはないが、通常、ポリマー材料100重量部に対して、難燃剤0. 1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは5〜80重量部を配合することにより、良好な難燃性が得られる場合が多い。
【0068】
無機フィラー及び/又は有機フィラーは、強度向上、耐熱性向上、耐水性向上、耐温水性向上、耐湿性向上などのために、あるいはその他の種々の性能・機能の向上のために必要に応じて添加される。例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、窒化物、炭素類、金属粉、セラミックス粉、食品屑、ガラス繊維などから選ばれる各種無機フィラーをプラスチック材料に含ませてもよい。より具体的には、無機フィラーとして、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、炭化珪素、マイカ等が例示される。また、木粉、綿フロック、木綿などから選ばれる各種有機フィラーをプラスチック材料に含ませてもよい。もちろん、無機フィラーと有機フィラーの両者を用いてもよく、上記例示以外のフィラーを用いてもよい。
【0069】
本発明において、1種又は複数種のポリマー材料に対する無機フィラーの添加量は、目的とする物性、性能、機能や、無機フィラーの種類により異なるため特に限定されることはないが、通常、ポリマー材料100重量部に対して、無機フィラー0. 1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは1〜50重量部を配合することにより、良好な物性、性能、機能が得られる場合が多い。
【0070】
本発明において、難燃剤と無機フィラーの両者を添加する場合、ポリマー材料中への分散性の観点から、1種又は複数種のポリマー材料に対する難燃剤と無機フィラーの合計添加量が、ポリマー材料100重量部に対して、前記合計添加量200重量部までとすることが好ましく、100重量部までとすることがより好ましい。
【0071】
本発明において、1種又は複数種のポリマー材料に対する有機フィラーの添加量は、目的とする物性、性能、機能や、有機フィラーの種類により異なるため特に限定されることはないが、通常、ポリマー材料100重量部に対して、有機フィラー0. 1〜200重量部を配合することにより、良好な物性、性能、機能が得られる場合が多い。
【0072】
本発明において、プラスチック材料には、さらに他の添加剤、例えば、アンチブロッキング剤、結晶化促進剤、ガス吸着剤、老化防止剤(エステル、アミド等)、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、粘着付与剤、可塑剤(ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸又はそれらの金属塩等)、軟化剤(鉱物油、ワックス、パラフィン類等)、安定剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、変性剤、着色剤、カップリング剤、防腐剤、防カビ剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0073】
前記相溶化剤を用いることにより、任意の複数種のポリマーを相溶化させ、さらに必要に応じて、難燃剤及び/又はフィラーを配合・分散することができるので、廃棄量が多く再生利用の要望が強いポリオレフィン系樹脂やエンジニアリングプラスチックの再生を行い、その再生の際に難燃性及び/又はその他の性能・機能を付与された各種成形品や各種材料を得る場合に、本発明を適用する利点が大きい。
【0074】
配合方法は、特に限定されることなく、通常の溶融混練方法により行うことができる。例えば、ポリマー、相溶化剤及びその他の成分を、ロールニーダー、バンバリーミキサー、インターミックス、1軸押出機、2軸押出機などの混練機で混練すると良い。混練は、前記混練機のうちから選ばれる1種の混練機を用いて行ってもよく、又は2種以上の混練機を用いて行ってもよい。相溶化剤の配合については、混合すべきポリマー樹脂に所定量の相溶化剤を配合して、所定の相溶化剤及びポリマーの濃度とされたチップを得る方法(コンパウンド法)でもよいし、或いは一定の相溶化剤濃度のマスターチップを作っておいて、使用に際して、マスターチップに所定量の樹脂を添加混合して、所定の相溶化剤及びポリマーの濃度とする方法(マスターバッチ法) もとりうる。あるいは、目的とする成形体を製造する押し出し機或いは成形機に、混合すべき樹脂及び相溶化剤を投入して成形することもできる。
【0075】
本発明において、1種又は複数種のポリマーと、前記相溶化剤とを含むプラスチック材料を常法により成形して各種成形品とする。また、前記プラスチック材料にさらに必要に応じて添加剤を加えて、被覆材料、コーティング材料又は接着材料とすることも可能である。
【0076】
前記プラスチック材料からの各種成形品は、常法の成形法により製造することができる。例えば、円形状、矩形状或いはその他の各種断面形状を有する中空状或いは中実状の押出成形品、各種射出成形品、ブロー成形品、Tダイから押出成形されたシート或いはフィルム、インフレーションフィルム、溶融紡糸法によるマルチフィラメント、モノフィラメント、フラットヤーン、ステープルファイバー、スパンボンド不織布、フラッシュ紡糸不織布等の繊維状構造物、各種発泡成形品が得られる。
【0077】
前記プラスチック材料からの各種材料としては、有機又は無機線状物、又は撚り紐状物等への被覆材料、金属板、プラスチックフィルムやシート、繊維又はパルプ製不織布等の少なくとも1面へのコーティング材料やラミネート材料、粉体塗料、水分散塗料又は有機系塗料等の塗料が得られる。また、金属、セラミック、有機構造物等同士、あるいはこれら相互を接着するために好適な接着剤が得られる。
【0078】
本発明には、これらに限定されず、1種又は複数種のポリマーと、前記相溶化剤とを含む相溶性が良好なプラスチック材料(樹脂組成物)から得られる各種成形品や各種材料が含まれる。
【0079】
押出し法にて繊維状構造物を得る場合は、繊維状構造物が非常に細い繊維よりなり且つ製造時の線速度が非常に大きいために、混合樹脂組成物としては、相分離の形状が小さく且つ比較的流動性に優れる必要がある。ポリマーの流動性の目安として、通常、MFR(メルトフローレート: 測定温度280℃、荷重2.16kg、単位g/10min)が用いられる。良好な生産性や品質、物性を得るためには、成形温度でMFRが通常1〜100、さらに好ましくは10〜60、好ましくは20〜50である。
【0080】
ポリマーの流動性の目安として、通常、上記MFRが用いられる。しかしながら、MFRの測定は定荷重法であり、ポリマーによって測定時の剪断速度が異なり、そのポリマーの実際の成形時における剪断速度とは異なる剪断速度領域でMFRは測定される。例えば、射出成形では成形時に大きな剪断速度が必要であるが、押出し成形では成形時の剪断速度は射出成形時に比べると小さい。そのため、MFRは、必ずしも目的とする成形性の評価にならない場合がある。特に本発明のように、異種ポリマーのブレンドの場合は、剪断速度によってポリマーの流動性が大きく異なってくる。従って、本発明での成形性の評価として、キャピログラフ(東洋精機社製キャピログラフ1B、毛管サイズ:L=10mm、D=0.5mm)を用いて剪断速度を0.1〜10,000まで変えてこの全剪断速度領域での流動粘度を測定した。ここでは、この中から剪断速度100(1/sec) での溶融粘度(η)をポリマーの流動性の目安として用いる。なお、キャピログラフの測定では、混合樹脂に用いられた樹脂のそれぞれの融点のうち、最も高い融点を考慮して測定温度を設定する必要がある。例えば、PE/PET混合樹脂では280℃で測定する。混合樹脂の良好な成形性や品質、物性を得るためには、例えばモノフィラメントの成形では、ηが通常少なくとも800poise 、好ましくは少なくとも1,000poise、更に好ましくは1,500 〜20,000 poiseであり、もちろんこの範囲以外でも条件設定によっては成形可能である。また、マルチフィラメントの成形では、ηが通常高々5,000poise、好ましくは800 〜4,000poise、更に好ましくは1,000 から3,000poiseであり、もちろんこの範囲以外でも条件設定によっては成形可能である。
【0081】
この場合でも、混合ポリマーにおいて、島成分のη1と海成分のη2との比(η1/η2)は、0.02≦η1/η2≦30、好ましくは0.05≦η1/η2≦20、更に好ましくは0.08≦η1/η2≦10であり、この範囲以外でも条件設定によっては成形可能である。
【0082】
又、繊維の形状が非常に小さいために、ポリマー混合物での相分離の形状も、生産性や品質、物性に大きく影響を及ぼす。生産性や品質、物性を低下させない相分離の大きさとしては、少量成分(島成分)ドメインの面積(S1)と繊維断面積(S)との比(S1/S)が、0.3以下、好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.1以下である。この比が0.5を超えると糸切れによる生産性の低下や糸斑による品質や物性の低下が著しく好ましくない。
【0083】
そのためには、混合樹脂の組成としては、少量成分の比率が混合樹脂を基準として、通常高々40重量%、好ましくは高々35重量%、更に好ましくは高々30重量%である。少量成分が40重量%より大きくなると、樹脂混合物の相分離形態が大きくなり繊維の切断や部分変形が生じ易く、生産性の低下や品位、物性の低下をもたらし、好ましくない。
【0084】
本発明での異種ポリマーの組み合わせによる繊維構造物、特にモノフィラメントやマルチフィラメント、ステープルでは、より硬い繊維部分の他により柔らかい成分を筋状に有する構造のために、繊維の曲げ剛性や結節強度が高くなり好ましい物性を有する特徴もある。また、スパンボンド、メルトブロー等の不織布では、高融点の海成分と低融点或いは低軟化点の島成分とを組み合わせると、不織布の耐熱性や強度を低下させずに繊維間の融着性を大幅に改善することができる。
【0085】
射出成形では、比較的高い流動性が必要であり、MFRとしては通常70以下、好ましくは0.1以上60以下、更に好ましくは0.2以上55以下である。
【0086】
シート、フィルムやボトル成形品においては、その厚みにもよるが、一般的に繊維における程には相分離の形状を小さくする必要はなく、樹脂組成物での少量成分の量は好ましくは高々40重量%である。少量成分の量が40重量%を超えると、成形時の破れが生じ易く生産性が低下し、且つフィルムの厚み斑や強度斑が顕著になり好ましくない。
【0087】
混合樹脂の流動性については、シート、フィルム、ボトルにより最適値は各々異なる。ボトル成形では比較的流動性が小さくなるように樹脂組成を調整する必要がある。ボトル成形では樹脂組成物のMFRとしては、通常10以下、好ましくは7以下、更に好ましくは0.1〜5である。
【0088】
又、シートやフィルムではその製造方式によって最適の流動性は異なり、Tダイ方式によるシート、フィルム製造ではポリマーの流動性は比較的小さくし、インフレーション方式でのフィルム製造では比較的流動性は大きくすることが好ましい。インフレーション方式での樹脂組成物のMFRとしては、通常30以下、好ましくは25以下、更に好ましくは0.1〜20である。インフレーション方式での樹脂組成物のηとしては、通常少なくとも2,000poise、好ましくは少なくとも3,000poise、更に好ましくは4,000 〜20,000poise であり、もちろんこの範囲以外でも条件設定によっては成形可能である。Tダイ法での樹脂組成物のMFRとしては、通常30以下、好ましくは25以下、更に好ましくは0.1〜8である。Tダイ法での樹脂組成物のηとしては、通常少なくとも2,000poise、好ましくは少なくとも3,000poise、更に好ましくは4,000 〜50,000poise である。
【0089】
Tダイ法により押し出し成形を行う場合、混合ポリマーにおいて、島成分のη1と海成分のη2との比(η1/η2)は、0.01≦η1/η2≦10、好ましくは0.02≦η1/η2≦5である。
【0090】
シート、フィルム中での相分離の大きさも余り大きくなると、不均一延伸による破れや厚み斑、或いは物性の低下が大きくなり好ましくない。シート、フィルム中での島成分の相分離の大きさをD1とし、シートやフィルムの厚みをDとした場合、通常D1/Dの比は高々0.5、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.1以下である。
【0091】
その他の成形体については、各種の混合比が可能であるが、生産性や品位、物性を考えると少量成分の比は、高々45重量%が好ましい。又、異種ポリマーの混合による相分離のサイズは必ずしもなくす必要はないが、大きい場合は、生産性、操業性、品質、物性等に悪影響を及ぼす。又、融着が必要な成形体では多量成分として軟化点が低いもの(例えばPE)が良く、柔軟性があって且つ表面硬度の高い耐熱性が要求される成形体では、多量成分として軟化点が高いもの(例えばPET)が良い。
【0092】
それぞれの成形品や材料について、用いる1種又は複数種のポリマーの種類や配合量に応じて、前記相溶化剤樹脂の種類を適宜選択し、前記相溶化剤樹脂の量を装置特性や生産性、目標とする品位、物性に応じて最適の範囲とする必要がある。
【0093】
本発明によって、PET/PEの良好な相溶化が得られるので、PETボトルの回収において問題となるPE製のふた除去に関して、PE製のふたを除去することなくPETボトルを回収することができる。これにより、回収工程の大幅な合理化や更なる廃棄物の増加を抑えることができ、工業的にも社会的にも大きな意義がある。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0095】
実施例において使用した相溶化剤を以下に示す。
相溶化剤I:ビスオキサゾリン(三国製薬製)と無水マレイン酸変性PE(ユーメックス2000、三洋化成製)の1:9.6(重量比)混合物
相溶化剤II:スチレンエチレンブタジエンスチレン共重合体(SEBS、旭化成工業製)
相溶化剤III :エチレン(88重量%)−グリシジルメタクリレート(12重量%)共重合体
相溶化剤IV:ネオポリマー L−90(新日本石油製)
相溶化剤V:エチレン系特殊共重合樹脂(エルバロイ、三井・デュポンポリケミカル製)
相溶化剤VI:エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー(ハイミラン1707Na、三井・デュポンポリケミカル製)と、エチレン(88重量%)−グリシジルメタクリレート(12重量%)共重合体との等重量混合物
相溶化剤VII :酸変性型ポリエチレンワックス(ハイワックス2203A、三井化学製)
相溶化剤VIII:エチレン(94重量%)−グリシジルメタクリレート(6重量%)共重合体
相溶化剤IX:相溶化剤Iと、エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー(ハイミラン1707Na、三井・デュポンポリケミカル製)との等重量混合物
【0096】
[実施例1]
実施例1において、使用済みPETとPE製ガス管廃材を用いて再生プラスチック材料を作製した。
(1) 使用済みPETフレーク
回収されたPETボトルを水で洗浄して、粉砕機によりフレーク状に粉砕し、これを水で洗浄して、乾燥したもの(よのペットボトルリサイクル社製)を用いた。
(2) PE製ガス管廃材の再生ペレット
PE製ガス管の廃材を粉砕し、洗浄した後に、再ペレット化したもの(大阪樹脂工業製)を用いた。
【0097】
使用済みPETフレーク(よのペットボトルリサイクル社製)80重量部、PE製ガス管の再生ペレット(大阪樹脂工業製)20重量部、及び相溶化剤Iの5重量部を、2軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)を用いて溶融混練し、ストランド状に押し出し、チップを得た。
<押出条件>
温度設定:フィード 260℃、混練部 280℃、ヘッド 260℃
回転数:60rpm
【0098】
得られたチップを射出成形(射出成形機:日本製鋼所株式会社製、N100BII、L/D=22)して、JIS K−7113に準拠した試験片 幅1/2インチ×長さ8.5インチ×厚み1/8インチのもの(A) と、幅1/4インチ×長さ5インチ×厚み1/2インチのもの(B) を作製した(実施例1−1)。
<射出成形条件>
温度設定:フィード 260℃、ノズル 280℃、金型 60℃
射出圧力:35〜40kg/cm2
【0099】
[実施例2〜6]
実施例2〜6では、表2に示す相溶化剤の種類及び配合量とした以外は、実施例1と同様にして2種の試験片をそれぞれ作製した。
【0100】
(再生プラスチック材料の評価)
・引張特性の測定
得られた各試験片(A) につき、JIS K−7113に準じて引張強度(MPa)、引張弾性率(MPa)及び引張伸び率(%)を測定した。チャック間距離:115mm、引張速度:50mm/分、測定雰囲気:温度23℃、相対湿度50%
・アイゾット衝撃強度(ノッチ有り)の測定
得られた各試験片(B) につき、JIS K−7113に準じてアイゾット衝撃強度(J/m)を測定した。ノッチ形状:45°Vノッチ
【0101】
[参照]
参照のために、上記使用済みPETフレーク、PE製ガス管の再生ペレットそれぞれ単独のものを、実施例1と同様にして、射出成形し2種の試験片を作製し、同様の測定を行った。これらの結果を表2にまとめて示す。
【0102】
【表2】

【0103】
表2より、実施例1〜6の再生材料は良好な物性値を有し、種々用途の材料として適用できる。
【0104】
[実施例7:マルチフィラメント]
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク(よのペットボトルリサイクル社製)100重量部及び相溶化剤Iの3重量部を、2軸押出機(株式会社テクノベル製、KZW15−30MG)を用いて、280℃にて常法にて溶融混練し、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップを得た。該チップを120℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)で水分率80重量ppmまで乾燥した。乾燥後に、チップを溶融し、24個の微細孔より冷却空気中に押し出し固化しながら、1000m/minの速度で巻き取った。次いで90℃で4倍延伸し、150℃で定長熱セットした後、75dTexの連続繊維として巻き取った。その結果、紡糸時の糸切れや延伸時の延伸斑もなく、品質に優れた繊維が得られた。
【0105】
[参照]
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作を行ったが、紡糸時の単糸切れや延伸・熱処理ローラーへの巻きつきが多発した。
【0106】
[実施例8:モノフィラメント]
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク(よのペットボトルリサイクル社製)及び相溶化剤IをPET/相溶化剤I=100/5(重量部)の組成にてドライブレンドし、2軸混練機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)を用いて、280℃で溶融混練し、水中にストランド状で押し出し・固化した後、3mm長にカットし、混合樹脂チップを得た。混合樹脂チップを120℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)にて乾燥し、水分率を100重量ppmとした。
【0107】
乾燥後のチップを1軸混練機にて260℃で溶融し、口金ノズル径1.2mm、孔数18個の紡糸口金から真下に吐出し、空中を30mm通過させた後、60℃に調整した冷却浴に通し冷却・固化し、その後、98℃の熱水中で6倍に一段延伸し、さらに210℃の空気中で1.25倍に二段延伸して、直径0.21mm(480dTex)のモノフィラメントを得た。紡糸時の糸切れや延伸時の延伸斑もなく、品質に優れた繊維が得られた。
【0108】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作を行ったが、紡糸時の単糸切れや延伸・熱処理ローラーへの巻きつきが多発した。
【0109】
[実施例9:マルチフィラメント]
PE(ニポロンハード2500、東ソー製)6重量部、実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク(よのペットボトルリサイクル社製)94重量部及び相溶化剤Iの1重量部を、2軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)を用いて、280℃にて常法にて溶融混練し、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップを得た。該チップを120℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)で水分率60重量ppmまで乾燥した。乾燥後に、チップを溶融し、24個の微細孔より冷却空気中に押し出し固化しながら、1000m/minの速度で巻き取った。次いで80℃で4倍延伸し、150℃で定長熱セットした後、75dTexの連続繊維として巻き取った。このようにして、マルチフィラメントを作製した(実施例9−1)。
【0110】
相溶化剤の種類を表3に示すように相溶化剤III (実施例9−2)、又は相溶化剤VI(実施例9−3)に変更した以外は、実施例9−1と同様にしてマルチフィラメントをそれぞれ作製した。
【0111】
[実施例10:マルチフィラメント]
表3に示すように、相溶化剤I(実施例10−1)、相溶化剤III (実施例10−2)、又は相溶化剤VI(実施例10−3)の配合量を5重量部とした以外は、実施例9−1、9−2、9−3と同様にしてマルチフィラメントをそれぞれ作製した。
【0112】
[実施例11:マルチフィラメント]
表3に示すように、ポリマーの配合量をPE(ニポロンハード2500、東ソー製)20重量部、実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク(よのペットボトルリサイクル社製)80重量部とした以外は、実施例9−1、9−2、9−3と同様にしてマルチフィラメントをそれぞれ作製した。
【0113】
[比較例1、2]
表3に示すように、相溶化剤を配合しなかった以外は、実施例9−1、又は実施例11−1と同様にしてマルチフィラメントをそれぞれ作製した。
【0114】
[比較例3]
PETペレット(ダイヤナイトPA−500、三菱レイヨン製)のみを用いて、実施例9−1と同様にしてマルチフィラメントを作製した。
【0115】
(紡糸性)
実施例9−1〜3、実施例10−1〜3、及び実施例11−1〜3ではいずれも、紡糸時の糸切れや延伸時の延伸斑もなく良好な紡糸性が得られた。一方、比較例1及び2では、紡糸時の単糸切れや延伸・熱処理ローラーへの巻きつきが多発した。比較例3では、紡糸性や延伸性は良好であったが、口金面に汚れが見られた。
【0116】
(マルチフィラメントの評価)
作製した各マルチフィラメントについて、引張強度(g/dTex)及び伸度(%)を測定した。実施例9−1〜3、実施例10−1〜3、及び実施例11−1〜3ではいずれも、強度、伸度に優れた繊維が得られた。
【0117】
また、各マルチフィラメントについて、次のようにして染色性を評価した。
マルチフィラメントを青色染色(Dianix ACE Blue, 3% owf) にて高圧染色し、K/S(630nm)の測定を実施した。染色性を次の基準で評価した。
○:K/Sが25以上
△:K/Sが20以上25未満
×:K/Sが20未満
【0118】
また、各マルチフィラメントについて、次のようにしてKS/DS比を評価した。
KS:結節強度(MPa)
DS:引張強度(MPa)
引張速度:20cm/min
【0119】
(繊維表面の観察)
作製した各マルチフィラメントの繊維表面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察した。代表例として実施例11−1の繊維表面のSEM写真を図1に示す。図1に示すように、繊維を構成するPET/PE成分の相分離による繊維長さ方向へ伸びた長い凹溝(ストリーク)が観察された。他の実施例の繊維の表面にも同様のストリークが観察された。このストリークのために、本発明の繊維はマイルドな光沢、ソフトな風合い、滑らかな肌触り、良好な染色性を有する。
【0120】
比較例3の繊維の表面をSEMで観察した(図2)。図2に示すように、通常のPET繊維の特徴である非常に平滑な繊維表面が観察された。平滑な表面により、このPET繊維はぎらついた光沢、固くキシミ感の強い風合いを持つ。このような欠点を除くために、これまではPET繊維の製造において、アルカリ減量処理によって繊維表面を多い場合は数10重量%も除去していたが、アルカリ減量処理は資源の無駄使いになるばかりか、排水への悪影響も大きく、資源的及び環境的に好ましいものではなかった。
【0121】
本発明の繊維は柔軟でソフトな風合いを有するので、アルカリ減量処理を行う必要がなく、あるいは行うとしても僅かな減量でよい。この意味でも、本発明繊維は環境にやさしい繊維であるといえる。
【0122】
以上の結果を表3に示す。
【0123】
【表3】

【0124】
[実施例12:マルチフィラメント]
回収食品容器PP(ポリプロピレン)95重量部、PET(ダイヤナイトPA−500、三菱レイヨン製)5重量部及び相溶化剤III の5重量部を、2軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)を用いて、280℃にて常法にて溶融混練し、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップを得た。該チップを120℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)にて乾燥し、水分率を30重量ppmとした。乾燥後に、チップを溶融し、24個の微細孔より冷却空気中に押し出し固化しながら、1000m/minの速度で巻き取った。次いで75℃で3倍延伸し、130℃で定長熱セットした後、75dTexの連続繊維として巻き取った。紡糸時の糸切れや延伸時の延伸斑もなく、品質に優れた繊維が得られた。
【0125】
ここで用いた回収食品容器PPは、回収されたPP製食品容器を水で洗浄して、粉砕機によりフレーク状に粉砕し、再ペレット化したものである。
【0126】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作を行ったが、紡糸時の単糸切れや延伸・熱処理ローラーへの巻きつきが多発した。
【0127】
[実施例13:モノフィラメント]
ここでは、使用済みPETと使用済みPEを用いて再生樹脂からモノフィラメントを作製した。
(1) 使用済みPETフレーク(実施例1と同様)
回収されたPETボトルを水で洗浄して、粉砕機によりフレーク状に粉砕し、これを水で洗浄して、乾燥したもの(よのペットボトルリサイクル社製)を用いた。
(2) 使用済みPEの再生ペレット
回収されたPE容器を水で洗浄して、粉砕機によりフレーク状に粉砕した。これを水で洗浄して、乾燥し、再ペレット化を行い、再生ペレットを得た。
【0128】
使用済みPETフレーク、PE再生ペレットと共に相溶化剤IをPET/PE/相溶化剤I=90/10/5(重量部)の組成にてドライブレンドし、実施例1で用いたのと同じ2軸混練機を用いて、280℃で溶融混練し、水中にストランド状で押し出し・固化した後、3mm長にカットし、混合樹脂チップを得た。混合チップを120℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)にて乾燥し、水分率を150重量ppmとした。
【0129】
乾燥後のチップを1軸混練機にて260℃で溶融し、口金ノズル径1.2mm、孔数18個の紡糸口金から真下に吐出し、空中を30mm通過させた後、60℃に調整した冷却浴に通し冷却・固化し、その後、98℃の熱水中で6倍に一段延伸、さらに210℃の空気中で1.25倍に二段延伸して、モノフィラメントを得た。紡糸時の糸切れや延伸時の延伸斑もなく、品質に優れた繊維が得られた(実施例13−1)。
【0130】
ブレンド配合量をPET/PE/相溶化剤I=80/20/1(重量部)に変更した以外は、実施例13−1と同様にしてモノフィラメントを作製したところ、紡糸時の糸切れや延伸時の延伸斑もなく、品質に優れた繊維が得られた(実施例13−2)。
【0131】
相溶化剤を相溶化剤III (実施例13−3)又は相溶化剤V(実施例13−4)にそれぞれ変更した以外は、実施例13−1と同様にしてモノフィラメントを作製したところ、紡糸時の糸切れや延伸時の延伸斑もなく、品質に優れた繊維が得られた。
【0132】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作を行ったが、紡糸時の単糸切れや延伸・熱処理ローラーへの巻きつきが多発した。
【0133】
[実施例14:スパンボンド]
実施例13−1と同様にして、使用済みPETフレーク、PE再生ペレット及び相溶化剤IをPET/PE/相溶化剤I=90/10/5(重量部)の組成にてドライブレンドし、混合樹脂チップを得た。混合チップを120℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)にて乾燥し、水分率を70重量ppmとした。
【0134】
乾燥チップを溶融し0.35mmの孔径の孔を2000個有する口金から、冷却空気中に押し出し冷却し、3600m/minの速度を有する空気エジェクターを通じて延伸し、前方方向に進むネットコンベア上に吹き付けた。吹き付けられた繊維は互いに弱く融着し、ソフトな風合いを有するウェブが得られた。コンベアに運ばれて、次に、130℃に保持された金属製のエンボスローラー(圧着面積率:19%)と常温に保持されたフラットローラー間で加圧され、部分的に加圧・加熱融着し強度に優れた30g/m2 目付のスパンボンド不織布を得た。得られた不織布は単糸デニールが0.9dTexよりなり、ソフトな風合いと適度の伸度と十分な強度を有した(実施例14−1)。
【0135】
相溶化剤の種類を相溶化剤III (実施例14−2)、又は相溶化剤V(実施例14−3)に変更した以外は、実施例14−1と同様にしてスパンボンド不織布をそれぞれ作製した。得られた不織布はいずれも、単糸デニールが0.9dTexよりなり、ソフトな風合いと適度の伸度と十分な強度を有した。
【0136】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作を行ったが、紡糸時の単糸切れが多発し、非常に毛羽とムラの多い品位の悪いウェブが得られ、実用性は非常に低いものであった。
【0137】
[実施例15:フラットヤーン]
PE(ニポロンハード2500、東ソー製)5重量部、実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク(よのペットボトルリサイクル社製)95重量部及び相溶化剤Iの5重量部を、2軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)を用いて、280℃にて常法にて溶融混練し、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップを得た。該チップを120℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)で水分率80重量ppmまで乾燥した。得られた混合樹脂チップ(水分率80重量ppm)を使用し、通常使用される公知の環状口金を有する溶融押し出し機より、外部及び内部からエアーを吹きつけ、冷却とバルーニングを行い押し出し成型した。押し出された筒状のシートは、シート状に畳まれて、次いで幅5mmにカットされ、次いで70℃に保持されたホットプレート上に接触しながら定長で余熱され、次いで80℃のホットプレート上で3.5倍に延伸した。次いで、160℃に保持されたホットプレート上で2%収縮させながら、熱固定後、所定のパーンに巻き取り、フラットヤーンを得た(実施例15−1)。
【0138】
相溶化剤の種類を相溶化剤III (実施例15−2)、又は相溶化剤V(実施例15−3)に変更した以外は、実施例15−1と同様にしてフラットヤーンをそれぞれ作製した。
【0139】
PETのみから得られるフラットヤーンは延伸倍率が大きい場合、PETの過剰配向により比較的もろく縦方向に割け易いものであるが、本実施例15−1〜3で得られたフラットヤーンは、PET成分中に分散したPE成分によりもろさが改善され割け難くなっており、使用における耐久性も向上した。
【0140】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作を行ったが、口金からの均一な押し出しができず、かなり円周方向や流れ方向に樹脂ムラが見られた。そのために、エアーにより膨らませることも十分にできず、又延伸の不均一性や途中での破断が生じ、生産性や品位、品質に劣るものであった。
【0141】
[実施例16:管状押し出し成形体]
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレークを用いた。
使用済みPETフレーク100重量部、相溶化剤VIの10重量部、及び着色剤としてブラックPBF−640(LDPEベース、レジノカラー工業株式会社製)1重量部を、2軸混練機にて290℃で溶融混練後、ストランド状に押し出し・固化し、3mm長に切断して着色チップを得た。得られたチップを120℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)にて水分率200重量ppmまで乾燥した後、内径25mmの1軸混練機にて溶融し、外径25mm、内径20mm、厚さ2.5mmの円形口金から水中に押し出して連続パイプを得た。スムースで均一な外観を有するパイプが得られた(実施例16−1)。
【0142】
相溶化剤VIの配合量を5重量部に変更した以外は、実施例16−1と同様にして連続パイプを作製したところ、スムースで均一な外観を有するパイプが得られた(実施例16−2)。
【0143】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作を行ったが、相分離による不均一さのために、やや凹凸のある外観になり、又ハンマーでの打撃で簡単に破損した等、物性的にも不十分であった。
【0144】
[実施例17:管状押し出し成形体]
ここでは、実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク(よのペットボトルリサイクル社製)とPE製ガス管の再生ペレット(大阪樹脂工業製)を用いて再生樹脂成形体を作製した。
【0145】
使用済みPETフレーク60重量部、PE製ガス管の再生ペレット40重量部、相溶化剤Iの15重量部、及び着色剤としてブラックPBF−640(LDPEベース、レジノカラー工業株式会社製)1重量部を、2軸混練機にて290℃で溶融混練後、ストランド状に押し出し・固化し、3mm長に切断して着色チップを得た。得られたチップを120℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)にて乾燥し、水分率を200重量ppmとした。その後、チップを内径25mmの1軸混練機にて溶融し、外径25mm、内径20mm、厚さ2.5mmの円形口金から水中に押し出して連続パイプを得た。スムースで均一な外観を有するパイプが得られた。
【0146】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作を行ったが、相分離による不均一さのために、やや凹凸のある外観になり、又ハンマーでの打撃で簡単に破損した等、物性的にも不十分であった。
【0147】
[実施例18:鋼板ラミネート成形体]
この実施例では、表面にウレタン系プライマーが予め塗工されている厚さ0.35mmの溶融亜鉛メッキ鋼板を基板として用いた。実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク(よのペットボトルリサイクル社製)とPE製ガス管の再生ペレット(大阪樹脂工業製)を用いた。
【0148】
使用済みPET/PE製ガス管の再生ペレット/相溶化剤IX=85/15/5(重量部)の混合チップに、青色の顔料(長瀬産業製、CROMOPHTAL(Blue 4GNP ))を1重量部添加し、内径25mmの1軸押し出し機にて290℃で溶融混練し、スリット幅0.2mmで横幅50cmのTダイより押し出し、基板までのエアーギャップを適切に調整しながら、基板のプライマー面上にラミネートし、続いてプレスローラーでプレス・冷却し、鋼板/樹脂ラミネート化粧板を得た。ラミネートされた樹脂層の厚さは約0.17mmで光沢に優れた均一な外観を呈した。又、接着(密着)の強さを評価するために、JIS K5400(碁盤目テープ剥離テスト)を実施したが全く問題はなかった。又、JIS Z2204の曲げテストを実施したが、t=3mm迄はひび割れは見られず良好な性能を有した。
【0149】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作を行ったが、得られたラミネート成形体は、表面のくすんだ光沢や微少な凹凸が見られ品位が低いものであった。
【0150】
[実施例19:フィルム成形体]
この実施例では、実施例1で用いたのと同じPE製ガス管の再生ペレット(大阪樹脂工業製)を用いた。回収PBT(ポリブチレンテレフタレート)は、回収されたPBT製ケース成形品を水で洗浄した後、粉砕機により粉砕し、再ペレット化したものである。
【0151】
回収PBT/PE製ガス管の再生ペレット/相溶化剤VI=85/15/5(重量部)の混合チップを、内径25mmの1軸押し出し機にて290℃で溶融混練し、スリット幅0.2mmで横幅50cmのTダイより押し出し、プレスローラーでプレス・冷却し、フィルム成形体を得た。得られたフィルムの厚さは約0.15mmで光沢に優れた均一な外観を呈した。
【0152】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作でフィルム成形体を得たが、得られたフィルム成形体は、表面のくすんだ光沢や微少な凹凸が見られ品位が低いものであった。
【0153】
[実施例20:フィルム成形体]
この実施例では、回収された医療用のナイロンPE積層フィルム(ナイロン:PE=75:25)を用いた。医療用の回収ナイロンPE積層フィルムとしては、回収された医療用のナイロンPE積層フィルムを水で洗浄した後、粉砕機により粉砕したものを使用した。
【0154】
回収ナイロンPE積層フィルム/相溶化剤V=100/5(重量部)の混合チップを、内径25mmの1軸押し出し機にて290℃で溶融混練し、スリット幅0.2mmで横幅50cmのTダイより押し出し、プレスローラーでプレス・冷却し、フィルム成形体を得た。得られたフィルムは光沢に優れた均一な外観を呈した。
【0155】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作でフィルム成形体を得ようと試みたが、フィルムを得ることができなかった。
【0156】
[実施例21:フィルム成形体]
この実施例では、実施例1で用いたのと同じ使用済みPET、実施例12で用いたのと同じ回収食品容器PPを用いた。
【0157】
使用済みPET/回収食品容器PP/相溶化剤IX=85/15/5(重量部)の混合チップを、内径25mmの1軸押し出し機にて290℃で溶融混練し、スリット幅0.2mmで横幅50cmのTダイより押し出し、プレスローラーでプレス・冷却し、フィルム成形体を得た。得られたフィルムは、厚さ約0.15mmで光沢に優れた均一な外観を呈した。
【0158】
一方、比較のために、相溶化剤を配合しなかった以外は上記と同様の操作でフィルム成形体を得たが、得られたフィルム成形体は、表面のくすんだ光沢や微少な凹凸が見られ品位が低いものであった。
【0159】
[実施例22〜25、比較例4〜7:インフレーションフィルム]
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレークを用いた。
これらの実施例及び比較例において、使用済みPETフレーク、PE(ニポロン−L FS150、東ソー製)及び相溶化剤を表4に示す配合重量比で各々ドライブレンドし、2軸混練機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)にて260℃で混練し、その後、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップをそれぞれ得た。該各チップを脱湿乾燥空気(露点:−35℃)にて乾燥し、水分率を100重量ppm以下とした。
【0160】
該各乾燥チップを用いて常法通りインフレーションフィルムをそれぞれ作製した。先ず、チップを各チップの溶融に適した温度勾配を有する単軸混練機にて溶融混練し、直径85mmの円形ダイスより押し出した。内圧の調整によりBUR(ブロー比)を変化させた。また、フィルム厚みは押し出し量を調整し25μmとした。このようにして、インフレーションフィルムをそれぞれ作製した。
【0161】
結果を表4に示す。実施例ではいずれも、製膜状態が良く、得られたフィルムも良好であった。溶融粘度η(poise) は、東洋精機社製キャピログラフ1B(毛管サイズ:L=10mm、D=0.5mm)を用いて、280℃、剪断速度100(1/sec) で測定した値である。比較例4の使用済みPETのみでは製膜温度での溶融粘度が十分でなく、フィルムの持ち上げブローができなかった。実施例22〜25では、相溶化剤を用いて使用済みPETにPEをブレンドし、アロイ化することによって溶融粘度が増大し、フィルムの立ち上げやブロー延伸が均一かつ良好に達成された。
【0162】
表4において、製膜状態についての記号は以下の通りである。
○:ブロー性良好。
△:ブロー性不良。
×:フィルムの持ち上げができなかった。
【0163】
表4において、フィルム状態についての記号は以下の通りである。
○:やや不透明ではあるが、ソフトで腰があり、且つスムーズな感触である。
△:製膜は可能であったが、ところどころに異物が見られる。
×:製膜不良。
【0164】
【表4】

【0165】
(フィルムの評価)
作製した各インフレーションフィルムについて、ヒートシール強度、水に対する接触角、表面性を次のように評価した。結果を表4にまとめて示す。
【0166】
1.ヒートシール強度
得られた各フィルムから10mm×100mmの短冊状試験片2枚を切り出した。2枚の短冊状試験片を重ね合わせ、一方端からの距離10mmの部分を直線状に卓上バキュームシーラー(サランラップ販売株式会社製、卓上密封包装機)で融着した。その後、融着されていない他方端同士を、引張試験機を用いて引張速度100mm/minの条件で引っ張り、融着部の破断荷重(kN)を測定した。
【0167】
表4に示すように、本発明のフィルムはいずれも、比較例4のPET単独フィルムに比べてヒートシール強度が優れていることが確認され、従って、袋状物に好適なフィルムであった。
【0168】
従来より、PETを原材料とするフィルムはヒートシール強度が弱いという問題点があった。本発明において、PETに対してヒートシール性に優れる1種又は複数種のPET以外の他の樹脂(本実施例ではPE)と相溶化剤とを任意の割合で混合し、この混合樹脂材料をフィルム化することにより、この問題点が解決された。
【0169】
2.接触角
得られた各フィルムについて、水に対する接触角を測定した。表4に示すように、本発明のフィルムいずれについても、PETフィルムに比べて高い接触角が得られた。
【0170】
PETを原材料とするフィルムは水に対する接触角が小さく、親水的である。しかしながら、本発明において、PETに対して疎水的な1種又は複数種のPET以外の他の樹脂(本実施例ではPE)と相溶化剤とを任意の割合で混合し、この混合樹脂材料をフィルム化することにより、接触角の高いフィルムが得られた。
【0171】
3.表面性
フィルム表面の性状は用途によって最適化することが好ましい。例えば、ゴミ袋、ショッピング袋等の薄地の袋物の用途では、製造段階の操作性や梱包・保管時の安定性の観点から、また光沢や外観、滑り性、開口性、印刷性等の観点から、フィルムは表面凹凸をある程度有することが好ましい。
【0172】
例えば、この用途において、フィルムは表面1mm2 当たりに、幅1〜10μmで高さ0.5〜5μmの凸状を少なくとも1,000 個、好ましくは2,000 〜8,000 個、更に好ましくは3,000 〜5,000 個有するとよい。この程度の表面凸状によって、スムーズな滑り性を有し且つ多数重ねた時には安定した形状を保ち、又使用時の操作性に優れるという利点が得られる。もちろん、この範囲の表面凸状数でなくても使用は可能である。凸状高さは0.5μmより低いと効果が少なく、また5μmより高いとフィルムの強度等の物性が低下し易い。
【0173】
従来のHDPE(高密度ポリエチレン)製フィルムでは、アンチブロッキング剤を配合することによって、製造段階の操作性や梱包・保管時の安定性等を確保していた。そのために経時的にアンチブロッキング剤の表面への移動(マイグレーション)が生じ、フィルム表面の汚れやヘイズの原因となっていた。また、アンチブロッキング剤の脱落により、ブロッキングが生じやすくなり取扱い上での注意を要した。
【0174】
本発明では、1種又は複数種の樹脂と相溶化剤との適切な組み合わせによりフィルム表面の凹凸を制御することができ、すなわち、フィルム表面の凹凸という物理的な効果によってフィルムにアンチブロッキング性を付与することができる。そのため、フィルム表面のアンチブロッキング剤による汚染がなく衛生的であり、且つアンチブロッキング性が半永久的に維持できる。凸状部分は、フィルム成形温度を低くすることにより生じやすくなるが、成形温度を低くし過ぎるとフィルム強度等が低下しやすい。そのため、フィルム成形時の溶融混練温度は220〜280℃が好ましく、例えば、PEリッチフィルムの場合には、アンチブロッキング性を高めるには225〜265℃が好ましい。なお、フィルムの表面の凹凸はSEM(走査電子顕微鏡)、レーザー顕微鏡、AFM(原子力間顕微鏡)、触針式表面粗さ計等を用いて評価できる。
【0175】
得られた各フィルム表面1mm2 当たりの凸状の個数を以下のようにして求めた。フィルム表面の5か所を任意に選び、レーザー顕微鏡を用いて、フィルムMD方向、TD方向それぞれについて、長さ50μmの範囲における高さ0.5〜5μmの凸状の個数をカウントした。MD方向、TD方向それぞれにおける凸状個数の平均値を求めた。MD方向及びTD方向それぞれの平均凸状個数を掛け合わせることによって、フィルム表面1mm2 当たりの個数を算出した。
【0176】
表4に示すように、本発明のフィルムはいずれも、適度な表面の凸状個数を有し、アンチブロッキング性に優れていた。なお、HDPE(高密度ポリエチレン)のみから成形されたアンチブロッキング剤入りの市販のポリエチレンフィルムについて、同様の測定を行うと、フィルム表面1mm2 当たりの凸状個数は、4600個であった。
【0177】
[実施例26:フィルム成形体の耐アルカリ性]
PETを原材料とするフィルムは耐アルカリ性が弱いという問題点がある。しかしながら、本発明において、PETに対して耐薬品性に優れる1種又は複数種のPET以外の他の樹脂(例えばPE)と相溶化剤とを任意の割合で混合し、この混合樹脂材料をフィルム化すると、耐アルカリ性に優れたフィルムが得られる。
【0178】
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク、及びPE(ニポロン−L FS150、東ソー製)を用いた。
【0179】
使用済みPET/PE/相溶化剤III =70/30/3、50/50/10、又は25/75/3(重量部)の混合チップをそれぞれ、内径25mmの1軸押し出し機にて290℃で溶融混練し、スリット幅0.2mmで横幅50cmのTダイより押し出し、プレスローラーでプレス・冷却し、3種のフィルム成形体を得た。得られた各フィルムを4重量%の水酸化ナトリウム水溶液に23℃で1時間浸漬した。いずれのフィルムにも異常は見られなかった。
【0180】
また、相溶化剤の種類を相溶化剤V又は相溶化剤VIに変更した以外は、上記と同様にして6種のフィルム成形体をそれぞれ作製した。得られた各フィルムを4重量%の水酸化ナトリウム水溶液に23℃で1時間浸漬した。いずれのフィルムにも異常は見られなかった。
【0181】
一方、比較のために、PETペレット(ダイヤナイトPA−500、三菱レイヨン製)のみから上記と同様の操作でフィルム成形体を得た。PETフィルムを4重量%の水酸化ナトリウム水溶液に23℃で1時間浸漬したところ、亀裂が生じた。
【0182】
[実施例27:射出成形品]
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレークを用いた。
使用済みPETフレーク100重量部及び相溶化剤Iの3重量部を、2軸押出機(株式会社テクノベル製、KZW15−30MG)を用いて、280℃にて常法にて溶融混練し、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップを得た。得られたチップを実施例1と同じ条件で射出成形して、射出成形品を得た。得られた成形品は、相溶化剤を用いず使用済みPETフレークのみから得られた成形品に比べて、引張強度、伸びが向上した。
【0183】
[実施例28〜30:繊維強化した射出成形品]
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク、及びPE製ガス管の再生ペレットを用いた。
これらの実施例において、使用済みPETフレーク、PE製ガス管の再生ペレット、ガラス繊維(PET PBT用、13μm径、日東紡製)、及び相溶化剤を表5に示す配合重量比で各々ドライブレンドし、2軸混練機(株式会社テクノベル製、KZW15−30MG)にて260℃で混練し、その後、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップをそれぞれ得た。該各チップを除湿乾燥機でチップ中の水分率が150重量ppm以下になるまで乾燥した。
【0184】
該各乾燥チップを用いてJIS K−7054に準拠した射出成形試験片を作製した。得られた各試験片につき、JIS K−7054に準じて引張強度(MPa)、曲げ弾性率(MPa)及び伸び(%)を測定した。結果を表5に示す。いずれの試験片も、優れた物性値を示した。
【0185】
【表5】

【0186】
[実施例31:木粉配合した射出成形品]
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレークを用いた。
南洋材ベニヤ板の表面研磨くず木粉をふるいにかけ、14〜100メッシュの繊維長の木粉が70重量%であり、100メッシュ以上の繊維長の木粉が30重量%である混合物を得た。この木粉混合物を予備乾燥し、水分率を2重量%に調整した。この木粉混合物55重量部、PE樹脂(JPO社製、AE089L)8重量部、使用済みPETフレーク32重量部、相溶化剤Iの0.5重量部、シリカ5重量部及び硫酸バリウム5重量部を混合し、スーパーミキサーに一括投入して高速撹拌した。この混合物を、二軸押出機を用いて加熱混練し、ペレット化した。得られたペレットを、熱風循環式オーブンを用いて水分率0. 3重量%に乾燥し、射出成形機及び試験型を用いて、射出成形を行った。なお、射出温度は280℃に設定した。成形した試験片のうち、5ショット目、10ショット目、15ショット目、20ショット目及び25ショット目の5本を抜き取り、引張試験及び曲げ試験を行い、5本の試験片の平均値を求めた。引張強度は37MPa、曲げ強度は81MPa、曲げ弾性率は6170MPaであった。
【0187】
[実施例32:木粉配合した射出成形品]
PE樹脂(JPO社製、AE089L)8重量部の代わりに、実施例1で用いたのと同じPE製ガス管の再生ペレット8重量部を用いた以外は、実施例31と同じ操作を繰り返した。引張強度は33MPa、曲げ強度は71MPa、曲げ弾性率は6450MPaであった。
【0188】
[実施例33:マスターバッチ法及びコンパウンド法]
(マスターバッチ法)
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレークを、再ペレット化した使用済みPETチップを用いた。
PE(T240E、東ソー製)30重量部及び相溶化剤Iの3重量部をドライブレンドし、2軸混練機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)にて260℃で混練し、その後、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、マスターチップを得た。使用済みPETチップ70重量部と該マスターチップ33重量部をドライブレンドし、除湿乾燥機でチップ中の水分率が150重量ppm以下になるまで乾燥し、JIS K−7054に準拠した射出成形試験片を作製した。このようにして試験片No.M-1 を得た。
【0189】
また、マスターチップの配合をPE/相溶化剤I=75/3重量部に変えて、使用済みPETフレーク25重量部と該マスターチップ78重量部をドライブレンドした以外は、上記と同様にして、射出成形試験片を作製した。このようにして試験片No. M-2 を得た。
【0190】
相溶化剤の種類を表6に示すように相溶化剤II、III 、V、又はVIに変更した以外は、上記と同様にして試験片No. M-3 〜No. M-10をそれぞれ作製した。
【0191】
(コンパウンド法)
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレークを用いた。
使用済みPETフレーク、PE(T240E、東ソー製)及び相溶化剤を表6に示す配合重量比で各々ドライブレンドし、2軸混練機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)にて260℃で混練し、その後、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップをそれぞれ得た。該各チップを除湿乾燥機でチップ中の水分率が150重量ppm以下になるまで乾燥し、JIS K−7054に準拠した射出成形試験片No. C-1 〜No. C-10をそれぞれ作製した。
【0192】
得られた各試験片につき、JIS K−7054に準じて引張強度(MPa)を測定した。結果を表6に示す。同一の配合組成であれば、マスターバッチ法及びコンパウンド法いずれによる試験片も、同様の物性値を示した。
【0193】
【表6】

【0194】
[実施例34:マスターバッチ法によるインフレーションフィルム]
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレークを用いた。
使用済みPETフレーク70重量部、PE(T240E、東ソー製)30重量部及び相溶化剤Iの3重量部をドライブレンドし、2軸混練機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)にて260℃で混練し、その後、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップを得た。該チップを除湿乾燥機でチップ中の水分率が150重量ppm以下になるまで乾燥した。得られた乾燥チップ100重量部に使用済みPETフレーク50重量部を乾燥雰囲気下でドライブレンドし、常法通りインフレーションフィルムを作製した。先ず、チップを各チップの溶融に適した温度勾配を有する単軸混練機にて溶融混練し、直径85mmの円形ダイスより押し出した。内圧の調整によりBUR(ブロー比)を変化させた。また、フィルム厚みは押し出し量を調整し25μmとした。製膜状態が良く、得られたフィルムも良好であった。
【0195】
[実施例35:マスターバッチ法によるインフレーションフィルム]
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレークを用いた。
使用済みPETフレーク30重量部、PE(T240E、東ソー製)70重量部及び相溶化剤Iの5重量部をドライブレンドし、2軸混練機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)にて260℃で混練し、その後、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップを得た。該チップを除湿乾燥機でチップ中の水分率が150重量ppm以下になるまで乾燥した。得られた乾燥チップ100重量部にPE(T240E、東ソー製)50重量部を乾燥雰囲気下でドライブレンドし、常法通りインフレーションフィルムを作製した。先ず、チップを各チップの溶融に適した温度勾配を有する単軸混練機にて溶融混練し、直径85mmの円形ダイスより押し出した。内圧の調整によりBUR(ブロー比)を変化させた。また、フィルム厚みは押し出し量を調整し25μmとした。製膜状態が良く、得られたフィルムも良好であった(実施例35−1)。
【0196】
相溶化剤の種類を相溶化剤III (実施例35−2)、又は相溶化剤VI(実施例35−3)に変更した以外は、実施例35−1と同様にしてインフレーションフィルムをそれぞれ作製した。いずれも製膜状態が良く、得られたフィルムも良好であった。
【0197】
[実施例36:マスターバッチ法によるインフレーションフィルム]
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレークを用いた。
使用済みPETフレーク50重量部、PE(T240E、東ソー製)50重量部及び相溶化剤Iの10重量部をドライブレンドし、2軸混練機(株式会社テクノベル製、KZW15−30MG)にて260℃で混練し、その後、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップを得た。該チップを除湿乾燥機でチップ中の水分率が150重量ppm以下になるまで乾燥した。得られた乾燥チップ100重量部にPE(T240E、東ソー製)100重量部を乾燥雰囲気下でドライブレンドし、常法通りインフレーションフィルムを作製した。先ず、チップを各チップの溶融に適した温度勾配を有する単軸混練機にて溶融混練し、直径85mmの円形ダイスより押し出した。内圧の調整によりBUR(ブロー比)を変化させた。また、フィルム厚みは押し出し量を調整し48μmとした。製膜状態が良く、得られたフィルムも外観良好であり、アンチブロッキング剤を用いなくても、フィルムの滑り性も良好であった(実施例36−1)。
【0198】
相溶化剤の種類を相溶化剤III (実施例36−2)、又は相溶化剤VI(実施例36−3)に変更した以外は、実施例36−1と同様にしてインフレーションフィルムをそれぞれ作製した。いずれも製膜状態が良く、得られたフィルムも外観良好であり、アンチブロッキング剤を用いなくても、フィルムの滑り性も良好であった。
【0199】
[実施例37:マスターバッチ法及びコンパウンド法によるマルチフィラメント]
使用済みPETを用いて、同一配合組成(PET/PE/相溶化剤=90/10/1)の材料から、マスターバッチ法及びコンパウンド法によってそれぞれマルチフィラメントを作製した。
【0200】
(マスターバッチ法)
PE(ニポロンハード2500、東ソー製)100重量部及び相溶化剤Iの10重量部をドライブレンドし、2軸混練機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)にて200℃で混練し、その後、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップを得た。該チップを除湿乾燥機でチップ中の水分率が150重量ppm以下になるまで乾燥し、その後、さらに110℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)で水分率80重量ppmまで乾燥した。得られた乾燥チップ11重量部に実施例33で用いたのと同じ使用済みPETチップ90重量部を乾燥雰囲気下でドライブレンドし、乾燥後に、24個の微細孔より冷却空気中に押し出し固化しながら、1000m/minの速度で巻き取った。次いで85℃で4倍延伸し、150℃で定長熱セットした後、75dTexの連続繊維として巻き取った。このようにして、マルチフィラメントを作製した(実施例37−1)。
【0201】
(コンパウンド法)
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク100重量部、PE(ニポロンハード2500、東ソー製)10重量部及び相溶化剤Iの1重量部をドライブレンドし、2軸混練機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)にて260℃で混練し、その後、約3mmの直径で水中に押し出し・固化し、次いで3mm長に切断し、混合樹脂チップを得た。該チップを除湿乾燥機でチップ中の水分率が150重量ppm以下になるまで乾燥し、その後、さらに110℃の脱湿乾燥空気(露点:−35℃)で水分率80重量ppmまで乾燥した。乾燥後に、チップを溶融し、24個の微細孔より冷却空気中に押し出し固化しながら、1000m/minの速度で巻き取った。次いで85℃で4倍延伸し、150℃で定長熱セットした後、75dTexの連続繊維として巻き取った。このようにして、マルチフィラメントを作製した(実施例37−2)。
【0202】
上記実施例37−1、37−2のいずれにおいても、実施例7の[参照]で用いた使用済みPETに比べて、溶融時の粘度が向上し、紡糸時の糸切れや延伸時の延伸斑もなく良好な紡糸性が得られ、強度及び伸度に優れた繊維が得られた。実施例37−1では、引張強度3.43g/dTex、伸度56.8%であった。実施例37−2では、引張強度3.65g/dTex、伸度55.0%であった。
【0203】
相溶化剤を相溶化剤III (実施例37−3)又は相溶化剤V(実施例37−4)にそれぞれ変更した以外は、実施例37−1と同様にしてマルチフィラメントを作製したところ、紡糸時の糸切れや延伸時の延伸斑もなく、良好な紡糸性が得られた。
【0204】
また、相溶化剤を相溶化剤III (実施例37−5)又は相溶化剤V(実施例37−6)にそれぞれ変更した以外は、実施例37−2と同様にしてマルチフィラメントを作製したところ、紡糸時の糸切れや延伸時の延伸斑もなく、良好な紡糸性が得られた。
【0205】
[実施例38:種々のポリマーからの再生プラスチック材料]
この実施例では、種々のポリマーからの再生プラスチック材料を作製した。用いたポリマー材料は、次の通りである。
【0206】
(1) 使用済みPETフレーク
実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク(よのペットボトルリサイクル社製)を用いた。
(2) PE製ガス管廃材の再生ペレット
実施例1で用いたのと同じPE製ガス管廃材の再生ペレット(大阪樹脂工業製)を用いた。
(3) PP製食品容器の再生ペレット
実施例13で用いたのと同じ回収されたPP製食品容器の再生ペレットを用いた。
(4) 使用済みPA(ポリアミド)
回収されたナイロン製の食品包装用フィルムを水で洗浄して、粉砕機により粉砕したものを用いた。
(5) 使用済みPS(ポリスチレン)の再生ペレット
回収されたポリスチレン製の飲料用コップを減容処理した後に水で洗浄して、粉砕機により粉砕し、これを再ペレット化したものを用いた。
(6) 使用済みPC(ポリカーボネート)の再生ペレット
回収されたポリカーボネート製の屋外用透明シートを水で洗浄して、粉砕機により粉砕し、これを再ペレット化したものを用いた。
【0207】
この実施例において、表7に示す配合重量比で複数のポリマー材料及び相溶化剤を、実施例1と同様にして、2軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=30)を用いて280℃にて溶融混練し、ストランド状に押し出し、チップを得て、得られたチップを射出成形(射出成形機:日本製鋼所株式会社製、N100BII、L/D=22)して、JIS K−7113に準拠した試験片(A) をそれぞれ作製した。得られた各試験片No. 38-1〜No. 38-11 について、実施例1と同様にして、引張強度(MPa)、引張伸び率(%)を測定した。
【0208】
また、比較のために、相溶化剤を含まない試験片(A) No. 38-R-1〜No. 38-R-3を作製し、同様にして、引張強度(MPa)、引張伸び率(%)を測定した。以上の結果を表7に示す。
【0209】
【表7】

【0210】
表7より、実施例の再生材料は良好な物性値を有し、種々用途の材料として適用できる。
【0211】
[実施例39:難燃性]
この実施例では、実施例1で用いたのと同じ使用済みPETフレーク(よのペットボトルリサイクル社製)とPE製ガス管の再生ペレット(大阪樹脂工業製)を用いて難燃性再生樹脂成形体を作製した。使用した難燃剤は、水酸化マグネシウム(協和化学製、キスマ5A)、膨張黒鉛(住金ケミカル製、8099M)、赤燐(日本化学製、ヒシガードTP10)、PET赤燐マスターバッチ(日本化学製、赤燐15%PETマスターバッチ)、臭素系難燃剤 SAYTEXBT-93(アルベマール社製)、臭素系難燃剤 SAYTEX 8010(アルベマール社製)、三酸化アンチモン(日本精鉱社製、PATOX−M)、ホウ酸亜鉛(日本精鉱社製)である。
【0212】
表8に示す各配合重量比で、使用済みPETフレーク、PE製ガス管の再生ペレット、相溶化剤III 及び各種難燃剤を、2軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所製、BT−30−L、L/D=42)を用いて溶融混練し、ストランド状に押し出し、チップを得た(チップNo.39−1〜39−6)。
<押出条件>
設定温度:フィード 180℃、混練部 210℃、ヘッド 180℃
回転数:100rpm
【0213】
得られた各チップを射出成形(射出成形機:日本製鋼所株式会社製、N100BII、L/D=22)して、JIS K−7113に準拠した1号試験片(A) 、JIS K−7201に準拠したI型試験片(C) 、及びUL耐炎性試験規格 UL94Vに準拠した幅1/4インチ×長さ5インチ×厚み1/2インチの試験片(D) をそれぞれ作製した。
<射出成形条件>
温度設定:フィード 260℃、ノズル 280℃、金型 60℃
射出圧力:35〜40kg/cm2
【0214】
試験片(A) について、引張強度(MPa)、引張弾性率(MPa)、引張伸び率(%)を測定した。
【0215】
(難燃性試験)
・酸素指数による燃焼性の測定方法
得られた試験片(C) につき、JIS K−7201に準じて酸素指数(%(V/V))を測定した。
・プラスチックの燃焼試験方法
得られた試験片(D) につき、UL耐炎性試験規格 UL94Vに準じて燃焼性の判定を行った。
【0216】
プラスチック材料の配合重量比及び評価結果を表8に示す。
表8より、No.39−1〜3では、難燃性試験において、著しく高い酸素指数を示し、UL94V試験においても、V1の良好な難燃性を示した。No.39−1〜3では、更に高い酸素指数を示し、V0の良好な難燃性を示した。すなわち、使用済みで且つ互いに非相溶性の異種ポリマーを用いて再生した材料であるにも係わらず、相溶化剤と難燃剤を併用することによって、優れた難燃性を有するプラスチック材料が得られた。
【0217】
また、比較のために、表8に示すように、相溶化剤を配合しなかった以外はNo.39−2と同様にして試験片成形を行ったが、試験片を成形することができなかった(No.39−7)。
【0218】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】実施例11−1の繊維表面のSEM写真である。
【図2】比較例3の繊維表面のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種は使用済みのものである複数種のポリマーと、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、及び共重合体系相溶化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤とを含むプラスチック材料から構成されたシート状あるいはフィルム状成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−30062(P2009−30062A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225332(P2008−225332)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【分割の表示】特願2002−357478(P2002−357478)の分割
【原出願日】平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】