説明

冷却装置

【課題】サージ電圧を低減することが可能な冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置10は、冷却器本体100を備える。冷却器本体100は、冷媒入口側に設けられる第一素子搭載領域101と、冷媒出口側に設けられる第二素子搭載領域102と、第一素子搭載領域101および第二素子搭載領域102の間に設けられて、冷却器本体100に設けられた、分割された導電性凸部としての導電性プレート132を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却装置に関し、より特定的には、発熱素子の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱素子に関する技術は、たとえば特開2010−251443号公報(特許文献1)、特開平10−309073号公報(特許文献2)、特開2000−125543号公報(特許文献3)、特開2003−319665号公報(特許文献4)、特開2006−101676号公報(特許文献5)および特開2010−205960号公報(特許文献6)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−251443号公報
【特許文献2】特開平10−309073号公報
【特許文献3】特開2000−125543号公報
【特許文献4】特開2003−319665号公報
【特許文献5】特開2006−101676号公報
【特許文献6】特開2010−205960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、インバータの冷却器の天板の一部に溝を形成し、その溝内にロウ付けで素子を固定する構造が開示されている。
【0005】
特許文献2では、配線用の第一の導体の近傍に、第一の導体とは独立してなおかつ第一の導体の電流変化に応じて誘導電流を生じる第二の導体が配置される構造が開示されている。
【0006】
特許文献3では、負側プレートと正側プレートの間に挟まれた薄い絶縁シートからなるサージ電圧抑制プレートを備えた構造が開示されている。
【0007】
特許文献4では、配線インダクタンスを低減するために近接配置された1対の導電板の対面領域の間に、高い誘電率を有する高誘電部材を配置する構造が開示されている。
【0008】
特許文献5では、平滑コンデンサの負極側と各相のスイッチング素子の負側端子とを一方の平板導電バーで接続し、平滑コンデンサの正極側と各相のスイッチング素子の正側端子とを他の導電平板バーで接続する構造が開示されている。
【0009】
特許文献6では、ハイサイド板、およびローサイド板と、ミドルサイド板との間に設けられた導電板が開示されている。
【0010】
従来の技術では、冷却器の天板とハウジングバスバーとの間にインダクタンスが増加し、サージ電圧が発生するという問題があった。
【0011】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、サージ電圧の発生を抑制することが可能な冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に従った冷却装置は、発熱素子の冷却装置であって、冷媒入口および冷媒出口を有する導電性の冷却器本体を備え、冷却器本体は、冷媒入口側に設けられる第一素子搭載領域と、冷媒出口側に設けられる第二素子搭載領域と、第一および第二素子搭載領域の間に設けられて分割された導電性凸部とを有する。
【0013】
このように構成された冷却装置では、導電性凸部が設けられているため、この上にバスバーを配置した場合にインダクタンスを減少させることができ、サージ電圧の発生を抑制することができる。さらに、導電性凸部が分割されているため、熱を加えても歪の発生を抑制することができる。
【0014】
好ましくは、第一素子搭載領域および第二素子搭載領域には絶縁基板を介在させて発熱素子が搭載される。
【0015】
好ましくは、導電性凸部上に絶縁体を介在させてバスバーが配置される。
好ましくは、バスバーはロウ付けにより導電性凸部に固定される。
【0016】
好ましくは、導電性凸部は板状である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に従った、発熱素子の冷却装置を示す平面図である。
【図2】図1中のII−II線に沿った、発熱素子の冷却装置の断面図である。
【図3】図1中のIII−III線に沿った、発熱素子の冷却装置の断面図である。
【図4】図3中のIVで囲んだ部分を拡大して導電性プレートおよびバスバーを示す断面図である。
【図5】図1で示す発熱素子の冷却装置における導電性プレートを説明するための斜視図である。
【図6】比較例に従った、導電性プレートが設けられていない冷却装置の斜視図である。
【図7】別の比較例に従った、導電性プレートが分割されていない冷却装置の斜視図である。
【図8】導電性プレートが設けられていない冷却装置のサージ電圧を示すグラフである。
【図9】導電性プレートが設けられた、実施の形態に従った冷却装置のサージ電圧を示すグラフである。
【図10】導電性プレートが設けられることによる、インダクタンス減少の効果を説明するためのグラフである。
【図11】導電性プレートが分割されることによる、応力の減少の効果を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った、発熱素子の冷却装置を示す平面図である。図1を参照して、冷却装置10は、発熱素子を冷却するための冷却装置である。冷却装置10は、冷媒入口11および冷媒出口12を有する導電性の冷却器本体100を備える。冷却器本体100は、冷媒入口11側に設けられる第一素子搭載領域101と、冷媒出口12側に設けられる第二素子搭載領域102とを有する。第一素子搭載領域101および第二素子搭載領域102の間が中間領域103である。第一素子搭載領域101および第二素子搭載領域102では、冷却器本体100を構成する上側筐体130表面に絶縁基板110が設けられている。絶縁基板110上に二点鎖線で示す発熱素子111が搭載される。中間領域103は第一素子搭載領域101と第二素子搭載領域102との間で所定方向に延びている。
【0020】
図2は、図1中のII−II線に沿った、発熱素子の冷却装置の断面図である。図3は、図1中のIII−III線に沿った、発熱素子の冷却装置の断面図である。図2および図3を参照して、冷却装置10の冷却器本体100は、上側筐体130と、上側筐体130に接合される下側筐体140とを備える。上側筐体130と下側筐体140との間が水路150であり、冷媒としての冷却水が水路150内を流れる。これにより、絶縁基板110上に搭載された発熱素子から発生する熱を除去することが可能である。上側筐体130上には、ハウジング131が搭載される。
【0021】
図4は、図3中のIVで囲んだ部分を拡大して導電性プレートをおよびバスバー示す断面図である。図4を参照して、上側筐体130表面に、導電性凸部としての導電性プレート132が設けられている。導電性プレート132は、第一素子搭載領域101と第二素子搭載領域102との間の中間領域103に設けられる。ハウジング131のバスバー133がアルミニウム製の導電性プレート132と対向している。導電性プレート132上に絶縁体を介在させてバスバー133が配置される。バスバー133はロウ付けにより板状の導電性プレート132に固定される。
【0022】
図5は、図1で示す発熱素子の冷却装置における導電性プレートを説明するための斜視図である。図5を参照して、導電性プレート132は長さ方向に分割されたアルミニウムのプレートである。導電性プレート132は、中間領域103の延びる方向に沿って島状に配置されている。なお、この実施の形態では、5つの導電性プレート132が開示されているが、これに限られず、2つ以上の導電性プレート132があればよい。
【0023】
図6は、比較例に従った、導電性プレートが設けられていない冷却装置の斜視図である。図6を参照して、比較例に従った冷却装置10では、導電性プレート132が設けられていない。これにより、バスバーと上側筐体との間のインダクタンスが大きくなる。
【0024】
図7は別の比較例に従った、導電性プレートが分割されていない冷却装置の斜視図である。図7を参照して、1枚の長手方向に延びる導電性プレート135を設けた場合には、インダクタンスを低減してサージ電圧を低減する効果はある。しかしながら、ロウ付け工程において、長手方向に延びる導電性プレート135が応力を発生させる可能性がある。
【0025】
図8は、導電性プレートが設けられていない冷却装置のサージ電圧を示すグラフである。図8を参照して、導電性プレート132が追加されていない場合、すなわち、図6で示す構成では、バスバー133と上側筐体130との間のインダクタンスが大きくなる。これにより、ターンオフサージ電圧値が大きくなる。
【0026】
図9は、導電性プレートが設けられた、実施の形態に従った冷却装置のサージ電圧を示すグラフである。図9を参照して、図1から5で示す本発明では、バスバー133と、導電性プレート132の相互インダクタンスにより、相対的にバスバー133のインダクタンスが低減し、結果的にサージ電圧が下がる。なお、この効果は、導電性プレート132がバスバー133に近いほど効果は大きい。すなわち、L値を減らすことにより、サージ電圧を低減でき、サージ電圧クライテリアに対し余裕を持たせることができる。
【0027】
図10は、導電性プレートが設けられることによる、インダクタンス減少の効果を説明するためのグラフである。図10を参照して、導電性プレート132を追加することで、導電性プレートが設けられていない場合に比べてバスバー133のインダクタンスを低減することできる。
【0028】
図11は、導電性プレートが分割されることによる、応力の減少の効果を説明するためのグラフである。図11を参照して、図7で示す1枚の導電性プレートであれば絶縁基板110に大きな応力が発生する。分割プレート(図1から図5)を用いることにより、応力の発生を抑えることが可能である。サージ電圧を決める要因の1つに、ハウジングバスバー133のインダクタンスがある。ハウジング131と冷却器本体100との間にスペーサとしての導電性プレート132を追加することで、ハウジングバスバー133のインダクタンスを低減させサージ電圧を下げる。この際、導電性プレート132を冷却器本体100にロウ付けで追加する場合に、この導電性プレート132の形状を分割形状とすることで、ロウ付け工程において絶縁基板110に発生する応力を最低限に抑えることができる。
【0029】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0030】
10 冷却装置、11 冷媒入口、12 冷媒出口、100 冷却器本体、101 第一素子搭載領域、102 第二素子搭載領域、103 中間領域、110 絶縁基板、111 発熱素子、130 上側筐体、131 ハウジング、132 導電性プレート、133 バスバー、140 下側筐体、150 水路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子の冷却装置であって、
冷媒入口および冷媒出口を有する導電性の冷却器本体を備え、
前記冷却器本体は、前記冷媒入口側に設けられる第一素子搭載領域と、前記冷媒出口側に設けられる第二素子搭載領域と、前記第一および第二素子搭載領域の間に設けられて分割された導電性凸部とを有する、冷却装置。
【請求項2】
前記第一素子搭載領域および前記第二素子搭載領域には絶縁基板を介在させて発熱素子が搭載される、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記導電性凸部上に絶縁体を介在させてバスバーが配置される、請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記バスバーはロウ付けにより導電性凸部に固定される、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記導電性凸部は板状である、請求項1から4のいずれか1項に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−230960(P2012−230960A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97052(P2011−97052)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】