説明

冷却部品

【課題】 優れた冷却効果が実現する冷却部品をて提供すること。
【解決手段】 コンデンサ10を構成する巻回部11の巻芯20として、Cu等をマトリックスとし、カーボンファイバー等をフィラーとした、高熱伝導のMMCを適用し、その巻芯20を延長してフィン21を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電池やコンデンサ等の巻回型の電気部品を効率的に冷却する冷却技術に関する。
【0002】
【従来の技術】電池やコンデンサの形態の一つとして、巻芯の周りに導体等が巻かれた構造のものが知られている。このような電気部品はその使用に伴ってある程度の発熱が生ずる場合が多い。通常、電気部品はその限度以上に過熱すると、その性能の低下や寿命の短縮等を招くので、製品上、これらの冷却技術は重要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】巻回型電池素子は、巻芯の周りに導体箔(銅箔等)を巻回し、そこに電解液を含浸させた構造になっている。電池はその使用の際、あるいはその充電の際、発熱することはよく知られているが、電池素子がその電池のケース内に収納されている構造上、電池素子が限度以上に温度上昇しやすい状況にあった。また電池のケースは金属材等で形成されるが、通常、電池素子の熱がケースに伝わりやすい構造にはなっていなかった。
【0004】コンデンサの場合、そのコンデンサ素子が巻回型の構造を有するものもある。このようなコンデンサ素子もその使用に伴ってある程度の発熱が生ずるが、電池素子同様、その冷却が効率的ではなかった。またこれらの電池素子やコンデンサ素子は、その構造上、特に巻き中心に近い部分の冷却が不十分になりやすい問題がある。
【0005】このような巻回型の電気部品の過熱は、その電気部品を組み込んだシステム全体の性能低下をきたす場合もあり、その熱を効率的に放熱する冷却技術の開発が望まれていた。またその冷却システム自体の省スペース化も望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述のような課題に鑑み本発明者らは、巻回型電気部品の冷却に好適な、冷却性能とサイズ特性に優れた冷却部品を開発すべく鋭意研究開発を行った。
【0007】本発明の冷却部品は、巻回型電気部品の巻芯として、フィラーであるセラミック粒子またはセラミック繊維がマトリックスである金属中に分散した金属系複合材料製の巻芯または金属巻芯を用い、前記巻芯に放熱部材が接続されてなる構造を有するものである。また、その巻回型電気部品が用いられる電気部品としては電池やコンデンサ等が挙げられる。もちろん、その他の巻回型電気部品にも適用可能である。
【0008】金属系複合材料製の巻芯を用いる場合は、アルミ材または銅材をマトリックスとし、高熱伝導の炭素、SiC、MgO、AlNの粒子または繊維をフィラーとした高熱伝導性複合材料を適用すると良い。またその金属系複合材料は、それを構成するマトリックスより高熱伝導性を有することが望ましい。
【0009】上述の本発明の冷却部品として、巻芯の一部には巻回型電気部品の巻回部材が巻かれ、その巻回部から延長する他の一部には放熱用のフィンまたはヒートシンクが取り付けられている構造のものも提案する。
【0010】
【発明の実施の形態】図1を参照しながら説明する。この例では巻回型電気部品として巻回型のコンデンサを挙げる。さてコンデンサ1の巻芯20は、マトリックス(金属材)中にフィラー(セラミック粒子、繊維、またはカーボン等の粒子、繊維)を複合させたものでできたものである。この様な複合材はMMC(metal matrixcomposite)と呼ばれることもある。
【0011】マトリックスである金属材としては、Cu材やAl材等の熱伝導特性に優れるものを用いると良い。またマトリックスの中に複合するフィラーとしては、カーボンファイバーやSiC等で、高熱伝導、低熱膨張のものを用いるとよい。
【0012】巻回部11は巻芯20の周りに陽極箔、陰極箔およびセパレータ等を巻き、更に電解液が含浸されたコンデンサ素子に相当する。図中の符号12は巻回部11に配線するための端子である。巻芯20は巻回部11から突出し、更にケース10も貫通して、その一端にはフィン21が取り付けられて冷却部品22が構成されている。
【0013】さてこの例では、巻芯20として、銅をマトリックスに、カーボンファイバーをフィラーとしたMMCを適用した。ここで用いたカーボンファイバーはグラファイト系の極めて高い熱伝導率を有するものである。高い熱伝導率を有するフィラーであるから、通常、そのマトリックス中の含有率を高めれば、そのMMCの熱伝導率も高くなるが、実験の結果、概ねその含有量は60体積%程度で飽和していた。これは高い含有率でMMCを製造するとカーボンファイバーの損傷が促進された等の原因によるものと推察される。
【0014】図2は従来例として、プラスチック製等で形成された通常の巻芯31を用いたもので、その巻芯31はケース30の外まで延長していないものである。この図2の従来例について、コンデンサ3に端子33から通電して、所定時間経過後の巻回部32の温度を測定した。更に本発明の例である図1のコンデンサ1における巻回部11の温度も同様に測定した。そして図2の例(従来例)の測定温度を基準に、図1の巻回部11との温度比較を行った。図3は図1の巻芯20を構成するMMCのマトリックスとしてCuを用いた場合につき、カーボンファイバーの含有量を変化させて、上述した従来例との温度比較の値をグラフにしたものである。図4は図1の巻芯20を構成するMMCのマトリックスとしてAlを用いた場合につき、カーボンファイバーの含有量を変化させて、上述した従来例との温度比較の値をグラフにしたものである。
【0015】図3、4を見れば判るように、カーボンファイバーの含有量の増大と共に、従来例(図2)の巻回部32の温度比較がマイナス方向に大きくなっている。即ち、カーボンファイバーの含有量が増大する程、巻回部11の温度上昇が抑制されていることが判る。従ってその冷却効果が向上している。一方、カーボンファイバーの含有量が60体積%を上回っても、その冷却効果は飽和していることも判る。
【0016】このように本発明の冷却部品22を用いることにより、巻回型電気部品であるコンデンサ1の効率的な冷却が実現していることが判る。
【0017】図1の例では巻回型電気部品としてコンデンサの場合を挙げたが、その他、例えば巻回型の電池にも本発明の冷却部品は好適に適用できる。電池の場合、図1の巻回部11は電池素子に該当することになる。
【0018】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の冷却部品は、コンデンサや電池等の巻回型電気部品の冷却構造に好適に適用できるものである。これらの効率的な冷却を実現することは、その電気部品の設計自由度を高め、またその用途をも拡大させる等の効果が期待でき産業上の貢献は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冷却部品の適用例を説明するための説明図である。
【図2】従来の巻回型電気部品の例を示す説明図である。
【図3】本発明の冷却部品の冷却性能を示すグラフである。
【図4】本発明の冷却部品の冷却性能を示すグラフである。
【符号の説明】
1 コンデンサ
10 ケース
11 巻回部
12 端子
20 巻芯
21 フィン
22 冷却部品
3 コンデンサ
30 ケース
31 巻芯
32 巻回部
33 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 巻回型電気部品の巻芯として、フィラーであるセラミック粒子またはセラミック繊維が、マトリックスである金属中に分散した金属系複合材料製の巻芯または金属巻芯を用い、前記巻芯に放熱部材が接続されてなる冷却部品。
【請求項2】 巻回型電気部品の巻芯として、フィラーであるセラミック粒子またはセラミック繊維が、マトリックスである金属中に分散した金属系複合材料製の巻芯を用い、前記巻芯に放熱部材が接続されてなる冷却部品。
【請求項3】 前記金属系複合材料として、アルミ材または銅材をマトリックスとし、高熱伝導の炭素、SiC、MgO、AlNの粒子または繊維をフィラーとした高熱伝導性複合材料である、請求項2記載の冷却部品。
【請求項4】 前記フィラーの含有率が60体積%以下である、請求項2または3に記載の冷却部品。
【請求項5】 前記金属系複合材料は、それを構成するマトリックスより高熱伝導性を有する請求項2〜4のいずれか記載の冷却部品。
【請求項6】 前記巻芯の一部には当該巻回型電気部品の巻回部材が巻かれ、その巻回部から延長する他の一部には放熱用のフィンまたはヒートシンクが取り付けられている、請求項2〜5のいずれかに記載の冷却部品。
【請求項7】 前記巻回型電気部品がコンデンサ素子または電池素子である、請求項2〜6のいずれかに記載の冷却部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−30975(P2000−30975A)
【公開日】平成12年1月28日(2000.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−201017
【出願日】平成10年7月16日(1998.7.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】