説明

凹凸シートの製造方法

【課題】耐環境性が高い凹凸シートを安価に製造できる凹凸シートの製造方法を提供する。
【解決手段】単位レンズ形状2aが形成されたレンズ層2を熱可塑性樹脂により作製する凹凸フィルム作製工程を設ける。これにより、微細な単位レンズ形状2aを容易に作成可能である。その後、熱可塑性樹脂により基材層1を作製するとともに、凹凸フィルム作製工程により作製されたレンズ層2を基材層1に対して熱ラミネートする基材シート作製工程とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンチキュラーレンズ等の凹凸形状が形成された凹凸シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンチキュラーレンズ形状等が形成されたレンズフィルムは、例えば、液晶表示装置のバックライトに使用する面光源装置等に用いられている。
このレンズフィルムは、比較的厚さの薄い物が多く、そのまま使用すると位置を正確に保持できず、平面性を確保できない等の理由から、レンズフィルムよりも厚さの厚い基材シート等に接合させて使用されている。従来、このようなレンズフィルムを基材シートに接合するには、接着剤を用いた接着が行われていた。
【0003】
しかし、レンズフィルムと基材シートとを接着するには、接着剤が必要であると共に、レンズフィルムと基材シートとの材質に差があることから、特に環境の変化によってカール(反り)が起こったり、接着面の剥離が起こったりするという問題があった。
また、製造工程が多くなるので、良品率の低下を招き、製造単価が上昇するという問題があった。
なお、レンズフィルムと基材シートとの接合を行わずに、初めから厚さの厚いレンズシートを形成しようとすると、押出し成型を用いた微細なレンズ形状の形成が困難であるという問題があった。この場合、製造が容易な押出し成型を利用できないことから、製造単価が上昇するという問題があった。
【0004】
特許文献1には、基材シートとエンボス加工したシートとを熱ラミネートする技術が開示されている。
しかし、特許文献1に記載の技術では、基材シートがトップロールとセンターロールとを過ぎた後に熱ラミネートを行っているので、基材シートとエンボス加工したシートとの間に気泡が混入したり、接合強度が不足したりするおそれがあった。
【特許文献1】特開平9−39189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐環境性が高い凹凸シートを安価に製造できる凹凸シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、少なくとも片面に光学的な作用を有する凹凸形状(2a,22a)が形成された凹凸フィルム(2,22)を熱可塑性樹脂により作製する凹凸フィルム作製工程と、熱可塑性樹脂により基材シート(1,21)を作製するとともに、前記凹凸フィルム作製工程により作製された凹凸フィルムを前記基材シートに対して熱ラミネートする基材シート作製工程と、を有する凹凸シート(10,20)の製造方法である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の凹凸シートの製造方法において、前記凹凸フィルム(2,22)の厚さは、0.5mm以下であること、を特徴とする凹凸シート(10,20)の製造方法である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の凹凸シートの製造方法において、製造される凹凸シート(10,20)の厚さは、1.5mm以上であること、を特徴とする凹凸シートの製造方法である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、前記凹凸フィルム(2,22)の材料である熱可塑性樹脂と、前記基材シート(1,21)の材料である熱可塑性樹脂とは、主成分が同一であること、を特徴とする凹凸シートの製造方法である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、前記基材シート作製工程は、前記基材シート(1,21)を成型する押出し成型工程と、前記押出し成型工程と同時又は直後に行われる前記凹凸フィルム(2,22)を前記基材シートに対して熱ラミネートする工程とを有すること、を特徴とする凹凸シート(10,20)の製造方法である。
請求項6の発明は、請求項5に記載の凹凸シートの製造方法において、前記基材シート作製工程で行われる熱ラミネートは、前記凹凸フィルム(2,22)の凹凸面をロール(R1)側に向けた状態で挿入することで行なわれること、を特徴とする凹凸シート(10,20)の製造方法である。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、前記凹凸フィルム作製工程は、押出し成型の工程であること、を特徴とする凹凸シート(10,20)の製造方法である。
請求項8の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、前記凹凸フィルム作製工程は、熱可塑性樹脂を素材とするベースフィルム上に光硬化型樹脂を用いて前記凹凸形状を形成する工程であること、を特徴とする凹凸シートの製造方法である。
請求項9の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、少なくとも前記基材シート(1,21)には、光拡散効果を有する粒子、及び/又は、紫外線吸収剤が添加されていること、を特徴とする凹凸シートの製造方法である。
請求項10の発明は、請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、前記凹凸形状(2a,22a)は、シート面に垂直な断面形状が同一断面形状を保ったまま第1の方向(A)に延在する形状であり、前記凹凸フィルム(2,22)は、前記第1の方向が、前記基材シート(1,21)を成型する押出し成型工程の押出し方向と同一方向となるように熱ラミネートされること、を特徴とする凹凸シート(10,20)の製造方法である。
請求項11の発明は、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、前記凹凸形状(2a,22a)は、レンチキュラーレンズ形状であること、を特徴とする凹凸シート(10,20)の製造方法である。
請求項12の発明は、請求項11に記載の凹凸シートの製造方法において、前記レンチキュラーレンズ形状(22a)に沿って着色層(22d)が形成されること、を特徴とする凹凸シート(20)の製造方法である。
請求項13の発明は、請求項11に記載の凹凸シートの製造方法において、シート面に対する法線方向から前記レンチキュラーレンズ形状(2a)に入射する光が集光する集光位置(2c)と厚さ方向の位置が略等しい位置であって、前記集光位置に近接する位置には、光を吸収する光吸収部(2b)が設けられること、を特徴とする凹凸シート(10)の製造方法である。
請求項14の発明は、請求項13に記載の凹凸シートの製造方法において、前記光吸収部(2b)は、前記凹凸フィルム(2)の前記レンチキュラーレンズ形状(2a)が形成されていない面に設けられること、を特徴とする凹凸シート(10)の製造方法である。
請求項15の発明は、請求項14に記載の凹凸シートの製造方法において、前記凹凸フィルム作製工程では、前記レンチキュラーレンズ形状(2a)を形成した後に、前記レンチキュラーレンズ形状が形成されていない面に光吸収層(3)を形成し、前記レンチキュラーレンズ形状を形成した側から略平行光を照射して前記集光位置に形成されている前記光吸収層を溶融、昇華、燃焼、削摩、爆融のいずれかの作用により除去して前記光吸収部(2b)のパターンを形成すること、を特徴とする凹凸シート(10)の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)凹凸シートの製造方法は、凹凸フィルムを熱可塑性樹脂により作製する凹凸フィルム作製工程と、熱可塑性樹脂により基材シートを作製するとともに、凹凸フィルム作製工程により作製された凹凸フィルムを基材シートに対して熱ラミネートする基材シート作製工程とを有するので、厚さが厚くなっても材質の異なる層を重ねた多層構造とする必要がなく、耐環境性が高い凹凸シートを安価に製造できる。
【0008】
(2)凹凸フィルムの厚さは、0.5mm以下であるので、押出し成型を用いた微細なレンズ形状の形成を行うことができる。
【0009】
(3)製造される凹凸シートの厚さは、1.5mm以上であるので、平面性を保つことができる。
【0010】
(4)凹凸フィルムの材料である熱可塑性樹脂と、基材シートの材料である熱可塑性樹脂とは、主成分が同一であるので、熱ラミネートによる接合性を高めることができる。
【0011】
(5)基材シート作製工程は、基材シートを成型する押出し成型工程と、押出し成型工程と同時又は直後に行われる凹凸フィルムを基材シートに対して熱ラミネートする工程とを有するので、基材シートの作製を容易に行いながら、効率よく熱ラミネートを行うことができる。
【0012】
(6)熱ラミネートは、前記凹凸フィルムの凹凸面をロール側に向けた状態で挿入することで行なわれるので、凹凸形状を維持して熱ラミネートをすることができる。
【0013】
(7)凹凸フィルム作製工程は、押出し成型の工程であるので、凹凸形状を容易に作製できる。
【0014】
(8)凹凸フィルム作製工程は、熱可塑性樹脂を素材とするベースフィルム上に光硬化型樹脂を用いて凹凸形状を形成する工程であるので、押出し成型が困難な凹凸形状であっても、凹凸形状を形成できる。
【0015】
(9)少なくとも基材シートには、光拡散効果を有する粒子、及び/又は、紫外線吸収剤が添加されているので、より高機能な凹凸シートを作製できる。
【0016】
(10)凹凸形状は、シート面に垂直な断面形状が同一断面形状を保ったまま第1の方向に延在する形状であり、凹凸フィルムは、第1の方向が、基材シートを成型する押出し成型工程の押出し方向と同一方向となるように熱ラミネートされるので、凹凸フィルムを押出しにより製造する工程に連続して熱ラミネートを行う工程を行うことができる。
【0017】
(11)凹凸形状は、レンチキュラーレンズ形状であるので、面光源装置や背面投射型スクリーン等に有用な凹凸シートを作製できる。
【0018】
(12)レンチキュラーレンズ形状に沿って着色層が形成されるので、凹凸シートの内面で反射を繰り返す不要な光を減光できる凹凸シートを作製できる。
【0019】
(13)シート面に対する法線方向からレンチキュラーレンズ形状に入射する光が集光する集光位置と厚さ方向の位置が略等しい位置であって、集光位置に近接する位置には、光を吸収する光吸収部が設けられるので、例えば、背面投射型スクリーンに使用された場合に、コントラストの高い映像を表示可能な凹凸シートを作製できる。
【0020】
(14)光吸収部は、凹凸フィルムのレンチキュラーレンズ形状が形成されていない面に設けられるので、光吸収部の形成を容易に行える。
【0021】
(15)凹凸フィルム作製工程では、レンチキュラーレンズ形状を形成した後に、レンチキュラーレンズ形状が形成されていない面に光吸収層を形成し、レンチキュラーレンズ形状を形成した側から略平行光を照射して集光位置に形成されている光吸収層を溶融、昇華、燃焼、削摩、爆融のいずれかの作用により除去して光吸収部のパターンを形成するので、光吸収部のパターンを精度よく、かつ、容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
耐環境性が高い凹凸シートを安価に製造するという目的を、凹凸フィルムを前記基材シートに対して熱ラミネートすることにより実現した。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の製造方法により作製したレンチキュラーレンズシートの実施例1を示す斜視図である。
なお、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用しているが、この使い分けには、技術的な意味が無いので、シート、板、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、光制御シートは、光制御板としてもよいし、光制御フィルムとしてもよい。ただし、特許請求の範囲の記載では、凹凸シートを製造する過程で作製されるフィルムを凹凸フィルムとして便宜上使い分けている。
【0024】
レンチキュラーレンズシート10は、基材層1と、レンズ層2とを有し、液晶表示装置を背面から証明するバックライトとして使用される面光源装置に組み込まれて使用されるものである。
基材層1は、耐衝撃性を有する熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂により形成され、厚さ2mmである。基材層1には、光拡散効果を有した拡散ビーズと、紫外線を吸収する紫外線吸収剤が添加されている。拡散ビーズが添加されていることにより、単位レンズ形状2aのレンズ効果が得られないA方向(後述)についても光拡散作用を有し、また、LCDパネル等と組み合わせられたときにモアレの発生を抑制できる。また、紫外線吸収剤が添加されることにより、耐光性を高めることができる。
基材層の厚さは、1.5mm以上であることが、50型以下の画面サイズを有した表示装置に使用した場合に、レンチキュラーレンズシート10の平面性を保つために望ましい。
【0025】
レンズ層2は、出射側に単位レンズ形状2aが形成されている。単位レンズ形状2aは、シート面に直交する図1中に示したB方向の断面形状が略楕円筒の一部形状となっており、同一断面形状を保ったままA方向に延在するとともに、B方向にピッチ0.05mmで並べて形成されている。ここで、シート面とは、レンチキュラーレンズシート10全体として見たときにおけるレンチキュラーレンズシート10の平面方向として定義される面を示すものであり、本実施例では、レンチキュラーレンズシート10の入射側の面と平行な面であり、特許請求の範囲及び以下の説明中において同一の定義として用いている。
【0026】
レンズ層2の入射側には、光吸収部2bと光透過部2cとがB方向において単位レンズ形状2aに対応して交互に並べて設けられている。光透過部2cは、レンズ層2の入射側の面であって、シート面に対する法線方向から単位レンズ形状2aに入射する平行光が集光する集光位置に設けられている。また、レンズ層2は、基材層1と同じ熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂により厚さ0.5mmに形成されている。
ここで、レンズ層2は、厚さを0.5mm以下とすることが、押出し成型により微細なレンズ形状を連続加工により形成するために望ましい。
【0027】
次に、本実施例のレンチキュラーレンズシート10の製造方法について説明する。
本実施例のレンチキュラーレンズシート10は、レンズ層2となる凹凸フィルムを予め作製し、基材層1となる基材シートを形成するときに凹凸フィルム(レンズ層2)を基材シート(基材層1)に接合して製造される。
なお、基材シートと基材層、及び、レンズ層と凹凸フィルムとは、接合されているか否かのみが異なるものであり、以下の説明では、これらを分けて説明する必要がある部分を除き、基材層1、及び、レンズ層2として説明を行う。
まず、レンズ層2となる凹凸フィルムを作製する凹凸フィルム作製工程を説明する。
図2は、レンズ層の製造工程を示す図である。
【0028】
(形状形成工程:図2(a))
まず、単位レンズ形状2aの形状の逆形状を持つダイ(金型)を用いて押出し成型により、単位レンズ形状2aを形成する。
レンズ層2の材料としては、アクリル樹脂の他に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂等からなる透明な樹脂を用いることができ、押出し成型の他に、プレス成形や射出成形、キャスティング成形等の手法により成形してもよい。
また、単位レンズ形状2aの形成は、熱可塑性樹脂によらずに、熱可塑性樹脂を素材とするベースフィルム上に紫外線硬化型樹脂や電離放射線硬化型樹脂等の光硬化型樹脂を塗布して、単位レンズ形状2aに対応した金型を用いて紫外線等を照射しながら成形する方法を用いてもよい。
次に、このようにして入射側に単位レンズ形状2aが形成されたレンズ層2の入射側に複数の光吸収部2bを形成する。本実施例では、この光吸収部2bの形成は、レーザ光を用いたレーザーアブレーションにより行った。以下、この説明を行う。
【0029】
(遮光層形成工程(図2(b)))
単位レンズ形状2aが形成されたレンズ層2の入射側に光吸収性を有する光吸収層3を形成する。なお、光吸収層3の形成は、ラミネートであってもよいし、印刷、塗布など、どのような方法であってもよい。
【0030】
(遮光層除去工程(図2(c)))
最後に、単位レンズ形状2a側からレーザ光を照射することによって、単位レンズ形状2aによる屈折作用に基づく光透過部2cに対応する位置の光吸収層3を溶融、昇華、燃焼、爆融、削摩等のアブレーションにより除去し、光透過部2c以外の部分に対応する位置にある光吸収層3のみを残して光吸収部2bとし、レンズ層2となる凹凸フィルムが完成する。完成した凹凸フィルムは、ロール状に巻き取られる。
【0031】
次に、基材層1となる基材シートの形成と、基材シート(基材層1)に対して凹凸フィルム(レンズ層2)の接合を行う基材シート作製工程を行う。
図3は、基材層の作製工程を示す図である。
基材層の作製工程に使用する装置には、ダイスD,第1ローラR1,第2ローラR2,第3ローラR3,補助ローラR4,R5が設けられている。
ダイスDから押出されてシート状に形成された基材層1は、第1ローラR1と第2ローラR2との間を通過しながら第2ローラR2の表面に沿って進む。このとき、第1ローラR1と第2ローラR2との間にレンズ層2が、光吸収部2bが形成されている面が基材層1に接触する方向、すなわち、単位レンズ形状2aが形成されている面が第1ロールR1側となる方向で、第1ロールR1と第2ロールR2との間に挿入される。
【0032】
このとき、基材層1は、押出し成型によりダイスDから押出された直後であるから、加熱された状態にあり、また、レンズ層2は、第1ローラR1と第2ローラR2との間に到達するまでに不図示のヒータ等により十分に加熱されている。したがって、基材シート(基材層1)が未だ溶融状態において凹凸フィルム(レンズ層2)が挿入されることとなり、基材シート(基材層1)と凹凸フィルム(レンズ層2)とは、第1ローラR1と第2ローラR2との間で気泡が発生することなく、熱ラミネートされ、また、熱ラミネート後の接合強度を高くできる。
光吸収部2bが形成されていない光透過部2cは、基材層1と同一材料により形成されているので、基材層1と良好な熱ラミネーションが可能である。
【0033】
ここで、PETフィルムに紫外線硬化型樹脂でレンチキュラーレンズ形状を形成した後、2mmのアクリル板に接着剤を用いて作製した比較例を用意し、本実施例のレンチキュラーレンズシート10と耐環境性を比較した。いずれもサイズが50型(縦763mm、横1018mm)で、温度40℃、湿度90%中に24時間放置した後の最大の反り量(シート中央を基準とし、その位置から最も離れた端部のシート中央における法線方向の凸(凹)量)を比較した。
比較例では、最大100mmの反りが発生した。
これに対して、本実施例では、最大で20mmの反りであり、比較例に比べて耐環境性が大幅に向上している。
本実施例によれば、厚さが厚いにも関わらず、材質の異なる層を重ねた多層構造とする必要がなく、耐環境性が高いレンチキュラーレンズシートを安価に製造できる。
【実施例2】
【0034】
図4は、本発明の製造方法により作製したレンチキュラーレンズシートの実施例2を示す斜視図である。
実施例2のレンチキュラーレンズシート20は、単位レンズ形状22aに素って着色層22dが形成されている点が、実施例1のレンチキュラーレンズシート10と異なるものである。したがって、前述した実施例1と同様の機能を果たす部分には、末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0035】
レンズ層22は、厚さが0.15mmであり、その内で着色層22dの厚さは、0.015mmとなるように、ポリカーボネイト樹脂により2層押出し成型により作製されている。着色層22dは、単位レンズ形状22aの表面付近を内面反射しながら進む不要な光を減少させる作用を有している。
基材層21は、ポリカーボネイト樹脂により厚さ2.85mmに形成されている。
本実施例のレンチキュラーレンズシート20は、実施例1のレンチキュラーレンズシート20と異なり、光吸収部を有していない。したがって、光吸収部を形成する工程が不要となるので、本実施例では、レンズ層22を作製する押出し工程と、基材層21を作製しながらレンズ層22を熱ラミネートする工程とを、インラインで接続し、これらの工程が連続的に行われるようにした。このとき、単位レンズ形状22aが延在する方向が、基材層21の押出し方向と同一方向に成型中のレンズ層22が進む方向となるようにすれば、上述した連続的な製造を行える。
【0036】
本実施例のレンチキュラーレンズシート20を、上述した実施例1の場合と同様に、サイズ50型(縦763mm、横1018mm)とし、温度40℃、湿度90%中に24時間放置した後の最大の反り量は、10mmであり、上述した実施例1及び比較例と比べてさらに耐環境性が向上している。
本実施例によれば、さらに耐環境性が高いレンチキュラーレンズシートを安価に製造できる。
【0037】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)各実施例において、面光源装置に使用されるレンチキュラーレンズシートを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、背面投射型スクリーンに使用される凹凸シートであってもよいし、その他の用途で使用される凹凸シートでもよい。
【0038】
(2)各実施例において、レンチキュラーレンズシートには、1種類の単位レンズ形状が出射側に並べられている例を示したが、これに限らず、例えば、複数種類の単位光学形状を組み合わせて出射側に配置してもよい。
【0039】
(3)各実施例において、レンチキュラーレンズシートの単位レンズ形状は、楕円筒の一部形状を有している例を示したが、これに限らず、例えば、断面形状が直角二等辺三角形等のプリズム形状の凹凸形状としてもよいし、断面形状を対称形状とせずに非対称の断面形状としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の製造方法により作製したレンチキュラーレンズシートの実施例1を示す斜視図である。
【図2】レンズ層の製造工程を示す図である。
【図3】基材層の作製工程を示す図である。
【図4】本発明の製造方法により作製したレンチキュラーレンズシートの実施例2を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1,21 基材層(基材シート)
2,22 レンズ層(凹凸フィルム)
2a,22a 単位レンズ形状
2b 光吸収部
2c 光透過部
22d 着色層
3 光吸収層
10,20 レンチキュラーレンズシート
D ダイス
R1 第1ローラ
R2 第2ローラ
R3 第3ローラ
R4,R5 補助ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に光学的な作用を有する凹凸形状が形成された凹凸フィルムを熱可塑性樹脂により作製する凹凸フィルム作製工程と、
熱可塑性樹脂により基材シートを作製するとともに、前記凹凸フィルム作製工程により作製された凹凸フィルムを前記基材シートに対して熱ラミネートする基材シート作製工程と、
を有する凹凸シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記凹凸フィルムの厚さは、0.5mm以下であること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の凹凸シートの製造方法において、
製造される凹凸シートの厚さは、1.5mm以上であること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記凹凸フィルムの材料である熱可塑性樹脂と、前記基材シートの材料である熱可塑性樹脂とは、主成分が同一であること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記基材シート作製工程は、前記基材シートを成型する押出し成型工程と、
前記押出し成型工程と同時又は直後に行われる前記凹凸フィルムを前記基材シートに対して熱ラミネートする工程とを有すること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記基材シート作製工程で行われる熱ラミネートは、前記凹凸フィルムの凹凸面をロール側に向けた状態で挿入することで行なわれること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記凹凸フィルム作製工程は、押出し成型の工程であること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記凹凸フィルム作製工程は、熱可塑性樹脂を素材とするベースフィルム上に光硬化型樹脂を用いて前記凹凸形状を形成する工程であること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、
少なくとも前記基材シートには、光拡散効果を有する粒子、及び/又は、紫外線吸収剤が添加されていること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項10】
請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記凹凸形状は、シート面に垂直な断面形状が同一断面形状を保ったまま第1の方向に延在する形状であり、
前記凹凸フィルムは、前記第1の方向が、前記基材シートを成型する押出し成型工程の押出し方向と同一方向となるように熱ラミネートされること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記凹凸形状は、レンチキュラーレンズ形状であること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記レンチキュラーレンズ形状に沿って着色層が形成されること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の凹凸シートの製造方法において、
シート面に対する法線方向から前記レンチキュラーレンズ形状に入射する光が集光する集光位置と厚さ方向の位置が略等しい位置であって、前記集光位置に近接する位置には、光を吸収する光吸収部が設けられること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記光吸収部は、前記凹凸フィルムの前記レンチキュラーレンズ形状が形成されていない面に設けられること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の凹凸シートの製造方法において、
前記凹凸フィルム作製工程では、前記レンチキュラーレンズ形状を形成した後に、前記レンチキュラーレンズ形状が形成されていない面に光吸収層を形成し、前記レンチキュラーレンズ形状を形成した側から略平行光を照射して前記集光位置に形成されている前記光吸収層を溶融、昇華、燃焼、削摩、爆融のいずれかの作用により除去して前記光吸収部のパターンを形成すること、
を特徴とする凹凸シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−65143(P2008−65143A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244263(P2006−244263)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】