説明

出射集光ユニット

【課題】取り扱いが容易であって高精度の加工が可能なレーザ光照射装置を提供する。
【解決手段】中空部23を有する中空光ファイバ20は、入射端21に入射ユニット40が設けられ、出射端22に出射集光ユニット50が設けられている。中空光ファイバ20の出射側22に固定された固定部51に光出射部52が嵌合された状態において、中空光ファイバ20,固定部51および光出射部52により囲まれる内部空間は、中空光ファイバ20の出射端22における中空部23の開口を除いて閉じている。入射ユニット40から中空光ファイバ20を経て出射集光ユニット50に到るまでの内部空間は、排気手段60により排気される。レーザ光源10から出力されたレーザ光は、中空光ファイバ20の入射端21に入射し中空部23を導光し出射端22から出射されて、光出射部52が有する集光手段としての窓53により外部で集光される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工用途等に用いられ得るレーザ光照射装置、および、このレーザ光照射装置においてレーザ光の出射および集光に好適に用いられ得る出射集光ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工用途等に用いられ得るレーザ光照射装置は、例えば、フェムト秒レーザ光源等から出力された高パワーのレーザ光を、光ファイバ等の導光手段により導光し、その導光手段の出射端から出射して照射対象物に集光照射する。
【0003】
特許文献1に記載された装置は、Qスイッチを有するレーザ光源から出力されたジャイアントパルスのレーザ光を、複数の中空ミラージョイントが連結されて構成される導光手段により導光して、その導光手段の先端に設けられたハンドピースから出射する。また、導光手段の内部の集光点近傍を真空化することにより、その集光点におけるエアーブレークダウンを防止または抑制して、予定したレベルで安定してレーザ光を照射対象物に照射することを意図している。
【0004】
非特許文献1に記載された装置は、Qスイッチを有するNd:YAGレーザ光源から出力されたレーザ光を、長手方向に沿って中空部を有する中空光ファイバにより導光し、その中空光ファイバの先端から出射する。また、中空光ファイバの中空部を真空化することにより、その中空部におけるエアーブレークダウンを防止または抑制している。
【0005】
非特許文献2に記載された装置は、Tiサファイア・フェムト秒レーザ光源から出力されたレーザ光を、長手方向に沿って中空部を有する中空光ファイバにより導光し、その中空光ファイバの先端から出射する。なお、この文献は、装置構成についての説明が充分で無く、中空光ファイバの中空部を真空化する旨の記載が無い。
【特許文献1】特開平6−277227号公報
【非特許文献1】S.Sato, et al., "Vacuum-cored hollow waveguide for transmission of high-energy,nanosecond Nd:YAG laser pulses and its application to biological tissueablation", Optics Letters, Vol.25, No.1, pp.49-51 (2000)
【非特許文献2】Y.Matsuura, et al., "Delivery of femtosecond pulses by flexible hollowfibers", Journal of Applied Physics, Vol.91, No.2, pp.887-889 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の各文献に記載された装置は以下のような問題点を有している。特許文献1に記載された装置では、複数の中空ミラージョイントが連結されて構成される導光手段は、大掛かりで可撓性を有しておらず、取り扱いが容易で無い。また、導光手段の内部の集光点近傍を真空化することに着眼しており、大気圧下にある照射対象物に対してレーザ光を集光照射することができず、したがって、照射対象物に対して高精度の加工をすることができない。
【0007】
非特許文献1に記載された装置では、導光手段として用いられる中空光ファイバは、軽量で可撓性を有していることから、この点では取り扱いが容易である。また、大気圧下にある照射対象物に対してレーザ光を集光照射することを意図している。しかし、中空光ファイバの先端を動かすと、光軸がずれてしまい、この点では取り扱いが容易で無い。また、中空光ファイバの先端からレーザ光が照射対象物に到達するまで、そのレーザ光は多くの媒質を透過するので、照射対象物に照射されるレーザ光のパルス幅が広がって、照射対象物の加工の精度が劣化する場合がある。非特許文献2に記載された装置は、上述したように構成が明確で無い。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、取り扱いが容易であって高精度の加工が可能なレーザ光照射装置、および、このようなレーザ光照射装置においてレーザ光の出射および集光に好適に用いられ得る出射集光ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る出射集光ユニットは、長手方向に沿って中空部を有する中空光ファイバの一端側に設けられ該一端から出射される光を集光する出射集光ユニットであって、(1) 中空光ファイバの一端側における側面に固定される固定部と、(2) 中空光ファイバの一端を覆うように設けられて固定部に対して嵌合され、中空光ファイバの一端から出射される光または当該出射光に基づいて内部で発生する光を外部で集光させる集光手段を有する光出射部と、を備えることを特徴とする。更に、本発明に係る出射集光ユニットは、中空光ファイバの一端側に固定された固定部に光出射部が嵌合された状態において、中空光ファイバ,固定部および光出射部により囲まれる内部空間が、中空光ファイバの一端における中空部の開口を除いて閉じていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るレーザ光照射装置は、(1) レーザ光を出力するレーザ光源と、(2) 入射端と出射端との間に長手方向に沿って中空部を有し、レーザ光源から出力されたレーザ光を入射端に入力し、その入力したレーザ光を中空部により導光して、その導光したレーザ光を出射端から出射する中空光ファイバと、(3) レーザ光源から出力されたレーザ光を中空光ファイバの入射端に入射させる入射光学系と、(4) 中空光ファイバの入射端を覆うように設けられた入射ユニットと、(5) 中空光ファイバの出射端側に設けられ、中空光ユニットの出射端から出射された光を外部で集光する上記の本発明に係る出射集光ユニットと、(6) 入射ユニットから中空光ファイバを経て出射集光ユニットに到るまでの内部空間を排気する排気手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るレーザ光照射装置では、入射端と出射端との間に長手方向に沿って中空部を有する中空光ファイバは、その入射端に入射ユニットが設けられ、その出射端に本発明に係る出射集光ユニットが設けられている。出射集光ユニットには固定部および光出射部が含まれ、中空光ファイバの出射端側に固定された固定部に光出射部が嵌合された状態において、中空光ファイバ,固定部および光出射部により囲まれる内部空間は、中空光ファイバの出射端における中空部の開口を除いて閉じている。そして、入射ユニットから中空光ファイバを経て出射集光ユニットに到るまでの内部空間は、排気手段により排気される。レーザ光源から出力されたレーザ光は、入射光学系および入射ユニットを経て中空光ファイバの入射端に入射し、この中空光ファイバの中空部を導光して出射端から出射される。中空光ファイバの出射端から出射されたレーザ光は、出射集光ユニットの光出射部が有する集光手段により、出射集光ユニットの外部で集光される。
【0012】
本発明に係る出射集光ユニットでは、固定部に対して光出射部が着脱自在に嵌合されるのが好適である。この場合には、中空光ファイバに固定部を固定したままで光出射部を着脱することができるので、異なる仕様の光出射部と交換することも可能である。
【0013】
本発明に係る出射集光ユニットでは、光出射部は、中空光ファイバの一端から出射される光が到達する位置に該光を透過させる窓を有し、集光手段は、窓に形成されたレンズを含むのが好適である。この場合には、中空光ファイバの一端から出射された光は、光出射部の窓を透過するとともに、その窓に形成されたレンズにより集光される。
【0014】
本発明に係る出射集光ユニットでは、光出射部は、中空光ファイバの一端から出射される光を透過させる窓を有し、集光手段は、内部空間に設けられ、中空光ファイバの一端から出射される光を反射させて窓に透過させる凹面ミラーを含むのが好適である。この場合には、中空光ファイバの一端から出射された光は、内部空間に設けられた凹面ミラーにより反射され、光出射部の窓を透過して、外部で集光される。
【0015】
本発明に係る出射集光ユニットは、光出射部から外部への光の出射および遮断を制御するシャッタを更に備えるのが好適である。この場合には、中空光ファイバの一端から出射された光は、シャッタにより遮断されることにより、出射集光ユニットの外部へ出射されない。これにより、用途に応じて安全が図られる。
【0016】
本発明に係る出射集光ユニットは、内部空間に設けられ、中空光ファイバの一端から出射される光を入力し、この光の波長と異なる波長の光を発生する非線形光学素子を更に備え、集光手段が、非線形光学素子で発生する光を外部で集光させるのが好適である。この場合には、中空光ファイバの一端から出射された光は、内部空間に設けられた非線形光学素子に入射して、この入射した光の波長と異なる波長の光が非線形光学素子で発生する。非線形光学素子で発生した新たな波長の光は、光出射部が有する集光手段により、出射集光ユニットの外部で集光される。
【0017】
本発明に係る出射集光ユニットは、内部空間に設けられ、中空光ファイバの一端から出射される光を入力し、この光を波長分岐して出力する波長分岐素子を更に備え、集光手段が、波長分岐素子により波長分岐されて出力される各波長の光を外部で波長に応じた位置に集光させるのが好適である。この場合には、中空光ファイバの一端から出射された光は、内部空間に設けられた波長分岐素子により波長分岐され、この波長分岐された各波長の光は、光出射部が有する集光手段により、出射集光ユニットの外部で波長に応じた位置に集光される。
【0018】
本発明に係るレーザ光照射装置では、中空光ファイバの中空部の内壁面が金属メッキされているのが好適である。この場合には、中空光ファイバの中空部を光は低損失で導光することができる。
【0019】
本発明に係るレーザ光照射装置では、排気手段は、入射ユニットに接続された排気管を介して内部空間を排気するのが好適である。この場合には、中空光ファイバの入射端の部分は移動が制限されるものの、中空光ファイバの出射端の部分は移動が自由であるので、中空光ファイバの出射端から出射されるレーザ光の集光照射位置を任意に変更することが容易である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るレーザ光照射装置は、取り扱いが容易であって、高精度の加工が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本実施形態に係るレーザ光照射装置1の構成図である。同図(a)は側面図であり、同図(b)は要部断面図である。この図に示されるレーザ光照射装置1は、レーザ光源10、中空光ファイバ20、入射光学系30、入射ユニット40、出射集光ユニット50、排気手段60および移動手段70を備える。
【0023】
レーザ光源10は、照射対象物に照射すべきレーザ光を出力するものであり、例えばフェムト秒レーザ光源であるのが好適である。中空光ファイバ20は、入射端21と出射端22との間に長手方向に沿って中空部23を有し、レーザ光源10から出力されたレーザ光を入射端21に入力し、その入力したレーザ光を中空部23により導光して、その導光したレーザ光を出射端22から出射する。この中空光ファイバ20は、石英ガラスからなる細径のものであって、軽量で可撓性を有している。また、中空光ファイバ20は、効率よく導光するために、中空部23の内壁面が金属メッキされているのが好適である。
【0024】
中空光ファイバ20の入射端21の側に入射光学系30および入射ユニット40が設けられている。入射光学系30は、レーザ光源10から出力されたレーザ光を中空光ファイバ20の入射端21に集光入射させる。入射ユニット40は、中空光ファイバ20の入射端21を覆うように設けられている。なお、入射光学系30と入射ユニット40とは一体のものであってもよく、例えば、出射集光ユニット50の如く入射ユニット40の入射窓が集光機能を有していてもよい。中空光ファイバ20の出射端22の側に出射集光ユニット50が設けられている。出射集光ユニット50は、中空光ユニット20の出射端22から出射された光を外部で集光するものであり、固定部51および光出射部52を含む。
【0025】
排気手段60は、入射ユニット40から中空光ファイバ20を経て出射集光ユニット50に到るまでの内部空間を排気する。排気手段60は真空ポンプ61および排気管62を有する。真空ポンプ61は、例えばロータリポンプであり、排気管62を介して入射ユニット40と接続されている。移動手段70は、中空光ファイバ20の出射端22の側に設けられた出射集光ユニット50の位置を移動させるものである。出射端22における中空光ファイバ20の光軸に垂直な1方向または2方向に出射集光ユニット50の位置を移動させる。
【0026】
図2は、本実施形態に係る出射集光ユニット50の断面図である。この図は、出射集光ユニット50に加えて中空光ファイバ20の出射端22の近傍をも示しており、出射端22の近傍における中空光ファイバ20の中心軸を含む断面を示している。出射集光ユニット50は固定部51および光出射部52を含む。
【0027】
固定部51は、中空光ファイバ20の出射側22側における側面に接着剤により密着して固定される。光出射部52は、中空光ファイバ20の出射端22を覆うように設けられて固定部51に対して嵌合される。固定部51と光出射部52との嵌合部は、接着剤により接合されていてもよい。また、固定部51と光出射部52との嵌合部には、Oリング53が設けられ、或いは、シリコーンシーラント等のオイルが充填されていて、固定部51に対して光出射部52が着脱自在に嵌合されるのが好適である。
【0028】
中空光ファイバ20の出射端22側に固定された固定部51に光出射部52が嵌合された状態において、中空光ファイバ20,固定部51および光出射部52により囲まれる内部空間は、中空光ファイバ20の出射端22における中空部23の開口を除いて閉じている。これにより、排気手段60により中空光ファイバ20の入射端21の側から中空部23内が排気されると、中空光ファイバ20,固定部51および光出射部52により囲まれる内部空間も排気される。また、この内部空間が排気されることにより、固定部51に対して光出射部52が密着して固定され、内部空間が真空とされる。
【0029】
光出射部52は、中空光ファイバ20の出射端22から出射される光を外部で集光させる集光手段を有する。この集光手段としては種々の態様が可能である。図2中に示された光出射部52は、中空光ファイバ20の出射端22から出射される光が到達する位置に窓54を有する。この窓54は光を透過させ、また、この窓54に形成されたレンズが集光手段として作用する。集光レンズ作用を奏する窓54は、レーザ光源10から出力されるレーザ光の波長において吸収が小さい材料からなり、例えば石英ガラスからなるのが好適である。また、この窓54の両面に反射率低減膜が形成されているのも好適である。
【0030】
さらに、集光レンズ作用を奏する窓54と中空光ファイバ20の出射端22との間の距離および窓54の径は、中空光ファイバ20のNAに応じた拡がり角で出射端22から発散して出射された光の全てが窓54の広い範囲に入射するように設計されているのが好ましい。このように設計されていることにより、中空光ファイバ20の出射端22から出射された光は、集光レンズ作用を奏する窓54により、高効率に且つ微小径に集光され得る。
【0031】
本実施形態に係るレーザ光照射装置1は以下のように動作する。入射端21と出射端22との間に長手方向に沿って中空部23を有する中空光ファイバ20は、その入射端21に入射ユニット40が設けられ、その出射端22に出射集光ユニット50が設けられている。出射集光ユニット50には固定部51および光出射部52が含まれ、中空光ファイバ20の出射側22に固定された固定部51に光出射部52が嵌合された状態において、中空光ファイバ20,固定部51および光出射部52により囲まれる内部空間は、中空光ファイバ20の出射端22における中空部23の開口を除いて閉じている。
【0032】
そして、入射ユニット40から中空光ファイバ20を経て出射集光ユニット50に到るまでの内部空間は、排気手段60により排気される。レーザ光源10から出力されたレーザ光は、入射光学系30および入射ユニット40を経て中空光ファイバ20の入射端21に入射し、この中空光ファイバ20の中空部23を導光して出射端22から出射される。中空光ファイバ20の出射端22から出射されたレーザ光は、出射集光ユニット50の光出射部52が有する集光手段としての窓53により、出射集光ユニット50の外部で集光される。
【0033】
本実施形態に係るレーザ光照射装置1は、レーザ光源10から出力されたレーザ光を導光する導光手段として軽量で可撓性を有している中空光ファイバ20を用いていることから、取り扱いが容易である。また、このレーザ光照射装置1は、中空光ファイバ20の出射端22側に上記のような出射集光ユニット50を備えることにより、大気圧下にある照射対象物に対してレーザ光を集光照射することができ、したがって、照射対象物に対して高精度の加工をすることができる。また、中空光ファイバ20の出射端22側に固定される出射集光ユニット50の窓54が集光レンズ作用を奏することから、中空光ファイバ20の先端を移動手段70により移動させても光軸がずれることがなく、この点でも取り扱いが容易である。さらに、中空光ファイバ20の出射端22からレーザ光が照射対象物に到達するまで、そのレーザ光は窓54を透過するのみであるので、照射対象物に照射されるレーザ光のパルス幅の拡大が抑制され、照射対象物の加工精度の劣化が抑制される。このように、本実施形態に係るレーザ光照射装置1は、取り扱いが容易であって、高精度の加工が可能である。
【0034】
また、本実施形態に係るレーザ光照射装置1は、固定部51に対して光出射部52が着脱自在に嵌合され得ることにより、以下のような効果をも奏することができる。すなわち、排気手段60により内部空間を排気して真空にすることにより、固定部51に対して光出射部52を密着させて固定することができる。一方、排気手段60による排気を止めて内部空間を大気圧にすることにより、固定部材51から光出射部52を容易に取り外すことができ、また、取り外した光出射部52に替えて他の光出射部52を固定部材51に嵌合させることができる。光出射部52の形状を固定部材51に対して嵌合が可能な形状としておきさえすれば、任意の光出射部52を固定部材51に嵌合させることができる。
【0035】
したがって、用途に応じて、中空光ファイバ20の出射端22と窓54との間の距離や窓54の焦点距離を選択して、窓54と集光点との間の距離や集光径を適切に設定することができる。しかも、光出射部52を固定部51に対して複数回の着脱を繰り返したとしても、嵌合時の光出射部52と固定部51との間の相対的位置関係(すなわち、中空光ファイバ20の出射端22と窓54との相対的位置関係)は、常に設計どおりの良好なものとなる。さらに、窓54に種々の形態のレンズ(例えばシリンドリカルレンズやマイクロレンズアレイ等)を形成した光出射部52を用意しておくことにより、用途に応じて集光形態(例えば線状や多点に集光)を容易に選択することができる。
【0036】
なお、本発明に係る出射集光ユニットは、上記実施形態のものに限られることなく、他の実施形態のものであってもよい。以下では、本発明に係る出射集光ユニットの他の実施形態について、図3〜図6を参照して説明する。
【0037】
図3に断面図が示された出射集光ユニット50Aは、図2に示された構成と比較すると、光出射部52Aの内部空間に設けられた凹面ミラー55を更に備えている点で相違し、また、光出射部52Aの側面に窓54Aが設けられている点で相違する。凹面ミラー55は、中空光ファイバ22の出射端22から出射される光を反射させて窓54Aに透過させる。したがって、中空光ファイバ22の出射端22から出射された光は、内部空間に設けられた凹面ミラー55により反射され、光出射部52Aの窓54Aを透過して、外部で集光される。
【0038】
図4に断面図が示された出射集光ユニット50Bは、図2に示された構成と比較すると、シャッタ56を更に備えている点で相違する。シャッタ56は、図中の点線を軸として回転することで、光出射部52から外部への光の出射(同図(a))および遮断(同図(b))を制御する。したがって、中空光ファイバ20の出射端22から出射された光は、シャッタ56により遮断されることにより、出射集光ユニット50の外部へ出射されない。これにより、用途に応じて安全が図られる。
【0039】
図5に断面図が示された出射集光ユニット50Cは、図2に示された構成と比較すると、光出射部52の内部空間に設けられた非線形光学素子57を更に備えている点で相違する。非線形光学素子57は、中空光ファイバ20の出射端22から出射される光を入力し、この光の波長と異なる波長の光を発生する。窓54は、非線形光学素子57で発生する光を外部で集光させる。非線形光学素子57における波長変換効率は入射光強度に依存するので、中空光ファイバ20の出射端22の直近に非線形光学素子57を配置するのが好ましく、或いは、中空光ファイバ20の出射端22と非線形光学素子57との間に集光光学系を配置するのも好ましい。非線形光学素子57は、高次高調波に変換する非線形結晶や、テラヘルツ波を発生させる素子を用いることができる。
【0040】
図6に断面図が示された出射集光ユニット50Dは、図2に示された構成と比較すると、光出射部52の内部空間に設けられた波長分岐素子としてのグレーティング58およびミラー59を更に備えている点で相違する。グレーティング58は、中空光ファイバ20の出射端22から出射される光を入力し、この光を波長分岐して出力する。ミラー59は、グレーティング58により波長分岐された光を窓54へ向けて反射する。窓54は、グレーティング58により波長分岐されミラー59により反射された各波長の光を外部で波長に応じた位置に集光させる。なお、波長分岐された光のうち特定波長の光を選択的に出力するアパーチャや光フィルタを更に備えるのも好適である。
【0041】
なお、上記実施形態において、中空光ファイバ20は、石英ガラスを主成分とするものとしたが、これに限定されない。また、コアが中空でクラッドが周期構造を持つフォトニッククリスタルファイバを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係るレーザ光照射装置1の構成図である。
【図2】本実施形態に係る出射集光ユニット50の断面図である。
【図3】他の実施形態に係る出射集光ユニット50Aの断面図である。
【図4】他の実施形態に係る出射集光ユニット50Bの断面図である。
【図5】他の実施形態に係る出射集光ユニット50Cの断面図である。
【図6】他の実施形態に係る出射集光ユニット50Dの断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…レーザ光照射装置、10…レーザ光源、20…中空光ファイバ、21…入射端、22…出射端、23…中空部、30…入射光学系、40…入射ユニット、50…出射集光ユニット、51…固定部、52…光出射部、53…Oリング、54…窓、55…凹面ミラー、56…シャッタ、57…非線形光学素子、58…グレーティング、59…ミラー、60…排気手段、61…真空ポンプ、62…排気管、70…移動手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って中空部を有する中空光ファイバの一端側に設けられ該一端から出射される光を集光する出射集光ユニットであって、
前記中空光ファイバの一端側における側面に固定される固定部と、
前記中空光ファイバの一端を覆うように設けられて前記固定部に対して嵌合され、前記中空光ファイバの一端から出射される光または当該出射光に基づいて内部で発生する光を外部で集光させる集光手段を有する光出射部と、
を備え、
前記中空光ファイバの一端側に固定された前記固定部に前記光出射部が嵌合された状態において、前記中空光ファイバ,前記固定部および前記光出射部により囲まれる内部空間が、前記中空光ファイバの一端における中空部の開口を除いて閉じている、
ことを特徴とする出射集光ユニット。
【請求項2】
前記固定部に対して前記光出射部が着脱自在に嵌合されることを特徴とする請求項1記載の出射集光ユニット。
【請求項3】
前記光出射部が、前記中空光ファイバの一端から出射される光が到達する位置に該光を透過させる窓を有し、
前記集光手段が、前記窓に形成されたレンズを含む、
ことを特徴とする請求項1記載の出射集光ユニット。
【請求項4】
前記光出射部が、前記中空光ファイバの一端から出射される光を透過させる窓を有し、
前記集光手段が、前記内部空間に設けられ、前記中空光ファイバの一端から出射される光を反射させて前記窓に透過させる凹面ミラーを含む、
ことを特徴とする請求項1記載の出射集光ユニット。
【請求項5】
前記光出射部から外部への光の出射および遮断を制御するシャッタを更に備えることを特徴とする請求項1記載の出射集光ユニット。
【請求項6】
前記内部空間に設けられ、前記中空光ファイバの一端から出射される光を入力し、この光の波長と異なる波長の光を発生する非線形光学素子を更に備え、
前記集光手段が、前記非線形光学素子で発生する光を外部で集光させる、
ことを特徴とする請求項1記載の出射集光ユニット。
【請求項7】
前記内部空間に設けられ、前記中空光ファイバの一端から出射される光を入力し、この光を波長分岐して出力する波長分岐素子を更に備え、
前記集光手段が、前記波長分岐素子により波長分岐されて出力される各波長の光を外部で波長に応じた位置に集光させる、
ことを特徴とする請求項1記載の出射集光ユニット。
【請求項8】
レーザ光を出力するレーザ光源と、
入射端と出射端との間に長手方向に沿って中空部を有し、前記レーザ光源から出力されたレーザ光を前記入射端に入力し、その入力したレーザ光を前記中空部により導光して、その導光したレーザ光を前記出射端から出射する中空光ファイバと、
前記レーザ光源から出力されたレーザ光を前記中空光ファイバの前記入射端に入射させる入射光学系と、
前記中空光ファイバの前記入射端を覆うように設けられた入射ユニットと、
前記中空光ファイバの前記出射端側に設けられ、前記中空光ユニットの前記出射端から出射された光を外部で集光する請求項1〜7の何れか1項に記載の出射集光ユニットと、
前記入射ユニットから前記中空光ファイバを経て前記出射集光ユニットに到るまでの内部空間を排気する排気手段と、
を備えることを特徴とするレーザ光照射装置。
【請求項9】
前記中空光ファイバの前記中空部の内壁面が金属メッキされていることを特徴とする請求項8記載のレーザ光照射装置。
【請求項10】
前記排気手段が、前記入射ユニットに接続された排気管を介して前記内部空間を排気する、ことを特徴とする請求項8記載のレーザ光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−148288(P2007−148288A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346143(P2005−346143)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人 科学技術振興機構、地域結集型共同研究事業、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503304577)財団法人光科学技術研究振興財団 (11)
【Fターム(参考)】