説明

分光装置

【課題】集光レンズ内における反射によるフレア光のスペクトル列への混入を防止して、スペクトル列を精度よく検出する。
【解決手段】光を波長毎に分離してスペクトル列を生成する波長分割手段と、該波長分割手段により分離された光Lを所定の面内に集光する集光レンズ5と、該集光レンズ5の焦点面に配置され、波長毎に分離された光Lのうち、所定の波長帯域の光Lを選択する波長選択手段6とを備え、波長分割手段から集光レンズ5までの光軸Pが、集光レンズ5の光軸Pに対して、スペクトル列の配列方向に交差する方向に平行間隔をあけて配置されている分光装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試料から発せられた検出光を波長領域毎にスペクトル分解し、分解されたスペクトル光を結像レンズによって集光し、検出すべきスペクトル成分を可動スリットによって選択し、選択されたスペクトル成分を光検出器により検出する顕微鏡が知られている。
この顕微鏡においては、揺動可能なグレーティングのようなスペクトル分解手段によってスペクトル分解されたスペクトル光の光軸と、該スペクトル光を結像させる集光レンズと光検出器との間の光軸とが一致するように配置されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−234281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スペクトル分解されたスペクトル光の光軸と、該スペクトル光を結像させる集光レンズ・光検出器間の光軸とが一致する場合、集光レンズにその光軸上に入射したスペクトル光は、集光レンズ内において光軸上で内面反射を1回以上繰り返し、光軸に沿って出射される。この場合の反射光の集光位置は、集光レンズにおいて内面反射することなく集光された光の集光位置に対して光軸方向にずれた位置となるため、光検出器により検出されるスペクトル成分に結像レンズ内において反射した光がフレア光として混入するという不都合が発生する。その結果、特定のスペクトル成分の強度のみが増大してしまい、スペクトル列を精度よく検出することができないという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、集光レンズ内における反射によるフレア光のスペクトル列への混入を防止して、スペクトル列を精度よく検出することができる分光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、光を波長毎に分離してスペクトル列を生成する波長分割手段と、該波長分割手段により分離された光を所定の面内に集光する集光レンズと、該集光レンズの焦点面に配置され、波長毎に分離された光のうち、所定の波長帯域の光を選択する波長選択手段とを備え、前記波長分割手段から前記集光レンズまでの光軸が、前記集光レンズの光軸に対して、前記スペクトル列の配列方向に交差する方向に平行間隔をあけて配置されている分光装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、波長分割手段により波長毎に分離されて生成されたスペクトル列が集光レンズに入射する際に、該集光レンズの光軸に対してずれた平行な光軸に沿って入射する。集光レンズの光軸に対して平行な光軸に沿って入射された光も、集光レンズの光軸に沿って入射された光も同じ位置に集光されるが、集光レンズ内において反射された光は集光レンズの光軸上を通ることなく異なる位置に集光される。特に、波長分割手段から集光レンズまでの光軸が、集光レンズの光軸に対して、スペクトル列の配列方向に交差する方向に平行間隔をあけて配置されているので、集光レンズ内において反射した光はスペクトル列の配列方向に交差する方向にずれた位置を通過する。したがって、集光レンズ内における反射によるフレア光のスペクトル列への混入を防止することができる。
【0008】
上記発明においては、前記波長選択手段が、前記スペクトル列の配列方向に隙間寸法を変更可能な可変スリットであってもよい。
このようにすることで、可変スリットの隙間寸法を変更することによって選択するスペクトル列の波長範囲を調節することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記波長選択手段が、スペクトル列の配列方向に直交する方向に所定の間隔をあけて固定された固定スリットを備えていてもよい。
このようにすることで、固定スリットによってスペクトル列のみを選択的に通過させ、光軸からずれた位置を通るフレア光を遮断することができる。特に、スペクトル列に対してフレア光の光路のずれ量が小さい場合に効果的に遮断することができる。
また、上記発明においては、前記波長分割手段が、グレーティングであってもよいし、高分散プリズムであってもよい。
【0010】
また、上記発明においては、前記集光レンズと前記波長選択手段との間に、前記集光レンズにより集光された光を偏向するプリズムを備え、該プリズムが、前記集光レンズの光軸に直交する方向にその入射面を配置していてもよい。
このようにすることで、集光レンズによって集光された光をプリズムによって偏向して、検出方向を異ならせることができる。この場合に、集光レンズによって集光された光を入射面に対して角度をなしてプリズムに入射させることができる。その結果、プリズム内で反射を繰り返して出射される光が、プリズムによって偏向される光の光軸からずれた位置を通過させられ、検出されるスペクトル列にフレア光が混入することを防止することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記プリズムが、前記スペクトル列の配列方向に並んで複数配列されていてもよい。
このようにすることで、複数のプリズムに入射させるスペクトル列を、プリズム毎に所定の波長範囲で分割して、複数チャネルで検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、集光レンズ内における反射によるフレア光のスペクトル列への混入を防止して、スペクトル列を精度よく検出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る分光装置1について、図1〜図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る分光装置1は、図1に示されるように、例えば、共焦点型レーザ顕微鏡の共焦点ピンホール2を通過して来た試料からの蛍光のような光Lを略平行光にするコリメートレンズ3と、該コリメートレンズ3により略平行光とされた光Lを波長領域毎にスペクトル分解してスペクトル光Lを生成するグレーティング4と、該グレーティングにより生成されたスペクトル光Lを、スペクトル列が焦点面上に一列に並ぶように集光させる集光レンズ5と、前記焦点面近傍に配置された波長選択手段6と、該波長選択手段6により選択された波長領域の光を検出する光検出器7とを備えている。
【0014】
本実施形態においては、図2および図3に示されるように、集光レンズ5の光軸P上に前記波長選択手段6および光検出器7が配置され、集光レンズ5の光軸Pに平行な光軸P上にグレーティング4が配置されている。グレーティング4から集光レンズ5までの光軸Pと集光レンズ5の光軸Pとは、グレーティング4により生成されるスペクトル光Lにおけるスペクトルの配列方向に対して直交する方向に平行間隔をあけて配置されている。
これにより、グレーティング4によって生成されたスペクトル光Lは、集光レンズ5の光軸P上を通過しない領域Aに入射させられるようになっている。
【0015】
グレーティング4は、生成されるスペクトル列の配列方向に揺動可能に構成されている。グレーティング4を揺動させることにより、生成されるスペクトル列をその配列方向に移動させることができるようになっている。
【0016】
波長選択手段6は、図2に示されるように、固定スリット6aと可動スリット6bとを備えている。固定スリット6aは、集光レンズ5によって集光されたスペクトル列全体を透過させることができるようにスペクトル列の配列方向に延びる隙間を有している。可動スリット6bは、固定部材6cと、該固定部材6cに対してスペクトル列の配列方向に隙間をあけて配置される可動部材6dとを備えている。可動部材6dは、隙間の間隔を変化させる方向(矢印Bの方向)に移動させられるようになっている。
光検出器7は、例えば、光電子増倍管(PMT:Phothomultiplier-Tube)である。
【0017】
このように構成された本実施形態に係る分光装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る分光装置1によれば、入射されてきた光Lがコリメートレンズ3によって略平行光に変換されてグレーティング4に入射される。グレーティング4においては入射された略平行光が回折させられることにより波長毎に分離された平行光束が一方向に一列に並ぶスペクトル光Lが生成される。
【0018】
生成されたスペクトル光Lは、集光レンズ5の表面5aに入射される。このとき、スペクトル光Lは、グレーティング4の揺動角度に応じてスペクトル光Lの波長の配列方向に領域Aを異ならせて入射され、集光レンズ5によって集光される。そして、波長選択手段6の固定スリット6aと可動スリット6bとによって画定される開口部に応じた波長範囲のスペクトル光Lが波長選択手段6を透過して光検出器7により検出される。
【0019】
検出したい波長幅を調節するときには、可動スリット6bの可動部材6dを固定部材6cに対して移動させてスペクトル列の配列方向の隙間を調節する。検出したい波長範囲の両端の波長を調節するときには、グレーティング4を揺動させて、波長選択手段6に入射するスペクトル列の配列方向の位置を調節する。
【0020】
本実施形態に係る分光装置1によれば、図3に示されるように、グレーティング4によって生成されたスペクトル光Lは、その大部分が集光レンズ5の2つの表面5a,5bで屈折させられつつ集光レンズ5を透過し、波長選択手段6の位置に集光される。一方、一部の光L′は透過することなく集光レンズ5の内面によって反射された後に集光レンズ5の外部に出射される。
【0021】
この場合に、本実施形態に係る分光装置1によれば、集光レンズ5の光軸Pに対して平行間隔をあけてずれた光軸Pに沿って集光レンズ5に入射させられるので、図3に示されるように、内面反射せずに集光レンズ5から出射された光Lとは異なる位置に集光させられる。
すなわち、内面反射した後に出射された光L′は、スペクトル列の配列方向に対して交差する方向にずれた位置に集光させられる。したがって、内面反射せずに集光レンズ5から出射された光Lは、集光位置に配置されている波長選択手段6の開口部を通過するが、内面反射した後に出射された光L′は、波長選択手段6によって遮断され、光検出器7によって検出されることが防止される。
【0022】
比較例として、集光レンズ5の光軸上に入射させた場合を図4に示す。この比較例によれば、内面反射せずに出射される光Lと内面反射した後に出射される光L′とはともに集光レンズ5の光軸P上を通過するので、集光レンズ5の焦点面に配置されている波長選択手段6をともに透過してしまい、内面反射後に出射された光L′がフレア光となって検出したいスペクトル光Lに混入することになる。
【0023】
これに対して本実施形態に係る分光装置1によれば、検出されるスペクトル列に内面反射したフレア光が混入しないので、所望の波長帯域の光Lを精度よく検出することができるという利点がある。
【0024】
なお、本実施形態においては、光Lを波長毎に分離する波長分割手段としてグレーティング4を例示して説明したが、これに代えて、高分散プリズムを採用してもよい。
また、波長選択手段6として、固定スリット6aと可動スリット6bとを組み合わせたものを例示したが、内部反射された光L′を内部反射されずに出射された光Lに対して十分に離れた位置に集光させることができる場合には、固定スリット6aを設けなくてもよい。逆に、固定スリット6aを設けることにより、極めて近い位置に集光される光L′についても、検出したい光Lに混入しないように遮断することができるという利点がある。
【0025】
また、図5に示されるように、集光レンズ5と波長選択手段6との間に、光Lを偏向するプリズム8を配置することにしてもよい。単一のプリズム8を配置することで、光検出器7により検出するための光路を屈折させたレイアウトを採用することができる。また、プリズム8をスペクトル列の配列方向に複数並べて配置することで、各プリズム8により隣接する波長帯域の光を異なる方向に偏向させることができ、波長帯域毎に異なる複数チャネルの光検出器7によって検出することが可能となる。
【0026】
この場合には、プリズム8のスペクトル光Lの入射面8aが、集光レンズ5の光軸Pに対して直交するように配置されていることが好ましい。プリズム8に入射するスペクトル光Lは、プリズム8内においても内面反射させられるが、本実施形態によれば、集光レンズ5から出射されたスペクトル光Lをプリズム8の入射面8aに対して斜めに入射させることができ、したがって、同様にして、内面反射した光L′がフレア光となって検出したいスペクトル光Lに混入する不都合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る分光装置を説明する正面図である。
【図2】図1の分光装置における集光レンズへのスペクトル光の入射位置と波長選択手段とを示す斜視図である。
【図3】図2の集光レンズと波長選択手段とを説明する側面図である。
【図4】図3の集光レンズおよび波長選択手段に対する比較例を示す側面図である。
【図5】図1の分光装置の変形例であって、プリズムを備える分光装置の側面図である。
【符号の説明】
【0028】
,L,L′ 光
,P 光軸
1 分光装置
4 グレーティング(波長分割手段)
5 集光レンズ
6 波長選択手段
6a 固定スリット(可変スリット)
6b 可動スリット(可変スリット)
8 プリズム
8a 入射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を波長毎に分離してスペクトル列を生成する波長分割手段と、
該波長分割手段により分離された光を所定の面内に集光する集光レンズと、
該集光レンズの焦点面に配置され、波長毎に分離された光のうち、所定の波長帯域の光を選択する波長選択手段とを備え、
前記波長分割手段から前記集光レンズまでの光軸が、前記集光レンズの光軸に対して、前記スペクトル列の配列方向に交差する方向に平行間隔をあけて配置されている分光装置。
【請求項2】
前記波長選択手段が、前記スペクトル列の配列方向に隙間寸法を変更可能な可変スリットである請求項1に記載の分光装置。
【請求項3】
前記波長選択手段が、スペクトル列の配列方向に直交する方向に所定の間隔をあけて固定された固定スリットを備える請求項2に記載の分光装置。
【請求項4】
前記波長分割手段が、グレーティングである請求項1に記載の分光装置。
【請求項5】
前記波長分割手段が、高分散プリズムである請求項1に記載の分光装置。
【請求項6】
前記集光レンズと前記波長選択手段との間に、前記集光レンズにより集光された光を偏向するプリズムを備え、
該プリズムが、前記集光レンズの光軸に直交する方向にその入射面を配置している請求項1から請求項5のいずれかに記載の分光装置。
【請求項7】
前記プリズムが、前記スペクトル列の配列方向に並んで複数配列されている請求項6に記載の分光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−26065(P2010−26065A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184881(P2008−184881)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】