説明

分割中子

【課題】水の消費量が少なく、かつ、短時間で水溶性中子を除去することができる分割中子を得る。
【解決手段】本発明は、4サイクルエンジン用のシリンダヘッドのダイカスト鋳造において、ダイカスト金型15内に配置される分割中子21、22であって、非水溶中子35、52と水溶性中子34、51とを組み合わせて形成され、非水溶性中子35、52は、ダイカスト金型15内に流し込まれる溶湯が最初にあたる部分に配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性中子を利用したダイカスト製法に用いられる分割中子に関し、特に、鋳造品(4サイクルエンジン用のシリンダヘッド)に埋め込まれた水溶性中子の崩壊を促進するための分割中子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイカスト製法の鋳造において、複雑な内部形状を有する鋳造物を成形しようとする場合には、中子が使用される。このようなダイカスト製法に用いられる中子として、塩類等を用いて形成され、鋳造後に水に溶解させて鋳造品から除去される水溶性中子が開発されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
上記した水溶性中子を用いてダイカスト鋳造を行う場合、特に高圧でダイカスト鋳造を行う場合には、鋳造時の溶湯の速度が速く、水溶性中子への衝撃力も大きいため、水溶性中子に高い強度が要求される。そこで、水溶性中子の高強度化が図られるが、水溶性中子の強度を高めると、鋳造品から水溶性中子を除去する際の水溶性中子の崩壊性が悪化してしまう。そこで、水溶性中子の崩壊を促進するために、種々の方法が考案されている。
【0004】
例えば、水蒸気を噴霧したり温水浴内に浸漬させたりして水溶性中子を除去する方法(特許文献4参照)や、溶融塩中に浸漬させて流動可能な状態にしてから水溶性中子を除去する方法(特許文献5参照)や、水の気化爆発を利用して水溶性中子を除去する方法(特許文献6参照)や、高圧水にて水溶性中子を除去する方法(特許文献7参照)が考案されている。また、消石灰等のアルカリ土類を成分中に混合した水溶性中子を、水と接触させて膨潤させることで、水溶性中子の崩壊性を向上させる方法(特許文献8)も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−131664号公報
【特許文献2】特開2007−144460号公報
【特許文献3】特開2007−296566号公報
【特許文献4】特開2004−291017号公報
【特許文献5】特開2005−262216号公報
【特許文献6】特開2006−326610号公報
【特許文献7】特開2008−36702号公報
【特許文献8】特開2006−7234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、温水浴や水蒸気を用いる場合、塩中子を完全に除去するまでに時間がかかってしまう。また、高圧水を利用する場合は、その利用時間が長くなると電気消費量、排液量が増大するという問題がある。一方、塩中子崩壊後の排水から水分を除去し回収された塩を中子に再利用することも試みられているが(特許文献5参照)、水の消費量が多くなると、塩を再利用する際にも処理に時間を要するという問題がある。さらに、水溶性中子にアルカリ土類を混合する方法では、水との接触面でのみ水溶性中子の崩壊が進むため、水溶性中子の溶解にかかる時間が長くなる。
【0007】
そこで、本発明は、水の消費量が少なく、かつ、短時間で水溶性中子の除去が可能な分割中子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の分割中子は、4サイクルエンジン用のシリンダヘッドのダイカスト鋳造において、ダイカスト金型内に配置される分割中子であって、非水溶中子と水溶性中子とを組み合わせて形成され、前記非水溶性中子は、前記ダイカスト金型内に流し込まれる溶湯が最初にあたる部分に配置されることを特徴とする。
【0009】
また、前記分割中子は、前記シリンダヘッドの吸気開口から燃焼室に至るインテーク通路と対応する形状の第1分割中子と、前記シリンダヘッドの前記燃焼室から排気開口に至るエキゾースト通路と対応する形状の第2分割中子と、であっても良い。
【0010】
更にまた、前記非水溶性中子は、ダイカスト鋳造後に、前記水溶性中子と分離して前記シリンダヘッドから引き抜き可能な形状に形成されていても良い。
【0011】
また、前記水溶性中子と前記非水溶性中子とは互いに嵌合可能に設けられ、前記水溶性中子と前記非水溶性中子とを嵌合させることにより、前記水溶性中子と前記非水溶性中子のうちの一方が他方に支持されるものであっても良い。
【0012】
更にまた、前記非水溶性中子は、ダイカスト鋳造後に前記シリンダヘッドの周面から突出するように形成されているものであっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の分割中子によれば、水の消費量が少なく、かつ、短時間で水溶性中子を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る分割中子を備えた金型で鋳造されるシリンダヘッドの斜視図である。
【図2】図1に点線で示す断面ラインにおける、シリンダヘッドの端面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る分割中子を備えたダイカスト金型の断面図である。
【図4】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る分割中子の分解断面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る塩中子の上面付近を示す側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る分割中子を備えたダイカスト金型について、スライドコア、上型及び主型を取り外した状態を示す端面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る分割中子を備えたダイカスト金型について、金属製中子を取り外した状態を示す端面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る分割中子を備えたダイカスト金型について、塩中子の除去過程を示す端面図である。
【図8】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る分割中子の分解断面図であり、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る塩中子の上面付近を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
まず、本発明の分割中子を備えたダイカスト金型の説明に先立って、このダイカスト金型で鋳造されるシリンダヘッド1の概要について、図1、図2を用いて説明する。以下、図1の左手前側の面を、シリンダヘッド1の正面とした場合について説明する。
【0016】
シリンダヘッド1は、扁平な直方体形状を成しており、その前後左右の側面には、上下方向に複数段のフィン2が連設されている。シリンダヘッド1の左側面3の中央部から下部には吸気開口4が形成され、この吸気開口4が、シリンダヘッド1内の下部中央に設けられた燃焼室5と、インテーク通路6を介して連通している。このインテーク通路6の内側部分(図2では右側部分)には、下方に向かって湾曲する湾曲空間7が形成され、この湾曲空間7の下端には、吸気バルブ(図示せず)を当接させるための弁座部8が形成されている。
【0017】
シリンダヘッド1の右側面9の中央部から下部には、内側に段差19が設けられた排気開口10が形成され、この排気開口10が、燃焼室5とエキゾースト通路11を介して連通している。このエキゾースト通路11の内側部分(図2では左側部分)には、インテーク通路6と同様に、下方に向かって湾曲する湾曲空間7が形成され、この湾曲空間7の下端には、排気バルブ(図示せず)を当接させるための弁座部8が形成されている。
【0018】
シリンダヘッド1の上面36の中央には、カムシャフト(図示せず)を軸支するための係合溝12が前後方向に3個設けられ、前側の係合溝12と中央の係合溝12の間には、各係合溝12よりも深い湾曲凹部13が形成されている。この湾曲凹部13の左右両側には、下方に向かって内側に傾斜する形状の一対の挿通穴14が、インテーク通路6及びエキゾースト通路11の湾曲空間7と連通するように形成され、インテーク通路6と連通する挿通穴14には吸気バルブ(図示せず)を、エキゾースト通路11に連通する挿通穴14には排気バルブ(図示せず)を、それぞれ挿通可能としている。
【0019】
ダイカスト金型15は、ダイカスト金型15の底壁を成す平板状の主型16と、この主型16の上面に支持されてダイカスト金型15の前後左右の周壁を成すスライドコア17と、このスライドコア17に支持されてダイカスト金型15の上壁を成す上型18と、主型16、スライドコア17及び上型18によって形成されるキャビティ20内に互いに左右対称に配置される分割中子としての第1分割中子21及び第2分割中子22と、から構成されている。以下、ダイカスト金型15の各部材について、上下左右等の方向を示す語は、図3を基準として用いる。
【0020】
主型16には、シリンダヘッド1の底面に対応する形状の下方成形面23が形成されており、この下方成形面23の中央には、シリンダヘッド1の燃焼室5に対応する形状の中央突起24が形成されている。この中央突起24の周面には、外側に向けて下方に傾斜する形状の傾斜面25が形成されており、傾斜面25の左右には、一対の係合凹部26が凹設されている。
【0021】
スライドコア17は、シリンダヘッド1の前後左右の側面に対応して各1個ずつ設けられており、各スライドコア17は、図示しないスライド装置により、主型16のスライド面29においてスライド可能となっている。各スライドコア17には、シリンダヘッド1の前後左右の側面に対応する形状の側方成形面27が形成されており、左右のスライドコア17の側方成形面27には、椀状の挿入凹部28が中央部から下部にかけて形成されている。
【0022】
上型18には、シリンダヘッド1の上面に対応する形状の上方成形面30が形成されており、この上方成形面30の中央には、シリンダヘッド1の湾曲凹部13に対応する形状の湾曲突部31が形成され、この湾曲突部31の左右両側には、シリンダヘッド1の各挿通穴14に対応する形状の突起32が設けられている。各突起32の外側上方には、下方に向けて内側に傾斜する形状のゲート部33が前後に1本ずつ穿設され(図1参照)、このゲート部33を介して、図示しない注湯手段からキャビティ20内にアルミニウムの溶湯を供給可能としている。
【0023】
第1分割中子21は、シリンダヘッド1のインテーク通路6と対応する形状の外形を成している。第1分割中子21は、中子構造を2ピースとし、下側部分を構成する水溶性中子としての第1塩中子34と、上側部分を構成する非水溶性中子としての第1金属製中子35とを、組み合わせて構成されている。
【0024】
第1塩中子34の上面36には、凸部37が突設されている。この凸部37は、右側から左側に向かって上下幅が徐々に大きくなるように形成されており、図4(b)に良く示されているように、この凸部37の下部には、下方に向かって縮幅する下側テーパ部38が形成されている。また、第1金属製中子35の底面40には、第1塩中子34の凸部37と対応する位置に凹部41が形成され、この凹部41の下部には、下方に向かって縮幅する上側テーパ部39が形成されている。そして、図4(a)に矢印で示すように、第1金属製中子35を第1塩中子34に対してスライドさせることにより、下側テーパ部38と上側テーパ部39が当接した状態で凹部41と凸部37が嵌合されて、第1金属製中子35と第1塩中子34が一体化されるようになっている。
【0025】
また、第1塩中子34の上面36と第1金属製中子35の底面40との当接面(以下、分割面という)には、ダイカスト鋳造後のシリンダヘッド1から第1金属製中子35を取り出すための抜き勾配が設定されている。即ち、第1金属製中子35の上下幅が右側から左側に向かって徐々に大きくなるように、分割面の傾斜角度が調整されている。
【0026】
第1塩中子34の左端部には、スライドコア17の挿入凹部28の下部と対応する形状の下側突部42が設けられており、第1金属製中子35の左端部には、下側突部42と連続して、スライドコア17の挿入凹部28の中央部から上部と対応する形状の上側突部43が設けられている。そして、第1塩中子34と第1金属製中子35を一体化させた状態で、下側突部42及び上側突部43により構成される半球状の係合突部44を、スライドコア17の挿入凹部28に係合可能としている。
【0027】
第1塩中子34の右側部には、シリンダヘッド1のインテーク通路6の湾曲空間7に対応する形状の湾曲部45が形成され、この湾曲部45の下端には、主型16の傾斜面25と下面46を当接可能な外鍔状の連結部47が設けられている。この連結部47の下面46には、主型16の左側の係合凹部26と係合可能な係合片48が下方内側に向かって突設されている。第1金属製中子35の上面61の右端部には、上型18の左側の突起32の端面を当接可能な位置に、当接部50が設けられている。
【0028】
第2分割中子22は、シリンダヘッド1のエキゾースト通路11と対応する形状の外形を成している。第2分割中子22は、第1分割中子21と同様に中子構造を2ピースとし、下側部分を構成する水溶性中子としての第2塩中子51と、上側部分を構成する非水溶性中子としての第2金属製中子52とを、組み合わせて構成されている。
第2塩中子51及び第2金属製中子52について、第1塩中子34及び第1金属製中子35と構成が略左右対称となっている部分については、第1塩中子34及び第1金属製中子35と同一の番号を図面に付し、説明を省略する。第2金属製中子52の上面の右側には、シリンダヘッド1の段差19の上側部分と対応する形状の上側段部53が形成され、第2塩中子51の下面の右側には、シリンダヘッド1の段差19の下側部分と対応する形状の下側段部54が形成されている。
【0029】
上述の如く構成されたダイカスト金型15を用いて、シリンダヘッド1を成形する方法について、以下に説明する。
【0030】
まず、第1分割中子21及び第2分割中子22(以下、「分割中子21、22」と記載する。)の係合突部44をスライドコア17の挿入凹部28と係合させるとともに、第1塩中子34及び第2塩中子51(以下、「塩中子34、51」と記載する。)の係合片48を主型16の係合凹部26に係合させる。これにより、分割中子21、22が、主型16とスライドコア17の間で支持される。そして、スライドコア17に上型18を連結させ、上型18の突起32を、第1金属製中子35及び第2金属製中子52(以下、「金属製中子35、52」と記載する。)の当接部50に当接させる。
【0031】
この状態で、図示しない注湯部から上型18のゲート部33にアルミニウムの溶湯を注入する。このゲート部33に注入された溶湯は、図3に矢印で示されているように、ゲート部33を介してキャビティ20内に上部両側から流入し、金属製中子35、52の上面61に最初に当たった後、塩中子34、51の下側に回り込む。更にゲート部33から溶湯を注入していくと、溶湯がキャビティ20内に行き渡る。
【0032】
その後、所定の時間が経過して溶湯が冷却固化し、鋳造成型品としてのシリンダヘッド1の粗材が得られたら、図示しないスライド手段により各スライドコア17をシリンダヘッド1から離間する方向にスライドさせて、シリンダヘッド1の粗材の前後左右の側面を露出させる。このスライドコア17のスライドに伴って、スライドコア17の挿入凹部28と分割中子21、22の係合突部44の係合が解除され、係合突部44が粗材の周面から突出する。更に、上型18を上昇させて、シリンダヘッド1の粗材を、主型16及び上型18から取り外す。これにより、シリンダヘッド1の粗材が、スライドコア17、上型18及び主型16から分離される。
【0033】
この状態で、図5に矢印で示す如く、シリンダヘッド1から金属製中子35、52を引き抜く。図6に示すように、この金属製中子35、52の引き抜きにより、金属製中子35、52が挿入されていた部分には、奥行き方向に向かって先細りな形状の穴部56が形成され、この穴部56内には、塩中子34、51の上面36が露出する
次に、図6に示すように、ウォータージェット57により、穴部56内にジェット水流58を吹き付けると、塩中子34、51は上面36から削られていき(図7参照)、最終的に完全に除去される。
【0034】
以上の如く、本実施の形態では、ダイカスト鋳造時に、ダイカスト金型15のゲート部33から来るアルミニウムの溶湯は、金属製中子35、52の上面61に最初に当たる。即ち、溶湯の衝撃が高い部位には、金属製中子35、52が配置されており、分割中子21、22への溶湯の衝撃を金属製中子35、52で受けることが可能となるため、溶湯の衝撃力による塩中子34、51の損壊を防止することができる。従って、塩中子34、51の高強度化が不要となり、セラミック粒子などの強化材量を減量できる。
【0035】
また、金属製中子35、52を使用していることから、分割中子21、22の体積に対する塩中子34、51の体積割合を大幅に減少させることが可能となり、塩中子34、51の除去に必要な時間も短縮させることができる。また、金属製中子35、52を、塩中子34、51の除去処理前にシリンダヘッド1から取り出すことによって、塩中子34、51除去の効率アップを図ることが可能となる。
【0036】
また、ダイカスト鋳造後に、シリンダヘッド1の粗材から金属製中子35、52を取り外すことで形成される穴部56内には、塩中子34、51の上面36が露出するので、これを塩中子34、51の除去に利用する。つまり、塩中子34、51の上面36を露出させて塩中子34、51の表面積を増やすことで、ジェット水流58と塩中子34、51の接触面積を増加させる。塩中子34、51は水による崩壊性を有しているため、ジェット水流58との接触面積が増加することで崩壊が促進される。従って、塩中子34、51の除去時間の短縮が可能となり、その分、使用する水量も少なくすることができる。
【0037】
また、崩壊した塩中子34、51は一部水に溶けるが、大部分は砕けて破片となって除去される。その際、一体型の塩中子では砕けて破片となっても大きさが小さくないと取れない場合がある。しかしながら、本実施形態のように、金属製中子35、52を塩中子34、51から分離して引き抜く構成とすれば、金属製中子35、52を引き抜いた後の穴部56が塩中子34、51のすぐ脇にあることで、崩壊した塩中子34、51の破片を排出しやすくなる。また、本実施形態のようなジェット水流58を使用した塩中子34、51の除去においては、穴部56の最深部にまで水流が届くため、穴部56の奥側からも塩中子34、51の崩壊が促進されて、塩中子34、51の除去時間の短縮に繋がる。
【0038】
以上の如く、本実施の形態では、中子を分割して片方を塩中子34、51、もう一方を金属製中子35、52として組み合わせて使用することにより、ダイカスト鋳造時には、塩中子34、51の高強度化を緩和しつつ塩中子34、51の損壊を防止し、ダイカスト鋳造後には、塩中子34、51の崩壊性を向上させることが可能となる。
【0039】
また、シリンダヘッド1の粗材から金属製中子35、52を引き抜く際、粗材の側面と同一面になるように金属製中子35、52の端面が形成されていると、バリ等により、シリンダヘッド1の粗材からの金属製中子35、52の取り出しが困難になる。しかしながら、本実施の形態では、ダイカスト鋳造後にスライドコア17を取り外すと、分割中子21、22の粗材の側面から分割中子21、22の係合突部44が突出し、これに伴って、金属製中子35、52の上側突部43も突出する。そのため、金属製中子35、52をシリンダヘッド1の粗材からスムーズに取り出すことができ、上記の支障が生じる虞がない。
【0040】
また、金属製中子35、52と塩中子34、51の分割面には抜き勾配が設定されているため、シリンダヘッド1の粗材からの金属製中子35、52の取り出しを、一層容易なものとすることが可能となる。更に、本実施の形態では、抜き勾配が極めて大きく設定されているため、シリンダヘッド1の粗材からの金属製中子35、52の取り外し易さを、一層高めることが可能となる。
【0041】
また、金属製中子35、52に設けた凹部41を、塩中子34、51に設けた凸部37に嵌合させており、塩中子34、51に金属製中子35、52が支持されるため、ダイカスト金型15への設置から鋳造まで、組み合わせた中子が分解するのを防ぐことができる。特に、本実施の形態では、上側テーパ部39と下側テーパ部38を当接させた状態で、凸部37と凹部41の嵌合を行うことで、金属製中子35、52と塩中子34、51は、スライド方向にのみ離脱可能で、上下方向には外れない構成となる。そのため、一体化された分割中子21、22が、ダイカスト金型15への設置時等にズレ難く、外れ難い構造となる。
<第2の実施形態>
【0042】
次に、図8を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、図8には、第1塩中子34と第1金属製中子35のみを示し、第2塩中子51及び第2金属製中子52については記載を省略する。
【0043】
上記第1の実施形態では、金属製中子35、52に凹部41を、塩中子34、51に凸部37を設けていたが、第2の実施形態では、これとは逆に、塩中子34、51に凹部41を設け、この凹部41に嵌合可能な凸部37を金属製中子35、52に設けている。このように、塩中子34、51に凹部41を設ける場合には、第1の実施形態の場合のように塩中子34、51に凸部37を設ける場合と比較して、塩中子34、51の体積が小さくなる。そのため、塩中子34、51の除去時間の短縮を図ることが可能となる。なお、凸部37と凹部41がスライド方向にのみ離脱可能となり、上下方向には外れない構成とするため、塩中子34、51の凹部41の上部に上方に向かって縮幅する下側テーパ部38を設けるとともに、金属製中子35、52の凸部37の上部に、上方に向かって縮幅する上側テーパ部39を設けている。
【0044】
本実施の形態及び前記第1の実施形態では、非水溶性中子として塩中子34、51を使用したが、他の異なる実施形態においては、非水溶性中子としてセラミックス製中子を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 シリンダヘッド
4 吸気開口
5 燃焼室
6 インテーク通路
10 排気開口
11 エキゾースト通路
15 ダイカスト金型
21 第1分割中子
22 第2分割中子
34 第1塩中子(水溶性中子)
35 第1金属製中子(非水溶中子)
51 第2塩中子(水溶性中子)
52 第2金属製中子(非水溶中子)





【特許請求の範囲】
【請求項1】
4サイクルエンジン用のシリンダヘッドのダイカスト鋳造において、ダイカスト金型内に配置される分割中子であって、
非水溶中子と水溶性中子とを組み合わせて形成され、
前記非水溶性中子は、前記ダイカスト金型内に流し込まれる溶湯が最初にあたる部分に配置されることを特徴とする分割中子。
【請求項2】
前記分割中子は、前記シリンダヘッドの吸気開口から燃焼室に至るインテーク通路と対応する形状の第1分割中子と、前記シリンダヘッドの前記燃焼室から排気開口に至るエキゾースト通路と対応する形状の第2分割中子と、であることを特徴とする請求項1に記載の分割中子。
【請求項3】
前記非水溶性中子は、ダイカスト鋳造後に、前記水溶性中子と分離して前記シリンダヘッドから引き抜き可能な形状に形成されていることを特徴とする請求項1又2に記載の分割中子。
【請求項4】
前記水溶性中子と前記非水溶性中子とは互いに嵌合可能に設けられ、
前記水溶性中子と前記非水溶性中子とを嵌合させることにより、前記水溶性中子と前記非水溶性中子のうちの一方が他方に支持されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分割中子。
【請求項5】
前記非水溶性中子は、ダイカスト鋳造後に前記シリンダヘッドの周面から突出するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分割中子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−20320(P2012−20320A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160651(P2010−160651)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】