説明

分散配置されたエネルギー蓄積器を有する電力変換回路

本発明は、上側および下側の変換整流器(T1,…,T6)を有する少なくとも1つの相モジュール(100)を備えた電力変換回路であって、相モジュール(100)の直流電圧側が正および負の直流電圧母線(P0,N0)に導電接続され、各変換整流器(T1,…,T6)が、電気的に直列に接続された少なくとも2つの2極のサブシステム(10)を有するような電力変換回路に関する。本発明によれば、各サブシステム(10)の接続端子(X1,X2)に対して電気的に並列に保護構成要素(12)が接続されている。それにより、故障時に冗長的に更に続けて動作することができる分散配置されたエネルギー蓄積器を有する電力変換回路が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部分による電力変換回路に関する。
【0002】
この種の電力変換回路は独国特許出願公開第10103031号明細書から公知であり、この種の電力変換回路の等価回路図が図1に詳細に示されている。この等価回路図によれば、この公知の電力変換回路はそれぞれ100にて示された3つの相モジュールを有する。これらの相モジュール100は直流電圧側をそれぞれ正および負の直流電圧母線P0およびN0に導電接続されている。これらの両直流電圧母線P0およびN0の間に詳しくは示されていない直流電圧が存在する。各相モジュール100は、上側の変換整流器T1もしくはT3もしくはT5と下側の変換整流器T2もしくはT4もしくはT6とを有する。これらの変換整流器T1〜T6のそれぞれは、電気的に直列接続された多数の2極のサブシステム10を有する。この等価回路図では4つのこれらのサブシステム10が示されている。相モジュール100の2つの変換整流器T1およびT2もしくはT3およびT4もしくはT5およびT6の各接続点は、これらの相モジュール100の交流電圧側端子L1もしくはL2もしくはL3をなす。この図では電力変換回路は3つの相モジュール100を有することから、負荷接続端子とも呼ばれる交流電圧側端子L1,L2,L3には3相負荷、例えば3相交流電動機を接続することができる。
【0003】
図2には2極のサブシステム10の公知の実施形態の等価回路図が詳しく示されている。図3による回路装置は機能的に全く等価な変形であり、これは同様に独国特許出願公開第10103031号明細書から公知である。この公知の2極のサブシステム10は、2つのターンオフ制御可能な半導体スイッチ1および3と、2つのダイオード2および4と、単極性の蓄積コンデンサ9とを有する。両ターンオフ制御可能な半導体スイッチ1および3は電気的に直列に接続されていて、この直列接続回路が蓄積コンデンサ9に対して並列に接続されている。各ターンオフ制御可能な半導体スイッチ1および3には両ダイオード2および4の1つが次のように電気的に並列に接続されている。すなわち、当該ダイオードが対応するターンオフ制御可能な半導体スイッチ1または3に逆並列に接続されている。サブシステム10の単極性の蓄積コンデンサ9は、1つのコンデンサから構成されているか、あるいは多数のこのようなコンデンサからなるコンデンサバッテリから構成されていて、結果として生じる静電容量C0を有する。ターンオフ制御可能な半導体スイッチ1のエミッタとダイオード2のアノードとの接続点は、サブシステム10の接続端子X1をなす。両ターンオフ制御可能な半導体スイッチ1および3と両ダイオード2および4との接続点は、サブシステム10の第2の接続端子X2をなす。
【0004】
図3によるサブシステム10の実施形態ではこの接続点が接続端子X1をなす。ターンオフ制御可能な半導体スイッチ1のコレクタとダイオード2のカソードとの接続点がサブシステム10の接続端子X2をなす。
【0005】
サブシステム10の2つの実施形態の両図において、蓄積コンデンサ9の両接続端子はサブシステム10から引き出されていて、2つの接続端子X3およびX4をなす。ターンオフ制御可能な半導体スイッチ1および3としては、図2および図3に示されているように、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が使用される。同様に、MOSFETとも呼ばれるMOS電界効果トランジスタも使用可能である。更に、GTOサイリスタとも呼ばれるゲートターンオフサイリスタまたは集積ゲート転流サイリスタ(IGCT)が使用可能である。
【0006】
独国特許出願公開第10103031号明細書によれば、図1による電力変換回路の各相モジュール100のサブシステム10がスイッチング状態IおよびIIにおいて制御される。スイッチング状態Iにおいてはターンオフ制御可能な半導体スイッチ1がオンされていて、ターンオフ制御可能な半導体スイッチ3がオフされている。それによって、サブシステム10の接続端子X1およびX2に生じる端子電圧UX21は0に等しい。スイッチング状態IIにおいてはターンオフ制御可能な半導体スイッチ1がオフされていて、ターンオフ制御可能な半導体スイッチ3がオンされている。このスイッチング状態IIにおいては、接続端子X1およびX2に生じる端子電圧UX21は蓄積コンデンサ9に生じるコンデンサ電圧UCに等しい。
【0007】
図4には、独国特許出願公開第10217889号明細書から公知であるサブシステム10のための他の実施形態の等価回路図が詳細に示されている。サブシステム10のこの実施形態は電圧形コンバータの完全ブリッジ形式を有するが、ただしここでは単独の2端子回路として使用される。このブリッジ回路は、それぞれ1つのダイオード2,4,6,8を逆並列接続された4つのターンオフ制御可能な半導体スイッチ1,3,5,7からなる。このブリッジ回路の直流電圧側の端子には蓄積コンデンサ9が接続されていて、蓄積コンデンサ9は電圧UCに充電される。そのためにターンオフ制御可能な半導体スイッチ1,3,5,7はオフされている。ターンオフ制御可能な半導体スイッチ1,3,5,7の開閉により、サブシステムX1およびX2に生じる端子電圧UX21が電流方向に関係なく正、負になり、または0にもなり得るスイッチング状態が生じる。図2または図3による実施形態に比べてこの実施形態の場合には、サブシステム10の端子電圧UX21が蓄積コンデンサ9に生じる負のコンデンサ電圧UCに等しい更に別のスイッチング状態IIIが存在する。この実施形態においても蓄積コンデンサ9の端子が引き出され、X3およびX4の符号が付されている。
【0008】
図1による電力変換装置が冗長動作をすることができるようにするためには、欠陥のあるサブシステム10が端子X1およびX2において永続的に短絡されていること、すなわち、故障したサブシステム10の端子電圧UX21が0であることが保証されなければならない。
【0009】
サブシステム10内に存在するターンオフ制御可能な半導体スイッチ1,3,5または7、または付属の制御回路の故障によって、このサブシステム10は規則にかなった動作を乱される。すなわち、このサブシステム10は、もはや可能なスイッチング状態の1つI,IIまたはIIIに制御することができなくなる。サブシステム10の端子X1およびX2における短絡によってこのサブシステム10にエネルギーがもはや供給されない。それによって、コンバータの動作続行時に過熱および火災のような間接的損害が確実に回避される。故障したサブシステム10の接続端子X1およびX2間のこの種の短絡による導電接続は、少なくとも、故障したサブシステム10を含んだ相モジュール100の変換整流器T1,…,T6の動作電流を確実に過熱なしに導かなければならない。
【0010】
米国特許第5986909号明細書から、相モジュールごとに少なくとも2つの電気的に直列接続されたサブシステムを有する電力変換回路が公知である。サブシステムとして、この公知の電力変換回路の場合には周波数変換装置が使用され、周波数変換装置はそれぞれ系統電源側に非制御6極のダイオードブリッジ変換器を有し、負荷側に2相の自励パルス制御変換器を有する。直流電圧側ではこれらの両変換器が直流電圧中間回路により互いに導電接続されている。系統電源側ではこれらのサブシステムはそれぞれ系統電源変圧器の1つの2次巻腺に接続されている。負荷側では1つの相モジュールにおけるサブシステムは電気的に直列接続されている。この公知の電力変換回路において故障したサブシステムは短絡される。この場合に電磁開閉器、ばね付勢接触子、逆並列サイリスタ、または逆直列接続されたターンオフ制御可能な半導体スイッチが、各サブシステムの負荷側接続端子のためのバイパス回路として使用される。機械的な短絡器は、それらの機械装置のゆえに頻繁に点検整備されなければならない。電気的な短絡器は、それぞれ高電位にある電源装置および制御装置を必要とし、これらの装置は制御側において変換器制御装置と信号技術的に接続されていなければならない。
【0011】
独国特許出願公開第10323220号明細書から、同様に相モジュールが少なくとも2つの電気的に直列接続されたサブシステムを有する電力変換回路が公知である。この公知の電力変換回路の各サブシステムは電圧形コンバータの完全ブリッジ回路の形を有するが、ただしこれは単独の2端子回路として使用される。このブリッジ回路は逆並列接続ダイオードを備えた4つのターンオフ制御可能な半導体スイッチからなる。直流電圧側端子に蓄積コンデンサが接続されている。故障したサブシステムを短絡可能にするために、サブシステムのそれぞれは蓄積コンデンサに電気的に並列接続されている保護構成要素を有する。保護構成要素として反転ダイオードまたは短絡サイリスタが使用される。蓄積コンデンサに低誘導接続されている短絡サイリスタが使用される場合には、同様にセンサ回路および点弧回路が必要である。
【0012】
サブシステムのターンオフ制御可能な半導体スイッチの故障時に、半導体モジュールの爆発に至るほどのアークをもたらし得る大きな短絡電流が流れる。この短絡電流によって蓄積コンデンサが放電させられる。蓄積コンデンサに並列に接続された反転ダイオードによって、短絡電流が故障した半導体モジュールからこの反転ダイオードへ転流する。反転ダイオードは、サブシステムの故障時にブレークダウンするように設計されている。短絡サイリスタによる実施形態の場合には直流電圧側の短絡がセンサ回路によって認識され、センサ回路が点弧回路を作動させる。それにより、短絡サイリスタが点弧され、これに転流した短絡電流によってブレークダウンさせられる。この保護回路における欠点は、サブシステムの構造が変更されなければならないことにある。付加的に、僅かなミリ秒にて短絡サイリスタの点弧をひき起こさせるセンサ回路および点弧回路が要求される。
【0013】
本発明の課題は、分散配置されたエネルギー蓄積器を有する公知の電力変換回路を、既述の欠点がもはや発生しないように発展させることにある。
【0014】
この課題は本発明によれば請求項1の特徴事項により解決される。
【0015】
各サブシステムの接続端子に対して電気的に並列に保護構成要素が接続されていることによって、このサブシステムを故障時に短絡することができる。この保護構成要素はサブシステムの接続端子に接続されることから、サブシステムの構造は触れられていないままである。それによって、まだ保護構成要素を持たないサブシステムに、後からこのような保護構成要素を備えさせることができる。保護構成要素は、ある一定の過電圧エネルギーの吸収後に短絡状態に移行する性質を持つ。すなわち、この保護構成要素は当該サブシステムの故障時にブレークダウンし、それによってこの保護システムが短絡状態になる。
【0016】
故障したサブシステムの保護構成要素がブレークダウンすることができるようにするためには、先ず電力変換回路の相モジュール内に存在するサブシステムのうちどれが故障しているかを検出しなければならない。故障したサブシステムが局限化されるや否や、故障していない1つまたは複数のサブシステムの狙いを定めた制御によって、規定の過電圧エネルギーが故障したサブシステムに与えられる。このために、電力変換回路において故障したサブシステムが配置されている相モジュールの少なくとも1つが予め定められた時間幅だけスイッチング状態Iに制御することができる。更に、電力変換回路の故障のない相モジュールにおいてそれぞれ少なくとも付加的に1つのサブシステムが予め定められた時間幅だけスイッチング状態IIに制御される。
【0017】
故障した相モジュールにおける付加的なサブシステムのスイッチング状態Iへの制御ならびにそれぞれ故障していない相モジュールにおける付加的なサブシステムのスイッチング状態IIへの制御の代わりに、故障していない相モジュールにおける全てのサブシステムをそれぞれスイッチング状態IIへ制御し、かつ故障した相モジュールにおける故障していないサブシステムの全てをスイッチング状態Iに制御してもよい。それによって調整可能な最大の過電圧が故障したサブシステムに印加されるので、過電圧は入力側の保護構成要素を通して、この保護構成要素がブレークダウンすることをもたらす電流を強制的に流し込む。
【0018】
保護構成要素を通して流れる電流のピーク値を無傷のターンオフ制御可能な半導体スイッチにとって許容可能な値に制限するために、スイッチング時間幅が適切に調整される。付加的にスイッチング状態IおよびIIに制御されるサブシステムの個数により、故障したサブシステムに生じる過電圧が段階的に調整可能である。
【0019】
本発明の更なる説明のために、本発明による保護構成要素の多数の実施形態が概略的に示されている図面を参照する。
【0020】
図1は分散配置されたエネルギー蓄積器を有する公知の電力変換回路の等価回路図を示し、図2には公知のサブシステムの第1の実施形態の等価回路図が示され、図3は公知のサブシステムの第2の実施形態の等価回路図を示し、図4は公知のサブシステムの第3の実施形態の等価回路図を示し、図5乃至10には本発明による保護構成要素の異なる実施形態が詳しく示されている。
【0021】
図5には図2または図3によるサブシステム10のための第1の保護構成要素12が示されている。保護構成要素12としてダイオード14が設けられている。この1つのダイオードの代わりに多数のダイオードの直列回路が設けられてもよい。保護構成要素12の接続端子16および18は、図2または図3によるサブシステム10の接続端子X1およびX2、特に端子X1aおよびX2aに接続される。
【0022】
図6には本発明による保護構成要素12の第2の実施形態が示されている。保護構成要素12として、ここでは、いわゆる能動クランプ回路22を有するサイリスタ20が設けられている。この能動クランプ回路22は少なくとも1つのツェナーダイオード24を有し、ツェナーダイオード24は、カソード側をサイリスタ20のアノード端子26に接続され、アノード側をゲート抵抗28を介してサイリスタ20のゲート端子30に接続されている。ツェナーダイオード24のアノード側は同様に抵抗32によりサイリスタ20のカソード端子34に接続されている。サイリスタ20のアノード26に生じる電圧がツェナーダイオード24のツェナー値を上回るや否や、ツェナーダイオード24が導通してサイリスタ20をターンオンさせる。今やサイリスタ20を通って流れる電流がサイリスタ20の確実なブレークダウンをひき起こさせる。サイリスタ20は、この電流がブレークダウンをもたらすように設計されている。
【0023】
図7による保護構成要素12の実施形態は図6による実施形態に大体対応している。相違は図7による実施形態が付加的にRCスナバ回路36を有することにある。RCスナバ回路36は、このサイリスタ20のアノード・カソード間に電気的に並列接続されている。このRCスナバ回路36は電気的に直列接続されたコンデンサ38および抵抗40を有する。このRCスナバ回路36によって、付属のサブシステム10のターンオフ制御可能な半導体スイッチ1および3のスイッチング過程のスイッチング勾配が抑制される。それによって保護構成要素12がサブシステム10のスイッチング勾配によって制御不可になることが防止される。
【0024】
図8には保護構成要素12の他の実施形態が更に詳しく示されている。この保護構成要素12は、電気的に逆直列に接続された2つのダイオード14および42を有する。この構成によってこの保護構成要素12は正および負の電圧を受け入れることができる。すなわち、サブシステムの正常時にサブシステムの入力側が短絡されていないようにするものである。それゆえ保護構成要素12は、サブシステムの正常時において発生する端子電圧UX21を確実に受け入れることができなければならない。図4によるサブシステム10の実施形態の場合には、図2または図3によるサブシステム10の端子電圧UX21と違って、端子電圧UX21が負もあり得るので、両方向において電圧を受け入れることができる保護構成要素12が要求される。この場合に、それぞれ1つのダイオード14もしくは42の代わりに多数のダイオードを使用してもよい。
【0025】
図9による保護構成要素12の実施形態は図6による実施形態に大体対応する。相違は、アノード側のツェナーダイオード24とゲート抵抗28との間に少なくとも1つの逆流防止ダイオード44が接続されていることにある。このために逆流防止ダイオード44は、カソード側をゲート抵抗28に、アノード側をツェナーダイオード24のアノードに導電接続されている。この付加的な逆流防止ダイオード44によって、この保護構成要素12は両方向において電圧を受け入れることができる。それによって、この保護構成要素12の接続端子16および18を図4によるサブシステム10の接続端子X1およびX2、特にX1aおよびX2aに対して電気的に並列に接続することができる。
【0026】
図10に基づく保護構成要素12の実施形態は図9の実施形態に対応し、付加的にRCスナバ回路36がサイリスタ20のアノード・カソード間に電気的に並列接続されている。
【0027】
図1による等価回路図に基づいて本発明による制御方法を更に詳しく説明する。
【0028】
図1による等価回路図において変換整流器T2が故障している。これは斜線にて明示されている。図1によるこの3相電力変換回路の相モジュールには、付加的にインピーダンスZが挿入されている。インピーダンスZは、概略的にブリッジ半分において存在するインダクタンス(漏れインダクタンス)およびオーム抵抗を代表する。この代表的なインピーダンスに加えて相モジュール100内に個別の構成要素が配置されていてもよい。
【0029】
サブシステム1の故障は、電圧検出とそれに続く予め定められた許容変動幅との比較により求められる。更に、例えば電子装置の故障、転流障害のような他の誤りもサブシステムの故障を招く。これらの誤りは制御装置を介して認識され、これらも必然的にサブシステムの短絡をもたらす。ここで変換整流器T2の斜線を施したサブシステム10が故障したならば、変換整流器T3およびT4を有する相モジュール100および変換整流器T5およびT6を有する相モジュール100の全てのサブシステム10の最大のエネルギー内容が、変換整流器T2の斜線を施したサブシステム10の保護構成要素12のブレークダウンのための規定の過電圧エネルギーを発生させるために最大限に利用される。このために、これらの正常な相モジュール100の全ての正常なサブシステム10がスイッチング状態IIに制御され、故障した相モジュール100の全ての正常なサブシステム10がスイッチング状態Iに制御される。スイッチング状態IIにおいてはサブシステム10に生じる端子電圧UX21が蓄積コンデンサ9に生じるコンデンサ電圧UCに等しい。スイッチング状態Iにおいてはサブシステム10に生じる端子電圧UX21が0に等しい。サブシステム10のこの制御によって、図1において矢印により示された電流iK1,iK2およびiK3が流れる。これらの電流iK1,iK2およびiK3のピーク値をサブシステム10の健全なターンオフ制御可能な半導体スイッチ1,3,5,7にとって許容し得る値に制限するためには、これらのスイッチング状態IIおよびIのための時間幅を適切に調整すべきである。この時間幅は、インピーダンスZが既知である場合には予め決定可能である。サブシステム10のこの制御によって、故障したサブシステム10に過電圧が生じ、その過電圧のエネルギーが対応する保護構成要素12によって吸収される。それによって、この保護構成要素12が短絡状態に移行する。すなわち、保護構成要素12がブレークダウンする。
【0030】
使用可能な最大エネルギーは遥かに十分であることから、この説明した制御方法は一部変更される。一部変更された制御方法の場合には、図1に基づく等価回路図にしたがって両変換整流器T1およびT2を含む故障した相モジュール100においては、正規動作と違って1つのサブシステム10だけが付加的にスイッチング状態Iにて制御され、そして正常な相モジュール100においては、1つずつのサブシステム10だけが付加的にスイッチング状態IIに制御される。それによって、故障したサブシステム10に生じる電圧は、付属の保護構成要素12をブレークダウンさせるために十分である。
【0031】
相モジュール100ごとの使用されるサブシステム10の選定およびそれぞれの個数によって、正常な相モジュール100により、電流iK2およびiK3によって図1に書き込まれた電流方向も、電流iK1の反対の電流方向も可能であることが保証されなければならない。
【0032】
多相電力変換回路の相モジュール100のサブシステム10のこの制御によって、直流電圧母線P0,N0における直流電圧ならびに負荷接続端子L1,L2,L3における交流電圧は、僅かしか、かつ前記時間幅しか影響を及ぼされない。
【0033】
健全なターンオフ制御可能な半導体スイッチにとって許容し得る結果として生じる電流パルスの高さは、既に述べたように予め決定することができる。電流パルスの測定は、分枝電流の測定値検出器が存在する場合には同様に実施することができる。このやり方で、予め定められた最大電流が到達されるように適合化された可変時間幅にて動作させることもできる。
【0034】
時間幅の上述のスイッチング状態を何度も繰り返して制御することもできる。この場合に、これらの制御する回数およびこれらの繰り返しの間の休止時間は、極端な事例において放電する故障サブシステム10の蓄積コンデンサ9ができるだけ速やかに再充電されるように選ばれている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】分散配置されたエネルギー蓄積器を有する公知の電力変換回路を示す等価回路図
【図2】公知のサブシステムの第1の実施形態を示す等価回路図
【図3】公知のサブシステムの第2の実施形態を示す等価回路図
【図4】公知のサブシステムの第3の実施形態を示す等価回路図
【図5】本発明による保護構成要素の第1の実施形態を示す回路図
【図6】本発明による保護構成要素の第2の実施形態を示す回路図
【図7】本発明による保護構成要素の第3の実施形態を示す回路図
【図8】本発明による保護構成要素の第4の実施形態を示す回路図
【図9】本発明による保護構成要素の第5の実施形態を示す回路図
【図10】本発明による保護構成要素の第6の実施形態を示す回路図
【符号の説明】
【0036】
1 ターンオフ制御可能な半導体スイッチ
2 ダイオード
3 ターンオフ制御可能な半導体スイッチ
4 ダイオード
5 ターンオフ制御可能な半導体スイッチ
6 ダイオード
7 ターンオフ制御可能な半導体スイッチ
8 ダイオード
9 蓄積コンデンサ
10 サブシステム
12 保護構成要素
14 ダイオード
16 接続端子
18 接続端子
20 サイリスタ
22 能動クランプ回路
24 ツェナーダイオード
26 アノード端子
28 ゲート抵抗
30 ゲート端子
42 ダイオード
32 抵抗
34 カソード端子
36 RCスナバ回路
38 コンデンサ
40 抵抗
42 ダイオード
44 逆流防止抵抗
100 相モジュール
L1〜L3 負荷接続端子
0,N0 直流母線
T1〜T6 変換整流器
C コンデンサ電圧
X21 端子電圧
X1,X2 接続端子
X3,X4
X1a,X2a 端子
Z インピーダンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側および下側の変換整流器(T1,…,T6)を有する少なくとも1つの相モジュール(100)を備えた電力変換回路であって、相モジュール(100)の直流電圧側が正および負の直流電圧母線(P0,N0)に導電接続され、各変換整流器(T1,…,T6)が電気的に直列に接続された少なくとも2つの2極のサブシステム(10)を有するような電力変換回路において、
各サブシステム(10)の接続端子(X1,X2)に対して電気的に並列に保護構成要素(12)が接続されていることを特徴とする電力変換回路。
【請求項2】
各2極のサブシステム(10)が、2つのターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3)と、2つのダイオード(2,4)と、単極性の蓄積コンデンサ(9)とを有し、両ターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3)が電気的に直列に接続されて単極性の蓄積コンデンサ(9)に対して電気的に並列に接続されていて、各ターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3)にダイオード(2,4)が逆並列に接続されていることを特徴とする請求項1記載の電力変換回路。
【請求項3】
各サブシステム(10)の接続端子(X1,X2)が、電気的に直列に接続されたターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3)のうち下側のターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1)の端子に導電接続されていることを特徴とする請求項2記載の電力変換回路。
【請求項4】
各サブシステム(10)の接続端子(X1,X2)が、電気的に直列に接続されたターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3)のうち上側のターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1)の端子に導電接続されていることを特徴とする請求項2記載の電力変換回路。
【請求項5】
2極のサブシステム(10)が、逆並列ダイオード(2,4,6,8)を備えた4つのターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3,5,7)と蓄積コンデンサ(9)とを有し、これらのターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3,5,7)がブリッジ回路をなし、ブリッジ回路の直流側端子に蓄積コンデンサ(9)が接続されていて、ブリッジ回路の交流側端子がサブシステム(10)の接続端子(X1,X2)をなすことを特徴とする請求項1記載の電力変換回路。
【請求項6】
保護構成要素(12)としてダイオード(14)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の電力変換回路。
【請求項7】
保護構成要素(12)としてサイリスタ(20)が設けられていて、サイリスタ(20)のアノード(26)が能動クランプ回路(22)によりサイリスタ(20)のゲート(30)に結合されていることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の電力変換回路。
【請求項8】
保護構成要素(12)として、逆直列接続された2つのダイオード(14,42)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の電力変換回路。
【請求項9】
保護構成要素(12)としてサイリスタ(20)が設けられていて、サイリスタ(20)のアノード(26)がツェナーダイオード(24)および逆流防止ダイオード(44)によりサイリスタ(20)のゲート(30)に結合されていることを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の電力変換回路。
【請求項10】
サイリスタ(20)のゲート(30)がゲート抵抗(28)を備えていることを特徴とする請求項7又は9記載の電力変換回路。
【請求項11】
サイリスタ(20)のアノード・カソード間に並列にRCスナバ回路(36)が接続されていることを特徴とする請求項7又は9記載の電力変換回路。
【請求項12】
ターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3,5,7)として絶縁ゲートバイポーラトランジスタが設けられていることを特徴とする請求項1乃至11の1つに記載の電力変換回路。
【請求項13】
ターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3,5,7)としてMOS電界効果トランジスタが設けられていることを特徴とする請求項1乃至12の1つに記載の電力変換回路。
【請求項14】
ターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3,5,7)としてゲートターンオフサイリスタが設けられていることを特徴とする請求項1乃至12の1つに記載の電力変換回路。
【請求項15】
ターンオフ制御可能な半導体スイッチ(1,3,5,7)として集積ゲート転流サイリスタが設けられていることを特徴とする請求項1乃至12の1つに記載の電力変換回路。
【請求項16】
次の方法ステップ、
a)相モジュール(100)内において故障したサブシステム(10)を求める方法ステップ、
b)相モジュール(100)において1つのサブシステム(10)が故障した場合に、この故障した相モジュール(100)の少なくとも付加的に1つのサブシステム(10)が予め定められた時間幅だけスイッチング状態Iに制御され、故障していない相モジュール(100)においてそれぞれ少なくとも付加的に1つのサブシステム(1)が予め定められた時間幅だけスイッチング状態IIに制御される方法ステップ
を有する請求項1記載の電力変換回路のための制御方法。
【請求項17】
方法ステップb)が複数回繰り返され、これらの繰り返しの間に予め定められた休止時間が守られることを特徴とする請求項16記載の制御方法。
【請求項18】
各サブシステム(10)の蓄積コンデンサ(9)に生じる電圧(UC)が求められ、この求められた電圧(UC)が予め定められた許容変動幅と比較され、その電圧(UC)が予め定められた許容変動幅を外れるや否やサブシステム(10)が故障したとして検出されることを特徴とする請求項16又は17記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−506736(P2009−506736A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527423(P2008−527423)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064828
【国際公開番号】WO2007/023064
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】