説明

分析装置、攪拌方法及び反応容器

【課題】構造が簡単で、反応容器の位置決めが容易であり、音波を局所的に集中させて液体試料を効率よく攪拌することが可能な分析装置、攪拌方法及び反応容器を提供すること。
【解決手段】検体と試薬とを含む液体試料を反応容器内で攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置、攪拌方法及び反応容器。検体と試薬とを含む液体試料を反応容器内で攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置1は、反応容器に音波を供給する発音体と、同じ発音体から発せられる音波を液体試料中で交わらせるように反応容器に供給される音波の少なくとも一部を偏向させる、反応容器に設けられた偏向部と、を備え、偏向部が交わらせた音波が形成する音波が局所的に集中した音場にともなって液体試料中に発生する循環流により液体試料を攪拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置、攪拌方法及び反応容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液等の生体試料を分析する自動分析装置は、検体の一部が次の検体の検査に持ち越されて分析結果に影響を及ぼすいわゆるキャリーオーバーを回避して精度の高い測定を行うため、試薬と検体とを含む液体試料を非接触で攪拌するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動分析装置は、液体試料を非接触で攪拌するために、前記液体試料を収容した反応容器の鉛直方向に沿って複数の圧電素子を一列に並べ、最下部の圧電素子が発生した超音波を反射して底部から液面に照射する反射部材を前記反応容器の下部に配置している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−242177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の自動分析装置は、前記液体試料の液面位置に存在する圧電素子を駆動し、この圧電素子が発生した水平に入射する超音波の音響放射圧と、最下部の圧電素子が発生し、反射部材で反射されて反応容器の下部から鉛直上方に入射した超音波の音響放射圧とによって前記液体試料中に旋回流を形成して攪拌を行っている。このため、特許文献1の自動分析装置は、前記液体試料の液面位置を検知する検知手段が必要であり、検知した液面位置に対応した圧電素子を駆動する必要上、構造や制御が複雑になるという問題があった。
【0005】
また、液体試料中に旋回流を効率よく形成するためには、音圧が強く作用する領域と、音圧が弱く作用する領域が液体試料中に存在する先鋭的な強度分布、即ち、音波が局所的に集中した音場を液体試料中に形成することが好ましい。この場合、特許文献1の自動分析装置は、少ない検体量で分析する目的から反応容器を小型化すると、圧電素子や反射部材に対する反応容器の位置決めが難しくなる。しかも、特許文献1の自動分析装置は、反応容器が圧電素子よりも小さくなった場合、音響レンズ等の音波集束手段を用いないと、液体試料中に音波が局所的に集中した先鋭的な強度分布を有する音場を形成することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、構造が簡単で、反応容器の位置決めが容易であり、音波を局所的に集中させて液体試料を効率よく攪拌することが可能な分析装置、攪拌方法及び反応容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る分析装置は、検体と試薬とを含む液体試料を反応容器内で攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、前記反応容器に形成され、前記液体試料を保持し、音波を前記液体試料中で交わらせることにより、前記音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成するように、前記反応容器に供給される音波の少なくとも一部を偏向させる偏向部と、前記反応容器の外側に配置され、当該反応容器に音波を供給する発音体と、を備え、前記音場によって発生する前記液体試料中の循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする。
【0008】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項2に係る攪拌方法は、反応容器に保持された検体と試薬とを含む液体試料を攪拌する攪拌方法であって、前記反応容器の外側から前記反応容器に音波を供給する工程と、前記音波の少なくとも一部を偏向させて前記音波を前記液体試料中で交わらせ、音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成する工程と、前記音場によって前記液体試料中に循環流を発生させる工程と、を含み、前記循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項3に係る反応容器は、検体と試薬とを含む液体試料を攪拌して反応させる際に使用する反応容器であって、外側から供給される音波を前記液体試料中で交わらせることにより、音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成するように前記音波の少なくとも一部を偏向させる偏向部を有し、前記音場によって発生する前記液体試料中の循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる分析装置、攪拌方法及び反応容器は、構造が簡単で、反応容器の分析装置に対する位置決めが容易であり、音波を局所的に集中させて液体試料を効率よく攪拌することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の分析装置、攪拌方法及び反応容器に係る実施の形態1を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の分析装置の一例を示す自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1の自動分析装置で用いる本発明の反応容器の斜視図である。図3は、本発明の攪拌方法を実施する攪拌デバイスを反応容器と共に示す概略構成図である。
【0012】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、反応テーブル6及び試薬テーブル15が互いに離間してそれぞれ周方向に沿って回転、かつ、位置決め自在に設けられている。また、自動分析装置1は、検体テーブル3と反応テーブル6との間に検体分注機構5が設けられ、反応テーブル6と試薬テーブル15との間には試薬分注機構13が設けられている。
【0013】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段(図示せず)によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0014】
検体分注機構5は、検体を後述する反応容器7に分注する手段であり、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次後述する反応容器7に分注する。
【0015】
反応テーブル6は、図1に示すように、駆動手段(図示せず)によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室6aが複数設けられている。各収納室6aは、検体を試薬と反応させる反応容器7が着脱自在に収納される。また、反応テーブル6には、光源8及び排出装置11が設けられている。光源8は、試薬と検体とが反応した反応容器7内の液体試料を分析するための分析光(340〜800nm)を出射する。光源8から出射された分析光は、反応容器7内の液体試料を透過し、光源8と対向する位置に設けた受光素子9によって受光される。受光素子9は、判断部18を介して分析部19に接続されている。分析部19は、反応容器7内の液体試料の吸光度に基づいて検体の成分や濃度等を分析する。一方、排出装置11は、図示しない排出ノズルを備えており、反応容器7から反応終了後の液体試料を前記排出ノズルによって吸引し、排出容器(図示せず)に排出する。ここで、排出装置11を通過した反応容器7は、図示しない洗浄装置に移送されて洗浄された後、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0016】
試薬分注機構13は、試薬を反応容器7に分注する手段であり、後述する試薬テーブル15の所定の試薬容器16から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0017】
試薬テーブル15は、図1に示すように、図示しない駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室15aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室15aは、試薬容器16が着脱自在に収納される。複数の試薬容器16は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル(図示せず)が貼付されている。
【0018】
ここで、試薬テーブル15の外周部には、試薬容器16に貼付した前記バーコードラベルに記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、判断部18へ出力する読取装置17が設置されている。判断部18は、受光素子9,排出装置11及び読取装置17と接続され、例えば、マイクロコンピュータ等が使用される。
【0019】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転する反応テーブル6によって周方向に沿って搬送されてくる反応容器7に検体分注機構5が検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次分注する。検体が分注された反応容器7は、反応テーブル6によって試薬分注機構13の近傍へ搬送されて所定の試薬容器16から試薬が分注される。そして、試薬が分注された反応容器7は、反応テーブル6によって周方向に沿って搬送される間に試薬と検体とが攪拌されて反応し、光源8と受光素子9との間を通過する。このとき、反応容器7内の液体試料は、受光素子9によって測光され、分析部19によって成分や濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、排出装置11によって反応終了後の液体試料が排出されて図示しない洗浄装置によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0020】
このとき、自動分析装置1は、反応テーブル6によって周方向に沿って搬送される反応容器7内の液体試料を攪拌デバイスによって攪拌し、試薬と検体とを反応させる。この液体試料の攪拌に用いる反応容器7と本発明の攪拌方法を実行する攪拌デバイスを以下に説明する。
【0021】
反応容器7は、図2に示すように、底部を有する円筒容器であり、外底面7aが平面に形成され、偏向部となる内底面7bは下方に凹の湾曲面に成形されている。反応容器7は、後述する発音体21が発する超音波の位相整合条件及び振幅整合条件を満たし、光源8から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器7は、自動分析装置1に組み込まれた図3に示す攪拌デバイス20によって保持した液体試料が攪拌される。
【0022】
攪拌デバイス20は、試薬分注機構13が反応容器7に試薬を分注する位置と互いに対向配置される光源8,受光素子9との間の収納室6a下部に配置されており、図3に示すように、発音体21、電源22、コントローラ23及び音響整合層24を有している。
【0023】
発音体21は、偏向部となる内底面7bの近傍に配置され、反応容器7に超音波を供給するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる超音波振動子である。発音体21は、反応容器7の内径dよりも大きい直径D(>d)の円板状に成形され、超音波を発する上面が平面であって、鉛直方向上方へ超音波を発する。電源22は、発音体21を駆動する交流電源である。コントローラ23は、電源22を制御して発音体21が発する超音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。音響整合層24は、反応容器7と発音体21との間の音響インピーダンスを最適化する手段で、エポキシ樹脂等の接着剤やシェラック等の他、ジェルや液体等を使用することができる。音響整合層24は、超音波の伝達効率を上げるため、発音体21が発する周波数の波長λに対して厚みがλ/4となるように調整する。
【0024】
以下、攪拌デバイス20による液体試料の攪拌方法を説明する。図4は、液体試料の攪拌方法を説明するフローチャートである。図5は、攪拌デバイスが発した超音波の屈折を説明する断面図である。
【0025】
先ず、本発明の攪拌方法は、攪拌デバイス20を用いてコントローラ23による制御の下に電源22によって発音体21を駆動し、図4に示すように、反応容器7に向けて超音波を発する(ステップS100)。これにより、発音体21から出射された超音波は、音響整合層24を通って外底面7aから反応容器7に入射される。
【0026】
このようにして反応容器7に入射した超音波は、反応容器7と液体試料との間の音響インピーダンスの相違によって偏向部となる内底面7bで屈折して液体試料に出射される。このとき、反応容器7は、偏向部となる内底面7bが超音波を集束する方向に偏向させ、超音波が液体試料中で交わるように湾曲面に成形されている。このため、図5に示すように、入射角θiで内底面7bに入射した超音波Wuは、法線Hに対して角度θr(=屈折角)で屈折する。但し、超音波Wuは、入射角θiが臨界角以上になると内底面7bで全反射してしまい、液体試料側へ屈折しなくなる。従って、内底面7bは、球面を使用するときには、半球面よりも狭い範囲、即ち、中心角が180°よりも小さい範囲の湾曲面に成形し、入射角θiが臨界角よりも小さくなるようにする。
【0027】
また、反応容器7は、内底面7bが焦点Fを中心とする半径Rの湾曲面の一部であるので、超音波Wuの入射位置によって入射角θiの大きさが異なり、発音体21が発した超音波Wuは、内底面7bから液体試料へ入射する際の屈折角θrが中央側で小さく(中央では屈折角θr=0)、外周側で大きくなる。このため、反応容器7の底部から液体試料へ入射した超音波Wuは、同じ発生源である発音体21から出射されているにも拘わらず、図5に示すように、液体試料中の焦点Fに集束し、焦点Fで交わる。
【0028】
この結果、発音体21が発した超音波Wuは、反応容器7から液体試料SLに入射する際に偏向部となる内底面7bで屈折し、図3に示すように、液体試料SL中で交わる。本発明の攪拌方法は、このようにして超音波Wuが局所的に集中した音場を液体試料SL中に形成する(ステップS102)。このため、反応容器7は、前記音場により、音波が交わる焦点F(図5参照)において音圧が最大となり、図3に示すように、反応容器7の内壁7c及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を循環する左右対称な2つの循環流Fcからなる対流が液体試料SL中に発生する。このように、本発明の攪拌方法は、超音波Wuが局所的に集中した前記音場により、液体試料SL中に循環流Fcを発生させる(ステップS104)。
【0029】
このとき、反応容器7内の液体試料は、図6に示す鉛直方向の流速分布を有している。一方、反応容器7内の液体試料は、図7に示す高さごとの流速分布を有している。ここで、図6は、焦点Fを原点とし、横軸に焦点Fを中心とする半径方向の距離を、縦軸に流速を、それぞれ示している。一方、図7は、反応容器7の焦点Fを通る軸心における内底面7bを原点とし、縦軸に軸心における内底面7bからの高さを、横軸に高さごとの流速を、それぞれ示している。このように、反応容器7は、焦点Fの部分、即ち、液体試料SLの中央における流速が最大となる。従って、本発明の攪拌方法は、この循環流Fcによって反応容器7内の液体試料SLを攪拌する(ステップS106)。
【0030】
このようにして、液体試料SLの攪拌が終了したら、反応容器7は、反応テーブル6によって光源8側へ搬送されると共に、未攪拌の新たな反応容器7が反応テーブル6によって攪拌デバイス20の位置へ搬送され、上述の攪拌操作が繰り返される。このように、本発明の自動分析装置1は、反応容器7に保持された液体試料の液面位置を検知する検知手段がなくても、簡単な構造でありながら確実に液体試料を攪拌することができる。
【0031】
ここで、反応容器7は、図3に示すように、反応容器7の内底面7b近傍に発音体21を配置するので、超音波Wuは内底面7bから最初に液体試料SLへ入射する。このため、反応容器7は、超音波が集束する焦点Fが液体試料SL中にあれば、液体試料SLの量とは無関係に液体試料SLを攪拌することができる。また、発音体21は、図3に示したように、超音波Wuが通過する反応容器7の内径dよりも大きい直径D(>d)に設定されている。このため、反応容器7は、発音体21に対する位置決めが容易であり、自動分析装置1における反応テーブル6の回転精度が低く、発音体21に対する位置が多少変化しても液体試料SLを確実に攪拌することができる。
【0032】
ここで、反応容器7は、発音体21が供給し、液体試料へ入射する超音波Wuを偏向部となる内底面7bによって屈折させている。このため、収容する液体試料の量が多い反応容器7は、図8−1に示すように、内底面7bの半径R1を大きく設定し、液体試料の量が少ない反応容器7は、図8−2に示すように、内底面7bの半径R2(<R1)を小さく設定する。
【0033】
また、反応容器7は、図9に示すように、液体試料が異なる比重ρ1,ρ2(ρ1<ρ2)を有する2種類の液体L1,L2からなるときには、音波が交わる位置である焦点Fが比重ρ2を有する下層の液体L2中に位置するようにする。このようにするためには、反応容器7は、液体L2の量を考慮して焦点Fを中心とする内底面7bの半径が小さいものを使用する。
【0034】
一方、反応容器は、偏向部となる内底面を有していれば、図10に示す第1の変形例である反応容器31のように、四角筒形状の容器でもよい。このとき、反応容器31は、反応容器7と同様に、外底面31aを平面とし、偏向部となる内底面31bを湾曲面とする。
【0035】
また、反応容器は、偏向部となる内底面を有していれば、図11に示す第2の変形例である反応容器33のように、鉛直方向に対して角度θ1傾斜していてもよい。このように傾斜した反応容器33は、攪拌デバイス20を用いて発音体21から超音波を発すると、音響整合層24を通って外底面33aから超音波が入射する。このとき、超音波は、内底面33bで屈折されて液体試料SLに入射し、図11に示すように集束して交わる。超音波が交わる位置は、反応容器33の中央から左側に変位し、液体試料SL中に発生する後述する循環流Fcの経路上となる。このため、液体試料SL中には超音波Wuが局所的に集中した音場が形成される。従って、反応容器33は、図11に示すように、液体試料SL中に内壁33c及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を時計方向に循環する循環流Fcが発生し、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。
【0036】
このように、実施の形態1の自動分析装置、攪拌方法及び反応容器は、構造が簡単であり、反応容器は、自動分析装置に対する位置決めが容易であり、音波を局所的に集中させて液体試料を効率よく攪拌することができる。
【0037】
(実施の形態2)
次に、本発明の反応容器に係る実施の形態2を図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の反応容器は、内底面のみを湾曲面としたのに対し、実施の形態2の反応容器は、内底面及び外底面を湾曲面としている。図12は、実施の形態2の反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。ここで、以下に説明する各反応容器は、実施の形態1において説明した自動分析装置で使用することにより液体試料を攪拌する。
【0038】
反応容器35は、図12に示すように、底部を有する円筒容器であり、偏向部となる外底面35a及び内底面35bが湾曲面に成形されている。反応容器35は、内径dが発音体21の直径Dよりも小さく設定されている。このため、反応容器35は、自動分析装置1で使用する場合、攪拌デバイス20に対する位置決めが容易であり、発音体21に対する位置が多少変化しても液体試料SLを確実に攪拌することができる。また、反応容器35は、外底面35a側に発音体21を配置するので、超音波が集束する焦点Fが液体試料SL中にあれば、液体試料SLの量とは無関係に液体試料SLを攪拌することができる。
【0039】
一方、反応容器35は、底面の内外を湾曲面としたので、発音体21が発した超音波は、音響整合層24を通って外底面35aから入射して僅かに屈折すると共に、内底面35bから液体試料SLに入射するときに、容器と液体試料SLとの音響インピーダンスの相違によって屈折する。このとき、反応容器35は、図12に示すように、鉛直方向に対して角度θ2傾斜させて音響整合層24に配置されている。このため、同じ発音体21を発生源とする超音波Wuは、反応容器35の中央から左側に変位した液体試料SL中の焦点Fに集束し、焦点Fで交わる。従って、図12に示す反応容器35は、超音波Wuが焦点Fに局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成される。このとき、反応容器35は、液体試料SL中の焦点Fにおける音圧が最大となっている。この結果、反応容器35は、内壁35c及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を時計方向に循環する循環流Fcが液体試料SL中に生じ、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。
【0040】
このとき、図12に示すように、超音波Wuが交わる位置である焦点Fは、循環流Fcの経路上に存在している。また、反応容器35は、内径dよりも発音体21の直径Dを大きく設定(D>d)することで、発音体21に対する位置決めを容易とすること、超音波が内底面35bで屈折して液体試料SLに入射するときの内底面35bにおける入射角の大きさが異なり、入射角が臨界角よりも小さくなるようにすることは、実施の形態1の反応容器7と同様である。
【0041】
ここで、外底面35a及び内底面35bを湾曲面とした反応容器35を使用する場合、自動分析装置1は、攪拌デバイスの発音体を湾曲させることで、超音波を偏向させてもよい。即ち、図13に示す攪拌デバイス25のように、電源22によって駆動される発音体26は、反応容器35の内径dよりも大きい反応容器35用の配置開口26aを有し、発した超音波が曲面の中心Cwに集束するように湾曲されている。このため、反応容器35との間に配置する音響整合層27は、発音体26の内部形状と反応容器35の外底面35aに対応する形状に成形されている。
【0042】
このような攪拌デバイス25を使用すると、図13に示すように、発音体26が発した超音波Wuは、中心Cwに集束するように音響整合層27を進み、外底面35aから反応容器35に入射する。そして、超音波Wuは、内底面35bから液体試料SLに入射するときに、反応容器35と液体試料SLとの音響インピーダンスの相違によって屈折する。ここで、超音波は、外底面35aから反応容器35に入射する際に外底面35aでも屈折するが、音響インピーダンスの差が小さいため、反応容器35と液体試料SLとの音響インピーダンスの差が大きい内底面35bでの屈折に比べると無視しうる程に小さい。
【0043】
このとき、反応容器35は、図13に示すように、内底面35bの湾曲中心として中心Ccを有している。このため、中心Cwに集束するように音響整合層27を進んで反応容器35に入射した同じ発音体26を発生源とする超音波Wuは、反応容器35から出射するときに中心Cc側へ屈折して液体試料SL中の焦点Fに集束し、焦点Fで交わる。従って、反応容器35は、図13に示すように、超音波Wuが焦点Fに局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成される。このとき、反応容器35は、液体試料SL中の焦点Fにおける音圧が最大となっている。この結果、反応容器35は、内壁35c及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を循環する左右対称な2つの循環流Fcからなる対流が液体試料SL中に発生し、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。
【0044】
ここで、発音体26は、反応容器35の内径dよりも大きい反応容器35用の配置開口26aを有している。このため、反応容器35は、音響整合層27のどこに配置してもよく、例えば、図14に示すように、鉛直方向に対して傾斜させると共に、右方へ変位させて音響整合層27に配置してもよい。このため、反応容器35を反応容器35に対してこのように配置すると、発音体26が発し、音響整合層27を通って反応容器35に入射した同じ発音体26を発生源とする超音波Wuは、内底面35bから液体試料SLに入射するときに、反応容器35と液体試料SLとの音響インピーダンスの相違によって屈折し、液体試料SL中の焦点Fに集束し、焦点Fで交わる。この結果、反応容器35は、超音波Wuが焦点Fに局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成される。このときの焦点Fは、図14に示すように、反応容器35の中央から僅かに左下側に変位した位置にあり、この部分において音圧が最大となる。この結果、反応容器35は、内壁35c及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を循環する時計廻りの循環流Fcが液体試料SL中に発生し、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。
【0045】
一方、攪拌デバイス25は、発音体26を湾曲させることで、超音波を偏向させていることから、反応容器は内底面及び外底面の双方を湾曲面とする必要はない。即ち、攪拌デバイス25は、図15に示すように、反応容器35に代えて実施の形態1の反応容器7を用いてもよい。
【0046】
上述の説明から明らかなように、実施の形態2の反応容器は、内底面及び外底面を偏向部として使用するので、実施の形態1の効果に加えて、超音波を偏向させて液体試料中で交わらせることにより、超音波がより局所的に集中した音場を液体試料内に効果的に形成することができる。
【0047】
(実施の形態3)
次に、本発明の反応容器に係る実施の形態3を図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の反応容器は、内底面を単一の湾曲面としたのに対し、実施の形態3の反応容器は内底面を二つの面から構成している。図16は、実施の形態3の反応容器の斜視図である。図17は、実施の形態3の反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。図18は、反応容器の内底面における一部の超音波の屈折を説明する拡大図である。
【0048】
反応容器37は、図16に示すように、底部を有する円筒容器であり、外底面37a(図17参照)が平面に成形され、偏向部となる内底面が半円の水平面37bと水平面37bに対して角度θ3(図18参照)傾斜した傾斜面37cとで構成されている。このため、反応容器37を攪拌デバイス20に位置決めすると、図17に示すように、発音体21が発した超音波は、音響整合層24を介して外底面37aから鉛直上方に向かって入射する。このとき、反応容器37は、偏向部となる内底面が水平面37bと傾斜面37cとで構成されている。
【0049】
このため、発音体21が発した超音波Wuは、図18に示すように、水平面37bに垂直に入射するため、水平面37bでは直進して液体試料SLに入射するが、傾斜面37cでは垂直から傾斜して入射するため、屈折して液体試料SLに入射する。従って、反応容器37は、図17に示すように、外底面37aから入射した同じ発音体21を発生源とする超音波Wuが中央から右側に変位した液体試料SL中の部分に集束して交わり、超音波Wuが右側に局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成される。このとき、反応容器37は、液体試料SL中の超音波Wuが集束した部分における音圧が最大となっている。この結果、反応容器37は、内壁37d及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を反時計方向に循環する循環流Fcが液体試料SL中に生じ、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。ここで、超音波Wuが液体試料SL中で交わる位置は、図17に示すように、循環流Fcの経路上に存在している。
【0050】
このとき、反応容器37内の液体試料は、図19に示す鉛直方向の流速分布を有している。一方、反応容器37内の液体試料は、図20に示す高さごとの流速分布を有している。ここで、図19は、反応容器37の水平断面の中心を原点とし、横軸に半径方向の距離を、縦軸に流速を、それぞれ示している。一方、図20は、反応容器37の水平断面の中心を通る軸心と水平面37b及び傾斜面37cの交線との交点を原点とし、縦軸に軸心における水平面37bからの高さを、横軸に高さごとの流速を、それぞれ示している。図19,図20に示すように、液体試料SL中の流速は、超音波が交わる位置で最大となっている。このように、反応容器37は、液体試料SL中に超音波Wuが局所的に集中した音場が形成される。このため、反応容器37は、前記音場によって循環流Fcによって収容した液体試料SLが効率よく攪拌される。
【0051】
ここで、反応容器は、内底面が二つの面から構成されていれば、図21に示す第1の変形例である反応容器39のように、底部を有する四角筒形状の容器でもよい。このとき、反応容器39は、外底面39aが平面であり、偏向部となる内底面が水平面39bと水平面39bに対して傾斜した傾斜面39cとで構成されている。このようにすると、用いる反応容器の形状面の自由度が増す。
【0052】
また、反応容器は、内底面が二つの面から構成されていれば、内底面の一方が曲面であってもよい。即ち、図22に示す第2の変形例である反応容器41は、外底面41a(図23参照)が平面であり、偏向部となる内底面は、右半分が半円からなる水平面41bと、左半分が曲面41cとによって構成されている。
【0053】
このため、反応容器41は、図23に示すように、攪拌デバイス20に位置決めすると、発音体21が発した超音波は、音響整合層24を介して外底面41aから鉛直上方に向かって入射する。このとき、反応容器41は、偏向部となる内底面が水平面41bと曲面41cとで構成されている。
【0054】
このため、同じ発音体21を発生源とする超音波Wuは、図23に示すように、水平面41bでは直進して液体試料SLに入射するが、曲面41cでは屈折して液体試料SLに入射する。従って、反応容器41は、図23に示すように、外底面41aから入射した同じ発音体21を発生源とする超音波Wuが中央から右側に変位した液体試料SL中の部分に集束して交わり、超音波Wuが右側に局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成される。このとき、反応容器41は、液体試料SL中の超音波Wuが集束した部分における音圧が最大となっている。この結果、反応容器41は、内壁41d及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を反時計方向に循環する循環流Fcが液体試料SL中に生じ、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。ここで、超音波Wuが液体試料SL中で交わる位置は、図23に示すように、循環流Fcの経路上に存在している。
【0055】
ここで、反応容器は、図24に示す第3の変形例である反応容器43のように、外底面43aが平面であり、偏向部となる内底面は、右半分が四角形の水平面43bと、左半分が四角形が湾曲した曲面43cとによって構成された四角筒形状の容器としてもよい。このようにすると、反応容器43は、反応容器39と同様に、容器形状の自由度が増す。
【0056】
上述の説明から明らかなように、実施の形態3の反応容器は、偏向部となる内底面を二つの面から構成しているので、実施の形態1の効果に加えて、超音波を偏向させて液体試料中で交わらせることがより容易となり、超音波がより局所的に集中した音場を液体試料内に効果的に形成することができる。
【0057】
(実施の形態4)
次に、本発明の反応容器に係る実施の形態4を図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1〜3の反応容器は、内底面や外底面で超音波を屈折させたのに対し、実施の形態4の反応容器は壁内の音響インピーダンス分布を異ならせることによって超音波を壁内で屈折させている。図25は、実施の形態4に係る反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。図26は、攪拌デバイスが発した超音波が反応容器の壁内に形成した屈折層で屈折される様子を説明する断面図である。
【0058】
反応容器45は、図25に示すように、外底面45aが平面であり、底壁45b内に偏向部となる音響屈折層45cが形成されている。音響屈折層45cは、反応容器45に比べて音響インピーダンスが小さい部分で、外底面45a側が半径Rの湾曲面の一部となっている。反応容器45は、音響屈折層45cを除いた部分を音響インピーダンス(密度,屈折率)の大きい素材、例えば、GeCl4,POCl3,AlCl3,TiCl4等を添加したガラスで作っておき、音響屈折層45cに対応する部分に音響インピーダンスの小さい合成樹脂等を埋め込んで、内底面45dを水平に成形したものである。あるいは、この逆に、反応容器45は、音響屈折層45cを除いた部分をガラスで作っておき、音響屈折層45cに対応する部分に音響インピーダンス(密度,屈折率)の大きい素材、例えば、BBr3,SiF4等を添加したガラスを埋め込んで成形してもよい。このため、反応容器45は、音響屈折層45cとして種々の素材を使用して製造することができ、用いる素材の自由度を高めることができる。
【0059】
従って、反応容器45は、図25に示すように、攪拌デバイス20に位置決めすると、発音体21が発した超音波は、音響整合層24を介して外底面45aから鉛直上方に向かって入射する。このとき、反応容器45は、底壁45b内に偏向部となる音響屈折層45cが形成されている。このため、発音体21が発した超音波Wuは、図26に示すように、外底面45aに垂直に入射した後、音響屈折層45cで入射角に応じて屈折され、内底面45dで更に屈折されて液体試料SLに入射する。従って、反応容器45は、図25に示すように、外底面45aから入射した同じ発音体21を発生源とする超音波Wuが液体試料SLの中央部分に集束して交わり、超音波Wuが中央に局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成される。このとき、反応容器45は、液体試料SL中の超音波Wuが集束した中央部分における音圧が最大となる。この結果、反応容器45は、内壁45e及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を循環する左右対称な2つの循環流Fcが液体試料SL中に対流となって生じ、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。ここで、超音波Wuが液体試料SL中で交わる位置は、図25に示すように、循環流Fcの経路上に存在している。
【0060】
ここで、反応容器は、底壁内に偏向部となる音響屈折層が形成されていれば、図27に示す第1の変形例である反応容器47のように、音響屈折層47cの一部が角度θ4傾斜していてもよい。このとき、反応容器47は、外底面47aが平面であり、内底面47dが水平に成形されている。このため、反応容器47は、図27に示すように、発音体21が発した超音波Wuの一部が音響屈折層47cを通過する際に屈折される。このため、液体試料SLに入射した同じ発音体21を発生源とする超音波Wuが液体試料SLの中央から右側に変位した部分に集束して交わり、反応容器47は、超音波Wuが局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成される。このとき、反応容器47は、液体試料SL中の超音波Wuが集束した部分における音圧が最大となっている。この結果、反応容器47は、内壁47e及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を循環する循環流Fcが液体試料SL中に反時計方向に生じ、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。ここで、超音波Wuが液体試料SL中で交わる位置は、図27に示すように、循環流Fcの経路上に存在している。
【0061】
また、反応容器は、図28に示す第2の変形例である反応容器49のように、音響屈折層49cの一部が湾曲していてもよい。このようにすると、反応容器49は、同じ発音体21を発生源とする超音波Wuの一部が音響屈折層49cを通過する際に屈折され、反応容器47と同様に、液体試料SL中に形成される超音波Wuが局所的に集中した音場によって循環流Fcが液体試料SL中に反時計方向に生じ、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。
【0062】
更に、反応容器は、図29に示す第3の変形例である反応容器51のように、鉛直方向に対して角度θ5傾斜していてもよい。このように傾斜した反応容器51は、攪拌デバイス20を用いて発音体21から超音波を発すると、音響整合層24を通って外底面51aから入射した超音波は、音響屈折層51c及び内底面51dで屈折されて液体試料SLに入射し、図29に示すように、反応容器51の中央から左側に変位した上部に集束して交わる。このため、反応容器51は、同じ発音体21を発生源とする超音波Wuが局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成される。このとき、反応容器51は、液体試料SL中の超音波Wuが局所的に集中した部分における音圧が最大となる。従って、反応容器51は、図29に示すように、液体試料SL中に内壁51e及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を時計方向に循環する循環流Fcが発生し、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。ここで、超音波Wuは、図29に示すように、液体試料SL中に発生する循環流Fcの経路上で交わる。
【0063】
上述の説明から明らかなように、実施の形態4の反応容器は、壁内の音響インピーダンス分布を異ならせることによって超音波を屈折させるので、実施の形態1の効果に加えて、反応容器の形状を変えることなく、超音波を偏向させて液体試料中で交わらせることができ、超音波が局所的に集中した音場を液体試料内に効果的に形成することができる。
【0064】
(実施の形態5)
次に、本発明の反応容器に係る実施の形態5を図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1〜3の反応容器は、超音波を屈折させて集束させたのに対し、実施の形態5の反応容器は容器内面で超音波を反射させて集束させている。図30は、実施の形態5に係る反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。図31は、攪拌デバイスが発した超音波が反応容器の壁内で反射される様子を説明する図30のA部拡大図である。
【0065】
反応容器53は、図30に示すように、底部を有する四角筒状の容器であり、外底面53a及び内底面53bが平面に形成され、鉛直方向に対して角度θ6傾斜している。このため、反応容器53は、攪拌デバイス20を用いて発音体21から超音波を発すると、音響整合層24を通って外底面53aから入射した超音波は、そのまま容器53を透過して液体試料SLに入射する。但し、反応容器53は、鉛直方向に対して角度θ6傾斜しているので、液体試料SLに入射した超音波Wuの一部は側壁53cの内面で反射され、図30に示すように、反射していない超音波Wuと反応容器53の中央から左側に変位した領域に集束して交わる。このため、反応容器53は、同じ発音体21を発生源とする超音波Wuが局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成される。
【0066】
このとき、反応容器53は、液体試料SL中の超音波Wuが交わる領域における音圧が最大となる。従って、反応容器53は、図30に示すように、液体試料SL中に側壁53cの内面及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を時計方向に循環する循環流Fcが発生し、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。ここで、超音波Wuは、図30に示すように、液体試料SL中に発生する循環流Fcの経路上で交わる。
【0067】
このとき、反応容器53は、側壁53cの内面で超音波Wuの一部を反射させることによって発音体21が発した超音波Wuを液体試料SL中で交わらせている。このため、反応容器53は、図31に示すように、側壁53cで反射する超音波Wuに関し、反射角θRL(=入射角θi)が臨界角よりも大きくなり、超音波Wuが全反射するように側壁53cの傾斜する角度θ6を設定する。
【0068】
ここで、反応容器は、容器内面で超音波を反射させて集束させることができれば、図32に示す第1の変形例である反応容器55のように、攪拌デバイス20を設置した側壁55cと対向する側壁55dが鉛直方向に対して外方へ角度θ7傾斜していてもよい。このとき、反応容器55は、外底面55a及び内底面55bが水平面に成形されている。
【0069】
従って、反応容器55は、攪拌デバイス20を用いて発音体21から超音波を発すると、音響整合層24を通って側壁55cに垂直に入射した超音波は、そのまま側壁55cを透過して液体試料SLに入射する。但し、反応容器55は、対向する側壁55dが角度θ7傾斜している。このため、液体試料SLに入射した超音波Wuは、側壁55dの内面で反射され、図32に示すように、反射前の超音波Wuと反応容器55の中央から右側に変位した領域Aiに集束して交わる。
【0070】
このとき、反応容器55は、液体試料SL中の超音波Wuが交わる領域Aiにおける音圧が最大となる。この結果、反応容器55は、同じ発音体21を発生源とする超音波Wuが局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成され、図32に示すように、液体試料SL中に側壁55c,55dの内面及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を反時計方向に循環する循環流Fcが発生する。これにより、反応容器55は、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。ここで、超音波Wuは、図32に示すように、液体試料SL中に発生する循環流Fcの経路上で交わる。
【0071】
ここで、反応容器55は、図32のB部を拡大した図33に示すように、側壁55dで反射する超音波Wuに関し、反射角θRL(=入射角θi)が臨界角よりも大きくなり、超音波Wuが全反射するように側壁55dの傾斜する角度θ7を設定する。
【0072】
また、反応容器は、図34に示す第2の変形例である反応容器57のように、攪拌デバイス20を設置した側壁57cが鉛直方向に対して内方へ角度θ8傾斜し、側壁57cと対向する側壁57dが鉛直方向に対して外方へ角度θ9傾斜していてもよい。このとき、反応容器57は、外底面57a及び内底面57bが水平に成形されている。また、反応容器57は、側壁57dで反射する超音波に関し、反射角が臨界角よりも大きくなり、超音波が全反射するように側壁57c,57dの傾斜する角度θ8,θ9が設定されている。
【0073】
従って、反応容器57は、攪拌デバイス20を用いて発音体21から超音波を発すると、音響整合層24を通って側壁57cに垂直に入射した超音波は、そのまま側壁57cを透過して液体試料SLに入射する。但し、反応容器57は、側壁57cが角度θ8、対向する側壁57dが角度θ9傾斜しているので、液体試料SLに入射した超音波Wuは側壁57dの内面で反射され、図34に示すように、反射前の超音波Wuと反応容器57の中央から右側下部に変位した領域Aiで集束して交わる。
【0074】
このとき、反応容器57は、液体試料SL中の超音波Wuが交わる領域Aiにおける音圧が最大となる。このため、反応容器57は、同じ発音体21を発生源とする超音波Wuが局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成され、図34に示すように、液体試料SL中に側壁57c,57dの内面及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を反時計方向に循環する循環流Fcが発生する。これにより、反応容器57は、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。ここで、超音波Wuは、図34に示すように、液体試料SL中に発生する循環流Fcの経路上で交わる。
【0075】
さらに、反応容器は、図35に示す第3の変形例である反応容器59のように、攪拌デバイス20を設置した側壁59cが鉛直方向に対して内方へ傾斜し、液体試料に入射した超音波が内底面59bで反射するようにしてもよい。このとき、反応容器59は、外底面59a及び内底面59bが水平に成形されている。
【0076】
従って、反応容器59は、図35に示すように、発音体21が発した超音波が中央から内底面59b側に変位した領域Aiで集束して交わる。このとき、反応容器59は、液体試料SL中の超音波Wuが交わる領域Aiにおける音圧が最大となる。このため、反応容器59は、同じ発音体21を発生源とする超音波Wuが局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成され、図35に示すように、液体試料SL中に側壁59c,59dの内面及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を反時計方向に循環する循環流Fcが発生する。これにより、反応容器59は、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。ここで、超音波Wuは、図35に示すように、液体試料SL中に発生する循環流Fcの経路上で交わる。
【0077】
一方、反応容器は、図36に示す第4の変形例である反応容器61のように、攪拌デバイス20を設置した側壁61cと対向配置された側壁61d内に鉛直方向に対して上部が外方へ傾斜した表面を有する反射層61eを形成し、液体試料から側壁61dに入射した超音波を反射層61eで反射するようにしてもよい。このとき、反応容器61は、側壁61c,61dが鉛直であり、反射層61eは、実施の形態4の反応容器に形成した音響屈折層と同様にして形成する。また、反応容器61は、外底面61a及び内底面61bが水平に成形されている。
【0078】
従って、反応容器61は、攪拌デバイス20を用いて発音体21から超音波を発すると、音響整合層24を通って側壁61cに垂直に入射した超音波は、そのまま側壁61cを透過して液体試料SLに入射する。このとき、反応容器61は、側壁61c,61dが鉛直(平行)である。このため、液体試料SLを透過した超音波Wuは、側壁61dに垂直に入射し、傾斜している反射層61eの表面で反射された後、側壁61dと液体試料SLとの界面で屈折して液体試料SLに出射する。
【0079】
従って、液体試料SLに入射した超音波Wuは、図36に示すように、反射層61eで反射した超音波Wuと反応容器57の中央から右側上部に変位した領域Aiで集束して交わる。このとき、反応容器61は、液体試料SL中の超音波Wuが交わる領域Aiにおける音圧が最大となる。このため、反応容器61は、同じ発音体21を発生源とする超音波Wuが局所的に集中した音場が液体試料SL中に形成され、図36に示すように、液体試料SL中に側壁61c,61dの内面及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を反時計方向に循環する循環流Fcが発生する。これにより、反応容器61は、収容した液体試料SLが循環流Fcによって攪拌される。ここで、超音波Wuは、図36に示すように、液体試料SL中に発生する循環流Fcの経路上で交わる。
【0080】
上述の説明から明らかなように、実施の形態5の反応容器は、容器内面で超音波を反射させて集束させるので、実施の形態1の効果に加えて、側壁の傾斜角度等を含めて反応容器を所定形状とすることにより、超音波がより局所的に集中した音場を液体試料内に効果的に形成することができる。
【0081】
(実施の形態6)
次に、本発明の反応容器に係る実施の形態6を図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1〜5の反応容器は、同じ発音体が供給した超音波の少なくとも一部を偏向させて超音波を液体試料中で交わらせていた。これに対し、実施の形態6の反応容器は、二つの発音体を用い、各発音体が発した超音波の少なくとも一部を偏向させて超音波を液体試料中で交わらせている。図37は、実施の形態6に係る反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。
【0082】
反応容器65は、図37に示すように、底部を有する四角筒状の容器であり、第1攪拌デバイス20Aに載置される外底面65aが平面に成形され、偏向部となる内底面が水平面65bと湾曲面65cとで構成されている。また、反応容器65は、側壁65dに第2攪拌デバイス20Bが設置され、側壁65dと対向する側壁65eが鉛直方向に対して外方へ傾斜している。このため、反応容器65は、第1攪拌デバイス20Aの発音体21が発した超音波が外底面65aから鉛直上方に向かって入射する。このとき、反応容器65は、偏向部となる内底面が水平面65bと湾曲面65cとで構成されている。このため、第1攪拌デバイス20Aの発音体21が発した超音波Wuは、図37に示すように、水平面65bでは直進して液体試料SLに入射するが、湾曲面65cでは屈折して液体試料SLに入射する。従って、反応容器65は、図37に示すように、外底面37aから入射した超音波Wuが中央から右側に変位した液体試料SL中の部分に集束して交わる。
【0083】
一方、第2攪拌デバイス20Bの発音体21が発した超音波は、音響整合層24を通って側壁65dに垂直に入射し、そのまま側壁65dを透過して液体試料SLに入射する。そして、液体試料SLに入射した超音波Wuは、側壁65dの内面で反射され、図37に示すように、反射前の超音波Wuと反応容器65の中央から右側に変位した領域に集束して交わる。この結果、反応容器65は、液体試料SL中の超音波Wuが交わる部分や領域における音圧が最大となる。このため、反応容器65は、外底面65aから入射した第1攪拌デバイス20Aの発音体21を発生源とする超音波Wuによって内壁65d,65eに沿って液体試料SL内を反時計方向に循環する第1循環流Fc1が液体試料SL中に生じる。また、反応容器65は、側壁65dから入射した第2攪拌デバイス20Bの発音体21を発生源とする超音波Wuによって内壁65d,65e及び液体試料SLの気液界面Ifに沿って液体試料SLの外周近傍を反時計方向に循環する第2循環流Fc2が液体試料SL中に生じる。このため、反応容器65は、収容した液体試料SLが第1循環流Fc1と第2循環流Fc2とによって攪拌される。ここで、超音波Wuが液体試料SL中で交わる位置は、図37に示すように、第1循環流Fc1や第2循環流Fc2の経路上に存在している。
【0084】
上述の説明から明らかなように、実施の形態6の反応容器は、二つの発音体を用いるので、実施の形態1の効果に加えて、超音波がより局所的に集中した音場を液体試料内に効果的に形成することができる。
【0085】
なお、上記各実施の形態は、攪拌デバイスの発音体としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる超音波振動子を用いた場合について説明した。しかし、音波が局所的に集中した音場を液体試料中に形成し、液体試料に循環流を発生させて攪拌することができれば、櫛型電極(IDT: Inter Digital Transducers)を基板表面に形成した圧電振動子を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明にかかる分析装置、攪拌方法及び反応容器は、自動分析装置において検体と試薬とを含む液体試料をキャリーオーバーを生ずることなく攪拌するのに有用である。
【0087】
上述の説明によれば、以下の付記に挙げる各項およびそれらの項を任意に組み合わせた発明が得られる。
【0088】
〔付記〕
(付記項1) 検体と試薬とを含む液体試料を反応容器内で攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、前記反応容器に形成され、前記液体試料を保持し、音波を前記液体試料中で交わらせることにより、前記音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成するように、前記反応容器に供給される音波の少なくとも一部を偏向させる偏向部と、前記反応容器の外側に配置され、当該反応容器に音波を供給する発音体と、を備え、前記音場によって発生する前記液体試料中の循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする分析装置。
【0089】
(付記項2) 前記発音体と前記反応容器との間には、さらに音響整合層が配置されていることを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0090】
(付記項3) 前記反応容器は、前記発音体が発する音波の位相整合条件及び振幅整合条件を満たし、340〜800nmの波長領域に含まれる光の80%以上を透過する材料からなることを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0091】
(付記項4) 前記発音体は、超音波領域の周波数を含む音波を発することを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0092】
(付記項5) 前記循環流は、前記反応容器の内壁及び前記液体試料の気液界面に沿って前記液体試料の外周近傍を循環する流れであることを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0093】
(付記項6) 前記液体試料は、前記音波が交わる位置において音圧が最大であることを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0094】
(付記項7) 前記音波は、前記液体試料中で集束する部分で交わることを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0095】
(付記項8) 前記音波は、前記反応容器の中央から変位し、前記液体試料中に発生する循環流の経路上で交わることを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0096】
(付記項9) 前記音波は、前記液体試料が異なる比重を有する複数の液体からなるときには、下層の液体中で交わることを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0097】
(付記項10)前記反応容器は、前記音波が最初に前記液体試料へ入射する部分として内底面を含むことを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0098】
(付記項11) 前記発音体は、前記音波が通過する前記反応容器の外底面よりも大きい面積を有することを特徴とする付記項10に記載の分析装置。
【0099】
(付記項12) 前記偏向部は、前記液体試料が接する壁であり、当該壁の形状或いは当該壁内における音響インピーダンス分布の相違に基づいて前記音波を集束する方向に偏向させ、音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成することを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0100】
(付記項13) 前記発音体は、略同一方向に前記音波を発することを特徴とする付記項12に記載の分析装置。
【0101】
(付記項14) 前記発音体は、前記音波を発する部分が平面であることを特徴とする付記項13に記載の分析装置。
【0102】
(付記項15) 前記反応容器は、入射する前記音波の方向に対して外面が略垂直であることを特徴とする付記項14に記載の分析装置。
【0103】
(付記項16) 前記反応容器は、前記音波が入射する外面が平面であることを特徴とする付記項15に記載の分析装置。
【0104】
(付記項17) 前記反応容器は、前記偏向部となる前記壁の内面及び/又は内部での前記音波の屈折によって音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成することを特徴とする付記項12に記載の分析装置。
【0105】
(付記項18) 前記反応容器は、前記壁の内面における法線の向きが、前記音波の前記液体試料への入射位置によって異なっていることを特徴とする付記項17に記載の分析装置。
【0106】
(付記項19) 前記壁の内面は、前記音波が前記反応容器から前記液体試料へ入射する各入射位置において、入射角が臨界角よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする付記項18に記載の分析装置。
【0107】
(付記項20) 前記反応容器は、前記音波が最初に前記液体試料へ入射する前記壁の内面が鉛直下方に凹の曲面に成形されていることを特徴とする付記項18に記載の分析装置。
【0108】
(付記項21) 前記反応容器は、前記音波が最初に前記液体試料へ入射する前記壁の内面が、曲面と平面との組み合わせによって構成されていることを特徴とする付記項18に記載の分析装置。
【0109】
(付記項22) 前記反応容器は、前記音波が最初に前記液体試料へ入射する前記壁の内面が平面に形成されていることを特徴とする付記項17に記載の分析装置。
【0110】
(付記項23) 前記反応容器は、前記偏向部となる前記壁の内面或いは前記壁内における前記音波の反射によって音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成することを特徴とする付記項12に記載の分析装置。
【0111】
(付記項24) 前記反応容器は、前記音波が最初に前記液体試料へ入射する前記壁の内面における入射角が臨界角よりも小さく設定されていることを特徴とする付記項23に記載の分析装置。
【0112】
(付記項25) 前記反応容器は、前記音波が最初に前記液体試料へ入射する前記壁の内面が平面であることを特徴とする付記項23に記載の分析装置。
【0113】
(付記項26) 前記反応容器は、前記音波が最初に前記液体試料へ入射する前記壁の第1の内面と前記液体試料に入射した前記音波が最初に反射する前記壁の第2の内面とが非平行であることを特徴とする付記項23に記載の分析装置。
【0114】
(付記項27) 前記反応容器は、前記第2の内面に対する前記音波の入射角が臨界角よりも大きく設定されていることを特徴とする付記項26に記載の分析装置。
【0115】
(付記項28) 前記発音体は、前記反応容器に供給する音波が前記液体試料中で交わるように偏向させて集束させることを特徴とする付記項1に記載の分析装置。
【0116】
(付記項29) 前記発音体は、前記反応容器内において前記音波を集束させることを特徴とする付記項28に記載の分析装置。
【0117】
(付記項30) 前記発音体は、前記音波を発する部分が凹曲面であることを特徴とする付記項29に記載の分析装置。
【0118】
(付記項31) 前記反応容器は、前記発音体が発した音波が入射する外面が凸曲面であることを特徴とする付記項28に記載の分析装置。
【0119】
(付記項32) 前記反応容器は、前記音波が最初に前記液体試料へ入射する前記壁の内面における入射角が臨界角よりも小さいことを特徴とする付記項31に記載の分析装置。
【0120】
(付記項33) 前記反応容器は、外面或いは内面において音波を屈折して偏向させることを特徴とする付記項28に記載の分析装置。
【0121】
(付記項34) 反応容器に保持された検体と試薬とを含む液体試料を攪拌する攪拌方法であって、前記反応容器の外側から前記反応容器に音波を供給する工程と、前記音波の少なくとも一部を偏向させて前記音波を前記液体試料中で交わらせ、音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成する工程と、前記音場によって前記液体試料中に循環流を発生させる工程と、を含み、前記循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする攪拌方法。
【0122】
(付記項35) 前記音波は、前記液体試料が異なる比重を有する複数の液体からなるときには、下層の液体中で交わることを特徴とする付記項34に記載の攪拌方法。
【0123】
(付記項36) 前記音波は、前記反応容器の壁の形状或いは当該壁内の音響インピーダンス分布の相違によって集束する方向に偏向され、前記液体試料中で交わることを特徴とする付記項34に記載の攪拌方法。
【0124】
(付記項37) 前記音波は、最初に前記液体試料へ入射する前記反応容器の壁の内面或いは前記反応容器の壁内における屈折によって集束する方向に偏向され、前記液体試料中で交わることを特徴とする付記項36に記載の攪拌方法。
【0125】
(付記項38) 前記音波は、最初に前記液体試料へ入射する前記反応容器の壁の内面或いは前記壁内における反射によって偏向され、当該液体試料に入射した前記音波と前記内壁面或いは前記壁内で反射した前記音波とが前記液体試料中で交わることを特徴とする付記項36に記載の攪拌方法。
【0126】
(付記項39) 前記音波は、前記反応容器へ向かう少なくとも一部を偏向させて前記液体試料中で交わらせることを特徴とする付記項34に記載の攪拌方法。
【0127】
(付記項40) 前記音波は、最初に前記液体試料へ入射する部分として前記反応容器の内底面を含むことを特徴とする付記項34に記載の攪拌方法。
【0128】
(付記項41) 前記音波は、当該音波が通過する前記反応容器の外面よりも広い領域から発せられることを特徴とする付記項40に記載の攪拌方法。
【0129】
(付記項42) 前記音波は、前記反応容器の外面或いは内面において偏向されることを特徴とする付記項34に記載の攪拌方法。
【0130】
(付記項43) 検体と試薬とを含む液体試料を攪拌して反応させる際に使用する反応容器であって、外側から供給される音波を前記液体試料中で交わらせることにより、音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成するように前記音波の少なくとも一部を偏向させる偏向部を有し、前記音場によって発生する前記液体試料中の循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする反応容器。
【0131】
(付記項44) 前記偏向部は、前記反応容器の中央から変位し、前記液体試料中に発生する循環流の経路上で前記音波を交わらせることを特徴とする付記項43に記載の反応容器。
【0132】
(付記項45) 前記偏向部音波は、前記液体試料が異なる比重を有する複数の液体からなるときには、下層の液体中で前記音波を交わらせることを特徴とする付記項43に記載の反応容器。
【0133】
(付記項46) 前記偏向部は、前記液体試料が接する前記反応容器の壁であり、当該壁の形状或いは当該壁内の音響インピーダンス分布の相違に基づく屈折によって前記音波を集束する方向に偏向させ、音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成することを特徴とする付記項43に記載の反応容器。
【0134】
(付記項47) 前記偏向部は、前記液体試料が接する前記反応容器の壁であり、当該壁の形状或いは当該壁内の音響インピーダンス分布の相違に基づく反射によって前記音波を集束する方向に偏向させ、音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成することを特徴とする付記項43に記載の反応容器。
【0135】
(付記項48) 前記反応容器は、前記音波が最初に前記液体試料へ入射する部分として内底面を含むことを特徴とする付記項43に記載の反応容器。
【0136】
(付記項49) 前記反応容器は、供給される音波を受ける外面が当該音波を供給する領域よりも狭いことを特徴とする付記項48に記載の反応容器。
【0137】
(付記項50) 前記反応容器は、前記音波を外面或いは内面において偏向することを特徴とする付記項43に記載の反応容器。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の実施の形態1に係る分析装置の一例を示す自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図1の自動分析装置で用いる本発明の実施の形態1に係る反応容器の斜視図である。
【図3】本発明の攪拌方法を実施する攪拌デバイスを反応容器と共に示す概略構成図である。
【図4】液体試料の攪拌方法を説明するフローチャートである。
【図5】攪拌デバイスが発した超音波の屈折を説明する断面図である。
【図6】反応容器における液体試料の鉛直方向の流速分布を示す図である。
【図7】反応容器における液体試料の高さごとの流速分布を示す図である。
【図8−1】容量が大きい反応容器の内底面の半径を示す断面図である。
【図8−2】容量が小さい反応容器の内底面の半径を示す断面図である。
【図9】異なる比重を有する複数の液体を攪拌する反応容器における、音波の交わる位置を説明する断面図である。
【図10】実施の形態1に係る反応容器の第1の変形例を示す斜視図である。
【図11】実施の形態1に係る反応容器の第2の変形例を示す斜視図である。
【図12】実施の形態2の反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図13】図12に示す反応容器の液体試料を攪拌する他の攪拌デバイスの構造を示す図である。
【図14】図13に示す攪拌デバイスにおける反応容器の他の使用例を示す図である。
【図15】反応容器の変形例を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図16】実施の形態3の反応容器の斜視図である。
【図17】実施の形態3の反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図18】反応容器の内底面における一部の超音波の屈折を説明する拡大図である。
【図19】反応容器における液体試料の鉛直方向の流速分布を示す図である。
【図20】反応容器における液体試料の高さごとの流速分布を示す図である。
【図21】実施の形態3に係る反応容器の第1の変形例を示す斜視図である。
【図22】実施の形態3に係る反応容器の第2の変形例を示す斜視図である。
【図23】図22の第2の変形例に係る反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図24】実施の形態3に係る反応容器の第3の変形例を示す斜視図である。
【図25】実施の形態4に係る反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図26】攪拌デバイスが発した超音波が反応容器の壁内に形成した屈折層で屈折される様子を説明する断面図である。
【図27】実施の形態4に係る反応容器の第1の変形例を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図28】実施の形態4に係る反応容器の第2の変形例を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図29】実施の形態4に係る反応容器の第3の変形例を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図30】実施の形態5に係る反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図31】攪拌デバイスが発した超音波が反応容器の壁内で反射される様子を説明する図30のA部拡大図である。
【図32】実施の形態5に係る反応容器の第1の変形例を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図33】攪拌デバイスが発した超音波が反応容器の壁内で反射される様子を説明する図32のB部拡大図である。
【図34】実施の形態5に係る反応容器の第2の変形例を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図35】実施の形態5に係る反応容器の第3の変形例を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図36】実施の形態5に係る反応容器の第4の変形例を攪拌デバイスと共に示す図である。
【図37】実施の形態6に係る反応容器を攪拌デバイスと共に示す図である。
【符号の説明】
【0139】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 反応テーブル
7 反応容器
8 光源
9 受光素子
11 排出装置
13 試薬分注機構
15 試薬テーブル
16 試薬容器
17 読取装置
18 判断部
19 分析部
20,25 攪拌デバイス
20A 第1攪拌デバイス
20B 第2攪拌デバイス
21,26 発音体
22 電源
23 コントローラ
24,27 音響整合層
31,33,35 反応容器
37,39,41 反応容器
43,45,47 反応容器
49,51,53 反応容器
55,57,59 反応容器
61,63,65 反応容器
Cc 反応容器内底面の湾曲中心
Cw 発音体の集束点
F 焦点
Fc 循環流
If 気液界面
L1,L2 液体
SL 液体試料
Wu 超音波
θ1〜θ9 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とを含む液体試料を反応容器内で攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、
前記反応容器に形成され、前記液体試料を保持し、音波を前記液体試料中で交わらせることにより、前記音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成するように、前記反応容器に供給される音波の少なくとも一部を偏向させる偏向部と、
前記反応容器の外側に配置され、当該反応容器に音波を供給する発音体と、
を備え、
前記音場によって発生する前記液体試料中の循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
反応容器に保持された検体と試薬とを含む液体試料を攪拌する攪拌方法であって、
前記反応容器の外側から前記反応容器に音波を供給する工程と、
前記音波の少なくとも一部を偏向させて前記音波を前記液体試料中で交わらせ、音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成する工程と、
前記音場によって前記液体試料中に循環流を発生させる工程と、
を含み、
前記循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする攪拌方法。
【請求項3】
検体と試薬とを含む液体試料を攪拌して反応させる際に使用する反応容器であって、
外側から供給される音波を前記液体試料中で交わらせることにより、音波が局所的に集中した音場を前記液体試料中に形成するように前記音波の少なくとも一部を偏向させる偏向部を有し、
前記音場によって発生する前記液体試料中の循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする反応容器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とを含む液体試料を反応容器内で攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって
前記反応容器に音波を供給する発音体と、
同じ発音体から発せられる音波を前記液体試料中で交わらせるように前記反応容器に供給される音波の少なくとも一部を偏向させる、前記反応容器に設けられた偏向部と、
を備え、
前記偏向部が交わらせた音波が形成する音波が局所的に集中した音場にともなって前記液体試料中に発生する循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
反応容器に保持された検体と試薬とを含む液体試料を攪拌する攪拌方法であって、
前記反応容器に音波を供給する工程と、
前記反応容器に供給された前記音波の少なくとも一部を偏向させて、同じ発音体から発せられる音波を前記液体試料中で交わらせ、これにより前記液体試料中に形成される前記音波が局所的に集中した音場によって前記液体試料中に循環流を発生させる工程と、
を含み、
前記循環流により前記液体試料を攪拌することを特徴とする攪拌方法。
【請求項3】
検体と試薬とを含む液体試料を攪拌して反応させる際に使用する反応容器であって、
同じ発音体が発する音波を前記液体試料中で交わらせるように、前記音波の少なくとも一部を偏向させる偏向部を有し、
前記偏向部が交わらせた音波が形成する音波が局所的に集中した音場にともなって前記液体試料中に発生する循環流により、前記液体試料を攪拌することを特徴とする反応容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate


【公開番号】特開2006−90992(P2006−90992A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280562(P2004−280562)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】