分波器及びラダー型フィルタ
【課題】 低損失化、高減衰量化および小型化の可能な分波器およびラダー型フィルタを提供すること。
【解決手段】 本発明は、アンテナ端子(Ant)と、アンテナ端子と接続した第1のフィルタ(10)および第2のフィルタ(20)を有し、第1のフィルタ(10)および第2のフィルタ(20)の少なくとも一方は、並列共振器と複数の直列共振器を有し、複数の直列共振器のうち一部の直列共振器(S1)にはインダクタ(L1)が並列に接続し、最もアンテナ端子側の直列共振器(S1)はインダクタ(L1)が並列に接続したラダー型フィルタであることを特徴とする分波器およびラダー型フィルタである。
【解決手段】 本発明は、アンテナ端子(Ant)と、アンテナ端子と接続した第1のフィルタ(10)および第2のフィルタ(20)を有し、第1のフィルタ(10)および第2のフィルタ(20)の少なくとも一方は、並列共振器と複数の直列共振器を有し、複数の直列共振器のうち一部の直列共振器(S1)にはインダクタ(L1)が並列に接続し、最もアンテナ端子側の直列共振器(S1)はインダクタ(L1)が並列に接続したラダー型フィルタであることを特徴とする分波器およびラダー型フィルタである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分波器及びラダー型フィルタに関し、特に並列共振器に直列にまたは直列共振器に並列にインダクタが接続された分波器及びラダー型フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴って携帯電話、携帯情報端末等が急速に普及している。例えば、携帯電話端末においては、800MHz〜1.0GHz帯および1.5GHz〜2.0GHz帯といった高周波帯が使用されている。これら移動通信システム用の機器には、共振器を用いた高周波用フィルタや、高周波用フィルタを用いた分波器が用いられている。
【0003】
これらに用いられる共振器は弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Resonator)共振器や圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)が用いられる。これら共振器の構成について説明する。図1(a)はFBARの断面図である。基板50(例えばシリコン基板)の空隙58上に下部電極膜52、圧電膜54、上部電極膜56が積層している。圧電膜54は例えば窒化アルムニウムが用いられる。図1(b)は異なるFBARの断面図である。基板50上に高音響インピーダンス層62と低インピーダンス層60を交互に積層した音響多層膜を形成し、その上に下部電極膜52、圧電膜54、上部電極膜56が積層している。
【0004】
図2はSAW共振器の上視図である。圧電基板70上に入力端子Inと出力端子Outに接続されたすだれ電極(IDT:Interdigital Transducer)とすだれ電極IDTの両側の反射器R0とが設けられる。IDTおよび反射器R0は例えばアルミニウム(Al)等の金属で形成される。なお、図中、反射器R0およびIDTの電極指は実際より少なく記載している。
【0005】
高周波フィルタとしては、例えば一端子共振器を直列と並列に接続したラダー型フィルタが用いられる。図3はラダー型フィルタの構成図を示した図である。入力端子Inと出力端子Outの間に、直列に直列共振器S1、S2、S3および並列に並列共振器P1、P2が接続される。図4および図5を用い、ラダー型フィルタの動作原理について説明する。ラダー型フィルタは直列共振器と並列共振器に分解することができる。図4(a)を参照に、直列共振器は、共振器S21を一端子対共振器としたとき、その2つの信号端子のうち、一方を入力端子In、他方を出力端子Outとしたものである。図4(b)を参照に、並列共振器は、共振器P21を一端子対共振器としたとき、その2つの信号端子のうち、一方をグランド端子に接続し、他方を入力端子Inと出力端子Outの短絡線路に接続したものである。
【0006】
図4(c)は、直列共振器と並列共振器の入力端子Inから出力端子Outへの通過特性を示した図である。横軸は周波数、縦軸は通過量である。直列共振器の通過特性は実線、並列共振器の通過特性は破線で示す。直列共振器の通過特性は、1つの共振点(共振周波数)frsと1つの反共振点(反共振周波数)fasとを有し、共振点frsで通過量は最大となり、反共振点fasで通過量は最小となる。一方、並列共振器の通過特性は、同様に、1つの共振点frpと1つの反共振点fapとを有するが、共振点frpで通過量は最小となり、反共振点fapで通過量は最大となる。
【0007】
図5(a)は1段構成のラダー型フィルタの構成図である。図5(a)を参照に、直列共振器S22が入力端子Inと出力端子Outに直列に接続され、並列共振器P22が出力端子Outとグランド間に接続される。このとき、直列共振器の共振点frsと並列共振器の反共振点fapは概一致するように設計する。図5(b)は1段構成のラダー型フィルタの入力端子Inから出力端子Outへの通過特性である。横軸は周波数、縦軸は通過量を示す。図5(a)の構成により、直列共振器S22と並列共振器P22の通過特性が合成され,図5(b)の通過特性が得られる。通過量は、直列共振器の共振点frsと並列共振器の反共振点fap付近が最大となり、直列共振器の反共振点fasおよび並列共振器の共振点frpが極小となる。そして、並列共振器の共振点frpから直列共振器の反共振点fasの周波数帯域が通過帯域となり、並列共振器の共振点frp以下および直列共振器の反共振点fas以上の周波数帯域が減衰域となる。このように、ラダー型フィルタはバンドパスフィルタとして機能する。
【0008】
このような、共振器を用いたフィルタを使用し分波器が提供されている。分波器は2つのバンドパスフィルタを用い、送信用フィルタを送信端子とアンテナ端子の間、受信用フィルタを受信端子とアンテナ端子の間に配置する。アンテナ端子と送信用フィルタまたはアンテナ端子と受信用フィルタの間に整合回路(例えば移相器)を設ける。そして、分波器は送信端子から入力した送信信号をアンテナ端子から出力し、アンテナ端子から入力した受信信号を受信端子から出力する機能を有する。
【0009】
整合回路の機能を、例えばアンテナ端子と受信用フィルタとの間に整合回路を設けた場合について説明する。整合回路は、送信信号の周波数帯において、アンテナ端子から見た受信用フィルタのインピーダンスがなるべく大きくなるようにするために使用される。これにより,送信端子から入力した送信信号の電力が受信用フィルタに侵入することを抑制することができる。
【0010】
分波器は、例えば送信用フィルタにおいては、送信信号が送信端子からアンテナ端子に通過する際の挿入損失の低減、受信用フィルタの通過帯域での減衰量の確保が求められている。受信用フィルタにおいても同様である。高性能な分波器を実現するために、ラダー型フィルタが用いられる。ラダー型フィルタは、比較的低損失で広帯域化でき、通過帯域近傍において高減衰量を得やすく、高耐電力性を有するためである。しかしながら、分波器に要求される性能はますます厳しくなってきている。さらなる低損失化、高減衰量の要求を満たすべく、以下の技術が開示されている。
【0011】
図6(a)に特許文献1の図12に開示された従来技術1に係るフィルタの構成を示す。直列共振器S1ないしS3並びに並列共振器P1およびP2を有するラダー型フィルタにおいて、出力端子Out側の直列共振器S3に並列にインダクタL3が接続される。これにより、高周波数側の帯域外減衰量を大きくすることができる。
【0012】
また、図6(b)は特許文献2の図3に開示された従来技術2に係るフィルタの構成を示す。直列共振器S1、S2および並列共振器P1を有するラダー型フィルタにおいて、直列共振器S1、S2に並列にそれぞれインダクタL1、L2が接続される。また、並列共振器P1とグランド間にインダクタLP1が接続される。そして、インダクタL1およびL2のインダクタンスに応じ共振点、反共振点を調整することができる。
【0013】
また、図7は特許文献3の図1に開示された従来技術3に係る分波器の構成を示す。分波器はアンテナ端子Antと送信端子Txとの間に、直列共振器S1ないしS3並びに並列共振器P1およびP2を有する送信用フィルタ10b(ラダー型フィルタ)を有する。また、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に、直列共振器S1´ないしS3´並びに並列共振器P1´およびP2´を有する受信用フィルタ20b(ラダー型フィルタ)を有する。さらに、送信用フィルタ10bおよび受信用フィルタ20bとアンテナ端子Antとの間に、キャパシタC01とインダクタL01を有する整合回路30を有する。そして、送信用フィルタ10bの送信端子Tx側の直列共振器S3にインダクタL3が、受信用フィルタ20bの真中の直列共振器S2´にインダクタL2´がそれぞれ並列に付加されている。このように、従来技術3は送信用フィルタ10または受信用フィルタ20bのアンテナ側の共振器とは異なる共振器にインダクタを並列に付加している。これにより、良好な損失および帯域外減衰量を確保している。
【0014】
特許文献4の図2開示された従来技術4に係るラダー型フィルタについて説明する。特許文献4の図2を参照に、並列共振器5には第1インダクタL1が直列に接続され、直列共振器7には第2インダクタL2が並列に接続されている。第1インダクタL1が並列共振器7に直列に接続されたことにより低域側にシフトした並列共振器5の共振点と、第2インダクタL2が直列共振器7に並列に接続されたことにより直列共振子7の共振点よりも低域側に発生する反共振点とが互いに略一致するように設計されている。これにより,通過帯域に対する,特に低域側阻止帯域の減衰量を大きくしている。
【0015】
特許文献5の図6に開示された従来技術5に係るラダー型フィルタについて説明する。特許文献5の図6において、直列共振器に直列にインダクタが接続され、前記直列共振器に並列にインダクタが接続されている。2つの並列共振器がグランド側で共通接続された後にグランドとの間にインダクタ(有極用L)が直列に接続されている。これにより、通過帯域近傍の減衰極の周波数を調整している。
【0016】
特許文献6の図2に開示された従来技術6に係る分波器について説明する。特許文献6の図2において、共通端子Antとグランドとの間に整合用インダクタLpを接続した分波器が開示されている。
【特許文献1】特開平09−167937号公報
【特許文献2】特開2004−135322号公報
【特許文献3】特開2003−332885号公報
【特許文献4】特開2004−173245号公報
【特許文献5】特開2002−223147号公報
【特許文献6】特開平10−313229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来技術1においては、フィルタを用い分波器を構成した場合の分波器としての特性については考慮されておらず、分波器の特性を向上させる具体的な対策も示されていない。従来技術2においては、すべての直列共振器に並列にインダクタが付加され、かつすべての並列共振器とグランド間にインダクタが付加されている。この構成では、分波器を構成した場合、相手帯域(例えば送信用フィルタに対する受信帯域)の減衰量を大きくできる。しかし、広帯域の減衰量は大きく悪化してしまう。従来技術3においては、直列共振器に並列に付加したインダクタにより、各フィルタ10、20の相手帯域の減衰量を大きくすることができる。しかし、送信用フィルタ10または受信用フィルタ20のアンテナ端子Ant側に整合回路30が必要となる。この従来技術では、インダクタL01とキャパシタC01の2つの素子を用いており、実装面積の縮小すなわち小型化が難しい。
【0018】
急速に市場が拡大しつつあるW-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)/UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)方式では,従来の分波器以上に,低損失,高アイソレーション,そして送信帯域と受信帯域はもちろん広帯域に渡って高減衰である分波器が求められている。また,この方式では,送信帯域が1920〜1980MHz、受信帯域が2110〜2170MHzであり、送信帯域と受信帯域との間隔が130MHzと広いことも特徴である。例えば、PCS方式(送信帯域:1850〜1910MHz、受信帯域:1930〜1990MHz)やCellular方式(送信帯域:824〜849MHz、受信帯域:869〜894MHz)では,送信帯域と受信帯域との間隔は20MHzと狭い。
【0019】
しかしながら、従来のラダー型フィルタの場合、前述したように並列共振器の共振の減衰極、あるいは、直列共振器の反共振の減衰極を利用して通過帯域近傍の減衰量は得やすいが、W−CDMA/UMTS方式のように,通過帯域から大きく離れた周波数帯域(送信用フィルタの受信帯域,受信用フィルタの送信帯域)の減衰量を大きく取るのは難しかった。
【0020】
以下に従来技術に対する課題について説明する。従来技術1、3においては、直列共振器にインダクタが並列に接続されている。しかし、並列共振器にはインダクタが付加されておらず、並列共振器の共振の減衰極は通過帯域近傍にあるので、通過帯域から大きく離れた周波数帯域の減衰量は十分確保することができない。
【0021】
従来技術2、4はともに,直列共振器に並列にインダクタが接続され、並列共振器に直列にインダクタが接続された回路構成になっている。しかしながら,特許文献2の図3や特許文献4の図22および23に示されるように、1個の並列共振器に対して直列にインダクタを接続した回路における共振の減衰極を、通過帯域から大きく離れた周波数帯域にもってくるためには、比較的大きな値のインダクタが必要となってしまう。このため,例えば,小型化のため、このインダクタをパッケージ内の配線パターンにより形成しようとした場合困難になる。また、特許文献4の図23に示されるように、並列共振器に対して直列にインダクタを接続した回路が2つとなる場合は、小型化が更に難しいだけでなく、2つのインダクタ間の電磁結合による特性劣化の問題が生じやすい。
【0022】
従来技術5においては、特許文献5の図1に示されるように,2つの並列共振器のグランド側を共通化した後,有極用インダクタが直列に接続されており、前記インダクタの値を比較的小さくできるメリットがある。しかしながら,特許文献4の明細書段落番号0081から0091で述べられているように、従来技術5においては,有極用インダクタの接続により生じる減衰極と直列共振器に並列にインダクタとキャパシタが接続されて生じる反共振の減衰極は大きくずれているため、特許文献5の図10あるいは図11に示されるように、有極用インダクタを接続しただけの特性(ケースNo.1)と直列共振器に並列にインダクタとキャパシタを接続した特性(ケースNo.2,3)とを比較しても,通過帯域の低周波側、高周波側ともに大きな減衰量の改善はしていない。
【0023】
なお,従来技術1、2、5においては,2つのフィルタを組合せ分波器を構成した場合の分波器としての特性については考慮されておらず、分波器の特性を向上させる具体的な対策も示されていない。さらに,特許文献2の図3および特許文献4の図22、23および特許文献5の図1、6に示される回路では,すべての直列共振器に並列にインダクタが接続され,かつすべての並列共振器とグランド間にインダクタが接続されている。この構成では,阻止帯域の減衰量は大きくできるものの,広帯域の減衰量は大きく悪化してしまう。
【0024】
本発明は、上記課題に鑑み、低損失化、高減衰量化および小型化の可能な分波器およびラダー型フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、アンテナ端子と、該アンテナ端子と接続した第1のフィルタおよび第2のフィルタと、を具備し、前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタの少なくとも一方は、並列共振器と複数の直列共振器を有し、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器にはインダクタが並列に接続し、最もアンテナ端子側の前記直列共振器はインダクタが並列に接続したラダー型フィルタであることを特徴とする分波器である。本発明によれば、整合回路が不要となり分波器を小型化することができる、さらに、前記ラダー型フィルタによりフィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0026】
本発明は、前記ラダー型フィルタの前記並列共振器とグランドとの間にインダクタが直列に接続されることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、前記ラダー型フィルタの自フィルタの相手帯域での減衰量を一層大きくすることができる。
【0027】
本発明は、前記並列共振器とグランドとの間に直列に接続された前記インダクタは、複数の前記並列共振器に接続されることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、実装面積を小さくし、分波器の一層の小型化が可能となる。
【0028】
本発明は、前記第1フィルタおよび前記第2のフィルタはともに前記ラダー型フィルタであることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、第1のフィルタ及び第2のフィルタともフィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0029】
本発明は、前記ラダー型フィルタの少なくとも一つは最もアンテナ端子側の前記直列共振器に加えその他の直列共振器の一部にもインダクタが並列に接続されていることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、自フィルタの相手帯域の減衰量を一層大きくすることができる。
【0030】
本発明は、前記ラダー型フィルタをミラー接続のラダー型フィルタの等価回路で表し、前記最もアンテナ端子側の直列共振器の容量値をC1、前記ラダー型フィルタのその他の直列共振器の容量値の平均値をC2としたとき、0.3<C1/C2<1であることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、ラダー型フィルタの自フィルタの相手帯域でのインピーダンスを大きくすることができるため、相手フィルタと組み合わせて分波器構造とした時のフィルタ単体からの損失劣化を小さくすることができる。
【0031】
本発明は、前記直列共振器および前記並列共振器は、圧電薄膜共振器および弾性表面波共振器のいずれか一方であることを特徴とする分波器とすることができる。
【0032】
本発明は、並列共振器と複数の直列共振器を有し、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器にはインダクタが並列に接続し、最もアンテナ端子に接続する端子側の前記直列共振器はインダクタが並列に接続し、前記並列共振器とグランドとの間にインダクタが直列に接続したラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、本ラダー型フィルタを分波器に用いることにより、整合回路が不要となり分波器を小型化することができ、さらに、前記ラダー型フィルタによりフィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0033】
本発明は、複数の直列共振器および複数の並列共振器と、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器に並列に接続された第1インダクタと、前記複数の並列共振器のうちグランド側が共通に接続された2つ以上の並列共振器の前記グランド側とグランドとの間に直列に接続された第2インダクタと、を具備することを特徴とするラダー型フィルタである。本発明によれば、第1インダクタと第2インダクタとを設けることにより低損失で阻止帯域の減衰量を大きくすることができる。また、第2インダクタが2つ以上の並列共振器に共通に接続されているため、阻止帯域に減衰極を形成するためのインダクタの所望値が小さくなり、小型化、低コスト化が容易となる。さらに、第1インダクタが複数の直列共振器の一部に接続されているため広帯域における減衰量の悪化を抑制することができる。
【0034】
本発明は、前記2つ以上の並列共振器は前記複数の並列共振器の全てであることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、第2インダクタが全ての並列共振器に共通に接続されているため、阻止帯域に減衰極を形成するためのインダクタの所望値がさらに小さくなり、小型化、低コスト化がより容易となる。
【0035】
本発明は、前記一部の直列共振器に前記第1インダクタが並列に接続されることにより前記一部の直列共振器の共振点よりも低周波側に生じる反共振の減衰極と、前記ラダー型フィルタにおいて前記2つ以上の並列共振器が前記グランド側で共通接続された後に前記グランドとの間に前記第2インダクタが直列に接続されることにより通過帯域よりも低周波側に生じる減衰極とが略一致していることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、通過帯域の低周波側の阻止帯域の減衰量を一層大きくすることができる。
【0036】
本発明は、前記一部の直列共振器に前記第1インダクタが並列に接続されることにより高周波側にシフトした前記一部の直列共振器の反共振の減衰極と、前記ラダー型フィルタにおいて前記2つ以上の並列共振器が前記グランド側で共通接続された後に前記グランドとの間に前記第2インダクタが直列に接続されることにより通過帯域よりも高周波側に生じる減衰極とが略一致していることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、通過帯域の高周波側の阻止帯域の減衰量を一層大きくすることができる。
【0037】
本発明は、前記複数の直列共振器のうち前記第1インダクタが並列に接続されない直列共振器が2つ以上あることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、広帯域における減衰量の悪化を一層抑制することができる。
【0038】
本発明は、前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器の少なくとも1つは、複数の共振器に分割され互いに直列接続または並列接続されていることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、耐電力性の向上、相互変調歪等の線形性の向上を図ることができる。
【0039】
本発明は、前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器は圧電薄膜共振器、弾性表面波共振器および境界波共振器のいずれかであることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、高Q、小型および低コストな共振器を用いることにより高性能、小型かつ低コストなフィルタを提供することができる。
【0040】
本発明は、前記第1インダクタは、集積型受動素子のインダクタおよびチップインダクタのいずれかであることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、集積型受動素子を用いることにより高性能かつ小型化可能なフィルタを提供することができる。また、チップインダクタを用いることにより高性能かつ低コストなフィルタを提供することができる。
【0041】
本発明は、前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器が形成されたチップを実装する実装部を具備し、前記第2インダクタは、前記実装部に形成された線路パターンであることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、小型で低コストなフィルタを提供することができる。
【0042】
本発明は、共通端子と接続した2つのフィルタを具備し、前記2つのフィルタのうち少なくとも一方は上記ラダー型フィルタであることを特徴とする分波器である。本発明によれば、上記ラダー型フィルタを用いたフィルタにおいて、低損失で阻止帯域の減衰量を大きくし、広帯域における減衰量の悪化を抑制し、かつ小型化、低コスト化することができる。
【0043】
本発明は、前記2つのフィルタのうち高周波側のフィルタは請求項11に記載のラダー型フィルタであることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、高周波側のフィルタの通過帯域の低周波側に位置するもう1つのフィルタの通過帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0044】
本発明は、前記高周波側のフィルタは受信用フィルタであることを特徴とする分波器とすることができる。
【0045】
本発明は、前記2つのフィルタのうち低周波側のフィルタは請求項12記載のラダー型フィルタであることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、低周波側のフィルタの通過帯域の高周波側に位置するもう1つのフィルタの通過帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0046】
本発明は、前記低周波側のフィルタは送信用フィルタであることを特徴とする分波器とすることができる。
【0047】
本発明は、前記ラダー型フィルタの最も前記共通端子側の共振器は直列共振器であり、前記直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、整合回路が不要とすることもでき、分波器を小型化することができる。
【0048】
本発明は、前記2つのフィルタはいずれも前記ラダー型フィルタであり、前記ラダー型フィルタはともに、最も前記共通端子側の共振器は直列共振器であり、前記直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、2つのフィルタにおいて、低損失で阻止帯域の減衰量を大きくし、広帯域における減衰量の悪化を抑制し、かつ小型化、低コスト化することができる。また、整合回路が不要とすることもでき、分波器を小型化することができる。
【0049】
本発明は、前記共通端子と前記2つのフィルタの少なくとも一方との間にハイパスフィルタとして機能する整合回路を具備することを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、低周波側の広帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0050】
本発明は、前記整合回路は、前記共通端子とグランドとの間に接続された第3インダクタであることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、整合回路が1つのインダクタで構成できるため、低損失、小型化、低コスト化が可能となる。
【0051】
本発明は、前記共通端子と前記2つのフィルタの少なくとも一方との間にローパスフィルタとして機能する整合回路を具備することを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、高調波の減衰量を大きくすることができる。
【0052】
本発明は、前記整合回路が、C−L回路、L−C回路およびπ型のC−L−C回路のいずれかであることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、整合回路を部品数が少なく構成できるため、低損失、小型化、低コスト化が可能となる。
【0053】
本発明は、前記整合回路が、前記共通端子側のキャパシタの容量値を他方のキャパシタの容量値より大きくしたπ型C−L−C回路であることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、整合を容易にとることができるため、一層低損失で高調波の減衰量を一層大きくすることができる。
【0054】
本発明は、前記整合回路は、集積型受動素子およびチップ素子の少なくとも一方からなることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、集積型受動素子を用いることにより高性能かつ小型化可能な分波器を提供することができる。また、チップ素子を用いることにより高性能かつ低コストな分波器を提供することができる。
【0055】
本発明は、前記2つのフィルタのうち一方である送信用フィルタは前記ラダー型フィルタであり、前記2つのフィルタのうち他方である受信用フィルタはダブルモード型フィルタを含むことを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、受信用フィルタにおいて、広帯域に渡り減衰量を大きく確保することができる。
【0056】
本発明は、前記ダブルモード型フィルタは不平衡型ダブルモード型フィルタおよび平衡型ダブルモード型フィルタのいずれかであることを特徴とする分波器とすることができる。
【0057】
本発明は、前記共通端子と前記ダブルモード型フィルタとの間に、直列に接続された共振器と、前記共振器に並列に接続されたインダクタと、を具備することを特徴とする分波器とすることができる。
【0058】
本発明は、請求項23記載の分波器において、前記共通端子とグランドとの間に接続された第3インダクタを具備し、前記ラダー型フィルタをミラー接続のラダー型フィルタの等価回路で表し、前記最も共通端子側の直列共振器の容量値をC1、前記ラダー型フィルタのその他の直列共振器の容量値の平均値をC2としたとき、0.3<C1/C2<1であることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、共通端子側から見たインピーダンスの整合をとりやすくすることができる。
【0059】
本発明は、少なくとも一方は直列共振器と並列共振器とを有するラダー型フィルタであり共通端子と接続された送信用フィルタおよび受信用フィルタと、前記ラダー型フィルタの前記並列共振器とグランドとの間に接続された第2インダクタと、前記ラダー型フィルタの前記直列共振器および前記並列共振器が形成されたチップを実装する実装部と、前記実装部に設けられ前記受信用フィルタと受信端子とを接続する受信線路と、前記実装部に設けられ前記送信用フィルタと送信端子とを接続する送信線路と、前記実装部に設けられ前記共通端子と前記受信用フィルタおよび前記送信用フィルタとを接続する共通線路と、前記実装部に設けられ前記第2インダクタを構成するインダクタ線路と、を具備し、前記インダクタ線路は対応する前記受信線路および前記送信線路の一方と、前記共通線路との間に設けられていることを特徴とする分波器である。本発明によれば、受信線路または送信線路と共通線路との電磁結合および橋絡容量を低減させることができる。よって、阻止帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0060】
本発明は、前記インダクタ線路は、前記対応する前記受信線路または前記送信線路の一方と前記受信線路および前記送信線路の他方との間に設けられていることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、送信線路と受信線路との間の電磁結合または橋絡容量を低減でき、対応するフィルタの相手帯域での減衰量を大きくすることができる。
【0061】
本発明は、前記実装部は、複数の積層を有し、前記インダクタ線路は、前記複数の積層に設けられていることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、受信線路または送信線路と共通線路との電磁結合および橋絡容量を一層低減させることができる。
【0062】
本発明は、前記インダクタ線路は、前記実装部に形成されグランドを接続するための複数のグランド端子に接続されていることを特徴とする分波器とすることができる。受信線路または送信線路と共通線路との電磁結合および橋絡容量を一層低減させることができる。
【0063】
本発明は、前記直列共振器は複数の直列共振器であり、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする分波器とすることができる。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、低損失化、高減衰量化および小型化の可能な分波器およびラダー型フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、図面を参照に本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0066】
実施例1は、送信帯域が1920〜1980MHzであり受信帯域が2110〜2170MHzである分波器の例である。図8(a)は実施例1に係る分波器の回路構成図である。この分波器は、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に送信用フィルタ10(第1のフィルタ)が接続されている。同様にアンテナ端子Antと受信用端子Rxとの間に受信用フィルタ20(第2のフィルタ)が接続されている。
【0067】
図9は送信用フィルタ10の回路構成を示す図である。図9を参照に、送信用フィルタ10は複数の直列共振器S1ないしS4並びに並列共振器P1およびP2を有するラダー型フィルタである。そして、最もアンテナ端子Ant側の直列共振器S1に並列にインダクタL1が接続している。また、並列共振器P1、P2とグランドとの間にはインダクタLP1が接続する。ここで、直列共振器S1ないしS4の容量値は各々2.83pF、並列共振器P1およびP2の容量値は各々1.41pF、インダクタL1およびLP1のインダクタンスはそれぞれ3.0nHおよび1.55nHとした。直列共振器S1とインダクタL1による減衰極および並列共振器P1およびP2による減衰極をともに受信帯域(2110〜2170MHz)近傍に得られるようにインダクタンスを決めた。
【0068】
図10(a)は実施例1に係るフィルタのアンテナ端子Ant側から入力したときの反射特性S11、図10(b)は送信端子Txから入力したときの反射特性S22を示す図である。図10(a)を参照に、受信帯域(2110〜2170MHz)におけるアンテナ端子Antからみたインピーダンスは非常に大きい。一方、受信帯域における送信端子Txからみたインピーダンスは小さい。
【0069】
図8(a)を参照に受信用フィルタ20も送信用フィルタ10と同様の回路構成を有するラダー型フィルタである。そして、アンテナ端子Ant側の直列共振器S1´にインダクタL1´が接続し、並列共振器P1´およびP2´とグランドとの間にインダクタLP1´が接続する。直列共振器S1´ないしS4´の容量値は各々2.07pF、並列共振器P1´およびP2´の容量値は各々1.87pF、インダクタL1´およびLP1´のインダクタンスはそれぞれ2.3nHおよび0.55nHとした。これらのインダクタンスは送信帯域(1920〜1980MHz)近傍に減衰極が得られるように決めた。そして、受信用フィルタ20の送信帯域におけるアンテナ端子Antからみたインピーダンスは非常に大きい。一方、送信帯域における受信端子Rxからみたインピーダンスは低い。
【0070】
図8(b)は比較例1に係る分波器の回路構成図である。比較例1に係る分波器は実施例1に係る分波器の送信用フィルタ10が逆に接続している。つまり、インダクタL1´が並列に接続した直列共振器S1´が送信端子Tx側に接続している。その他の構成は実施例1に係る分波器と同じであり説明を省略する。
【0071】
実施例1および比較例1に係る分波器の通過特性を評価した。図11(a)は送信帯域での送信用フィルタ10の通過特性を示した図であり、横軸は周波数であり縦軸は減衰量である。単体フィルタは送信用フィルタ10単体での通過特性を示す。図11(b)は受信帯域での受信用フィルタ20の通過特性を示した図である。単体フィルタは受信用フィルタ20単体での通過特性を示す。
【0072】
図11(a)を参照に、実施例1および比較例1に係る分波器の送信用フィルタ10は送信用フィルタ10単体に比べ挿入損失が約0.4dB大きいものの、実施例1と比較例1では、ほとんど同じ挿入損失である。一方、図11(b)を参照に、実施例1に係る分波器の受信用フィルタ20は受信用フィルタ20単体に比べ挿入損失が約0.4dB大きく、比較例1に係る分波器の受信用フィルタ20の挿入損失はさらに約0.8dB大きい。比較例1で受信用フィルタ20の挿入損失が大きい原因は、送信用フィルタ10のアンテナ端子Ant側からの反射特性のインピーダンスが図10(b)のように低いため、アンテナ端子Antから入力した信号の一部が送信用フィルタ10に漏れてしまうためである。一方、実施例1では、送信用フィルタ10のアンテナ端子Ant側からの反射特性のインピーダンスが図10(a)のように非常に大きいため、アンテナ端子Antから入力した信号の一部の送信用フィルタ10への漏洩を抑制できる。よって、受信用フィルタ20の挿入損失を低減することができる。
【0073】
実施例1に係る分波器は、送信用フィルタ10(第1のフィルタ)および受信用フィルタ20(第2のフィルタ)は複数の直列共振器S1ないしS4のうち一部の直列共振器S1にはインダクタL1が並列に接続し、最もアンテナ端子Ant側の直列共振器S1にインダクタL1が並列に接続している。このように、送信用フィルタ10において、直列共振器S1に並列にインダクタL1を接続することで、受信用フィルタの受信帯域(相手フィルタの相手帯域)での挿入損失を小さくすることができる。これにより、整合回路が不要となり、実装面積を縮小し分波器を小型化することができる。また、送信用フィルタ10において、直列共振器S1とインダクタL1とによる減衰極(反共振点)を受信帯域としているため、送信用フィルタ10の受信帯域(自フィルタの相手帯域)での減衰量を大きくすることができる。さらに、送信用フィルタ10において、直列共振器S1ないしS4の一部の共振器にインダクタを並列に接続することにより、従来技術2のように全部の直列共振器にインダクタを付加するのに比べ、送信、受信帯域より低周波数側での減衰量を大きくすることができる。受信用フィルタ20においても同様である。実施例1のように、送信帯域と受信帯域が隣接する場合、送信用フィルタの通過帯域と受信用フィルタの通過帯域が隣接し、各々のフィルタの通過帯域の裾野が一部重なっている。よって、自フィルタの相手帯域での減衰量を大きくすることは重要である。
【0074】
また、実施例1に係る分波器は、送信用フィルタ10(第1のフィルタ)および受信用フィルタ20(第2のフィルタ)の並列共振器P1およびP2とグランドとの間にインダクタLP1が直列に接続されている。そして、並列共振器P1およびP2とインダクタLP1による減衰極を受信帯域とする。これにより、自フィルタの相手帯域での減衰量を一層大きくすることができる。
【0075】
さらに、並列共振器P1およびP2に直列に接続されたインダクタLP1は、複数の並列共振器P1およびP2に接続される。このように、並列共振器とグランドとの間に設けられたインダクタをまとめることにより、受信(送信)帯域に減衰極を設けるためのインダクタンスの値を小さくできる。これにより、実装面積を小さくし、分波器の一層の小型化が可能となる。
【実施例2】
【0076】
実施例2は、実施例1より挿入損失を改善するため、送信用フィルタ10および受信用フィルタ20の最もアンテナ端子Ant側の直列共振器の容量値を他の直列共振器に比べ小さくした例である。実施例1に係る分波器と同様の構成の分波器において、直列共振器の好ましい関係について検討した。
【0077】
まず、ラダー型フィルタの直列共振器の容量値の定義について説明する。図12は直列共振器Sと並列共振器Pを1個ずつ配置したラダー型フィルタの基本区間である。図13(a)に示したラダー型フィルタF1はアンテナ端子Antと送信(受信)端子Tx/Rxとの間に図12の基本区間を4つ配置し、各区間同士のイメージインピーダンスが合うようにミラー接続される。各基本区間は図13(a)の破線で示す。アンテナ端子Ant側および送信(受信)端子Tx/Rx側の直列共振器S1およびS4以外の直列共振器S2およびS3は2つで1組となっており、B−Bで対称である。また、並列共振器P1およびP2は2つで1組となっており、A−Aで対称である。同様に並列共振器P3およびP4もC−Cで対称である。
【0078】
一方、図13(b)に示したラダー型フィルタF2は直列共振器S1、S23およびS4並びに並列共振器P12およびP34は各々1個ずつ接続している。フィルタF2の直列共振器S23はフィルタF1の直列共振器S2およびS3をまとめたものであり、共振器S23の容量値は共振器S2およびS3の各容量値の1/2倍である。同様に、共振器P12は共振器P1とP2をまとめたものであり、共振器P12の容量値は共振器P1およびP2の各容量値の2倍である。また、共振器P34についても共振器P12と同様である。これにより、フィルタF2はフィルタF1と同じ特性を得ることができる。
【0079】
このように、ラダー型フィルタの回路構成は、フィルタF1のようなミラー接続の回路構成で表すことができる。そこで、直列共振器の容量値をミラー接続した共振器の容量値で表すこととする。図13(a)を参照に、最もアンテナ端子Ant側の共振器S1の容量値をC1、その他の直列共振器S2ないしS4の容量値の平均値をC2とする。直列共振器の数が異なる場合も同様である。なお、以下の説明では送信用フィルタ10のC1、C2をCt1、Ct2とし、受信用フィルタ20のC1、C2をCr1、Cr2とする。
【0080】
図14(a)ないし図15(b)は実施例1に係る分波器と同じ回路構成の分波器の受信用フィルタ20のCr1/Cr2を1とし、送信用フィルタ10のCt2=2.83pFとしたとき、Ct1を変えた場合の送信用フィルタ10および受信用フィルタ20の特性を示した図である。図14(a)はCt1/Ct2に対し送信用フィルタ10の受信帯域端(2110MHzおよび2170MHz)での反射係数を示した図である。Ct1/Ct2が小さくなるほど、送信用フィルタ10の受信帯域(自フィルタの相手帯域)の反射係数は1に近づく。図14(b)はCt1/Ct2に対し受信用フィルタ20の受信帯域端(2110MHzおよび2170MHz)での挿入損失を示した図である。Ct1/Ct2が小さくなるほど、受信用フィルタ20の受信帯域(相手フィルタの相手帯域)での挿入損失は小さくなる。これは、図14(a)のように送信用フィルタ10の反射係数が大きくなるためである。図14(c)はCt1/Ct2に対し送信用フィルタ10の受信帯域端(2110MHzおよび2170MHz)での減衰量を示した図である。Ct1/Ct2が小さくなるほど、送信用フィルタ10の受信帯域(自フィルタの相手帯域)の減衰量は大きくなる。このように、図14(a)ないし図14(c)の図では、Ct1/Ct2が小さくなると分波器としての特性は向上する。
【0081】
図15(a)は、Ct1/Ct2に対し送信用フィルタ10の送信帯域端(1920MHzおよび1980MHz)での挿入損失を示した図である。Ct1/Ct2が0.5より小さくなると、送信用フィルタ10の送信帯域(自フィルタの自帯域)の低周波端の挿入損失が大きくなる。そしてCt1/Ct2が0.3以下になると、挿入損失が急激に大きくなる。図15(b)は、Ct1/Ct2に対し送信用フィルタ10の送信帯域端(1920MHzおよび1980MHz)での反射係数を示した図である。Ct1/Ct2が0.5より小さくなると、送信用フィルタ10の送信帯域(自フィルタの自帯域)の低周波端の反射係数は大きくなる。そしてCt1/Ct2が0.3以下になると、反射係数は急激に大きくなる。このように、Ct1/Ct2が0.3以下で送信帯域の低周波端の挿入損失が急激に大きくなるのは、送信用フィルタ10の整合が大幅に悪化することに起因する。
【0082】
図16(a)ないし図17(b)は実施例1に係る分波器と同じ回路構成の分波器の送信用フィルタ10のCt1/Ct2を0.6とし、受信用フィルタ20のCr2=2.07pFとしたとき、Cr1を変えた場合の受信用フィルタ20および送信用フィルタ10の特性を示した図である。図16(a)はCr1/Cr2に対し受信用フィルタ20の送信帯域端(1920MHzおよび1980MHz)での反射係数を示した図である。図16(b)はCr1/Cr2に対し送信用フィルタ10の送信帯域端(1920MHzおよび1980MHz)での挿入損失を示した図である。図16(c)はCr1/Cr2に対し受信用フィルタ20の送信帯域端(1920MHzおよび1980MHz)での減衰量を示した図である。図14(a)ないし図14(c)の結果と同様に、受信用フィルタ20のCr1/Cr2が小さくなるほど、受信用フィルタ20の送信帯域(自フィルタの相手帯域)の反射係数は1に近づく。これにより送信用フィルタ10の送信帯域(相手フィルタの相手帯域)の挿入損失は小さくなる。また、受信用フィルタ20の送信帯域(自フィルタの相手帯域)の減衰量は大きくなる。
【0083】
一方、図17(a)は、Cr1/Cr2に対し受信用フィルタ20の受信帯域端(2110MHzおよび2170MHz)での挿入損失を示した図である。図17(b)は、Cr1/Cr2に対し受信用フィルタ20の受信帯域端(2110MHzおよび2170MHz)での反射係数を示した図である。図15(a)および図15(b)と同様に、受信用フィルタ20のCr1/Cr2が0.5より小さくなると、受信用フィルタ20の受信帯域(自フィルタの自帯域)の反射係数は大きくなり、受信用フィルタ20の受信帯域(自フィルタの自帯域)の低周波端の挿入損失が大きくなる。そしてCr1/Cr2が0.3以下になると、挿入損失が急激に大きくなる。これは、受信用フィルタ20の整合が大幅に悪化することに起因する。
【0084】
実施例2においては、送信用フィルタ10および受信用フィルタ20であるラダー型フィルタをミラー接続のラダー型フィルタの等価回路で表し、最もアンテナ端子側の直列共振器の容量値をC1、ラダー型フィルタのその他の直列共振器の容量値の平均値をC2としたとき、C1/C2を1より小さくする。実施例1に係る分波器では、整合回路が不要となり分波器を小型化することができ、さらに、フィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができた。しかし、これだけでは、まだフィルタの帯域内損失あるいは相手帯域の減衰量が十分でない場合がある。そこで、実施例2のようにC1/C2を1より小さくすることにより、相手フィルタの相手帯域の挿入損失を改善しフィルタ単体の挿入損失に近づけることができる。さらに、自フィルタの相手帯域の減衰量も一層大きくすることができる。
【0085】
さらに、実施例2においては、C1/C2を0.3より大きくする。これにより、自フィルタの帯域での整合の悪化を抑制でき低損失を確保できる。以上より、0.3<C1/C2<1.0が好ましい。また、自フィルタの帯域での整合の悪化を一層抑制するため、0.5<C1/C2<1.0が一層好ましい。
【実施例3】
【0086】
図18(a)は実施例3に係る分波器の回路構成を示した図である。図8(a)の実施例1に対し、送信用フィルタ10aの直列共振器S1ないしS4にはインダクタが接続していない。また、送信用フィルタ10aとアンテナ端子Antとの間に整合回路30aが接続する。その他の構成は図8(a)と同じであり説明を省略する。
【0087】
図18(b)は実施例3の変形例に係る分波器の回路構成を示した図である。図8(a)の実施例1に対し、受信用フィルタ20aの直列共振器S1´ないしS4´にはインダクタが接続していない。また、受信用フィルタ20aとアンテナ端子Antとの間に整合回路30bが接続する。その他の構成は図8(a)と同じであり説明を省略する。整合回路30aおよび30bはインダクタやコンデンサを用いた集中定数回路、またはストリップラインまたはマイクロストリップラインを用いた分布定数回路で形成される。
【0088】
実施例3およびその変形例においても、最もアンテナ端子Ant側の直列共振器にインダクタを並列に接続したラダー型フィルタに対し、フィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。相手フィルタはラダー型フィルタ以外のフィルタであってもよい。また、整合回路30a、30bは相手帯域のインピーダンスを高くする機能があれば整合回路以外であっても良い。このように、送信用フィルタ(第1のフィルタ)および受信用フィルタ(第2のフィルタ)の少なくとも一方が、並列共振器と複数の直列共振器を有し、複数の直列共振器のうち一部の直列共振器にはインダクタが並列に接続し、最もアンテナ端子側の直列共振器はインダクタが並列に接続したラダー型フィルタであれば良い。
【実施例4】
【0089】
図19は実施例4に係る分波器の回路構成を示す図である。実施例4に係る分波器は、図8(a)の実施例1の回路構成に加え、受信用フィルタ20cの受信端子Rx側の直列共振器S4´に並列にインダクタンス2.3nHのインダクタL4´を接続する。共振器S4´とインダクタL4´により減衰極(反共振点)を送信帯域近傍に形成する。また、送信用フィルタ10および受信用フィルタ20cにおいて、Cr1/Cr2=1.0、Ct1/Ct2=0.6とした。その他の回路構成は図8(a)の実施例1と同じであり説明を省略する。また、比較例4は、実施例4でインダクタL4´を接続していない分波器である。
【0090】
図20は実施例4および比較例2に係る分波器の受信用フィルタ20cおよび20の周波数に対する減衰量を示す図である。実施例4は比較例4に対し、特に送信帯域(1920MHzから1980MHz)において、減衰量が大きく改善している。このように、受信用フィルタ20c(ラダー型フィルタ)は最もアンテナ端子Ant側の直列共振器S1に加えその他の直列共振器の一部(直列共振器S4´)にもインダクタL4´が並列に接続されている。このように、分波器を構成する少なくとも1つのラダー型フィルタを、最もアンテナ端子Ant側の直列共振器S1に加え、他の直列共振器の一部に設けても良い。これにより、自フィルタの相手帯域の減衰量を一層大きくすることができる。
【0091】
インダクタを付加する直列共振器は受信端子Rx側に限られず他の直列共振器S2´またはS3´であっても良い。また、受信用フィルタ20に限られず送信側フィルタ10であっても良い。これらにおいても、同様の効果が得られる。
【0092】
実施例1ないし4において共振器は弾性表面波共振器または圧電薄膜共振器を用いることが好ましい。また、直列共振器が4個、並列共振器が2個の例であったが、これに限られるものではない。
【0093】
図9のラダー型フィルタである送信用フィルタ10は、並列共振器P1、P2と複数の直列共振器S1ないしS4を有し、複数の直列共振器のうち一部の直列共振器S1にはインダクタL1が並列に接続し、最もアンテナ端子Antに接続する端子側の直列共振器S1はインダクタL1が並列に接続している。また、並列共振器P1およびP2とグランドとの間にインダクタLP1が直列に接続している。このラダー型フィルタである送信用フィルタ10を分波器に用いることにより、整合回路が不要となり分波器を小型化することができ、さらに、フィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。
【実施例5】
【0094】
実施例5はW−CDMA/UMTS方式(送信帯域:1920〜1980MHz、受信帯域:2110〜2170MHz)に用いられる受信用フィルタの例である。まず、直列共振器に並列にインダクタを接続した場合の通過特性について説明する。図21(a)のように、共振周波数が約2145MHzで静電容量が1.31pFである直列共振器S1´の回路Aと、図21(b)のように、この直列共振器S1´に並列に3.7nHの第1インダクタL1´を接続した回路Bとの通過特性の計算結果を図21(c)に示す。図21(c)を参照に、回路Aでは、直列共振器S1´の共振点(約2145MHz)の高周波側に反共振点が形成されている。一方、回路Bでは、直列共振器S1´の共振点の低周波側に反共振の減衰極が新たに形成される。このように、直列共振器S1´に第1インダクタL1´を並列に接続することにより、直列共振器S1´の低周波側である約1960MHzに減衰極を形成することができる。
【0095】
次に、図22(a)から図22(c)のフィルタAからCの通過特性を計算した。図22(a)を参照に、フィルタAは、複数の直列共振器S1´からS4´と複数の並列共振器P1´からP2´を有するラダー型フィルタである。直列共振器S1´の静電容量は1.31pF、直列共振器S2´からS4´の静電容量は1.74pF、並列共振器P1´およびP2´の静電容量は2.79pFである。図22(b)を参照に、フィルタBはフィルタAに加え、並列共振器P1´およびP2´のグランド側を共通に接続し、該グランド側とグランドとの間に0.24nHの第2インダクタLP1´が接続されている。図22(c)を参照に、フィルタCはフィルタBに加え、複数の直列共振器S1からS4の一部である直列共振器S1´に並列に3.7nHの第1インダクタL1´が接続されている。
【0096】
図23はフィルタAからCの通過特性を示す図である。図23を参照に、フィルタAに対し、フィルタBは第2インダクタLP1´を接続することにより、通過帯域の低周波側の約1960MHzに減衰極が新たに形成される。さらに、フィルタCはフィルタBに対し、第1インダクタL1´を接続することにより、約1960MHzにさらに減衰極が形成される。また、第2インダクタLP1´および第1インダクタL1´を接続することによる通過帯域における挿入損失の劣化はない。つまり低損失を維持している。このように、直列共振器S1´に第1インダクタL1´が並列に接続されることにより直列共振器S1´の共振点よりも低周波側に生じる反共振の減衰極と、ラダー型フィルタにおいて並列共振器P1´およびP2´がグランド側で共通接続された後にグランドとの間に第2インダクタLP1´が直列に接続されることにより通過帯域よりも低周波側に生じる減衰極とが略一致している。これにより、通過帯域の低損失を維持しつつ、受信フィルタの通過帯域の低周波側の1920から1980MHz(阻止帯域)の減衰量を大きくできる。
【0097】
なお、第1インダクタL1´を接続することにより生じる減衰極と、第2インダクタLP1´を接続することにより生じる減衰極とが略一致している、とは、所定の阻止帯域(実施例5では送信帯域:1920から1980MHz)において、第2インダクタLP1´を接続することにより生じる減衰極に対し、さらに第1インダクタL1´を接続することにより、減衰極の減衰量が5dB以上向上する程度に減衰極が一致する場合をいう。例えば、実施例5においては、図23を参照に、フィルタBの第2インダクタLP1´を接続した場合の阻止帯域での減衰極の減衰量は約44dBであるのに対し、フィルタCのように、さらに第1インダクタL1´を接続することにより阻止帯域での減衰極の減衰量は約66dBとなり、減衰量が5dB以上向上している。このように、2つの減衰極は略一致している。一方、従来技術5においては、特許文献5の図10、図11のように、有極用インダクタを接続しただけの特性(ケースNo.1)と直列共振器に並列にインダクタとキャパシタとを接続した特性(ケースNo.2、3)を比較すると、通過帯域の低周波側の減衰量の改善は5dB以下である。これは、2つの減衰極が略一致するように設計されていないためである。
【実施例6】
【0098】
実施例6は、W−CDMA/UMTS方式に用いられる送信用フィルタの例である。まず、直列共振器に並列にインダクタを接続した場合の通過特性について説明する。図24(a)のように、共振周波数が約1960MHzで静電容量が1.74pFである直列共振器S1の回路Cと、図24(b)のように、この直列共振器S1に並列に4.6nHの第1インダクタL1を接続した回路Dとの通過特性の計算結果を図24(c)に示す。図24(c)を参照に、回路Cでは、直列共振器S1の共振点(約1960MHz)の高周波側に反共振点(約2020MHz)が形成されている。回路Dでは、反共振点の周波数がさらに高周波側にシフトし約2140MHzに反共振点が形成される。このように、直列共振器S1に第1インダクタL1を並列に接続することにより、直列共振器S1の反共振点(減衰極)をより高周波側に形成することができる。
【0099】
図25(a)から図25(c)のフィルタDからFの通過特性を計算した。図25(a)を参照に、フィルタDは、複数の直列共振器S1からS3と複数の並列共振器P1からP2を有するラダー型フィルタである。直列共振器S1、S2、S3の静電容量はそれぞれ1.74pF、1.34pF、2.67pF、並列共振器P1´およびP2´の静電容量は1.6pFである。図25(b)を参照に、フィルタEはフィルタDに加え、並列共振器P1およびP2のグランド側を共通に接続し、該グランド側とグランドとの間に1.28nHの第2インダクタLP1が接続されている。図25(c)を参照に、フィルタFはフィルタEに加え、複数の直列共振器S1からS3の一部である直列共振器S1に並列に4.6nHの第1インダクタL1´が接続されている。
【0100】
図26はフィルタDからFの通過特性を示す図である。図26を参照に、フィルタDに対し、フィルタEは第2インダクタLP1を接続することにより、通過帯域の高周波側の約2140MHzに減衰極が形成される。さらに、フィルタFはフィルタEに対し、第1インダクタL1を接続することにより、約2140MHzにさらに減衰極が形成される。また、第2インダクタLP1および第1インダクタL1を接続することによる通過帯域における挿入損失の劣化はない。つまり低損失を維持している。このように、直列共振器S1に第1インダクタL1が並列に接続されることにより高周波側にシフトした直列共振器S1の反共振の減衰極と、ラダー型フィルタにおいて並列共振器P1およびP2がグランド側で共通接続された後にグランドとの間に第2インダクタLP1が直列に接続されることにより通過帯域よりも高周波側に生じる減衰極とが略一致している。これにより、通過帯域の低損失を維持しつつ、送信フィルタの通過帯域の高周波側の2210から2170MHzの減衰量を大きくできる。
【0101】
なお、第1インダクタL1を接続することによりシフトした減衰極と、第2インダクタLP1を接続することにより生じる減衰極とが略一致している、とは、所定の阻止帯域(実施例6では受信帯域:2210から2170MHz)において、第2インダクタLP1を接続することにより生じた減衰極に対し、さらに第1インダクタL1を接続することにより、減衰極の減衰量が5dB以上向上する程度に減衰極が一致する場合をいう。例えば、実施例6においては、図26を参照に、フィルタEの第2インダクタLP1を接続した場合の阻止帯域での減衰極の減衰量は約35dBに対し、フィルタFのように、さらに第1インダクタL1を接続することにより阻止帯域での減衰極の減衰量は約56dBとなり、減衰量が5dB以上向上している。このように、2つの減衰極は略一致している。一方、従来技術5においては、実施例5で説明したのと同様に、有極用インダクタを接続しただけの特性と直列共振器に並列にインダクタとキャパシタとを接続した特性とを比較すると、通過帯域の高周波側の減衰量の改善は5dB以下である。これは、2つの減衰極が略一致するように設計されていないためである。
【0102】
実施例5および実施例6は、W−CDMA/UMTS方式以外の用途にも用いることができる。しかしながら、実施例5および実施例6によれば、第1インダクタL1またはL1´と第2インダクタLP1またはLP1´により減衰極を形成するため、減衰極を通過帯域より離れて形成することができる。よって、W−CDMA/UMTS方式のように、受信帯域と送信帯域が離れている場合、実施例5および6を用いることが特に有効である。
【0103】
図27のように、送信用フィルタにおいて、並列共振器P1およびP2にそれぞれインダクタLP2およびLP3が接続した場合、約2140MHzに減衰極を形成しようとすると、インダクタLP2およびLP3のインダクタンスはそれぞれ4.3nHが必要となる。例えば、このインダクタLP2およびLP3をパッケージ内の線路パターンで形成しようとした場合、パッケージサイズの縮小化の妨げとなってしまう。また、2つのインダクタ間の電磁結合により特性が劣化しやすくなる。このように、第2インダクタは2以上の並列共振器に共通に接続されることが好ましい。
【0104】
図28(a)および図28(b)に示すフィルタHおよびIについて通過特性を計算した。図28(a)に図示したフィルタHは図25(c)のフィルタFと同じ構成であり、複数の直列共振器S1からS3にうち1つの直列共振器S1に第1インダクタL1が並列に接続されている。図28(b)を参照に、フィルタHに加え、直列共振器S2に並列に9.2nHの第1インダクタL2、直列共振器S3に並列に4.6nHの第1インダクタL3がそれぞれ接続されている。このように、直列共振器S1からS3の全てに第1インダクタL1からL3が並列に接続されている。
【0105】
図29を参照に、フィルタIはフィルタHに比べ低周波数側(約1300MHz以下)で減衰量が劣化している。このように、第1インダクタL1からL3を直列共振器S1からS3に全て設けると低周波側の減衰量が劣化してしまう。さらに、阻止帯域に減衰極を形成するのに、大きなインダクタが多数必要になり、低コスト化、小型化には不向きである。特に、低周波側の減衰量の劣化を抑制するためには、第1インダクタは複数の直列共振器S1からS3の一部に接続されることが好ましい。さらに、フィルタHのように、複数の直列共振器S1からS3のうち第1インダクタL1が並列に接続されない直列共振器S2およびS3が2つ以上あることがより好ましい。
【実施例7】
【0106】
実施例7は、第2インダクタが共通に接続される並列共振器がラダー型フィルタが有する複数の並列共振器の一部の例である。図30を参照に、実施例7に係るラダー型フィルタは、複数の直列共振器S5からS8および複数の並列共振器P3からP5を有している。複数の直列共振器S5からS8の一部である直列共振器S4に並列に第1インダクタL4が接続されている。並列共振器P3およびP4のグランド側を共通に接続し、該グランド側とグランドとの間に第2インダクタLP4が接続されている。さらに、並列共振器P5のグランド側とグランドとの間にインダクタLP5が接続されている。第1インダクタL4および第2インダクタLP4のインダクタンスは、第1インダクタL4と第2インダクタLP4とによる減衰極により、1つの減衰極が形成されるように設定される。好ましくは2つの減衰極がほぼ一致するように設定される。これにより、形成された減衰極での減衰量を大きくすることができる。
【0107】
実施例5から実施例7において、直列共振器および並列共振器の数は任意に設定できる、また、第1インダクタL1、L1´またはL4を接続する直列共振器S1、S1´またはS5に限られず任意の直列共振器とすることができる。また、第2インダクタLP1、LP1´またはLP4を接続する並列共振器は複数の並列共振器と共通に接続していれば良く、実施例5および実施例6のように、ラダー型フィルタを構成する複数の並列共振器の全部であってもよいし、実施例7のようにする複数の並列共振器の一部であってもよい。第2インダクタを接続する並列共振器は複数の並列共振器の全てと共通に接続する場合の方が、必要なインダクタの数と値を小さくできる。
【0108】
実施例5から実施例7によれば、第1インダクタL1、L1´またはL4と第2インダクタLP1、LP1´またはLP4とを設けることで、図23および図26に示したように、低損失でかつ阻止帯域の減衰量を大きくすることができる。また、第2インダクタLP1、LP1´またはLP4が2つ以上の並列共振器に共通に接続されているため小型化、低コスト化が容易となる。さらに、第1インダクタL1、L1´またはL4が複数の直列共振器の一部に接続されているため、図29に示したように低周波側の広帯域における減衰量の悪化を抑制することができる。
【実施例8】
【0109】
実施例8は、直列共振器または並列共振器の少なくとも1つを複数の共振器に分割され互いに直列接続または並列接続されている例である。図31(a)を参照に、実施例6のフィルタFに対し、直列共振器S1が2つの共振器に分割され、2つの共振器が互いに直列接続されている。図31(b)を参照に、実施例6のフィルタFに対し、直列共振器S1が2つの共振器に分割され、2つの共振器が互いに並列接続されている。図31(c)を参照に、実施例6のフィルタFに対し、並列共振器P1が2つの共振器に分割され、2つの共振器が互いに直列接続されている。図31(d)を参照に、実施例6のフィルタFに対し、並列共振器P1が2つの共振器に分割され、2つの共振器が互いに並列接続されている。
【0110】
実施例8によれば、耐電力性、相互変調歪(IMD:Inter Moduration Distortion)等の線形性を向上させることができる。分割された2つの共振器は分割前の1つの共振器と静電容量が不変であることが好ましい。なお、分割する共振器は直列共振器S1、並列共振器P1に限られず、任意の直列共振器および並列共振器とすることができる。また、複数の直列共振器および並列共振器を分割しても良い。
【実施例9】
【0111】
実施例9は実施例5のフィルタCを積層パッケージに実装した例である。図32は、3.7nHの第1インダクタL1´として用いる集積型受動素子IPD(Integrated Passive Device)チップ119の平面図である。例えば石英等の絶縁性または半導体の基板80上に、第1インダクタとしてスパイラルコイル82が例えば銅等の低抵抗金属を用い形成される。スパイラルコイル82の両端はパッド84に接続される。パッド84にはフェースダウン実装のためのバンプ86が形成される。スパイラルコイル82が接続されていないパッド84にもダミーバンプ88が形成される。ダミーバンプ88は電気的接続を目的としないが、機械的接続を目的とするバンプである。バンプ86およびダミーバンプ88は例えば金等で形成される。
【0112】
図33は直列共振器S1´からS4´及び並列共振器P1´からP2´を形成したフィルタチップ118の平面図である。なお、圧電膜94の下の下部電極92は外周を破線で示している。図33を参照に、例えばシリコン基板90上に、下部電極92、圧電膜94および上部電極96が積層し形成される。下部電極92および上部電極96にはフェースダウン実装のためのバンプ98が形成される。圧電膜94を挟み上部電極96と下部電極92とが対向する領域が共振部99である。下部電極92および上部電極96は例えばRu、Mo、W、Pt等の金属膜で形成される。圧電膜94は例えばAlN、ZnO等の圧電膜で形成される。このような圧電薄膜共振器の共振周波数は、下部電極92、圧電膜94および上部電極96の厚さと厚さ方向の縦振動の伝搬速度により設定することができる。
【0113】
図34(a)および図34(b)はIPDチップ119およびフィルタチップ118を積層パッケージ110に実装した図である。図34(a)は、実施例9に係るフィルタの平面図(キャップ117は図示していない)である。積層パッケージ110のベース層112の表面(ダイアタッチ面)にIPDチップ119およびフィルタチップ118がフェースダウン実装されている。図34(b)は図34(a)のA−A断面図である。積層パッケージ110は、例えばセラッミクからなる絶縁層であるキャビティ層113、ベース層112および111が積層されて形成されている。キャビティ層113上には金属製のキャップ117(メタルリッド)が密着され、フィルタチップ118およびIPDチップ119を気密封止するキャビティを形成する。フィルタチップ118およびIPDチップ119はベース層112の表面にバンプ121を用いフェースダウン実装される。
【0114】
ベース層112および111の表面には導電性の線路パターン115が形成されている。ベース層111の裏面には導電性のフットパッド114が形成される。ベース層111表面の線路パターン115とベース層112表面の線路パターン115とはベース層112を貫通する導電性材料が埋め込まれたビア109により電気的に接続される。同様に、ベース層111の表面の線路パターン115とフットパッド114とはベース層111を貫通するビア109により接続される。フットパッド114とフィルタチップ118およびIPDチップ119とは、ビア109および線路パターン115を介して接続される。0.24nHの第2インダクタLP1´はベース層112表面の線路パターン115、ベース層112を貫通するビア109、ベース層111表面の線路パターン115、ベース層111を貫通するビア109を用いて形成される。
【0115】
実施例9では、第1インダクタL1´をIPDチップ119で形成する。IPDチップ119で形成されたインダクタは高Qであり、かつ小型、低背とすることができる。よって、IPDチップ119を用いることにより高性能かつ小型化可能なフィルタを提供することができる。第1インダクタL1´はIPDチップ119以外にもチップインダクタを用いることもできる。チップインダクタは積層パッケージ110のベース層112の表面に実装してもよいが、積層パッケージ110の外に設けても良い。チップインダクタは高Qであり低コストである。よって、チップインダクタを用いることにより高性能かつ低コストなフィルタを提供することができる。
【0116】
第2インダクタLP1´として、積層パッケージ110(実装部)に形成された線路パターン115およびビア109を用いるため、小型化、低コスト化可能なフィルタを提供することができる。なお、実施例9では、実装部として積層パッケージ110を例に説明したが、実装部はフィルタチップ118およびIPDチップ119を実装する機能を有していればよく、積層基板等の基板を用いることもできる。
【0117】
直列共振器S1´からS4´および並列共振器P1´からP2´として圧電薄膜共振器を用いた例であったが、圧電薄膜共振器としては図1(a)または図1(b)で示したものを用いることができる。また、図2に示した弾性表面波共振器を用いることもできる。さらに弾性境界波共振器を用いることもできる。これらの共振器は高Qで小型化、低コスト化が可能である。よって、これらを用いることにより高性能、小型かつ低コストなフィルタを提供することができる。
【0118】
図35(a)および図35(b)が弾性境界波共振器を示した図である。図35(a)の平面図のように、圧電基板100上にIDTとIDTの両側に反射器R0とが設けられている。IDTには出力端子Out、入力端子Inである入出力パッド108が接続されている。図35(b)は図35(a)のA−A断面図である。圧電基板100上に例えば銅からなる電極102が設けられ、電極102上に2種類の絶縁膜として例えば酸化シリコン膜104および酸化アルミニウム膜106が設けられている。共振周波数は弾性表面波共振器と同様に、弾性波の伝搬速度と電極102の周期により設定することができる。
【実施例10】
【0119】
実施例10は実施例5から実施例9のフィルタを用い、分波器を形成した例である。図36は実施例5のフィルタCを受信用フィルタ20、実施例6のフィルタFを送信用フィルタ10に用いた分波器の回路図である。送信用フィルタ10が共通端子Antと送信端子Txとの間、受信用フィルタ20が共通端子Antと受信端子Rxとの間に接続される。図37は実施例10の送信用フィルタ10および受信用フィルタ20の通過特性を示す図である。実施例10は図36の構成に限られず、共通端子Antに接続する2つのフィルタ10、20を具備し、2つのフィルタ10、20の少なくとも一方を実施例5から9のいずれかのフィルタとすることができる。これにより、分波器において、実施例5から実施例9とフィルタと同様の効果を奏することができる。
【0120】
2つのフィルタ10、20のうち高周波側のフィルタである受信用フィルタ20を実施例5のフィルタCとすることができる。これにより、受信用フィルタ20の通過帯域の低周波側に位置するもう1つのフィルタである送信用フィルタ10の通過帯域での受信用フィルタ20の減衰量を大きくすることができる。また、2つのフィルタ10、20のうち低周波側のフィルタである送信用フィルタ10を実施例6のフィルタFとすることができる。これにより、送信用フィルタ10の通過帯域の高周波側に位置するもう1つのフィルタである受信用フィルタ20の通過帯域での送信用フィルタ10の減衰量を大きくすることができる。特に、図37のように、送信用フィルタ10と受信用フィルタ20との通過領域の裾野が重ならない程度に通過領域が離れている場合、相手帯域に減衰極を形成できるため有効である。
【0121】
さらに、実施例1のように、2つのフィルタ10、20のうちいずれか一方のラダー型フィルタにおいて、最も共通端子Ant側の共振器は直列共振器S1またはS1´であり、直列共振器S1またはS1´に並列に第1インダクタL1またはL1´が接続されている構成とすることができる。また、2つのフィルタ10、20はいずれもラダー型フィルタであり、いずれも最も共通端子Ant側の共振器は直列共振器S1およびS1´であり、直列共振器S1およびS1´に並列に第1インダクタL1およびL1´が接続されている構成とすることができる。これらの構成によれば、実施例1と同様に、整合回路を不要とすることもできる。よって分波器を小型化することができる。また、フィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。
【実施例11】
【0122】
実施例10の分波器を積層パッケージを用い形成した場合の課題について説明する。実施例9の図34(b)を用い説明したように、第2インダクタLP1およびLP1´は積層パッケージ110の線路パターン115およびビア109により形成される。積層パッケージ110のベース層111、112には、第2インダクタLP1およびLP1´以外にも、フィルタチップ118やIPDチップ119を接続する線路パターン115、ビア109、フットパッド114が形成される。これらは信号線またはグランド線として用いられる。その結果。共通端子Antには寄生容量が付加され、共通端子Antから各フィルタをみたインピーダンスが容量性側にシフトしてしまう。このため整合が悪くなってしまう。
【0123】
図38は実施例11に係る分波器の回路図である。整合回路30cとして7nHの第3インダクタLA1が共通端子Antとグランドとの間に接続されている。その他の構成は実施例10の図36と同じである。図39(a)は実施例10と実施例11との共通端子Antからフィルタを見たインピーダンスを示すスミスチャートである。図39(a)のように、実施例10においてはインピーダンス性が容量性側にシフトしているが、実施例11は実施例10に比べ矢印のようにインピーダンスが誘導性側にシフトし改善している。図39(b)は送信用フィルタ10および受信用フィルタ20の通過帯域の拡大図である。実施例11は共通端子から各フィルタ10、20をみたインピーダンスが改善しているため、図39(b)のように通過帯域の挿入損失が改善する。
【0124】
さらに、整合回路30cはハイパスフィルタ(HPF)であるため、特に低周波側であるDC近傍の減衰量を改善することができる。例えば、実施例10および実施例11の100MHzでの減衰量はそれぞれ約35dBおよび約55dBである。このように、共通端子Antと2つのフィルタ10、20のうち少なくとも一方との間にハイパスフィルタとして機能する整合回路30cを設けることが好ましい。これにより、整合回路を付加したフィルタ10または20のDC近傍の減衰量を大きくすることができる。
【0125】
さらに、実施例11のように整合回路30cを1つの第3インダクタLA1で形成できるため、低損失、小型化、低コスト化が可能となる。実施例11においては、実施例2のように、第1インダクタL1(またはL1´)が並列に接続された最も共通端子Ant側の直列共振器S1(またはS1´)静電容量を他の直列共振器S2およびS3(またはS2´からS4´)より小さくすることが好ましい。これにより、共通端子Ant側から見たインピーダンスの整合をとりやすくすることができる。ハイパスフィルタとして機能する整合回路30cとしては実施例11の例に限られない。例えば、直列にキャパシタ、並列にインダクタをそれぞれ1つ以上設けた整合回路も使用することができる。
【実施例12】
【0126】
実施例12は、実施例11を積層パッケージに実装した例である。図40(a)は実施例12に係る分波器の上視図(キャップは図示していない)であり、図40(b)は図40(a)のA−A断面図である。積層パッケージ110のベース層112の表面にIPDチップ130、送信用フィルタチップ124および受信用フィルタチップ123がフェースダウン実装されている。その他の構成は図34と同じであり、説明を省略する。
【0127】
図41は図38に積層パッケージに設けられた線路パターンとの対応を示した図である。送信用フィルタ10の直列共振器S1からS3および並列共振器P1およびP2が送信用フィルタチップ124に形成され、受信用フィルタ20の直列共振器S1´からS4´および並列共振器P1´およびP2´が受信用フィルタチップ123に形成されている。また、送信用フィルタ10の第1インダクタL1、受信用フィルタ20の第1インダクタL1´および第3インダクタLA1がIPDチップ130に形成されている。共通端子Antと送信用フィルタ10および受信用フィルタ20とを接続する共通線路LA、送信用フィルタ10と送信端子Txとを接続する送信線路LT、受信用フィルタ20と受信端子Rxとを接続する受信線路LR、第2インダクタLP1、LP1´を構成するインダクタ線路LLT、LLR、整合回路30cの第3インダクタLA1とグランドとを接続する整合インダクタグランド線路LLA、第1インダクタL1、L1´からの引き出し線であるそれぞれ引き出し線路LST、LSRが設けられている。
【0128】
図42(a)から図42(d)を用い実施例12に係る分波器である分波器aの積層パッケージ110の各積層の構成について説明する。図中、黒で図示したパターンは導電性のパターンである。図42(a)を参照に、キャビティ層113にはキャビティを形成する空洞が設けられ、空洞上に導電性のキャップ117(図示せず)が搭載される。キャップ117を搭載する面には導電性のシールリンク122が設けられる。
【0129】
図42(b)を参照に、ベース層112の表面(ダイアタッチ面)には金属等の導電性材料で形成された線路パターン、バンプ121が接続されるバンプパッドBM、導体を埋めこんだビアVIA等の導電性パターンが設けられている。そして、各チップ123、124、130のパッドとベース層112の表面のバンプパッドBMとがバンプ121で電気的に結合される。ビアVIAはベース層111、112を貫通しビアVIA内は金属等の導体で埋め込まれている。線路パターンはバンプパッドBMまたはビアVIA同士を接続するための導電性パターンである。ベース層112の表面に実装される受信用フィルタチップ123、送信用フィルタチップ124およびIPDチップ130は点線で示した。図42(c)を参照に、ベース層111の表面には、ベース層112の表面と同様に、線路パターンおよびビアVIAが形成されている。図42(d)はベース層111の裏面を表面から透視した図である。図42(d)を参照に、ベース層111の裏面には導電材料からなるフットパッドとして共通端子Antである共通フットパッドFA、送信端子Txである送信フットパッドFT、受信端子Rxである受信フットパッドFRおよびグランド端子であるグランドフットパッドFGが形成されている。
【0130】
図42(a)から図42(d)および図40を参照に、共通フットパッドFAはベース層111、112に形成されたビアVIAを介し、ベース層112に形成された共通線路LAに接続される。共通線路LAはIPDチップ130の第1インダクタL1、L1´および第3インダクタLA1の一端、送信用フィルタチップ124に形成された直列共振器S1の一端、受信用フィルタチップ123に形成された直列共振器S1´の一端に接続される。第1インダクタL1の他端、第1インダクタL1´の他端は、それぞれベース層112に形成された引き出し線路LSTおよびLSRを介し、それぞれ送信用フィルタチップ124に形成された直列共振器S1の他端および受信用フィルタチップ123に形成された直列共振器S1´の他端に接続される。これにより、直列共振器S1およびS1´にそれぞれ並列に第1インダクタL1およびL1´が接続される。第3インダクタLA1の他端はベース層112に形成された整合インダクタグランド線路LLA、ベース層111、112に形成されたビアVIAを介しグランドフットパッドFGに接続される。これにより、第3インダクタLA1は共通端子Antとグランドとの間に接続される。
【0131】
送信用フィルタ10の直列共振器S3はベース層112に形成された送信線路LT、ベース層111、112に形成されたVIAを介し送信フットパッドFTに接続される。送信用フィルタ10の並列共振器P1およびP2のグランド側は送信用フィルタチップ124内で共通に接続され、ベース層112に形成されたインダクタ線路LLT1およびビアVIA、ベース層111に形成されたインダクタ線路LLT2およびビアVIAを介しグランドフットパッドFGに接続される。インダクタ線路LLT1およびLLT2は第2インダクタLP1を構成する。これにより、第2インダクタLP1は、並列共振器P1およびP2のグランド側とグランドとの間に接続される。
【0132】
受信用フィルタ20の直列共振器S4´はベース層112に形成された受信線路LR、ベース層111、112に形成されたビアVIAを介し受信フットパッドFRに接続される。受信用フィルタ20の並列共振器P1´およびP2´のグランド側は受信用フィルタチップ123内で共通に接続され、ベース層112に形成されたインダクタ線路LLRおよびベース層111、112に形成されたビアVIAを介しグランドフットパッドFGに接続される。インダクタ線路LLRは第2インダクタLP1´を構成する。これにより、第2インダクタLP1´は、並列共振器P1´およびP2´のグランド側とグランドとの間に接続される。
【0133】
図43(a)および図43(b)は実施例12に係る分波器bのベース層112、111の表面を示す図である。図42(b)および図42(c)に図示した分波器aのベース層112、111の表面に比べ、受信用フィルタ20に対応したインダクタ線路LLR1およびLLR2が、共通線路LAと受信線路LRとの間のベース層112、111上に設けられている。さらに、インダクタ線路LLR1およびLLR2は、受信線路LRと送信線路LTとの間のベース層112、111上に設けられている。さらに、インダクタ線路LLR1およびLLR2は、ベース層111の裏面に形成された2箇所のグランドフットパッドFGに接続されている。その他の構成は分波器aと同じである。
【0134】
分波器bは分波器aに対し、積層パッケージ110内の電磁結合成分を低減することができる。受信用フィルタ20のインダクタ線路LLRと送信線路LTとの電磁結合は、分波器aおよび分波器bにおいてそれぞれ2.6%および0.4%であり、インダクタ線路LLRと共通線路LAとの電磁結合は、分波器aおよび分波器bにおいてそれぞれ4.5%および2.9%である。また、受信線路LRと共通線路LAとの橋絡容量は、分波器aおよび分波器bにおいてそれぞれ2.7fFおよび0.9fFである。図44は分波器aおよび分波器bの通過特性を示す図である。受信用フィルタ20の送信帯域での減衰量が分波器bで大きく改善することができる。
【0135】
実施例12によれば、インダクタ線路LLRまたはLLTを対応する受信線路LRまたは送信線路LTの一方と、共通線路LAとの間に設けることにより、インダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を低減し、対応するフィルタの相手帯域での減衰量を大きくすることができる。また、インダクタ線路LLRまたはLLTは、対応する受信線路LRまたは送信線路LTの一方と受信線路LRまたは送信線路LTの他方との間に設けられていることもできる。これにより、送信線路LTと受信線路LRとの間の電磁結合または橋絡容量を低減でき、対応するフィルタの相手帯域での減衰量を大きくすることができる。
【0136】
また、インダクタ線路LLRまたはLLTは、積層パッケージ110の複数の層(ベース層111、112)に設けることが好ましい。これにより、インダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を一層低減することができる。さらに、インダクタ線路LLRまたはLLTは、積層パッケージ110に形成され、グランドを接続するための複数のグランドフットパッドFGに接続されることが好ましい。これによりインダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を一層低減することができる。
【0137】
インダクタ線路LLRを受信線路LRと共通線路LAとの間に設ける場合は、インダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を低減するように設けることが好ましい。例えば、少なくとも受信線路LR上の任意の点と共通線路LA上の任意の点とを結ぶ任意の直線上の一部にインダクタ線路LLRを設けることにより、インダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を低減することができる。さらに、受信線路LR上の任意の点と共通線路LA上の任意の点とを結ぶ全ての直線上にインダクタ線路LLRを設けることが好ましい。これにより、インダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を一層低減することができる。なお、インダクタ線路LLRが、受信線路LRと送信線路LTとの間に設けられる場合、インダクタ線路LLTが送信線路LTと共通線路LAとの間に設けられる場合についても同様である。
【0138】
実施例12では、第1インダクタL1、L1´、第3インダクタLA1はIPDチップ130以外にもチップインダクタを用いることもできる。チップインダクタは積層パッケージ110のベース層112の表面に実装してもよいが、積層パッケージ110の外に設けても良い。また、実施例12では、実装部として積層パッケージ110を例に説明したが、実装部は受信用フィルタチップ123または送信用フィルタチップ124を実装する機能を有していればよく、積層基板等の基板とすることもできる。
【実施例13】
【0139】
実施例13はローパスフィルタの機能を有する整合回路を用いた例である。図45は実施例11の図36に対し、整合回路30dとして共通端子Antにπ型のC−L−C回路を設けている。すなわち、共通端子Antと送信用フィルタ10および受信用フィルタ20との間に直列に3.6nHのインダクタLB1、インダクタLB1の共通端子Ant側に並列に1.1pFのキャパシタCB1、送信用フィルタ10および受信用フィルタ20側に並列に0.7pFのキャパシタCB2を接続する。インダクタLB1、キャパシタCB1およびCB2は、第1インダクタL1およびL1´と同じIPDで形成することができる。その他の構成は実施例11の図36と同じである。図46はIPDに形成したキャパシタの例を示す断面図である。石英等の基板125上に下部電極126、例えば酸化シリコン膜等の誘電体膜127、上部電極128を積層しキャパシタを形成する。キャパシタは端子129に接続される。
【0140】
図47(a)は実施例10と実施例13との共通端子Antからフィルタを見たインピーダンスを示すスミスチャートである。図47(a)のように、実施例10においてはインピーダンス性が容量性側にシフトしているが、実施例13は実施例10に比べ矢印のようにインピーダンスが誘導性側にシフトし改善している。図47(b)は送信用フィルタ10および受信用フィルタ20の通過帯域の拡大図である。実施例13は共通端子から各フィルタ10、20を見たインピーダンスが改善しているため、図47(b)のように通過帯域の挿入損失が改善する。ここで、実施例13のように、π型C−L−C回路の共通端子Ant側のキャパシタCB1の容量値を他方のキャパシタCB2より大きくすることが好ましい。これにより、整合回路30dの整合を容易に合わせることができる。よって、一層低損失で、高調波の減衰量を一層大きくすることができる。
【0141】
図47(c)は送信用フィルタ10の広帯域の通過特性を示す図である。実施例13は高周波側において減衰量が大きくなっている。これは整合回路30dがローパスフィルタ(LPF)の機能を有するためである。高周波側の減衰量を大きくできるため高調波の減衰量を改善することができる。このように、共通端子Antと2つのフィルタ10、20のうち少なくとも一方との間にローパスフィルタとして機能する整合回路30dを設けることが好ましい。これにより、整合回路を付加したフィルタ10または20の高調波の減衰量を抑制することができる。
【0142】
ローパスフィルタとして機能する整合回路30dとしては実施例13の例に限られない。例えば、直列にインダクタ、並列にキャパシタをそれぞれ1つ以上設けた整合回路も使用することができる。しかしながら、低損失化、小型化、低コスト化のためには、素子の数が少ない方が好ましい。よって、π型のC−L−C回路以外に、C−L回路、すなわち、共通端子Antと送信用フィルタ10および受信用フィルタ20との間に直列にインダクタ、インダクタの共通端子Ant側に並列にキャパシタを接続した回路、L−C回路、すなわち、共通端子Antと送信用フィルタ10および受信用フィルタ20との間に直列にインダクタ、インダクタのフィルタ側に並列にキャパシタを接続した回路を用いることが好ましい。
【0143】
実施例11から実施例13において、第3インダクタLA1、インダクタLB1、キャパシタCB1、CB2等の整合回路30c、30dを構成するインダクタおよびキャパシタは、IPDを用いることができる。これにより、高性能かつ小型化可能な分波器を提供することができる。また、上記インダクタまたはキャパシタはチップインダクタまたはチップキャパシタ等のチップ素子を用いることができる。このようにチップ素子を用いることにより高性能かつ低コストな分波器を提供することができる。
【実施例14】
【0144】
実施例14は受信用フィルタが不平衡型ダブルモード型フィルタを有する例である。図48は実施例14に係る分波器の回路図である。実施例11の図36に比べ受信用フィルタ20dが共通端子Ant側に並列に第1インダクタLW1´を接続した直列共振器SW1´と直列共振器SW1´と受信端子Rxとの間に接続された不平衡型ダブルモード型フィルタ22が設けられている。
【0145】
図49は不平衡型ダブルモード型フィルタ22の平面図である。不平衡型ダブルモード型フィルタ22は弾性表面波素子から構成される。反射器R0の間に2つの出力IDT(OutIDT)、出力IDTの間に1つの入力IDT(InIDT)が設けられている。2つの出力IDT(OutIDT)の出力は同位相であり共通に接続され出力端子Outに接続される。入力IDT(InIDT)の入力は入力端子Inに接続される。図48において、不平衡型ダブルモード型フィルタ22の入力端子Inが直列共振器SW1´に接続され、出力端子Outが受信端子Rxに接続される。不平衡型ダブルモード型フィルタ22を受信用フィルタ20に用いることにより、広帯域に渡り減衰量を大きく確保することができる。
【実施例15】
【0146】
実施例15は受信用フィルタが平衡型ダブルモード型フィルタを有する例である。図50は実施例15に係る分波器の回路図である。実施例14の図48に比べ不平衡型ダブルモード型フィルタ22の代わりに平衡型ダブルモード型フィルタ23が用いられ、受信端子Rx1およびRx2が設けられている。その他の構成は実施例14の図48と同じであり説明を省略する。
【0147】
図51は平衡型ダブルモード型フィルタ23の平面図である。実施例14の図49の不平衡型ダブルモード型フィルタ22に対し、2つの出力IDT(OutIDT)は位相が反転する信号を出力する。2つの出力IDT(OutIDT)の出力は、それぞれ出力端子Out1およびOut2に接続されている。その他の構成は図49と同じであり説明を省略する。図50において、平衡型ダブルモード型フィルタ23の出力端子Out1およびOut2は、それぞれ受信端子Rx1およびRx2に接続される。これにより、出力端子Out1およびOut2から出力される位相が反転した信号を受信端子Rx1およびRx2に出力することができる。
【0148】
近年の携帯電話端末では、高周波回路におけるコモンモードノイズを抑制するため、受信系の信号は差動型のものが用いられる場合が多い。この場合、受信系の高周波デバイスであるローノイズアンプやミキサも差動型(平衡型)のものが用いられる。このため、不平衡型の分波器を用いると位相を反転するためのバランが必要となってしまう。実施例15によれば、分波器の受信端子Rx1およびRx2から位相が反転した信号を出力するため、バランが不要となる。よって受信系回路の小型化、低コスト化が可能となる。
【0149】
実施例14および実施例15に係る分波器に、実施例11および実施例13のハイパスフィルタの機能を有する整合回路30cまたはローパスフィルタの機能を有する整合回路30dを付加することもできる。特に、実施例11のように第3インダクタLA1により整合回路を構成することにより、低損失化、小型化、低コスト化を図ることができる。また、実施例14および実施例15において、送信用フィルタ10として直列共振器S1に並列に第1インダクタL1を接続した例であったが、第1インダクタを付加する直列共振器は任意に選択することができる。さらに、受信用フィルタ20として、ダブルモード型フィルタ22または23に、インダクタLW1´を並列に接続された直列共振器SW1´を接続した例であったが、ダブルモード型フィルタ22または23に付加される共振器は任意に選択することができる。
【0150】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1(a)はFBARの断面図、図1(b)は他のFBARの断面図である。
【図2】図2はSAW共振器の上視図である。
【図3】図3はラダー型フィルタの回路構成図である。
【図4】図4(a)は直列共振器の構成図、図4(b)は並列共振器の構成図、図4(c)は直列共振器および並列共振器の通過特性を示す図である。
【図5】図5(a)は1段ラダー型フィルタの構成図であり、図5(b)は1段ラダー型フィルタの通過特性を示す図である。
【図6】図6(a)は従来技術1に係るラダー型フィルタの回路構成図である。図6(b)は従来技術2に係るラダー型フィルタの回路構成図である。
【図7】図7は従来技術3に係る分波器の回路構成図である。
【図8】図8(a)は実施例1に係る分波器の回路構成図であり、図8(b)は比較例1に係る分波器の回路構成図である。
【図9】図9は実施例1に係る分波器の送信用フィルタの回路構成図である。
【図10】図10(a)は実施例1に係る分波器の送信用フィルタのアンテナ端子側の反射係数S11、図10(b)は送信端子側の反射係数S22を示すスミスチャートである
【図11】図11(a)は実施例1に係る分波器の送信用フィルタの送信帯域の通過特性であり、図11(b)受信用フィルタの受信帯域の通過特性である。
【図12】図12は直列共振子と並列共振器を1つづつ配置したラダー型フィルタの基本区間の回路構成図である。
【図13】図13(a)はミラー接続したラダー型フィルタF1の回路構成図である。図13(b)はフィルタF1の共振器をまとめたラダー型フィルタF2の回路構成図である。
【図14】図14(a)はCt1/Ct2に対し送信用フィルタの受信帯域端での反射係数を示した図である。図14(b)はCt1/Ct2に対し受信用フィルタの受信帯域端での挿入損失を示した図である。図14(c)はCt1/Ct2に対し送信用フィルタの受信帯域端での減衰量を示した図である。
【図15】図15(a)は、Ct1/Ct2に対し送信用フィルタの送信帯域端での挿入損失を示した図である。図15(b)は、Ct1/Ct2に対し送信用フィルタの送信帯域端での反射係数を示した図である。
【図16】図16(a)はCr1/Cr2に対し受信用フィルタの送信帯域端での反射係数を示した図である。図16(b)はCr1/Cr2に対し送信用フィルタの送信帯域端での挿入損失を示した図である。図16(c)はCr1/Cr2に対し受信用フィルタの送信帯域端での減衰量を示した図である。
【図17】図17(a)は、Cr1/Cr2に対し受信用フィルタの受信帯域端での挿入損失を示した図である。図17(b)は、Cr1/Cr2に対し受信用フィルタの受信帯域端での反射係数を示した図である。
【図18】図18(a)は実施例3に係る分波器の回路構成を示した図である。図18(b)は実施例3の変形例に係る分波器の回路構成を示した図である。
【図19】図19は実施例4に係る分波器の回路構成を示す図である。
【図20】図20は実施例4および比較例2に係る分波器の受信用フィルタの周波数に対する減衰量を示す図である。
【図21】図21(a)および図21(b)は回路Aおよび回路Bの回路構成図、図21(c)はそれぞれ回路AおよびBの通過特性を示す図である。
【図22】図22(a)から図22(c)はそれぞれフィルタAからCの回路構成図である。
【図23】図23はフィルタAからCの通過特性を示す図である。
【図24】図24(a)および図24(b)は回路Cおよび回路Dの回路構成図、図24(c)はそれぞれ回路CおよびDの通過特性を示す図である。
【図25】図25(a)から図25(c)はそれぞれフィルタDからFの回路構成図である。
【図26】図26はフィルタDからFの通過特性を示す図である。
【図27】図27はフィルタGの回路構成図である。
【図28】図28(a)および図28(b)はそれぞれフィルタHおよびIの回路構成図である。
【図29】図29はフィルタHからIの通過特性を示す図である。
【図30】図30は実施例7に係るフィルタの回路構成図である。
【図31】図31(a)から図31(d)は実施例8に係るフィルタの回路構成図である。
【図32】図32は実施例9に係るフィルタに用いるIPDチップの平面図である。
【図33】図33は実施例9に係るフィルタに用いるフィルタチップの平面図である。
【図34】図34(a)は実施例9に係るフィルタの上視図、図34(b)は図34(a)のA−A断面図である。
【図35】図35(a)は弾性境界波素子の平面図、図35(b)は図35(a)のA−A断面図である。
【図36】図36は実施例10に係る分波器の回路構成図である。
【図37】図37は実施例10に係る分波器の通過特性を示す図である。
【図38】図38は実施例11に係る分波器の回路構成図である。
【図39】図39(a)は実施例10および実施例11に係る分波器の共通端子から見たインピーダンスを示すスミスチャートであり、図39(b)は、通過特性である。
【図40】図40(a)は実施例12に係る分波器の上視図(キャップは図示していない)、図40(b)は図40(a)のA−A断面図である。
【図41】図41は実施例12に係る分波器の回路構成図である。
【図42】図42(a)から図42(d)は実施例12に係る分波器aの積層パッケージの各層を示す図である。
【図43】図43(a)および図43(b)は実施例12に係る分波器bの積層パッケージの各層を示す図である。
【図44】図44は実施例12に係る分波器aおよびbの通過特性を示す図である。
【図45】図45は実施例13に係る分波器の回路構成図である。
【図46】図46は実施例13のIPDチップのキャパシタの断面模式図である。
【図47】図47(a)は実施例10および実施例13に係る分波器の共通端子から見たインピーダンスを示すスミスチャートであり、図47(b)は、通過特性、図47(c)は広帯域の図である。
【図48】図48は実施例14に係る分波器の回路構成図である。
【図49】図49は実施例14に係る分波器に用いる不平衡型ダブルモード型フィルタの平面図である。
【図50】図50は実施例15に係る分波器の回路構成図である。
【図51】図51は実施例15に係る分波器に用いる平衡型ダブルモード型フィルタの平面図である。
【符号の説明】
【0152】
10、10a、10b 送信用フィルタ
20、20a、20b、20c、20d 受信用フィルタ
22 不平衡型ダブルモード型フィルタ
23 平衡型ダブルモードフィルタ
30、30a,30b 整合回路
30c、30d 整合回路
110 積層パッケージ
118 フィルタチップ
119、130 IPDチップ
123 受信用フィルタチップ
124 送信用フィルタチップ
S1、S2、S3、S4 直列共振器
S1´、S2´、S3´、S4´ 直列共振器
S5、S6、S7、S8 直列共振器
P3、P4、P5 並列共振器
P1、P2 並列共振器
P1´、P2´ 並列共振器
CB1、CB2 キャパシタ
L1、L1´ インダクタ(第1インダクタ)
LP1、LP1´ インダクタ(第2インダクタ)
LA1 インダクタ(第3インダクタ)
L4´、LB1、LW1´ インダクタ
Ant アンテナ端子(共通端子)
Tx 送信端子
Rx 受信端子
LA 共通線路
LT 送信線路
LR 受信線路
LLT、LLR インダクタ線路
LLR1、LLR2 インダクタ線路
【技術分野】
【0001】
本発明は分波器及びラダー型フィルタに関し、特に並列共振器に直列にまたは直列共振器に並列にインダクタが接続された分波器及びラダー型フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴って携帯電話、携帯情報端末等が急速に普及している。例えば、携帯電話端末においては、800MHz〜1.0GHz帯および1.5GHz〜2.0GHz帯といった高周波帯が使用されている。これら移動通信システム用の機器には、共振器を用いた高周波用フィルタや、高周波用フィルタを用いた分波器が用いられている。
【0003】
これらに用いられる共振器は弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Resonator)共振器や圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)が用いられる。これら共振器の構成について説明する。図1(a)はFBARの断面図である。基板50(例えばシリコン基板)の空隙58上に下部電極膜52、圧電膜54、上部電極膜56が積層している。圧電膜54は例えば窒化アルムニウムが用いられる。図1(b)は異なるFBARの断面図である。基板50上に高音響インピーダンス層62と低インピーダンス層60を交互に積層した音響多層膜を形成し、その上に下部電極膜52、圧電膜54、上部電極膜56が積層している。
【0004】
図2はSAW共振器の上視図である。圧電基板70上に入力端子Inと出力端子Outに接続されたすだれ電極(IDT:Interdigital Transducer)とすだれ電極IDTの両側の反射器R0とが設けられる。IDTおよび反射器R0は例えばアルミニウム(Al)等の金属で形成される。なお、図中、反射器R0およびIDTの電極指は実際より少なく記載している。
【0005】
高周波フィルタとしては、例えば一端子共振器を直列と並列に接続したラダー型フィルタが用いられる。図3はラダー型フィルタの構成図を示した図である。入力端子Inと出力端子Outの間に、直列に直列共振器S1、S2、S3および並列に並列共振器P1、P2が接続される。図4および図5を用い、ラダー型フィルタの動作原理について説明する。ラダー型フィルタは直列共振器と並列共振器に分解することができる。図4(a)を参照に、直列共振器は、共振器S21を一端子対共振器としたとき、その2つの信号端子のうち、一方を入力端子In、他方を出力端子Outとしたものである。図4(b)を参照に、並列共振器は、共振器P21を一端子対共振器としたとき、その2つの信号端子のうち、一方をグランド端子に接続し、他方を入力端子Inと出力端子Outの短絡線路に接続したものである。
【0006】
図4(c)は、直列共振器と並列共振器の入力端子Inから出力端子Outへの通過特性を示した図である。横軸は周波数、縦軸は通過量である。直列共振器の通過特性は実線、並列共振器の通過特性は破線で示す。直列共振器の通過特性は、1つの共振点(共振周波数)frsと1つの反共振点(反共振周波数)fasとを有し、共振点frsで通過量は最大となり、反共振点fasで通過量は最小となる。一方、並列共振器の通過特性は、同様に、1つの共振点frpと1つの反共振点fapとを有するが、共振点frpで通過量は最小となり、反共振点fapで通過量は最大となる。
【0007】
図5(a)は1段構成のラダー型フィルタの構成図である。図5(a)を参照に、直列共振器S22が入力端子Inと出力端子Outに直列に接続され、並列共振器P22が出力端子Outとグランド間に接続される。このとき、直列共振器の共振点frsと並列共振器の反共振点fapは概一致するように設計する。図5(b)は1段構成のラダー型フィルタの入力端子Inから出力端子Outへの通過特性である。横軸は周波数、縦軸は通過量を示す。図5(a)の構成により、直列共振器S22と並列共振器P22の通過特性が合成され,図5(b)の通過特性が得られる。通過量は、直列共振器の共振点frsと並列共振器の反共振点fap付近が最大となり、直列共振器の反共振点fasおよび並列共振器の共振点frpが極小となる。そして、並列共振器の共振点frpから直列共振器の反共振点fasの周波数帯域が通過帯域となり、並列共振器の共振点frp以下および直列共振器の反共振点fas以上の周波数帯域が減衰域となる。このように、ラダー型フィルタはバンドパスフィルタとして機能する。
【0008】
このような、共振器を用いたフィルタを使用し分波器が提供されている。分波器は2つのバンドパスフィルタを用い、送信用フィルタを送信端子とアンテナ端子の間、受信用フィルタを受信端子とアンテナ端子の間に配置する。アンテナ端子と送信用フィルタまたはアンテナ端子と受信用フィルタの間に整合回路(例えば移相器)を設ける。そして、分波器は送信端子から入力した送信信号をアンテナ端子から出力し、アンテナ端子から入力した受信信号を受信端子から出力する機能を有する。
【0009】
整合回路の機能を、例えばアンテナ端子と受信用フィルタとの間に整合回路を設けた場合について説明する。整合回路は、送信信号の周波数帯において、アンテナ端子から見た受信用フィルタのインピーダンスがなるべく大きくなるようにするために使用される。これにより,送信端子から入力した送信信号の電力が受信用フィルタに侵入することを抑制することができる。
【0010】
分波器は、例えば送信用フィルタにおいては、送信信号が送信端子からアンテナ端子に通過する際の挿入損失の低減、受信用フィルタの通過帯域での減衰量の確保が求められている。受信用フィルタにおいても同様である。高性能な分波器を実現するために、ラダー型フィルタが用いられる。ラダー型フィルタは、比較的低損失で広帯域化でき、通過帯域近傍において高減衰量を得やすく、高耐電力性を有するためである。しかしながら、分波器に要求される性能はますます厳しくなってきている。さらなる低損失化、高減衰量の要求を満たすべく、以下の技術が開示されている。
【0011】
図6(a)に特許文献1の図12に開示された従来技術1に係るフィルタの構成を示す。直列共振器S1ないしS3並びに並列共振器P1およびP2を有するラダー型フィルタにおいて、出力端子Out側の直列共振器S3に並列にインダクタL3が接続される。これにより、高周波数側の帯域外減衰量を大きくすることができる。
【0012】
また、図6(b)は特許文献2の図3に開示された従来技術2に係るフィルタの構成を示す。直列共振器S1、S2および並列共振器P1を有するラダー型フィルタにおいて、直列共振器S1、S2に並列にそれぞれインダクタL1、L2が接続される。また、並列共振器P1とグランド間にインダクタLP1が接続される。そして、インダクタL1およびL2のインダクタンスに応じ共振点、反共振点を調整することができる。
【0013】
また、図7は特許文献3の図1に開示された従来技術3に係る分波器の構成を示す。分波器はアンテナ端子Antと送信端子Txとの間に、直列共振器S1ないしS3並びに並列共振器P1およびP2を有する送信用フィルタ10b(ラダー型フィルタ)を有する。また、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に、直列共振器S1´ないしS3´並びに並列共振器P1´およびP2´を有する受信用フィルタ20b(ラダー型フィルタ)を有する。さらに、送信用フィルタ10bおよび受信用フィルタ20bとアンテナ端子Antとの間に、キャパシタC01とインダクタL01を有する整合回路30を有する。そして、送信用フィルタ10bの送信端子Tx側の直列共振器S3にインダクタL3が、受信用フィルタ20bの真中の直列共振器S2´にインダクタL2´がそれぞれ並列に付加されている。このように、従来技術3は送信用フィルタ10または受信用フィルタ20bのアンテナ側の共振器とは異なる共振器にインダクタを並列に付加している。これにより、良好な損失および帯域外減衰量を確保している。
【0014】
特許文献4の図2開示された従来技術4に係るラダー型フィルタについて説明する。特許文献4の図2を参照に、並列共振器5には第1インダクタL1が直列に接続され、直列共振器7には第2インダクタL2が並列に接続されている。第1インダクタL1が並列共振器7に直列に接続されたことにより低域側にシフトした並列共振器5の共振点と、第2インダクタL2が直列共振器7に並列に接続されたことにより直列共振子7の共振点よりも低域側に発生する反共振点とが互いに略一致するように設計されている。これにより,通過帯域に対する,特に低域側阻止帯域の減衰量を大きくしている。
【0015】
特許文献5の図6に開示された従来技術5に係るラダー型フィルタについて説明する。特許文献5の図6において、直列共振器に直列にインダクタが接続され、前記直列共振器に並列にインダクタが接続されている。2つの並列共振器がグランド側で共通接続された後にグランドとの間にインダクタ(有極用L)が直列に接続されている。これにより、通過帯域近傍の減衰極の周波数を調整している。
【0016】
特許文献6の図2に開示された従来技術6に係る分波器について説明する。特許文献6の図2において、共通端子Antとグランドとの間に整合用インダクタLpを接続した分波器が開示されている。
【特許文献1】特開平09−167937号公報
【特許文献2】特開2004−135322号公報
【特許文献3】特開2003−332885号公報
【特許文献4】特開2004−173245号公報
【特許文献5】特開2002−223147号公報
【特許文献6】特開平10−313229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来技術1においては、フィルタを用い分波器を構成した場合の分波器としての特性については考慮されておらず、分波器の特性を向上させる具体的な対策も示されていない。従来技術2においては、すべての直列共振器に並列にインダクタが付加され、かつすべての並列共振器とグランド間にインダクタが付加されている。この構成では、分波器を構成した場合、相手帯域(例えば送信用フィルタに対する受信帯域)の減衰量を大きくできる。しかし、広帯域の減衰量は大きく悪化してしまう。従来技術3においては、直列共振器に並列に付加したインダクタにより、各フィルタ10、20の相手帯域の減衰量を大きくすることができる。しかし、送信用フィルタ10または受信用フィルタ20のアンテナ端子Ant側に整合回路30が必要となる。この従来技術では、インダクタL01とキャパシタC01の2つの素子を用いており、実装面積の縮小すなわち小型化が難しい。
【0018】
急速に市場が拡大しつつあるW-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)/UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)方式では,従来の分波器以上に,低損失,高アイソレーション,そして送信帯域と受信帯域はもちろん広帯域に渡って高減衰である分波器が求められている。また,この方式では,送信帯域が1920〜1980MHz、受信帯域が2110〜2170MHzであり、送信帯域と受信帯域との間隔が130MHzと広いことも特徴である。例えば、PCS方式(送信帯域:1850〜1910MHz、受信帯域:1930〜1990MHz)やCellular方式(送信帯域:824〜849MHz、受信帯域:869〜894MHz)では,送信帯域と受信帯域との間隔は20MHzと狭い。
【0019】
しかしながら、従来のラダー型フィルタの場合、前述したように並列共振器の共振の減衰極、あるいは、直列共振器の反共振の減衰極を利用して通過帯域近傍の減衰量は得やすいが、W−CDMA/UMTS方式のように,通過帯域から大きく離れた周波数帯域(送信用フィルタの受信帯域,受信用フィルタの送信帯域)の減衰量を大きく取るのは難しかった。
【0020】
以下に従来技術に対する課題について説明する。従来技術1、3においては、直列共振器にインダクタが並列に接続されている。しかし、並列共振器にはインダクタが付加されておらず、並列共振器の共振の減衰極は通過帯域近傍にあるので、通過帯域から大きく離れた周波数帯域の減衰量は十分確保することができない。
【0021】
従来技術2、4はともに,直列共振器に並列にインダクタが接続され、並列共振器に直列にインダクタが接続された回路構成になっている。しかしながら,特許文献2の図3や特許文献4の図22および23に示されるように、1個の並列共振器に対して直列にインダクタを接続した回路における共振の減衰極を、通過帯域から大きく離れた周波数帯域にもってくるためには、比較的大きな値のインダクタが必要となってしまう。このため,例えば,小型化のため、このインダクタをパッケージ内の配線パターンにより形成しようとした場合困難になる。また、特許文献4の図23に示されるように、並列共振器に対して直列にインダクタを接続した回路が2つとなる場合は、小型化が更に難しいだけでなく、2つのインダクタ間の電磁結合による特性劣化の問題が生じやすい。
【0022】
従来技術5においては、特許文献5の図1に示されるように,2つの並列共振器のグランド側を共通化した後,有極用インダクタが直列に接続されており、前記インダクタの値を比較的小さくできるメリットがある。しかしながら,特許文献4の明細書段落番号0081から0091で述べられているように、従来技術5においては,有極用インダクタの接続により生じる減衰極と直列共振器に並列にインダクタとキャパシタが接続されて生じる反共振の減衰極は大きくずれているため、特許文献5の図10あるいは図11に示されるように、有極用インダクタを接続しただけの特性(ケースNo.1)と直列共振器に並列にインダクタとキャパシタを接続した特性(ケースNo.2,3)とを比較しても,通過帯域の低周波側、高周波側ともに大きな減衰量の改善はしていない。
【0023】
なお,従来技術1、2、5においては,2つのフィルタを組合せ分波器を構成した場合の分波器としての特性については考慮されておらず、分波器の特性を向上させる具体的な対策も示されていない。さらに,特許文献2の図3および特許文献4の図22、23および特許文献5の図1、6に示される回路では,すべての直列共振器に並列にインダクタが接続され,かつすべての並列共振器とグランド間にインダクタが接続されている。この構成では,阻止帯域の減衰量は大きくできるものの,広帯域の減衰量は大きく悪化してしまう。
【0024】
本発明は、上記課題に鑑み、低損失化、高減衰量化および小型化の可能な分波器およびラダー型フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、アンテナ端子と、該アンテナ端子と接続した第1のフィルタおよび第2のフィルタと、を具備し、前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタの少なくとも一方は、並列共振器と複数の直列共振器を有し、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器にはインダクタが並列に接続し、最もアンテナ端子側の前記直列共振器はインダクタが並列に接続したラダー型フィルタであることを特徴とする分波器である。本発明によれば、整合回路が不要となり分波器を小型化することができる、さらに、前記ラダー型フィルタによりフィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0026】
本発明は、前記ラダー型フィルタの前記並列共振器とグランドとの間にインダクタが直列に接続されることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、前記ラダー型フィルタの自フィルタの相手帯域での減衰量を一層大きくすることができる。
【0027】
本発明は、前記並列共振器とグランドとの間に直列に接続された前記インダクタは、複数の前記並列共振器に接続されることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、実装面積を小さくし、分波器の一層の小型化が可能となる。
【0028】
本発明は、前記第1フィルタおよび前記第2のフィルタはともに前記ラダー型フィルタであることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、第1のフィルタ及び第2のフィルタともフィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0029】
本発明は、前記ラダー型フィルタの少なくとも一つは最もアンテナ端子側の前記直列共振器に加えその他の直列共振器の一部にもインダクタが並列に接続されていることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、自フィルタの相手帯域の減衰量を一層大きくすることができる。
【0030】
本発明は、前記ラダー型フィルタをミラー接続のラダー型フィルタの等価回路で表し、前記最もアンテナ端子側の直列共振器の容量値をC1、前記ラダー型フィルタのその他の直列共振器の容量値の平均値をC2としたとき、0.3<C1/C2<1であることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、ラダー型フィルタの自フィルタの相手帯域でのインピーダンスを大きくすることができるため、相手フィルタと組み合わせて分波器構造とした時のフィルタ単体からの損失劣化を小さくすることができる。
【0031】
本発明は、前記直列共振器および前記並列共振器は、圧電薄膜共振器および弾性表面波共振器のいずれか一方であることを特徴とする分波器とすることができる。
【0032】
本発明は、並列共振器と複数の直列共振器を有し、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器にはインダクタが並列に接続し、最もアンテナ端子に接続する端子側の前記直列共振器はインダクタが並列に接続し、前記並列共振器とグランドとの間にインダクタが直列に接続したラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、本ラダー型フィルタを分波器に用いることにより、整合回路が不要となり分波器を小型化することができ、さらに、前記ラダー型フィルタによりフィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0033】
本発明は、複数の直列共振器および複数の並列共振器と、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器に並列に接続された第1インダクタと、前記複数の並列共振器のうちグランド側が共通に接続された2つ以上の並列共振器の前記グランド側とグランドとの間に直列に接続された第2インダクタと、を具備することを特徴とするラダー型フィルタである。本発明によれば、第1インダクタと第2インダクタとを設けることにより低損失で阻止帯域の減衰量を大きくすることができる。また、第2インダクタが2つ以上の並列共振器に共通に接続されているため、阻止帯域に減衰極を形成するためのインダクタの所望値が小さくなり、小型化、低コスト化が容易となる。さらに、第1インダクタが複数の直列共振器の一部に接続されているため広帯域における減衰量の悪化を抑制することができる。
【0034】
本発明は、前記2つ以上の並列共振器は前記複数の並列共振器の全てであることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、第2インダクタが全ての並列共振器に共通に接続されているため、阻止帯域に減衰極を形成するためのインダクタの所望値がさらに小さくなり、小型化、低コスト化がより容易となる。
【0035】
本発明は、前記一部の直列共振器に前記第1インダクタが並列に接続されることにより前記一部の直列共振器の共振点よりも低周波側に生じる反共振の減衰極と、前記ラダー型フィルタにおいて前記2つ以上の並列共振器が前記グランド側で共通接続された後に前記グランドとの間に前記第2インダクタが直列に接続されることにより通過帯域よりも低周波側に生じる減衰極とが略一致していることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、通過帯域の低周波側の阻止帯域の減衰量を一層大きくすることができる。
【0036】
本発明は、前記一部の直列共振器に前記第1インダクタが並列に接続されることにより高周波側にシフトした前記一部の直列共振器の反共振の減衰極と、前記ラダー型フィルタにおいて前記2つ以上の並列共振器が前記グランド側で共通接続された後に前記グランドとの間に前記第2インダクタが直列に接続されることにより通過帯域よりも高周波側に生じる減衰極とが略一致していることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、通過帯域の高周波側の阻止帯域の減衰量を一層大きくすることができる。
【0037】
本発明は、前記複数の直列共振器のうち前記第1インダクタが並列に接続されない直列共振器が2つ以上あることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、広帯域における減衰量の悪化を一層抑制することができる。
【0038】
本発明は、前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器の少なくとも1つは、複数の共振器に分割され互いに直列接続または並列接続されていることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、耐電力性の向上、相互変調歪等の線形性の向上を図ることができる。
【0039】
本発明は、前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器は圧電薄膜共振器、弾性表面波共振器および境界波共振器のいずれかであることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、高Q、小型および低コストな共振器を用いることにより高性能、小型かつ低コストなフィルタを提供することができる。
【0040】
本発明は、前記第1インダクタは、集積型受動素子のインダクタおよびチップインダクタのいずれかであることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、集積型受動素子を用いることにより高性能かつ小型化可能なフィルタを提供することができる。また、チップインダクタを用いることにより高性能かつ低コストなフィルタを提供することができる。
【0041】
本発明は、前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器が形成されたチップを実装する実装部を具備し、前記第2インダクタは、前記実装部に形成された線路パターンであることを特徴とするラダー型フィルタとすることができる。本発明によれば、小型で低コストなフィルタを提供することができる。
【0042】
本発明は、共通端子と接続した2つのフィルタを具備し、前記2つのフィルタのうち少なくとも一方は上記ラダー型フィルタであることを特徴とする分波器である。本発明によれば、上記ラダー型フィルタを用いたフィルタにおいて、低損失で阻止帯域の減衰量を大きくし、広帯域における減衰量の悪化を抑制し、かつ小型化、低コスト化することができる。
【0043】
本発明は、前記2つのフィルタのうち高周波側のフィルタは請求項11に記載のラダー型フィルタであることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、高周波側のフィルタの通過帯域の低周波側に位置するもう1つのフィルタの通過帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0044】
本発明は、前記高周波側のフィルタは受信用フィルタであることを特徴とする分波器とすることができる。
【0045】
本発明は、前記2つのフィルタのうち低周波側のフィルタは請求項12記載のラダー型フィルタであることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、低周波側のフィルタの通過帯域の高周波側に位置するもう1つのフィルタの通過帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0046】
本発明は、前記低周波側のフィルタは送信用フィルタであることを特徴とする分波器とすることができる。
【0047】
本発明は、前記ラダー型フィルタの最も前記共通端子側の共振器は直列共振器であり、前記直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、整合回路が不要とすることもでき、分波器を小型化することができる。
【0048】
本発明は、前記2つのフィルタはいずれも前記ラダー型フィルタであり、前記ラダー型フィルタはともに、最も前記共通端子側の共振器は直列共振器であり、前記直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、2つのフィルタにおいて、低損失で阻止帯域の減衰量を大きくし、広帯域における減衰量の悪化を抑制し、かつ小型化、低コスト化することができる。また、整合回路が不要とすることもでき、分波器を小型化することができる。
【0049】
本発明は、前記共通端子と前記2つのフィルタの少なくとも一方との間にハイパスフィルタとして機能する整合回路を具備することを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、低周波側の広帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0050】
本発明は、前記整合回路は、前記共通端子とグランドとの間に接続された第3インダクタであることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、整合回路が1つのインダクタで構成できるため、低損失、小型化、低コスト化が可能となる。
【0051】
本発明は、前記共通端子と前記2つのフィルタの少なくとも一方との間にローパスフィルタとして機能する整合回路を具備することを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、高調波の減衰量を大きくすることができる。
【0052】
本発明は、前記整合回路が、C−L回路、L−C回路およびπ型のC−L−C回路のいずれかであることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、整合回路を部品数が少なく構成できるため、低損失、小型化、低コスト化が可能となる。
【0053】
本発明は、前記整合回路が、前記共通端子側のキャパシタの容量値を他方のキャパシタの容量値より大きくしたπ型C−L−C回路であることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、整合を容易にとることができるため、一層低損失で高調波の減衰量を一層大きくすることができる。
【0054】
本発明は、前記整合回路は、集積型受動素子およびチップ素子の少なくとも一方からなることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、集積型受動素子を用いることにより高性能かつ小型化可能な分波器を提供することができる。また、チップ素子を用いることにより高性能かつ低コストな分波器を提供することができる。
【0055】
本発明は、前記2つのフィルタのうち一方である送信用フィルタは前記ラダー型フィルタであり、前記2つのフィルタのうち他方である受信用フィルタはダブルモード型フィルタを含むことを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、受信用フィルタにおいて、広帯域に渡り減衰量を大きく確保することができる。
【0056】
本発明は、前記ダブルモード型フィルタは不平衡型ダブルモード型フィルタおよび平衡型ダブルモード型フィルタのいずれかであることを特徴とする分波器とすることができる。
【0057】
本発明は、前記共通端子と前記ダブルモード型フィルタとの間に、直列に接続された共振器と、前記共振器に並列に接続されたインダクタと、を具備することを特徴とする分波器とすることができる。
【0058】
本発明は、請求項23記載の分波器において、前記共通端子とグランドとの間に接続された第3インダクタを具備し、前記ラダー型フィルタをミラー接続のラダー型フィルタの等価回路で表し、前記最も共通端子側の直列共振器の容量値をC1、前記ラダー型フィルタのその他の直列共振器の容量値の平均値をC2としたとき、0.3<C1/C2<1であることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、共通端子側から見たインピーダンスの整合をとりやすくすることができる。
【0059】
本発明は、少なくとも一方は直列共振器と並列共振器とを有するラダー型フィルタであり共通端子と接続された送信用フィルタおよび受信用フィルタと、前記ラダー型フィルタの前記並列共振器とグランドとの間に接続された第2インダクタと、前記ラダー型フィルタの前記直列共振器および前記並列共振器が形成されたチップを実装する実装部と、前記実装部に設けられ前記受信用フィルタと受信端子とを接続する受信線路と、前記実装部に設けられ前記送信用フィルタと送信端子とを接続する送信線路と、前記実装部に設けられ前記共通端子と前記受信用フィルタおよび前記送信用フィルタとを接続する共通線路と、前記実装部に設けられ前記第2インダクタを構成するインダクタ線路と、を具備し、前記インダクタ線路は対応する前記受信線路および前記送信線路の一方と、前記共通線路との間に設けられていることを特徴とする分波器である。本発明によれば、受信線路または送信線路と共通線路との電磁結合および橋絡容量を低減させることができる。よって、阻止帯域の減衰量を大きくすることができる。
【0060】
本発明は、前記インダクタ線路は、前記対応する前記受信線路または前記送信線路の一方と前記受信線路および前記送信線路の他方との間に設けられていることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、送信線路と受信線路との間の電磁結合または橋絡容量を低減でき、対応するフィルタの相手帯域での減衰量を大きくすることができる。
【0061】
本発明は、前記実装部は、複数の積層を有し、前記インダクタ線路は、前記複数の積層に設けられていることを特徴とする分波器とすることができる。本発明によれば、受信線路または送信線路と共通線路との電磁結合および橋絡容量を一層低減させることができる。
【0062】
本発明は、前記インダクタ線路は、前記実装部に形成されグランドを接続するための複数のグランド端子に接続されていることを特徴とする分波器とすることができる。受信線路または送信線路と共通線路との電磁結合および橋絡容量を一層低減させることができる。
【0063】
本発明は、前記直列共振器は複数の直列共振器であり、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする分波器とすることができる。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、低損失化、高減衰量化および小型化の可能な分波器およびラダー型フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、図面を参照に本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0066】
実施例1は、送信帯域が1920〜1980MHzであり受信帯域が2110〜2170MHzである分波器の例である。図8(a)は実施例1に係る分波器の回路構成図である。この分波器は、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に送信用フィルタ10(第1のフィルタ)が接続されている。同様にアンテナ端子Antと受信用端子Rxとの間に受信用フィルタ20(第2のフィルタ)が接続されている。
【0067】
図9は送信用フィルタ10の回路構成を示す図である。図9を参照に、送信用フィルタ10は複数の直列共振器S1ないしS4並びに並列共振器P1およびP2を有するラダー型フィルタである。そして、最もアンテナ端子Ant側の直列共振器S1に並列にインダクタL1が接続している。また、並列共振器P1、P2とグランドとの間にはインダクタLP1が接続する。ここで、直列共振器S1ないしS4の容量値は各々2.83pF、並列共振器P1およびP2の容量値は各々1.41pF、インダクタL1およびLP1のインダクタンスはそれぞれ3.0nHおよび1.55nHとした。直列共振器S1とインダクタL1による減衰極および並列共振器P1およびP2による減衰極をともに受信帯域(2110〜2170MHz)近傍に得られるようにインダクタンスを決めた。
【0068】
図10(a)は実施例1に係るフィルタのアンテナ端子Ant側から入力したときの反射特性S11、図10(b)は送信端子Txから入力したときの反射特性S22を示す図である。図10(a)を参照に、受信帯域(2110〜2170MHz)におけるアンテナ端子Antからみたインピーダンスは非常に大きい。一方、受信帯域における送信端子Txからみたインピーダンスは小さい。
【0069】
図8(a)を参照に受信用フィルタ20も送信用フィルタ10と同様の回路構成を有するラダー型フィルタである。そして、アンテナ端子Ant側の直列共振器S1´にインダクタL1´が接続し、並列共振器P1´およびP2´とグランドとの間にインダクタLP1´が接続する。直列共振器S1´ないしS4´の容量値は各々2.07pF、並列共振器P1´およびP2´の容量値は各々1.87pF、インダクタL1´およびLP1´のインダクタンスはそれぞれ2.3nHおよび0.55nHとした。これらのインダクタンスは送信帯域(1920〜1980MHz)近傍に減衰極が得られるように決めた。そして、受信用フィルタ20の送信帯域におけるアンテナ端子Antからみたインピーダンスは非常に大きい。一方、送信帯域における受信端子Rxからみたインピーダンスは低い。
【0070】
図8(b)は比較例1に係る分波器の回路構成図である。比較例1に係る分波器は実施例1に係る分波器の送信用フィルタ10が逆に接続している。つまり、インダクタL1´が並列に接続した直列共振器S1´が送信端子Tx側に接続している。その他の構成は実施例1に係る分波器と同じであり説明を省略する。
【0071】
実施例1および比較例1に係る分波器の通過特性を評価した。図11(a)は送信帯域での送信用フィルタ10の通過特性を示した図であり、横軸は周波数であり縦軸は減衰量である。単体フィルタは送信用フィルタ10単体での通過特性を示す。図11(b)は受信帯域での受信用フィルタ20の通過特性を示した図である。単体フィルタは受信用フィルタ20単体での通過特性を示す。
【0072】
図11(a)を参照に、実施例1および比較例1に係る分波器の送信用フィルタ10は送信用フィルタ10単体に比べ挿入損失が約0.4dB大きいものの、実施例1と比較例1では、ほとんど同じ挿入損失である。一方、図11(b)を参照に、実施例1に係る分波器の受信用フィルタ20は受信用フィルタ20単体に比べ挿入損失が約0.4dB大きく、比較例1に係る分波器の受信用フィルタ20の挿入損失はさらに約0.8dB大きい。比較例1で受信用フィルタ20の挿入損失が大きい原因は、送信用フィルタ10のアンテナ端子Ant側からの反射特性のインピーダンスが図10(b)のように低いため、アンテナ端子Antから入力した信号の一部が送信用フィルタ10に漏れてしまうためである。一方、実施例1では、送信用フィルタ10のアンテナ端子Ant側からの反射特性のインピーダンスが図10(a)のように非常に大きいため、アンテナ端子Antから入力した信号の一部の送信用フィルタ10への漏洩を抑制できる。よって、受信用フィルタ20の挿入損失を低減することができる。
【0073】
実施例1に係る分波器は、送信用フィルタ10(第1のフィルタ)および受信用フィルタ20(第2のフィルタ)は複数の直列共振器S1ないしS4のうち一部の直列共振器S1にはインダクタL1が並列に接続し、最もアンテナ端子Ant側の直列共振器S1にインダクタL1が並列に接続している。このように、送信用フィルタ10において、直列共振器S1に並列にインダクタL1を接続することで、受信用フィルタの受信帯域(相手フィルタの相手帯域)での挿入損失を小さくすることができる。これにより、整合回路が不要となり、実装面積を縮小し分波器を小型化することができる。また、送信用フィルタ10において、直列共振器S1とインダクタL1とによる減衰極(反共振点)を受信帯域としているため、送信用フィルタ10の受信帯域(自フィルタの相手帯域)での減衰量を大きくすることができる。さらに、送信用フィルタ10において、直列共振器S1ないしS4の一部の共振器にインダクタを並列に接続することにより、従来技術2のように全部の直列共振器にインダクタを付加するのに比べ、送信、受信帯域より低周波数側での減衰量を大きくすることができる。受信用フィルタ20においても同様である。実施例1のように、送信帯域と受信帯域が隣接する場合、送信用フィルタの通過帯域と受信用フィルタの通過帯域が隣接し、各々のフィルタの通過帯域の裾野が一部重なっている。よって、自フィルタの相手帯域での減衰量を大きくすることは重要である。
【0074】
また、実施例1に係る分波器は、送信用フィルタ10(第1のフィルタ)および受信用フィルタ20(第2のフィルタ)の並列共振器P1およびP2とグランドとの間にインダクタLP1が直列に接続されている。そして、並列共振器P1およびP2とインダクタLP1による減衰極を受信帯域とする。これにより、自フィルタの相手帯域での減衰量を一層大きくすることができる。
【0075】
さらに、並列共振器P1およびP2に直列に接続されたインダクタLP1は、複数の並列共振器P1およびP2に接続される。このように、並列共振器とグランドとの間に設けられたインダクタをまとめることにより、受信(送信)帯域に減衰極を設けるためのインダクタンスの値を小さくできる。これにより、実装面積を小さくし、分波器の一層の小型化が可能となる。
【実施例2】
【0076】
実施例2は、実施例1より挿入損失を改善するため、送信用フィルタ10および受信用フィルタ20の最もアンテナ端子Ant側の直列共振器の容量値を他の直列共振器に比べ小さくした例である。実施例1に係る分波器と同様の構成の分波器において、直列共振器の好ましい関係について検討した。
【0077】
まず、ラダー型フィルタの直列共振器の容量値の定義について説明する。図12は直列共振器Sと並列共振器Pを1個ずつ配置したラダー型フィルタの基本区間である。図13(a)に示したラダー型フィルタF1はアンテナ端子Antと送信(受信)端子Tx/Rxとの間に図12の基本区間を4つ配置し、各区間同士のイメージインピーダンスが合うようにミラー接続される。各基本区間は図13(a)の破線で示す。アンテナ端子Ant側および送信(受信)端子Tx/Rx側の直列共振器S1およびS4以外の直列共振器S2およびS3は2つで1組となっており、B−Bで対称である。また、並列共振器P1およびP2は2つで1組となっており、A−Aで対称である。同様に並列共振器P3およびP4もC−Cで対称である。
【0078】
一方、図13(b)に示したラダー型フィルタF2は直列共振器S1、S23およびS4並びに並列共振器P12およびP34は各々1個ずつ接続している。フィルタF2の直列共振器S23はフィルタF1の直列共振器S2およびS3をまとめたものであり、共振器S23の容量値は共振器S2およびS3の各容量値の1/2倍である。同様に、共振器P12は共振器P1とP2をまとめたものであり、共振器P12の容量値は共振器P1およびP2の各容量値の2倍である。また、共振器P34についても共振器P12と同様である。これにより、フィルタF2はフィルタF1と同じ特性を得ることができる。
【0079】
このように、ラダー型フィルタの回路構成は、フィルタF1のようなミラー接続の回路構成で表すことができる。そこで、直列共振器の容量値をミラー接続した共振器の容量値で表すこととする。図13(a)を参照に、最もアンテナ端子Ant側の共振器S1の容量値をC1、その他の直列共振器S2ないしS4の容量値の平均値をC2とする。直列共振器の数が異なる場合も同様である。なお、以下の説明では送信用フィルタ10のC1、C2をCt1、Ct2とし、受信用フィルタ20のC1、C2をCr1、Cr2とする。
【0080】
図14(a)ないし図15(b)は実施例1に係る分波器と同じ回路構成の分波器の受信用フィルタ20のCr1/Cr2を1とし、送信用フィルタ10のCt2=2.83pFとしたとき、Ct1を変えた場合の送信用フィルタ10および受信用フィルタ20の特性を示した図である。図14(a)はCt1/Ct2に対し送信用フィルタ10の受信帯域端(2110MHzおよび2170MHz)での反射係数を示した図である。Ct1/Ct2が小さくなるほど、送信用フィルタ10の受信帯域(自フィルタの相手帯域)の反射係数は1に近づく。図14(b)はCt1/Ct2に対し受信用フィルタ20の受信帯域端(2110MHzおよび2170MHz)での挿入損失を示した図である。Ct1/Ct2が小さくなるほど、受信用フィルタ20の受信帯域(相手フィルタの相手帯域)での挿入損失は小さくなる。これは、図14(a)のように送信用フィルタ10の反射係数が大きくなるためである。図14(c)はCt1/Ct2に対し送信用フィルタ10の受信帯域端(2110MHzおよび2170MHz)での減衰量を示した図である。Ct1/Ct2が小さくなるほど、送信用フィルタ10の受信帯域(自フィルタの相手帯域)の減衰量は大きくなる。このように、図14(a)ないし図14(c)の図では、Ct1/Ct2が小さくなると分波器としての特性は向上する。
【0081】
図15(a)は、Ct1/Ct2に対し送信用フィルタ10の送信帯域端(1920MHzおよび1980MHz)での挿入損失を示した図である。Ct1/Ct2が0.5より小さくなると、送信用フィルタ10の送信帯域(自フィルタの自帯域)の低周波端の挿入損失が大きくなる。そしてCt1/Ct2が0.3以下になると、挿入損失が急激に大きくなる。図15(b)は、Ct1/Ct2に対し送信用フィルタ10の送信帯域端(1920MHzおよび1980MHz)での反射係数を示した図である。Ct1/Ct2が0.5より小さくなると、送信用フィルタ10の送信帯域(自フィルタの自帯域)の低周波端の反射係数は大きくなる。そしてCt1/Ct2が0.3以下になると、反射係数は急激に大きくなる。このように、Ct1/Ct2が0.3以下で送信帯域の低周波端の挿入損失が急激に大きくなるのは、送信用フィルタ10の整合が大幅に悪化することに起因する。
【0082】
図16(a)ないし図17(b)は実施例1に係る分波器と同じ回路構成の分波器の送信用フィルタ10のCt1/Ct2を0.6とし、受信用フィルタ20のCr2=2.07pFとしたとき、Cr1を変えた場合の受信用フィルタ20および送信用フィルタ10の特性を示した図である。図16(a)はCr1/Cr2に対し受信用フィルタ20の送信帯域端(1920MHzおよび1980MHz)での反射係数を示した図である。図16(b)はCr1/Cr2に対し送信用フィルタ10の送信帯域端(1920MHzおよび1980MHz)での挿入損失を示した図である。図16(c)はCr1/Cr2に対し受信用フィルタ20の送信帯域端(1920MHzおよび1980MHz)での減衰量を示した図である。図14(a)ないし図14(c)の結果と同様に、受信用フィルタ20のCr1/Cr2が小さくなるほど、受信用フィルタ20の送信帯域(自フィルタの相手帯域)の反射係数は1に近づく。これにより送信用フィルタ10の送信帯域(相手フィルタの相手帯域)の挿入損失は小さくなる。また、受信用フィルタ20の送信帯域(自フィルタの相手帯域)の減衰量は大きくなる。
【0083】
一方、図17(a)は、Cr1/Cr2に対し受信用フィルタ20の受信帯域端(2110MHzおよび2170MHz)での挿入損失を示した図である。図17(b)は、Cr1/Cr2に対し受信用フィルタ20の受信帯域端(2110MHzおよび2170MHz)での反射係数を示した図である。図15(a)および図15(b)と同様に、受信用フィルタ20のCr1/Cr2が0.5より小さくなると、受信用フィルタ20の受信帯域(自フィルタの自帯域)の反射係数は大きくなり、受信用フィルタ20の受信帯域(自フィルタの自帯域)の低周波端の挿入損失が大きくなる。そしてCr1/Cr2が0.3以下になると、挿入損失が急激に大きくなる。これは、受信用フィルタ20の整合が大幅に悪化することに起因する。
【0084】
実施例2においては、送信用フィルタ10および受信用フィルタ20であるラダー型フィルタをミラー接続のラダー型フィルタの等価回路で表し、最もアンテナ端子側の直列共振器の容量値をC1、ラダー型フィルタのその他の直列共振器の容量値の平均値をC2としたとき、C1/C2を1より小さくする。実施例1に係る分波器では、整合回路が不要となり分波器を小型化することができ、さらに、フィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができた。しかし、これだけでは、まだフィルタの帯域内損失あるいは相手帯域の減衰量が十分でない場合がある。そこで、実施例2のようにC1/C2を1より小さくすることにより、相手フィルタの相手帯域の挿入損失を改善しフィルタ単体の挿入損失に近づけることができる。さらに、自フィルタの相手帯域の減衰量も一層大きくすることができる。
【0085】
さらに、実施例2においては、C1/C2を0.3より大きくする。これにより、自フィルタの帯域での整合の悪化を抑制でき低損失を確保できる。以上より、0.3<C1/C2<1.0が好ましい。また、自フィルタの帯域での整合の悪化を一層抑制するため、0.5<C1/C2<1.0が一層好ましい。
【実施例3】
【0086】
図18(a)は実施例3に係る分波器の回路構成を示した図である。図8(a)の実施例1に対し、送信用フィルタ10aの直列共振器S1ないしS4にはインダクタが接続していない。また、送信用フィルタ10aとアンテナ端子Antとの間に整合回路30aが接続する。その他の構成は図8(a)と同じであり説明を省略する。
【0087】
図18(b)は実施例3の変形例に係る分波器の回路構成を示した図である。図8(a)の実施例1に対し、受信用フィルタ20aの直列共振器S1´ないしS4´にはインダクタが接続していない。また、受信用フィルタ20aとアンテナ端子Antとの間に整合回路30bが接続する。その他の構成は図8(a)と同じであり説明を省略する。整合回路30aおよび30bはインダクタやコンデンサを用いた集中定数回路、またはストリップラインまたはマイクロストリップラインを用いた分布定数回路で形成される。
【0088】
実施例3およびその変形例においても、最もアンテナ端子Ant側の直列共振器にインダクタを並列に接続したラダー型フィルタに対し、フィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。相手フィルタはラダー型フィルタ以外のフィルタであってもよい。また、整合回路30a、30bは相手帯域のインピーダンスを高くする機能があれば整合回路以外であっても良い。このように、送信用フィルタ(第1のフィルタ)および受信用フィルタ(第2のフィルタ)の少なくとも一方が、並列共振器と複数の直列共振器を有し、複数の直列共振器のうち一部の直列共振器にはインダクタが並列に接続し、最もアンテナ端子側の直列共振器はインダクタが並列に接続したラダー型フィルタであれば良い。
【実施例4】
【0089】
図19は実施例4に係る分波器の回路構成を示す図である。実施例4に係る分波器は、図8(a)の実施例1の回路構成に加え、受信用フィルタ20cの受信端子Rx側の直列共振器S4´に並列にインダクタンス2.3nHのインダクタL4´を接続する。共振器S4´とインダクタL4´により減衰極(反共振点)を送信帯域近傍に形成する。また、送信用フィルタ10および受信用フィルタ20cにおいて、Cr1/Cr2=1.0、Ct1/Ct2=0.6とした。その他の回路構成は図8(a)の実施例1と同じであり説明を省略する。また、比較例4は、実施例4でインダクタL4´を接続していない分波器である。
【0090】
図20は実施例4および比較例2に係る分波器の受信用フィルタ20cおよび20の周波数に対する減衰量を示す図である。実施例4は比較例4に対し、特に送信帯域(1920MHzから1980MHz)において、減衰量が大きく改善している。このように、受信用フィルタ20c(ラダー型フィルタ)は最もアンテナ端子Ant側の直列共振器S1に加えその他の直列共振器の一部(直列共振器S4´)にもインダクタL4´が並列に接続されている。このように、分波器を構成する少なくとも1つのラダー型フィルタを、最もアンテナ端子Ant側の直列共振器S1に加え、他の直列共振器の一部に設けても良い。これにより、自フィルタの相手帯域の減衰量を一層大きくすることができる。
【0091】
インダクタを付加する直列共振器は受信端子Rx側に限られず他の直列共振器S2´またはS3´であっても良い。また、受信用フィルタ20に限られず送信側フィルタ10であっても良い。これらにおいても、同様の効果が得られる。
【0092】
実施例1ないし4において共振器は弾性表面波共振器または圧電薄膜共振器を用いることが好ましい。また、直列共振器が4個、並列共振器が2個の例であったが、これに限られるものではない。
【0093】
図9のラダー型フィルタである送信用フィルタ10は、並列共振器P1、P2と複数の直列共振器S1ないしS4を有し、複数の直列共振器のうち一部の直列共振器S1にはインダクタL1が並列に接続し、最もアンテナ端子Antに接続する端子側の直列共振器S1はインダクタL1が並列に接続している。また、並列共振器P1およびP2とグランドとの間にインダクタLP1が直列に接続している。このラダー型フィルタである送信用フィルタ10を分波器に用いることにより、整合回路が不要となり分波器を小型化することができ、さらに、フィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。
【実施例5】
【0094】
実施例5はW−CDMA/UMTS方式(送信帯域:1920〜1980MHz、受信帯域:2110〜2170MHz)に用いられる受信用フィルタの例である。まず、直列共振器に並列にインダクタを接続した場合の通過特性について説明する。図21(a)のように、共振周波数が約2145MHzで静電容量が1.31pFである直列共振器S1´の回路Aと、図21(b)のように、この直列共振器S1´に並列に3.7nHの第1インダクタL1´を接続した回路Bとの通過特性の計算結果を図21(c)に示す。図21(c)を参照に、回路Aでは、直列共振器S1´の共振点(約2145MHz)の高周波側に反共振点が形成されている。一方、回路Bでは、直列共振器S1´の共振点の低周波側に反共振の減衰極が新たに形成される。このように、直列共振器S1´に第1インダクタL1´を並列に接続することにより、直列共振器S1´の低周波側である約1960MHzに減衰極を形成することができる。
【0095】
次に、図22(a)から図22(c)のフィルタAからCの通過特性を計算した。図22(a)を参照に、フィルタAは、複数の直列共振器S1´からS4´と複数の並列共振器P1´からP2´を有するラダー型フィルタである。直列共振器S1´の静電容量は1.31pF、直列共振器S2´からS4´の静電容量は1.74pF、並列共振器P1´およびP2´の静電容量は2.79pFである。図22(b)を参照に、フィルタBはフィルタAに加え、並列共振器P1´およびP2´のグランド側を共通に接続し、該グランド側とグランドとの間に0.24nHの第2インダクタLP1´が接続されている。図22(c)を参照に、フィルタCはフィルタBに加え、複数の直列共振器S1からS4の一部である直列共振器S1´に並列に3.7nHの第1インダクタL1´が接続されている。
【0096】
図23はフィルタAからCの通過特性を示す図である。図23を参照に、フィルタAに対し、フィルタBは第2インダクタLP1´を接続することにより、通過帯域の低周波側の約1960MHzに減衰極が新たに形成される。さらに、フィルタCはフィルタBに対し、第1インダクタL1´を接続することにより、約1960MHzにさらに減衰極が形成される。また、第2インダクタLP1´および第1インダクタL1´を接続することによる通過帯域における挿入損失の劣化はない。つまり低損失を維持している。このように、直列共振器S1´に第1インダクタL1´が並列に接続されることにより直列共振器S1´の共振点よりも低周波側に生じる反共振の減衰極と、ラダー型フィルタにおいて並列共振器P1´およびP2´がグランド側で共通接続された後にグランドとの間に第2インダクタLP1´が直列に接続されることにより通過帯域よりも低周波側に生じる減衰極とが略一致している。これにより、通過帯域の低損失を維持しつつ、受信フィルタの通過帯域の低周波側の1920から1980MHz(阻止帯域)の減衰量を大きくできる。
【0097】
なお、第1インダクタL1´を接続することにより生じる減衰極と、第2インダクタLP1´を接続することにより生じる減衰極とが略一致している、とは、所定の阻止帯域(実施例5では送信帯域:1920から1980MHz)において、第2インダクタLP1´を接続することにより生じる減衰極に対し、さらに第1インダクタL1´を接続することにより、減衰極の減衰量が5dB以上向上する程度に減衰極が一致する場合をいう。例えば、実施例5においては、図23を参照に、フィルタBの第2インダクタLP1´を接続した場合の阻止帯域での減衰極の減衰量は約44dBであるのに対し、フィルタCのように、さらに第1インダクタL1´を接続することにより阻止帯域での減衰極の減衰量は約66dBとなり、減衰量が5dB以上向上している。このように、2つの減衰極は略一致している。一方、従来技術5においては、特許文献5の図10、図11のように、有極用インダクタを接続しただけの特性(ケースNo.1)と直列共振器に並列にインダクタとキャパシタとを接続した特性(ケースNo.2、3)を比較すると、通過帯域の低周波側の減衰量の改善は5dB以下である。これは、2つの減衰極が略一致するように設計されていないためである。
【実施例6】
【0098】
実施例6は、W−CDMA/UMTS方式に用いられる送信用フィルタの例である。まず、直列共振器に並列にインダクタを接続した場合の通過特性について説明する。図24(a)のように、共振周波数が約1960MHzで静電容量が1.74pFである直列共振器S1の回路Cと、図24(b)のように、この直列共振器S1に並列に4.6nHの第1インダクタL1を接続した回路Dとの通過特性の計算結果を図24(c)に示す。図24(c)を参照に、回路Cでは、直列共振器S1の共振点(約1960MHz)の高周波側に反共振点(約2020MHz)が形成されている。回路Dでは、反共振点の周波数がさらに高周波側にシフトし約2140MHzに反共振点が形成される。このように、直列共振器S1に第1インダクタL1を並列に接続することにより、直列共振器S1の反共振点(減衰極)をより高周波側に形成することができる。
【0099】
図25(a)から図25(c)のフィルタDからFの通過特性を計算した。図25(a)を参照に、フィルタDは、複数の直列共振器S1からS3と複数の並列共振器P1からP2を有するラダー型フィルタである。直列共振器S1、S2、S3の静電容量はそれぞれ1.74pF、1.34pF、2.67pF、並列共振器P1´およびP2´の静電容量は1.6pFである。図25(b)を参照に、フィルタEはフィルタDに加え、並列共振器P1およびP2のグランド側を共通に接続し、該グランド側とグランドとの間に1.28nHの第2インダクタLP1が接続されている。図25(c)を参照に、フィルタFはフィルタEに加え、複数の直列共振器S1からS3の一部である直列共振器S1に並列に4.6nHの第1インダクタL1´が接続されている。
【0100】
図26はフィルタDからFの通過特性を示す図である。図26を参照に、フィルタDに対し、フィルタEは第2インダクタLP1を接続することにより、通過帯域の高周波側の約2140MHzに減衰極が形成される。さらに、フィルタFはフィルタEに対し、第1インダクタL1を接続することにより、約2140MHzにさらに減衰極が形成される。また、第2インダクタLP1および第1インダクタL1を接続することによる通過帯域における挿入損失の劣化はない。つまり低損失を維持している。このように、直列共振器S1に第1インダクタL1が並列に接続されることにより高周波側にシフトした直列共振器S1の反共振の減衰極と、ラダー型フィルタにおいて並列共振器P1およびP2がグランド側で共通接続された後にグランドとの間に第2インダクタLP1が直列に接続されることにより通過帯域よりも高周波側に生じる減衰極とが略一致している。これにより、通過帯域の低損失を維持しつつ、送信フィルタの通過帯域の高周波側の2210から2170MHzの減衰量を大きくできる。
【0101】
なお、第1インダクタL1を接続することによりシフトした減衰極と、第2インダクタLP1を接続することにより生じる減衰極とが略一致している、とは、所定の阻止帯域(実施例6では受信帯域:2210から2170MHz)において、第2インダクタLP1を接続することにより生じた減衰極に対し、さらに第1インダクタL1を接続することにより、減衰極の減衰量が5dB以上向上する程度に減衰極が一致する場合をいう。例えば、実施例6においては、図26を参照に、フィルタEの第2インダクタLP1を接続した場合の阻止帯域での減衰極の減衰量は約35dBに対し、フィルタFのように、さらに第1インダクタL1を接続することにより阻止帯域での減衰極の減衰量は約56dBとなり、減衰量が5dB以上向上している。このように、2つの減衰極は略一致している。一方、従来技術5においては、実施例5で説明したのと同様に、有極用インダクタを接続しただけの特性と直列共振器に並列にインダクタとキャパシタとを接続した特性とを比較すると、通過帯域の高周波側の減衰量の改善は5dB以下である。これは、2つの減衰極が略一致するように設計されていないためである。
【0102】
実施例5および実施例6は、W−CDMA/UMTS方式以外の用途にも用いることができる。しかしながら、実施例5および実施例6によれば、第1インダクタL1またはL1´と第2インダクタLP1またはLP1´により減衰極を形成するため、減衰極を通過帯域より離れて形成することができる。よって、W−CDMA/UMTS方式のように、受信帯域と送信帯域が離れている場合、実施例5および6を用いることが特に有効である。
【0103】
図27のように、送信用フィルタにおいて、並列共振器P1およびP2にそれぞれインダクタLP2およびLP3が接続した場合、約2140MHzに減衰極を形成しようとすると、インダクタLP2およびLP3のインダクタンスはそれぞれ4.3nHが必要となる。例えば、このインダクタLP2およびLP3をパッケージ内の線路パターンで形成しようとした場合、パッケージサイズの縮小化の妨げとなってしまう。また、2つのインダクタ間の電磁結合により特性が劣化しやすくなる。このように、第2インダクタは2以上の並列共振器に共通に接続されることが好ましい。
【0104】
図28(a)および図28(b)に示すフィルタHおよびIについて通過特性を計算した。図28(a)に図示したフィルタHは図25(c)のフィルタFと同じ構成であり、複数の直列共振器S1からS3にうち1つの直列共振器S1に第1インダクタL1が並列に接続されている。図28(b)を参照に、フィルタHに加え、直列共振器S2に並列に9.2nHの第1インダクタL2、直列共振器S3に並列に4.6nHの第1インダクタL3がそれぞれ接続されている。このように、直列共振器S1からS3の全てに第1インダクタL1からL3が並列に接続されている。
【0105】
図29を参照に、フィルタIはフィルタHに比べ低周波数側(約1300MHz以下)で減衰量が劣化している。このように、第1インダクタL1からL3を直列共振器S1からS3に全て設けると低周波側の減衰量が劣化してしまう。さらに、阻止帯域に減衰極を形成するのに、大きなインダクタが多数必要になり、低コスト化、小型化には不向きである。特に、低周波側の減衰量の劣化を抑制するためには、第1インダクタは複数の直列共振器S1からS3の一部に接続されることが好ましい。さらに、フィルタHのように、複数の直列共振器S1からS3のうち第1インダクタL1が並列に接続されない直列共振器S2およびS3が2つ以上あることがより好ましい。
【実施例7】
【0106】
実施例7は、第2インダクタが共通に接続される並列共振器がラダー型フィルタが有する複数の並列共振器の一部の例である。図30を参照に、実施例7に係るラダー型フィルタは、複数の直列共振器S5からS8および複数の並列共振器P3からP5を有している。複数の直列共振器S5からS8の一部である直列共振器S4に並列に第1インダクタL4が接続されている。並列共振器P3およびP4のグランド側を共通に接続し、該グランド側とグランドとの間に第2インダクタLP4が接続されている。さらに、並列共振器P5のグランド側とグランドとの間にインダクタLP5が接続されている。第1インダクタL4および第2インダクタLP4のインダクタンスは、第1インダクタL4と第2インダクタLP4とによる減衰極により、1つの減衰極が形成されるように設定される。好ましくは2つの減衰極がほぼ一致するように設定される。これにより、形成された減衰極での減衰量を大きくすることができる。
【0107】
実施例5から実施例7において、直列共振器および並列共振器の数は任意に設定できる、また、第1インダクタL1、L1´またはL4を接続する直列共振器S1、S1´またはS5に限られず任意の直列共振器とすることができる。また、第2インダクタLP1、LP1´またはLP4を接続する並列共振器は複数の並列共振器と共通に接続していれば良く、実施例5および実施例6のように、ラダー型フィルタを構成する複数の並列共振器の全部であってもよいし、実施例7のようにする複数の並列共振器の一部であってもよい。第2インダクタを接続する並列共振器は複数の並列共振器の全てと共通に接続する場合の方が、必要なインダクタの数と値を小さくできる。
【0108】
実施例5から実施例7によれば、第1インダクタL1、L1´またはL4と第2インダクタLP1、LP1´またはLP4とを設けることで、図23および図26に示したように、低損失でかつ阻止帯域の減衰量を大きくすることができる。また、第2インダクタLP1、LP1´またはLP4が2つ以上の並列共振器に共通に接続されているため小型化、低コスト化が容易となる。さらに、第1インダクタL1、L1´またはL4が複数の直列共振器の一部に接続されているため、図29に示したように低周波側の広帯域における減衰量の悪化を抑制することができる。
【実施例8】
【0109】
実施例8は、直列共振器または並列共振器の少なくとも1つを複数の共振器に分割され互いに直列接続または並列接続されている例である。図31(a)を参照に、実施例6のフィルタFに対し、直列共振器S1が2つの共振器に分割され、2つの共振器が互いに直列接続されている。図31(b)を参照に、実施例6のフィルタFに対し、直列共振器S1が2つの共振器に分割され、2つの共振器が互いに並列接続されている。図31(c)を参照に、実施例6のフィルタFに対し、並列共振器P1が2つの共振器に分割され、2つの共振器が互いに直列接続されている。図31(d)を参照に、実施例6のフィルタFに対し、並列共振器P1が2つの共振器に分割され、2つの共振器が互いに並列接続されている。
【0110】
実施例8によれば、耐電力性、相互変調歪(IMD:Inter Moduration Distortion)等の線形性を向上させることができる。分割された2つの共振器は分割前の1つの共振器と静電容量が不変であることが好ましい。なお、分割する共振器は直列共振器S1、並列共振器P1に限られず、任意の直列共振器および並列共振器とすることができる。また、複数の直列共振器および並列共振器を分割しても良い。
【実施例9】
【0111】
実施例9は実施例5のフィルタCを積層パッケージに実装した例である。図32は、3.7nHの第1インダクタL1´として用いる集積型受動素子IPD(Integrated Passive Device)チップ119の平面図である。例えば石英等の絶縁性または半導体の基板80上に、第1インダクタとしてスパイラルコイル82が例えば銅等の低抵抗金属を用い形成される。スパイラルコイル82の両端はパッド84に接続される。パッド84にはフェースダウン実装のためのバンプ86が形成される。スパイラルコイル82が接続されていないパッド84にもダミーバンプ88が形成される。ダミーバンプ88は電気的接続を目的としないが、機械的接続を目的とするバンプである。バンプ86およびダミーバンプ88は例えば金等で形成される。
【0112】
図33は直列共振器S1´からS4´及び並列共振器P1´からP2´を形成したフィルタチップ118の平面図である。なお、圧電膜94の下の下部電極92は外周を破線で示している。図33を参照に、例えばシリコン基板90上に、下部電極92、圧電膜94および上部電極96が積層し形成される。下部電極92および上部電極96にはフェースダウン実装のためのバンプ98が形成される。圧電膜94を挟み上部電極96と下部電極92とが対向する領域が共振部99である。下部電極92および上部電極96は例えばRu、Mo、W、Pt等の金属膜で形成される。圧電膜94は例えばAlN、ZnO等の圧電膜で形成される。このような圧電薄膜共振器の共振周波数は、下部電極92、圧電膜94および上部電極96の厚さと厚さ方向の縦振動の伝搬速度により設定することができる。
【0113】
図34(a)および図34(b)はIPDチップ119およびフィルタチップ118を積層パッケージ110に実装した図である。図34(a)は、実施例9に係るフィルタの平面図(キャップ117は図示していない)である。積層パッケージ110のベース層112の表面(ダイアタッチ面)にIPDチップ119およびフィルタチップ118がフェースダウン実装されている。図34(b)は図34(a)のA−A断面図である。積層パッケージ110は、例えばセラッミクからなる絶縁層であるキャビティ層113、ベース層112および111が積層されて形成されている。キャビティ層113上には金属製のキャップ117(メタルリッド)が密着され、フィルタチップ118およびIPDチップ119を気密封止するキャビティを形成する。フィルタチップ118およびIPDチップ119はベース層112の表面にバンプ121を用いフェースダウン実装される。
【0114】
ベース層112および111の表面には導電性の線路パターン115が形成されている。ベース層111の裏面には導電性のフットパッド114が形成される。ベース層111表面の線路パターン115とベース層112表面の線路パターン115とはベース層112を貫通する導電性材料が埋め込まれたビア109により電気的に接続される。同様に、ベース層111の表面の線路パターン115とフットパッド114とはベース層111を貫通するビア109により接続される。フットパッド114とフィルタチップ118およびIPDチップ119とは、ビア109および線路パターン115を介して接続される。0.24nHの第2インダクタLP1´はベース層112表面の線路パターン115、ベース層112を貫通するビア109、ベース層111表面の線路パターン115、ベース層111を貫通するビア109を用いて形成される。
【0115】
実施例9では、第1インダクタL1´をIPDチップ119で形成する。IPDチップ119で形成されたインダクタは高Qであり、かつ小型、低背とすることができる。よって、IPDチップ119を用いることにより高性能かつ小型化可能なフィルタを提供することができる。第1インダクタL1´はIPDチップ119以外にもチップインダクタを用いることもできる。チップインダクタは積層パッケージ110のベース層112の表面に実装してもよいが、積層パッケージ110の外に設けても良い。チップインダクタは高Qであり低コストである。よって、チップインダクタを用いることにより高性能かつ低コストなフィルタを提供することができる。
【0116】
第2インダクタLP1´として、積層パッケージ110(実装部)に形成された線路パターン115およびビア109を用いるため、小型化、低コスト化可能なフィルタを提供することができる。なお、実施例9では、実装部として積層パッケージ110を例に説明したが、実装部はフィルタチップ118およびIPDチップ119を実装する機能を有していればよく、積層基板等の基板を用いることもできる。
【0117】
直列共振器S1´からS4´および並列共振器P1´からP2´として圧電薄膜共振器を用いた例であったが、圧電薄膜共振器としては図1(a)または図1(b)で示したものを用いることができる。また、図2に示した弾性表面波共振器を用いることもできる。さらに弾性境界波共振器を用いることもできる。これらの共振器は高Qで小型化、低コスト化が可能である。よって、これらを用いることにより高性能、小型かつ低コストなフィルタを提供することができる。
【0118】
図35(a)および図35(b)が弾性境界波共振器を示した図である。図35(a)の平面図のように、圧電基板100上にIDTとIDTの両側に反射器R0とが設けられている。IDTには出力端子Out、入力端子Inである入出力パッド108が接続されている。図35(b)は図35(a)のA−A断面図である。圧電基板100上に例えば銅からなる電極102が設けられ、電極102上に2種類の絶縁膜として例えば酸化シリコン膜104および酸化アルミニウム膜106が設けられている。共振周波数は弾性表面波共振器と同様に、弾性波の伝搬速度と電極102の周期により設定することができる。
【実施例10】
【0119】
実施例10は実施例5から実施例9のフィルタを用い、分波器を形成した例である。図36は実施例5のフィルタCを受信用フィルタ20、実施例6のフィルタFを送信用フィルタ10に用いた分波器の回路図である。送信用フィルタ10が共通端子Antと送信端子Txとの間、受信用フィルタ20が共通端子Antと受信端子Rxとの間に接続される。図37は実施例10の送信用フィルタ10および受信用フィルタ20の通過特性を示す図である。実施例10は図36の構成に限られず、共通端子Antに接続する2つのフィルタ10、20を具備し、2つのフィルタ10、20の少なくとも一方を実施例5から9のいずれかのフィルタとすることができる。これにより、分波器において、実施例5から実施例9とフィルタと同様の効果を奏することができる。
【0120】
2つのフィルタ10、20のうち高周波側のフィルタである受信用フィルタ20を実施例5のフィルタCとすることができる。これにより、受信用フィルタ20の通過帯域の低周波側に位置するもう1つのフィルタである送信用フィルタ10の通過帯域での受信用フィルタ20の減衰量を大きくすることができる。また、2つのフィルタ10、20のうち低周波側のフィルタである送信用フィルタ10を実施例6のフィルタFとすることができる。これにより、送信用フィルタ10の通過帯域の高周波側に位置するもう1つのフィルタである受信用フィルタ20の通過帯域での送信用フィルタ10の減衰量を大きくすることができる。特に、図37のように、送信用フィルタ10と受信用フィルタ20との通過領域の裾野が重ならない程度に通過領域が離れている場合、相手帯域に減衰極を形成できるため有効である。
【0121】
さらに、実施例1のように、2つのフィルタ10、20のうちいずれか一方のラダー型フィルタにおいて、最も共通端子Ant側の共振器は直列共振器S1またはS1´であり、直列共振器S1またはS1´に並列に第1インダクタL1またはL1´が接続されている構成とすることができる。また、2つのフィルタ10、20はいずれもラダー型フィルタであり、いずれも最も共通端子Ant側の共振器は直列共振器S1およびS1´であり、直列共振器S1およびS1´に並列に第1インダクタL1およびL1´が接続されている構成とすることができる。これらの構成によれば、実施例1と同様に、整合回路を不要とすることもできる。よって分波器を小型化することができる。また、フィルタの帯域内損失を小さく相手帯域の減衰量を大きくすることができる。
【実施例11】
【0122】
実施例10の分波器を積層パッケージを用い形成した場合の課題について説明する。実施例9の図34(b)を用い説明したように、第2インダクタLP1およびLP1´は積層パッケージ110の線路パターン115およびビア109により形成される。積層パッケージ110のベース層111、112には、第2インダクタLP1およびLP1´以外にも、フィルタチップ118やIPDチップ119を接続する線路パターン115、ビア109、フットパッド114が形成される。これらは信号線またはグランド線として用いられる。その結果。共通端子Antには寄生容量が付加され、共通端子Antから各フィルタをみたインピーダンスが容量性側にシフトしてしまう。このため整合が悪くなってしまう。
【0123】
図38は実施例11に係る分波器の回路図である。整合回路30cとして7nHの第3インダクタLA1が共通端子Antとグランドとの間に接続されている。その他の構成は実施例10の図36と同じである。図39(a)は実施例10と実施例11との共通端子Antからフィルタを見たインピーダンスを示すスミスチャートである。図39(a)のように、実施例10においてはインピーダンス性が容量性側にシフトしているが、実施例11は実施例10に比べ矢印のようにインピーダンスが誘導性側にシフトし改善している。図39(b)は送信用フィルタ10および受信用フィルタ20の通過帯域の拡大図である。実施例11は共通端子から各フィルタ10、20をみたインピーダンスが改善しているため、図39(b)のように通過帯域の挿入損失が改善する。
【0124】
さらに、整合回路30cはハイパスフィルタ(HPF)であるため、特に低周波側であるDC近傍の減衰量を改善することができる。例えば、実施例10および実施例11の100MHzでの減衰量はそれぞれ約35dBおよび約55dBである。このように、共通端子Antと2つのフィルタ10、20のうち少なくとも一方との間にハイパスフィルタとして機能する整合回路30cを設けることが好ましい。これにより、整合回路を付加したフィルタ10または20のDC近傍の減衰量を大きくすることができる。
【0125】
さらに、実施例11のように整合回路30cを1つの第3インダクタLA1で形成できるため、低損失、小型化、低コスト化が可能となる。実施例11においては、実施例2のように、第1インダクタL1(またはL1´)が並列に接続された最も共通端子Ant側の直列共振器S1(またはS1´)静電容量を他の直列共振器S2およびS3(またはS2´からS4´)より小さくすることが好ましい。これにより、共通端子Ant側から見たインピーダンスの整合をとりやすくすることができる。ハイパスフィルタとして機能する整合回路30cとしては実施例11の例に限られない。例えば、直列にキャパシタ、並列にインダクタをそれぞれ1つ以上設けた整合回路も使用することができる。
【実施例12】
【0126】
実施例12は、実施例11を積層パッケージに実装した例である。図40(a)は実施例12に係る分波器の上視図(キャップは図示していない)であり、図40(b)は図40(a)のA−A断面図である。積層パッケージ110のベース層112の表面にIPDチップ130、送信用フィルタチップ124および受信用フィルタチップ123がフェースダウン実装されている。その他の構成は図34と同じであり、説明を省略する。
【0127】
図41は図38に積層パッケージに設けられた線路パターンとの対応を示した図である。送信用フィルタ10の直列共振器S1からS3および並列共振器P1およびP2が送信用フィルタチップ124に形成され、受信用フィルタ20の直列共振器S1´からS4´および並列共振器P1´およびP2´が受信用フィルタチップ123に形成されている。また、送信用フィルタ10の第1インダクタL1、受信用フィルタ20の第1インダクタL1´および第3インダクタLA1がIPDチップ130に形成されている。共通端子Antと送信用フィルタ10および受信用フィルタ20とを接続する共通線路LA、送信用フィルタ10と送信端子Txとを接続する送信線路LT、受信用フィルタ20と受信端子Rxとを接続する受信線路LR、第2インダクタLP1、LP1´を構成するインダクタ線路LLT、LLR、整合回路30cの第3インダクタLA1とグランドとを接続する整合インダクタグランド線路LLA、第1インダクタL1、L1´からの引き出し線であるそれぞれ引き出し線路LST、LSRが設けられている。
【0128】
図42(a)から図42(d)を用い実施例12に係る分波器である分波器aの積層パッケージ110の各積層の構成について説明する。図中、黒で図示したパターンは導電性のパターンである。図42(a)を参照に、キャビティ層113にはキャビティを形成する空洞が設けられ、空洞上に導電性のキャップ117(図示せず)が搭載される。キャップ117を搭載する面には導電性のシールリンク122が設けられる。
【0129】
図42(b)を参照に、ベース層112の表面(ダイアタッチ面)には金属等の導電性材料で形成された線路パターン、バンプ121が接続されるバンプパッドBM、導体を埋めこんだビアVIA等の導電性パターンが設けられている。そして、各チップ123、124、130のパッドとベース層112の表面のバンプパッドBMとがバンプ121で電気的に結合される。ビアVIAはベース層111、112を貫通しビアVIA内は金属等の導体で埋め込まれている。線路パターンはバンプパッドBMまたはビアVIA同士を接続するための導電性パターンである。ベース層112の表面に実装される受信用フィルタチップ123、送信用フィルタチップ124およびIPDチップ130は点線で示した。図42(c)を参照に、ベース層111の表面には、ベース層112の表面と同様に、線路パターンおよびビアVIAが形成されている。図42(d)はベース層111の裏面を表面から透視した図である。図42(d)を参照に、ベース層111の裏面には導電材料からなるフットパッドとして共通端子Antである共通フットパッドFA、送信端子Txである送信フットパッドFT、受信端子Rxである受信フットパッドFRおよびグランド端子であるグランドフットパッドFGが形成されている。
【0130】
図42(a)から図42(d)および図40を参照に、共通フットパッドFAはベース層111、112に形成されたビアVIAを介し、ベース層112に形成された共通線路LAに接続される。共通線路LAはIPDチップ130の第1インダクタL1、L1´および第3インダクタLA1の一端、送信用フィルタチップ124に形成された直列共振器S1の一端、受信用フィルタチップ123に形成された直列共振器S1´の一端に接続される。第1インダクタL1の他端、第1インダクタL1´の他端は、それぞれベース層112に形成された引き出し線路LSTおよびLSRを介し、それぞれ送信用フィルタチップ124に形成された直列共振器S1の他端および受信用フィルタチップ123に形成された直列共振器S1´の他端に接続される。これにより、直列共振器S1およびS1´にそれぞれ並列に第1インダクタL1およびL1´が接続される。第3インダクタLA1の他端はベース層112に形成された整合インダクタグランド線路LLA、ベース層111、112に形成されたビアVIAを介しグランドフットパッドFGに接続される。これにより、第3インダクタLA1は共通端子Antとグランドとの間に接続される。
【0131】
送信用フィルタ10の直列共振器S3はベース層112に形成された送信線路LT、ベース層111、112に形成されたVIAを介し送信フットパッドFTに接続される。送信用フィルタ10の並列共振器P1およびP2のグランド側は送信用フィルタチップ124内で共通に接続され、ベース層112に形成されたインダクタ線路LLT1およびビアVIA、ベース層111に形成されたインダクタ線路LLT2およびビアVIAを介しグランドフットパッドFGに接続される。インダクタ線路LLT1およびLLT2は第2インダクタLP1を構成する。これにより、第2インダクタLP1は、並列共振器P1およびP2のグランド側とグランドとの間に接続される。
【0132】
受信用フィルタ20の直列共振器S4´はベース層112に形成された受信線路LR、ベース層111、112に形成されたビアVIAを介し受信フットパッドFRに接続される。受信用フィルタ20の並列共振器P1´およびP2´のグランド側は受信用フィルタチップ123内で共通に接続され、ベース層112に形成されたインダクタ線路LLRおよびベース層111、112に形成されたビアVIAを介しグランドフットパッドFGに接続される。インダクタ線路LLRは第2インダクタLP1´を構成する。これにより、第2インダクタLP1´は、並列共振器P1´およびP2´のグランド側とグランドとの間に接続される。
【0133】
図43(a)および図43(b)は実施例12に係る分波器bのベース層112、111の表面を示す図である。図42(b)および図42(c)に図示した分波器aのベース層112、111の表面に比べ、受信用フィルタ20に対応したインダクタ線路LLR1およびLLR2が、共通線路LAと受信線路LRとの間のベース層112、111上に設けられている。さらに、インダクタ線路LLR1およびLLR2は、受信線路LRと送信線路LTとの間のベース層112、111上に設けられている。さらに、インダクタ線路LLR1およびLLR2は、ベース層111の裏面に形成された2箇所のグランドフットパッドFGに接続されている。その他の構成は分波器aと同じである。
【0134】
分波器bは分波器aに対し、積層パッケージ110内の電磁結合成分を低減することができる。受信用フィルタ20のインダクタ線路LLRと送信線路LTとの電磁結合は、分波器aおよび分波器bにおいてそれぞれ2.6%および0.4%であり、インダクタ線路LLRと共通線路LAとの電磁結合は、分波器aおよび分波器bにおいてそれぞれ4.5%および2.9%である。また、受信線路LRと共通線路LAとの橋絡容量は、分波器aおよび分波器bにおいてそれぞれ2.7fFおよび0.9fFである。図44は分波器aおよび分波器bの通過特性を示す図である。受信用フィルタ20の送信帯域での減衰量が分波器bで大きく改善することができる。
【0135】
実施例12によれば、インダクタ線路LLRまたはLLTを対応する受信線路LRまたは送信線路LTの一方と、共通線路LAとの間に設けることにより、インダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を低減し、対応するフィルタの相手帯域での減衰量を大きくすることができる。また、インダクタ線路LLRまたはLLTは、対応する受信線路LRまたは送信線路LTの一方と受信線路LRまたは送信線路LTの他方との間に設けられていることもできる。これにより、送信線路LTと受信線路LRとの間の電磁結合または橋絡容量を低減でき、対応するフィルタの相手帯域での減衰量を大きくすることができる。
【0136】
また、インダクタ線路LLRまたはLLTは、積層パッケージ110の複数の層(ベース層111、112)に設けることが好ましい。これにより、インダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を一層低減することができる。さらに、インダクタ線路LLRまたはLLTは、積層パッケージ110に形成され、グランドを接続するための複数のグランドフットパッドFGに接続されることが好ましい。これによりインダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を一層低減することができる。
【0137】
インダクタ線路LLRを受信線路LRと共通線路LAとの間に設ける場合は、インダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を低減するように設けることが好ましい。例えば、少なくとも受信線路LR上の任意の点と共通線路LA上の任意の点とを結ぶ任意の直線上の一部にインダクタ線路LLRを設けることにより、インダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を低減することができる。さらに、受信線路LR上の任意の点と共通線路LA上の任意の点とを結ぶ全ての直線上にインダクタ線路LLRを設けることが好ましい。これにより、インダクタ線路LLRと送信線路LTおよび共通線路LAとの間の電磁結合および受信線路LRと共通線路LAとの間の橋絡容量を一層低減することができる。なお、インダクタ線路LLRが、受信線路LRと送信線路LTとの間に設けられる場合、インダクタ線路LLTが送信線路LTと共通線路LAとの間に設けられる場合についても同様である。
【0138】
実施例12では、第1インダクタL1、L1´、第3インダクタLA1はIPDチップ130以外にもチップインダクタを用いることもできる。チップインダクタは積層パッケージ110のベース層112の表面に実装してもよいが、積層パッケージ110の外に設けても良い。また、実施例12では、実装部として積層パッケージ110を例に説明したが、実装部は受信用フィルタチップ123または送信用フィルタチップ124を実装する機能を有していればよく、積層基板等の基板とすることもできる。
【実施例13】
【0139】
実施例13はローパスフィルタの機能を有する整合回路を用いた例である。図45は実施例11の図36に対し、整合回路30dとして共通端子Antにπ型のC−L−C回路を設けている。すなわち、共通端子Antと送信用フィルタ10および受信用フィルタ20との間に直列に3.6nHのインダクタLB1、インダクタLB1の共通端子Ant側に並列に1.1pFのキャパシタCB1、送信用フィルタ10および受信用フィルタ20側に並列に0.7pFのキャパシタCB2を接続する。インダクタLB1、キャパシタCB1およびCB2は、第1インダクタL1およびL1´と同じIPDで形成することができる。その他の構成は実施例11の図36と同じである。図46はIPDに形成したキャパシタの例を示す断面図である。石英等の基板125上に下部電極126、例えば酸化シリコン膜等の誘電体膜127、上部電極128を積層しキャパシタを形成する。キャパシタは端子129に接続される。
【0140】
図47(a)は実施例10と実施例13との共通端子Antからフィルタを見たインピーダンスを示すスミスチャートである。図47(a)のように、実施例10においてはインピーダンス性が容量性側にシフトしているが、実施例13は実施例10に比べ矢印のようにインピーダンスが誘導性側にシフトし改善している。図47(b)は送信用フィルタ10および受信用フィルタ20の通過帯域の拡大図である。実施例13は共通端子から各フィルタ10、20を見たインピーダンスが改善しているため、図47(b)のように通過帯域の挿入損失が改善する。ここで、実施例13のように、π型C−L−C回路の共通端子Ant側のキャパシタCB1の容量値を他方のキャパシタCB2より大きくすることが好ましい。これにより、整合回路30dの整合を容易に合わせることができる。よって、一層低損失で、高調波の減衰量を一層大きくすることができる。
【0141】
図47(c)は送信用フィルタ10の広帯域の通過特性を示す図である。実施例13は高周波側において減衰量が大きくなっている。これは整合回路30dがローパスフィルタ(LPF)の機能を有するためである。高周波側の減衰量を大きくできるため高調波の減衰量を改善することができる。このように、共通端子Antと2つのフィルタ10、20のうち少なくとも一方との間にローパスフィルタとして機能する整合回路30dを設けることが好ましい。これにより、整合回路を付加したフィルタ10または20の高調波の減衰量を抑制することができる。
【0142】
ローパスフィルタとして機能する整合回路30dとしては実施例13の例に限られない。例えば、直列にインダクタ、並列にキャパシタをそれぞれ1つ以上設けた整合回路も使用することができる。しかしながら、低損失化、小型化、低コスト化のためには、素子の数が少ない方が好ましい。よって、π型のC−L−C回路以外に、C−L回路、すなわち、共通端子Antと送信用フィルタ10および受信用フィルタ20との間に直列にインダクタ、インダクタの共通端子Ant側に並列にキャパシタを接続した回路、L−C回路、すなわち、共通端子Antと送信用フィルタ10および受信用フィルタ20との間に直列にインダクタ、インダクタのフィルタ側に並列にキャパシタを接続した回路を用いることが好ましい。
【0143】
実施例11から実施例13において、第3インダクタLA1、インダクタLB1、キャパシタCB1、CB2等の整合回路30c、30dを構成するインダクタおよびキャパシタは、IPDを用いることができる。これにより、高性能かつ小型化可能な分波器を提供することができる。また、上記インダクタまたはキャパシタはチップインダクタまたはチップキャパシタ等のチップ素子を用いることができる。このようにチップ素子を用いることにより高性能かつ低コストな分波器を提供することができる。
【実施例14】
【0144】
実施例14は受信用フィルタが不平衡型ダブルモード型フィルタを有する例である。図48は実施例14に係る分波器の回路図である。実施例11の図36に比べ受信用フィルタ20dが共通端子Ant側に並列に第1インダクタLW1´を接続した直列共振器SW1´と直列共振器SW1´と受信端子Rxとの間に接続された不平衡型ダブルモード型フィルタ22が設けられている。
【0145】
図49は不平衡型ダブルモード型フィルタ22の平面図である。不平衡型ダブルモード型フィルタ22は弾性表面波素子から構成される。反射器R0の間に2つの出力IDT(OutIDT)、出力IDTの間に1つの入力IDT(InIDT)が設けられている。2つの出力IDT(OutIDT)の出力は同位相であり共通に接続され出力端子Outに接続される。入力IDT(InIDT)の入力は入力端子Inに接続される。図48において、不平衡型ダブルモード型フィルタ22の入力端子Inが直列共振器SW1´に接続され、出力端子Outが受信端子Rxに接続される。不平衡型ダブルモード型フィルタ22を受信用フィルタ20に用いることにより、広帯域に渡り減衰量を大きく確保することができる。
【実施例15】
【0146】
実施例15は受信用フィルタが平衡型ダブルモード型フィルタを有する例である。図50は実施例15に係る分波器の回路図である。実施例14の図48に比べ不平衡型ダブルモード型フィルタ22の代わりに平衡型ダブルモード型フィルタ23が用いられ、受信端子Rx1およびRx2が設けられている。その他の構成は実施例14の図48と同じであり説明を省略する。
【0147】
図51は平衡型ダブルモード型フィルタ23の平面図である。実施例14の図49の不平衡型ダブルモード型フィルタ22に対し、2つの出力IDT(OutIDT)は位相が反転する信号を出力する。2つの出力IDT(OutIDT)の出力は、それぞれ出力端子Out1およびOut2に接続されている。その他の構成は図49と同じであり説明を省略する。図50において、平衡型ダブルモード型フィルタ23の出力端子Out1およびOut2は、それぞれ受信端子Rx1およびRx2に接続される。これにより、出力端子Out1およびOut2から出力される位相が反転した信号を受信端子Rx1およびRx2に出力することができる。
【0148】
近年の携帯電話端末では、高周波回路におけるコモンモードノイズを抑制するため、受信系の信号は差動型のものが用いられる場合が多い。この場合、受信系の高周波デバイスであるローノイズアンプやミキサも差動型(平衡型)のものが用いられる。このため、不平衡型の分波器を用いると位相を反転するためのバランが必要となってしまう。実施例15によれば、分波器の受信端子Rx1およびRx2から位相が反転した信号を出力するため、バランが不要となる。よって受信系回路の小型化、低コスト化が可能となる。
【0149】
実施例14および実施例15に係る分波器に、実施例11および実施例13のハイパスフィルタの機能を有する整合回路30cまたはローパスフィルタの機能を有する整合回路30dを付加することもできる。特に、実施例11のように第3インダクタLA1により整合回路を構成することにより、低損失化、小型化、低コスト化を図ることができる。また、実施例14および実施例15において、送信用フィルタ10として直列共振器S1に並列に第1インダクタL1を接続した例であったが、第1インダクタを付加する直列共振器は任意に選択することができる。さらに、受信用フィルタ20として、ダブルモード型フィルタ22または23に、インダクタLW1´を並列に接続された直列共振器SW1´を接続した例であったが、ダブルモード型フィルタ22または23に付加される共振器は任意に選択することができる。
【0150】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1(a)はFBARの断面図、図1(b)は他のFBARの断面図である。
【図2】図2はSAW共振器の上視図である。
【図3】図3はラダー型フィルタの回路構成図である。
【図4】図4(a)は直列共振器の構成図、図4(b)は並列共振器の構成図、図4(c)は直列共振器および並列共振器の通過特性を示す図である。
【図5】図5(a)は1段ラダー型フィルタの構成図であり、図5(b)は1段ラダー型フィルタの通過特性を示す図である。
【図6】図6(a)は従来技術1に係るラダー型フィルタの回路構成図である。図6(b)は従来技術2に係るラダー型フィルタの回路構成図である。
【図7】図7は従来技術3に係る分波器の回路構成図である。
【図8】図8(a)は実施例1に係る分波器の回路構成図であり、図8(b)は比較例1に係る分波器の回路構成図である。
【図9】図9は実施例1に係る分波器の送信用フィルタの回路構成図である。
【図10】図10(a)は実施例1に係る分波器の送信用フィルタのアンテナ端子側の反射係数S11、図10(b)は送信端子側の反射係数S22を示すスミスチャートである
【図11】図11(a)は実施例1に係る分波器の送信用フィルタの送信帯域の通過特性であり、図11(b)受信用フィルタの受信帯域の通過特性である。
【図12】図12は直列共振子と並列共振器を1つづつ配置したラダー型フィルタの基本区間の回路構成図である。
【図13】図13(a)はミラー接続したラダー型フィルタF1の回路構成図である。図13(b)はフィルタF1の共振器をまとめたラダー型フィルタF2の回路構成図である。
【図14】図14(a)はCt1/Ct2に対し送信用フィルタの受信帯域端での反射係数を示した図である。図14(b)はCt1/Ct2に対し受信用フィルタの受信帯域端での挿入損失を示した図である。図14(c)はCt1/Ct2に対し送信用フィルタの受信帯域端での減衰量を示した図である。
【図15】図15(a)は、Ct1/Ct2に対し送信用フィルタの送信帯域端での挿入損失を示した図である。図15(b)は、Ct1/Ct2に対し送信用フィルタの送信帯域端での反射係数を示した図である。
【図16】図16(a)はCr1/Cr2に対し受信用フィルタの送信帯域端での反射係数を示した図である。図16(b)はCr1/Cr2に対し送信用フィルタの送信帯域端での挿入損失を示した図である。図16(c)はCr1/Cr2に対し受信用フィルタの送信帯域端での減衰量を示した図である。
【図17】図17(a)は、Cr1/Cr2に対し受信用フィルタの受信帯域端での挿入損失を示した図である。図17(b)は、Cr1/Cr2に対し受信用フィルタの受信帯域端での反射係数を示した図である。
【図18】図18(a)は実施例3に係る分波器の回路構成を示した図である。図18(b)は実施例3の変形例に係る分波器の回路構成を示した図である。
【図19】図19は実施例4に係る分波器の回路構成を示す図である。
【図20】図20は実施例4および比較例2に係る分波器の受信用フィルタの周波数に対する減衰量を示す図である。
【図21】図21(a)および図21(b)は回路Aおよび回路Bの回路構成図、図21(c)はそれぞれ回路AおよびBの通過特性を示す図である。
【図22】図22(a)から図22(c)はそれぞれフィルタAからCの回路構成図である。
【図23】図23はフィルタAからCの通過特性を示す図である。
【図24】図24(a)および図24(b)は回路Cおよび回路Dの回路構成図、図24(c)はそれぞれ回路CおよびDの通過特性を示す図である。
【図25】図25(a)から図25(c)はそれぞれフィルタDからFの回路構成図である。
【図26】図26はフィルタDからFの通過特性を示す図である。
【図27】図27はフィルタGの回路構成図である。
【図28】図28(a)および図28(b)はそれぞれフィルタHおよびIの回路構成図である。
【図29】図29はフィルタHからIの通過特性を示す図である。
【図30】図30は実施例7に係るフィルタの回路構成図である。
【図31】図31(a)から図31(d)は実施例8に係るフィルタの回路構成図である。
【図32】図32は実施例9に係るフィルタに用いるIPDチップの平面図である。
【図33】図33は実施例9に係るフィルタに用いるフィルタチップの平面図である。
【図34】図34(a)は実施例9に係るフィルタの上視図、図34(b)は図34(a)のA−A断面図である。
【図35】図35(a)は弾性境界波素子の平面図、図35(b)は図35(a)のA−A断面図である。
【図36】図36は実施例10に係る分波器の回路構成図である。
【図37】図37は実施例10に係る分波器の通過特性を示す図である。
【図38】図38は実施例11に係る分波器の回路構成図である。
【図39】図39(a)は実施例10および実施例11に係る分波器の共通端子から見たインピーダンスを示すスミスチャートであり、図39(b)は、通過特性である。
【図40】図40(a)は実施例12に係る分波器の上視図(キャップは図示していない)、図40(b)は図40(a)のA−A断面図である。
【図41】図41は実施例12に係る分波器の回路構成図である。
【図42】図42(a)から図42(d)は実施例12に係る分波器aの積層パッケージの各層を示す図である。
【図43】図43(a)および図43(b)は実施例12に係る分波器bの積層パッケージの各層を示す図である。
【図44】図44は実施例12に係る分波器aおよびbの通過特性を示す図である。
【図45】図45は実施例13に係る分波器の回路構成図である。
【図46】図46は実施例13のIPDチップのキャパシタの断面模式図である。
【図47】図47(a)は実施例10および実施例13に係る分波器の共通端子から見たインピーダンスを示すスミスチャートであり、図47(b)は、通過特性、図47(c)は広帯域の図である。
【図48】図48は実施例14に係る分波器の回路構成図である。
【図49】図49は実施例14に係る分波器に用いる不平衡型ダブルモード型フィルタの平面図である。
【図50】図50は実施例15に係る分波器の回路構成図である。
【図51】図51は実施例15に係る分波器に用いる平衡型ダブルモード型フィルタの平面図である。
【符号の説明】
【0152】
10、10a、10b 送信用フィルタ
20、20a、20b、20c、20d 受信用フィルタ
22 不平衡型ダブルモード型フィルタ
23 平衡型ダブルモードフィルタ
30、30a,30b 整合回路
30c、30d 整合回路
110 積層パッケージ
118 フィルタチップ
119、130 IPDチップ
123 受信用フィルタチップ
124 送信用フィルタチップ
S1、S2、S3、S4 直列共振器
S1´、S2´、S3´、S4´ 直列共振器
S5、S6、S7、S8 直列共振器
P3、P4、P5 並列共振器
P1、P2 並列共振器
P1´、P2´ 並列共振器
CB1、CB2 キャパシタ
L1、L1´ インダクタ(第1インダクタ)
LP1、LP1´ インダクタ(第2インダクタ)
LA1 インダクタ(第3インダクタ)
L4´、LB1、LW1´ インダクタ
Ant アンテナ端子(共通端子)
Tx 送信端子
Rx 受信端子
LA 共通線路
LT 送信線路
LR 受信線路
LLT、LLR インダクタ線路
LLR1、LLR2 インダクタ線路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ端子と、
該アンテナ端子と接続した第1のフィルタおよび第2のフィルタと、を具備し、
前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタの少なくとも一方は、並列共振器と複数の直列共振器を有し、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器にはインダクタが並列に接続し、最もアンテナ端子側の前記直列共振器はインダクタが並列に接続したラダー型フィルタであることを特徴とする分波器。
【請求項2】
前記ラダー型フィルタの前記並列共振器とグランドとの間にインダクタが直列に接続されることを特徴とする請求項1記載の分波器。
【請求項3】
前記並列共振器と前記グランドとの間に直列に接続された前記インダクタは、複数の前記並列共振器に接続されることを特徴とする請求項2記載の分波器。
【請求項4】
前記第1フィルタおよび前記第2のフィルタはともに前記ラダー型フィルタであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の分波器。
【請求項5】
前記ラダー型フィルタの少なくとも一つは最もアンテナ端子側の前記直列共振器に加えその他の直列共振器の一部にもインダクタが並列に接続されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一方記載の分波器。
【請求項6】
前記ラダー型フィルタをミラー接続のラダー型フィルタの等価回路で表し、前記最もアンテナ端子側の直列共振器の容量値をC1、前記ラダー型フィルタのその他の直列共振器の容量値の平均値をC2としたとき、
0.3<C1/C2<1
であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の分波器
【請求項7】
前記直列共振器および前記並列共振器は、圧電薄膜共振器および弾性表面波共振器のいずれか一方であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の分波器。
【請求項8】
並列共振器と複数の直列共振器を有し、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器にはインダクタが並列に接続し、最もアンテナ端子に接続する端子側の前記直列共振器はインダクタが並列に接続し、前記並列共振器とグランドとの間にインダクタが直列に接続したことを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項9】
複数の直列共振器および複数の並列共振器と、
前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器に並列に接続された第1インダクタと、
前記複数の並列共振器のうちグランド側が共通に接続された2つ以上の並列共振器の前記グランド側とグランドとの間に直列に接続された第2インダクタと、を具備することを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項10】
前記2つ以上の並列共振器は前記複数の並列共振器の全てであることを特徴とする請求項9記載のラダー型フィルタ。
【請求項11】
前記一部の直列共振器に前記第1インダクタが並列に接続されることにより前記一部の直列共振器の共振点よりも低周波側に生じる反共振の減衰極と、
前記ラダー型フィルタにおいて前記2つ以上の並列共振器が前記グランド側で共通接続された後に前記グランドとの間に前記第2インダクタが直列に接続されることにより通過帯域よりも低周波側に生じる減衰極とが略一致していることを特徴とする請求項9または10記載のラダー型フィルタ。
【請求項12】
前記一部の直列共振器に前記第1インダクタが並列に接続されることにより高周波側にシフトした前記一部の直列共振器の反共振の減衰極と,
前記ラダー型フィルタにおいて前記2つ以上の並列共振器が前記グランド側で共通接続された後に前記グランドとの間に前記第2インダクタが直列に接続されることにより通過帯域よりも高周波側に生じる減衰極とが略一致していることを特徴とする請求項9または10記載のラダー型フィルタ。
【請求項13】
前記複数の直列共振器のうち前記第1インダクタが並列に接続されない直列共振器が2つ以上あることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項記載のラダー型フィルタ。
【請求項14】
前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器の少なくとも1つは、複数の共振器に分割され互いに直列接続または並列接続されていることを特徴とする請求項9から13のいずれか一項記載のラダー型フィルタ。
【請求項15】
前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器は圧電薄膜共振器、弾性表面波共振器および境界波共振器のいずれかであることを特徴とする請求項9から14のいずれか一項記載のラダー型フィルタ。
【請求項16】
前記第1インダクタは、集積型受動素子のインダクタおよびチップインダクタのいずれか一方であることを特徴とする請求項9から15のいずれか一項記載のラダー型フィルタ。
【請求項17】
前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器が形成されたチップを実装する実装部を具備し、
前記第2インダクタは、前記実装部に形成された線路パターンであることを特徴とする請求項9から16のいずれか一項記載のラダー型フィルタ。
【請求項18】
共通端子と接続した2つのフィルタを具備し、
前記2つのフィルタのうち少なくとも一方は請求項9から17のいずれか一項記載のラダー型フィルタであることを特徴とする分波器。
【請求項19】
前記2つのフィルタのうち高周波側のフィルタは請求項11に記載のラダー型フィルタであることを特徴とする請求項18記載の分波器。
【請求項20】
前記高周波側のフィルタは受信用フィルタであることを特徴とする請求項19記載の分波器。
【請求項21】
前記2つのフィルタのうち低周波側のフィルタは請求項12記載のラダー型フィルタであることを特徴とする請求項18記載の分波器。
【請求項22】
前記低周波側のフィルタは送信用フィルタであることを特徴とする請求項21記載の分波器。
【請求項23】
前記ラダー型フィルタの最も前記共通端子側の共振器は直列共振器であり、
前記直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする請求項18から22のいずれか一項記載の分波器。
【請求項24】
前記2つのフィルタはいずれも前記ラダー型フィルタであり、
前記ラダー型フィルタはともに、最も前記共通端子側の共振器は直列共振器であり、前記直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする請求項18から22のいずれか一項記載の分波器。
【請求項25】
前記共通端子と前記2つのフィルタの少なくとも一方との間にハイパスフィルタとして機能する整合回路を具備することを特徴とする請求項18から24のいずれか一項記載の分波器。
【請求項26】
前記整合回路は、前記共通端子とグランドとの間に接続された第3インダクタであることを特徴とする請求項25記載の分波器。
【請求項27】
前記共通端子と前記2つのフィルタの少なくとも一方との間にローパスフィルタとして機能する整合回路を具備することを特徴とする請求項18から24のいずれか一項記載の分波器。
【請求項28】
前記整合回路は、C−L回路、L−C回路およびπ型のC−L−C回路のいずれかであることを特徴とする請求項27記載の分波器。
【請求項29】
前記整合回路は、前記共通端子側のキャパシタの容量値を他方のキャパシタの容量値より大きくしたπ型C−L−C回路であることを特徴とする請求項27記載の分波器。
【請求項30】
前記整合回路は、集積型受動素子およびチップ素子の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項25または27記載の分波器。
【請求項31】
前記2つのフィルタのうち一方である送信用フィルタは前記ラダー型フィルタであり、
前記2つのフィルタのうち他方である受信用フィルタはダブルモード型フィルタを含むことを特徴とする請求項18または23記載の分波器。
【請求項32】
前記ダブルモード型フィルタは不平衡型ダブルモード型フィルタおよび平衡型ダブルモード型フィルタのいずれかであることを特徴とする請求項31記載の分波器。
【請求項33】
前記共通端子と前記ダブルモード型フィルタとの間に、直列に接続された共振器と、前記共振器に並列に接続されたインダクタと、を具備する請求項31および32記載の分波器。
【請求項34】
前記共通端子とグランドとの間に接続された第3インダクタを具備し、
前記ラダー型フィルタをミラー接続のラダー型フィルタの等価回路で表し、前記最も共通端子側の直列共振器の容量値をC1、前記ラダー型フィルタのその他の直列共振器の容量値の平均値をC2としたとき、
0.3<C1/C2<1
であることを特徴とする請求項23記載の分波器。
【請求項35】
少なくとも一方は直列共振器と並列共振器とを有するラダー型フィルタであり共通端子と接続された送信用フィルタおよび受信用フィルタと、
前記ラダー型フィルタの前記並列共振器とグランドとの間に接続された第2インダクタと、
前記ラダー型フィルタの前記直列共振器および前記並列共振器が形成されたチップを実装する実装部と、
前記実装部に設けられ前記受信用フィルタと受信端子とを接続する受信線路と、
前記実装部に設けられ前記送信用フィルタと送信端子とを接続する送信線路と、
前記実装部に設けられ前記共通端子と前記受信用フィルタおよび前記送信用フィルタとを接続する共通線路と、
前記実装部に設けられ前記第2インダクタを構成するインダクタ線路と、を具備し、
前記インダクタ線路は対応する前記受信線路および前記送信線路の一方と、前記共通線路との間に設けられていることを特徴とする分波器。
【請求項36】
前記インダクタ線路は、前記対応する前記受信線路または前記送信線路の一方と前記受信線路および前記送信線路の他方との間に設けられていることを特徴とする請求項35記載の分波器。
【請求項37】
前記実装部は、複数の積層を有し、
前記インダクタ線路は、前記複数の積層に設けられていることを特徴とする請求項35または36記載の分波器。
【請求項38】
前記インダクタ線路は、前記実装部に形成され、グランドを接続するための複数のグランドフットパッドに接続されていることを特徴とする請求項35から37のいずれか一項記載の分波器。
【請求項39】
前記直列共振器は複数の直列共振器であり、
前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする請求項35から38のいずれか一項記載の分波器。
【請求項1】
アンテナ端子と、
該アンテナ端子と接続した第1のフィルタおよび第2のフィルタと、を具備し、
前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタの少なくとも一方は、並列共振器と複数の直列共振器を有し、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器にはインダクタが並列に接続し、最もアンテナ端子側の前記直列共振器はインダクタが並列に接続したラダー型フィルタであることを特徴とする分波器。
【請求項2】
前記ラダー型フィルタの前記並列共振器とグランドとの間にインダクタが直列に接続されることを特徴とする請求項1記載の分波器。
【請求項3】
前記並列共振器と前記グランドとの間に直列に接続された前記インダクタは、複数の前記並列共振器に接続されることを特徴とする請求項2記載の分波器。
【請求項4】
前記第1フィルタおよび前記第2のフィルタはともに前記ラダー型フィルタであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の分波器。
【請求項5】
前記ラダー型フィルタの少なくとも一つは最もアンテナ端子側の前記直列共振器に加えその他の直列共振器の一部にもインダクタが並列に接続されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一方記載の分波器。
【請求項6】
前記ラダー型フィルタをミラー接続のラダー型フィルタの等価回路で表し、前記最もアンテナ端子側の直列共振器の容量値をC1、前記ラダー型フィルタのその他の直列共振器の容量値の平均値をC2としたとき、
0.3<C1/C2<1
であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の分波器
【請求項7】
前記直列共振器および前記並列共振器は、圧電薄膜共振器および弾性表面波共振器のいずれか一方であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の分波器。
【請求項8】
並列共振器と複数の直列共振器を有し、前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器にはインダクタが並列に接続し、最もアンテナ端子に接続する端子側の前記直列共振器はインダクタが並列に接続し、前記並列共振器とグランドとの間にインダクタが直列に接続したことを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項9】
複数の直列共振器および複数の並列共振器と、
前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器に並列に接続された第1インダクタと、
前記複数の並列共振器のうちグランド側が共通に接続された2つ以上の並列共振器の前記グランド側とグランドとの間に直列に接続された第2インダクタと、を具備することを特徴とするラダー型フィルタ。
【請求項10】
前記2つ以上の並列共振器は前記複数の並列共振器の全てであることを特徴とする請求項9記載のラダー型フィルタ。
【請求項11】
前記一部の直列共振器に前記第1インダクタが並列に接続されることにより前記一部の直列共振器の共振点よりも低周波側に生じる反共振の減衰極と、
前記ラダー型フィルタにおいて前記2つ以上の並列共振器が前記グランド側で共通接続された後に前記グランドとの間に前記第2インダクタが直列に接続されることにより通過帯域よりも低周波側に生じる減衰極とが略一致していることを特徴とする請求項9または10記載のラダー型フィルタ。
【請求項12】
前記一部の直列共振器に前記第1インダクタが並列に接続されることにより高周波側にシフトした前記一部の直列共振器の反共振の減衰極と,
前記ラダー型フィルタにおいて前記2つ以上の並列共振器が前記グランド側で共通接続された後に前記グランドとの間に前記第2インダクタが直列に接続されることにより通過帯域よりも高周波側に生じる減衰極とが略一致していることを特徴とする請求項9または10記載のラダー型フィルタ。
【請求項13】
前記複数の直列共振器のうち前記第1インダクタが並列に接続されない直列共振器が2つ以上あることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項記載のラダー型フィルタ。
【請求項14】
前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器の少なくとも1つは、複数の共振器に分割され互いに直列接続または並列接続されていることを特徴とする請求項9から13のいずれか一項記載のラダー型フィルタ。
【請求項15】
前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器は圧電薄膜共振器、弾性表面波共振器および境界波共振器のいずれかであることを特徴とする請求項9から14のいずれか一項記載のラダー型フィルタ。
【請求項16】
前記第1インダクタは、集積型受動素子のインダクタおよびチップインダクタのいずれか一方であることを特徴とする請求項9から15のいずれか一項記載のラダー型フィルタ。
【請求項17】
前記複数の直列共振器および前記複数の並列共振器が形成されたチップを実装する実装部を具備し、
前記第2インダクタは、前記実装部に形成された線路パターンであることを特徴とする請求項9から16のいずれか一項記載のラダー型フィルタ。
【請求項18】
共通端子と接続した2つのフィルタを具備し、
前記2つのフィルタのうち少なくとも一方は請求項9から17のいずれか一項記載のラダー型フィルタであることを特徴とする分波器。
【請求項19】
前記2つのフィルタのうち高周波側のフィルタは請求項11に記載のラダー型フィルタであることを特徴とする請求項18記載の分波器。
【請求項20】
前記高周波側のフィルタは受信用フィルタであることを特徴とする請求項19記載の分波器。
【請求項21】
前記2つのフィルタのうち低周波側のフィルタは請求項12記載のラダー型フィルタであることを特徴とする請求項18記載の分波器。
【請求項22】
前記低周波側のフィルタは送信用フィルタであることを特徴とする請求項21記載の分波器。
【請求項23】
前記ラダー型フィルタの最も前記共通端子側の共振器は直列共振器であり、
前記直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする請求項18から22のいずれか一項記載の分波器。
【請求項24】
前記2つのフィルタはいずれも前記ラダー型フィルタであり、
前記ラダー型フィルタはともに、最も前記共通端子側の共振器は直列共振器であり、前記直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする請求項18から22のいずれか一項記載の分波器。
【請求項25】
前記共通端子と前記2つのフィルタの少なくとも一方との間にハイパスフィルタとして機能する整合回路を具備することを特徴とする請求項18から24のいずれか一項記載の分波器。
【請求項26】
前記整合回路は、前記共通端子とグランドとの間に接続された第3インダクタであることを特徴とする請求項25記載の分波器。
【請求項27】
前記共通端子と前記2つのフィルタの少なくとも一方との間にローパスフィルタとして機能する整合回路を具備することを特徴とする請求項18から24のいずれか一項記載の分波器。
【請求項28】
前記整合回路は、C−L回路、L−C回路およびπ型のC−L−C回路のいずれかであることを特徴とする請求項27記載の分波器。
【請求項29】
前記整合回路は、前記共通端子側のキャパシタの容量値を他方のキャパシタの容量値より大きくしたπ型C−L−C回路であることを特徴とする請求項27記載の分波器。
【請求項30】
前記整合回路は、集積型受動素子およびチップ素子の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項25または27記載の分波器。
【請求項31】
前記2つのフィルタのうち一方である送信用フィルタは前記ラダー型フィルタであり、
前記2つのフィルタのうち他方である受信用フィルタはダブルモード型フィルタを含むことを特徴とする請求項18または23記載の分波器。
【請求項32】
前記ダブルモード型フィルタは不平衡型ダブルモード型フィルタおよび平衡型ダブルモード型フィルタのいずれかであることを特徴とする請求項31記載の分波器。
【請求項33】
前記共通端子と前記ダブルモード型フィルタとの間に、直列に接続された共振器と、前記共振器に並列に接続されたインダクタと、を具備する請求項31および32記載の分波器。
【請求項34】
前記共通端子とグランドとの間に接続された第3インダクタを具備し、
前記ラダー型フィルタをミラー接続のラダー型フィルタの等価回路で表し、前記最も共通端子側の直列共振器の容量値をC1、前記ラダー型フィルタのその他の直列共振器の容量値の平均値をC2としたとき、
0.3<C1/C2<1
であることを特徴とする請求項23記載の分波器。
【請求項35】
少なくとも一方は直列共振器と並列共振器とを有するラダー型フィルタであり共通端子と接続された送信用フィルタおよび受信用フィルタと、
前記ラダー型フィルタの前記並列共振器とグランドとの間に接続された第2インダクタと、
前記ラダー型フィルタの前記直列共振器および前記並列共振器が形成されたチップを実装する実装部と、
前記実装部に設けられ前記受信用フィルタと受信端子とを接続する受信線路と、
前記実装部に設けられ前記送信用フィルタと送信端子とを接続する送信線路と、
前記実装部に設けられ前記共通端子と前記受信用フィルタおよび前記送信用フィルタとを接続する共通線路と、
前記実装部に設けられ前記第2インダクタを構成するインダクタ線路と、を具備し、
前記インダクタ線路は対応する前記受信線路および前記送信線路の一方と、前記共通線路との間に設けられていることを特徴とする分波器。
【請求項36】
前記インダクタ線路は、前記対応する前記受信線路または前記送信線路の一方と前記受信線路および前記送信線路の他方との間に設けられていることを特徴とする請求項35記載の分波器。
【請求項37】
前記実装部は、複数の積層を有し、
前記インダクタ線路は、前記複数の積層に設けられていることを特徴とする請求項35または36記載の分波器。
【請求項38】
前記インダクタ線路は、前記実装部に形成され、グランドを接続するための複数のグランドフットパッドに接続されていることを特徴とする請求項35から37のいずれか一項記載の分波器。
【請求項39】
前記直列共振器は複数の直列共振器であり、
前記複数の直列共振器のうち一部の直列共振器に並列に第1インダクタが接続されていることを特徴とする請求項35から38のいずれか一項記載の分波器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【公開番号】特開2007−74698(P2007−74698A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130662(P2006−130662)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(398067270)富士通メディアデバイス株式会社 (198)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(398067270)富士通メディアデバイス株式会社 (198)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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