説明

分解ガスの冷却のための熱交換器

【課題】非冷却管と冷却管の間に、沈殿する炭素で分解ガスに対する密閉性が改善された管継手を設けた熱交換器を提供する。
【解決手段】ジャケット管4によって冷却される内管3が、外部の管部分13と内部の管部分12とを有しその間に断熱材を充填した中間室がある断面フォーク状の流入ヘッド11を介して非冷却分解管1に接続され、外部の管部分13がジャケット管4に接続され、かつ内部の管部分12が内管3に小さい軸線方向間隔で対向してその間にシールが配設されている熱交換器において、シールがUリングとして流入ヘッド11の内部の管部分12の前面の凹所18の中に配設されており、該凹所18が半径方向外側に突出して、内管3に小さい軸線方向間隔で対向する内部の管部分12の周縁領域の前に形成されており、かつ該小さい軸線方向間隔は流入ヘッド11の最大熱膨張と等しくいかまたはそれより小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルの特徴を有する冷却管と非冷却管の間に管継手を有する分解ガスの冷却のための熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手を有する分解ガスの冷却のためのこの種の熱交換器は、特許文献1から公知である。分解ガスは、炭化水素の熱分解によって分解炉内で生成される。このような分解炉は、複数の外部から加熱された分解管を具備しており、それらを通して挿入された炭化水素が水蒸気の添加下に導入される。生成された分解ガスは、900℃までの温度で分解管を離れ、かつその分子組成の安定化のために急速に冷却されなければならない。分解ガスの急速な冷却は、分解ガス冷却器内で分解ガスから高圧下にある蒸発する水への熱伝達によって行われる。
【0003】
特許文献1から公知の管継手において、非冷却管の端部は、フォーク状に拡大され、かつ内部および外部の管部分を有する流入ヘッドを具備している。前記両管部分の間の中間室は断熱材で充填される。外部の管部分は、冷却された二重管のジャケット管に溶接されている。内部の管部分は、冷却された二重管の内管に軸線方向間隔で対向しており、内部の管部分と内管の前面の間にリング(C、O、UまたはV字形)として形成された、断熱材の中への分解ガスの侵入を阻止するシールがある。
【0004】
フォーク状の、断熱材で充填された冷却管と非冷却管を接続するための流入ヘッドは、特許文献2から公知の熱交換器においても分解ガスの冷却のために使用される。公知の熱交換器において、冷却管は半径方向間隔でジャケット管によって囲繞された内管からなる。冷却材を供給する水室は、冷却管の流入端を取り囲む。前記水室は、断面が円形の凹部が取り込まれた重厚な四角形の部材からなる。前記凹部は、1本のみの冷却管を収容し、冷却管の内管は前記凹部の底部に溶接され、かつジャケット管が水室と溶接されている。流入ヘッドの外部の管部分は、ジャケット管から離間する側で水室に溶接されており、一方、流入ヘッドの内部の管部分は冷却管の内管に軸線方向間隔で対向している。
【0005】
公知の流入ヘッドは、内管と内部の管部分の間の軸線方向の遊びによって熱的に限定された熱膨張を無制限に許容する。取り込まれた断熱材は、冷却管に固定して接続された流入ヘッドの外部の管部分が非冷却管を通して流れるガスの温度より低い壁温度になることを生ぜしめる。管が接続箇所で達する壁温度は前記方法で互いに補償され、その結果、熱応力が前記接続箇所で最小値になる。内部の管部分と内管の間のシールリング(C、O、UまたはV字形)は、流入ヘッドの断熱材の中への分解ガスの侵入を阻止する。550℃を超えると、炭素が分解ガスから析出し、かつシールリングに沈積し得る。その結果として、シールリングが密閉されなくなり、その結果、分解ガスが断熱材の中へ侵入し得る。それに続く結果として、分解ガスの漏れガス流から析出する炭素が断熱材上に堆積し、これが流入ヘッドの内部の管部分内の座屈応力と、外部の管部分内の円周応力とを生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第19531330C2号
【特許文献2】欧州特許出願公開第810414B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に、沈殿する炭素で分解ガスに対する密閉が改善されるように、非冷却管と冷却管の間に管継手を有する分類に対応する熱交換器を形成する課題が基礎に置かれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、非冷却管と冷却管の間に管継手を有する分類に対応する熱交換器において本発明により請求項1の要部特徴によって解決される。本発明の有利な態様は、従属請求項の目的である。
【0009】
非冷却管と冷却管の間に管継手を有する本発明に係る熱交換器において、Uリングとして形成されたシールリングは、500〜600℃の温度に達するまで第1のシールの役割を引き受ける。550℃を超えて分解ガスから炭素の分離が開始すると、熱的に限定された内部の管部分の熱膨張が、半径方向内側にシールリングの前にある内部の管部分の突出する周縁領域と内管の間の間隙が橋渡しされるまで継続され、その結果、金属対金属接触が発生する。このような接触は、シールリングおよび流入ヘッドの内部および外部の管部分の間の中間室の方向への分解ガスの侵入を阻止し、かつ第2のシールとして作用する。本発明の別の態様において、断熱材を充填した中間室を密閉する可撓性の膜が、必要に応じてさらに侵入する分解ガスが完全に断熱材によって阻隔されることを生ぜしめる。それによって、前記可撓性の膜は第3のシールとして用いられる。
【0010】
本発明の複数の実施例は、図面に示されており、以下より詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による管継手を有する熱交換器の下側部分の縦断面図。
【図2】図1または3による詳細Z。
【図3】本発明による別の管継手を有する熱交換器の下側部分の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
分解炉内で水蒸気と炭化水素の反応によって分解ガスが生成される。前記分解炉は、外部から加熱され、かつ投入物質が貫流する分解管1が設けられている。分解管1から900℃までの温度で離れる分解ガスは、直接分解炉の上方の直接近傍に配設された分解ガス冷却器の中に入る。分解ガス冷却器内で、分解ガスの分子組成は蒸発する高圧下にある水による熱交換時の急冷によって安定化される。
【0013】
分解ガス冷却器は、各冷却管2が非冷却分解管1の1本に割り当てられ、かつその軸線方向の延伸部に配設されるように、互いに1列に配設された複数の冷却管2を含む。各冷却管2は、冷却材が貫流する環状空間の形成下にジャケット管4によって囲繞された冷却された内管3からなる。分解管1および内管3の内径は、図示したように、一般に類似の大きさである。
【0014】
冷却材の供給および排出は、それぞれ図示した下部の、および図示しない上部の冷却管2の端部を囲繞する水室5を介して行われる。水室5は、重厚な四角形の部材から製造されており、その中に断面が円形の凹部6が嵌入されており、各凹部6に1本の冷却管2が割り当てられている。ジャケット管4は、分解管1から離間する側で水室5に溶接されている。その際に、溶接箇所でジャケット管1の内径は凹部6の直径と一致する。
【0015】
凹部6は、小さい残壁厚で環状の底部7が残るような深さで水室5を形成する部材の中にはめ込まれている。前記底部7の中に内管3が溶接されている。環状の底部7の面積は、内管3の外径と、凹部6の直径によって制限されている。
【0016】
各凹部6の中へ、底部7の高さで好ましくは接線方向に穴8が通じる。この穴8は、それぞれ接続短管9を介して冷媒用の供給管10に接続されている。前記冷媒は、穴8を通して高速で凹部6の中へ入り、かつ内管3回りに回転する流れを発生する。この流れは、底部/凹部6の良好な冷却を生ぜしめ、かつ有害な局所的過熱を生じ得る底部7への粒子の堆積も阻止する。
【0017】
分解管1の流出側の端部は、フォーク状に拡大されており、かつ流入ヘッド11を形成する。流入ヘッド11は、内部の分解管1の延伸部を形成する管部分12と、外部の管部分13とからなり、これら両者は互いに一端で接続されている。外部の管部分13は、水室5の下側に溶接されている。流入ヘッド11の内部の管部分12は、軸線方向間隔で内管3に対向している。
【0018】
流入ヘッド11の内部の管部分12と外部の管部分13の間の環状の中間室の中に断熱体が取り込まれている。この断熱体は、軸線方向に相前後して置かれる断熱材の複数の層からなる。図示した場合において、3層が配設されており、しかも第1の層14、第2の層15および第3の層16である。これらの層14、15、16はその熱伝導率で区別される。その際に前記層14、15、16は、内管3に対向する第1の層14が最小の熱伝導率を有し、かつ分解管1に対向する第3の層16が最大の熱伝導率を有するように、中間室の中に取り込まれている。その中間にある層15は、平均的な熱伝導率を有する。従って、層14、15、16の断熱効果は、内管3の方向へ増大し、もしくは分解管1の方向へ減少する。異なる熱伝導率は、層14、15、16の材料または密度または厚さの選択によって変化させることができる。個々の層14、15、16の軸線方向の高さは、異なっていてよく、かつ所望の断熱効果の変化によって決定される。
【0019】
熱伝導率における差は、分解管1に対向する側で10W/m*Kと内管3に対向する側で0.2〜0.6W/m*Kの間にある。断熱体は、鉱物性または繊維性の材料からなっていてよく、かつ中間室の中に注入されたおよび硬化性の塊状体としてまたは成形部材として取り込むことができる。
【0020】
内部の管部分12の内径は、内管3の内径と等しい。図2に識別されるように、内部の管部分12前面は内径から出発して突出する周縁領域17を有する。前記周縁領域17の半径方向外側に、内部の管部分12の前面が環状の凹所18を具備している。前記凹所18の中にUリング19として形成されたシールリングが挿入されている。前記Uリング19の脚部は、凹所18の基部および内管3の前面に当接する。Uリング19はより低い温度で流入ヘッド11と、そこに取り込まれた断熱材の内部の中間室の方向への分解ガスの逃げ込みを阻止する第1のシールとして用いられる。
【0021】
内管3の前面から内部の管部分12の内部にある周縁領域17の軸線方向間隔は、運転中に流入ヘッド11の寸法によって発生する熱的に限定された流入ヘッド11の最大熱膨張よりも小さく選択されている。所定の温度に達したとき、進行する熱膨張により流入ヘッド11と内管3の間の間隔が橋渡しされ、その結果、内部の管部分12の突出する周縁領域17と内管3の間に金属対金属接触が発生する。この金属対金属接触は、第2のシールとして作用し、かつより高い温度でUリング19および流入ヘッド11の内部の中間室の方向への分解ガスの侵入を阻止し、またはこのような侵入を少なくとも広範囲に制限する。
【0022】
断熱材を収容する流入ヘッド11の内部の中間室は、環状の、弾性および気体非透過性の膜20によって密閉されている。膜20は、内部および外部の管部分12、13上に密閉固定されている。膜20は、好ましくは波形である。この膜は第3のシールとして用いられ、かつ必要に応じてさらにUリング19を通して侵入した分解ガスが断熱材に到達することを阻止する。
【0023】
上記水室5に代わり、流入ヘッド11は冷却管へ冷却材を供給するための別態様に形成された収集器に溶接されてもよい。
【0024】
流入ヘッド11は、――図3に示したように――流入ヘッド11の外部の管部分13が外側で冷却管と溶接されていることによって、直接内管3とジャケット管4からなる冷却管に接続されていてもよい。流入ヘッド11の内部の管部分12は――上述のように――形成されており、かつ冷却管の密閉された端部に対向しており、Uリング19はシールリングとして内部の管部分12の前面の凹所18の中に半径方向外側に突出する周縁領域17の前に設けられており、かつ流入ヘッド11の内部および外部の管部分12、13の間の中間室は気体非透過性の膜20によって密閉されている。
【符号の説明】
【0025】
3 内管
4 ジャケット管
5 水室
6 凹部
7 底部
11 流入ヘッド
12 内部の管部分
13 外部の管部分
17 内部の管部分の周縁領域
18 凹所
19 Uリング
20 気体非透過性の膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却管と非冷却管の間に管継手を有する分解ガスの冷却のための熱交換器であって、冷却される内管(3)がジャケット管(4)によって囲繞されており、かつ外部の管部分(13)と、内部の管部分(12)とを有し、それらの間に断熱材を充填した中間室がある前記非冷却管に接続され、断面がフォーク状の流入ヘッド(11)を介して前記熱い非冷却管に接続されており、外部の管部分(13)がジャケット管(4)に接続されており、かつ内部の管部分(12)が内管(3)に小さい軸線方向間隔で対向しており、かつ内管(3)の前面と内部の管部分(12)の間にシールが配設されている熱交換器において、
シールがUリング(19)として形成されており、かつ流入ヘッド(11)の内部の管部分(12)の前面の凹所(18)の中に配設されており、前記凹所(18)が半径方向外側に突出する、内管(3)に小さい軸線方向間隔で対向する内部の管部分(12)の周縁領域(17)の前に形成されており、かつ流入ヘッド(11)の内部の管部分(12)の周縁領域(17)と内管(3)の間の小さい軸線方向間隔が流入ヘッド(11)の最大熱膨張と等しくまたはそれより小さいことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
断熱材を収容する流入ヘッド(11)の中間室の上方に、密に流入ヘッド(11)の内部および外部の管部分(12、13)と溶接されている気体非透過性の膜(20)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
気体非透過性の膜(20)が波形であることを特徴とする請求項2記載の熱交換器。
【請求項4】
流入ヘッド(11)の外部の管部分(13)およびジャケット管(4)がそれぞれ互いに対向する側で水室(5)と接続されており、前記水室(5)が重厚なストリップ状の部材からなり、その中に凹部(6)の薄い底部(7)の中に溶接されたそれぞれ1本のみの内管(3)を囲繞する円形の凹部(6)が取り込まれており、かつ凹部(6)の直径がジャケット管(4)の内径に相当することを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項5】
流入ヘッド(11)の外部の管部分(13)が直接ジャケット管(4)に接続されていることを特徴とする請求項4記載の熱交換器。
【請求項6】
断熱材が複数の軸線方向に相前後して置かれる層(14、15、16)から構成されており、それらの熱伝導率が内管(3)からの距離と共に上昇することを特徴とする請求項1記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−2222(P2011−2222A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138754(P2010−138754)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(599101944)ボルジヒ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】