説明

分離装置及び該分離装置を備えた測定装置

【課題】 血液等の液体から簡単な操作で特定の成分を分離することが可能な分離装置を提供する。
【解決手段】 複数の成分からなる血液等の液体を分離させる分離装置1であって、この分離装置1は、回転する本体3と、この本体3の内部に設けられ、液体を収容する中空部9と、この中空部9と離れて本体内部に設けられた収容空間17と、中空部と収容空間を連結する連結路13と、を備えている。更に、連結路13には、血球成分等を透過しない分離部材11を設けてもよい。本発明によれば、中空部9に液体を収容した状態で分離装置1をコマのように回転させるという簡単な操作で、液体から所定の成分を分離することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分離装置及び該分離装置を備えた測定装置に係り、特に、血液等の検体から簡単な操作で特定の成分を分離することが可能な分離装置及び該分離装置を備えた測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血液等の検体検査において、ウイルス等の各種感染症や健康状態の診断を行うために、被験者から採取した血液を赤血球や血漿等の成分に分離して免疫学的検査や生化学的検査を行うことがある。
このような場合、従来では、患者から採取した血液を試験管等の容器に入れて、遠心分離装置で分離を行った後に、得られた上澄み等に対して所定の抗体成分や薬剤を添加することで、上記各種検査が行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術では、血液から血漿等の成分を分離するために遠心分離機等の分離装置が必要となり、このような装置が設置されていない場所では、検体から血漿等を分離・処理することが困難であった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡単な操作で血液等の検体から特定の成分を分離することが可能な分離装置及び該分離装置を備えた測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の分離装置は、複数の成分からなる液体を分離させる分離装置であって、回転する本体と、前記本体内部に設けられ、前記液体を収容する中空部と、前記中空部と離れて前記本体内部に設けられた収容空間と、前記中空部と前記収容空間を連結する連結路と、を具備することにより解決される。
【0006】
このように、請求項1の分離装置によれば、回転する本体と、この本体内部に設けられ、液体を収容する中空部と、この中空部と離れて本体内部に設けられた収容空間と、中空部と収容空間を連結する連結路とを備えている。このため、血液等の液体を中空部に収容して回転させることで、中空部に収容された液体に遠心力が働き、一部は沈殿、残りは上澄みに分離される。このうち上澄みについては連結路を通過して収容空間に移動する。
すなわち、請求項1の分離装置によれば、従来の分離装置のように液体を収容した容器を回転させるために特別な装置を必要とすることがなく、中空部に液体を収容した状態でコマのように回転させるという簡単な操作により、液体から所定の成分を分離することが可能となっている。
【0007】
また、請求項2の分離装置によれば、請求項1の要件に加えて、前記連結路の途中には、複数の成分からなるもののうち少なくとも一部を透過しない分離部材が設けられていると好適である。
【0008】
このように、請求項2の分離装置によれば、連結路の途中に分離部材が設けられているため、液体から所定の成分を更に効率よく分離することが可能となっている。
【0009】
また、請求項3の分離装置によれば、請求項1の要件に加えて、前記本体は、該本体の上面に設けられた軸部と、前記本体の底面に設けられ,鉛直下方に頂点を有する接地部と、を具備し、前記軸部の中心軸線と前記接地部の頂点を結ぶ軸線を回転軸線として回転可能に構成されていると好適である。
【0010】
このように、請求項3の分離装置によれば、本体は、この本体の上面に設けられた軸部と、この本体の底面に設けられ,鉛直下方に頂点を有する接地部を具備しており、この軸部の中心軸線と接地部の頂点を結ぶ軸線を回転軸線として回転可能に構成されている。従って、軸部を指でつまんで回転力を加えることにより、接地部の頂点を接地した状態でコマのように分離装置を回転させることが可能となっている。
すなわち、請求項1の分離装置によれば、従来の分離装置のように液体を収容した容器を回転させるために特別な装置を必要とすることがなく、中空部に液体を収容した状態でコマのように回転させるという簡単な操作により、液体から所定の成分を分離することが可能となっている。
【0011】
また、請求項4の分離装置によれば、請求項3の要件に加えて、前記軸部は、管路が形成された管状部材で構成され、前記管路と前記中空部が連通していると好適である。
【0012】
このように、請求項4の分離装置によれば、軸部は管路が形成された管状部材であり、この管路と中空部が連通した構造となっている。すなわち、分離装置をコマのように回すための軸部と、液体を中空部に導入するための通路を構成する部材とが共通となっている。従って、分離装置に設ける部品点数を減らすことが可能となり、製造にかかる費用や手間を低減することができる。また、このようにコマのように回転させる軸部と、液体を導入する通路を構成する部材とを共通化することで、分離装置を小型化することが可能となっている。
また、上記構成とすることで、軸部に形成された管路を中空部の一部として使用することも可能となっている。従って、中空部の容量以上の液体を導入することが可能であると共に、導入した液体が中空部から溢れた場合であっても、この管路に収容することが可能であるため、分離装置から液体が漏出することを防止することができる。
【0013】
更に、請求項5の分離装置によれば、請求項1の要件に加えて、前記本体は、複数の成分からなるもののうち少なくとも一部を透過しない材料から構成されると共に、前記分離部材は、前記本体を構成する材料の一部で構成されることにより解決される。
また、請求項6の分離装置によれば、請求項5の要件に加えて、前記本体を構成する材料が、多孔性セラミックスであると好適である。
【0014】
このように、請求項5又は6の分離装置によれば、本体は、複数の成分からなるもののうち少なくとも一部を透過可能な材料、例えば多孔性セラミックス、で構成されると共に、分離部材は、この本体を構成する材料の一部で構成されている。すなわち、本体の一部を分離部材として使用することが可能となっている。従って、別体として設けた分離部材を連結路に設置する必要がなく、分離装置の構造をより簡単なものとすることが可能となっている。
【0015】
更にまた、請求項7の分離装置によれば、請求項1の要件に加えて、前記収容空間には、前記液体から分離された成分のうち少なくとも1つと反応する薬剤が収容されていることが好ましい。
【0016】
このように、請求項7の分離装置によれば、収容空間には、液体から分離された成分のうち少なくとも1つと反応する薬剤が収容されているため、分離部材で分離された所定の成分が収容空間に送液されると、薬剤と混合されて反応が開始される。すなわち、分離装置をコマのように回転させるという簡単な操作で、液体から所定の成分を分離する分離工程と、分離した成分に対して薬剤を添加・混合して反応を行う反応工程を連続して行うことが可能となっている。
【0017】
更にまた、請求項8の分離装置によれば、請求項1乃至7の要件に加えて、前記液体が血液であると好適である。
【0018】
このように、請求項8の分離装置によれば、簡単な操作で血液から所定の成分を分離することが可能な分離装置を提供することが可能となる。
【0019】
上記課題は、請求項9の測定装置によれば、液体中に含まれる所定の成分を測定する測定装置であって、前記請求項1乃至8の分離装置と、該分離装置で分離され前記収容空間に収容された液体の測定手段と、を備えることにより解決される。
【0020】
このように、請求項9の測定装置によれば、中空部に液体を収容した状態でコマのように回転させるという簡単な操作により液体から所定の成分を分離したのちに、分離された液体に含まれる成分などを測定することが可能となっている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の分離装置によれば、従来の分離装置のように液体を収容した容器を回転させるために特別な装置を必要とすることがなく、中空部に液体を収容した状態でコマのように回転させるという簡単な操作により、液体から所定の成分を分離することが可能となっている。
また、本発明の測定装置によれば、中空部に液体を収容した状態でコマのように回転させるという簡単な操作により、液体から所定の成分を分離したのちに、分離された液体に含まれる成分などを測定することが可能となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0023】
図1乃至図3は、本発明の第一の実施形態に係る分離装置を説明した図であり、図1は本発明の第一の実施形態に係る分離装置を斜め上方からみた斜視図、図2は本発明の第一の実施形態に係る分離装置の横断面図、図3は本発明の第一の実施形態に係る分離装置を上面からみた説明図である。
なお、連結路13、収容空間17及び排気路19については、図3の上面図では本来視認できないものであるが、発明の理解を容易にするため、図中に点線で示してある。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の分離装置1は、横断面形状が略正八角形をした板状の本体3と、この本体3の上面中央部に鉛直上方に向けて設けられた円筒状の軸部5と、本体3の下面中央部に設けられ、鉛直下方に頂点を向けて設けられた錐形の接地部7と、を主要な構成要素として備えている。
【0025】
本体3は、樹脂,金属,セラミックス等の公知の材料を用いて形成される部材である。本実施形態では、本体3は直径2〜3cmの略八角形をした板状部材であるが、本体3の大きさや形状としては本実施形態のものに限定されない。例えば形状であれば、正十六角形等の他の多角形の形状であってもよく、あるいは円形のものであってもよい。また、本体3の外装には、ニッケルや金メッキを施してもよい。
図2に示すように、本体3は、上面中央部から本体3の中心部に向かって直径5mm程度の中空部9が形成されており、外部から導入された血液等の検体を収容可能となっている。
【0026】
図3に示すように、中空部9からは、本体3の外方に向かって放射状に複数の連結路13が形成されており、連結路13と一対一に設けられた複数の収容空間17に夫々連通している。連結路13の途中には後述する分離部材11が連結路を遮蔽する位置に配置されている。
また、図2に示すように、連結路13は、中空部9から分離部材11まで連通する第一の連結路13aと、分離部材11から収容空間17まで連通する第二の連結路13bにより形成されている。
【0027】
第一の連結路13aは、直径略500μmの細管であり、本体3の中空部9から横方向に垂直に形成されている。
また、第二の連結路13bは、直径略100μmの細管であり、第一の連結路13aと分離部材11を挟んで連続して形成されている。細管の直径としては、100μm〜200μm程度が好ましく、より好適には150μm程度がよい。
このように、第一の連結路13aは第二の連結路13bよりも大径となっているため、分離部材11で分離された固体成分により連結路13の目詰まりが防止される。
【0028】
更に、連結路13には、血液中の生体成分が壁面に付着することを防止するコーティング剤を塗布することが好ましい。このようなコーティング剤として特に好適なものが、2―メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を単量体成分として構成された共重合体である。このような共重合体の例としては、2―メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸エステルの共重合体等が挙げられる。
【0029】
収容空間17は、本体3の外周部に画設されており、連結路13から流入する液体を収容することが可能となっている。収容空間17は、略四角柱状の孔として形成されており、分離装置1の後述する回転軸線Zを中心として中空部9よりも外方に画設されている。本実施形態では、収容空間17は、横断面形状が正八角形の本体3のそれぞれの辺に対応する位置に一つずつ形成されている。ただし、収容空間17としては、このように本体3の各辺に対応する位置に形成されるものに限定されず、例えば正八角形状をした本体3であっても、収容空間17は2箇所のみ設けられるものであってもよい。
【0030】
収容空間17には、検体中の所定の成分と反応する薬剤25が収容されている。薬剤の種類としては、例えば血液中に含まれるウイルス等の抗原と反応して凝集する担体感作抗体や、血漿中に含まれる所定の成分と反応する試薬等が挙げられる。
【0031】
収容空間17の上部開口には、収容空間17の液体が収容空間17の外へ飛散することを防止するため蓋体23が覆設されている。蓋体23は、樹脂製の透明部材あるいは半透明部材で構成され、分離された検体を測定するための測定光等を透過可能となっている。
【0032】
分離部材11は方形状のフィルターであり、血液等の検体から血漿等の所定の成分を透過する分離機能を有している。分離部材11は、本体3の上部に形成された挿入孔から差し込むことで本体3に取りつけられる。
本実施形態では、複数の連結路13毎に分離部材11を取りつけることが可能に構成されているため、分離性能の異なる分離部材11を連結路13に設けることで、一度の操作で同時に異なる成分や同じ成分であっても異なる組成で分離することが可能となる。
【0033】
収容空間17の上部内壁からは、内部に存在する気体成分を除去する排気路19が本体3の中心方向に向かって形成されている。排気路19は、本体3の上面に形成された排気孔21に連通しており、収容空間17内に存在する空気や収容空間17内で発生するガスは、この排気孔21から外へ排気される。
【0034】
続いて、軸部5について説明する。本実施形態の軸部5は、樹脂,金属,セラミックス等の公知の材料を用いて形成される管状部材であり、本実施形態では内部に管路5cが形成された円筒形状をしている。軸部5は、円筒形状をした円筒部5aと、円筒部5aの一端に形成されるフランジ5bにより構成される。フランジ5bは、円筒部5aの長手方向に対して横方向に向けて略垂直に延出した状態に形成されている。このフランジ5bは、軸部5を本体3に止着する際の止着面としての役割を果たす。本体3の上面とフランジ5bとは、接着剤等の公知の固着手段を用いて固着することが可能である。
【0035】
本体3と軸部5とが固着されると、軸部5の管路5cと本体3の中空部9が連通する。すなわち、軸部5の一端に形成されている開口から本体3の中空部9に通じる通路が形成される。管路5cは、後述するように検体を中空部9に導入するための通路としての機能を有している。
【0036】
接地部7は、樹脂,金属,セラミックス等の公知の材料を用いて形成される部材であり、本実施形態では円錐形状をした部材として形成されている。接地部7は、その頂点を鉛直下方向に向け、円錐の底面を本体3の底面中央部の板面と固着することで本体3に取り付けられている。本体3と接地部7とは接着剤等の公知の固着手段を用いて固着することが可能である。
なお、接地部7の形状としては、本実施形態のような円錐形状のものに限定されず、例えば多角錐形状等であってもよい。
【0037】
本実施形態では、軸部5及び接地部7は本体3とは別部材として設け、これらを本体3に止着する構成としているが、本発明の軸部及び接地部としてはこのような構成に限定されず、本体3と一体に形成してもよい。
【0038】
本発明の分離装置1は、軸部5の長手方向での中心軸線と、接地部7の頂点7aとを結ぶ軸線を回転軸線Zとして、接地部7の頂点7aを接地した状態で回転軸線Zを中心にコマのように回転可能となっている。よって、軸部5を指でつまんで回転力を加えることにより、接地部7の頂点7aを台等の平面に接地した状態でコマのように回転させることが可能となっている。中空部9に血液等の検体を収容した状態で、分離装置1を回転させることにより、収容された検体に遠心力がかかり、検体中の固体成分が沈殿し、液体成分が上澄みとなる。具体的には、検体が血液の場合にあっては、中空部9の底部に血球成分が沈殿する一方、血漿成分が上澄みとなる。
【0039】
血漿成分は更に、連結路13を通過して収容空間17に移動しようとする。本実施形態では、連結路13には分離部材11が連結路13の一部を遮蔽する位置に設けられているため、上澄み中に含まれる残存血球成分の通過が阻止されて、血漿成分のみ分離部材11を通過して収容空間17に移動する。
このように、本実施形態の分離装置1は、遠心力により血液から血漿成分を分離するのみならず、分離部材11が連結路13の一部を遮断する位置に設けられているため、血漿成分をより確実に分離することが可能となっている。
【0040】
収容空間17には検体中の成分と反応する薬剤25が収容されており、分離装置1が回転している間に、分離された血漿成分中の所定の成分と混合されて反応する。蓋体23は透明又は半透明であるため、蓋体23越しに反応後の溶液を分光学的に測定することが可能となっており、従って、蓋体23を取り外すことなく簡単な操作で、後述の分析装置などを用いて反応後の溶液を測定することができる。
【0041】
続いて、本発明の第二の実施形態に係る分離装置について説明する。図4及び図5は、本発明の第二の実施形態に係る分離装置を説明した図であり、図4は本発明の第二の実施形態に係る分離装置の横断面図、図5は本発明の第二の実施形態に係る分離装置を上面からみた説明図である。
なお、連結路13、収容空間17及び排気路19については、図5の上面図では本来視認できないものであるが、発明の理解を容易にするため、図中に点線で示してある。
【0042】
図4に示すように、本実施形態の分離装置は、第一の実施形態の分離装置と同様に、横断面形状が略正八角形をした板状の本体3と、この本体3の上面中央部に鉛直上方に向けて設けられた円筒状の軸部5と、本体3の下面中央部に設けられ、鉛直下方に頂点を向けて設けられた錐形の接地部7と、を主要な構成要素として備えている。
本実施形態では第一の実施形態の場合と異なり、図4に示すように、軸部5と接地部7とは一体の部材として形成されており、本体3の中心部に設けられた貫通孔に軸部5を貫挿することで本体3に取りつけられている。
【0043】
本体3は、第一の実施形態における本体と略同等の形状や構造を有しているが、第一の実施形態のように中空部9が本体3の中心に一箇所設けられているのではなく、本実施形態では図4及び図5に示すように、本体3の中心部周辺に複数の中空部9が同心円状に設けられている。そして、これら複数の中空部9からは夫々第一の連結路13a及び第二の連結路13bが形成されており、第二の連結路13bは夫々単一の収容空間17に連通している。
第一の連結路13aと第二の連結路13bとの間には、第一の実施形態と同様に、分離部材11が配設されている。第一の実施形態と同様に、中空部9の検体は、分離部材11により所定の成分に分離される。
【0044】
本実施形態の分離装置1は、上述のように中空部9を複数備えているため、図4のように、夫々の中空部毎に異なる種類の検体S1および検体S2を収容することが可能となっている。具体的には、例えば複数の患者からの血液を夫々の中空部9に収容して、一度に血漿分離工程及び反応工程を行うことが可能である。従って、血液検査に要する時間や手間を省略することが可能となり、効率よく検査を実施することが可能となっている。
【0045】
続いて、本発明の第三の実施形態に係る分離装置について説明する。図6及び図7は、本発明の第三の実施形態に係る分離装置を説明した図であり、図6は本発明の第三の実施形態に係る分離装置の横断面図、図7は本発明の第三の実施形態に係る分離装置を上面からみた説明図である。
なお、連結路15、収容空間17及び排気路19については、図7の上面図では本来視認できないものであるが、発明の理解を容易にするため、図中に点線で示してある。
【0046】
本実施形態の分離装置は、第一の実施形態の分離装置と同様に、横断面形状が略正八角形をした板状の本体3と、この本体3の上面中央部に鉛直上方に向けて設けられた円筒状の軸部5と、本体3の下面中央部に設けられ、鉛直下方に頂点を向けて設けられた錐形の接地部7と、を主要な構成要素として備えている。
【0047】
本体3は、第一の実施形態における本体と略同等の形状や構造を有しており、中空部9は、本体3の上面中央部に形成されている。第一の実施形態との相違点は、第一の実施形態では分離部材11が連結路15の夫々に対して配設されているのに対して、本実施形態では図7に示すように、中空部9の下側に隔室15aが形成されており、この隔室15aと中空部9の間に第一の分離部材としての分離部材11が設けられている点である。すなわち、本実施形態では、共通の分離部材としての単一の分離部材11が設けられている。このような構成とすることで、複数の分離部材を設ける必要がなく、分離装置の製造コストを下げることが可能となっている。
【0048】
また、本実施形態の本体3は、血液から所定の成分を分離することが可能な部材で構成されている。本実施形態では、具体的には多孔質セラミックスで形成されている。多孔質セラミックスには、血液中の血漿成分を通過させるが血球成分の通過を阻止する大きさの孔が複数形成されており、血漿成分を分離する機能を備えている。
【0049】
隔室15aは、中空部9よりも直径の小さい円筒状の小室である。また、分離部材11は、直径が中空部9と略等しい円板状のフィルターであり、第一の実施形態と同様に血液等の検体から血漿等の所定の成分を透過する分離機能を有している。分離部材11は、中空部9と隔室15aとの間の縮径した縁部に、分離部材11の周縁部が圧着された状態で配置される。
【0050】
図7に示すように、隔室15a(図7中では不図示)からは、本体3の外方に向かって放射状に第一の連結路15b及び第二の連結路15cからなる複数の連結路が形成されており、この連結路と一対一に設けられた複数の収容空間17に夫々連通している。図6に示すように、連結路15b及び連結路15cの間には後述する第二の分離部材である分離領域3aが連結路15b及び連結路15cの間を遮蔽する位置に配置されている。
なお、隔室15a、第一の連結路15b、第二の連結路15cは、本発明の連結路15を構成する。
【0051】
第一の連結路15bは、隔室15aから後述する分離領域3aに連通している。分離領域3aは、本体3の一部の領域であり、本体3と同じく多孔質セラミックスで形成されている。分離領域を挟んで、第一の連結路15bと対向する位置に第二の連結路15cが形成され、収容空間17へ連通している。
【0052】
第一の連結路15bの端部と第二の連結路15cの端部との間は短く離間している。すなわち、図6に示すように、第一の連結路15bと第二の連結路15cの間には、本体3の一部の領域である分離領域3aが形成されている。分離領域3aは本体3の一部であるため、本体3と同様に多孔質セラミックスで形成されている。すなわち、分離領域3aでは、血漿成分を通すが血球成分を通さないため、分離領域3aは血漿成分を分離する分離部材11と同様の作用を備えている。
【0053】
このように、本実施形態の分離装置は、分離部材11と第二の分離部材である分離領域3aの2つの分離部材を備えているため、分離装置1の回転により完全には分離できなかった血球成分を分離部材11で除去することができると共に、この第一の分離部材11でも除去できずに漏出した血球成分を、更に第二の分離部材である分離領域3aで除去することが可能となっている。従って、より確実に血球成分を除去することが可能となっている。
【0054】
また、本実施形態の分離装置は、本体3が検体から所定の成分を分離可能な材料から構成されると共に、その一部により分離領域3aが形成されている。すなわち、本体3の一部を分離部材として使用している。従って、別体として分離部材を用意してこれを連結路に設置するという手間を必要とせず、分離装置の製造にかかる手間を簡略化することが可能であると共に、分離装置の構造をより簡単なものとすることができる。
【0055】
続いて、本発明の第四の実施形態に係る分離装置について説明する。図8及び図9は、本発明の第四の実施形態に係る分離装置を説明した図であり、図8は本発明の第四の実施形態に係る分離装置の横断面図、図9は本発明の第四の実施形態に係る分離装置に回転力を付与する回転力付与装置の斜視図である。
【0056】
本実施形態の分離装置1は、図8に示すように、第一の実施形態と異なり軸部を備えておらず、分離装置1を手で回すのではなく回転力付与装置としてのシューター40を用いて回す点に特徴がある。
分離装置1の本体3の下面には、後述するシューター40の回転体42に形成された係合部42aと係合する形状の切欠部(図示せず)が形成されており、シューター40の回転体42に載置される。
【0057】
本実施形態のシューター40は、分離装置1を保持し、これに回転力を与えてコマのように回転させる装置である。このようなシューターは、玩具のコマを回すための回転力付与装置として公知のものである。本実施形態のシューター40としては、このような玩具の回転力付与装置としてのシューターを転用することも可能である。
【0058】
本実施形態のシューター40は、図9に示すように、シューター本体41とラックベルト50を主要な構成要素として備えている。シューター本体41は略方形をした中空部材で構成され、シューター本体41の側面にはラックベルト50を挿通可能な開口41aが形成されている。また、シューター本体41内には図示しない軸体が設けられている。この軸体には、ラックベルト50のラックギヤ50aと噛合する図示しないピニオンギヤが回動可能に設けられている。ラックギヤ50aは回転体42と連結しており、この回転体42には、前述のように分離装置1の切欠部と係合する形状の係合部42aが形成されている。シューター本体41の上面中央部には円形の開口が設けられており、係合部42aが形成された回転体42の一部領域が露出している。
【0059】
続いて、本実施形態の分離装置1を回転する手順について説明する。まず、ラックベルト50を開口41aからシューター本体41内に挿入して、ラックギヤ50aとピニオンギヤが噛合するようにする。この状態で、分離装置1をシューター本体41の上面に載置して、分離装置1の本体3下面に形成された切欠部を回転体42の係合部42aに係合する。
【0060】
そして、分離装置1と係合部42aが係合した状態で、ラックベルト50の環状部に指をかけてラックベルト50をシューター本体41から思いっきり引き抜くと、ラックベルト50のラックギヤ50aと係合したピニオンギヤが軸体を中心に回転する。ピニオンギヤは回転体42の一部であるため、ラックベルト50を引き抜くことにより、回転力がピニオンギヤから回転体42に伝わる。回転体42が回転すると、回転体42と係合した分離装置1が回転して、その力で分離装置1の切欠部と回転体42の係合部42aの係合が解除され、分離装置1がシューター40から離脱して、分離装置1の接地部の頂点を支点として机上等の平面上で回転する。
分離装置1内には他の実施形態と同様に、中空部に検体である液体が収容されているため、分離装置1の回転に伴い液体中の成分が分離される。
【0061】
このように、本実施形態の分離装置1では、分離装置1に回転力を付与する回転力付与装置を用いて分離装置1を回転させている。このため、他の実施形態のように手で分離装置1を回す場合と異なり、操作者が分離装置1を上手く回せない場合においても好適に分離装置1を回転させることが可能となっている。
【0062】
すなわち、本実施形態では、回転力付与装置を用いて分離装置1を回転させているため、分離装置1の回転のさせ方がわからない人であっても分離装置1を回転することが可能である。また、分離装置1を回転する人の技量や力加減によらず、略均一な遠心力を検体に付加することが可能となるため、再現性よく検体から所定の成分を分離することが可能となっている。
【0063】
以上、本発明の分離装置について複数の実施形態を挙げて説明した。上記各実施形態の分離装置はいずれも錐形の接地部の頂点で机等の平面状に接地した状態で回転するものであるが、本発明の分離装置はこのような形態のものに限定されず、例えばジャイロスコープのように、複数の環状部材の中心部に本実施形態のコマを設置し、これを回転するものであってもよい。
【0064】
更に、測定手段を備えた分析装置に本発明の分離装置1を設置して、分離後の検体を測定する構成としてもよい。
図10は本発明の測定装置60の横断面図である。図10に示すように、本実施形態の測定装置60は、分離装置1と、分析装置を備えている。分析装置は、図示しないケースと、光源62と、投光側光ファイバ63と、投光ヘッド64と、集光レンズ65と、受光ヘッド66と、受光側光ファイバ67と、分光部68と、コンピュータ69を主要な構成要素として備えている。本実施形態では、光源62と、投光側光ファイバ63と、投光ヘッド64と、集光レンズ65と、受光ヘッド66と、受光側光ファイバ67と、分光部68については、ケース内に収容されている。
なお、分析装置は本発明における測定手段に該当する。
【0065】
本実施形態の測定装置60は、上記各実施形態に記載された分離装置1を構成要素の一部として備えている。すなわち、分離装置1は、前述のように分離装置1の中空部9に検体を収容した状態で分離装置1をコマのように回すことで、所望の成分を含む分離後の検体S3が収容空間17に分離される。そして、本実施形態では、この分離操作を行った後の分離装置1を分析装置の所定の位置にセットして、収容空間17に収容された分離後の検体S3に対して光学測定などの測定を行うことにより、分離後の検体中に含まれる所定成分の濃度などが測定可能となっている。
【0066】
光源62は、電源から供給される電力によって白色光を発する装置である。光源62には投光側光ファイバ63が接続されており、光源62で発した光は投光側光ファイバ63の一端に入射する。投光側光ファイバ63の他端には投光ヘッド64が接続されている。投光ヘッド64は集光レンズ65の方向へ向いており、投光側光ファイバ63の一端から入射した光は投光ヘッド64から集光レンズ65に向けて発射される。集光レンズ65はガラスなどの公知の材料で構成され、所定の屈折率を有するレンズである。集光レンズ65に向けて発射された光は集光レンズ65で屈折されて集束し、分離装置1の収容空間17に向けて発射される。収容空間17には分離後の検体S3が収容されている。
【0067】
本実施形態では、蓋体23は樹脂製の透明部材あるいは半透明部材で構成され、分離された検体を測定するための測定光等を透過可能となっている。このため、蓋体23を装着したままで分離後の検体S3を光学測定することが可能となっている。従って、測定における手間を大幅に低減することができる。
【0068】
前述のように、収容空間17には検体中の所定の成分と反応する薬剤25が収容されていることが好ましい。薬剤25としては、血液中の所定の成分に対する抗原を感作した担体粒子などが挙げられる。このような感作担体粒子は、分離後の検体中で所定の成分と抗原抗体反応を生じさせて凝集する。この凝集度を吸光度変化や光散乱変化を測定することで測定して、目的の成分を検出する。
【0069】
この場合、投光ヘッド64から集光レンズ65を介して収容空間17内の検体S3に入射した測定光は、凝集した粒子により散乱される。この散乱光は集光レンズ65を介して集束され、受光ヘッド66に入射する。受光ヘッド66には受光側光ファイバ67の一端が接続されており、他端は分光部68に接続されている。受光ヘッド66に入射した散乱光は受光側光ファイバ67を伝送して分光部68に入射する。分光部68には分光フィルター68a及び受光素子68bが設けられている。
【0070】
分光フィルター68aは特定の波長の光のみを通過するフィルターである。分光フィルター68aに入射した光のうち、所定の波長を有する光のみが分光フィルター68aを通過する。分光フィルター68aを通過した光は受光素子68bに入射する。受光素子68bはフォトダイオードなど光電変換素子で構成され、受光した光の強度に応じた電流を発生する。
【0071】
受光素子68bはコンピュータ69と電気的に接続されている。コンピュータ69は演算手段であるCPUと、記憶手段であるメモリ及びハードディスクを少なくとも備えている。
【0072】
血液中の成分と反応する薬剤25としては上述のような感作担体粒子に限定されず、血液中の成分と化学反応をする試薬などであってもよい。例えば血液中に含まれる乳酸を測定するために用いられる乳酸酸化酵素(LOD)及びルミノールなどが挙げられる。この場合、血液中の乳酸はLODにより酸化され、ピルビン酸と過酸化水素が生成する。この過酸化水素はルミノールと反応してアミノフタル酸ジアニオンが生成する。このとき、エネルギーの一部は光として放出される。この場合、波長425nmにスペクトルピークを有する発光が観察される。従って、分光部68で425nmの波長における発光強度を検出することにより、血液中に含まれる乳酸の濃度を測定することが可能となる。
【0073】
このように、本実施形態の測定装置60によれば、分離操作を行った後の分離装置1を分析装置の所定の位置にセットして、収容空間17に収容された分離後の検体S3に対して分析装置で光学測定などの測定を行うことにより、分離後の検体中に含まれる所定の成分の濃度などを測定可能となる。
【0074】
なお、本実施形態では分離後の検体を光学的に測定する測定装置について説明したが、本発明の測定手段としては、このような光学的測定手段に限定されない。例えば、測定手段として固定化酵素などを備えたバイオセンサ素子を用いて検体中の所定の成分を無試薬で測定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る分離装置を斜め上方からみた斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る分離装置の横断面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る分離装置を上面からみた説明図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る分離装置の横断面図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る分離装置を上面からみた説明図である。
【図6】本発明の第三の実施形態に係る分離装置の横断面図である。
【図7】本発明の第三の実施形態に係る分離装置を上面からみた説明図である。
【図8】本発明の第四の実施形態に係る分離装置を斜め上方からみた斜視図である。
【図9】本発明の第四の実施形態に係る分離装置に回転力を付与する回転力付与手段の斜視図である。
【図10】本発明の測定装置を側面から見た一部断面図を含む説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1 分離装置
3 本体
3a 分離領域(分離部材)
5 軸部
5a 円筒部
5b フランジ
5c 管路
7 接地部
7a 頂点
9 中空部
11 分離部材
13 連結路
13a 第一の連結路
13b 第二の連結路
15 連結路
15a 隔室
15b 第一の連結路
15c 第二の連結路
17 収容空間
19 排気路
21 排気孔
23 蓋体
25 薬剤
40 シューター
41 シューター本体
41a 開口
42 回転体
42a 係合部
50 ラックベルト
50a ラックギヤ
60 測定装置
62 光源
63 投光側光ファイバ
64 投光ヘッド
65 集光レンズ
66 受光ヘッド
67 受光側光ファイバ
68 分光部
68a 分光フィルター
68b 受光素子
69 コンピュータ
S 検体
S1 検体
S2 検体
S3 検体
Z 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分からなる液体を分離させる分離装置であって、
回転する本体と、
前記本体内部に設けられ、前記液体を収容する中空部と、
前記中空部と離れて前記本体内部に設けられた収容空間と、
前記中空部と前記収容空間を連結する連結路と、
を具備することを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記連結路の途中には、複数の成分からなるもののうち少なくとも一部を透過しない分離部材が設けられたことを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項3】
前記本体は、
該本体の上面に設けられた軸部と、
前記本体の底面に設けられ,鉛直下方に頂点を有する接地部と、を具備し、
前記軸部の中心軸線と前記接地部の頂点を結ぶ軸線を回転軸線として回転可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項4】
前記軸部は、管路が形成された管状部材で構成され、前記管路と前記中空部が連通していることを特徴とする請求項3記載の分離装置。
【請求項5】
前記本体は、複数の成分からなるもののうち少なくとも一部を透過しない材料から構成されると共に、前記分離部材は、前記本体を構成する材料の一部で構成されることを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項6】
前記本体を構成する材料が、多孔性セラミックスであることを特徴とする請求項5記載の分離装置。
【請求項7】
前記収容空間には、前記液体から分離された成分のうち少なくとも1つと反応する薬剤が収容されていることを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項8】
前記液体が血液であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の分離装置。
【請求項9】
液体中に含まれる所定の成分を測定する測定装置であって、
前記請求項1乃至8の分離装置と、
該分離装置で分離され前記収容空間に収容された液体の測定手段と、
を具備することを特徴とする分離装置を備えた測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−242872(P2006−242872A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61674(P2005−61674)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(505046190)株式会社AIバイオチップス (12)
【Fターム(参考)】