切換操作装置
【課題】移動操作体を操作するための連係構造に高い組み付け精度を必要とせず、しかも、切換操作具を操作したにもかかわらず切換操作機構の操作状態の切り換えが行われない状態になることを回避することが可能となる切換操作装置を提供する。
【解決手段】移動操作体52の移動操作に伴って第1操作状態と第2操作状態とに切り換え自在な切換操作機構50と、移動操作体52と連動連係される手動操作式の切換操作具43とを備え、切換操作具43と引張りバネ65を介して連動連係される中継操作部材66と移動操作体52とが連動部材59を介して連動連結され、切換操作具43を操作すると、引張りバネ65に張力が発生しながら中継操作部材66が移動して移動操作体52が操作される。そして、中継操作部材66に、移動操作体52の移動操作が阻止されている状態において切換操作具43の切り換え操作を規制する接当規制部67を備える。
【解決手段】移動操作体52の移動操作に伴って第1操作状態と第2操作状態とに切り換え自在な切換操作機構50と、移動操作体52と連動連係される手動操作式の切換操作具43とを備え、切換操作具43と引張りバネ65を介して連動連係される中継操作部材66と移動操作体52とが連動部材59を介して連動連結され、切換操作具43を操作すると、引張りバネ65に張力が発生しながら中継操作部材66が移動して移動操作体52が操作される。そして、中継操作部材66に、移動操作体52の移動操作が阻止されている状態において切換操作具43の切り換え操作を規制する接当規制部67を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動操作体の移動操作に伴って第1操作状態と第2操作状態とに切り換え自在な切換操作機構と、前記移動操作体と連動連係される手動操作式の切換操作具とが備えられている切換操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記切換操作機構の一例として、例えば、特許文献1に記載されるように、走行用の無段変速装置を変速操作する変速操作具とエンジンのアクセル装置とを、連動連係させる操作状態(第1操作状態の一例)と連動連係を解除する操作状態(第2操作状態の一例)とに切り換え自在な作業車における走行状態の切換機構において、次のように構成されるものがあった。
【0003】
すなわち、前記第1操作状態及び前記第2操作状態の夫々に対応する位置に移動操作自在な移動操作体として、支軸にスライド自在に支持され且つピン孔に対して抜き差し自在に係合する連動ピンを抜き外れ側に移動付勢される状態で備えて、この連動ピンが切換操作具に相当する連動入切レバーに操作ワイヤにて連動連結され、連動入切レバーを引き操作して、ピン孔から抜き外された連係解除を解除する状態から連動ピンをピン孔に入りこみ係合させることで連動連係させる状態に切り換えるように構成されたものがあった。
要するに、上記従来構成では、切換操作具と移動操作体とが一体的に移動操作されるように、移動操作体と切換操作具とが操作ワイヤにて連動連結される構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−331478号公報(段落〔0032〕、〔0034〕、図9,11,12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成では、移動操作体と切換操作具とが操作ワイヤにて連動連結されているから、切換操作具の操作に伴い移動操作体を適正な位置に移動操作させるために、前記第1操作状態と前記第2操作状態の夫々に対応する切換操作具及び移動操作体夫々の移動操作位置の位置関係や移動操作される操作ストローク量等を精度よく調節する必要があり、切換操作具と移動操作体とを連動操作するための連係機構に高い組み付け精度が必要となり、調節作業が煩わしいものとなる不利があった。
【0006】
そこで、このような不利を回避するために、切換操作具と移動操作体との間に操作融通を確保するために、切換操作具と移動操作体との間に引張りバネを介装して連動連係させる構成として、連動操作するための連係構造に高い組み付け精度を不要とすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、このように切換操作具と移動操作体との間に引張りバネを介して連動連係させる構成とした場合、移動操作体が何らかの理由によって、第1操作位置及び第2操作位置のうちのいずれかの操作位置において移動操作が不能な状態に陥っているような場合、切換操作具は引張りバネの融通によって移動操作が許容されることになり、手動操作による切換操作具の切り換え操作は可能であるから、切換操作具を操作する操作者は、切り換え操作が良好に行われたものと勘違いして、切換操作機構の操作状態の切り換えが行われないまま作業を継続する等の不利がある。
【0008】
本発明の目的は、切換操作具と移動操作体とを連動操作するための連係構造に高い組み付け精度を必要とせず、しかも、切換操作具を操作したにもかかわらず切換操作機構の操作状態の切り換えが行われない状態になることを回避することが可能となる切換操作装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る切換操作装置は、移動操作体の移動操作に伴って第1操作状態と第2操作状態とに切り換え自在な切換操作機構と、前記移動操作体と連動連係される手動操作式の切換操作具とが備えられているものであって、その第1特徴構成は、
前記切換操作具と引張りバネを介して連動連係される中継操作部材が備えられ、
前記中継操作部材と前記移動操作体とが連動部材を介して連動連結され、
前記切換操作具を操作すると、前記引張りバネに張力が発生しながら前記中継操作部材が移動して、前記移動操作体が前記第1操作状態に対応する第1操作位置及び前記第2操作状態に対応する第2操作位置のいずれか一方から他方へ操作されるように構成され、
前記中継操作部材に、前記移動操作体が前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方から他方への移動操作が阻止されている状態において、前記切換操作具に接当して前記切換操作具の切り換え操作を規制する接当規制部が備えられている点にある。
【0010】
第1特徴構成によれば、操作者が切換操作具を操作すると、引張りバネに張力が発生しながら中継操作部材が移動して、移動操作体が第1操作状態に対応する第1操作位置及び第2操作状態に対応する第2操作位置のいずれか一方から他方へ操作されることになる。中継操作部材は引張りバネを介して切換操作具と連動連係されるので、切換操作具が第1操作状態及び第2操作状態の夫々に対応する各位置に操作されたときにおいて、切換操作具と中継操作部材との相対的な位置関係は常に一定でなくてもよく、切換操作具と移動操作体とを連動操作するための連係構造に高い組み付け精度は必要とされない。
【0011】
ところで、移動操作体が正常に移動操作可能な状態であれば、接当規制部によって切換操作具の切り換え操作が規制されることはなく、引張りバネに張力が発生している状態で中継操作部材が移動操作されるが、移動操作体が、何らかの理由によって、第1操作位置及び第2操作位置のうちのいずれかの操作位置において移動操作が不能な状態に陥っているような場合には、切換操作具の切り換え操作が規制されることになる。
【0012】
すなわち、移動操作体の移動操作が不能な状態に陥っているような場合には、連動部材によって移動操作体と連動連結されている中継操作部材が移動操作できない状態となるから、人為操作により切換操作具を切り換え操作しようとしても、中継操作部材に備えられている接当規制部が切換操作具に接当して、切換操作具の切り換え操作が規制されるのである。その結果、切換操作具を操作したにもかかわらず切換操作機構の操作状態の切り換えが行われない状態になることを回避することが可能となる。
【0013】
従って、切換操作具と移動操作体とを連動操作するための連係構造に高い組み付け精度を必要とせず、しかも、切換操作具を操作したにもかかわらず切換操作機構の操作状態の切り換えが行われない状態になることを回避することが可能となる切換操作装置を提供できるに至った。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記切換操作具及び前記中継操作部材が、共通の支軸にて揺動操作自在に枠体に支持され、
前記切換操作具が、その長手方向の一端側の基端部が前記支軸にて揺動操作自在に支持され、且つ、長手方向の他端側に握り操作部を備えて構成され、
前記中継操作部材が、その長手方向の一端側の基端部が前記支軸にて揺動操作自在に支持され、
前記中継操作部材の長手方向の他端側箇所と、前記切換操作具における長手方向の中間箇所とにわたって前記引張りバネが張設されている点にある。
【0015】
第2特徴構成によれば、中継操作部材及び切換操作具が共通の支軸にて揺動操作自在に支持され、切換操作具における長手方向の中間箇所と中継操作部材の長手方向の他端側箇所とにわたって引張りバネが張設されるので、中継操作部材及び切換操作具とを夫々各別に支持部材を用いて枠体に支持するものに比べて支持構造が簡素になり、しかも、切換操作具、中継操作部材及び引張りバネの夫々を支軸の軸芯方向に沿う外形寸法が小さくすることができ、それらをコンパクトに配備することができる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記引張りバネよりも小さい付勢力にて前記移動操作体を前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方に移動付勢する位置保持用の付勢手段が備えられ、
前記切換操作具が、前記位置保持用の付勢手段の付勢力に抗して、前記引張りバネに張力が発生しながら前記中継操作部材を移動するように操作されることにより、前記移動操作体が前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方から他方へ操作されるように構成されている点にある。
【0017】
第3特徴構成によれば、位置保持用の付勢手段によって移動操作体が第1操作位置及び第2操作位置のいずれか一方に移動付勢されるが、切換操作具が、位置保持用の付勢手段の付勢力に抗して、引張りバネに張力が発生するように中継操作部材を移動させるように操作されると、位置保持用の付勢手段は引張りバネよりも小さい付勢力であるから、移動操作体が第1操作状態に対応する操作位置及び前記第2操作状態に対応する操作位置のいずれか一方から他方へ操作されることになる。そのとき、移動操作体は引張りバネによる大きい付勢力により移動付勢されるので、移動操作体は操作された位置(第1操作位置及び第2操作位置のいずれか他方)で安定した状態で位置保持できるものとなる。
【0018】
又、切換操作具が引張りバネに張力が発生する方向とは反対方向に操作されると、引張りバネの張力は発生せず、移動操作体は位置保持用の付勢手段の付勢力により移動付勢されるので、移動操作体は操作された位置(第1操作位置及び第2操作位置のいずれか一方)で安定した状態で位置保持できるものとなる。
【0019】
従って、引張りバネ及び位置保持用の付勢手段の付勢力によって、移動操作体を第1操作位置及び第2操作位置の夫々において安定した状態で位置保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】トラクタ全体の側面図である。
【図2】伝動状態を示す構成図である。
【図3】主変速装置配設部での縦断側面図である。
【図4】主変速装置配設部での横断平面図である。
【図5】制御ブロック図である。
【図6】位置決め機構の側面図である。
【図7】切換操作機構の一部切欠平面図である。
【図8】切換操作機構の分解斜視図である。
【図9】連動入切レバー配設部の平面図である。
【図10】連動入切レバー配設部の縦断側面図である。
【図11】連動入切レバー配設部の分解斜視図である。
【図12】切換操作機構の切り換え作動状態を示す説明図である。
【図13】切換操作機構の切り換え作動状態を示す説明図である。
【図14】切換操作機構の切り換え作動状態を示す説明図である。
【図15】切換操作機構の切り換え作動状態を示す説明図である。
【図16】連動入切レバーの切り換え状態を示す説明図である。
【図17】連動入切レバーの切り換え状態を示す説明図である。
【図18】別実施形態の切換操作機構の要部側面図である。
【図19】別実施形態の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明を作業車の一例としてのトラクタに適用した場合を例に説明する。図1は、トラクタの全体側面図である。この図に示すように、トラクタは、エンジン1の後部に連結されたクラッチハウジング4Aを備えて成る車体フレーム4と、この車体フレーム4の前部に操向操作及び駆動自在に設けた左右一対の前車輪3,3と、車体フレーム4の後部に駆動自在に設けた左右一対の後車輪5,5と、車体フレーム4の後端部の上方に位置する運転座席7及び運転座席7の前方に位置するステアリングホィール6を有した運転部8と、車体フレーム4の後端部に上下駆動揺動自在に設けた左右一対のリフトアーム18,18と、前記車体フレーム4の後端部から車体後方向きに突出した動力取り出し軸15とを備えている。
【0022】
車体フレーム4は、エンジン1及びクラッチハウジング4Aを備える他、エンジン1の下部に連結された前部フレーム2と、クラッチハウジング4Aの後部に連結された伝動ケース4Bと、この伝動ケース4Bの後端側に連結された後部ミッションケース4Cとを備えて構成してある。前部フレーム2は、左右一対の前車輪3,3を支持している。後部ミッションケース4Cは、左右一対の後車輪5,5を支持するとともに左右一対のリフトアーム18,18及び動力取り出し軸15を備えている。
【0023】
このトラクタは、車体後部にロータリ耕耘装置(図示せず)を左右一対のリフトアーム18,18によって昇降操作するように連結するとともに、エンジン1の駆動力を動力取り出し軸15からロータリ耕耘装置に伝達するように構成して、乗用型耕耘機を構成するなど、車体後部に各種の作業装置を昇降操作及び駆動自在に連結して各種の乗用型作業機を構成する。
【0024】
図2は、トラクタが備える走行用伝動装置の伝動状態を示す構成図である。この図に示すように、走行用伝動装置は、クラッチハウジング4Aの内部に設けた主クラッチ9、伝動ケース4Bの内部に設けた静油圧式無段変速装置(以下、無段変速装置と略称する)10、後部ミッションケース4Cの内部に設けた副変速装置11及び後輪差動機構13、副変速装置11の前輪出力ギヤ11aにクラッチギヤ11b及び前輪伝動軸11cを介して連動された前輪差動機構12を備えている。
【0025】
主クラッチ9は、エンジン1からの駆動力を無段変速装置10の入力軸16aに伝達する。前記無段変速装置10は、入力軸16aによって入力した駆動力を変速し、変速後の駆動力を出力軸17aから前記副変速装置11に出力する。副変速装置11は、シフトギヤ11dがシフト操作されることによって、無段変速装置10からの駆動力を、高速、中速、低速の3段階に変速して後輪差動機構13及び前輪差動機構12に出力する。
【0026】
図3は、走行用伝動装置の主クラッチ9及び無段変速装置10が位置する部位での縦断側面図である。図4は、無段変速装置10の横断平面図である。これらの図に示すように、無段変速装置10は、入力軸16aがポンプ軸となっているアキシャルプランジャ形で、かつ可変容量形の油圧ポンプ16と、この油圧ポンプ16からの圧油によって駆動されるアキシャルプランジャ形の油圧モータ17とを備えて構成してある。
すなわち、無段変速装置10は、油圧ポンプ16の斜板16bの角度が変更操作されることにより、エンジン1から入力軸16aに伝達される駆動力を前進駆動力と後進駆動力とに変換して、かつ、前進駆動力も後進駆動力も無段階に変速して油圧モータ17のモータ軸で成る出力軸17aから出力し、副変速装置11及び後輪差動機構13を介して左右の後車輪5,5を駆動し、副変速装置11及び前輪差動機構12を介して左右の前車輪3,3を駆動する。
【0027】
尚、図2に示すように、トラクタが備える作業用伝動装置は、無段変速装置10の入力軸16a(油圧ポンプ16のポンプ軸)の駆動力を作業クラッチ14を介して動力取り出し軸15に伝達する。
【0028】
図5は、トラクタが備える走行操作装置の制御ブロック図である。この図に示すように、無段変速装置10を変速操作する油圧変速シリンダ26(以下、変速シリンダ26と略称する)、変速シリンダ26を制御するサーボ制御機構20、サーボ制御機構20の作動を制御する制御手段21、運転部8に設けた変速操作具の一例としての変速ペダル24の操作位置を検出するポテンショメータからなるペダルセンサ27、油圧ポンプ16の斜板16bの角度に基づいて無段変速装置10の変速状態を検出する斜板センサ34等を備えている。
【0029】
又、変速ペダル24とアクセル装置40の操作部40aとを連動させる連動入り状態と連動を解除する連動切り状態とに切り換え自在な切換操作機構50と、運転部8におけるステアリングホイール6の下方箇所に位置する状態で運転操作パネルの後部に設けられて、切換操作機構50を入り状態と切り状態に切換え操作する切換操作具の一例としての連動入切レバー43とを備えている。前記切換操作機構50については後で詳述する。
【0030】
図4に示すように、変速シリンダ26は、伝動ケース4Bの内部に設置されており、油圧ポンプ16の斜板16bを連動ピン26aを介して回動操作して斜板16bのシリンダブロック16cに対する角度を変更することにより、無段変速装置10を変速操作する。図5に示すように、サーボ制御機構20は、前進比例制御弁31及び後進比例制御弁32を備え、この前進比例制御弁31及び後進比例制御弁32が制御手段21からの指令によって切換え操作され、無段変速装置10が変速ペダル24の操作位置に対応した変速状態になるよう変速シリンダ26を操作する。図4に示すように、このサーボ制御機構20は、伝動ケース4Bに装着されている。
【0031】
制御手段21は、マイクロコンピュータを利用して構成されており、ペダルセンサ27による検出情報と、斜板16bの角度に基づいて無段変速装置10の変速状態を検出する斜板センサ34による検出情報とを基に、無段変速装置10が変速ペダル24の操作位置に対応した変速状態になるようサーボ制御機構20を介して変速シリンダ26の作動を制御する。
【0032】
図6に示すように、変速ペダル24を前側操作部24aによって中立状態から車体前方側に踏み込み操作すると、制御手段21が変速シリンダ26を前進側に操作して無段変速装置10が前進側に変速操作され、トラクタが前進走行する。又、変速ペダル24を後側操作部24bによって中立状態から車体後方側に踏み込み操作すると、制御手段21が変速シリンダ26を後進側に操作して無段変速装置10が後進側に変速操作され、トラクタが後進走行する。
前進走行の場合も後進走行の場合も、変速ペダル24の踏み込みストロークを多くするほど、制御手段21が変速シリンダ26を高速側に操作して無段変速装置10がより高速側に変速操作され、トラクタの走行速度が上昇する。
【0033】
変速ペダル24を中立状態に位置決めし、変速ペダル24が前進側と後進側のいずれに踏み込み操作された場合も変速ペダル24を中立状態に復帰操作するための位置決め機構70が設けられており、以下、この位置決め機構70の構成について説明する。
【0034】
図6〜図8に示すように、位置決め機構70は、運転部8の床板8aの下面側に固定されたベース体71が備えるバネ受け72に一端側が支持されたカム用のコイルバネ73、ベース体71に備えられている支軸71aにボス部75aで回転自在に支持された回転部材75、この回転部材75のアーム部75bの端部を変速ペダル24の後端部に位置する連結片24cに連結している連動ロッド76、ベース体71が有する支軸71bにボス部78aで回動自在に支持された変速連動操作部材78、及び、変速連動操作部材78と回転部材75との間に設けたカム機構79を備えている。
つまり、変速連動操作部材78は、支軸71bの軸芯X1周りで回動自在にベース体71に支持される構成となっている。
【0035】
変速連動操作部材78は、ボス部78aに固定された基端部78Aと、ベース体71の縦面部71Aを乗り越えるように平面視で略Uの字状に延設される延設部78Bとを備えており、前記コイルバネ73の他端側は基側部78Aに固定した係止ピン80に支持されている。
【0036】
カム機構79は、回転部材75のカム板部75cに設けたV字形の傾斜カム面79aと、変速連動操作部材78の基端部にローラを回転自在に支持させて設けた回転式のカムフォロワ79bとによって構成してある。カム用のコイルバネ73は変速連動操作部材78を揺動付勢することにより、カムフォロワ79bを傾斜カム面79aに当て付け付勢する。
【0037】
つまり、変速ペダル24が中立状態から前進側と後進側のいずれに踏み込み操作されても、回転部材75が変速ペダル24の揺動に連動して支軸71の軸芯X1周りで回転する。すると、カム機構79の作用により、変速連動操作部材78が支軸71bの軸芯X1周りで図6の左方向に回動する。変速ペダル24の踏み込み操作を解除すると、カム用のコイルバネ73の付勢力によりカムフォロワ79bが傾斜カム面79aに当て付け付勢されるから、回転部材75が初期位置に復帰するよう回転操作することになる。これにより、位置決め機構70は、カム用のコイルバネ73の弾性復元力によって変速ペダル24を中立状態に位置決めし、変速ペダル24が前進側と後進側のいずれに踏み込み操作された場合も変速ペダル24を中立状態に復帰操作する。
【0038】
そして、このトラクタでは、車体を走行させるに当たり、たとえば路上走行する場合、運転部8に備えられた連動入切レバー43を入り位置に切り換えておくと、切換操作機構50が入り状態になり、変速ペダル24とアクセル装置40とが連動することにより、変速ペダル24を踏み込み操作した場合、これに連動してアクセル装置40が増速側に作動し、エンジン1の回転数が上昇する。つまり、変速ペダル24の踏み込みストロークを多くし、無段変速装置10の高速側への変化が多くなるほど、アクセル装置40がより高速側に作動してエンジン回転数が上昇する。変速ペダル24を低速側に操作した場合、これに連動してアクセル装置40が低速側に作動する。これにより、低速走行すれば、エンジン1の回転数が下降し、燃料消費が減少する。
【0039】
これに対し、作業走行する場合には、連動入切レバー43を切り位置に切換えておくと、切換操作機構50が切り状態になり、変速ペダル24とアクセル装置40との連動が切れて、変速ペダル24を踏み込み操作しても低速側に復帰操作しても、アクセル装置40がアクセルレバー25によって設定された速度状態を維持する。
【0040】
アクセル装置40の操作用連係機構について説明を加えると、図5に示すように、アクセルレバー25が軸芯P周りで揺動自在に且つ摩擦保持機構28により任意の操作位置で位置保持自在に支持され、このアクセルレバー25に操作ワイヤ29を介して連係されたレバー側操作部材35とアクセル装置40の操作具40aとが長孔35aとピン40bとの係合により連動する構成となっている。又、操作ワイヤ53を介して変速ペダル24と連動して操作されるペダル側操作部材41とアクセル装置40の操作具40aとが長孔41aとピン40cとの係合により連動する構成となっている。
【0041】
アクセルレバー25を最低速指令位置から最高速指令位置まで操作すると、それに連れてアクセル装置40の操作具40aは、レバー側操作部材35との連係により最低速位置から最高速位置まで変化するが、そのとき、ペダル側操作部材41が最低速指令位置にあれば、長孔41aによる融通によって、アクセル装置40の操作具40aの移動を許容することになる。
【0042】
そして、アクセルレバー25を操作して任意の操作位置に操作して位置保持している場合、切換操作機構50が入り状態にあって変速ペダル24が踏み込み操作されると、アクセルレバー25により設定されるアクセル操作位置を下限値として、変速ペダル24の操作に連動してペダル側操作部材41が高速側に操作され、アクセル装置40の操作具40aを下限値よりも高速側に移動操作させることが可能な構成となっている。
【0043】
次に、切換操作機構50について説明する。
この切換操作機構50は、位置決め機構70と、変速連動操作部材78と、支軸71bにボス部51aにて揺動自在に支持されたアクセル連動操作部材51と、アクセル連動操作部材51と変速連動操作部材78とを連動連係する連係状態と連動連係を解除する連係解除状態とに切り換え自在な移動操作体52とを備える。
【0044】
アクセル連動操作部材51は、支軸71bの軸芯X1周りで回動自在にベース体71に支持される構成となっており、この実施形態では、変速連動操作部材78が回動自在にベース体71に支持されるときの第1軸芯と、アクセル連動操作部材51が回動自在にベース体71に支持されるときの第2軸芯とが、同一の軸芯X1(支軸71bの軸芯)上に位置する形態で、変速連動操作部材78とアクセル連動操作部材51とがベース体71に支持される構成となっている。
【0045】
図6〜図8に示すように、アクセル連動操作部材51は、支軸71bよりも下方側に位置する一方側の端部51bに、アクセル装置40の操作部40aに連動させている操作ワイヤ53が連結され、アクセル連動操作部材51の支軸71bよりも上方側に位置する他方側の端部51cと、ベース体71に設けられたバネ受け54との間にわたり、引張りバネ55を張設してある。
【0046】
図8に示すように、移動操作体52は、軸芯X1(第1軸芯及び第2軸芯)と平行な第3軸芯X2周りで、回動自在にアクセル連動操作部材51に支持されている。つまり、移動操作体52に備えられた支軸56が、アクセル連動操作部材51に備えられたボス部51aにて回動自在に支持されている。
この移動操作体52は、支軸56と、支軸56の配設箇所から周方向に間隔をあけて3つの方向に径方向外方に放射状に延びる3つのアーム部52bを備えた板状回動部52Aと、板状回動部52Aの1つのアーム部52bの先端側箇所に回転軸芯方向に沿って突出する状態で設けられた係合作用部としての係合ピン52Bとを備えている。
【0047】
板状回動部52Aの他の1つのアーム部52bの先端側箇所には、一端部が連動入切レバー43に連動連係されている連動部材としての操作ワイヤ59の他端部が連結され、板状回動部52Aの残りの1つのアーム部52bの先端側箇所とアクセル連動操作部材51に固定のバネ受け60とにわたって、位置保持用の付勢手段としての位置保持用の引張りバネ61が張設されている。
【0048】
図12及び図13は、移動操作体52が連係解除状態(切り状態)に対応する非作用位置にあるときの側面図であり、図14及び図15は、移動操作体52が連係状態(入り状態)に対応する連動作用位置にあるときの側面図である。又、図16は、連係解除状態(切り状態)から連係状態(入り状態)への切り換わりを示す図である。これらの図12〜図16を参照しながら、移動操作体52の動作について以下に説明する。
【0049】
移動操作体52は、位置保持用の引張りバネ61の付勢力により非作用位置(図12,図13,図16(a)参照)に向けて回動付勢され、後述するように連動入切レバー43が切り位置OFFに操作されているときは、移動操作体52は非作用位置にて位置保持されることになる。
【0050】
図12に示すように、移動操作体52が非作用位置にあると、変速ペダル24が中立状態から前進側と後進側のいずれかに踏み込み操作されて、変速連動操作部材78が支軸71bの軸芯X1周りで回動しても、係合ピン52Bは、変速連動操作部材78に係合しないので、アクセル連動操作部材51が連動して操作されることはない(図13参照)。
【0051】
図14に示すように、連動入切レバー43が入り位置ONに操作されると、図16(b),(c)に示すように、移動操作体52が操作ワイヤ59の引き操作により図16の時計周り方向に回動操作されて、係合ピン52Bがアクセル連動操作部材51の接当部63に接当係合してそれ以上の回動操作が規制される状態となる。この状態において、変速ペダル24の踏み込み操作に伴って変速連動操作部材78が回動すると、変速連動操作部材78の延設部78Bに形成されている係合凹部64の内縁が係合ピン52Bに接当して、係合ピン52Bを連動して回動させるように構成されている。つまり、このときの移動操作体52の位置が連動作用位置に対応する。
【0052】
そして、変速連動操作部材78の係合凹部64の内縁が係合ピン52Bに接当して、その係合ピン52Bを連動して回動させると、その係合ピン52Bが接当部63に接当係合しているので、アクセル連動操作部材51が引張りバネ55の付勢力に抗して連動して支軸71bの軸芯X1周りで回動して、操作ワイヤ53が引き操作され、アクセル装置40の操作具40aを高速側に移動操作することになる。
【0053】
又、係合ピン52Bがアクセル連動操作部材51の接当部63に接当してそれ以上の回動操作が規制される状態において、操作ワイヤ59と板状回動部52Aとの接続箇所Q(図7、図8参照)が支軸71bの軸芯X1上に位置するように構成されている(図14,図16(b),(c)参照)。尚、変速連動操作部材78の回動に伴う連動操作が行われても、そのとき、アクセル連動操作部材51と移動操作体52は支軸71bの軸芯X1周りで一体的に回動することになり、操作ワイヤ59と板状回動部52Aとの接続箇所Qは位置が変化しないので、操作ワイヤ59の位置が変化することがない。
【0054】
図9及び図10に示すように、連動入切レバー43の近傍には、移動操作体52と操作ワイヤ59を介して連動連結され且つ連動入切レバー43とレバー側の引張りバネ65を介して連動連係される形態で長尺状の中継操作部材66が備えられ、連動入切レバー43を切り位置OFFから入り位置ONに操作すると、レバー側の引張りバネ65に張力が発生しながら中継操作部材66が移動して、移動操作体52が非作用位置から連動作用位置へ操作されるように構成されている。
【0055】
そして、中継操作部材66には、移動操作体52が非作用位置から連動作用位置への移動操作が阻止されている状態において、連動入切レバー43に接当して連動入切レバー43の入り位置ONへの切り換え操作を規制する接当規制部67が備えられている。
【0056】
説明を加えると、図9及び図10に示すように、ステアリングホイール6を支持するハンドルポスト68に固定された枠体の一例としてのステー69に、上下向きのレバー支軸44を備えてあり、このレバー支軸44に、その軸芯周りで左右に揺動操作自在に連動入切レバー43が支持されている。この連動入切レバー43は、上下方向に少し移動操作可能に融通を備える状態でレバー支軸44に支持されている。
又、レバー支軸44には、連動入切レバー43と軸芯方向に沿って並ぶ状態で、その軸芯周りで揺動自在に中継操作部材66の長手方向の一端側箇所が支持されている。
連動入切レバー43と中継操作部材66とは、圧縮バネ45によりレバー支軸44の軸芯方向に押圧付勢され、ガタツキが生じないように保持されている。
【0057】
そして、中継操作部材66の長手方向の他端側箇所と、連動入切レバー43における長手方向の中間箇所とにわたってレバー側の引張りバネ65が張設されている。このレバー側の引張りバネ65は、移動操作体52を非作用位置に回動付勢する位置保持用の引張りバネ61よりも大きい付勢力を備えて構成されている。
【0058】
連動入切レバー43は、握り操作部43Aを手で持って操作することで、ステー69から一体的に延設されたレバーガイド46のガイド溝46a(図9及び図11参照)に沿わせて、切り位置OFFと入り位置ONとにわたって、レバー支軸44の軸芯周りで左右方向に揺動操作できるよう構成されている。
【0059】
連動入切レバー43を切り位置OFFから入り位置ONに操作すると、位置保持用の引張りバネ61の付勢力に抗してレバー側の引張りバネ65に張力が発生しながら中継操作部材66が移動して、操作ワイヤ59を介して移動操作体52が非作用位置から連動作用位置へ操作される。
【0060】
連動入切レバー43は、握り操作部43Aと反対側の基端部には、平面視で略くの字形に突出する状態で接当作用部43Bが形成されている。又、図9及び図10に示すように、中継操作部材66には、連動入切レバー43が位置する上部側箇所に、側面視で連動入切レバー43と重複する状態で接当規制部67が一体的に固定する状態で備えられている。
【0061】
連動入切レバー43が切り位置OFFにあれば、図9に示すように、レバー側の引張りバネ65の付勢力によってガイド溝46aの端部に接当するように付勢され、しかも、接当規制部67の一端側(図9の左側)が連動入切レバー43に接当することにより、中継操作部材66がレバー側の引張りバネ65の付勢力によってそれ以上、連動入切レバー43に近づくように揺動することが阻止される。
【0062】
連動入切レバー43が切り位置OFFから入り位置ONに向けて揺動操作されると、レバー側の引張りバネ65の強い付勢力によって連動入切レバー43と中継操作部材66とがほぼ一体的に揺動操作される。そうすると、移動操作体52が操作ワイヤ59の引き操作により図16の時計周り方向に回動操作される。
そして、入り位置ONに近い所定位置まで操作されると、図16(b)に示すように、移動操作体52の係合ピン52Bがアクセル連動操作部材51の接当部63に接当してそれ以上の回動操作が規制される状態となる。
【0063】
図16(b)に示す位置から、さらに連動入切レバー43が操作されて入り位置ONまで操作されると、図16(c)に示すように、レバー側の引張りバネ65が少し伸びた状態となって、係合ピン52Bが接当部63に押し付けられた状態となり、移動操作体52とアクセル連動操作部材51とがガタツキのない安定した状態で一体的に回動しながら移動することになる。
つまり、前記レバー側の引張りバネ65が、移動操作体52を接当部63に押圧付勢する付勢手段に対応する。
【0064】
移動操作体52が、何ら規制されることなく、非作用位置と連動作用位置との間での移動操作することができる場合には、上述したように、連動入切レバー43と中継操作部材66とがほぼ一体的に揺動操作される。
しかしながら、例えば、部材の損傷や塵埃の侵入により移動が阻害される等、何らかの理由により移動操作体52が非作用位置から連動作用位置への移動操作、つまり、操作ワイヤ59の引張り操作が阻止されている状態であれば、操作者が、連動入切レバー43の握り操作部43Bを手で持って、切り位置OFFから入り位置ONに向けて揺動操作しようとしても、その操作途中で移動操作が行なえないものとなる。
【0065】
すなわち、何らかの理由により移動操作体52の移動が阻止されている状態では、図17に示すように、操作者が、連動入切レバー43を切り位置OFFから入り位置ONに向けて操作しようとしても、その操作途中で、接当作用部43Bが接当規制部67に接当して、連動入切レバー43のそれ以上の入り位置ON側への操作ができないものとなるので、操作者は異常状態であることを認識することができる。
【0066】
上記したような構成において、変速ペダル24とアクセル装置40とを連動させる場合には、連動入切レバー43をガイド溝46aに沿わせて揺動操作し、ガイド溝46aの一端側に位置する入り位置ONに切り換える。この切り換え操作により、移動操作体52が非作用位置から連動作用位置へ操作される(図14参照)。
この状態において、変速ペダル24が操作されると、図16に示すように、変速ペダル24の操作力が連動ロッド76、回転部材75、変速連動操作部材78、移動操作体52、アクセル連動操作部材51、操作ワイヤ53を介してアクセル装置40の操作部40aに伝達される。
【0067】
この場合、変速ペダル24が前進側に踏み込み操作された場合と後進側に踏み込み操作された場合とでは、変速ペダル24の揺動方向が異なり、回転部材75の回転方向が異なる。しかし、変速ペダル24が中立状態から前進側に踏み込み操作された場合も後進側に踏み込み操作された場合も、傾斜カム面79aの形状による作用により、変速連動操作部材78が初期位置から同じ方向に回動して、アクセル連動操作部材51を連動回動させて操作ワイヤ53を引き操作することになる。
【0068】
従って、変速ペダル24が前進側と後進側のいずれに踏み込み操作されても、アクセル装置40の操作部40aが変速ペダル24の踏み込みに連動して高速側に揺動操作されるように、変速ペダル24とアクセル装置40とが連動する。
また、この場合、連動入切レバー43をレバーガイド46の切り欠き部46bに係入操作することにより、連動入切レバー43がレバー側の引張りバネ65によって切り欠き部46aの内部に維持されて入り位置ONに保持され、切換操作機構50を入り状態に保持できる。
【0069】
変速ペダル24とアクセル装置40との連動を断つ場合、連動入切レバー43をガイド溝43aの他端側に位置する切り位置OFFに切り換える(図12参照)。そうすると、図13に示すように、移動操作体52が非作用位置へ操作され、変速ペダル24が踏み込み操作されても、変速ペダル24の操作力は連動ロッド76、回転部材75及び変速連動操作部材78へは伝達されるが、移動操作体52は変速連動操作部材78に係合しないので、アクセル連動操作部材51は連動操作されず、操作力がアクセル装置40の操作部40aに伝達されない。
【0070】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、移動操作体52と連動入切レバー43とが操作ワイヤ59を介して連動連係され、移動操作体52を第1操作位置に移動付勢する位置保持用の引張りバネ61が備えられ、連動入切レバー43が、位置保持用の引張りバネ61の付勢力に抗して、レバー側の引張りバネ65に張力が発生しながら中継操作部材66を移動するように操作されることにより、移動操作体52が第2操作位置へ操作されるように構成されるものを示したが、このような構成に代えて次のように構成するものでもよい。
【0071】
位置保持用の引張りバネ61を備えずに、移動操作体52が第1操作位置及び第2操作位置のいずれかに機械的に戻し操作されるリセット機構(図示せず)が備えられ、その戻し操作された位置から反対の位置に向けてレバー側の引張りバネ65に張力が発生しながら中継操作部材66を移動するように操作するものでもよい。
【0072】
又、移動操作体52を自重によって第1操作位置に移動付勢するように構成するものでもよい。
【0073】
(2)上記実施形態では、連動入切レバー43と中継操作部材66とが同一の軸芯周りで揺動操作自在に枠体に支持される構成としたが、連動入切レバー43と中継操作部材66とを位置が異なり且つ平行な2本の軸芯の夫々の周りで各別に揺動自在に支持される構成としてもよい。
【0074】
(3)上記実施形態では、切換操作機構として、アクセル連動操作部材51と変速連動操作部材78とが同一軸芯周りで回動自在に支持される構成としたが、次のように構成するものでもよい。
【0075】
すなわち、図18に示すように、アクセル連動操作部材51と変速連動操作部材78とが互いに異なる平行な軸芯X3,X4周りで揺動自在に図示しない支持体に支持され、アクセル連動操作部材51には係合用凹部90が形成され、変速連動操作部材78には係合用凹部90に入り込み係合可能な係合ピン91が設けられている。
そして、アクセル連動操作部材51が図18(a)に示す位置(連動解除位置)にあると、変速ペダル24の踏み込み操作に伴って変速連動操作部材78が回動操作されても、係合ピン91が係合用凹部90に係合しないように構成されている。
又、アクセル連動操作部材51が図18(b)に示す位置(連動位置)にあると、変速ペダル24の踏み込み操作に伴って変速連動操作部材78が回動操作されると、図18(c)に示すように、係合ピン91が係合用凹部90に係合してアクセル連動操作部材51が連動操作されるように構成されている。
【0076】
アクセル連動操作部材51は、引張りバネ100により図18の時計周りに回動付勢されるが、移動操作体52に形成された接当操作部92がアクセル連動操作部材51に設けられた被係合部93に接当して規制されることにより連動解除位置で保持されるようになっている。
【0077】
そして、連動入切レバー43と移動操作体52とを連動連係するための構成は、図9に示すような構成と同じであるが、この実施形態では、図示はしないが、連動入切レバー43の切り位置OFFと入り位置ONとの関係が上記実施形態とは逆になるように設定される。つまり、図9における図面上側の操作位置が切り位置OFFとなり、図9における図面下側の操作位置が入り位置ONとなる。
【0078】
移動操作体52は、変速連動操作部材78の回動軸芯と同一軸芯X4周りで回動自在に支持され、且つ、連動入切レバー43に操作ワイヤ53を介して連動連係されており、連動入切レバー43が切り位置OFFに操作されると図18(a)に示す位置に切り換わり、連動入切レバー43が入り位置ONに操作されると図18(b)に示す位置に切り換わるよう構成されている。移動操作体52が図18(b)に示す位置に切り換わると、接当操作部92が被係合部93から離間してアクセル連動操作部材51が図17の時計周りに回動し、且つ、係合ピン91にて受止められて連動位置に切り換わるよう構成されている。
【0079】
(4)上記実施形態では、アクセルレバー25とアクセル装置40の操作部40aとを操作ワイヤ29で連係する構成としたが、以下に説明するように、アクセル装置40をアクチュエータにより操作する構成としてもよい。
すなわち、図19に示すように、アクセル装置40を操作する電動アクチュエータ90と、アクセルレバー25の操作位置を検出するポテンショメータからなるアクセルレバーセンサ91と、連動入切レバー43の操作位置を検出するレバー位置検出スイッチ92とを備えて、制御手段21が、レバー位置検出スイッチ92による検出情報を基に、切換操作機構50が入り状態と切り状態とのいずれにあるかを判断し、切換操作機構50が切り状態にあると判断した場合、アクセルレバーセンサ91による検出情報と、アクセル装置40の操作状態を検出するアクセルセンサ93による検出情報とを基に、アクセル装置40がアクセルレバー25の操作位置に対応した回転速度をエンジン1に現出させる操作状態になるようアクセルアクチュエータ90を操作する構成である。
【0080】
又、この場合、切換操作機構50が入り状態にあると判断した場合、アクセルレバーセンサ91及びアクセルセンサ93による検出情報に基づくアクセルアクチュエータ90の操作を停止し、かつ、前記変速ペダル24によるアクセル装置40の操作が可能となるよう、アクセルアクチュエータ90を外力による操作が可能な状態に切り換える構成にするとよい。
【0081】
(5)上記実施形態では、切換操作機構として、変速連動操作部材78とアクセル連動操作部材51とを連動連係する連係状態と連動連係を解除する連動解除状態とに切り換え自在な切換操作機構50を示したが、切換操作機構としてはこのような構成に限らず、例えば、2輪駆動状態と4輪駆動状態とを切り換えるための切換機構や、旋回走行時に前輪を後輪よりも高速で駆動する前輪増速旋回状態と、前輪と後輪とを同速で駆動する通常旋回状態とに切り換えるための切換機構等でもよい。又、このような走行用伝動機構に用いられるものに限らず、作業装置の駆動状態を切り換えるための切換機構等の等、種々の切換操作機構を用いることができる。
【0082】
(6)上記実施形態では、接当規制部67として、移動操作体52の移動操作が阻止されている状態において、連動入切レバー43に接当して切り換え操作を規制する機能に加えて、連動入切レバー43が切り位置OFFにあるときに、中継操作部材66がレバー側の引張りバネ65の付勢力によって、連動入切レバー43に近づくように揺動することを阻止する機能を合わせ持つ構成を例示したが、このような構成に代えて、連動入切レバー43が切り位置OFFにあるときに、中継操作部材66がレバー側の引張りバネ65の付勢力によって、連動入切レバー43に近づくように揺動することを阻止するための揺動阻止部材(図示せず)を接当規制部67とは別体で備える構成としてもよい。
【0083】
(7)上記実施形態では、切換操作機構として、アクセル連動操作部材51と変速連動操作部材78とが同一軸芯周りで回動自在に支持される構成とし、変速連動操作部材78を操作するための変速操作具として足踏み操作式の変速ペダル24を用いる構成としたが、手で操作する変速レバー(図示せず)を用いる構成としてもよい。
【0084】
(8)上記実施形態では、作業車としてトラクタを例示したが、トラクタに限らず、例えば芝刈り機等の他の作業車にも本発明は適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、例えばトラクタあるいは芝刈り機等の作業車において使用される切換操作装置に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
43 切換操作具
43a 握り操作部
44 支軸
50 切換操作機構
52 移動操作体
59 連動部材
61 位置保持用の付勢手段
65 引張りバネ
66 中継操作部材
67 接当規制部
69 枠体
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動操作体の移動操作に伴って第1操作状態と第2操作状態とに切り換え自在な切換操作機構と、前記移動操作体と連動連係される手動操作式の切換操作具とが備えられている切換操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記切換操作機構の一例として、例えば、特許文献1に記載されるように、走行用の無段変速装置を変速操作する変速操作具とエンジンのアクセル装置とを、連動連係させる操作状態(第1操作状態の一例)と連動連係を解除する操作状態(第2操作状態の一例)とに切り換え自在な作業車における走行状態の切換機構において、次のように構成されるものがあった。
【0003】
すなわち、前記第1操作状態及び前記第2操作状態の夫々に対応する位置に移動操作自在な移動操作体として、支軸にスライド自在に支持され且つピン孔に対して抜き差し自在に係合する連動ピンを抜き外れ側に移動付勢される状態で備えて、この連動ピンが切換操作具に相当する連動入切レバーに操作ワイヤにて連動連結され、連動入切レバーを引き操作して、ピン孔から抜き外された連係解除を解除する状態から連動ピンをピン孔に入りこみ係合させることで連動連係させる状態に切り換えるように構成されたものがあった。
要するに、上記従来構成では、切換操作具と移動操作体とが一体的に移動操作されるように、移動操作体と切換操作具とが操作ワイヤにて連動連結される構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−331478号公報(段落〔0032〕、〔0034〕、図9,11,12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成では、移動操作体と切換操作具とが操作ワイヤにて連動連結されているから、切換操作具の操作に伴い移動操作体を適正な位置に移動操作させるために、前記第1操作状態と前記第2操作状態の夫々に対応する切換操作具及び移動操作体夫々の移動操作位置の位置関係や移動操作される操作ストローク量等を精度よく調節する必要があり、切換操作具と移動操作体とを連動操作するための連係機構に高い組み付け精度が必要となり、調節作業が煩わしいものとなる不利があった。
【0006】
そこで、このような不利を回避するために、切換操作具と移動操作体との間に操作融通を確保するために、切換操作具と移動操作体との間に引張りバネを介装して連動連係させる構成として、連動操作するための連係構造に高い組み付け精度を不要とすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、このように切換操作具と移動操作体との間に引張りバネを介して連動連係させる構成とした場合、移動操作体が何らかの理由によって、第1操作位置及び第2操作位置のうちのいずれかの操作位置において移動操作が不能な状態に陥っているような場合、切換操作具は引張りバネの融通によって移動操作が許容されることになり、手動操作による切換操作具の切り換え操作は可能であるから、切換操作具を操作する操作者は、切り換え操作が良好に行われたものと勘違いして、切換操作機構の操作状態の切り換えが行われないまま作業を継続する等の不利がある。
【0008】
本発明の目的は、切換操作具と移動操作体とを連動操作するための連係構造に高い組み付け精度を必要とせず、しかも、切換操作具を操作したにもかかわらず切換操作機構の操作状態の切り換えが行われない状態になることを回避することが可能となる切換操作装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る切換操作装置は、移動操作体の移動操作に伴って第1操作状態と第2操作状態とに切り換え自在な切換操作機構と、前記移動操作体と連動連係される手動操作式の切換操作具とが備えられているものであって、その第1特徴構成は、
前記切換操作具と引張りバネを介して連動連係される中継操作部材が備えられ、
前記中継操作部材と前記移動操作体とが連動部材を介して連動連結され、
前記切換操作具を操作すると、前記引張りバネに張力が発生しながら前記中継操作部材が移動して、前記移動操作体が前記第1操作状態に対応する第1操作位置及び前記第2操作状態に対応する第2操作位置のいずれか一方から他方へ操作されるように構成され、
前記中継操作部材に、前記移動操作体が前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方から他方への移動操作が阻止されている状態において、前記切換操作具に接当して前記切換操作具の切り換え操作を規制する接当規制部が備えられている点にある。
【0010】
第1特徴構成によれば、操作者が切換操作具を操作すると、引張りバネに張力が発生しながら中継操作部材が移動して、移動操作体が第1操作状態に対応する第1操作位置及び第2操作状態に対応する第2操作位置のいずれか一方から他方へ操作されることになる。中継操作部材は引張りバネを介して切換操作具と連動連係されるので、切換操作具が第1操作状態及び第2操作状態の夫々に対応する各位置に操作されたときにおいて、切換操作具と中継操作部材との相対的な位置関係は常に一定でなくてもよく、切換操作具と移動操作体とを連動操作するための連係構造に高い組み付け精度は必要とされない。
【0011】
ところで、移動操作体が正常に移動操作可能な状態であれば、接当規制部によって切換操作具の切り換え操作が規制されることはなく、引張りバネに張力が発生している状態で中継操作部材が移動操作されるが、移動操作体が、何らかの理由によって、第1操作位置及び第2操作位置のうちのいずれかの操作位置において移動操作が不能な状態に陥っているような場合には、切換操作具の切り換え操作が規制されることになる。
【0012】
すなわち、移動操作体の移動操作が不能な状態に陥っているような場合には、連動部材によって移動操作体と連動連結されている中継操作部材が移動操作できない状態となるから、人為操作により切換操作具を切り換え操作しようとしても、中継操作部材に備えられている接当規制部が切換操作具に接当して、切換操作具の切り換え操作が規制されるのである。その結果、切換操作具を操作したにもかかわらず切換操作機構の操作状態の切り換えが行われない状態になることを回避することが可能となる。
【0013】
従って、切換操作具と移動操作体とを連動操作するための連係構造に高い組み付け精度を必要とせず、しかも、切換操作具を操作したにもかかわらず切換操作機構の操作状態の切り換えが行われない状態になることを回避することが可能となる切換操作装置を提供できるに至った。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記切換操作具及び前記中継操作部材が、共通の支軸にて揺動操作自在に枠体に支持され、
前記切換操作具が、その長手方向の一端側の基端部が前記支軸にて揺動操作自在に支持され、且つ、長手方向の他端側に握り操作部を備えて構成され、
前記中継操作部材が、その長手方向の一端側の基端部が前記支軸にて揺動操作自在に支持され、
前記中継操作部材の長手方向の他端側箇所と、前記切換操作具における長手方向の中間箇所とにわたって前記引張りバネが張設されている点にある。
【0015】
第2特徴構成によれば、中継操作部材及び切換操作具が共通の支軸にて揺動操作自在に支持され、切換操作具における長手方向の中間箇所と中継操作部材の長手方向の他端側箇所とにわたって引張りバネが張設されるので、中継操作部材及び切換操作具とを夫々各別に支持部材を用いて枠体に支持するものに比べて支持構造が簡素になり、しかも、切換操作具、中継操作部材及び引張りバネの夫々を支軸の軸芯方向に沿う外形寸法が小さくすることができ、それらをコンパクトに配備することができる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記引張りバネよりも小さい付勢力にて前記移動操作体を前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方に移動付勢する位置保持用の付勢手段が備えられ、
前記切換操作具が、前記位置保持用の付勢手段の付勢力に抗して、前記引張りバネに張力が発生しながら前記中継操作部材を移動するように操作されることにより、前記移動操作体が前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方から他方へ操作されるように構成されている点にある。
【0017】
第3特徴構成によれば、位置保持用の付勢手段によって移動操作体が第1操作位置及び第2操作位置のいずれか一方に移動付勢されるが、切換操作具が、位置保持用の付勢手段の付勢力に抗して、引張りバネに張力が発生するように中継操作部材を移動させるように操作されると、位置保持用の付勢手段は引張りバネよりも小さい付勢力であるから、移動操作体が第1操作状態に対応する操作位置及び前記第2操作状態に対応する操作位置のいずれか一方から他方へ操作されることになる。そのとき、移動操作体は引張りバネによる大きい付勢力により移動付勢されるので、移動操作体は操作された位置(第1操作位置及び第2操作位置のいずれか他方)で安定した状態で位置保持できるものとなる。
【0018】
又、切換操作具が引張りバネに張力が発生する方向とは反対方向に操作されると、引張りバネの張力は発生せず、移動操作体は位置保持用の付勢手段の付勢力により移動付勢されるので、移動操作体は操作された位置(第1操作位置及び第2操作位置のいずれか一方)で安定した状態で位置保持できるものとなる。
【0019】
従って、引張りバネ及び位置保持用の付勢手段の付勢力によって、移動操作体を第1操作位置及び第2操作位置の夫々において安定した状態で位置保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】トラクタ全体の側面図である。
【図2】伝動状態を示す構成図である。
【図3】主変速装置配設部での縦断側面図である。
【図4】主変速装置配設部での横断平面図である。
【図5】制御ブロック図である。
【図6】位置決め機構の側面図である。
【図7】切換操作機構の一部切欠平面図である。
【図8】切換操作機構の分解斜視図である。
【図9】連動入切レバー配設部の平面図である。
【図10】連動入切レバー配設部の縦断側面図である。
【図11】連動入切レバー配設部の分解斜視図である。
【図12】切換操作機構の切り換え作動状態を示す説明図である。
【図13】切換操作機構の切り換え作動状態を示す説明図である。
【図14】切換操作機構の切り換え作動状態を示す説明図である。
【図15】切換操作機構の切り換え作動状態を示す説明図である。
【図16】連動入切レバーの切り換え状態を示す説明図である。
【図17】連動入切レバーの切り換え状態を示す説明図である。
【図18】別実施形態の切換操作機構の要部側面図である。
【図19】別実施形態の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明を作業車の一例としてのトラクタに適用した場合を例に説明する。図1は、トラクタの全体側面図である。この図に示すように、トラクタは、エンジン1の後部に連結されたクラッチハウジング4Aを備えて成る車体フレーム4と、この車体フレーム4の前部に操向操作及び駆動自在に設けた左右一対の前車輪3,3と、車体フレーム4の後部に駆動自在に設けた左右一対の後車輪5,5と、車体フレーム4の後端部の上方に位置する運転座席7及び運転座席7の前方に位置するステアリングホィール6を有した運転部8と、車体フレーム4の後端部に上下駆動揺動自在に設けた左右一対のリフトアーム18,18と、前記車体フレーム4の後端部から車体後方向きに突出した動力取り出し軸15とを備えている。
【0022】
車体フレーム4は、エンジン1及びクラッチハウジング4Aを備える他、エンジン1の下部に連結された前部フレーム2と、クラッチハウジング4Aの後部に連結された伝動ケース4Bと、この伝動ケース4Bの後端側に連結された後部ミッションケース4Cとを備えて構成してある。前部フレーム2は、左右一対の前車輪3,3を支持している。後部ミッションケース4Cは、左右一対の後車輪5,5を支持するとともに左右一対のリフトアーム18,18及び動力取り出し軸15を備えている。
【0023】
このトラクタは、車体後部にロータリ耕耘装置(図示せず)を左右一対のリフトアーム18,18によって昇降操作するように連結するとともに、エンジン1の駆動力を動力取り出し軸15からロータリ耕耘装置に伝達するように構成して、乗用型耕耘機を構成するなど、車体後部に各種の作業装置を昇降操作及び駆動自在に連結して各種の乗用型作業機を構成する。
【0024】
図2は、トラクタが備える走行用伝動装置の伝動状態を示す構成図である。この図に示すように、走行用伝動装置は、クラッチハウジング4Aの内部に設けた主クラッチ9、伝動ケース4Bの内部に設けた静油圧式無段変速装置(以下、無段変速装置と略称する)10、後部ミッションケース4Cの内部に設けた副変速装置11及び後輪差動機構13、副変速装置11の前輪出力ギヤ11aにクラッチギヤ11b及び前輪伝動軸11cを介して連動された前輪差動機構12を備えている。
【0025】
主クラッチ9は、エンジン1からの駆動力を無段変速装置10の入力軸16aに伝達する。前記無段変速装置10は、入力軸16aによって入力した駆動力を変速し、変速後の駆動力を出力軸17aから前記副変速装置11に出力する。副変速装置11は、シフトギヤ11dがシフト操作されることによって、無段変速装置10からの駆動力を、高速、中速、低速の3段階に変速して後輪差動機構13及び前輪差動機構12に出力する。
【0026】
図3は、走行用伝動装置の主クラッチ9及び無段変速装置10が位置する部位での縦断側面図である。図4は、無段変速装置10の横断平面図である。これらの図に示すように、無段変速装置10は、入力軸16aがポンプ軸となっているアキシャルプランジャ形で、かつ可変容量形の油圧ポンプ16と、この油圧ポンプ16からの圧油によって駆動されるアキシャルプランジャ形の油圧モータ17とを備えて構成してある。
すなわち、無段変速装置10は、油圧ポンプ16の斜板16bの角度が変更操作されることにより、エンジン1から入力軸16aに伝達される駆動力を前進駆動力と後進駆動力とに変換して、かつ、前進駆動力も後進駆動力も無段階に変速して油圧モータ17のモータ軸で成る出力軸17aから出力し、副変速装置11及び後輪差動機構13を介して左右の後車輪5,5を駆動し、副変速装置11及び前輪差動機構12を介して左右の前車輪3,3を駆動する。
【0027】
尚、図2に示すように、トラクタが備える作業用伝動装置は、無段変速装置10の入力軸16a(油圧ポンプ16のポンプ軸)の駆動力を作業クラッチ14を介して動力取り出し軸15に伝達する。
【0028】
図5は、トラクタが備える走行操作装置の制御ブロック図である。この図に示すように、無段変速装置10を変速操作する油圧変速シリンダ26(以下、変速シリンダ26と略称する)、変速シリンダ26を制御するサーボ制御機構20、サーボ制御機構20の作動を制御する制御手段21、運転部8に設けた変速操作具の一例としての変速ペダル24の操作位置を検出するポテンショメータからなるペダルセンサ27、油圧ポンプ16の斜板16bの角度に基づいて無段変速装置10の変速状態を検出する斜板センサ34等を備えている。
【0029】
又、変速ペダル24とアクセル装置40の操作部40aとを連動させる連動入り状態と連動を解除する連動切り状態とに切り換え自在な切換操作機構50と、運転部8におけるステアリングホイール6の下方箇所に位置する状態で運転操作パネルの後部に設けられて、切換操作機構50を入り状態と切り状態に切換え操作する切換操作具の一例としての連動入切レバー43とを備えている。前記切換操作機構50については後で詳述する。
【0030】
図4に示すように、変速シリンダ26は、伝動ケース4Bの内部に設置されており、油圧ポンプ16の斜板16bを連動ピン26aを介して回動操作して斜板16bのシリンダブロック16cに対する角度を変更することにより、無段変速装置10を変速操作する。図5に示すように、サーボ制御機構20は、前進比例制御弁31及び後進比例制御弁32を備え、この前進比例制御弁31及び後進比例制御弁32が制御手段21からの指令によって切換え操作され、無段変速装置10が変速ペダル24の操作位置に対応した変速状態になるよう変速シリンダ26を操作する。図4に示すように、このサーボ制御機構20は、伝動ケース4Bに装着されている。
【0031】
制御手段21は、マイクロコンピュータを利用して構成されており、ペダルセンサ27による検出情報と、斜板16bの角度に基づいて無段変速装置10の変速状態を検出する斜板センサ34による検出情報とを基に、無段変速装置10が変速ペダル24の操作位置に対応した変速状態になるようサーボ制御機構20を介して変速シリンダ26の作動を制御する。
【0032】
図6に示すように、変速ペダル24を前側操作部24aによって中立状態から車体前方側に踏み込み操作すると、制御手段21が変速シリンダ26を前進側に操作して無段変速装置10が前進側に変速操作され、トラクタが前進走行する。又、変速ペダル24を後側操作部24bによって中立状態から車体後方側に踏み込み操作すると、制御手段21が変速シリンダ26を後進側に操作して無段変速装置10が後進側に変速操作され、トラクタが後進走行する。
前進走行の場合も後進走行の場合も、変速ペダル24の踏み込みストロークを多くするほど、制御手段21が変速シリンダ26を高速側に操作して無段変速装置10がより高速側に変速操作され、トラクタの走行速度が上昇する。
【0033】
変速ペダル24を中立状態に位置決めし、変速ペダル24が前進側と後進側のいずれに踏み込み操作された場合も変速ペダル24を中立状態に復帰操作するための位置決め機構70が設けられており、以下、この位置決め機構70の構成について説明する。
【0034】
図6〜図8に示すように、位置決め機構70は、運転部8の床板8aの下面側に固定されたベース体71が備えるバネ受け72に一端側が支持されたカム用のコイルバネ73、ベース体71に備えられている支軸71aにボス部75aで回転自在に支持された回転部材75、この回転部材75のアーム部75bの端部を変速ペダル24の後端部に位置する連結片24cに連結している連動ロッド76、ベース体71が有する支軸71bにボス部78aで回動自在に支持された変速連動操作部材78、及び、変速連動操作部材78と回転部材75との間に設けたカム機構79を備えている。
つまり、変速連動操作部材78は、支軸71bの軸芯X1周りで回動自在にベース体71に支持される構成となっている。
【0035】
変速連動操作部材78は、ボス部78aに固定された基端部78Aと、ベース体71の縦面部71Aを乗り越えるように平面視で略Uの字状に延設される延設部78Bとを備えており、前記コイルバネ73の他端側は基側部78Aに固定した係止ピン80に支持されている。
【0036】
カム機構79は、回転部材75のカム板部75cに設けたV字形の傾斜カム面79aと、変速連動操作部材78の基端部にローラを回転自在に支持させて設けた回転式のカムフォロワ79bとによって構成してある。カム用のコイルバネ73は変速連動操作部材78を揺動付勢することにより、カムフォロワ79bを傾斜カム面79aに当て付け付勢する。
【0037】
つまり、変速ペダル24が中立状態から前進側と後進側のいずれに踏み込み操作されても、回転部材75が変速ペダル24の揺動に連動して支軸71の軸芯X1周りで回転する。すると、カム機構79の作用により、変速連動操作部材78が支軸71bの軸芯X1周りで図6の左方向に回動する。変速ペダル24の踏み込み操作を解除すると、カム用のコイルバネ73の付勢力によりカムフォロワ79bが傾斜カム面79aに当て付け付勢されるから、回転部材75が初期位置に復帰するよう回転操作することになる。これにより、位置決め機構70は、カム用のコイルバネ73の弾性復元力によって変速ペダル24を中立状態に位置決めし、変速ペダル24が前進側と後進側のいずれに踏み込み操作された場合も変速ペダル24を中立状態に復帰操作する。
【0038】
そして、このトラクタでは、車体を走行させるに当たり、たとえば路上走行する場合、運転部8に備えられた連動入切レバー43を入り位置に切り換えておくと、切換操作機構50が入り状態になり、変速ペダル24とアクセル装置40とが連動することにより、変速ペダル24を踏み込み操作した場合、これに連動してアクセル装置40が増速側に作動し、エンジン1の回転数が上昇する。つまり、変速ペダル24の踏み込みストロークを多くし、無段変速装置10の高速側への変化が多くなるほど、アクセル装置40がより高速側に作動してエンジン回転数が上昇する。変速ペダル24を低速側に操作した場合、これに連動してアクセル装置40が低速側に作動する。これにより、低速走行すれば、エンジン1の回転数が下降し、燃料消費が減少する。
【0039】
これに対し、作業走行する場合には、連動入切レバー43を切り位置に切換えておくと、切換操作機構50が切り状態になり、変速ペダル24とアクセル装置40との連動が切れて、変速ペダル24を踏み込み操作しても低速側に復帰操作しても、アクセル装置40がアクセルレバー25によって設定された速度状態を維持する。
【0040】
アクセル装置40の操作用連係機構について説明を加えると、図5に示すように、アクセルレバー25が軸芯P周りで揺動自在に且つ摩擦保持機構28により任意の操作位置で位置保持自在に支持され、このアクセルレバー25に操作ワイヤ29を介して連係されたレバー側操作部材35とアクセル装置40の操作具40aとが長孔35aとピン40bとの係合により連動する構成となっている。又、操作ワイヤ53を介して変速ペダル24と連動して操作されるペダル側操作部材41とアクセル装置40の操作具40aとが長孔41aとピン40cとの係合により連動する構成となっている。
【0041】
アクセルレバー25を最低速指令位置から最高速指令位置まで操作すると、それに連れてアクセル装置40の操作具40aは、レバー側操作部材35との連係により最低速位置から最高速位置まで変化するが、そのとき、ペダル側操作部材41が最低速指令位置にあれば、長孔41aによる融通によって、アクセル装置40の操作具40aの移動を許容することになる。
【0042】
そして、アクセルレバー25を操作して任意の操作位置に操作して位置保持している場合、切換操作機構50が入り状態にあって変速ペダル24が踏み込み操作されると、アクセルレバー25により設定されるアクセル操作位置を下限値として、変速ペダル24の操作に連動してペダル側操作部材41が高速側に操作され、アクセル装置40の操作具40aを下限値よりも高速側に移動操作させることが可能な構成となっている。
【0043】
次に、切換操作機構50について説明する。
この切換操作機構50は、位置決め機構70と、変速連動操作部材78と、支軸71bにボス部51aにて揺動自在に支持されたアクセル連動操作部材51と、アクセル連動操作部材51と変速連動操作部材78とを連動連係する連係状態と連動連係を解除する連係解除状態とに切り換え自在な移動操作体52とを備える。
【0044】
アクセル連動操作部材51は、支軸71bの軸芯X1周りで回動自在にベース体71に支持される構成となっており、この実施形態では、変速連動操作部材78が回動自在にベース体71に支持されるときの第1軸芯と、アクセル連動操作部材51が回動自在にベース体71に支持されるときの第2軸芯とが、同一の軸芯X1(支軸71bの軸芯)上に位置する形態で、変速連動操作部材78とアクセル連動操作部材51とがベース体71に支持される構成となっている。
【0045】
図6〜図8に示すように、アクセル連動操作部材51は、支軸71bよりも下方側に位置する一方側の端部51bに、アクセル装置40の操作部40aに連動させている操作ワイヤ53が連結され、アクセル連動操作部材51の支軸71bよりも上方側に位置する他方側の端部51cと、ベース体71に設けられたバネ受け54との間にわたり、引張りバネ55を張設してある。
【0046】
図8に示すように、移動操作体52は、軸芯X1(第1軸芯及び第2軸芯)と平行な第3軸芯X2周りで、回動自在にアクセル連動操作部材51に支持されている。つまり、移動操作体52に備えられた支軸56が、アクセル連動操作部材51に備えられたボス部51aにて回動自在に支持されている。
この移動操作体52は、支軸56と、支軸56の配設箇所から周方向に間隔をあけて3つの方向に径方向外方に放射状に延びる3つのアーム部52bを備えた板状回動部52Aと、板状回動部52Aの1つのアーム部52bの先端側箇所に回転軸芯方向に沿って突出する状態で設けられた係合作用部としての係合ピン52Bとを備えている。
【0047】
板状回動部52Aの他の1つのアーム部52bの先端側箇所には、一端部が連動入切レバー43に連動連係されている連動部材としての操作ワイヤ59の他端部が連結され、板状回動部52Aの残りの1つのアーム部52bの先端側箇所とアクセル連動操作部材51に固定のバネ受け60とにわたって、位置保持用の付勢手段としての位置保持用の引張りバネ61が張設されている。
【0048】
図12及び図13は、移動操作体52が連係解除状態(切り状態)に対応する非作用位置にあるときの側面図であり、図14及び図15は、移動操作体52が連係状態(入り状態)に対応する連動作用位置にあるときの側面図である。又、図16は、連係解除状態(切り状態)から連係状態(入り状態)への切り換わりを示す図である。これらの図12〜図16を参照しながら、移動操作体52の動作について以下に説明する。
【0049】
移動操作体52は、位置保持用の引張りバネ61の付勢力により非作用位置(図12,図13,図16(a)参照)に向けて回動付勢され、後述するように連動入切レバー43が切り位置OFFに操作されているときは、移動操作体52は非作用位置にて位置保持されることになる。
【0050】
図12に示すように、移動操作体52が非作用位置にあると、変速ペダル24が中立状態から前進側と後進側のいずれかに踏み込み操作されて、変速連動操作部材78が支軸71bの軸芯X1周りで回動しても、係合ピン52Bは、変速連動操作部材78に係合しないので、アクセル連動操作部材51が連動して操作されることはない(図13参照)。
【0051】
図14に示すように、連動入切レバー43が入り位置ONに操作されると、図16(b),(c)に示すように、移動操作体52が操作ワイヤ59の引き操作により図16の時計周り方向に回動操作されて、係合ピン52Bがアクセル連動操作部材51の接当部63に接当係合してそれ以上の回動操作が規制される状態となる。この状態において、変速ペダル24の踏み込み操作に伴って変速連動操作部材78が回動すると、変速連動操作部材78の延設部78Bに形成されている係合凹部64の内縁が係合ピン52Bに接当して、係合ピン52Bを連動して回動させるように構成されている。つまり、このときの移動操作体52の位置が連動作用位置に対応する。
【0052】
そして、変速連動操作部材78の係合凹部64の内縁が係合ピン52Bに接当して、その係合ピン52Bを連動して回動させると、その係合ピン52Bが接当部63に接当係合しているので、アクセル連動操作部材51が引張りバネ55の付勢力に抗して連動して支軸71bの軸芯X1周りで回動して、操作ワイヤ53が引き操作され、アクセル装置40の操作具40aを高速側に移動操作することになる。
【0053】
又、係合ピン52Bがアクセル連動操作部材51の接当部63に接当してそれ以上の回動操作が規制される状態において、操作ワイヤ59と板状回動部52Aとの接続箇所Q(図7、図8参照)が支軸71bの軸芯X1上に位置するように構成されている(図14,図16(b),(c)参照)。尚、変速連動操作部材78の回動に伴う連動操作が行われても、そのとき、アクセル連動操作部材51と移動操作体52は支軸71bの軸芯X1周りで一体的に回動することになり、操作ワイヤ59と板状回動部52Aとの接続箇所Qは位置が変化しないので、操作ワイヤ59の位置が変化することがない。
【0054】
図9及び図10に示すように、連動入切レバー43の近傍には、移動操作体52と操作ワイヤ59を介して連動連結され且つ連動入切レバー43とレバー側の引張りバネ65を介して連動連係される形態で長尺状の中継操作部材66が備えられ、連動入切レバー43を切り位置OFFから入り位置ONに操作すると、レバー側の引張りバネ65に張力が発生しながら中継操作部材66が移動して、移動操作体52が非作用位置から連動作用位置へ操作されるように構成されている。
【0055】
そして、中継操作部材66には、移動操作体52が非作用位置から連動作用位置への移動操作が阻止されている状態において、連動入切レバー43に接当して連動入切レバー43の入り位置ONへの切り換え操作を規制する接当規制部67が備えられている。
【0056】
説明を加えると、図9及び図10に示すように、ステアリングホイール6を支持するハンドルポスト68に固定された枠体の一例としてのステー69に、上下向きのレバー支軸44を備えてあり、このレバー支軸44に、その軸芯周りで左右に揺動操作自在に連動入切レバー43が支持されている。この連動入切レバー43は、上下方向に少し移動操作可能に融通を備える状態でレバー支軸44に支持されている。
又、レバー支軸44には、連動入切レバー43と軸芯方向に沿って並ぶ状態で、その軸芯周りで揺動自在に中継操作部材66の長手方向の一端側箇所が支持されている。
連動入切レバー43と中継操作部材66とは、圧縮バネ45によりレバー支軸44の軸芯方向に押圧付勢され、ガタツキが生じないように保持されている。
【0057】
そして、中継操作部材66の長手方向の他端側箇所と、連動入切レバー43における長手方向の中間箇所とにわたってレバー側の引張りバネ65が張設されている。このレバー側の引張りバネ65は、移動操作体52を非作用位置に回動付勢する位置保持用の引張りバネ61よりも大きい付勢力を備えて構成されている。
【0058】
連動入切レバー43は、握り操作部43Aを手で持って操作することで、ステー69から一体的に延設されたレバーガイド46のガイド溝46a(図9及び図11参照)に沿わせて、切り位置OFFと入り位置ONとにわたって、レバー支軸44の軸芯周りで左右方向に揺動操作できるよう構成されている。
【0059】
連動入切レバー43を切り位置OFFから入り位置ONに操作すると、位置保持用の引張りバネ61の付勢力に抗してレバー側の引張りバネ65に張力が発生しながら中継操作部材66が移動して、操作ワイヤ59を介して移動操作体52が非作用位置から連動作用位置へ操作される。
【0060】
連動入切レバー43は、握り操作部43Aと反対側の基端部には、平面視で略くの字形に突出する状態で接当作用部43Bが形成されている。又、図9及び図10に示すように、中継操作部材66には、連動入切レバー43が位置する上部側箇所に、側面視で連動入切レバー43と重複する状態で接当規制部67が一体的に固定する状態で備えられている。
【0061】
連動入切レバー43が切り位置OFFにあれば、図9に示すように、レバー側の引張りバネ65の付勢力によってガイド溝46aの端部に接当するように付勢され、しかも、接当規制部67の一端側(図9の左側)が連動入切レバー43に接当することにより、中継操作部材66がレバー側の引張りバネ65の付勢力によってそれ以上、連動入切レバー43に近づくように揺動することが阻止される。
【0062】
連動入切レバー43が切り位置OFFから入り位置ONに向けて揺動操作されると、レバー側の引張りバネ65の強い付勢力によって連動入切レバー43と中継操作部材66とがほぼ一体的に揺動操作される。そうすると、移動操作体52が操作ワイヤ59の引き操作により図16の時計周り方向に回動操作される。
そして、入り位置ONに近い所定位置まで操作されると、図16(b)に示すように、移動操作体52の係合ピン52Bがアクセル連動操作部材51の接当部63に接当してそれ以上の回動操作が規制される状態となる。
【0063】
図16(b)に示す位置から、さらに連動入切レバー43が操作されて入り位置ONまで操作されると、図16(c)に示すように、レバー側の引張りバネ65が少し伸びた状態となって、係合ピン52Bが接当部63に押し付けられた状態となり、移動操作体52とアクセル連動操作部材51とがガタツキのない安定した状態で一体的に回動しながら移動することになる。
つまり、前記レバー側の引張りバネ65が、移動操作体52を接当部63に押圧付勢する付勢手段に対応する。
【0064】
移動操作体52が、何ら規制されることなく、非作用位置と連動作用位置との間での移動操作することができる場合には、上述したように、連動入切レバー43と中継操作部材66とがほぼ一体的に揺動操作される。
しかしながら、例えば、部材の損傷や塵埃の侵入により移動が阻害される等、何らかの理由により移動操作体52が非作用位置から連動作用位置への移動操作、つまり、操作ワイヤ59の引張り操作が阻止されている状態であれば、操作者が、連動入切レバー43の握り操作部43Bを手で持って、切り位置OFFから入り位置ONに向けて揺動操作しようとしても、その操作途中で移動操作が行なえないものとなる。
【0065】
すなわち、何らかの理由により移動操作体52の移動が阻止されている状態では、図17に示すように、操作者が、連動入切レバー43を切り位置OFFから入り位置ONに向けて操作しようとしても、その操作途中で、接当作用部43Bが接当規制部67に接当して、連動入切レバー43のそれ以上の入り位置ON側への操作ができないものとなるので、操作者は異常状態であることを認識することができる。
【0066】
上記したような構成において、変速ペダル24とアクセル装置40とを連動させる場合には、連動入切レバー43をガイド溝46aに沿わせて揺動操作し、ガイド溝46aの一端側に位置する入り位置ONに切り換える。この切り換え操作により、移動操作体52が非作用位置から連動作用位置へ操作される(図14参照)。
この状態において、変速ペダル24が操作されると、図16に示すように、変速ペダル24の操作力が連動ロッド76、回転部材75、変速連動操作部材78、移動操作体52、アクセル連動操作部材51、操作ワイヤ53を介してアクセル装置40の操作部40aに伝達される。
【0067】
この場合、変速ペダル24が前進側に踏み込み操作された場合と後進側に踏み込み操作された場合とでは、変速ペダル24の揺動方向が異なり、回転部材75の回転方向が異なる。しかし、変速ペダル24が中立状態から前進側に踏み込み操作された場合も後進側に踏み込み操作された場合も、傾斜カム面79aの形状による作用により、変速連動操作部材78が初期位置から同じ方向に回動して、アクセル連動操作部材51を連動回動させて操作ワイヤ53を引き操作することになる。
【0068】
従って、変速ペダル24が前進側と後進側のいずれに踏み込み操作されても、アクセル装置40の操作部40aが変速ペダル24の踏み込みに連動して高速側に揺動操作されるように、変速ペダル24とアクセル装置40とが連動する。
また、この場合、連動入切レバー43をレバーガイド46の切り欠き部46bに係入操作することにより、連動入切レバー43がレバー側の引張りバネ65によって切り欠き部46aの内部に維持されて入り位置ONに保持され、切換操作機構50を入り状態に保持できる。
【0069】
変速ペダル24とアクセル装置40との連動を断つ場合、連動入切レバー43をガイド溝43aの他端側に位置する切り位置OFFに切り換える(図12参照)。そうすると、図13に示すように、移動操作体52が非作用位置へ操作され、変速ペダル24が踏み込み操作されても、変速ペダル24の操作力は連動ロッド76、回転部材75及び変速連動操作部材78へは伝達されるが、移動操作体52は変速連動操作部材78に係合しないので、アクセル連動操作部材51は連動操作されず、操作力がアクセル装置40の操作部40aに伝達されない。
【0070】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、移動操作体52と連動入切レバー43とが操作ワイヤ59を介して連動連係され、移動操作体52を第1操作位置に移動付勢する位置保持用の引張りバネ61が備えられ、連動入切レバー43が、位置保持用の引張りバネ61の付勢力に抗して、レバー側の引張りバネ65に張力が発生しながら中継操作部材66を移動するように操作されることにより、移動操作体52が第2操作位置へ操作されるように構成されるものを示したが、このような構成に代えて次のように構成するものでもよい。
【0071】
位置保持用の引張りバネ61を備えずに、移動操作体52が第1操作位置及び第2操作位置のいずれかに機械的に戻し操作されるリセット機構(図示せず)が備えられ、その戻し操作された位置から反対の位置に向けてレバー側の引張りバネ65に張力が発生しながら中継操作部材66を移動するように操作するものでもよい。
【0072】
又、移動操作体52を自重によって第1操作位置に移動付勢するように構成するものでもよい。
【0073】
(2)上記実施形態では、連動入切レバー43と中継操作部材66とが同一の軸芯周りで揺動操作自在に枠体に支持される構成としたが、連動入切レバー43と中継操作部材66とを位置が異なり且つ平行な2本の軸芯の夫々の周りで各別に揺動自在に支持される構成としてもよい。
【0074】
(3)上記実施形態では、切換操作機構として、アクセル連動操作部材51と変速連動操作部材78とが同一軸芯周りで回動自在に支持される構成としたが、次のように構成するものでもよい。
【0075】
すなわち、図18に示すように、アクセル連動操作部材51と変速連動操作部材78とが互いに異なる平行な軸芯X3,X4周りで揺動自在に図示しない支持体に支持され、アクセル連動操作部材51には係合用凹部90が形成され、変速連動操作部材78には係合用凹部90に入り込み係合可能な係合ピン91が設けられている。
そして、アクセル連動操作部材51が図18(a)に示す位置(連動解除位置)にあると、変速ペダル24の踏み込み操作に伴って変速連動操作部材78が回動操作されても、係合ピン91が係合用凹部90に係合しないように構成されている。
又、アクセル連動操作部材51が図18(b)に示す位置(連動位置)にあると、変速ペダル24の踏み込み操作に伴って変速連動操作部材78が回動操作されると、図18(c)に示すように、係合ピン91が係合用凹部90に係合してアクセル連動操作部材51が連動操作されるように構成されている。
【0076】
アクセル連動操作部材51は、引張りバネ100により図18の時計周りに回動付勢されるが、移動操作体52に形成された接当操作部92がアクセル連動操作部材51に設けられた被係合部93に接当して規制されることにより連動解除位置で保持されるようになっている。
【0077】
そして、連動入切レバー43と移動操作体52とを連動連係するための構成は、図9に示すような構成と同じであるが、この実施形態では、図示はしないが、連動入切レバー43の切り位置OFFと入り位置ONとの関係が上記実施形態とは逆になるように設定される。つまり、図9における図面上側の操作位置が切り位置OFFとなり、図9における図面下側の操作位置が入り位置ONとなる。
【0078】
移動操作体52は、変速連動操作部材78の回動軸芯と同一軸芯X4周りで回動自在に支持され、且つ、連動入切レバー43に操作ワイヤ53を介して連動連係されており、連動入切レバー43が切り位置OFFに操作されると図18(a)に示す位置に切り換わり、連動入切レバー43が入り位置ONに操作されると図18(b)に示す位置に切り換わるよう構成されている。移動操作体52が図18(b)に示す位置に切り換わると、接当操作部92が被係合部93から離間してアクセル連動操作部材51が図17の時計周りに回動し、且つ、係合ピン91にて受止められて連動位置に切り換わるよう構成されている。
【0079】
(4)上記実施形態では、アクセルレバー25とアクセル装置40の操作部40aとを操作ワイヤ29で連係する構成としたが、以下に説明するように、アクセル装置40をアクチュエータにより操作する構成としてもよい。
すなわち、図19に示すように、アクセル装置40を操作する電動アクチュエータ90と、アクセルレバー25の操作位置を検出するポテンショメータからなるアクセルレバーセンサ91と、連動入切レバー43の操作位置を検出するレバー位置検出スイッチ92とを備えて、制御手段21が、レバー位置検出スイッチ92による検出情報を基に、切換操作機構50が入り状態と切り状態とのいずれにあるかを判断し、切換操作機構50が切り状態にあると判断した場合、アクセルレバーセンサ91による検出情報と、アクセル装置40の操作状態を検出するアクセルセンサ93による検出情報とを基に、アクセル装置40がアクセルレバー25の操作位置に対応した回転速度をエンジン1に現出させる操作状態になるようアクセルアクチュエータ90を操作する構成である。
【0080】
又、この場合、切換操作機構50が入り状態にあると判断した場合、アクセルレバーセンサ91及びアクセルセンサ93による検出情報に基づくアクセルアクチュエータ90の操作を停止し、かつ、前記変速ペダル24によるアクセル装置40の操作が可能となるよう、アクセルアクチュエータ90を外力による操作が可能な状態に切り換える構成にするとよい。
【0081】
(5)上記実施形態では、切換操作機構として、変速連動操作部材78とアクセル連動操作部材51とを連動連係する連係状態と連動連係を解除する連動解除状態とに切り換え自在な切換操作機構50を示したが、切換操作機構としてはこのような構成に限らず、例えば、2輪駆動状態と4輪駆動状態とを切り換えるための切換機構や、旋回走行時に前輪を後輪よりも高速で駆動する前輪増速旋回状態と、前輪と後輪とを同速で駆動する通常旋回状態とに切り換えるための切換機構等でもよい。又、このような走行用伝動機構に用いられるものに限らず、作業装置の駆動状態を切り換えるための切換機構等の等、種々の切換操作機構を用いることができる。
【0082】
(6)上記実施形態では、接当規制部67として、移動操作体52の移動操作が阻止されている状態において、連動入切レバー43に接当して切り換え操作を規制する機能に加えて、連動入切レバー43が切り位置OFFにあるときに、中継操作部材66がレバー側の引張りバネ65の付勢力によって、連動入切レバー43に近づくように揺動することを阻止する機能を合わせ持つ構成を例示したが、このような構成に代えて、連動入切レバー43が切り位置OFFにあるときに、中継操作部材66がレバー側の引張りバネ65の付勢力によって、連動入切レバー43に近づくように揺動することを阻止するための揺動阻止部材(図示せず)を接当規制部67とは別体で備える構成としてもよい。
【0083】
(7)上記実施形態では、切換操作機構として、アクセル連動操作部材51と変速連動操作部材78とが同一軸芯周りで回動自在に支持される構成とし、変速連動操作部材78を操作するための変速操作具として足踏み操作式の変速ペダル24を用いる構成としたが、手で操作する変速レバー(図示せず)を用いる構成としてもよい。
【0084】
(8)上記実施形態では、作業車としてトラクタを例示したが、トラクタに限らず、例えば芝刈り機等の他の作業車にも本発明は適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、例えばトラクタあるいは芝刈り機等の作業車において使用される切換操作装置に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
43 切換操作具
43a 握り操作部
44 支軸
50 切換操作機構
52 移動操作体
59 連動部材
61 位置保持用の付勢手段
65 引張りバネ
66 中継操作部材
67 接当規制部
69 枠体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動操作体の移動操作に伴って第1操作状態と第2操作状態とに切り換え自在な切換操作機構と、前記移動操作体と連動連係される手動操作式の切換操作具とが備えられている切換操作装置であって、
前記切換操作具と引張りバネを介して連動連係される中継操作部材が備えられ、
前記中継操作部材と前記移動操作体とが連動部材を介して連動連結され、
前記切換操作具を操作すると、前記引張りバネに張力が発生しながら前記中継操作部材が移動して、前記移動操作体が前記第1操作状態に対応する第1操作位置及び前記第2操作状態に対応する第2操作位置のいずれか一方から他方へ操作されるように構成され、
前記中継操作部材に、前記移動操作体が前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方から他方への移動操作が阻止されている状態において、前記切換操作具に接当して前記切換操作具の切り換え操作を規制する接当規制部が備えられている切換操作装置。
【請求項2】
前記切換操作具及び前記中継操作部材が、共通の支軸にて揺動操作自在に枠体に支持され、
前記切換操作具が、その長手方向の一端側の基端部が前記支軸にて揺動操作自在に支持され、且つ、長手方向の他端側に握り操作部を備えて構成され、
前記中継操作部材が、その長手方向の一端側の基端部が前記支軸にて揺動操作自在に支持され、
前記中継操作部材の長手方向の他端側箇所と、前記切換操作具における長手方向の中間箇所とにわたって前記引張りバネが張設されている請求項1記載の切換操作装置。
【請求項3】
前記引張りバネよりも小さい付勢力にて前記移動操作体を前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方に移動付勢する位置保持用の付勢手段が備えられ、
前記切換操作具が、前記位置保持用の付勢手段の付勢力に抗して、前記引張りバネに張力が発生しながら前記中継操作部材を移動するように操作されることにより、前記移動操作体が前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方から他方へ操作されるように構成されている請求項1又は2記載の切換操作装置。
【請求項1】
移動操作体の移動操作に伴って第1操作状態と第2操作状態とに切り換え自在な切換操作機構と、前記移動操作体と連動連係される手動操作式の切換操作具とが備えられている切換操作装置であって、
前記切換操作具と引張りバネを介して連動連係される中継操作部材が備えられ、
前記中継操作部材と前記移動操作体とが連動部材を介して連動連結され、
前記切換操作具を操作すると、前記引張りバネに張力が発生しながら前記中継操作部材が移動して、前記移動操作体が前記第1操作状態に対応する第1操作位置及び前記第2操作状態に対応する第2操作位置のいずれか一方から他方へ操作されるように構成され、
前記中継操作部材に、前記移動操作体が前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方から他方への移動操作が阻止されている状態において、前記切換操作具に接当して前記切換操作具の切り換え操作を規制する接当規制部が備えられている切換操作装置。
【請求項2】
前記切換操作具及び前記中継操作部材が、共通の支軸にて揺動操作自在に枠体に支持され、
前記切換操作具が、その長手方向の一端側の基端部が前記支軸にて揺動操作自在に支持され、且つ、長手方向の他端側に握り操作部を備えて構成され、
前記中継操作部材が、その長手方向の一端側の基端部が前記支軸にて揺動操作自在に支持され、
前記中継操作部材の長手方向の他端側箇所と、前記切換操作具における長手方向の中間箇所とにわたって前記引張りバネが張設されている請求項1記載の切換操作装置。
【請求項3】
前記引張りバネよりも小さい付勢力にて前記移動操作体を前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方に移動付勢する位置保持用の付勢手段が備えられ、
前記切換操作具が、前記位置保持用の付勢手段の付勢力に抗して、前記引張りバネに張力が発生しながら前記中継操作部材を移動するように操作されることにより、前記移動操作体が前記第1操作位置及び前記第2操作位置のいずれか一方から他方へ操作されるように構成されている請求項1又は2記載の切換操作装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−35806(P2012−35806A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179593(P2010−179593)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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