説明

切替弁

【課題】弁体を動作させる駆動力の低減によるアクチュエータの小型化及び1つのアクチュエータによる弁体の複数の動作を可能とすることにより、その構造の小型化及びコストの低減を図ることのできる切替弁を提供することを課題とする。
【解決手段】切替弁101は、流体通路C1,C2を有するボディ1を備え、ボディ1の内部の流体通路C1,C2の途中に弁孔1aを備える。また、弁孔1aには内部で摺動及び回転自在な弁体2が収容される。さらに、ボディ1の内部には、圧電素子部11,12,13を有する振動アクチュエータ10が設けられ、振動アクチュエータ10は弁体2に当接し、圧電素子部11,12,13の振動により弁体2を摺動及び回転させる。また、弁体2は、摺動することにより流体通路C1,C2のうちの1つを連通し、さらに回転することにより連通した流体通路C1或いはC2の流量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は圧電素子を備えるアクチュエータを使用した切替弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気や油等の液体からなる流体の流通可能な複数の流路から、用途に応じて流体を流通させる流路を選択し、流体を流通させる流路切替弁について、多様な提案がなされている。
例えば、特許文献1の流路切換弁は、油圧機構における流路切換弁であり、第1入力ポート及び第1入力ポートに対応する複数の第1出力ポート、並びに、第2入力ポート及び第2入力ポートに対応する複数の第2出力ポートを有している。この流路切換弁は、バルブケース内に設けられた弁体であるスプールを軸心方向にスライドすることにより、スプールを介して第1入力ポートを複数の第1出力ポートのいずれかに連通し、また、スプールを軸心回りに回転することにより、第2入力ポートを第2出力ポートのいずれかに連通するものである。なお、流路切換弁の外部には第1操作アーム及び第2操作アームの2つのアームが延在しており、第1操作アームはスプールを軸心方向にスライド操作するものであり、第2操作アームはスプールを軸心回りに回転操作するものである。すなわち、特許文献1の流路切換弁は、単一のスプールのスライド操作と回転操作とを通じて、2つの流路の切換を行うものである。
【0003】
【特許文献1】特開平11−182701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された流路切換弁は、第1操作アームが流路切換弁とその内部で接続されて外部に延在し、第2操作アームが流路切換弁の外部に延びるスプールと流路切換弁の外部において接続されている。そのため、流路切換弁内部の油の外部への漏出を防止するために、第1操作アーム及びスプールの周りにはシール材が設けられ、バルブケースとの密封が保持される。このように、第1操作アーム及びスプールには、その可動部分にシール材が設けられているため、摺動抵抗が増大し、スプールのスライド及び回転動作に必要とされる駆動力が大きくなるという問題がある。さらに、第1操作アーム及びスプールを駆動するためにアクチュエータ等を使用するとアクチュエータの大型化を招き、流路切換弁自体も大型化するという問題がある。
【0005】
また、スプールのスライド操作及び回転操作を別々の操作手段により行うため、例えば操作手段を電動化した場合、2つの駆動手段が必要になる、又は1つの駆動手段により2つの操作手段を駆動する際には複雑な駆動機構が必要になる等、流路切換弁の大型化及びコストの上昇を招くという問題が生じる。
【0006】
この発明は、これらのような問題点を解決するためになされたもので、弁体を動作させる駆動力を低減することによってアクチュエータの小型化を図るとともに、弁体の複数の動作を1つのアクチュエータを使用して行うことにより、弁構造の小型化及びコストの低減を可能とする切替弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る切替弁は、少なくとも2つの流体通路を有する弁本体と、弁本体の内部において弁本体に設けられた弁孔に収容され、異なる2つの動きが可能である円柱状の円柱部をもつ弁体とを有し、流体通路は、弁孔において弁体によって形成される流路と流入路と流出路とをもち、弁体の異なる2つの動きのうちの一方により、少なくとも2つの流体通路のうちの少なくとも1つの流体通路において、流路が流入路と流出路との連通と非連通を切替し、弁体の異なる2つの動きのうちの他方により、連通した少なくとも1つの流体通路の流路の流路断面積が変更されて、連通した少なくとも1つの流体通路の開度が調整される切替弁であって、弁本体の内部に設けられ、圧電素子を有する振動アクチュエータであって、弁体に当接する当接部を有すると共に、圧電素子の振動により、弁体に異なる2つの動きを行わせる振動アクチュエータを備えることを特徴とするものである。
【0008】
このため、圧電素子によって作動する振動アクチュエータは小型化が可能であるため、弁本体の内部に弁体と共に収容される。また、このとき、弁本体の外部に露出しない弁体には、弁本体との間にシールが不要となる。よって、弁体の周囲、すなわち弁体の可動部分に動作の抵抗となる部材が設けられないため、弁体を動作させる駆動力を低減することができ、駆動力の小さくてすむ小型の振動アクチュエータによっても弁体は動作する。従って、この切替弁は、その構造の小型化を図ることを可能にする。さらに、この切替弁は、1つの振動アクチュエータにより弁体に異なる2つの動きを行わせることよって連通する流体通路の切替及びその流量調整を行うことができる。従って、切替弁の構造の小型化並びに構造の簡易化によるコストの低減を図ることを可能にする。
【0009】
振動アクチュエータは、当接部が圧電素子の振動により楕円運動を行ってもよい。振動アクチュエータにおける弁体との当接部が楕円運動することにより、振動アクチュエータは、この当接部で弁体の表面を引っ掻くようにして弁体に異なる2つの動きをさせる。
弁本体は、弁本体の内部に弾性部材を有し、弾性部材は、振動アクチュエータの当接部を弁体に押し付けてもよい。振動アクチュエータは、弁本体の内部の弾性部材により、弁体に押し付けられる力である予圧力を付与されることによって、当接部を弁体に当接させ、弁体に異なる2つの動きを行わせる。また、振動アクチュエータは、その停止時においても、弾性部材によって弁体に押し付けられ、弁体を固定する。従って、弁体の状態維持、すなわち流路及び流量維持のために保持電気等を必要としない。
【0010】
弁体の異なる2つの動きのうちの一方が、弁体の円柱部の軸方向の直線往復動作であり、弁体の異なる2つの動きのうちの他方が、弁体の円柱部の円周方向の回転動作であってもよい。
弁体は、円柱部に、円柱部を貫通する貫通穴が設けられ、貫通穴は流体通路の流路を形成してもよい。弁体に設けられた貫通穴は、弁体がその円柱部の軸方向に直線往復動作を行うことにより流体通路における流入路と流出路とを連通する、すなわち流体通路を連通する。さらに、弁体の直線往復動作により流体通路を連通した貫通穴は、弁体が回転動作を行うことにより流体通路の流路断面積を変化させ、連通した流体通路の流量を変化させる。
【0011】
弁体は、円柱部に、弁体の回転動作の方向に沿って設けられた溝部を有し、溝部は、弁孔と共に流体通路の流路を形成し、弁体の回転動作の方向に沿って、回転動作の方向と垂直な断面積が変化してもよい。弁体に設けられた溝部は、弁体がその円柱部の軸方向に直線往復動作を行うことにより流体通路における流入路と流出路とを連通する、すなわち流体通路を連通する。さらに、弁体の直線往復動作により流体通路を連通した溝部は、弁体が回転動作を行うことにより流体通路の流路断面積を変化させ、連通した流体通路の流量を変化させる。
【0012】
弁体の溝部は、弁体の円柱部の軸方向に対して垂直な面に関して対称な断面形状を有してもよい。弁体の溝部にかかる流体の圧力は、弁体の円柱部の軸方向に対して垂直な面に関して等しくなる。よって、弁体は、流体の圧力によって、その円柱部の軸方向である直線往復動作の方向の力を受けず、この方向で弁本体に押し付けられることもない。そのため、流体の圧力の大きさによって、弁体を直線往復動作及び回転動作させる駆動力も影響を受けない。従って、高圧流体の流通時においても、駆動力の小さい振動アクチュエータによる弁体の直線往復動作及び回転動作を可能にすると共に、切替弁をさらに小型化にする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、切替弁は、弁体を動作させる駆動力の低減によるアクチュエータの小型化及び1つのアクチュエータによる弁体の複数の動作を可能とすることにより、その構造の小型化及びコストの低減を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、この発明の実施の形態について、添付図に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、図1〜7を使用して、この発明の実施の形態1に係る切替弁101の構成を示す。なお、切替弁101は、流通する流体を気体とする流体回路に使用されるものである。
図1を参照すると、切替弁101は、略直方体形状の弁本体であるボディ1を備える。ボディ1には、その下面に垂直な円筒形状の弁孔1aが形成されており、弁孔1aは、ボディ1を貫通せずその途中まで鉛直上方に延びている。
また、ボディ1には、弁孔1aの中心軸に対して垂直な方向に延び、弁孔1aをボディ1の外部にそれぞれ連通する第1流入路1b及び第1流出路1cが形成されている。第1流入路1b及び第1流出路1cは、円形断面を有すると共に互いに同形状であり、それらの中心軸を同一として弁孔1aの中心軸と垂直に交わっている。
【0015】
さらに、第1流入路1b及び第1流出路1cのそれぞれの下方には、これらと平行に第2流入路1d及び第2流出路1eが形成されている。第2流入路1d及び第2流出路1eは、弁孔1aをボディ1の外部にそれぞれ連通する。また、第2流入路1d及び第2流出路1eは、第1流入路1b及び第1流出路1cより大きい円形断面を有すると共に互いに同形状であり、それらの中心軸を同一として弁孔1aの中心軸と垂直に交わっている。
また、さらに第2流入路1dの下方には、弁孔1aの中心軸に対して垂直な方向に延び、弁孔1aをボディ1の外部に連通する略円筒形状の凹部1fが形成されている。
【0016】
また、ボディ1の弁孔1aには、弁孔1aの内周面と整合する円柱形状をした弁体2が挿入されている。弁体2の長さは弁孔1aより短くなっており、弁体2は、弁孔1a内において、円柱形状をした円柱部2cの円周方向に回転自在であると共に、円柱部2cの中心軸方向に直線往復動作可能、すなわち摺動自在となっている。また、弁体2には、弁体2の回転中心軸に対して垂直に交わり、弁体2の円柱部2cを貫通する貫通穴である円筒状の第1流路2a及び第2流路2bが上下方向に並んで形成されている。第1流路2a及び第2流路2bは互いに平行であり、第1流路2aの下端と第2流路2bの上端との距離L2は、弁孔1aに対する第1流入路1bの開口上端と第2流入路1dの開口下端との距離L1より大きくなっている。また、第1流路2aは、第1流入路1b及び第1流出路1cの弁孔1aへの開口断面と同じ円形断面を有し、第2流路2bは、第2流入路1d及び第2流出路1eの弁孔1aへの開口断面と同じ円形断面を有している。
【0017】
よって、弁孔1a内において弁体2が摺動することにより、第1流路2aが第1流入路1bと第1流出路1cとを連通すると共に、第1流入路1b、第1流路2a及び第1流出路1cが第1流体通路C1を構成する。なお、第1流体通路C1の流路断面積は、第1流入路1bと第1流路2aとの連通部における流路断面積、及び第1流路2aと第1流出路1cとの連通部における流路断面積、すなわち第1流路2aの流路断面積によって決定される。また、第1流入路1b及び第1流出路1cは、弁体2の回転中心軸について対称であり、第1流路2aもまた弁体2の回転中心軸について対称であるため、第1流入路1bと第1流路2aとの連通部における流路断面積、及び第1流路2aと第1流出路1cとの連通部における流路断面積は等しくなっている。
そこで、さらに、弁孔1a内において弁体2が回転することにより、第1流路2aの流路断面積が変化し、第1流体通路C1の流路断面積、すなわち流量が変化する。
【0018】
また、弁孔1a内において弁体2が摺動することにより、第2流路2bが第2流入路1dと第2流出路1eとを連通すると共に、第2流入路1d、第2流路2b及び第2流出路1eが第2流体通路C2を構成する。なお、第2流体通路C2の流路断面積は、第2流入路1dと第2流路2bとの連通部における流路断面積、及び第2流路2bと第2流出路1eとの連通部における流路断面積、すなわち第2流路2bの流路断面積によって決定される。また、第1流体通路C1と同様に、第2流入路1dと第2流路2bとの連通部における流路断面積、及び第2流路2bと第2流出路1eとの連通部における流路断面積は等しくなっている。
そこで、さらに、弁孔1a内において弁体2が回転することにより、第1流体通路C1と同様にして、第2流路2bの流路断面積が変化し、第2流体通路C2の流量が変化する。
【0019】
なお、第1流路2aの下端と第2流路2bの上端の距離L2が、弁孔1aに対する第1流入路1bの開口上端と第2流入路1dの開口下端との距離L1より大きくなっているため、弁孔1a内における弁体2の摺動により、第1流体通路C1及び第2流体通路C2のいずれか一方のみが連通する。
また、弁孔1aは、弁体2の下方において、蓋部3によって閉じられる。なお、ボディ1及び蓋部3の間は固定シールであるOリング3aによって密封される。
【0020】
次に、図2を参照すると、図2に示す状態は、図1における切替弁101の弁体2を90度回転させたものである。
そこで、弁体2の円柱部2cは、その上端から弁体2の第2流路2bの下側までの間を鉛直下方に向かって一部が切り欠かれ、切り欠かれた部分は切り欠き面2dを形成している。なお、切り欠き面2dは、弁体2の第1流路2a及び第2流路2bに対して平行になるような位置に形成されている。さらに、切り欠き面2dの下端には、切り欠き面2dと弁体2の下端面とを連通し、弁体2の内部において下方に延びる連通孔2eが形成されている。
よって、弁孔1aと弁体2の円柱部2cの両端面とによって形成される空間1aa(図1,2では容積がゼロとして図示されている)及び1abは、弁孔1a及び切り欠き面2dによって形成される空間と連通孔2eとによって連通する。このため、空間1aa及び1ab内の流体には、弁孔1a内における弁体2の摺動により、圧縮力及び負圧力が発生しない。従って、弁体2は、空間1aa及び1ab内の流体によって、その摺動において抵抗を受けない。
【0021】
次に、凹部1fには圧電素子を備える振動アクチュエータ10が設けられ、凹部1fはシール機能を有するキャップ4によって密封されている。また、振動アクチュエータ10は、キャップ4の凹部1f側に設けられた弾性部材であるバネ8と接続されている。よって、振動アクチュエータ10は、バネ8によって弁体2に付勢され、その先端を弁体2に押し付けている。すなわち、バネ8は振動アクチュエータ10に弁体2に対する予圧力を付与している。さらに、振動アクチュエータ10は、キャップ4を貫通する配線10aによって、ボディ1の外部に設けられた駆動装置9と電気的に接続されている。なお、駆動装置9は、振動アクチュエータ10に交流電圧を印加し、その動作を制御する。
また、弁体2の上方となる弁孔1a内の上端には、弁体2との距離を計測するための静電容量センサ5が設けられている。静電容量センサ5は、駆動装置9に電気的に接続されている。なお、ボディ1及び弁体2は導体で形成されており、弁体2はボディ1を介して電気的に接地されている。
【0022】
そこで、静電容量センサ5に駆動装置9により電圧が印加されると、静電容量センサ5及び弁体2の間には、この間の距離に反比例した電流が発生する。さらに、駆動装置9内には図示しない距離算出手段が設けられており、この距離算出手段は、駆動装置9の印加した電圧値並びに静電容量センサ5と弁体2との間に発生した電流値から、静電容量センサ5及び弁体2間の距離を算出する。
【0023】
また、弁体2の円柱部2c表面の上端には、永久磁石6が埋め込まれており、さらに、ボディ1の外側上面には、永久磁石6と対向する位置に、ホールセンサ7が設けられている。ホールセンサ7は、ホールセンサ7と永久磁石6との相対位置が変わることによって変化する永久磁石6の磁束により、永久磁石6の相対位置を求めるものである。よって、ホールセンサ7により、永久磁石6と共に回転する弁体2の回転角度が求められる。また、ホールセンサ7は駆動装置9と電気的に接続されており、ホールセンサ7によって検知された弁体2の回転角度情報が駆動装置9に送られる。
【0024】
ここで、振動アクチュエータ10の構成について示す。
図5に示すように、振動アクチュエータ10は、円柱がその途中から先細になった形状をした先端ピース10b及び円柱形状をした基部ピース10cを有している。先端ピース10b及び基部ピース10cは、これらの間に略円環板状の第1圧電素子部11、第2圧電素子部12及び第3圧電素子部13を挟み、内部を通る連結ボルト10dによって互いに連結されている。さらに、第1圧電素子部11、第2圧電素子部12及び第3圧電素子部13はそれぞれ、配線10a(図1参照)によって駆動装置9(図1参照)に電気的に接続されている。また、先端ピース10bの先端部には、さらに小径の円柱形状をした凸部10baが形成されている。一方、基部ピース10cには、バネ8が接続されている。なお、先端ピース10bの凸部10baは当接部を構成し、振動アクチュエータ10は凸部10baにおいて、弁体2(図1参照)に当接する。また、第1圧電素子部11、第2圧電素子部12及び第3圧電素子部13は圧電素子を構成している。
【0025】
また、説明の便宜上、基部ピース10cから先端ピース10bへ向かう基部ピース10cの中心軸をz軸と規定し、z軸に対して垂直上方向(図1,2の上方向)にy軸が、y軸及びz軸に対して垂直にx軸がそれぞれ延びているものとする。このとき、第1圧電素子部11、第2圧電素子部12及び第3圧電素子部13はそれぞれ、xy平面と平行になっている。
【0026】
さらに、図6を参照すると、先端ピース10b、第1圧電素子部11、第2圧電素子部12、第3圧電素子部13及び基部ピース10cの詳細な構成が示される。
第1圧電素子部11は、それぞれ略円環板形状を有する電極板11a、圧電素子板11b、電極板11c、圧電素子板11d及び電極板11eが順次重ね合わされた構造を有している。同様に、第2圧電素子部12は、それぞれ略円環板形状を有する電極板12a、圧電素子板12b、電極板12c、圧電素子板12d及び電極板12eが順次重ね合わされた構造を有している。また、同様に、第3圧電素子部13は、それぞれ略円環板形状を有する電極板13a、圧電素子板13b、電極板13c、圧電素子板13d及び電極板13eが順次重ね合わされた構造を有している。
【0027】
さらに、先端ピース10b及び第1圧電素子部11は略円環状の絶縁シート14によって絶縁されており、同様に、第1圧電素子部11及び第2圧電素子部12は絶縁シート15によって絶縁され、第2圧電素子部12及び第3圧電素子部13は絶縁シート16によって絶縁され、第3圧電素子部13及び基部ピース10cは絶縁シート17によって絶縁されている。
第1圧電素子部11の両端面部分に配置されている電極板11a及び電極板11eと、第2圧電素子部12の両端面部分に配置されている電極板12a及び電極板12eと、第3圧電素子部13の両端面部分に配置されている電極板13a及び電極板13eとがそれぞれ電気的に接地されている。また、第1圧電素子部11の一対の圧電素子板11b及び11dの間に配置されている電極板11cと、第2圧電素子部12の一対の圧電素子板12b及び12dの間に配置されている電極板12cと、第3圧電素子部13の一対の圧電素子板13b及び13dの間に配置されている電極板13cとがそれぞれ駆動装置9(図1参照)に電気的に接続されている。
【0028】
さらに、図7に示すとおり、第1圧電素子部11の一対の圧電素子板11b及び11dのそれぞれは、y軸方向に離れるような形状に2分割されており、その各部分が互いに逆極性を有し、それぞれz軸方向(厚み方向)に膨張と収縮の反対の変形挙動を行うように分極されている。つまり、圧電素子板11bと11dとの間に配置される電極板11c(図6参照)に交流電圧が印加された際に、協働して振動アクチュエータ10の先端ピース10bの凸部10ba(図5参照)をx軸回り(yz平面内)に振動させるように、圧電素子板11bと圧電素子板11dとは互いに裏返しに配置されている。
【0029】
第2圧電素子部12の一対の圧電素子板12b及び12dのそれぞれは、全体がz軸方向(厚み方向)に膨張あるいは収縮の変形挙動を行うように分極されている。つまり、圧電素子板12bと12dとの間に配置される電極板12c(図6参照)に交流電圧が印加された際に、協働して振動アクチュエータ10の先端ピース10bの凸部10ba(図5参照)をz軸方向に振動させるように、圧電素子板12bと圧電素子板12dとは互いに裏返しに配置されている。
第3圧電素子部13の一対の圧電素子板13b及び13dのそれぞれは、x軸方向に離れるような形状に2分割されており、その各部分が互いに逆極性を有し、それぞれz軸方向(厚み方向)に膨張と収縮の反対の変形挙動を行うように分極されている。つまり、圧電素子板13bと13dとの間に配置される電極板13c(図6参照)に交流電圧が印加された際に、協働して振動アクチュエータ10の先端ピース10bの凸部10ba(図5参照)をy軸回り(xz平面内)に振動させるように、圧電素子板13bと圧電素子板13dとは互いに裏返しに配置されている。
【0030】
次に、振動アクチュエータ10の動作について説明する。
図7を参照すると、駆動装置9(図1参照)が、第1圧電素子部11の電極板11c(図6参照)に振動アクチュエータ10(図5参照)の固有振動数に近い周波数の交流電圧を印加すると、第1圧電素子部11の一対の圧電素子板11b及び11dの2分割された部分がz軸方向に膨張と収縮とを交互に繰り返し、振動アクチュエータ10の先端ピース10b(図5参照)にyz平面上のx軸回りに揺動させるたわみ振動を発生する。
同様に、駆動装置9(図1参照)が、第2圧電素子部12の電極板12c(図6参照)に交流電圧を印加すると、第2圧電素子部12の一対の圧電素子板12b及び12dがz軸方向に膨張と収縮とを繰り返し、先端ピース10b(図5参照)にz軸方向の縦振動を発生する。
また、同様に、駆動装置9(図1参照)が、第3圧電素子部13の電極板13c(図6参照)に交流電圧を印加すると、第3圧電素子部13の一対の圧電素子板13b及び13dの2分割された部分がz軸方向に膨張と収縮とを交互に繰り返し、振動アクチュエータ10の先端ピース10b(図5参照)にxz平面上のy軸回りに揺動させるたわみ振動を発生する。
【0031】
そこで、図5を参照すると、駆動装置9(図1参照)の制御に従って、第1圧電素子部11の電極板11c(図6参照)と第2圧電素子部12の電極板12c(図6参照)との双方に位相を90度シフトさせた交流電圧を印加すると、x軸回りに揺動させるたわみ振動とz軸方向の縦振動とが組み合わされて、振動アクチュエータ10の先端ピース10b先端の凸部10baにyz面内の楕円振動が発生する。すなわち、先端ピース10bの凸部10baは、x軸回りの楕円振動をする。なお、印加する交流電圧の位相は、第1圧電素子部11の電極板11c(図6参照)に対して第2圧電素子部12の電極板12c(図6参照)を90度進ませるか遅らせることによって、楕円運動の回転方向が方向P11及びQ11のいずれかに選択可能である。
【0032】
従って、図1に戻ると、振動アクチュエータ10はバネ8によって弁体2に対して予圧力を付与されているため、x軸回りとなる方向P11又はQ11に楕円運動する振動アクチュエータ10の先端ピース10bの凸部10baは、弁体2を引っ掻くようにして鉛直上方向又は下方向に摺動させる。なお、先端ピース10bの凸部10baが方向P11に楕円運動を行うとき、弁体2は上方向に摺動し、先端ピース10bの凸部10baが方向Q11に楕円運動を行うとき、弁体2は下方向に摺動する。
【0033】
また、図5に戻り、駆動装置9(図1参照)の制御に従って、第2圧電素子部12の電極板12c(図6参照)と第3圧電素子部13の電極板13c(図6参照)との双方に位相を90度シフトさせた交流電圧を印加すると、z軸方向の縦振動とy軸回りに揺動させるたわみ振動とが組み合わされて振動アクチュエータ10の先端ピース10b先端の凸部10baにxz面内の楕円振動が発生する。すなわち、先端ピース10bの凸部10baは、y軸回りの楕円振動をする。なお、印加する交流電圧の位相は、第2圧電素子部12の電極板12c(図6参照)に対して第3圧電素子部13の電極板13c(図6参照)を90度進ませるか遅らせることによって、楕円運動の回転方向が方向P12及びQ12のいずれかに選択可能である。
【0034】
従って、図3を参照すると、振動アクチュエータ10はバネ8によって弁体2に対して予圧力を付与されているため、y軸回りとなる方向P12又はQ12に楕円運動する振動アクチュエータ10の先端ピース10bの凸部10baは、弁体2を引っ掻くようにして方向P又はQに回転させる。なお、先端ピース10bの凸部10baが方向P12に楕円運動を行うとき、弁体2は方向Pに回転し、先端ピース10bの凸部10baが方向Q12に楕円運動を行うとき、弁体2は方向Qに回転する。
上述より、図1及び3を参照すると、振動アクチュエータ10は、圧電素子部11及び12(図5参照)の振動により、その先端の凸部10baにx軸回りとなる楕円運動を発生させ、弁体2を鉛直上方向又は下方向(y軸方向)に摺動させる。また、振動アクチュエータ10は、圧電素子部12及び13(図5参照)の振動により、その先端の凸部10baにy軸回りとなる楕円運動を発生させ、弁体2を回転させる。
【0035】
次に、図1〜4を使用して、この発明の実施の形態1に係る切替弁101の動作を示す。
図1を参照すると、図示しないサージタンクより供給された気体による流体が、切替弁101に対して、第1流入路1b及び第2流入路1dより流入する。弁体2が図1に示す状態にあるとき、第1流入路1bは弁体2によって塞がれるため、第2流入路1dに流入した流体のみ、第2流路2bを介して第2流出路1eより切替弁101の外部に流出される。なお、このとき、第2流入路1d及び第2流出路1eの中心軸と、第2流路2bの中心軸とは同一となっており、第2流入路1d及び第2流路2bの連通部の面積、並びに第2流路2b及び第2流出路1eの連通部の面積は最大となっている。よって、第2流路2bの流路断面積、すなわち第2流体通路C2の流路断面積は最大となっている。
【0036】
そこで、切替弁101における第2流体通路C2の流量を調整し所定の流量とする際、駆動装置9は、弁体2の現状の回転位置から所定の流量とするための弁体2の回転方向及び回転角度を算出後、振動アクチュエータ10に電圧を印加して作動させ、弁体2を所定の方向に回転させる。
このとき、図3を参照すると、振動アクチュエータ10は、弁体2の回転方向に合わせて駆動装置9(図1参照)によって電圧を印加されて、その凸部10baが方向P12或いはQ12の楕円運動を行う。さらに、弁体2は、凸部10baの楕円運動の回転方向である方向P12或いはQ12に応じて、方向P或いはQに回転する。これに伴い、第2流入路1d及び第2流路2bの連通部の面積、並びに第2流路2b及び第2流出路1eの連通部の面積が同じ様に連続的に変化し、第2流路2bの流路断面積、すなわち第2流体通路C2の流量が連続的変化する。
【0037】
また、図1を参照すると、ホールセンサ7によって検知された弁体2の回転角度情報は駆動装置9に送られ、弁体2の回転角度が設定値、すなわち第2流体通路C2の流路断面積である第2流路2bの流路断面積が設定値に達すると、駆動装置9は振動アクチュエータ10を停止する。なお、振動アクチュエータ10は、バネ8によって弁体2に押し付けられているため、その振動を停止した状態においても先端の凸部10baを弁体2に押し付けて、弁体2を回転方向及び上下の摺動方向に対して固定する。
また、切替弁101は、弁体2を回転させていくことにより、図2に示す状態となり、第1流体通路C1に加えて第2流体通路C2の連通を遮断する。
【0038】
次に、図1を参照すると、切替弁101において連通する流体通路を第2流体通路C2から第1流体通路C1に変更する際、駆動装置9は、弁体2の現状の位置から弁体2の摺動後の位置及び摺動方向を算出後、振動アクチュエータ10に電圧を印加して作動させ、弁体2を鉛直下方向に摺動させる。なお、この弁体2の摺動が完了した状態において、弁体2は、第1流入路1b及び第2流出路1cの中心軸と、第1流路2aの中心軸とが同一となるような上下方向の位置となっている。また、弁体2を鉛直下方向に摺動させる際、振動アクチュエータ10の凸部10baは方向Q11の楕円運動を行う。
【0039】
また、静電容量センサ5には駆動装置9により電圧が印加されており、この電圧により静電容量センサ5及び弁体2間に発生する電流値と印加された電圧値とから、駆動装置9内の図示しない距離算出手段により静電容量センサ5及び弁体2間の距離が算出される。この距離から算出される弁体2の位置が、所定の位置、すなわち第1流入路1b及び第2流出路1cの中心軸と第1流路2aの中心軸とが同一となる位置に達すると、駆動装置9は振動アクチュエータ10を停止する。このとき、弁体2は図4に示す状態となり、第1流体通路C1が連通し、第2流体通路C2の連通が遮断される。
また、第1流体通路C1の流量、すなわち第1流路2aの流路断面積の調整は、第2流体通路C2と同様にして、駆動装置9の制御のもと、振動アクチュエータ10により、弁体2を回転させて行われる。
【0040】
従って、切替弁101は第1流入路1b及び第1流出路1cを有する第1流体通路C1、並びに第2流入路1d及び第2流出路1eを有する第2流体通路C2のいずれかを選択して連通させると共に、その流量を最大流量〜0まで調整するものである。
【0041】
このように、実施の形態1に係る切替弁101は、第1流体通路C1及び第2流体通路C2を有するボディ1と、ボディ1の内部に設けられた弁孔1aに収容される弁体2とを有する。なお、弁孔1aに収容される弁体2は、円柱部2cの軸方向の摺動及び円周方向の回転の異なる2つの動きが可能である。また、第1流体通路C1は、流路2aと流入路1bと流出路1cとを有し、第2流体通路C2は、流路2bと流入路1dと流出路1eとを有する。弁体2の摺動により、第1流路2aが第1流入路1bと第1流出路1cとを連通する、或いは、第2流路2bが第2流入路1dと第2流出路1eとを連通し、第1流体通路C1或いは第2流体通路C2が連通する。さらに、弁体2の回転により、連通した第1流体通路C1或いは第2流体通路C2における第1流路2a或いは第2流路2bの流路断面積が変更されて、連通した第1流体通路C1或いは第2流体通路C2の開度が調整される。また、切替弁101は、ボディ1の内部に、圧電素子11,12,13を有する振動アクチュエータ10を備え、振動アクチュエータ10、凸部10baにおいて弁体2に当接し、圧電素子11,12,13の振動により、弁体2に摺動及び回転を行わせる。
【0042】
これによって、振動アクチュエータ10は、ボディ1の内部に弁体2と共に収容される。また、このとき、ボディ1の外部に露出しない弁体2には、ボディ1との間にシールが不要となる。よって、弁体2の周囲、すなわち弁体2の可動部分に動作の抵抗となる部材が設けられないため、弁体2を動作させる駆動力を低減することができ、駆動力の小さくてすむ小型の振動アクチュエータ10によっても弁体2は動作する。従って、切替弁101は、その構造の小型化を図ることを可能にする。さらに、切替弁101は、1つの小型の振動アクチュエータ10により弁体2を摺動及び回転させることよって流体通路の切替及びその流量調整を行うことができる。従って、切替弁101は、その構造の小型化及び構造の簡易化によるコストの低減を図ることが可能になる。
【0043】
また、弁体2の摺動及び回転部分である可動部分にシールを不要とする構成により、切替弁101におけるシール構造は固定シールであるOリング3a及びキャップ4によるものでよく、シール構造を簡易とする共に、切替弁101の外部への流体の漏れを容易に防ぐことが可能になる。
また、振動アクチュエータ10は、磁場を発生しない。そのため、弁体2の駆動機構として振動アクチュエータ10を使用することにより、切替弁101は、磁場の影響を受けやすい電子機器と一体とすることが可能であり、例えば、切替弁101の制御装置と組み合わせることができ、さらなる小型化を図ることが可能になる。
【0044】
また、振動アクチュエータ10の停止時において、振動アクチュエータ10の先端ピース10bの凸部10baがバネ8によって弁体2に押し付けられるため、弁体2は固定される。よって、弁体2の状態維持、すなわち流路及び流量維持のために保持電力等を必要としないため、切替弁101の消費電力を低減することが可能になる。
【0045】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る切替弁102は、実施の形態1の切替弁101に対して、弁体2の構造を変更したものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
まず、図8及び9を使用して、この発明の実施の形態2に係る切替弁102の構成を示す。
【0046】
図8を参照すると、ボディ1の弁孔1aには、実施の形態1と同様にして、弁孔1aの内周面と整合する円柱形状をした弁体22が挿入されている。弁体22は、弁孔1a内において、その円柱部22cの円周方向に回転自在であり、この回転の中心軸方向に摺動自在となっている。
また、弁体22には、弁体22を貫通して弁体22の円柱部22cの両端面を連通する連通孔22dが弁体2の回転中心軸に沿って形成されている。これにより、弁孔1aと弁体22の円柱部22cの両端面とによって形成される空間1aa及び1abは連通孔22dによって連通するため、空間1aa及び1ab内の流体には、弁孔1a内における弁体22の摺動により、圧縮力及び負圧力が発生しない。従って、弁体22は、空間1aa及び1ab内の流体によって、その摺動に対して抵抗を受けない。
【0047】
さらに、弁体22の円柱部22cの表面において、弁体22の回転方向である外周方向に深さが連続的に変化する三角形状の断面を有する2つのV字状溝22a及び22bが、上下方向に並んで同じ向きに形成されている。V字状溝22a及び22bは弁体22の回転中心軸と垂直な方向に延び、溝部を構成している。よって、V字状溝22a及び22bは弁体22の回転方向に沿って、この回転方向と垂直な断面積が連続的に変化する形状を有している。
【0048】
なお、V字状溝22a及び22bの三角形断面は二等辺三角形の形状を有しており、この二等辺三角形の等辺部分がV字状溝22a及び22bの底面を構成している。すなわち、V字状溝22a及び22bは、そのV字状底面の頂点を通ると共に、弁体22の回転中心軸に対して垂直な平面、つまり水平面に関して対称な形状を有している。
また、弁体22の円柱部22c表面におけるV字状溝22aの下端とV字状溝22bの上端との距離L22は、弁孔1aに対する第1流入路1bの開口上端と第2流入路1dの開口下端との距離L1より大きくなっている。
【0049】
また、図9を参照すると、第2流入路1d及び第2流出路1eは、その中心軸は同一であるが、弁孔1aの中心軸に対して偏芯している。さらに、第1流入路1b(図8参照)及び第1流出路1c(図8参照)は、第2流入路1d及び第2流出路1eと平行になっており、第2流入路1d及び第2流出路1eと同様に弁孔1aの中心軸に対して偏芯している。
【0050】
図8に戻ると、弁孔1a内において弁体22が摺動することにより、V字状溝22a及び弁孔1aによって形成される空間である第1流路22abが第1流入路1bと第1流出路1cとを連通すると共に、第1流入路1b、第1流路22ab及び第1流出路1cは第1流体通路C12を構成する。また、V字状溝22b及び弁孔1aによって形成される空間である第2流路22bbが第2流入路1dと第2流出路1eとを連通すると共に、第2流入路1d、第2流路22bb及び第2流出路1eは第2流体通路C22を構成する。なお、弁体22の円柱部22c表面におけるV字状溝22aの下端とV字状溝22bの上端との距離L22は、弁孔1aに対する第1流入路1bの開口上端と第2流入路1dの開口下端との距離L1より大きくなっているため、弁孔1a内における弁体22の摺動により、第1流体通路C12及び第2流体通路C22のいずれか一方のみが連通する。
【0051】
さらに、第1流体通路C12及び第2流体通路C22はそれぞれ、第1流路22ab及び第2流路22bbの流路断面積をその流路断面積とする。
そこで、図9を参照すると、第2流路22bbは、その流路断面積を、第2流入路1d及び第2流出路1eの中心軸に垂直な平面のうちで最小断面部の面積としており、例えば、状態(a9)及び(b9)に示す状態においては、それぞれ幅α1及びα2で示される位置における断面の断面積が流路断面積である。また、第1流路22abについても、その流路断面積の位置は第2流路22bbと同様である。
【0052】
なお、図8に戻り、流体が第1流路22ab或いは第2流路22bbを通過する際、流体の圧力は、弁体22に対して、そのV字状溝22a或いは22bの2つの底面、すなわち上下方向に対称になった底面に作用するため、弁体22に作用する上下方向の力は相殺され、バランスがとられている。つまり、弁体22は、いわゆる圧力バランス形状を有している。よって、弁体22は、流体の圧力により上下方向に力を受けないため、その摺動及び回転動作において流体の圧力による影響を受けない。
また、この実施の形態2に係る切替弁102のその他の構造は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
次に、図8〜10を使用して、この発明の実施の形態2に係る切替弁102の動作を示す。
まず、図8〜10を参照して、弁体22の動作を示す。
図9を参照すると、状態(a9)及び(b9)に示す状態は、V字状溝22bが第2流入路1d及び第2流出路1eを連通した状態、すなわち切替弁102において第2流体通路C22(図8参照)が連通された状態である。このとき、第2流路22bbは、状態(a9)に示す状態においては流路幅が幅α1である位置における断面積、また、状態(b9)に示す状態においては流路幅が幅α2である位置における断面積が流路断面積である。
【0054】
そこで、弁体22の円柱部22cの表面に対するV字状溝22bの深さが最大となる部位22bcが第2流路22bbの流路幅α1を形成する状態、すなわち状態(a9)に示す状態において、第2流路22bbはその流路断面積を最大とし、第2流体通路C22(図8参照)の流量が最大となる。また、このときの第2流路22bbの流路断面積を構成する幅α1の位置での流路断面は、図10の状態(a10)において斜線で示される断面22bdによって示される。
【0055】
また、実施の形態1と同様にして、駆動装置9(図8参照)の制御のもと振動アクチュエータ10(図8参照)を作動させて、この状態から弁体22を方向Pに回転させると、第2流路22bbはその流路幅を連続的に減少する。さらに、状態(b9)に示す状態において、第2流路22bbはその流路幅を幅α2として、その流路断面積を最小とする、すなわち第2流体通路C22(図8参照)の流量が最小となる。なお、状態(b9)に示す状態は、弁孔1aの部位1acにおいて弁体22と弁孔1aとのシールが可能な状態で、弁体22を方向Pに最大限まで回転させた状態である。また、このときの第2流路22bbの流路断面積を構成する幅α2の位置での流路断面は、図10の状態(b10)において斜線で示される断面22beによって示される。
【0056】
従って、弁体22は状態(a9)に示す状態及び状態(b9)に示す状態の間において回転することによって、第2流路22bbの開度が調整され、第2流体通路C22(図8参照)の流量が調整される。すなわち、弁体22が状態(a9)に示す状態から状態(b9)に示す状態に向かって方向Pに回転されると、第2流路22bbの流路断面積と共に、第2流体通路C22(図8参照)の流量が最大値から最小値に向かって連続的になだらかに減少する。また、弁体22は、状態(b9)に示す状態から状態(a9)に示す状態に向かって方向Qに回転されると、第2流路22bbの流路断面積と共に、第2流体通路C22(図8参照)の流量が最小値から最大値に向かって連続的になだらかに増加する。
なお、弁体22を状態(a9)に示す状態から方向Qに回転させた場合も、第2流路22bbの流路断面積及び第2流体通路C22の流量は同様に変化する。
【0057】
また、図8を参照すると、実施の形態1と同様にして、駆動装置9の制御のもと振動アクチュエータ10を作動させて弁体22を鉛直下方向に摺動させると、第2流体通路C22は弁体22によって遮断され、第1流体通路C12が連通する。すなわち、第1流路22abによって第1流入路1b及び第1流出路1cが連通する。さらに、弁体22を回転させることにより、第1流体通路C12の流量は、第2流体通路C22の連通時と同様に、連続的に変化する。
【0058】
従って、切替弁102は第1流入路1b及び流出路1cを有する第1流体通路C12、並びに第2流入路1d及び第2流出路1eを有する第2流体通路C22のいずれかを選択して連通させると共に、その流量を調整するものである。
また、この実施の形態2に係る切替弁102のその他の動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
このように、実施の形態2に係る切替弁102において、上記実施の形態1の切替弁101と同様な効果が得られる。
また、弁体22のV字状溝22a,22bは、弁体22の回転中心軸に対して垂直な面、すなわち水平方向の面に関して対称な三角形状の断面形状を有する。よって、V字状溝22a,22bにかかる流体の圧力は、上下方向で相殺されるため、弁体22は流体の圧力によって上下方向に力を受けず、弁孔1a内において摺動方向に押し付けられることがない。すなわち、弁体22は圧力バランス形状を有している。従って、流体の圧力の大きさによって弁体22を摺動及び回転させる駆動力が影響を受けないため、高圧流体の流通時においても、小さい駆動力による弁体22の摺動及び回転動作を可能にする。よって、駆動力の小さくてすむ小型の振動アクチュエータ10の使用が可能となるため、切替弁102のさらなる小型化を図ることができる。
【0060】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る切替弁103は、実施の形態1の切替弁101に対して、ボディ1に形成された流入路の構成を変更したものである。
まず、図11を使用して、この発明の実施の形態3に係る切替弁103の構成を示す。
切替弁103のボディ31には、実施の形態1と同様にして、円筒形状の弁孔31aが形成されている。
また、ボディ31には、弁孔31aの中心軸に対して垂直な方向に延び、弁孔31aをボディ31の外部にそれぞれ連通する第2流入路31d及び第2流出路31eが形成されている。第2流入路31d及び第2流出路31eは、円形断面を有すると共に互いに同形状であり、それらの中心軸を同一として弁孔31aの中心軸と垂直に交わっている。
【0061】
さらに、第2流入路31d及び第2流出路31eのそれぞれの上方には、これらと平行に、円形断面を有する第1流入路31b及び第1流出路31cが形成されている。第1流入路31bは弁孔31aからボディ31内部の途中まで延びている。また、第1流出路31cは、弁孔31aをボディ1の外部に連通するように延びている。なお、第1流入路31b及び第1流出路31cは、弁孔31aに対する開口断面が同形状であり、さらに中心軸を同一として弁孔31aの中心軸と垂直に交わっている。
また、ボディ31には、その上面より鉛直下方に延びる第3流入路31gが形成されている。第3流入路31gは、第1流入路31bと同じ断面形状を有しており、第1流入路31bと第2流入路31dとを連通する。さらに、第3流入路31gの上端は、シール機能を有するキャップ33により密封されている。
なお、弁体2の流路2aの下端と流路2bの上端との距離L2は、弁孔31aに対する第1流入路31bの開口上端と第2流入路31dの開口下端との距離L31より大きくなっている。
【0062】
よって、弁孔31a内において弁体2が摺動することにより、第1流路2aが第1流入路31bと第1流出路31cとを連通すると共に、第2流入路31d、第3流入路31g、第1流入路31b、第1流路2a及び第1流出路31cは第1流体通路C13を構成する。また、第2流路2bが第2流入路31dと第2流出路31eとを連通すると共に、第2流入路31d、第2流路2b及び第2流出路31eは第2流体通路C23を構成する。なお、弁体2の第1流路2aの下端と第2流路2bの上端との距離L2が、弁孔31aに対する第1流入路31bの開口上端と第2流入路31dの開口下端との距離L31より大きくなっているため、弁孔31a内における弁体2の摺動により、第1流体通路C13及び第2流体通路C23のいずれか一方のみが連通する。
また、この実施の形態3に係る切替弁103のその他の構成は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
次に、図11を使用して、この発明の実施の形態3に係る切替弁103の動作を示す。
図示しないサージタンクより供給された気体による流体が、切替弁103に対して、第2流入路31dより流入する。弁体2が図11に示す状態にあるとき、第1流入路31bが弁体2によって塞がれるため、第2流入路31dに流入した流体は、第2流路2bを介して第2流出路31eより切替弁103の外部に流出される。すなわち、第2流入路31dに流入した流体は、連通した第2流体通路C23を流通する。さらに、実施の形態1と同様にして、駆動装置9の制御のもと、振動アクチュエータ10を作動させて弁体2を回転させることにより、第2流体通路C23の流路断面積、すなわち流量が最大流量〜0まで調整される。
【0064】
また、実施の形態1と同様にして、駆動装置9の制御のもと、振動アクチュエータ10を作動させて弁体2を鉛直下方向に摺動させると、第2流体通路C23の連通が弁体2によって遮断され、第1流体通路C13が連通する。すなわち、第2流入路31dに流入した流体は、第3流入路31g、第1流入路31b及び第1流路2aを介して第1流出路31cより切替弁103の外部に流出される。さらに、弁体2を回転させることによって、第1流体通路C13の流量が最大流量〜0まで調整される。
【0065】
従って、切替弁103は、1つの第2流入路31dから2つに分岐する第1流体通路C13及び第2流体通路C23のいずれかを選択して連通させると共に、その流量を最大流量〜0まで調整するものである。
また、この実施の形態3に係る切替弁103のその他の動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態3における切替弁103において、上記実施の形態1の切替弁101と同様な効果が得られる。
【0066】
また、実施の形態1〜3においては、弁体2,22が直線往復動作することにより、第1流体通路C1,C12,C13の連通と第2流体通路C2,C22,C23の連通とを切り替え、弁体2,22が回転動作することにより、連通した第1流体通路C1,C12,C13或いは第2流体通路C2,C22,C23の流量を調整していた。しかしながら、これらは逆であってもよく、弁体2,22が回転動作することにより、第1流体通路C1,C12,C13の連通と第2流体通路C2,C22,C23の連通とを切り替え、弁体2,22が直線往復動作することにより、連通した第1流体通路C1,C12,C13或いは第2流体通路C2,C22,C23の流量を調整してもよい。
また、実施の形態1〜3においては、振動アクチュエータ10の当接部としての凸部10baに楕円運動をさせたが、弁体2,22に対して、その円柱部2c,22cの軸方向の摺動及び円周方向の回転をさせる振動であればよい。方向P11,Q11の楕円運動もyz面内に限らずx軸成分を持った運動でも良く、また、方向P12,Q12の楕円運動もxz面内に限らず、y軸成分を持った運動でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の実施の形態1に係る切替弁の構成を示す断面側面図である。
【図2】図1の弁体を90°回転させた状態の切替弁の構成を示す断面側面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面の模式図である。
【図4】図1の弁体を摺動させた状態の切替弁の構成を示す断面側面図である。
【図5】図1の振動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図6】図5の振動アクチュエータの圧電素子に係る構成を示す部分断面図である。
【図7】図5の振動アクチュエータで用いられた圧電素子板の分極方向を示す斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る切替弁の構成を示す断面側面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】図9のX−X線に沿った断面図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る切替弁の構成を示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0068】
1,31 ボディ(弁本体)、1a,31a 弁孔、1b,31b 第1流入路、1c,31c 第1流出路、1d,31d 第2流入路、1e,31e 第2流出路、2,22 弁体、2a 第1流路(流路、貫通穴)、22ab 第1流路、2b 第2流路(流路、貫通穴)、22bb 第2流路、2c,22c 円柱部、8 バネ(弾性部材)、10 振動アクチュエータ、10ba 凸部(当接部)、11,12,13 圧電素子部(圧電素子)、22a,22b V字状溝(溝部)、31g 第3流入路、101,102,103 切替弁、C1,C12,C13 第1流体通路、C2,C22,C23 第2流体通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの流体通路を有する弁本体と、
前記弁本体の内部において前記弁本体に設けられた弁孔に収容され、異なる2つの動きが可能である円柱状の円柱部をもつ弁体とを有し、
前記流体通路は、前記弁孔において前記弁体によって形成される流路と流入路と流出路とをもち、
前記弁体の前記異なる2つの動きのうちの一方により、前記少なくとも2つの流体通路のうちの少なくとも1つの流体通路において、前記流路が前記流入路と前記流出路との連通と非連通を切替し、
前記弁体の前記異なる2つの動きのうちの他方により、連通した前記少なくとも1つの流体通路の前記流路の流路断面積が変更されて、連通した前記少なくとも1つの前記流体通路の開度が調整される切替弁であって、
前記弁本体の内部に設けられ、圧電素子を有する振動アクチュエータであって、前記弁体に当接する当接部を有すると共に、前記圧電素子の振動により、前記弁体に前記異なる2つの動きを行わせる振動アクチュエータ
を備える切替弁。
【請求項2】
前記振動アクチュエータは、
前記当接部が前記圧電素子の振動により楕円運動を行う
請求項1に記載の切替弁。
【請求項3】
前記弁本体は、
前記弁本体の内部に弾性部材を有し、
前記弾性部材は、
前記振動アクチュエータの前記当接部を前記弁体に押し付ける
請求項1または2に記載の切替弁。
【請求項4】
前記弁体の前記異なる2つの動きのうちの前記一方が、前記弁体の前記円柱部の軸方向の直線往復動作であり、
前記弁体の前記異なる2つの動きのうちの前記他方が、前記弁体の前記円柱部の円周方向の回転動作である
請求項1〜3のいずれか一項に記載の切替弁。
【請求項5】
前記弁体は、
前記円柱部に、前記円柱部を貫通する貫通穴が設けられ、
前記貫通穴は前記流体通路の前記流路を形成する
請求項4に記載の切替弁。
【請求項6】
前記弁体は、
前記円柱部に、前記弁体の前記回転動作の方向に沿って設けられた溝部を有し、
前記溝部は、
前記弁孔と共に前記流体通路の前記流路を形成し、
前記弁体の前記回転動作の方向に沿って、前記回転動作の方向と垂直な断面積が変化する
請求項4に記載の切替弁。
【請求項7】
前記弁体の前記溝部は、前記弁体の前記円柱部の前記軸方向に対して垂直な面に関して対称な断面形状を有する
請求項6に記載の切替弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−275884(P2009−275884A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129947(P2008−129947)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】