説明

切替弁

【課題】単一の弁にて2つの流入流路と2つの流出流路との組合せを自在に変更でき、流路を4パターンに切替可能で、構造が簡単且つ安価な切替弁を提供する。
【解決手段】内部に流通室18を形成する弁ケース12と、弁ケース12の内部を回転軸16周りに回転する開口閉鎖部材14とを備えて切替弁10を構成する。その弁ケース12には、回転軸16周りに原水の流入口20,シャワー吐水用の流出口22,浄水の流入口24,ストレート吐水用の流出口26を90度ごとの間隔で設けておくとともに、開口閉鎖部材14には、軸直角方向に突出した形状をなす一対の閉鎖部36,38を回転方向に90度隔たった位置に設けておく。そして開口閉鎖部材14の回転により一対の閉鎖部36,38で回転方向に隣接した1つの流入口と1つの流出口とを閉鎖し、他の1つの流入口と流出口とを連通室18を介して連通状態とすることで、流路の切替えを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は切替弁に関し、詳しくは2つの流入流路と2つの流出流路との間で流路の切替えを行うことのできる切替弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の切替弁が各種分野で用いられている。
例えば下記特許文献1に、この種の切替弁として、水道水から成る原水をストレート吐水からシャワー吐水に又はその逆に、更に水道水を浄化した後の浄水のストレート吐水に切り替える弁として水栓に内蔵された切替弁が開示されている。
【0003】
図4及び図5はその具体例を示している。
図4において、200はシリンダ弁から成る切替弁で、202は弁ケース、204は弁ケース202の内部に配置された弁体、206は弁ケース202の内部に形成された通水空間であり、208は水栓の吐水管に内蔵された浄化カートリッジである。
この浄化カートリッジ208は、原水流路210の原水を半径方向内側に通過させて原水を浄化する。
【0004】
214は原水の流入流路で、原水流路210を流れて来た原水はストレーナ212を通過して原水の流入流路214へと到り、続いて弁ケース202内の通水空間206へと流入する。
216は浄水流路で、217,218はそれぞれ弁ケース202に設けられた浄水の流入流路及び流入口である。
【0005】
図5において220,222は弁ケース202に設けられた流出口で、一方の流出口220からは原水又は浄水をストレート吐水させるための流出流路224が延び出しており、また他方の流出口222からは原水をシャワー吐水させるための流出流路226が延び出している。
【0006】
ここで弁ケース202と弁体204との間は、流入口218,流出口220及び222周りにおいてシール材228により水密にシールされている。
弁体204には、くの字状に折れ曲った内部流路230が形成されている。232,234は、その内部流路230の両端の開口を表している。
【0007】
この切替弁200では、図5(A)に示す状態で、図4の流入流路214に流入した原水を流入口215から通水空間206へと流入させ、更に弁体204の内部流路230を通じて弁ケース202の流出口220から流出流路224へと流出させ、原水をストレート吐水させる。
またこの状態から弁体204を図5中時計方向に回転させ、図5(B)に示すように開口234を別の流出口222に一致させた状態で、原水を流出口222から流出通路226へと流出させ、原水をシャワー吐水させる。
【0008】
弁体204を更にこの状態から時計方向に回転させ、図5(C)に示すように弁体204の開口234を浄水の流入口218に一致させると、別の開口232が流出口220に一致し、この状態で浄水流路216からの浄水を、流入口218から弁体204の内部流路230へと流入させ、更に弁ケース202の流出開口220から流出流路224へと流出させて浄水をストレート吐水させる。
【0009】
この切替弁200は、流路を切り替えた状態及び切り替え途中の何れにおいても、原水流路210,浄水流路216を同時に閉鎖することはなく、少なくとも何れか一方を外部に開放状態とする。
従って原水流路210及び浄水流路216の同時閉鎖によって、切替弁200と上流側の水栓の混合弁との間の部分で原水流路210,浄水流路216等に1次側の圧力が籠ってしまうといったことを防止することができる。
従って流路を形成するホースを耐圧ホースとしなくても良く、また切替弁200の切替動作に伴ってウォーターハンマが発生してしまうといったことも防止できる利点を有している。
一方でこの切替弁200の場合、原水ストレート吐水と原水シャワー吐水及び浄水ストレート吐水の3パターンしか流路の切替えができず、浄水のシャワー吐水を行うことができない問題を有している。
【0010】
近時、浄水を用いて例えば皿洗いをしたいといった要望もあり、この場合、浄水を広い面積で吐水できるようにこれをシャワー吐水できるようにすることが望ましいが、図4及び図5の切替弁200ではこれを実現することができない。
【0011】
またこの切替弁200にあっては、弁体204を回転させる際にシール材228による大きな摺動抵抗が生じ、このため弁体204を回転させる際のトルクが大となり、操作がその分重くなるとともに、弁体204の回転時に常にシール材228に対して弁体204が摺動運動するため、シール材228が摩耗し易い問題がある。
【0012】
以上は水栓に内蔵されて原水ストレート吐水,原水シャワー吐水,浄水ストレート吐水の何れかに切り替える切替弁の場合であるが、浄水,原水を複数の吐水パターンに切り替える切替弁を含めて、2つの流入流路と2つの流出流路、即ち2つの流入口と2つの流出口との組合せを自在に変更可能で、しかも構造が簡単且つ安価な切替弁の開発が求められていた。
【0013】
本発明に関連する先行技術として、下記特許文献2には切替弁についての考案が示され、そこにおいてステータ(弁ケース)の内周側壁に凹部を形成して、ロータ(弁体)の回転時にパッキン(シール材)がステータの内周側壁に圧接しないようにし、そのことによってロータの回転トルクを小さくし得、またシール材の摩耗を抑制するようになした点が開示されている。
【0014】
但しこの特許文献2に開示のものは、弁体に設けたくの字状の内部流路を通じて弁ケースの流入口と流出口とを連通させるものである点で、また流入口が1つだけであり、2つの流入口と2つの流出口とを適宜組み合せて流路切替えをなすものでない点で本発明とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−271051号公報
【特許文献2】実開平5−79144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、単一の弁にて2つの流入流路と2つの流出流路との組合せを自在に変更でき、流路を4パターンに切替可能で、しかも1回の操作で且つ軽い操作で切替えを行うことができ、また2つの流入流路を同時閉鎖することによって上流側に圧力を籠らせたり、またウォーターハンマを発生させたりすることのない、構造が簡単で安価な切替弁を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは、内部に流体の流通室を形成する弁ケースと、該弁ケースの内部を回転軸周りに回転する開口閉鎖部材とを有し、該弁ケースには、該回転軸周りに第1の流入口,第1の流出口,第2の流入口,第2の流出口が90度ごとの間隔で該回転軸から等距離位置に設けられているとともに、前記開口閉鎖部材には、軸直角方向に突出した形状をなす一対の閉鎖部が前記回転軸から等距離位置に且つ回転方向に90度隔たった位置に設けられており、前記開口閉鎖部材の回転により、前記一対の閉鎖部が、該開口閉鎖部材の回転方向に隣接した1つの前記流入口と1つの前記流出口とをシール材を介して軸直角方向に押圧状態に閉鎖し、他の1つの流入口と他の1つの流出口とを前記流通室に開放し、該流通室を介して連通状態とするようになしてあることを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記第1の流体が水道水から成る原水であり、前記第2の流体が水道水を浄化した後の浄水であることを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、請求項2において、前記第1の流出口と前記第2の流出口との何れか一方が原水又は浄水をストレート吐水するための流出口であり、他方が該原水又は浄水をシャワー吐水するための流出口であることを特徴とする。
【0020】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記2つの流入口と2つの流出口とは、前記弁ケースの内面の他部よりも前記回転軸に近い位置に設けてあることを特徴とする。
【0021】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記開口閉鎖部材と前記弁ケースとの間には、全体がシール材で構成された若しくは外周部が部分的にシール材で構成された環状部材が位置移動可能に設けてあり、前記開口閉鎖部材は偏心カムを成していて、該開口閉鎖部材が回転に伴って該環状部材を位置移動させ、前記シール材を前記一対の閉鎖部と前記1つの流入口及び1つの流出口との間に挟み込むようになしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0022】
以上のように本発明の切替弁は、内部に流体の流通室を形成する弁ケースと、その弁ケースの内部を回転軸周りに回転する開口閉鎖部材とを備えて構成したものである。
詳しくは、弁ケースには回転軸周りに第1の流入口,第1の流出口,第2の流入口,第2の流出口を90度ごとの間隔で回転軸から等距離位置に設ける一方、開口閉鎖部材には、軸直角方向に突出した形状をなす一対の閉鎖部を、回転軸から等距離位置且つ回転方向に90度隔たった位置に設け、そして開口閉鎖部材の回転により、一対の閉鎖部にて隣接した1つの流入口と1つの流出口とをシール材を介して軸直角方向に押圧状態に閉鎖し、他の1つの流入口と他の1つの流出口とを弁ケース内部の流通室に開放し、その流通室を介して連通状態とするようになしたものである。
【0023】
本発明の切替弁では、開口閉鎖部材(以下単に閉鎖部材とする)を回転操作するだけで、即ち1回の操作で、2つの流入口即ちこれらに繋がる2つの流入流路と、2つの流出口即ちこれらに繋がる2つの流出流路との組合せを自在に変更でき、2つの流入流路と2つの流出流路との組合せによって4パターンで流路切替えをなすことができる。
【0024】
本発明の切替弁はまた、1つの流入口と1つの流出口とを、弁体に設けた内部流路を通じて連通させ、そして互いに連通させるべき流入口,流出口の組合せを変えることで流路切替えをなすものではなく、閉鎖部材によって隣接する1つの流入口と流出口とを閉鎖し、またその閉鎖すべき流入口と流出口との組合せを変えることで流路切替えをなすもので、かかる本発明の切替弁では、閉鎖部材が流路切替状態にあるとき、及び流路切替えのために移動途中であるときの何れにおいても、2つの流入口又は/及び2つの流出口が同時に閉鎖されること、即ち2つの流入流路が同時に閉鎖されることがない特徴を有する。
【0025】
本発明において、閉鎖部材が弁ケースとの間でシール材を軸直角方向に押圧するのは、2つの流入口,2つの流出口周りの部分のみでよく、これらを除いた他の部分においては、閉鎖部材が弁ケースとの間でシール材を押圧する必要はない。
従って閉鎖部材を回転させる際に、シール材から閉鎖部材に働く摺動抵抗を可及的に小さくすることができ、それ故本発明によれば切替弁を小さな力で軽く操作することが可能である。
本発明では、弁ケースとその内部に回転可能に設けた開口閉鎖部材とを備えることで切替弁を構成でき、流路を4つのパターンに切替可能な切替弁を構造簡素に且つ安価に構成することができる。
【0026】
本発明は、上流側から流れて来る第1の流体と、これとは別種の第2の流体との間で流路切替えを行う切替弁に好適に適用することができる。
特に第1の流体が水道水から成る原水,第2の流体が水道水を浄化した後の浄水である場合、即ち上流側からの原水と浄水との間で流路切替えを行う切替弁に適用して好適である(請求項2)。
【0027】
この場合において本発明の切替弁は、第1の流入口に繋がる流入流路と第2の流入口に繋がる流入流路との何れもが同時閉鎖されるといったことがないので、切替弁の切替動作によって上流側の原水流路,浄水流路に1次側の圧力が籠ったり、また切替弁の切替動作によってウォーターハンマが発生するのを防止することができる。
【0028】
この請求項2において、上流側からの原水又は浄水を、第1の流出口即ち第1の流出口に繋がる流出流路,第2の流出口即ちこれに繋がる流出流路の何れからも選択して流出させることができる。
この場合において、第1の流出口と第2の流出口との何れか一方を原水又は浄水をストレート吐水するための流出口となし、また他方を原水又は浄水をシャワー吐水するための流出口となしておくことができる(請求項3)。
このようにすれば、原水,浄水のそれぞれについてストレート吐水,シャワー吐水することが可能となる。
【0029】
本発明では、上記2つの流入口と2つの流出口とを、弁ケースの内面の他部よりも回転軸に近い位置に設けておくことができる(請求項4)。
このようにすれば、流入口と流出口との間の部分において閉鎖部材を抵抗少なく軽やかに回転させることができる。
【0030】
本発明ではまた、閉鎖部材と弁ケースとの間に、全体がシール材で構成された若しくは外周部が部分的にシール材で構成された環状部材を位置移動可能に設けておき、そして閉鎖部材を偏心カムと成して、その閉鎖部材の回転に伴い環状部材を位置移動させ、シール材を一対の閉鎖部と上記1つの流入口及び1つの流出口との間に挟み込むようになすことができる(請求項5)。
ここで弁ケースの内面は正4角形状となしておき、各辺の中央位置に前記流入口,流出口を設けておくとともに、前記環状部材を弁ケースの内面よりも小形状の正4角形状となしておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態の切替弁を示した図である。
【図2】図1の切替弁の作用説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態の図である。
【図4】従来公知の切替弁を内蔵した水栓の要部を示した図である。
【図5】図4の切替弁の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に本発明を原水流路と浄水流路とを切り替えるための切替弁に適用した場合の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は切替弁で、この切替弁10は弁ケース12と、その内部に設けられた偏心カムから成る開口閉鎖部材(以下単に閉鎖部材とする)14とを備えて構成されている。
16は回転軸で、閉鎖部材14はこの回転軸16によって且つ回転軸16周りに回転運動せしめられる。
ここで偏心カムから成る閉鎖部材14は、図に示しているように回転軸16の軸方向視において、幾何学的中心から偏心した位置で回転軸16に組み付けられている。
【0033】
弁ケース12は、内部に水の流通室18を形成しており、その内面形状は、回転軸16の軸方向視(紙面と直角方向視)において正4角形状をなしており、各辺の中央位置に第1の流入口としての原水の流入口20,第1の流出口としてのシャワー吐水用の流出口22,第2の流入口としての浄水の流入口24,第2の流出口としてのストレート吐水用の流出口26が設けられている。
ここで原水の流入口20,シャワー吐水用の流出口22,浄水の流入口24,ストレート吐水用の流出口26は、それぞれ回転軸16から等距離位置に位置しており、且つ弁ケース12の内面の他部よりも回転軸16に近い位置に位置している。
【0034】
弁ケース12には、また、原水の流入口20,シャワー吐水用の流出口22,浄水の流入口24,ストレート吐水用の流出口26にそれぞれ繋がる原水の流入流路28,シャワー吐水用の流出流路30,浄水の流入流路32,ストレート吐水用の流出流路34がそれぞれ設けられている。
【0035】
偏心カムから成る閉鎖部材14には、軸直角方向(回転軸16の直角方向)に突出した形状をなす閉鎖部36,38が、回転軸16から等距離位置に且つ回転方向に90度隔たった位置に設けられている。
これら閉鎖部36,38は、その外面40,42が回転軸16を中心とした円弧形状の面をなしている。
【0036】
閉鎖部材14は、これら閉鎖部36と38とを直接結ぶ面、詳しくは外面40,42の互いに同じ側の端を結ぶ面が傾斜面44とされており、更に外面40,42の互いに反対側の端からは、後述の環状部材50を押動する押動面46,48がストレート形状で且つ互いに直交する角度で延びている。
【0037】
この実施形態において、閉鎖部材14と弁ケース12との間には、内面及び外面の形状がそれぞれ弁ケース12の内面形状よりも小形状且つ正4角形状をなす環状部材50が、回転軸16の即ち閉鎖部材14の回転に伴って位置移動可能に設けられている。
この実施形態において、環状部材50は偏心カムから成る閉鎖部材14に対する従動部材となるもので、図1中上下方向及び左右方向の移動を伴って、閉鎖部材14の回転とともにその位置を変えて行く。
【0038】
この実施形態において、環状部材50はその全体が弾性材で、即ちシール材で構成されており、全体が弾性変形可能なものとされている。
但し環状部材50のほぼ全体を弾性変形しない硬質の部材で構成しておき、外周部全体を部分的に弾性を有するシール材で構成すること、或いは原水の流入口20,シャワー吐水用の流出口22,浄水の流入口24,ストレート吐水用の流出口26を閉鎖する部分のみ、外周部を部分的に弾性を有するシール材にて構成しておくことも可能である。
【0039】
次に本実施形態の切替弁10の作用を説明する。
図1及び図2(A)では、閉鎖部材14の一対の閉鎖部36,38がそれぞれシャワー吐水用の流出口22,浄水の流入口24に対向して位置した状態にあり、このとき閉鎖部材14は、閉鎖部36が環状部材50をシャワー吐水用の流出口22に向けて軸直角方向に押圧して、その流出口22を閉鎖した状態にあり、また今一方の閉鎖部38が、環状部材50を浄水の流入口24に向けて軸直角方向に押圧し、流入口24を閉鎖した状態にある。
【0040】
一方、他の流入口である原水の流入口20及び他のストレート吐水用の流出口26は、流通室18に向けて開放された状態にあり、それら流入口20と流出口26とが、即ちそれらに繋がる原水の流入流路28及びストレート吐水用の流出流路34が、流通室18を介して互いに連通した状態にある。
従ってこの状態の下では、原水の流入流路28からの原水が流入口20から連通室18へと流入し、更に流出口26から流出流路34へと流出して、原水がストレート吐水される。
【0041】
次に、この状態から閉鎖部材14を図中時計方向に回転させると、これに伴って環状部材50が偏心カムから成る閉鎖部材14の動きに従って図中上向きに移動し、そして閉鎖部材14が丁度90度回転したところで、図2(B)に示すように環状部材50の図中上面と左面とが、弁ケース12の内面の対応する上面と左面とに重なりあった状態となり、そしてその状態で閉鎖部材14における一方の閉鎖部36が、環状部材50を介して浄水の流入口24を閉鎖し、また他方の閉鎖部38が、環状部材50を介してストレート吐水用の流出口26を閉鎖した状態となる。
【0042】
このとき、他の原水の流入口20と、シャワー吐水用の流出口22とが流通室18に開放され、それら流入口20,流出口22に繋がる原水の流入流路28,シャワー吐水用の流出流路30が、流通室18を介して互いに連通状態となる。
従ってこの状態で原水が流入流路28から流入口20を経て流通室18に流入し、更に流出口22から流出流路30へと流出して原水がシャワー吐水される。
【0043】
次に閉鎖部材14を更に時計方向に90度回転させると、図2(C)に示しているように今度は環状部材50が図中右方向に移動して、図中上面と右面とが、対応する弁ケース12の内面の図中上面と右面とに重なり合った状態となり、そしてこの状態において閉鎖部材14における閉鎖部36が、環状部材50を介してストレート吐水用の流出口26を閉鎖し、また閉鎖部38が、原水の流入口20を同様にして閉鎖した状態となる。
このときには、浄水の流入口24とシャワー吐水用の流出口22とが流通室18に開放され、浄水の流入流路32とシャワー吐水用の流出流路30とが、流通室18を介して互いに連通した状態となる。
従ってこのときには、浄水が流通室18を経て流出流路30から流出し、浄水がシャワー吐水される。
【0044】
更にこの状態から閉鎖部材14を時計方向に90度回転させると、今度は環状部材50が図中下向きに移動して、図2(D)に示すように図中右面と下面とが、弁ケース12における内面の対応する右面と下面とに重なり合った状態となり、そしてこのとき閉鎖部材14の閉鎖部36が、環状部材50を介して原水の流入口20を閉鎖し、また他方の閉鎖部38が、環状部材50を介してシャワー吐水用の流出口22を閉鎖する。
このとき、浄水の流入口24とストレート吐水用の流出口20とが流通室18に開放され、浄水の流入流路32とストレート吐水用の流出流路34とが流通室18を介して互いに連通した状態となる。
このときには浄水が流入流路32から流通室18へと流入し、更に流出口26から流出流路34へと流出し、浄水がストレート吐水される。
【0045】
以上の本実施形態の切替弁10では、原水のストレート吐水,原水のシャワー吐水,浄水のストレート吐水を行うことができるのみならず、浄水のシャワー吐水も行うことができる。
しかも閉鎖部材14を単に回転操作するだけで、即ち同じ切替弁10を用いて1回の操作でそれら4つのパターンの吐水を切り替えることができる。
【0046】
また本実施形態の切替弁10は、閉鎖部材14によって隣接する1つの流入口と1つの流出口とを閉鎖することで、他の1つの流入口と1つの流出口とを連通させ、そして閉鎖すべき流入口と流出口との組合せを変えることで、流路切替えをなすものであるため、本実施形態の切替弁10では、閉鎖部材14が流路切替状態にあるとき及び流路切替えのための移動途中であるときの何れにおいても、2つの流入口20,24及び2つの流出口22,26が同時に閉鎖されること、即ち原水の流入流路28及び浄水の流入流路32の両方とが同時に閉鎖されることがない。
【0047】
従ってこの切替弁10を、浄水機能を備えた水栓の切替弁として適用したとき、切替弁10の切替動作によって、切替弁10よりも上流側の原水流路,浄水流路に1次側の圧力が籠ったり、また切替弁10の切替動作によってウォーターハンマが発生するのを防止することができる。
【0048】
またこの実施形態の切替弁10では、閉鎖部材14が弁ケース12との間で環状部材50、即ちシール材を押圧するのは、2つの流入口20,24周り,2つの流出口22,26周りの部分だけでよく、これらを除いた他の部分においては閉鎖部材14が弁ケース12との間でシール材を押圧することがないため、閉鎖部材14を回転させる際にシール材から閉鎖部材14に働く摺動抵抗を可及的に小さくすることができ、それ故この実施形態によれば、切替弁10を小さな力で軽く操作することが可能である。
加えて切替弁10の切替動作によるシール材の摩耗を可及的に小さく抑制することができる。
【0049】
以上は閉鎖部材14の閉鎖部38,40の回転移動に伴って環状部材50を従動して移動させ、かかる環状部材50のシール材を介して2つの流入口20,24及び2つの流出口22,26を閉鎖する場合の例であるが、図3(A)に示しているように閉鎖部材14を図1のものと同形状に保ちつつ、閉鎖部36,38にシール材52を固定状態に設けておき、これらシール材52を軸直角方向に押圧することで流入口20,24及び流出口22,26のそれぞれを閉鎖するようになすことも可能である。
【0050】
或いは逆に、図3(B)に示しているように弁ケース12側において流入口20,24及び流出口22,26のそれぞれの周りにシール材54を設けておき、かかるシール材54を介して流入口20,24及び流出口22,26のそれぞれを閉鎖部材14にて閉鎖するようになすことも可能である。
【0051】
また上例では弁ケース12の内面形状を正4角形状とし、環状部材50を同じく正4角形状としているが、環状部材50の全体を弾性材で即ちシール材で構成する場合において、弁ケース12の内面形状,環状部材50の形状を上例の正4角形状以外の他の様々な形状で構成することも可能である。
環状部材50を弾性変形させながら流入口20,24、流出口22,26に押し付けてそれらを閉鎖する場合には、環状部材50を様々な形状で構成することができる。
また対応する弁ケース12の内面形状も、同様に様々な形状となしておくことが可能である。
【0052】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上例では原水のストレート吐水とシャワー吐水及び浄水のストレート吐水とシャワー吐水との間で流路を切り替えるようになしているが、本発明はこれら原水と浄水との切替えではなく、例えば湯と水の切替え或いは混合水と水との切替え、その他様々な組合せの流体の流路切替えのための切替弁に適用することが可能である。
【0053】
また流出流路としてシャワー吐水用の流出流路とストレート吐水用の流出流路とを例示しているが、このように吐水形態を異ならせるために流路切替えを行う場合のみならず、単に流体の流れの方向を変えるための切替弁として本発明を適用するといったことも可能である。
更に上記実施形態では閉鎖部材14の2つの閉鎖部36,38を除いた部分の形状を傾斜形状及びストレート形状となしているが、閉鎖部36,38を除いた部分の形状は、弁ケース12の流入口20,24及び流出口22,26に接触しない形状であれば良く、上例以外の種々形状となしておくことが可能であり、更に閉鎖部材14自体の全体形状も様々に変更することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 切替弁
12 弁ケース
14 開口閉鎖部材
16 回転軸
18 流通室
20 原水の流入口(第1の流入口)
22 シャワー吐水用の流出口(第1の流出口)
24 浄水の流入口(第2の流入口)
26 ストレート吐水用の流出口(第2の流出口)
36,38 閉鎖部
50 環状部材
52,54 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体の流通室を形成する弁ケースと、該弁ケースの内部を回転軸周りに回転する開口閉鎖部材とを有し、
該弁ケースには、該回転軸周りに第1の流入口,第1の流出口,第2の流入口,第2の流出口が90度ごとの間隔で該回転軸から等距離位置に設けられているとともに、
前記開口閉鎖部材には、軸直角方向に突出した形状をなす一対の閉鎖部が前記回転軸から等距離位置に且つ回転方向に90度隔たった位置に設けられており、
前記開口閉鎖部材の回転により、前記一対の閉鎖部が、該開口閉鎖部材の回転方向に隣接した1つの前記流入口と1つの前記流出口とをシール材を介して軸直角方向に押圧状態に閉鎖し、他の1つの流入口と他の1つの流出口とを前記流通室に開放し、該流通室を介して連通状態とするようになしてあることを特徴とする切替弁。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の流体が水道水から成る原水であり、前記第2の流体が水道水を浄化した後の浄水であることを特徴とする切替弁。
【請求項3】
請求項2において、前記第1の流出口と前記第2の流出口との何れか一方が原水又は浄水をストレート吐水するための流出口であり、他方が該原水又は浄水をシャワー吐水するための流出口であることを特徴とする切替弁。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記2つの流入口と2つの流出口とは、前記弁ケースの内面の他部よりも前記回転軸に近い位置に設けてあることを特徴とする切替弁。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記開口閉鎖部材と前記弁ケースとの間には、全体がシール材で構成された若しくは外周部が部分的にシール材で構成された環状部材が位置移動可能に設けてあり、
前記開口閉鎖部材は偏心カムを成していて、該開口閉鎖部材が回転に伴って該環状部材を位置移動させ、前記シール材を前記一対の閉鎖部と前記1つの流入口及び1つの流出口との間に挟み込むようになしてあることを特徴とする切替弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−251569(P2012−251569A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122189(P2011−122189)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】