説明

刈取収穫機の刈取昇降制御装置

【課題】圃場面の状況や刈取対象穀稈の植立状態等の作業状況の違いに応じて適切な刈取昇降制御を行うことにより、良好な刈取作業を行うことが可能となる刈取収穫機の刈取昇降制御装置を提供する。
【解決手段】刈取部における刈幅方向の異なる箇所に配備された複数の接地式の対地高さ検出手段及び目標対地高さ設定手段の情報に基づいて昇降操作手段を制御する刈取昇降制御を実行する制御手段が、手動操作式の制御モード切換指令手段の指令に基づいて、2個の対地高さ検出手段のいずれかが目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部を上昇させる少数検出時上昇処理モードと、全ての対地高さ検出手段が目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部を上昇させる多数検出時上昇処理モードとを切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部を走行機体に対して昇降操作する昇降操作手段と、前記刈取部における刈幅方向の異なる箇所に配備された複数の接地式の対地高さ検出手段と、前記刈取部の目標対地高さを設定する目標対地高さ設定手段と、前記対地高さ検出手段及び前記目標対地高さ設定手段の情報に基づいて前記昇降操作手段を制御する制御手段とが備えられている刈取収穫機の刈取昇降制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記刈取収穫機の刈取昇降制御装置において、従来では、前記制御手段が、常に、複数の対地高さ検出手段のうちの少なくともいずれか1つが目標対地高さよりも低い対地高さを検出すると刈取部を上昇させるように前記昇降操作手段を制御するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−201588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成においては、刈取部における刈幅方向の一部の箇所において局部的に地面が突出しているような突起部が存在している場合には、その突起部に対応する位置に設けられる対地高さ検出手段が目標対地高さよりも低い対地高さを検出することにより刈取部を上昇させることができので、突起部の存在に起因して刈取部が地面に突っ込むことを適切に回避させることができるものであるが、次のような点で未だ改善すべき点がある。
【0005】
植立茎稈を刈り取る刈取作業を行う場合、植立茎稈が常に直立姿勢で植えられているとは限らず、倒伏している植立茎稈を刈り取る場合もあるが、倒伏している植立茎稈の刈取作業において、刈取部の上昇操作が行われると、例えば、走行方向上手側に向かって植立茎稈が倒伏しているような迎え刈り形態で刈取作業を行っている状態においては、刈取部の上部に覆いかぶさるような状態となっている植立茎稈が、刈取部の上昇に伴って無理に持ち上げられて千切れる虞があり、又、走行方向下手側に向かって植立茎稈が倒伏しているような追い刈り形態で刈取作業を行っている場合には、刈取部に備えさせた引起し装置にて係止されながら引起される植立茎稈が刈取部の上昇に伴って無理に引き上げられて引き抜かれる虞があるため、刈取部の上昇操作はできるだけ行わない方がよい。
【0006】
しかしながら、すなわち、倒伏している植立茎稈を刈り取るときには、刈取部の目標対地高さを直立姿勢の植立茎稈を刈り取るときよりも低く設定して、刈取部が地面に近付いた状態で刈取作業を行うことになり、このような作業状況では、上記従来構成のように2個の対地高さ検出手段のうちの少なくともいずれか一つが目標対地高さよりも低い対地高さを検出すると刈取部を上昇させる構成であれば、刈取部の上昇操作が行われる頻度が大となるおそれがある。
【0007】
その結果、従来構成では、倒伏している植立茎稈の刈取作業において、刈取部の上昇操作はできるだけ行わない方がよいにもかかわらず、刈取部の上昇操作が行われる頻度が大になることにより良好な刈取作業を行えない虞があるという不利な面があった。
【0008】
本発明の目的は、作業状況の違いに応じて刈取部の上昇処理を適切な制御モードに切り換えることにより良好な刈取作業を行うことが可能となる刈取収穫機の刈取昇降制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る刈取収穫機の刈取昇降制御装置は、刈取部を走行機体に対して昇降操作する昇降操作手段と、前記刈取部における刈幅方向の異なる箇所に配備された複数の接地式の対地高さ検出手段と、前記刈取部の目標対地高さを設定する目標対地高さ設定手段と、前記対地高さ検出手段及び前記目標対地高さ設定手段の情報に基づいて前記昇降操作手段を制御する刈取昇降制御を実行する制御手段とが備えられているものであって、
その第1特徴構成は、前記制御手段が、
前記刈取昇降制御における上昇処理と下降処理のうちの上昇処理についての制御モードとして、前記複数の対地高さ検出手段のいずれかが前記目標対地高さよりも低い値を検出すると前記刈取部を上昇させる少数検出時上昇処理モードと、前記複数の対地高さ検出手段のうちの2個以上の前記対地高さ検出手段が又は全ての前記対地高さ検出手段が前記目標対地高さよりも低い値を検出すると前記刈取部を上昇させる多数検出時上昇処理モードとを備え、且つ、
手動操作式の制御モード切換指令手段の指令に基づいて、前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換えるように構成されている点にある。
【0010】
第1特徴構成によれば、制御手段は、手動操作式の制御モード切換指令手段の指令に基づいて、前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換わる。そして、前記少数検出時上昇処理モードでは、複数の対地高さ検出手段のいずれかが目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部を上昇させる形態で昇降操作手段を制御する。一方、前記多数検出時上昇処理モードでは、複数の対地高さ検出手段のうちの2個以上の対地高さ検出手段が又は全ての対地高さ検出手段が目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部を上昇させる形態で昇降操作手段を制御する。
【0011】
例えば、刈取部の目標対地高さを高めに設定している状態で直立姿勢の植立茎稈を刈り取るような場合には、作業者が制御モード切換指令手段を手動操作して指令することで前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態に切り換えておくと、刈取部における刈幅方向の一部の箇所において局部的に地面が突出しているような突起部が存在しているような場合であっても、複数の対地高さ検出手段のうちの突起部に対応する位置に設けられる対地高さ検出手段が目標対地高さよりも低い値を検出することにより、刈取部を上昇させるので、そのような突起部への刈取部の突っ込みを適切に回避させることができ、良好な刈取作業を行うことができる。
【0012】
そして、倒伏している植立茎稈を刈り取るような場合には、作業者が制御モード切換指令手段を手動操作して指令することで前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態に切り換えておくと、目標対地高さを低めに設定して作業を行っても、複数の対地高さ検出手段のうちの2個以上の対地高さ検出手段が又は全ての前記対地高さ検出手段が前記目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部を上昇させることになり、複数の対地高さ検出手段のうちのいずれか1つだけが目標対地高さよりも低い値を検出することがあっても刈取部を上昇させないので、刈取部の上昇操作が行われる頻度がそれだけ少ないものになって、穀稈の引き抜き等が発生するおそれを少なくして、刈取作業が良好に行えるものになる。
【0013】
説明を加えると、穀稈が倒伏している場合には、圃場は軟弱な湿田である場合が多く、刈取部における刈幅方向の一部の箇所において圃場面に突起部が存在しており、刈取部がそのような突起部に突っ込むようなことがあっても、圃場面が比較的軟弱であることから刈取部が損傷するおそれは少ないと考えられる。一方、2個以上の対地高さ検出手段が又は全ての前記対地高さ検出手段が前記目標対地高さよりも低い値を検出するのは、圃場面が広い範囲にわたって突出している状態やあるいは車体が前後に傾斜して刈取部全体が地面に接近しているような場合が考えられるが、このような場合には、そのまま刈取作業を続行すると、刈取部が大きく地面内に埋ってしまうおそれもあるので、このような場合には刈取部を上昇させることで、地面内に埋まることを回避させるのである。
【0014】
従って、第1特徴構成によれば、作業状況の違いに応じて刈取部の上昇処理を適切な制御モードに切り換えることにより良好な刈取作業を行うことが可能となる刈取収穫機の刈取昇降制御装置を提供できるに至った。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記目標対地高さが制御モード変更用設定高さ以下であるときには、前記制御モード切換指令手段の指令に基づいて、前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換えるように構成され、且つ、前記目標対地高さが前記制御モード変更用設定高さより高いときには、前記少数検出時上昇処理モードを実行するように構成されている点にある。
【0016】
第2特徴構成によれば、前記目標対地高さが制御モード変更用設定高さ以下であるときには、前記制御手段は、前記制御モード切換指令手段の指令に基づいて、前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換えることになる。一方、前記目標対地高さが前記制御モード変更用設定高さより高いときには、前記制御手段は前記少数検出時上昇処理モードを実行することになる。
【0017】
すなわち、前記目標対地高さが制御モード変更用設定高さ以下の低い値に設定されるのは、倒伏している植立茎稈を刈り取る場合が多いが、そのように倒伏している植立茎稈を刈り取る場合には、前記制御モード切換指令手段の指令に基づいて前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態に切り換えておくと、上述した如く刈取部の上昇操作が行われる頻度が少ないものになって穀稈の引き抜き等が発生するおそれを少なくして、刈取作業が良好に行えるものになる。
【0018】
しかし、目標対地高さが制御モード変更用設定高さ以下の低い値に設定されている場合であっても、倒伏している植立茎稈を刈り取る場合に限るものではなく、直立状態の植立茎稈を刈り取る場合であっても刈跡の残株をできるだけ短かくするために刈取部の目標対地高さを設定値よりも低くした状態で刈取作業を行うような場合もある。ところで、直立姿勢の植立茎稈を刈り取るような作業状況では、圃場が一般的に乾田である場合が多く、刈取部が地面に突っ込むと損傷を受けるおそれがあるが、このような場合には、制御モード切換指令手段の指令に基づいて前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態に切り換えておくと、突起部の存在等に起因して刈取部が地面へ突っ込みことを回避でき、刈取作業が良好に行えるものになる。
【0019】
そして、前記目標対地高さが制御モード変更用設定高さよりも高いときは、直立状態の植立茎稈を刈り取る場合であるが、このとき、前記制御手段は前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態であるから、刈取部における刈幅方向の一部の箇所において局部的に地面が突出しているような突起部が存在しているような場合であっても、そのような突起部への刈取部の突っ込みを適切に回避させることができ、刈取作業が良好に行えるものになる。
【0020】
従って、第2特徴構成によれば、倒伏している植立茎稈を刈り取る場合が多いことが想定される前記目標対地高さが制御モード変更用設定高さ以下の低い値に設定される場合に、前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態に切り換えることにより、穀稈の引き抜き等が発生するおそれを少なくして、刈取作業が良好に行えるものとなり、前記目標対地高さが制御モード変更用設定高さよりも高いときには、前記少数検出時上昇処理モードを実行することで、突起部への刈取部の突っ込みを適切に回避させることができ、刈取作業が良好に行えるものになり、使い勝手がよいものとなる。
【0021】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、前記制御モード変更用設定高さを変更設定する手動操作式の制御モード変更用高さ変更手段が設けられている点にある。
【0022】
第3特徴構成によれば、手動操作式の制御モード変更用高さ変更手段によって前記制御モード変更用設定高さを変更設定することができるから、そのときの作業状況に応じて、適宜、前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換えることができる範囲を変更することで、作業者にとって使い勝手がよいものとなる。
【0023】
本発明の第4特徴構成は、刈取部を走行機体に対して昇降操作する昇降操作手段と、前記刈取部における刈幅方向の異なる箇所に配備された複数の接地式の対地高さ検出手段と、前記刈取部の目標対地高さを設定する目標対地高さ設定手段と、前記対地高さ検出手段及び前記目標対地高さ設定手段の情報に基づいて前記昇降操作手段を制御する刈取昇降制御を実行する制御手段とが備えられている刈取収穫機の刈取昇降制御装置であって、
前記制御手段が、
前記刈取昇降制御における上昇処理と下降処理のうちの上昇処理として、前記目標対地高さが制御状態切換用設定高さよりも高いときには、前記複数の対地高さ検出手段のいずれかが前記目標対地高さよりも低い値を検出すると前記刈取部を上昇させる少数検出時上昇処理モードを実行し、前記目標対地高さが前記制御状態切換用設定高さ以下であるときには、前記複数の対地高さ検出手段のうちの2個以上の前記対地高さ検出手段が又は全ての前記対地高さ検出手段が前記目標対地高さよりも低い値を検出すると前記刈取部を上昇させる多数検出時上昇処理モードを実行するように構成され、
前記制御状態切換用設定高さを変更設定する手動操作式の制御状態切換用高さ変更手段が備えられている点にある。
【0024】
第4特徴構成によれば、前記制御手段は、前記目標対地高さが制御状態切換用設定高さよりも高いときには、前記複数の対地高さ検出手段のいずれかが前記目標対地高さよりも低い値を検出すると前記刈取部を上昇させる少数検出時上昇処理モードを実行する。一方、前記目標対地高さが前記制御状態切換用設定高さ以下であるときには、前記複数の対地高さ検出手段のうちの2個以上の前記対地高さ検出手段が又は全ての前記対地高さ検出手段が前記目標対地高さよりも低い値を検出すると前記刈取部を上昇させる多数検出時上昇処理モードを実行する。そして、作業者は手動操作式の制御状態切換用高さ変更手段を手動操作することで、前記制御状態切換用設定高さを任意の高さに変更設定することができるのである。
【0025】
すなわち、作業状況に応じて変更設定される前記目標対地高さに対して、その目標対地高さを維持したまま前記制御状態切換用設定高さを変更することで前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換えることができる。
【0026】
例えば、刈取部の目標対地高さを高めに設定している状態で直立姿勢の植立茎稈を刈り取るような場合には、前記目標対地高さよりも低めに前記制御状態切換用設定高さを設定すると、前記少数検出時上昇処理モードを実行するので、刈取部における刈幅方向の一部の箇所において局部的に地面が突出しているような突起部存在しているような場合であっても、複数の対地高さ検出手段のうちの突起部に対応する位置に設けられる対地高さ検出手段が目標対地高さよりも低い値を検出することにより、刈取部を上昇させるので、そのような突起部への刈取部の突っ込みを適切に回避させることができ、良好な刈取作業を行うことができる。
【0027】
又、倒伏している植立茎稈を刈り取るような場合には、前記目標対地高さよりも高めに前記制御状態切換用設定高さが設定されると、前記多数検出時上昇処理モードを実行するので、複数の対地高さ検出手段のうちの2個以上の対地高さ検出手段が又は全ての前記対地高さ検出手段が前記目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部を上昇させることになり、複数の対地高さ検出手段のうちのいずれか1つだけが目標対地高さよりも低い値を検出することがあっても刈取部を上昇させないので、刈取部の上昇操作が行われる頻度がそれだけ少ないものになって、穀稈の引き抜き等が発生するおそれを少なくして、刈取作業が良好に行えるものになる。
【0028】
説明を加えると、穀稈が倒伏している場合には、圃場は軟弱な湿田である場合が多く、刈取部における刈幅方向の一部の箇所において圃場面に突起部が存在しており、刈取部がそのような突起部に突っ込むようなことがあっても、圃場面が比較的軟弱であることから刈取部が損傷するおそれは少ないと考えられる。一方、2個以上の対地高さ検出手段が又は全ての前記対地高さ検出手段が前記目標対地高さよりも低い値を検出するのは、圃場面が広い範囲にわたって突出している状態やあるいは車体が前後に傾斜して刈取部全体が地面に接近しているような場合が考えられるが、このような場合には、そのまま刈取作業を続行すると、刈取部が大きく地面内に埋ってしまうおそれもあるので、このような場合には刈取部を上昇させることで、地面内に埋まることを回避させるのである。
【0029】
又、倒伏していない直立姿勢の植立茎稈を刈り取る場合であっても、例えば刈跡を短くするために刈取部の目標対地高さを低めに設定した状態で刈取作業を行う場合には、前記目標対地高さよりもさらに低めに前記制御状態切換用設定高さを設定すると、前記少数検出時上昇処理モードを実行するので、刈取部における刈幅方向の一部の箇所において突起部が存在しているような場合においても刈取部を上昇させることができ、刈取部の地面への突っ込みを適切に回避させることができ、良好な刈取作業を行うことができる。
【0030】
従って、第4特徴構成によれば、作業状況の違いに応じて刈取部の上昇処理を適切な制御モードに切り換えることにより良好な刈取作業を行うことが可能となる刈取収穫機の刈取昇降制御装置を提供できるに至った。
【0031】
本発明の第5特徴構成は、第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記制御手段が、前記多数検出時上昇処理モードにおいて、前記刈取部を上昇させるときは、前記複数の対地高さ検出手段夫々の検出値のうちで対地高さが最も低い検出値と前記目標対地高さとの偏差に基づいて求めた目標上昇量を上昇させる形態で前記昇降操作手段の作動を制御するように構成されている点にある。
【0032】
第5特徴構成によれば、前記制御手段は、前記刈取部を上昇させるときは、前記複数の対地高さ検出手段夫々の検出値のうちで対地高さが最も低い検出値と前記目標対地高さとの偏差に基づいて求めた目標上昇量を上昇させる形態で前記昇降操作手段の作動を制御するので、刈取部が低い位置にあって地面に突っ込むおそれがあるような場合には、複数の対地高さ検出手段のうちで最も低い値を基準に目標上昇量を求めて上昇させるのである。
【0033】
従って、第5特徴構成によれば、刈取部が刈幅方向の一端側が高く他端側が低くなる傾斜状態になっているような場合や、刈幅方向の一部箇所において圃場面に突起部が存在するような場合に、複数の対地高さ検出手段のうちで低い値を基準に目標上昇量を求めて上昇させるので、刈取部が地面に突っ込むことをより適切に回避し易いものとなる。
【0034】
本発明の第6特徴構成は、第1特徴構成〜第5特徴構成のいずれかに加えて、前記制御手段が、前記刈取昇降制御における前記下降処理として、前記複数の対地高さ検出手段の全てが前記目標対地高さよりも高い値を検出した場合に前記刈取部を下降させる下降開始処理、及び、前記複数の対地高さ検出手段のうちのいずれかが前記目標対地高さになると前記刈取部の下降を停止させる下降停止処理を実行するよう構成されている点にある。
【0035】
第6特徴構成によれば、複数の対地高さ検出手段の全てが前記目標対地高さよりも高い値を検出すると刈取部を下降させるようにしたので、例えば、刈取部の刈幅方向の一部だけが高い位置にあり、他の部分が低い位置にある状態で下降させて刈取部が地面に突っ込む等の不都合がなく、確実に刈取部が高い位置にあるときにだけ下降させることができる。そして、刈取部を下降させるときは、複数の対地高さ検出手段のいずれかの検出値が目標対地高さになるまで刈取部を下降させるようにしたから、刈取部を地面に対して確実に目標対地高さに対応する位置まで下降させることができる。
【0036】
従って、第6特徴構成によれば、下降処理において、確実に刈取部が高い位置にあるときにだけ下降を開始させるので下降操作を必要以上に頻繁に行うことがなく、しかも、刈取部を地面に対して確実に目標対地高さに対応する位置まで下降させることができるので、その後の刈取作業を良好に行うことができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る刈取収穫機の刈取昇降制御装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に刈取収穫機としてのコンバインの側面図が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1L,1Rを備えて走行可能に構成された走行機体Vの前部に、圃場に植えられた穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を後方に向けて搬送するように構成された刈取部2が昇降自在に備えられ、走行機体Vには、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置3、脱穀された穀粒を貯留するグレンタンク4、搭乗運転部5等を備えて構成されている。
【0038】
前記刈取部2は、刈取条数分の刈取対象条の植立茎稈を振り分け分草する複数の分草具17、植立茎稈を立姿勢に引起す引起し装置6、引起された穀稈の株元側を切断するバリカン型刈取装置7、刈取られた穀稈を徐々に横倒れ姿勢に姿勢変更させながら後方に搬送する縦搬送装置8等で構成され、横向きの軸芯P1まわりで回動自在に走行機体Vに支持されている伝動ケース9の先端側に連結されている昇降操作手段としての昇降用油圧シリンダC1(以下、昇降シリンダという)により駆動昇降自在に構成されている。
【0039】
図2に示すように、前記伝動ケース9の先端部に中央部が連結している機体横向きの伝動ケース15、この横向き伝動ケース15が備えている支持部材の機体横方向での複数箇所から機体前方向きに複数本の丸パイプ状の分草フレーム16を延出させて、それら複数本の分草フレーム16の基端部にわたって刈取装置7を取り付け、各分草フレーム16の先端部に分草具17を固定してある。
【0040】
そして、このコンバインでは、左右の走行装置1L,1Rの接地部に対する走行機体Vの左右傾斜角を変更操作自在な姿勢変更操作手段100が設けられている。以下、その構成について説明する。
【0041】
先ず、左右の走行装置1L,1Rの走行機体Vへの取付構造を説明する。尚、左右の走行装置1L,1Rは夫々同一構成であるから、そのうち左側の走行装置1Lについて以下に説明し、右側の走行装置1Rについてはその説明を省略する。
図3に示すように、走行機体Vを構成する前後向き姿勢の主フレーム10に対して固定される支持フレーム11の前端側には駆動輪体12aが回転自在に支持されるとともに、複数個の遊転輪体12bを前後方向に並べた状態で枢支し、且つ、後端部にテンション輪体12cを支持したトラックフレーム13が支持フレーム11に対して上下動可能に装着されている。そして、駆動輪体12aとテンション輪体12c及び各遊転輪体12bにわたり無端回動体であるクローラベルトBが巻回されている。
【0042】
前記支持フレーム11の前部側には水平軸芯P2周りで回動可能に側面視で略L字形に構成される前ベルクランク14aが枢支され、支持フレーム11の後部側には水平軸芯P3周りで回動可能に側面視で略L字形に構成される後ベルクランク14bが枢支されている。そして、前ベルクランク14aの下方側端部がトラックフレーム13の前部側箇所に枢支連結され、後ベルクランク14bの下方側端部は、ストローク吸収用の補助リンク14b1を介して、トラックフレーム13の後部側箇所に枢支連結されている。一方、前後ベルクランク14a,14bの夫々の上方側端部には、夫々、油圧シリンダC2、C3のシリンダロッドが連動連結されている。前記各油圧シリンダC2,C3のシリンダ本体側は主フレーム10における横フレーム部分に枢支連結されており、前記各油圧シリンダC2,C3は夫々複動型の油圧シリンダにて構成されている。
【0043】
そして、前ベルクランク14aに対応する油圧シリンダC2(以下、左前シリンダという)を最も伸張させるとともに、後ベルクランク14bに対応する油圧シリンダC3(以下、左後シリンダという)を最も短縮させると、図3に示すように、トラックフレーム13が支持フレームに受け止め支持され、トラックフレームが主フレーム10に最も近づいてほぼ平行状態となる。この状態を下限基準姿勢という。
【0044】
そして、図3に示すような前記下限基準姿勢にある状態から、左前シリンダC2を短縮作動させ、且つ、左後シリンダC3を伸長作動させると、図4に示すように、走行機体Vが接地部に対して平行姿勢のまま離間する方向に姿勢変更することになり、逆に、図4に示す状態から、左前シリンダC2を伸長作動させ、且つ、左後シリンダC3を短縮作動させると、走行機体Vが接地部に対して平行姿勢のまま近づく方向に姿勢変更することになる。又、左前シリンダC2又は左後シリンダC3の一方を作動させることで、前下がり状態や後下がり状態に姿勢変更させることもできる。
【0045】
右側の走行装置1Rにおいても同様に、機体前部側に位置する右前シリンダC4と、機体後部側に位置する右後シリンダC5とが夫々備えられ、左側の走行装置1Lと同様な動作を行う構成となっている。従って、前記姿勢変更操作手段100が4個の油圧シリンダC2,C3,C4,C5を備えて構成される。尚、詳述はしないが、4個の油圧シリンダC2,C3,C4,C5の夫々に対応させて、各ベルクランク14a,14bの回動量に基づいて前記各油圧シリンダの操作量を検出するストロークセンサが設けられている。
【0046】
次に、走行機体Vの左右傾斜姿勢を制御するための構成について説明する。
図5に示すように、マイクロコンピュータ利用の制御装置Hが設けられ、この制御装置Hに、走行機体Vの水平基準面からの左右傾斜角を検出する重力式の左右傾斜角センサ45と、姿勢変更スイッチユニットSUの夫々の情報が入力されている。そして、制御装置Hから4個の機体姿勢変更用の油圧シリンダC2〜C5を油圧制御するための油圧制御用の電磁弁46〜49に対する駆動信号が夫々出力されている。尚、図示しないが、制御装置Hには前記各ストロークセンサの検出情報も入力される。
【0047】
図6に示すように、姿勢変更スイッチユニットSUには、走行機体Vの目標とする左右傾斜角(目標傾斜角)を設定する目標傾斜角設定手段としての左右傾斜角設定器50、姿勢制御の一例としての水平制御の入り切りを指令する水平自動スイッチ51、水平制御の入り状態を示す水平ランプ52、及び、十字レバー式の操作具53にて作動する手動指令用の右上げスイッチ53a、左上げスイッチ53b、機体上げスイッチ53c及び機体下げスイッチ53dが設けられている。
【0048】
又、上記左右傾斜角設定器50には、水平スイッチ50a、左傾斜スイッチ50b及び右傾斜スイッチ50cが備えられている。つまり、水平スイッチ50aを押すと、目標傾斜角として水平状態に対応する値が設定され、左傾斜スイッチ50bを押すと、現在設定されている目標傾斜角が段階的に左傾斜方向に修正され、右傾斜スイッチ50cを押すと、現在設定されている目標傾斜角が段階的に右傾斜方向に修正される。そして、左右傾斜角設定器50にて設定されている左右傾斜角については、搭乗運転部5の前方側に設けた表示装置(図示しない)に、図7に示すように、1〜7の7段階(目標傾斜角=0の第4段階が水平状態に対応する値を表わし、プラスの角度が右傾斜方向、マイナスの角度が左傾斜方向を夫々表わす)のいずれであるかが表示される。
【0049】
そして、水平自動スイッチ51にて水平制御の入りが指令されると、制御装置Hは水平制御を実行する状態つまり姿勢制御実行モードに切り換わり、水平制御の切りが指令されると、制御装置Hは水平制御を実行しない制御停止状態つまり姿勢制御停止モードに切り換わることになる。
【0050】
前記制御装置Hによる前記水平制御について簡単に説明する。
左右傾斜角検出センサ45にて検出される左右傾斜角の検出値と左右傾斜角設定器50にて設定された目標傾斜角との偏差が制御用の不感帯を走行機体Vの左傾斜側に外れていれば、偏差が制御用の不感帯に収まるまで次の動作を行う。つまり、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に達するまで、右前シリンダC4を伸長作動させるとともに右後シリンダC5を短縮作動させ、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されれば、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが上限位置に達するまで、左前シリンダC2を短縮作動させるとともに左後シリンダC3を伸長作動させる。
【0051】
前記偏差がローリング用の不感帯を走行機体Vの右傾斜側に外れていれば、偏差が制御用の不感帯に収まるまで次の動作を行う。つまり、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが下限位置に達するまで、左前シリンダC2を伸長作動させるとともに左後シリンダC3を短縮作動させ、左前シリンダC2及び左後シリンダC3のいずれかが下限位置に操作されれば、右前シリンダC4及び右後シリンダC5のいずれかが上限位置に達するまで、右前シリンダC4を短縮作動させるとともに右後シリンダC5を伸長作動させる。
【0052】
又、このコンバインは、刈取部2の対地高さを検出する複数の対地高さ検出手段としての2個の対地高さ検出装置Aと、刈取部2の目標対地高さを設定する目標対地高さ設定手段としての目標対地高さ設定器54とが備えられ、制御手段としての制御装置Hが対地高さ検出装置A及び目標対地高さ設定器54の情報に基づいて、昇降シリンダC1の作動を制御する刈取部昇降制御を実行するよう構成されている。
【0053】
そして、制御装置Hは、前記刈取昇降制御を実行する制御モードとして、刈取部2の対地高さが目標対地高さよりも低いときに刈取部2を上昇させる上昇処理及び刈取部2の対地高さが目標対地高さよりも高いときに刈取部2を下降させる下降処理の夫々を実行する形態で昇降シリンダC1の作動を制御する自動昇降制御モードと、前記上昇処理及び前記下降処理のうちの前記上昇処理のみを実行する形態で昇降シリンダC1の作動を制御する自動上昇制御モードとを備えるように構成され、且つ、手動操作式のモード切換指令手段としての刈取昇降モード切換スイッチ56の切り換え指令に基づいて、前記自動昇降制御モードを実行する状態と前記自動上昇制御モードを実行する状態とに切り換え自在に構成されている。
【0054】
又、制御装置Hは、昇降指令手段としての後述する上昇スイッチSW1及び下降スイッチSW2の指令に基づいて昇降シリンダC1の作動を制御する手動制御処理を実行するよう構成されている。
【0055】
次に、対地高さ検出装置Aの構成について説明する。
図2に示すように、刈取部2の複数の分草フレーム16のうち、機体横幅方向の左右両側端部よりも1個だけ幅方向内側に位置する2つの分草フレーム16において、分草具17の機体後部側に刈取部2の対地高さを検出する対地高さ検出装置Aが夫々備えられている。つまり、対地高さ検出装置Aは刈取部2の刈幅方向に位置を異ならせて2個配備される構成となっており、各対地高さ検出装置Aは、下方付勢される状態で刈取部2に対して上下揺動自在に支持された接地体23の地面との接触に伴って変化する昇降位置に基づいて刈取部2の対地高さを検出する構成となっている。
【0056】
図8に示すように、対地高さ検出装置Aが配備される分草フレーム16の前部は山形に屈曲されており、この分草具フレーム16の前端部をプレス加工して縦板状に形成した支持部16aに、分草具17の背部に連結固定された縦向きの取付け板17aが2本のボルト18によって側方から締付け固定されるとともに、取付け板17aに対地高さ検出装置Aが支持されている。
【0057】
対地高さ検出装置Aは、前記取付け板17aに連結支持されたセンサブラケット21、このセンサブラケット21の側面に取付けられた検知ケース22、検知ケース22の側面前部に横向きの前部支点Xを中心に上下揺動可能に支持された接地体23、検知ケース22に取付けられた回転式ポテンショメータ利用の角度センサ24等で構成されている。前記接地体23は、図示しないバネにより下方に向けて回動付勢され、接地体23が地面Gの高さ変化に円滑に追従して上下揺動するようになっている。そして、接地追従による接地体23の上下変位を刈取部2の対地高さとして角度センサ24にて検出する構成となっている。
【0058】
そして、搭乗運転部5には、刈取部2の目標対地高さを設定するための目標対地高さ設定手段としての目標対地高さ設定器54、刈取昇降制御を実行する自動入り状態と制御を実行しない自動切り状態とに切り換え自在な自動昇降入切スイッチ55、前記自動昇降モードと前記自動上昇モードのいずれかに切換え自在な2位置切り換え式の刈取昇降モード切換スイッチ56、上昇処理についての制御モードを切り換える上昇処理モード切換スイッチ62、手動操作に基づいて刈取部2を昇降操作させるための昇降レバー57、この昇降レバー57を中立位置から上昇位置に操作するとオンする上昇スイッチSW1、昇降レバー34を中立位置から下降位置に操作するとオンする下降スイッチSW2夫々が設けられ、図5に示すように、上記各スイッチ55,56,SW1,SW2の検出情報、及び、目標対地高さ設定器54の情報は制御装置Hに入力され、制御装置Hからは昇降シリンダC1を油圧制御するための油圧制御用の電磁弁58に対する駆動信号が出力されている。
【0059】
前記目標対地高さ設定器54は、つまみ54aを回転操作して目標対地高さを複数段階(例えば9段階)に切り換える構成となっており、操作領域の中央部(レベル5)に操作すると、標準的な高さ(例えば30mm)である標準値が設定され、それよりも右方向(レベル6〜9)に回動すると標準値よりも高い対地高さが設定され、中央部より左方向(レベル1〜4)に回動すると標準値よりも低い対地高さが設定される構成となっている。
【0060】
又、刈取部2の走行機体Vに対する枢支部に刈取部2の機体に対する高さを検出する対機体高さ検出手段としてのポテンショメータ形式の対機体高さセンサ59が設けられ、この対機体高さセンサ59の検出情報も制御装置Hに入力される構成となっている。又、クローラ走行装置1L,1Rへの走行駆動系に、走行出力軸の回転速度を検出する回転速度センサ60が備えられ、制御装置Hは、この回転速度センサ60の検出情報と時間経過情報とから走行機体Vの走行距離を演算にて求めるように構成されている。
【0061】
前記制御装置Hは、昇降レバー57が上昇位置に操作されて上昇スイッチSW1がオンして上昇が指令されると、上昇が指令されている間は刈取部2を上昇させるべく昇降シリンダC1を作動させる。又、昇降レバー57が下降位置に操作されて下降スイッチSW2がオンして下降が指令されると、その下降が指令されている間は刈取部2を下降させるべく昇降シリンダC1を作動させる。このような手動制御処理は後述の刈取昇降制御よりも優先して実行される。この昇降レバー57の指令による昇降操作を行ったときは、昇降レバー57の指令を停止させると、指令が停止されたときの昇降位置で刈取部2が昇降停止してその位置で保持されることになる。
【0062】
又、制御装置Hは、自動昇降入切スイッチ55がオンに設定されること、且つ、手動昇降指令による操作が行われて刈取部2の対機体高さが昇降可能範囲の中間レベルに設定された設定高さを下回ることの各条件が成立した場合に、前記各対地高さ検出装置Aの検出情報に基づく刈取昇降制御を実行するように構成されている。尚、この刈取昇降制御を実行している状態においても、昇降レバー57による手動昇降指令があれば優先して操作を実行することになる。
【0063】
そして、制御装置Hが、前記刈取昇降制御における上昇処理と下降処理とのうちの上昇処理についての制御モードとして、2個の対地高さ検出装置Aのいずれかが目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部を上昇させる少数検出時上昇処理モードと、2個の対地高さ検出装置Aのうち全ての対地高さ検出装置Aが目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部2を上昇させる多数検出時上昇処理モードとを備え、且つ、手動操作式の制御モード切換指令手段としての上昇処理モード切換指令スイッチ62の指令に基づいて、前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換えるように構成されている。
【0064】
さらに説明を加えると、制御装置Hは、目標対地高さが制御モード変更用設定高さ以下であるときには、上昇処理モード切換指令スイッチ62の指令に基づいて、前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換えるように構成され、且つ、目標対地高さが前記制御モード変更用設定高さより高いときには、前記少数検出時上昇処理モードを実行するように構成されている。
【0065】
そして、制御装置Hは、刈取昇降制御における下降処理として、2個の対地高さ検出装置Aの全てが目標対地高さよりも高い値を検出した場合に刈取部2を下降させる下降開始処理、及び、2個の対地高さ検出装置Aのうちのいずれかが目標対地高さになると刈取部2の下降を停止させる下降停止処理を実行するよう構成されている。
【0066】
以下、制御装置Hにおける刈取昇降制御の具体的な制御動作について図9〜図11に示すフローチャートに基づいて説明する。尚、この刈取昇降制御を実行するための条件は、上述したように、自動昇降入切スイッチ55がオン操作されており、刈取部2の対機体高さが設定高さを下回っていることである。又、この処理は、設定単位時間(例えば10msec)毎に繰り返し実行されることになる。
【0067】
この刈取昇降制御においては、先ず、後述するような上昇操作を実行していない状態であれば、刈取昇降モード切換スイッチ56による指令情報に基づいて、自動昇降モード及び自動上昇モードのいずれが指令されているかを判別する(ステップ1,2)。そして、自動昇降モードが指令されていれば、下降判別タイミングになっているか否かを判別する(ステップ3)。具体的には、前記回転速度センサ60の回転速度情報に基づいて演算にて求めた走行機体Vの走行距離が設定距離(30cm)に達する毎に下降判別タイミングであると判別するように構成されている。
【0068】
ステップ2にて自動上昇モードが指令されているか、あるいは、自動昇降モードが指令されていてもステップ3にて下降判別タイミングでないと判別されると、上昇処理モード切換指令スイッチ62にて前記少数検出時上昇処理モードが指令されているか前記多数検出時上昇処理モードが指令されているかを判別する(ステップ4)。
【0069】
前記多数検出時上昇処理モードが指令されていれば、目標対地高さ設定器54にて設定される目標対地高さが制御モード変更用設定高さ以下の状態であるか否か、具体的には、目標対地高さ設定器54にて設定される目標対地高さがレベル1〜9のうちレベル3よりも高い側に設定されているかレベル3以下に設定されているかを判別する(ステップ5)。
【0070】
目標対地高さ設定器54にて設定される目標対地高さがレベル3以下に設定されていると、2つの対地高さ検出装置Aの検出値が、夫々、目標対地高さ設定器54にて設定された目標対地高さよりも低い場合、具体的には目標対地高さに対して設定されている昇降制御用の不感帯を低い側に外れている場合に刈取部2を上昇させる上昇処理を実行する(ステップ6,7)。
【0071】
ステップ4にて上昇処理モード切換指令スイッチ62にて前記少数検出時上昇処理モードが指令されていることが判別されたとき、及び、前記目標対地高さがレベル3よりも高い側に設定されているときは、2つの対地高さ検出装置Aのうちのいずれかのものの検出値が目標対地高さ設定器54にて設定された目標対地高さよりも低い場合、具体的には目標対地高さに対して設定されている昇降制御用の不感帯を低い側に外れている場合に、刈取部2を上昇させる上昇処理を実行する(ステップ8,7)。
【0072】
従って、この実施形態では、レベル3に対応する目標対地高さが制御モード変更用設定高さに対応することになり、目標対地高さがレベル3以下であるときは、上昇処理モード切換指令スイッチ62の指令に基づいて前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換える構成となっており、目標対地高さがレベル3より高いときは、前記少数検出時上昇処理モードを実行する構成となっている。
【0073】
前記上昇処理は、図10に示すように、目標対地高さ設定器54にて設定された目標対地高さと対地高さ検出装置Aの検出値との偏差に基づいて、地面への突っ込みを回避させるために刈取部2を上昇させるのに必要な上昇用目標量並びに上昇速度を演算にて求める(ステップ21)。このとき、前記多数検出時上昇処理モードが指令されていれば、2つの対地高さ検出装置Aの検出値が、夫々、目標対地高さ設定器54にて設定された目標対地高さよりも低い場合には、その2つの対地高さ検出装置Aのうちの検出値が最も低いものの検出値を用いて上昇用目標量並びに上昇速度を求める。
【0074】
そして、対機体高さセンサ59の検出値に基づいて刈取部2が前記上昇用目標量を上昇したことを検出するまで上昇操作を実行し、上昇用目標量を上昇すると上昇操作を停止する(ステップ22,23,24)。この上昇操作を実行しているときは、対地高さ検出装置Aの検出状態にかかわらず上昇用目標量を上昇するまで上昇操作を実行することになる(ステップ1,ステップ22〜24)。
【0075】
ステップ3にて下降判別タイミングになっていることが判別されると、そのとき、2つの対地高さ検出装置Aの検出値が夫々目標対地高さ設定器54にて設定された目標対地高さよりも高い場合、具体的には目標対地高さに対して設定されている昇降制御用の不感帯を高い側に外れている場合には、刈取部2を下降させる下降処理を実行する(ステップ9,10)。
【0076】
前記下降処理は、図11に示すように、目標対地高さ設定器54にて設定された目標対地高さに対する対地高さ検出装置Aの検出値と目標対地高さとの偏差に基づいて、刈取部2を下降させるのに必要な下降速度を演算にて求める(ステップ31)。そのとき、2つの対地高さ検出装置Aの検出値のうちの下方側に位置する検出値を用いて下降速度を求める。そして、下降操作を実行し、いずれかの対地高さ検出装置Aの検出値が不感帯内に入ると下降操作を停止する(ステップ32,33,34)。この下降操作中に、圃場の隆起部の存在等によってステップ7又はステップ9にて上昇処理すべきとの判断が行われたときは下降操作を停止させて刈取部2を上昇させる処理を優先して行う構成となっている(ステップ1〜8,12)。
【0077】
〔第2実施形態〕
この実施形態では、前記制御装置による刈取昇降制御の構成が異なる他は、第1実施形態の構成と同じであるから、異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0078】
この実施形態では、前記制御装置Hが、前記刈取昇降制御における上昇処理と下降処理とのうちの上昇処理として、前記目標対地高さが制御状態切換用設定高さよりも高いときには、2個の対地高さ検出装置Aのいずれかが前記目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部2を上昇させる少数検出時上昇処理モードを実行し、且つ、前記目標対地高さが前記制御状態切換用設定高さ以下であるときには、2個の対地高さ検出装置Aの全てのものが前記目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部2を上昇させる多数検出時上昇処理モードを実行するように構成され、前記制御状態切換用設定高さを変更設定する手動操作式の制御状態切換用高さ変更手段が備えられている。
【0079】
すなわち、図12に示すように、前記制御状態切換用高さ変更手段としての制御状態切換レベル変更装置63が設けられ、この制御状態切換レベル変更装置63は、手動操作によって前記制御状態切換用設定高さを変更設定することができるように構成されている。この制御状態切換レベル変更装置63は、詳述はしないが、搭乗運転部5に備えられて各種の情報を表示することができ、しかも、種々の制御用パラメータの変更設定等を行えるようになっている表示パネル部を用いて、前記制御状態切換用設定高さを変更設定する構成となっており、作業中に任意の操作で変更するものではなく、作業開始前に予め設定しておくことになる。又、設定可能な制御状態切換用設定高さとしては、前記目標対地高さ設定器54にて設定可能なレベル1〜レベル9の9段階に加えてレベル0を設定できるようになっている。
【0080】
そして、図13に示すように、制御装置Hは刈取昇降制御において、前記自動上昇モードが指令されているか、あるいは、前記自動昇降モードが指令されていても前記下降判別タイミングでないと判別されると、前記制御状態切換レベル変更装置63にて設定されている制御状態切換用設定高さとしての制御状態切換レベルを読み込む(ステップ4)。
【0081】
目標対地高さ設定器54にて設定される目標対地高さが制御状態切換レベル以下であるか否かが判別され、目標対地高さが制御状態切換レベル以下であれば、2つの対地高さ検出装置Aの検出値が、夫々、目標対地高さ設定器54にて設定された目標対地高さよりも低い場合、具体的には目標対地高さに対して設定されている昇降制御用の不感帯を低い側に外れている場合に刈取部2を上昇させる上昇処理を実行する(ステッ5,6,7)。
【0082】
目標対地高さが制御状態切換レベル以下でない、つまり、目標対地高さが制御状態切換レベルより高い側に設定されているときは、2つの対地高さ検出装置Aのうちのいずれかのものの検出値が目標対地高さ設定器54にて設定された目標対地高さよりも低い場合、具体的には目標対地高さに対して設定されている昇降制御用の不感帯を低い側に外れている場合に、刈取部2を上昇させる上昇処理を実行する(ステップ5,8,7)。
【0083】
従って、この実施形態では、制御状態切換用設定高さとしてレベル0を設定しておくと、前記目標対地高さ設定器54にて設定可能なレベル1〜レベル9のいずれを設定していても、常に、少数検出時上昇処理モードを実行することになり、制御状態切換用設定高さとして、レベル1〜9のいずれかを設定すると、前記目標対地高さが制御状態切換用設定高さよりも高いときには、2個の対地高さ検出装置Aのいずれかが前記目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部2を上昇させる少数検出時上昇処理モードを実行し、且つ、前記目標対地高さが前記制御状態切換用設定高さ以下であるときには、2個の対地高さ検出装置Aの全てのものが前記目標対地高さよりも低い値を検出すると刈取部2を上昇させる多数検出時上昇処理モードを実行することになる。
【0084】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0085】
(1)上記第1実施形態では、前記制御モード変更用設定高さが常に一定(レベル3)になるように構成したが、このような構成に代えて、前記制御モード変更用設定高さを変更設定する手動操作式の制御モード変更用高さ変更手段を設ける構成としてもよい。具体的には、第1実施形態の構成に第2実施形態における制御状態切換レベル変更装置63を備えて、この制御状態切換レベル変更装置63にて前記制御モード変更用設定高さを変更設定する構成である。
【0086】
(2)上記各実施形態では、対地高さ検出手段を2個備える構成としたが、対地高さ検出手段を刈幅方向の位置を異ならせて3個以上備える構成としてもよい。その場合、前記多数検出時上昇処理モードとして、2つの対地高さ検出手段の夫々の検出値に基づいて刈取昇降制御を実行する構成に代えて、3個の対地高さ検出手段のうちのいずれか2個以上のもの、又は、全ての対地高さ検出手段が目標対地高さより低い値を検出したときに刈取部を上昇させる構成としてもよい。
【0087】
(3)上記各実施形態では、前記複数の対地高さ検出手段の全てが前記目標対地高さよりも高い値を検出した場合に前記刈取部を下降させる形態で、前記昇降操作手段を制御する構成としたが、前記複数の対地高さ検出手段のうちの2個以上の前記対地高さ検出手段が夫々前記目標対地高さよりも高い値を検出した場合に前記刈取部を下降させる構成としてもよい。
【0088】
(4)上記各実施形態では、前記対地高さ検出手段及び前記目標対地高さ設定手段の情報に基づいて前記刈取部を上昇させるときは予め設定した目標量を上昇させる構成としたが、上昇を開始してから設定時間が経過するまで上昇操作を実行する構成としてもよい。
【0089】
(5)上記各実施形態では、前記対地高さ検出手段及び前記目標対地高さ設定手段の情報に基づいて前記刈取部を下降させるときは前記複数の対地高さ検出手段のいずれかの検出値が前記目標対地高さになるまで前記刈取部を下降させるように、前記昇降操作手段を制御する構成としたが、このような構成に代えて、予め設定した目標量を下降させる構成としてもよい。
【0090】
(6)上記各実施形態では、刈取収穫機としてコンバインを例示したが、コンバインに限らず野菜やイグサの収穫機にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】刈取部の支持構造を示す平面図
【図3】クローラ走行装置の側面図
【図4】クローラ走行装置の側面図
【図5】制御ブロック図
【図6】スイッチユニットの平面図
【図7】水平制御の目標値の設定状態を示す図
【図8】刈高さ検出装置の側面図
【図9】制御動作のフローチャート
【図10】制御動作のフローチャート
【図11】制御動作のフローチャート
【図12】制御ブロック図
【図13】制御動作のフローチャート
【符号の説明】
【0092】
2 刈取部
54 目標対地高さ設定手段
62 制御モード切換指令手段
63 制御状態切換用高さ変更手段
A 対地高さ検出手段
C1 昇降操作手段
H 制御手段
V 走行機体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部を走行機体に対して昇降操作する昇降操作手段と、前記刈取部における刈幅方向の異なる箇所に配備された複数の接地式の対地高さ検出手段と、前記刈取部の目標対地高さを設定する目標対地高さ設定手段と、前記対地高さ検出手段及び前記目標対地高さ設定手段の情報に基づいて前記昇降操作手段を制御する刈取昇降制御を実行する制御手段とが備えられている刈取収穫機の刈取昇降制御装置であって、
前記制御手段が、
前記刈取昇降制御における上昇処理と下降処理とのうちの上昇処理についての制御モードとして、前記複数の対地高さ検出手段のいずれかが前記目標対地高さよりも低い値を検出すると前記刈取部を上昇させる少数検出時上昇処理モードと、前記複数の対地高さ検出手段のうちの2個以上の前記対地高さ検出手段が又は全ての前記対地高さ検出手段が前記目標対地高さよりも低い値を検出すると前記刈取部を上昇させる多数検出時上昇処理モードとを備え、且つ、
手動操作式の制御モード切換指令手段の指令に基づいて、前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換えるように構成されている刈取収穫機の刈取昇降制御装置。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記目標対地高さが制御モード変更用設定高さ以下であるときには、前記制御モード切換指令手段の指令に基づいて、前記少数検出時上昇処理モードを実行する状態と前記多数検出時上昇処理モードを実行する状態とに切り換えるように構成され、且つ、
前記目標対地高さが前記制御モード変更用設定高さより高いときには、前記少数検出時上昇処理モードを実行するように構成されている請求項1記載の刈取収穫機の刈取昇降制御装置。
【請求項3】
前記制御モード変更用設定高さを変更設定する手動操作式の制御モード変更用高さ変更手段が設けられている請求項2記載の刈取収穫機の刈取昇降制御装置。
【請求項4】
刈取部を走行機体に対して昇降操作する昇降操作手段と、前記刈取部における刈幅方向の異なる箇所に配備された複数の接地式の対地高さ検出手段と、前記刈取部の目標対地高さを設定する目標対地高さ設定手段と、前記対地高さ検出手段及び前記目標対地高さ設定手段の情報に基づいて前記昇降操作手段を制御する刈取昇降制御を実行する制御手段とが備えられている刈取収穫機の刈取昇降制御装置であって、
前記制御手段が、
前記刈取昇降制御における上昇処理と下降処理とのうちの上昇処理として、前記目標対地高さが制御状態切換用設定高さよりも高いときには、前記複数の対地高さ検出手段のいずれかが前記目標対地高さよりも低い値を検出すると前記刈取部を上昇させる少数検出時上昇処理モードを実行し、且つ、前記目標対地高さが前記制御状態切換用設定高さ以下であるときには、前記複数の対地高さ検出手段のうちの2個以上の前記対地高さ検出手段が又は全ての前記対地高さ検出手段が前記目標対地高さよりも低い値を検出すると前記刈取部を上昇させる多数検出時上昇処理モードを実行するように構成され、
前記制御状態切換用設定高さを変更設定する手動操作式の制御状態切換用高さ変更手段が備えられている刈取収穫機の刈取昇降制御装置。
【請求項5】
前記制御手段が、
前記多数検出時上昇処理モードにおいて、前記刈取部を上昇させるときは、前記複数の対地高さ検出手段夫々の検出値のうちで対地高さが最も低い検出値と前記目標対地高さとの偏差に基づいて求めた目標上昇量を上昇させるように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の刈取収穫機の刈取昇降制御装置。
【請求項6】
前記制御手段が、
前記刈取昇降制御における前記下降処理として、前記複数の対地高さ検出手段の全てが前記目標対地高さよりも高い値を検出した場合に前記刈取部を下降させる下降開始処理、及び、前記複数の対地高さ検出手段のうちのいずれかが前記目標対地高さになると前記刈取部の下降を停止させる下降停止処理を実行するよう構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の刈取収穫機の刈取昇降制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−81803(P2010−81803A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251006(P2008−251006)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】