説明

列車制御システム

【課題】車上制御装置と拠点装置とが無線通信を用いて効率よく情報を授受できる列車制御システムを提供する。
【解決手段】列車制御システムは、列車に搭載した車上制御装置21と地上に設置した拠点装置12Aを有する。車上制御装置の第1の送信手段は列車状態情報に列車識別情報を付加した列車側情報をブロードキャストし、第1の受信手段は制御情報を受信する。列車制御手段は、列車識別情報が付与された制御情報に基づいて列車を制御する。拠点装置は、第2の受信手段と記憶手段と生成手段と第2の送信手段とを有する。第2の受信手段は、列車からブロードキャストされる情報を複数の無線通信局13A1〜BXで受信する。記憶手段は、受信した列車側情報を記憶する。生成手段は、受信した列車側情報に含まれる列車状態情報に基づいて列車に対する制御情報を生成する。第2の送信手段は、生成した制御情報に列車識別情報を付加してブロードキャストする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線通信を用いて鉄道の列車制御を行う列車制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信を用いて列車の制御を行う列車制御システムでは、車上制御装置と拠点装置との間の無線通信方式として、ブロードキャストを用いずに、送信先を指定する通信方式が採用される例が多い。このような通信方式では、車上制御装置の無線接続相手となる拠点装置が、現在接続されている拠点装置から隣接する拠点装置に移り変わる際の手続き(ゾーントランジション)が複雑となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−306159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、無線通信を用いて効率よく車上側の装置と地上側の装置とが情報を授受できる列車制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、列車制御システムは、列車に搭載した車上制御装置と地上に設置した拠点装置と有する。車上制御装置は、第1の送信手段と第1の受信手段と列車制御手段と有する。第1の送信手段は、列車状態情報に列車識別情報を付加した列車側情報をブロードキャストする。第1の受信手段は、制御情報を受信する。列車制御手段は、列車識別情報が付与された制御情報に基づいて列車を制御する。拠点装置は、第2の受信手段と記憶手段と生成手段と第2の送信手段とを有する。第2の受信手段は、列車からブロードキャストされる情報を複数の無線通信局で受信する。記憶手段は、受信した列車側情報を記憶する。生成手段は、受信した列車側情報に含まれる列車状態情報に基づいて列車に対する制御情報を生成する。第2の送信手段は、生成した制御情報に列車識別情報を付加してブロードキャストする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、列車制御システムにおける地上側システムの構成例を概略的に示す図である。
【図2】図2は、沿線ネットワーク内の隣接する無線基地局間でハンドオーバが発生した場合における情報の流れを示す。
【図3】図3は、隣接する拠点装置間でゾーントランジションが発生した場合に車上側システムから発信される情報の流れを示す。
【図4】図4は、隣接する拠点装置間でゾーントランジションが発生した場合に地上側システムから発信される情報の流れを示す。
【図5】図5は、車上側システムを搭載した列車の走行に伴って無線通信の接続相手となる拠点装置が移り変わるプロセスを示す。
【図6】図6は、列車を留置する直前における情報の通信手順を示す留置シーケンスを示す。
【図7】図7は、留置後に列車を再起動する場合における情報の通信手順を示す起動シーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
本実施の形態に係る列車制御システムは、地上に設置した地上側システム(地上システム)と列車に搭載した車上側システム(車上システム)とが情報を送受信することにより列車の走行を制御するシステムである。本実施の形態に係る列車制御システムでは、ブロードキャスト方式の無線通信により地上側システムと車上側システムとがデータの送受信を行う。
【0008】
地上側システムは、地上に設置される各種の機器で構成される。地上側システムは、制御対象とする路線を走行中の列車との通信が可能なシステムである。地上側システムでは、運行スケジュールおよび各列車の運行状況などに基づいて各列車の運行を管理する。車上側システムは、列車に搭載される各種の機器で構成される。車上側システムは、地上側システムから与えられる情報に基づいて列車の制御を行う。車上側システムは、走行中に列車の速度情報あるいは位置情報を地上側システムに情報を提供する機能も有する。
【0009】
図1は、列車制御システムにおける地上側システムの構成例を概略的に示す図である。
図1に示す地上側システムは、拠点間ネットワーク1により複数の沿線ネットワーク2(2A、2B、…)が接続された構成となっている。拠点間ネットワーク1は、指令所装置11と複数の拠点装置12(12A、12B、…)とを接続する。各沿線ネットワーク2A(2B、…)は、各拠点装置12A(12B、…)と複数の無線基地局13A1、13A2、…(13B1、13B2、…)とを接続する。地上側システムは、制御対象となる列車が走行する全領域が無線通信の通信範囲となるように構築される。
【0010】
各沿線ネットワーク2に接続される各拠点装置12には、それぞれ管轄領域が割り当てられる。言い換えると、制御対象となる列車との無線通信を可能となる全領域は、各拠点装置12の管轄領域に分割される。各沿線ネットワーク2は、各拠点装置12に割り当てられた管轄領域において、各列車の車上側システムとの無線通信を行うネットワークである。各沿線ネットワーク2に接続された各無線基地局13は、管轄領域を走行する列車に搭載された車上側システムとの無線通信が可能となるように設置される。各無線基地局13は、沿線ネットワーク2内の管轄領域を走行する列車に搭載されている車上システムとの無線通信を行う。
【0011】
また、各拠点装置12は、拠点制御部15と共有メモリ16とを有する。拠点制御部15は、沿線ネットワーク2内における車上側システムとの無線通信制御、指令所装置11との通信制御、およびデータ処理などを行う。たとえば、拠点制御部15は、プロセッサ、メモリおよび各種インターフェースなどを有するコンピュータにより構成される。拠点制御部15では、プロセッサがメモリに記憶したプログラムを実行することにより種々の処理機能を実現している。共有メモリ16は、拠点間ネットワーク1で接続される各拠点装置からアクセス可能な記憶装置である。拠点制御部15は、共有メモリ16を介して拠点間ネットワークで接続される他の拠点装置との情報の共有化が可能である。共有メモリ16は、各列車の車上側システムから受信した各列車に関する情報、および分岐器の状態などの路線の状態を示す情報などを記憶する。
【0012】
車上側システムは、各列車に搭載される。車上側システムは、図1に示すように、各列車内のネットワーク20により車上制御装置21と車上無線装置22とが接続されたシステムである。車上制御装置21(21A、21B)は、列車の運転制御および無線通信制御などを行う。たとえば、車上制御装置21は、地上側システムから受信した情報に基づいて、列車の速度を制御したり、保安ブレーキを制御したりする。車上制御装置21は、プロセッサ、メモリおよび各種インターフェースなどにより構成される。車上制御装置21では、プロセッサがメモリに記憶したプログラムを実行することにより種々の処理機能を実現している。車上無線装置22は、地上側システムの各無線基地局との間で無線通信用の電波の送受信を行う。なお、各列車の車上側システムにおいて、車上無線装置22は、1つであっても良いし、複数であっても良い。
【0013】
次に、列車制御システムによる列車の制御について概略的に説明する。
まず、指令所装置11は、当該路線における各列車の運行スケジュールの基となるダイヤ管理を行う。また、指令所装置11は、拠点間ネットワーク1を介して各拠点装置12から送信されてくる各列車の在線情報(各列車が何処に存在するかに関する情報)を収集する。指令所装置11は、各列車の運行スケジュールと各列車の在線情報等を基に、必要に応じてルート設定要求を各拠点装置12に対して送信する。ルート設定要求とは、列車が走行予定ルートを安全に走行できるようにするための準備の要求である。
【0014】
ルート設定要求を受信した拠点装置12では、管轄領域に存在する各列車の在線位置を把握しながらルート設定要求の基となっているルートの設定を行う。たとえば、拠点装置12は、当該列車の走行予定ルート上に他列車が存在したり,当該列車の走行予定方向に転換されていない分岐器が存在したりしないかどうかを確認する。この確認結果に基づいて、拠点装置12は、転てつ装置14に対して分岐器の転換指令を送信できる。
【0015】
転てつ装置14が分岐器の転換を完了したことを確認すると、拠点装置12は、対象となる転てつ装置14を鎖錠(ロック)する。分岐器の状態を示す情報は、共有メモリ16に保存される。拠点装置12は、当該列車がどの地点まで走行できるかを示す停止限界位置を継続的に計算する。停止限界位置情報は、バージョン情報を付与して共有メモリ16に保存されるとともに、拠点装置12から各無線基地局13を介して列車の車上側システムへ送信される。なお、拠点装置12は、停止限界位置情報と併せて各種の速度制限を示す情報等も、無線基地局13を介して列車の車上側システムへ送信する。
【0016】
車上制御装置21は、地上側システムから受信した停止限界位置情報及び各種速度制限情報等の情報に基づいて列車の速度を監視しながら列車制御を行う。車上制御装置21は、必要に応じて保安ブレーキ制御(たとえば、先行列車への追突回避制御、あるいは分岐器上での脱線回避制御などのための減速及び停止制御)を実施する。また、車上制御装置21は、当該列車の速度および位置を検知し、当該列車の先端および尾端の位置情報を車上無線装置22と無線基地局とを経由して拠点装置12へ送信する。
以上のように、列車制御システムでは、地上側システムと車上側システムがデータ通信を行うことにより、列車の安全かつ円滑な走行を制御する。
【0017】
次に、車上側システムから地上側システムへ情報を送信する処理について説明する。
図2および図3は、無線通信により車上側システムから地上側システムへ情報を送信する処理について説明するための図である。図2および図3では、図中に矢印aで示す走行方向に、車上側システムを搭載した列車が走行している状況を示している。
【0018】
列車が走行すると、当該列車に搭載された車上側システムの車上無線装置は、無線通信が可能な無線基地局が順次変化する。つまり、車上無線装置は、列車の走行に応じて、通信相手とする無線基地局が順に移行する。各沿線ネットワーク(各拠点装置の管轄領域)内では、隣接する無線基地局13と間でハンドオーバが発生し、異なる沿線ネットワーク間では、ゾーントランジッションが発生する。
【0019】
また、各列車に搭載された車上側システムは、情報をブロードキャストするため、異なる複数の無線基地局で受信されることがある。たとえば、1つの列車の車上側システムから発信された1つの情報は、1つの沿線ネットワーク内における異なる複数の無線基地局を経由して1つの拠点装置12が複数回受信することがある。また、1つの列車の車上側システムから発信された1つの情報は、異なる沿線ネットワークの異なる複数の無線基地局を経由して複数の拠点装置で受信することもある。
【0020】
列車制御システムにおいて、地上側システムの拠点装置12と車上側システムの車上制御装置21とは、確実に各列車を制御するために、互いに通信相手を認識することで通信接続を確立する。たとえば、車上制御装置21は、自らが発信した情報がどの拠点装置12に届いているかを認識し、各拠点装置12は、自らが発信した情報がどの車上制御装置21に届いているかを認識する。これにより、地上側システム(拠点装置)と車上側システム(車上制御装置)とは、互いに通信相手を認識できる。
【0021】
また、車上制御装置21は、地上側システム(拠点装置)から受信した情報の新しさ(鮮度)を識別し、各拠点装置12は、車上側システム(車上制御装置)から受信した情報の新しさ(鮮度)を識別する。車上制御装置21は、地上側システム(拠点装置)から受信した情報のうち、新しい情報により列車を制御する。各拠点装置12は、車上側システム(車上制御装置)から受信した情報のうち、新しい情報に基づいて各列車を制御するための情報を生成する。
【0022】
また、各拠点装置12は、各列車の車上側システム(車上制御装置)から受信した情報のうち、各列車の新しい情報を共有メモリ16に記憶する。各拠点装置は、他の拠点装置の共有メモリに記憶した情報を参照できる。つまり、各拠点装置の共有メモリに記憶した情報は、拠点間ネットワーク1で接続された複数の拠点装置間で共有化される。
【0023】
各列車の車上側システムは、当該列車の現在の状態としての現在位置を地上側システムに通知するために、列車状態情報としての列車位置情報と列車ID(列車識別情報)とシリアル番号とを含む情報を列車側情報としてブロードキャストする。すなわち、車上側システムにおいて、車上制御装置21は、継続的に(所定の時間間隔ごとに)、当該列車を示す列車IDと当該列車の位置を示す列車位置情報と列車位置情報に付与したシリアル番号とを含む列車側情報を生成する。車上制御装置21は、生成した列車側情報を車上無線装置22により逐次ブロードキャストする。
【0024】
このような列車側情報は、車上無線装置22からブロードキャストされるため、車上無線装置22と電波の送受信が可能な範囲にある複数の無線基地局13で受信される可能性がある。また、車上無線装置22からブロードキャストされる列車側情報は複数の拠点装置12で受信される可能性があるため、拠点装置は、受信した列車側情報に含まれる列車IDとシリアル番号とにより情報の新しさを識別する。
【0025】
各列車の車上側システムにおいて車上制御装置21は、列車位置情報を含む列車側情報にシリアル番号を付与する。シリアル番号は、当該車上側システムから送信する列車側情報をシリアルに順序づけるための情報である。従って、当該車上側システムから送信した列車側情報は、シリアル番号により新しさ(鮮度)を判定できる。列車IDは、当該車上側システムを搭載している列車を特定するための情報である。列車位置情報は、当該車上側システムを搭載している列車の位置を示す情報である。たとえば、車上側システムにおいて、車上制御装置は、走行路上に設置された地上子を列車に設置した車上子により検出して列車位置を判定したり、列車速度を積算することにより地上子間における列車位置を判定したりする。
【0026】
ここでは、拠点装置12が沿線ネットワーク2内の無線基地局13から列車側情報を受信した場合の動作について説明する。
図2では、沿線ネットワーク2において隣接する無線基地局間でハンドオーバが発生した状況を示している。つまり、図2では、拠点装置12が沿線ネットワーク2内の複数の無線基地局13から列車側情報を受信する状況を示している。
【0027】
拠点装置12は、沿線ネットワーク2内の複数の無線基地局13から列車側情報を逐次受信する。拠点装置12において、拠点制御部15は、沿線ネットワーク2内の各無線基地局13から受信した情報を識別して管理する。たとえば、拠点装置12において、拠点制御部15は、各列車IDに対応づけた最新の列車側情報を共有メモリ16に記憶する。このため、拠点制御部15は、車上側システムから受信した列車側情報が共有メモリ16に記憶している情報よりも新しいか否かを判定し、新しい列車側情報を共有メモリ16に保存する。
【0028】
たとえば、拠点装置12では、「異なる無線基地局を経由して受信したシリアル番号」と「共有メモリ内に登録されている当該列車IDに対するシリアル番号」とを比較する。すなわち、拠点制御部15は、比較結果により受信した情報が共有メモリ16に保存している情報よりも新しいか否かを判断する。各列車の車上側システムは、送信する情報に対して順番にシリアル番号を付与するものとする。この場合、拠点装置12は、シリアル番号により新しい情報を判定できる。拠点制御部15は、受信した情報のシリアル番号と共有メモリ16に記憶している受信した情報の列車IDに対応する情報のシリアル番号とを比較することにより、どちらの情報が新しいかを判定する。拠点制御部15は、受信した情報が新しければ、共有メモリ16に記憶している情報(列車位置情報およびシリアル番号など)を受信した情報に更新する。
【0029】
この結果として、共有メモリ16には、1つの列車IDに対して最も新しい情報を記憶できる。言い換えれば、ある拠点装置12の拠点制御部15が同一の列車IDに対応する列車位置情報を更新(共有メモリの更新)する場合に、共有メモリ16上の列車位置情報が時間的に古い情報に戻ることを防止できる。
【0030】
次に、複数の拠点装置間でゾーントランジションが発生した場合の動作について説明する。
図3では、隣接する拠点装置間でゾーントランジションが発生した状況を示している。図3では、車上側システムからの列車側情報を拠点装置12Aと拠点装置12Bとで相次いで受信する状況を示している。
【0031】
拠点装置12Aおよび拠点装置12Bは、それぞれ、沿線ネットワーク2Aおよび2Bの複数の無線基地局を介して車上システムからの列車側情報を受信する。拠点装置12Aにおいて、拠点制御部15Aは、沿線ネットワーク2A内の無線基地局から受信した列車側情報を識別して管理する。
【0032】
たとえば、拠点装置12Aおよび12Bにおいて、拠点制御部15Aおよび15Bは、それぞれ「異なる無線基地局を経由して受信したシリアル番号」と「共有メモリ内に登録されている当該列車IDに対するシリアル番号」とを比較することにより受信した情報が共有メモリ16Aおよび16Bに保存している情報よりも新しいか否かを判断する。拠点制御部15Aおよび15Bは、受信した情報が新しければ、共有メモリ16Aおよび16Bに記憶している情報(列車位置情報およびシリアル番号など)を受信した情報に更新する。
【0033】
また、拠点制御部15Aあるいは15Bは、隣接する拠点装置の共有メモリに同じ列車IDの列車側情報が記憶されている場合には、シリアル番号により新しい情報を判定するようにしても良い。すなわち、拠点制御部15Aおよび15Bは、隣接する拠点装置の共有メモリに受信した列車側情報の列車IDに対応する列車側情報が記憶されているか否かを判断し、当該列車IDに対応する列車側情報が記憶されると判断した場合に、シリアル番号により新しい情報を判定する。また、拠点制御部15Aおよび15Bは、自身の拠点装置内の共有メモリに記憶している当該列車IDに対応する列車側情報を新しいシリアル番号の列車側情報に更新しても良い。これにより、各拠点装置は、通信可能な列車の列車IDに対して最も新しい情報を共有メモリに記憶でき、各拠点装置の共有メモリに記憶される列車位置情報などの列車側情報が時間的に古い情報に戻ることを防止できる。
【0034】
次に、車上側システムから地上側システムへ情報を送信する処理について説明する。
図4では、隣接する拠点装置間でゾーントランジションが発生した状況を示している。図4では、地上側システムから列車制御情報を列車に搭載されている車上側システムへ発信する状況を示している。
【0035】
各拠点装置12において、拠点制御部15は、制御対象となる列車(通信状態にある車上側システムを搭載した列車)に関する情報(列車位置情報および分岐器の状態情報など)を共有メモリ16から取り込む(ステップS21)。共有メモリ16には、図2或は図3を参照して説明したように、各列車の車上側システムから取得する列車側情報のうち最新の列車側情報を列車ごとに記憶している。これにより、拠点制御部15は、各列車の在線状態を把握できる。また、共有メモリ16は、現在の分岐器の状態(転てつ装置による分岐器の転換および鎖錠状態)を示す情報も記憶している。
【0036】
拠点制御部15は、共有メモリ16から取り込んだ各列車の列車位置情報(各列車の在線状況)および分岐器の状態を示す情報などを基に、制御対象となる列車に対する制御情報としての停止限界位置を計算する(ステップS22)。停止限界位置は、制御対象となる列車について継続的に計算される。たとえば、拠点制御部15は、通信状態が継続している間、100ms間隔で制御対象の列車に対する停止限界位置を算出する。
【0037】
停止限界位置を算出すると、拠点制御部15は、算出した停止限界位置を示す停止限界位置情報にバージョン番号を対応づけて共有メモリ16に保存する(ステップS23)。たとえば、拠点制御部15は、隣接する拠点装置の共有メモリに記憶されている当該列車に対する停止限界位置情報のバージョン番号をチェックし、算出した停止限界位置情報に最新のバージョン番号を付与する。停止限界位置情報を保存すると、拠点制御部15は、当該沿線ネットワーク2内の各無線基地局13により、列車ID及び拠点IDを付与した停止限界位置情報をブロードキャストする(ステップS24)。
【0038】
図4に示す例では、拠点装置12Aと拠点装置12Bとの間でゾーントランジションが発生している。この場合、拠点装置12Aの拠点制御部15Aは、共有メモリ16Aから制御対象となる列車の列車位置情報および分岐器の状態情報などを取得し(ステップS21)、停止限界位置を算出する(ステップS22)。拠点制御部15Aは、共有メモリ16Aおよび共有メモリ16Bをチェックし、算出した停止限界位置に最新のバージョン番号を付与して共有メモリ16Aに保存するとともに(ステップS23)、制御対象の列車を示す列車ID及び当該拠点装置を示す拠点IDを付与した停止限界位置情報を各無線基地局13Aによりブロードキャストする(ステップS24)。
【0039】
一方、ゾーントランジションの対象となる拠点装置12Aに隣接する拠点装置12Bにおいても、拠点制御部15Bは、共有メモリ16Bから列車位置情報および分岐器の状態情報などを取り込み(ステップS31)、制御対象となる列車の停止限界位置を計算する(ステップS32)。拠点制御部15Bは、共有メモリ16Bおよび共有メモリ16Aをチェックし、算出した停止限界位置情報に最新のバージョン番号を付与して共有メモリ16Bに保存する(ステップS33)。共有メモリ16Bに停止限界位置情報を保存すると、拠点制御部15Bは、列車IDおよび拠点IDを付与した停止限界位置情報を各無線基地局13Bによりブロードキャストする(ステップS34)。
【0040】
制御対象となる列車に搭載された車上側システムは、無線基地局13Aおよび無線基地局13Bを介して拠点装置12Aおよび拠点装置12Bから相次いで停止限界位置情報を受信する。車上側システムの車上制御装置21は、車上無線装置22により受信した停止限界位置情報の新しさを判定する。すなわち、車上制御装置21は、車上無線装置22により停止限界位置情報を受信するごとに、受信した停止限界位置情報に付与されているバージョン番号により、受信した停止限界位置情報が最新であるか否かを判断する。車上制御装置21では、列車制御手段として、最新の停止限界位置情報に基づいて列車を制御する。たとえば、車上制御装置21は、最新の停止限界位置情報を保持しても良い。この場合、車上制御装置21は、受信した停止限界位置情報が最新であると判断した場合、保持している停止限界位置情報を最新の情報に更新する。
【0041】
ここで、拠点装置12Bからの停止限界位置情報(無線基地局13Bから受信する停止限界位置情報)に付与されたバージョン番号が、拠点装置12Aからの停止限界位置情報(無線基地局13Aから受信する停止限界位置情報)に付与されたバージョン番号よりも新しいものとする。この場合、車上制御装置21は、拠点装置12Aからの停止限界位置情報を拠点装置12Bからの停止限界位置情報よりも後に受信したとしても、拠点装置12Bから受信した停止限界位置情報のバージョン番号よりも古いバージョン番号の拠点装置12Aから受信した停止限界位置情報を無視することが可能となる。
【0042】
上述のようなプロセスを踏むことにより、車上側システムの車上制御装置では、各拠点装置から複数の無線基地局を介してブロードキャストされる停止限界位置情報から最新の停止限界位置情報を識別でき、最新の停止限界位置情報に基づいて列車を制御できる。また、各拠点装置では、継続的に算出する制御対象とする列車の停止限界位置情報にバージョン番号を付与することにより、停止限界位置情報を簡単にブロードキャストすることができる。
【0043】
次に、車上制御装置21と各拠点装置12との無線通信による接続処理について説明する。
本列車制御システムにおいて、車上側システムと地上側システムとは、無線通信により接続する。さらに、本列車制御システムにおいて、車上側システムと地上側システムとの間の通信方式は、車上側システムの車上無線装置と地上側システムにおける各沿線ネットワークに接続した複数の無線基地局とを経由したブロードキャストを採用する。無線通信方式としてブロードキャストを採用することにより、本列車制御システムでは、ゾーントランジションを簡易化したり、通信に要する所要時間を低減したりすることができる。
【0044】
車上側システムおよび地上側システムは、情報をブロードキャストするため、互いの通信相手を認識することが必要となる。たとえば、車上側システムと地上側システムとが送受信するデータには、各列車を安全に走行させるための制御に関る情報が含まれることもあるため、確実に通信相手を認識する必要がある。本列車制御システムでは、車上側システムの車上制御装置は、通信相手となっている拠点装置を拠点IDで認識し、地上側システムの各拠点装置は、通信相手となっている車上制御装置を列車IDで認識する。
【0045】
図5は、車上側システムを搭載した列車が走行するにしたがって、無線通信の接続相手となる拠点装置が移り変わるプロセスを示している。
まず、車上制御装置21がまだどの拠点装置とも無線接続が確立していない段階(たとえば、車上制御装置21の電源投入直後)では、列車に搭載された車上側システムの車上制御装置21は、自らの列車の列車ID(たとえば、列車ID=”A1000”とする)と通信相手の拠点装置が未定である旨の情報を含む列車側情報を生成し、車上無線装置22によりブロードキャストで送信する(ステップS41)。
【0046】
車上制御装置21は、たとえば、上述した手順によりシリアル番号を付与した列車位置情報に、当該列車の列車IDおよび通信相手として認識済みの拠点装置を示す情報(ここでは、未定)を付加した列車側情報を生成する。通信相手として認識済みの拠点装置を示す情報としては、たとえば、車上制御装置21が認識している拠点装置を示す拠点装置IDを用いる。どの拠点装置とも無線接続が確立していない段階(認識済みの拠点装置が無い場合)では、車上制御装置21は、列車側情報に付加する拠点装置IDを未定(たとえば、未定=0xFFFF)とする。
【0047】
また、車上制御装置21がブロードキャストする列車側情報には、複数の拠点装置を示す拠点装置IDを含めるものとする。図5に示す例では、認識済みの拠点装置を示す情報として2つの拠点装置IDを含めるものとする。これは、地上側システム(車上制御装置)が複数の沿線ネットワークを介して複数の拠点装置に接続することを想定しているためである。つまり、本列車制御システムにおいて、車上制御装置21は、ゾーントランジッションにより2つの拠点装置と同時に通信状態となることがある。
【0048】
本実施形態では、3つの拠点装置と同時に通信状態となることは想定してないため、列車側情報には、2つの拠点装置の拠点装置IDを含めるものとしている。ただし、3つ以上の拠点装置と同時に通信状態となることがある構成の運用形態では、列車側情報に3つ以上の拠点装置IDを含ませるようにしても良い。
【0049】
車上制御装置21からブロードキャストされた列車側情報は、通信範囲内の無線基地局で受信される。各無線基地局13では、受信した列車側情報を当該無線基地局が属する沿線ネットワーク2に存在する拠点装置へ転送する。図5に示すように、拠点装置12Aが無線基地局13Aを経由して車上側システム(車上制御装置21)からブロードキャストされた列車側情報を受信したものとする。拠点装置12Aにおいて、拠点制御部15Aは、上述した処理により受信した列車側情報の新しさを判定し、新しい列車側情報を共有メモリ16Aに保存する。拠点制御部15Aは、当該列車側情報に含まれる列車IDの列車を制御対象として認識する。
【0050】
さらに、拠点制御部15Aは、上述した処理により、制御対象とする列車について列車位置情報および分岐器の状態情報などから算出した停止限界位置情報にバージョン番号を付与して共有メモリ16Aに保存する。拠点制御部15Aは、バージョン番号を付与した停止限界位置情報などの情報に、制御対象とする列車の列車ID(たとえば、”A1000”)と自らの拠点装置ID(たとえば、0x0001とする)とを付与した情報(地上側情報)をブロードキャストで送信する(ステップS42)。
【0051】
車上制御装置21は、車上無線装置22により当該列車の列車IDを含む地上側情報を受信した場合、当該地上側情報に含まれる拠点装置IDにより送信元(通信相手)の拠点装置を判別する。図5に示す例では、車上制御装置21は、拠点装置12Aから送信された地上側情報に含まれる拠点装置ID(たとえば、0x0001)により、送信元(通信相手)の拠点装置が拠点装置12Aであることを認識する。このような通信手順により、車上制御装置21は、拠点装置12Aとの無線接続が確立する。
【0052】
車上制御装置21は、拠点装置12から受信した地上側情報に含まれる停止限界位置情報などにより列車の走行を制御する。たとえば、車上制御装置21は、拠点装置12から受信した地上側情報に含まれる停止限界位置情報のバージョン番号により、当該停止限界位置情報が最新の情報であるか否かを判定する。受信した地上側情報に含まれる停止限界位置情報が最新の情報であると判定した場合、車上制御装置21は、受信した停止限界位置情報に基づいて列車の走行を制御する。
【0053】
また、車上制御装置21は、継続的に現在の列車位置を検出し、列車位置情報を含む列車側情報を生成し、逐次、地上側システムへブロードキャストする(ステップS43)。たとえば、拠点装置12Aとの接続が確立した状態において、車上制御装置21は、現在の列車位置を示す列車位置情報に新たなシリアル番号を付与し、さらに、当該列車の列車ID、第1の拠点装置としての拠点装置12Aの拠点装置ID(0x0001)、および、第2の拠点装置としての拠点装置が未定である旨を示す情報(0xFFFF)を付加した列車側情報を生成する。車上制御装置21は、生成した列車側情報を車上無線装置22によりブロードキャストする。
【0054】
このように、車上制御装置21がブロードキャストする列車側情報には、認識済みの拠点装置を示す拠点装置IDが含まれる。言い換えれば、車上制御装置21は、列車側情報に当該車上側システムが認識している拠点装置を示す情報(0x0001)を含ませることにより、地上側システムへ当該車上制御装置21が認識している拠点装置を通知している。
【0055】
車上制御装置21からブロードキャストされた列車側情報を受信した拠点装置12において、拠点制御部15は、受信した列車側情報に当該拠点装置の拠点装置IDが含まれるか否かを判断する。自らの拠点装置IDが含まれると判断した場合、拠点制御部15は、当該列車側情報に含まれる列車IDの列車に搭載された車上側システム(車上制御装置21)との通信接続が確立したことを認識する。
【0056】
拠点制御部15は、上述した処理により、受信した列車側情報が新しければ、当該列車に対する停止限界位置情報を算出し、共有メモリ16Aにおける当該列車IDに対応する情報を更新する。拠点制御部15Aは、算出した停止限界位置情報、停止限界位置情報のバージョン番号、制御対象とする列車の列車ID(たとえば、”A1000”)、自らの拠点装置ID(たとえば、0x0001)を含む地上側情報をブロードキャストで送信する。
【0057】
以上の通信手順により、列車に搭載された車上無線装置22が拠点装置12Aに沿線ネットワークで接続された複数の無線基地局13Aによる通信範囲内にある間、車上側システムの車上制御装置21と地上側システムの拠点装置12とは、互いを通信相手として認識しつつ、情報をブロードキャストで送受信できる。
【0058】
さらに列車が走行するのに伴って、車上制御装置21は、1つの拠点装置だけでなく、別の拠点装置との通信も可能となる。車上制御装置21は、送信先を一意に指定することなく、列車側情報をブロードキャストする。このため、第1の拠点装置12の通信範囲と第2の拠点装置12の通信範囲とが重なる領域を列車が走行している間、車上制御装置21から送信された1つの列車側情報は、第1の拠点装置12と第2の拠点装置12とで受信される。図5に示すように、拠点装置12Aと通信状態である車上制御装置21は、列車の走行に伴って、拠点装置12Aの通信範囲と隣接する通信範囲の拠点装置12Bとも通信するようになる。
【0059】
すなわち、拠点装置12Aとの通信が確立した後、列車が拠点装置12Aの通信範囲を走行している間、車上制御装置21は、拠点装置12Aへ列車位置情報を含む列車側情報を送信し、拠点装置12Aから停止限界位置情報を含む地上側情報を受信する。列車が拠点装置12Bの通信範囲に入ると、車上無線装置22から発信された列車側情報は、無線基地局13Aだけでなく無線基地局13Bでも受信される。つまり、列車が拠点装置12Aの通信範囲と拠点装置12Bの通信範囲とが重なっている領域に存在すると、車上制御装置21が発信した列車側情報は、拠点装置12Aと拠点装置12Bとで受信される。
【0060】
拠点装置12Aとの通信が確立した後、拠点装置12Bとの通信が確立するまでの間(つまり、列車が拠点装置12Aの通信範囲に在り、かつ、拠点装置12Bの通信範囲にまで到達していない段階)、車上制御装置21は、自らの列車の列車ID(=”A1000”)と、第1の拠点装置としての拠点装置12Aの拠点装置ID(0x0001)と、第2の拠点装置としての拠点装置が未定である旨を示す情報(0xFFFF)とを含む列車側情報を車上無線装置22によりブロードキャストする(ステップS44)。
【0061】
列車に搭載された車上無線装置22が拠点装置12Bの通信範囲にまで到達した場合、拠点装置12Bは、無線基地局13Bを介して、列車ID(”A1000”)と第1の拠点装置の拠点装置ID(0x0001)と第2の拠点装置が未定の情報(0xFFFF)とを含む列車側情報を受信する(ステップS54)。この列車側情報は、拠点装置12Aでも受信される(ステップS44)
拠点装置12Aにおいて、拠点制御部15Aは、受信した列車側情報が新しい情報であれば、当該列車に対する停止限界位置情報を算出し、共有メモリ16Aにおける当該列車IDに対応する情報を更新する。拠点制御部15Aは、算出した停止限界位置情報、停止限界位置情報のバージョン番号、制御対象とする列車の列車ID(A1000)、および、自らの拠点装置ID(0x0001)を含む地上側情報をブロードキャストで送信する(ステップS45)。
【0062】
一方、拠点装置12Bにおいて、拠点制御部15Bは、隣接する拠点装置12Aの共有メモリ12Aが記憶する列車側情報をチェックして受信した列車側情報の新鮮度を判定する。拠点制御部15Bは、受信した列車側情報が新しければ、当該列車に対する停止限界位置情報を算出し、共有メモリ16Bにおける当該列車IDに対応する情報を更新する。拠点制御部15Bは、算出した停止限界位置情報、停止限界位置情報のバージョン番号、制御対象とする列車の列車ID(A1000)、および自らの拠点装置ID(0x0002)を含む地上側情報を無線基地局13Bからブロードキャストで送信する(ステップS46)。
【0063】
第2の拠点装置としての拠点装置12Bから拠点装置ID(0x0002)を含む地上側情報を受信した場合、車上制御装置21は、地上側情報に含まれる拠点装置ID(0x0002)により、送信元(通信相手)の拠点装置が拠点装置12Bであることを認識する。このような通信手順により、車上制御装置21は、拠点装置12Bとの無線接続が確立する。ここでは、第1の拠点装置としての拠点装置12Aからも拠点装置ID(0x0001)を含む地上側情報を受信するため、車上制御装置21は、拠点装置12Aとの無線接続も維持している。
【0064】
すなわち、第1の拠点装置ID(0x0001)を含む地上側情報と第2の拠点装置ID(0x0002)を含む地上側情報とをそれぞれ受信した場合、車上制御装置21は、2つの拠点装置(拠点装置12Aと拠点装置12B)の接続が確立された状態となる。この場合、車上制御装置21は、当該列車の列車ID(A1000)と、接続が確立した2つの拠点装置を示す2つの拠点装置ID(0x0001,0x0002)と、を含む列車側情報をブロードキャストで送信する(ステップS47)。
【0065】
車上制御装置21では、第1、第2の拠点装置以外の拠点装置からの地上側情報(0x0001,0x0002以外の拠点装置IDを含む地上側情報)を受信するまで、列車位置情報などを接続が確立した2つの拠点装置ID(0x0001,0x0002)を含む列車側情報として継続的にブロードキャストで送信する。このため、列車が拠点装置12Aの通信範囲と拠点装置12Bの通信範囲とが重なる領域に存在する間、拠点装置12Aと拠点装置12Bとは、それぞれが2つの拠点装置ID(0x0001,0x0002)を含む列車側情報を継続的に受信する。
【0066】
さらに、第2の拠点装置の通信範囲を列車が走行していくと、車上制御装置21がブロードキャストする列車側情報は、無線基地局13Cでも受信される。つまり、列車が拠点装置12Bの通信範囲と拠点装置12Cの通信範囲とが重なっている領域に至ると、車上制御装置21が発信した列車側情報は、拠点装置12Bと拠点装置12Cとで受信される。ここでは、第1の拠点装置の通信範囲と第3の拠点装置の通信範囲(図5に示す例では、拠点装置12Aの通信範囲と拠点装置12Cの通信範囲)とは、重なりがないように設計されているものとする。従って、列車が拠点装置12Bの通信範囲と拠点装置12Cの通信範囲とが重なっている領域に至ると、車上制御装置21が発信した列車側情報は、拠点装置12Bと拠点装置12Cとで受信される。
【0067】
拠点装置12Bとの通信が確立した後、拠点装置12Cに列車側情報が受信されるまでの間(つまり、列車が拠点装置12Bの通信範囲に在り、かつ、拠点装置12Cの通信範囲にまで到達していない段階)、車上制御装置21は、自らの列車の列車ID(=”A1000”)と、第1の拠点装置としての拠点装置12Aの拠点装置ID(0x0001)と、第2の拠点装置としての拠点装置12Bの拠点装置ID(0x0002)とを含む列車側情報を車上無線装置22によりブロードキャストする(ステップS48)。
【0068】
列車(列車に搭載された車上無線装置22)が拠点装置12Cの通信範囲に到達した場合、拠点装置12Cは、無線基地局13Cを介して、列車ID(A1000)と第1の拠点装置の拠点装置ID(0x0001)と第2の拠点装置の拠点装置ID(0x0002)とを含む列車側情報を受信する(ステップS48)。この列車側情報は、拠点装置12Bでも受信される(ステップS48)
拠点装置12Bにおいて、拠点制御部15Bは、受信した列車側情報が新しい情報であれば、当該列車に対する停止限界位置情報を算出し、共有メモリ16Aにおける当該列車IDに対応する情報を更新する。拠点制御部15Aは、算出した停止限界位置情報、停止限界位置情報のバージョン番号、制御対象とする列車の列車ID(A1000)、および、自らの拠点装置ID(0x0002)を含む地上側情報をブロードキャストする(ステップS49)。
【0069】
一方、拠点装置12Cにおいて、拠点制御部15Cは、隣接する拠点装置12Cの共有メモリ16Bを参照して受信した列車側情報の新鮮度を判定する。拠点制御部15Cは、受信した列車側情報が新しければ、当該列車に対する停止限界位置情報を算出し、共有メモリ16Cにおける当該列車IDに対応する情報を更新する。拠点制御部15Cは、算出した停止限界位置情報、停止限界位置情報のバージョン番号、制御対象とする列車の列車ID(A1000)、および自らの拠点装置ID(0x0003)を含む地上側情報を無線基地局13Cを介してブロードキャストする(ステップS50)。
【0070】
第3の拠点装置としての拠点装置12Cから拠点装置ID(0x0003)を含む地上側情報を受信した場合、車上制御装置21は、地上側情報に含まれる拠点装置ID(0x0003)により、送信元(通信相手)の拠点装置が拠点装置12Cであることを認識する。このような通信手順により、車上制御装置21は、拠点装置12Cとの無線接続が確立する。ここでは、第2の拠点装置としての拠点装置12Bからも拠点装置ID(0x0002)を含む地上側情報を受信するため、車上制御装置21は、拠点装置12Bとの無線接続を維持する。
【0071】
ただし、拠点装置12Aの通信範囲と拠点装置12Cの通信範囲とは重なりがないように設計されていることを前提としているため、車上制御装置21は、拠点装置12Aからの情報を拠点装置12Cからの情報と同時期に受信することはない。すなわち、拠点装置12Cの拠点装置ID(0x0003)を含む地上側情報を受信した場合、車上制御装置21は、、拠点装置12Bと拠点装置12Cとの通信接続が確立された状態となるが、拠点装置12Aとは通信できない状態である。
【0072】
したがって、第2の拠点装置ID(0x0002)を含む地上側情報と第3の拠点装置ID(0x0003)を含む地上側情報とをそれぞれ受信した場合、車上制御装置21は、車上制御装置21は、2つの拠点装置(拠点装置12Bと拠点装置12C)との接続が確立された状態となるため、当該列車の列車ID(A1000)と接続が確立した2つの拠点装置を示す2つの拠点装置ID(0x0002,0x0003)とを含む列車側情報をブロードキャストで送信する(ステップS51)。
【0073】
このように、車上制御装置は、第2の拠点装置ID(0x0002)を含む地上側情報と第3の拠点装置ID(0x0003)を含む地上側情報とをそれぞれ受信した場合、接続が確立した拠点装置を示す情報として、拠点装置12AのID(0x0001)を破棄し、拠点装置12Bと拠点装置12Cの2つの拠点装置ID(0x0002,0x0003)を列車側情報に付加する。これは、本実施形態の列車制御システムでは、列車側情報に無線接続確立を認識した2つの拠点装置の拠点装置IDを付加するように設定したためである。しかしながら、列車側情報に付加する拠点装置IDの数は、複数個であれば良く、2個に限定する必要はない。つまり、運用形態によっては、列車側情報に付加する拠点装置IDの数は、3個以上であっても良い。
【0074】
上記のような処理プロセスを実行することにより、列車制御システムでは、発信した情報が何処に到達するか不明なブロードキャストという同報送信を採用しても、車上制御装置と拠点装置とが相互に無線接続確立を認識できる。この結果として、車上制御装置は、「自らが発信している列車位置情報などがどの拠点装置に届いているのか」を認識でき、拠点装置は、「自らが発信している停止限界位置情報などの制御情報がどの車上制御装置(列車)に届いているのか」を認識できる。すなわち、上記列車制御システムによれば、列車位置情報、あるいは停止限界情報などの列車の安全走行に必須の情報が、ブロードキャスト方式の無線通信であっても車上及び地上間で確実に授受されているかどうかを確認できる。
【0075】
次に、列車を留置した後に留置された車両を列車として再起動する場合の通信制御について説明する。
列車制御システムでは、運行管理に従って列車を留置したり、留置した列車を再度起動させたりする。ただし、実際の運用形態では、留置前後で各列車に付与される列車IDが変更となることが多い。たとえば、各拠点装置12は、留置直後に列車に搭載された車上側システムから受信する列車IDに対応した列車位置情報(つまり、留置した位置を示す情報)を共有メモリに記憶するものとする。しかしながら、留置前後で列車に対する列車IDが変更となる場合、拠点装置だけでは、共有メモリに記憶しているどの列車IDに対応する列車位置情報が留置後に再起動させる列車の位置を示す情報であるかを判別するのが難しい。
【0076】
このため、本列車制御システムでは、留置後に列車を再起動させる場合に、当該列車の位置を初期設定するために、地上側システム(拠点装置)および車上側システム(車上制御装置)間で、留置前後の当該列車(車両)に対する列車IDを対応づけるための初期情報を授受する。これにより、列車制御システムは、拠点装置に記憶した留置前の列車IDに対応する列車位置情報に基づいて、留置後に再起動する列車の位置を補正することができ、留置後に再起動させる列車の位置を正確に判定できる。
【0077】
なお、以下に説明する本実施の形態においては、留置した位置と再起動する位置とが同じ位置である場合を想定している。また、車両の留置前後では、当該車両に搭載された車上制御装置と通信接続先になる拠点装置は同じとなる可能性が高い。このため、以下に説明する実施の形態は、車上制御装置と拠点装置とがブロードキャスト方式以外の通信方式により無線通信するようにしても良い。
【0078】
図6及び図7は、列車の留置前後における車上制御装置と拠点装置との無線通信手順を説明するための図である。図6は、留置する直前における情報の通信手順を示す留置シーケンスを示し、図7は、留置後の再起動における情報の通信手順を示す起動シーケンスを示している。
【0079】
まず、図6を参照して留置シーケンスについて説明する。
列車が留置位置に停止すると(ステップS60、YES)、当該列車に搭載された車上側システムの車上制御装置21は、列車ID、車両識別ID、および列車位置情報を含む留置情報を生成する(ステップS61)。列車IDは、留置前の当該列車に与えれた識別情報である。列車IDは、運行スケジュールに応じて各列車に与えられる識別情報であり、留置後に再起動する場合には再設定される情報である。車両識別IDは、当該列車の車両に与えられた識別情報である。車両識別IDは、車両としてのハードウエアに与えられた固有の情報であり、留置前後では変更されない情報である。列車位置情報は、留置直後における当該列車の位置(当該列車を留置した位置)を示す情報である。車上制御装置21は、生成した留置情報を車上無線装置22によりブロードキャストする(ステップS62)。
【0080】
拠点装置12は、車上側システムの車上無線装置22からブロードキャストされた留置情報を無線基地局13を介して受信する(ステップS63)。留置情報を受信した拠点装置12の拠点制御部15は、受信した留置情報により当該列車の留置を許可するか否かを判断する(ステップS64)。たとえば、留置の可否は、運行スケジュールなどに基づいて判断して良い。
【0081】
当該列車の留置を許可すると判断した場合(ステップS64、YES)、拠点制御部15は、受信した留置情報を共有メモリ16に記憶する(ステップS65)。なお、留置を許可しないと判断した場合であっても、拠点制御部15は、留置不可とした留置情報を記憶しても良い。留置の可否を判断した場合、拠点制御部15は、留置の可否を示す情報を列車IDに対応づけた留置可否情報として無線基地局13よりブロードキャストする(ステップS66)。
【0082】
車上制御装置21は、地上側システムの無線基地局13からブロードキャストされた留置情報を車上無線装置22を介して受信する(ステップS67)。留置可否情報を受信した車上制御装置21は、受信した留置可否情報により当該列車の留置が許可されたか否かを判断する(ステップS68)。留置が許可された場合(ステップS68、YES)、車上制御装置21は、当該列車の留置を完了する(ステップS70)。留置完了と判断した列車の車上側システムは、たとえば、操作員の操作に従って電源がオフされる。なお、留置が許可されない場合、車上制御装置21は、当該列車を別の位置に留置するための制御を行っても良い。
以上の留置シーケンスによれば、拠点装置12には、留置した列車に関する情報として、列車ID、車両識別IDおよび列車位置情報を含む留置情報が確実に記憶される。
【0083】
次に、図7を参照して起動シーケンスについて説明する。
留置した列車を再起動する場合、操作員は、当該列車に搭載された車上側システムの電源をオンする。車上側システムの電源がオンされると(ステップS70、YES)、車上制御装置21は、列車ID、車両識別ID、および列車位置情報を含む再起動情報を生成する(ステップS71)。列車IDは、再起動する当該列車に新たに与えれた識別情報である。この列車IDは、留置後に再起動する列車に与えられる識別情報であり、留置前の列車に与えられた列車IDとは異なるものとする。なお、列車IDは、各車両自体ではなく特定の運行スケジュールで列車ごとに、各列車に対して列車IDを設定するシステムにより設定されるものであっても良い。車両識別IDは、当該列車の車両に与えられた識別情報であり、留置前後では変更されていない情報である。仮位置要求は、留置直後における当該列車を示す情報(つまり、留置した位置を示す列車位置情報)を再起動する列車の仮位置として要求する情報である。車上制御装置21は、生成した再起動情報を車上無線装置22によりブロードキャストする(ステップS72)。
【0084】
拠点装置12は、車上側システムの車上無線装置22からブロードキャストされた再起動情報を無線基地局13を介して受信する(ステップS73)。再起動情報を受信した拠点装置12の拠点制御部15は、受信した再起動情報に含まれる車両識別IDに基づいて共有メモリ16に記憶した留置情報を抽出する(ステップS74)。車両識別IDは、留置の前後であっても変更されない。このため、車両識別IDをキーワードとして共有メモリ16に記憶した留置情報を検索すれば、車両識別IDが一致する留置情報が抽出できる。また、拠点制御部15は、受信した再起動情報を共有メモリ16に記憶する(ステップS75)。たとえば、拠点制御部15は、再起動情報を車両識別IDが一致する留置情報に対応づけて記憶しても良い。
【0085】
拠点制御部15は、抽出した留置情報に含まる列車位置情報(留置した位置を示す情報)を再起動する列車の仮位置(初期設定位置)として判断する。当該列車の仮位置を判断すると、拠点制御部15は、仮位置を示す情報に再起動情報に含まれる列車ID(再起動した列車の列車ID)を付与した仮位置情報を無線基地局13よりブロードキャストする(ステップS76)。
【0086】
車上制御装置21は、地上側システムの無線基地局13からブロードキャストされた仮位置情報を車上無線装置22を介して受信する(ステップS77)。仮位置情報を受信した車上制御装置21は、受信した仮位置を再起動する当該列車の初期位置として設定する(ステップS78)。このような仮位置を初期位置として設定した場合、車上制御装置21は、設定した初期位置に基づいて位置を補正することより再起動直後における当該列車の位置を把握する。
以上の起動シーケンスにより、車上制御装置21では、留置した列車を再起動する場合であっても、当該列車の位置を正確に判定できる。
【0087】
なお、上述した例では、ハードウェアとしての車両と1対1に対応する識別情報として車両識別IDを採用したが、車上制御装置21が搭載されている車両自体を識別できる情報であれば、車両識別ID以外の識別情報を採用しても構わない。また、列車位置情報としては、列車先端および尾端の位置情報が必要となることもある。このような運用形態では、列車ダイヤから列車の編成そのものを識別するための編成番号から列車長を認識し、列車先端および尾端の位置情報を求めてもよい。
【0088】
上記のように、列車制御システムでは、留置前後で列車IDが変更となる場合であっても、地上側システムは、留置直前の列車に与えられていた列車IDと当該列車を構成する車両の車両識別IDとに対応づけた留置位置を留置情報として記憶する。留置後に再起動する場合、地上側システムは、車両識別IDに基づいて検索した留置情報から当該車両の留置位置を抽出し、列車として再起動する車両が留置されていた留置位置を仮位置(初期位置)として車上側システムへ提供する。これにより、列車に搭載された車上制御装置21は、留置後に再起動する場合であっても、当該車両が留置されていた位置を仮位置(初期位置)として認識できる。
【0089】
また、上述の処理プロセスによれば、車上側システムおよび地上側システムは、「ハードウェアとしての車両自体を識別するための車両識別ID」と「列車ダイヤ(列車の運行スケジュール)に依存して設定変更される列車ID」とを容易に対応づけることできるため、各列車の留置前後における情報を確実に対応づけることができ、車上側システムおよび地上側システム間で情報を共有化できる。すなわち、留置後に列車を再起動する場合であっても、地上側システムは、列車を留置する直前(あるいは留置した直後)に記憶した列車位置情報(留置した位置を示す情報)を再起動する列車の仮位置(初期位置)として車上側システムへ提供できる。
【0090】
以上のように、本実施形態に係る列車制御システムでは、ゾーントランジションを簡易化したり、通信に要する所要時間を低減したりするため、車上制御装置と拠点装置との間の通信方式は、車上無線装置と無線基地局を経由したブロードキャストを採用できる。無線伝送によるブロードキャスト方式で無線通信を行うと、送信側が情報を送信した順序(時系列的な順序)と同一の順序で受信側に情報が届くとは限らないが、本実施形態の列車制御システムでは、列車に搭載された車上側システムと地上側システムと間の情報授受にブロードキャストの無線通信方式を採用した場合であっても、以下の点を実現できる。
【0091】
(1)車上側システムおよび地上側システムで互いに通信相手を認識できる。
(2)列車に搭載される車上制御装置を含む車上側システムは、受信した地上側情報の鮮度を識別でき、新しい情報を用いて列車を制御できる。
(3)各拠点装置を含む地上側システムは、受信した車上側情報の鮮度を識別でき、各列車について新しい列車位置を保持することができる。
(4)各拠点装置は、相互に情報を共有化できる。
(5)各拠点装置は、各列車に対して出力する制御情報の整合性を維持できる。
(6)留置前後の列車を一意に特定でき、留置後に再起動する列車に仮位置として当該列車を留置した位置を認識させることができる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1…拠点間ネットワーク、2(2A、2B、2C、…)…沿線ネットワーク、11…指令所装置、12(12A、12B、12C、…)…拠点装置、13(13A1.13A2、…、13B1、13B2、…、13C1、13C2、…)…無線基地局、15(15A、15B、15C、…)…拠点制御部、16(16A、16B、16C、…)…共有メモリ、20…ネットワーク、21…車上制御装置、22…車上無線装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載した車上制御装置と地上に設置した拠点装置とが前記列車に設置した無線装置と地上に設置した複数の無線基地局とを介して無線通信する列車制御システムにおいて、
前記車上制御装置は、
当該列車の現在の状態を示す列車状態情報に当該列車を示す列車識別情報を付加した列車側情報を当該列車に設置した無線装置によりブロードキャストする第1の送信手段と、
前記無線基地局からブロードキャストされる当該列車の列車識別情報が付加された制御情報を前記無線装置により受信する第1の受信手段と、
前記第1の受信手段により受信した当該列車の列車識別情報が付与された制御情報に基づいて当該列車を制御する列車制御手段と、有し、
前記拠点装置は、
前記列車に設置した無線装置からブロードキャストされる情報を複数の無線基地局により受信する第2の受信手段と、
前記第2の受信手段により受信した前記列車側情報を記憶する記憶手段と、
前記第2の受信手段により受信した前記列車側情報に含まれる列車状態情報に基づいて当該列車識別情報の列車に対する制御情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成した制御情報に前記列車識別情報を付加した情報を前記無線基地局からブロードキャストする第2の送信手段と、を有する、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
前記車上制御装置の前記第1の送信手段は、さらに、前記列車位置情報の新しさを示すシリアル番号を付加した列車側情報をブロードキャストし、
前記拠点装置の前記生成手段は、前記第2の受信手段により受信した列車側情報に含まれるシリアル番号が前記記憶手段に記憶していた列車側情報に含まれるシリアル番号よりも新しければ、受信した列車側情報に含まれる列車状態情報に基づいて当該列車識別情報の列車に対する制御情報を生成する、
ことを特徴とする前記請求項1に記載の列車制御システム。
【請求項3】
前記拠点装置の前記生成手段は、前記第2の受信手段により受信した前記列車側情報に基づいて当該列車識別情報の列車に対する制御情報を生成し、生成した制御情報に新しさを示すバージョン番号を付与し、
前記拠点装置の前記第2の送信手段は、前記生成手段により生成した前記バージョン情報を付与した制御情報に前記列車識別情報を付加した情報を前記無線基地局からブロードキャストし、
前記車上制御装置の前記列車制御手段は、前記第1の受信手段により受信した情報のうち最も新しいバージョン情報が付与された制御情報に基づいて当該列車を制御する、
ことを特徴とする前記請求項1又は2の何れかに記載の列車制御システム。
【請求項4】
前記車上制御装置の前記第1の送信手段は、前記列車識別情報に加えて接続先として認識している拠点装置を示す拠点識別情報を付加した列車側情報をブロードキャストし、
前記拠点装置は、前記第2の受信手段で受信した列車側情報に含まれる前記列車識別情報と前記拠点識別情報とにより通信接続が確立した車上制御装置を認識する、
ことを特徴とする前記請求項1乃至3の何れか1項に記載の列車制御システム。
【請求項5】
前記拠点装置の前記第2の送信手段は、前記列車識別情報に加えて当該拠点装置を示す拠点識別情報を前記制御情報に付加した情報をブロードキャストし、
前記車上制御装置は、前記第1の受信手段で受信した制御情報に付加される前記列車識別情報と前記拠点識別情報とにより通信接続が確立した拠点装置を認識する、
ことを特徴とする前記請求項1乃至3の何れかに記載の列車制御システム。
【請求項6】
車両に搭載した車上制御装置と地上に設置した拠点装置とが前記車両に設置した無線装置と地上に設置した無線基地局とを介して無線通信する列車制御システムにおいて、
前記車上制御装置は、
留置する位置を示す留置位置情報、留置する列車に与えられた列車識別情報および留置する列車の車両を示す車両識別情報を含む留置情報を前記拠点装置へ送信する第1の送信手段と、
前記留置後に再起動する場合に、再起動する列車を構成する車両を示す車両識別情報を付加した仮位置要求を前記拠点装置へ送信する第2の送信手段と、
前記拠点装置から受信した仮位置情報に基づいて初期位置を設定する初期設定手段と、を有し、
前記拠点装置は、
前記車上制御装置から受信する前記留置情報を記憶する記憶手段と、
前記車上制御装置から受信した仮位置要求に付加されている車両識別識別情報により前記記憶手段に記憶している留置情報を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出した留置情報に含まれる留置位置情報を仮位置情報として前記車両識別情報の車両に搭載した車両制御装置へ送信する第3の送信手段と、を有する、
ことを特徴とする列車制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−106571(P2012−106571A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256100(P2010−256100)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】