説明

制御弁付き圧縮機及び制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法

【課題】吸入流量調整弁と制御部との接続関係が逆転して誤接続されたことを検出できる制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法および制御弁付き圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮機1は吸入管21から吸入される気体を圧縮して吐出管22から吐出する。吸入流量調整弁3は吸入管21に設けられ、指示パルスによってその開度を可変とし、圧縮機1へと流れる気体の流量を制御する。制御部5は指示パルスを吸入流量調整弁3へと与えてその開度を制御し、また圧縮機1の圧縮動作を制御する。制御部5は基点出しを行った後の最初の圧縮機1の圧縮動作において所定の期間内に吸入管21内の気体の圧力が規定値を下回ったことをもって、吸入流量調整弁3と制御部5との接続関係が逆転して誤接続されていると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御弁付き圧縮機及び制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機の吸入側には気体の流量を制御する吸入流量調整弁が設けられる。当該吸入流量調整弁は制御部と接続される。制御部は吸入流量調整弁へと指示パルスを与えて、その開度を制御する。より具体的には、開度を絞る場合に所定の指示方向を示す指示パルスを吸入流量調整弁に与え、開度を開く場合には当該指示方向とは反対方向を示す指示パルスを吸入制御弁に与える。
【0003】
なお、本発明に関連する技術として特許文献1が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−270631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吸入流量調整弁を、例えば指示方向が異なる吸入流量調整弁に交換する場合、吸入流量調整弁と制御部との接続関係が逆転して誤接続を招く場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、吸入流量調整弁と制御部との接続関係が逆転して誤接続されたことを検出できる制御弁付き圧縮機及び制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第1の態様は、所定の気体を圧縮する圧縮動作を行う圧縮機(1)と、前記気体を前記圧縮機へと導く吸入管(21)と、圧縮された前記気体を前記圧縮機から外部へと導く吐出管(22)とを有する配管(2)と、指示信号によってその開度を可変とし、以て前記吸入管を流れる前記気体の流量を制御する制御弁(3)と、一対の配線と、前記配管内の前記気体の圧力又は温度である変数を測定する測定部(4)と、前記一対の配線を介して前記制御弁へと前記指示信号を与えて前記開度を、また前記圧縮動作を、それぞれ制御する制御部(5)とを備える制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法であって、(a)前記圧縮動作の開始に先だって、前記制御部が前記制御弁へと前記指示信号を与えて、前記開度を所定値とするステップ(S1,S2)と、(b)前記ステップ(a)の実行後に、前記制御部の制御によって、前記圧縮動作を行うステップ(S3)と、(c)前記ステップ(b)の実行から所定の期間内に前記変数が規定値を下回ったときに、前記一対の配線による前記制御弁と前記接続部との接続関係が逆転して誤接続されていると判断するステップ(S4)とを実行する。
【0008】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第2の態様は、第1の態様に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法であって、(d)前記ステップ(c)の実行後に、前記制御部が前記圧縮動作を停止させるステップ(S5)を更に実行する。
【0009】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第3の態様は、第1又は第2の態様に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法であって、(e)前記ステップ(c)において前記変数が前記規定値を下回ったと判断した後に、前記制御部が前記制御弁を制御して前記開度を中間開度近傍の第2所定値とするステップ(S6)を更に実行する。
【0010】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第4の態様は、第1乃至第3のいずれか一つの態様に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法であって、前記ステップ(a)にて、前記指示信号は、前記開度を絞る場合には第1の指示方向を示し、前記開度を開く場合には前記第1の指示方向と反対の第2の指示方向を示し、前記ステップ(c)において前記変数が前記規定値を下回ったと判断した後の前記指示信号は、前記開度を絞る場合には前記第2の指示方向を、前記開度を開く場合には前記第1の指示方向を、それぞれ示す(S7)。
【0011】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第5の態様は、第1乃至第4のいずれか一つの態様に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法であって、前記測定部は、前記吸入管側の前記気体の前記変数を測定する。
【0012】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第6の態様は、第1乃至第5のいずれか一つの態様に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法であって、前記変数は前記気体の圧力である。
【0013】
本発明に係る制御弁付き圧縮機の第1の態様は、所定の気体を圧縮する圧縮動作を行う圧縮機(1)と、前記気体を前記圧縮機へと導く吸入管(21)と、圧縮された前記気体を前記圧縮機から外部へと導く吐出管(22)とを有する配管(2)と、指示信号によってその開度を可変とし、以て前記吸入管を流れる前記気体の流量を制御する制御弁(3)と、一対の配線と、前記配管内の前記気体の圧力又は温度である変数を測定する測定部(4)と、前記一対の配線を介して前記制御弁へと前記指示信号を与えて前記開度を、また前記圧縮動作を、それぞれ制御し、前記制御弁へと前記指示信号を与えて前記開度を所定値とした状態で、前記圧縮動作を開始し、前記圧縮動作の開始から所定の期間内に前記変数が規定値を下回ったときに、前記一対の配線による前記制御弁と前記接続部との接続関係が逆転して誤接続されていると判断する制御部(5)とを備える。
【0014】
本発明に係る制御弁付き圧縮機の第2の態様は、第1の態様に係る制御弁付き圧縮機であって、前記制御部は、前記変数が規定値を下回ったときに前記圧縮動作を停止させる。
【0015】
本発明に係る制御弁付き圧縮機の第3の態様は、第1又は第2の態様に係る制御弁付き圧縮機であって、前記制御部は、前記変数が前記規定値を下回ったと判断した後に、前記制御部が前記制御弁を制御して前記開度を中間開度近傍の第2所定値とする。
【0016】
本発明に係る制御弁付き圧縮機の第4の態様は、第1乃至第3のいずれか一つの態様に係る制御弁付き圧縮機であって、前記指示信号は、前記開度を前記所定値とするに際して前記開度を絞る場合には第1の指示方向を示し、前記開度を開く場合には前記第1の指示方向と反対を示し、前記変数が前記規定値を下回ったと判断した後の前記指示信号は、前記開度を絞る場合には前記第2の指示方向を、前記開度を開く場合には前記第1の指示方向を、それぞれ示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第1の態様又は制御弁付き圧縮機の第1の態様によれば、開度を所定値とするステップ(a)において、一対の配線による制御弁と制御部との接続関係が逆転している場合は、想定している開度を得ることができない。この場合、圧縮機による圧縮動作を開始した後のわずかの期間内に圧力や温度が低下する。よって、所定の期間を小さな値とすることで、一対の配線の誤接続を効率よく検出できる。
【0018】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第2の態様又は制御弁付き圧縮機の第2の態様によれば、気体の圧力が低下したことによる圧縮機の故障を防止できる。
【0019】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第3の態様又は制御弁付き圧縮機の第3の態様によれば、開度を中間開度近傍の第2所定値としているので、一対の配線が誤接続であったときでも、開度を中間開度近傍の値にすることができる。よって、圧縮機停止後は吸入管の圧力が回復するので、圧縮機の故障を防止できる。
【0020】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第4の態様又は制御弁付き圧縮機の第4の態様によれば、一対の配線が誤接続されたと判断されても、指示方向を反転させて開度を制御するので、一対の配線の接続を変えることなく圧縮機を正常に駆動できる。
【0021】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第5の態様によれば、圧縮動作によって、まず吸入管内の気体が吸入され、圧縮動作を完了したときに吐出管へと気体が吐出されるので、吸入管内の気体の変数は、吐出管内の気体の変数に比べて応答が速い。よって、吸入管側の気体の変数を測定することで、瞬時に誤接続を検出できる。
【0022】
本発明に係る制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法の第6の態様によれば、圧力は温度などに比べて応答が速いので、瞬時に誤接続を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
第1の実施の形態.
図1は、第1の実施の形態に係る制御弁付き圧縮機の一例の概念的な構成を示している。本制御弁付き圧縮機は、圧縮機1と、配管2と、吸入流量調整弁3と、圧力センサー4と、制御部5とを備えている。このような圧縮機は、例えば冷凍装置、空気調和機などに適用することができる。
【0024】
圧縮機1は圧縮対象となる気体(例えば冷媒)を圧縮する圧縮動作を行う。
【0025】
配管2は吸入管21と吐出管22とを備えている。吸入管21は低圧側で圧縮機1と接続されて気体を圧縮機1へと導く。吐出管22は高圧側で圧縮機1と接続されて圧縮機1によって圧縮された気体を圧縮機1から外部へと導く。
【0026】
吸入流量調整弁3は、指示パルスによってその開度を可変とし、吸入管21内を流れる気体の流量を制御する。より具体的な一例としては、例えばステッピングモータMによって、吸入流量調整弁3の開度が制御される。なお、ステッピングモータMは必須の要件ではなく、指示パルスによって駆動される態様であれば、どのような態様の吸入流量調整弁であってもよい。
【0027】
圧力センサー4は配管2内を流れる気体の圧力を測定する。そして測定した圧力値を制御部5へと出力する。図1に示す制御弁付き圧縮機においては、圧力センサー4は例えば吸入管21に設けられて、吸入管21内を流れる気体の圧力を測定している。
【0028】
制御部5は少なくとも一対の配線(図示せず)を介して吸入流量調整弁3へと指示パルスを与えて開度を制御する。より具体的には、制御部5は、所定の第1の指示方向を示す指示パルスと、第1の指示方向とは反対である第2の指示方向を示す指示パルスとを吸入流量調整弁3へと与える。吸入流量調整弁3の開度は当該指示方向およびパルス数に応じて制御される。また、制御部5は圧縮機1の圧縮動作を制御する。
【0029】
図2は、制御部5とステッピングモータMの接続関係の一例の概念的な構成を示す。制御部5はドライバ回路6を介してステッピングモータMと接続されている。電源VDDは制御部5と電源端Pと接続されている。
【0030】
ステッピングモータMは、A相コイルL1と、A’相コイルL2と、B相コイルL3と、B’相コイルL4とを備えている。A相コイルL1と、A’相コイルL2と、B相コイルL3と、B’相コイルL4の一端は共通して電源端Pに接続されている。
【0031】
ドライバ回路6はスイッチTr1〜Tr4を備えている。スイッチTr1〜Tr4は、それぞれA相コイルL1と、A’相コイルL2と、B相コイルL3と、B’相コイルL4の他端と、接地GNDとの間で接続されている。当該スイッチTr1〜Tr4が導通することで、それぞれ各相コイルL1〜L4へと電源VDDから電流が流れる。
【0032】
制御部5はスイッチTr1〜Tr4の導通/非導通を制御する。より具体的には、スイッチTr1〜Tr4へとパルス信号(指示パルス)を出力してスイッチTr1〜Tr4を制御する。
【0033】
制御部5は例えばスイッチTr1,Tr3,Tr2,Tr4へとこの順でパルス信号(第1の指示方向を示す指示パルス)を繰り返し出力する(第1の制御)。これに伴って電源VDDからの電流が、A相コイルL1、B相コイルL3、A’相コイルL2、B’相コイルL4へとこの順で繰り返し流れる。当該電流によって磁界が発生し、回転子MR1が所定の方向に回転する。ステッピングモータMは回転子MR1の回転量に応じて、吸入流量調整弁3の開度を例えば絞る方向に調整する。
【0034】
また、制御部5が例えばスイッチTr4,Tr2,Tr3,Tr1へとこの順でパルス信号(第2の指示方向を示す指示パルス)を繰り返し出力した(第2の制御)場合は、電源VDDからの電流が、B’相コイルL4、A’相コイルL2、B’相コイルL3、A相コイルL1へとこの順で繰り返し流れる。このとき、回転子MR1は所定の方向とは反対の方向に回転し、ステッピングモータMは吸入流量調整弁3の開度を例えば開く方向に調整する。
【0035】
ここで、例えばA相コイルL1の一端がスイッチTr4と、B’相コイルL4の一端がスイッチTr1とそれぞれ接続され、A’相コイルL2の一端がスイッチTr3と、B相コイルL3がスイッチTr2とそれぞれ接続されると、回転子MR1の回転方向が逆転する。また、スイッチTr1,Tr4と制御部5との接続関係が逆転して接続され、スイッチTr2,Tr3と制御部5との接続関係が逆転して接続された場合も同様である。なお、このような状態は、吸入流量調整弁3と制御部5との接続関係が逆転して誤接続されていると把握できる。
【0036】
なお、例えばA相コイルL1とスイッチTr1の間を接続する配線と、B’相コイルL4とスイッチTr4との間を接続する配線とを一対の配線と把握できる。同様に、A’相コイルL2とスイッチTr2の間を接続する配線、及びB相コイルL3とスイッチTr3を接続する配線を、スイッチTr1と制御部5との間を接続する配線、及びスイッチTr4と制御部との間を接続する配線を、スイッチTr2と制御部5との間を接続する配線、及びスイッチTr3と制御部5との間を接続する配線をそれぞれ一対の配線と把握できる。
【0037】
このような制御弁付き圧縮機の動作について図3を参照して説明する。図3は、制御部5が吸入流量調整弁3へと指示パルスを与えたときに制御部5が想定している開度と、制御部5との接続関係が逆転して誤接続された吸入流量調整弁3の開度と、圧縮機1の圧縮動作と、圧力センサー4が測定した圧縮機1の低圧側の圧力値と、の一例を示している。
【0038】
まず、電源が投入されると、制御部5は圧縮機1の圧縮動作に先立って基点出しを行う。基点出しとは、制御部5から指示パルスを与えることにより、吸入流量調整弁3の開度を、開度を制御するに際して基準となる基準開度と一致させる処理をいう。これは、制御部5が吸入流量調整弁3を開始するに際して初期的な開度を認識できないために行われる処理である。図3においては、基準開度の所定値が全閉状態に対応する場合が例示されている。開度が全閉状態に至ったかどうかは、例えばステッピングモータMを流れる電流を測定することで制御部5が認識できる。
【0039】
基点出しにおいては、制御部5は例えば第1の制御を実行して指示パルスを吸入流量調整弁3へと与える。このとき、吸入流量調整弁3と制御部5との接続関係は逆転しているので、実際の吸入流量調整弁3の開度は開く方向へと調整される。
【0040】
そして、実際の開度が全開状態に達すると、ステッピングモータMがロックされ、ステッピングモータMを流れる電流値が大きくなる。制御部5は例えばこの電流値の変化により開度が基準開度(全閉状態)に至ったと判断する。次に、制御部5は、開度を例えば全開状態とすべく第2の制御を実行して指示パルスを吸入流量調整弁3へと与える。より具体的には、全閉状態から全開状態までのパルス数(例えば328パルス)を与える。これは、後述する圧縮機1の圧縮動作の開始において、気体を圧縮機1に与えるためである。しかしながら、吸入流量調整弁3は制御部5と接続関係が逆転して誤接続されているため、実際の開度は全閉状態となる。
【0041】
その後、制御部5が圧縮機1の圧縮動作を開始する。このとき吸入流量調整弁3の開度が全閉状態であるので、当該圧縮動作に伴って圧縮機1の低圧側の圧力(圧力センサー4が測定した圧力)が低下する。そして圧縮動作の開始から所定の期間(例えば数秒〜数十秒程度)内に当該圧力が規定値(例えば標準大気圧との差が−90Kpa)を下回ると、制御部5は吸入流量調整弁3と制御部5との接続関係が逆転して誤接続されていると判断して圧縮機1の圧縮動作を停止させる。なお、所定の期間を経過したかどうかは、例えば図示しないタイマー部等によって制御部5が認識するとよい。
【0042】
誤接続に起因する圧力の低下は、最初に圧縮機を駆動したときの所定の期間内で生じる現象である。よって、上述したように、基点出し後の最初の圧縮動作において所定の期間内に低圧側の圧力が規定値を下回ったことを以って誤接続を検出することで、効率よく誤接続を検出できる。
【0043】
なお、図3においては、所定の第2期間(例えば2秒程度)に当該圧力が規定値を下回り続けることを以って制御部5が誤接続と判断している。これは、ノイズ等によって瞬時的に圧力が規定値を下回る場合などを考慮して、誤検知を防止するためである。なお、圧力が規定値を下回ったことを以って速やかに誤接続と判断してもよい。
【0044】
また、図示せぬ表示部を設け、吸入流量調整弁3と制御部5との接続関係が逆転して誤接続されていると判断したときに、制御部5がその旨を当該表示部に表示してもよい。この場合、作業員に適切な処理を促すことができる。
【0045】
誤接続が生じていると判断された場合には、圧縮機1の圧縮動作を停止することが望ましい。気体の圧力が低下したことによる圧縮機の故障を防止するためである。圧縮機1を停止させたときには、制御部5は吸入流量調整弁3の開度を中間開度近傍の所定値とすべく、吸入流量調整弁3へと指示パルスを与えることが望ましい。より具体的には、第1の制御により全閉状態から全開状態までのパルス数の例えば半分のパルス数(例えば164パルス)を与える。これにより、吸入流量調整弁3と制御部5との接続関係が逆転して誤接続されていても、吸入流量調整弁3の開度が中間開度近傍の値を採る。
【0046】
これにより、圧縮機1の低圧側の気体の圧力が回復する。よって、圧縮機1を停止させた後に、例えばユーザが電源投入を行って圧縮機1を再起動させたとしても、低圧側の圧力が足らないことによる圧縮機1の故障を防止できる。
【0047】
なお、吸入流量調整弁3の開度を中間開度近傍の所定値とすることは、圧縮機1の圧縮動作の停止を前提としない。吸入流量調整弁3の開度を中間開度近傍の所定値とすれば吸入管21側の気体の圧力が回復するので、圧縮機1の故障を防止して圧縮機1の圧縮動作を継続できる。
【0048】
図4は制御部5の動作を示すフローチャートの一例である。まずステップS1にて、制御部5は圧縮機1の圧縮動作に先立って基点出しを行う。次に、ステップS2にて、制御部5は開度を全開状態とすべく吸入流量調整弁3へと指示パルスを与える。なお、基準開度が全開状態である場合はステップS2を行う必要はない。
【0049】
次にステップS3にて、制御部5は圧縮機1の圧縮動作を開始する。次にステップS4にて、制御部5は、圧縮動作の開始から所定の期間(数秒〜数十秒程度)内に圧力センサー4から入力された圧力値が規定値を下回っているかどうかを判断する。また、ノイズ等に鑑みて、所定の第2期間(例えば2秒)において当該圧力値が規定値を下回り続けているか否かを判断してもよい。
【0050】
ステップS4で圧力値が規定値を超えている場合は再びステップS3を実行する。ステップS4で圧力値が規定値を下回っている場合は、ステップS5にて、制御部5は吸入流量調整弁3との接続関係が逆転して誤接続されていると判断し圧縮機1を停止させる。
【0051】
次に、ステップS6にて制御部5は開度を中間開度近傍の所定値とする指示パルスを吸入流量調整弁3へと与える。なお、ステップS5又はステップS6にて、予め設けられた図示せぬ表示部に、制御部5と吸入流量調整弁3との接続関係が逆転している旨を表示してもよい。
【0052】
また、上述の通り、ステップS5,S6はいずれも省略してもよい。またステップS5を実行することなくステップS6を実行しても、ステップS6を実行することなくステップS5を実行してもよい。
【0053】
なお、本実施の形態においては、圧力センサー4が吸入管21に設けられていたが、吐出管22に設けられていてもよい。吸入流量調整弁3の開度が全開した状態で圧縮機1が圧縮動作を行うと低圧側の圧力が低下し、ひいては高圧側の圧力低下を招くので、高圧側の圧力が所定値を下回ることを以って吸入流量調整弁3と制御部5との誤接続を検出してもよい。
【0054】
但し、圧縮動作によって、まず吸入管21内の気体が吸入され、圧縮動作を完了したときに吐出管22へと気体が吐出されるので、吸入管21内の気体の圧力は、吐出管22内の気体の圧力に比べて応答が速い。よって、吸入管21内の圧力を測定することで、誤検出をよりはやく検出できる。
【0055】
また、圧力センサー4に限らず温度センサーを用いてもよい。気体の圧力が低下することによって温度も低下するので、配管2内の温度が規定値を下回ることを以って誤接続を検出できる。但し、圧力は温度に比べて応答が速いので、圧力センサー4を用いることで誤検出をよりはやく検出できる。
【0056】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態にかかる制御弁付き圧縮機の概念的な構成は第1の実施の形態にかかる制御弁付き圧縮機と同一である。第2の実施の形態にかかる制御弁付き圧縮機においては、制御部5は、制御部5と吸入流量調整弁3との接続関係が逆転して誤接続されていると判断したときに、指示パルスが示す指示方向を反転させる。
【0057】
より具体的には、例えばデフォルトで設定された指示パルスは、吸入流量調整弁3の開度を絞る場合には第1の指示方向を示し、開度を開く場合には第1の指示方向と反対の第2の指示方向を示すのに対して、誤接続されていると判断した後の指示パルスは、開度を絞る場合には第2の指示方向を、開度を開く場合には第1の指示方向を、それぞれ示す。
【0058】
図5は、制御部5が吸入流量調整弁3へと指示パルスを与えたときに制御部5が想定している開度と、制御部5との接続関係が逆転して接続された吸入流量調整弁3の開度と、圧縮機1の圧縮動作と、圧力センサー4が測定した圧縮機1の低圧側の圧力値と、の一例を示している。
【0059】
図5において、圧縮機1を停止した後に、吸入管21側の気体の圧力が回復している。この回復は、圧縮機1を停止させた後に吸入流量調整弁3の開度を中間開度近傍の所定値とすることで促進されている。そして十分に圧力が回復したことを以って、制御部5は指示方向を反転させて指示パルスを吸入流量調整弁3へと与える。図5においては開度が全開となるように指示パルスが与えられている。
【0060】
このとき吸入流量調整弁3は制御部5が意図したとおりに駆動されて、その開度が全開状態になる。そして、制御部5は圧縮機1の圧縮動作を再び開始する。
【0061】
図6は制御部5の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS1〜S6は第1の実施の形態と同様であるので詳細な説明を割愛する。
【0062】
ステップS6の実行後に、ステップS7にて制御部5は指示方向を反転させて吸入流量調整弁3の開度を例えば全開すべく、吸入流量調整弁3に指示パルスを与える。より具体的には、開度を絞る場合に第2の制御を、開度を開く場合に第1の制御をそれぞれ実行する。そして制御部5は圧縮機1の圧縮動作を再び開始する。なお、この内容は、ステップS1にて、指示パルスは、開度を絞る場合には第1の指示方向を示し、開度を開く場合には第1の指示方向とは反対の第2の指示方向を示し、ステップS4において圧力が規定値を下回ったと判断した後の指示パルスは、開度を絞る場合には第2の指示方向を、開度を開く場合には第1の指示方向をそれぞれ示す、と把握できる。
【0063】
以上のように、本第2の実施の形態によれば、例えば吸入流量調整弁3と制御部5との接続関係が逆転して誤接続されていても、制御部5が指示方向を反転させて吸入流量調整弁3へと指示パルスを与えるので、吸入流量調整弁3を適正に制御することができる。
【0064】
なお、ステップS5,S6は必ずしも実行する必要はない。例えばステップS4で圧力値が規定値以下であると判断したことを以って、ステップS7を実行してもよい。但し、圧縮機1の故障を招かない程度に吸入管21側の圧力が回復するために時間を必要とする場合は、ステップS5を実行することが好ましい。また、図示せぬ表示部を設け、当該表示部に指示方向を反転させた旨を表示してもよい。この場合、作業員やユーザがどのような指示方向で吸入流量調整弁3が制御されているのかを視認できる。
【0065】
また、圧力センサー4は吐出管22に設けられていてもよく、圧力センサー4の代わりに温度センサーが設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施の形態にかかる制御弁付き圧縮機の一例を示す概念的な構成図である。
【図2】制御部とステッピングモータの接続関係を示す概念的な構成図である。
【図3】指示パルスを与えたときに制御部が想定している開度と、吸入流量調整弁の開度と、圧縮機の圧縮動作と、圧力センサーが測定した圧力値との一例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態にかかる制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】指示パルスを与えたときに制御部が想定している開度と、吸入流量調整弁の開度と、圧縮機の圧縮動作と、圧力センサーが測定した圧力値との一例を示す図である。
【図6】第2の実施の形態にかかる制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 圧縮機
2 配管
3 吸入流量調整弁
4 圧力センサー
5 制御部
21 吸入管
22 吐出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の気体を圧縮する圧縮動作を行う圧縮機(1)と、
前記気体を前記圧縮機へと導く吸入管(21)と、圧縮された前記気体を前記圧縮機から外部へと導く吐出管(22)とを有する配管(2)と、
指示信号によってその開度を可変とし、以て前記吸入管を流れる前記気体の流量を制御する制御弁(3)と、
一対の配線と、
前記配管内の前記気体の圧力又は温度である変数を測定する測定部(4)と、
前記一対の配線を介して前記制御弁へと前記指示信号を与えて前記開度を、また前記圧縮動作を、それぞれ制御する制御部(5)と
を備える制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法であって、
(a)前記圧縮動作の開始に先だって、前記制御部が前記制御弁へと前記指示信号を与えて、前記開度を所定値とするステップ(S1,S2)と、
(b)前記ステップ(a)の実行後に、前記制御部の制御によって、前記圧縮動作を行うステップ(S3)と、
(c)前記ステップ(b)の実行から所定の期間内に前記変数が規定値を下回ったときに、前記一対の配線による前記制御弁と前記接続部との接続関係が逆転して誤接続されていると判断するステップ(S4)と
を実行する、制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法。
【請求項2】
(d)前記ステップ(c)の実行後に、前記制御部が前記圧縮動作を停止させるステップ(S5)
を更に実行する、請求項1に記載の制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法。
【請求項3】
(e)前記ステップ(c)において前記変数が前記規定値を下回ったと判断した後に、前記制御部が前記制御弁を制御して前記開度を中間開度近傍の第2所定値とするステップ(S6)
を更に実行する、請求項1又は2に記載の制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)にて、前記指示信号は、
前記開度を絞る場合には第1の指示方向を示し、
前記開度を開く場合には前記第1の指示方向と反対の第2の指示方向を示し、
前記ステップ(c)において前記変数が前記規定値を下回ったと判断した後の前記指示信号は、
前記開度を絞る場合には前記第2の指示方向を、前記開度を開く場合には前記第1の指示方向を、それぞれ示す(S7)、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法。
【請求項5】
前記測定部は、前記吸入管側の前記気体の前記変数を測定する、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法。
【請求項6】
前記変数は前記気体の圧力である、請求項1乃至5の何れか一つに記載の制御弁付き圧縮機における制御弁の誤接続検出方法。
【請求項7】
所定の気体を圧縮する圧縮動作を行う圧縮機(1)と、
前記気体を前記圧縮機へと導く吸入管(21)と、圧縮された前記気体を前記圧縮機から外部へと導く吐出管(22)とを有する配管(2)と、
指示信号によってその開度を可変とし、以て前記吸入管を流れる前記気体の流量を制御する制御弁(3)と、
一対の配線と、
前記配管内の前記気体の圧力又は温度である変数を測定する測定部(4)と、
前記一対の配線を介して前記制御弁へと前記指示信号を与えて前記開度を、また前記圧縮動作を、それぞれ制御し、前記制御弁へと前記指示信号を与えて前記開度を所定値とした状態で、前記圧縮動作を開始し、前記圧縮動作の開始から所定の期間内に前記変数が規定値を下回ったときに、前記一対の配線による前記制御弁と前記接続部との接続関係が逆転して誤接続されていると判断する制御部(5)と
を備える、制御弁付き圧縮機。
【請求項8】
前記制御部は、前記変数が規定値を下回ったときに前記圧縮動作を停止させる、請求項7に記載の制御弁付き圧縮機。
【請求項9】
前記制御部は、前記変数が前記規定値を下回ったと判断した後に、前記制御部が前記制御弁を制御して前記開度を中間開度近傍の第2所定値とする、請求項7又は8に記載の制御弁付き圧縮機。
【請求項10】
前記指示信号は、前記開度を前記所定値とするに際して前記開度を絞る場合には第1の指示方向を示し、前記開度を開く場合には前記第1の指示方向と反対を示し、前記変数が前記規定値を下回ったと判断した後の前記指示信号は、前記開度を絞る場合には前記第2の指示方向を、前記開度を開く場合には前記第1の指示方向を、それぞれ示す、請求項7乃至9のいずれか一つに記載の制御弁付き圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−62883(P2009−62883A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231668(P2007−231668)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】