説明

制御装置

【課題】 加速度検出手段の数を増加させずに、駆動軸方向の加速度を直接検出できない駆動軸の加速度をも求めて、被駆動体の振動抑制制御を行う。
【解決手段】 被駆動体3を駆動するV軸とW軸が直交せず傾斜している。この場合、被駆動体3に直交する複数方向の加速度を検出できる加速度検出手段7を、W軸方向と該加速度検出手段7で検出する加速度のY軸方向を合わせて配置する。V軸方向の加速度は、加速度検出手段7で検出されるX軸、Y軸方向の加速度より演算によって求める。求められたV軸、W軸方向の加速度に基づいて、V軸、W軸を駆動するサーボモータへの位置指令、速度指令、または電流指令を補正する。この補正により被駆動体の振動発生を抑制する。複数方向の加速度を検出できる加速度検出手段を1つ設けるだけで、駆動軸方向の加速度を求めることができ、被駆動体が傾ける回転軸を有する場合にも適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボモータによって被駆動体を駆動し、該被駆動体の位置や速度を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、サーボモータで駆動される被駆動体の位置や速度を制御するために、通常、位置フィードバック制御、速度フィードバック制御さらには電流フィードバック制御がなされている。図7はこのサーボモータを制御するサーボ制御部のブロック図である。サーボモータ2または該サーボモータ2によって駆動される被駆動体3には、その速度及び位置を検出する位置検出手段6、速度検出手段5が設けられている。さらには、サーボモータ2を駆動する電流値を検出する電流検出手段4が設けられ、これらの検出手段4,5,6の検出信号がフィードバックされている。
【0003】
モータ制御部1は、プロセッサで制御するデジタル制御がなされ、位置ループ処理を行う位置制御処理部11,速度ループ制御を行う速度制御処理部12,電流ループ処理を行う電流制御処理部13で構成されている。位置制御処理部11においては、位置指令と位置検出手段6からの位置フィードバック信号により位置偏差を求め該位置偏差に位置ループゲインを乗じて速度指令が求められる。また、速度制御処理部12では、位置制御処理部11から出力された速度指令と速度検出手段5からの速度フィードバック信号により速度偏差を求め比例、積分(または速度偏差の積分に、速度フィードバック信号の比例分を減算)等の速度フィードバック制御を行い電流指令を求める。電流制御処理部13ではこの電流指令と電流フィードバック信号とにより電流フィードバック制御を行い、サーボアンプを介してサーボモータ2を駆動制御する。
【0004】
以上が一般的に行われている工作機械の送り軸等の被駆動体3の位置、速度、電流の制御方法であり、通常、プロセッサによってこの位置、速度、電流の制御処理が行われている。このような位置、速度、電流のフィードバック制御を行っても、サーボモータ2の角加速度が急激に変化する際、被駆動体3に振動が発生する場合があり、その対策として、被駆動体3の加速度を検出する加速度センサを設け、該加速度センサからの信号を速度フィードバック制御により出力される電流指令から差し引き、電流フィードバック制御の電流指令とする制御方法が提案されている。
【0005】
被駆動体に振動が発生すると、加速度センサで検出される被駆動体の加速度信号中の振動成分は、電流フィードバック制御に対する電流指令に対して誤差となることから、この誤差が無くなるように電流指令から差し引き、サーボモータの駆動電流を制御することで振動を抑制したものである(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−91482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
直交する2軸または3軸方向の加速度を検出する加速度センサはすでに公知であり、被駆動体を駆動する駆動軸が直交する2軸または3軸であれば、被駆動体に、2軸または3軸方向の加速度を検出する加速度センサを取り付ければ、各駆動軸方向の加速度を検出でき、電流指令等を補正して被駆動体の振動を抑制できる。
【0008】
しかし、駆動軸が傾斜した傾斜軸を備えた機械の場合、被駆動体に加速度センサを取り付けても、駆動軸方向の加速度を検出できない場合がある。即ち、被駆動体を駆動する駆動軸が直交していない機械の場合、一方の駆動軸に沿った加速度を検出するように加速度センサを被駆動体に配置したとしても、該駆動軸と直交せず傾いた関係にある駆動軸方向の加速度は、加速度センサで検出することができない。検出するには、各駆動軸方向毎にそれぞれの加速度を検出できる加速度センサを配置しなければならず、加速度センサの数が増加するという問題がある。
【0009】
また、被駆動体を直線移動させる駆動軸と回転揺動させる駆動軸を備える場合、被駆動体に加速度センサを取り付けても、直線駆動軸方向の加速度を検出することはできず、加速度センサを用いた被駆動体の振動抑制方法を適用できないという問題がある。
さらに、傾斜軸等で重力の影響を受ける駆動軸の場合、加速度センサで検出される加速度はすでに重力の影響を受けているものであるから、被駆動体のこの駆動軸方向の加速度を加速度センサで検出したものをそのまま用いることはできないという問題がある。
本発明は、上述した問題を解決することを発明の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
方向の異なる複数の駆動軸方向に被駆動体をそれぞれ駆動するサーボモータを有し、該被駆動体の少なくとも速度を検出する検出手段を備えて被駆動体の速度を制御する制御装置において、請求項1に係る発明は、複数方向の加速度を検出する加速度検出手段を前記被駆動体に設け、前記加速度検出手段が検出する複数方向の加速度検出値に所定の演算を行うことにより、前記被駆動体を駆動する駆動軸方向の加速度を求め、該加速度演算値により対応する前記駆動軸を駆動するサーボモータの速度指令または/および電流指令を補正し被駆動体の振動を抑えるようにした。また、請求項2に係る発明は、直交2軸または直交3軸方向の加速度を検出する加速度検出手段を前記被駆動体に設け、該加速度検出手段で検出される加速度方向のいずれもが駆動軸方向と平行にならない場合、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値に所定の演算を行うことにより、駆動軸方向の加速度を求め、前記加速度演算値により対応する前記駆動軸を駆動するサーボモータの速度指令または/および電流指令を補正し被駆動体の振動を抑えるようにした。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、被駆動体に設けられ直交2軸または直交3軸方向の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の検出方向と前記被駆動体を駆動する駆動軸方向との変位量を検出する変位量検出手段とを設け、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記変位検出値とにより所定の演算を行うことにより、駆動軸方向の加速度を求め、求めた加速度演算値により当該駆動軸を駆動するサーボモータの速度指令または/および電流指令を補正し被駆動体の振動を抑えるようにした。さらに、請求項4に係る発明は、上述した請求項1乃至3に係る発明において、前記被駆動体は、該被駆動体を揺動させる回転駆動軸を備えたベースに取り付けられているものであって、該ベースを駆動する駆動軸の駆動方向の加速度を前記被駆動体に設けた加速度検出手段で検出した加速度検出値より求め、該ベースを駆動する駆動軸を駆動するサーボモータの前記速度指令または/および電流指令を補正する。さらに、請求項5に係る発明は、前記制御装置が、被駆動体の位置をも制御する制御装置とし、求めた加速度によって前記速度指令または電流指令の代わりに若しくは共に位置指令を補正するようにした。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、被駆動体を方向の異なる複数の駆動軸方向にそれぞれ駆動するサーボモータを有し、該被駆動体の位置および速度を検出する検出手段を備えて被駆動体の位置または、位置および速度を制御する制御装置において、前記被駆動体に設けられ直交2軸または直交3軸方向の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の検出方向と駆動軸方向との変位量を指令位置に基づいて推定する変位量推定手段とを備え、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記変位推定値とにより所定の演算を行うことにより、被駆動体の進行方向の加速度を求め、前記加速度演算値により当該駆動軸を駆動するサーボモータへの位置指令、速度指令、電流指令の1以上を補正し被駆動体の振動を抑えるようにした。また、請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明において、前記被駆動体は、該被駆動体を揺動させる回転駆動軸を備えたベースに取り付けられているものとし、該ベースを駆動する駆動軸の駆動方向の加速度を前記被駆動体に設けた加速度検出手段で検出した加速度検出値より求め、該ベースを駆動する駆動軸を駆動するサーボモータの前記速度指令または/および電流指令を補正するようにした。
また、請求項8に係る発明は、前記加速度検出手段で測定する加速度が重力の影響を受ける場合、駆動軸方向と重力軸方向との変位量から、駆動軸方向の重力成分を演算により求め、重力成分を除去する演算により駆動軸方向の加速度を求める前記補正を行うようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、複数方向の加速度を検出できる加速度検出手段で、被駆動体にかかる駆動軸方向の加速度を直接検出できない場合でも、加速度検出手段を増加することなく、必要とする駆動軸方向の加速度を演算処理によって求め、求められた加速度に基づいて、被駆動体の振動を抑制する制御ができる。駆動軸が直交しない場合にも、被駆動体を傾ける回転軸を有する場合にも、また、重力が影響する駆動軸を有する場合にも、1つの加速度検出器を被駆動体に取り付けることによって、各軸方向の加速度を求めて被駆動体の振動抑制制御ができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、傾斜軸を有する機械を制御する制御装置に本発明を適用した第1の実施形態の説明図である。
被駆動体3は、V軸とW軸の2つの駆動軸で駆動されるもので、V軸とW軸は直交せず傾いて配設されている。この実施形態では、V軸の送りねじ9vが被駆動体3のベース3aをV軸方向に駆動し、該ベース3a上を送りねじ9wがW軸方向に被駆動体3を駆動するものとしている。そして、被駆動体3には、加速度検出手段7が取り付けられており、該加速度検出手段7は、直交する2軸方向(便宜上、直交するX軸、Y軸方向とする)の加速度を検出できるものを用い、該加速度検出手段7が検出する加速度方向のY軸方向と駆動軸のW軸方向が一致するように該加速度検出手段7は取り付けられているものとしている。即ち、V軸、W軸は直交せず、被駆動体に取り付けられた加速度検出手段は直交する方向の加速度しか検出できないことから、駆動軸の一方の方向(図1ではW軸)と加速度検出手段7で検出する加速度方向の1つを一致させれば、他方の駆動軸方向と他方の検出加速度方向は異なるものとなる。
【0015】
そこで、本発明は、加速度検出手段で検出された直交するX,Y軸方向の加速度Ax,AyよりV軸方向の加速度を演算して求めるものとしている。なお、W軸方向とY軸方向は同一方向であるから、検出したY軸方向の加速度AyをW軸方向の加速度Awとする。
【0016】
V軸方向の加速度Avは、V軸とW軸の交差角度をθとすると、X,Y軸方向の検出加速度Ax,Ayより、次の(1)式の演算を行うことによって求められる。
Av=Ay・cosθ−Ax・sinθ …(1)
このようにして、駆動軸毎に加速度検出手段を配置することなく、各駆動軸方向の加速度を1つの加速度検出手段で検出できるものである。
【0017】
図2は、この第1の実施形態における、V軸、W軸を駆動するサーボモータを制御するモータ制御部のブロック図である。
V軸、W軸を駆動するサーボモータのモータ制御部1v,1wは図7に示した従来のモータ制御部1と略同一構成であり、相違する点は、検出または演算して求められた駆動方向の加速度に基づいて位置指令、速度指令、電流指令の1つ以上を補正することによって被駆動体の振動を抑制するようにしたものである。
各モータ制御部1v,1wは、上位制御装置からの位置指令と被駆動体の駆動方向の位置(またはサーボモータ2v,2wの回転位置)を検出する位置検出手段6v,6wからの位置フィードバックにより位置偏差を求め速度指令を求める位置制御処理部11v,11wと、求められた速度指令と被駆動体の駆動方向の速度(またはサーボモータ2v,2wの速度)を検出する速度検出手段5v,5wからの速度フィードバックにより電流指令を求める速度制御処理部12v,12wと、該電流指令と、各サーボモータに流れる駆動電流を検出する電流検出手段4v,4wからの電流フィードバックにより電流ループ制御処理を行いモータへの駆動電圧指令を出力する電流制御処理部13v,13wをそれぞれ備え、電流制御処理部13v,13wから出力される駆動電圧指令に基づいてサーボアンプを介して各サーボモータ2v,2wを駆動し、被駆動体3を駆動する。
【0018】
そして、本実施形態は、さらに、被駆動体3に取り付けられた加速度検出手段7によって検出した直交するX軸,Y軸方向の加速度より演算処理部8で、上述した(1)式の演算を行い、V軸方向の加速度Avを求め、該加速度Avに基づいて、V軸を駆動するサーボモータ2vの位置指令、速度指令、電流指令を補正する。また、W軸を駆動するサーボモータ2wに対しては、加速度検出手段7で検出したY軸方向の加速度AyをW軸方向の加速度Awとし、該加速度Awに基づいて位置指令、速度指令、電流指令を補正する。
【0019】
演算して求められたV軸方向の加速度Avに係数a1を乗じた値を位置指令から減じて補正された位置指令とするか、または、加速度Avに係数a2を乗じた値を速度指令から減じて補正された速度指令とするか、加速度Avに係数a3を乗じた値を電流指令から減じて補正された電流指令とするか、いずれかの補正を行う。
W軸に対しても同様にW軸方向の検出加速度Awに係数b1を乗じた値を位置指令から減じて補正された位置指令とするか、または、加速度Awに係数b2を乗じた値を速度指令から減じて補正された速度指令とするか、加速度Awに係数b3を乗じた値を電流指令から減じて補正された電流指令とするか、いずれかの補正を行う。
【0020】
図2では、位置指令、速度指令、電流指令を共に加速度Avに基づいて補正する図を記載しているが、補正するものは、位置指令、速度指令、電流指令のいずれか1つでよい。また、2つ以上補正してもよい。
【0021】
以上のように、被駆動体3を駆動するV軸,W軸の各駆動軸方向の加速度Av,Awを求め、該加速度Av,Awによりそれぞれの駆動軸を駆動するサーボモータ2v,2wの位置指令、速度指令、電流指令のいずれか1つ以上を補正するようにしたから、被駆動体の振動を抑制できるものである。加速度が大きいときには、位置指令、速度指令、電流指令は、求められた加速度が大きいときには、大きく減じられ、小さいときは僅かしか減じられないことにより、被駆動体の振動は効率よく抑制される。なお、加速度に基づいて電流指令を補正して被駆動体の振動を抑制する点は、前述した特許文献1に詳細に記載され、加速度に基づいて位置指令、または速度指令を補正して被駆動体の振動を抑制する点は、本願出願人がすでに出願した特願2004−341770に詳述しているので、説明を省略する。
【0022】
上述した第1の実施形態では、被駆動体3を駆動する駆動軸がV軸、W軸の2軸である場合を説明した。被駆動体3を互いに駆動方向が異なる3軸で駆動する場合においては、直交する3軸方向の加速度を検出できる加速度検出手段を用い、直交する2軸の駆動軸があれば、この直交する2軸の駆動軸の方向と加速度検出手段の2つの直交する加速度検出方向を合わせて加速度検出手段を被駆動体に取り付けて残りの駆動軸方向の加速度は、直交する3軸方向の加速度と傾き角度より演算によって求めるようにすればよい。また、3つの駆動軸がいずれも直交しない場合は、1つの駆動軸方向と直交する3軸方向の加速度を検出できる加速度検出手段の加速度検出方向と1つの駆動軸方向を合わせて被駆動体に加速度検出手段を配置し、残りの駆動軸方向の加速度は、その傾き角度と加速度検出手段で検出した3軸方向の加速度に基づいて演算して求めるようにする。
【0023】
図3は、本発明の第2の実施形態の制御装置が適用される回転軸を有する機械の説明図である。この第2の実施形態は、被駆動体を傾ける回転駆動軸を有する機械の制御装置に本発明を適用した例である。
この第2の実施形態では、被駆動体を工具Tが取り付けられる主軸ヘッド3とし該ヘッド3が取り付けられているヘッド3のベース3aを移動させる駆動軸と、ヘッド3を傾斜させる回転駆動軸を有する例である。図3に示す例では、ヘッド3のベース3aは直線移動させるX軸の駆動軸によりX軸方向に駆動され、ヘッド3および該ヘッド3に取り付けられた工具TはX軸と垂直な軸回りに回転駆動するC軸によって、揺動し傾けられるように構成されている。
【0024】
このような被駆動体を傾ける回転駆動軸を有する場合、被駆動体であるヘッド3に加速度検出手段7を取り付けた場合、該加速度検出手段7で検出される加速度方向は、回転駆動軸のC軸の回転量、即ち、ヘッド3の傾き位置によって異なる。また、ヘッド3および工具Tを傾かせる回転駆動軸のC軸の動作は遅く、該C軸の駆動によりヘッド3および工具Tには振動はほとんど発生せず、無視できる。しかし、ヘッド3のベース3aを駆動するX軸はC軸の駆動速度と比較して格段に速く、このX軸の駆動がヘッド3および工具Tに振動を発生させる要因となる。そのため、X軸方向の被駆動体(ヘッド3および工具T)の加速度を求めて、振動が発生しないように、第1の実施形態のように位置指令、速度指令、電流指令を補正するようにする。
【0025】
図4は、被駆動体のヘッド3および工具TがC軸の回転により、X軸方向から回転角θだけ変位した状態におけるX軸方向の加速度を求める説明図である。
加速度検出手段7は、ヘッド3に工具軸方向bと工具軸方向に対して直交する方向aの加速度を検出できるように取り付けられている。このとき加速度検出手段7で検出される工具軸方向の加速度をb’、工具軸方向に対して直交する方向aの加速度をa’とすると、X軸方向の加速度Axは次の(2)式の演算を行って求めることができる。
【0026】
Ax=a'sinθ+b'cosθ …(2)
回転角θは加速度検出手段7で検出する加速度方向と、駆動軸のX軸方向との変位量を示すもので、この回転角θはC軸の回転位置、速度を検出する検出器により検出できる。また、C軸への回転位置指令に基づいて推定する手段を設けることによって求める。
【0027】
こうして求められた加速度Axに基づいて、X軸を駆動するサーボモータを駆動制御するモータ制御部での位置指令、速度指令、電流指令を第1の実施形態と同様に補正することによって被駆動体(ヘッド3および工具T)の振動を抑制することができる。
【0028】
即ち、この第2の実施形態の場合、図2において、サーボモータ2vを、X軸を駆動するサーボモータとし、演算処理部8での演算を上記(2)式の演算を行うことによってX軸方向の加速度Axを求めて、該加速度Axに係数a1または係数a2または係数a3を乗じて、位置指令、速度指令または電流指令の1以上を補正するようにすればよい。また、C軸に対しては補正を行わないものであるから、C軸のサーボモータのモータ制御部は、図7に示すような従来のモータ制御部と同じである。
【0029】
また、ヘッド3のベース3aを駆動する軸がX軸以外にもあるような場合には、その軸方向の加速度をも求めてその軸を駆動するサーボモータへの位置指令、速度指令、電流指令を補正するようにすればよい。例えば、図3,図4に示す例で、X軸に直交する紙面を貫通する方向(C軸の軸線方向)にヘッドベース3aを駆動する軸(例えばY軸とする)がある場合には、直交3軸の加速度を検出できる加速度検出器を用い、このY軸方向と加速度検出手段で検出する1つの加速度方向が一致するようにすればよい。また、紙面上下方向にヘッドベース3aを駆動する軸(例えばZ軸)に有する場合には、C軸の回転量θによって、該Z軸方向の加速度が変化するから、この場合は、C軸回転量と各検出加速度に基づいてZ軸方向の加速度を求めるようにすればよい。
【0030】
なお、上述した第2の実施形態では、ヘッド3のベース3aを駆動する駆動軸を直線移動軸の例で示したが、この軸はヘッド3のベース3aを旋回させる回転駆動軸であっても構わないものである。
【0031】
以上のように、被駆動体を傾け回転させる駆動軸を備える機械の場合でも、必要とする駆動軸の加速度を複数の方向の加速度を検出できる加速度検出手段を用いて検出でき、この検出した加速度に基づいて、被駆動体の振動を抑制するように補正できるものである。
【0032】
図5は、本発明の第3の実施形態の制御装置が適用される2つの回転軸を有する機械の説明図である。この第3の実施形態は、工具Tが取り付けられるヘッド3に加速度検出手段7が取り付けられ、ヘッド3は、ベース3aと3bによって、回転駆動軸のC軸、D軸によって回転させられる例である。この場合、C軸とD軸の中心を結ぶ線とX軸と平行な線との角度をθ、D軸の中心と工具Tの先端とを結ぶ線とX軸と平行な線との角度をφとすると、この角度θ、φは、C軸、D軸の回転位置を検出する検出器によって検出することができる。また、C軸、D軸への位置指令から推定する手段を設けることによって求めることができる。
【0033】
そして、この角度θ、φと加速度検出手段7で検出される加速度からX軸方向の加速度Axを求めることができる。加速度検出手段7で求められる加速度が工具Tの軸線方向bと該方向と直交する方向aであり、工具Tの軸線方向の加速度がb’、該方向と直交する方向aの加速度がa’とすると、次の(3)式を演算することによってX軸方向の加速度Axを求めることができる。
【0034】
Ax=a'cos(π−(φ+θ))+b'cos((φ+θ)−π/2)
=−a'cos(φ+θ)+b'sin(φ+θ) …(3)
この第3の実施形態における制御装置は、図2において、サーボモータ2vを、X軸を駆動するサーボモータとし、演算処理部8での演算を上記(3)式の演算を行うことによってX軸方向の加速度Axを求めて、該加速度Axに係数a1または係数a2または係数a3を乗じて、位置指令、速度指令または電流指令の1以上を補正するようにすればよい。また、C軸、D軸に対しては補正を行わないものであるから、C軸、D軸のサーボモータのモータ制御部は、図7に示すような従来のモータ制御部と同じである。
【0035】
図6は、本発明の第4の実施形態の制御装置が適用される重力の影響を受ける駆動軸と回転軸を有する機械の説明図である。この第4の実施形態は、ヘッド3のベース3aを駆動する駆動軸のX軸が傾斜し、水平ではないことから、該X軸方向の加速度を加速度検出手段で検出される加速度によって求めるとき、重力の影響を受けることから、重力の影響を排除してX軸方向の加速度を求めるようにしたものである。
【0036】
回転軸C軸の中心と工具Tの先端を結ぶ線と水平軸との角度をθとし、この角度θは、C軸の回転位置を検出する位置検出手段によって検出するか、またはC軸への位置指令に基づいてこの回転角θを推定する手段を設けて求める。また、X軸の水平面からの傾斜角φは、機械のハードウエア構成が決まると固まる固有の変化のない値であるから、予め制御装置に設定しておけばよい。また、加速度検出手段7をヘッド3に取り付け、該加速度検出手段7で検出する工具Tの軸線方向bの加速度をb’、工具Tの軸線方向と直交する方向aの加速度がa’、重力をgとすると、X軸方向の加速度Axは次の(4)式を演算することによって、重力の影響を排除したx軸方向の加速度を求めることができる。
【0037】
Ax=−a'sin(θ−φ)+b'cos(θ−φ)-gsinφ …(4)
この第4の実施形態における制御装置は、図2において、サーボモータ2vを、X軸を駆動するサーボモータとし、演算処理部8での演算を上記(4)式の演算を行うことによってX軸方向の加速度Axを求めて、該加速度Axに係数a1または係数a2または係数a3を乗じて、位置指令、速度指令または電流指令の1以上を補正することによって、被駆動体のヘッド3,工具Tの振動を抑制することができる。また、C軸に対しては補正を行わないものであるから、C軸のサーボモータのモータ制御部は、図7に示すような従来のモータ制御部と同じである。以上のように、この第4の実施形態では、複数方向の加速度を検出できる加速度検出手段を用いて、重力の影響を受ける駆動軸の加速度をも重力の影響を排除して検出し、被駆動体に発生する振動を抑制する制御を行うものである。なお、図6に示すように回転軸のC軸を有さない機械において、駆動軸が傾き重力の影響を受けるような場合、この第4の実施形態と同様にして、加速度検出器で求めた加速度値より重力の影響を排除した各駆動軸方向の加速度を求めることができるものである。
【0038】
上述した実施形態では、被駆動体を駆動するサーボモータの制御を位置制御処理部、速度制御処理部、電流制御処理部を有するモータ制御部としたが、位置制御処理部を備えない制御装置にも本発明は適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態の制御装置が適用される傾斜軸の説明図である。
【図2】同実施形態における制御装置の要部ブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の制御装置が適用される回転軸を有する機械の説明図である。
【図4】同第2の実施形態における回転軸が回転した状態での加速度の説明図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の制御装置が適用される2つの回転軸を有する機械の説明図である。
【図6】本発明の第4の実施形態の制御装置が適用される重力の影響を受ける駆動軸と回転軸を有する機械の説明図である。
【図7】従来の制御装置の要部ブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
1、1v、1w モータ制御部
3 被駆動体
3a 被駆動体のベース
7 加速度検出手段
9v、9w 送りねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向の異なる複数の駆動軸方向に被駆動体をそれぞれ駆動するサーボモータを有し、該被駆動体の少なくとも速度を検出する検出手段を備えて被駆動体の速度を制御する制御装置において、複数方向の加速度を検出する加速度検出手段を前記被駆動体に設け、前記加速度検出手段が検出する複数方向の加速度検出値に所定の演算を行うことにより、前記被駆動体を駆動する駆動軸方向の加速度を求め、該加速度演算値により対応する前記駆動軸を駆動するサーボモータの速度指令または/および電流指令を補正し被駆動体の振動を抑えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
方向の異なる複数の駆動軸方向に被駆動体をそれぞれ駆動するサーボモータを有し、該被駆動体の少なくとも速度を検出する検出手段を備えて被駆動体の速度を制御する制御装置において、直交2軸または直交3軸方向の加速度を検出する加速度検出手段を前記被駆動体に設け、該加速度検出手段で検出される加速度方向のいずれもが駆動軸方向と平行にならない場合、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値に所定の演算を行うことにより、駆動軸方向の加速度を求め、前記加速度演算値により対応する前記駆動軸を駆動するサーボモータの速度指令または/および電流指令を補正し被駆動体の振動を抑えることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
方向の異なる複数の駆動軸方向に被駆動体をそれぞれ駆動するサーボモータを有し、該被駆動体の少なくとも速度を検出する検出手段を備えて被駆動体の速度を制御する制御装置において、前記被駆動体に設けられ直交2軸または直交3軸方向の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の検出方向と前記被駆動体を駆動する駆動軸方向との変位量を検出する変位量検出手段とを設け、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記変位検出値とにより所定の演算を行うことにより、駆動軸方向の加速度を求め、求めた加速度演算値により当該駆動軸を駆動するサーボモータの速度指令または/および電流指令を補正し被駆動体の振動を抑えることを特徴とした制御装置。
【請求項4】
前記被駆動体は、該被駆動体を揺動させる回転駆動軸を備えたベースに取り付けられ、該ベースを駆動する駆動軸の駆動方向の加速度を前記被駆動体に設けた加速度検出手段で検出した加速度検出値より求め、該ベースを駆動する駆動軸を駆動するサーボモータの前記速度指令または/および電流指令を補正する請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、被駆動体の位置をも制御する制御装置であって、求めた加速度によって前記速度指令または電流指令の代わりに若しくは共に位置指令を補正する請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
被駆動体を方向の異なる複数の駆動軸方向にそれぞれ駆動するサーボモータを有し、該被駆動体の位置および速度を検出する検出手段を備えて被駆動体の位置または、位置および速度を制御する制御装置において、前記被駆動体に設けられ直交2軸または直交3軸方向の加速度を検出する加速度検出手段と、該加速度検出手段の検出方向と駆動軸方向との変位量を指令位置に基づいて推定する変位量推定手段とを備え、前記加速度検出手段が検出する加速度検出値と前記変位推定値とにより所定の演算を行うことにより、被駆動体の進行方向の加速度を求め、前記加速度演算値により当該駆動軸を駆動するサーボモータの位置指令、速度指令、電流指令の1以上を補正し被駆動体の振動を抑えることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
前記被駆動体は、該被駆動体を揺動させる回転駆動軸を備えたベースに取り付けられ、該ベースを駆動する駆動軸の駆動方向の加速度を前記被駆動体に設けた加速度検出手段で検出した加速度検出値より求め、該ベースを駆動する駆動軸を駆動するサーボモータの位置指令、速度指令、電流指令の1以上を補正する請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記加速度検出手段で測定する加速度が重力の影響を受ける場合、駆動軸方向と重力軸方向との変位量から、駆動軸方向の重力成分を演算により求め、重力成分を除去する演算により駆動軸方向の加速度を求め、前記加速度演算値により前記補正を行う請求項1乃至7の内いずれか1項に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−159345(P2006−159345A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354389(P2004−354389)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】