説明

制振サポート

【課題】機器、配管などの構造物の制振サポート構造に係わり、温度変化による構造物の熱膨張を許し、流動や機械等の振動源や地震などに対しては、構造物を剛に支持する制振サポートを提供する。
【解決手段】内円筒10と外円筒12からなる二重円筒と、前記内円筒の内部に配置された構造物8を内円筒に支持する支持部材9,11と、前記外円筒を支持構造物17に連結固定する連結部材7と、前記二重円筒の間の環状の間隙部に封入される非圧縮性の連成流体14と、前記二重円筒の両端部を封止するとともに該二重円筒の相対変位を許容する封止部材13と、を備えることを特徴とする制振サポート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電用プラントなどの大型プラントの配管、タンクなどの構造物に適用される制振サポートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に発電用プラントなどに使用されている配管などの構造物は、温度変化による構造物の熱膨張を緩和するように柔に支持されている。一方、地震時にはこれらの構造物を剛に支持することで構造物に発生する応力を抑制する制振装置が提案されている。
【0003】
例えば、配管などの支持に用いられているメカニカルスナバ(機械式防振器)は機械要素により支持方向の変位を回転運動に変換するなど複雑な機構となっている。このため、機械要素が固着して伸縮しなくなることが懸念されており、このメカニカルスナバをインターナルポンプの耐震支持装置に適用する際、固着による過大な荷重がメカニカルスナバに加わった場合の対応策として連結を開放する安全装置を設けたものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、温度変化による構造物の熱膨張を緩和するように柔に支持する大型の構造物では、例えば、高速増殖炉のタンク型FBRの炉心を支持するものがある。これは、原子炉容器内に配置された炉心を取囲んで前記炉心との間に冷却材である液体金属が存在する環状間隙を形成する筒状体を前記炉心と機械的に分離して設け、前記筒状体を前記原子炉容器に剛な支持部材で取付けている。この支持構造は、炉心のロツキング振動が生じようとしても、環状間隙内の液体金属の慣性抵抗に基づく制振効果により、炉心のロツキング振動が抑制され、且つ環状間隙があることから熱伸縮を許容することができるものとなっている(特許文献2)。
【0005】
さらに、このような液体の慣性抵抗を利用したものとして、図4に示すように、原子力発電所や火力発電所などの高温・高圧熱流体を流す高温配管と低温の流体を流す低温配管とを一体化した二重配管の振動を抑制する配管制振装置がある。これは、大口径の外側配管1の内部に小口径の内側配管2を設置した二重配管内に、流体による制振作用を生じさせるための円筒3を設け、その円筒3を複数個の固定部材4で外側配管1または内側配管2に固定したものである。地震の振動や内側配管2内外を流れる流体により、内側配管2が大きく振動する場合、内側配管2と円筒3との間の隙間流体5の圧力が大きくなり、内側配管2全体には振動の方向(加速度方向)と逆方向の大きな力として作用するような流体制振力(前記慣性抵抗)が得られる。このため、内側配管2は振動方向に対して動きが抑制され、配管自体の振動振幅を小さくすることができる(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−12981号公報
【特許文献2】特公平4−26078号公報
【特許文献3】特開2004−251350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来、機器、配管などの構造物に対して、温度変化による構造物の熱膨張を許し、流体や機械等の振動源や地震などに対しては剛に支持する制振手段が提案されている。
【0008】
しかしながら、原子力プラントの配管などに適用されるメカニカルスナバにおいて、高い信頼性を求める場合には万一の固着に対する安全対策を必要とし、かつ十分なメンテナンスも必要となる。さらに、流体中の構造物に対しては、構造物と支持部材の間に狭い流体ギャップを設けて、これによって発生する流体制振力(前記慣性抵抗)によって支持反力を得て振動を抑える提案がなされているが、気中の構造物には適応できないなど特定の構造にしか適用できない問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、特別な安全対策又はメンテナンスを必要とせず、温度変化による構造物の熱膨張を許し、流動や機械等の振動や地震などに対しては構造物を剛に支持する、汎用性が高く高信頼性の制振サポートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、本発明に係る制振サポートは、内円筒と外円筒からなる二重円筒と、前記内円筒の内部に配置された構造物を内円筒に支持する支持部材と、前記外円筒を支持構造物に連結固定する連結部材と、前記二重円筒の間の環状の間隙部に封入される非圧縮性の連成流体と、前記二重円筒の両端部を封止するとともに該二重円筒の相対変位を許容する封止部材と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特別な安全対策又はメンテナンスを必要とせず、流体中だけでなく気体中の構造物にも汎用的に適用できる高信頼性の制振サポートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る制振サポートの全体構成図。
【図2】図1のA−A線での断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る制振サポートの全体構成図。
【図4】従来の制振サポートの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
本第1の実施形態に係る制振サポートを図1、図2を用いて説明する。
【0014】
本実施形態の制振サポートは、図1に示すように、配管8に制振サポートを取付けるための配管固定具9、内円筒10を配管固定具9に連結固定する支持梁11、内円筒10と対向する外円筒12、これら内円筒10および外円筒12の両端部に取付けられる封止部材13、内円筒10と外円筒12の間の環状の間隙部に封入される非圧縮性の連成流体14、外円筒12をピンジョイント15に連結する連結部材16、一端をピンジョイント15を介して連結部材16に連結固定され、他端をピンジョイント18を介して支持構造物17に連結固定される支持アーム7とからなっている。ここで、支持構造物17としては、構造物の壁、タンク、配管の内壁、あるいは外壁などが適用できる。また、配管固定具9と支持梁11で支持部材を構成し、支持アーム7が連結部材を構成している。
【0015】
配管固定具9は、円筒状の固定具であって、配管と一体となって変位を吸収する必要があるため、その内面は摩擦抵抗が大きくなるように高硬度のゴム等による表面処理がなされていることが望ましい。
【0016】
内円筒10と外円筒12の両円筒間の環状の間隙部に封入される連成流体14としては水等の非圧縮性流体が用いられる。封止部材13にはゴムなどの柔軟な弾性材料を用いて、内円筒10と外円筒12の相対変位に追従するように内円筒10と外円筒12とを接続する。具体的な接続方法としては、高周波誘導加熱による接着方法、接着剤を用いた架橋ゴムと金属との接着方法、ゴム成形と同時に金属と接着する直接加硫接着方法など公知の方法が用いられる。なお、封止部材13は、両円筒10,12間の連成流体14が振動時の圧力で過大な変形とならないように材質、寸法を設定する。
【0017】
このように構成された本第1の実施形態において、たとえば配管8に熱膨張による変形が発生しサポート方向(図1における上下方向)に変形した場合には、配管8は内円筒10と一体に動くことになる。封止部材13にはゴムなどの柔軟な弾性材料を用いているため、内円筒10と外円筒12の距離が自由に変化し、両円筒10,12間の間隙部に封入された連成流体14も環状に移動できる。これにより、制振サポートは熱膨張による変形に伴う相対変位を吸収し柔構造のサポートとして作用することができる。
【0018】
また、地震が発生した場合には、両円筒10,12間の間隙部に封入された連成流体14によって、内円筒10と外円筒12において発生する相対加速度に対し、流体−構造連成力が発生するため、内円筒10と外円筒12の相対運動を抑制し剛構造のサポートとして作用する。
【0019】
なお、連成流体14として、水の代わりに、たとえば重液SPT(ポリタングステン酸ナトリウム)を使用した場合には、比重が水の3倍となるため、より大きな支持反力を得ることができるため、装置をさらに小型化することができる。
【0020】
さらに、連成流体14として、液体金属を採用した場合には、封止部材13として金属ばねからなる弾性部材で構成することにより、高温環境での使用も可能となる。なお、連成流体14として、重液SPT(ポリタングステン酸ナトリウム)、液体金属の使用は後述する第2の実施形態においても採用可能である。
【0021】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、特別な安全対策又はメンテナンスを必要とせず、流体中だけでなく気体中の構造物にも汎用的に適用できる小型で高信頼性の制振サポートを提供することができる。
【0022】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る制振サポートを図3を用いて説明する。
なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は最小限とする。
【0023】
本第2の実施形態の制振サポートは、図3に示すように、内円筒と外円筒を共に多重円筒構造とし、各円筒間の連成流体14が封入される環状の間隙部を1層から3層に多層化したものである。第1の実施形態では配管8に制振サポートを取付けるための配管固定具9を使用していたが、本第2の実施形態においては、配管固定具に代えて配管8の軸方向に摺動可能なリニアガイド(すべり支承)19が設置されている。なお、実施形態1,2のいずれにおいても、制振サポートの設置形態等に応じて配管固定具またはリニアガイドが適用可能である。
【0024】
内円筒10はリニアガイド19と支持梁11により連結固定される。内円筒10と外円筒12はそれぞれを例えば金属製の2重の円筒構造により構成され、追設外円筒20と、内円筒10に設けられた追設内円筒21とは連成流体14が連通できるように、各円筒に設けられた連通口23を介して互い違いに配置されている。連成流体14は内円筒10と外円筒12と、外円筒12の側面に取付けられる外円筒側板22と、外円筒側板22と内円筒10との相対変位を吸収するシール部材として機能する封止部材13によって密封されている。外円筒12はピンジョイント15に連結する連結部材16と、支持構造17に固定されるピンジョイント18とを支持アーム7で連結されている。なお、内円筒10と外円筒12はいずれか一方を2重の円筒構造、他方を1重の円筒構造により構成することで、連成流体14が封入される環状の間隙部を2層構造とすることができる。また、内円筒10と外円筒12を3重以上の構造とすることも当然可能である。
【0025】
連成流体14として、第1の実施形態と同様に、水等の非圧縮性流体が用いられる。また、封止部材13には積層ゴムなどを用いて配管の径方向のみに柔な構造とし、内円筒10と外円筒12の相対変位に追従するようにする。但し、封止部材13は、内円筒10と外円筒12の連成流体14の振動時の圧力で過大な変形とならないように材質、寸法を設定する。
【0026】
このように構成された本第2の実施形態において、たとえば配管8に熱膨張らよる変形が発生しサポート方向(図3における上下方向)に変形した場合には、配管8は内円管と一体に動くことになる。封止部材13には積層ゴムなど柔軟な材料を用いているため、内円筒10と外円筒12の距離が自由に変化し、内円筒10と外円筒12の3層の間隙部に封入された連成流体14も環状に移動できることから、このような熱変形による相対変位を吸収することができる。
【0027】
また、地震が発生した場合には、内円筒10と外円筒12の間隙部に封入された連成流体14によって、内円筒10と外円筒12において発生する相対加速度に対し、流体−構造連成力が発生するため、内円筒10と外円筒12の相対運動を抑制し剛構造のサポートとして作用する。
【0028】
したがって、本第2の実施形態に係る制振サポートは、第1の実施形態と同様に、配管の熱変形など長周期の変位による変動に対しては柔にサポートして変位を吸収するとともに、流動や機械等の振動源や地震などに対しては、流体−構造連成力によって、構造物を剛に支持することができるほか、連成流体14が封入される環状の間隙部を多層としていることでより強力な支持力を得ることができる。また、配管8の軸方向に滑るリニアガイド19が設置されているため、制振サポートのサポート方向と直交する変形には反力を与えず変形を許すことができ、配管自身あるいは、制振サポート自身に過大な力が掛かることを防止できる。
【0029】
以上説明したように、本第2の実施形態によれば、特別な安全対策又はメンテナンスを必要とせず、流体中だけでなく気体中の構造物にも汎用的に適用できる小型でさらに信頼性の高い制振サポートを提供することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…外側配管、2…内側配管、3…円筒、4…固定部材、5…隙間流体、6…固定基礎、7…支持アーム(連結部材)、8…配管(構造物)、9…配管固定具(支持部材)、10…内円筒、11…支持梁(支持部材)、12…外円筒、13…封止部材、14…連成流体、15,18…ピンジョイント、16…連結部材、17…支持構造物、19…リニアガイド(すべり支承)(支持部材)、20…追設外円筒、21…追設内円筒、22…外円筒側板、23…連通口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内円筒と外円筒からなる二重円筒と、前記内円筒の内部に配置された構造物を内円筒に支持する支持部材と、前記外円筒を支持構造物に連結固定する連結部材と、前記二重円筒の間の環状の間隙部に封入される非圧縮性の連成流体と、前記二重円筒の両端部を封止するとともに該二重円筒の相対変位を許容する封止部材と、を備えたことを特徴とする制振サポート。
【請求項2】
前記内円筒と外円筒の少なくとも一方を多重円筒構造とし、各円筒間を環状の間隙部としたことを特徴とする請求項1記載の制振サポート。
【請求項3】
前記各円筒は内円筒と外円筒とが互い違いに配置され、かつ前記間隙部は各円筒に設けられた連通口により連通していることを特徴とする請求項2に記載の制振サポート。
【請求項4】
前記連成流体は水、またはポリタングステン酸ナトリウム、または液体金属であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の制振サポート。
【請求項5】
前記封止部材は積層ゴム、または金属ばねからなる弾性部材であることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の制振サポート。
【請求項6】
前記支持部材はリニアガイドであることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の制振サポ−ト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−43201(P2011−43201A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191112(P2009−191112)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】