説明

刷版間のカラー位置ずれ自動検出装置、方法およびプログラム

【課題】カラー素材の刷版間の位置ずれを自動的に検出する。
【解決手段】刷版上のカラー素材の刷版間の位置ずれを自動検出するカラー位置ずれ自動検出装置は、カラー印刷用版を出力する際に使用する紙面ベクトルデータとして、カラー版の出力を先行して行う際に編集されたカラー版毎の第1紙面ベクトルデータとB版の出力を行う際に編集された最新のカラー版毎の第2紙面ベクトルデータとを保存するデータ記憶部11と、第1および第2紙面ベクトルデータをラスタライズした第1および第2ラスター画像データを作成する画像データ作成部12と、第1ラスター画像データと第2ラスター画像データとを同一カラー版同士で比較し、互いの画像データに不一致が有るか判定しカラー位置ずれを検出する位置ずれ検出部13と、上記各部11、12および13を動作させるよう制御するコントロール部10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機に用いられる刷版上のカラー素材の刷版間のカラー位置ずれを自動検出するカラー位置ずれ自動検出装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にカラー印刷物の編集制作業務では、編集作業完了後に印刷用シアン版(C版)、マゼンタ版(M版)、イエロー版(Y版)、ブラック版(K版)の4版のラスター画像データを出力することが必要となる。
【0003】
新聞社におけるカラー新聞紙面編集制作業務では、最新のニュースを紙面に掲載することを目的として、出力に時間のかかるカラー版(C版、M版、Y版)のラスター画像データを先に出力し、主に記事が掲載されるブラック版(K版)に対する編集を締め切り時間間際に行って、後からブラック版(K版)のラスター画像データを出力することが行われる。
【0004】
また、刷版やフィルムなど消耗品類のコスト削減を目的として、紙面の改版を行う場合に、前版の印刷用カラー版をそのまま流用し、ブラック版に出力される紙面上の部分のみ修正してそのラスター画像データを再出力する方法が取られることもある。
【0005】
このように業務運用を行う場合には、先行出力したカラー版と、後から出力したブラック版との間では、カラー写真などのカラー素材の紙面上の位置にずれが生じていないことが前提条件となる。カラー位置ずれが生じた状態で、事前出力したカラー版と最新状態のブラック版とを印刷機に取付け印刷を開始してしまうと、色のずれた欠陥印刷物が出来、印刷を停止し、再度ブラック版を緊急に作り直し、印刷を再開することが必要となり、時間と労力を要し、場合によっては時間内の印刷が困難になる。
【0006】
このためカラー印刷物を印刷する前に、先行出力したカラー版(シアン版(C版)、マゼンタ版(M版)、イエロー版(Y版))のラスター画像データと後から出力したブラック版(K版)のラスター画像データとの間にずれが生じていないか自動で検出することが求められている。しかし、現在、紙面上のカラー位置ずれを検出する方法としては、印刷機で紙面を刷り、刷った紙面を人間により確認する方法、もしくは印刷する直前に製版工程で版作製用のフィルムから確認する方法が行われているに過ぎない。つまり、現在存在する技術では、紙面上のカラー位置ずれの検出は、単純に編集の制作者による注意や目視確認と言った不確実な方法に頼ったものとなっている。
【0007】
特許文献1に記載の紙面レイアウト方法およびその装置は、カラー分色版(シアン版(C版)、マゼンタ版(M版)、イエロー版(Y版)、ブラック版(K版)の総称)とモノクロ版(ブラック版(K版))との不整合を防止しつつ可能な限り紙面上のレイアウト変更を認めるようにした紙面レイアウト方法およびその装置の提供を目的とする。特許文献1に記載の紙面レイアウト装置は、組版端末内に設けられ、カラー分色版が記事を含むモノクロ版よりも先に出力された場合に、カラー画像やカラー画像を含む小組内のレイアウト変更を禁止するものである。
【0008】
上記特許文献1に記載のカラー位置ずれ自動検出装置によれば、記事や写真と言ったカラー素材の紙面上の位置にずれが生じないように編集中のカラー素材の位置をロックして編集操作を禁止する仕組みによりカラー位置ずれが防止される。
【0009】
【特許文献1】特開2001−103273号公報(特許請求の範囲の[請求項1]〜[請求項7]、明細書の段落番号[0001]〜[0008]、[0016]、〜[0023]、[0030]〜[0040]、[0041]〜[0048]、[0089]〜[0091]、図面の[図1]、[図2]、[図9]〜[図11]および要約書参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明のように、編集中のカラー素材の位置をロックする仕組みがあっても、ロックの仕組みの不完全さや編集操作の不自由さから、編集の制作者が強制的にロック状態を解除してしまうことも多く、その結果、意図しないカラー素材の位置変更が起こり、欠陥印刷を大量に行ってしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、カラー新聞紙面などを制作する際、印刷用のカラー版(色版とも称する)を先行出力してブラック版(墨版とも称する)を後から出力する運用において、色版と墨版との間で、カラー写真などのカラー素材の刷版間の位置ずれが発生していないかどうかを自動的に検出するカラー位置ずれ自動検出装置、方法およびそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明によるカラー位置ずれ自動検出装置は、印刷機に用いられる刷版上のカラー素材の刷版間の位置ずれを自動検出するカラー位置ずれ自動検出装置であって、カラー印刷用のブラック版を含む少なくとも2色のカラー版を出力する際に使用する紙面ベクトルデータとして、カラー版の出力をブラック版の出力に先行して行う際に予め編集された前記カラー版毎の第1紙面ベクトルデータとブラック版の出力を行う際に編集された最新の前記カラー版毎の第2紙面ベクトルデータとを保存するデータ記憶部と、前記第1紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第1ラスター画像データと、前記第2紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第2ラスター画像データとを作成する画像データ作成部と、前記第1ラスター画像データと前記第2ラスター画像データとを、それぞれの同一カラー版同士で比較し、互いの画像データに不一致が有るか否かを判定することにより刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有るか否かを検出する位置ずれ検出部と、前記データ記憶部と前記画像データ作成部と前記位置ずれ検出部とを動作させるよう制御するコントロール部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
上記カラー位置ずれ自動検出装置において、前記検出結果通知部は、刷版上の何れの箇所にカラー素材の刷版間の位置ずれが生じているかを前記カラー版毎に表示する。
【0014】
上記目的を達成する本発明によるカラー位置ずれ自動検出方法は、印刷機に用いられる刷版上のカラー素材の刷版間の位置ずれを自動検出するカラー位置ずれ自動検出方法であって、カラー印刷用のブラック版を含む少なくとも2色のカラー版を出力する際に使用する紙面ベクトルデータとして、カラー版の出力をブラック版の出力に先行して行う際に予め編集された前記カラー版毎の第1紙面ベクトルデータとブラック版の出力を行う際に編集された最新の前記カラー版毎の第2紙面ベクトルデータとをデータ記憶部に保存し、位置ずれを自動検出する際に、前記第1紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第1ラスター画像データと、前記第2紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第2ラスター画像データとを作成し、前記第1ラスター画像データと前記第2ラスター画像データとを、それぞれの同一カラー版同士で比較し、その比較結果から、互いの画像データに不一致が有るか否かを判定することにより刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有るか否かを検出し、その比較結果が不一致と検出されたとき、不一致を示すメッセージを表示する、ことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成する本発明によるカラー位置ずれ自動検出プログラムは、上記方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記構成によれば、カラー版を先行出力する際に使用する第1紙面ベクトルデータをラスタライズした第1ラスター画像データとブラック版を出力する際に使用する第2紙面ベクトルデータをラスタライズした第2ラスター画像データとの間でカラー写真などのカラー素材の位置にずれが生じているか否かを自動検出し、ずれが発生している場合に、事前に制作者に再出力が必要であると通知することが可能となるため、カラー素材の位置ずれ防止が人手に頼った不確実な方法から自動的で確実な方法となり、制作者の単なる注意や目視確認に依存していたコストの削減、欠陥印刷によるマイナスコストの発生の防止、突発ニュースなどへの対応力の強化を図ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の第1実施形態に係るカラー位置ずれ自動検出装置のブロック構成図である。図1全体に示すカラー位置ずれ自動検出装置100は、印刷機に用いられる刷版上のカラー素材の刷版間の位置ずれを自動検出する1つのコンピュータであり、コントロール部10とデータ記憶部11と画像データ作成部12と位置ずれ検出部13と検出結果通知部14と編集操作部15とを有する。
【0018】
コントロール部10はデータ記憶部11と画像データ作成部12と位置ずれ検出部13と検出結果通知部14と編集操作部15とを動作させるように制御するものである。
【0019】
データ記憶部11は、カラー印刷用のブラック版を含む少なくとも2色のカラー版を出力する際に使用する紙面ベクトルデータとして、カラー版の出力をブラック版の出力に先行して行う際に予め編集されたカラー版毎の第1紙面ベクトルデータとブラック版の出力を行う際に編集された最新のカラー版毎の第2紙面ベクトルデータとを保存するものである。ベクトルデータはポストスクリプト(Post Script)で記述されたデータであり、点、線、面で構成される図形要素を座標値(XY座標)として管理しているデータである。
【0020】
画像データ作成部12は、第1紙面ベクトルデータをラスタライズ(ポストスクリプトで記述されたベクトルデータをTIFF形式またはビットマップ形式の画像データに変換)したカラー版毎の第1ラスター画像データと、第2紙面ベクトルデータをラスタライズしたカラー版毎の第2ラスター画像データとを作成するものである。ラスター画像データはTIFF(Tag Image File Format)形式またはBMP(ビットマップ:Bitmap)形式で作成された画像データである。
【0021】
位置ずれ検出部13は、第1ラスター画像データと第2ラスター画像データとを、それぞれの同一カラー版同士、すなわちシアン(C)版同士、マゼンタ(M)版同士、イエロー(Y)版同士で比較し、互いの画像データに不一致が有るか否かを判定することにより刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有るか否かを検出するものである。
【0022】
検出結果通知部14は、位置ずれ検出部13が、刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有ることを検出したとき、コントロール部10の制御により、その検出結果をオペレータに、例えばディスプレイに表示して通知するものである。
【0023】
編集操作部15は、コントロール部10の制御により、各刷版に対する紙面上に画像や記事等のカラー素材をオペレータ(制作者)がレイアウトする操作を可能にするものである。
【0024】
上記カラー印刷用のカラー版はブラック版を含む2色、3色または4色を含むことができる。つまり、ブラック版を含む2色の場合はブラック版の他にシアン版、マゼンタ版、イエロー版のうちの何れか1つの版を含み、ブラック版を含む3色の場合はブラック版の他にシアン版、マゼンタ版、イエロー版のうちの何れか2つの版を含み、ブラック版を含む4色の場合はブラック版の他にシアン版、マゼンタ版、イエロー版の全ての版を含む。
【0025】
また、検出結果通知部14は、刷版上の何れの箇所にカラー素材の刷版間の位置ずれが生じているかをカラー版毎に表示するものである。
【0026】
図2は本発明の第2実施形態に係るカラー位置ずれ自動検出システムの概要を示す図である。図1に示す第1実施形態のカラー位置ずれ自動検出装置100が1つのコンピュータから構成されるのに対し、図2に示す第2実施形態のカラー位置ずれ自動検出システム200は、組版端末20とストレージ機器21とRIP装置22を有して構成される。
【0027】
組版端末20は第1実施形態のコントロール部10と位置ずれ検出部13と検出結果通知部14と編集操作部15の機能を有する。組版端末20はストレージ機器21とRIP装置22とに通信可能に接続される。ストレージ機器21は第1実施形態のデータ記憶部11の機能を有する。RIP装置22は第1実施形態の画像データ作成部12の機能を有する。
【0028】
以下に、本発明の第1実施形態に係るカラー位置ずれ自動検出装置を参照しつつ該装置の動作の流れを説明する。
図3Aおよび図3Bは本発明によるカラー位置ずれ自動検出装置の新聞制作者からみた処理の流れを示すフローチャートである。
【0029】
ステップS1で、各版(C、M、Y、K版)毎のカラー紙面を制作する。
ステップS2で、制作者は編集操作部15を用いて紙面上のカラー部分を確定し、色版先行出力を指示する。この指示を受けコントロール部10は色版先行出力用の紙面ベクトルデータをデータ記憶部11内に保存する。ここで紙面ベクトルデータはC版、M版、Y版およびK版用のデータを全て含む。したがって、データ記憶部11にはC版、M版、Y版およびK版用の各先行出力用の紙面ベクトルデータが保存される。
【0030】
ステップS3で、編集操作部15を用いて記事などの編集を行い、K版の紙面を制作する。
ステップS4で、K版の最新出力を指示する。この指示を受けステップS41でコントロール部10はK版を含む最新出力用の紙面ベクトルデータをデータ記憶部11内に保存する。すなわち、データ記憶部11にはC版、M版、Y版およびK版用の各最新出力用の紙面ベクトルデータが保存される。
【0031】
ステップS5で、位置ずれ検出部にカラー位置ずれのチェックを指示する。この指示を受けコントロール部10は、ステップS51でステップS2でデータ記憶部11に保存した色版先行出力用の紙面ベクトルデータとステップS4でデータ記憶部11に保存した最新出力用の紙面ベクトルデータとを獲得し、ステップS52で画像データ作成部12により、色版先行出力用の紙面ベクトルデータおよび最新出力用の紙面ベクトルデータをそれぞれラスタライズして色版先行出力用および最新出力用のビットマップ形式の画像データを作成し、ステップS53で位置ずれ検出部13により、色版先行出力用画像データと最新出力用画像データとをそれぞれの同一カラー版同士、すなわちC版同士、M版同士およびY版同士で比較し、その比較結果同一カラー版同士の全て画像データが一致したとき、カラー位置ずれがないと判定しステップS6に進み、同一カラー版同士の画像データに不一致が有ったとき、カラー位置ずれが有ると判定しステップS54に進み、ステップS54で検出結果通知部14により「カラー位置ずれ有り」と表示し制作者に伝える。
【0032】
ステップS6で、紙面制作が終了したか否かに応じて、類似の新聞制作が無いときはこの新聞制作を終了し、類似の新聞制作が有るときはステップS7に進む。
ステップS7で、類似の新聞制作のため、記事を修正する改版の要求が有れば、C版、M版およびY版の色版は流用し、記事を修正するためK版を再編集するステップS3に戻り、ステップS3〜ステップS6を繰り返す。
【0033】
図4は位置ずれ検出部の処理の流れを示すフローチャートである。図4は図3BにおけるステップS53の詳細の処理の流れを示す。
ステップS101で、色版先行出力用の紙面ベクトルデータおよび最新出力用の紙面ベクトルデータをそれぞれラスタライズした色版先行出力用ラスター画像データおよび最新出力用ラスター画像データとを獲得する。
【0034】
ステップS102で、色版先行出力用のC版ラスター画像データと最新出力用のC版ラスター画像データ同士を比較し、その比較結果が一致のときはステップS103に進み、不一致のときはステップS110に進む。
【0035】
ステップS103で、色版先行出力用のM版ラスター画像データと最新出力用のM版ラスター画像データ同士を比較し、その比較結果が一致のときはステップS104に進み、不一致のときはステップS110に進む。
【0036】
ステップS104で、色版先行出力用のY版ラスター画像データと最新出力用のY版ラスター画像データ同士を比較し、その比較結果が一致のときは終了し、不一致のときはステップS110に進む。
【0037】
ステップS110で、検出結果通知部14により警報メッセージを表示する。
検出結果通知部14は、警報メッセージの他に、各刷版上の何れの箇所にカラー素材の刷版間の位置ずれが生じているかをカラー版毎に表示する。具体的には、色版先行出力用の各版(C、M、Y)のラスター画像データと最新出力用の各版のラスター画像データ同士のXOR(Exclusive OR)処理した画像形式のデータを獲得することにより行う。
【0038】
図4に示すステップS102〜S104の処理は、C版、M版、Y版の順に実行されるが、C版、M版、Y版の順はどのような順で行ってもよい。
【0039】
図5は本発明によるカラー位置ずれ検出装置を用いた新聞制作のデータの流れを示すフローチャートである。図5に示すように、新聞制作には色版先行出力の第1段階とK版最新出力の第2段階の2つの段階がある。
【0040】
先ず、色版先行出力の第1段階について説明する。
ステップST11で、編集後の色版先行出力の各版(C版、M版、Y版、B版)の紙面ベクトルデータをデータ記憶部11に保存する。
【0041】
ステップST12で、ステップST11で作成した各版の紙面ベクトルデータをラスタライズして各版のビットマップ形式のラスター画像データにそれぞれ変換し、データ記憶部11に保存する。
【0042】
次に、K版最新出力の第2段階について説明する。
ステップST21で、編集後のK版最新出力の各版(C版、M版、Y版、B版)の紙面ベクトルデータをデータ記憶部11に保存する。
【0043】
ステップST22で、ステップST21で作成した各版の紙面ベクトルデータをラスタライズして各版のビットマップ形式のラスター画像データにそれぞれ変換し、データ記憶部11に保存する。
【0044】
ステップST23で、図4に示すフローチャートの処理を実行し、ステップS104の比較判定結果が一致判定のとき、ステップST14およびステップST24に進む。
【0045】
再び第1段階に戻る。
ステップST14で、ステップST12でラスタライズして獲得した各版のビットマップ形式のラスター画像データを元に、製版フィルムを使用しないCTP(Computer To Plate)またはベクトルデータ形式で出力するプロッタ装置を介してC版、M版およびY版の刷版を作製する。
ステップST15で、新聞用印刷機にC版、M版およびY版の刷版を取付ける。
【0046】
再び第2段階に戻る。
ステップST24で、ステップST22でラスタライズして獲得した各版のビットマップ形式のラスター画像データを元に、製版フィルムを使用しないCTP(Computer To Plate)またはベクトルデータ形式で出力するプロッタ装置を介してK版の刷版を作製する。
ステップST25で、新聞用印刷機にK版の刷版を取付ける。
【0047】
図6は紙面上のカラー位置ずれの具体例を示す図であり、(A)はカラー位置ずれの無い正常な紙面の具体例を示す図であり、(B)はカラー位置ずれの有る異常な紙面の具体例を示す図である。
【0048】
図6の(A)に示す紙面60内には、画像データ61、62および63と、記事がレイアウトされている。記事には記事部64と大見出し65と小見出し66とがレイアウトされている。
【0049】
図6の(B)に示す紙面70内には、同様に画像データ71、72および73と、記事がレイアウトされている。記事には記事部74と大見出し75と小見出し76とがレイアウトされている。
【0050】
紙面上のカラー位置ずれが生じたため次のような不具合が発生している。画像データ62には文字データが表示されていないが、画像データ72には文字データの上に画像データが表示されている。大見出し65の紙面上の位置が大見出し75の紙面上の位置からずれている。記事部64の記事内容は記事部74の記事内容と異なる。
【0051】
本発明は、このような紙面上のカラー位置ずれを検出し、位置ずれが検出されなかったときにのみ刷版を印刷機に回し印刷を開始するので、図6の(A)に示すような正しい印刷物を刷り、図6の(B)に示すような誤った印刷物を刷ることはない。
【0052】
以上説明したように、本発明のカラー位置ずれ自動検出装置は、カラー先行出力(CMY版出力)に使用した紙面ベクトルデータと残りの黒色部分(K版出力)の出力に使用する紙面ベクトルデータを保存しておき、それぞれの紙面ベクトルデータからラスター画像(C版、M版、Y版、K版)を作成する。作成したラスター画像のC版、M版、Y版をそれぞれバイナリ比較し、全てのカラー版で両者が一致する場合は位置ずれ無しと判定し、不一致の場合は位置ずれありと判定することにより、カラー素材に位置ずれが発生しているかどうかを自動検出する。ずれが発生している場合は、カラー版の再出力が必要であることをメッセージとして画面表示することにより紙面制作者に通知することで、欠陥印刷の発生を未然に防止する。
【0053】
(付記1)
印刷機に用いられる刷版上のカラー素材の刷版間の位置ずれを自動検出するカラー位置ずれ自動検出装置であって、
カラー印刷用のブラック版を含む少なくとも2色のカラー版を出力する際に使用する紙面ベクトルデータとして、カラー版の出力をブラック版の出力に先行して行う際に予め編集された前記カラー版毎の第1紙面ベクトルデータとブラック版の出力を行う際に編集された最新の前記カラー版毎の第2紙面ベクトルデータとを保存するデータ記憶部と、
前記第1紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第1ラスター画像データと、前記第2紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第2ラスター画像データとを作成する画像データ作成部と、
前記第1ラスター画像データと前記第2ラスター画像データとを、それぞれの同一カラー版同士で比較し、互いの画像データに不一致が有るか否かを判定することにより刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有るか否かを検出する位置ずれ検出部と、
前記データ記憶部と前記画像データ作成部と前記位置ずれ検出部とを動作させるよう制御するコントロール部と、
を備えたことを特徴とするカラー位置ずれ自動検出装置。
(付記2)
前記位置ずれ検出部が、刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有ることを検出したとき、前記コントロール部の制御により、その検出結果をオペレータに通知する検出結果通知部を備えた、
請求項1に記載のカラー位置ずれ自動検出装置。
(付記3)
前記カラー印刷用のカラー版はブラック版を含む3色である、
請求項1または2に記載のカラー位置ずれ自動検出装置。
(付記4)
前記カラー印刷用のカラー版はブラック版、シアン版、マゼンタ版およびイエロー版からなる4色である、
請求項1または2に記載のカラー位置ずれ自動検出装置。
(付記5)
前記検出結果通知部は、刷版上の何れの箇所にカラー素材の刷版間の位置ずれが生じているかを前記カラー版毎に表示する、
請求項2乃至4の何れか1項に記載のカラー位置ずれ自動検出装置。
【0054】
(付記6)
印刷機に用いられる刷版上のカラー素材の刷版間の位置ずれを自動検出するカラー位置ずれ自動検出方法であって、
カラー印刷用のブラック版を含む少なくとも2色のカラー版を出力する際に使用する紙面ベクトルデータとして、カラー版の出力をブラック版の出力に先行して行う際に予め編集された前記カラー版毎の第1紙面ベクトルデータとブラック版の出力を行う際に編集された最新の前記カラー版毎の第2紙面ベクトルデータとをデータ記憶部に保存し、
位置ずれを自動検出する際に、前記第1紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第1ラスター画像データと、前記第2紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第2ラスター画像データとを作成し、
前記第1ラスター画像データと前記第2ラスター画像データとを、それぞれの同一カラー版同士で比較し、
その比較結果から、互いの画像データに不一致が有るか否かを判定することにより刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有るか否かを検出し、
その比較結果が不一致と検出されたとき、不一致を示すメッセージを表示する、
ことを特徴とするカラー位置ずれ自動検出方法。
【0055】
(付記7)
印刷機に用いられる刷版上のカラー素材の刷版間の位置ずれを自動検出するカラー位置ずれ自動検出プログラムであって、
カラー印刷用のブラック版を含む少なくとも2色のカラー版を出力する際に使用する紙面ベクトルデータとして、カラー版の出力をブラック版の出力に先行して行う際に予め編集された前記カラー版毎の第1紙面ベクトルデータとブラック版の出力を行う際に編集された最新の前記カラー版毎の第2紙面ベクトルデータとをデータ記憶部に保存し、
位置ずれを自動検出する際に、前記第1紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第1ラスター画像データと、前記第2紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第2ラスター画像データとを作成し、
前記第1ラスター画像データと前記第2ラスター画像データとを、それぞれの同一カラー版同士で比較し、
その比較結果から、互いの画像データに不一致が有るか否かを判定することにより刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有るか否かを検出し、
その比較結果が不一致と検出されたとき、不一致を示すメッセージを表示する、
ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするカラー位置ずれ自動検出プログラム。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカラー位置ずれ自動検出装置のブロック構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るカラー位置ずれ自動検出システムの概要を示す図である。
【図3A】本発明によるカラー位置ずれ自動検出装置の新聞制作者からみた処理の流れを示す前半フローチャートである。
【図3B】本発明によるカラー位置ずれ自動検出装置の新聞制作者からみた処理の流れを示す後半フローチャートである。
【図4】位置ずれ検出部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明によるカラー位置ずれ検出装置を用いた新聞制作のデータの流れを示すフローチャートである。
【図6】紙面上のカラー位置ずれの具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10 コントロール部
11 データ記憶部
12 画像データ作成部
13 位置ずれ検出部
14 検出結果通知部
15 編集操作部
20 組版端末
21 ストレージ機器
22 RIP装置
100 カラー位置ずれ自動検出装置
200 カラー位置ずれ自動検出システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機に用いられる刷版上のカラー素材の刷版間の位置ずれを自動検出するカラー位置ずれ自動検出装置であって、
カラー印刷用のブラック版を含む少なくとも2色のカラー版を出力する際に使用する紙面ベクトルデータとして、カラー版の出力をブラック版の出力に先行して行う際に予め編集された前記カラー版毎の第1紙面ベクトルデータとブラック版の出力を行う際に編集された最新の前記カラー版毎の第2紙面ベクトルデータとを保存するデータ記憶部と、
前記第1紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第1ラスター画像データと、前記第2紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第2ラスター画像データとを作成する画像データ作成部と、
前記第1ラスター画像データと前記第2ラスター画像データとを、それぞれの同一カラー版同士で比較し、互いの画像データに不一致が有るか否かを判定することにより刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有るか否かを検出する位置ずれ検出部と、
前記データ記憶部と前記画像データ作成部と前記位置ずれ検出部とを動作させるよう制御するコントロール部と、
を備えたことを特徴とするカラー位置ずれ自動検出装置。
【請求項2】
前記検出結果通知部は、刷版上の何れの箇所にカラー素材の刷版間の位置ずれが生じているかを前記カラー版毎に表示する、
請求項1に記載のカラー位置ずれ自動検出装置。
【請求項3】
印刷機に用いられる刷版上のカラー素材の刷版間の位置ずれを自動検出するカラー位置ずれ自動検出方法であって、
カラー印刷用のブラック版を含む少なくとも2色のカラー版を出力する際に使用する紙面ベクトルデータとして、カラー版の出力をブラック版の出力に先行して行う際に予め編集された前記カラー版毎の第1紙面ベクトルデータとブラック版の出力を行う際に編集された最新の前記カラー版毎の第2紙面ベクトルデータとをデータ記憶部に保存し、
位置ずれを自動検出する際に、前記第1紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第1ラスター画像データと、前記第2紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第2ラスター画像データとを作成し、
前記第1ラスター画像データと前記第2ラスター画像データとを、それぞれの同一カラー版同士で比較し、
その比較結果から、互いの画像データに不一致が有るか否かを判定することにより刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有るか否かを検出し、
その比較結果が不一致と検出されたとき、不一致を示すメッセージを表示する、
ことを特徴とするカラー位置ずれ自動検出方法。
【請求項4】
印刷機に用いられる刷版上のカラー素材の刷版間の位置ずれを自動検出するカラー位置ずれ自動検出プログラムであって、
カラー印刷用のブラック版を含む少なくとも2色のカラー版を出力する際に使用する紙面ベクトルデータとして、カラー版の出力をブラック版の出力に先行して行う際に予め編集された前記カラー版毎の第1紙面ベクトルデータとブラック版の出力を行う際に編集された最新の前記カラー版毎の第2紙面ベクトルデータとをデータ記憶部に保存し、
位置ずれを自動検出する際に、前記第1紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第1ラスター画像データと、前記第2紙面ベクトルデータをラスタライズした前記カラー版毎の第2ラスター画像データとを作成し、
前記第1ラスター画像データと前記第2ラスター画像データとを、それぞれの同一カラー版同士で比較し、
その比較結果から、互いの画像データに不一致が有るか否かを判定することにより刷版上のカラー素材の刷版間に位置ずれが有るか否かを検出し、
その比較結果が不一致と検出されたとき、不一致を示すメッセージを表示する、
ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするカラー位置ずれ自動検出プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−113391(P2008−113391A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296661(P2006−296661)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】