説明

前立腺癌に関連した兆候およびPCDETERMINANT、ならびにそれらの使用方法

本発明は、生物マーカーを使用して癌を検出する方法を提供する。本発明の1つの態様では、所定レベルの予測可能性を用いて、対象で転移性癌を発症するリスクを評価するための方法を提供する。転移性前立腺癌を発症するリスクは、対象由来のサンプル中のPCDETERMINANTのレベルを測定することによって決定する。対象が転移性癌を発症するリスクが高いことは、サンプル中のPCDETERMINANTのレベルの臨床的に有意な変化を測定することによって決定される。あるいは、対象が転移性癌を発症するリスクが高いことは、有効量のPCDETERMINANTのレベルを基準値と比較することによって決定される。いくつかの態様では、この基準値が指標である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年7月16日に出願された米国仮特許出願第61/081,286号の優先権の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、癌転移に伴う生物学的徴候および癌転移をもたらす遺伝的PCDETERMINANTの同定と、そのような生物学的徴候およびPCDETERMINANTを癌のスクリーニング、予防、診断、治療、モニタリング、および予後に使用する方法とに関する。本発明はさらに、遺伝子工学的に作製された転移性前立腺癌マウスモデルにも関する。
【背景技術】
【0003】
前立腺癌(PCA)は、米国内においては、最も頻繁な男性の癌であり、癌死亡の主要な原因である。ほとんどの高齢男性は前立腺新生物をもっているが、圧倒的多数の症例が、局在性の緩徐進行型の状態に留まり、治療介入の必要はない。しかし、早期PCAのサブセットは、治療せずに放置すると、侵襲性の悪性挙動の段階に進むことが「決まって」おり、前立腺を越えて広がり、転移性疾患に容赦なく進行し、最終的には死をもたらす。現時点では、緩徐進行型疾患と侵襲性疾患とを正確に区別することができないために、緩徐進行型疾患に罹患している可能性がある多くの男性が、死亡率の高い治療介入を不必要に受けている。
【0004】
グリーソンの類別、PSAおよび腫瘍段階を含めて、治療成果を予測するための、腫瘍を階層化する現在の方法は、臨床病理学的因子に基づいている。これらの方式は役立つが、治療成果を十分には予測せず、重要なことには、転移性疾患およびPCAに特異的な死亡のリスクの最も意味のある臨床エンドポイントには確実にはつながらない。医学上の必要性が満たされていないこのことから、進行のリスクを示し、標的を定めた介入療法のための機会を提供することが可能な生物マーカーを同定することを目指して、PCA進行の遺伝的および生物学的な基礎を定義するための努力が盛んに払われるようになった。ヒトPCAの遺伝的研究によって、PTEN腫瘍抑制因子の不活性化、ならびにETSファミリーのトランスロケーションおよび調節不全を含めた、いくつかのサイン事象が同定されている。さらに、Nkx3.1、c−MycおよびSPINKを含めた、多くのその他の重要な遺伝子的および/またはエピジェネティックな変化も同定されている。また、網羅的分子解析によって、ECAD、AIPC、Pim−1キナーゼ、ヘプシン、AMACRおよびEZH2等の一連の潜在的な再発/転移の生物マーカーも同定されている。しかし、ヒトPCAが極めて均質性に乏しいことから、臨床の場においては、単一の生物マーカーの有用性が制限されており、したがって、予後を示す多重遺伝子生物マーカーのパネルまたはサインを定義するためのより包括的な転写プロファイリング研究が求められている。これらの予測サインは、よりロバストであるようである。しかし、それらの臨床的有用性は、転写ネットワークの内在するノイズおよび状況特異的な性質、ならびに癌ゲノムが極めて不安定であることに起因して依然として不確かである。こうした癌ゲノムの不安定性は、無数の付随する遺伝子的およびエピジェネティックな事象を示し、疾患の顕著な不均質性をもたらす。これらの因子によって、疾患の進行のリスクを正確に示すことが可能な生物マーカーの同定が妨げられている。したがって、複雑なヒトのデータセットと一緒に使用して、癌の発生および挙動を、特に、早期において予測するために使用し得るロバストな生物マーカーを同定することができるヒト癌のより正確なモデルが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は一部、タンパク質、核酸、多型、代謝産物およびその他の分析対象等の特定の生物学的なマーカー(本明細書では、「PCDETERMINANT」と呼ぶ)、ならびに特定の生理学的な状態および状況が、早期癌において存在または変化するという発見に関する。これらが変化または存在すると、これらの新生物に、転移性癌の再発および進行のリスクの増加が生じる。こうした癌は、例えば、前立腺癌または乳癌である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の1つの態様では、所定レベルの予測可能性を用いて、対象で転移性癌を発症するリスクを評価するための方法を提供する。転移性前立腺癌を発症するリスクは、対象由来のサンプル中のPCDETERMINANTのレベルを測定することによって決定する。対象が転移性癌を発症するリスクが高いことは、サンプル中のPCDETERMINANTのレベルの臨床的に有意な変化を測定することによって決定される。あるいは、対象が転移性癌を発症するリスクが高いことは、有効量のPCDETERMINANTのレベルを基準値と比較することによって決定される。いくつかの態様では、この基準値が指標である。
【0007】
別の態様では、本発明は、第1の期間で、対象由来の第1のサンプル中のPCDETERMINANTのレベルを検出し、第2の期間で、対象由来の第2のサンプル中のPCDETERMINANTのレベルを検出し、検出されたPCDETERMINANTのレベルを基準値と比較することによって、所定レベルの予測可能性を用いて、対象における腫瘍の進行を評価するための方法を提供する。いくつかの態様では、第1のサンプルは、腫瘍の治療前に対象から採取され、第2のサンプルは、腫瘍の治療後に対象から採取される。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、第1の期間で、対象由来の第1のサンプル中のPCDETERMINANTのレベルを検出し、任意選択で第2の期間で、対象由来の第2のサンプル中のPCDETERMINANTの有効量のレベルを検出することによって、所定レベルの予測可能性を用いて、治療の有効性をモニタし、または転移性癌の治療レジメンを選択するための方法を提供する。第1の期間で検出されたPCDETERMINANTの有効量のレベルを、第2の期間で検出されたレベルまたは基準値と比較する。治療の有効性は、対象由来のPCDETERMINANTの有効量のレベルの変化によってモニタされる。
【0009】
PCDETERMINANTには、例えば、本明細書に記述されるDETERMINANT1〜372が含まれる。1、2、3、4、5、10、またはそれ以上のPCDETERMINANTが測定される。いくつかの実施形態では、表2、3、4、5、6または7に列挙するPCDETERMINANTから選択された少なくとも2個のPCDETERMINANTを測定する。好ましくは、PTEN、SMAD4、サイクリンD1およびSPP1が測定される。任意選択で、本発明の方法は、腫瘍に関連する少なくとも1つの標準的なパラメータを測定するステップをさらに含む。標準パラメータは、例えば、グリーソンスコアである。
【0010】
PCDETERMINANTのレベルは、電気泳動または免疫化学的手法によって測定される。例えば、PCDETERMINANTのレベルは、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイ、または酵素結合免疫吸着アッセイによって検出される。場合により、PCDETERMINANTを、非侵襲性の画像技術を使用して検出する。
【0011】
対象は、原発性腫瘍、再発性腫瘍、または転移性腫瘍を有する。いくつかの態様では、サンプルは、腫瘍の治療を事前に受けている対象から採取される。あるいは、サンプルは、腫瘍の治療前に対象から採取される。サンプルは、コア生検標本、切除組織生検標本、または切開組織生検標本などの腫瘍生検標本である。サンプルは、血液または生物学的液体中の循環腫瘍細胞である。
【0012】
本発明には、PCDETERMINANT1〜372から選択された2個以上のマーカーの有効量の、マーカーレベルのパターンを含有する、転移性前立腺癌基準発現プロファイルも含まれる。(好ましくは、このプロファイルは、表1A、1B、2、3、4、5、6または7のうちのいずれか1つに列挙するPCDETERMINANTのマーカーレベルのパターンを含有する。1つまたは複数の転移性腫瘍基準発現プロファイルと、任意選択で追加の試験結果および対象情報とを含有する機械可読媒体も含まれる。別の態様では、本発明は、対応するPCDETERMINANTを検出する複数のPCDETERMINANT検出試薬を含むキットを提供する。例えば、このキットは、PTEN、SMAD4、サイクリンD1およびSPP1の検出試薬を含む。検出試薬は、例えば、抗体またはその断片、オリゴヌクレオチド、またはアプタマーである。
【0013】
別の態様では、本発明は、生理学的または生化学的な経路に関連した腫瘍の転移または進行を示す1個または複数のPCDETERMINANTを含有するPCDETERMINANTパネルを提供する。生理学的または生化学的な経路として、例えば、P13K、RAC−RHO、FAKおよびRASのシグナル伝達経路が挙げられる。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、対照と比較して疾患において示差的に発現した1つまたは複数の遺伝子を同定して、遺伝子標的リストが作成し;疾患の進行の機能的局面に関連した標的リストの1つまたは複数の遺伝子を同定することによって、疾患の予後を示す生物マーカーを同定する方法を提供する。機能的局面は、例えば、細胞移動、血管新生、遠位コロニー形成、細胞外マトリックス分解、またはアノイキスである。任意選択で、この方法は、進化的に保存された変化を含む、遺伝子標的リストの1つまたは複数の遺伝子を同定して、第2の遺伝子標的リストが作成するステップを含む。この疾患は、例えば、浸潤性または転移性癌などの癌である。
【0015】
PCDETERMINANTを発現する細胞を提供し、細胞を、候補化合物を含む組成物と接触させ(例えば、インビボ、エキソビボ、またはインビトロ)、物質がPCDETERMINANTの活性または発現を変化させるか否かを決定することによって、PCDETERMINANTの活性または発現を調節する化合物が同定される。化合物の存在下で観察された変化が、細胞を、化合物を含まない組成物と接触させたときに観察されない場合、同定された化合物は、PCDETERMINANTの活性または発現を調節する。
【0016】
PCDETERMINANTの活性もしくは発現を調節する化合物を対象に投与することによって、またはPCDETERMINANTにより調節された化合物の活性もしくは発現を調節する薬剤を対象に投与することによって、対象の癌が治療される。
【0017】
癌細胞がPCDETERMINANT1〜372のうちの2個以上のレベルにおいて臨床的に有意な変化を示す対象を提供し、この対象を、手術または放射線に加えて、アジュバント療法も用いて治療することによって、癌を治療する。PCDETERMINANTのレベルの変化は、対象において癌が再発するかまたは転移性癌を発症するリスクが高まっていることを示している。さらに、対象の前立腺癌組織由来のサンプル中のPTEN、SMAD4、CYCLIN D1およびSPP1の発現レベルに関する情報を得、SPP1阻害剤、CD44阻害剤または両方を投与することによって、前立腺癌を、その治療を必要とする対象において治療する。この対象は、PTEN、SMAD4、CYCLIN D1およびSPP1の発現レベルに基づいて、前立腺癌が再発するかまたは転移性癌を発症するリスクがあると同定されているものである。
【0018】
1つの態様では、本発明は、有効量のPCDETERMINANTを測定することにより患者における転移のリスクを評価することによって、アジュバント治療を必要とする腫瘍患者を選択する方法を提供し、患者由来の腫瘍サンプル中の2個以上のPCDETERMINANTの臨床的に有意な変化は、患者がアジュバント治療を必要としていることを示している。例えば、本明細書に記載する方法は、特定の対象が臨床治験に適しているかどうかを決定するのに有用である。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、患者由来の腫瘍サンプル中の有効量のPCDETERMINANTに関する情報を得、2個以上のPCDETERMINANTが臨床的に有意な形で変化する場合には、患者における腫瘍の転移を阻止するかまたは低下させる治療レジメンを選択することによって、治療の決定についての情報を腫瘍患者に提供する方法を提供する。
【0020】
種々の実施形態では、所定レベルの予測可能性を用いて評価/モニタリングを行う。所定レベルの予測可能性とは、臨床または診断の精度の許容できるレベルが得られる方法を意味する。臨床および診断の精度は、本明細書に記載する方法等の当技術分野で公知の方法によって決定する。
【0021】
本発明はさらに、ゲノムが、前立腺上皮中の内在性のPten遺伝子およびSmad4遺伝子の両方のホモ接合型破壊を可能にする遺伝子改変を含有するダブルノックアウトのトランスジェニックマウスも提供する。当業者であれば、Pten遺伝子またはSmad遺伝子を、LoxP部位を組み込んでリコンビナーゼの媒介により切除すること(すなわち、現在の系統)によってか、あるいは例えば、生殖系列形態かまたはインサイツもしくは細胞培養における前立腺上皮の体細胞形質導入かのいずれかにおいて、突然変異ノックインを行い、これらの遺伝子をRNAiの媒介により消去し、それに続いて、これらの初代細胞を腎臓莢膜内または同所性に再導入することによって、この破壊を達成することができることを認識するであろう。また、生殖系列伝達を回避する、標的ESクローンを使用するキメラの形成を含めて、その他の工学的作製の戦略も明らかである。このトランスジェニックマウスは、野生型マウスと比較して、前立腺腫瘍の形成に対する感受性の増加を示す。また、このマウスは、Ptenのみのシングルノックアウトのトランスジェニックマウスと比較して、転移性前立腺癌の形成に対する感受性の増加も示す。また、このマウス由来の細胞も含まれる。好ましくは、これらの細胞は、前立腺上皮細胞、乳房上皮細胞、肺上皮細胞または結腸上皮細胞等の上皮細胞である。
【0022】
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が関係する当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記述されるものと同様のまたは均等な方法および材料を、本発明の実施に際して使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記述する。本明細書に記述される全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が参照により明らかに組み込まれる。矛盾する場合、定義を含めた本発明の明細書が優先する。さらに、本明細書に記述される材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、限定しようとするものではない。
【0023】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な記述および特許請求の範囲から明らかにされ、そのような記述および範囲に包含されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、Pten喪失前立腺が、p−Smad2/Smad3およびSmad4の発現レベルを上方制御したことを示す図である。(A)Ptenpc−/−マウス間における示差的発現遺伝子のIngenuity Canonical Pathway Analysis(3331個のプローブセット、青色で示す)を、等しいサイズの無作為に選択した遺伝子セット10個と比較した。(B)15週における各遺伝子型由来のAP組織のウエスタンブロット解析が、Ptenpc−/−マウスにおいては、対照マウスと比較して、pSmad2/3レベルの増強、Smad4の上方制御、およびId1の誘導を示している。(C)Smad4については、15週齢APの免疫組織化学的解析の実施により、Ptenpc−/−マウス(パネルc)において、対照マウス(パネルa)と比較して上方制御が生じていることを実証している。Smadpc−/−マウスを、陰性対照として使用した(パネルb)。スケールバー、50μm。(D、E)ヒトPCAとヒト転移との間におけるSmad4の発現のOnconmine解析(http://www.oncomine.org/)。Yuらの前立腺発現データセットにおいて、Smad4が示差的に発現したヒートマップ(D)。Yuらの前立腺発現データセットおよびDhanasekaranら(2001年)の前立腺発現データセットにおけるヒトPCAとヒト転移との間のSmad4の発現のボックスプロット(E)。
【図2】図2は、Smad4の喪失は、前立腺腫瘍を開始しないが、Pten欠損細胞癌を致死性にすることを示す図である。(A)9週齢のWT、Smad4およびPtenの単一突然変異体および二重突然変異体における前側前立腺(AP)の組織病理学的解析(ヘマトキシリン/エオシン染色)から、WTマウスおよびSmadpc−/−マウスにおいては正常な腺が、しかし、Ptenpc−/−マウスにおいてはPIN病変、およびPtenpc−/−;Smadpc−/−マウスにおいては浸潤(矢印)が明らかになっている。スケールバー、50μm。(B)カプラン−マイヤーの全体的な累積サバイバル解析。Ptenpc−/−;Smadpc−/−コホート(n=26)(アステリスク)について、Ptenpc−/−コホート(n=28)と比較して、寿命の統計学的に有意な減少を見出した(P<0.0001)。(C)22週齢における、代表的なWT、Smadpc−/−、Ptenpc−/−、およびPtenpc−/−;Smadpc−/−の前側前立腺または前立腺腫瘍の肉眼的解剖学的形態。スケールバー、0.5cm。
【図3】図3は、Smad4の喪失は、増殖を増強し、Pten喪失誘導型の細胞の老化を回避することを示す図である。(A)15週齢APの組織病理学的な増殖解析から、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体(パネルj)におけるいくつかの浸潤病巣(矢印、パネルe)中の増殖の増加が実証されている。15週齢APのTunel解析からは、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体(パネルi、j)およびPtenpc−/−前立腺腫瘍(パネルh)においては、有意な差がないことが示されている。H&E、ヘマトキシリン/エオシン。スケールバー、50μm。(B)Smad4の喪失によって、Pten喪失誘導型の細胞の老化が回避された。15週齢APのβ−Gal染色解析。スケールバー、100μm。(C)(A、f〜j)で行った、15週齢APのbrduパルス標識の定量化を行った。3匹のマウス由来の代表的な切片を、各遺伝子型について数えた。(D)15週のAPにおける、アポトーシスについてのTUNELアッセイの定量化。3匹のマウス由来の代表的な切片を、各遺伝子型について数えた。(E)(B)で行った、15週のAP切片上に見られるβ−Gal染色の定量化。3匹のマウス由来の代表的な切片を、各遺伝子型について数えた。C〜Eのエラーバーは、三つ組で実施した代表的な実験についてのs.d.を示す。アステリスクは、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−との間の統計学的有意性を示す(P<0.05)。
【図4】図4は、Smad4が喪失すると、Pten欠損細胞癌が、完全な浸透を伴う、リンパ節および肺への転移に進行することを示す図である。(A)前立腺癌の無転移サバイバル曲線(カプラン−マイヤープロット)。腰部リンパ節および/または肺における転移病巣を、16〜32週齢のPtenpc−/−;Smadpc−/−コホートにおいてのみ見出した。転移の完全な浸透を伴うPtenpc−/−;Smadpc−/−(n=25)(アステリスク)について、Ptenpc−/−コホート(n=25)と比較して統計学的有意性(P<0.0001)を見出した。(B)転移病巣(暗い矢印)を伴う、代表的な腰部リンパ節(破線の円)および肺の肉眼的解剖学的形態。スケールバー、0.5cm。(C)H&E染色切片が、リンパ節(暗い矢印)および肺における転移性前立腺癌細胞を示している。免疫組織化学的解析によって、リンパ節および肺における転移性細胞が、CK8陽性およびAR陽性(前立腺上皮マーカー)であることを示している。スケールバー、50μm。Mets、転移;LN、リンパ節。
【図5】図5は、表1Aからの284個のPCDETERMINANTが、ヒト前立腺癌の侵襲性および転移を予測することを示す図である。この特定の実験では、表1Aに列挙する284個のPCDETERMINANTを、Pten由来の3つの腫瘍サンプルとPten Smad4由来の3つの腫瘍サンプルとの比較から得た。表1Aからの284個のPCDETERMINANTを、Glinskyら(2004年)の前立腺癌遺伝子発現データセットから、予後を示す有用性について評価した。生化学的再発(BCR)を、PSAレベル(>0.2ng/ml)によって定義した。患者サンプルが、表1Aに列挙する284個のPCDETERMINANTによって定義された2つの主要なクラスターのカテゴリーに分かれた(高リスク群および低リスク群)。
【図6】図6は、細胞の動きの遺伝子が、転移性Smad4/Pten前立腺腫瘍においては、緩徐進行型Pten腫瘍と比較して、示差的に発現することを示す図である。示差的発現遺伝子の分子機能に関するIngenuity Pathway Analysis(IPA)解析では、細胞の動きの遺伝子は、Smad4/Pten前立腺腫瘍については、いずれかをPten腫瘍と比較した場合、18番または1番としてランク付けられることが明らかになった。(A)Ptenpc−/−;Smad4pc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で示差的に発現した遺伝子の分子機能に関するIPAからは、これらの遺伝子が、細胞の動き、細胞死、細胞の成長および増殖、細胞間のシグナル伝達および相互作用、細胞の発達、細胞形態、細胞周期、細胞のシグナル伝達、翻訳後修飾、脂質代謝、小型分子の生化学、薬物代謝、ビタミンおよび鉱物の代謝、細胞の機能および維持、分子輸送、遺伝子発現、DNAの複製および修復において役割を果たすことが明らかになっている。細胞の動きの遺伝子は、1番としてランク付けられている。(B)Ptenpc−/−;p53pc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で示差的に発現した遺伝子の分子機能に関するIPA解析からは、これらの遺伝子が、細胞死、遺伝子発現、細胞の成長および増殖、細胞の発達、アミノ酸代謝、翻訳後修飾、小型分子の生化学、細胞の機能および維持、細胞形態、細胞の集合および組織化、細胞周期、細胞間のシグナル伝達および相互作用、薬物代謝、脂質代謝、分子輸送、細胞性傷害、抗原提示、細胞の動き、炭水化物代謝、RNAの傷害および修復、DNAの複製および修復、核酸代謝、細胞のシグナル伝達、タンパク質合成において役割を果たすことが明らかになっている。Ptenpc−/−;Smad4pc−/−腫瘍とは対照的に、Ptenpc−/−;p53pc−/−腫瘍のIPAからは、細胞の動きの遺伝子が18番にランク付けられることが示されている。
【図7】図7は、遺伝子プロファイリングおよびプロモーター解析から、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で示差的に発現する66個の推定されるSmad4標的遺伝子のサブセットが明らかになっていることを示す図である。(A)66個の遺伝子が、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で示差的に発現した。(B)分子機能に関するIngenuity Pathway Analysis(IPA)から、これら66個の遺伝子は、細胞の動き、癌、細胞の成長および増殖、ならびに細胞死において役割を果たすことが明らかになっている。
【図8】図8は、17個のSmad標的遺伝子サインによって、癌の侵襲性および転移を予測することができることを示す図である。(A)17個のSmad標的遺伝子サインの開発を示す略図である。コンピュータ解析によって、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で示差的に発現する284個の遺伝子のうち、推定されるSmad標的遺伝子が66個あることが明らかになっている。17個の遺伝子サインを、ヒト転移性PCAデータセットとのオーバーラップに基づいて開発した。(B)17個の遺伝子が、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で示差的に発現した。(C)それに続いて、これらの17個の推定されるSmad標的遺伝子を、前立腺癌遺伝子発現データセット上で予後を示す有用性について評価した。腫瘍サンプル(列)と遺伝子(行)との階層的クラスター分析を示す。赤色は、遺伝子発現の高い相対レベルを示し、一方、緑色は、遺伝子発現の低い相対レベルを示す。ヒートマップの上の水平バーは、各患者の再発状況を示す(1、生化学的なまたは腫瘍の再発;0、無再発)。患者が、この17個の遺伝子サインによって定義された2つの主要なクラスターのカテゴリーに分かれた。リンパ節およびその他の遠位の転移を、赤色の矢印によって示す。(D)カプラン−マイヤーサバイバル解析は、この17個の遺伝子のクラスターによって定義された群に基づいた。(E、F)Cと同様に、17個の遺伝子サインを、乳房腺癌データセットにおいて評価した。カプラン−マイヤー解析を、この17個の遺伝子のクラスターによって定義された群に基づいて、生存確率(E)および無転移生存(F)について実施した。
【図9】図9は、Smad4の喪失は、前立腺腫瘍を最長2年齢まで開始しないことを示す図である。Smad4単一突然変異体における1年齢(AP)(A)および2年齢(B)の前側前立腺の組織病理学的解析(ヘマトキシリン/エオシン染色)から、Smadpc−/−マウスにおける正常な腺が明らかになっている。スケールバー、50μm。
【図10】図10は、Ptenpc−/−;Smadpc−/−マウスにおける代表的な水腎症の組織病理学的解析を示す図である。(A)26週齢において前立腺腫瘍を有する代表的なPtenpc−/−;Smadpc−/−の肉眼的解剖学的形態であり、巨大な前立腺腫瘍(破線の円)を示している。スケールバー、2cm。(B、C)Ptenpc−/−マウス(B)および水腎症(矢印)を伴うPtenpc−/−;Smadpc−/−マウス(C)由来の代表的な腎臓の組織病理学的解析。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を用いて染色した。スケールバー、1mm。
【図11】図11は、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で示差的に発現した284個の癌生物学関連遺伝子のサブセット(表1Aを参照されたい)のマイクロアレイ解析を示す図である。(A)284個の遺伝子が、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で示差的に発現した。(B)分子機能に関するIngenuity Pathway Analysis(IPA)から、これら284個の遺伝子は、細胞の動き、癌、細胞の成長および増殖、ならびに細胞死において役割を果たすことが明らかになっている。
【図12】図12(A)は、66個のSmad標的遺伝子が推定され、それに続いて、それらを、前立腺癌遺伝子発現データセット上で予後を示す有用性について評価した様子を示す図である。腫瘍サンプル(列)と遺伝子(行)との階層的クラスター分析を示す。赤色は、遺伝子発現の高い相対レベルを示し、一方、緑色は、遺伝子発現の低い相対レベルを示す。ヒートマップの上の水平バーは、各患者の再発状況を示す(1、生化学的なまたは腫瘍の再発;0、無再発)。患者が、この66個の遺伝子サインによって定義された2つの主要なクラスターのカテゴリーに分かれた。リンパ節およびその他の遠位の転移を、赤色の矢印によって示す。(B)は、この66個の遺伝子のクラスターによって定義された群に基づいたカプラン−マイヤーサバイバル解析を示す図である。
【図13】図13は、初代マウス胚性線維芽細胞(MEF)において、Ptenの喪失がp53依存性経路を通して惹起した細胞の老化を、Smad4の喪失により、回避することができることを示す図である。(A)WT MEF(パネルa)、Smad−/−MEF(パネルb)、Pten−/−MEF(パネルc)、およびPten−/−;Smad−/−MEF(パネルd)の老化の染色。各遺伝子型の3つの独立したMEFからの代表的な切片。(B)β−Gal染色の定量化。エラーバーは、三つ組で実施した代表的な実験についてのs.d.を示す。アステリスクは、Ptenpc−/−変異体とPtenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体との間の統計学的有意性を示す(P<0.05)。(C)各遺伝子型からのMEFのウエスタンブロット解析から、(遺伝子型について、5匹以上のマウスの)二つ組で実施した代表的な実験についてのp53の発現レベルが示されている。アクチンを内部添加対照として使用した。
【図14】図14は、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体からの前立腺上皮細胞が、ヌードマウスにおいて、前立腺上皮細胞マーカーを有する同所性の転移性腫瘍を形成することを示す図である。(A)Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体からの前立腺上皮細胞を同所性に注入すると、前立腺中には腫瘍(破線の円)が形成され、肺転移(矢印)も形成される。スケールバー、1cm。(B)免疫組織化学的解析によって、同所性腫瘍および肺転移が、CK8陽性および#AR陽性(前立腺上皮のマーカー)であることが示されている。スケールバー、50μm。
【図15】図15は、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体からの前立腺上皮細胞が、ヌードマウスにおいて、前立腺上皮細胞マーカーを有する同所性の転移性腫瘍を形成することを示す図である。(A)Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体からの前立腺上皮細胞を腎臓移植すると、前立腺中には腫瘍(破線の円)が形成され、肺転移(矢印)も形成される。スケールバー、1cm。(B)免疫組織化学的解析によって、腎臓腫瘍および肺転移が、CK8陽性および#AR陽性(前立腺上皮のマーカー)であることが示されている。スケールバー、50μm。
【図16】図16は、Pten−Smad4二重欠損前立腺腫瘍細胞において、Smad4を修復し、TGFβ1を用いて処理すると細胞生存率が減少することを示す図である。(A)Smad4欠損前立腺癌細胞において、Smad4を修復し、TGFβ1を用いて処理すると細胞生存率が減少している。親対照細胞(Contl)およびSmad4−Tet on細胞(Smad4)を、5%活性炭処理FBS含有培地中、1μg/mLドキシサイクリン(Dox)の存在下または非存在下で、0.016ng/mL、0.031ng/mL、0.063ng/mL、0.125ng/mL、0.25ng/mL、0.5ng/mLのTGFβ1を用いて処理し、次いで、細胞生存率を、アデノシン三リン酸定量化によってアッセイした。エラーバーは、三つ組で実施した代表的な実験についてのs.d.を示す。黒色のバー、Doxなしの対照親の系;青色のバー、Doxありの対照親の系;赤色のバー、DoxなしのSmad4tet−on系;緑色のバー、DoxありのSmad4tet on系。(B)Dox処理時のSmad4の発現のウエスタンブロット解析は、Dox処理ありまたはDox処理なしのSmad4tet−on系のSmad4の発現を示している。ranを、内部添加対照として使用した。(C)TGFβ1処理がある場合またはない場合の細胞の形態。細胞の写真を、TGFβ1またはビヒクルを用いて処理した4日後に撮影した。
【図17】図17は、Smad4の喪失によって、Pten喪失誘導型の自己貪食が回避されることを示す図である。(A)TGFβ1処理がある場合またはない場合の細胞の形態。細胞の写真を、TGFβ1またはビヒクルを用いて処理した3日後に撮影した。(B)15週齢のPtenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体およびPtenpc−/−マウスからの前立腺腫瘍細胞の透過型電子顕微鏡観察。
【図18】図18は、性腺摘除によるホルモン除去を施したPten/Smad4二重突然変異体マウスが、ホルモン不応性の転移性PCAを発症したことを示す図である。(A)性腺摘除した動物のカプラン−マイヤーの全体的な累積サバイバル解析。性腺摘除したPtenpc−/−;Smadpc−/−コホート(n=22)について、無性腺摘除Ptenpc−/−;Smadpc−/−コホート(n=20)と比較して、寿命の統計学的に有意な延長(P<0.0001)が見出された(アステリスク)。矢印は、15週齢における性腺摘除を示す。(B)性腺摘除術は、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体において、前立腺癌の転移を遮断しなかった。より高い倍率の写真(枠で囲まれた領域)を右に示す(パネルb)。代表的なリンパ節転移の組織病理学的解析。スケールバー、パネルaについては200μm、パネルbについては50μm。(C)組織病理学的増殖解析によって、性腺摘除されたPtenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体においては、性腺摘除されたWTマウスおよびPtenpc−/−マウスと比較して、高い増殖(褐色の染色)が明らかになった。H&E、ヘマトキシリン/エオシン。スケールバー、50μm。15週齢において性腺摘除された23週齢のマウスに対して、解析を実施した。(D)15週齢において性腺摘除された23週齢のマウスのbrduパルス標識の定量化。3匹のマウス由来の代表的な切片を、各遺伝子型について数えた。アステリスクは、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−との間の統計学的な有意性(P<0.05)を示す。
【図19】図19は、PtenおよびSmad4が協力して、前立腺癌の開始および進行を制御する機序のモデルを示す図である。前立腺におけるPtenの喪失の結果、前立腺腫瘍の発生が生じるが、さらなる進行は、Ptenの喪失が引き起こした増殖遮断/老化によって抑制された。PtenおよびSmad4の両方の喪失により、Pten喪失誘導型の増殖遮断/老化、ならびにおそらく、PCDETERMINANT1〜372またはPCDETERMINANT1〜372のサブセットによる差し迫った細胞の動き等のその他の細胞性および細胞内の抑制機構が回避され、最終的には、前立腺腫瘍細胞が進行して転移が生じる。
【図20】図20は、Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で種間三角計測により示差的に発現した遺伝子が、ヒトPCAにおける臨床治療成果とつながりがあることを示す図である。(A)Ptenpc−/−;Smadpc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で示差的に発現した遺伝子(表1B)と、ヒト転移性PCAデータセット19とのオーバーラップに基づいた、56個の遺伝子セットの開発を示す略図。(B)それに続いて、この56個の遺伝子セット(表7)を、前立腺癌遺伝子発現データセット上で、予後を示す有用性について評価した。患者サンプルが、この56個の遺伝子サインによって定義された2つの主要なクラスター(低リスク群および高リスク群)のカテゴリーに分かれた。生化学的再発(BCR)PSAレベル(>0.2ng/ml)のカプラン−マイヤー解析は、この56個の遺伝子のクラスターによって定義された群に基づいた。「高リスク」コホートについては、「低リスク」コホートと比較して、BCR PSA無再発生存の統計学的な有意性(P=0.0018)が見出された。
【図21】図21は、インビトロにおいて浸潤を機能的に誘導または阻害するPCDETERMINANTを同定するアプローチを示す図である。
【図22】図22は、候補遺伝子を機能的に検証するための浸潤アッセイの使用を示す図である。三つ組の、SPP1および/またはGFP対照を過剰発現するPC3細胞を用いた代表的なBoydenチャンバー浸潤アッセイ。(A)SPP1を強制発現させることよって、ヒトPCA PC3細胞の浸潤活性を有意に増強するその能力が、浸潤アッセイにより確認された。(B)棒グラフは、強制されたSPP1とGFP対照との間の統計学的有意性を示す(P<0.05)。(C)この表によって、細胞の動きに関与するとしてアノテートされている浸潤促進性の遺伝子、それらばかりでなく、動きに関与するとは分類されないが、インビトロにおいて浸潤性かつ転移性の特性を誘導する遺伝子も、このアッセイが同定することが確認されている。細胞の動きをアノテートされている遺伝子以外の遺伝子と比較して、有意に高い頻度(P=0.02、フィッシャーの直接確率検定)の、浸潤が検証されたPCDETERMINANTが、細胞の動きの遺伝子としてアノテートされている。
【図23】図23は、Pten/Smad4トランスクリプトームデータから得られた情報である4(4)個のPCDETERMINANT遺伝子サインPTEN−SMAD4−Cyclin D1−SPP1、組織病理学的データ、および浸潤検証データが、ヒトPCAにおける臨床治療成果とつながりがあることを示す図である。(A)前立腺癌遺伝子発現データセット上では、PtenおよびSmad4の発現の調節不全が、関連のCyclin D1(増殖/老化)およびSPP1(運動性ネットワーク)と一緒になって生じ、それに続いて、ヒト前立腺癌の進行と相関することが示された。患者サンプルが、K平均法により、PTEN、SMAD4、Cyclin D1およびSPP1のサインによって定義された2つの主要なクラスターのカテゴリー(高リスク群および低リスク群)に分かれた。高リスク群の患者は、カプラン−マイヤー解析により、生化学的再発(BCR)PSAレベル(>0.2ng/ml)の統計学的有意性を示した。(B)PCAの進行における、PTEN、SMAD4、Cyclin D1およびSPP1のサインの有意な相関性を、独立したPhysicians’ Health Study(PHS)データセットにおいてc−statisticを用いて検証した。PTEN、SMAD4、Cyclin D1およびSPP1は、致命的な治療成果の予測においては、グリーソンスコアと類似する検出力を示している。PHSにおいては、PTEN遺伝子、SMAD4遺伝子、Cyclin D1遺伝子およびSPP1遺伝子を、グリーソンに加えることによって、グリーソン単独のモデルよりも、致命的な治療成果の予測が有意に改善されている。さらに、PTEN、SMAD4、Cyclin D1およびSPP1の4個の遺伝子のセットが、Broad InstituteのMolecular Signature Database(MSigDB、2.5版)において管理された244個の二方向性サインのうち、最も強化されているとランク付けられ、このことからも、致命的な治療成果の予測における、この4個の遺伝子サインのロバストな有意性が示された。
【図24】図24は、Ptenpc−/−;Smad4pc−/−二重突然変異体とPtenpc−/−マウスとの間で種間三角計測により示差的に発現した遺伝子が、ヒト乳癌における臨床治療成果とつながりがあることを示す図である。(A)56個の遺伝子のセット(表7)を、続いて、乳房腺癌データセット上で予後を示す有用性について評価した。患者サンプルが、この56個の遺伝子サインによって定義された2つの主要なクラスター(低リスク群および高リスク群)のカテゴリーに分かれた。カプラン−マイヤー解析を、この56個の遺伝子のクラスターによって定義された群に基づいて、生存確率(p=0.00358)(A)および無転移生存(p=00492)について実施した(B)。
【図25】図25は、前立腺の進行および乳癌の進行の両方に相関するPCDETERMINANTが、ヒト乳癌における臨床治療成果と強いつながりがあることを示す図である。(A)前立腺癌および乳癌の両方において進行相関性発現を示す20個のPCDETERMINANT(表6)を、乳房腺癌データセット上で、予後を示す有用性について評価した。患者サンプルが、この20個の進行相関性遺伝子サインによって定義された2つの主要なクラスター(低リスク群および高リスク群)のカテゴリーに分かれた。カプラン−マイヤー解析を、これら20個のPCDETERMINANTによって定義された群に基づいて、生存確率(p=2.93e−11)(A)および無転移生存(p=4.62e−10)(B)について実施した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、転移性前立腺癌を有し、または転移性前立腺癌を発症するリスクのある対象に関連した徴候、およびそのような対象をもたらすPCDETERMINANTの同定に関する。本発明はさらに、浸潤性かつ転移性の前立腺癌のマウスモデルも提供し、このマウスの前立腺上皮は、Pten遺伝子およびSmad4遺伝子等の開始病変の欠失または突然変異性もしくはエピジェネティックな消去のその他の手段を維持する。当業者であれば、癌遺伝子の導入遺伝子の過剰発現を含めて、その他の開始病変が、Smad4の欠失に連動して、悪性の進行を可能にする場合があるであろうことを認識するであろう。このマウスモデルを使用して、癌検出生物マーカーを同定することができる。
【0026】
ヒト癌には、数え切れない遺伝子的およびエピジェネティックな変化が生じており、悪性プロセスを引き起こし、所与の腫瘍の臨床挙動を決定付ける変化を解読するのは大変な課題である。多くの癌型にわたり、特に、前立腺癌について、腫瘍が悪性となる可能性を反映する正確な予測生物マーカーが必要であることは明らかである。前立腺癌の場合、現在の管理アルゴリズムでは、治療が不十分であり死亡のリスクが生じる場合、または不必要な、死を招く恐れのある治療に曝される場合のいずれかに至る。
【0027】
遺伝子工学的に作製されたマウスモデルが、ヒトの非常に複雑なゲノムデータセットを探るための「フィルター」として極めて強力であることが示されている。特に、ヒト癌のこれらの洗練された遺伝子工学的に作製されたマウスモデルは、高解像度の比較癌ゲノミクス解析においては、癌に関連する転写および染色体DNAの異常パターンの相当なオーバーラップを示すことが記載されている。染色体DNA異常パターンからは、多くの新規の癌遺伝子の迅速かつ効率的な同定に至っている。また、血清プロテオームの類似の種間比較も、ヒトにおいて膵臓癌の早期検出生物マーカーを同定するのに有効であることが証明されている。したがって、本物のヒト前立腺癌遺伝子によって誘導される転移の疾患状況を再現する妥当なマウスモデルの開発が、予後を示す生物マーカーおよび早期検出の生物マーカーならびに予想される治療標的を開発するための我々の努力を大いに促進することは理にかなっている。
【0028】
緩徐進行型Pten欠損前立腺PIN病変の網羅的トランスクリプトーム解析から、PINを越える進行を遮断する、Pten不活性化の状況においては、老化応答を引き起こすSmad4依存性のチックポイントの存在が暗示された。実際に、Ptenの欠失と一緒に、マウス前立腺上皮中のSmad4も同時に欠失させると、潜伏期間の短い劇症性の転移性前立腺のモデルが生じ、この仮説の明確な遺伝子的証拠を得た。これが、本物の前立腺腫瘍抑制因子によって誘導される転移性前立腺癌のマウスモデルであることは、ヒトにおいてPCAが原発性から転移性に進行する間はSmad4が一貫して下方制御されることが実証されたことによって支持されている。このモデルの妥当性は、2つの種にわたり保存されている、予測されたSmad4の直接標的17個によって、ヒトの前立腺および乳房の腺癌を、再発または生存によって測定した場合に治療成果の有意な差を示す2つの群に階層化することが可能であることが実証されたことによってもさらに補強された。したがって、本発明者らは、転移性PCAの本物の遺伝子工学的に作製されたマウスモデルを確立するに至り、これにより、今後の機構研究ならびに予後を示す生物マーカーおよび早期検出の生物マーカーの探索におけるゲノムおよびプロテオミクスの比較解析が可能となる。
【0029】
Pten機能の喪失が、前立腺の発癌の最も顕著な遺伝子的事象の1つであることが確立されている。Ptenが喪失すると、マウス前立腺において、前立腺の腫瘍形成が生じる。しかしまた、これは、腫瘍細胞が浸潤性の段階に進行するのを遮断する、腫瘍抑制因子のさらなるレベルとして機能することができる細胞の老化も引き起こす。Ptenがp53の不活性化を通して引き起こした老化の無効化は、前立腺腫瘍が緩徐進行型病変から浸潤性腫瘍に進行するのに寄与する。本発明者らはまた、Smad4が喪失すると、Ptenの喪失が惹起した細胞の老化が回避され得ることも発見するに至った。Smad4の喪失による老化の無効化は、Ptenの喪失と協同して働き、腫瘍細胞の促進においてその役割を果たすことができる。また、このことは、p53の喪失による細胞の老化の回避が、Ptenの喪失と協同して働き、前立腺腫瘍が転移性ではないが中程度の浸潤性の病変に進行するのに寄与するという以前の報告にも一致する。したがって、この独特のPten/Smad4モデル系は、今後、この重要な腫瘍の生物学的プロセスについての分子事象をさらに細かく調べるためのツールをもたらす。
【0030】
Pten/Smad4二重突然変異マウスにおいては、老化の回避の結果、前立腺腫瘍細胞が浸潤性かつ転移性の状況に進行したが、Pten/p53不活性化を示すマウスモデルにおいては、老化を回避しても、転移は生じない。マウス前立腺におけるPten単独の不活性化は、Ptenマウスのごく一部(8匹中2匹)では、非常な高齢(1年超)になると何らかの弱い転移の表現型を生じ得る。これらの観察から、Ptenの喪失以外に、追加の遺伝子的またはエピジェネティックな変化が、前立腺腫瘍細胞が転移性の状況を達成するためには必要であることが示されている。細胞の老化の回避は、進行のための必須条件であり得るが、ロバストな転移性の状況を達成するためには、自己貪食の活性解除等のその他の生物学的プロセスが必要である可能性が高い。その他の生物学的プロセスの存在の裏付けとして、我々は、Pten/Smad欠損腫瘍細胞においてSmad4を再構成しても、老化は復元されないが、細胞が非転移性になることを観察した。具体的には、我々は、Smad4の発現を時間依存性および用量依存性に修復する誘導性のSmad4tet−on系を確立した。Smad4の修復によって、腫瘍が、TGFβ処置に応答して、細胞死に対する感受性を増加させることができることが見出された。
【0031】
標準的なTGFβ−Smad経路は、リガンド−受容体の複合体から開始し、核内で終了する。TGFβスーパーファミリーリガンド結合により、受容体−リン酸化(phosporylated)R−Smadが、Smad4とオリゴマーを形成し、核にトランスロケーションし、DNA上のSmad結合エレメントに直接結合し、そこで、これらは、多種多様な遺伝子アレイを誘導または抑制することができる。良性の前立腺上皮においては、TGF−βは、分化を惹起し、増殖を阻害し、アポトーシスを誘導することによって、前立腺中でホメオスタシスを維持するための機構を提供する。したがって、TGFβのこの主要な働きが、前立腺腫瘍の進行抑制において決定的な役割を果たすことが憶測された。TGFβシグナル伝達の腫瘍抑制因子の役割は、TGFβを不活性化する受容体の突然変異の存在、ならびに前立腺癌を含めた、複数の癌におけるSmad2タンパク質、Smad3タンパク質およびSmad4タンパク質の消去によって強調される。TGFβは、多くの正常な細胞型および腫瘍細胞の増殖を阻害することが示されたが、また、TGFβは、増殖、遊走、および進行した細胞癌が浸潤性の高い、未分化かつ転移性の表現型を獲得するプロセスである上皮−間葉系間移行(EMT)を含めて、上皮腫瘍が悪性となる可能性を増強するという報告もあった。より最近になって、乳腺腫瘍の微小環境中のTGFβが、癌細胞を予備刺激して肺へ転移させることができることが実証されている。これは、TGFβが、Smadシグナル伝達経路を介してアンジオポエチン様4(ANGPTL4)を誘導することを通して行われる。腫瘍の抑制および促進のこれらの逆説的な活性はおそらく、所与の細胞中のその他のシグナル伝達経路の活性に依存し、これらの活性は、異なる細胞の状況およびその他の組織との相互作用によって決定付けられる。今では、Pten/Smad4モデルから、少なくともPten欠損のバックグラウンド上では、Smad4の喪失は、単独では前立腺病変の発生を開始するには十分ではないが、前立腺腫瘍の加速および完全な浸透を伴う転移への進行を促すことを明らかに示すことによって、前立腺癌におけるTGFβ経路の役割が明確になっている(図3)。Pten/Smad4モデル研究から、Smad4の喪失が、Ptenの喪失によって引き起こされた老化を無効にすることができることが明らかに実証された。Pten欠損のバックグラウンドにおけるp53の喪失による老化の無効化からは、緩徐進行型前立腺腫瘍の浸潤性病変への進行が生じるが、転移には至らない。したがって、老化は、緩徐進行型から浸潤性の状況への前立腺腫瘍形成の間の早期の障壁であると見なされている。Smad4を、Pten/Smad4二重突然変異前立腺腫瘍細胞中に戻して修復しても、老化は修復されなかった(未公開のデータ)。しかし、Smad4を修復すると、TGFβ1処置により、細胞の生存率が減少した。したがって、この老化の障壁は、腫瘍の進行を遮断するための、(1つまたは複数の)発癌性シグナルに対する一過性の細胞応答であり得る。
【0032】
さらに、同等の早期のPten欠損前立腺腫瘍およびPten/Smad欠損前立腺腫瘍(各遺伝子型について、n=5)の分子比較トランスクリプトーム解析から、372個の遺伝子の示差的発現が明らかになった。これらのうち、少なくとも66個の遺伝子が、それらのプロモーター中にSmad結合エレメントを含有する。我々は、比較癌ゲノミクスを通して、多くの腫瘍の型にわたり疾患の進行に影響する遺伝子PCDETERMINANTを発見するにあたり、ヒト転移性前立腺腫瘍のコピー数のプロファイルを用いた種間統合を通して、ヒト前立腺癌の場合の再発のリスクならびに乳癌の場合の転移のリスクおよび生存と強力に関連性がある、これらのSmad4標的のうちの17個を同定し、これによって、この新規の転移性前立腺モデルのヒトとの関連性およびその使用を支持する。
【0033】
したがって、本発明は、転移性前立腺癌の動物モデルを提供する。したがって、本発明の動物モデルは、正常集団および疾患に罹患している患者集団の両方に関与する種々の遺伝子の機構を解明するためのスクリーニングツールとしての特定の有用性を示す。
【0034】
本発明はまた、転移性腫瘍に関連したPCDETERMINANTを検出することによって、転移性前立腺癌をもちまたは転移性前立腺癌を経験するリスクのある、転移性腫瘍に対して無症候性の対象も含めた対象を、同定するための方法も提供する。これらの徴候およびPCDETERMINANTは、癌の治療および療法を受けた対象をモニタし、癌を有する対象で有効となり得る療法および治療を選択しもしくは修正するのにも有用であり、そのような治療および療法の選択および使用は、腫瘍の進行を遅くし、またはその発症を実質的に遅延させもしくは予防し、または腫瘍転移の発生を低下させもしくは予防するものである。
【0035】
(定義)
「精度」は、測定されまたは計算された量(試験で報告された値)と、その実際の(または真の)値との適合性の程度を指す。臨床精度は、真の結果(真陽性(TP)または真陰性(TN))対誤判別された結果(偽陽性(FP)または偽陰性(FN))の割合に関係し、感受性、特異性、陽性的中率(PPV)、もしくは陰性的中率(NPV)、またはその他の尺度の中でも可能性、オッズ比と言える。
【0036】
本発明の文脈における「PCDETERMINANT」は、限定するものではないが、タンパク質、核酸、および代謝産物を、これらの多型、変異、変種、修飾、サブ単位、断片、タンパク質−リガンド複合体、および分解生成物、タンパク質−リガンド複合体、元素、関連する代謝産物、およびその他の分析物またはサンプル由来の尺度と共に包含する。PCDETERMINANTは、変異タンパク質または変異核酸を含むこともできる。PCDETERMINANTは、非血液感染性因子または健康状態の非分析的生理学的マーカー、例えば本明細書で定義された「臨床パラメータ」、ならびに本明細書でも定義される「伝統的な実験室でのリスク因子」も包含する。PCDETERMINANTは、数学的に生成された任意の計算された指標、または、時間的傾向および差を含む前述の測定のいずれか1つもしくは複数の組合せも含む。利用可能な場合には、および本明細書で他に記述されない場合、遺伝子産物であるPCDETERMINANTは、公文書での略称、またはthe international Human Genome Organization Naming Committee (HGNC)によって割り当てられかつthe US National Center for Biotechnology Information (NCBI)ウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=gene)にこの出願日に列挙された遺伝子記号をベースにして同定され、Entrez Geneとしても公知である。
【0037】
「(1個または複数の)PCDETERMINANT」は、そのレベルが転移性前立腺癌を有しまたは転移性前立腺癌を発症し易くなりまたは転移性前立腺癌のリスクのある対象において変化する、全ての核酸またはポリペプチドの1種または複数を包含する。個々のPCDETERMINANTを表1Bにまとめ、これらをまとめて本明細書では、とりわけ「転移性腫瘍関連タンパク質」、「PCDETERMINANTポリペプチド」、または「PCDETERMINANTタンパク質」と呼ぶ。ポリペプチドをコードする、対応する核酸を、「転移性腫瘍関連核酸」、「転移性腫瘍関連遺伝子」、「PCDETERMINANT核酸」、または「PCDETERMINANT遺伝子」と呼ぶ。他に指示しない限り、「PCDETERMINANT」、「転移性腫瘍関連タンパク質」、「転移性腫瘍関連核酸」は、本明細書に開示される配列のいずれかを指すことを意味する。PCDETERMINANTタンパク質または核酸の、対応する代謝産物も、前述の伝統的なリスクマーカー代謝産物と同様に測定することができる。
【0038】
健康状態(例えば、年齢、家族歴、および伝統的なリスク因子として一般に使用されるその他の測定値)の生理学的マーカーを、「PCDETERMINANT生理機能」と呼ぶ。PCDETERMINANTの前述の種類の1つまたは複数、好ましくは2つ以上を数学的に組み合わせた測定値から得た計算された指標を、「PCDETERMINANT指標」と呼ぶ。
【0039】
「臨床パラメータ」は、限定するものではないが、年齢(Age)、人種(RACE)、性別(Sex)、または家族歴(FamHX)など、対象の健康状態またはその他の特徴の全ての非サンプルまたは非分析物生物マーカーを包含する。
【0040】
「循環内皮細胞」(「CEC」)は、炎症を含めたある状況で、血流に剥落する血管内壁からの内皮細胞であり、癌の病因に関連した新しい脈管構造の形成に寄与する。CECは、腫瘍進行および/または抗血管新生療法に対する応答のマーカーとして役立てることができる。
【0041】
「循環腫瘍細胞」(「CTC」)は、原発性腫瘍から転移に剥落する上皮由来の腫瘍細胞であり、循環内に進入する。末梢血中の循環腫瘍細胞の数は、転移性癌を有する患者の予後に関連する。上皮細胞を検出する免疫学的方法を使用して、これらの細胞を分離および定量化することができ、qRT−PCR、免疫蛍光法またはその他のアプローチによって、PCDETERMINANTのそれらの発現を定量化することができる。
【0042】
「FN」は、偽陽性であり、疾患状態の試験では、疾患対象を誤って非疾患または正常であると分類することを意味する。
【0043】
「FP」は、偽陽性であり、疾患状態の試験では、正常な対象を誤って疾患を有すると分類することを意味する。
【0044】
「式」、「アルゴリズム」、または「モデル」は、任意の数学的方程式、アルゴリズム的、分析的、もしくはプログラムされたプロセス、または1つもしくは複数の連続したもしくはカテゴリー的入力(本明細書では、「パラメータ」と呼ぶ。)を得、かつ出力値を計算する統計的技法であり、時々「指標」または「指標値」と呼ばれる。「式」の非限定的な例には、合計、比、および回帰演算子が含まれ、例えば、係数または指数、生物マーカー値の変換および正規化(限定するものではないが、性別、年齢、または人種などの臨床パラメータをベースにした正規化スキームを含む。)、規則および指針、統計的分類モデル、および歴史的集団で訓練された神経回路網がある。PCDETERMINANTおよびその他のPCDETERMINANTを組み合わせる際に特に使用されるものは、対象サンプルで検出されたPCDETERMINANTのレベルと転移性疾患の対象のリスクとの関係を決定するための、1次および非1次方程式と統計的分類分析である。パネルおよび組合せ構成において、特に興味深いものは、構造的および共同統計分類アルゴリズムであり、リスク指標構成の方法であり、とりわけ、相互相関、主成分分析(PCA)、因子軸回転、ロジスティック回帰(LogReg)、線形判別分析(LDA)、Eigengene線形判別分析(ELDA)、サポートベクターマシン(SVM)、ランダム予報(RF)、帰納的分配木(RPART)、ならびにその他の関連ある決定木分類技法、収縮重心(SC)、StepAIC、Kth最短隣接、ブースティング、判別木、神経回路網、Bayescianネットワーク、サポートベクターマシン、および隠れマルコフモデルなどの確立された技法を含む、パターン認識フィーチャーを利用するものである。その他の技法は、当業者に周知のCox、Weibull、Kaplan−Meier、およびGreenwoodモデルも含めた、生存および時間事象ハザード分析で使用することができる。これら技法の多くは、順方向選択、逆方向選択、または段階的選択などのPCDETERMINANT選択技法、所与のサイズの遺伝的アルゴリズムの全ての可能性あるパネルの全数調査と組み合わせて有用であり、またはこれら技法そのものは、それ自体の技法において生物マーカー選択法を含んでいてもよい。これらは、追加の生物マーカーとモデル改良とのトレードオフを定量するために、かつ過剰適合を最小限に抑えるのを助けるために、Akaike情報基準(AIC)またはBayes情報基準(BIC)と結合してもよい。得られる予測モデルは、ブートストラップ、リーブワンアウト(LOO)、および10倍クロス確認(10倍CV)などの技法を使用して、その他の研究で確認することができまたは当初慣れていた研究でクロス確認することができる。様々なステップで、誤検出率(false discovery rate)は、当技術分野で公知の技法により、値の順列によって推定することができる。「医療経済効用関数」は、ケア基準に診断または治療の介入を導入する前後で理想化された適用可能な患者集団での臨床結果範囲の予測された確率の組合せから得られた式である。これは、そのような介入の精度、有効性、および性能特性の推測値と、各結果に関連した費用および/または値の測定(有用性)であって、ケアの実際の医療制度コスト(サービス、サプライ、装置、および薬物など)から得ることができ、かつ/または各結果をもたらす生活の質で調整した年数(QALY)当たりの推定許容値として包含する。全ての予測された結果全体を通して、ある結果に関して予測される集団サイズとそれぞれの結果の期待効用との積の合計は、ケアの所与の基準の全医療経済効用である。(i)介入のあるケア基準に関して計算された全医療経済効用と、(ii)介入のないケア基準に関する全医療経済効用との差は、医療経済コストまたは介入の値の全体的な尺度をもたらす。これは、それ自体が分析される全患者群の中で(または介入群の中でのみ)分割されて、単位介入当たりのコストに到達し、市場ポジショニング、価格決定、および医療制度の受入れの前提事項として、そのような決定を案内する。そのような医療経済効用関数は、介入の費用効果を比較するのに一般に使用されるが、保険制度が支払いをしようとするQALY当たりの許容される値、または、新しい介入に必要な許容される費用効果のある臨床性能特性を推定するのに変換してもよい。
【0045】
本発明の診断(または予後)介入では、各結果(疾患分類診断試験では、TP、FP、TN、またはFNであってもよい。)が異なるコストを有するので、医療経済効用関数は、特異性よりも感受性を、またはNPVよりもPPVを、臨床状況および個々の結果のコストおよび値に基づいて優先的に支持してもよく、したがって、より直接的な臨床または分析性能尺度とは異なる可能性のある医療経済性能および値の別の尺度をもたらす。これらの異なる測定および相対的なトレードオフは、一般に、全ての性能尺度が不完全を好むことになるが異なる程度まで、エラー率0の完全試験(0予測対象結果誤判別またはFPおよびFNとも呼ばれる。)の場合でのみ集中することになる。
【0046】
「測定する」または「測定」、あるいは「検出する」または「検出」は、そのような物質の定性的または定量的な濃度レベルの誘導を含めた、臨床または対象由来サンプル中の、所与の物質の存在、不存在、定量、または量(有効量にすることができる。)を評価すること、または、対象の非分析物臨床パラメータの値もしくは分類を別の方法で評価することを意味する。
【0047】
「陰性予測値」または「NPV」は、TN/(TN+FN)または全ての陰性試験結果の真陰性率によって計算される。これは、試験をしようとする集団の、疾患の有病率および試験前確率によっても本質的に影響を受ける。
【0048】
例えば、臨床診断試験などの試験の特異性、感受性と、陽性および陰性予測値について論じている、O’Marcaigh AS、Jacobson RM、「Estimating The Predictive Value Of A Diagnostic Test, How To Prevent Misleading Or Confusing Results」、Clin.Ped.1993年、32(8巻):485〜491頁を参照されたい。しばしば、連続診断試験測定を使用する2元疾患状態分類アプローチでは、感受性および特異性は、Pepeら、「Limitations of the Odds Ratio in Gauging the Performance of a Diagnostic, Prognostic, or Screening Marker」、Am.J.Epidemiol、2004年、159(9巻):882〜890頁による受信者動作特性(ROC)曲線によってまとめられ、また、曲線下面積(AUC)またはc統計、すなわち、単一の値でのみ試験(またはアッセイ)カットポイントの全範囲にわたって試験、アッセイ、または方法の感受性および特異性の表示を可能にする指標によってまとめられる。例えば、Shultz、「Clinical Interpretation Of Laboratory Procedures」、14章、Teitz、Fundamentals of Clinical Chemistry、BurtisおよびAshwood(編)、4版、1996年、W.B.Saunders Company、192〜199頁;およびZweigら、「ROC Curve Analysis: An Example Showing The Relationships Among Serum Lipid And Apolipoprotein Concentrations In Identifying Subjects With Coronory Artery Disease」、Clin.Chem.、1992年、38(8巻):1425〜1428頁も参照されたい。尤度関数、オッズ比、情報理論、予測値、較正(適合度を含む。)、および再分類測定を使用する代替の手法は、Cook、「Use and Misuse of the Receiver Operating Characteristic Curve in Risk Prediction」、Circulation、2007年、115巻:928〜935頁に要約されている。
【0049】
最後に、試験によって定義された対象コホートでのハザード率と絶対および相対リスク率は、臨床精度および有効性のさらなる測定値である。基準限界、識別限界、およびリスク閾値を含めた異常なまたは疾患値を定義するのに、多数の方法が頻繁に使用されている。
【0050】
「分析精度」は、測定プロセスそのものの再現性および予測可能性を指し、変動係数などの測定値と、異なる時間、使用者、装置、および/または試薬を用いた同じサンプルまたは対照の一致および較正の試験にまとめることができる。新しい生物マーカーを評価する際のこれらおよびその他の課題は、Vasan、2006年にもまとめられている。
【0051】
「性能」は、とりわけ臨床および分析精度、使用特性(例えば、安定性、使い易さ)、医療経済値、および試験の成分の相対コストなどのその他の分析およびプロセス特性も含めた、診断または予後試験の全体的な有用性および質に関する用語である。これら因子のいずれかは、優れた性能の源であってよく、したがって試験に役立てることができ、関連あるものとしてAUCや結果までの時間、寿命などの、適切な「性能マトリックス」によって測定してもよい。
【0052】
「陽性予測値」または「PPV」は、TP/(TP+FP)または全ての陽性試験結果の真陽性率によって計算される。これは疾患の有病率および試験がなされる集団の試験前確率の影響を本質的に受ける。
【0053】
本発明の文脈における「リスク」は、転移性事象への変換のように、ある事象が特定の期間にわたって生じる確率に関し、対照の「絶対」リスクまたは「相対」リスクを意味することができる。絶対リスクは、関連ある時間コホートに関する測定後の実際の観察を参照しながら、または関連ある期間に関して追跡された統計的に有効な歴史コホートから明らかにされた指標値を参照しながら、測定することができる。相対リスクは、低リスクコホートの絶対リスクまたは平均集団リスクと比較した対象の絶対リスクの比を指し、これは臨床リスク因子がどのように評価されるかによって変動する可能性がある。オッズ比、すなわち所与の試験結果に関する陽性事象と陰性事象との割合も、非変換に一般に使用される(オッズは、式p/(1−p)に従い、但しpは事象の確率であり、(1−p)は非事象の確率である。)。
【0054】
本発明の文脈における「リスク評価」または「リスクの評価」は、事象または疾患状態が生じる可能性がある確率、オッズ、または尤度、事象または1つの疾患状態から別の状態への変換、すなわち原発性腫瘍から転移性前立腺癌または転移を発症するリスクへの変換、または1次的な転移性事象のリスクから2次的な転移性事象への変換の発生率を予測することを包含する。リスク評価は、予め測定した集団に対する絶対的なまたは相対的な意味で、将来の臨床パラメータ、伝統的な実験室リスク因子の値、またはその他の癌の指標の予測を含むこともできる。本発明の方法は、転移性前立腺癌のリスクの連続的またはカテゴリー的測定を行うのに、したがって転移性腫瘍のリスクがあると定義された対象のカテゴリーのリスクスペクトルを診断し定義するのに使用してもよい。カテゴリー的シナリオでは、本発明は、正常なおよび転移性腫瘍のより高いリスクにあるその他の対象コホートを区別するのに使用することができる。そのような異なる使用は、異なるPCDETERMINANTの組合せおよび個別的なパネル、数学的アルゴリズム、および/またはカットオフポイントを必要とする可能性があるが、それぞれの意図される用途には精度および性能に関して同じである前述の測定にかけてもよい。
【0055】
本発明の文脈における「サンプル」は、対象から単離された生体サンプルであり、例としてかつ限定することなく、組織生検標本、全血、血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、循環腫瘍細胞、リンパ液、腹水、間質液(「細胞外液」とも呼ばれ、細胞間の空間に見出される流体を包含し、とりわけ歯肉溝滲出液が含まれる。)、骨髄、脳脊髄液(CSF)、唾液、粘液、痰、汗、尿、または任意のその他の分泌液、排出物、またはその他の体液を含むことができる。
【0056】
「感受性」は、TP/(TP+FN)または疾患対象の真陽性率によって計算される。
【0057】
「特異性」は、TN/(TN+FP)または非疾患もしくは正常な対象の真陰性率によって計算される。
【0058】
「統計的に有意な」とは、変化が、偶然によってのみ生じると予測され得るもの(「偽陽性」の可能性がある。)よりも大きいことを意味する。統計的有意は、当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。一般に使用される有意性の尺度には、少なくとも所与のデータポイントのように極端な結果を得る確率を示すp値が含まれ、このデータポイントは、偶然でのみ得られた結果であると想定される。結果はしばしば、0.05以下のp値で非常に有意であると見なされる。
【0059】
本発明の文脈における「対象」は、好ましくは哺乳類である。哺乳類は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシにすることができるが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳類は、腫瘍転移の動物モデルを代表する対象として、有利に使用することができる。対象は、オスまたはメスにすることができる。対象は、原発性腫瘍または転移性腫瘍を有するものと、また任意選択で腫瘍の治療介入をすでに受けておりまたは受けているものと予め診断されまたは特定されたものにすることができる。あるいは対象は、転移性前立腺癌を有するものと予め診断されていないものにすることもできる。例えば対象は、転移性前立腺癌に関する1つまたは複数のリスク因子を示すものにすることができる。
【0060】
「TN」は真陰性であり、疾患状態の試験において、非疾患または正常な対象を正確に分類することを意味する。
【0061】
「TP」は、真陽性であり、疾患状態の試験において、疾患対象を正確に分類することを意味する。
【0062】
「伝統的な実験室のリスク因子」は、対象サンプルから単離されまたは得られた生物マーカーに対応するもので、臨床実験室で現在評価されておりかつ伝統的なグローバルリスクアセスメントアルゴリズムで使用されている。腫瘍転移についての伝統的な実験室リスク因子として、例えば、グリーソンスコア、浸潤の深さ、血管密度、増殖指数等が挙げられる。腫瘍転移に関するその他の伝統的な実験室のリスク因子は、当業者に公知である。
【0063】
(本発明の方法および使用)
本明細書に開示する方法は、転移性前立腺癌を発症するリスクがある対象、または乳癌を有する対象等のその他の癌の対象に使用し、これらの対象は、転移性前立腺癌もしくはその他の癌型に罹患しているとすでに診断されていても、または診断されていなくてもよく、原発性腫瘍もしくは転移性前立腺癌およびその他の癌型について治療および/もしくは療法をすでに受けていても、または受けていなくてもよい。本発明の方法は、原発性腫瘍または転移性前立腺癌および他の癌型を有する対象の治療レジメンをモニタしまたは選択するのに、および転移のリスク因子を示す対象など、転移性前立腺癌および他の癌型を有すると予め診断されていない対象をスクリーニングするのに使用することもできる。好ましくは、本発明の方法は、転移性前立腺癌および他の癌型に関して無症候性の対象を特定および/または診断するのに使用される。「無症候性」は、伝統的な兆候および症状を示さないことを意味する。
【0064】
本発明の方法は、伝統的なリスク因子のみをベースにして、すでに転移性前立腺癌および他の転移性癌型を発症するリスクがより高い対象を特定および/または診断するのに使用してもよい。
【0065】
転移性前立腺癌および他の転移性癌型を有する対象は、対象由来サンプル中のPCDETERMINANTの有効数(2個以上にすることができる。)の量(存在または不存在を含む。)量を測定し、次いでこの量を基準値と比較することによって、特定することができる。次いでタンパク質、ポリペプチド、核酸、およびポリヌクレオチドと、タンパク質、ポリペプチド、核酸、およびポリヌクレオチドの多型、変異したタンパク質、ポリペプチド、核酸、およびポリヌクレオチドなどの生物マーカーの発現の量およびパターンの変化、または、対象サンプル中の代謝産物もしくは他の分析物の分子量の変化を基準値と比較したものが、特定される。
【0066】
基準値は、同じ癌を有する対象、同じまたは類似する年齢範囲を有する対象、同じまたは類似する人種群の対象、癌の家族歴を有する対象などを含むがこれに限定するものではない集団研究から得られた数または値に対するもの、または、癌の治療を受けている対象の出発サンプルに対するものにすることができる。そのような基準値は、癌転移の数学的アルゴリズムおよび計算された指標から得られた、集団の統計分析および/またはリスク予測データから得ることができる。基準PCDETERMINANT指標は、統計的および構造的分類のアルゴリズムおよびその他の方法を使用して構成し使用することもできる。
【0067】
本発明の一実施形態では、基準値は、転移性腫瘍を発症するリスクがないかまたはそのようなリスクが低い1つまたは複数の対象から得られた対照サンプル中のPCDETERMINANTの量である。本発明の別の実施形態では、基準値は、転移性前立腺癌に関して無症候性のおよび/または伝統的なリスク因子に欠けている、1つまたは複数の対象から得られた対照サンプル中のPCDETERMINANTの量である。別の実施形態では、そのような対象は、診断上関連ある期間に関してモニタされかつ/または定期的に再試験され(「長期的研究」)、そのような試験の後に、転移性前立腺癌が継続して存在しないことを確認する(疾患または事象がない生存)。そのような期間は、基準値を決定するための初期試験データから1年、2年、2から5年、5年、5から10年、10年、または10年以上であってもよい。さらに、適正に保存された歴史的対象サンプル中のPCDETERMINANTの遡及的測定を、これら基準値を確立するのに使用してもよく、したがって必要とされる研究時間が短縮される。
【0068】
基準値は、癌の治療および/または療法の結果として転移性リスク因子の改善を示す対象から得られたPCDETERMINANTの量を含むこともできる。基準値は、公知の浸潤性または非浸潤性技法によって疾患であることが確認された、または転移性腫瘍を発症するリスクが高い、または転移性前立腺癌に罹患している対象から得られたPCDETERMINANTの量を含むこともできる。
【0069】
別の実施形態では、基準値は、指標値または基礎値である。指標値または基礎値は、転移性腫瘍を有していない、または転移に対して無症候性の、1つまたは複数の対象からのPCDETERMINANTの有効量の複合サンプルである。基礎値は、癌の治療または療法の結果として転移性腫瘍リスク因子の改善が示された対象由来のサンプル中に、ある量のPCDETERMINANTを含むこともできる。この実施形態では、対象由来サンプルとの比較を行うために、PCDETERMINANTの量は同様に計算されかつ指標値と比較される。任意選択で、転移性前立腺癌を有しまたは転移性腫瘍を発症するリスクが高いことが明らかにされた対象は、癌の進行を遅らせまたは転移性前立腺癌を発症するリスクを低下もしくは予防する治療レジメンを受けるように選択される。
【0070】
転移性前立腺癌の進行、または癌治療レジメンの有効性は、経時的に対象由来の有効量(2つ以上であってもよい。)のサンプル中のPCDETERMINANTを検出し、検出されたPCDETERMINANTの量を比較することによって、モニタすることができる。例えば、第1のサンプルは、対象が治療を受ける前に得ることができ、1つまたは複数の後続サンプルは、対象の治療後または治療中に採取される。癌は、PCDETERMINANTの量が基準値に対して経時的に変化する場合、進行性(または、あるいは、治療が進行を予防しない。)と見なされ、それに対して癌は、PCDETERMINANTの量が経時的に一定(基準集団に対して、すなわち本明細書で使用される「一定」)である場合には進行性ではない。本発明の文脈で使用される「一定」という用語は、基準値に対する経時的な変化を含むと解釈される。
【0071】
例えば、本発明の方法は、腫瘍の攻撃性を区別しかつ/または腫瘍の病期(例えば、I期、II期、II期、またはIV期)を評価するのに使用することができる。この方法により、患者を、高または低リスク群に階層化し、それに応じて治療することが可能になる。
【0072】
さらに、特定の対象への投与に適した治療または予防薬は、対象から得られたサンプル中に有効量(2個以上でよい。)のPCDETERMINANTを検出し、この対象由来サンプルを、対象由来サンプル中のPCDETERMINANTの量(2個以上でよい。)を決定する試験化合物に曝すことによって、特定することができる。このように、癌を有する対象または転移性腫瘍を発症するリスクがある対象において使用される治療または治療レジメンは、対象から得られたサンプル中のPCDETERMINANTの量に基づいて選択することができ、基準値と比較することができる。2つ以上の治療または治療レジメンに関しては、癌の発症を遅延させまたは進行を遅くするよう対象で使用するにはどの治療または治療レジメンが最も効果的になるかを決定するために、並行して評価することができる。
【0073】
本発明はさらに、対象由来サンプル中のPCDETERMINANTの量(2個以上でよい。)を決定し、基準サンプル中のPCDETERMINANTの量と比較し、対象サンプル中の量の変化を基準サンプルと比較して特定することによって、転移性前立腺癌に関連するマーカー発現の変化をスクリーニングするための方法を提供する。
【0074】
本発明はさらに、PCDETERMINANTの有効量が、腫瘍から得たサンプルにおいて測定して臨床的に有意に変化した場合に、患者が腫瘍を有していると特定し、腫瘍転移を予防または低減する治療レジメンで患者を治療することによって、腫瘍を有する患者を治療する方法を提供する。
【0075】
さらに本発明は、PCDETERMINANTの有効量を測定することにより、患者における転移のリスクを評価することによって、アジュバント治療を必要とする腫瘍患者を選択する方法であって、患者からの腫瘍サンプル中の2個以上のPCDETERMINANTの臨床的に有意な変化は、患者がアジュバント治療を必要としていることを示す方法を提供する。
【0076】
患者から得た腫瘍サンプル中のPCDETERMINANTの有効量に関する情報を得、2個以上のPCDETERMINANTが臨床的に有意に変化する場合に、患者における腫瘍転移を予防または低減する治療レジメンを選択することによる、腫瘍患者の治療決定に関する情報。
【0077】
基準サンプル、例えば対照サンプルが、転移性癌を有していない対照から得たものである場合、または基準サンプルが、転移性前立腺癌への急速な進行の高い尤度を有する者に対する値を反映する場合、試験サンプルおよび基準サンプル中のPCDETERMINANTの量が類似していることは、治療が効果的であることを示す。しかし、試験サンプルおよび基準サンプル中のPCDETERMINANTの量が異なることは、臨床結果または予後がそれほど好ましくないことを示す。
【0078】
「効果的」とは、治療が、PCDETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物の量または活性の減少をもたらすことを意味する。本明細書に開示されるリスク因子の評価は、標準的な臨床プロトコルを使用して実現することができる。有効性は、転移性疾患を診断し、特定し、または治療するための任意の公知の方法に関連して決定することができる。
【0079】
本発明は、転移病変に関連した一般的な生理学的経路を示す1個または複数のPCDETERMINANT、例えば、転移に関連した異なる疾患状態または後遺症を排除しまたはこれらを区別するのに使用することができる1個または複数のPCDETERMINANTを含む、PCDETERMINANTパネルも提供する。単一のPCDETERMINANTは、本発明による前述の特徴のいくつかを有していてもよく、あるいは、本発明の所与の適用例に向けて適切な場合には1個または複数のその他のPCDETERMINANTの代わりに使用してもよい。
【0080】
本発明は、2個以上のPCDETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物を結合させる検出試薬を有するキットも含む。本発明によって、検出試薬、例えば2個以上のPCDETERMINANTタンパク質または核酸をそれぞれ結合することができる抗体および/またはオリゴヌクレオチドのアレイも提供される。一実施形態では、PCDETERMINANTがタンパク質であり、アレイは、PCDETERMINANT発現における統計的に有意な変化を基準値と比較して測定するのに十分な、2個以上のPCDETERMINANT1〜372を結合する抗体を含有する。別の実施形態では、PCDETERMINANTが核酸であり、アレイは、PCDETERMINANT発現における統計的に優位な変化を基準値と比較して測定するのに十分な、有効量のPCDETERMINANT1〜372を結合するオリゴヌクレオチドまたはアプタマーを含有する。
【0081】
別の実施形態では、PCDETERMINANTはタンパク質であり、アレイは、基準値と比較して、PCDETERMINANTの発現の統計学的に有意な変化を測定するのに十分に有効な量の表1〜7のうちのいずれか1つに列挙するPCDETERMINANTに結合する抗体を含有する。別の実施形態では、PCDETERMINANTは核酸であり、アレイは、基準値と比較して、PCDETERMINANTの発現の統計学的に有意な変化を測定するのに十分に有効な量の表1〜7のうちのいずれか1つに列挙するPCDETERMINANTに結合するオリゴヌクレオチドまたはアプタマーを含有する。
【0082】
本発明によれば、転移性腫瘍を発症するリスクがある1つまたは複数の対象を治療するための方法であって、1つまたは複数の対象からのサンプル中に存在するPCDETERMINANTの有効量の変化量の存在を検出し;転移性疾患を発症するリスクが低い1つまたは複数の対象であるいは転移性疾患の伝統的なリスク因子のいずれかを示さない対象で測定された基礎値に、PCDETERMINANTの変化量または活性が戻るまで、1種または複数の癌調節剤で1つまたは複数の対象を治療する方法も提供される。
【0083】
本発明によれば、転移性腫瘍を有する1つまたは複数の対象を治療するための方法であって、1つまたは複数の対象からのサンプル中に存在するPCDETERMINANTの有効量の変化レベルの存在を検出し;転移性腫瘍を発症するリスクが低い1つまたは複数の対象で測定された基礎値に、PCDETERMINANTの変化量または活性が戻るまで、1種または複数の癌調節剤で1つまたは複数の対象を治療することによる方法も提供される。
【0084】
本発明によれば、癌と診断された対象における転移性前立腺癌を発症するリスクの変化を評価するための方法であって、第1の期間で、対象由来の第1のサンプル中のPCDETERMINANTの有効量(2個以上でよい。)を検出し、第2の期間で、対象由来の第2のサンプル中のPCDETERMINANTの有効量を検出し、第1と第2の期間で検出されたPCDETERMINANTの量を比較する方法も提供される。
【0085】
(本発明の診断および予後指標)
本発明によって、癌型のうち、前立腺、乳房等の原発性、局所浸潤性および/または転移性の腫瘍の診断および予後診断が可能になる。転移性前立腺癌を発症するリスクは、試験サンプル(例えば、対象由来サンプル)中のPCDETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、およびその他の分析物の有効量(2個以上でよい。)を測定し、多数の個々のPCDETERMINANTの結果からおよび非分析物臨床パラメータからの情報を単一の測定値または指標へと組み合わせるために数学的アルゴリズムまたは式をしばしば利用して、有効量を基準または指標値と比較することによって、検出することができる。転移性前立腺癌または他の転移性癌型のリスクが高いことが明らかにされた対象は、任意選択で、転移性前立腺癌または他の転移性癌型の発症を予防しまたは遅延させるための予防または治療化合物の投与などの治療レジメンを受けるように選択することができる。
【0086】
PCDETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物の量は、試験サンプル中で測定することができ、基準限界、識別限界、またはカットオフポイントもしくは異常値を定義するリスク画定閾値などの技法を利用して「正常対照レベル」と比較することができる。「正常対照レベル」は、転移性腫瘍に罹患していない対象で典型的に見出される、1個もしくは複数のPCDETERMINANTまたは組み合わせたPCDETERMINANTTの指標のレベルを意味する。そのような正常対照レベルおよびカットオフポイントは、PCDETERMINANTが単独で使用されるのかまたはその他のPCDETERMINANTと組み合わせた方式で1つの指標として使用されるのかに基づいて、変化してもよい。あるいは正常対照レベルは、臨床的に関連ある対象期間を通して転移性腫瘍を発症することのない予め試験された対象からの、PCDETERMINANTパターンのデータベースにすることができる。
【0087】
本発明は、転移性前立腺癌、または他の転移性癌型に変換されるリスクの連続的またはカテゴリー的測定を行うのに使用してもよく、したがって、転移性事象を有するリスクがあると定義された対象のカテゴリーのリスクスペクトルを診断し定義するのに使用してもよい。カテゴリー的シナリオでは、本発明の方法は、正常および疾患対象コホートを区別するのに使用することができる。その他の実施形態では、本発明は、転移性事象を有するリスクにあるものと、転移性事象にさらに急速に進行するもの(あるいは、転移性事象までの推定される対象期間がより短いもの)、よりゆっくり進行するもの(または、転移性事象までの対象期間がより長いもの)、または転移性癌を有するもの、正常なものとが区別されるように使用してもよい。そのような異なる使用は、個々のパネル、数学的アルゴリズム、および/またはカットオフポイントで、異なるPCDETERMINANTの組合せを必要とする可能性があるが、前述の同じ精度測定と、意図される用途に関連したその他の性能マトリックスの下に置いてもよい。
【0088】
転移性事象を有するリスクがある対象を特定することによって、この対象が転移性疾患状態に変換されるのを遅延させ、低減させ、または予防するために、様々な治療介入または治療レジメンを選択し開始することが可能になる。PCDETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物の有効量のレベルは、転移性疾患または転移性事象の治療経過をモニタすることも可能にする。この方法では、生体サンプルを、癌の治療レジメン、例えば薬物治療を受けた対象から得ることができる。必要に応じて、生体サンプルは、治療の前、間、または後の様々な時点で対象から得られる。
【0089】
いくつかのPCDETERMINANTが機能活性を示すことから、その機能を解明することによって、高いPCDETERMINANTを示す対象を、例えば、TGFβシグナル伝達を通して機能する、そのような経路を選択的に標的にする薬剤/薬物を用いて管理することができ、したがって、対象を、TGFβシグナル伝達経路の種々の構成成分の遮断を増強する薬剤を用いて治療することができる。
【0090】
本発明は、患者または対象集団を、任意の数のセッティングでスクリーニングするのに使用することもできる。例えば、健康管理組織、公衆衛生団体、または学校保健プログラムは、上述のような介入が必要なものを特定するために、または疫学的データを収集するために、対象群をスクリーニングすることができる。保険会社(例えば、健康、生命、または障害)は、補償範囲または価格設定を決定する過程で申込者を、または可能性ある介入を目的として既存のクライアントを、スクリーニングしてもよい。そのような集団スクリーニングで収集されたデータは、特に癌または転移性事象のような状態への任意の臨床的進行と関係している場合、例えば健康管理組織、公衆衛生団体、および保険会社の運用において、価値あるものになる。そのようなデータアレイまたは収集は、機械可読媒体に記憶させることができ、改善されたヘルスケアサービス、費用効果のあるヘルスケア、改善された保険運用などを提供するために、任意の数の健康関連データ管理システムで使用することができる。例えば、米国特許出願第2002/0038227号;米国特許出願第2004/0122296号;米国特許出願第2004/0122297号;および米国特許第5,018,067号を参照されたい。そのようなシステムは、以下にさらに詳述するように、内部データストレージから直接、または遠隔にある1つもしくは複数のデータストレージ部位から、データにアクセスすることができる。
【0091】
機械可読記憶媒体は、前記データを使用するための命令によってプログラムされた機械を使用したときに、経時的なまたは薬物療法に応答した転移性疾患リスク因子に関連する対象情報などであるがこれに限定されない様々な目的で使用することが可能な、機械可読データまたはデータアレイでコードされたデータ記憶材料を含むことができる。本発明の生物マーカーの有効量の測定および/またはこれら生物マーカーからのリスクに関して得られる評価は、とりわけプロセッサ、データ記憶システム(揮発性および不揮発性メモリおよび/または記憶素子を含む。)、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置を含む、プログラマブルコンピュータで実行される、コンピュータプログラムで実施することができる。プログラムコードは、上述の機能を実行し出力情報を生成するために、入力データに適用することができる。出力情報は、当技術分野で公知の方法により、1つまたは複数の出力装置に適用することができる。コンピュータは、例えば、従来設計のパーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、またはワークステーションであってもよい。
【0092】
各プログラムは、コンピュータシステムと通信するための高レベル手続き型またはオブジェクト指向プログラミング言語で実行することができる。しかし、プログラムは、必要に応じてアセンブリまたは機械言語で実行することができる。言語は、コンパイラ型またはインタープリタ型言語である。そのようなコンピュータプログラムのそれぞれは、本明細書に記述される手順を実行するために記憶媒体または装置がコンピュータによって読まれるときに、コンピュータを設定し操作するための汎用または専用目的のプログラマブルコンピュータで読取り可能な記憶媒体または装置(例えば、ROMまたは磁気ディスケットまたはこの開示の他の箇所で定義されるようなその他のもの)に記憶することができる。本発明の健康関連データ管理システムは、コンピュータプログラムで構成されたコンピュータ可読記憶媒体として実装されると見なしてもよく、そのように構成されたこの記憶媒体によれば、コンピュータは、本明細書に記述される様々な機能を実効するために特定のおよび所定の手法で操作される。
【0093】
次いでPCDETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物の有効量のレベルを決定し、基準値、例えばその転移状態が知られている対照の対象または集団と、または指標値もしくは基礎値と比較することができる。基準サンプルまたは指標値もしくは基礎値は、治療が行われた1つまたは複数の対象から得てもよくまたは導き出してもよく、または、癌もしくは転移性事象を発症するリスクが低い1つまたは複数の対象から得てもよくまたは導き出してもよく、または、治療を行った結果として改善が見られた対象から得てもよくまたは導き出してもよい。あるいは、基準サンプルまたは指標値もしくは基礎値は、治療が行われていない1つまたは複数の対象から得てもよくまたは導き出してもよい。例えばサンプルは、治療の進行をモニタするために、癌または転移性事象の初期治療と癌または転移性事象の後続の治療を受けた対象から収集してもよい。基準値は、本明細書に開示されるような、集団研究からのリスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から得られた値を含むこともできる。
【0094】
したがって本発明のPCDETERMINANTは、癌をもたずまたは転移性事象を有するリスクがなく、癌または転移性事象を発症することが予測されない対象の、「基準PCDETERMINANTプロファイル」を生成するのに使用することができる。本明細書に開示されたPCDETERMINANTは、癌を有し、または転移性事象を有するリスクがある対象から得られた「対象PCDETERMINANTプロファイル」を生成するのに使用することもできる。対象PCDETERMINANTプロファイルは、癌または転移性事象を発症するリスクがある対象を診断しまたは特定するために、疾患の進行ならびに疾患の進行の速さをモニタするために、また治療法の有効性をモニタするために、基準PCDETERMINANTプロファイルと比較することができる。本発明の基準および対象PCDETERMINANTプロファイルは、とりわけVCRによって読取り可能であるようなアナログテープ、CD−ROM、DVD−ROM、USBフラッシュ媒体などであるがこれらに限定されない機械可読媒体に入れることができる。そのような機械可読媒体は、臨床パラメータおよび伝統的な実験室リスク因子の測定値などであるがこれらに限定されない追加の試験結果を含むこともできる。あるいは、またはさらに、機械可読媒体は、病歴および任意の関連ある家族歴などの対象情報を含むこともできる。機械可読媒体は、本明細書に開示されるようなその他の疾患リスクアルゴリズムおよび計算された指標に関する情報を含有することもできる。
【0095】
対象の遺伝子構造の相違は、それらが様々な薬物代謝する相対的な能力の相違をもたらす可能性があり、癌または転移性事象の症状またはリスク因子を調節することができる。癌を有しまたは癌もしくは転移性事象を発症するリスクがある対象は、年齢、人種、およびその他のパラメータを様々にすることができる。したがって、本明細書に開示されるPCDETERMINANTの使用は、単独での使用および薬物代謝の公知の遺伝的要因と一緒に組み合わせた使用の両方において、選択された対象で試験される推定上の治療または予防薬が対象の癌または転移性事象を治療しまたは予防するのに適したものになる所定レベルの予測可能性を可能にする。
【0096】
特定の対象に適した治療薬または薬物を特定するために、対象からの試験サンプルを治療薬または薬物に曝すこともでき、PCDETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物の1種または複数のレベルを決定することができる。1個または複数のPCDETERMINANTのレベルは、治療または治療薬もしくは薬物への曝露の前および後に対象から得られたサンプルと比較することができ、または、そのような治療もしくは曝露の結果としてリスク因子(例えば、臨床パラメータまたは伝統的な実験室リスク因子)に改善が見られた1つまたは複数の対象から得られたサンプルと比較することができる。
【0097】
対象細胞(すなわち、対象から単離された細胞)は、候補薬剤の存在下でインキュベートすることができ、試験サンプル中のPCDETERMINANT発現のパターンを測定して基準プロファイル、例えば転移性疾患基準発現プロファイルまたは非疾患基準発現プロファイルまたは指標値または基礎値と比較する。試験薬剤は、栄養補助食品を含めた任意の化合物または組成物またはこれらの組合せにすることができる。例えば、試験薬剤は、癌治療レジメンで頻繁に使用され、その薬剤を本明細書に記述する。
【0098】
本発明の前述の方法は、癌であると診断された、および外科的介入を受けた対象の、進行および/または改善を評価またはモニタするのに使用することができる。
【0099】
(本発明の性能および精密測定)
本発明の性能、したがって絶対的および相対的臨床有用性は、上述のように多数の方法で評価してもよい。性能の様々な評価の中で、本発明は、臨床診断および予後に精度をもたらすものである。診断または予後試験、アッセイ、また方法の精度は、これらの試験、アッセイ、または方法によって、癌を有しまたは癌もしくは転移性事象のリスクがある対象を区別できる能力に関係し、対象が、「有意な変化」(例えば、臨床的に有意な「診断的に有意な」)をPCDETERMINANTのレベルに有するか否かに基づく。「有効量」とは、(1個または複数の)PCDETERMINANTに関する所定のカットオフポイント(または閾値)とは異なり、したがって対象が(1個または複数の)PCDETERMINANTが決定群である癌を有しまたは転移性事象を有するリスクがあることを示す「有意な変化」(例えば、PCDETERMINANTの発現または活性レベル)をもたらすためのPCDETERMINANTの適切な数(1個または複数でよい。)の測定値を意味する。正常と異常との間のPCDETERMINANTレベルの相違は、好ましくは統計的に有意である。以下に示すようにかつ本発明を全く限定することなく、統計的有意性の実現、したがって好ましい分析、診断、および臨床精度は、一般に、統計的に有意なPCDETERMINANT指標を実現するための、いくつかのPCDETERMINANTの組合せをパネル内で一緒に使用し数学的アルゴリズムと組み合わせるが、必ずしも必要というわけではない。
【0100】
疾患状態のカテゴリー的診断では、試験(またはアッセイ)のカットポイントまたは閾値を変化させることによって、通常は感受性および特異性を変化させるが、定性的に逆相関にある。したがって、対象の状態を評価するために提案された医学的試験、アッセイ、または方法の精度および有用性の評価の際には、感受性および特異性の両方を常に考慮すべきであり、感受性および特異性はカットポイントの範囲全体にわたって有意に変化し得ることから、感受性および特異性が報告されるカットポイントが何か心に留めておくべきである。全ての潜在的なカットポイント値を包含するAUCなどの統計の使用は、本発明を使用するほとんどのカテゴリー的リスク測定に好ましいが、連続リスク測定の場合、観察された結果またはその他の判断基準に対する適合度および較正の統計が好ましい。
【0101】
所定レベルの予測可能性とは、この方法が、許容可能なレベルの臨床または診断精度を提供することを意味する。そのような統計、すなわち「許容可能な程度の診断精度」の使用は、本明細書では、AUC(試験またはアッセイ用のROC曲線下面積)が少なくとも0.60、望ましくは少なくとも0.65、より望ましくは少なくとも0.70、好ましくは少なくとも0.75、より好ましくは少なくとも0.80、最も好ましくは少なくとも0.85である、試験またはアッセイ(PCDETERMINANTの臨床的に有意な存在を決定するための本発明の試験などであり、それによって、癌の存在および/または転移性事象を有するリスクが示される。)と定義される。
【0102】
「非常に高度な診断精度」とは、AUC(試験またはアッセイ用のROC曲線下面積)が少なくとも0.75、0.80、望ましくは少なくとも0.85、より望ましくは少なくとも0.875、好ましくは少なくとも0.90、より好ましくは少なくとも0.925、最も好ましくは少なくとも0.95である、試験またはアッセイを意味する。
【0103】
あるいは、この方法は、癌、転移性癌、または治療に対する応答の存在または不存在を、少なくとも75%の精度で、より好ましくは80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上の精度で予測する。
【0104】
任意の試験の予測値は、試験の感受性および特異性と、試験がなされる集団の状態の有病率に依存する。ベイズの定理に基づくこの概念によれば、スクリーニングされる状態が個々にまたは集団に存在する可能性が高くなるほど(試験前の確率)、陽性試験の妥当性は高くなり、かつその結果が真陽性である可能性が高くなる。したがって、状態が存在する可能性が低い任意の集団で試験を使用する際の問題は、陽性結果が限られた値を有することである(すなわち、偽陽性になり易い。)。同様に、非常に高いリスクの集団では、陰性試験結果は偽陰性になり易い。
【0105】
その結果、ROCおよびAUCは、低疾患有病率を試験した集団(毎年1%未満の発生率(出現率)を有するもの、または指定された対象期間全体を通して10%未満の累積有病率を有するものと定義される。)での、試験の臨床的有用性に関して、誤った方向に導く可能性がある。あるいは、この開示の中の別の場所で定義された絶対リスクおよび相対リスクを用いて、臨床的有用性の程度を決定することができる。試験がなされる対象の集団は、試験の測定値により4分の1ずつに分類することもでき、その上位4分の1(集団の25%)は、癌または転移性事象を発症する最高相対リスクを有する対象の群を含み、下位4分の1は、癌または転移性事象を発症する最低相対リスクを有する対象の群を含む。一般に、低罹患率集団において上位から下位4分の1までの相対リスクの2.5倍超を有する試験またはアッセイから得られた値は、「高度な診断精度」を有すると見なされ、各4分の1に関して相対リスクの5から7倍を有する値は、「非常に高い程度の診断精度」を有すると見なされる。それにも関わらず、臨床的に有用な各4分の1に関する相対リスクの単に1.2から2.5倍を有する試験またはアッセイから得られた値は、疾患のリスク因子として広く使用され;それらは、将来の転移性事象の予測に関して総コレステロールを有しまた多くの炎症性生物マーカーに関するような場合である。しばしば、そのようなより低い診断精度試験は、前述のグローバルリスク評価指標で行われたように、治療的介入に関して意味のある臨床閾値を得るために追加のパラメータと組み合わせなければならない。
【0106】
医療経済効用関数は、所要の試験の性能および臨床値を測定する、さらに別の手段であり、それぞれの臨床的および経済的値の実際の測定を基にして、潜在的なカテゴリー的試験結果の重み付けからなる。医療経済動向は、医療経済効用関数が特に、試験をした対象の正確な判別の利益と誤判別のコストとに関する経済的値を与えるので、精度に密に関係している。性能測定として、試験の標的価格を超えた、試験当たりの医療経済値(試験コストの前)の増加をもたらす性能レベルを実現する試験を必要とすることは、異常ではない。
【0107】
一般に、診断精度を決定する代替方法は、疾患カテゴリーまたはリスクカテゴリー(転移性事象を有するリスクにあるものなど)が、治療用途での閾値がまだ確立されておらずまたは病気に罹る前の診断に関する判断基準が存在していないような、関連ある医師会および医療活動によってまだ明確に定義されていない場合に、連続測定で一般に使用される。リスクの連続測定では、計算された指標に関する診断精度の測定は、典型的には予測連続値および実測値(または歴史的指標計算値)との間の曲線の当て嵌めと較正とを基にし、R平方、Hosmer−LemeshowのP値統計、および信頼区間などの測定値を利用する。そのようなアルゴリズムを使用する予測値を、Genomic Health,Inc.(Redwood City、California)により商用化された将来の乳癌再発リスクに関する試験の場合のように、歴史的観察コホート予測を基にした信頼区間(通常は90%または95%CI)を含めて報告することは、異常ではない。
【0108】
一般に、診断精度の程度、すなわちROC曲線のカットポイントを定義し、許容可能なAUC値を定義し、本発明のPCDETERMINANTの有効量を構成するものの相対濃度の許容可能な範囲を決定することによって、当業者は、所定レベルの予測可能性および性能を有する対象を特定し、診断し、見通しを立てるために、PCDETERMINANTを使用することが可能になる。
【0109】
(本発明のリスクマーカー(PCDETERMINANT))
本発明の生物マーカーおよび方法によれば、当業者は、癌または転移性事象のいかなる症状も示さないにも関わらず癌または転移性事象を発症するリスクがあり得る対象を、特定し、診断し、またはその他の手法で評価することが可能になる。
【0110】
我々は、浸潤性かつ転移性の前立腺癌のマウスモデルを提供し、このマウス前立腺上皮は、Pten遺伝子およびSmad4遺伝子の欠失を維持する。表1Aは、284(284)個の過剰発現した/増幅している遺伝子または下方制御された/欠失している遺伝子を含む。表1Bは、372(372)個の過剰発現した/増幅している表現型または下方制御された/欠失している表現型に相関する、本発明のヒト相同体PCDETERMINANTを含む。
【0111】
【表1A−1】

【0112】
【表1A−2】

【0113】
【表1A−3】

【0114】
【表1A−4】

【0115】
【表1A−5】

【0116】
【表1A−6】

【0117】
【表1A−7】

【0118】
【表1A−8】

【0119】
【表1A−9】

【0120】
【表1B−1】

【0121】
【表1B−2】

【0122】
【表1B−3】

【0123】
【表1B−4】

【0124】
【表1B−5】

【0125】
【表1B−6】

【0126】
【表1B−7】

【0127】
【表1B−8】

【0128】
【表1B−9】

【0129】
【表1B−10】

当業者なら、本明細書に示されるPCDETERMINANTは、多型、イソフォーム、変異体、誘導体、核酸および前駆タンパク質を含む前駆体、切断産物、受容体(可溶性および膜貫通受容体を含む。)、リガンド、タンパク質−リガンド複合体、および翻訳後修飾変種(架橋またはグリコシル化など)、断片、および分解産物、ならびに任意の多単位核酸、タンパク質、および糖タンパク質構造であって、完全に組み立てられた構造の構成サブ単位としてPCDETERMINANTのいずれかを含んだものを含むが、これらに限定されない全ての形および変種を包含することを理解するであろう。
【0130】
当業者なら、上記列挙されたPCDETERMINANTは、転移性疾患に関連するとは一般に認められない多くを含めた生理学的および生物学的経路の多様な集合から得られることに、留意するであろう。種々のPCDETERMINANTのこれらのグループ分けは、高い有意性のセグメント内にあっても、疾患の進行の病期または速度の種々のシグナルを前もって知らせることができる。PCDETERMINANTのそのような明らかなグループ分けによって、PCDETERMINANTからのより生物学的に詳細なかつ臨床的に有用なシグナルが可能になり、それと共に、多数のPCDETERMINANTシグナルと組み合わせたPCDETERMINANTアルゴリズム内でのパターン認識の機会も可能になる。
【0131】
本発明は、一態様では、PCDETERMINANTの部分集合に関し;その他のPCDETERMINANTおよび上記表1に列挙されておらずこれら生理学的および生物学的経路に関連している生物マーカーも、シグナルおよび情報がこれらの研究から得られたものであることを考えれば有用であると証明することができる。その他の生物マーカー経路関与因子(すなわち、上記表1のPCDETERMINANTのリストに含まれた生物マーカーを有する共通経路におけるその他の生物マーカー関与因子)が癌または転移性事象における関連ある経路関与因子でもあるような程度まで、これらの因子は、表1でこれまで開示されてきたように、生物マーカーと機能的に均等であってもよい。これらのその他の経路関与因子は、本発明の文脈においてPCDETERMINANTとも見なされ、但しこれらの因子は、良好なバイオマーカーのある定義された特徴をさらに共有し、本明細書に開示された生物学的プロセスおよび有用なシグナル対雑音比での前記生物マーカーのバイオアベイラビリティなどの分析的に重要な特徴と、血清または腫瘍生検標本などの有用でアクセス可能なサンプルマトリックスとの両方への関与を含む可能性がある。そのような要件は、典型的には、生物学的経路の多くのメンバーの診断有用性を限定し、分泌物質を構成する経路メンバーでのみ頻繁に生ずるが、これらは、癌または転移性事象の疾患進行に関連してもしなくても、アポトーシスまたは内皮リモデリングもしくはその他の細胞代謝回転もしくは細胞壊死性経過などのその他の理由により、細胞の原形質膜でアクセス可能なものならびに細胞死により血清中に放出されるものである。しかし、PCDETERMINANTに関するこの高い基準を満たす、残されたおよび将来の生物マーカーは、非常に価値あるものとなるようである。
【0132】
さらに、その他の列挙されていない生物マーカーは、表1のPCDETERMINANTとして列挙された生物マーカーに、非常に高度に相関することになる(本出願の目的では、任意の2個の変数は、0.5以上の決定係数(R)を有する場合、「非常に高度に相関した」と見なされることになる。)。本発明は、前述のPCDETERMINANTに対するそのような機能的および統計的均等物を包含する。さらに、そのような追加のPCDETERMINANTの統計的有用性は、多数の生物マーカーと任意の新しい生物マーカーとの間の相互相関に実質的に依存し、しばしば、基礎をなす生物学の意味を詳述するためにパネル内での操作を必要とすることになる。
【0133】
列挙されたPCDETERMINANTの1個または複数、好ましくは2個以上は、本発明の実施に際して検出することができる。例えば、2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、40個、50個、75個、100個、125個、150個、175個、200個、210個、220個、230個、240個、250個、260個以上、270個以上、280個以上、290個以上、300個以上、310個以上、320個以上、330個以上、340個以上、350個以上、360個以上、370個以上のPCDETERMINANTを検出することができる。
【0134】
いくつかの態様では、本明細書に記述される372個の全てのPCDETERMINANTを検出することができる。PCDETERMINANTの数を検出することができる好ましい範囲は、1から372個、特に2、4、5、10、20、50、75、100、125、150、175、200、210、220、230、240、250個の間から選択された任意の最小値であって、公知の全PCDETERMINANT、特に4、5、10、20、50、および75個までの任意の最大値と組み合わせたものによって結び付けられた範囲を含む。特に好ましい範囲には、2〜5個、2〜10個、2〜50個、2〜75個、2〜100個、5〜10個、5〜20個、5〜50個、5〜75個、5〜100個、10〜20個、10〜50個、10〜75個、10〜100個、20〜50個、20〜75個、20〜100個、50〜75個、50〜100個、100〜125個、125〜150個、150〜175個、175〜200個、200〜210個、210〜220個、220〜230個、230〜240個、240個〜250個、250〜260個が含まれる。
【0135】
(PCDETERMINANTパネルの構造)
PCDETERMINANTのグループ化は、「パネル」に含めることができる。本発明の文脈における「パネル」は、複数のPCDETERMINANTを含む生物マーカーの群(これらがPCDETERMINANT、臨床パラメータ、または伝統的な実験室リスク因子であるか否かに関わらず)を意味する。パネルは、追加の生物マーカー、例えば臨床パラメータ、伝統的な実験室リスク因子であって、癌または癌転移と共に存在しまたはこれらに関連することが公知であるものを、表1に列挙されたPCDETERMINANTの選択された群と組み合わせて含むこともできる。
【0136】
上述のように、列挙された個々のPCDETERMINANT、臨床パラメータ、および伝統的な実験室リスク因子の多くは、単独で使用しかつPCDETERMINANTの多数の生物マーカーパネルのメンバーとしてではない状態で使用する場合、個々の正常な対象、転移性事象を有するリスクにある対象、および癌を有する対象を、選択された一般集団において互いに信頼性をもって区別する際に、ほとんどまたは全く臨床的な用途がなく、したがって、これら3つの状態の間で任意の対象を分類するのに、単独で信頼性をもって使用することができない。これら集団のそれぞれにおいて、十分に行われた研究で一般に生じるように、それらの平均測定値に統計的に有意な差がある場合であっても、そのような生物マーカーは、個々の対象に対するそれらの適用可能性を制約し続ける可能性があり、その対象に関する診断または予後予測にほとんど寄与しない。統計的有意性の一般的尺度は、観察が偶然によってのみ引き起こされた可能性を示すp値であり;好ましくは、そのようなp値は0.05以下であり、問題の観察が偶然によって生じた機会が5%以下であることを表す。そのようなp値は、行われた研究のパワーに著しく依存する。
【0137】
この個々のPCDETERMINANT性能と、伝統的な臨床パラメータおよび2〜3個の伝統的な実験室危険因子だけを組み合わせる式の一般的な性能とにも関わらず、本発明は、2個以上のPCDETERMINANTのある特定の組合せを、1つまたは複数の生理学的または生物学的経路に関与することが公知であるPCDETERMINANTの組合せを含んだ多数の生物マーカーパネルとして使用することもでき、また、そのような情報を組み合わせて、個々のPCDETERMINANTを超えた組合せの性能特性を組み合わせかつ多くの場合はその性能特性を拡張する、統計的分類アルゴリズムおよびその他を含めた様々な式の使用を通して臨床的に有用なものにできることに留意した。これら特定の組合せは、許容可能なレベルの診断精度を示し、多数のPCDETERMINANTからの十分な情報が導かれた式と組み合わされた場合、1つの集団から別の集団へと移すことが可能な高レベルの診断精度が、信頼性をもってしばしば実現される。
【0138】
2個よりも少ない特定のまたはより低い性能のPCDETERMINANTを、意図される徴候に向けて新規なおよびより有用な組合せへとどのように組み合わせるかという一般概念は、本発明の重要な態様である。多数の生物マーカーは、しばしば、適正な数学的および臨床的アルゴリズムが使用される場合、個々の構成要素よりも良好な性能をもたらすことができ;これは、感受性および特異性の両方でしばしば明らかであり、より大きなAUCをもたらす。第2に、既存の生物マーカーには、改善されたレベルの感受性または特異性を新しい式を通して実現するために必要であったように、新規な感知できない情報がしばしば存在する。この隠された情報は、次善の臨床性能を独自に有すると一般に見なされる生物マーカーの場合であっても、有効になり得る。事実、単独で測定された単一の生物マーカーに対する高偽陽性率に関する次善の性能は、一部の重要な追加の情報が、第2の生物マーカーおよび数式との組合せが存在しないことが明らかではない生物マーカーの結果の情報内に含まれる指標になり得ると考えられる。
【0139】
当技術分野で公知のいくつかの統計的およびモデリングアルゴリズムを使用して、PCDETERMINANTの選択を支援すると共に、これらの選択を組み合わせたアルゴリズムを最適化することができる。因子および交差生物マーカー相関/共分散分析などの統計的ツールは、パネル構造へのより合理的なアプローチを可能にする。PCDETERMINANT間のユークリッド標準化距離を示す、数学的クラスタリングおよび分類木は、有利に使用することができる。そのような統計的分類技法の、経路によって知らされた播種は、特定の経路または生理学的機能の全体への寄与を基にした個々のPCDETERMINANTの選択に基づく合理的な手法となり得るので、用いてもよい。
【0140】
最終的に、統計的分類アルゴリズムなどの式は、PCDETERMINANTを選択するためにかつ多数のPCDETERMINANTからの結果を単一指標へと組み合わせるのに必要な最適な式を作成し導き出すために、直接使用することができる。しばしば、前進的(0ポテンシャル説明パラメータ)および後退的選択(全ての利用可能なポテンシャル説明パラメータ)などの技法が使用され、AICまたはBICなどの情報基準は、パネルの性能および診断精度と使用されるPCDETERMINANTの数との間のトレードオフを定量するのに使用される。前進的または後退的選択パネルにおける個々のPCDETERMINANTの位置は、そのアルゴリズム用の漸増的情報内容の提供に密接に関連付けることができ、したがって、寄与のオーダーは、パネル内のその他の構成要素であるPCDETERMINANTに非常に依存している。
【0141】
臨床アルゴリズムの構築
任意の式を使用して、PCDETERMINANTの結果を組み合わせて、本発明の実行に有用な指標となすことができる。上記したように、そのような指標は、種々のその他の指示のうちとりわけ、ある疾患状況が別の疾患状況へ変換する確率、尤度、絶対的もしくは相対的なリスク、時間もしくは速度を示してもよく、または転移性疾患の将来の生物マーカーの測定値を予測してもよいが、これらに限定されない。これは、特定の期間もしくは範囲について、または残りの生涯リスクについてであってもよく、あるいは単に別の基準対象集団と比べた指標として提供してもよい。
【0142】
種々の好ましい式を本明細書に記載するが、本明細書および上記の定義において言及するもの以外のいくつかのその他のモデルおよび式の型が、当業者には周知である。使用される実際のモデルの型または式自体は、トレーニング集団におけるその結果の性能および診断の精度の特徴に基づいて、見込みがあるモデルの領域から選択され得る。その式自体の詳細は通常、関連のあるトレーニング集団におけるPCDETERMINANTの結果から得ることができる。その他の用途のうちとりわけ、そのような式によって、一連の対象クラスへの、1つまたは複数のPCDETERMINANTのインプットから得られた(例えば、対象が、正常なクラス、転移性事象を有するリスクがあるクラス、癌を有するリスクがあるクラスの一員であることを予測するのに有用である)フィーチャーの空間を位置付けて、ベイズのアプローチを使用してリスクの確率関数の推定値(例えば、癌もしくは転移性事象のリスク)を得ること、またはクラス条件付き確率を推定し、次いで、先の場合と同様に、ベイズの規則を使用してクラスの確率関数を求めることを意図することができる。
【0143】
好ましい式には、広いクラスの統計学的分類アルゴリズム、特に、判別分析の使用がある。判別分析の目標は、以前に同定されたフィーチャーのセットから、クラスの一員であることを予測することである。線形判別分析(LDA)の場合、いくつかの判断基準による群間における分離を最大化するフィーチャーの線形の組合せを同定する。異なる閾値を用いる、固有遺伝子(eigengene)に基づいたアプローチを使用するLDA(ELDA)、または多変量分散分析(MANOVA)に基づいた踏み石アルゴリズムのために、フィーチャーを同定することができる。ホテリング−ローリーの統計量に基づいて非分離の確率を最小化する前向きアルゴリズム、後向きアルゴリズムおよびステップワイズアルゴリズムを実施することができる。
【0144】
固有遺伝子に基づいた線形判別分析(ELDA)は、Shenら、(2006年)によって開発された、フィーチャーを選択する技法である。この式は、改変された固有値解析(eigen analysis)を使用して、多変量のフレームワーク中のフィーチャー(例えば、生物マーカー)を選択して、最も重要な固有ベクター(eigenvector)と関連性があるフィーチャーを同定する。「重要な」は、何らかの閾値と比べて分類しようとするサンプル間における差の最大の分散を説明する固有ベクターと定義される。
【0145】
サポートベクターマシン(SVM)は、2つのクラスを分離する超平面を見出そうとする分類式である。この超平面は、サポートベクター、すなわち、この超平面からまさしくマージンの距離だけ離れているデータ点を含有する。現在のデータ寸法では分離超表面が存在しそうにない事象においては、元々の変数の非線形関数をとることにより、データをより大きな寸法に投影することによって、次元を大きく拡大する(VenablesおよびRipley、2002年)。必要ではないが、SVMのためのフィーチャーにフィルターをかけることによってしばしば、予測が改善される。最も良好な一変量のフィーチャーを選択するために非パラメトリックなクラスカル−ワリス(KW)検定を使用して、サポートベクターマシンためのフィーチャー(例えば、バイオマーカー)を同定することができる。また、ランダムフォレスト(RF、Breiman、2001年)または再帰分割(RPART、Breimanら、1984年)も別個にまたは組み合わせて使用して、最も重要である生物マーカーの組合せを同定することができる。KWおよびRFの両方では、全フィーチャーからいくつかのフィーチャーを選択する必要がある。RPARTは、利用可能な生物マーカーのサブセットを使用して、単一の分類木を生み出す。
【0146】
予測式に当てはめる前に、個々のPCDETERMINANTの測定値の結果に前処理をして、より貴重な形態の情報となすために、その他の式を使用することができる。最も注目すべきは、対数関数またはロジスティック関数等のいずれかの通常の数学的変換を使用して、生物マーカーの結果を、集団の平均値等に関して、正規またはその他の分布状態として正規化することはいずれも当業者には周知である。特に興味深いのは、年齢、性別(gender)、人種または性(sex)等の臨床パラメータに基づいた一連の正規化であり、特定の式が、あるクラスに属する対象に対してもっぱら使用されるか、または臨床パラメータをインプットとして連続的に組み合わせる。その他の場合には、分析対象に基づいた生物マーカーを組み合わせて、計算した変数となし、これらを、それに続いて、式に当てはめる。
【0147】
正規化される見込みがある一対象の個々のパラメータ値に加えて、D’Agostinoら、(2001年)JAMA 286巻:180〜187頁に概要が述べられている技法、またはその他の類似の正規化および再較正の技法に従って、全ての対象または任意の公知のクラスの対象についての全体的な予測式自体を、再較正するかまたは別の場合には集団の予想有病率および平均生物マーカーパラメータ値についての調整に基づいて調整することができる。そのような疫学的調整統計量は、モデルに当てはめる過去のデータの登録簿によって、連続的に捕捉、確認、改善およびアップデートすることができ、これらのデータは、機械可読性であってもよく、もしくはそうではなくてもよく、またはこれらの統計量の補足、確認、改善およびアップデートは時には、保管サンプルの遡及的クエリーもしくはそのようなパラメータおよび統計量の過去の研究を参照することによって行ってもよい。式の再較正またはその他の調整の対象であり得る追加の例として、オッズ比の限界についてのPepe, M.S.ら、2004年による研究;ROC曲線に関するCook, N.R.、2007年による研究において使用されている統計量が挙げられる。最後に、絶対的なリスクに対して較正し、分類子またはリスクの式の各種の数値結果についての信頼区間を提供するために、実際の臨床集団ならびに研究結果および観察されたエンドポイントを参照することにより、分類子の式自体の数値結果を処理後に変換することができる。この例が、Genomic Health,Inc.(Redwood City、CA)のOncotype Dx製品における再発スコアの式のアウトプットに関して選ばれた実際の臨床研究を使用して得られた絶対的なリスクの提示、およびそのリスクについての信頼区間である。さらなる改変は、分類子またはリスクの式のアウトプットに基づき、年齢または性等のそれらの臨床パラメータによって定義かつ選択された、研究のより小さな亜集団についての調整である。
【0148】
臨床パラメータとの組合せ、および伝統的な実験室リスク因子
本発明の実行に際しては、上記の臨床パラメータのうちのいずれかを、ある式へのPCDETERMINANTのインプットとして、または特定のPCDETERMINANTのパネルおよび式を使用して測定しようとする関連のある集団を定義する事前選択の判断基準として使用することができる。また、上記で注目したように、臨床パラメータは、生物マーカーの正規化および前処理において、またはPCDETERMINANTの選択、パネルの構築、式の型の選択および誘導、ならびに式の結果の後処理においても有用な場合がある。伝統的な実験室リスク因子についても、ある式へのインプットまたは事前選択の判断基準のいずれかとして、類似アプローチをとることができる。
【0149】
PCDETERMINANTの測定
PCDETERMINANTのレベルまたは量の実際の測定値を、タンパク質または核酸のレベルにおいて、当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定することができる。例えば、核酸レベルにおいては、これらの配列のうちの1つまたは複数を特異的に認識するプローブを使用するノーザンハイブリダイゼーション解析およびサザンハイブリダイゼーション解析、ならびにリボヌクレアーゼプロテクションアッセイを使用して、遺伝子発現を決定することができる。あるいは、例えば、遺伝子の示差的に発現した配列に対して特異的なプライマーを使用する逆転写に基づいたPCRアッセイ(RT−PCR)を使用して、またはPanomics,Inc.による、分枝鎖RNAを増幅および検出する方法によって、PCDETERMINANTの量を測定することもできる。また、タンパク質レベルにおいても、例えば、本明細書に記載する遺伝子産物がコードするペプチドのレベルを測定することによって、またはそれらの細胞内における局在化もしくは活性を、例えば、AQUA(登録商標)(HistoRx、New Haven、CT)または米国特許第7,219,016号等の技術プラットフォームを使用して測定することによって、PCDETERMINANTの量を決定することができる。そのような方法は、当技術分野では周知であり、そのような方法として、例えば、遺伝子がコードするタンパク質に対する抗体に基づいたイムノアッセイ、アプタマー、または分子インプリントが挙げられる。任意の生物学的な材料を、タンパク質またはその活性の検出/定量化のために使用することができる。あるいは、適切な方法を選択して、分析した各タンパク質の活性によって、マーカー遺伝子がコードするタンパク質の活性を決定することもできる。
【0150】
PCDETERMINANTであるタンパク質、ポリペプチド、突然変異およびそれらの多型を、任意の適切な様式で検出することができるが、典型的には、対象由来のサンプルを、PCDETERMINANTであるタンパク質、ポリペプチド、突然変異または多型に結合する抗体と接触させ、次いで、反応産物の有無を検出することによって検出する。抗体は、上記で詳細に論じたように、前述の抗体のモノクローナル、ポリクローナル、キメラまたは断片であってよく、反応産物を検出するステップは、任意の適切なイムノアッセイを用いて実施することができる。対象由来のサンプルは典型的には、上記したように、生物学的液体であり、上記の方法を実施するために使用した生物学的液体と同じサンプルであってよい。
【0151】
本発明に従って実施するイムノアッセイは、均一アッセイであっても、または不均一アッセイであってもよい。均一アッセイの場合、免疫学的反応は通常、特異的抗体(例えば、抗PCDETERMINANTタンパク質抗体)、標識された分析対象、目的のサンプルを含む。抗体が標識された分析対象に結合すると、標識から発生するシグナルが直接的または間接的に改変される。免疫学的反応およびその程度の検出の両方を、均一溶液中で実施することができる。利用することができる免疫化学標識には、フリーラジカル、放射性同位体、蛍光染料、酵素、バクテリオファージまたは補酵素がある。
【0152】
不均一アッセイのアプローチの場合、試薬は通常、サンプル、抗体および検出可能なシグナルを発生させるための手段である。上記のサンプルを使用することができる。抗体を、ビーズ(プロテインAおよびプロテインGのアガロースビーズ等)、プレートまたはスライド等の支持体上に固定化し、液相中で、抗原を含有することが疑われる検体と接触させることができる。次いで、支持体を液相から分離し、支持相または液相のいずれかを検出可能なシグナルについて、そのようなシグナルを発生させるための手段を利用して調べる。シグナルは、サンプル中の分析対象の存在と関係がある。検出可能なシグナルを発生させるための手段は、放射性標識、蛍光標識または酵素標識の使用を含む。例えば、検出すべき抗原が、第2の結合部位を含有する場合、その部位に結合する抗体を、検出可能な基にコンジュゲートさせ、分離ステップの前に、液相の反応溶液に添加することができる。固体の支持体上の検出可能な基の存在によって、試験サンプル中の抗原の存在が示される。適切なイムノアッセイの例は、オリゴヌクレオチド、免疫ブロット、免疫蛍光法、免疫沈降、化学発光法、電気化学発光(ECL)または酵素結合免疫アッセイである。
【0153】
当業者であれば、本明細書に開示する方法を実施するのに有用であり得る多数の特異的なイムノアッセイのフォーマットおよびそれらの変更形態に精通しているであろう。一般に、E. Maggio、Enzyme−immunoassay、(1980年)(CRC Press, Inc.、Boca Raton、Fla.)を参照されたい。また、Skoldらに対する米国特許第4,727,022号、標題「Methods for Modulating Ligand−Receptor Interactions and their Application」、Forrestらに対する米国特許第4,659,678号、標題「Immunoassay of Antigens」、Davidらに対する米国特許第4,376,110、標題「Immunometric Assays Using Monoclonal Antibodies」、Litmanらに対する米国特許第4,275,149号、標題「Macromolecular Environment Control in Specific Receptor Assays」、Maggioらに対する米国特許第4,233,402号、標題「Reagents and Method Employing Channeling」、およびBoguslaskiらに対する米国特許第4,230,767号、標題「Heterogenous Specific Binding Assay Employing a Coenzyme as Label」も参照されたい。
【0154】
受動結合等の公知の技法に従って、抗体を、診断アッセイに適した固体の支持体(例えば、プロテインAまたはプロテインGのアガロース等のビーズ、ラテックスまたはポリスチレン等の材料から形成されたマイクロスフェア、プレート、スライドまたはウエル)にコンジュゲートさせることができる。同様に、公知の技法に従って、本明細書に記載する抗体を、検出可能な標識または基、例として、放射標識(例えば、35S、125I、131I)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、および蛍光標識(例えば、フルオレセイン、Alexa、緑色蛍光タンパク質、ローダミン)にコンジュゲートさせることもできる。
【0155】
また、抗体は、PCDETERMINANTであるタンパク質、ポリペプチド、突然変異および多型の翻訳後修飾、例として、チロシンリン酸化、スレオニンリン酸化、セリンリン酸化、グリコシル化(例えば、O−GlcNAc)を検出するのに有用な場合もある。そのような抗体は、1つまたは複数の目的のタンパク質中のリン酸化されたアミノ酸を特異的に検出し、本明細書に記載するイムノブロット、免疫蛍光法およびELISAアッセイにおいて使用され得る。これらの抗体は、当業者には周知であり、市販されている。また、翻訳後修飾は、反射マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析(reflector matrix−assisted laser desorption ionization−time of flight mass spectrometry)(MALDI−TOF)における準安定イオンを使用して決定することもできる(Wirth, U.ら(2002年)Proteomics 2巻(10号):1445〜51頁)。
【0156】
酵素活性を示すことが知られているPCDETERMINANTのタンパク質、ポリペプチド、突然変異および多型については、インビトロにおいて当技術分野で公知の酵素アッセイを使用して、それらの活性を決定することができる。そのようなアッセイとして、多くの中でもとりわけ、キナーゼアッセイ、ホスファターゼアッセイ、レダクターゼアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。公知のアルゴリズム、例として、ヒルプロット、ミカエリス−メンテン式、ラインウィーバー−バーク解析等の線形回帰プロット、およびスキャッチャードプロットを使用して速度定数Kを測定することによって、酵素活性の動態調節を決定することができる。
【0157】
PCDETERMINANTの配列についてのデータベースエントリーによって提供される配列情報を使用し、当業者に周知の技法を使用して、PCDETERMINANTの配列の発現を、(それらが存在する場合)検出し、測定することができる。例えば、PCDETERMINANTの配列に対応する、配列データベースエントリーに属する配列、または本明細書に開示する配列に属する配列を使用して、例えば、ノーザンブロットハイブリダイゼーション解析または特定の核酸配列を特異的にかつ好ましくは定量的に増幅する方法においてPCDETERMINANTのRNA配列を検出するためのプローブを構築することができる。別の例として、これらの配列を使用して、例えば、増幅に基づいた検出方法、例として、逆転写に基づいたポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)においてPCDETERMINANTの配列を特異的に増幅するためのプライマーを構築することもできる。遺伝子発現の変化に、遺伝子の増幅、欠失、多型および突然変異が伴う場合、試験集団と基準集団とでの配列比較を、試験細胞集団および基準細胞集団において調べたDNA配列の相対的な量を比較することによって行うことができる。
【0158】
本明細書に開示する遺伝子の発現を、当技術分野で公知の任意の方法を使用してRNAレベルで測定することができる。例えば、これらの配列のうちの1つまたは複数を特異的に認識するプローブを使用するノーザンハイブリダイゼーション解析を使用して、遺伝子の発現を決定することができる。あるいは、例えば、示差的に発現した配列に対して特異的なプライマーを使用する逆転写に基づいたPCRアッセイ(RT−PCR)を使用して、発現を測定することもできる。また、例えば、その他の標的増幅の方法(例えば、TMA、SDA、NASBA)、またはシグナル増幅の方法(例えば、bDNA)等を使用して、RNAを定量化することもできる。
【0159】
あるいは、PCDETERMINANTのタンパク質および核酸の代謝産物を測定することもできる。用語「代謝産物」は、代謝過程の任意の化学的または生化学的な産物、例として、生物学的分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物または脂質)のプロセシング、切断または消費によって産生された任意の化合物を含む。代謝産物は、当業者に公知の多様な方法で検出することができ、それらには、屈折率分光法(RI)、紫外分光法(UV)、蛍光分析、放射化学分析、近赤外分光法(near−IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、光散乱分析(LS)、質量分析、熱分解質量分析、比濁分析、分散型ラマン分光法、質量分析と組み合わせたガスクロマトグラフィー、質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィー、質量分析と組み合わせたマトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間(MALDI−TOF)、質量分析と組み合わせたイオンスプレー分光法、キャピラリー電気泳動、NMR、およびIR検出がある。(WO04/056456およびWO04/088309を参照されたい。これらは、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれている。)この点に関しては、上記で言及した検出方法、または当業者に公知のその他の方法を使用して、その他のPCDETERMINANTの分析対象を測定することができる。例えば、サンプル中の循環カルシウムイオン(Ca2+)を、蛍光染料、例として、Fluoシリーズ、とりわけ、Fura−2A、Rhod−2を使用して検出することができる。その他のPCDETERMINANTの代謝産物も同様に、そのような代謝産物を検出するために特異的に設計または手直しした試薬を使用して検出することができる。
【0160】
キット
また、本発明は、キットの形態として一緒に包装されたPCDETERMINANTの検出試薬、例えば、PCDETERMINANT核酸の一部に対して相補性を示す相同な核酸配列、例として、オリゴヌクレオチド配列を有することによって、1つまたは複数のPCDETERMINANT核酸を特異的に同定する核酸、またはPCDETERMINANT核酸がコードするタンパク質に対する抗体も含む。これらのオリゴヌクレオチドは、PCDETERMINANT遺伝子の断片であってよい。例えば、これらのオリゴヌクレオチドは、200、150、100、50、25または10ヌクレオチド長以下であってよい。キットは、別個の容器中に、核酸または抗体(固体のマトリックスにすでに結合しているか、またはそれらをマトリックスに結合させる試薬が別個に包装されているかのいずれか)、(正および/もしくは負の)対照処方、ならびに/または検出可能な標識、例として、とりわけ、フルオレセイン、緑色蛍光タンパク質、ローダミン、シアニン染料、Alexa染料、ルシフェラーゼ、放射標識を含有することができる。アッセイを実施するための指示(例えば、書類、テープ、VCR、CD−ROM等)を、キット中に含めることができる。アッセイは、例えば、当技術分野で公知のノーザンハイブリダイゼーションまたはサンドイッチELISAの形態であってよい。
【0161】
例えば、PCDETERMINANTの検出試薬を、多孔性条片等の固体のマトリックス上に固定化して、少なくとも1つのPCDETERMINANTの検出部位を形成することができる。多孔性条片の測定または検出の領域は、核酸を含有する複数の部位を含むことができる。また、試験条片は、負および/または正の対照のための部位も含有することができる。あるいは、対照部位を、試験条片とは別個の条片上に設けてもよい。場合により、異なる検出部位が、異なる量の固定化核酸、例えば、第1の検出部位においてはより多い量を、かつそれに続く部位ではより少ない量を含有してもよい。試験サンプルを添加すると、検出可能なシグナルを示す部位の数によって、サンプル中に存在するPCDETERMINANTの量の定量的な指示が得られる。検出部位は、任意の適切に検出可能な形状に構成することができるが、典型的には、試験条片の幅にわたる棒状または点状の形状をとる。
【0162】
あるいは、キットは、1つまたは複数の核酸配列を含む核酸基板アレイを含有する。アレイ上の核酸は、PCDETERMINANT1〜372によって示される1つまたは複数の核酸配列を特異的に同定する。種々の実施形態では、PCDETERMINANT1〜372によって示される配列のうちの2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、50、100、125、150、175、200、250または275個以上の発現を、アレイに対する結合によって同定することができる。基板アレイは、例えば、固体の基板、例えば、米国特許第5,744,305号に記載されている「チップ」であってよい。あるいは、基板アレイは、溶液アレイ、例えば、xMAP(Luminex、Austin、TX)、Cyvera(Illumina、San Diego、CA)、CellCard(Vitra Bioscience、Mountain View、CA)、およびQuantum Dots’Mosaic(Invitrogen、Carlsbad、CA)であってもよい。
【0163】
PCDETERMINANTの検出のための抗体の適切な供給元として、例えば、Abazyme、Abnova、Affinity Biologicals、AntibodyShop、Biogenesis、Biosense Laboratories、Calbiochem、Cell Sciences、Chemicon International、Chemokine、Clontech、Cytolab、DAKO、Diagnostic BioSystems、eBioscience、Endocrine Technologies、Enzo Biochem、Eurogentec、Fusion Antibodies、Genesis Biotech、GloboZymes、Haematologic Technologies、Immunodetect、Immunodiagnostik、Immunometrics、Immunostar、Immunovision、Biogenex、Invitrogen、Jackson ImmunoResearch Laboratory、KMI Diagnostics、Koma Biotech、LabFrontier Life Science Institute、Lee Laboratories、Lifescrcen、Maine Biotechnology Services、Mediclone、MicroPharm Ltd.、ModiQuest、Molecular Innovations、Molecular Probes、Neoclone、Neuromics、New England Biolabs、Novocastra、Novus Biologicals、Oncogene Research Products、Orbigen、Oxford Biotechnology、Panvera、PerkinElmer Life Sciences、Pharmingen、Phoenix Pharmaceuticals、Pierce Chemical Company、Polymun Scientific、Polysiences, Inc.、Promcga Corporation、Proteogenix、Protos Immunorescarch、QED Biosciences, Inc.、R&D Systems、Repligen、Research Diagnostics、Roboscreen、Santa Cruz Biotechnology、Seikagaku America、Serological Corporation、Serotec、SigmaAldrich、StemCell Technologies、Synaptic Systems GmbH、Technopharm、Terra Nova Biotechnology、TiterMax、Trillium Diagnostics、Upstate Biotechnology、US Biological、Vector Laboratories、Wako Pure Chemical Industries、およびZeptometrix等の商業的な供給元が挙げられる。しかし、当業者であれば、表1のPCDETERMINANTのうちのいずれかに対する抗体、核酸プローブ、例えば、オリゴヌクレオチド、アプタマー、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドを日常的に作製することができる。
【0164】
癌を治療または予防する方法
本発明は、PCDETERMINANT1〜245の発現もしくは活性を減少させるか、またはPCDETERMINANT246〜272の発現もしくは活性を増加させることによって、対象において癌の症状を治療、予防または軽減するための方法を提供する。治療用化合物を、予防または治療のために、癌を発症するリスクがある(または癌の発症に対して感受性である)対象に投与する。そのような対象を、標準的な臨床における方法を使用するかまたは(例えば、PCDETERMINANIT1〜372)の発現もしくは活性の異常なレベルを検出することによって同定する。治療剤は、細胞周期の調節、細胞増殖およびタンパク質キナーゼ活性の阻害剤を含む。
【0165】
この治療方法は、癌細胞が由来する同じ組織型の正常細胞と比べて、癌細胞中で発現が減少している遺伝子(「過小発現遺伝子」)の1つまたは複数の遺伝子産物の発現もしくは機能または両方を増加させるステップを含む。これらの方法では、対象を、有効量の化合物を用いて治療する。この有効量の化合物により、対象中の過小発現遺伝子のうちの1つまたは複数の量が増加する。投与は、全身投与であってもまたは局所投与であってもよい。治療用化合物は、過小発現遺伝子のポリペプチド産物またはその生物学的に活性な断片を含み、癌細胞中での発現を可能にする発現調節エレメントも有する核酸によって、過小発現遺伝子がコードされる。これらの治療用化合物として、例えば、癌細胞に内在するそのような遺伝子の発現レベルを増加させる(すなわち、1つまたは複数の過小発現遺伝子の発現を上方制御する)薬剤が挙げられる。そのような化合物の投与によって、対象の細胞中のそうした1つまたは複数の遺伝子の異常な過小発現の作用が無効になり、対象の臨床状態が改善される。
【0166】
また、この方法は、正常細胞と比べて、癌細胞中で発現が異常に増加している遺伝子(「過剰発現遺伝子」)の1つまたは複数の遺伝子産物の発現もしくは機能または両方を減少させるステップも含む。発現を、当技術分野で公知のいくつかの方法のうちのいずれかで阻害する。例えば、こうした1つまたは複数の過剰発現遺伝子の発現を、阻害するかまたはそれに拮抗する核酸、例えば、こうした1つまたは複数の過剰発現遺伝子の発現を破壊するアンチセンスオリゴヌクレオチドを対象に投与することによって、発現を阻害する。
【0167】
あるいは、これらの過剰発現遺伝子の1つまたは複数の遺伝子産物の機能は、これらの遺伝子産物に結合するかまたは別の場合にはそれらの機能を阻害する化合物を投与することによっても阻害される。例えば、この化合物は、1つまたは複数の過剰発現した遺伝子産物に結合する抗体である。
【0168】
これらの調節方法を、エキソビボもしくはインビトロにおいて(例えば、細胞を薬剤と共に培養することによって)か、またはそれ代わって、インビボにおいて(例えば、薬剤を対象に投与することによって)実施する。この方法は、タンパク質もしくはタンパク質の組合せ、または核酸分子もしくは核酸分子の組合せを、示差的発現遺伝子の異常な発現または活性を相殺する療法として投与するステップを含む。
【0169】
(疾患または障害に罹患していない対象と比べた)遺伝子のレベルまたは生物学的活性の増加によって特徴付けられる疾患および障害を、1つまたは複数の過剰発現遺伝子の活性に拮抗する(すなわち、活性を低下させるかまたは阻害する)治療剤を用いて治療することができる。活性に拮抗する治療剤を、治療または予防(例えば、ワクチン)のために投与する。
【0170】
活用できる治療剤として、例えば、(i)1つまたは複数の過剰発現する配列または過小発現する配列のポリペプチド、またはその類似体、誘導体、断片もしくは相同体;(ii)1つまたは複数の過剰発現する配列または過小発現する配列に対する抗体;(iii)1つまたは複数の過剰発現する配列または過小発現する配列をコードする核酸;(iv)「機能不全」である(すなわち、1つまたは複数の過剰発現する配列または過小発現する配列のコード配列内部への異種の挿入に起因する)1つまたは複数のアンチセンス核酸;あるいは(v)調節物質(すなわち、過剰/過小発現したポリペプチドとその結合パートナーとの間の相互作用を変化させる阻害剤、アゴニストおよびアンタゴニスト)が挙げられる。相同組換えによりポリペプチドの内在性機能を「ノックアウトする」ために、機能不全アンチセンス分子が活用される(例えば、Capecchi、Science 244巻:1288〜1292頁、1989年を参照されたい)。
【0171】
(疾患または障害に罹患していない対象と比べた)レベルまたは生物学的活性の減少によって特徴付けられる疾患および障害を、活性を増加させる(すなわち、活性に対するアゴニストである)治療剤を用いて治療することができる。活性を上方制御する治療剤を、治療または予防の形で投与することができる。活用できる治療剤として、これらに限定されないが、ポリペプチド(またはその類似体、誘導体、断片もしくは相同体)、あるいは生物学的利用率を増加させるアゴニストが挙げられる。
【0172】
トランスジェニック動物に関する総括
本発明のトランスジェニック動物は、Pten遺伝子およびSmad4遺伝子の、一方または両方の内在性対立遺伝子を機能しない形態で有する。不活性化は、内在性遺伝子の改変、通常、遺伝子のコード領域に対する欠失、置換または付加によって達成することができる。改変によって、遺伝子産物の合成を阻止してもよく、または機能活性を欠く遺伝子産物を得てもよい。典型的な改変は、エクソン内部への、選択マーカー等の外来性セグメントの導入であり、それによって、エクソンを破壊するかまたはエクソンを欠失させる。
【0173】
マウスにおける内在性遺伝子の不活性化は、マウス胚性幹(ES)細胞中の内在性遺伝子とターゲティング構築物との間の相同組換えによって達成することができる。典型的には、このターゲティング構築物は、セグメントに隣接する標的遺伝子の陽性の選択マーカーを含有する。通常、これらのセグメントは、標的遺伝子と同じ種(例えば、マウス)に由来する。しかし、これらのセグメントが標的遺伝子に対して、それとの相同組換えを起こすのに十分な配列同一性を示すならば、それらをヒト等の別の種から得ることができる。また典型的には、この構築物には、これらのセグメントの一方または両方の外側に位置する陰性の選択マーカーも含有させて、内在性遺伝子との相同組換えを起こすように設計する(米国特許第6,204,061号を参照されたい)。また場合により、この構築物には、これらのセグメントの内部または末端に位置する一対の部位特異的組換え部位、例として、frtも含有させて、内在性遺伝子との相同組換えを起こすように設計する。この構築物を、ES細胞内に、通常、エレクトロポレーションにより導入し、内在性遺伝子との相同組換えを起こして、内在性遺伝子内部に、陽性の選択マーカーならびに隣接セグメントの部分(および存在する場合には、frt部位)を導入する。所望の組換えを起こしたES細胞は、陽性および陰性の選択によって選択することができる。陽性の選択は、所望の相同組換えを起こした細胞について選択し、陰性の選択は、陰性の組換えを起こした細胞を選択して除く。これらの細胞は、インビトロにおいて培養した着床前胚から得られる。Bradleyら、Nature 309巻、255〜258頁(1984年)(全ての目的でその全体が参照により組み込まれている)。形質転換ES細胞を、非ヒト動物由来の胚盤胞と組み合わせる。これらのES細胞は、胚のコロニーを形成し、いくつかの胚においては、得られたキメラ動物の生殖系列を形成するかまたはそれに寄与する。Jaenisch、Science、240巻、1468〜1474頁(1988年)(全ての目的でその全体が参照により組み込まれている)を参照されたい。キメラ動物を非トランスジェニック動物と繁殖させて、ヘテロ接合型トランスジェニック動物を生み出すことができる。ヘテロ接合型動物を相互に繁殖させて、ホモ接合型動物を生み出すことができる。ヘテロ接合型動物またはホモ接合型動物のいずれかを、flpリコンビナーゼを発現するトランスジェニック動物と繁殖させることができる。リコンビナーゼが発現すると、frt部位が存在する場合には、導入されたそれらの間のDNA部分の切除が生じる。
【0174】
また、機能の不活性化は、その他の種についても達成することができ、したがって、ラット、ウサギおよびその他のげっ歯類、ヒツジ等のbovine、ヤギ等のcarpine、ブタ等のporcine、ならびにウシおよび水牛等のbovineが適している。マウス以外の動物については、機能が不活性化された遺伝子を生み出すためには、核移植技術が好ましい。Laiら、Sciences 295巻、1089〜92頁(2002年)を参照されたい。ES細胞および胎性線維細胞を含めて、種々の細胞型を、卵母細胞内に導入しようとする核のためのドナーとして利用することができる。ドナーの核は、その中で、上記に記載したように、構築物が導入され、内在性遺伝子との相同組換えが起きている、インビトロにおいて培養した細胞から得る(全ての目的でそれぞれその全体が参照により組み込まれているWO98/37183およびWO98/39416を参照されたい)。ドナーの核を卵母細胞内に、融合、電気的もしくは化学的な誘導(WO97/07669、WO98/30683およびWO98/39416のうちのいずれかを参照されたい)、またはマイクロインジェクション(全ての目的でその全体が参照により組み込まれているWO99/37143を参照されたい)によって導入する。移植した卵母細胞を、それに続いて、培養して胚に発達させ、それに続いてこれらの胚を、偽妊娠雌動物の卵管内に移植すると、トランスジェニック子孫が誕生する(WO97/07669、WO98/30683およびWO98/39416のうちのいずれかを参照されたい)。ヘテロ接合型導入遺伝子を担持するトランスジェニック動物を相互に繁殖させて、ホモ接合型導入遺伝子を担持するトランスジェニック動物を生み出すことができる。
【0175】
本発明のいくつかのトランスジェニック動物は、Pten遺伝子およびSmad4遺伝子の、一方または両方の対立遺伝子の不活性化を有し、かつ、前立腺癌、その病態または根底にある生化学的プロセスと関係がある追加の表現型を付与する第2の導入遺伝子も有する。Pten遺伝子またはSmad遺伝子を、LoxP部位を組み込んでリコンビナーゼの媒介により切除すること(すなわち、現在の系統)によってか、あるいは例えば、生殖系列形態かまたはインサイツもしくは細胞培養における前立腺上皮の体細胞形質導入かのずれかにおいて、突然変異ノックインを行い、これらの遺伝子をRNAiの媒介により消去し、それに続いて、これらの初代細胞を腎臓莢膜内または同所性に再導入することによって、この破壊を達成することができる。また、生殖系列伝達を回避する、標的ESクローンを使用するキメラの形成を含めて、その他の工学的作製の戦略も明らかである。
【実施例】
【0176】
(実施例1)
一般的な方法
PtenおよびSmad4の条件対立遺伝子、ジェノタイピングおよび発現解析。
【0177】
PtenloxPおよびSmad4loxPの条件ノックアウト対立遺伝子が、他の箇所で記載されている。前立腺上皮特異的欠失が、PB−Cre4によって生じた25。PCRジェノタイピング戦略では、(i)Ptenは、プライマー1(5’−CTTCGGAGCATGTCTGGCAATGC−3’;配列番号1)、プライマー2(5’−CTGCACGAGACTAGTGAGACGTGC−3’;配列番号2)、およびプライマー3(5’−AAGGAAGAGGGTGGGGATAC−3’;配列番号3)を活用し、(ii)Smad4は、プライマー1(5’−GGGAACAGAGCACAGGCCTCTGTGACAG−3’;配列番号4)、およびプライマー2(5’−TTCACTGTGTAGCCCCGCCTGTCCTGGA−3’;配列番号5)を活用する。Smad4欠失対立遺伝子を検出するためには、プライマー2、およびプライマー3(5’−TGCTCTGAGCTCACAATTCTCCT−3’;配列番号6)を使用した。
【0178】
ウエスタンブロット解析のために、組織および細胞を、完全ミニプロテアーゼ阻害剤(Roche)およびホスファターゼ阻害剤を含有するRIPA緩衝液(20mM Tris pH7.5、150mM NaCl、1% Nonidet P−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1mM EDTA、0.1% SDS)を用いて溶解させた。ウエスタンブロットを、20〜50μgのタンパク質可溶化液を活用して得、Smad4、p53(1C12)、pSmad2/3、pSmad1/5/8.(Cell Signaling Technology)、p21Cip1(M−19)およびPTEN(A2B1)(Santa Cruz Biotechnology)に対する抗体と共にインキュベートした。
【0179】
組織解析。
【0180】
正常組織および腫瘍組織を、10%中性緩衝ホルマリン(Sigma)中で一晩固定し、1×PBSを用いて1回洗浄し、70%エタノール中に移し、4℃で保管した。Histoserv Inc.(Gaithersburg、MD)が、標準的なプロトコールに従って、組織を、エタノールによる脱水によって処理し、パラフィン中に包埋した。切片(5μm)を、抗体検出、ならびにヘマトキシリンおよびエオシンによる(H&E)染色のために調製した。免疫組織化学的研究のために、ホルマリン固定パラフィン包埋切片をウサギポリクローナル抗PTENまたは抗p53抗体と共に一晩インキュベートし、それに続いて、HRPコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(H+L)二次抗体(Vector)と共にインキュベートし、切片をDAB(Vector)と共にインキュベートし、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて対比染色することによって可視化した。免疫蛍光研究のために、前立腺腫瘍細胞を、Lab−Tec8ウエルスライド上に、5,000細胞/ウエルで播種し、メタノールを用いて−20℃で10分間固定し、抗CK8抗体および抗CK18抗体(CM5、VectorLaboratories)を用いて染色し、Image J(v1.38)により画像処理した。統計学的有意性を、スチューデントt検定により決定した。種々の遺伝子型の前立腺組織における老化をアッセイするために、凍結6μm切片を、他の箇所の記載に従って、SA−β−Galについて染色した。
【0181】
初代細胞系およびtet−誘導性細胞系の樹立。
【0182】
以前の記載に従って、前立腺癌組織を、Ptenloxp/loxp;Smad4loxp/loxp;PB−Cre4マウスから解体し、刻み、0.5%I型コラーゲナーゼ(Invitrogen)を用いて消化した。40μmメッシュを通してろ過した後、捕捉した断片を、I型コラーゲン(BD Pharmingen)を用いてコートした組織培養皿中に蒔いた。典型的な上皮の形態を示す細胞を収集し、単一細胞を、96ウエルプレートの各ウエル中に播種した。3つの独立した細胞系(3132−1、−2および−3)を樹立し、10%ウシ胎仔血清(FBS;Omega Scientific)、25μg/mLウシ下垂体抽出物、5μg/mLウシインスリンおよび6ng/mL組換えヒト上皮増殖因子(Sigma−Aldrich)を足したDMEM中に維持した。Smad4誘導性細胞系を樹立するために、製造元のプロトコールに従って、マウスPten/Smad4欠損前立腺腫瘍細胞系に、ヒトSMAD4コード領域を含有するpTRE−Tightベクター(Clontech)を形質導入し、tet−onの安定な細胞系を樹立した。SMAD4の導入を、1μg/mlドキシサイクリン(dox)を用いて達成し、ウエスタンブロット解析により確かめた。
【0183】
細胞培養に基づくアッセイ。
【0184】
細胞生存率アッセイのために、前立腺上皮細胞を、96ウエルプレート中、100μlの5%活性炭処理FBS含有培地中に、5000細胞/ウエルで蒔いた。2日間のインキュベーションの後、培地を交換した。細胞生存率を、CellTiter−Glo Luminescent Cell Viability Kit(Promega、Madison、WI)を使用して、製造元のプロトコールに従って4日目に測定した。
【0185】
トランスクリプトーム解析、ゲノム解析およびインシリコにおけるプロモーター解析。
【0186】
トランスクリプトーム解析のために、サイズおよび段階が適合する、局在性、原発性のPtenpc−/−マウス前立腺腫瘍およびPtenpc−/−Smad4pc−/−マウス前立腺腫瘍を単離し、全mRNAを、抽出し、標識し、Dana−Farber Cancer Institute Microarray Core Facilityにより、Affymetrix GeneChip(登録商標)Mouse Genome 430 2.0 Arrayに、製造元プロトコールに従ってハイブリダイズさせた。AffymetrixマウスMOE430の生データ(CELファイル)を、Bioconductorのaffy packageのロバストなマルチアレイ解析(RMA)を使用して前処理した。次いで、バックグラウンドについて較正し、正規化した強度データを、マイクロアレイの有意性解析(SAM)を使用して解析して、示差的に発現する遺伝子を同定した。2倍のカットオフを使用して、我々は、Ptenpc−/−Smad4pc−/−サンプルとPtenpc−/−サンプルとを区別する目的変数ありの遺伝子リストを生成した。マウスのリストとヒト遺伝子のリストとの交差から、284個の遺伝子(200個の上方制御された遺伝子および84個の下方制御された遺伝子)のPten/Smad4のオルソロガスなセットを得た。
【0187】
インシリコにおけるプロモーター解析のために、脊椎動物保存結合部位についての位置頻度マトリックス(PFM)を、TRANSFAC Professionalから抽出した。位置重みマトリックス(PWM)を、PFMから、TFBSモジュールを使用して構築した。また、TFBSモジュールは、3kbプロモーター配列内部の結合部位についてスキャンするためにも使用した。これらは、Biomartを介してEnsemblからダウンロードした。標的遺伝子セット中に観察された転写因子結合部位を、無作為に選択したバックグラウンド(マウスゲノム)遺伝子セット中の転写因子結合部位と比較した。zスコアおよびp値(Statistics:CPANからのDistribution)を計算して、標的遺伝子セット中で、所与の結合部位が過剰描写されているかどうかを決定した。
【0188】
我々は、マウスPten/Smad4が、ヒト前立腺癌におけるコピー数変化についての標的であるかどうかを決定するために、以前の記載に従って、circular binary segmentationによって処理した、転移性ヒト前立腺癌のACGHプロファイルGSE8026の最小共通領域(MCR)中の常在遺伝子を使用した。Ptenpc−/−マウス前立腺腫瘍とPtenpc−/−Smad4pc−/−マウス前立腺腫瘍との間で有意な示差的発現を示し、かつ転移性のヒト前立腺腫瘍においてコピー数変化を示す共通のオルソロガスな遺伝子を選択して、臨床的にアノテートされたサンプルのさらなるコンピュータ解析を行った。
【0189】
Ingenuity Pathway Analysisプログラム(http:/www.ingenuity.com/index.html)を使用して、Ptenpc−/−PCAモデルとPtenpc−/−Smad4pc−/−PCAモデルとで有意に調節される細胞の機能および経路をさらに解析した。
【0190】
臨床治療成果の解析。
【0191】
我々は、マウスPten/Smad4トランスクリプトームサインまたは転移性ヒト前立腺ACGHデータセット27とのその交差から出現した66個のSmad標的遺伝子のリストを使用して、「種間発現モジュール比較」アプローチを実行した(図7A)。前立腺癌および乳癌の発現プロファイルを使用して、これらの遺伝子セットの予後を示す値を評価した。66個の遺伝子のmRNA発現および17個の遺伝子のmRNA発現に基づいて、スピアマンの順位相関係数を使用して、臨床的に局在性の前立腺癌サンプルの2つの主要なクラスターを同定した。また我々は、統計学的有意性を実証するために、Glinskyの前立腺癌プロファイリング研究またはChangの乳癌プロファイリング研究(参考文献)から、17個の遺伝子の無作為セット10群も選択した。
【0192】
統計学的解析。
【0193】
無浸潤曲線および累積サバイバル曲線を、以前に記載されたことがあるカプラン−マイヤー分析を用いて得た。統計学的解析は、GraphPad Prism 4(GraphPadSoftware、San Diego、CA)を使用することによって行った。腫瘍発生率は、カプラン−マイヤー分析を使用することによってプロットした。統計学的有意性を、ログランク検定を使用することによって測定した。
【0194】
(実施例2)
PTEN欠損前立腺腫瘍は、著しいTGFB−SMAD4経路の活性化を示す。
【0195】
Pten腫瘍抑制因子を前立腺特異的に欠失させると、前立腺上皮内新生物(PIN)が生じ、長期の潜伏期間に続いて、時には、病変が腺癌に進行する場合があるが、それにもかかわらず、浸潤性および転移性の特色は最小限に留まる。我々は、浸潤性かつ転移性の腺癌への進行を制約することができるであろう、Pten欠損PINにおいて活性化されるチックポイントを定義するために、示差的発現遺伝子の知識ベース経路解析を使用して、15週齢において、PtenloxP/loxPPb−Cre4腫瘍において発症した前側前立腺の高グレードのPIN疾患と、Pb−Cre4マウス由来の前側前立腺上皮との間において不偏探索を実施した。この経路解析から、脂肪肝、BMPおよびTGFβが、無作為に生成した遺伝子リストについて観察されたものを上回って強化された上位の3つのネットワークであることが明らかになった(図1A)。
【0196】
TGFβ、骨形成タンパク質(BMP)およびアクチビンファミリーを含む、リガンドのTGFβスーパーファミリーは、II型受容体に結合し、この受容体は、I型受容体を動員し、リン酸化する。それに続いて、このI型受容体は、受容体調節型SMAD(R−SMAD)をリン酸化する。Smad2/3のTGFbによる活性化およびSmadl/5/8のBMPによる活性化の際には、これらの受容体により活性化されたR−Smadは、共通のコメディエーターSmad4に結合して、機能性タンパク質複合体を形成し、これらの複合体は、核に遊走して、多種多様な癌関連遺伝子標的を調節にする。示差的発現遺伝子リスト中では、BMPシグナル伝達ネットワークおよびTGFβシグナル伝達ネットワークの両方が強化されることから、これらの共通のコメディエーターSmad4の直接的な分子的検証に至った。この目的のために、ウエスタンブロットアッセイおよびIHCアッセイを行い、Pten−/−PIN疾患においては、野生型前立腺組織と比べて、Smad4の発現、リン酸活性化(phosphor−activated)型Smad2/3およびSmad応答性標的ID1の著しい上方制御を記録した(図1BおよびC)。それに比べて、構成的に発現させたpSmadl/5/8は、Pten−/−腫瘍においては、野生型前立腺組織と比べて、わずかな増加を示したに過ぎない(図1B)。換言すると、これらの緩徐進行型Pten−/−前立腺腫瘍は、BMP/TGFβ−Smad4のシグナル伝達経路の著しい活性化を示し、このことから、前立腺癌進行の遮断におけるSmad4の関与の可能性が示唆される。この仮説は、ヒトPCAにおけるSmad4発現が、疾患が原発性から転移性に進行する間は、有意に下方制御されるという観察と合致している(図1D〜F)。
【0197】
(実施例3)
SMAD4により、PTEN欠損前立腺腫瘍の進行が制約を受ける。
【0198】
我々は、Smad4依存性の進行の遮断およびその結果として生じる進行性疾患の不活性化のこの仮説に遺伝子的に対処するために、前立腺特異的欠失化体(deletor)Pb−Cre4を活用して、前立腺上皮中のPtenおよび/またはSmad4を特異的に欠失させた。PtenloxP/loxPPb−Cre4マウスおよびSmad4loxP/loxPPb−Cre4マウス(以下、Ptenpc−/−およびSmad4pc−/−)は、以前の報告18,20と同様に、ロバストなCre媒介型組換えを、前立腺、具体的には、前側前立腺葉、腹側前立腺葉および背外側前立腺葉においてのみ示した(未公開のデータ)。以前のPten研究18、20と合致して、このPtenpc−/−マウスは、早ければ9週齢で、全ての3つの葉において、高グレードのPINを一貫して発症した。対照的に、PB−Cre4(以下、WT)同腹仔およびSmad4pc−/−同腹仔は、正常な前立腺組織像を示した(図2A)。注目すべきことに、2年齢まで、Smad4の欠損は、前立腺組織像に対して識別可能な影響を示さず(図9AおよびB)、この組織像は、腫瘍のない状態を維持した(n=15;未公開のデータ)。
【0199】
このPtenpc−/−モデルは、緩慢に進行する新生物の表現型を示し、浸潤性の特色は、17〜24週齢後に出現する。大部分のマウスが、1年齢時に生存している(図2B)。それとは極めて対照的に、Ptenpc−/−Smad4pc−/−マウスは、浸潤性の高いPCAを、9週齢までに発症し(図2A、d)、32週齢までに全ての事例で死亡してしまった(図2B,C)。これらの大型の前立腺腫瘍は、膀胱出口の閉塞、および水腎症を発症し、これは、流出の閉塞に起因する腎臓の膨張であり、その結果、腎不全に至り、死亡の原因となる可能性が高い(図10)。
【0200】
我々は、Ptenpc−/−Smad4pc−/−の進行の表現型についての腫瘍生物学的基礎を理解し始めるために、発達しつつある前立腺腫瘍において、Smad4の状況の、増殖、アポトーシスおよび老化のレベルに対する影響を評価した。我々は、Ptenpc−/−Smad4pc−/−腫瘍、特に、浸潤性腫瘍の前面において、増殖の著しい増加を観察した。一方、Ptenpc−/−腫瘍は、より中程度の増殖活性を示した(図3A、C)。また、これらの明確に異なる増殖性のプロファイルと一致して、我々は、Ptenpc−/−Smad4pc−/−腫瘍においては、Ptenpc−/−腫瘍と比べてSA−β−Gal活性の著しい減少も観察し(図3B、E)、このことは、癌遺伝子誘導型老化(OIS)のチックポイントの活性解除と一致する。最後に、Ptenpc−/−Smad4pc−/−腫瘍およびPtenpc−/−腫瘍は、TUNELアッセイにより測定した場合、アポトーシスによる細胞死においては差を示さなかった(図3A、D)。
【0201】
(実施例4)
SMAD4の喪失は、完全に浸透的浸潤性かつ転移性である表現型を引き起こす。
【0202】
ヒトにおける致命性PCAの必須の特色は、浸潤性かつ転移性の疾患への進行であり、このことは、Ptenpc−/−Smad4pc−/−腫瘍の詳細な連続的なおよびエンドポイントの組織病理学的調査を促す。Ptenpc−/−Smad4pc−/−腫瘍は、基底膜を通る浸透を、早ければ9週で示した(n=7匹調査)。一方、同じ期間の間に、全てのPtenpc−/−新生物(n=7匹調査)は、基底膜に限局した(未公開のデータ)。注目すべきことに、最終エンドポイントの調査では、全ての25匹の腫瘍担持Ptenpc−/−Smad4pc−/−マウスが、流入領域リンパ節への転移性の広がりを示し、また、これらのマウスのうち、2匹は肺転移も示した(図4A、4B、a、b)。記録した転移性疾患が前立腺上皮起源であることを、サイトケラチン(CK)8およびアンドロゲン受容体(AR)についての陽性の染色によって確認した(図4C、e、f)。25匹のPtenpc−/−Smad4pc−/−マウスはいずれも、泌尿器の閉塞に起因する迅速な終焉に、かつ/またはヒトPCAにおけるこの主要な特色を可能にするSmad4の喪失を上回る遺伝子事象の必要性に関係し得る骨への転移を示なかったことは注目に価する(図10)。対照的に、25匹のPtenpc−/−腫瘍担持マウスはいずれも、転移性病変を、最長1年齢まで発症しなかった(図4A)が、8匹の1.5年齢超のマウス中、1つの腰部リンパ節転移および1つの肺転移を記録した。この観察は、以前の報告と一致する。我々の知る限り、これは、ヒトPCAと同様、CKおよびARの前立腺マーカーを保持する、最初の完全に浸透的転移性の前立腺線癌モデルである。
【0203】
(実施例5)
ヒト前立腺癌におけるPCDETERMINANTの同定およびそれらの予後を示す有用性
Ptenpc−/−PCAモデルとPtenpc−/−Smad4pc−/−PCAモデルとで際立って異なる進行の表現型、および配列特異的転写因子としてのSmad4の突出した機能から、Smad4が悪性の進行を特に前立腺癌において制約するように機能し得るであろう機序を解明するための比較トランスクリプトーム解析のための理想的な枠組みが得られる。我々は、この目的のために、両方のモデルから、およそ15週齢において、同等な大きさの早期原発性前側葉前立腺腫瘍を得た。組織学的調査から、これらのマウスにおいては転移性の疾患がないことを記録した(未公開のデータ)。腫瘍サンプルを処理して、遺伝子発現プロファイリングのために、組織像、免疫組織化学的検査およびRNA抽出を行った。各遺伝子型からの3つの腫瘍を用いた最初の比較解析によって、284個の示差的に発現したPCDETERMINANTを同定した(表1A)。それに続く、各遺伝子型からの5つの腫瘍の拡大した群を用いた解析によって、372個の示差的に発現したPCDETERMINANTの拡大した群を同定した(表1B)。予想通り、目的変数なしの分類によって、Ptenpc−/−;Smad4pc−/−腫瘍とPtenpc−/−腫瘍とが容易に分離された(未公開のデータ)。これら2つのモデル間の表現型の差を考慮すると、284個の示差的発現遺伝子(200個の上方制御された遺伝子および84個の下方制御された遺伝子)の知識ベース経路解析が、細胞の動きを最も有意な機能カテゴリーとして特定し、それには、これらの転移促進性のPtenpc−/−Smad4pc−/−原発性腫瘍において強化されている癌、細胞死、ならびに細胞の成長および増殖が続くことを特定したことは満足な結果であった(図11)。
【0204】
次に、我々は、マウス前立腺腫瘍発現プロファイルの比較を通して発見したPCDETERMINANTが、ヒト癌と関連性があることを確認することを追求した。我々は、この目的のために、PSAの再発(いわゆる生化学的再発)までの時間を用いてアノテートされた79個の臨床的に局在性の検体からなるGlinskyらによるヒトPCA遺伝子発現データセットを活用した。表1Aに列挙する284個のPCDETERMINANTを使用した、階層的クラスター分析による目的変数なしの分類によって、臨床患者サンプルが、再発について有意な臨床治療成果を示すサブグループに階層化された(図5、p<0.0001)。
【0205】
(実施例6)
統合的な解析により、転移可能な原発性腫瘍において予測されるSMAD4標的のセットが定義される。
【0206】
次に、我々は、284個のPCDETERMINANTのプロモーターを、進化的に保存されているSmad結合性エレメントについてスキャンして、66個の予測される直接的なSmad4転写標的を同定した(図7A;完全なリストについては、表2を参照されたい)。この66個のSmad4転写標的(45個の上方制御される標的および21個の下方制御される標的)の知識ベース経路解析が、細胞の動きを最も有意な機能カテゴリーとして再度特定し(p=2.46×10−12)、それには、これらの転移促進性のPtenpc−/−Smad4pc−/−原発性腫瘍において強化されている癌(p=3.77×10−10)、細胞の成長および増殖(p=4.14×10−8)、ならびに細胞死(p=5.75x10−7)が続くことを特定した(図7B)。際立つことには、66個の遺伝子のうち、28個が細胞の動きの遺伝子として機能によりアノテートされている。この66個の遺伝子リストは、ヒト転移性PCAのアレイ−CGHプロファイル19ともさらに交差し、このことから、進行性の疾患においては、主要なSmad4依存性の進行を引き起こす事象自体が、標的とされ、ゲノム変化を起こすことが推論される。すなわち、Smad4の喪失により上方制御された遺伝子自体が、標的とされて増幅され、一方、下方制御された遺伝子は、欠失されるであろう。この種を越えて得られた17個の遺伝子(図8A)のうち、5個(FSCN1、ID3、KRT6A、SPP1およびZBTB16)は細胞の動きにつながることが公知である。興味深いことに、メラノーマにおける比較腫瘍ゲノム解析から最近、FSCN1が主要な転移および予後を示すPCdeterminantとして同定されており(未公開のデータ)、我々の遺伝子サインは、複数の腫瘍型にわたり、浸潤および転移のプロセスならびに臨床治療成果と関連性がある可能性が高まっている。
【0207】
(実施例7)
種間三角計測SMAD4転写標的は、臨床治療成果につながる
我々は、これらの進化的に保存されている予測されるSmad4標的についてのヒトとの関連性の証拠および転移性PCAのこの新規モデルについてのさらなる証明を集めるために、ヒトPCAにおいて、マウスのみの66個の遺伝子リストと比べて、17個の種間三角計測遺伝子の、PSA再発を階層化する能力を評価した。我々は、この目的のために、PSAの再発(いわゆる生化学的再発)までの時間を用いてアノテートされた79個の臨床的に局在性の検体からなるGlinskyらによるヒトPCA遺伝子発現データセット15を活用した。17個の遺伝子リストを使用した、階層的クラスター分析による目的変数なしの分類によって、これらの患者の腫瘍が2つの主枝のうちの1つに割り当てられた(図7C)。統計学的有意性のためにはサンプルサイズが小さすぎるにもかかわらず、このコホート中の5つの転移性検体のうちの4つが、これらの17個の遺伝子によって定義された高リスク群にクラスター形成した(図7B)。さらに、Glinskyのプロファイリング研究15からの17個の遺伝子セットの無作為に選択したリスト(n=10)は、統計学的に有意な分離を生成することができなかった(P=0.8610;0.6086;0.1827;0.8338;0.6391;0.7918;0.1814;0.9851;0.3946;0.9201;)が、この17個の遺伝子リストによって階層化されたこれら2つのサブクラスのカプラン−マイヤー解析からも、再発までの時間の有意な差が示された(p=0.0086)(図7D)。それに比べて、66個の遺伝子セットは、患者を示差的な治療成果サブクラスに階層化することはできず(p=0.0626)、このことにより、66個の遺伝子リストから、ノイズのバイスタンダーが種間フィルターによって有効に間引かれていることが立証された(図12)。
【0208】
次に、我々は、この17個の遺伝子リストが前立腺に特異的であるかどうかを評価するために、295個の原発性乳癌からの治療成果によってアノテートされている発現データ28を使用して類似の解析を実施した。図8Eに示すように、この17個の遺伝子を用いた目的変数なしのクラスター化によって、これらの乳腺腫瘍サンプルが全体的な生存(p<0.0001)および無転移生存(p=0.0005)において有意な差を示す2つの群に細分類された(図8F)。無作為に選択した17個の遺伝子のリスト(n=10)は再度、カプラン−マイヤー曲線の何らかの有意な分離を達成することができなかった(Supp infoまたはfig)。一方、この66個の遺伝子セットは、このタスクにおいては不明確な性能、すなわち、(p=0.0263)の全体的な生存および(p=0.0886)の無転移生存を示した。
【0209】
総合すると、これらの相関解析は、複数のヒト腫瘍型において、進行の間のSmad4の頻繁かつ有意な下方制御と併せて、ヒトの前立腺および乳房の腺癌を、良好な治療成果のサブクラスと不良な治療成果のサブクラスとに分類する(Oncomineデータ、ボックスプロットに示す)ための、これらの進化的に保存されているSmad4標的の検出力を実証し、このPtenpc−/−Smad4pc−/−マウスが、ヒトPCA中に存在するサイン事象によって引き起こされた転移性前立腺と強い関連性を示すモデルであることを検証するのに役立ち、我々の統合的種間解析アプローチを支持している。
【0210】
(実施例8)
インシリコにおける解析によって、細胞の動きの遺伝子が、転移性PTEN/SMAD4腫瘍においては、緩徐進行型PTEN腫瘍と比較して、示差的に発現されることが明らかになっている。
【0211】
Ptenpc−/−PCAモデルとPtenpc−/−Smad4pc−/−PCAモデルとで際立って異なる進行の表現型、および284個の遺伝子パネルの、ヒトPCA患者集団を階層化する能力によって、PCDETERMINANTが、転移性の進行を機能的に誘導していることが強調される。我々は、これらの遺伝子によって付与される生物学的活性の型に関する早期の洞察を得るために、知識ベース経路解析を、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)(Ingenuity Systems Inc.、Redwood City、CA)を使用して実施した(図6)。細胞の動きのカテゴリーは、転移性ではないが浸潤性であるPtenpc−/−;p53pc−/−腫瘍においては、18番としてランク付けされ(図6B)、一方、細胞の動きの遺伝子は、転移易発性のPtenpc−/−;Smad4pc−/−腫瘍については、1番としてランク付けされた(図6A)。
【0212】
(実施例9)
ヒト前立腺癌において進行相関性発現を示すPCDETERMINANT
ゲノムの不安定性が腫瘍形成を引き起こして、共通の明確に異なる遺伝子プロファイルを示す、不均一な細胞亜集団から構成される原発性腫瘍を生み出すことは十分に確立されている。したがって、原発性腫瘍中のPCDETERMINANT−発現の亜集団には増殖性の利点が与えられ、そうした亜集団が究極的に広がる場合、PCDETERMINANTの発現が、より均一に派生した転移病変においては、強化されて現れることに起因して増加することは理にかなっている。そのような進行関連発現を評価するために、372個のPCDETERMINANTを、Oncomine上の非常に多数の前立腺癌発現プロファイリングデータにおいて調べた。74(74)個のPCDETERMINANTが、ヒト前立腺癌においては、進行相関性発現を示すことが見出され(表4)、このことによって、PCDETERMINANTのヒト癌との関連性がさらに強調された。
【0213】
(実施例10)
種間およびプラットフォーム間の三角計測PCDETERMINANTは、ヒト前立腺癌の予後を示す
次に、転移易発性マウス腫瘍と緩徐進行型マウス腫瘍との間でRNAレベルにおいて示差的に発現した372個のPCDETERMINANTを含むこの転移サインを、ヒト転移性前立腺癌データセット19中のコピー数異常(CNA)中に存在する非常に多数の遺伝子と整合させた。我々は、以前の記載24に従って、circular binary segmentationによって処理した、転移性ヒト前立腺癌のACGHプロファイルGSE802619の最小共通領域(MCR)中の常在遺伝子を使用した。Ptenpc−/−マウス前立腺腫瘍とPtenpc−/−Smad4pc−/−マウス前立腺腫瘍との間で有意な示差的発現を示し、かつ転移性のヒト前立腺腫瘍においてコピー数変化を示す共通のオルソロガスな遺伝子を選択して、さらなるコンピュータ解析を行った。この解析によって、転移易発性マウス腫瘍においては、RNAレベルで示差的に発現し、転移性ヒト前立腺癌においては、DNAレベルで示差的に発現する56個のPCDETERMINANTが同定された(表7)(図6A)。
【0214】
それに続いて、この56個の遺伝子セット(表7)を、前立腺癌遺伝子発現データセット上で、予後を示す有用性について評価した。患者サンプルが、この56個の遺伝子サインによって定義された2つの主要なクラスターのカテゴリーに分かれた(低リスク群および高リスク群)。生化学的再発(BCR)PSAレベル(>0.2ng/ml)のカプラン−マイヤー解析は、この56個の遺伝子のクラスターによって定義された群に基づいた。「高リスク」コホートについては、「低リスク」コホートと比較して、BCR PSA無再発生存の統計学的有意性(P=0.0018)が見出された(図21B)。
【0215】
(実施例11)
浸潤に機能的に関与するPCDETERMINANTを同定するための遺伝子スクリーニング。
【0216】
遺伝子スクリーニングは、転移を機能的に誘導するPCDETERMINANTのサブセットを同定するのに有用である(図22)。特定のPCDETERMINANT(特に、PCDETERMINANT1〜245)の異種性の過剰発現によって、ヒト細胞の浸潤活性が増加する。同様に、特定のPCDETERMINANT(特に、PCDETERMINANT246〜372)の下方制御の結果、浸潤の増強も生じる。
【0217】
(実施例12)
PCDETERMINANTは、インビトロにおいて浸潤を直接引き起こす
上方制御および下方制御されるPCDETERMINANTに相当するcDNAクローンを、pMSCVレトロウイルス系中で発現させた。ヒト前立腺癌細胞系PC3に、レトロウイルス上清を個々に形質導入し、標準的な24ウエルのマトリゲル浸潤チャンバーを使用して、浸潤について三つ組でアッセイした。各遺伝子の浸潤性を、GFP対照と比較した(表5)。三つ組の、SPP1および/またはGFP対照を過剰発現するPC3細胞を用いた代表的なBoydenチャンバー浸潤アッセイを示す(図23A)。SPP1を強制発現させることよって、ヒトPCA PC3細胞の浸潤活性を有意に増強するその能力が、浸潤アッセイにより確認された。浸潤のレベルの差は、統計学的に有意であった(P<0.05)(図23B)。特定の浸潤促進性のPCDETERMINANTが、細胞の動きの遺伝子としてアノテートされており、一方、その他は、そうではない(表5、図23C)。興味深いことに、我々は、PC3細胞中では、これら28個の細胞の動きの遺伝子からは、12ヒットがあり(43%のヒット);一方、その他の機能カテゴリーに属する38個の遺伝子からは、6ヒットしかない(16%のヒット)ことを見出した。したがって、これらの機能的検証の結果によって、これらの遺伝子が細胞の動きを可能にする遺伝子であるというインシリコにおけるアノテーションの正確さが確認されている。インビボにおける進行性Ptenpc−/−Smad4pc−/−腫瘍の表現型およびインシリコにおける細胞運動性分子プロファイルの背景に対して、推定されるSmad4−Pten標的の浸潤促進活性を記載するこれらの機能データから、この浸潤遮断が、TGFβ/BMP−Smad4シグナル伝達ネットワークによる進行阻害の主要な機構であり、このことを、その後の臨床検証の優先順位付けのために活用することができることが示されている。
【0218】
(実施例13)
PCDETERMINANTの小型のパネルが、ヒト前立腺癌における予後を示す。
【0219】
特定の実施形態では、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、150、200、250、300、350個または全372個のPCDETERMINANTを測定して、個々の腫瘍の、転移する傾向に関する予後情報を提供するのが好都合である。その他の実施形態では、小型のパネルのPCDETERMINANTを利用して、そのような予後情報を提供するのが好都合である。図5、8、12、および21は、ヒトのPCAまたは乳房の治療成果を階層化する>16個のPCDETERMINANTから構成されるパネルを同定している。次に、我々は、PCDETERMINANTのより小型のパネルの有用性を探索した(図24)。前立腺癌遺伝子発現データセット上では、PtenおよびSmad4の発現の調節不全が、関連のCyclin D1(増殖/老化)およびSPP1(運動性ネットワーク)と一緒になって生じ、それに続いて、ヒト前立腺癌の進行と相関することが示された(図24A)。患者サンプルが、K平均法により、PTEN、SMAD4、Cyclin D1およびSPP1のサインによって定義された2つの主要なクラスターのカテゴリー(高リスク群および低リスク群)に分かれた。高リスク群の患者は、カプラン−マイヤー解析により、生化学的再発(BCR)PSAレベル(>0.2ng/ml)の統計学的有意性を示した。PCAの進行における、PTEN、SMAD4、Cyclin D1およびSPP1のサインの有意な相関性を、独立したPhysicians’ Health Study(PHS)データセットにおいてc−statisticを用いて検証した。PTEN、SMAD4、Cyclin D1およびSPP1は、致命的な治療成果の予測においては、グリーソンスコアと類似する検出力を示している。PHSにおいては、PTEN遺伝子、SMAD4遺伝子、Cyclin D1遺伝子およびSPP1遺伝子を、グリーソンに加えることによって、グリーソン単独のモデルよりも、致命的な治療成果の予測が有意に改善されている(図24B)。さらに、PTEN、SMAD4、Cyclin D1およびSPP1の4個の遺伝子のセットが、Broad InstituteのMolecular Signature Database(MSigDB、2.5版)において管理された244個の二方向性サインのうち、最も強化されているとランク付けられ、このことからも、致命的な治療成果の予測における、この4個の遺伝子サインのロバストな有意性が示された(図24C)。
【0220】
(実施例14)
PCDETERMINANTは、乳房における予後を示す
PCDETERMINANTは、前立腺癌の状況において発見されたが、複数の癌型に関連性がある中心的な転移性のプロセスを調節する可能性が高い。我々は、この可能性を探索するために、乳房腺癌データセット上で、予後を示す有用性について、56個の種間/プラットフォーム間でフィルターをかけたPCDETERMINANTを評価した(表7)。患者サンプルが、この56個の遺伝子サインによって定義された2つの主要なクラスター(低リスク群および高リスク群)のカテゴリーに分かれた。カプラン−マイヤー解析を、この56個の遺伝子のクラスターによって定義された群に基づいて、生存確率(p=0.00358)(図25A)および無転移生存(p=00492)(図25B)について実施した。さらに次に、我々は、前立腺癌において進行相関性発現を示す74個のPCDETERMINANTを調べ(表4)、乳癌においても進行相関性発現を示す20個のPCDETERMINANTも同定した。前立腺癌および乳癌の両方において進行相関性発現を示すこれら20個のPCDeterminant(表6)を、乳房腺癌データセット上で、予後を示す有用性について評価した。患者サンプルが、この20個の進行相関性遺伝子サインによって定義された2つの主要なクラスター(低リスク群および高リスク群)のカテゴリーに分かれた。カプラン−マイヤー解析を、これら20個のPCDeterminantによって定義された群に基づいて、生存確率(p=2.93e−11)(図26A)および無転移生存(p=4.62e−10)(図26B)について実施した。
【0221】
【表2−1】

【0222】
【表2−2】

【0223】
【表3】

【0224】
【表4−1】

【0225】
【表4−2】

【0226】
【表5−1】

【0227】
【表5−2】

【0228】
【表6】

【0229】
【表7−1】

【0230】
【表7−2】

【0231】
【表7−3】

【0232】
【数1】

【0233】
【数2】

【0234】
【数3】

【0235】
【数4】

【図9A】

【図9B】

【図10A】

【図10B】

【図10C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定レベルの予測可能性を用いて、対象における癌再発のリスクまたは転移性癌を発症するリスクを評価するための方法であって、
a.前記対象由来のサンプル中の、PCDETERMINANT1〜372からなる群から選択された2個以上のPCDETERMINANTのレベルを測定するステップと、
b.前記サンプル中の前記2個以上のPCDETERMINANTのレベルの臨床的に有意な変化を測定するステップであって、前記変化が、前記対象において癌再発のリスクまたは転移性癌を発症するリスクが高いことを示しているステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記2個以上のPCDETERMINANTが、
a)表2、
b)表3、
c)表4、
d)表5、
e)表6、
f)表7、および
g)表2〜7から選択された2つ以上の表
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PCDETERMINANTが、PTEN、SMAD4、サイクリンD1およびSPP1を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記癌に関連する少なくとも1つの標準的なパラメータを測定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が前立腺癌であり、前記標準パラメータがグリーソンスコアである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
PCDETERMINANTの前記レベルが、電気泳動、免疫化学的手法または非浸潤性イメージングによって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫化学的検出が、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイ、または酵素結合免疫吸着アッセイによって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、原発性腫瘍、再発性腫瘍、または転移性前立腺癌を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが、腫瘍生検標本、血液または生物学的液体中の循環腫瘍細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記生検標本が、コア生検標本、切除組織生検標本、または切開組織生検標本である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
4個以上のPCDETERMINANTの発現レベルを測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
所定レベルの予測可能性を用いて、対象における癌再発のリスクまたは転移性癌を発症するリスクを評価するための方法であって、
a.前記対象由来のサンプル中の、PCDETERMINANT1〜372からなる群から選択された2個以上のPCDETERMINANTのレベルを測定するステップと、
b.前記2個以上のPCDETERMINANTのレベルを基準値と比較するステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記基準値が指標値である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
所定レベルの予測可能性を用いて、対象における腫瘍の進行を評価するための方法であって、
a.第1の期間で、前記対象由来の第1のサンプル中の、PCDETERMINANT1〜372からなる群から選択された2個以上のPCDETERMINANTのレベルを検出するステップと、
b.第2の期間で、前記対象由来の第2のサンプル中の2個以上のPCDETERMINANTのレベルを検出するステップと、
c.ステップ(a)で検出された前記2個以上のPCDETERMINANTのレベルを、ステップ(b)で検出されたレベルまたは基準値と比較するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記第1のサンプルが、前記腫瘍の治療前に前記対象から採取される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のサンプルが、前記腫瘍の治療後に前記対象から採取される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
所定レベルの予測可能性を用いて、再発性癌または転移性癌の治療の有効性をモニタするための方法であって、
a.第1の期間で、前記対象由来の第1のサンプル中の、PCDETERMINANT1〜372からなる群から選択された2個以上のPCDETERMINANTのレベルを検出するステップと、
b.第2の期間で、前記対象由来の第2のサンプル中の、2個以上のPCDETERMINANTの有効量のレベルを検出するステップと、
c.ステップ(a)で検出された前記2個以上のPCDETERMINANTのレベルを、ステップ(b)で検出されたレベルまたは基準値と比較するステップであって、治療の有効性が、前記対象由来の2個以上のPCDETERMINANTのレベルの変化によってモニタされるステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記対象が、前記癌の治療を事前に受けている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のサンプルが、前記癌の治療前に前記対象から採取される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のサンプルが、前記癌の治療後に前記対象から採取される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のサンプルを、前記癌の再発後に前記対象から採取する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記第2のサンプルを、前記癌の再発前に前記対象から採取する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
所定レベルの予測可能性を用いて、腫瘍を有すると診断された対象に関する治療レジメンを選択するための方法であって、
a.第1の期間で、前記対象由来の第1のサンプル中の、PCDETERMINANT1〜372からなる群から選択された2個以上のPCDETERMINANTのレベルを検出するステップと、
b.任意選択で第2の期間で、前記対象由来の第2のサンプル中の2個以上のPCDETERMINANTのレベルを検出するステップと、
c.ステップ(a)で検出された前記2個以上のPCDETERMINANTのレベルを、基準値または任意選択でステップ(b)で検出された量と比較するステップと
を含む方法。
【請求項24】
前記対象が、腫瘍の治療を事前に受けている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のサンプルを、前記腫瘍を治療する前に前記対象から採取する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のサンプルを、前記腫瘍を治療した後に前記対象から採取する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
PCDETERMINANT1〜372からなる群から選択された2個以上のマーカーの、マーカーレベルのパターンを含む、転移性前立腺癌基準発現プロファイル。
【請求項28】
請求項27に記載のプロファイルを作成するのに十分な、PCDETERMINANT1〜372からなる群から選択された対応するPCDETERMINANTを検出する複数のPCDETERMINANT検出試薬を含むキット。
【請求項29】
前記検出試薬が、1つもしくは複数の抗体またはその断片を含む、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記検出試薬が1種または複数のオリゴヌクレオチドを含む、請求項28に記載のキット。
【請求項31】
前記検出試薬が1種または複数のアプタマーを含む、請求項28に記載のキット。
【請求項32】
請求項27に記載の1つまたは複数の転移性前立腺癌基準発現プロファイルと、任意選択で追加の試験結果および対象情報とを含有する機械可読媒体。
【請求項33】
生理学的または生化学的な経路に関連した転移を示す1個または複数のPCDETERMINANTを含む、PCDETERMINANTパネル。
【請求項34】
前記生理学的または生化学的な経路が、細胞移動、血管新生、細胞外マトリックス分解、溢出、コロニー形成またはアノイキスを含む、請求項33に記載のパネル。
【請求項35】
腫瘍の進行を示す1個または複数のPCDETERMINANTを含む、PCDETERMINANTパネル。
【請求項36】
PCDETERMINANTの活性または発現を調節する化合物を同定する方法であって、
(a)前記PCDETERMINANTを発現する細胞を提供するステップと、
(b)前記細胞を、候補化合物を含む組成物と接触させるステップと、
(c)物質が前記PCDETERMINANTの発現または活性を変化させるか否かを決定するステップと
を含み、それにより、前記化合物の存在下で観察された前記変化が、細胞を、前記化合物を含まない組成物と接触させたときに観察されない場合、前記同定された化合物は、PCDETERMINANTの活性または発現を調節する方法。
【請求項37】
前記細胞を、インビボ、エキソビボ、またはインビトロで接触させる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
対象の癌を治療する方法であって、PCDETERMINANTの活性または発現を調節する化合物を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項39】
対象の前立腺癌を治療しまたは予防する方法であって、PCDETERMINANTの活性または発現を調節する薬剤を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項40】
ゲノムが内在性のPten遺伝子およびSmad4遺伝子の両方のホモ接合型破壊を含有するダブルノックアウトのトランスジェニックマウスであって、野生型マウスと比較して、前立腺腫瘍の形成に対する感受性の増加を示すトランスジェニックマウス。
【請求項41】
請求項40に記載のトランスジェニックマウス由来の細胞。
【請求項42】
上皮細胞である、請求項41に記載の細胞。
【請求項43】
前記上皮細胞が、前立腺細胞、乳房細胞、結腸細胞または肺細胞である、請求項41に記載の細胞。
【請求項44】
前立腺癌の進行を阻害する治療剤についてスクリーニングする方法であって、候補治療剤を請求項40に記載のトランスジェニックマウスに投与するステップと、前記マウスにおいて前記治療剤の前立腺癌(prostate caner)の進行に対する効果を評価するステップとを含む方法。
【請求項45】
生物マーカーを同定する方法であって、試験化合物の非存在下において請求項40に記載のトランスジェニックマウスから得た第1のサンプル中の遺伝子発現プロファイル、ゲノムプロファイルまたはプロテオミクスプロファイルを、試験化合物の存在下において請求項40に記載のトランスジェニックマウスから得たサンプル中の前記プロファイルと比較するステップを含む方法。
【請求項46】
前記サンプルが、細胞サンプル、血液サンプルまたは循環腫瘍細胞である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
生物マーカーを同定する方法であって、第1の期間において請求項40に記載のトランスジェニックマウスから得た第1のサンプル中の遺伝子発現プロファイル、ゲノムプロファイルまたはプロテオミクスプロファイルを、第2の期間において請求項40に記載のトランスジェニックマウスから得たサンプル中のプロファイルと比較するステップを含む方法。
【請求項48】
前記サンプルが、細胞サンプル、血液サンプルまたは循環腫瘍細胞である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
キットであって、PTEN、SMAD4、サイクリンD1およびSPP1の検出または定量化のための試薬ならびに前記キットを使用するための指示を含むキット。
【請求項50】
ゲノムが内在性のPten遺伝子およびSmad4遺伝子の両方のホモ接合型破壊を含有する細胞を前立腺組織が含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、前記Pten遺伝子または前記Smad4遺伝子のいずれかにそのような破壊がない対照哺乳動物と比較して、前立腺癌の発症に対する感受性の増加を示し、Smad4遺伝子ではなく、Pten遺伝子のみにおけるホモ接合型破壊を有する対照哺乳動物と比較して、転移性であって、緩徐進行型ではない前立腺癌の発症に対する感受性の増加を示す、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項51】
癌を治療するための方法であって、
a)癌細胞がPCDETERMINANT1〜372のうちの2個以上のレベルにおいて臨床的に有意な変化を示す対象を提供するステップであって、前記変化が、前記対象において癌が再発するかまたは転移性癌を発症するリスクの増加を示すステップと、
b)前記対象を、看護療法の標準に加えて、アジュバント療法も用いて治療するステップと
を含む方法。
【請求項52】
前記看護療法の標準が、手術、放射線照射またはアンドロゲン除去である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前立腺癌を、前立腺癌の治療を必要とする対象において治療するための方法であって、
a)対象の前立腺癌組織由来のサンプル中のPTEN、SMAD4、CYCLIN D1およびSPP1の発現レベルに関する情報を得るステップと、
b)SPP1阻害剤またはCD44阻害剤を、前記発現レベルに基づいて前立腺癌が再発するかまたは転移性癌を発症するリスクがあると同定される対象に投与するステップと
を含む方法。
【請求項54】
前記阻害剤が、抗SPP1抗体、SPP!siRNA、CD44抗体またはCD44siRNAである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
対象の癌に治療レジメンが有益であるかどうかを決定する方法であって、
a)2個以上のPCDETERMINANT1〜372のレベルを検出するステップと、
b)ステップ(a)で検出された2個以上のPCDETERMINANTのレベルを基準値と比較するステップと
を含む方法。
【請求項56】
アジュバント治療を必要とする腫瘍患者を選択する方法であって、
DETERMINANT1〜372の2個以上を測定することにより、前記患者における転移のリスクを評価するステップであって、前記患者由来の腫瘍サンプル中の前記2個以上のDETERMINANTの臨床的に有意な変化は、前記患者がアジュバント治療を必要としていることを示すステップ
を含む方法。
【請求項57】
腫瘍患者に治療決定を知らせる方法であって、
前記患者から得た腫瘍サンプル中の、DETERMINANT1〜372の2個以上に関する情報を得るステップと、
前記2個以上のDETERMINANTが臨床的に有意に変化した場合に、前記患者における腫瘍転移を予防または低減する治療レジメンを選択するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2011−528442(P2011−528442A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518921(P2011−518921)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/050885
【国際公開番号】WO2010/009337
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(399052796)ディナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (36)
【Fターム(参考)】