説明

創薬用自動ティーチング装置及び方法

【課題】短時間で行え、計測精度が高精度であり、安全性が高い創薬用ピッキング機構の創薬用自動ティーチング装置及び方法を提供する。
【解決手段】創薬用ピッキング機構が、測定用治具400を把持するとともに、位置を認識させる収納セル112の4つの隔壁に囲まれた領域内に測定用治具400を挿入して4つの隔壁方向に移動させて、測定用治具400が隔壁110の上部に当接する位置を計測し、X軸方向の移動から得られた2つのX座標値とY軸方向の移動から得られた2つのY座標値を求め、前記2つのX座標値の平均と前記2つのY座標値の平均とを収納セル112の中心位置とする位置計測機能を有することによって、前記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創薬研究の分野において、多数の試料を識別・保管・観察するために使用される創薬用試料保管システムに関し、さらに詳しくは、創薬用試料を封入するマイクロチューブを複数本縦立収容する格子状の隔壁によって区画された収納セルを有する保管ラックに対して所定のマイクロチューブを抜き差しする創薬用ピッキング機構に収納セルの位置を予め認識させる創薬用自動ティーチング装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創薬研究の分野においては、図13に示すように、16行24列で384個の総区画数を有するSBS(Society for Biomolecular Screening)規格に準拠した保管ラック100であって、マイクロチューブ120内の容量を増加させるために保管ラック100を区画する隔壁を高さの低い格子状の隔壁110を残して取り除き、この格子状の隔壁110の交差部にチューブ支持ピン111を垂設した保管ラック100が知られている。この保管ラックは、角部を45度の角度で面取り処理を施し、開口部をアルミシートで封鎖した四角筒状のマイクロチューブ120を縦列収容するものであって、いわゆる、アルミシートタイプの保管ラック100として知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図14に示すように、前述した保管ラックと同様に16行24列で384個の総区画数を有する保管ラック200であって、四角筒状で底部に向けて細くなっているマイクロチューブ本体222と、円筒形状の開口部223と、この開口部223に弾性力によって嵌合するキャップ224とを有するマイクロチューブ220を収容するキャップタイプの保管ラックも提案されている。
【0004】
前述したような384個の総区画数を有する保管ラック(以下、「384ラック」という)にマイクロチューブを抜き差しするためには、10μmオーダーでの制御が可能な創薬用ピッキング機構が用いられている。そして、創薬用ピッキング機構を用いて384ラックに対してマイクロチューブを抜き差しする場合、創薬用ピッキング機構に予め384ラックの各収納セルの中心位置を記憶させる、いわゆるティーチングと呼ばれる作業が必要であった。このティーチングは、384ラックの四隅の収納セルの中心位置を求め、これらの四隅の収納セルの中心位置から残りの380個の収納セルの中心位置を計算によって求めていた。
【特許文献1】特開2007−297111号公報(第3頁第11〜16段落、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、四隅の収納セルの中心位置を求めるために、従来は、次のような人手に頼った能率の悪い方法を用いていた。すなわち、(1)創薬用ピッキング機構にマイクロチューブを把持させ、創薬用ピッキング機構のX・Y軸の位置を調整する。(2)創薬用ピッキング機構の把持部を降下させて、384ラックの収納セル内にマイクロチューブが入るかどうかを目視により確認する。(3)マイクロチューブが収納セル内に挿入できない場合は、創薬用ピッキング機構の把持部を上昇させて、前記(1)及び(2)の操作を繰り返す。(4)最終的に、マイクロチューブが収納セル内に挿入されたことが確認された場合、X方向及びY方向から目視により、その収納セルの中心位置を割り出す。
【0006】
したがって、従来のティーチングは、収納セルの中心位置の計測に長時間を要していた。また中心位置の計測は、0.1mmオーダーの精度が要求されるが目視で行っているため、作業者によって計測精度にバラツキが生じ、さらに、目視の際に作業者が通電中の創薬用ピッキング機構に近づく必要があるため感電及び衝突の虞があり危険であるという課題を有していた。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、短時間で行え、計測精度が高精度であり、安全性が高い創薬用自動ティーチング装置及び創薬用自動ティーチング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本請求項1に係る発明は、創薬用試料を封入するマイクロチューブを格子状の隔壁によって区画された所定の数の収納セルを有する保管ラックの所望の収納セルに抜き差しする創薬用ピッキング機構に対して、最初のピッキング動作を行う前に前記収納セルの位置を認識させる創薬用自動ティーチング装置において、前記創薬用ピッキング機構が、測定用治具を把持するとともに、位置を認識させる前記収納セルの4つの隔壁に囲まれた領域内に前記測定用治具を挿入して前記4つの隔壁方向に移動させて、前記測定用治具が隔壁の上部に当接する位置を計測し、X軸方向の移動から得られた2つのX座標値とY軸方向の移動から得られた2つのY座標値を求め、前記2つのX座標値の平均と前記2つのY座標値の平均とを前記収納セルの中心位置とする位置計測機能を有することにより、前記課題を解決したものである。
ここで、本発明において「測定用治具」とは、創薬用ピッキング機構に取り付けて収納セルの4つの隔壁に囲まれた領域内に挿入可能な治具の総称である。
【0009】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る創薬用自動ティーチング装置において、前記測定用治具が、前記マイクロチューブの頭部と同形状の上部把持部と前記収納セルの開口部の一辺の長さよりも十分に短い辺、直径又は長径を有する断面正方形、断面円形又は断面楕円形の突起形状である下部挿入部とを有することにより、前記課題をさらに解決したものである。
ここで、本発明において「長径」とは、楕円の内部の2焦点を通る直線、すなわち、長軸の長さを意味している。また、「十分に短い」とは、ティーチングの開始時において、作業者が測定用治具を収納セルを構成する4つの隔壁に囲まれた領域内に労せずして挿入することができるとともに、測定用治具が測定時に加わる負荷に耐えることができる長さのことを意味している。
【0010】
また、本請求項3に係る発明は、創薬用試料を封入するマイクロチューブを格子状の隔壁によって区画された収納セルを有する保管ラックの所望の位置に抜き差しする創薬用ピッキング機構に対して、最初のピッキング動作を行う前に前記収納セルの位置を認識させる創薬用自動ティーチング方法において、前記創薬用ピッキング機構が測定用治具を把持する第1工程と、位置を認識させる前記収納セルの4つの隔壁に囲まれた領域内に前記測定用治具を挿入させる第2工程と、前記測定用治具を前記4つの隔壁方向に移動させて、前記測定用治具が隔壁の上部に当接する位置を計測する第3工程と、X軸方向の移動から得られた2つのX座標値とY軸方向の移動から得られた2つのY座標値を求め、前記2つのX座標値の平均と前記2つのY座標値の平均とを前記収納セルの中心位置とする第4工程とを有することにより、前記課題を解決したものである。
【0011】
そして、本請求項4に係る発明は、請求項3に係る創薬用自動ティーチング方法において、前記測定用治具が、前記マイクロチューブの頭部と同形状の上部把持部と前記収納セルの開口部の一辺の長さよりも十分に短い辺、直径又は長径を有する断面正方形、断面円形又は断面楕円形の突起形状である下部挿入部とを有することにより、前記課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0012】
本請求項1に係る発明によれば、創薬用試料を封入するマイクロチューブを格子状の隔壁によって区画された所定の数の収納セルを有する保管ラックの所望の収納セルに抜き差しする創薬用ピッキング機構に対して、最初のピッキング動作を行う前に前記収納セルの位置を認識させる創薬用自動ティーチング装置において、前記創薬用ピッキング機構が、測定用治具を把持するとともに、位置を認識させる前記収納セルの4つの隔壁に囲まれた領域内に前記測定用治具を挿入して前記4つの隔壁方向に移動させて、前記測定用治具が隔壁の上部に当接する位置を計測し、X軸方向の移動から得られた2つのX座標値とY軸方向の移動から得られた2つのY座標値を求め、前記2つのX座標値の平均と前記2つのY座標値の平均とを前記収納セルの中心位置とする位置計測機能を有することにより、人手に頼らず創薬用ピッキング機構のティーチングを行うことができるため、ティーチング時間の短時間化、ティーチング精度の高精度化、ティーチング時における安全性の向上が実現できる。さらに、複雑なセンシング機能を必要としないので、装置構成の簡略化が図られ、製造コストの削減が実現できる。
【0013】
そして、本請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る創薬用自動ティーチング装置において、前記測定用治具が、前記マイクロチューブの頭部と同形状の上部把持部と前記収納セルの開口部の一辺の長さよりも十分に短い辺、直径又は長径を有する断面正方形、断面円形又は断面楕円形の突起形状である下部挿入部とを有することにより、ティーチングの開始時において、測定用治具を収納セルを構成する4つの隔壁に囲まれた領域内に挿入させ易いため、ティーチング時間のより一層の短時間化が実現できる。
さらに、測定用治具の上部把持部が、マイクロチューブの頭部と同形状であるため、既存の創薬用ピッキング機構に特別の調整等を必要とすることなく、そのまま装着でき、操作性が格段に向上する。
【0014】
また、本請求項3に係る発明によれば、創薬用試料を封入するマイクロチューブを格子状の隔壁によって区画された所定数の収納セルを有する保管ラックの所望の収納セルに抜き差しする創薬用ピッキング機構に対して、最初のピッキング動作を行う前に前記収納セルの位置を認識させる創薬用自動ティーチング方法において、前記創薬用ピッキング機構が測定用治具を把持する第1工程と、位置を認識させる前記収納セルの4つの隔壁に囲まれた領域内に前記測定用治具を挿入させる第2工程と、前記測定用治具を前記4つの隔壁方向に移動させて、前記測定用治具が隔壁の上部に当接する位置を計測する第3工程と、X軸方向の移動から得られた2つのX座標値とY軸方向の移動から得られた2つのY座標値を求め、前記2つのX座標値の平均と前記2つのY座標値の平均とを前記収納セルの中心位置とする第4工程とを有することにより、作業者の勘や経験によらず一定のフローに従って収納セルの中心位置を求めることができるため、ティーチング時間の短時間化、ティーチング精度の高精度化が実現できる。
【0015】
そして、本請求項4に係る発明によれば、請求項3に係る創薬用自動ティーチング方法において、前記測定用治具が、前記マイクロチューブの頭部と同形状の上部把持部を有するとともに前記収納セルの開口部の一辺の長さよりも十分に短い辺、直径又は長径を有する断面正方形、断面円形又は断面楕円形の突起形状である下部挿入部とを有することにより、ティーチングの開始時において、測定用治具を収納セルを構成する4つの隔壁に囲まれた領域内に挿入させ易いため、ティーチング時間のより一層の短時間化が実現できる。
さらに、測定用治具の上部把持部が、マイクロチューブの頭部と同形状であるため、既存の創薬用ピッキング機構に特別の調整等を必要とすることなく、そのまま装着でき、操作性が格段に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の創薬用自動ティーチング装置及び方法の好ましい一実施例について、図1乃至図12に基づいて説明する。
この実施例は、図13に示した16行24列で384個の総区画数を有するアルミシートタイプの保管ラック100を用いた場合における創薬用自動ティーチング装置及び方法に関するものであるが、図14に示したようなキャップタイプの保管ラック200並びに図示はされていないが、8行12列で96個の総区画数を有する保管ラックにも同様に適用することができる。
【0017】
ここで、図1は、本実施例の創薬用自動ティーチング装置及び方法に使用される創薬用ピッキング機構の把持部の斜視図であり、図2は、図1に示した把持部を矢視II方向から見たときの斜視図であり、図3は、図1に示した把持部を矢視III方向から見たときの側面図である。また、図4は、本実施例に使用する測定用治具の一例を示す斜視図であり、図5は、図4に示した測定用治具を矢視V方向から見たときの底面図である。図6は、本実施例に使用する測定用治具の別の一例を示す斜視図であり、図7は、図6に示した測定用治具を矢視VII方向から見たときの底面図である。図8は、本実施例に使用する測定用治具のさらに別の一例を示す斜視図であり、図9は、図8に示した測定用治具を矢視IX方向から見たときの底面図である。そして、図10は、図4に示した測定用治具の下部挿入部を保管ラックの1つの収納セルを構成する4つの隔壁に囲まれた領域内に挿入させたときの概略図であり、図11及び図12は、本実施例の自動ティーチングの動作を説明する断面図である。
【0018】
本発明に使用される創薬用ピッキング機構は、10μmオーダーでの制御が可能なものであれば、特に限定されるものではないが、本実施例においては、図1乃至図3に示すような簡易な構造及び操作が簡単な板バネ状に形成された2つの爪部材を使用した把持部300を備えた創薬用ピッキング機構を使用している。
【0019】
すなわち、本実施例で使用する創薬用ピッキング機構の把持部300は、鉄等からなる断面L字状の基準爪部材310と、ステンレス等からなる板バネ状に形成された2つの爪部材330、340を支持する鉄等からなる断面L字状の爪支持部材320とを有している。そして、この把持部300は、基準爪部材310と爪支持部材320とが、組み合わされてなる開口面が正方形の直方体空間であるマイクロチューブ収納穴315を有している。
【0020】
そして、爪部材330、340は、図1に示すように、先端が円形に屈曲された先端円形部位330a、340aを有している。図3には、爪部材340の先端円形部位340aを隠れ線で示している。これらの爪部材330、340の先端円形部位330a、340aが、図1に示したように、爪支持部材320の爪部材330、340を固着した部分の下方に設けた挿通穴320a、320bからマイクロチューブ収納穴315内に突出している。
【0021】
創薬用ピッキング機構の把持部300がこのような構成を有していることによって、マイクロチューブは、爪部材330、340の先端円形部位330a、340aによって、基準爪部材310のマイクロチューブ収納穴315を構成する直交する2つの内面に押し当てられる。そして、マイクロチューブの頭部を突落し棒により押圧しマイクロチューブをマイクロチューブ収納穴315から保管ラックの収納セルに向けて押し出すとき及びマイクロチューブの底部を突上げ棒により押し上げマイクロチューブを保管ラックからマイクロチューブ収納穴315内に押し戻すときにマイクロチューブを円滑に摺動させることができる。
【0022】
次に、本実施例で使用される測定用治具の一例について、図4及び図5に基づき説明する。図4及び図5に示した測定用治具400は、上部把持部400aがマイクロチューブの頭部と同形状であるとともに、下部挿入部400bが収納セルの開口部の一辺の長さよりも十分に短い辺を有する断面正方形の突起形状である。
【0023】
また、本実施例で使用される測定用治具の別の例について、図6及び図7に基づき説明する。図6及び図7に示した測定用治具500は、上部把持部500aがマイクロチューブの頭部と同形状であるとともに、下部挿入部500bが収納セルの開口部の一辺の長さよりも十分に短い直径を有する断面正方形の突起形状である。
【0024】
さらに、本実施例で使用される測定用治具の別の例について、図8及び図9に基づき説明する。図8及び図9に示した測定用治具600は、上部把持部600aがマイクロチューブの頭部と同形状であるとともに、下部挿入部600bが収納セルの開口部の一辺の長さよりも十分に短い直径を有する断面正方形の突起形状である。
【0025】
測定用治具として、図4及び図5にしたような形状を有した測定用治具400を用いたことにより、図10に示したように測定用治具400の下部挿入部400bを保管ラック100の1つの収納セル112を構成する4つの隔壁110に囲まれた領域内に挿入させ易いため、ティーチング時間のより一層の短時間化が実現でき、その効果は甚大である。なお、図10において、測定用治具400の上部把持部の描写は省略している。
【0026】
また、図6及び図7並びに図8及び図9に示した測定用治具500、600を用いた場合においても下部挿入部500b、600bの直径又は長径が収納セル112の開口部の一辺の長さよりも十分に短く、保管ラック100の1つの収納セル112を構成する4つの隔壁110に囲まれた領域内に挿入させ易いため、ティーチング時間のより一層の短時間化が実現できる。さらに、下部挿入部500b、600bに角がないため、隔壁110との接触時における衝撃を低減させるという効果が奏される。
【0027】
ここで、測定用治具400、500、600の材質は、特に限定されるものではないが本実施例においては、軽量であり加工性・耐薬性・耐久性に優れているアルミニウムを用いている。
【0028】
次に、本実施例の主要部である収納セルの位置検出工程について、図11及び図12に基づいて説明する。図11及び図12には、図1に示した創薬用ピッキング機構の把持部300をXI−XI線で切断して矢印方向から見たときの垂直断面図と、保管ラック100の1つの収納セル112の垂直断面図と、測定用治具400の側面図とが記載されている。
【0029】
まず、図11(a)に示すように、創薬用ピッキング機構の把持部300のマイクロチューブ挿入穴315に測定用治具400を把持させる(第1工程)。
【0030】
そして、測定用治具400の下部挿入部400bを位置の認識対象となる収納セル112、すなわち、保管ラック100の四隅のうちの1つの収納セル112を構成する4つの隔壁110に囲まれた領域内に挿入するように創薬用ピッキング機構の把持部300を手動にて教示しながら矢印A方向に降下させる。
【0031】
次に、図11(b)に示すように、把持部300が、保管ラック100のチューブ支持ピン111に接触しない程度に降下させた後、突落し棒350を矢印B方向に降下させて測定用治具400を降下させる。そして、図示はされていないが、突落し棒350に付随する下限センサなどで測定用治具400の下部挿入部400bが、隔壁110に衝突することなく1つの収納セル112を構成する4つの隔壁110に囲まれた領域内に挿入されたことを検知する(第2工程)。
【0032】
ここで、突落し棒350の降下にエアー機器を使用して、測定用治具400の下部挿入部400bが隔壁110に当接する速度と圧力を調整することにより、すなわち、当接させる速度を遅くし、当接時の圧力を弱くすることによって、保管ラック100の隔壁110を傷つけることなく収納セル112の位置を検出することができる。
【0033】
次に、測定用治具400の下部挿入部400bが隔壁110に衝突することなく1つの収納セル112を構成する4つの隔壁110に囲まれた領域内に挿入されたことを検知したら、図11(c)に示すように、突上げ棒360を矢印C方向に上昇させて、測定用治具400を把持部300のマイクロチューブ挿入穴315内に戻す。そして、把持部300が、図11(a)と同じ高さとなるまで矢印D方向に上昇させる。
【0034】
そして、図11(d)に示すように、把持部300を矢印E方向(X軸マイナス方向)に微少移動させる。本実施例では、10μm移動させている。その後、再び、図11(a)に示すように、再び、把持部300を降下させる。このような図11(a)〜(d)に示した一連の操作を創薬用ピッキング機構の制御装置により自動的に繰り返す。そして、図12(a)に示すように、創薬用ピッキング機構の把持部300を矢印F方向に降下させ、図12(b)に示すように、把持部300が、保管ラック100のチューブ支持ピン111に接触しない程度に降下させた後、突落し棒350を矢印G方向に降下させて測定用治具400を降下させる。その結果、図12(c)に示すように、測定用治具400の下部挿入部400bが、隔壁110の上部に当接したことが検知されたら、その時のX軸方向の位置をXaとして創薬用ピッキング機構の制御回路内のメモリに記憶する。
【0035】
次に、前述した一連の操作を対面する隔壁に対して行う。すなわち、図11(d)の矢印E方向を逆向き(X軸プラス方向)にして、図11(a)〜(d)に示した一連の操作を繰り返す。その結果、測定用治具400の下部挿入部400bが、隔壁110の上部に当接したことが検知されたら、その時のX軸方向の位置をXbとして創薬用ピッキング機構の制御回路内のメモリに記憶する。さらに、創薬用ピッキング機構の把持部300の移動方向をY軸方向に換えて、前述したX軸方向の座標位置の検出と同様の方法により、YaとYbを検出して、創薬用ピッキング機構の制御回路内のメモリに記憶する(第3工程)。
【0036】
そして、創薬用ピッキング機構のX軸方向の移動から得られた2つのX座標値の平均、すなわち、(Xa+Xb)/2を求めて、これを位置の認識対象となる収納セル112のX軸方向の座標位置X1とする。また、創薬用ピッキング機構のY軸方向の移動から得られた2つのY座標値の平均、すなわち、(Ya+Yb)/2を求めて、これを位置の認識対象となる収納セル112のY軸方向の座標位置Y1とする。
【0037】
そして、最終的に位置の認識対象となる収納セル112の中心位置が、(X1,Y1)として求められる(第4工程)。
【0038】
前述したような収納セル112の中心位置のX座標及びY座標を求める作業を、保管ラック100の四隅の収納セル112の全てに対して行い、求められた四隅の収納セル112の座標位置、すなわち、(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)と保管ラック100の既知のピッチ(本実施例の場合、4.5mm)とに基づき、保管ラック100の384個全ての収納セルの中心位置を計算によって算出する。
【0039】
前述のようなティーチングを最初のピッキング動作の前に行うことにより、保管ラックの成形時に生じがちな公差の影響をほとんど受けることなく、円滑なピッキングを行うことができ、その効果は甚大である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、創薬用ピッキング機構の最初のピッキング動作を行う前に実施するティーチング作業を自動で行うことができるため、作業が簡単であり、時間を短縮することができ、精度を向上させることができ、ティーチング作業時に生じがちな感電や衝突などの危険を回避することができ、その産業上の利用可能性はきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例の創薬用ピッキング機構の把持部を示した斜視図。
【図2】図1に示した把持部を矢視II方向から見たときの斜視図。
【図3】図1に示した把持部を矢視III方向から見たときの側面図。
【図4】実施例の測定用治具の一例を示す斜視図。
【図5】図4に示した測定用治具を矢視V方向から見たときの底面図。
【図6】実施例の測定用治具の別の一例を示す斜視図。
【図7】図6に示した測定用治具を矢視VII方向から見たときの底面図。
【図8】実施例の測定用治具のさらに別の一例を示す斜視図。
【図9】図8に示した測定用治具を矢視IX方向から見たときの底面図。
【図10】図4に示した測定用治具の下部挿入部を収納セルに挿入させたときの概略図。
【図11】本実施例の自動ティーチングの動作を説明する断面図。
【図12】本実施例の自動ティーチングの動作を説明する断面図。
【図13】アルミシートタイプの保管ラックの斜視図。
【図14】キャップタイプの保管ラックの斜視図。
【符号の説明】
【0042】
100、200 ・・・ 保管ラック
110 ・・・ (保管ラックの)隔壁
111 ・・・ (保管ラックの)チューブ支持ピン
112 ・・・ (保管ラックの)収納セル
120、220 ・・・ マイクロチューブ
222 ・・・ (マイクロチューブの)チューブ本体
223 ・・・ (マイクロチューブの)開口部
224 ・・・ (マイクロチューブの)キャップ
300 ・・・ (創薬用ピッキング機構の)把持部
310 ・・・ 基準爪部材
315 ・・・ マイクロチューブ収納穴
320 ・・・ 爪支持部材
320a、320b ・・・ (爪支持部材の)挿通穴
330、340 ・・・ 爪部材
330a、340a ・・・ (爪部材の)先端円形部位
350 ・・・ 突落し棒
360 ・・・ 突上げ棒
400、500、600 ・・・ 測定用治具
400a、500a、600a ・・・ (測定用治具の)上部把持部
400b、500b、600b ・・・ (測定用治具の)下部挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創薬用試料を封入するマイクロチューブを格子状の隔壁によって区画された所定の数の収納セルを有する保管ラックの所望の収納セルに抜き差しする創薬用ピッキング機構に対して、最初のピッキング動作を行う前に前記収納セルの位置を認識させる創薬用自動ティーチング装置において、
前記創薬用ピッキング機構が、測定用治具を把持するとともに、位置を認識させる前記収納セルの4つの隔壁に囲まれた領域内に前記測定用治具を挿入して前記4つの隔壁方向に移動させて、前記測定用治具が隔壁の上部に当接する位置を計測し、X軸方向の移動から得られた2つのX座標値とY軸方向の移動から得られた2つのY座標値を求め、前記2つのX座標値の平均と前記2つのY座標値の平均とを前記収納セルの中心位置とする位置計測機能を有することを特徴とする創薬用自動ティーチング装置。
【請求項2】
前記測定用治具が、前記マイクロチューブの頭部と同形状の上部把持部と前記収納セルの開口部の一辺の長さよりも十分に短い辺、直径又は長径を有する断面正方形、断面円形又は断面楕円形の突起形状である下部挿入部とを有することを特徴とする請求項1記載の創薬用自動ティーチング装置。
【請求項3】
創薬用試料を封入するマイクロチューブを格子状の隔壁によって区画された所定の数の収納セルを有する保管ラックの所望の収納セルに抜き差しする創薬用ピッキング機構に対して、最初のピッキング動作を行う前に前記収納セルの位置を認識させる創薬用自動ティーチング方法において、
前記創薬用ピッキング機構が測定用治具を把持する第1工程と、位置を認識させる前記収納セルの4つの隔壁に囲まれた領域内に前記測定用治具を挿入させる第2工程と、前記測定用治具を前記4つの隔壁方向に移動させて、前記測定用治具が隔壁の上部に当接する位置を計測する第3工程と、X軸方向の移動から得られた2つのX座標値とY軸方向の移動から得られた2つのY座標値を求め、前記2つのX座標値の平均と前記2つのY座標値の平均とを前記収納セルの中心位置とする第4工程とを有することを特徴とする創薬用自動ティーチング方法。
【請求項4】
前記測定用治具が、前記マイクロチューブの頭部と同形状の上部把持部と前記収納セルの開口部の一辺の長さよりも十分に短い辺、直径又は長径を有する断面正方形、断面円形又は断面楕円形の突起形状である下部挿入部とを有することを特徴とする請求項3記載の創薬用自動ティーチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−213971(P2009−213971A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58149(P2008−58149)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】