説明

加圧式定量吸入器のための安定な製薬学的溶液製剤

【課題】噴射剤としてヒドロフルオロアルカン(HFA)を使用し、十分な貯蔵寿命を有するエアゾル組成物の提供。
【解決手段】液化されたHFA噴射剤の溶液中、酸化および/もしくは加水分解反応に感受性の官能基をもつアミノ型医薬、製薬学的に許容できるアルコールから選択された補助溶媒[ここで、該溶液のpHが、少量の塩酸、硝酸もしくはリン酸のような無機酸の添加により2.5と5.0との間に調節されている]を含有するエアゾル組成物。該溶液は、25℃で0.1kPaを越えない、好ましくは0.05kPaを越えない蒸気圧をもつ低揮発性成分を含有することが好ましい。該低揮発成分としては、ミリスチン酸イソプロピルであることが好ましい。該補助溶媒としては、エタノールであることが好ましい。有効成分である医薬としては、サルブタモール、サルメテロール等であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾル投与に適する加圧式定量吸入器(MDI)で使用されるべき安定な製薬学的溶液に関する。とりわけ、本発明は、β2−アゴニストを含有するエアゾル投与に適しかつ室温で製薬学的に許容できる貯蔵寿命の間安定な、加圧式定量吸入器(MDI)で使用されるべき溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧式定量吸入器は、吸入により気道に製薬学的製品を投与するための公知の装置である。
【0003】
吸入により普遍的に送達される薬物は、β2−アゴニストおよび抗コリン作動薬、コルチコステロイド、抗ロイコトリエン、抗アレルギー薬のような気管支拡張薬、ならびに、吸入により効率的に投与してよく従って有効成分の治療指標を増大させかつ副作用を低下させる他の物質を包含する。
【0004】
MDIは、製薬学的製品を含有する液滴をエアゾルとして気道に排出するために噴射剤を使用する。MDIを介するエアゾル投与のための製剤は溶液もしくは懸濁剤であることができる。溶液製剤は、噴射剤ベヒクルもしくはエタノールのような適する補助溶媒とのその混合物に完全に溶解された有効成分および賦形剤を含んで均質であるという利点を提供する。溶液製剤はまた、懸濁剤製剤に関連する物理的安定性の問題も未然に防ぎ、そうしてより一貫した均質な投薬量投与を確実にする。
【0005】
長年の間、製薬学的使用のためのエアゾルで使用される好ましい噴射剤は、CCl3F(フレオン(Freon)11もしくはCFC−11)、CCl22(フレオン(Freon)12もしくはCFC−12)およびCClF2−CClF2(フレオン(Freon)114もしくはCFC−114)のような、普遍的にフレオン(Freon)もしくはCFCと呼ばれる一群のクロロフルオロカーボンであった。
【0006】
最近、フレオン(Freon)11およびフレオン(Freon)12のようなクロロフルオロカーボン(CFC)噴射剤はオゾン層の破壊に関与しており、そしてそれらの生産が段階的に停止されている。
【0007】
ヒドロフルオロアルカン[(HFA)ヒドロフルオロカーボン(HFC)としてもまた知られる]は塩素を含有せず、また、オゾンに対しより少なく破壊的と考えられ、そしてこれらはCFCの代替品として提案されている。
【0008】
HFA、ならびにとりわけ1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)は、非CFC噴射剤の最良の候補であると認識されており、そして、こうしたHFA噴射剤系を使用する多数の医薬のエアゾル製剤が開示されている。
【0009】
CFCベヒクル(誘電率D<2.3)に関してHFA噴射剤、とりわけHFA 134a(D>9.5)のより高い極性により、HFA溶液製剤は、対応するCFC製剤に関して、より大きい程度まで化学的安定性の問題を経験するかもしれない。
【0010】
安定なHFA溶液製剤の製造は、フェニルアルキルアミノ誘導体の分類に属する気管支拡張薬β2−アゴニストが関する場合になおより決定的に重要であり;ホルモテロールお
よびサルブタモール(アルブテロール)のような前記薬物は、酸化的条件に対するそれらの感受性により固有の化学的安定性の問題を経験するかもしれず;さらに、ホルムアミドのような数種の官能基の存在の見地からみて、ベヒクルのより高い極性が加溶媒分解反応の速度を加速するかもしれない。
【0011】
ホルモテロールに関する限り、現在市販されているCFC溶液製剤(ホラジル[Foradil](商標))は、実際、制限された貯蔵寿命(すなわち、冷蔵庫温度(4±2℃)で12ヶ月、および室温でわずか3ヶ月)を表す。
【0012】
サルブタモールに関する限り、エアゾル投与のためのHFA溶液のような製剤は現在市販されていない。
【0013】
概説された問題の考慮において、十分な貯蔵寿命を特徴とする、製薬学的用量のβ2−アゴニストを提供することを目標とされたMDIにより投与されるべきHFA溶液の形態の製剤を提供することが高度に有利であるとみられる。
【発明の概要】
【0014】
(発明の目的)
十分な貯蔵寿命を特徴とする、喘息のような肺疾患に罹っている患者の下部気道に製薬学的用量のβ2−アゴニストを提供するための、MDIにより投与されるべきHFA溶液の形態の製剤を提供することが、本発明の一目的である。とりわけ、現在市販されている製剤のものより長い貯蔵寿命をもつ、製薬学的用量のホルモテロールを提供するためにMDIにより投与されるべきHFA溶液の形態の製剤を提供することが、本発明の一目的である。
【0015】
本発明により、そのみかけのpHが少量の無機酸の添加により2.5と5.0との間に調節されている、液化されたHFA噴射剤、製薬学的に許容できるアルコールから選択された補助溶媒の溶液の溶液中のフェニルアルキルアミノ誘導体の分類に属するβ2−アゴニストを含んで成る製薬学的組成物が提供される。本発明の組成物は、その内部金属表面の一部もしくは全部がステンレス鋼、陽極酸化アルミから作られもしくは不活性の有機コーティングで内張りされている加圧式MDI中に含有されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】pMDI缶の通常の充填容量(12ml)に対し正規化された、結果として生じる滴定曲線を示す。
【図2】複製のバルク溶液についての、結果として生じるpHプロフィルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
事実、β2−アゴニストのようなある種の有効成分の場合、HFA溶液製剤中でのそれらの化学的安定性を、缶の種類ならびにみかけのpH範囲の適正なかつ組み合わせられた選択により劇的に向上させることができたことが見出されている。「みかけの」という属性は、pHが、水が主要な成分(モル画分>0.95)である水性液体に事実特徴的であるために使用される。これらの研究で使用されるHFA−エタノールベヒクルのような比較的非プロトン性溶媒中で、プロトンは水和されず;それらの活性係数は水性溶液中のものと有意に異なる。EMFに関するネルンストの等式が当てはまり、かつ、pH計のガラス電極系はプロトン濃度およびベヒクルの極性に従った可変のミリボルト出力を生じさせることができるとは言え、「pH」計の示度は真のpH値でない。計器の示度はみかけのpHもしくは酸性度関数(pH’)を表す。
【0018】
有効成分を、商業的に入手可能なモデルベヒクル系(HFA 43−10MEE、バートレル(Vertrel)XF、デュポン(Dupont))において強酸で滴定した場合、pH’プロフィルは、約pH’=5.5までの浅い負数(shallow negative)を表し;その後酸性度関数は急激に下落する。驚くべきことに、対応するHFA製剤はpH’5.5より下でずっとより安定であると判明した。
【0019】
他方、不活性容器の使用は、製剤中に含有される酸の缶の内壁への作用の結果としての金属イオンもしくはアルカリの浸出を回避することを可能にする。それぞれ慣習的なアルミニウムもしくはガラス缶由来のAl3+のような金属イオンもしくはアルカリは、順に、有効成分のラジカル酸化もしくは他の化学反応を触媒することができ、それは分解生成物の形成を生じさせる。
【0020】
本発明の特定の一態様によれば、以下に説明されるような吸入器の作動に際してエアゾル粒子の空気動力学的中央粒子径(MMAD)を増大させることに加えて、製剤の安定性をさらに向上させるような方法で低揮発性成分をさらに含有する製薬学的組成物もまた提供される。事実、エステルのような補助溶媒に関して低下された極性をもつ低揮発性成分の添加は、pHを調節するために添加されるべき酸の量を低下させかつ媒体の極性を減少させるかのいずれかを可能にするかもしれず、そうして周囲の水の可能な取込みを制限する。ホルモテロールのような有効成分の場合、後者(例えば湿度)が貯蔵の間の有効成分の安定性に有害である可能性があることが公知である。従って、順に補助溶媒としての12w/w%のエタノールおよび低揮発性成分としての1.0w/w%ミリスチン酸イソプロピルを含有する、噴射剤としてのHFA 134a中のフマル酸ホルモテロール溶液よりなる製薬学的組成物で充填された陽極酸化アルミ容器よりなる、製薬学的用量を投与するための加圧式MDIもまた提供され、前記溶液のみかけのpHは少量の塩酸の添加により3.0と3.5との間に調節されている。「w/w%」という表現は、組成物の総重量に関する該成分の重量パーセントを意味する。
【0021】
本発明の装置中に入れられた製剤の貯蔵寿命は、冷蔵庫温度(4〜10℃)で2年以上、また、室温で3ヶ月であることを予測することができる。
【0022】
当業者は、本発明の教示を、それぞれホルムアミドおよびカテコールのような加水分解および/もしくは酸化反応に感受性の官能基をもつ他の有効成分を含有するHFA溶液製剤の製造に容易に応用することができる。
【0023】
国際特許出願第WO 97/47286号、欧州特許第EP 513127号、同第EP 504112号、国際特許出願第WO 93/11747号、同第WO 94/21228、同第WO 94/21229号、同第WO 96/18384号、同第WO 96/19198号、同第WO 96/19968号、同第WO 98/05302号、同第WO 98/34595号および同第WO 00/07567号明細書は、その中でホルモテロールおよびサルブタモールのようなβ2−アゴニストが例示されかつ/もしくは特許請求されるのいずれかである懸濁剤の形態のHFA製剤を開示する。
【0024】
国際特許出願第WO 99/65464号明細書は、その中で最低1種が懸濁剤中にある2種もしくはそれ以上の有効成分を含有するHFA製剤に言及する。好ましい製剤は懸濁剤中に硫酸サルブタモールを含んで成る。
【0025】
国際特許出願第WO 98/34596号明細書において、発明者は、有効成分、ヒドロフルオロアルカン(HFA)を含有する噴射剤、補助溶媒を含んで成りかつ吸入器の作動に際してエアゾル粒子の空気動力学的中央粒子径(MMAD)を増大させるための低揮発性成分をさらに含んで成る、エアゾル吸入器中での使用のための溶液組成物を記述した。前記出願は有効成分の化学的安定性の技術上の問題を取り扱っていないが、しかしそれはむしろ肺への薬物送達に関する。
【0026】
99年11月23日出願の国際特許出願第PCT/EP99/09002号明細書において、発明者は、前記吸入器の内部表面の一部もしくは全部がステンレス鋼、陽極酸化アルミよりなるかもしくは不活性の有機コーティングで内張りされていることを特徴とする
、ヒドロフルオロカーボン噴射剤、補助溶媒および場合によっては低揮発性成分中に有効成分の溶液を分散させるための加圧式MDIを開示した。実施例はステロイドおよび抗コリン作動薬にのみ言及し、そして酸性化された溶液は予見されない。本出願の実施例1に立証されるとおり、被覆された容器の使用は、有機酸の存在下でさえ、サルブタモールのようなフェニルアルキルアミノ誘導体の安定な溶液製剤を提供するために十分でない。
【0027】
欧州特許第EP 673240号明細書は、HFAを含んで成るエアゾル溶液製剤中の有効成分の化学的分解を予防する安定剤としての酸の使用を提案する。大部分の実施例が抗コリン作動薬臭化イプラトロピウムに関し、そして唯一の実施例がβ2−アゴニストすなわちフェノテロールについて提示される。サルブタモールについての例示的製剤は提供されない。サルブタモールは被覆された缶中で保存される場合でさえ有機酸の添加により全く安定化されることができないことが、本出願の実施例1で報告されるデータから明らかである。さらに、臭化イプラトロピウムを別にして、欧州特許第EP 673240号明細書中には、缶中の組成物全体の安定性を損なうことなく医薬を安定化するために添加されなければならない酸の量に関しての手引きが与えられていない。唯一のヒントは5ページ15ないし16行に見出すことができ、それは、1から7まで(従って非常に広範かつ包括的な範囲)のpH値を得る無機酸の量を添加すべきであることを言っている。
【0028】
国際特許出願第WO 98/34596号明細書は、噴射剤、ならびに有効成分の可溶化および安定性も同様に助ける可能性のある生理学的に許容できるポリマーを含有する溶液製剤に言及する。
【0029】
国際特許出願第WO 00/06121号明細書は、懸濁剤および溶液エアゾルの製造におけるエアゾルのための噴射剤混合物亜酸化窒素およびヒドロフルオロアルカンに言及する。亜酸化窒素の使用は、酸化感受性の有効成分の貯蔵で安定性を向上させるかもしれない。硫酸レボサルブタモール、フマル酸ホルモテロールおよびキシナホ酸サルメテロールのようなβ2−アゴニストに関する限り、懸濁剤に言及される唯一の例が報告される。
【0030】
国際特許出願第WO 99/65460号明細書は、懸濁剤もしくは溶液中のβ−アゴニスト薬物の安定な製剤を含有する加圧式MDIを特許請求する。実施例は、慣習的なアルミニウムもしくはプラスチック被覆されたガラス缶に充填された、HFA噴射剤および補助溶媒としてのエタノールを含有するフマル酸ホルモテロールの溶液に言及する。
【0031】
非常に短期間すなわち1ヶ月間、加速条件(40℃、75%相対湿度)下で保存されたサンプルは、薬物の約10%喪失を表した。安定性に関する製薬学的指針によれば、有効成分の10%の喪失は許容の基準に合致しない。さらに、本出願の実施例2に報告されるデータから明らかであるとおり、国際特許出願第WO 99/65460号明細書の教示に従って、安定なホルモテロール溶液製剤を提供することができない。発明者は、事実、低揮発性成分の存在が組成物の化学的安定性に実質的に影響を及ぼさないことを立証した。いくつかの場合には、それらはそれを改善することさえできた。
【0032】
本発明のさらなる一局面により、本発明の組成物でのエアゾル吸入器の充填方法が提供され、該方法は:
(a)適切な量の低揮発性成分を場合によっては含有する1種もしくはそれ以上の補助溶媒中の1種もしくはそれ以上の有効成分の溶液の製造。
(b)装置を前記溶液で満たすこと。
(c)予め決められた量の強無機酸を添加すること。
(d)ヒドロフルオロアルカン(HFA)を含有する噴射剤を添加すること。
(e)バルブで圧着し(crimped)かつガスを供給すること。
を含んで成る。
【0033】
本発明のエアゾル組成物で使用してよい有効成分は、サルブタモール、ホルモテロール、サルメテロール、TA2005のような短および長時間作用型のβ2−アドレナリン作動性アゴニスト、それらの塩、ならびに、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニドおよびその22R−エピマーのようなステロイドとのそれらの組合せである。酸化および/もしくは加水分解反応に感受性の官能基をもつ他のアミノ型薬物を有利に使用することができる。
【0034】
好ましくは、該組成物は陽極酸化アルミ缶中に含有されることができる。適する被覆された装置もまた使用することができる。
【0035】
クロロプレン系ゴムから作られたガスケットを取付けられた計量バルブを、既に挙げられたとおり貯蔵の間の薬物の安定性に悪影響を及ぼす可能性のある水分の進入を低下させるのに好ましく使用することができる。場合によっては、さらなる保護を、封止されたアルミニウムパウチ中に製品を包装することにより達成することができる。
【0036】
ヒドロフルオロカーボン噴射剤は、好ましくはHFA 134a、HFA 227およびそれらの混合物の群から選択される。
【0037】
補助溶媒は通常アルコール、好ましくはエタノールである。
【0038】
低揮発性成分は、存在する場合、25℃で0.1kPaより低い、好ましくは0.05kPaより低い蒸気圧を有する。それは、グリコール、とりわけプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびグリセロール、エステル例えばアスコルビルパルミテート、ミリスチン酸イソプロピルおよびトコフェロールエステルの群から選択することができる。
【0039】
本発明の組成物は、0.2から10w/w%まで、好ましくは0.5と2.0w/w%の間の前記低揮発性成分を含有してよい。
【0040】
プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールおよびエステルが好ましい低揮発性成分である。
【0041】
低揮発性成分の機能は、エアゾル粒子のMMADを調節しそして好ましくは製剤の安定性をさらに向上させることである。後者の局面に関して、ミリスチン酸イソプロピルの使用がとりわけ好ましい。
【0042】
みかけのpH範囲は、有利には2.5と5.0との間、好ましくは3.0と4.5との間、なおより好ましくは3.0と3.5との間に含まれる。塩酸、硝酸、リン酸のような強無機酸を、みかけのpHを調節するのに好ましく使用する。
【0043】
所望のみかけのpHに達するために添加されるべき酸の量は、以前報告されたモデルベヒクルで予め決めることができ、また、それは、有効成分の型および濃度に依存することができる。ホルモテロールの場合、3と3.5μlとの間に含まれる量の1.0M塩酸を好ましくは添加すべきである。
【0044】
以下の実施例は本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0045】
実施例1
サルブタモール(100μg/投与)−HFA 134a溶液それ自体および多様な有機酸の存在下の安定性
多様な有機酸の添加を伴いもしくは伴わずに、12mlのエポキシフェノール樹脂ラッカー塗(lacquered)缶に入れられたHFA 134a中に24mgのサルブタモール(100μg/投与)、10〜20%(w/w)エタノールを含有する組成物を、40〜50℃で貯蔵した。
【0046】
HPLCにより測定された、残存する薬物のパーセンテージとして表された安定性に関する結果を表1に報告する。
【0047】
【表1】

【0048】
該結果は、有機酸の添加が、被覆された缶を使用する場合でさえサルブタモールの安定性を向上させないことを示す。
【0049】
実施例2
エポキシフェノール樹脂ラッカー塗缶中のホルモテロール(12μg/100μl)−HFA 134a組成物の安定性
溶液製剤を、順に15w/w%エタノールおよび1.3w/w%グリセロールを含有するHFA 134a中に1.44mgのフマル酸ホルモテロールを溶解することにより製造した。pMDIを、範囲4〜50℃にわたって28日までの間、直立して保存した。ホルモテロール含量をHPLCにより測定し、そして残余の濃度のパーセントを12μg/注射の公称用量に関して計算した。残余のホルモテロール濃度のパーセントを表2に報告する。導出されたアレニウスのパラメータを使用して、周囲温度(18〜25°)および家庭用冷蔵庫(4〜10°)中に保存された溶液での速度定数を推定し;これらの速度定数を使用して、ホルモテロールの5%および10%分解についての予測される貯蔵寿命を計算した(表3)。
【0050】
表3中の計算された貯蔵寿命データは、ホルモテロールがこのHFA 134a−エタノール−グリセロールベヒクル中で安定でないことを示す。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
実施例3
溶液のpH’(酸性度関数)に対する塩酸の影響
(a)1.0M塩酸を、20w/w%エタノールを含有する50mlのHFA 43−10MEE(バートレル(Vertrel)XF)に増加的に添加し、そして、酸の各アリコート後にpH’を測定した。図1はpMDI缶の通常の充填容量(12ml)に対し正規化された、結果として生じる滴定曲線を示す。pH’プロフィルは、約pH’=5.5までの浅い負の傾きを表し;その後、酸性度関数は急激に下落する。
(b)実験(a)を、より低濃度のエタノール(12w/w%)を含有しかつ1.0%ミリスチン酸イソプロピルの添加を伴うホルモテロール製剤で反復した。図2に示される、複製のバルク溶液についての、結果として生じるpHプロフィルは、約pH’=5.5で再度開始する酸の単位増加あたりのpH’の急激な下落を伴い、形状が類似である。しかしながら、pH’の同一の低下を達成するのに約半分のみの酸が必要とされる。これは、主にエタノール含量の低下により;図2は、ミリスチン酸イソプロピルを伴いもしくは伴わずに得られたプロフィルにおける類似性もまた示す。
【0054】
実施例4
20w/w%エタノールを含有するHFA 43−10MEE中のホルモテロール溶液の安定性に対するpH’の影響
1.0M塩酸のアリコートを、ガラスバイアル中の12mlのホルモテロール溶液に添加した。pHの測定後に、バルブを圧着し、そしてバイアルを直立して50℃で保存した。多様な濃度の酸を含有するバイアルサンプルを、10および20日の貯蔵後に残余のホルモテロールについてアッセイした。第三のバイアルのpH’は40日の貯蔵後に測定した。結果を表4に示す。表4は貯蔵に際してのpHの変化を示し;これはおそらく主としてバイアルの軟質ガラスからのアルカリの浸出に関連する。しかしながら、pH’およびホルモテロール含量データの全体的考慮は、HFA中の薬物の溶液製剤の安定性を、2.5〜5.0の間のpH’をもつ製剤を提供するための無機酸の添加により向上させることができることを意味する。
【0055】
【表4】

【0056】
実施例5
陽極酸化された缶中の酸性化されたホルモテロール−HFA 134a溶液の安定性
ホルモテロール製剤(12μg/100μl)を、1.0w/w%ミリスチン酸イソプロピルとともにもしくは伴わずに12w/w%エタノールを含有するHFA 134a中に1.44mgのフマル酸ホルモテロールを溶解することにより製造した。後者は、そのように所望の場合は、MMADを増大させるための潜在能力をもつ非揮発性賦形剤として包含した。それはまた、グリセロールの添加に比較して、ベヒクル中のホルモテロールの溶解性も向上させかつベヒクルの極性も低下させる。
【0057】
3.1〜3.4μlの1.0M塩酸を含有するpMDI缶を、4℃ないし50℃で、直立および倒立して貯蔵に据え置き(set down on strage)、そして、ホルモテロール含量の分析のため適切な間隔でサンプルを採取した。
【0058】
70日の貯蔵後に得られた安定性データを表5に示す。
【0059】
1.44mg(12μg/100μl)のフマル酸ホルモテロールを含有する製剤のマトリックスを、非揮発性賦形剤として1.0w/w%ミリスチン酸イソプロピルとともにもしくは伴わずに12.0w/w%エタノールを含有するHFA 134a中で調製した。薬物濃縮物のアリコートを陽極酸化された缶に移し、そして3.15〜3.35μlの1.0M塩酸を、50μlバルブで圧着することおよび各酸濃度で22と28個との間の複製物にガスを供給することを調製する前に添加した。
【0060】
残余のホルモテロールを測定するため、30×50μl注射をDUSAチューブに放出した。選択された酸範囲は、3.0〜3.5のpH’値を与えそして酸濃度の小さな変化に感受性の製剤を決定することが予期された。缶を25〜50℃で直立および倒立して(それぞれバルブが上および下)貯蔵されるに置いた。
【0061】
表5は、11〜40日の貯蔵後に40°および50°で得られた結果を示す。各値(公称薬物濃度のパーセントとして表される)が多様な缶から得られる。
【0062】
初期値を各酸濃度の2本の缶について得た。データの検査は、HPLCアッセイの再現性内および酸濃度に独立の全部のアッセイ値を示す。類似の結論が貯蔵時間点の複製物について引き出された(すなわち酸濃度(3.2〜3.3μl)または缶を直立して保存したかもしくは倒立して保存したかに独立)。結果、動力学的計算に、初期(n=10)およびその後の時間点(n=6)の平均値を使用した。
【0063】
表6に、4、10および25℃での推定される貯蔵寿命と一緒のアレニウスのパラメータを報告する。t5%は、周囲温度で3ヶ月以上および4℃でおよそ2年であると予測される。
【0064】
【表5】

【0065】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化されたHFA噴射剤の溶液中の酸化および/もしくは加水分解反応に感受性の官能基をもつアミノ型薬物、製薬学的に許容できるアルコールから選択された補助溶媒[ここで、該溶液のpHが、少量の塩酸、硝酸もしくはリン酸のような無機酸の添加により2.5と5.0との間に調節されている]を含んで成るエアゾル組成物。
【請求項2】
溶液のpHが3.0と3.5との間に調節されている、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
溶液が、25℃で0.1kPaを越えない、好ましくは0.05kPaを越えない蒸気圧をもつ低揮発性成分を包含する、請求項1−2記載の組成物。
【請求項4】
溶液が、最低0.2重量%および10重量%を越えない低揮発性成分を包含する、いずれかの先行する請求項記載の組成物。
【請求項5】
補助溶媒がアルコール、好ましくはエタノールである、請求項1−4記載の組成物。
【請求項6】
低揮発性成分がグリコールもしくはエステルから選択される、いずれかの先行する請求項記載の組成物。
【請求項7】
低揮発性成分がミリスチン酸イソプロピルである、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
噴射剤が、HFA 134aおよびHFA 227を含んで成る群から選択される1種もしくはそれ以上のHFAを包含する、いずれかの先行する請求項記載の組成物。
【請求項9】
有効成分が、サルブタモール、サルメテロールおよびTA−2005から選択されるβ2−アゴニスト、それらの塩、もしくはジプロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニドおよびその22R−エピマーのようなステロイドとのそれらの組合せである、いずれかの先行する請求項記載の組成物。
【請求項10】
請求項1−9記載の組成物を含有する、その内部金属表面の一部もしくは全部がステンレス鋼、陽極酸化アルミから作られもしくは不活性の有機コーティングで内張りされている容器よりなる、エアゾル投与のための加圧式定量吸入器。
【請求項11】
(a)適切な量の低揮発性成分を場合によっては含有する1種もしくはそれ以上の補助溶媒中の1種もしくはそれ以上の有効成分の溶液の製造;
(b)装置を前記溶液で満たすこと;
(c)予め決められた量の強無機酸を添加すること;
(d)ヒドロフルオロアルカン(HFA)を含有する噴射剤を添加すること;
(e)バルブで圧着しかつガスを供給すること
を含んで成る、請求項10記載の吸入器の充填方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−93915(P2011−93915A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286171(P2010−286171)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【分割の表示】特願2001−585725(P2001−585725)の分割
【原出願日】平成12年5月22日(2000.5.22)
【出願人】(591095465)キエシ・フアルマチエウテイチ・ソチエタ・ペル・アチオニ (12)
【Fターム(参考)】