説明

加工装置

【課題】ワークの種類によらずワークの厚さを確実に測定することができる加工装置を提供する。
【解決手段】保持手段20に保持したワーク1のリング補強部4の上面4aに砥石37の下面37aを押し当てて研削加工する加工装置10において、測定手段50によって砥石37の下面37aの高さを検出し、該下面37aの高さ位置をワーク1の上面4aの高さ位置としてワーク1の厚さを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の薄板状のワークを研削する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスでは、デバイスの目的厚さを得るために、多数のデバイスに分割される前のウェーハの段階で裏面を研削して薄化することが一般に行われている。ウェーハの研削は厚さを測定しながら進められるが、そのような形態での厚さ測定の手段としては、測定用のプローブを被加工面に接触させながら厚さの変位を検出する接触式のものが知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、近年ではデバイスの顕著な薄型化に応じてウェーハは一層薄く加工されているが、薄くすると剛性が低下するため、薄化後の工程でのハンドリングが困難になったり割れやすくなったりする問題が生じる。そこで、多数のデバイスが形成されている円形状のデバイス形成領域を裏面側から研削して目的厚さに薄化し、外周部は比較的肉厚としてウェーハ全体を裏面側がへこんだ断面略凹状に加工することが行われている(特許文献2)。このようなウェーハは、肉厚の外周部がリング補強部となって剛性が確保され、ハンドリングしやすくなり、また、割れにくいものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−6018号公報
【特許文献2】特開2007−19461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の断面略凹状に加工されたウェーハは、最終的には外周部のリング補強部も研削されて除去される。したがってその研削時において上記接触式の厚さ測定手段のプローブは、リング補強部の裏面に接触した状態で用いられる。そのため、リング補強部はプローブを確実に接触させるためにある程度の幅が確保されていることが必要となるが、リング補強部の幅を大きくするとデバイス形成領域が縮小して1枚のウェーハからのデバイスの取得数が減少してしまうので、リング補強部の幅はできるだけ小さい方が好ましい。しかしながらリング補強部の幅が小さいとプローブを確実に接触させにくくなり、厚さ測定が困難になるという不具合を招く。また、光学式の非接触式厚さ測定手段を用いた場合は、ワークの検出面が十分に検出光を反射しない場合には測定が困難になるという問題が生じる。このように従来では、厚さ測定手段が接触式あるいは非接触式であっても、ワークの種類によっては厚さを測定することが困難な場合があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ワークの種類によらずワークの厚さを確実に測定することができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加工装置は、ワークの表面側を保持する保持手段と、該保持手段に保持されたワーク上面に砥石の下面を押し当てて研削加工する工具と、該工具を回転可能に支持するスピンドルとを有する研削手段と、研削中にワークの厚さを測定する測定手段と、を有する加工装置であって、前記測定手段は、前記砥石の下面の高さ位置を検出し、該砥石の下面の高さ位置をワーク上面高さ位置としてワークの厚さを測定することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、測定手段は、ワークの上面に接触して該上面を研削する砥石の下面の高さ位置に基づいてワークの厚さを測定するため、ワークの上面の大きさや形状あるいは光反射状況といった従来の厚さ測定手段では測定困難を招く種々の要素に関係なくワークの厚さを測定することができる。
【0009】
本発明では、ワークはデバイス形成領域に対応する裏面が研削され外周にリング補強部が形成されており、ワーク上面は前記リング補強部の上面であり、ワークの厚さは前記リング補強部の厚さである形態を含む。この形態では、リング補強部の幅が狭くても該リング補強部の厚さを確実に測定することができる。
【0010】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えば、シリコン、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)等からなる半導体ウェーハ、セラミック、ガラス、サファイア(Al)系の無機材料基板、板状金属や樹脂の延性材料、ミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの平坦度(TTV:total thickness variation−ワークの被加工面を基準として厚さ方向に測定した高さのワークの被加工面全面における最大値と最小値の差)が要求される各種加工材料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワークの種類によらずワークの厚さを確実に測定することができる加工装置が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る加工装置で裏面研削されるワークの(a)裏面側を示す斜視図、(b)表面側を示す平面図、(c)裏面側を上にした断面図である。
【図2】一実施形態に係る加工装置の全体斜視図である。
【図3】同加工装置でワークの厚さを測定しながらワークを研削している状態を示す側面図である。
【図4】一実施形態に係る測定手段でワークの厚さを測定する原理を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る加工装置を説明する。
(1)ワーク
図1は、図2に示す本実施形態の加工装置10で裏面が研削される半導体ウェーハ等の円板状のワーク1を示している。まずこのワーク1を説明すると、図1(b)に示すように、ワーク1の表面1aには、電子回路が形成された多数のデバイス2が分割予定ライン3によって区画されている。ワーク1においては、外周を除く円形状の大部分が、製品として有効となる矩形状のデバイス2が形成されたデバイス形成領域2Aとなっている。この場合のワーク1は、図1(a),(c)に示すように、裏面1bのデバイス形成領域2Aに対応する部分が研削されて断面略凹状に形成されており、外周にはデバイス形成領域2Aよりも厚く裏面1b側に突出するリング補強部4が形成されている。ワーク1は、電子回路を保護する目的で表面1aに保護テープ5が貼着され(図1(b)では貼着されていない)、リング補強部4を保持することで搬送される。
【0014】
(2)加工装置
図2および図3により加工装置10を説明する。
加工装置10では、図2に示すように、上記ワーク1は、基台11上に設けられた円板状の保持手段20に対しオペレータ等によって矢印のように運ばれ、保持手段20の上面に形成された円形状の保持面21に、裏面1b側を上方に露出させ、かつ表面1a側が保護テープ5を介して同心状に載置される。
【0015】
保持手段20は、基台11上にX方向に移動可能に設けられた移動台22上に、Z方向(鉛直方向)を回転軸方向として回転可能に支持されている。保持手段20は一般周知の真空チャック式のもので、水平に設定される保持面21に負圧作用で保護テープ5を介してワーク1を吸着して保持する。
【0016】
保持手段20の保持面21に保持されたワーク1は、移動台22がX方向に移動することにより、図2において手前側(X1側)の搬入/搬出位置と後方(X2側)の加工位置との間を往復移動させられる。基台11には移動台22をX方向に移動させる移動機構が設けられており、移動台22には保持手段20を回転させる回転駆動機構が設けられている(いずれも図示略)。移動台22の移動方向の両側には、移動台22の移動路23を覆って研削屑等が基台11内に落下することを防ぐ伸縮自在な蛇腹状のカバー24が設けられている。
【0017】
基台11の上記加工位置の後方には、コラム12が立設されている。コラム12の前面には、一対のZ軸ガイド13を介してスライダ14がZ方向に沿って昇降可能に取り付けられており、このスライダ14に、研削手段30が固定されている。
【0018】
研削手段30は、軸方向がZ方向に延びるスピンドル31を有している。このスピンドル31は、円筒状のハウジング32内に回転軸33が組み込まれたものである。回転軸33の下端にはフランジ状のマウント34が形成されており、このマウント34に、研削用の工具35が着脱自在に固定されている。ハウジング32の上端部には、回転軸33を回転駆動するモータ部38が設けられている。
【0019】
工具35は、マウント34の下面に着脱可能に固定される研削ホイール36の下面の外周部に多数の砥石37が環状に配列されて固着されたものである。砥石37はワーク1に応じたものが用いられ、例えば、ダイヤモンドの砥粒をメタルボンドやレジンボンド等の結合剤で固めて成形したダイヤモンド砥石等が用いられる。工具35は、モータ部38によって上記回転軸33と一体に回転駆動される。
【0020】
研削手段30は、マウント34を下方に配した状態で、ハウジング32がホルダ39を介してスライダ14に固定されている。スライダ14は、一対のZ軸ガイド13間に配設されてスライダ14に螺合した状態に連結されたZ方向に延びるボールねじ41と、ボールねじ41を回転駆動するモータ42とを備えた加工送り手段40によって昇降駆動される。すなわち、研削手段30は加工送り手段40によってスライダ14と一体に昇降する。
【0021】
上記加工位置に位置付けられたワーク1は、上方に露出させられたリング補強部4の上面4aが、該リング補強部4が除去されるまで研削手段30により研削され、全体がデバイス形成領域2Aと同じ厚さになるよう加工される。研削手段30による研削は、保持手段20を一方向に回転させてワーク1を自転させ、モータ部38を作動させて工具35を回転させながら加工送り手段40によりスライダ14とともに研削手段30を下方に加工送りし、回転する工具35の砥石37の下面37aをリング補強部4の上面4aに押し当てることによりなされる。研削の際には、潤滑、冷却および清浄化等を目的として、図示せぬ研削液供給手段からワーク1に研削液が供給される。
【0022】
この場合のワーク1の厚さはリング補強部4の厚さであり、該厚さは、加工位置の近傍であって基台11の上面の移動路23とコラム12との間に配設された測定手段50によって測定される。加工送り手段40による研削手段30の加工送り動作は、測定手段50で測定される厚さ測定値に基づいて制御される。厚さ測定値が目的値になったら研削動作を終了し、この後、移動台22がX1方向に移動してワーク1が上記搬入/搬出位置まで戻される。そしてワーク1は保持手段20から搬出され、次の工程(例えばデバイス2に分割する工程)に移される。
【0023】
(3)測定手段
次に、本発明に係る測定手段50について説明する。
測定手段50は、上記の通り基台11の上面における移動路23とコラム12との間に配設されているが、図3に示すように測定手段50は研削ホイール36の砥石37の直下に当たる位置に位置付けられている。測定手段50は、検出光線を測定対象物に照射して測定対象物からの反射光を受光し、受光した光を評価・演算して距離に換算する一般周知の非接触式で光学式の距離センサである。本実施形態では測定対象物は砥石37の下面37aであり、検出光線は鉛直上方の該下面37aに向けて照射される。
【0024】
測定手段50においては、図4に示すように、測定手段50から砥石37の下面37aに向けて鉛直上方に検出光線Lが照射される。そしてワーク1のリング補強部4の上面4aに押し当てられている砥石37の下面37aの高さ位置までの距離Dが、砥石37の下面37aの高さ位置として検出される。そしてこの砥石37の下面37aの高さ位置をワーク1の上面高さ位置としてワーク1の厚さが測定される。すなわち、図4に示すように、上記距離Dと、一定値である測定手段50から保持手段20の保持面21の高さ位置までの距離H、および把握されている保護テープ5の厚さPに基づいて、研削中のワーク1の厚さTが求められる。具体的には、ワーク1の厚さT=D−(H+P)で求められる。このようにして、研削中においてしだいに減少していくワーク1のリング補強部4の厚さが測定手段50によって逐一測定され、その厚さがデバイス形成領域2Aの厚さに達したら研削を終える。
【0025】
本実施形態の加工装置10の測定手段50によれば、ワーク1のリング補強部4の上面4aに接触して該上面4aを研削する砥石37の下面37aの高さ位置に基づいてワーク1の厚さを測定している。このため、リング補強部4の幅が小さくて例えば接触式の厚さ測定手段のプローブを接触させることが困難な場合にも、ワーク1の厚さを確実に測定することができる。その結果、デバイス形成領域2Aをできるだけ大きくして1枚のワークからデバイスの取得数を増大させることに寄与することができる。
【0026】
また、本実施形態の測定手段50によれば、例えばワークの上面が光を反射しにくく光学式の非接触式厚さ測定手段では厚さ測定が困難なワークであっても、砥石37の下面37aの高さ位置に基づいて厚さを測定するため、その種のワーク1の厚さを測定することができる。すなわち本実施形態によれば、ワークの種類によらずワークの厚さを確実に測定することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…ワーク、1a…ワークの表面、1b…ワークの裏面、2A…デバイス形成領域、4…リング補強部、10…加工装置、20…保持手段、30…研削手段、31…スピンドル、35…工具、37…砥石、37a…砥石の下面、50…測定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面側を保持する保持手段と、
該保持手段に保持されたワーク上面に砥石の下面を押し当てて研削加工する工具と、該工具を回転可能に支持するスピンドルとを有する研削手段と、
研削中にワークの厚さを測定する測定手段と、を有する加工装置であって、
前記測定手段は、
前記砥石の下面の高さ位置を検出し、該砥石の下面の高さ位置をワーク上面高さ位置としてワークの厚さを測定することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
ワークはデバイス形成領域に対応する裏面が研削され外周にリング補強部が形成されており、
ワーク上面は前記リング補強部の上面であり、
ワークの厚さは前記リング補強部の厚さであることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−146868(P2012−146868A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5089(P2011−5089)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】